説明

検出装置、検出方法、およびプログラム

【課題】物体の動きの検出精度の向上を図ることが可能な、検出装置、検出方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】一定の掃引区間において周波数が変化する送信信号と、送信信号の送信に応じて受信される受信信号との周波数差を周波数として有するビート信号に基づいて、掃引区間ごとにビート信号の位相シフト量を算出し、算出された位相シフト量に基づいて、物体の動きを検出する動き検出部を備える、検出装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、検出方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ドップラーセンサを用いることによって、非接触に物体の動きを検出する技術が開発されている。電波式のドップラーセンサと、人体(対象の物体)に近接して配置される低周波センサとの2種類のセンサを用いることによって、人体の心拍を検出する技術としては、例えば、特許文献1が挙げられる。また、車両に備えられたドップラーセンサを用いて、乗員の心拍を検出する技術としては、例えば、特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−055504号公報
【特許文献2】特開2010−142456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている、非接触に物体の動きを検出する技術(以下、総称して「従来の技術」と示す場合がある。)は、ドップラー効果による周波数シフトにより検出可能なビート信号に基づいて、物体の動きを検出する。よって、従来の技術を用いることによって、物体の動きを非接触に検出できる可能性はある。
【0005】
しかしながら、ドップラー効果による周波数シフトにより検出可能なビート信号に基づいて物体の動きを検出する場合には、検出対象の物体にある程度の動きがなければ、信号のS/N比(Signal to Noise ratio)が悪くなる。よって、従来の技術を用いる場合には、物体の動きを精度よく検出できるとは限らない。
【0006】
また、例えば特許文献1に示す従来の技術は、ドップラーセンサと低周波センサとの2種類のセンサを用い、かつ、低周波センサを人体(対象の物体)に近接して配置しなければならない。また、例えば特許文献2に示す従来の技術は、ドップラーセンサの信号そのもの、または、心拍(検出対象の動き)に関連しそうな周波数帯域成分の振幅に基づいて、心拍位置を特定するので、人体(対象の物体)が近接していなければ、物体の動きを検出することが困難である。よって、例えば特許文献1、特許文献2に示す従来の技術を用いる場合には、物体の動きを検出する環境に制約が設けられる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、物体の動きの検出精度の向上を図ることが可能な、新規かつ改良された検出装置、検出方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によれば、一定の掃引区間において周波数が変化する送信信号と、上記送信信号の送信に応じて受信される受信信号との周波数差を周波数として有するビート信号に基づいて、上記掃引区間ごとに上記ビート信号の位相シフト量を算出し、算出された上記位相シフト量に基づいて、物体の動きを検出する動き検出部を備える、検出装置が提供される。
【0009】
かかる構成により、物体の動きの検出精度の向上を図ることができる。
【0010】
また、上記送信信号を送信し、上記送信信号と上記受信信号とに基づいて、上記ビート信号を出力する検出部をさらに備え、上記動き検出部は、上記検出部から出力される上記ビート信号の位相シフト量を算出してもよい。
【0011】
また、上記掃引区間ごとに上記ビート信号を周波数変換する周波数変換部をさらに備え、上記動き検出部は、周波数変換が行われたビート信号における周波数ごとに、上記ビート信号の位相シフト量を算出してもよい。
【0012】
また、上記動き検出部は、周波数ごとに算出される位相シフト量のばらつきに基づいて、物体の動きを検出してもよい。
【0013】
また、上記動き検出部は、上記位相シフト量の時系列データを周波数ごとに生成し、周波数ごとの上記時系列データに基づき算出される、周波数ごとの上記ビート信号の位相シフト量の時間的変化成分に基づいて、物体の動きを検出してもよい。
【0014】
また、上記動き検出部は、上記位相シフト量の時系列データを生成し、上記時系列データに基づき算出される、上記ビート信号の位相シフト量の時間的変化成分に基づいて、物体の動きを検出してもよい。
【0015】
また、上記動き検出部は、上記位相シフト量の時間的変化成分に基づいて、空間上における動きの変化の特徴を示す特徴値を算出してもよい。
【0016】
また、上記特徴値は、少なくとも、速度、加速度、ジャーク成分のいずれかを示してもよい。
【0017】
また、上記動き検出部は、上記位相シフト量のばらつきに基づいて、物体の動きを検出してもよい。
【0018】
また、上記動き検出部は、さらに上記ビート信号における各周波数成分の振幅に基づいて、物体の動きを検出してもよい。
【0019】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の観点によれば、一定の掃引区間において周波数が変化する送信信号と、上記送信信号の送信に応じて受信される受信信号との周波数差を周波数として有するビート信号に基づいて、上記掃引区間ごとに上記ビート信号の位相シフト量を算出し、算出された上記位相シフト量に基づいて、物体の動きを検出するステップを有する、検出方法が提供される。
【0020】
かかる方法を用いることによって、物体の動きの検出精度の向上を図ることができる。
【0021】
また、上記送信信号を送信し、上記送信信号と上記受信信号とに基づいて、上記ビート信号を出力するステップをさらに有し、上記物体の動きを検出するステップでは、上記ビート信号を出力するステップにおいて出力される上記ビート信号の位相シフト量が算出されてもよい。
【0022】
また、上記掃引区間ごとに上記ビート信号を周波数変換するステップをさらに有し、上記物体の動きを検出するステップでは、周波数変換が行われたビート信号における周波数ごとに、上記ビート信号の位相シフト量が算出されてもよい。
【0023】
また、上記送信信号を送信し、上記送信信号と上記受信信号とに基づいて、上記ビート信号を出力するステップをさらに有し、上記周波数変換するステップでは、上記ビート信号を出力するステップにおいて出力される上記ビート信号が周波数変換されてもよい。
【0024】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の観点によれば、一定の掃引区間において周波数が変化する送信信号と、上記送信信号の送信に応じて受信される受信信号との周波数差を周波数として有するビート信号に基づいて、上記掃引区間ごとに上記ビート信号の位相シフト量を算出し、算出された上記位相シフト量に基づいて、物体の動きを検出する手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムが提供される。
【0025】
かかるプログラムを用いることによって、物体の動きの検出精度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、物体の動きの検出精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る検出装置の構成の一例を示す説明図である。
【図2】第1の実施形態に係る検出装置が送信する送信信号の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る送信信号と受信信号との周波数差の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る検出装置の構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
(本発明の実施形態に係る検出方法)
本発明の実施形態に係る検出装置の構成について説明する前に、本発明の実施形態に係る検出方法について説明する。以下では、本発明の実施形態に係る検出方法に係る処理を、本発明の実施形態に係る検出装置が行うものとして説明する。
【0030】
上述したように、ドップラー効果による周波数シフトにより検出可能なビート信号に基づいて物体の動きを検出する場合には、物体の動きを精度よく検出できるとは限らない。
【0031】
そこで、本発明の実施形態に係る検出装置は、周波数が掃引された送信信号を送信し、当該送信信号と、送信信号の送信に応じて受信される受信信号とに基づくビート信号の位相の情報に基づいて、物体の動きを検出する。ここで、本発明の実施形態に係るビート信号とは、送信信号と受信信号との周波数差を周波数として有する信号である。また、本発明の実施形態に係る検出装置が検出する物体の動きとしては、例えば、物体が動きの有無や、動きの検出により特定(または推定)される動きの内容が挙げられる。
【0032】
より具体的には、本発明の実施形態に係る検出装置は、例えば、下記の(1)の処理(検出処理)〜(3)の処理(動き検出処理)を行うことによって、物体の動きを検出する。
【0033】
(1)検出処理
本発明の実施形態に係る検出装置は、一定の掃引区間において周波数が変化する送信信号を送信する。そして、本発明の実施形態に係る検出装置は、送信信号と、送信信号の送信に応じて受信される受信信号とに基づいて、ビート信号を得る。
【0034】
より具体的には、本発明の実施形態に係る検出装置は、例えば、ドップラーセンサを備え、一定の掃引区間において周波数が変化する送信信号を繰り返し送信する。そして、本発明の実施形態に係る検出装置は、送信信号と受信信号とを干渉させ、送信信号と受信信号との周波数差を周波数として有するビート信号を得る。
【0035】
ここで、本発明の実施形態に係る送信信号としては、例えば、マイクロ波(10[GHz]や24[GHz]など)やミリ波などの電磁波により送信される信号や、超音波などの音波により送信される信号、光により送信される信号が挙げられる。また、本発明の実施形態に係る受信信号は、送信された送信信号が、媒体や物体などによって反射された信号である。
【0036】
また、ドップラーセンサは、大別すると、周波数一定の無変調波を送信するCW(Continuous Wave)型と、送信する信号の周波数を一定の時間間隔で変化させるFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)型とが挙げられる。CW型のドップラーセンサにより得られるビート信号は、物体などによる反射における速度に比例した周波数変化を生じる、ドップラー効果による周波数シフトを主な成分とする。そのため、CW型のドップラーセンサを用いる場合には、物体の動きを精度よく検出できるとは限らない。そこで、本発明の実施形態に係る検出装置は、周波数を掃引させる送信信号を送信するために、例えばFMCW型のドップラーセンサを用いる。なお、本発明の実施形態に係るFMCW型のドップラーセンサは、物体に反射することによってドップラー効果を生じさせることが可能な搬送波を送信可能なものであればよい。
【0037】
ここで、周波数の掃引としては、例えば、上り掃引と、下り掃引とが挙げられる。下限周波数を“f”、上限周波数を“f+B”とおくと、上り掃引とは、例えば、時間ts(s)に下限周波数fの送信信号が送信され、時間ts(s)+T(s)に上限周波数f+Bに達するように一定のペースで周波数を上げていくことをいう。また、下り掃引とは、例えば、時間ts(s)に上限周波数f+Bの送信信号が送信され、時間ts(s)+T(s)に下限周波数fに達するように一定のペースで周波数を下げていくことをいう。以下では、上記のような、周波数の掃引に係る、時間ts(s)から時間ts(s)+T(s)までの期間T(s)に相当する期間を、「掃引区間」と示す。
【0038】
また、周波数の掃引の形態としては、例えば、上り掃引のみが行われるノコギリ波状の掃引や、上り掃引と下り掃引とが繰り返される三角波状の掃引が挙げられる。
【0039】
本発明の実施形態に係る検出装置は、例えばFMCW型のドップラーセンサを備えることによって、一定の掃引区間において周波数が変化する送信信号を送信し、送信信号と受信信号とに基づいてビート信号を得る。本発明の実施形態に係る検出装置における検出処理の具体例については、後述する。
【0040】
なお、本発明の実施形態に係る検出装置は、例えば、ネットワークを介して(あるいは直接的に)接続された、FMCW型のドップラーセンサを備える外部の検出装置から出力されるビート信号を受信する場合など、外部装置からビート信号を取得する場合には、(1)の処理(検出処理)を行わなくてもよい。上記の場合には、本発明の実施形態に係る検出装置は、外部装置から取得されたビート信号に基づいて、後述する(2)の処理(周波数変換処理)および(3)の処理(動き検出処理)、または、後述する(3)の処理(動き検出処理)を行う。
【0041】
ここで、本発明の実施形態に係るネットワークとしては、例えば、LAN(Local Area Network)などの有線ネットワーク、無線LAN(WLAN;Wireless Local Area Network)や基地局を介した無線WAN(WWAN;Wireless Wide Area Network)などの無線ネットワーク、あるいは、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)などの通信プロトコルを用いたインターネットなどが挙げられる。
【0042】
(2)周波数変換処理
本発明の実施形態に係る検出装置は、掃引区間ごとに、上記(1)の処理(検出処理)において取得されたビート信号を周波数変換する。ここで、本発明の実施形態に係る周波数変換の方法としては、例えば、フーリエ変換を用いる方法や、離散コサイン変換を用いる方法、ウェーブレット変換を用いる方法、Wigner変換を用いる方法、アダマール変換を用いる方法、Matching Pursuit法を用いる方法などが挙げられる。なお、本発明の実施形態に係る周波数変換の方法は、上記に限られない。例えば、本発明の実施形態に係る検出装置は、時間・周波数変換が可能な任意の方法を用いることができる。
【0043】
ビート信号を周波数変換して、後述する(3)の処理(動き検出処理)を行うことによって、本発明の実施形態に係る検出装置は、例えば、本発明の実施形態に係る検出装置からの距離が異なる物体における動きを検出することができる。本発明の実施形態に係る検出装置における周波数変換処理の具体例については、後述する。
【0044】
なお、本発明の実施形態に係る検出装置は、(2)の処理(周波数変換処理)を行わなわずに、後述する(3)の処理(動き検出処理)を行うことも可能である。(2)の処理を行わなわずに後述する(3)の処理を行う場合には、本発明の実施形態に係る検出装置は、本発明の実施形態に係る検出装置からの距離が単一の物体における動きを検出することとなる。
【0045】
(3)動き検出処理
本発明の実施形態に係る検出装置は、掃引区間ごとにビート信号の位相シフト量を算出し、算出された位相シフト量に基づいて、物体の動きを検出する。本発明の実施形態に係る検出装置は、上記(2)の処理(周波数変換処理)を行う場合には、周波数変換が行われたビート信号における周波数ごとに、ビート信号の位相シフト量を算出する。
【0046】
ここで、本発明の実施形態に係るビート信号の位相シフト量とは、例えば、時間的に隣接する掃引区間における位相の変化量である。本発明の実施形態に係る検出装置は、ビート信号の位相シフト量の時間的変化を、空間上における物体の動き成分と捉えることによって、物体の動きを検出する。
【0047】
本発明の実施形態に係る検出装置は、上記のように、ビート信号の位相シフト量の時間的変化を、空間上における物体の動き成分と捉えて物体の動きを検出するので、物体の微細な動きも検出することが可能である。
【0048】
また、本発明の実施形態に係る検出装置は、ビート信号の位相シフト量と、本発明の実施形態に係る検出装置および物体の距離との関係を、近似的に変換することによって、空間上における動きの変化の特徴を示す特徴値を算出してもよい。ここで、本発明の実施形態に係る空間上における動きの変化の特徴を示す特徴値としては、例えば、速度、加速度、ジャーク成分が挙げられる。上記のような空間上における動きの変化の特徴を示す特徴値を算出することによって、本発明の実施形態に係る検出装置は、人(動きを検出する物体の一例)の呼吸や心拍などをより容易に検出することができる。
【0049】
なお、本発明の実施形態に係る検出装置における動き検出処理の具体例については、後述する。
【0050】
本発明の実施形態に係る検出装置は、本発明の実施形態に係る検出方法に係る処理として、例えば、上記(1)の処理(検出処理)〜上記(3)の処理(動き検出処理)や、上記(2)の処理(周波数変換処理)および上記(3)の処理(動き検出処理)、上記(1)の処理(検出処理)および上記(3)の処理(動き検出処理)、あるいは、上記(3)の処理(動き検出処理)を行う。
【0051】
ここで、本発明の実施形態に係る検出装置は、上記(1)の処理(検出処理)により、または、外部装置から、ビート信号を取得し、上記(3)の処理において、ビート信号の位相シフト量の時間的変化を、空間上における物体の動き成分と捉えて物体の動きを検出する。ここで、ビート信号の位相シフト量の時間的変化を空間上における物体の動き成分と捉えるときには、検出対象の物体が微細に動いた場合であっても、信号のS/N比が悪くなる可能性を、従来の技術が用いられる場合よりもより低減することが可能である。
【0052】
したがって、本発明の実施形態に係る検出装置は、本発明の実施形態に係る検出方法に係る処理を行うことによって、物体の動きの検出精度の向上を図ることができる。
【0053】
以下、本発明の実施形態に係る検出装置の構成の一例について説明をすると共に、本発明の実施形態に係る検出方法に係る処理の具体例についても併せて説明する。
【0054】
(第1の実施形態に係る検出装置)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る検出装置100の構成の一例を示す説明図である。検出装置100は、例えば、検出部102と、周波数変換部104と、動き検出部106とを備える。
【0055】
また、検出装置100は、例えば、制御部(図示せず)や、ROM(Read Only Memory。図示せず)、RAM(Random Access Memory。図示せず)、記憶部(図示せず)、ユーザが操作可能な操作部(図示せず)、様々な画面を表示画面に表示する表示部(図示せず)、外部装置と通信を行うための通信部(図示せず)などを備えていてもよい。検出装置100は、例えば、データの伝送路としてのバスにより上記各構成要素間を接続する。
【0056】
ここで、制御部(図示せず)は、例えばMPU(Micro Processing Unit)や各種機能を実現するための集積回路などで構成され、検出装置100全体を制御する役目を果たす。また、制御部(図示せず)は、例えば、周波数変換部104や、動き検出部106など、本発明の実施形態に係る検出方法に係る処理の一部を行う役目を果たしてもよい。なお、検出装置100が、周波数変換部104や、動き検出部106それぞれを、制御部(図示せず)とは別体の処理回路(個別の処理回路、または共通の処理回路)として備えることができることは、言うまでもない。
【0057】
ROM(図示せず)は、例えば制御部(図示せず)が使用するプログラムや演算パラメータなどの制御用データを記憶する。RAM(図示せず)は、例えば制御部(図示せず)により実行されるプログラムなどを一時的に記憶する。
【0058】
記憶部(図示せず)は、検出装置100が備える記憶手段であり、例えば、動き検出部106において検出された動きの検出結果を示すデータや、アプリケーションなど様々なデータを記憶する。ここで、記憶部(図示せず)としては、例えば、ハードディスクなどの磁気記録媒体や、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどが挙げられる。また、記憶部(図示せず)は、検出装置100から着脱可能であってもよい。
【0059】
操作部(図示せず)としては、例えば、ボタンや、方向キー、あるいは、これらの組み合わせなどが挙げられる。また、検出装置100は、例えば、キーボードやマウスなど、検出装置100の外部装置としての操作デバイスと接続することもできる。
【0060】
表示部(図示せず)としては、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)や有機ELディスプレイ(organic ElectroLuminescence display)などが挙げられる。なお、表示部(図示せず)は、例えばタッチスクリーンなどのように、表示とユーザ操作とが可能なデバイスであってもよい。また、検出装置100は、表示部(図示せず)の有無に関わらず、検出装置100の外部装置としての表示デバイス(例えば、外部ディスプレイなど)と接続することもできる。
【0061】
検出部102は、上記(1)の処理(検出処理)を行う役目を果たし、一定の掃引区間において周波数が変化する送信信号を送信し、送信信号と受信信号とに基づいて、ビート信号を出力する。検出部102は、例えば、FMCW型のドップラーセンサを備える。
【0062】
図2は、第1の実施形態に係る検出装置100が送信する送信信号の一例を示す説明図である。ここで、図2では、検出部102が、三角波状に周波数を掃引する場合における、周波数変化の一例(図2に示す(B))と、送信信号の波形の一例(図2に示す(A))とを示している。また、図2に示す“f”は、下限周波数を示し、図2に示す“f+B”は、上限周波数を示している。そして、図2に示すT(s)は、掃引区間を示している。
【0063】
ここで、図2に示すように、三角波状に周波数を掃引する場合の利点は、一般的に、送信信号が送信されてから、当該送信信号が物体などの反射体に当たって反射して受信信号として受信されるまでの往復伝搬遅延時間が、送信信号と受信信号との周波数差と比例する関係で得られることにある。すなわち、検出部102が、三角波状に周波数を掃引して送信信号を送信することによって、物体と検出装置100との距離(より厳密には、物体と検出部102との距離)が、ビート信号の周波数として得られる。
【0064】
一般的に、反射体は、検出部102からみると複数の距離に存在する。例えば、屋内では、検出部102からみると、壁や、床、家具、人、動物など、様々な反射体が存在しうる。そのため、検出部102は、上記のような複数の反射体によって反射された送信信号が合成された信号を、受信信号として受信することとなる。検出部102は、例えば、受信信号のうち最も大きい振幅を有する周波数成分を抽出して用いたり、周波数変換を行うことによって受信信号を距離別に周波数成分を分離して用いる。
【0065】
なお、検出部102における周波数の掃引は、図2に示すような三角波状の掃引に限られない。例えば、検出部102は、ノコギリ状の掃引のように、上り掃引や下り掃引のみの片側掃引によって周波数を掃引してもよい。また、検出部102は、三角波状の掃引やノコギリ状の掃引に限られず、一定のペースで周波数が変化する掃引区間が繰り返されていれば、任意のパターンの掃引を行うことができる。
【0066】
ここで、検出部102は、例えば、VCO(voltage controlled oscillator;電圧制御発振器)に入力する電圧を時間変化させることによって、送信周波数を変化させる。なお、検出部102における周波数の掃引の実現方法が、上記に限られないことは、言うまでもない。
【0067】
以下、検出部102における処理について、より具体的に説明する。
【0068】
検出部102は、掃引開始時間を0(ゼロ)とする時間tにおいて、例えば下記の数式1に示す送信信号v(t)を送信する。ここで、数式1に示す“A”は、送信信号の振幅を示しており、数式1に示す“φ”は、例えば下記の数式2で表される。また、数式2に示す“f”は、掃引下限周波数[Hz]を示し、数式2に示す“O”は、掃引開始時における送信信号の位相を示している。また、数式2に示す“T”は、掃引区間を示し、数式2に示す“B”は、掃引周波数[Hz]を示している。
【0069】
【数1】

・・・(数式1)
【数2】

・・・(数式2)
【0070】
また、送信信号v(t)の送信周波数ω[rad/s]は、例えば下記の数式3で表される。
【0071】
【数3】

・・・(数式3)
【0072】
一般に、搬送波の周波数は、掃引の繰り返し周期に対して非常に高いことから、搬送波の掃引開始時における位相Oを同期させることは困難である。例えば、24[GHz]のマイクロ波を例に挙げると、搬送波の周波数24[GHz]に対して、掃引の繰り返し周期は1[kHz]程度であるので、掃引の繰り返し周期の制御に搬送波と同期した制御が行われないことが多い。一般的に、掃引開始時における位相Oは、掃引ごとに変化する値とされる。そこで、検出部102は、例えば、掃引開始時における位相Oを掃引ごとに変化する値として、送信信号v(t)を送信する。
【0073】
また、送信信号v(t)の送信に応じて受信される受信信号v(t)は、例えば下記の数式4で表される。ここで、数式4に示す“A”は、受信信号の振幅を示している。また、数式4に示す“φ”は、例えば下記の数式5で表される。ここで、数式5に示す“T”は、送信信号が物体などにより反射して受信信号として受信されるまでの遅延時間を示している。
【0074】
【数4】

・・・(数式4)
【数5】

・・・(数式5)
【0075】
また、受信信号v(t)の受信周波数ω[rad/s]は、例えば下記の数式6で表される。
【0076】
【数6】

・・・(数式6)
【0077】
検出部102は、数式6に示す受信周波数ωに対してIQ検波を行い、例えば下記の数式7、数式8に示す信号を得る。
【0078】
【数7】

・・・(数式7)
【数8】

・・・(数式8)
【0079】
ここで、数式7に示す“cos(φ+φ)”成分と、数式8に示す“sin(φ+φ)”成分は、例えば、ローパスフィルタなどのフィルタによって除去することが可能である。よって、検出部102は、送信信号v(t)と受信信号v(t)とに基づいて、例えば下記の数式9、数式10に示すビート信号を取得する。
【0080】
【数9】

・・・(数式9)
【数10】

・・・(数式10)
【0081】
上記数式9、上記数式10に示す“A”は、例えば下記の数式11で表され、また、上記数式9、上記数式10に示す“φ”は、例えば下記の数式12で表される。
【0082】
【数11】

・・・(数式11)
【数12】

・・・(数式12)
【0083】
また、ビート信号の周波数ω[rad/s]は、例えば下記の数式13で表される。
【0084】
【数13】

・・・(数式13)
【0085】
検出部102は、例えば上記数式9、上記数式10に示す演算を行うことによって、ビート信号を取得する。そして、検出部102は、ビート信号を周波数変換部104へ出力する。
【0086】
検出部102が出力するビート信号は、送信信号と受信信号との周波数差を周波数として有する信号である。図3は、本発明の実施形態に係る送信信号と受信信号との周波数差の一例を示す説明図である。図3の(A)は、送信信号と受信信号との一例を示しており、図3の(B)は、図3の(A)に示す送信信号と受信信号との周波数差を示している。検出部102は、例えば上記数式9、上記数式10に示す演算を行うことによって、例えば図3の(B)に示すような周波数差を周波数とするビート信号を出力する。
【0087】
[本発明の実施形態に係る、ビート信号の位相シフト量に基づいて物体の動きを検出する意義]
ここで、周波数変換部104、動き検出部106について説明する前に、本発明の実施形態に係る、ビート信号の位相シフト量に基づいて物体の動きを検出する意義について説明する。
【0088】
検出装置100(より厳密には、後述する動き検出部106)は、例えば下記の数式14に示す演算を行うことによって、掃引区間に対する、ビート信号の位相シフト量Oを算出する。
【0089】
【数14】

・・・(数式14)
【0090】
数式14に示すように、ビート信号の位相シフト量Oは、掃引開始時における送信信号の位相Oの影響を受けない。また、数式14に示すように、ビート信号の位相シフト量Oは、掃引周波数B、掃引区間T、および下限周波数fが一定である場合には、検出装置100と物体との距離(より厳密には検出部102と物体との距離。以下、同様とする。)に依存する、遅延時間Tに対して一意に定まる。よって、数式14により算出されるビート信号の位相シフト量Oは、検出装置100と物体との距離と、掃引時間tにより一意に定まる。
【0091】
また、ビート信号の振幅Aは、送信信号v(t)の振幅Aが一定である場合には、物体などの反射体の面積や反射特性に依存する、受信信号v(t)の振幅Aにより定まる。
【0092】
ここで、特定の空間内における動体の検出や、静止体の変化を検出する場合には、例えば、遅延時間Tや受信信号v(t)の振幅Aの変化を検出すればよい。しかしながら、遅延時間Tの変化は、上記数式13、上記数式14に示すように、ビート信号の周波数ωとビート信号の位相シフト量Oとに影響を与える。また、受信信号v(t)の振幅Aは、上記のように反射体の面積や反射特性に依存するものであるので、受信信号v(t)の振幅Aの変化の検出により物体の動きを検出する場合には、物体の動きの検出精度の向上を図ることができるとは限らない。
【0093】
そこで、検出装置100は、搬送波が検出装置100と物体との間を往復する時間に相当する、遅延時間Tや受信信号v(t)の振幅Aではなく、検出装置100から対象の物体までの距離L[m]を用いる。送信信号、受信信号が搬送される搬送波の速度を“c”[m/s]とおくと、例えば、上記数式13は下記の数式15で表され、また、上記数式14は下記の数式16で表される。
【0094】
【数15】

・・・(数式15)
【数16】

・・・(数式16)
【0095】
ここで、ビート信号の離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform;DFT)を用いた周波数変換による周波数変化を考える。ビート信号は、掃引区間前後において不連続であり、上記数式1〜上記数式16に示す関係式が成立するのは、一般的には、掃引区間T内に限られる(より厳密には、さらに送信信号のround−tripによる影響を考慮すると、掃引区間Tよりも短くなる。)。すなわち、掃引区間T内のみにおける離散フーリエ変換を考慮すると、周波数分解能は、掃引区間Tにおいて1波長表現することができる1/T[Hz]の整数倍に限定される。上記の場合における距離分解能“L”[m]は、例えば、数式15より下記の数式17で表される。
【0096】
【数17】

・・・(数式17)
【0097】
搬送波が、例えばマイクロ波である場合、c=3.0×10[m/s]であり、送信周波数Bを200[MHz]とすると、距離分解能Lは、数式17より0.75[m]となる。
【0098】
ここで、例えば物体が動くことによって、距離が5[cm]変わった場合、周波数の変化は6.6[%]となる。周波数の変化によって物体の動きを検出する場合には、例えば、道路や倉庫内を移動する車両のように、メートルオーダーで動く物体の動きは、動きが大きいため容易に検出することができるが、上記5[cm]の動きなど、センチメートルオーダーの動きを検出することは困難である。つまり、周波数の変化によって物体の動きを検出する場合には、例えば、倉庫内の荷物や、人の動きを検出できるとは限らない。
【0099】
一方、ビート信号の位相シフト量Oに着目すると、(物体が移動する距離にもよるが、)物体の移動によって0.5周期程変化する。そのため、ビート信号の位相シフト量Oの変化を用いる方が、周波数の変化を用いる場合よりも、より容易に物体の動きを検出することが可能である。
【0100】
また、検出部102が、例えば、24[GHz]のマイクロ波を搬送波とし、200[MHz]・1[ms]の掃引周波数・時間で送信信号を送信する場合のように、数式14の第1項と第2項とのオーダーが大きく異なる場合には、例えば下記の数式18に示すように、ビート信号の位相シフト量Oを、検出装置100と物体との距離と線形な関係を有するように近似することができる。ここで、数式18に示す“α”は、下記の数式19で表される。
【0101】
【数18】

・・・(数式18)
【数19】

・・・(数式19)
【0102】
したがって、検出装置100は、掃引の繰り返し周期ごとにビート信号の位相シフト量を算出し、ビート信号の位相シフト量の時間的な変化成分を用いて物体を検出することによって、空間内の物体の動きの検出精度の向上を図ることができる。
【0103】
なお、上記では、検出装置100が1つの反射体の動きを検出する場合を例に挙げて説明したが、本発明の第1の実施形態に係る検出装置100における処理は、上記に限られない。上述したように、実際の空間内には、様々な物体や構造物などのような、様々な反射体が存在する可能性があり、検出装置100は、検出装置100と各反射体との距離や、反射体における反射量などが異なる反射体によって反射された送信信号が合成された信号を、受信信号として受信しうる。よって、本発明の第1の実施形態に係る検出装置100は、例えば、フーリエ変換や、ウェーブレット変換などを用いた周波数解析を行ってもよい。周波数解析を行うことによって、本発明の第1の実施形態に係る検出装置100は、例えば、周波数分解能の範囲において距離別の影響を分離することができる。
【0104】
再度図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る検出装置100の構成の一例について説明する。周波数変換部104は、(2)の処理(周波数変換処理)を主導的に行う役目を果たし、掃引区間ごとに、検出部102から出力されるビート信号を周波数変換する。
【0105】
以下、周波数変換部104がフーリエ変換を用いてビート信号を周波数変換する場合を例に挙げて、周波数変換部104における処理について説明する。なお、本発明の第1の実施形態に係る周波数変換部104における周波数変換処理は、上記に限られない。例えば、周波数変換部104は、ウェーブレット変換や、Wigner変換、Matching Pursuit法などを用いてビート信号を周波数変換してもよい。
【0106】
また、以下では、検出部102において、掃引区間T(s)による掃引がN回(Nは、正の整数)行われる場合を例に挙げて、周波数変換部104における処理について説明する。
【0107】
例えば図2の(B)に示すように、周波数の下限と上限との間を掃引するときには、再度掃引を行うために掃引前の初期値に周波数を戻す必要があり、初期値に周波数を戻すための有限の時間、すなわち、掃引準備期間を要する場合がある。掃引準備期間を“T(s)”とおくと、1回の掃引処理に要する期間T(S)は、掃引区間と掃引準備期間とを合わせた期間、すなわち、(T+T)(s)となる。なお、理想的には、T(s)=0であるが、例えば、送信周波数を変化させるために用いられるVCOの安定性などを考慮すると、現実的には、T(s)=0とすることは困難である。また、逆掃引が行われる場合には、片側の掃引からみると、T(s)=T(s)となることもある。
【0108】
ここで、サンプリング周波数を“f”[Hz]とし、(i+1)回目(i=0,1,…,N−1)の掃引処理における離散フーリエ変換を考える。掃引開始時間t=0[s]とする場合、周波数変換部104は、例えば、掃引開始前の送信信号の影響を受けないために、時間t=T(s)から掃引終了時間に該当する時間T(s)までの区間に対して、フーリエ変換を行う。
【0109】
周波数変換部104は、1回の掃引に対して1回の離散フーリエ変換を行うが、本発明の第1の実施形態に係る周波数変換部104における処理は、上記に限られない。例えば、本発明の第1の実施形態に係る周波数変換部104は、掃引区間を複数の区間に分割して、分割された区間ごとに離散フーリエ変換を行ってもよいし、一定のサイズの窓をスライドさせることによって複数の区間を抽出し、抽出された区間ごとに離散フーリエ変換を行ってもよい。以下では、周波数変換部104が、1回の掃引に対して1回の離散フーリエ変換を行う場合を例に挙げて説明する。
【0110】
周波数変換部104は、上記数式9、上記数式10に示すビート信号、すなわち、ドップラーのI成分とQ成分とをサンプリング周波数f[Hz]でサンプリングし、それぞれ実部、虚部とする複素数列Xi=(x0,i,x1,i,…,xM−1,i)を構成する。ここで、複素数列Xiの要素数Mは、例えば下記の数式20で表される。
【0111】
【数20】

・・・(数式20)
【0112】
また、離散フーリエ変換後の複素数列を“Ci=(c0,i,c1,i,…,cM−1,i)”とおくと、複素数列Ciの要素“cm,i”は、例えば下記の数式21で表される。
【0113】
【数21】

・・・(数式21)
【0114】
ここで、数式21で表されるcm,iは、i番目の掃引時の波形の周波数成分であり、cm,iの周波数は、0[Hz]の直流成分から、サンプリング周波数fに対するナイキスト周波数であるf/2[Hz]までの成分に分解される。また、個々の周波数成分の周波数間隔は、“1/(T−T)”[Hz]となり、距離間隔は上記数式17で表される“L”となる。よって、数式21で表されるcm,iが示す距離“L”[m]は、例えば下記の数式22で表される。
【0115】
【数22】

・・・(数式22)
【0116】
よって、周波数変換部104が、フーリエ変換を用いてビート信号を周波数変換することによって、検出装置100は、距離が異なる物体における動きを検出することが可能となる。
【0117】
なお、上記では、離散フーリエ変換を行う系列の窓と掃引区間とを一致させている。ここで、離散フーリエ変換を行う系列の窓と掃引区間とが一致している必要は必ずしもないが、離散フーリエ変換の結果得られる各周波数成分の位相に対して、上記数式18に示す、検出装置100と物体との距離と線形な関係を維持するために、周波数変換を行う系列の窓と、掃引区間との相対的な関係を維持する必要がある。そこで、周波数変換部104は、掃引区間の繰り返しに対して、掃引区間ごとに周波数変換を行う。
【0118】
周波数変換部104は、例えば上記のように、フーリエ変換を用いてビート信号を周波数変換する。そして、周波数変換部104は、周波数変換したビート信号を動き検出部106へ出力する。
【0119】
なお、本発明の第1の実施形態に係る周波数変換部104における処理は、上記に限られない。例えば、周波数変換部104は、物体の検出を行う空間を限定する、すなわち、検出装置100と対象の物体との最大距離を“Lmax”と限定してもよい。
【0120】
検出装置100と対象の物体との最大距離を“Lmax”とする場合、検出部102を中心とした半径がLmaxの球状の空間が、物体の検出を行う空間となるが、実際の物体の検出を行う空間は、送信信号の送信に係る指向性や、受信信号の受信に係る指向性に左右される。例えば、検出部102が備えるドップラーセンサの前面から左右45度の範囲内に指向性が絞られる場合には、左右45度の範囲でLmaxにより規定される扇状の空間が、物体の検出を行う空間となる。
【0121】
周波数変換部104が、L(m)<Lmaxを満たす最大のmをmmaxとして、m=0,…,mmaxの範囲内で分析を行うことによって、検出装置100は、物体の検出を行う空間外の物体の反射による外乱要素の影響を低減することが可能となる。よって、周波数変換部104が、L(m)<Lmaxを満たす最大のmをmmaxとして、m=0,…,mmaxの範囲内で分析を行うことによって、検出装置100は、物体の動きの検出精度をより向上させることができる。
【0122】
また、搬送波がマイクロ波である場合には、上記のように物体の検出を行う空間を限定することによって、大きな検出精度の向上効果を得ることができる。マイクロ波は、例えば木造の構造物などを容易に透過するため、搬送波がマイクロ波である場合には、検出部102が出力の高い送信信号を送信したり、受信信号の受信感度を上げると、本来は物体の動きの検出の対象とはならない空間の影響を受ける可能性が高まる。その一方で、物体の微細な動きの検出をより厳密に行うためには、送信信号の出力や受信信号の受信感度を上げることが、信号のゲインを稼ぐ上で有効である。上記のように、物体の検出を行う空間を限定することにより外乱要素の影響を低減することが可能であるので、物体の検出を行う空間を限定することによって、検出部102が送信信号の出力や受信信号の受信感度を上げても、外乱要素の影響を大きく受けることはない。よって、搬送波がマイクロ波である場合における上記のようなトレードオフを解消することができるので、上記のように物体の検出を行う空間を限定することによって、大きな検出精度の向上効果を得ることができる。
【0123】
動き検出部106は、上記(3)の処理(動き検出処理)を主導的に行う役目を果たし、掃引区間ごとにビート信号の位相シフト量を算出し、算出された位相シフト量に基づいて、物体の動きを検出する。
【0124】
より具体的には、動き検出部106は、周波数変換部104から伝達されるビート信号における、周波数変換後の各周波数成分cm,iについて、ビート信号の位相の時間的変化に基づいて物体の動きを検出する。
【0125】
例えば、空間内に存在する物体に動きがない場合、すなわち、空間内に静止体のみが存在する場合、上記数式15、上記数式16より、送信信号の位相に関わらず、掃引間隔ごとにビート信号の周波数、位相、振幅が決まる。また、周波数変換部104における離散フーリエ変換などの周波数変換によって、距離別にビート信号の周波数、位相、振幅を分離することができるので、動き検出部106は、時間変動を周波数成分別に分析することによって、距離別に物体の動きの有無を検出することができる。
【0126】
周波数変換部104から伝達されるビート信号における、時間(T×j)に開始された掃引処理により得られる周波数成分cm,jは、距離L(m)=m・L近辺の物体に関する時間(T×j)における情報に相当する。ここで、上記周波数成分cm,jは、距離L(m)の近辺に動体がなければ、一意に定まる複素数となるが、実際は、例えば、各種誤差要因により微小に変動し、また、検出部102が備えるRF(Radio Frequency)回路の温度特性などのよるドリフトの影響などによって、長期的にはある程度大きく変動することがある。
【0127】
そこで、動き検出部106は、上記のような微小変動や長時間変動を許容するために、例えば、位相シフト量に短期的に大きな変化が生じた場合に、物体に動きがあると判断する。また、上記のような微小変動は、上記数式16に示すように、ビート信号の位相シフト量に大きく影響を与えうるため、動き検出部106は、例えば、位相シフト量の変化を抽出し、物体の動きにより位相シフト量が変化したかを判定する。
【0128】
より具体的には、(j+1)回目の掃引処理によってm番目の周波数成分cm,jが得られた場合、動き検出部106は、例えば、m番目の周波数成分cm,jと、過去の掃引処理によって得られた周波数成分とを併せた時系列データによって、処理を行う。以下、動き検出部106が、100回分の掃引処理により得られた周波数成分を集めた時系列Cm,j=(cm,j−99,cm,j−98,・・・,cm,j−1,cm,j)に対して処理を行う場合を例に挙げて、動き検出部106における処理の一例について説明する。
【0129】
時系列Cm,jにおける周波数成分の位相シフト量系列は、Φm,j=(om,j−99,om,j−98,・・・,om,j−1,om,j)と表現することができる。ここで、om,jは、om,j=arg(cm,j)であり、“arg”は、複素平面上の偏角を求める演算でありarctanが用いられる。
【0130】
動き検出部106は、時系列Cm,jにおけるm番目の周波数成分の平均値“cm,j’”から、平均の偏角“om,j’”を算出する。また、動き検出部106は、各要素om,k(ただし、k=j−99,j−98,・・・,j)の偏角のずれ量Dm,j=(dm,j−99,dm,j−98,・・・,dm,j−1,dm,j)(ただし、dm,k=om,k−om,j’)を、±π[rad]の範囲で求める。
【0131】
そして、動き検出部106は、例えば、偏角のずれ量Dm,jの分散値σDm,jの大きさが所定の閾値以上の場合(または、分散値σDm,jの大きさが所定の閾値より大きい場合)に、m番目の周波数成分に対応する物体(検出装置100からの距離がL[m]近辺の物体)に、動きがあると判定する。また、動き検出部106は、例えば、偏角のずれ量Dm,jの分散値σDm,jの大きさが所定の閾値より小さい場合(または、分散値σDm,jの大きさが所定の閾値以下の場合)には、m番目の周波数成分に対応する物体(検出装置100からの距離がL[m]近辺の物体)に、動きがあると判定しない。なお、上記所定の閾値は、予め規定された固定値であってもよいし、検出装置100のユーザが変更可能な可変値であってもよい。
【0132】
また、ビート信号の位相シフト量が大きく変化する場合には、ビート信号の振幅にも影響が及ぶ。よって、動き検出部106は、さらに、ビート信号における各周波数成分の振幅に基づいて、物体の動きを検出することも可能である。
【0133】
より具体的には、例えば、ビート信号におけるm番目の周波数成分における振幅を“vm,j”とおくと、vm,jは、vm,j=|cm,j|で表される。よって、動き検出部106は、上記複素平面上の偏角om,jと同様に、平均値“vm,j’”と分散値“σVm,j”とを求め、所定の閾値を用いた閾値処理を行うことによって、ビート信号における各周波数成分の振幅に基づいて、物体の動きの有無を検出することが可能である。
【0134】
ここで、振幅が小さいビート信号の周波数成分では、雑音の影響などによって位相が変化しやすい。動き検出部106が、ビート信号の位相シフト量と、ビート信号における周波数成分の振幅とに基づいて、物体の動きを検出することによって、動き検出部106は、より高精度に物体の動きを検出することができる。
【0135】
ビート信号の位相シフト量と、ビート信号における周波数成分の振幅とに基づいて、物体の動きを検出する方法としては、例えば、SVM(Support Vector Machine)などの機械学習器を用いて、偏角のずれ量Dm,jの分散値σDm,j、振幅の平均値vm,j’、振幅の分散値“σVm,j”を入力ベクトルとし、動きの有無を教師信号として学習させる方法が挙げられる。なお、ビート信号の位相シフト量と、ビート信号における周波数成分の振幅とに基づいて、物体の動きを検出する方法が、上記に限られないことは、言うまでもない。
【0136】
動き検出部106は、例えば上記のような処理を行うことによって、ビート信号の位相シフト量(または、ビート信号の位相シフト量およびビート信号における周波数成分の振幅)に基づいて、距離L[m]近辺に存在する物体の動きを検出する。また、動き検出部106は、例えば、m=0,…,mmaxの範囲の各mについて処理を行うことによって、各mに対応する距離ごとに、物体の動きを検出することができる。
【0137】
また、動き検出部106は、動きの検出結果を示すデータを、記憶部(図示せず)などの記録媒体に記録してもよいし、動きの検出結果をユーザに提示してもよい。ユーザへの動きの検出結果の提示方法としては、例えば、表示部(図示せず)などの表示画面に表示させる視覚的な提示や、音声(音楽も含む)により提示する聴覚的な提示が挙げられる。また、動き検出部106は、動きの検出結果を示すデータを、通信部(図示せず)を介して外部装置に送信することも可能である。
【0138】
本発明の第1の実施形態に係る検出装置100は、例えば、検出部102と、周波数変換部104と、動き検出部106とを備えることによって、本発明の実施形態に係る検出方法に係る、(1)の処理(検出処理)〜(3)の処理(動き検出処理)を行う。よって、検出装置100は、物体の動きの検出精度の向上を図ることができる。
【0139】
また、検出装置100は、周波数変換部104において周波数変換処理を行うことによって、検出装置100からの距離別に、物体の動きを検出することができる。
【0140】
また、検出装置100は、例えば、検出部102における掃引処理ごとに物体の動きを検出してもよいし、物体の動きの検出に係る処理を、時間方向や、周波数方向(すなわち、距離方向)に間引いて行ってもよい。掃引処理ごとに物体の動きを検出することによって、検出装置100は、時間別に物体の動きを検出することができる。また、物体の動きの検出に係る処理を、時間方向や、周波数方向(すなわち、距離方向)に間引くことによって、物体の動きの検出に係る処理量を低減させることができる。
【0141】
[第1の実施形態に係る検出装置の変形例]
なお、本発明の第1の実施形態に係る検出装置の構成は、図1に示す構成に限られない。例えば、本発明の第1の実施形態に係る検出装置は、検出部102を備えない構成であってもよい。上記の構成の場合には、本発明の第1の実施形態の変形例に係る検出装置は、例えば、ネットワークを介して(あるいは直接的に)接続された、FMCW型のドップラーセンサを備える外部の検出装置などの外部装置から出力されるビート信号を受信し、受信したビート信号に基づいて、物体の動きを検出する。また、本発明の第1の実施形態の変形例に係る検出装置は、検出部102を備える場合であっても、上記外部装置から出力されるビート信号を受信し、受信したビート信号に基づいて、物体の動きを検出することが可能である。
【0142】
上記の構成の場合には、本発明の第1の実施形態の変形例に係る検出装置と、物体を検出する空間に設けられた、検出装置などの外部装置とを有し、本発明の実施形態に係る検出方法に係る処理を行うことが可能な、検出システムが実現される。
【0143】
また、本発明の第1の実施形態に係る検出装置は、例えば、周波数変換部104を備えない構成であってもよい。上記の構成の場合には、本発明の第1の実施形態の変形例に係る検出装置は、単一の距離に対応する物体の動きを検出することとなる。また、上記の構成の場合には、本発明の第1の実施形態の変形例に係る検出装置は、例えば、人(物体の一例)のバイタルを検出することも可能である。また、本発明の第1の実施形態の変形例に係る検出装置は、例えば、ユーザ操作に基づく設定に応じて、周波数変換部104が選択的に周波数変換処理を行う構成をとることも可能である。
【0144】
(第2の実施形態に係る検出装置)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る検出装置200の構成の一例を示す説明図である。検出装置100は、例えば、検出部102と、周波数変換部104と、動き検出部202とを備える。
【0145】
図4に示す第2の実施形態に係る検出装置200は、図1に示す第1の実施形態に係る検出装置100と基本的に同様の構成を有するが、図1に示す第1の実施形態に係る検出装置100と比較すると、図4に示す第2の実施形態に係る検出装置200は、動き検出部202における処理が異なる。
【0146】
動き検出部202は、第1の実施形態に係る動き検出部106と同様に、上記(3)の処理(動き検出処理)を主導的に行う役目を果たし、掃引区間ごとにビート信号の位相シフト量を算出し、算出された位相シフト量に基づいて、物体の動きを検出する。より具体的には、動き検出部202は、第1の実施形態に係る動き検出部106と同様に、周波数変換部104から伝達されるビート信号における、周波数変換後の各周波数成分cm,iについて、ビート信号の位相の時間的変化に基づいて物体の動きを検出する。また、動き検出部202は、第1の実施形態に係る動き検出部106と同様に、ビート信号の位相シフト量と、ビート信号における周波数成分の振幅とに基づいて、物体の動きを検出してもよい。
【0147】
上述したように、例えば、空間内に存在する物体に動きがない場合、すなわち、空間内に静止体のみが存在する場合、上記数式15、上記数式16より、送信信号の位相に関わらず、掃引間隔ごとにビート信号の周波数、位相、振幅が決まる。ここで、周波数変換部104における離散フーリエ変換などの周波数変換によって、距離別にビート信号の周波数、位相、振幅を分離することができるが、離散フーリエ変換などによる周波数変換では、距離分解能が十分に高くならない場合がある。そのため、離散フーリエ変換などによる周波数変換を用いたとしても、微細な距離の変化に鈍感となる恐れがある。
【0148】
一方、ビート信号の位相シフト量の変化に着目すると、数式18より微細な距離の変化を、ビート信号の位相シフト量の変化によって観測することが可能である。そこで、動き検出部202は、ビート信号の位相シフト量の時間変動を、周波数成分別に分析することによって、距離別に物体の動きの有無を検出する。
【0149】
上述したように、周波数変換部104から伝達されるビート信号における、時間(T×j)に開始された掃引処理により得られる周波数成分cm,jは、距離L(m)=m・L近辺の物体に関する時間(T×j)における情報に相当する。ここで、上記周波数成分cm,jは、距離L(m)の近辺に動体がなければ、一意に定まる複素数となるが、実際には、微小変動や長時間変動が起こりうる。
【0150】
そこで、動き検出部202は、上記のような微小変動や長時間変動を許容するために、例えば、第1の実施形態に係る動き検出部106と同様に、位相シフト量に短期的に大きな変化が生じた場合に、物体に動きがあると判断する。また、上記のような微小変動は、上記数式16に示すように、ビート信号の位相シフト量に大きく影響を与えうるため、動き検出部202は、例えば、第1の実施形態に係る動き検出部106と同様に、位相シフト量の変化を抽出し、物体の動きにより位相シフト量が変化したかを判定する。
【0151】
また、例えば検出部102がマイクロ波を搬送波として送信信号を送信するときのように、数式14の第1項と第2項とのオーダーが大きく異なる場合には、上記数式18に示すように、ビート信号の位相シフト量は、検出装置100と物体との距離と線形な関係を有するように近似することができる。よって、動き検出部202は、物体の微小な動きの変化を、ビート信号の位相シフト量の変化として捉えることができる。
【0152】
したがって、動き検出部202は、例えば、人(物体の一例)の胸の動きを検出して呼吸を推定することや、ユーザ(物体の一例)の心臓や血管、脈の動きを検出して心拍を推定することが可能である。
【0153】
(j+1)回目の掃引処理によってm番目の周波数成分cm,jが得られた場合を例に挙げると、第1の実施形態に係る動き検出部106と同様の処理を行うことによって、動き検出部202は、om,j=arg(cm,j)より、m番目の周波数成分の位相シフト量を得ることができる。
【0154】
また、掃引区間に対するビート信号の位相シフト量Oは、上記数式18より検出装置100と物体との距離と線形な関係に近似することができるので、掃引区間の繰り返しごとに周波数変換によって得られる各周波数成分の位相シフト量om,jも同様に、検出装置100と物体との距離と線形な関係があるとみなすことが可能である。上記各周波数成分の位相シフト量om,jに対し、掃引区間の繰り返しの都度生じうる位相シフト量の変化量をとると、距離の時間微分が速度であることと同様に、速度と線形な関係とみなせる変数pm,jを算出することができる。また、変数pm,jは、例えば下記の数式23で表される。
【0155】
【数23】

・・・(数式23)
【0156】
数式23において、変数pm,jが±πの範囲に収まるようにnが選ばれる。ここで、物体において、ビート信号における位相変化が1周期を超えるような動きが行われた場合には、動きの連続性は失われるが、動き検出部202は、動きがあること自体は検出することができる。また、物体が微小に動いた場合には、動き検出部202は、連続性を保ったまま動きの検出が可能である。
【0157】
なお、人などの動きを検出する場合には特に考慮する必要はないが、例えば速度が掃引による周波数変化と比べて非常に大きい場合には、ドップラー効果による位相変化(および、当該位相変化に起因する周波数変化)を考慮する必要がある。以下では、動き検出部202が人(物体の一例)の動きを検出する場合を例に挙げて、動き検出部202における処理の一例を説明する。
【0158】
例えば人(物体の一例)の呼吸による動きを検出する場合、当該動きは0.3[Hz]程度の往復運動であるので、pm,jの掃引ごとの値の集合である時系列Pm,j=(・・・,pm,j−1,pm,j)の低周波成分を抽出することによって、動き検出部202は、呼吸の有無や、呼吸のペースを検出することができる。ここで、動き検出部202は、例えば、離散フーリエ変換を行って、0.3[Hz]近傍の周波数成分のパワーが十分に高い場合(例えば、閾値処理により判定される。)に、呼吸があると判定してもよいし、また、0.3[Hz]を中心周波数とするバンドパスフィルタを用い、バンドパスフィルタの出力の振幅が高い場合(例えば、閾値処理により判定される。)に、呼吸があると判定してもよい。
【0159】
また、人(物体の一例)における安静時の体の揺らぎは、場所に係る変化がない動きであるため、検出部102からみると、接近と離反とを微細に繰り返す、複数の部位の動きの混合として観測される。上記のような動きによる、ビート信号における周波数成分は、速度を微分した加速度に変化を生じさせる。そこで、動き検出部202は、変数pm,jを1階微分することによって、例えば下記の数式24で表される、加速度と線形な関係を有するパラメータqm,jを得る。
【0160】
【数24】

・・・(数式24)
【0161】
動き検出部202は、パラメータqm,jの掃引ごとの値の集合である時系列Qm,j=(・・・,qm,j−2,qm,j−1,qm,j)の分散値σqm,jを掃引ごとに算出する。そして、動き検出部202は、分散値σqm,jの大きさが所定の閾値以上の場合(または、分散値σqm,jの大きさが所定の閾値より大きい場合)に、動きがあると判定する。よって、動き検出部202は、例えば人(物体の一例)などにおける、微細な揺らぎを検出することができる。
【0162】
また、人(物体の一例)の心拍の鼓動は、ジャークにより特徴が得られやすい。ジャークは、速度の2階微分であるので、動き検出部202は、変数pm,jを2階微分することによって、例えば下記の数式25で表される、ジャークと線形な関係を有するパラメータrm,jを得る。
【0163】
【数25】

・・・(数式25)
【0164】
動き検出部202は、パラメータrm,jの掃引ごとの値の集合である時系列Rm,j=(・・・,rm,j−2,rm,j−1,rm,j)の分散値σrm,jを掃引ごとに算出する。そして、動き検出部202は、ジャークの強度を閾値処理などによって判定し、さらに自己相関などによって1[Hz]程度の周期性を判定することによって、人(物体の一例)の心拍を検出することができる。
【0165】
動き検出部202は、例えば上記のような処理を行うことによって、ビート信号の位相シフト量(または、ビート信号の位相シフト量およびビート信号における周波数成分の振幅)に基づいて、距離L[m]近辺に存在する物体の動きを検出する。また、動き検出部106は、例えば、m=0,…,mmaxの範囲の各mについて処理を行うことによって、各mに対応する距離ごとに、物体の動きを検出することができる。
【0166】
また、動き検出部202は、位相シフト量の時間的変化成分に基づいて、空間上における動きの変化の特徴を示す特徴値を算出し、算出された特徴値に基づいて、例えば、人(物体の一例)などにおける微細な揺らぎや、人(物体の一例)の心拍を検出することができる。ここで、上記空間上における動きの変化の特徴を示す特徴値は、少なくとも、速度、加速度、ジャーク成分のいずれかを示す。つまり、動き検出部202は、例えば、速度、加速度、ジャーク成分のいずれか1つを上記空間上における動きの変化の特徴を示す特徴値として算出してもよいし、速度、加速度、ジャーク成分のうちの複数の値を、上記空間上における動きの変化の特徴を示す特徴値として算出してもよい。
【0167】
また、動き検出部202は、第1の実施形態に係る動き検出部106と同様に、動き検出部106は、動きの検出結果を示すデータを、記憶部(図示せず)などの記録媒体に記録してもよいし、動きの検出結果をユーザに提示してもよい。また、動き検出部202は、第1の実施形態に係る動き検出部106と同様に、動きの検出結果を示すデータを、通信部(図示せず)を介して外部装置に送信することも可能である。
【0168】
本発明の第2の実施形態に係る検出装置200は、例えば、検出部102と、周波数変換部104と、動き検出部202とを備える。ここで、検出装置200は、図1に示す第1の実施形態に係る検出装置100と基本的に同様の構成を有し、本発明の実施形態に係る検出方法に係る、(1)の処理(検出処理)〜(3)の処理(動き検出処理)を行う。よって、検出装置200は、図1に示す第1の実施形態に係る検出装置100と同様に、物体の動きの検出精度の向上を図ることができる。
【0169】
また、検出装置200は、周波数変換部104において周波数変換処理を行うことによって、第1の実施形態に係る検出装置100と同様に、検出装置200からの距離別に、物体の動きを検出することができる。
【0170】
また、検出装置200は、第1の実施形態に係る検出装置100と同様に、物体の動きの検出に係る処理を、時間方向や、周波数方向(すなわち、距離方向)に間引くことによって、物体の動きの検出に係る処理量を低減させることができる。
【0171】
また、検出装置200は、位相シフト量の時間的変化成分に基づいて、空間上における動きの変化の特徴を示す特徴値を算出し、算出された特徴値に基づいて、例えば、人(物体の一例)などにおける微細な揺らぎや、人(物体の一例)の心拍などの、物体の微細な動きを検出することができる。
【0172】
[第2の実施形態に係る検出装置の変形例]
なお、本発明の第2の実施形態に係る検出装置の構成は、図4に示す構成に限られない。例えば、本発明の第2の実施形態に係る検出装置は、上述した本発明の第1の実施形態に係る検出装置の変形例に係る構成と同様の構成をとることができる。
【0173】
以上のように、本発明の実施形態に係る検出装置は、本発明の実施形態に係る検出方法に係る処理として、例えば、上記(1)の処理(検出処理)〜上記(3)の処理(動き検出処理)や、上記(2)の処理(周波数変換処理)および上記(3)の処理(動き検出処理)、上記(1)の処理(検出処理)および上記(3)の処理(動き検出処理)、あるいは、上記(3)の処理(動き検出処理)を行う。ここで、本発明の実施形態に係る検出装置は、上記(1)の処理(検出処理)により、または、外部装置から、ビート信号を取得し、上記(3)の処理において、ビート信号の位相シフト量の時間的変化を、空間上における物体の動き成分と捉えて物体の動きを検出する。ここで、ビート信号の位相シフト量の時間的変化を空間上における物体の動き成分と捉えるときには、検出対象の物体が微細に動いた場合であっても、信号のS/N比が悪くなる可能性を、従来の技術が用いられる場合よりもより低減することが可能である。
【0174】
したがって、本発明の実施形態に係る検出装置は、物体の動きの検出精度の向上を図ることができる。
【0175】
また、本発明の実施形態に係る検出装置の適用例としては、例えば下記のような例が挙げられる。なお、本発明の実施形態に係る検出装置の適用例が、下記に示す例に限られないことは、言うまでもない。
・本発明の実施形態に係る検出装置は、椅子やベッドに備えられ、人が就寝、着席した際の心拍を測定(観測)する。
・本発明の実施形態に係る検出装置は、オフィスデスクに備えられ、デスクワーク中の人の心拍変動を測定(観測)する。
・本発明の実施形態に係る検出装置は、病院に備えられ、診察待ちの患者の心拍変動を測定(観測)する。よって、本発明の実施形態に係る検出装置に基づいて、優先的に診察すべき患者を特定することが可能となる。
【0176】
以上、本発明の実施形態として検出装置を挙げて説明したが、本発明の実施形態は、かかる形態に限られない。本発明の実施形態は、例えば、PC(Personal Computer)やサーバなどのコンピュータや、携帯電話やスマートフォンなどの通信装置、映像/音楽再生装置(または映像/音楽記録再生装置)、ゲーム機、車両など、様々な機器に適用することができる。
【0177】
(本発明の実施形態に係るプログラム)
コンピュータを、本発明の実施形態に係る検出装置として機能させるためのプログラム(例えば、上記(3)の処理(動き検出処理)、または、上記(2)の処理(周波数変換処理)および上記(3)の処理(動き検出処理)など、本発明の実施形態に係る検出方法に係る処理を実行することが可能なプログラム)によって、物体の動きの検出精度の向上を図ることができる。
【0178】
ここで、コンピュータは、例えば、MPUなどに相当する制御部と、ハードディスクなどに相当する記憶部と、マウスなどに相当する入力部と、表示部とを備える。ハードディスクに記憶されたプログラムはMPUにより読み出され、MPUは、プログラムに記載された命令を実行する。読み出されたプログラムが実行されることによって、コンピュータは、本発明の実施形態に係る検出方法に係る処理を実行することができる。
【0179】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0180】
例えば、上記では、コンピュータを、本発明の実施形態に係る検出装置として機能させるためのプログラム(コンピュータプログラム)が提供されることを示したが、本発明の実施形態は、さらに、上記プログラムを記憶させた記録媒体も併せて提供することができる。
【0181】
上述した構成は、本発明の実施形態の一例を示すものであり、当然に、本発明の技術的範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0182】
100、200 検出装置
102 検出部
104 周波数変換部
106、202 動き検出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の掃引区間において周波数が変化する送信信号と、前記送信信号の送信に応じて受信される受信信号との周波数差を周波数として有するビート信号に基づいて、前記掃引区間ごとに前記ビート信号の位相シフト量を算出し、算出された前記位相シフト量に基づいて、物体の動きを検出する動き検出部を備えることを特徴とする、検出装置。
【請求項2】
前記送信信号を送信し、前記送信信号と前記受信信号とに基づいて、前記ビート信号を出力する検出部をさらに備え、
前記動き検出部は、前記検出部から出力される前記ビート信号の位相シフト量を算出することを特徴とする、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記掃引区間ごとに前記ビート信号を周波数変換する周波数変換部をさらに備え、
前記動き検出部は、周波数変換が行われたビート信号における周波数ごとに、前記ビート信号の位相シフト量を算出することを特徴とする、請求項1、または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記動き検出部は、周波数ごとに算出される位相シフト量のばらつきに基づいて、物体の動きを検出することを特徴とする、請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記動き検出部は、前記位相シフト量の時系列データを周波数ごとに生成し、
周波数ごとの前記時系列データに基づき算出される、周波数ごとの前記ビート信号の位相シフト量の時間的変化成分に基づいて、物体の動きを検出することを特徴とする、請求項3に記載の検出装置。
【請求項6】
前記動き検出部は、
前記位相シフト量の時系列データを生成し、
前記時系列データに基づき算出される、前記ビート信号の位相シフト量の時間的変化成分に基づいて、物体の動きを検出することを特徴とする、請求項1、または2に記載の検出装置。
【請求項7】
前記動き検出部は、前記位相シフト量の時間的変化成分に基づいて、空間上における動きの変化の特徴を示す特徴値を算出することを特徴とする、請求項5、または6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記特徴値は、少なくとも、速度、加速度、ジャーク成分のいずれかを示すことを特徴とする、請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記動き検出部は、前記位相シフト量のばらつきに基づいて、物体の動きを検出することを特徴とする、請求項1、または2に記載の検出装置。
【請求項10】
前記動き検出部は、さらに前記ビート信号における各周波数成分の振幅に基づいて、物体の動きを検出することを特徴とする、請求項4、または9に記載の検出装置。
【請求項11】
一定の掃引区間において周波数が変化する送信信号と、前記送信信号の送信に応じて受信される受信信号との周波数差を周波数として有するビート信号に基づいて、前記掃引区間ごとに前記ビート信号の位相シフト量を算出し、算出された前記位相シフト量に基づいて、物体の動きを検出するステップを有することを特徴とする、検出方法。
【請求項12】
前記送信信号を送信し、前記送信信号と前記受信信号とに基づいて、前記ビート信号を出力するステップをさらに有し、
前記物体の動きを検出するステップでは、前記ビート信号を出力するステップにおいて出力される前記ビート信号の位相シフト量が算出されることを特徴とする、請求項11に記載の検出方法。
【請求項13】
前記掃引区間ごとに前記ビート信号を周波数変換するステップをさらに有し、
前記物体の動きを検出するステップでは、周波数変換が行われたビート信号における周波数ごとに、前記ビート信号の位相シフト量が算出されることを特徴とする、請求項11に記載の検出方法。
【請求項14】
前記送信信号を送信し、前記送信信号と前記受信信号とに基づいて、前記ビート信号を出力するステップをさらに有し、
前記周波数変換するステップでは、前記ビート信号を出力するステップにおいて出力される前記ビート信号が周波数変換される、請求項13に記載の検出方法。
【請求項15】
一定の掃引区間において周波数が変化する送信信号と、前記送信信号の送信に応じて受信される受信信号との周波数差を周波数として有するビート信号に基づいて、前記掃引区間ごとに前記ビート信号の位相シフト量を算出し、算出された前記位相シフト量に基づいて、物体の動きを検出する手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−72865(P2013−72865A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214691(P2011−214691)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】