説明

検出装置および方法、並びにプログラム

【課題】他のレーダ測定装置が近傍に存在するような環境においても、混信による影響を低減できるようにする。
【解決手段】送信部11は、周波数切替部32を制御して1周期ずつランダムな周波数のCW信号を発生させることで、ランダムな間隔で切替信号を発生させ、2種類の周波数の電波を、切替信号に基づいて、交互に切替えて送信する。受信部12は、送信された送信信号としての2種類の周波数の電波のうち、反射されてくる2種類の周波数の電波を、切替信号に基づいて、切替ながら受信し、受信した2種類の周波数の電波より受信信号を生成する。衝突予備動作用信号処理部13は、受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する。本発明は、車両安全装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、送信した電波が物体により反射したときに受信される電波により物体を検出する際、近傍に他の検出装置が存在する場合に生じる混信を低減できるようにした検出装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車と他車との間の相対速度や距離を測定するセンサとして、2周波CW(Continuous Wave)方式のセンサが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。すなわち、この2周波CW方式のセンサは、受信された搬送波に対するドップラ信号の周波数(以下、ドップラ周波数と称する)や位相を検出し、それらを利用して、自車と他車との相対速度や距離を測定する。
【0003】
【特許文献1】特許第3203600号公報
【特許文献2】特開2004−69693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような方式の測定装置を用いることにより後方より接近する他車の存在を検出する場合、一般に同周波数帯域の車載レーダを搭載した車両同士がすれ違うとき、混信が生じる。
【0005】
そこで、この混信対策として、従来、偏波を使って直接到来する電波の感度を落としたり、直接受信される信号が非常に強いことを利用して、ある閾値以上の強度の信号は他レーダからの信号だと判断し、排除したりすることで混信を防止していた。
【0006】
しかしながら、より多くの同様の方式のレーダ測定装置を搭載した車両が増えてくると上記対策では対応しきれない事例が生じる。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、他のレーダ測定装置が近傍に存在するような環境においても、混信による影響を低減できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面の検出装置は、2種類の周波数の電波を所定間隔で交互に切替えて送信し、物体からの反射波を受信することに基づいて物体を検出する検出装置であって、2種類の周波数の電波の送信タイミングを、ランダムな間隔で切り替える切替信号を生成する切替信号生成手段と、前記2種類の周波数の電波を送信信号として前記切替信号に基づいて交互に切替えて送信する送信手段と、前記送信手段により送信された送信信号が物体によって反射されてくる2種類の周波数の電波を受信し、前記切替信号に基づいて交互に信号処理を行うことによって2種類の周波数の電波に基づいた2種類の受信信号を生成する受信手段と、前記受信手段により生成された受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する検出手段とを含む。
【0009】
切替信号生成手段は、例えば、周波数切替部であり、送信部のアンテナから2種類の周波数の電波の送信するタイミング、受信部による受信のタイミングを、ランダムな間隔で切り替える切替信号を生成することにより、生成された切替信号に基づいて、送信される電波と、受信される電波とが、ランダムな間隔で切り替えられ、周波数切替部により生成される固有の切替間隔時間で、2種類の周波数の電波の送信、および受信が同期して切り替えられて、他の同様の方式の検出装置により送信された電波による混信を低減することが可能となる。
【0010】
送信手段は、例えば、送信部であり、切替信号生成手段により生成された切替信号に基づいて、2種類の周波数の電波を切替えて所定の範囲に対して電波を送信することができる。
【0011】
受信手段は、例えば、受信部であり、切替信号生成手段により生成された切替信号に基づいて、2種類の周波数の電波を切替えて所定の範囲の物体により反射される電波を受信することができる。
【0012】
前記切替信号生成手段には、乱数を発生する乱数発生手段を含ませるようにすることができ、前記乱数発生手段により発生された乱数に基づいて、前記ランダムな間隔を設定し、設定されたランダムな間隔で切替信号を生成させるようにすることができる。
【0013】
乱数発生手段は、例えば、乱数発生部であり、乱数発生部により発生される乱数に基づいて、時間を設定することにより、時間をランダムに設定することが可能となる。
【0014】
前記乱数は、擬似ランダム符号とすることができる。
【0015】
すなわち、乱数として、例えば、擬似ランダム符号により生成されたM系列の2値により、所定時間毎に切替信号の発生の有無を設定することで、間隔をランダムに設定し、検出装置毎に固有の間隔を設定することが可能となる。
【0016】
前記切替信号生成手段には、所定の時間間隔を判定する時間間隔判定手段をさらに含ませるようにすることができ、前記時間間隔判定手段により、前記所定の時間間隔で、乱数を発生するように、乱数発生手段を制御させるようにすることができ、前記乱数発生手段により発生された乱数に基づいて、前記ランダムな間隔を設定させ、設定されたランダムな間隔で切替信号を生成させるようにすることができる。
【0017】
所定時間間隔で、間隔を設定させることにより、送信、および受信される所定時間当たりの2種類の電波のデューティを変化させるようにすることが可能となり、所定時間間隔でランダムにデューティを切り替えることにより、固有の間隔をランダムに設定することが可能となる。
【0018】
本発明の一側面の検出方法は、2種類の周波数の電波を所定間隔で交互に切替えて送信し、物体からの反射波を受信することに基づいて物体を検出する検出方法であって、2種類の周波数の電波の送信タイミングを、ランダムな間隔で切り替える切替信号を生成する切替信号生成ステップと、前記2種類の周波数の電波を送信信号として前記切替信号に基づいて交互に切替えて送信する送信ステップと、前記送信手段により送信された送信信号が物体によって反射されてくる2種類の周波数の電波を受信し、前記切替信号に基づいて交互に信号処理を行うことによって2種類の周波数の電波に基づいた2種類の受信信号を生成する受信ステップと、前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する検出ステップとを含む。
【0019】
本発明の一側面のプログラムは、2種類の周波数の電波を所定間隔で交互に切替えて送信し、物体からの反射波を受信することに基づいて物体を検出する検出装置を制御するコンピュータに、2種類の周波数の電波の送信タイミングを、ランダムな間隔で切り替える切替信号を生成する切替信号生成ステップと、前記2種類の周波数の電波を送信信号として前記切替信号に基づいて交互に切替えて送信する送信ステップと、前記送信手段により送信された送信信号が物体によって反射されてくる2種類の周波数の電波を受信し、前記切替信号に基づいて交互に信号処理を行うことによって2種類の周波数の電波に基づいた2種類の受信信号を生成する受信ステップと、前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する検出ステップとを含む処理を実行させる。
【0020】
本発明の一側面においては、2種類の周波数の電波の送信タイミングが、ランダムな間隔で切り替えられ、前記2種類の周波数の電波を送信信号として前記切替信号に基づいて交互に切替えて送信され、送信された送信信号が物体によって反射されてくる2種類の周波数の電波が受信され、切替信号に基づいて交互に信号処理を行うことによって2種類の周波数の電波に基づいた2種類の受信信号が生成され、生成された受信信号が、所定時間の間でサンプリングされることにより、物体が検出される。
【0021】
以上により、近傍に他のレーダ検出装置が存在する場合に生じる混信を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、近傍に他のレーダ検出装置が存在する場合に生じる混信を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明に係るレーダ装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【0024】
レーダ装置1は、車両に搭載され、車両の後方範囲(ほぼ真後ろであって、比較的遠い部分を含む範囲)に相対速度が所定の速度以上の高速で接近する車両を検出して、衝突を予期して、衝突に備えた予備的な動作を実行させる、いわゆるプリクラッシュ機能を備えたものである。
【0025】
レーダ装置1は、送信部11、受信部12、衝突予備動作用信号処理部13、および衝突予備動作制御部14とから構成されている。
【0026】
送信部11は、2周波CW(Continuous Wave)からなる電波を送信信号として発生し照射する。受信部12は、送信部11より送信された送信信号である電波のうち、物体により反射されてくる電波を受信して、受信した電波より受信信号を生成し、衝突予備動作用信号処理部13に供給する。
【0027】
衝突予備動作用信号処理部13は、受信部12より供給されてくる受信信号を比較的短い周期でサンプリングし、後方からの他車の接近を検出して、衝突の有無を判定し、判定結果に応じて、衝突予備動作制御部14に対して衝突予備動作を実行させる。衝突予備動作制御部14は、例えば、音声警告装置、シートベルト、エアバッグ、または可動式ヘッドレストなどのいわゆる衝突時に乗員を保護する衝突保護機器の動作を制御し、衝突予備動作用信号処理部13より衝突予備動作を実施するように指示が出されると、音声により衝突の発生を事前警告して注意を促し、シートベルトを引き上げて乗員を座席に固定させ、いわゆる鞭打ち症などの発生を抑止したり、衝突前に適切なタイミングでエアバッグを動作させて衝突時の乗員の衝撃を吸収したり、さらには、可動式ヘッドレストを動作させて乗員の頭部に押し当てるなどして、乗員の衝突時の頭部への反動による衝撃を抑制させるといった処置を実行させる。
【0028】
次に、送信部11の詳細な構成について説明する。
【0029】
送信部11は、発振部31、周波数切替部32、増幅部33、3分岐部34、増幅部35、およびアンテナ36より構成されている。
【0030】
発振部31は、周波数切替部32から所定の間隔で供給されてくる切替信号に基づいて、数10GHz帯の周波数f1のCW信号と、周波数f1と数MHz異なる周波数f2のCW信号とを搬送波として切り替えて発生し、増幅部33で増幅させて3分岐部34に供給する。
【0031】
周波数切替部32は、乱数発生部41、周期時間判定部42、周期時間設定部43、f2周波判定部44、および切替信号発生部45より構成されている。
【0032】
乱数発生部41を制御して、乱数を発生させ、発生された乱数を周期時間設定部43に供給する。周期時間判定部42は、周波数f1またはf2のCW信号の発振が指示されてからの経過時間をカウントし、1回の連続して送信される時間に相当するタイミングである周期時間Tとなったか否かを判定する。周期時間設定部43は、発振部31で発生する周波数f1およびf2のCW信号がそれぞれ1周期時間Tずつ送信される毎に(したがって、周波数f1およびf2のCW信号の送信時間の総合計が2周期時間T毎に)新たに周期時間Tを設定する。。
【0033】
f2周波判定部44は、今現在発振部31により発生されているCW信号が周波数f2のもの(f2周波のCW信号)であるか否かを判定する。切替信号発生部45は、周期時間設定部43により設定された周期時間Tを経過したことに基づいて切替信号を発振部31に供給して、周波数f1から周波数f2に切り替えさせると共に、受信部12にも切替信号を供給する。
【0034】
3分岐部34は、増幅部33より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号を受信部12、および、増幅部35のそれぞれに分岐して供給する。増幅部35は、3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号を送信信号としてアンテナ36より電波として出力する。
【0035】
アンテナ36は、車両本体の後方中央部付近に設けられており、図2で示されるような範囲Z1を検知できるような強度分布特性を有している。図2においては、図中下方向が車両C1の進行方向であり、車両C1の後方中央部付近に設けられたアンテナA(図1におけるアンテナ36,51−1,51−2が一体となって構成されている)から電波が発せられているときの強度分布特性が示されている。
【0036】
図2の強度分布特性における範囲Z1は、アンテナAの存在する位置から後方正面を中央とした、水平方向に角度αで、かつ、比較的遠い位置までを含む図中の斜線部の範囲である。尚、図2においては、車両C1が、車線L1乃至L3のうちの車線L2を図中の下方向に走行している状態が示されている。
【0037】
次に、受信部12の構成について説明する。
【0038】
受信部12は、アンテナ51−1,51−2、加算部52、減算部53、LNA(Low Noise Amplifier)54−1,54−2、混合器55−1,55−2、振分部56,57、LPF(Low Pass Filter)58−1乃至58−3、増幅部59−1乃至59−3、およびADC(Analog Digital Converter)60−1乃至60−3から構成されている。
【0039】
アンテナ51−1,51−2は、送信部11のアンテナ36より照射された送信信号としての電波のうち、車両、または、人間などの物体に反射してくる電波を順次して受信し、受信した電波に対応する信号をそれぞれ加算部52および減算部53に供給する。尚、上述したように送信信号は、周波数f1,f2が順次切り替えられて送信されるが、物体が移動している場合、反射によって、周波数f1,f2に対応して、ドップラ周波数fd1,fd2が発生することになる。このため、アンテナ51−1,51−2により受信される電波は、周波数f1+fd1のCW信号に対応するものと、周波数f2+fd2のCW信号に対応するものとが、送信信号におけるf1,f2周波数の切替タイミングと同期して、順次切り替えられて受信されることになる。また、送信部11および受信部12の構成を含むレーダ装置1は、一体のパッケージとして構成され、車両の後部略中央部に搭載されるものであり、車両の大きさからみて、アンテナ51−1,51−2と、アンテナ36とは、実質的に略同位置に配置されるものである。このため、アンテナ51−1,51−2は、アンテナ36で出力された送信信号としての電波のうち、物体により反射され、略同一の位置に反射されて戻ってくる電波を受信する。
【0040】
加算部52は、アンテナ51−1,51−2より供給されてくる信号を加算して、f1和信号(周波数f1のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd1を含む周波数(f1+fd1)の和信号)、およびf2和信号(周波数f2のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd2を含む周波数(f2+fd2)の和信号)としてLNA54−1に供給する。減算部53は、アンテナ51−1,51−2より供給されてくる信号を減算して、f1差信号(周波数f1のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd1を含む周波数(f1+fd1)の差信号)、およびf2差信号(周波数f2のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd2を含む周波数(f2+fd2)の差信号)としてLNA54−1に供給する。
【0041】
LNA54−1,54−2は、それぞれ加算部52および減算部53より供給されてくるf1和信号またはf2和信号、およびf1差信号、またはf2差信号を、それぞれ後段の混合器55−1,55−2に3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号のレベルと同程度にまで増幅し、混合器55−1,55−2に供給する。
【0042】
混合器55−1,55−2は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号と、LNA54−1,54−2のそれぞれから供給されてくるf1和信号およびf1差信号、または、f2和信号およびf2差信号とを混合し、それぞれ振分部56,57に供給する。尚、f1和信号およびf1差信号が、周波数f1のCW信号と混合された信号については、それぞれfd1和信号およびfd1差信号と称するものとし、f2和信号およびf2差信号が、周波数f2のCW信号と混合された信号については、それぞれfd2和信号およびfd2差信号と称するものとする。
【0043】
振分部56は、混合器55−1より供給されてくる信号を、切替信号に対応して、LPF58−1,58−2に周波数ごとに、それぞれfd1和信号およびfd2和信号として振り分けて出力する。振分部57は、それぞれ混合器55−2より供給されてくるfd1差信号、およびfd2差信号のうち、切替信号に対応して、fd1差信号のみをLPF58−3に振り分けて出力する。
【0044】
LPF58−1乃至58−3は、それぞれ振分部56,57より供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を平滑化した後、増幅部59−1乃至59−3に供給する。増幅部59−1乃至59−3は、それぞれLPF58−1乃至58−3より供給されてきたfd1和信号、fd2和信号、および、fd1差信号を増幅して、ADC60−1乃至60−3に供給する。ADC60−1乃至60−3は、平滑化されて、さらに増幅されたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、デジタル信号に変換し、受信信号として、それぞれ衝突予備動作用信号制御部13に供給する。
【0045】
衝突予備動作用信号処理部13は、受信部12より受信信号としてそれぞれに供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を順次サンプリングして、FFT処理し、fd1和信号、fd2和信号、およびfd1のスペクトル分布から、検出された車両の速度v、距離D、および角度θを算出し、衝突の可能性の有無を判定し、衝突の可能性があると判定した場合、衝突予備動作をとるように衝突予備動作制御部14に指示する。
【0046】
次に、図3のフローチャートを参照して、図1のレーダ装置1による物体の計測処理について説明する。
【0047】
ステップS1において、発振部31は、周波数切替部32の切替信号発生部45からの周波数f1またはf2のCW信号への切替信号に基づいて、f1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかを発振し、増幅部33で増幅させて3分岐部34に出力させる。このとき、周波数切替部32は、切替信号発生部45を制御して、同一の周波数f2への切替信号を受信部12にも供給すると共に、周期時間判定部42は、周波数f1のCW信号、または周波数f2のCW信号を発生してからの経過時間のカウントを開始する。尚、このとき、周期時間設定部43は、所定の値を初期値として備えており、その初期値を周期時間Tとして設定する。
【0048】
ステップS2において、3分岐部34は、増幅部33より供給されてきたf1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかのCW信号を分岐して、受信部12および増幅部35にそれぞれ供給する。そして、増幅部35は、3分岐部34より供給されてきたf1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかのCW信号をアンテナ36より電波を出力することにより、送信信号として送信する。このとき、アンテナ36より送信された送信信号としての電波は、例えば、図2で示されるような強度分布で出力される。尚、図2における範囲Z1からなる形状は、厳密なものである必要はなく、概ね同様の形状となるような強度分布となるように送信されれば良いものである。
【0049】
ステップS2の処理により出力された電波としての送信信号は、図2で示される強度分布により出力されるため、範囲Z1から構成される範囲に物体(車両)が存在する場合、その物体により反射される。すなわち、送信信号は、上述の通り、図4の上部で示されるように、アンテナA(図4では、アンテナ36,51−1,51−2を一体化したものとし簡略化して表現している)より順次周波数f1およびf2のCW信号が切り替えられて出力される。このため、物体である車両C1で反射されると、それぞれの周波数のCW信号に対応してドップラ周波数fd1またはfd2が発生することにより、図4の下部で示されるように、順次周波数f1+fd1、または、f2+fd2のCW信号として反射され、この反射波となる電波が受信されることになる。
【0050】
そこで、ステップS3において、アンテナ51−1,51−2は、反射されてくる電波を受信し、受信した電波に対応する信号を加算部52、および減算部53にそれぞれ供給する。
【0051】
ステップS4において、加算部52は、アンテナ51−1,51−2より供給されてきた受信信号を相互に加算してf1和信号またはf2和信号を生成し、LNA54−1に出力し、所定の電圧まで増幅して混合器55−1に出力させる。
【0052】
ステップS5において、減算部53は、アンテナ51−1,51−2より供給されてきた受信信号を相互に減算してf1差信号、またはf2差信号を生成し、LNA54−2に出力し、所定の電圧まで増幅して混合器55−2に出力させる。
【0053】
ステップS6において、混合器55−1は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる送信信号と、和信号とを混合し、和信号の混合信号として振分部56に出力する。また、混合器55−2は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる送信信号と、差信号とを混合し、差信号の混合信号として振分部57に出力する。
【0054】
尚、このステップS2乃至S6の処理は、フローチャートの表記として異なるタイミングで処理されるものとされているが、実際の処理は、ほぼ同時に処理されており、実質的に並列処理されているものである。
【0055】
ステップS7において、振分部56は、送信部11の周波数切替部32より供給されてくる切替信号が、周波数f1に対応する切替信号のとき、対応する和信号であるfd1和信号をLPF58−1に供給し、切替信号が、周波数f2に対応する切替信号のとき、対応する和信号であるfd2和信号をLPF58−2に供給する。また、振分部57は、送信部12の周波数切替部32よりステップS12の処理で供給されてくる切替信号が、周波数f1に対応する切替信号のときのみ、対応する差信号であるfd1差信号をLPF58−3に供給する。
【0056】
すなわち、図5の左上段で示されるように、周波数切替部32が、切替信号として、周波数f1のときHiを、周波数f2のときLowを出力する場合、図5の左中段で示されるように、振分部56には、切替信号に対応して、混合器55−1より周波数f1に対応する和信号であるfd1和信号、および周波数f2に対応する和信号であるfd2和信号が交互に順次供給されてくる。このとき、振分部56は、切替信号が周波数f1に対応するHiのとき、図5の右上段で示されるように、fd1和信号をLPF58−1に供給し、切替信号が周波数f2に対応するLowのとき、図5の右中段で示されるように、fd2和信号をLPF58−2に供給する。
【0057】
また、図5の左上段で示されるように、周波数切替部32が、切替信号として、周波数f1のときHiを、周波数f2のときLowを出力する場合、図5の左下段で示されるように、振分部57には、切替信号に対応して、混合器55−2より周波数f1に対応する差信号であるfd1差信号、および周波数f2に対応する差信号であるfd2差信号が交互に順次供給されてくる。このとき、振分部57は、切替信号が周波数f1に対応するHiのときのみ、図5の右下段で示されるように、fd1差信号をLPF58−3に供給する。
【0058】
ステップS8において、LPF58−1乃至58−3は、順次振分部56,57より供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、それぞれ平滑化して増幅部59−1乃至59−3に供給する。増幅部59−1乃至59−3は、供給されてきたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、それぞれ増幅し、ADC60−1乃至60−3に供給する。ADC60−1乃至60−3は、平滑化され、さらに増幅されたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号をデジタル信号に変換し、衝突予備動作用信号処理部13に受信信号として供給する。
【0059】
以上の処理を纏めると以下のようになる。ステップS2の処理において、例えば、送信部11のアンテナ36より出力される電波が、以下の式(1)で表されるものとすると、アンテナ51−1,51−2で受信される電波は、以下の式(2),式(3)として表される。
【0060】
【数1】

【0061】
【数2】

【0062】
【数3】

【0063】
ここで、Tiは送信電波を、Rx1,Rx2は、それぞれアンテナ51−1,51−2の電波を、AおよびBは、それぞれ送信電波および受信電波の強度を、dは物体までの距離を、vはレーダ装置1を搭載した車両と送信信号としての電波を反射する物体としての車両C1との相対速度を、fiは送信された電波の周波数(i=1のとき周波数f1、i=2のとき周波数f2)を、cは光速を、Lは、例えば、図6で示されるアンテナ51−1,51−2間の距離を、θは図6で示されるアンテナ51−1,51−2間の中心から物体C1の角度(到来角)をそれぞれ表している。また、式(3)における括弧内の第3項のLsin(θ)は、図6で示されるように、アンテナ51−1,51−2の双方に到達する電波の経路差を示すものである。したがって、車両C1から受信される電波のアンテナ51−1,51−2への経路は平行であるものとすれば、アンテナ51−1,51−2の双方で受信される受信信号には、経路差Lsin(θ)分に相当する位相差が生じていることになる。
【0064】
そこで、ステップS4の処理においては、加算部52が、式(2),式(3)で示されるアンテナ51−1,51−2で受信される電波の信号を加算することにより、以下の式(4)で示される和信号Raddを生成する。式(4)においては、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が、振幅として表されている。すなわち、式(4)においては、2Bcos(π・Lsin(θ)・fi/c)の項により、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が振幅として表されている。
【0065】
【数4】

【0066】
また、ステップS5の処理においては、減算部53が、式(2),式(3)で示されるアンテナ51−1,51−2の受信電波に対応する信号を減算することにより、以下の式(5)で示される差信号Rsubを生成する。式(5)においては、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が、振幅として表される。すなわち、式(5)においては、2Bsin(π・Lsin(θ)・fi/c)の項により、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が振幅として表されている。
【0067】
【数5】

【0068】
そして、ステップS6の処理により、混合器55−1、55−2が、式(4),式(5)で表される和信号Raddおよび差信号Rsubを、それぞれ送信信号と混合することにより、以下の式(6),式(7)で示される和信号の混合信号Radd_dおよび差信号の混合信号Rsub_dが求められる。
【0069】
【数6】

【0070】
【数7】

【0071】
この和信号の混合信号Radd_dが、図5における周波数f1またはf2に対応するfd1和信号またはfd2和信号であり、差信号の混合信号Rsub_dが、図5における周波数f1に対応するfd1差信号である。
【0072】
すなわち、以上の処理により、式(6),式(7)で表されるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号が、周波数f1またはf2の切替信号に同期して、図5で示されるように、それぞれLPF58−1乃至58−3に供給される。そして、ステップS8の処理により、LPF58−1乃至58−3は、離散的に供給されてくるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を、それぞれに平滑化することにより連続的な値に変換し、増幅部59−1乃至59−3に供給する。増幅部59−1乃至59−3は、それぞれを増幅して、ADC60−1乃至60−3に供給する。さらに、ADC60−1乃至60−3がデジタル信号に変換して、衝突予備動作用信号処理部13、および車線変更警告用信号処理部15に、それぞれ3種類の受信信号(平滑化されて連続的なデジタル信号にされたfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号)として供給される。
【0073】
ここで、図3のフローチャートの説明に戻る。
【0074】
ステップS9において、周期時間判定部42は、今現在発振部31より発振されている周波数のCW信号が、発振を開始してからの経過時間が設定された周期時間Tを経過したか否かを判定する。ステップS9において、例えば、経過時間が周期時間Tを経過していない場合、処理は、ステップS16に進む。
【0075】
一方、ステップS9において、今現在発振部31より発振されている周波数のCW信号が、発振を開始してからの経過時間が周期時間Tを経過ししていると判定された場合、ステップS10において、f2周波判定部44は、今現在発振部31より発振されている周波数が周波数f2のCW信号であるか否かを判定する。ステップS10において、例えば、今現在発振部31より発振されている周波数が周波数f2のCW信号であると判定された場合、ステップS11において、乱数発生部41は、乱数Rを発生し、発生した乱数Rを周期時間設定部43に供給する。
【0076】
ステップS12において、周期時間設定部43は、乱数発生部41により発生された乱数Rに対応して、周波数f1のCW信号の周期時間Tを設定して、記憶し、さらに、切替信号発生部45に供給する。乱数Rが0乃至1までの値である場合、周期時間設定部43は、例えば、((R+0.5)×10)μsを周期時間Tとして設定する。
【0077】
ステップS13において、切替信号発生部45は、切替信号を発生し、発信部31および受信部12に供給すると共に、発振部31に対して所定の周波数である周波数f1により発振するように制御する。
【0078】
ステップS14において、発振部31は、発振周波数を切替信号と共に供給されてきた周波数に切り替えて、周波数f1として発振し、発振したCW信号を増幅部33に供給する。
【0079】
ステップS15において、周期時間判定部42は周波数f1のCW信号、または周波数f2のCW信号を発生してからの経過時間をリセットし、再びカウントを開始する。
【0080】
ステップS16において、衝突予備動作用信号処理部13は、受信部12より供給されてくるデジタル信号からなるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を取得し、順次記憶し、サンプリングして信号処理し、検出された物体(車両)の速度v、距離D、および角度θを計算する。
【0081】
ステップS17において、衝突予備動作用信号処理部13は、計算された物体(車両)の速度v、距離D、および角度θに基づいて、衝突の可能性の有無を判定し、衝突の可能性があると判定するとき、ステップS16において、衝突予備動作制御部14に対して、衝突予備動作を実施するように指示する。
【0082】
この処理に応じて、衝突予備動作制御部14は、衝突に備えて、例えば、警告音声を発することで衝突の発生を警告すると共に、シートベルトを引き上げて、乗員を座席に固定させ、いわゆる鞭打ち症などの発生を抑止したり、衝突前に適切なタイミングでエアバッグを動作させて衝突時の衝撃を吸収したり、さらには、可動式ヘッドレストを頭部に押し当てるなどして、乗員の衝突時の頭部への反動による衝撃を抑制させるといった動作を実施する。
【0083】
一方、ステップS17において、衝突の可能性がないと判定された場合、処理は、ステップS2に戻る。
【0084】
また、ステップS10において、今現在発振部31より発振されているCW信号が、周波数f2のCW信号ではないと判定された場合、ステップS19において、切替信号発生部45は、切替信号を発生し、発信部31および受信部12に供給すると共に、発振部31に対して、直前のステップS12の処理で設定された周波数f1の周波数に対して僅かに異なる周波数f2のCW信号を発振するように制御する。
【0085】
ステップS20において、発振部31は、発振周波数を切替信号と共に供給されてきた周波数に切り替えて、周波数f2として発振し、発振したCW信号を増幅部33に供給する。
【0086】
通常、図7の上段で示されるように、時間的に略等間隔で周波数f1,f2が切り替えられることにより、近接したレーダ装置が付近に存在すると、周波数f1,f2のCW信号の相互の切替タイミングが同期すると混信により干渉してしまうことがあった。尚、図7の上段においては、時刻t0乃至t8がそれぞれ等間隔であって、時刻t0乃至t1,t1乃至t2,t2乃至t3,t3乃至t4,t4乃至t5,t5乃至t6,t6乃至t7,t7乃至t8となる周期時間Tが10μsで切り替わる、すなわち、基本周期100KHzで周波数f1,f2のCW信号が切り替えられて送信されていることが示されている。
【0087】
しかしながら、上述の処理により、周波数f1のCW信号と、周波数f2のCW信号とが、それぞれ1周期時間Tずつ送信される毎に(合計2周期時間Tが経過する毎に)、乱数が発生され、発生された乱数に基づいて周期時間Tが変化することにより、例えば、図7の下段で示されるように、時刻t10乃至t12においては、80KHzで周波数f1,f2のCW信号が切り替えられて送信され、時刻t12乃至t14においては、120KHzで周波数f1,f2のCW信号が切り替えられて送信され、時刻t14乃至t16においては、90KHzで周波数f1,f2のCW信号が切り替えられて送信され、さらに時刻t16乃至t18においては、100KHzで周波数f1,f2のCW信号が切り替えられて送信される。
【0088】
このため、同様の機能を備えたレーダ装置が付近に存在したとしても、周期時間がランダムに設定されることで、相互の周波数f1,f2のCW信号の切替タイミングがランダムに異なるため、同期することが抑制され、混信による干渉を低減することが可能となる。
【0089】
尚、LPF58−1乃至58−3の効果を低減させないため、周波数f1およびf2を切り替える周波数の周期は、基本となる周期の長さを100%とするとき、その80%乃至120%程度の範囲で変化させる必要がある。すなわち、周波数f1およびf2を切り替える基本周波数が100KHzに設定される場合、LPF58−1乃至58−3のカットオフ周波数が50%であるとき、周波数が基本周波数の50%に変化されるようなことがあると、LPF58−1乃至58−3による平滑化の効果が生じないことになってしまうので、周波数は、LPF58−1乃至58−3のカットオフ周波数より十分に高いレベルの周期である必要があるからである。
【0090】
以上においては、周波数f1のCW信号と、周波数f2のCW信号とがそれぞれランダムに設定される周期時間Tだけ送信される毎に切り替える例について説明してきたが、例えば、周波数f1,f2を固定し、単位時間当たりの周波数f1のCW信号の送信時間と周波数f2のCW信号の送信時間との間隔をランダムに変化させるようにしてもよい。
【0091】
図8は、周波数f1,f2を固定し、単位時間当たりの周波数f1のCW信号の送信時間と周波数f2のCW信号の送信時間との割合をランダムに変化させるようにしたレーダ装置1のその他の実施の形態の構成例を示している。尚、図8において、図1と同様の構成については、同様の名称と同一の符号を付しているので、その説明については、適宜省略するものとする。
【0092】
図8のレーダ装置1において、図1のレーダ装置1と異なる構成は、周波数切替部32に代えて、周波数切替部101を設けた点である。
【0093】
周波数切替部101は、乱数発生部121、f1周波時間判定部122、f2周波時間判定部123、切替信号発生部124、および切替時間設定部125より構成されている。
【0094】
乱数発生部121は、基本的に上述した乱数発生部41と同様のものである。f1周波時間判定部122は、周波数f1のCW信号が送信されているf1周波時間をカウントし、切替時間設定部125により設定されている、周波数f1のCW信号の送信時間の長さf1周波時間Tf1に達したか否かを判定する。f2周波時間判定部123は、周波数f2のCW信号が送信されているf2周波時間をカウントし、切替時間設定部125により設定されている、周波数f2のCW信号の時間の長さf2周波時間Tf2に達したか否かを判定する。尚、f1周波時間判定部122は、周波数f2のCW信号が送信されている間、f1周波時間のカウントを休止し、周波数f1のCW信号が送信されている間のみ、f1周波時間をカウントする。また、f2周波時間判定部123は、周波数f1のCW信号が送信されている間、f2周波時間のカウントを休止し、周波数f2のCW信号が送信されている間のみ、f2周波時間をカウントする。切替信号発生部124は、周波数f1またはf2のCW信号のいずれかを切り替えるタイミングを示す切替信号を発生し、発振部31、および受信部12に供給する。切替時間設定部125は、乱数発生部121により発生される乱数に基づいて、周波数f1のCW信号の時間の長さf1周波時間Tf1および周波数f2のCW信号の時間の長さf2周波時間Tf2を設定し、f1周波時間判定部122、およびf2周波時間判定部123に供給する。
【0095】
次に、図9のフローチャートを参照して、図8のレーダ装置1による計測処理について説明する。尚、図9のフローチャートにおけるステップS31乃至S38、およびステップS46乃至S48の処理については、基本的に、図3のフローチャートにおけるステップS1乃至S8、およびステップS16乃至S18の処理と同様の処理であるので、その説明は省略するものとする。ただし、ステップS31においては、ステップS1の処理に加えて、f1周波時間判定部122、およびf2周波時間判定部123のうち、今現在送信されている周波数f1またはf2の送信開始タイミングに合わせて送信時間であるf1周波時間、およびf2周波時間のカウントを開始する。
【0096】
ステップS39において、f2周波時間判定部123は、今現在送信されているのが周波数f2のCW信号であるか否かを判定する。すなわち、今現在送信されているのが周波数f2のCW信号である場合、f2周波時間判定部123は、周波数f2のCW信号の送信時間の長さであるf2周波時間をカウントしているので、送信時間の長さがカウントされているとき、今現在送信されているのが周波数f2のCW信号であると判定することができる。
【0097】
ステップS39において、例えば、今現在送信されているのが周波数f2のCW信号であると判定された場合、ステップS40において、f2周波時間判定部123は、カウントしている周波数f2のCW信号の送信時間の長さが、切替時間設定部125により設定されたf2周波時間Tf2に達したか否かを判定する。尚、f2周波時間Tf2については、詳細を後述する。
【0098】
ステップS40において、例えば、周波数f2のCW信号の送信時間の長さが、切替時間設定部125により設定されたf2周波時間Tf2に達したと判定された場合、ステップS41において、乱数発生部121は、乱数Rを発生し、切替時間設定部125に供給する。
【0099】
ステップS42において、切替時間設定部125は、乱数発生部121より供給されてきた乱数Rに基づいて、周波数f1のCW信号の時間の長さf1周波時間Tf1および周波数f2のCW信号の時間の長さf2周波時間Tf2を設定する。より具体的には、例えば、乱数Rが0乃至1までの値である場合、切替時間設定部125は、所定時間TLに対して、周波数f1のCW信号の時間の長さf1周波時間Tf1をTL×Rとして設定し、周波数f2のCW信号の時間の長さf2周波時間Tf2をTL×(1−R)として設定する。
【0100】
ステップS43において、切替信号発生部124は、周波数f1のCW信号を発振するように切替信号を発生し、発信部31および受信部12に供給する。
【0101】
ステップS44において、発振部31は、切替信号に基づいて、周波数f1に切り替えて発振し、発振したCW信号を増幅部33に供給する。
【0102】
ステップS45において、f1周波時間判定部122は周波数f1のCW信号を発生してからのf1周波時間のカウントをリセットし、再びカウントを開始する。このとき、f2周波時間判定部123はf2周波時間のカウントを休止している。
【0103】
一方、ステップS39において、例えば、今現在送信されているのが周波数f2のCW信号ではないと判定された場合、すなわち、今現在送信されているのが周波数f1のCW信号であると判定された場合、ステップS49において、f1周波時間判定部122は、カウントしている周波数f1のCW信号の送信時間の長さであるf1周波時間が、直近のステップS42の処理で切替時間設定部125により設定されたf1周波時間Tf1に達したか否かを判定する。
【0104】
ステップS49において、例えば、カウントしている周波数f1のCW信号の送信時間の長さであるf1周波時間が、直近のステップS42の処理で切替時間設定部125により設定されたf1周波時間Tf1に達したと判定された場合、ステップS50において、切替信号発生部124は、周波数f2のCW信号を発振するように切替信号を発生し、発信部31および受信部12に供給する。
【0105】
ステップS51において、発振部31は、切替信号に基づいて、周波数f2に切り替えて発振し、発振したCW信号を増幅部33に供給する。
【0106】
ステップS52において、f2周波時間判定部123は周波数f2のCW信号を発生してからのf2周波時間のカウントをリセットし、再びカウントを開始すると共に、f1周波時間判定部122はf1周波時間のカウントを休止する。そして、処理は、ステップS46に進む。
【0107】
また、ステップS40において、周波数f2のCW信号の送信時間の長さであるf2周波時間が、切替時間設定部125により設定されたf2周波時間Tf2に達していないと判定された場合、または、ステップS49において、周波数f1のCW信号の送信時間の長さであるf1周波時間が、切替時間設定部125により設定されたf1周波時間Tf1に達していないと判定された場合、処理は、ステップS46に進む。
【0108】
上述したように、通常、図10の上段で示されるように、時間的に略等間隔で周波数f1,f2が切り替えられることにより、周波数f1,f2が近接したレーダ装置が付近に存在すると、相互の切替タイミングが同期すると混信により干渉してしまうことがあった。尚、図10の上段においては、時刻t30乃至t38がそれぞれ等間隔であって、時刻t0乃至t1,t1乃至t2,t2乃至t3,t3乃至t4,t4乃至t5,t5乃至t6,t6乃至t7,t7乃至t8となる周期時間Tが10μsで切り替わる、すなわち、基本周期100KHzで周波数f1,f2のCW信号が切り替えられて送信されていることが示されている。
【0109】
しかしながら、上述の処理により、周波数f1のCW信号と、周波数f2のCW信号とが、それぞれ所定時間TLが経過する毎に、乱数が発生され、発生された乱数に基づいて所定時間TLにおける周波数f1のCW信号と、周波数f2のCW信号とが送信される時間の割合(デューティ)が変化することにより、例えば、図10の下段で示されるように、時刻t50乃至t51においては、周波数f1のCW信号が送信され、時刻t51乃至t52においては、周波数f2のCW信号が送信され、また、時刻t52乃至t53においては、周波数f1のCW信号が送信され、時刻t53乃至t54においては、周波数f2のCW信号が送信され、さらに、時刻t54乃至t55においては、周波数f1のCW信号が送信され、時刻t55乃至t56においては、周波数f2のCW信号が送信され、また、時刻t56乃至t57においては、周波数f1のCW信号が送信され、時刻t57乃至t58においては、周波数f2のCW信号が送信される。尚、図10の下段においては、時刻t50乃至t51および時刻t51乃至t52の総和時間が所定時間TLであり、時刻t52乃至t53および時刻t53乃至t54の総和時間が所定時間TLであり、時刻t54乃至t55および時刻t55乃至t56の総和時間が所定時間TLであり、並びに、時刻t56乃至t57および時刻t57乃至t58の総和時間が所定時間TLであるが、その割合は乱数Rによって設定されるため、相互に必ずしも同一の割合ではない。したがって、周波数f1,f2のそれぞれの送信時間が異なるが、総和時間が同一であるので、周波数f1のCW信号と、周波数f2のCW信号とは、総じて100kHzの周波数で送信され続ける。
【0110】
また、上述の処理に加えて、所定時間TL毎に、図1のレーダ装置1におけるように周波数f1,f2の周波数を乱数に基づいてランダムに変更するようにしてもよい。
【0111】
このため、同様の機能を備えたレーダ装置が付近に存在したとしても、周波数f1のCW信号と、周波数f2のCW信号との送信時間の割合がランダムに設定されるため、同期すること抑制され、混信による干渉を低減することが可能となる。
【0112】
以上においては、周波数f1のCW信号と、周波数f2のCW信号との送信時間の比率を所定時間毎に切り替える例について説明してきたが、例えば、周波数f1,f2を固定し、周波数f1のCW信号の送信時間と周波数f2のCW信号の送信時間とをランダムに変化させるようにしてもよい。
【0113】
図11は、周波数f1,f2を固定し、周波数f1のCW信号の送信時間と周波数f2のCW信号の送信時間とをランダムに変化させるようにしたレーダ装置1のその他の実施の形態の構成例を示している。尚、図11において、図1または図8と同様の構成については、同様の名称と同一の符号を付しており、その説明については、適宜省略するものとする。
【0114】
図11のレーダ装置1において、図1または図8のレーダ装置1と異なる構成は、周波数切替部32または101に代えて、周波数切替部131を設けた点である。
【0115】
周波数切替部131は、乱数発生部141、間隔時間判定部142、間隔時間設定部143、および切替信号発生部144より構成されている。周波数切替部131は、乱数発生部141を制御して、乱数を発生させ、発生された乱数を間隔時間設定部143に供給し、周波数を切り替える切替信号を発生させるための間隔時間を設定させる。また、周波数切替部131は、間隔時間判定部142を制御して、間隔時間設定部143により設定された間隔時間が経過したか否かを判定させ、間隔時間が経過すると、切替信号発生部144を制御して、周波数を切り替えるための切替信号を発生させて、発振部31に供給すると共に、受信部12にも切替信号を供給する。
【0116】
次に、図12のフローチャートを参照して、図11のレーダ装置1による計測処理について説明する。尚、図12のフローチャートにおけるステップS101乃至S108、およびステップS114乃至S116の処理については、基本的に、図3のフローチャートにおけるステップS1乃至S8、およびステップS16乃至S18の処理と同様の処理であるので、その説明は省略するものとする。
【0117】
ステップS109において、周波数切替部131は、間隔時間判定部142を制御して、今現在出力している周波数f1、またはf2のいずれかのCW信号に切り替えてからの間隔時間を示す間隔時間カウンタTが、間隔時間T1を経過したか否かを判定させ、間隔時間T1が経過していないと判定された場合、後述するステップS110乃至S113の処理がスキップされて、処理は、ステップS114に進む。
【0118】
一方、ステップS109において、間隔時間T1が経過していると判定された場合、ステップS110において、周波数切替部131は、乱数発生部141を制御して乱数Rを発生させる。
【0119】
ステップS111において、周波数切替部131は、間隔時間設定部143を制御し、発生した乱数Rに対応する値に基づいて、間隔時間T1を設定させる。より具体的には、例えば、間隔時間設定部143は、基準間隔時間をTaとして、乱数発生部141により発生された乱数Rが整数となるように処理し、3で除したときの余りに1を加算した値を基準間隔時間Taに乗じた値を間隔時間T1に設定する。
【0120】
ステップS112において、周波数切替部131は、切替信号発生部144を制御して、切替信号を発生させ発振部31に供給させると共に発生した切替信号を受信部12の振分部56,57にも供給する。
【0121】
ステップS113において、発振部31は、周波数切替部131より供給されてきた切替信号に基づいて、それまでに出力していた周波数とは別の周波数に切り替えて、発振部31にCW信号を発振させる。このとき、周波数切替部131は、図示せぬ間隔時間カウンタTを初期化してカウントを開始させる。
【0122】
すなわち、例えば、基準間隔時間をTaとして、ステップS110において、乱数発生部41により発生された乱数Rが整数となるように処理され、ステップS111において、乱数Rを3で除したときの余りに1を加算した値を基準間隔時間Taに乗じた値が間隔時間T1に設定される場合、図13で示されるように、時刻t100において、ステップS112の処理により、切替信号が発生され、周波数f1から周波数f2が発生するように切り替えられ、初期値として間隔時間T1が間隔時間Taに設定されるとき、時刻t100乃至t101においては、周波数f2の電波が送信部11より送信され、受信部12において、対応する周波数の電波が受信されて、混合器55−1からは振分部56に対してfd2和信号が供給される。そこで、振分部56は、切替信号に基づいて、時刻t100乃至t101(間隔時間T1=基準間隔時間Ta×1)において、fd2和信号をLPF58−2に振り分けて供給する。尚、図13においては、時系列に沿った、受信部12による混合器55−1より出力されるfd1和信号およびfd2和信号の例が示されている。
【0123】
次に、時刻t100から基準間隔時間Ta×1が経過した時刻t101において、ステップS109の処理により間隔時間T1が経過したと判定されるので、この時刻t1のタイミングで、再びステップS110乃至S112の処理により、切替信号が発生され、周波数f2から周波数f1が発生されるように切り替えられる。このとき、ステップS111の処理により、発生された乱数Rを除したときの余りに1を加算した値が2であった場合、間隔時間T1は基準間隔時間Ta×2として設定される。このため、時刻t101から基準間隔時間Ta×2が経過するまでの時刻t101乃至t102においては、周波数f1の電波が送信部11より送信され、受信部12においては、対応する周波数の電波が受信されて、混合器55−1からは振分部56に対してfd1和信号が供給される。そこで、振分部56は、切替信号に基づいて、時刻t101乃至t102(間隔時間T1=基準間隔時間Ta×2)において、fd1和信号をLPF58−1に振り分けて供給する。
【0124】
また、時刻t101から基準間隔時間Ta×2が経過した時刻t102において、ステップS109の処理により、間隔時間T1が経過したと判定されるので、この時刻t102のタイミングでステップS110乃至S112の処理により、切替信号が発生され、周波数f1から周波数f2が発生されるように切り替えられる。このとき、発生された乱数Rを除したときの余りに1を加算した値が1であった場合、間隔時間T1は基準間隔時間Ta×1に設定される。このため、時刻t101から基準間隔時間Ta×1が経過するまでの時刻t2乃至t3においては、周波数f2の電波が送信部11より送信され、受信部12においては、対応する周波数の電波が受信されて、混合器55−1からは振分部56に対してfd2和信号が供給される。そこで、振分部56は、切替信号に基づいて、時刻t102乃至t103(間隔時間T1=基準間隔時間Ta×1)において、fd2和信号をLPF58−2に振り分けて供給する。
【0125】
さらに、時刻t102から基準間隔時間Ta×1が経過した時刻t103において、ステップS109の処理により、間隔時間T1が経過したと判定されるので、この時刻t103のタイミングで、ステップS110乃至S112の処理により切替信号が発生され、周波数f2から周波数f1が発生されるように切り替えられる。このとき、発生された乱数Rを除したときの余りに1を加算した値が1であった場合、間隔時間T1は基準間隔時間Ta×1に設定される。このため、時刻t3から基準間隔時間Ta×1が経過するまでの時刻t103乃至t104においては、周波数f1の電波が送信部11より送信され、受信部12においては、対応する周波数の電波が受信されて、混合器55−1からは振分部56に対してfd1和信号が供給される。そこで、振分部56は、切替信号に基づいて、時刻t103乃至t104(間隔時間T1=基準間隔時間Ta×1)において、fd1和信号をLPF58−1に振り分けて供給する。
【0126】
また、時刻t103から基準間隔時間Ta×1が経過した時刻t104において、ステップS109の処理により、間隔時間T1が経過したと判定されるので、この時刻t104のタイミングでステップS110乃至S112の処理により、切替信号が発生され、周波数f1から周波数f2が発生されるように切り替えられる。このとき、発生された乱数Rを除したときの余りに1を加算した値が1であった場合、間隔時間T1は基準間隔時間Ta×1に設定される。このため、時刻t104から基準間隔時間Ta×1が経過するまでの時刻t104乃至t105においては、周波数f2の電波が送信部11より送信され、受信部12においては、対応する周波数の電波が受信されて、混合器55−1からは振分部56に対してfd2和信号が供給される。そこで、振分部56は、切替信号に基づいて、時刻t104乃至t105(間隔時間T1=基準間隔時間Ta×1)において、fd2和信号をLPF58−2に振り分けて供給する。
【0127】
さらに、時刻t104から基準間隔時間Ta×1が経過した時刻t105において、ステップS109の処理により、間隔時間T1が経過したと判定されるので、この時刻t105のタイミングでステップS110乃至S112の処理により、切替信号が発生され、周波数f2から周波数f1が発生されるように切り替えられる。このとき、発生された乱数Rを除したときの余りに1を加算した値が2であった場合、間隔時間T1は基準間隔時間Ta×2に設定される。このため、時刻t105から基準間隔時間Ta×2が経過するまでの時刻t105乃至t106においては、周波数f1の電波が送信部11より送信され、受信部12においては、対応する周波数の電波が受信されて、混合器55−1からは振分部56に対してfd1和信号が供給される。そこで、振分部56は、切替信号に基づいて、時刻t105乃至t106(間隔時間T1=基準間隔時間Ta×2)において、fd1和信号をLPF58−1に振り分けて供給する。
【0128】
また、時刻t105から基準間隔時間Ta×2が経過した時刻t106において、ステップS109の処理により、間隔時間T1が経過したと判定されるので、この時刻t106のタイミングで切替信号が発生され、周波数f1から周波数f2が発生されるように切り替えられる。このとき、発生された乱数Rを除したときの余りに1を加算した値が3であった場合、間隔時間T1は基準間隔時間Ta×3に設定される。このため、時刻t106から基準間隔時間Ta×3が経過するまでの時刻t106乃至t107においては、周波数f2の電波が送信部11より送信され、受信部12においては、対応する周波数の電波が受信されて、混合器55−1からは振分部56に対してfd2和信号が供給される。そこで、振分部56は、切替信号に基づいて、時刻t106乃至t107(間隔時間T1=基準間隔時間Ta×3)において、fd2和信号をLPF58−2に振り分けて供給する。
【0129】
さらに、時刻t106から基準間隔時間Ta×3が経過した時刻t107において、ステップS109の処理により、間隔時間T1が経過したと判定されるので、この時刻t7のタイミングでステップS110乃至S112の処理により切替信号が発生され、周波数f2から周波数f1が発生されるように切り替えられる。このとき、発生された乱数Rを除したときの余りに1を加算した値が1であった場合、間隔時間T1は基準間隔時間Ta×1に設定される。このため、時刻t107から基準間隔時間Ta×1が経過するまでの時刻t7乃至t8においては、周波数f1の電波が送信部11より送信され、受信部12においては、対応する周波数の電波が受信されて、混合器55−1からは振分部56に対してfd1和信号が供給される。そこで、振分部56は、切替信号に基づいて、時刻t107乃至t108(間隔時間T1=基準間隔時間Ta×1)において、fd1和信号をLPF58−1に振り分けて供給する。
【0130】
このように周波数f1,f2のCW信号は、乱数R(が整数に処理された値)を3で除したときの余りの種類に応じた3種類の間隔時間T1でランダムに切り替えられ、そのタイミングに対応してfd1和信号およびfd2和信号が振り分けられて、LPF58−1,58−2に供給される。
【0131】
図12のフローチャートを参照して説明した処理により、例えば、近傍に同様の手法により、略同周波数の信号を発するレーダ装置が存在しているような場合、仮に、同周波数の信号が重畳するようなことがあっても、その時間は1/2に抑制することが可能となるので、混信による影響を受ける信号量についても1/2に抑制することが可能となる。
【0132】
尚、fd1和信号、およびfd2和信号は、それぞれLPF58−1,58−2により復元されることになるので、上述した間隔時間T1は、LPF58−1,58−2で除去可能な周波数帯よりも高い周波数帯域をとるように設定する必要がある。また、混合器55−2におけるfd1差信号についても、同様の処理により、切替信号に対応して振分部57よりLPF58−3に供給される。
【0133】
さらに、以上においては、間隔時間T1を切り替える度に乱数Rを発生させて、乱数Rを3で除した余りに応じた3種類の間隔時間T1をランダムに切り替える例について説明してきたが、間隔時間T1に設定される間隔時間の種類は、さらに多くてもよい。また、間隔時間T1をランダムに設定できればよいので、例えば、擬似ランダム信号を発生させて、擬似ランダム信号に対応して切替信号を発生させるようにしても良い。すなわち、例えば、3ビットの擬似ランダム信号を発生させる場合、例えば、擬似ランダム信号として「101」が発生されたとき、各ビットの値に対応して、所定時間間隔毎に、”切替信号を発生させる(Hi)、切替信号を発生させない(Low)、切替信号を発生させる(Hi)”といった処理を実行させ、この時点で再び擬似ランダム信号を発生させ、同様に所定時間間隔で連続する3回分の切替信号の発生の制御処理を繰り返すことにより、切替信号の発生間隔をランダムに設定するようにしても良い。
【0134】
以上の処理により、周波数f1,f2を切り替えるタイミングをランダムに設定することができるので、2周波の電波を切り替えて送信、および受信する手法を用いた他のレーダ装置が近傍に存在していても、その信号による干渉を抑制することが可能となり、正確に物体の速度、距離、および角度を測定することが可能となる。結果として、2周波の電波を切り替えて送信、および受信する手法を用いた他のレーダ装置が近傍に存在していても、混信により生じる検出精度の低減を抑制することができ、自車への衝突の有無を高精度で検出することが可能となるので、衝突時の安全性を向上させることが可能となる。
【0135】
尚、以上においては切替信号を発生するタイミングで、乱数を発生させて、次の間隔時間T1を乱数Rに応じて設定させ、順次設定される間隔時間T1ごとに周波数f1,f2を切り替える切替信号を発生させる例について説明してきたが、間隔時間T1を固定せずに、切り替えられれば、混信を低減することはできるので、例えば、所定時間毎に、乱数を発生させ、発生した乱数に対応する間隔時間で切替信号を発生することで、所定時間ごとに切替信号の発生間隔を切り替えるようにすることで、所定時間ごとの切替信号の単位時間当たりの発生頻度(デューティ)を切り替えるようにしてもよい。
【0136】
図15は、所定時間毎に、乱数を発生させ、所定時間内については、発生した乱数に対応する間隔時間で切替信号を発生することにより、所定時間ごとに切替信号の発生間隔を切り替えるようにしたレーダ装置1のその他の実施の形態の構成例を示している。尚、図15において、図1,図8または図11と同様の構成については、同様の名称と同一の符号を付しているので、その説明については、適宜省略するものとする。
【0137】
図15のレーダ装置1において、図1,図8または図11のレーダ装置1と異なる構成は、周波数切替部32,101、または131に代えて、周波数切替部151を設けた点である。
【0138】
周波数切替部151は、乱数発生部171、間隔時間判定部172、間隔時間設定部173、切替信号発生部174、およびデューティ切替時間判定部175を備えている。
【0139】
乱数発生部171、間隔時間判定部172、および切替信号発生部174は、乱数発生部141、間隔時間判定部143、および切替信号発生部144と同様の機能を備えたものである。
【0140】
間隔時間設定部173は、乱数発生部171で発生された乱数に基づいて、所定時間内における切替信号を発生する間隔時間を設定する。
【0141】
デューティ切替時間判定部175は、切替信号を発生する間隔時間を切り替える(デューティを切り替える)所定時間を計測する。
【0142】
次に、図16のフローチャートを参照して、図15のレーダ装置1による計測処理について説明する。尚、図16のフローチャートにおけるステップS131乃至S138、およびステップS145乃至S147の処理については、基本的に、図3のフローチャートにおけるステップS1乃至S8、およびステップS16乃至S18の処理と同様の処理であるので、その説明は省略するものとする。ただし、ステップS131においては、ステップS1の処理に加えて、間隔時間判定部172が、図示せぬ間隔時間カウンタTを初期化してカウントを開始すると共に、デューティ切替時間判定部175が、図示せぬデューティ切替時間カウンタDTを初期化してカウントを開始する。
【0143】
ステップS139において、周波数切替部151は、デューティ切替時間判定部175を制御して、デューティ切替時間カウンタDTがデューティ切替時間DT1を経過しているか否かを判定させる。ステップS139において、例えば、デューティ切替時間カウンタDTがデューティ切替時間DT1を経過していると判定された場合、ステップS140において、周波数切替部151は、乱数発生部171を制御して乱数Rを発生させる。
【0144】
ステップS141において、周波数切替部151は、間隔時間設定部173を制御し、発生した乱数Rに対応する値に基づいて、間隔時間T2を設定させる。より具体的には、例えば、間隔時間設定部173は、基準間隔時間をTaとして、乱数発生部171により発生された乱数Rが整数となるように処理し、3で除したときの余りに1を加算した値を基準間隔時間Taに乗じた値を間隔時間T2に設定する。
【0145】
ステップS142において、周波数切替部151は、間隔時間判定部172を制御して、今現在出力している周波数f1、またはf2のいずれかのCW信号に切り替えてからの間隔時間を示す間隔時間カウンタTが、間隔時間T2を経過したか否かを判定させ、間隔時間T2が経過していないと判定された場合、後述するステップS143,S144の処理がスキップされて、処理は、ステップS145に進む。
【0146】
一方、ステップS142において、間隔時間T2が経過していると判定された場合、ステップS143において、周波数切替部151は、切替信号発生部174を制御して、切替信号を発生させ発振部31に供給させると共に発生した切替信号を受信部12の振分部56,57にも供給する。
【0147】
ステップS144において、発振部31は、周波数切替部32より供給されてきた切替信号に基づいて、それまでに出力していた周波数とは別の周波数に切り替えて、発振部31にCW信号を発振させる。
【0148】
以上の処理により、例えば、図17で示されるように、時刻t200乃至t208(=デューティ切替時間DT1)においては、間隔時間T2=ta(Ta×x:x=1,2,or3)毎に、切替信号が発生されて、fd1和信号、およびfd2和信号が切り替えられて、時刻t201乃至t202,t203乃至t204,t205乃至t206,t207乃至208において、振分部56が、切替信号に対応してfd1和信号をLPF58−1に供給し、時刻t200乃至t201,t202乃至t203,t204乃至t205,t206乃至207において、振分部56が、切替信号に対応してfd2和信号をLPF58−2に供給する。
【0149】
また、時刻t208乃至t212(=デューティ切替時間DT1)においては、間隔時間T2=tb(Ta×y:y=1,2,or3)毎に、切替信号が発生されて、fd1和信号、およびfd2和信号が切り替えられて、時刻t209乃至t210,t211乃至t212において、振分部56が、切替信号に対応してfd1和信号をLPF58−1に供給し、時刻t208乃至t209,t210乃至t211において、振分部56が、切替信号に対応してfd2和信号をLPF58−2に供給する。
【0150】
したがって、時刻t200乃至t208のデューティ切替時間DT1と、時刻t208乃至t212のデューティ切替時間DT1とでは、ランダムに設定される間隔時間T2で(ランダムに設定されるデューティで)切替信号が発生される。また、その間隔時間T2は、乱数により決定されるため、デューティ切替時間DTが仮に一致するような他のレーダ装置が近傍に存在していても、デューティ切替時間毎にランダムに変化するため、干渉を抑制することが可能となる。
【0151】
以上の処理により、周波数f1,f2を切り替える切替信号の発生頻度(デューティ)を、所定時間ごとにランダムに設定することができるので、2周波の電波を切り替えて送信、および受信する手法を用いた他のレーダ装置が近傍に存在していても、その信号による干渉を抑制することが可能となり、正確に物体の速度、距離、および角度を測定することが可能となる。結果として、2周波の電波を切り替えて送信、および受信する手法を用いた他のレーダ装置が近傍に存在していても、混信の影響を低減させることができるので、自車への衝突の有無を高精度で検出することが可能となり、衝突時の安全性を向上させることが可能となる。
【0152】
尚、以上においては、検出された物体の速度の算出にあたり、ドップラ周波数fd2を用いる例について説明してきたが、周波数f1,f2との周波数差は数MHzであるため、ドップラ周波数fd1を用いて求めるようにしても略同一の速度を求めることができる。また、同様に、以上においては、距離の計算に当たり、fd1和信号およびfd2和信号の位相差を用いる例について説明してきたが、fd1差信号およびfd2差信号の位相差を用いるようにしても良く、例えば、いずれも計測できる構成とし、fd1和信号およびfd2和信号の信号品質と、fd1差信号およびfd2差信号の信号品質とを比較した上で、信号品質の高いものを用いて距離を計算するようにし、精度を向上させるようにしても良い。さらに、同様に、以上においては、角度の計算に当たり、fd1和信号とfd1差信号との比率により求める例について説明してきたが、fd2和信号とfd2差信号との比率により求めるようにしてもよく、さらには、fd1和信号およびfd1差信号の信号品質と、fd2和信号およびfd2差信号の信号品質とを比較し、信号品質の高いものを用いて角度を計算するようにし、精度を向上させるようにしても良い。
【0153】
以上の如く、本発明によれば、近傍に他のレーダ検出装置が存在する場合に生じる混信を低減することが可能となる。
【0154】
ところで、上述した一連の監視処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
【0155】
図18は、汎用のパーソナルコンピュータの構成例を示している。このパーソナルコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)1001を内蔵している。CPU1001にはバス1004を介して、入出力インタフェース1005が接続されている。バス1004には、ROM(Read Only Memory)1002およびRAM(Random Access Memory)1003が接続されている。
【0156】
入出力インタフェース1005には、ユーザが操作コマンドを入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスよりなる入力部1006、処理操作画面や処理結果の画像を表示デバイスに出力する出力部1007、プログラムや各種データを格納するハードディスクドライブなどよりなる記憶部1008、LAN(Local Area Network)アダプタなどよりなり、インターネットに代表されるネットワークを介した通信処理を実行する通信部1009が接続されている。また、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、もしくは半導体メモリなどのリムーバブルメディア1011に対してデータを読み書きするドライブ1010が接続されている。
【0157】
CPU1001は、ROM1002に記憶されているプログラム、または磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等のリムーバブルメディア1011から読み出されて記憶部1008にインストールされ、記憶部1008からRAM1003にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM1003にはまた、CPU1001が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0158】
尚、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理は、もちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明を適用したレーダ装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【図2】図1の送信部により照射される電波の強度分布である。
【図3】図1のレーダ装置による計測処理を説明するフローチャートである。
【図4】計測処理を説明する図である。
【図5】振分部の動作を説明する図である。
【図6】受信部におけるアンテナの経路差を説明する図である。
【図7】図1のレーダ装置による計測処理を説明する図である。
【図8】本発明を適用した他のレーダ装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【図9】図8のレーダ装置による計測処理を説明するフローチャートである。
【図10】図8のレーダ装置による計測処理を説明する図である。
【図11】本発明を適用した他のレーダ装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【図12】図11のレーダ装置による計測処理を説明するフローチャートである。
【図13】図11のレーダ装置によるランダムな時間間隔で切替信号が発生するときの振分部におけるfd1和信号とfd2和信号の振分タイミングを説明する図である。
【図14】従来の等時間間隔で切替信号が発生するときの振分部におけるfd1和信号とfd2和信号の振分タイミングを説明する図である。
【図15】本発明を適用した他のレーダ装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【図16】図15のレーダ装置による計測処理を説明するフローチャートである。
【図17】図15のレーダ装置によるランダムな時間間隔で切替信号が発生するときの振分部におけるfd1和信号とfd2和信号の振分タイミングを説明する図である。
【図18】汎用のパーソナルコンピュータの構成例を説明する図である。
【符号の説明】
【0160】
1 レーダ装置
11 送信部
12 受信部
13 衝突予備動作用信号処理部
14 衝突予備動作制御部
32 周波数切替部
36 アンテナ
41 乱数発生部
42 周期時間判定部
43 周期時間設定部
44 f2周波判定部
45 切替信号発生部
51−1,51−2 アンテナ
101 周波数切替部
121 乱数発生部
122 f1周波時間判定部
123 f2周波時間判定部
124 切替信号発生部
125 切替時間設定部
131 周波数切替部
141 乱数発生部
142 間隔時間判定部
143 間隔時間設定部
144 切替信号発生部
151 周波数切替部
171 乱数発生部
172 間隔時間判定部
173 間隔時間設定部
174 切替信号発生部
175 デューティ切替時間判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類の周波数の電波を所定間隔で交互に切替えて送信し、物体からの反射波を受信することに基づいて物体を検出する検出装置において、
2種類の周波数の電波の送信タイミングを、ランダムな間隔で切り替える切替信号を生成する切替信号生成手段と、
前記2種類の周波数の電波を送信信号として前記切替信号に基づいて交互に切替えて送信する送信手段と、
前記送信手段により送信された送信信号が物体によって反射されてくる2種類の周波数の電波を受信し、前記切替信号に基づいて交互に信号処理を行うことによって2種類の周波数の電波に基づいた2種類の受信信号を生成する受信手段と、
前記受信手段により生成された受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する検出手段と
を含む検出装置。
【請求項2】
前記切替信号生成手段は、
乱数を発生する乱数発生手段を含み、
前記乱数発生手段により発生された乱数に基づいて、前記ランダムな間隔を設定し、設定されたランダムな間隔で切替信号を生成する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記乱数は、擬似ランダム符号である
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記切替信号生成手段は、
所定の時間間隔を判定する時間間隔判定手段をさらに含み、
前記時間間隔判定手段により、前記所定の時間間隔で、乱数を発生するように、乱数発生手段を制御し、
前記乱数発生手段により発生された乱数に基づいて、前記ランダムな間隔を設定し、設定されたランダムな間隔で切替信号を生成する
請求項2に記載の検出装置。
【請求項5】
2種類の周波数の電波を所定間隔で交互に切替えて送信し、物体からの反射波を受信することに基づいて物体を検出する検出方法において、
2種類の周波数の電波の送信タイミングを、ランダムな間隔で切り替える切替信号を生成する切替信号生成ステップと、
前記2種類の周波数の電波を送信信号として前記切替信号に基づいて交互に切替えて送信する送信ステップと、
前記送信手段により送信された送信信号が物体によって反射されてくる2種類の周波数の電波を受信し、前記切替信号に基づいて交互に信号処理を行うことによって2種類の周波数の電波に基づいた2種類の受信信号を生成する受信ステップと、
前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する検出ステップと
を含む検出方法。
【請求項6】
2種類の周波数の電波を所定間隔で交互に切替えて送信し、物体からの反射波を受信することに基づいて物体を検出する検出装置を制御するコンピュータに、
2種類の周波数の電波の送信タイミングを、ランダムな間隔で切り替える切替信号を生成する切替信号生成ステップと、
前記2種類の周波数の電波を送信信号として前記切替信号に基づいて交互に切替えて送信する送信ステップと、
前記送信手段により送信された送信信号が物体によって反射されてくる2種類の周波数の電波を受信し、前記切替信号に基づいて交互に信号処理を行うことによって2種類の周波数の電波に基づいた2種類の受信信号を生成する受信ステップと、
前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する検出ステップと
を含む処理を実行させるプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−25627(P2010−25627A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184916(P2008−184916)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】