検出装置、検出方法および検出プログラム
【課題】線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端付近における状況を把握できるような検出装置を提供する。
【解決手段】吐出針Nの先端における液体の吐出状況を検出する検出装置100において、空胴共振器11にマイクロ波周波数の電磁波の定在波をTM01モードで励起し、このTM01モードの回転磁界の中心に沿って配置された吐出針Nに電磁誘導によってマイクロ波周波数の交流電流Iを流す励振部10と、交流電流Iが流れることによって吐出針Nから放射される電磁波を受信する受信部20と、受信部20の受信した電磁波に基づいて吐出針Nの先端における吐出の有無や吐出量を検出する検出部30を備える。
【解決手段】吐出針Nの先端における液体の吐出状況を検出する検出装置100において、空胴共振器11にマイクロ波周波数の電磁波の定在波をTM01モードで励起し、このTM01モードの回転磁界の中心に沿って配置された吐出針Nに電磁誘導によってマイクロ波周波数の交流電流Iを流す励振部10と、交流電流Iが流れることによって吐出針Nから放射される電磁波を受信する受信部20と、受信部20の受信した電磁波に基づいて吐出針Nの先端における吐出の有無や吐出量を検出する検出部30を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、検出方法および検出プログラムに関し、特に、線状の導体の一端における状況を検出する検出装置、検出方法および検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液や木工用液状接着剤等の液体を吐出針から吐出する装置においては、液体の流路に流量計を設けたり吐出針の周辺に吐出の有無や吐出量を検出する検出装置を設けたりすることにより、これら流量計の計測結果や検出装置の検出結果に基づいて液体の吐出量をコントロールしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、流量計を利用して吐出量を制御する場合は、必要な量の液体が注入されているか否かを直接的に把握しているわけではないので、例えば吐出針先端から入り込むエアなどによって吐出量にバラツキが生じる可能性がある。そこで、それほど高い精密性が要求されない場合には流路に設けた流量計で間接的に吐出状況を監視すればよいが、吐出量を精密に制御する必要がある場合には吐出口のそばに前記検出装置を設けて直接的に吐出状況を監視しなければならなかった。
【0004】
従って、精密に吐出量を制御する場合は、検出装置を配置するための観測空間を吐出針の先端付近に確保しなければならないが、観測空間を確保できない場合もある。例えば、木工用液状接着剤を注入すべきダボや、自動販売機の飲料を貯蔵するタンクなどがこれに該当する。このような場合には、作業者が経験に基づいて注液装置を制御したり、注入した後で注入量の検査工程を設けるなどの対応が必要になっていた。このような事情から、吐出針先端に観測空間を確保できない場合は、注液作業を完全に自動化することができなかった。
【0005】
なお、以上の説明においては管状の吐出針を例にとって説明したが、吐出針周辺の状況を把握できるのであれば、管の有無に関わらずその先端周辺の状況を把握できるはずである。例えば、線状導体の先端に接触する物体を検出する場合や、先端に接近してくる物体、先端から離間して行く物体などの検出にも適用出来る可能性が考えられる。
【0006】
本発明は前記課題に鑑みてなされたもので、小さくは、以上説明したような注液装置の吐出針先端の状況を、その周辺に観測空間がない場合であっても把握できるような検出装置の提供を目的とするが、大きくは、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端付近における状況を把握できるような検出装置、検出方法および検出プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の検出装置は、線状の導体の一端における状況を検出する検出装置であって、空胴共振器を用いて前記導体に交流電流を流す励振部と、前記交流電流が流れることによって前記導体から放射される電磁波を受信する受信部と、前記受信部の受信した電磁波に基づいて前記導体の前記一端における状況を検出する検出部と、を備える構成としてある。ここで言う状況とは、上記一端に付着する物体の有無であったり、上記一端に近接配置されている物体の有無であったり、上記一端に対して接近もしくは離間する物体の有無であったりする。より具体的には、導電性物質が先端に付着した、もしくは付着していた導電性物質が先端から離脱した状況や、電磁波を反射しうる界面が上記先端に対して近接しつつある、もしくは離間しつつある状況が例示される。
【0008】
前記構成において、前記交流電流は前記導体を進行して前記一端まで流れてそこで反射する。また、前記導体に交流電流が流れることにより、該導体からは電磁波が放射される。この放射された電磁波が前記導体に受信されると前記導体に交流電流が発生するが、特に前記導体の長さ方向に一致する側から入射された電磁波によって誘起する交流電流は、導体の長さ方向に進行して導体の全体に流れることになる。
【0009】
このとき、前記励振部が前記空胴共振器を用いて交流電流を誘起する部位よりも他端の側のいずれかの部位において、前記導体を接地しておくと、他端側で交流電流が反射しなくなるので、前記一端側で反射された交流電流や入射された電磁波によって誘起される交流電流などの成分を分離しやすくなる。
【0010】
すなわち前記検出部は、前記受信部の受信した電磁波において、前記一端において反射されてきた交流電流に起因して放射された成分や前記一端において受信した電磁波に起因して発生した交流電流に起因して放射された成分によって変動する量を検出する。そしてこの検出した変動量に基づいて前記一端における状況を検出する。すなわち上記検出部は、上記導体の先端との間で電磁気的な相互作用を発生する物体が、上記導体の先端付近に存在するか否かを判断する。
【0011】
ところで、上記空胴共振器によって上記導体に効率よく交流電流を流すための本発明の選択的な一側面として、前記励振部は、前記空胴共振器に所定周波数のTM01モードの定在波を励起し、上記導体は、上記TM01モードの回転磁界の中心に沿って配置されてもよい。
TM01モードでは、回転磁界の中心に電界が集中的に発生し、回転磁界の中心における電界ベクトルは一方向に定まる。すなわち上記回転磁界の中心に沿って前記線状の導体を配置すれば、導体内を通過する電界ベクトルの総和が最大化されるので、空胴共振器の定在波から導体に流れる交流電流への変換効率が最大化される。
【0012】
また交流電流に対する前記一端の状況の影響を高めるための本発明の選択的な一側面として、上記励振部は、上記空胴共振器にマイクロ波周波数帯の定在波を励起することにより、上記導体にマイクロ波周波数の交流電流を流すようにしてもよい。
マイクロ波周波数の交流電流は、導体において表皮電流になる。交流電流が表皮電流化すると、電流の大部分が導体の外縁から表皮厚さの範囲を流れるので、外部と交流電流の相互作用が最大化される。すなわち、前記一端の状況の影響が、交流電流において、より顕著化する。
【0013】
また前記一端の状況の検出精度を向上するための本発明の選択的な一側面として、上記導体に流れる交流電流は定在波になっており、上記導体は、その先端が上記定在波の腹に略一致する長さとしてもよい。
前記定在波の腹の位置と前記導体の先端とが略一致するように吐出針Nの長さを調整すると、前記導体の先端に何らかの物体が付着していない状態での反射波R1の強度が最大になる。そして、前記導体の先端に何らかの物体が付着すると、励振波Gの反射位置がずれたり反射強度が変化したりするので前記定在波の強度が変動する。
【0014】
前記線状の導体が管状であってその内部を液体が通過する場合に、この線状の導体の先端から前記液体が吐出する状況を検出するための、本発明の選択的な一態様として、前記導体は管になっており、前記検出部は、前記管を通って前記一端から液体の吐出が開始されたタイミングと液体の吐出が終了したタイミングを、前記受信部の受信した電磁波に基づいて検出するように構成してもよい。
該構成によれば、前記管を通って液体が前記導体の先端から吐出されるとその先端に液体が付着する。すると、前記受信部の受信する電磁波の強度が変化するので、この変化に基づいて前記液体の吐出状況を検出することが出来る。また、前記導体の先端に付着した液体が前記先端から離脱するときも前記受信部の受信する電磁波の強度が変化するので、この変化に基づいて前記液体の離脱状況を検出することができる。
【0015】
さらに、前記線状の導体が管状であってその内部を液体が通過する場合には、前記検出部は、前記管を通って前記一端から吐出された液体の量を、前記受信部の受信した電磁波に基づいて検出することもできる。すなわち、前記液体が離脱する際には、前記交流電流に基づいて前記先端から放射される電磁波が前記液体表面で反射して前記先端へと戻ってくる。この電磁波は前記先端で再び受信されて前記導体に交流電流(受信波)を発生させる。また、前記先端では、前記励振部によって誘起された交流電流が気相と前記先端との境界において反射された交流電流(反射波)も流れている。前記受信波は、前記液体の飛翔速度の分だけドップラーシフトが生じており、前記反射波よりも周波数が僅かに低くなっている。よって、受信波と反射波との重ねあわせによってドップラーうなりが生じる。このドップラーうなりの周波数を測定すれば、前記液体の飛翔速度が得られる。この飛翔速度は液体の前記先端からの離脱速度であり、前記液体の吐出速度と見做すことができる。よってこの吐出速度と、管の断面積と、吐出が継続した時間とを掛け合わせると、吐出量が得られる。
【0016】
なお、前記ドップラーうなりを計測するためには、前記受信部が受信する電磁波に、ドップラーうなりの周波数を特定可能な所定時間だけ前記ドップラーうなりの振動が継続しなければならない。すなわち、前記液滴が前記所定時間のあいだ飛翔し続けなければドップラーうなりの周波数を特定できないのである。むろん、うなりの1周期分の時間だけ前記液滴が飛翔できるだけの空間が前記先端の先に確保されていればよいが、これよりも短い空間しか確保できない場合には、半周期分もしくは1/4周期分のうなりから前記うなりの周波数を推定する。むろん、前記検出部において取得したデータに正弦波マッピングなどを行ってうなり周波数を推定してもよい。
【0017】
また前記導体が管状でなくても、前記導体の先端に対して物体が接近してくると前記電磁波にドップラーうなりが生じるし、前記導体の先端から物体が離間して行く場合も前記電磁波にドップラーうなりが生じる。そこで、前記検出部は、前記受信部の受信した電磁波に基づいて前記一端と対象物との変位量を検出してもよい。すなわち、対象物と検出装置との間の距離を計測できるようになる。
また、ドップラーうなりのみならず、対象物と前記先端との距離に応じて前記交流電流は変動するので、この変動について前記対象物と前記先端の距離の関数として較正すれば、前記対象物と検出装置との間の距離を計測できるし、対象物の変位量や変位履歴を取得することもできる。
【0018】
上述した検出装置は、他の機器に組み込まれた状態で実施されたり他の方法とともに実施されたりする等の各種の態様を含む。また、本発明は前記検出装置を備える検出システム、上述した装置の構成に対応した工程を有する検出方法、上述した装置の構成に対応した機能をコンピューターに実現させる検出プログラム、該プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体、等としても実現可能である。これら検出システム、検出方法、検出プログラム、該プログラムを記録した媒体、の発明も、上述した作用、効果を奏する。むろん、請求項2〜9に記載した構成も、前記システムや前記方法や前記プログラムや前記記録媒体に適用可能である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端付近における状況を把握できるような検出装置を提供可能となる。
また請求項2にかかる発明によれば、検出感度を向上できる。
また請求項3にかかる発明によれば、交流電流への変換効率を向上できるので、検出感度が向上する。
また請求項4にかかる発明によれば、検出感度が向上する。
また請求項5にかかる発明によれば、検出感度が向上する。
また請求項6にかかる発明によれば、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端から吐出される液体の吐出状況を知ることができるようになる。
また請求項7,8にかかる発明によれば、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端から吐出される液体の吐出量を知ることができるようになる。
また請求項9にかかる発明によれば、電磁波、特にマイクロ波を利用した微小変位計を提供可能となり、これを利用したマイクロ波近接スイッチを提供可能となる。
また請求項10にかかる発明によれば、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端付近における状況を把握できるような検出方法を提供可能となる。
また請求項11にかかる発明によれば、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端付近における状況を把握できるような検出装置を制御するための制御プログラム提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態にかかる構成を示すブロック図である。
【図2】電線の表皮電流を説明する図である。
【図3】空胴共振器における電磁界分布を示す図である。
【図4】空胴共振器の構造を示す斜視図である。
【図5】TM01モードを励起するための一構成例である。
【図6】受信部と検出部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図7】吐出針の先端における電流と電磁波の関係とまとめた図である。
【図8】励振波Gと反射波R1により発生する定在波と、吐出針Nとの位置関係を示した図である。
【図9】吐出針から放射される電磁波の強度分布を示した図である。
【図10】図8に示した各状態における電磁波の周波数分布を測定したグラフである。
【図11】液滴が吐出と離脱により観測された電磁波の強度変化のグラフである。
【図12】検出処理のフローチャートである。
【図13】検出装置の構成例を示すブロック図である。
【図14】検出装置の構成例を示すブロック図である。
【図15】変形例1にかかる検出装置の構成を示すブロック図である。
【図16】変形例2にかかる検出装置の構成を示すブロック図である。
【図17】R10mmで曲げたステンレス鋼の細線における電界の分布図である。
【図18】変形例3にかかる吐出針先端に発生する電流の一例を示した図である。
【図19】変形例4にかかる受信部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)本実施形態の構成:
(2)導体先端に付着した液滴の検出:
(3)ドップラーうなりを利用した液滴吐出量の算出:
(4)検出処理:
(5)装置の小型化:
(6)変形例1:
(7)変形例2:
(8)変形例3:
(9)変形例4:
(10)まとめ:
【0022】
(1)本実施形態の構成:
<概略構成>
図1は本発明の一実施形態にかかる構成を示すブロック図である。同図に示すように、検出装置100は、線状の導体Cに所定周波数の交流電流Iを流して表皮電流を発生させる励振部10と、交流電流Iによって導体Cから放射される所定周波数の電磁波を受信する受信部20と、受信部20で受信した電磁波を解析して導体Cの先端の状況を検出するする検出部30を備えている。なお、導体Cは根元側で励振部10に対して接触しているが、根元側を除くと導体Cは励振部10と接触していない。すなわち、導体Cは根元側だけが接地されており、根元側では電流が反射しないようになっている。
【0023】
<交流電流の成分>
交流電流Iには、後に示す図7を用いて具体的に説明するように、励振部10によって直接誘起された成分(以下、「励振波G」と記載する。)のみならず、この励振波Gが導体Cの先端で反射された成分(以下、「反射波R1」と記載する。)や、いったん先端から放射された電磁波が何らかの物体表面で反射されて先端に再び受信された成分(以下、「受信波R2」と記載する。)や、これら成分の混合によって発生するうなり成分などを含む。また、特に、反射波R1と受信波R2によって生ずるうなりのことを、以下の説明においては「うなりDB」と記載することにする。
以下、各部10〜30について、より詳細に説明して行く。
【0024】
<励振部>
励振部10は、導体Cに所定周波数の交流電流である励振波Gを発生させる。本実施形態においては、所定周波数としてマイクロ波帯の周波数を例にとって説明するが、交流電流が表皮電流化する周波数であれば他の周波数帯を採用してもよい。
図2に示すように、交流電流が表皮電流化することにより導体表面からδの深さまでに電流が集中する。ただし、本実施形態のように導体Cが管状の吐出針Nであって内部に液体を通過させるタイプである場合には表皮電流化する周波数帯を採用した方がよいが、そうでないのであれば必ずしも表皮電流になる周波数帯の電磁波でなくても構わない。
【0025】
<導体先端の状態と放射電磁波の関係>
検出部30が検出する導体Cの先端の状態としては、例えば、液体の付着の有無や付着した液体の量、導体先端に接近する物体の有無や導体先端から離間する物体の有無、等がある。導体Cにはこれら状態に応じた反射波R1や受信波R2が発生する。このように導体Cを流れる交流電流が導体Cの先端の状態に影響されて変化すると、導体Cから放射される電磁波も変化する。すなわち、導体Cから放射される電磁波を解析すれば導体Cの先端付近の状況を把握することができるのである。
【0026】
<空胴共振器によって非接触で電流を励振>
励振部10によって導体Cに交流電流Iを流す際は非接触で行うことが望ましい。なぜなら、本実施形態では根元側は接地するものの先端側は電気的に開放された状態の導体Cに交流電流を流したいからである。また、非接触であればコネクタなどが不要であり、検査対象への検出装置100の取り付け取り外しが容易になるし、取り付けや取り外しの際に導体Cに傷などが付きにくいという利点もある。非接触で導体Cに交流電流を流すために、励振部10は空胴共振器11を備えている。この空胴共振器11は、内部に特定のマイクロ波周波数の定在波を励起することができる。
【0027】
導体Cは、空胴共振器11にその一部を通過させているので空胴共振器11に励起される定在波を受信する。このとき、導体Cを通過する電界ベクトルの総和が導体Cの長さ方向成分を有していれば、導体Cには電磁誘導によって励振波Gに対応する交流電流が発生する。すなわち、空胴共振器11に励起された定在波が導体Cに流れる交流電流に変換される。なお、本実施形態においては、定在波を交流電流へ変化する変換効率を高めるために、空胴共振器11に励起する定在波をTM01モードとしてある。
【0028】
<TMモード>
図3は、TM01モードの定在波を発生させた空胴共振器11における電磁界分布を示す図である。同図において電界ベクトルは実線で示してあり、磁界ベクトルは破線で示してある。
図3に示すように、空胴共振器11には、TM01モードの定在波が励起されることにより円筒の軸を中心とする回転磁界が発生しており、円筒の軸方向のベクトルを持った電界が発生している。導体Cは、TM01モードの回転磁界の中心である円筒の軸に沿って配置される。よって、本実施形態では、元来、放射損が少なくエネルギー効率のよい空胴共振器11を利用しつつ、さらにマイクロ波から交流電流への変換効率を向上してある。
【0029】
<空胴共振器の構成>
ここで、空胴共振器11の構造の一例について図4を参照して説明する。なお、図4には円筒空胴共振器を例にとって示してあるが、むろん方形空洞共振器や球形空胴共振器であっても構わない。
図4に示した空胴共振器11は、金属製の円筒状側壁11aと、その軸線方向両端を塞ぐ端部側壁11b,11cとにより構成されている。端部側壁11bは円筒状側壁11aの一端を電磁的に密閉している。また、端部側壁11bには導体Cの一端が接地されている。端部側壁11cには円筒の軸線上である中央部に開口11c1が形成されており、開口11c1を除いて円筒状側壁11aの他端を電磁的に密閉している。
なお、端部側壁11bと端部側壁11cの間隔Lは、空胴共振器11内に発生させたいマイクロ波の定在波の波長をλとすると、L=n×λ/2(nは自然数)を満たすように決定される。
【0030】
<励振法>
図4のように構成された空胴共振器11には、所定の伝送線路を通してマイクロ波ユニット12からマイクロ波が導入される。所定の伝送線路としては、同軸線路、ストリップ線路、導波管、誘電体導波路などを利用することができる。また、所定の伝送線路を空胴共振器11に結合するには、ループ結合、プローブ結合、ホール結合、スリット結合などを利用できる。本実施形態においては、図4に示すように空胴共振器11にループアンテナを挿入して空胴共振器11に回転磁界を励起することによりマイクロ波を空胴共振器に励起している。
その他、例えば、図5のように方形導波管と円筒共振空洞を接合し、方形導波管に励起したTE01モードを円筒共振空洞に導入しても、円筒共振空洞にTM01モードの定在波を励起することができる。
【0031】
<利用する周波数帯>
なお、本実施形態の空胴共振器11に励起するマイクロ波は、特にISMバンド (Industry-Science-Medical Band)のマイクロ波を利用することが好ましい。ISMバンドであれば、既存の通信に与える影響が小さく、電磁妨害(Electro Magnetic Interference)等に対する規制が比較的緩やかだからである。より具体的には、マイクロ波帯の中でITU(International Telecommunication Union)によって定められている、2.4GHz帯(2400-2500 MHz)、5.8GHz帯(5725-5875 MHz)、10.8GHz帯、24GHz帯(24-24.25 GHz) を利用することが好ましい。
【0032】
<導体Cから放射されるマイクロ波>
上述したように、導体CはTM01モードの回転磁界の中心を通っているので、長さ方向に進行する交流電流が誘起されている。すなわち、導体Cに誘起された励振波Gは導体Cの長さ方向に進行して、空胴共振器11の外部にある部位にも流れる。なお、導体Cの接地された側(以下、「根元側」と記載する。)に流れた励振波Gは、そのまま接地へと拡散される。
【0033】
一方、上述したように、導体Cの接地されない側(以下、「先端側」と記載する。)に流れた励振波Gは、先端の境界面で反射して反射波R1を生ずる。また導体Cの先端から放射された電磁波は、先端のさらに先にある物体の表面で反射された場合に先端へと戻ってくる成分があり、この反射された電磁波成分が先端から入射されると受信波R2を生じる。従って、導体Cから放射される電磁波は、励振波Gと反射波R1と受信波R2の重ね合わせの交流電流に基づいたものとなる。
【0034】
<受信部>
受信部20は導体Cを流れる交流電流によって放射される電磁波を受信する。なお、本実施形態においては、装置サイズを小さくするために空胴共振器11の内部に受信部20のアンテナ21を配置してあるが、受信部20やアンテナ21は空胴共振器11の外部に配置しても構わない。また本実施形態のアンテナ21は、空胴共振器11に定在波を励起しているアンテナを共用しているが、むろん別途用意したアンテナ21を空胴共振器11に配置しても構わない。
【0035】
図6は、本実施形態における受信部20と検出部30のハードウェア構成を示すブロック図である。同図に示すように、受信部20はアンテナ21とBPF(Band Pass Filter)22と、アンプ23と検波器24を備えている。アンテナ21で受信されたマイクロ波はBPF22に入力され、所望のマイクロ波周波数帯以外の不要な周波数成分やノイズ成分を除去されてからアンプ23に入力される。アンプ23は所定の増幅率でマイクロ波を増幅する。検波器24は増幅されたマイクロ波から所定周波数の電磁波を検波する。検波器24によって検波されたマイクロ波は検出部30に入力される。
【0036】
<検出部>
図6に示すように、検出部30はA/Dコンバーター31と制御部32を備えている。受信部20から入力されたマイクロ波信号はA/Dコンバーター31に入力されて、デジタル信号に変換される。デジタル化されたマイクロ波信号は制御部32に入力されて解析的に処理される。制御部32は、検出プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と、ROMから適宜検出プログラムを読み出して実行するCPU(Central Processing Unit)と、CPUのワークエリアとして利用されるRAM(Random Access Memory)とを備えている。制御部32にて検出プログラムが実行されると、後述の検出処理が実行される。
【0037】
(2)導体先端に付着した液滴の検出:
<液滴の付着検出>
以上説明した検出装置100を利用しておこなう検出の具体例として、ディスペンサーの吐出検出がある。ディスペンサーとは、いわゆる液体定量吐出装置であり、液体を精度良く定量供給するコントローラ及びその周辺機器の総称である。本検出装置100では、ディスペンサーから供給された液体を供給する際の先端に取り付けられる吐出針Nを本発明の導体Cとし、この吐出針Nから放射される電磁波の強度変化に基づいて吐出針Nの先端から液体が吐出されているか否かを検出する。
【0038】
<ディスペンサー構成>
図1に示したように、ディスペンサーの吐出針Nは空胴共振器11内の回転磁界の中心に沿って配置されており、空胴共振器11を左右に貫通している。吐出針Nの根元側は、空胴共振器11の端部側壁11bに接触されているので、接地された状態である。一方、先端側は空胴共振器11に接触することなく端部側壁11cの開口11c1から外部に突出されている。
【0039】
吐出針Nの根元側は、液体供給チューブなどを介してディスペンサーの本体に接続されており、ディスペンサー本体から液体が送り込まれる。送り込まれる液体の量はディスペンサーによってある程度の精度までは制御することが可能であり、例えば吐出針Nへ送り込む液体の送り込み速度をある程度まで制御できる。
吐出針Nには励振波Gと反射波R1と受信波R2の混合波としての交流電流が流れている。図7は、吐出針Nの先端における電流と電磁波の関係とまとめた図である。
【0040】
<吐出針Nに流れる電流>
図7に示すように、受信波R2は吐出針Nの先端から吐出されて先端から離間して行く液滴表面で反射された電磁波を受信することによって発生した電流を想定している。また反射波R1は、吐出針Nの先端から液体が吐出されつつ先端に液体が付着している状態では、吐出針Nの先端と液体との境界で反射した電流を指し、吐出針Nの先端に液体が付着していない状態では、吐出針Nの先端と気相との境界で反射した電流を指す。このようにして発生する反射波R1に吐出針Nの先端付近の状況がより顕著に反映されるためには、吐出針Nの先端が定在波の腹になることが好ましい。
【0041】
図8は、励振波Gと反射波R1により発生する定在波と、吐出針Nとの位置関係を示した図である。同図に示した定在波は、吐出針Nの先端に液体が付着していない状態での交流電流Iによって発生したものである。この状態で定在波の腹の位置と吐出針Nの先端とが略一致するように吐出針Nの長さを調整すると、吐出針Nの先端に液体が付着していない状態での反射波R1の強度が最大になる。一方、吐出針Nの先端に液滴が付着すると、励振波Gの反射位置がずれるので励振波Gと反射波R1の重ね合わせによる定在波の強度は減少する。すなわちこの減少した量を検出するにあたって図8の構成を採用すると、S/Nが向上する。
これらの交流電流により吐出針から放射される電磁波の強度分布を図9に示し、測定結果を図10に示した。
【0042】
<吐出針Nから放射される電磁波>
図9には、吐出針から放射される電磁波の強度分布について、吐出針Nの先端に水滴が付着した状態(上図)と付着していない状態(下図)とを示してある。同図の電界分布を見ると、吐出針Nの先端に水滴が付着すると吐出針Nの周囲の電界が強くなっていることが分かる。これは、吐出針Nの先端に水滴が付着すると反射波R1が強くなることを示している。金属と気相の境界における電流の反射率よりも金属と水等の液体との境界における電流の反射率の方が高いからである。
【0043】
図10は、図9に示した各状態における電磁波の周波数分布を測定したグラフである。同図には、ネットワークアナライザで電磁波を0〜30GHzまで掃引しつつ各周波数における電磁波強度を測定した結果を示してある。なお、図10の測定において使用した吐出針は、木工用液状接着剤の塗布などのラフな用途に利用される13号針(外形が2.4mm)であり、標準ランクでは最も大きい部類に属する。
図10のグラフにおいて、図9の各状態における電磁波の放射強度は、水滴が付着した状態の方が4dBも増加していることが見て取れる。すなわち、電磁波の強度に基づいて、吐出針Nの先端に水滴が付着しているかいないかを容易に識別できることが分かる。
【0044】
<吐出量検出>
さらに、検出装置100を使えば、吐出針Nから液体を吐出しているか否かを検知するのみならず吐出量を把握することも可能である。
上述したように、吐出が開始されたタイミングt1と吐出が終了したタイミングt2は電磁波の強度変化に基づいて検出できる。また、単位時間当たりの吐出量ΔDは、大まかにはディスペンサー側の液体送り出し速度から知ることができる。従って、吐出針Nの総吐出量は、ΔD×τ(τ=t2−t1)という演算で得られることになる。
【0045】
以上のように、従来であれば吐出針Nから液体が吐出されているか否かを判断するためには、吐出針Nの先端付近に光センサーなどの検出手段を配置する必要があったが、本実施形態の検出装置100を用いれば吐出針の先端(吐出口)の周囲に観測空間がなくても、吐出針Nから液体が吐出されているか否かを識別できるし、液体の吐出量を検出できる。よって、例えば深いダボの奥のような観測空間を確保できない部位であっても、木工用液状接着剤が実際に吐出されたか否かを知ることができるし、木工用液状接着剤がどのくらい吐出されたかも把握することが出来る。
【0046】
(3)ドップラーうなりを利用した液滴吐出量の算出:
なお、上述したディスペンサー側の液体送り出し速度が得られない場合は、ドップラーうなりに基づいて液体の離脱速度を計算することも可能である。なお、この計算においては 2つの仮定を行うことになる。1つは液滴が吐出される速度が一定であること、もう1つは離脱速度が吐出中の速度であることである。
【0047】
図8に示したように、液滴は、吐出針Nの先端から離脱すると速度Uで吐出針Nから遠ざかって行く。このとき吐出針Nの先端から放射された電磁波のうち離脱液滴の方向に放射された成分は、液滴表面に到達すると吐出針Nへ向けて反射される。液滴から反射された電磁波は吐出針の先端から再び受信されるので、この電磁波によって吐出針Nに受信波R2が発生する。ただし、この受信波R2には液滴の飛翔速度の分だけドップラーシフトが生じている。
【0048】
一方、液滴が離脱すると吐出針Nの先端からは液滴が無くなって空気との境界ができる。この境界で励振波Gが反射すると反射波R1が発生する。この反射波R1と受信波R2はともに吐出針Nの先端側から根元側へと伝播する交流電流であり、受信波R2と反射波R1の重ね合わせによってうなりDBが生じる。
図11は、吐出針Nにおいて実際に観測された電磁波の強度変化のグラフである。同図に示したのは、吐出針Nの先端側から根元側へと伝播する交流電流に基づく電磁波成分の強度変化である。同図に示すように、液滴が吐出され始めると受信強度が強くなり、液滴が離脱すると受信強度が元のレベルにいったん戻る。そして、受信波R2と反射波R1が受信されることによりうなりDBが発生していることがわかる。本実施形態では、このうなりDBを利用して液滴の離脱速度を求める。
【0049】
液滴の離脱速度Uは、下記(2)式を利用して算出できる。なお、下記(2)式は、うなりDBの周波数fbを表す下記(1)式の変形によって得られる。
【数1】
前記(1),(2)式において、fは空胴共振器11に励起されるマイクロ波周波数であり、cは光速である。うなりfbは、受信部20が受信した電磁波から求められる実測値である。
【0050】
離脱速度Uが求まれば、下記(3)式によって吐出量Vを算出することができる。
【数2】
なお、前記(3)式において、τは離脱液滴の吐出が開始されてから吐出針先端から離脱するまでの時間であり、dは吐出針の内径である。τは、上述したように反射波の強度変化に基づいて容易に求めることができる。
【0051】
ただし、吐出針Nの先端から液滴の着地点までの距離がうなりの1周期の間に飛翔する距離に満たない系では、うなりDBの全体が実測結果に現れない。従って、前記(2)式に必要なうなりDBの周波数fbが、受信部20の受信した電磁波に基づいても得られないことになる。
なお、うなりの一周期相当の飛翔距離δは、下記(4)式で算出される。
【数3】
前記(4)式において、λは周波数fのマイクロ波の波長である。前記(4)式に示されるように、走行距離δは液滴の飛翔速度に依存しない量であることが分かる。また、発振されたマイクロ波の半周期でうなり1周期が観測されることが分かる。
【0052】
前記(4)式を用いると、マイクロ波周波数を24GHzとした場合の飛翔距離δは6.25mmとなる。すなわち、うなりを1周期分観測するためには液滴が6.25mm以上飛翔できるだけの空間が必要であることがわかる。この距離を確保可能な測定系であれば以上の方法で液滴離脱速度を求めることができるが、6.25mmの距離を確保可能でない系も多い。
【0053】
そこで、吐出針Nの先端から液滴の着地点までの間にうなり周波数fbの1周期分に相当する飛翔距離を確保できない測定系では、うなり波形に正弦波マッピングして周波数を推定する方法や、ゼロクロススタートと90°での振幅の下端を検出してこれを1/4周期とみなす方法を採用することができる。ただし、後者の場合であっても、24GHzマイクロ波で1.56mmの飛翔距離が必要であるので、いずれにしても着地距離に所定距離以上確保して利用する必要がある。
【0054】
なお、前者の方法では、高速ADC(analog/digital converter)でうなり波形を取り込み、取り込んだ波形に対して正弦波マッピングを行うことになる。ただし、サンプリング周期が角度関数でないことから、かなり複雑な推定方程式となることが避けられない。またどこまでのサンプリングがうなりに寄与しているか判別しがたいという問題もあるので、どちらかと言えば後者の方法で行うことが好ましい。
【0055】
(4)検出処理:
以上説明した検出装置100において実行される検出処理について、図12を参照して説明する。図12は、制御部32が実行する検出処理のフローチャートである。なお、本検出処理は、制御部32のようにプログラム的に実行するのみならず、電気回路や電子回路で本検出処理と同等の演算処理を実行するように構成してもむろん構わない。
【0056】
また、検出装置100は、検出処理の結果を表示するためのディスプレイや、作業者が検出装置100に検出の開始を指示したり、検出処理の結果を表示させたり、結果の表示方法を設定したりするための操作入力部を備えてもよい。ただし、ディスプレイや操作入力部は必須ではなく、例えば検出装置100に外部コンピューターを接続し、外部コンピューターを介して検出装置100を制御したり、外部コンピューターが検出装置100の出力する解析結果を取得して表示する場合には、無くてもよい。
【0057】
操作入力部で所定の操作が行われることにより検出処理が開始されると、ステップS100(以下、「ステップ」の記載を省略する。)において、制御部32は、受信部20が出力する所定のマイクロ波周波数の電磁波強度のデータを取得する処理を開始する。この取得処理は、本検出処理が終了するまで継続される。
【0058】
S105において、制御部32は、取得した電磁波強度が所定の閾値を超えたか否かを判断する。所定の閾値を超えた場合は所定の閾値を超えた時間を吐出開始時間t1としてRAM等に記憶してS110に進み、所定の閾値を超えていない場合はS105の処理を繰り返す。所定の閾値は、実験的に決定されるものであり、例えば吐出針Nの先端に液体が付着している場合の電磁波強度と吐出針Nの先端に液体が付着していない場合の電磁波強度との間のいずれかの値が設定される。
【0059】
S110において、制御部32は、取得した電磁波強度がゼロクロスしたか否かを判断する。ゼロクロスした場合はゼロクロスした時間を吐出終了時間t2としてRAM等に記憶してS115に進み、ゼロクロスしていない場合はS110の処理を繰り返す。
【0060】
S115において、制御部32は、ゼロクロスして以降の電磁波強度を解析してうなりDBの周波数を取得する。うなりDBの周波数は、上述したいずれかの手法を用いて取得できる。例えば、うなりDBの1周期分の飛翔距離が確保できる測定系であれば、S110においてゼロクロスを検出した時間から、その次の次に検出されるゼロクロスの検出時間までをうなり1周期とし、うなりDBの周波数fbを算出する。
【0061】
S120において、制御部32は、S115で算出された周波数fbを用いて前記(2)式の計算を行うことにより離脱速度Uを算出し、この離脱速度Uを液体の単位時間当たりの吐出量と仮定して前記(3)式に基づく計算を行って液体の吐出量Vを算出する。
【0062】
S125において、制御部32は、S120で算出された吐出量をディスプレイに表示し、さらに必要に応じて吐出開始時間t1や吐出終了時間t2などの検出結果もディスプレイに表示する。作業者は、ディスプレイに表示された吐出量を見て、必要であればさらに吐出を行ったりする。むろん、予め目的の吐出量を操作入力部などを介して作業者が設定していれば、制御部32がS120において算出された吐出量を判断して、不足している場合は追加の吐出を行う。なお、追加の吐出を行う場合は、例えば1滴ずつ吐出するなど、間欠的に少量ずつ吐出することにより吐出量の微調整を行えばよい。S125が終了すると、検出処理を終了する。
【0063】
(5)装置の小型化
以上の装置を実用化するにあたり、小型化の要望が高いことが想定される。空胴共振器は吐出針を内部に貫通しなければならないので、ロボットで操作される可動部に取り付けられる可能性が高いからである。また、複数の装置で本検出装置を使いまわす際の、付け替えの作業性からも小型であることが好ましい。従って、特に吐出針を貫通する共振空洞部は小型・軽量であることが好ましく、空胴共振器に一体的に構成される部材は可能な限り少ない方がよい。空胴共振器11とこれと一体的に取扱われる部分を小型・軽量化する構成例を、図13,図14に示した。
【0064】
図13は検出装置の一構成例を示すブロック図である。同図において、検出装置200の要部は、空胴共振器211と、ループアンテナで空胴共振器211にマイクロ波を導入してTM01モードを励起するとともに該ループアンテナでマイクロ波を受信するマイクロ波ユニット212と、マイクロ波ユニット212で受信したマイクロ波を伝送する高周波ケーブル213と、高周波ケーブル213を介して入力されたマイクロ波から所望の周波数帯のうなりDBを検出するドップラーユニット214とを備えている。
【0065】
前記構成において、空胴共振器211とマイクロ波ユニット212は一体化されており、ドップラーユニット214は空胴共振器211とは別体に構成される。従って、ロボットの稼動部に配置すべき部材は空胴共振器211とマイクロ波ユニット212だけで済み、小型・軽量化の要望に応えられる。ただし、高周波ケーブル213は数万円と非常に高価であるので、コスト的には高周波ケーブルを使わずに済む方がよい。そこで、図14の構成では、高周波ケーブルを使わずに検出装置を作成できるようにしてある。
【0066】
図14において、検出装置300は、空胴共振器311と、ループアンテナで空胴共振器311にマイクロ波を導入してTM01モードを励起するマイクロ波ユニット312と、アンテナで空胴共振器311からマイクロ波を受信する受信して所望の周波数帯のうなりDBを検出するドップラーユニット314を備えている。同図において、マイクロ波ユニット312とドップラーユニット314は、空胴共振器311の共振空洞に直接取り付けてある。なお、電源や各種処理を行う部品は別置きとする。
【0067】
ここで、ドップラーユニット314を空胴共振器311に一体化できるか否かを検討してみる。本実施形態において使用する空胴共振器のサイズは、5.8mm×9.5mmである。そして、市販のドップラーユニットは、22mm×45mm×9mmのものや15mm×19mmのものがある。従って、これらを空胴共振器311に一体化することは可能であるし、本検出装置専用に作成すればドップラーユニットはさらに小型化できるはずであり、十分実用的なレベルまで小型化できることがわかる。
【0068】
(6)変形例1:
以上説明した実施形態では、吐出針Nの先端付近の状況を把握するための検出装置について説明をおこなってきたが、課題を解決するための手段において記載したように、本技術は線状導体の先端周辺の状況を把握する用途にも適用可能である。
そこで、本変形例1においては、本技術を所謂タッチプローブとして利用する例について説明する。
【0069】
図15は本変形例の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、本変形例にかかる検出装置400は、空胴共振器411にTM01モードのマイクロ波定在波を励起することにより導体線Lにマイクロ波周波数の交流電流を流して表皮電流を発生させる励振部410と、前記交流電流によって導体線Lから放射されるマイクロ波周波数の電磁波を受信する受信部420と、受信部520で受信した電磁波を解析して前記導体の一端の状況を検出するする検出部430とを備えている。
【0070】
導体線Lはピアノ線などのような線状の導体であり、空胴共振器411に励起された回転磁界の中心に沿って配置されている。そして導体線Lは、上述した吐出針Nと同様に根元側が空胴共振器411に接地されており、先端側は空胴共振器411と接触することなく空胴共振器411の側壁に形成される開口から外部に導出されている。
なお、吐出針Nが導体線Lに置き換わることを除けば、本変形例1の励振部410、受信部420、検出部430には、前記実施形態の対応する構成を適宜採用可能である。
【0071】
以上のように構成された検出装置400において、導体線Lの先端には強い電界が全方位で形成される。導体線Lの先端に物体が近付くと電界が変化し、導体線Lを流れる交流電流Iが変動する。検出部430は、交流電流Iの変動を監視することにより、導体線Lの先端に接近したり接触したりする他の物体を高感度に検知できる。従って、実際に接触する前に他の物質の接近を検出して接近警報を行うことが可能であるつきのタッチプローブとなる。また、本変形例のタッチプローブは、機械的ひずみを伴わずに他の物質を検知できる点でも従来のタッチプローブに比べて有利である。
【0072】
さらに、本変形例のように構成すれば、対象物の微小な移動や振動を検出する微小変位計としても利用可能である。微小変位計として本発明を利用する場合は、上述した検出装置400の構成に加えて、受信強度を距離の関数として得られるように較正する。すなわち、上述した実施形態で説明した反射波R1と受信波R2を受信して、受信強度と対象物から導体線Lの先端までの距離とのあいだの非線型的な関係について較正する。この関係は、対象物毎に相関が異なる可能性があるので、対象物毎に作成する。また、受信強度のみならず上述した実施形態で計測したようなドップラーうなりを計測すれば、対象物と導体線Lの先端との間の相対的な接近速度や離間速度を得ることもできる。
【0073】
(7)変形例2:
上述した実施形態においては、吐出針が直線的なものを例にとって説明をおこなったが、吐出針が屈曲されていても本発明は実現可能である。すなわち吐出針を屈曲可能なもので構成すれば、内部で屈曲した孔の奥まで吐出針を挿入しつつ、吐出針の先端の吐出状況を孔の外部で把握できるので、観測域不要という本発明における特性が有効活用されることになる。本変形例2では、飲料水の自動販売機に飲料水を補給する装置に本発明の検出装置を利用する場合を例にとって説明する。図16に本変形例2にかかる検出装置500の要部を示した。
【0074】
図16に示すように、本変形例にかかる検出装置500は、空胴共振器411にTM01モードのマイクロ波定在波を励起することにより吐出針N’にマイクロ波周波数の交流電流を流して表皮電流を発生させる励振部510と、前記交流電流によって吐出針N’から放射されるマイクロ波周波数の電磁波を受信する受信部520と、受信部520で受信した電磁波を解析して前記導体の一端の状況を検出するする検出部530とを備えている。
【0075】
吐出針N’は屈曲可能な導体線であり、その中心部に孔が形成されて管になっている。そして吐出針N’は、上述した吐出針Nと同様に根元側が空胴共振器511に接地されており、先端側は空胴共振器11と接触することなく空胴共振器511の側壁に形成される開口から外部に導出されている。吐出針N’は、空胴共振器511内部では屈曲しないように固定されており、空胴共振器511に励起された回転磁界の中心に沿って配置されている。吐出針N’は、空胴共振器511から導出された先で屈曲可能になっている。
なお、吐出針Nが吐出針N’に置き換わることを除けば、本変形例2の励振部510、受信部520、検出部530には、前記実施形態の対応する構成を適宜採用可能である。
【0076】
以上のように構成された検出装置500によれば、飲料水の自動販売機に飲料水を補給する作業が極めて容易になる。例えば、吐出針N’から吐出された液量を検出しつつ、吐出針N’の先端に液面が触れて反射波R1が減少するとこれを検知して補給作業を終了するように、検出装置500を構成する。一方で、上記吐出針N’で構成されたノズルを挿入するための飲料水供給孔Hを、自動販売機に設けておく。飲料水補給孔には蓋を設けて鍵をかけられることが望ましい。なお、吐出針N’は、ノズルの先端が飲料水補給タンクの満タン時液面に到達しているか否かを判断するための目印が形成されていることが望ましい。また、補給した液量を検出する機能を第1の吐出針N’で実現し、補給タンクに飲料水が十分に補給されたことを検知する機能を第2の吐出針や管の無い導体Cで別々に実現しても構わない。
【0077】
以上の検出装置500を利用すれば、作業者は、従来であれば主扉を開けて飲料水貯留タンクの貯留量を確認しつつ行っていた飲料水の補給作業を、主扉を開けることなく行えるようになる。すなわち、作業者は、蓋の鍵を開錠して飲料水供給孔Hにノズルを挿入し、自動供給装置に飲料水の供給を指示する。すると、検出装置500は、吐出針N’の先端が液面と接触したか否かを所定時間置きに判断しつつ、飲料水の供給を行う。検出装置500は、吐出針N’の先端が液面と接触したことを示すだけの変化が吐出針N’を流れる交流電流に生じたことを検知すると、飲料水が貯留タンクに一杯になったと判断し、液体供給機構を停止する。このように自動的に飲料水の補給が完了するので、作業者の行う作業が非常に簡単になる。
【0078】
本変形例2の検出装置500で、吐出針N’の先端の状況を検出可能であることを示す実験例について図17に示した。図17は、ステンレス鋼の細線をR10mmで曲げた状態での、電界の分布を測定したものである。
同図に示すように、屈曲されたステンレス鋼の細線であっても。その線に沿って電界が伝播している事が見て取れる。従って、上述した実施形態のような励振波Gが屈曲された先にも伝搬し、屈曲された先の吐出針N’の先端において反射した反射波R1が反射して根元側へ伝搬し、さらには吐出針N’の先端で受信した受信波R2も根元側へ伝搬することが分かる。
【0079】
(8)変形例3:
ところで、吐出される液体には気泡が発生することがある。気泡が混入した液体を吐出すると吐出量にズレが生じてしまうため、工程の信頼性を低下することになる。例えば、接着剤等のように粘度の高い液体には気泡が発生する可能性が高いが、吐出された接着剤の量が規定量とことなれば、工程の信頼性が低下する。そこで、本変形例3では、連続的に吐出される液体内に気泡が混入しているか否かを検出する手法を提案する。
【0080】
上述した実施形態の検出装置100,200,300,400,500は、「励振波G」と「反射波R1」と「受信波R2」に基づいて放射される電磁波の強度を検出対象としていたが、本発明の手法を利用すれば吐出される液体内に形成された気泡Bの界面S1で反射される交流電流(以下、「反射波R3」と記載する。)も検出することもできる。図18は、吐出針N”から連続的に液体が吐出されている場合に、吐出針先端において発生する電流を示した図である。
【0081】
図18において、吐出針N”の先端には、「励振波G」と「反射波R1」と「反射波R3」が発生している。同図に示すように、液体内に形成された気泡Bは、液体の吐出速度Uとほぼ同一速度U”で吐出方向に進行しているため、界面S1で反射された反射波R3は速度U”に応じたドップラーシフトが発生する。つまり、反射波R3と反射波R1とを重ねあわせた交流電流は、ドップラーうなりDB”が発生する。なお、ドップラーうなりDB”は、液滴が吐出針N”の先端から離脱する前の現象であって発生するタイミングが異なるため、上述した実施形態のドップラーうなりDBとは明確に識別することができる。なお、本変形例3で発生するドップラーうなりDB”も、上述した実施形態と同様の方法で検出可能である。
【0082】
ドップラーうなりDB”を検出すると、ドップラーうなりDB”の振幅の変動幅ΔIを計測する。この変動幅ΔIは反射波R3の強度に相当し、変動幅ΔIが所定値を超えていれば反射波R3が発生していると判断できる。すなわち、吐出された液体に気泡が混入しているか否かを、ドップラーうなりDB”の振幅に基づいて検出できる。
【0083】
(9)変形例4:
上述した実施形態では受信部のアンテナとして空中線を例にとって説明したが、空間に放射される電磁波の電界強度を測定する手段はこれに限るものではない。
図19に電磁波を測定する受信部の他の一例を示した。同図には、電界が加わると物質の屈折率が変化する電気光学結晶(EO結晶)を利用した電界センサーを示してある。電気光学効果(EO効果)にはポッケルス効果やカー効果があるが、EO結晶を利用した電界センサーにはポッケルス効果を有するEO結晶を利用することが多い。屈折率の変化量が電界強度に一次比例するので較正しやすいからである。
【0084】
<受信部の構成>
図19において、受信部620は、電界センサー621と偏光処理部622を備える。電界センサー621は先端から順に、誘電体で形成された反射膜621a、EO結晶621b、コリメーターレンズ621c、フェルール621d、光ファイバー621eを備えている。光ファイバー621eの後端は光ファイバコネクタに接続されており、この光ファイバコネクタを介して偏光処理部622に接続されている。なおEO結晶は、例えば1mm角のものが使用可能であるので、電界センサー621は従来のダイポールアンテナを用いた電界センサー(長さが数cm〜十数cm)よりも小さくすることができる。
【0085】
<電界センサー内での光の移動>
受信部620において、光ファイバー621eの先端はEO結晶621bに対して垂直に接続されている。また、EO結晶621bは、光ファイバー621eから光が入射される側の平面である入光面と、反射膜621aが形成された側の平面である反射面とが互いに平行に形成されている。反射膜621aは、EO結晶621bの内部側から反射面へ到達した光を反射する。従って、光ファイバー621eから入射された入射光は入射面に垂直に入射してそのまま垂直に反射面へ到達し、反射面で垂直に反射されて光ファイバー621eへ再び入射される。
【0086】
光ファイバー621eに入射された反射光は、EO結晶に電磁波が照射されていない場合は入射光と同じ偏光状態を保っている。EO結晶621bの屈折率が変化していないからである。一方、EO結晶に電磁波が照射されると屈折率が変化するため、光ファイバー621eに入射された反射光は入射光とは異なる偏光状態に変化している。偏光処理部622は、偏光状態の変化を検光子622a等で光の強度変化に変換し、この光の強度変換を電気信号に変換することにより電磁波の電界強度に応じた信号を出力する。このようにして得られた電界強度に応じた信号を、上述した実施形態や変形例の解析処理部で解析すれば、被覆状態を検査することができる。
【0087】
なお、光ファイバーを伝送する際にも光に位相変化が生じるが、光ファイバーを上る入射光と光ファイバーを下る反射光との双方に同じ位相変化が生じるので、上りと下りとで位相変化を打ち消しあい、光ファイバーでの位相変化をゼロにすることができる。
また、本実施形態の電界センサー621は、計測しようとしている本来の電磁波の状態を正確に捉えることができる。EO結晶621bやコリメーターレンズ621cやフェルール621bは金属を含まないし、反射膜621aは誘電体で形成されており、光ファイバー621eで偏光処理部622まで信号を伝送できるため、電界センサー621が測定対象から放射された電磁波を擾乱せず、測定対象の近傍に配置しても電気的な結合を生じないからである。
【0088】
(10)まとめ:
以上説明した実施形態にかかる検出装置100は、吐出針Nの先端における液体の吐出状況を検出する検出装置100において、空胴共振器11にマイクロ波周波数の電磁波の定在波をTM01モードで励起し、このTM01モードの回転磁界の中心に沿って配置された吐出針Nに電磁誘導によってマイクロ波周波数の交流電流Iを流す励振部10と、交流電流Iが流れることによって吐出針Nから放射される電磁波を受信する受信部20と、受信部20の受信した電磁波に基づいて吐出針Nの先端における吐出の有無や吐出量を検出する検出部30を備える構成としてある。よって、検出装置100は、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端付近における状況を把握できるようになっている。
【0089】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限られず、上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。
【符号の説明】
【0090】
10…励振部、11…空胴共振器、11a…円筒状側壁、11b…端部側壁、11c…端部側壁、11c1…開口、12…マイクロ波ユニット、20…受信部、21…アンテナ、22…BPF、23…アンプ、24…検波器、30…検出部、31…A/Dコンバーター、32…制御部、100…検出装置、200…検出装置、211…空胴共振器、212…マイクロ波ユニット、213…高周波ケーブル、214…ドップラーユニット、300…検出装置、311…空胴共振器、312…マイクロ波ユニット、314…ドップラーユニット、400…検出装置、410…励振部、411…空胴共振器、412…マイクロ波ユニット、420…受信部、430…検出部、500…検出装置、510…励振部、511…空胴共振器、512…マイクロ波ユニット、520…受信部、530…検出部、620…受信部、621…電界センサー、621a…反射膜、621b…EO結晶、621c…コリメーターレンズ、621d…フェルール、621e…光ファイバー、622…偏光処理部、622a…検光子、C…導体、G…励振波、I…交流電流、L…導体線、N…吐出針、R1…反射波、R2…受信波
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、検出方法および検出プログラムに関し、特に、線状の導体の一端における状況を検出する検出装置、検出方法および検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液や木工用液状接着剤等の液体を吐出針から吐出する装置においては、液体の流路に流量計を設けたり吐出針の周辺に吐出の有無や吐出量を検出する検出装置を設けたりすることにより、これら流量計の計測結果や検出装置の検出結果に基づいて液体の吐出量をコントロールしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、流量計を利用して吐出量を制御する場合は、必要な量の液体が注入されているか否かを直接的に把握しているわけではないので、例えば吐出針先端から入り込むエアなどによって吐出量にバラツキが生じる可能性がある。そこで、それほど高い精密性が要求されない場合には流路に設けた流量計で間接的に吐出状況を監視すればよいが、吐出量を精密に制御する必要がある場合には吐出口のそばに前記検出装置を設けて直接的に吐出状況を監視しなければならなかった。
【0004】
従って、精密に吐出量を制御する場合は、検出装置を配置するための観測空間を吐出針の先端付近に確保しなければならないが、観測空間を確保できない場合もある。例えば、木工用液状接着剤を注入すべきダボや、自動販売機の飲料を貯蔵するタンクなどがこれに該当する。このような場合には、作業者が経験に基づいて注液装置を制御したり、注入した後で注入量の検査工程を設けるなどの対応が必要になっていた。このような事情から、吐出針先端に観測空間を確保できない場合は、注液作業を完全に自動化することができなかった。
【0005】
なお、以上の説明においては管状の吐出針を例にとって説明したが、吐出針周辺の状況を把握できるのであれば、管の有無に関わらずその先端周辺の状況を把握できるはずである。例えば、線状導体の先端に接触する物体を検出する場合や、先端に接近してくる物体、先端から離間して行く物体などの検出にも適用出来る可能性が考えられる。
【0006】
本発明は前記課題に鑑みてなされたもので、小さくは、以上説明したような注液装置の吐出針先端の状況を、その周辺に観測空間がない場合であっても把握できるような検出装置の提供を目的とするが、大きくは、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端付近における状況を把握できるような検出装置、検出方法および検出プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の検出装置は、線状の導体の一端における状況を検出する検出装置であって、空胴共振器を用いて前記導体に交流電流を流す励振部と、前記交流電流が流れることによって前記導体から放射される電磁波を受信する受信部と、前記受信部の受信した電磁波に基づいて前記導体の前記一端における状況を検出する検出部と、を備える構成としてある。ここで言う状況とは、上記一端に付着する物体の有無であったり、上記一端に近接配置されている物体の有無であったり、上記一端に対して接近もしくは離間する物体の有無であったりする。より具体的には、導電性物質が先端に付着した、もしくは付着していた導電性物質が先端から離脱した状況や、電磁波を反射しうる界面が上記先端に対して近接しつつある、もしくは離間しつつある状況が例示される。
【0008】
前記構成において、前記交流電流は前記導体を進行して前記一端まで流れてそこで反射する。また、前記導体に交流電流が流れることにより、該導体からは電磁波が放射される。この放射された電磁波が前記導体に受信されると前記導体に交流電流が発生するが、特に前記導体の長さ方向に一致する側から入射された電磁波によって誘起する交流電流は、導体の長さ方向に進行して導体の全体に流れることになる。
【0009】
このとき、前記励振部が前記空胴共振器を用いて交流電流を誘起する部位よりも他端の側のいずれかの部位において、前記導体を接地しておくと、他端側で交流電流が反射しなくなるので、前記一端側で反射された交流電流や入射された電磁波によって誘起される交流電流などの成分を分離しやすくなる。
【0010】
すなわち前記検出部は、前記受信部の受信した電磁波において、前記一端において反射されてきた交流電流に起因して放射された成分や前記一端において受信した電磁波に起因して発生した交流電流に起因して放射された成分によって変動する量を検出する。そしてこの検出した変動量に基づいて前記一端における状況を検出する。すなわち上記検出部は、上記導体の先端との間で電磁気的な相互作用を発生する物体が、上記導体の先端付近に存在するか否かを判断する。
【0011】
ところで、上記空胴共振器によって上記導体に効率よく交流電流を流すための本発明の選択的な一側面として、前記励振部は、前記空胴共振器に所定周波数のTM01モードの定在波を励起し、上記導体は、上記TM01モードの回転磁界の中心に沿って配置されてもよい。
TM01モードでは、回転磁界の中心に電界が集中的に発生し、回転磁界の中心における電界ベクトルは一方向に定まる。すなわち上記回転磁界の中心に沿って前記線状の導体を配置すれば、導体内を通過する電界ベクトルの総和が最大化されるので、空胴共振器の定在波から導体に流れる交流電流への変換効率が最大化される。
【0012】
また交流電流に対する前記一端の状況の影響を高めるための本発明の選択的な一側面として、上記励振部は、上記空胴共振器にマイクロ波周波数帯の定在波を励起することにより、上記導体にマイクロ波周波数の交流電流を流すようにしてもよい。
マイクロ波周波数の交流電流は、導体において表皮電流になる。交流電流が表皮電流化すると、電流の大部分が導体の外縁から表皮厚さの範囲を流れるので、外部と交流電流の相互作用が最大化される。すなわち、前記一端の状況の影響が、交流電流において、より顕著化する。
【0013】
また前記一端の状況の検出精度を向上するための本発明の選択的な一側面として、上記導体に流れる交流電流は定在波になっており、上記導体は、その先端が上記定在波の腹に略一致する長さとしてもよい。
前記定在波の腹の位置と前記導体の先端とが略一致するように吐出針Nの長さを調整すると、前記導体の先端に何らかの物体が付着していない状態での反射波R1の強度が最大になる。そして、前記導体の先端に何らかの物体が付着すると、励振波Gの反射位置がずれたり反射強度が変化したりするので前記定在波の強度が変動する。
【0014】
前記線状の導体が管状であってその内部を液体が通過する場合に、この線状の導体の先端から前記液体が吐出する状況を検出するための、本発明の選択的な一態様として、前記導体は管になっており、前記検出部は、前記管を通って前記一端から液体の吐出が開始されたタイミングと液体の吐出が終了したタイミングを、前記受信部の受信した電磁波に基づいて検出するように構成してもよい。
該構成によれば、前記管を通って液体が前記導体の先端から吐出されるとその先端に液体が付着する。すると、前記受信部の受信する電磁波の強度が変化するので、この変化に基づいて前記液体の吐出状況を検出することが出来る。また、前記導体の先端に付着した液体が前記先端から離脱するときも前記受信部の受信する電磁波の強度が変化するので、この変化に基づいて前記液体の離脱状況を検出することができる。
【0015】
さらに、前記線状の導体が管状であってその内部を液体が通過する場合には、前記検出部は、前記管を通って前記一端から吐出された液体の量を、前記受信部の受信した電磁波に基づいて検出することもできる。すなわち、前記液体が離脱する際には、前記交流電流に基づいて前記先端から放射される電磁波が前記液体表面で反射して前記先端へと戻ってくる。この電磁波は前記先端で再び受信されて前記導体に交流電流(受信波)を発生させる。また、前記先端では、前記励振部によって誘起された交流電流が気相と前記先端との境界において反射された交流電流(反射波)も流れている。前記受信波は、前記液体の飛翔速度の分だけドップラーシフトが生じており、前記反射波よりも周波数が僅かに低くなっている。よって、受信波と反射波との重ねあわせによってドップラーうなりが生じる。このドップラーうなりの周波数を測定すれば、前記液体の飛翔速度が得られる。この飛翔速度は液体の前記先端からの離脱速度であり、前記液体の吐出速度と見做すことができる。よってこの吐出速度と、管の断面積と、吐出が継続した時間とを掛け合わせると、吐出量が得られる。
【0016】
なお、前記ドップラーうなりを計測するためには、前記受信部が受信する電磁波に、ドップラーうなりの周波数を特定可能な所定時間だけ前記ドップラーうなりの振動が継続しなければならない。すなわち、前記液滴が前記所定時間のあいだ飛翔し続けなければドップラーうなりの周波数を特定できないのである。むろん、うなりの1周期分の時間だけ前記液滴が飛翔できるだけの空間が前記先端の先に確保されていればよいが、これよりも短い空間しか確保できない場合には、半周期分もしくは1/4周期分のうなりから前記うなりの周波数を推定する。むろん、前記検出部において取得したデータに正弦波マッピングなどを行ってうなり周波数を推定してもよい。
【0017】
また前記導体が管状でなくても、前記導体の先端に対して物体が接近してくると前記電磁波にドップラーうなりが生じるし、前記導体の先端から物体が離間して行く場合も前記電磁波にドップラーうなりが生じる。そこで、前記検出部は、前記受信部の受信した電磁波に基づいて前記一端と対象物との変位量を検出してもよい。すなわち、対象物と検出装置との間の距離を計測できるようになる。
また、ドップラーうなりのみならず、対象物と前記先端との距離に応じて前記交流電流は変動するので、この変動について前記対象物と前記先端の距離の関数として較正すれば、前記対象物と検出装置との間の距離を計測できるし、対象物の変位量や変位履歴を取得することもできる。
【0018】
上述した検出装置は、他の機器に組み込まれた状態で実施されたり他の方法とともに実施されたりする等の各種の態様を含む。また、本発明は前記検出装置を備える検出システム、上述した装置の構成に対応した工程を有する検出方法、上述した装置の構成に対応した機能をコンピューターに実現させる検出プログラム、該プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体、等としても実現可能である。これら検出システム、検出方法、検出プログラム、該プログラムを記録した媒体、の発明も、上述した作用、効果を奏する。むろん、請求項2〜9に記載した構成も、前記システムや前記方法や前記プログラムや前記記録媒体に適用可能である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端付近における状況を把握できるような検出装置を提供可能となる。
また請求項2にかかる発明によれば、検出感度を向上できる。
また請求項3にかかる発明によれば、交流電流への変換効率を向上できるので、検出感度が向上する。
また請求項4にかかる発明によれば、検出感度が向上する。
また請求項5にかかる発明によれば、検出感度が向上する。
また請求項6にかかる発明によれば、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端から吐出される液体の吐出状況を知ることができるようになる。
また請求項7,8にかかる発明によれば、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端から吐出される液体の吐出量を知ることができるようになる。
また請求項9にかかる発明によれば、電磁波、特にマイクロ波を利用した微小変位計を提供可能となり、これを利用したマイクロ波近接スイッチを提供可能となる。
また請求項10にかかる発明によれば、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端付近における状況を把握できるような検出方法を提供可能となる。
また請求項11にかかる発明によれば、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端付近における状況を把握できるような検出装置を制御するための制御プログラム提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態にかかる構成を示すブロック図である。
【図2】電線の表皮電流を説明する図である。
【図3】空胴共振器における電磁界分布を示す図である。
【図4】空胴共振器の構造を示す斜視図である。
【図5】TM01モードを励起するための一構成例である。
【図6】受信部と検出部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図7】吐出針の先端における電流と電磁波の関係とまとめた図である。
【図8】励振波Gと反射波R1により発生する定在波と、吐出針Nとの位置関係を示した図である。
【図9】吐出針から放射される電磁波の強度分布を示した図である。
【図10】図8に示した各状態における電磁波の周波数分布を測定したグラフである。
【図11】液滴が吐出と離脱により観測された電磁波の強度変化のグラフである。
【図12】検出処理のフローチャートである。
【図13】検出装置の構成例を示すブロック図である。
【図14】検出装置の構成例を示すブロック図である。
【図15】変形例1にかかる検出装置の構成を示すブロック図である。
【図16】変形例2にかかる検出装置の構成を示すブロック図である。
【図17】R10mmで曲げたステンレス鋼の細線における電界の分布図である。
【図18】変形例3にかかる吐出針先端に発生する電流の一例を示した図である。
【図19】変形例4にかかる受信部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)本実施形態の構成:
(2)導体先端に付着した液滴の検出:
(3)ドップラーうなりを利用した液滴吐出量の算出:
(4)検出処理:
(5)装置の小型化:
(6)変形例1:
(7)変形例2:
(8)変形例3:
(9)変形例4:
(10)まとめ:
【0022】
(1)本実施形態の構成:
<概略構成>
図1は本発明の一実施形態にかかる構成を示すブロック図である。同図に示すように、検出装置100は、線状の導体Cに所定周波数の交流電流Iを流して表皮電流を発生させる励振部10と、交流電流Iによって導体Cから放射される所定周波数の電磁波を受信する受信部20と、受信部20で受信した電磁波を解析して導体Cの先端の状況を検出するする検出部30を備えている。なお、導体Cは根元側で励振部10に対して接触しているが、根元側を除くと導体Cは励振部10と接触していない。すなわち、導体Cは根元側だけが接地されており、根元側では電流が反射しないようになっている。
【0023】
<交流電流の成分>
交流電流Iには、後に示す図7を用いて具体的に説明するように、励振部10によって直接誘起された成分(以下、「励振波G」と記載する。)のみならず、この励振波Gが導体Cの先端で反射された成分(以下、「反射波R1」と記載する。)や、いったん先端から放射された電磁波が何らかの物体表面で反射されて先端に再び受信された成分(以下、「受信波R2」と記載する。)や、これら成分の混合によって発生するうなり成分などを含む。また、特に、反射波R1と受信波R2によって生ずるうなりのことを、以下の説明においては「うなりDB」と記載することにする。
以下、各部10〜30について、より詳細に説明して行く。
【0024】
<励振部>
励振部10は、導体Cに所定周波数の交流電流である励振波Gを発生させる。本実施形態においては、所定周波数としてマイクロ波帯の周波数を例にとって説明するが、交流電流が表皮電流化する周波数であれば他の周波数帯を採用してもよい。
図2に示すように、交流電流が表皮電流化することにより導体表面からδの深さまでに電流が集中する。ただし、本実施形態のように導体Cが管状の吐出針Nであって内部に液体を通過させるタイプである場合には表皮電流化する周波数帯を採用した方がよいが、そうでないのであれば必ずしも表皮電流になる周波数帯の電磁波でなくても構わない。
【0025】
<導体先端の状態と放射電磁波の関係>
検出部30が検出する導体Cの先端の状態としては、例えば、液体の付着の有無や付着した液体の量、導体先端に接近する物体の有無や導体先端から離間する物体の有無、等がある。導体Cにはこれら状態に応じた反射波R1や受信波R2が発生する。このように導体Cを流れる交流電流が導体Cの先端の状態に影響されて変化すると、導体Cから放射される電磁波も変化する。すなわち、導体Cから放射される電磁波を解析すれば導体Cの先端付近の状況を把握することができるのである。
【0026】
<空胴共振器によって非接触で電流を励振>
励振部10によって導体Cに交流電流Iを流す際は非接触で行うことが望ましい。なぜなら、本実施形態では根元側は接地するものの先端側は電気的に開放された状態の導体Cに交流電流を流したいからである。また、非接触であればコネクタなどが不要であり、検査対象への検出装置100の取り付け取り外しが容易になるし、取り付けや取り外しの際に導体Cに傷などが付きにくいという利点もある。非接触で導体Cに交流電流を流すために、励振部10は空胴共振器11を備えている。この空胴共振器11は、内部に特定のマイクロ波周波数の定在波を励起することができる。
【0027】
導体Cは、空胴共振器11にその一部を通過させているので空胴共振器11に励起される定在波を受信する。このとき、導体Cを通過する電界ベクトルの総和が導体Cの長さ方向成分を有していれば、導体Cには電磁誘導によって励振波Gに対応する交流電流が発生する。すなわち、空胴共振器11に励起された定在波が導体Cに流れる交流電流に変換される。なお、本実施形態においては、定在波を交流電流へ変化する変換効率を高めるために、空胴共振器11に励起する定在波をTM01モードとしてある。
【0028】
<TMモード>
図3は、TM01モードの定在波を発生させた空胴共振器11における電磁界分布を示す図である。同図において電界ベクトルは実線で示してあり、磁界ベクトルは破線で示してある。
図3に示すように、空胴共振器11には、TM01モードの定在波が励起されることにより円筒の軸を中心とする回転磁界が発生しており、円筒の軸方向のベクトルを持った電界が発生している。導体Cは、TM01モードの回転磁界の中心である円筒の軸に沿って配置される。よって、本実施形態では、元来、放射損が少なくエネルギー効率のよい空胴共振器11を利用しつつ、さらにマイクロ波から交流電流への変換効率を向上してある。
【0029】
<空胴共振器の構成>
ここで、空胴共振器11の構造の一例について図4を参照して説明する。なお、図4には円筒空胴共振器を例にとって示してあるが、むろん方形空洞共振器や球形空胴共振器であっても構わない。
図4に示した空胴共振器11は、金属製の円筒状側壁11aと、その軸線方向両端を塞ぐ端部側壁11b,11cとにより構成されている。端部側壁11bは円筒状側壁11aの一端を電磁的に密閉している。また、端部側壁11bには導体Cの一端が接地されている。端部側壁11cには円筒の軸線上である中央部に開口11c1が形成されており、開口11c1を除いて円筒状側壁11aの他端を電磁的に密閉している。
なお、端部側壁11bと端部側壁11cの間隔Lは、空胴共振器11内に発生させたいマイクロ波の定在波の波長をλとすると、L=n×λ/2(nは自然数)を満たすように決定される。
【0030】
<励振法>
図4のように構成された空胴共振器11には、所定の伝送線路を通してマイクロ波ユニット12からマイクロ波が導入される。所定の伝送線路としては、同軸線路、ストリップ線路、導波管、誘電体導波路などを利用することができる。また、所定の伝送線路を空胴共振器11に結合するには、ループ結合、プローブ結合、ホール結合、スリット結合などを利用できる。本実施形態においては、図4に示すように空胴共振器11にループアンテナを挿入して空胴共振器11に回転磁界を励起することによりマイクロ波を空胴共振器に励起している。
その他、例えば、図5のように方形導波管と円筒共振空洞を接合し、方形導波管に励起したTE01モードを円筒共振空洞に導入しても、円筒共振空洞にTM01モードの定在波を励起することができる。
【0031】
<利用する周波数帯>
なお、本実施形態の空胴共振器11に励起するマイクロ波は、特にISMバンド (Industry-Science-Medical Band)のマイクロ波を利用することが好ましい。ISMバンドであれば、既存の通信に与える影響が小さく、電磁妨害(Electro Magnetic Interference)等に対する規制が比較的緩やかだからである。より具体的には、マイクロ波帯の中でITU(International Telecommunication Union)によって定められている、2.4GHz帯(2400-2500 MHz)、5.8GHz帯(5725-5875 MHz)、10.8GHz帯、24GHz帯(24-24.25 GHz) を利用することが好ましい。
【0032】
<導体Cから放射されるマイクロ波>
上述したように、導体CはTM01モードの回転磁界の中心を通っているので、長さ方向に進行する交流電流が誘起されている。すなわち、導体Cに誘起された励振波Gは導体Cの長さ方向に進行して、空胴共振器11の外部にある部位にも流れる。なお、導体Cの接地された側(以下、「根元側」と記載する。)に流れた励振波Gは、そのまま接地へと拡散される。
【0033】
一方、上述したように、導体Cの接地されない側(以下、「先端側」と記載する。)に流れた励振波Gは、先端の境界面で反射して反射波R1を生ずる。また導体Cの先端から放射された電磁波は、先端のさらに先にある物体の表面で反射された場合に先端へと戻ってくる成分があり、この反射された電磁波成分が先端から入射されると受信波R2を生じる。従って、導体Cから放射される電磁波は、励振波Gと反射波R1と受信波R2の重ね合わせの交流電流に基づいたものとなる。
【0034】
<受信部>
受信部20は導体Cを流れる交流電流によって放射される電磁波を受信する。なお、本実施形態においては、装置サイズを小さくするために空胴共振器11の内部に受信部20のアンテナ21を配置してあるが、受信部20やアンテナ21は空胴共振器11の外部に配置しても構わない。また本実施形態のアンテナ21は、空胴共振器11に定在波を励起しているアンテナを共用しているが、むろん別途用意したアンテナ21を空胴共振器11に配置しても構わない。
【0035】
図6は、本実施形態における受信部20と検出部30のハードウェア構成を示すブロック図である。同図に示すように、受信部20はアンテナ21とBPF(Band Pass Filter)22と、アンプ23と検波器24を備えている。アンテナ21で受信されたマイクロ波はBPF22に入力され、所望のマイクロ波周波数帯以外の不要な周波数成分やノイズ成分を除去されてからアンプ23に入力される。アンプ23は所定の増幅率でマイクロ波を増幅する。検波器24は増幅されたマイクロ波から所定周波数の電磁波を検波する。検波器24によって検波されたマイクロ波は検出部30に入力される。
【0036】
<検出部>
図6に示すように、検出部30はA/Dコンバーター31と制御部32を備えている。受信部20から入力されたマイクロ波信号はA/Dコンバーター31に入力されて、デジタル信号に変換される。デジタル化されたマイクロ波信号は制御部32に入力されて解析的に処理される。制御部32は、検出プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と、ROMから適宜検出プログラムを読み出して実行するCPU(Central Processing Unit)と、CPUのワークエリアとして利用されるRAM(Random Access Memory)とを備えている。制御部32にて検出プログラムが実行されると、後述の検出処理が実行される。
【0037】
(2)導体先端に付着した液滴の検出:
<液滴の付着検出>
以上説明した検出装置100を利用しておこなう検出の具体例として、ディスペンサーの吐出検出がある。ディスペンサーとは、いわゆる液体定量吐出装置であり、液体を精度良く定量供給するコントローラ及びその周辺機器の総称である。本検出装置100では、ディスペンサーから供給された液体を供給する際の先端に取り付けられる吐出針Nを本発明の導体Cとし、この吐出針Nから放射される電磁波の強度変化に基づいて吐出針Nの先端から液体が吐出されているか否かを検出する。
【0038】
<ディスペンサー構成>
図1に示したように、ディスペンサーの吐出針Nは空胴共振器11内の回転磁界の中心に沿って配置されており、空胴共振器11を左右に貫通している。吐出針Nの根元側は、空胴共振器11の端部側壁11bに接触されているので、接地された状態である。一方、先端側は空胴共振器11に接触することなく端部側壁11cの開口11c1から外部に突出されている。
【0039】
吐出針Nの根元側は、液体供給チューブなどを介してディスペンサーの本体に接続されており、ディスペンサー本体から液体が送り込まれる。送り込まれる液体の量はディスペンサーによってある程度の精度までは制御することが可能であり、例えば吐出針Nへ送り込む液体の送り込み速度をある程度まで制御できる。
吐出針Nには励振波Gと反射波R1と受信波R2の混合波としての交流電流が流れている。図7は、吐出針Nの先端における電流と電磁波の関係とまとめた図である。
【0040】
<吐出針Nに流れる電流>
図7に示すように、受信波R2は吐出針Nの先端から吐出されて先端から離間して行く液滴表面で反射された電磁波を受信することによって発生した電流を想定している。また反射波R1は、吐出針Nの先端から液体が吐出されつつ先端に液体が付着している状態では、吐出針Nの先端と液体との境界で反射した電流を指し、吐出針Nの先端に液体が付着していない状態では、吐出針Nの先端と気相との境界で反射した電流を指す。このようにして発生する反射波R1に吐出針Nの先端付近の状況がより顕著に反映されるためには、吐出針Nの先端が定在波の腹になることが好ましい。
【0041】
図8は、励振波Gと反射波R1により発生する定在波と、吐出針Nとの位置関係を示した図である。同図に示した定在波は、吐出針Nの先端に液体が付着していない状態での交流電流Iによって発生したものである。この状態で定在波の腹の位置と吐出針Nの先端とが略一致するように吐出針Nの長さを調整すると、吐出針Nの先端に液体が付着していない状態での反射波R1の強度が最大になる。一方、吐出針Nの先端に液滴が付着すると、励振波Gの反射位置がずれるので励振波Gと反射波R1の重ね合わせによる定在波の強度は減少する。すなわちこの減少した量を検出するにあたって図8の構成を採用すると、S/Nが向上する。
これらの交流電流により吐出針から放射される電磁波の強度分布を図9に示し、測定結果を図10に示した。
【0042】
<吐出針Nから放射される電磁波>
図9には、吐出針から放射される電磁波の強度分布について、吐出針Nの先端に水滴が付着した状態(上図)と付着していない状態(下図)とを示してある。同図の電界分布を見ると、吐出針Nの先端に水滴が付着すると吐出針Nの周囲の電界が強くなっていることが分かる。これは、吐出針Nの先端に水滴が付着すると反射波R1が強くなることを示している。金属と気相の境界における電流の反射率よりも金属と水等の液体との境界における電流の反射率の方が高いからである。
【0043】
図10は、図9に示した各状態における電磁波の周波数分布を測定したグラフである。同図には、ネットワークアナライザで電磁波を0〜30GHzまで掃引しつつ各周波数における電磁波強度を測定した結果を示してある。なお、図10の測定において使用した吐出針は、木工用液状接着剤の塗布などのラフな用途に利用される13号針(外形が2.4mm)であり、標準ランクでは最も大きい部類に属する。
図10のグラフにおいて、図9の各状態における電磁波の放射強度は、水滴が付着した状態の方が4dBも増加していることが見て取れる。すなわち、電磁波の強度に基づいて、吐出針Nの先端に水滴が付着しているかいないかを容易に識別できることが分かる。
【0044】
<吐出量検出>
さらに、検出装置100を使えば、吐出針Nから液体を吐出しているか否かを検知するのみならず吐出量を把握することも可能である。
上述したように、吐出が開始されたタイミングt1と吐出が終了したタイミングt2は電磁波の強度変化に基づいて検出できる。また、単位時間当たりの吐出量ΔDは、大まかにはディスペンサー側の液体送り出し速度から知ることができる。従って、吐出針Nの総吐出量は、ΔD×τ(τ=t2−t1)という演算で得られることになる。
【0045】
以上のように、従来であれば吐出針Nから液体が吐出されているか否かを判断するためには、吐出針Nの先端付近に光センサーなどの検出手段を配置する必要があったが、本実施形態の検出装置100を用いれば吐出針の先端(吐出口)の周囲に観測空間がなくても、吐出針Nから液体が吐出されているか否かを識別できるし、液体の吐出量を検出できる。よって、例えば深いダボの奥のような観測空間を確保できない部位であっても、木工用液状接着剤が実際に吐出されたか否かを知ることができるし、木工用液状接着剤がどのくらい吐出されたかも把握することが出来る。
【0046】
(3)ドップラーうなりを利用した液滴吐出量の算出:
なお、上述したディスペンサー側の液体送り出し速度が得られない場合は、ドップラーうなりに基づいて液体の離脱速度を計算することも可能である。なお、この計算においては 2つの仮定を行うことになる。1つは液滴が吐出される速度が一定であること、もう1つは離脱速度が吐出中の速度であることである。
【0047】
図8に示したように、液滴は、吐出針Nの先端から離脱すると速度Uで吐出針Nから遠ざかって行く。このとき吐出針Nの先端から放射された電磁波のうち離脱液滴の方向に放射された成分は、液滴表面に到達すると吐出針Nへ向けて反射される。液滴から反射された電磁波は吐出針の先端から再び受信されるので、この電磁波によって吐出針Nに受信波R2が発生する。ただし、この受信波R2には液滴の飛翔速度の分だけドップラーシフトが生じている。
【0048】
一方、液滴が離脱すると吐出針Nの先端からは液滴が無くなって空気との境界ができる。この境界で励振波Gが反射すると反射波R1が発生する。この反射波R1と受信波R2はともに吐出針Nの先端側から根元側へと伝播する交流電流であり、受信波R2と反射波R1の重ね合わせによってうなりDBが生じる。
図11は、吐出針Nにおいて実際に観測された電磁波の強度変化のグラフである。同図に示したのは、吐出針Nの先端側から根元側へと伝播する交流電流に基づく電磁波成分の強度変化である。同図に示すように、液滴が吐出され始めると受信強度が強くなり、液滴が離脱すると受信強度が元のレベルにいったん戻る。そして、受信波R2と反射波R1が受信されることによりうなりDBが発生していることがわかる。本実施形態では、このうなりDBを利用して液滴の離脱速度を求める。
【0049】
液滴の離脱速度Uは、下記(2)式を利用して算出できる。なお、下記(2)式は、うなりDBの周波数fbを表す下記(1)式の変形によって得られる。
【数1】
前記(1),(2)式において、fは空胴共振器11に励起されるマイクロ波周波数であり、cは光速である。うなりfbは、受信部20が受信した電磁波から求められる実測値である。
【0050】
離脱速度Uが求まれば、下記(3)式によって吐出量Vを算出することができる。
【数2】
なお、前記(3)式において、τは離脱液滴の吐出が開始されてから吐出針先端から離脱するまでの時間であり、dは吐出針の内径である。τは、上述したように反射波の強度変化に基づいて容易に求めることができる。
【0051】
ただし、吐出針Nの先端から液滴の着地点までの距離がうなりの1周期の間に飛翔する距離に満たない系では、うなりDBの全体が実測結果に現れない。従って、前記(2)式に必要なうなりDBの周波数fbが、受信部20の受信した電磁波に基づいても得られないことになる。
なお、うなりの一周期相当の飛翔距離δは、下記(4)式で算出される。
【数3】
前記(4)式において、λは周波数fのマイクロ波の波長である。前記(4)式に示されるように、走行距離δは液滴の飛翔速度に依存しない量であることが分かる。また、発振されたマイクロ波の半周期でうなり1周期が観測されることが分かる。
【0052】
前記(4)式を用いると、マイクロ波周波数を24GHzとした場合の飛翔距離δは6.25mmとなる。すなわち、うなりを1周期分観測するためには液滴が6.25mm以上飛翔できるだけの空間が必要であることがわかる。この距離を確保可能な測定系であれば以上の方法で液滴離脱速度を求めることができるが、6.25mmの距離を確保可能でない系も多い。
【0053】
そこで、吐出針Nの先端から液滴の着地点までの間にうなり周波数fbの1周期分に相当する飛翔距離を確保できない測定系では、うなり波形に正弦波マッピングして周波数を推定する方法や、ゼロクロススタートと90°での振幅の下端を検出してこれを1/4周期とみなす方法を採用することができる。ただし、後者の場合であっても、24GHzマイクロ波で1.56mmの飛翔距離が必要であるので、いずれにしても着地距離に所定距離以上確保して利用する必要がある。
【0054】
なお、前者の方法では、高速ADC(analog/digital converter)でうなり波形を取り込み、取り込んだ波形に対して正弦波マッピングを行うことになる。ただし、サンプリング周期が角度関数でないことから、かなり複雑な推定方程式となることが避けられない。またどこまでのサンプリングがうなりに寄与しているか判別しがたいという問題もあるので、どちらかと言えば後者の方法で行うことが好ましい。
【0055】
(4)検出処理:
以上説明した検出装置100において実行される検出処理について、図12を参照して説明する。図12は、制御部32が実行する検出処理のフローチャートである。なお、本検出処理は、制御部32のようにプログラム的に実行するのみならず、電気回路や電子回路で本検出処理と同等の演算処理を実行するように構成してもむろん構わない。
【0056】
また、検出装置100は、検出処理の結果を表示するためのディスプレイや、作業者が検出装置100に検出の開始を指示したり、検出処理の結果を表示させたり、結果の表示方法を設定したりするための操作入力部を備えてもよい。ただし、ディスプレイや操作入力部は必須ではなく、例えば検出装置100に外部コンピューターを接続し、外部コンピューターを介して検出装置100を制御したり、外部コンピューターが検出装置100の出力する解析結果を取得して表示する場合には、無くてもよい。
【0057】
操作入力部で所定の操作が行われることにより検出処理が開始されると、ステップS100(以下、「ステップ」の記載を省略する。)において、制御部32は、受信部20が出力する所定のマイクロ波周波数の電磁波強度のデータを取得する処理を開始する。この取得処理は、本検出処理が終了するまで継続される。
【0058】
S105において、制御部32は、取得した電磁波強度が所定の閾値を超えたか否かを判断する。所定の閾値を超えた場合は所定の閾値を超えた時間を吐出開始時間t1としてRAM等に記憶してS110に進み、所定の閾値を超えていない場合はS105の処理を繰り返す。所定の閾値は、実験的に決定されるものであり、例えば吐出針Nの先端に液体が付着している場合の電磁波強度と吐出針Nの先端に液体が付着していない場合の電磁波強度との間のいずれかの値が設定される。
【0059】
S110において、制御部32は、取得した電磁波強度がゼロクロスしたか否かを判断する。ゼロクロスした場合はゼロクロスした時間を吐出終了時間t2としてRAM等に記憶してS115に進み、ゼロクロスしていない場合はS110の処理を繰り返す。
【0060】
S115において、制御部32は、ゼロクロスして以降の電磁波強度を解析してうなりDBの周波数を取得する。うなりDBの周波数は、上述したいずれかの手法を用いて取得できる。例えば、うなりDBの1周期分の飛翔距離が確保できる測定系であれば、S110においてゼロクロスを検出した時間から、その次の次に検出されるゼロクロスの検出時間までをうなり1周期とし、うなりDBの周波数fbを算出する。
【0061】
S120において、制御部32は、S115で算出された周波数fbを用いて前記(2)式の計算を行うことにより離脱速度Uを算出し、この離脱速度Uを液体の単位時間当たりの吐出量と仮定して前記(3)式に基づく計算を行って液体の吐出量Vを算出する。
【0062】
S125において、制御部32は、S120で算出された吐出量をディスプレイに表示し、さらに必要に応じて吐出開始時間t1や吐出終了時間t2などの検出結果もディスプレイに表示する。作業者は、ディスプレイに表示された吐出量を見て、必要であればさらに吐出を行ったりする。むろん、予め目的の吐出量を操作入力部などを介して作業者が設定していれば、制御部32がS120において算出された吐出量を判断して、不足している場合は追加の吐出を行う。なお、追加の吐出を行う場合は、例えば1滴ずつ吐出するなど、間欠的に少量ずつ吐出することにより吐出量の微調整を行えばよい。S125が終了すると、検出処理を終了する。
【0063】
(5)装置の小型化
以上の装置を実用化するにあたり、小型化の要望が高いことが想定される。空胴共振器は吐出針を内部に貫通しなければならないので、ロボットで操作される可動部に取り付けられる可能性が高いからである。また、複数の装置で本検出装置を使いまわす際の、付け替えの作業性からも小型であることが好ましい。従って、特に吐出針を貫通する共振空洞部は小型・軽量であることが好ましく、空胴共振器に一体的に構成される部材は可能な限り少ない方がよい。空胴共振器11とこれと一体的に取扱われる部分を小型・軽量化する構成例を、図13,図14に示した。
【0064】
図13は検出装置の一構成例を示すブロック図である。同図において、検出装置200の要部は、空胴共振器211と、ループアンテナで空胴共振器211にマイクロ波を導入してTM01モードを励起するとともに該ループアンテナでマイクロ波を受信するマイクロ波ユニット212と、マイクロ波ユニット212で受信したマイクロ波を伝送する高周波ケーブル213と、高周波ケーブル213を介して入力されたマイクロ波から所望の周波数帯のうなりDBを検出するドップラーユニット214とを備えている。
【0065】
前記構成において、空胴共振器211とマイクロ波ユニット212は一体化されており、ドップラーユニット214は空胴共振器211とは別体に構成される。従って、ロボットの稼動部に配置すべき部材は空胴共振器211とマイクロ波ユニット212だけで済み、小型・軽量化の要望に応えられる。ただし、高周波ケーブル213は数万円と非常に高価であるので、コスト的には高周波ケーブルを使わずに済む方がよい。そこで、図14の構成では、高周波ケーブルを使わずに検出装置を作成できるようにしてある。
【0066】
図14において、検出装置300は、空胴共振器311と、ループアンテナで空胴共振器311にマイクロ波を導入してTM01モードを励起するマイクロ波ユニット312と、アンテナで空胴共振器311からマイクロ波を受信する受信して所望の周波数帯のうなりDBを検出するドップラーユニット314を備えている。同図において、マイクロ波ユニット312とドップラーユニット314は、空胴共振器311の共振空洞に直接取り付けてある。なお、電源や各種処理を行う部品は別置きとする。
【0067】
ここで、ドップラーユニット314を空胴共振器311に一体化できるか否かを検討してみる。本実施形態において使用する空胴共振器のサイズは、5.8mm×9.5mmである。そして、市販のドップラーユニットは、22mm×45mm×9mmのものや15mm×19mmのものがある。従って、これらを空胴共振器311に一体化することは可能であるし、本検出装置専用に作成すればドップラーユニットはさらに小型化できるはずであり、十分実用的なレベルまで小型化できることがわかる。
【0068】
(6)変形例1:
以上説明した実施形態では、吐出針Nの先端付近の状況を把握するための検出装置について説明をおこなってきたが、課題を解決するための手段において記載したように、本技術は線状導体の先端周辺の状況を把握する用途にも適用可能である。
そこで、本変形例1においては、本技術を所謂タッチプローブとして利用する例について説明する。
【0069】
図15は本変形例の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、本変形例にかかる検出装置400は、空胴共振器411にTM01モードのマイクロ波定在波を励起することにより導体線Lにマイクロ波周波数の交流電流を流して表皮電流を発生させる励振部410と、前記交流電流によって導体線Lから放射されるマイクロ波周波数の電磁波を受信する受信部420と、受信部520で受信した電磁波を解析して前記導体の一端の状況を検出するする検出部430とを備えている。
【0070】
導体線Lはピアノ線などのような線状の導体であり、空胴共振器411に励起された回転磁界の中心に沿って配置されている。そして導体線Lは、上述した吐出針Nと同様に根元側が空胴共振器411に接地されており、先端側は空胴共振器411と接触することなく空胴共振器411の側壁に形成される開口から外部に導出されている。
なお、吐出針Nが導体線Lに置き換わることを除けば、本変形例1の励振部410、受信部420、検出部430には、前記実施形態の対応する構成を適宜採用可能である。
【0071】
以上のように構成された検出装置400において、導体線Lの先端には強い電界が全方位で形成される。導体線Lの先端に物体が近付くと電界が変化し、導体線Lを流れる交流電流Iが変動する。検出部430は、交流電流Iの変動を監視することにより、導体線Lの先端に接近したり接触したりする他の物体を高感度に検知できる。従って、実際に接触する前に他の物質の接近を検出して接近警報を行うことが可能であるつきのタッチプローブとなる。また、本変形例のタッチプローブは、機械的ひずみを伴わずに他の物質を検知できる点でも従来のタッチプローブに比べて有利である。
【0072】
さらに、本変形例のように構成すれば、対象物の微小な移動や振動を検出する微小変位計としても利用可能である。微小変位計として本発明を利用する場合は、上述した検出装置400の構成に加えて、受信強度を距離の関数として得られるように較正する。すなわち、上述した実施形態で説明した反射波R1と受信波R2を受信して、受信強度と対象物から導体線Lの先端までの距離とのあいだの非線型的な関係について較正する。この関係は、対象物毎に相関が異なる可能性があるので、対象物毎に作成する。また、受信強度のみならず上述した実施形態で計測したようなドップラーうなりを計測すれば、対象物と導体線Lの先端との間の相対的な接近速度や離間速度を得ることもできる。
【0073】
(7)変形例2:
上述した実施形態においては、吐出針が直線的なものを例にとって説明をおこなったが、吐出針が屈曲されていても本発明は実現可能である。すなわち吐出針を屈曲可能なもので構成すれば、内部で屈曲した孔の奥まで吐出針を挿入しつつ、吐出針の先端の吐出状況を孔の外部で把握できるので、観測域不要という本発明における特性が有効活用されることになる。本変形例2では、飲料水の自動販売機に飲料水を補給する装置に本発明の検出装置を利用する場合を例にとって説明する。図16に本変形例2にかかる検出装置500の要部を示した。
【0074】
図16に示すように、本変形例にかかる検出装置500は、空胴共振器411にTM01モードのマイクロ波定在波を励起することにより吐出針N’にマイクロ波周波数の交流電流を流して表皮電流を発生させる励振部510と、前記交流電流によって吐出針N’から放射されるマイクロ波周波数の電磁波を受信する受信部520と、受信部520で受信した電磁波を解析して前記導体の一端の状況を検出するする検出部530とを備えている。
【0075】
吐出針N’は屈曲可能な導体線であり、その中心部に孔が形成されて管になっている。そして吐出針N’は、上述した吐出針Nと同様に根元側が空胴共振器511に接地されており、先端側は空胴共振器11と接触することなく空胴共振器511の側壁に形成される開口から外部に導出されている。吐出針N’は、空胴共振器511内部では屈曲しないように固定されており、空胴共振器511に励起された回転磁界の中心に沿って配置されている。吐出針N’は、空胴共振器511から導出された先で屈曲可能になっている。
なお、吐出針Nが吐出針N’に置き換わることを除けば、本変形例2の励振部510、受信部520、検出部530には、前記実施形態の対応する構成を適宜採用可能である。
【0076】
以上のように構成された検出装置500によれば、飲料水の自動販売機に飲料水を補給する作業が極めて容易になる。例えば、吐出針N’から吐出された液量を検出しつつ、吐出針N’の先端に液面が触れて反射波R1が減少するとこれを検知して補給作業を終了するように、検出装置500を構成する。一方で、上記吐出針N’で構成されたノズルを挿入するための飲料水供給孔Hを、自動販売機に設けておく。飲料水補給孔には蓋を設けて鍵をかけられることが望ましい。なお、吐出針N’は、ノズルの先端が飲料水補給タンクの満タン時液面に到達しているか否かを判断するための目印が形成されていることが望ましい。また、補給した液量を検出する機能を第1の吐出針N’で実現し、補給タンクに飲料水が十分に補給されたことを検知する機能を第2の吐出針や管の無い導体Cで別々に実現しても構わない。
【0077】
以上の検出装置500を利用すれば、作業者は、従来であれば主扉を開けて飲料水貯留タンクの貯留量を確認しつつ行っていた飲料水の補給作業を、主扉を開けることなく行えるようになる。すなわち、作業者は、蓋の鍵を開錠して飲料水供給孔Hにノズルを挿入し、自動供給装置に飲料水の供給を指示する。すると、検出装置500は、吐出針N’の先端が液面と接触したか否かを所定時間置きに判断しつつ、飲料水の供給を行う。検出装置500は、吐出針N’の先端が液面と接触したことを示すだけの変化が吐出針N’を流れる交流電流に生じたことを検知すると、飲料水が貯留タンクに一杯になったと判断し、液体供給機構を停止する。このように自動的に飲料水の補給が完了するので、作業者の行う作業が非常に簡単になる。
【0078】
本変形例2の検出装置500で、吐出針N’の先端の状況を検出可能であることを示す実験例について図17に示した。図17は、ステンレス鋼の細線をR10mmで曲げた状態での、電界の分布を測定したものである。
同図に示すように、屈曲されたステンレス鋼の細線であっても。その線に沿って電界が伝播している事が見て取れる。従って、上述した実施形態のような励振波Gが屈曲された先にも伝搬し、屈曲された先の吐出針N’の先端において反射した反射波R1が反射して根元側へ伝搬し、さらには吐出針N’の先端で受信した受信波R2も根元側へ伝搬することが分かる。
【0079】
(8)変形例3:
ところで、吐出される液体には気泡が発生することがある。気泡が混入した液体を吐出すると吐出量にズレが生じてしまうため、工程の信頼性を低下することになる。例えば、接着剤等のように粘度の高い液体には気泡が発生する可能性が高いが、吐出された接着剤の量が規定量とことなれば、工程の信頼性が低下する。そこで、本変形例3では、連続的に吐出される液体内に気泡が混入しているか否かを検出する手法を提案する。
【0080】
上述した実施形態の検出装置100,200,300,400,500は、「励振波G」と「反射波R1」と「受信波R2」に基づいて放射される電磁波の強度を検出対象としていたが、本発明の手法を利用すれば吐出される液体内に形成された気泡Bの界面S1で反射される交流電流(以下、「反射波R3」と記載する。)も検出することもできる。図18は、吐出針N”から連続的に液体が吐出されている場合に、吐出針先端において発生する電流を示した図である。
【0081】
図18において、吐出針N”の先端には、「励振波G」と「反射波R1」と「反射波R3」が発生している。同図に示すように、液体内に形成された気泡Bは、液体の吐出速度Uとほぼ同一速度U”で吐出方向に進行しているため、界面S1で反射された反射波R3は速度U”に応じたドップラーシフトが発生する。つまり、反射波R3と反射波R1とを重ねあわせた交流電流は、ドップラーうなりDB”が発生する。なお、ドップラーうなりDB”は、液滴が吐出針N”の先端から離脱する前の現象であって発生するタイミングが異なるため、上述した実施形態のドップラーうなりDBとは明確に識別することができる。なお、本変形例3で発生するドップラーうなりDB”も、上述した実施形態と同様の方法で検出可能である。
【0082】
ドップラーうなりDB”を検出すると、ドップラーうなりDB”の振幅の変動幅ΔIを計測する。この変動幅ΔIは反射波R3の強度に相当し、変動幅ΔIが所定値を超えていれば反射波R3が発生していると判断できる。すなわち、吐出された液体に気泡が混入しているか否かを、ドップラーうなりDB”の振幅に基づいて検出できる。
【0083】
(9)変形例4:
上述した実施形態では受信部のアンテナとして空中線を例にとって説明したが、空間に放射される電磁波の電界強度を測定する手段はこれに限るものではない。
図19に電磁波を測定する受信部の他の一例を示した。同図には、電界が加わると物質の屈折率が変化する電気光学結晶(EO結晶)を利用した電界センサーを示してある。電気光学効果(EO効果)にはポッケルス効果やカー効果があるが、EO結晶を利用した電界センサーにはポッケルス効果を有するEO結晶を利用することが多い。屈折率の変化量が電界強度に一次比例するので較正しやすいからである。
【0084】
<受信部の構成>
図19において、受信部620は、電界センサー621と偏光処理部622を備える。電界センサー621は先端から順に、誘電体で形成された反射膜621a、EO結晶621b、コリメーターレンズ621c、フェルール621d、光ファイバー621eを備えている。光ファイバー621eの後端は光ファイバコネクタに接続されており、この光ファイバコネクタを介して偏光処理部622に接続されている。なおEO結晶は、例えば1mm角のものが使用可能であるので、電界センサー621は従来のダイポールアンテナを用いた電界センサー(長さが数cm〜十数cm)よりも小さくすることができる。
【0085】
<電界センサー内での光の移動>
受信部620において、光ファイバー621eの先端はEO結晶621bに対して垂直に接続されている。また、EO結晶621bは、光ファイバー621eから光が入射される側の平面である入光面と、反射膜621aが形成された側の平面である反射面とが互いに平行に形成されている。反射膜621aは、EO結晶621bの内部側から反射面へ到達した光を反射する。従って、光ファイバー621eから入射された入射光は入射面に垂直に入射してそのまま垂直に反射面へ到達し、反射面で垂直に反射されて光ファイバー621eへ再び入射される。
【0086】
光ファイバー621eに入射された反射光は、EO結晶に電磁波が照射されていない場合は入射光と同じ偏光状態を保っている。EO結晶621bの屈折率が変化していないからである。一方、EO結晶に電磁波が照射されると屈折率が変化するため、光ファイバー621eに入射された反射光は入射光とは異なる偏光状態に変化している。偏光処理部622は、偏光状態の変化を検光子622a等で光の強度変化に変換し、この光の強度変換を電気信号に変換することにより電磁波の電界強度に応じた信号を出力する。このようにして得られた電界強度に応じた信号を、上述した実施形態や変形例の解析処理部で解析すれば、被覆状態を検査することができる。
【0087】
なお、光ファイバーを伝送する際にも光に位相変化が生じるが、光ファイバーを上る入射光と光ファイバーを下る反射光との双方に同じ位相変化が生じるので、上りと下りとで位相変化を打ち消しあい、光ファイバーでの位相変化をゼロにすることができる。
また、本実施形態の電界センサー621は、計測しようとしている本来の電磁波の状態を正確に捉えることができる。EO結晶621bやコリメーターレンズ621cやフェルール621bは金属を含まないし、反射膜621aは誘電体で形成されており、光ファイバー621eで偏光処理部622まで信号を伝送できるため、電界センサー621が測定対象から放射された電磁波を擾乱せず、測定対象の近傍に配置しても電気的な結合を生じないからである。
【0088】
(10)まとめ:
以上説明した実施形態にかかる検出装置100は、吐出針Nの先端における液体の吐出状況を検出する検出装置100において、空胴共振器11にマイクロ波周波数の電磁波の定在波をTM01モードで励起し、このTM01モードの回転磁界の中心に沿って配置された吐出針Nに電磁誘導によってマイクロ波周波数の交流電流Iを流す励振部10と、交流電流Iが流れることによって吐出針Nから放射される電磁波を受信する受信部20と、受信部20の受信した電磁波に基づいて吐出針Nの先端における吐出の有無や吐出量を検出する検出部30を備える構成としてある。よって、検出装置100は、線状導体の先端付近に観測空間が無くても、その先端付近における状況を把握できるようになっている。
【0089】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限られず、上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。
【符号の説明】
【0090】
10…励振部、11…空胴共振器、11a…円筒状側壁、11b…端部側壁、11c…端部側壁、11c1…開口、12…マイクロ波ユニット、20…受信部、21…アンテナ、22…BPF、23…アンプ、24…検波器、30…検出部、31…A/Dコンバーター、32…制御部、100…検出装置、200…検出装置、211…空胴共振器、212…マイクロ波ユニット、213…高周波ケーブル、214…ドップラーユニット、300…検出装置、311…空胴共振器、312…マイクロ波ユニット、314…ドップラーユニット、400…検出装置、410…励振部、411…空胴共振器、412…マイクロ波ユニット、420…受信部、430…検出部、500…検出装置、510…励振部、511…空胴共振器、512…マイクロ波ユニット、520…受信部、530…検出部、620…受信部、621…電界センサー、621a…反射膜、621b…EO結晶、621c…コリメーターレンズ、621d…フェルール、621e…光ファイバー、622…偏光処理部、622a…検光子、C…導体、G…励振波、I…交流電流、L…導体線、N…吐出針、R1…反射波、R2…受信波
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の導体の一端における状況を検出する検出装置であって、
空胴共振器に所定周波数の電磁波の定在波をTM01モードで励起し、該空胴共振器に他端を挿入された上記導体に電磁誘導によって上記所定周波数の交流電流を流す励振部と、
前記導体から放射される電磁波を受信する受信部と、
前記受信部の受信した電磁波に基づいて前記導体の前記一端における状況を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記励振部が前記空胴共振器を用いて交流電流を誘起する部位よりも前記線状の導体の他端の側寄りのいずれかの部位において、前記導体が接地されている請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記励振部は、前記空胴共振器に所定周波数のTM01モードの定在波を励起し、前記導体は、前記TM01モードの回転磁界の略中心に沿って配置される請求項1または請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記励振部は、前記空胴共振器にマイクロ波周波数の定在波を励起することにより、前記導体にマイクロ波周波数の交流電流を流す請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
上記導体に流れる交流電流は定在波になっており、
上記導体は、その先端が上記定在波の腹に略一致する長さである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記導体は管になっており、
前記検出部は、前記管を通って前記一端から液体の吐出が開始されたタイミングと液体の吐出が終了したタイミングを、前記受信部の受信した電磁波に基づいて検出する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記導体は管になっており、
前記検出部は、前記管を通って前記一端から吐出された液体の量を、前記受信部の受信した電磁波に基づいて検出する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記導体は管になっており、
前記検出部は、前記管を通って前記一端から吐出された液体の離脱速度を、前記受信部の受信した電磁波におけるドップラーうなりに基づいて検出する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記検出部は、前記受信部の受信した電磁波に基づいて前記一端と対象物との間の距離を検出する請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
線状の導体の一端における状況を検出する検出方法であって、
空胴共振器に所定周波数の電磁波の定在波をTM01モードで励起し、該空胴共振器に他端を挿入された上記導体に電磁誘導によって上記所定周波数の交流電流を流す励振工程と、
前記導体から放射される電磁波を受信する受信工程と、
前記受信工程において受信した電磁波に基づいて前記導体の前記一端における状況を検出する検出工程と、
を備えることを特徴とする検出方法。
【請求項11】
線状の導体の一端における状況を検出する検出装置を制御する検出プログラムであって、
空胴共振器に所定周波数の電磁波の定在波をTM01モードで励起し、該空胴共振器に他端を挿入された上記導体に電磁誘導によって上記所定周波数の交流電流を流す励振機能と、
前記導体から放射される電磁波を受信する受信機能と、
前記受信機能によって受信した電磁波に基づいて前記導体の前記一端における状況を検出する検出機能と、
を検出装置に実現させるための検出プログラム。
【請求項1】
線状の導体の一端における状況を検出する検出装置であって、
空胴共振器に所定周波数の電磁波の定在波をTM01モードで励起し、該空胴共振器に他端を挿入された上記導体に電磁誘導によって上記所定周波数の交流電流を流す励振部と、
前記導体から放射される電磁波を受信する受信部と、
前記受信部の受信した電磁波に基づいて前記導体の前記一端における状況を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記励振部が前記空胴共振器を用いて交流電流を誘起する部位よりも前記線状の導体の他端の側寄りのいずれかの部位において、前記導体が接地されている請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記励振部は、前記空胴共振器に所定周波数のTM01モードの定在波を励起し、前記導体は、前記TM01モードの回転磁界の略中心に沿って配置される請求項1または請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記励振部は、前記空胴共振器にマイクロ波周波数の定在波を励起することにより、前記導体にマイクロ波周波数の交流電流を流す請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
上記導体に流れる交流電流は定在波になっており、
上記導体は、その先端が上記定在波の腹に略一致する長さである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記導体は管になっており、
前記検出部は、前記管を通って前記一端から液体の吐出が開始されたタイミングと液体の吐出が終了したタイミングを、前記受信部の受信した電磁波に基づいて検出する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記導体は管になっており、
前記検出部は、前記管を通って前記一端から吐出された液体の量を、前記受信部の受信した電磁波に基づいて検出する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記導体は管になっており、
前記検出部は、前記管を通って前記一端から吐出された液体の離脱速度を、前記受信部の受信した電磁波におけるドップラーうなりに基づいて検出する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記検出部は、前記受信部の受信した電磁波に基づいて前記一端と対象物との間の距離を検出する請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
線状の導体の一端における状況を検出する検出方法であって、
空胴共振器に所定周波数の電磁波の定在波をTM01モードで励起し、該空胴共振器に他端を挿入された上記導体に電磁誘導によって上記所定周波数の交流電流を流す励振工程と、
前記導体から放射される電磁波を受信する受信工程と、
前記受信工程において受信した電磁波に基づいて前記導体の前記一端における状況を検出する検出工程と、
を備えることを特徴とする検出方法。
【請求項11】
線状の導体の一端における状況を検出する検出装置を制御する検出プログラムであって、
空胴共振器に所定周波数の電磁波の定在波をTM01モードで励起し、該空胴共振器に他端を挿入された上記導体に電磁誘導によって上記所定周波数の交流電流を流す励振機能と、
前記導体から放射される電磁波を受信する受信機能と、
前記受信機能によって受信した電磁波に基づいて前記導体の前記一端における状況を検出する検出機能と、
を検出装置に実現させるための検出プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−276587(P2010−276587A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132452(P2009−132452)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【特許番号】特許第4500880号(P4500880)
【特許公報発行日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(591113437)オーム電機株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【特許番号】特許第4500880号(P4500880)
【特許公報発行日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(591113437)オーム電機株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
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