説明

検出装置、液体吐出装置、液体吐出面の異常検出方法、及びインクジェットヘッドのメンテナンス方法

【課題】高速、かつ、高精度に液体吐出面の微小な汚れや傷を把握しうる検出装置、液体吐出装置、液体吐出面の異常検出方法、及びインクジェットヘッドのメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】複数のセンサを具備するエリアセンサ(80)とインクジェットヘッド(16)とを相対移動させながら液体吐出面(16A)を撮像し、複数のセンサ列のうち一部のセンサ列(80A)から得られた撮像信号に基づいて、液体吐出面の異常の有無及び異常の位置を判断し、液体吐出面に異常があると判断されると異常の位置を再度撮像して、エリアセンサのすべてのセンサ列から得られた撮像信号に基づいて、異常の状態を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検出装置、液体吐出装置、液体吐出面の異常検出方法、及びインクジェットヘッドのメンテナンス方法に係り、特にインクジェットヘッドの液体吐出面の検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に具備されるインクジェットヘッドは、インク吐出面(液体吐出面)に液状のインクや固化したインクなどの汚れが付着すると、吐出性能を低下させてしまうことがありうる。例えば、ノズル開口の近傍に汚れが付着すると、吐出量の減少や飛翔方向の曲がりが発生して、ドットサイズの異常やドットの形成位置の異常の原因となる。
【0003】
インクジェットヘッドのインク吐出性能の低下を回避するために、インクジェットヘッドのインク吐出面の定期的な洗浄が実行され、汚れが除去されている。
【0004】
特許文献1は、ノズル孔に形成されるメニスカスを撮像するカメラを備え、該カメラにより撮像された画像を解析して、吐出異常を検知するように構成された液体吐出装置を開示している。
【0005】
また、特許文献2はヘッド吐出面を撮像するCCDを備え、CCDから得られた画像データに基づいて、吐出面汚れ情報として吐出面汚れの吐出口からの距離と、吐出面汚れの面積のデータを出力し、吐出面汚れ情報に基づいて吐出面の清掃動作が制御されるように構成された液滴吐出装置を開示している。
【0006】
特許文献3は、CCDエリアセンサとしての固体撮像装置を高感度のラインセンサとして使用する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−229928号公報
【特許文献2】特開2008−12880号公報
【特許文献3】特開平11−112878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インクジェットヘッドのインク吐出面の全面の撮像データを得るには、インクジェットヘッドの幅方向について一回で撮像可能なサイズのCCDエリアセンサを、インクジェットヘッドの長手方向について相対的にスキャンさせながら、所定のサンプリング周期で複数回にわたって撮像し、各タイミングでサンプリングされた撮像データを合成する方法がある。
【0009】
インク吐出面の微小な汚れや細かい傷を撮像するには、少なくともノズル配置密度と同程度の撮像装置の読取解像度が必要になるとともに、スキャン方向の解像度も必要になる。読取解像度を上げると撮像素子からの撮像信号の読み出しに時間がかかる。また、スキャン解像度を上げるとスキャン速度を上げることができない。
【0010】
一方、データの高速読み出しや高速スキャンをしようとすると、インク吐出面の微小な汚れや細かい傷を見逃すおそれがある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、高速、かつ、高精度に液体吐出面の微小な汚れや傷を把握しうる検出装置、液体吐出装置、液体吐出面の異常検出方法、及びインクジェットヘッドのメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る検出装置は、複数の光電変換素子が二次元状に配置され、インクジェットヘッドの液体吐出面におけるノズル開口が配置されるノズル領域の第1の方向の全長に対応して前記第1の方向に沿って複数の光電変換素子を配置させた光源変換素子列を、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って複数配置させた構造を有し、前記液体吐出面を撮像する撮像手段と、前記インクジェットヘッドと前記撮像手段とを前記第2の方向に沿って相対的に移動させる相対移動手段と、前記撮像手段の一部の光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記液体吐出面の異常の有無、及び前記異常の位置を判断する判断手段と、前記撮像装置と前記インクジェットヘッドとを相対移動させながら、前記撮像手段によって前記液体吐出面の前記ノズル領域を撮像し、前記判断手段により前記液体吐出面に異常があると判断されると、前記撮像手段を用いて前記異常の位置を撮像するように、前記撮像手段及び前記相対移動手段を制御する制御手段と、前記撮像手段の前記一部の光電変換素子列よりも多い光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記異常の状態を判断する異常状態判断手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インクジェットヘッドの液体吐出面におけるノズル開口が配置されるノズル領域の第1の方向の全長に対応して複数の光電変換素子が配置された光電変換列を第2の方向に沿って複数配置された撮像手段と、インクジェットヘッドとを相対移動させながら、インクジェットヘッドの液体吐出面のノズル領域が撮像され、複数の光電変換素子列の一部から得られた撮像信号に基づいて、インクジェットヘッドの液体吐出面の異常の有無が判断されるので、液体吐出面の異常の検出が容易、かつ、短時間に行われる。
【0014】
また、異常が発見された場合には、異常位置が撮像され、異常の有無を判断したときよりも多くの光電変換素子列から撮像信号が取得されるので、異常の状態を詳細に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す全体構成図
【図2】図1に示すインクジェットヘッドの構造例を示す透視平面図
【図3】図1に示すインクジェット記録装置のメンテナンス処理部の概略構成図
【図4】図3に示す検出装置の概略構成を示す構成図
【図5】図1に示すインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【図6】図3に示す検出装置によるインク吐出面の異常検出を模式的に図示した説明図、a:検出開始直後の状態の説明図、b:検出終了直前の状態の説明図
【図7】拡大光学系を備えた検出装置によるインク吐出面の異常検出を模式的に図示した説明図
【図8】図3に示す検出装置に具備されるCCDイメージセンサの概略構成図
【図9】図3に示す検出装置の信号処理部の構成を示すブロック図
【図10】異常が発生していない場合の検出信号の説明図、a:インク吐出面及びエリアセンサと検出信号との関係を示す図、b:検出信号の波形図
【図11】異常が発生している場合の検出信号の説明図、a:インク吐出面及びエリアセンサと検出信号との関係を示す図、b:検出信号の波形図
【図12】本発明に係るインクジェットヘッドのインク吐出面異常検出方法の制御の流れを示すフローチャート
【図13】図12に示すエリア検出モードの制御の流れを示すフローチャート
【図14】本発明に係るインクジェットヘッドのメンテナンス方法の制御の流れを示すフローチャート
【図15】本発明の応用例に係るインクジェットヘッドのインク吐出面の異常検出を模式的に図示した説明図
【図16】図15に示すインクジェットヘッドの検出信号を示す説明図
【図17】図15に示すインクジェットヘッドのインク吐出面検出の他の態様を模式的に図示した説明図
【図18】図17に示すインクジェットヘッドのインク吐出面検出の検出信号を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明を実施するための形態について詳説する。
【0017】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置10の全体構成図である。図1に示すインクジェット記録装置10は、オンデマンド型インクジェット記録装置であり、記録媒体12を保持して搬送する記録媒体搬送部14と、記録媒体搬送部14に保持された記録媒体12に対して、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)に対応するカラーインクを吐出させるインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yを含む印字部17と、を含んで構成されている。
【0018】
記録媒体搬送部14は、記録媒体12が保持される記録媒体保持領域に多数の吸着穴(不図示)が設けられた無端状の搬送ベルト18と、搬送ベルト18が巻き掛けられる搬送ローラ(駆動ローラ20、従動ローラ22)と、記録媒体保持領域の搬送ベルト18の裏側(記録媒体12が保持される記録媒体保持面と反対側の面)に設けられ、記録媒体保持領域に設けられた不図示の吸着穴にと連通しているチャンバー24と、チャンバー24に負圧を発生させる真空ポンプ26と、を含んでいる。
【0019】
記録媒体12が搬入される搬入部28には、記録媒体12の浮きを防止するための押圧ローラ30が設けられるとともに、記録媒体12が排出される排出部32にもまた、押圧ローラ34が設けられている。
【0020】
搬入部28から搬入された記録媒体12は、記録媒体保持領域に設けられた吸着穴から負圧が付与され、搬送ベルト18の記録媒体保持領域に吸着保持される。
【0021】
記録媒体12の搬送路上には、印字部17の前段側(記録媒体搬送方向上流側)に、記録媒体12の表面温度を所定範囲に調整するための温度調節部36が設けられるとともに、印字部17の後段側(記録媒体搬送方向下流側)に、記録媒体12上に記録された画像を読み取る読取装置(読取センサ)38が設けられている。
【0022】
搬入部28から搬入された記録媒体12は、搬送ベルト18の記録媒体保持領域に吸着保持され、温度調節部36による温度調節処理が施された後に、印字部17において画像記録が行われる。
【0023】
図1に示すように、インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yは、記録媒体搬送方向の上流側からこの順番で配置されている。記録媒体12がインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yの直下を通過する際に、記録媒体12に対してKCMYの各色のインクを吐出させて、所望のカラー画像が形成される。
【0024】
なお、印字部17は上述した形態に限定されない。例えば、LC(ライトシアン)やLM(ライトマゼンタ)に対応するインクジェットヘッド16LC,16LMを具備してもよい。また、インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yの配置順も適宜変更可能である。
【0025】
画像記録がされた記録媒体12は、読取装置38によって記録画像(テストパターン)が読み取られた後に、排出部32から排出される。
【0026】
図1に図示は省略するが、インクジェット記録装置10はインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yにメンテナンス処理を施すメンテナンス処理部(図3に符号60を付して図示)を備えている。メンテナンス処理部は、印字部17の記録媒体搬送方向と直交する方向について、印字部17から離れた位置に配置される(図3参照)。
【0027】
図1に示すインクジェット記録装置10は、不図示のインク供給部を具備している。インク供給部は、インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yに供給されるインクを貯蔵するインクタンクを色ごと(ヘッドごと)に備えている。色ごとのインクタンクのそれぞれとインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yとは、不図示のインク供給路により連通されている。
【0028】
〔印字部の構成〕
図2は、印字部17に具備されるインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yの構造例を示す透視平面図(インク吐出面の反対側面から見た図)である。図1に図示したインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yは同一の構造を適用することができるので、ここではインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yに共通の符号16を付して図示するものとする。
【0029】
インクジェットヘッド16は、記録媒体12の主走査方向Mにおける全長を超える長さにわたって、複数のノズル50及び圧力室52が含まれる吐出素子54が配置されたフルライン型のインクジェットヘッドである。
【0030】
フルライン型のインクジェットヘッド16と記録媒体12とを相対的に一回だけ移動させるシングルパス方式により、記録媒体12全域にわたって記録画像を記録することができる。
【0031】
図2に示すインクジェットヘッド16は、主走査方向Mに沿う行方向、及び主走査方向M及び副走査方向Sと直交しない斜めの列方向に沿って複数のノズル50(吐出素子54)がマトリクス配置された構造を有している。
【0032】
図2に示すようにノズル50をマトリクス配置させることで、主走査方向Mの実質的なノズル配置密度が高密度化される。なお、本発明に適用可能なインクジェットヘッドのノズル配置は図2に図示したマトリクス配置に限定されない。
【0033】
例えば、インクジェットヘッド16の長手方向に沿って複数のノズル50を配置したノズル列を一列有する態様や、同方向に複数のノズル50を二列の千鳥配置させる態様などを適用することができる。
【0034】
インクジェットヘッド16の吐出方式は、圧電素子の撓み変形を利用する圧電方式や、インクの膜沸騰現象を利用するサーマル方式などの各種吐出方式が適用可能である。圧電方式が適用されるインクジェットヘッド16は、インクを吐出させるノズル50と、ノズル50と連通する圧力室52と、圧力室52の少なくとも一壁面に設けられる圧電素子と、を備えている。
【0035】
圧電素子は、上部電極及び下部電極に圧電体がはさまれた構造を有し、上部電極と下部電極との間に駆動電圧を印加することでたわみ変形が生じ、圧電素子のたわみ変形により圧力室52が変形することで、圧力室52の内部に収容されているインクがノズル50から吐出される。
【0036】
また、サーマル方式が適用されるインクジェットヘッドは、圧力室(液室)52の内部に収容されるインクを加熱するヒータを備え、圧力室52の内部のインクを瞬間的に加熱することで気泡を発生させ、ノズル50からインクを吐出させている。
【0037】
〔メンテナンス処理部の説明〕
図3は、図1に示すインクジェット記録装置10のメンテナンス処理部の概略構成図であり、メンテナンス処理部60と印字部17との配置関係が図示されている。
【0038】
図3に示すように、メンテナンス処理部60は、インクジェットヘッド16(16K,16C,16M,16Y)を記録媒体搬送部14上の画像形成位置から、記録媒体12の搬送方向と略直交する方向に水平移動させた位置に対応して配置されている。
【0039】
メンテナンス処理部60は、インクジェットヘッド16のインク吐出面16Aに洗浄液を付与する洗浄装置62と、インクジェットヘッド16に対してパージ処理又は吸引処理(ノズル内のインクの排出処理)を施すキャップ部64と、パージ処理又は吸引処理後のインクジェットヘッド16のインク吐出面16Aに対して払拭処理を施すブレード66を具備する払拭処理部68と、払拭処理後のインクジェットヘッド16のインク吐出面16Aの異常を検出する検出装置70と、を備えて構成されている。
【0040】
図3では、1ヘッド分に対応するメンテナンス処理部60の構成が図示されているが、洗浄装置62、キャップ部64、払拭処理部68及び検出装置70はインクジェットヘッド16ごとに、インクジェットヘッド16の数だけ設けられている。
【0041】
インクジェットヘッド16を記録媒体搬送部14の直上の画像形成位置(画像形成位置に位置するインクジェットヘッド16を破線により図示)からメンテナンス位置へ移動させるには、インクジェットヘッド16を記録媒体搬送部14上の画像形成位置から一旦上方へ退避させ、さらに、記録媒体12の搬送方向と直交する方向へ水平移動させる。
【0042】
インクジェットヘッド16を上下方向及び水平方向へ移動させる移動機構には、周知の水平搬送機構、上下搬送機構を適用することができる。
【0043】
「メンテナンス位置」とは、検出装置70の処理領域、払拭処理部68の処理領域、洗浄装置62の処理領域、及びキャップ部64の処理領域を含む概念である。なお、図3では、処理領域の一部であるキャップ部64の処理領域に位置するインクジェットヘッド16が一点破線によって図示されている。
【0044】
インクジェットヘッド16が洗浄装置62の処理領域に到達すると、洗浄装置62を上方へ移動させて(又は、インクジェットヘッド16を下方へ移動させて)、インク吐出面16Aの洗浄処理が実行される。
【0045】
インク吐出面16Aの洗浄処理が終了すると、インクジェットヘッド16をキャップ部64の処理領域へ移動させ、インク吐出面16Aにキャップ部64を密着させて、パージ処理又は吸引処理が実行される。
【0046】
キャップ部64は、排出流路72を介して廃インクタンク74と連通され、排出流路72には、ポンプ76が設けられる。インク吐出面16Aにキャップ部64を密着させ状態でポンプ76を動作させると、ノズルを介してインクジェットヘッド16内のインクが吸引される。
【0047】
このようにして、インクジェットヘッド16のパージ又は吸引処理が終了すると、インクジェットヘッド16は画像形成位置に移動する。インクジェットヘッド16がキャップ部64の処理位置から画像形成位置へ移動する途中に、払拭処理部68のブレード66によりインク吐出面16Aの払拭処理が施される。
【0048】
払拭処理部68による払拭処理の後に、検出装置70によってインク吐出面16Aの異常検出が実行される。なお、検出装置70によるインク吐出面16Aの異常検出の詳細は後述する。
【0049】
〔検出装置の構成〕
図4は、図3に図示した検出装置70の概略構成を示す構成図であり、本例に示すインク吐出面16Aの異常検出を模式的に説明する図である。図4では、インクジェットヘッド16が右から左へ移動し、払拭処理部68による払拭処理後にインク吐出面16Aの検出が実行されている状態が図示されている。
【0050】
図4に示す検出装置70は、複数の検出素子が二次元状に配置されたエリアセンサ80と、照明手段として機能する発光素子(LED)82と、これらを支持する支持部材(不図示)と、を具備している。
【0051】
エリアセンサ80の受光面と発光素子82の発光面は、キャップ部64の処理位置(図3参照)から画像形成位置へ移動させる、インクジェットヘッド16のインク吐出面16Aに対向する位置に配置される。
【0052】
発光素子82からインク吐出面16Aへ照明光が照射されると、エリアセンサ80はインク吐出面16Aにより反射した反射光を受光し、エリアセンサ80から受光量に比例した電圧が出力される。エリアセンサ80によって得られた電圧信号からインク吐出面16Aの検出信号(図10(b),図11(b)に符号160,162を付して図示)が生成される。
【0053】
正常時の検出信号(図10(b)に符号160を付して図示)の波形(波高値、時間幅等)と順次生成された検出信号(例えば、図11(b)の検出信号162)の波形が比較され、インク吐出面16Aの異常を検出信号の波形の異常として回路的に検出しうる(詳細後述)。
【0054】
〔制御系の説明〕
図5は、インクジェット記録装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、通信インターフェース100、システム制御部102、搬送制御部104、画像処理部106、ヘッド駆動部108を備えるとともに、画像メモリ110、ROM112を備えている。
【0055】
通信インターフェース100は、ホストコンピュータ114から送られてくるラスター画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース100は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース100は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0056】
システム制御部102は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、画像メモリ110及びROM112のメモリコントローラとして機能する。
【0057】
すなわち、システム制御部102は、通信インターフェース100、搬送制御部104等の各部を制御し、ホストコンピュータ114との間の通信制御、画像メモリ110及びROM112の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0058】
ホストコンピュータ114から送出された画像データは通信インターフェース100を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、画像処理部106によって所定の画像処理が施される。
【0059】
画像処理部106は、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッド駆動部108に供給する制御部である。
【0060】
画像処理部106において所要の信号処理が施されると、該印字データ(ハーフトーン画像データ)に基づいて、ヘッド駆動部108を介してインクジェットヘッド16の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。
【0061】
これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図5に示すヘッド駆動部108には、インクジェットヘッド16の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0062】
搬送制御部104は、画像処理部106により生成された印字データに基づいて記録媒体12(図1参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図5における搬送駆動部116は、記録媒体12を搬送する記録媒体搬送部14の駆動ローラ20(22)を駆動するモータが含まれており、搬送制御部104は該モータのドライバーとして機能している。
【0063】
画像メモリ(一時記憶メモリ)110は、通信インターフェース100を介して入力された画像データを一旦格納する一時記憶手段としての機能や、ROM112に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部106の作業領域)としての機能を有している。画像メモリ110には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
【0064】
ROM112は、システム制御部102のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部102を通じてデータの読み書きが行われる。ROM112は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
【0065】
パラメータ記憶部118は、インクジェット記録装置10の動作に必要な各種制御パラメータが記憶されている。システム制御部102は、制御に必要なパラメータを適宜読み出すとともに、必要に応じて各種パラメータの更新(書換)を実行する。
【0066】
プログラム格納部120は、インクジェット記録装置10を動作させるための制御プログラムが格納されている記憶手段である。システム制御部102(又は装置各部)は、装置各部の制御を実行する際にプログラム格納部120から必要な制御プログラムが読み出され、該制御プログラムは適宜実行される。
【0067】
表示部122は、システム制御部102から送出される各種情報を表示する手段であり、LCDモニタなどの汎用ディスプレイ装置が適用される。なお、表示部122の表示形態には、ランプの点灯(点滅、消灯)を適用してもよい。また、スピーカーなどの音(音声)出力手段を備えてもよい。
【0068】
入力インターフェース(I/F)124は、キーボード、マウス、ジョイスティックなどの情報入力手段が適用される。入力インターフェース124を介して入力された情報は、システム制御部102へ送出される。
【0069】
メンテナンス制御部126は、システム制御部102から送出された指令信号に基づいて、図3に図示したメンテナンス処理部60の各部の動作を制御する。例えば、インクジェットヘッド16の上下移動、水平移動、洗浄装置62によるインク吐出面16Aへの洗浄液付与、キャップ部64によるパージ(予備吐出)、吸引、ブレード66のインク吐出面16Aへの当接及び離間などを制御する。
【0070】
異常検出部128は、検出装置70から得られた検出信号に基づいてインクジェットヘッド16のインク吐出面16Aの異常の有無を判断する。インクジェットヘッド16のインク吐出面16Aの異常とは、インク吐出面16Aへの汚れの付着、傷の発見等が挙げられる。インク吐出面16Aの異常情報(異常の有無、異常の位置)はシステム制御部102へ送られる。
【0071】
システム制御部102がインク吐出面16Aの異常情報を取得すると、該異常情報は所定のメモリへ記憶されるとともに、メンテナンス制御部126へインクジェットヘッド16のメンテナンス処理を実行する旨の指令信号が送出され、メンテナンス処理部60において、インクジェットヘッド16のメンテナンス処理が実行される。
【0072】
〔インク吐出面の異常検出の説明〕
次に、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッド16のインク吐出面16Aの異常検出について詳細に説明する。
【0073】
図6(a),(b)は、図3に示す検出装置70によるインク吐出面16Aの異常検出を模式的に図示した説明図であり、インク吐出面16Aの反対側面からインク吐出面16Aを見た透視平面図となっている。
【0074】
図6(a)は、検出開始直後の状態が図示されており、図6(b)は検出終了直前の状態が図示されている。図6(a),(b)に示すエリアセンサ80は、二次元状に配置された複数の検出素子(不図示)を具備し、インクジェットヘッド16の短手方向(図2に図示した副走査方向S)における検出素子が配置される長さは、インク吐出面16Aの同方向の長さ以上となっている。
【0075】
また、検出素子の同方向における配置密度は、同方向におけるインクジェットヘッド16の実質的なノズル配置ピッチ以上となっている。例えば、ノズル50の配置密度が600dpi(ドット毎インチ)に対応し、検出素子の解像度が1200dpi(ドット毎インチ)とされる。換言すると、副走査方向Sにおける検出素子の画素密度は、同方向におけるインクジェットヘッド16の画素密度以上であり、少なくとも1つのノズルに対して1つの検出素子が対応している。
【0076】
一方、エリアセンサ80のインクジェットヘッド16の長手方向(図2に図示した主走査方向M)における検出素子が配置される長さは、インク吐出面16Aの同方向の長さよりも十分に短い。
【0077】
すなわち、一回の検出によりインク吐出面16Aの副走査方向Sの全長(少なくともノズル開口が形成されるノズル領域の同方向における全長)について、検出データを取得することができ、インクジェットヘッド16とエリアセンサ80とを主走査方向M)に相対的に移動させながら複数回の検出を行うことで、インク吐出面16Aの全域(少なくともノズル領域の全域)について検出データを取得することができる。
【0078】
本例に示すインク吐出面16Aの異常検出では、エリアセンサ80に含まれる、副走査方向に沿って配置された複数の検出素子群のうち、一部の検出素子群から取得された検出データに基づいて、インク吐出面16Aの異常の有無が判断されるとともに、当該異常の位置が特定される。
【0079】
すなわち、エリアセンサ80の一部がラインセンサとして使用され、高速にインク吐出面16Aの異常の有無及び異常の位置が把握される(ライン検出モード)。
【0080】
インク吐出面16Aの異常が発見されると、異常発生位置についてエリアセンサ80のすべての検出素子から(少なくとも、ライン検出モードで使用された検出素子よりも多い検出素子を用いて)、検出データが取得され(すなわち、エリアセンサとして使用され)、当該検出データに基づいて異常の状態が詳細に把握される(エリア検出モード)。
【0081】
図6(a),(b)に示す例では、エリアセンサ80の先頭側の一列の検出素子群80Aがライン検出モードで使用される。なお、ライン検出モードで使用される検出素子群は二列以上でもよく、また、エリアセンサ80の中央部の一部や、エリアセンサ80の読み終わり側の一部でもよい。
【0082】
図7は、拡大光学系を備えた検出装置によるインク吐出面16Aの異常検出を模式的に図示した説明図である。図7に示すように、インクジェットヘッド16の短手方向の全長に満たない長さの検出素子群80A’を有するエリアセンサ80’を備え、拡大光学系84を用いて、インクジェットヘッド16の短手方向におけるエリアセンサ80’の検出範囲を拡大させて、インクジェットヘッド16の副走査方向Sの全長に対応してもよい。
【0083】
なお、図7に図示した拡大光学系84は、複数のレンズや絞り機構などが組み合わせた構成を適用することができる。また、エリアセンサ80(80’)の受光面がインク吐出面16Aと対向しないようにエリアセンサ80を配置して、ミラーによりインク吐出面16Aによる反射光をエリアセンサ80の受光面に導くように構成してもよい。
【0084】
図8は、検出装置70に具備されるエリアセンサ80に適用される、インターライン型CCDイメージセンサの概略構成図である。
【0085】
同図に示すCCDイメージセンサ90は、複数のフォトダイオード92(前記した検出素子に対応)が二次元状に配置され、各フォトダイオード92に蓄積された信号電荷を垂直方向に転送する垂直転送CCD94と、垂直転送CCD94から送り出される信号電荷を水平方向へ転送する水平転送CCD96と、水平転送CCD96によって水平方向へ転送された信号電荷を点順次の電圧信号として出力する出力回路98と、を備えている。
【0086】
図8に示すCCDイメージセンサ90は、フォトダイオード92が千鳥配置されているので、実質的な垂直方向の撮像分解能は同方向のフォトダイオード92の配置密度の二倍となっている。例えば、同図中、一番左の垂直方向のフォトダイオード群93‐1と、右隣の同方向のフォトダイオード群93‐2とは、フォトダイオード92の配置ピッチが同一であり、垂直方向の位相が1/2ピッチずらして配置されている。
【0087】
この2つのフォトダイオード群93‐1,93‐2を実質的に同方向におけるひとつのフォトダイオード群とみなすことができる。
【0088】
図6(a),(b)に図示したライン検出モードで使用される先頭側の一列の検出素子群80Aは、図8に示すCCDイメージセンサ90において、フォトダイオード群93‐1及びフォトダイオード群93‐2とすることができる。
【0089】
なお、図8では、フォトダイオード92と垂直転送CCD94との間に設けられる転送ゲート、転送ゲートを制御する転送ゲート電極等の図示は省略されている。
【0090】
CCDイメージセンサ90の信号電荷の読み出しは、以下の手順により行われる。(1)先ず、不図示の転送ゲートを閉じておき、インクジェットヘッド16のインク吐出面16Aを撮像する(フォトダイオード92を感光する)。(2)転送ゲートを開いてフォトダイオード92に蓄積された電荷を垂直転送CCD94へ一斉に転送する。(3)転送ゲートを閉じ、各垂直転送CCD94の電荷を1回分転送する。各フォトダイオード群93の端部にある画素の電荷が水平転送CCD96へ移送される。
【0091】
(4)水平転送CCD96に順次転送パルスを与えて全水平画素を出力する。(5)(3)に戻って、垂直転送CCD94の全画素を読み出すまで(3)から(5)が繰り返され、すべてのフォトダイオード92から信号電荷が読み出される。
【0092】
CCDイメージセンサ90をライン検出モードで使用する場合は、使用されるフォトダイオード群93以外のフォトダイオード群93の信号電荷を垂直転送CCD94へ転送せずにオーバフロードレインへ掃き出してもよいし、出力回路98から出力された後の信号処理において処理してもよい。
【0093】
図8には、エリアセンサ80の例として、フォトダイオード92が千鳥配置された構造を有するインターライン型CCDイメージセンサを例示したが、フォトダイオード92が正方格子状に配置された構造を有するインターライン型CCDイメージセンサを適用してもよいし、フレームトランスファ型CCDイメージセンサを適用してもよい。
【0094】
また、ライン検出モードで使用される場合にメカニカルシャッターなどにより、使用されないフォトダイオード群93を遮光するように構成してもよい。さらに、エリアセンサ80として、CMOSセンサなど、他のエリアセンサを適用することも可能である。
【0095】
図9は、図8に示すエリアセンサ80から得られる撮像信号の信号処理部140の概略構成を示すブロック図である。ライン検出モードでは、1回の撮像ごとにフォトダイオードの受光量に比例した電圧信号が信号処理部140から出力され、エリア検出モードでは、インク吐出面16Aの異常位置における画像が信号処理部140から出力される。
【0096】
図9に示す信号処理部140は、エリアセンサ80の出力信号(アナログ信号)に所定の信号処理を施すアナログ信号処理部142と、アナログ信号処理部142による信号処理後のアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部144と、該デジタル信号に所定の信号処理を施すデジタル信号処理部146と、エリアセンサ80、アナログ信号処理部142、A/D変換部144を同期制御するための同期信号を出力するCCD駆動部148と、信号処理部140を統括的に制御する制御部150と、デジタル信号処理部146による信号処理後のデジタル信号(デジタルデータ)が記憶される記憶部152と、記憶部152に記憶されているデジタルデータをテレビ信号(映像信号)に変換するテレビ信号処理部154と、テレビ信号に変換された映像が出力される表示部156と、記憶部152に記憶されているデジタルデータを出力する信号出力部158と、を備えている。
【0097】
ライン検出モードでは、一回の撮像領域(インク吐出面16Aの副走査方向Sの全長と、エリアセンサ80の二列のフォトダイオード群93の主走査方向の長さによって囲まれる領域、先に説明した検出領域)ごとに、各フォトダイオード92の受光量に比例した電圧を有する検出信号(例えば、輝度信号を利用した検出信号)が生成される。
【0098】
該検出信号は信号出力部158から図5に図示した異常検出部128へ送られ、異常検出部128では、該検出信号の電圧波形に基づいて一回の撮像領域における汚れや傷の有無が判断されるとともに、汚れや傷の位置(インク吐出面16Aの副走査方向Sにおける位置)が把握される。
【0099】
エリア検出モードでは、エリアセンサ80から出力された出力信号に対して、インク吐出面16Aの画像を生成する処理が施される。アナログ信号処理部142では、色分解、ゲイン調整、オフセット調整等の処理が施され、デジタル信号処理部146ではホワイトバランス調整、ガンマ補正等の信号処理が施され、記憶部152へ記憶される。
【0100】
記憶部152に記憶された画像データは、テレビ信号処理部154によってNTSC方式等の所定の形式の映像信号に変換され、表示部156へ出力される。
【0101】
表示部156は、LCDディスプレイなどのモニタ装置が適用される。図9の表示部156は、図5の表示部122と兼用されてもよいし、図5の表示部122とは別に設けられてもよい。
【0102】
次に、ライン検出モードにおいて得られる検出信号の一例について説明する。図10(a)は、インク吐出面16Aに異常が発生していない場合のインク吐出面16A及びエリアセンサ80と、図10(b)に示す検出信号160の一部160Aとの関係を示す説明図であり、インク吐出面16Aの副走査方向Sにおける略中央部近傍が図示されている。
【0103】
また、図10(b)は、図10(a)に図示した検出信号の一部160Aに対応する検出信号160の全体の電圧波形を示す波形図である。図10(b)における横軸は副走査方向Sの位置に対応し、縦軸は副走査方向Sの位置ごとのデータ値に対応している。なお、以下の説明では、フォトダイオード92(図8参照)の配置密度がノズル50の配置密度の2倍以上であるものとしている。
【0104】
図10(a)に示すように、斜めに配置されたノズル50に対して、エリアセンサ80はフォトダイオード92が正方配置されており、ノズル50の配置とフォトダイオード92の配置が一致していない。かかる状態では、フォトダイオード92とノズル50と完全に一致したライン上で、一画素ごとに読み取りを行うことはできない。
【0105】
しかし、図10(a)に破線で図示したように、ノズル50の配列に合わせてエリアセンサ80を副走査方向Sに対して斜めに傾けて配置すると、ノズル50の配列に対応した波形を有する検出信号を得ることが可能となる。
【0106】
一方、副走査方向Sと平行にエリアセンサ80が配置される場合は、複数のノズル列に対応する幅で一回の検出を行うことにより、図10(a)に符号160Aを付して図示したように、実際のノズル間隔よりも細かい凹凸(電圧波形の変動)を有する検出信号が得られる。
【0107】
なお、検出信号の一部160Aの電圧波形の変動の周期は、フォトダイオード92の配置密度により異なり、該電圧波形の変動の振幅はフォトダイオード92の感度(ダイナミックレンジ)により異なる。
【0108】
図11(a)は、インク吐出面16Aに異常が発生している場合の図10(a)に対応する図であり、インク吐出面16Aに汚れ164B,164Cが付着した状態が図示されている。また、図11(b)は、インク吐出面16Aに汚れ164B,164Cが付着した状態を検出したときに得られる検出信号162が図示されている。
【0109】
図11(a)に示すようにインク吐出面16Aに汚れ164B,164Cが付着していると、図11(b)に符号162B,162Cを付して図示したように、異常部分のデータ値(検出信号162の電圧)が極端に低下する。
【0110】
すなわち、インク吐出面16Aに汚れの付着や傷の発生がないと、各フォトダイオード92の受光量に急激な変化はなく、図10(b)に示す検出信号160のように、電圧波形に急激な変化が現れない。一方、インク吐出面16Aに汚れの付着や傷の発生があると、当該汚れ(傷)の位置に対応するフォトダイオード92の受光量が、周辺のフォトダイオード92の受光量に比べて急激に変化(減少)するので、図11(b)に示す検出信号162のように、電圧波形に急激な変化(符号162B,162Cを付して図示)が現れる。
【0111】
また、電圧波形の急激な変化に対応するデータが、どのフォトダイオード92に対応しているかという情報から、副走査方向Sにおけるインク吐出面16Aの異常の位置を判断することができる。
【0112】
このようにして、エリアセンサ80の一部のフォトダイオード群93から得られた撮像信号に基づいて生成された検出信号によって、インク吐出面16Aの汚れの有無、傷の有無、及び汚れ、傷の位置が判断される。
【0113】
上述したインク吐出面16Aの検出を主走査方向Mについて検出対象位置を移動させながら実行することで、インク吐出面16Aの全面にわたって異常の有無を検出しうる。なお、一回の検出により得られたデータに対して積算、平均化等の処理を施して、代表データ値を生成し、該代表データ値を時系列に沿って並べることで、主走査方向Mの位置に対する代表データ値の関係を導出し、異常の有無を判断してもよい。
【0114】
次に、上述したインクジェットヘッド16のインク吐出面16Aの異常検出の全体の流れを、時系列に沿って説明する。図12は、本発明に係るインクジェットヘッドのインク吐出面異常検出方法の制御の流れを示すフローチャートである。
【0115】
インク吐出面16Aの異常検出が開始されると(ステップS10)、エリアセンサ80の検出モードがライン検出モードに設定され(ステップS12)、エリアセンサ80の一部のフォトダイオード群93(図9の一点破線により囲まれた二列のフォトダイオード群93‐1,93‐2)のみから電荷信号が取得され、図10(b)に示す検出信号160(又は、図11(b)に示す検出信号162)が生成され、一回の検出ごとに検出信号の中の異常波形の有無が判断される(図12のステップS14)。
【0116】
ステップS14において、検出信号の中に異常波形が存在していない場合には(NO判定)、次の領域の検出が順次実行され、生成された検出信号の中の異常波形の有無が判断され、ステップS18に進む。一方、ステップS14において、検出信号から異常波形が発見されると(YES判定)、当該異常位置が記憶される(ステップS16)。このようにして、インクジェットヘッド16と検出装置70とを相対移動させながら、インク吐出面16Aの検出が継続される(ステップS18のNo判定)。
【0117】
一方、インク吐出面16Aの全領域が検出されると(ステップS18のYes判定)、異常位置の情報が記憶されているメモリが参照され(ステップS20)、異常位置が記憶されていない場合は(ステップS20のNo判定)、当該異常検出は終了される(ステップS26)。
【0118】
一方、当該メモリに異常位置が記憶されている場合は(ステップS20のYes判定)、エリアセンサ80がエリア検出モードに設定され(ステップS22)、エリア検出モードが実行される(ステップS24)。
【0119】
ステップS24において、異常位置の詳細な状態(情報)を取得するための撮像が実行されて異常位置の画像が生成され、記憶され、当該異常検出は終了される(ステップS26)。
【0120】
図13は、図12のステップS24に示すエリア検出モードの制御の流れを示すフローチャートである。図13に示すように、エリア検出モードが開始されると(ステップS100)、異常個所の位置情報が読み出され(ステップS102)、当該異常位置が検出装置70(エリアセンサ80)の撮像領域に位置するように、インクジェットヘッド16と検出装置70とを相対移動させる(ステップS104)。
【0121】
インクジェットヘッド16と検出装置70との相対移動中は、当該異常位置が検出装置70の撮像領域に位置しているか否かが監視される(ステップS106)。当該異常位置が検出装置70の撮像領域に位置するまで、この監視は継続され(ステップS106のNo判定)、当該異常位置が検出装置70の撮像領域に位置すると(ステップS106のYes判定)、当該異常位置の撮像が実行される(ステップS108)。
【0122】
その後、撮像信号が取得され(ステップS110)、当該異常位置の画像が生成され(ステップS112)、記憶される(ステップS114)。なお、この画像は図9の表示部156に表示させてもよい。
【0123】
他の異常個所があれば(ステップS116のNo判定)、ステップS102からステップS114の各工程が繰り返し実行され、他の異常箇所がなければ(ステップS116のYes判定)。エリア検出モードは終了される(ステップS118)。
【0124】
以上説明したインク吐出面16Aの異常検出は、メンテナンス処理の最後(払拭処理部68によるインク吐出面16Aの払拭処理後)に実行されるので、異常が発見された場合には、再度のメンテナンス処理が実行される。
【0125】
次に、インクジェットヘッド16のメンテナンス処理の全体について説明する。図14は、本発明に係るインクジェットヘッドのメンテナンス方法の制御の流れを示すフローチャートである。以下に説明するインクジェットヘッドのメンテナンス処理は、装置立ち上げ時、印刷ジョブ間、異常発生時、オペレータによる要求時などに適宜実行される。
【0126】
図14に示すように、メンテナンス処理が開始されると(ステップS200)、インクジェットヘッド16をメンテナンス位置へ移動させる(図14のステップS202)。インクジェットヘッド16がメンテナンス位置に達したか否かが監視され(図14のステップS204)、この監視は、インクジェットヘッド16がメンテナンス位置に移動するまで継続される(ステップS204のNo判定)。
【0127】
インクジェットヘッド16が洗浄装置62の処理領域に達すると(ステップS204のYes判定)、洗浄装置62によるインク吐出面16Aの洗浄処理が実行される(ステップS206)。
【0128】
その後、インクジェットヘッド16をキャップ部64の処理領域へ移動させ、パージ処理又は吸引処理が実行される(ステップS208)。その後、インクジェットヘッド16をキャップ部64の処理領域から描画位置へ移動させる(ステップS210)。インクジェットヘッド16が検出装置70の検出領域に達すると、図12及び図13に図示したインク吐出面16Aの異常検出が実行される(ステップS212)。
【0129】
ステップS212において、インク吐出面16Aの異常が発見され、再度のメンテナンス処理が必要であると判断されると(ステップS214のYes判定)、ステップS202に戻り、インクジェットヘッド16のメンテナンス処理が実行される。
【0130】
一方、インク吐出面16Aの異常が発見されない場合は(ステップS214のNo判定)、インクジェットヘッド16が描画位置に戻されたか否かが監視され(ステップS216)、インクジェットヘッドが描画位置に戻されると(ステップS216のYes判定)、当該インクジェットヘッド16のメンテナンス処理は終了される(ステップS218)。
【0131】
上記インクジェットヘッド16のメンテナンス処理において、インク吐出面16A洗浄処理(ステップS206)の前にインク吐出面16Aの異常を検出しておき、当該異常が汚れの付着であればメンテナンス処理に移行する一方、当該異常が傷の場合はその旨を報知するとともに、傷の周辺のノズルが使用されないようにマスキングしてもよい。
【0132】
異常の報知の一例として、エリア検出モードで撮像されたインク吐出面16Aの画像を図5の表示部122に表示させる態様が挙げられる。
【0133】
また、汚れの状態(例えば、付着物の大きさ、内容)に応じて、インク吐出面16Aの洗浄の内容を、簡易モード、通常モード、強力モードのように切り換えることが可能である。
【0134】
さらに、傷の状態を判断して、使用に支障がない傷であれば、メンテナンス処理を実行し、使用に支障があると判断されると、傷の周辺にあるノズルのマスキング、インクジェットヘッド16の交換等をするように構成してもよい。
【0135】
上記の如く構成されたインク吐出面の異常検出によれば、複数のフォトダイオード92が二次元状に配置されたCCDイメージセンサ90(エリアセンサ80)の一部のフォトダイオード群93を用い、インクジェットヘッド16とCCDイメージセンサ90(検出装置70)とを相対的に移動させながら、インクジェットヘッド16のインク吐出面16Aの少なくともノズル開口が配置されるノズル領域の検出が行われ、インク吐出面16Aの異常の有無及び異常の位置が判断されるので、CCDイメージセンサ90の全画素を用いてインクジェットヘッド16のインク吐出面16Aの検出が行われる場合よりも検出に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0136】
また、インク吐出面16Aの異常が発見されると、CCDイメージセンサ90の全画素が用いられて当該異常が撮像され、インク吐出面16Aの画像が生成されるので、異常の状態を画像によって詳細に観察することが可能となる。
【0137】
CCDイメージセンサ90の一部を用いたライン検出モードでは、一回の検出により検出可能な領域についてフォトダイオード92の受光量に比例したデータ値を表す電圧波形を有する検出信号160(162)が生成されるので、検出信号電圧波形(電圧の急激な変化)に基づいて、異常の有無を容易に、かつ、確実に把握しうる。
【0138】
ライン検出モードで使用されるフォトダイオード群93の長さをインクジェットヘッド16(インク吐出面16A)の短手方向に対応する長さとすることで、インクジェットヘッド16とCCDイメージセンサ90とをインクジェットヘッドの長手方向の全長について一回だけ相対移動させることで、インク吐出面16Aの全面の検出が可能である。
【0139】
なお、ライン検出モードでは、インク吐出面16Aの中で少なくともノズル開口が形成されるノズル領域の検出がされればよい。
【0140】
本例では、CCDイメージセンサ90に含まれる一部のフォトダイオード群として同一の垂直転送CCD94へ電荷を転送する垂直方向の2つのフォトダイオード群93‐1,93‐2を例示したが、水平方向に沿うフォトダイオード群を使用してもよい。
【0141】
水平方向に沿うフォトダイオード群を使用すると、スミアの発生が抑制される。特に、水平転送CCD96に近いフォトダイオード群を使用すると、水平転送CCD96への読出時間を大幅に短縮することができる。
【0142】
本発明の実施形態では、記録媒体上にカラー画像を形成するインクジェット記録装置に具備されるインクジェットヘッドのインク吐出面の異常検出を例に挙げて説明したが、本発明の適用範囲はインクジェット記録装置に限定されない。
【0143】
例えば、樹脂粒子や金属粒子を含有する機能性液体により、所定のパターン(マスクパターン、配線パターン)を形成するパターン形成装置なと、インクジェット方式により媒体上に液体を噴射させる液体吐出装置に広く適用することが可能である。
【0144】
〔応用例〕
次に、本発明の応用例に係るインクジェットヘッドのインク吐出面の異常検出について説明する。以下に説明する応用例では、複数のヘッドユニットがつなぎ合わせられた構造を有するフルライン型ヘッドのインク吐出面の異常検出について説明する。
【0145】
なお、以下の説明において、先に説明した部分と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0146】
図15は、n個のヘッドユニット200(200‐1から200‐n)を具備するインクジェットヘッド210のインク吐出面210Aの異常検出を模式的に図示した説明図である。図15(a)は、インクジェットヘッド210のインク吐出面210Aの透視平面図であり、図15(b)はエリアセンサ80によるインク吐出面210Aの異常検出を模式的に図示した説明図である。
【0147】
図15(a),(b)に図示したインクジェットヘッド210は、ノズル50がマトリクス配置されたヘッドユニット200をn個具備し、n個のヘッドユニット200がインクジェットヘッド210の長手方向(主走査方向M)に沿って一列に並べられる構造を有している。
【0148】
各ヘッドユニット200間のつなぎ部202において、一方のヘッドユニット200に属するノズル50と他方のヘッドユニット200のノズル50とは互いに補間される関係となっている領域が存在する。
【0149】
また、ヘッドユニット200間のつなぎ部202では、各ヘッドユニット200の位置決め精度を緩和させるために、一方のヘッドユニット200に属するノズル50が他方のヘッドユニット200のノズル50の冗長ノズルとなっている領域が存在する。
【0150】
なお、図15(a),(b)では、ヘッドユニット200‐1とヘッドユニット200‐2とのつなぎ部のみに符号が付され、他のつなぎ部の符号の図示は省略されている。
【0151】
本応用例に係るインク吐出面210Aの異常検出では、つなぎ部202を異常として誤検出しないよう工夫がされている。
【0152】
図16(a)は、ライン検出モードにおいて生成された検出信号260を示す説明図である。同図に示す検出信号260の横軸は副走査方向Sの位置である。同図に符号262を付した部分は、つなぎ部202(図15参照)に対応する位置のデータ値を表している。
【0153】
ライン検出モードの一回の検出領域とつなぎ部202とは交差しているので、ライン検出モードの一回の検出データの中にはつなぎ部202に対応するデータ(急激な電圧変化が生じるデータ)が一か所現れる。このつなぎ部202に対応するデータは、図16(a)に破線で図示したように、時系列に沿って移動する。
【0154】
つなぎ部202に対応するデータは周期性を有しているので、直前の検出データや直後の検出データと比較することにより、検出信号におけるつなぎ部202に対応するデータの位置を把握することができる。
【0155】
つなぎ部202に対応する検出データ262に同期させて検出信号260にマスク264(図16(b)に図示)をかけることで、つなぎ部202が異常として誤検出されることを回避できる。図16(b)に図示したマスク264は、検出タイミングにより波形上の位置が変更される。
【0156】
本応用例によれば、複数のヘッドユニット200がつなぎ合わせられた構造を有するインクジェットヘッド210のインク吐出面210Aの異常検出において、ヘッドユニット200間のつなぎ部202に対応して、エリアセンサ80のライン検出モードにより生成された検出信号260にマスク264がされるので、ヘッドユニット200間のつなぎ部202を異常として誤検出することが防止される。
【0157】
また、図17に示すように、インク吐出面210Aにおけるノズル50(図2参照)が配置されるノズルエリア266(破線により図示)の外側に、マスク用のマーキング268(268A,268B)を形成してもよい。
【0158】
図18(a)は、マスク用のマーキング268A(図17参照)に対応するつなぎ部202のデータ262A’を含む検出信号260’‐1が図示されている。また、図18(b)は、マスク用のマーキング268Bに対応するつなぎ部202のデータ262B’を含む検出信号260’‐2が図示されている。
【0159】
なお、ヘッドユニット200間のつなぎ部202に対応するマスクを準備する際は、エリアセンサ80をエリア検出モードで使用した撮像信号が取得される。
【0160】
本応用例に示した、複数のヘッドユニット200をつなぎ合わせた構造を有するインクジェットヘッド210のインク吐出面210Aの異常検出を行う際は、ヘッドユニット200ごとに検出信号を取得するとよい。
【0161】
本応用例では、ヘッドユニット200が略平行四辺形の平面形状を有するインクジェットヘッド210を例示したが、略長方形又は略正方形の平面形状を有するヘッドユニットを具備するインクジェットヘッドにも本発明を適用することが可能である。
【0162】
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。
【0163】
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す態様を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0164】
(第1態様):第1態様に係る検出装置は、複数の光電変換素子が二次元状に配置され、インクジェットヘッドの液体吐出面におけるノズル開口が配置されるノズル領域の第1の方向の全長に対応して前記第1の方向に沿って複数の光電変換素子を配置させた光源変換素子列を、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って複数配置させた構造を有し、前記液体吐出面を撮像する撮像手段と、前記インクジェットヘッドと前記撮像手段とを前記第2の方向に沿って相対的に移動させる相対移動手段と、前記撮像手段の一部の光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記液体吐出面の異常の有無、及び前記異常の位置を判断する判断手段と、前記撮像装置と前記インクジェットヘッドとを相対移動させながら、前記撮像手段によって前記液体吐出面の前記ノズル領域を撮像し、前記判断手段により前記液体吐出面に異常があると判断されると、前記撮像手段を用いて前記異常の位置を撮像するように、前記撮像手段及び前記相対移動手段を制御する制御手段と、前記撮像手段の前記一部の光電変換素子列よりも多い光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記異常の状態を判断する異常状態判断手段と、を備えている。
【0165】
第1の態様によれば、インクジェットヘッドの液体吐出面におけるノズル開口が配置されるノズル領域の第1の方向の全長に対応して複数の光電変換素子が配置された光電変換列を第2の方向に沿って複数配置された撮像手段と、インクジェットヘッドとを相対移動させながら、インクジェットヘッドの液体吐出面のノズル領域が撮像され、複数の光電変換素子列の一部から得られた撮像信号に基づいて、インクジェットヘッドの液体吐出面の異常の有無が判断されるので、液体吐出面の異常の検出が容易、かつ、短時間に行われる。
【0166】
また、異常が発見された場合には、異常位置が撮像され、異常の有無を判断したときよりも多くの光電変換素子列から撮像信号が取得されるので、異常の状態を詳細に把握することができる。
【0167】
かかる態様における相対移動手段は、液体吐出面と撮像手段の受光面とを対向させた状態で移動させる態様がある。
【0168】
(第2態様):第2態様に係る検出装置は、前記一部の光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記液体吐出面の第1の方向における位置ごとの前記光電変換素子の受光量に対応する電圧を表す検出信号を生成する検出信号生成手段を備え、前記判断手段は、前記検出信号の電圧変化に基づいて前記液体吐出面の異常の有無を判断している。
【0169】
かかる態様によれば、光電変換素子の受光量に応じた電圧を有する検出信号が生成されるので、該検出信号における電圧変動から、異常の有無を容易に判断しうる。また、電圧変動の位置により、異常の位置を判断しうる。
【0170】
(第3態様):第3態様に係る検出装置は、前記撮像手段により撮像された前記異常位置の画像を生成する画像生成手段を備えている。
【0171】
かかる態様によれば、異常位置の画像を生成することで、異常の状態がより正確に把握される。
【0172】
(第4態様):第4態様に係る液体吐出装置は、二次元状に配置された複数のノズルの開口部が形成される液体吐出面を有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの液体吐出面の異常を検出する検出装置と、を具備し、前記検出装置は、複数の光電変換素子が二次元状に配置され、前記インクジェットヘッドの前記液体吐出面におけるノズル開口が配置されるノズル領域の第1の方向の全長に対応して前記第1の方向に沿って複数の光電変換素子を配置させた光源変換素子列が、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って複数配置させた構造を有し、前記液体吐出面を撮像する撮像手段と、前記インクジェットヘッドと前記撮像手段とを前記第2の方向に沿って相対的に移動させる相対移動手段と、前記撮像手段の一部の光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記液体吐出面の異常の有無、及び前記異常の位置を判断する判断手段と、前記撮像装置と前記インクジェットヘッドとを相対移動させながら、前記撮像手段によって前記液体吐出面の前記ノズル領域を撮像し、前記判断手段により前記液体吐出面に異常があると判断されると、前記撮像手段を用いて前記異常の位置を撮像するように、前記撮像手段及び前記相対移動手段を制御する制御手段と、前記撮像手段の前記一部の光電変換素子列よりも多い光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記異常の状態を判断する異常状態判断手段と、を備えている。
【0173】
かかる態様におけるインクジェットヘッドの一例として、吐出させた液体を受容する媒体の全幅に対応する長さにわたって複数のノズルが配置されるフルライン型インクジェットヘッドが挙げられる。
【0174】
(第5態様):第5態様に係る液体吐出装置は、前記第1の方向は、前記インクジェットヘッドの短手方向であり、前記第2の方向は前記インクジェットヘッドの長手方向である。
【0175】
かかる態様によれば、インクジェットヘッドと検出装置(撮像手段)とを一回だけ相対移動させることで、インクジェットヘッドの液体吐出面の全面の異常検出が可能である。
【0176】
(第6態様):第6態様に係る液体吐出装置は、前記インクジェットヘッドにメンテナンス処理を施すメンテナンス処理手段を備え、前記相対移動手段は、前記インクジェットヘッドから液体が吐出される液体吐出位置と、前記メンテナンス手段によりメンテナンス処理が施されるメンテンナンス位置と、の間を移動させ、前記検出装置は、前記メンテナンス手段によってメンテナンス処理が施された後の前記インクジェットヘッドの液体吐出面の異常を検出している。
【0177】
かかる態様によれば、インクジェットヘッドのメンテナンス処理後の液体吐出面の異常が検出されるので、異常が発見されれば、再度のメンテナンス処理等により当該異常を排除することができる。
【0178】
(第7態様):第7態様に係る液体吐出装置は、前記インクジェットヘッドは、複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせた構造を有し、前記判断手段は、前記ヘッドユニット間のつなぎ部に対応する撮像信号をマスクしている。
【0179】
かかる態様によれば、複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせた構造を有するインクジェットヘッドのヘッドモジュール間のつなぎ部を異常として誤検出することがない。
【0180】
(第8態様):第8態様に係る液体吐出装置は、前記インクジェットヘッドの液体吐出面は、各ヘッドユニットの前記ノズル領域と前記ノズル領域外との境界を表すマーキングが設けられる。
【0181】
かかる態様によれば、マーキングによりノズル領域の境界を容易に把握することができる。
【0182】
(第9態様):第9態様に係る液体吐出面の異常検出方法は、複数の光電変換素子が二次元状に配置され、インクジェットヘッドの液体吐出面におけるノズル開口が配置されるノズル領域の第1の方向の全長に対応して前記第1の方向に沿って複数の光電変換素子を配置させた光源変換素子列を、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って複数配置させた構造を有し、前記液体吐出面を撮像する撮像手段と、前記インクジェットヘッドとを、前記第2の方向に沿って相対的に移動させながら、前記撮像手段によって前記液体吐出面の前記ノズル領域を撮像する第1撮像工程と、前記第1撮像工程により、前記撮像手段の一部の光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記液体吐出面の異常の有無、及び前記異常の位置を判断する判断工程と、前記判断工程により前記液体吐出面に異常があると判断されると、前記撮像手段を用いて前記異常の位置を撮像する第2撮像工程と、前記第2撮像工程により得られた、前記撮像手段の前記一部の光電変換素子列よりも多い光電変換素子列からの撮像信号に基づいて、前記異常の状態を判断する異常状態判断工程と、を含んでいる。
【0183】
(第10態様):第10態様に係るインクジェットヘッドのメンテナンス方法は、二次元状に配置された複数のノズルの開口部が形成される液体吐出面を有するインクジェットヘッドにメンテナンス処理を施すメンテナンス処理工程と、前記メンテナンス処理された後の前記インクジェットヘッドの液体吐出面の異常を検出する異常検出工程と、を含み、前記異常検出工程は、複数の光電変換素子が二次元状に配置され、インクジェットヘッドの前記液体吐出面におけるノズル開口が配置されるノズル領域の第1の方向の全長に対応して前記第1の方向に沿って複数の光電変換素子を配置させた光源変換素子列を、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って複数配置させた構造を有し、前記液体吐出面を撮像する撮像手段と、前記インクジェットヘッドとを、前記第2の方向に沿って相対的に移動させながら、前記撮像手段によって前記液体吐出面の少なくともノズル開口が配置されるノズル領域を撮像する第1撮像工程と、前記第1撮像工程により、前記撮像手段の一部の光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記液体吐出面の異常の有無、及び前記異常の位置を判断する判断工程と、前記判断工程により前記液体吐出面に異常があると判断されると、前記撮像手段を用いて前記異常の位置を撮像する第2撮像工程と、前記第2撮像工程により得られた、前記撮像手段の前記一部の光電変換素子列よりも多い光電変換素子列からの撮像信号に基づいて、前記異常の状態を判断する異常状態判断工程と、を含んでいる。
【0184】
かかる態様におけるメンテナンス処理は、液体吐出面の洗浄処理及び払拭処理、ノズルの回復処理を含む態様がありうる。
【符号の説明】
【0185】
10…インクジェット記録装置、16,16K,16C,16M,16Y,210…インクジェットヘッド、16A,210A…ノズル面、60…メンテナンス処理部、70…検出装置、80…エリアセンサ、102…システム制御部、126…メンテナンス制御部、128…異常検出部、90…CCDイメージセンサ、92…フォトダイオード、93…フォトダイオード群、146…デジタル信号処理部、158…信号出力部、160,162,260…検出信号,200…ヘッドユニット、268…マーキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換素子が二次元状に配置され、インクジェットヘッドの液体吐出面におけるノズル開口が配置されるノズル領域の第1の方向の全長に対応して前記第1の方向に沿って複数の光電変換素子を配置させた光源変換素子列を、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って複数配置させた構造を有し、前記液体吐出面を撮像する撮像手段と、
前記インクジェットヘッドと前記撮像手段とを前記第2の方向に沿って相対的に移動させる相対移動手段と、
前記撮像手段の一部の光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記液体吐出面の異常の有無、及び前記異常の位置を判断する判断手段と、
前記撮像装置と前記インクジェットヘッドとを相対移動させながら、前記撮像手段によって前記液体吐出面の前記ノズル領域を撮像し、前記判断手段により前記液体吐出面に異常があると判断されると、前記撮像手段を用いて前記異常の位置を撮像するように、前記撮像手段及び前記相対移動手段を制御する制御手段と、
前記撮像手段の前記一部の光電変換素子列よりも多い光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記異常の状態を判断する異常状態判断手段と、
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記一部の光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記液体吐出面の第1の方向における位置ごとの前記光電変換素子の受光量に対応する電圧を表す検出信号を生成する検出信号生成手段を備え、
前記判断手段は、前記検出信号の電圧変化に基づいて前記液体吐出面の異常の有無を判断することを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記撮像手段により撮像された前記異常位置の画像を生成する画像生成手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
二次元状に配置された複数のノズルの開口部が形成される液体吐出面を有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドの液体吐出面の異常を検出する検出装置と、
を具備し、
前記検出装置は、複数の光電変換素子が二次元状に配置され、前記インクジェットヘッドの前記液体吐出面におけるノズル開口が配置されるノズル領域の第1の方向の全長に対応して前記第1の方向に沿って複数の光電変換素子を配置させた光源変換素子列を、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って複数配置させた構造を有し、前記液体吐出面を撮像する撮像手段と、
前記インクジェットヘッドと前記撮像手段とを前記第2の方向に沿って相対的に移動させる相対移動手段と、
前記撮像手段の一部の光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記液体吐出面の異常の有無、及び前記異常の位置を判断する判断手段と、
前記撮像装置と前記インクジェットヘッドとを相対移動させながら、前記撮像手段によって前記液体吐出面の前記ノズル領域を撮像し、前記判断手段により前記液体吐出面に異常があると判断されると、前記撮像手段を用いて前記異常の位置を撮像するように、前記撮像手段及び前記相対移動手段を制御する制御手段と、
前記撮像手段の前記一部の光電変換素子列よりも多い光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記異常の状態を判断する異常状態判断手段と、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1の方向は、前記インクジェットヘッドの短手方向であり、前記第2の方向は前記インクジェットヘッドの長手方向であることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記インクジェットヘッドにメンテナンス処理を施すメンテナンス処理手段を備え、
前記相対移動手段は、前記インクジェットヘッドから液体が吐出される液体吐出位置と、前記メンテナンス手段によりメンテナンス処理が施されるメンテンナンス位置と、の間を移動させ、
前記検出装置は、前記メンテナンス手段によってメンテナンス処理が施された後の前記インクジェットヘッドの液体吐出面の異常を検出することを特徴とする請求項4又は5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記インクジェットヘッドは、複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせた構造を有し、
前記判断手段は、前記ヘッドユニット間のつなぎ部に対応する撮像信号をマスクすることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記インクジェットヘッドの液体吐出面は、各ヘッドユニットの前記ノズル領域と前記ノズル領域外との境界を表すマーキングが設けられることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
複数の光電変換素子が二次元状に配置され、インクジェットヘッドの液体吐出面におけるノズル開口が配置されるノズル領域の第1の方向の全長に対応して前記第1の方向に沿って複数の光電変換素子を配置させた光源変換素子列を、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って複数配置させた構造を有し、前記液体吐出面を撮像する撮像手段と、前記インクジェットヘッドとを、前記第2の方向に沿って相対的に移動させながら、前記撮像手段によって前記液体吐出面の前記ノズル領域を撮像する第1撮像工程と、
前記第1撮像工程により、前記撮像手段の一部の光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記液体吐出面の異常の有無、及び前記異常の位置を判断する判断工程と、
前記判断工程により前記液体吐出面に異常があると判断されると、前記撮像手段を用いて前記異常の位置を撮像する第2撮像工程と、
前記第2撮像工程により得られた、前記撮像手段の前記一部の光電変換素子列よりも多い光電変換素子列からの撮像信号に基づいて、前記異常の状態を判断する異常状態判断工程と、
を含むことを特徴とする液体吐出面の異常検出方法。
【請求項10】
二次元状に配置された複数のノズルの開口部が形成される液体吐出面を有するインクジェットヘッドにメンテナンス処理を施すメンテナンス処理工程と、
前記メンテナンス処理された後の前記インクジェットヘッドの液体吐出面の異常を検出する異常検出工程と、
を含み、
前記異常検出工程は、複数の光電変換素子が二次元状に配置され、インクジェットヘッドの前記液体吐出面におけるノズル開口が配置されるノズル領域の第1の方向の全長に対応して前記第1の方向に沿って複数の光電変換素子を配置させた光源変換素子列を、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って複数配置させた構造を有し、前記液体吐出面を撮像する撮像手段と、前記インクジェットヘッドとを、前記第2の方向に沿って相対的に移動させながら、前記撮像手段によって前記液体吐出面の少なくともノズル開口が配置されるノズル領域を撮像する第1撮像工程と、
前記第1撮像工程により、前記撮像手段の一部の光電変換素子列から得られた撮像信号に基づいて、前記液体吐出面の異常の有無、及び前記異常の位置を判断する判断工程と、
前記判断工程により前記液体吐出面に異常があると判断されると、前記撮像手段を用いて前記異常の位置を撮像する第2撮像工程と、
前記第2撮像工程により得られた、前記撮像手段の前記一部の光電変換素子列よりも多い光電変換素子列からの撮像信号に基づいて、前記異常の状態を判断する異常状態判断工程と、
を含むことを特徴とするインクジェットヘッドのメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−78858(P2013−78858A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218640(P2011−218640)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】