説明

検出装置の取付装置及び車両構成体

【課題】各部材の成形精度及び組立精度に対して過度に厳格な精度を求めることなく、検出装置を高い取付精度で取付対象物に取り付けることのできる検出装置の取付装置を提案する。
【解決手段】検出装置4を取付対象物に固定して取り付ける検出装置の取付装置Tであって、取付対象物に取り付けられる取付部材1と、取付部材1の一面(球面11S)と摺動自在に当接する当接面(球面21S1)を備え、検出装置4を保持する保持部材2と、を有し、上記一面と上記当接面との一方は、所定の曲率で形成された凹曲面(球面11S)を有し、上記一面と上記当接面との他方は、上記凹曲面の曲率と対応する曲率を有する凸曲面(球面21S1)を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置の取付装置及び車両構成体に関わり、特に検出装置を取付対象物に相対的な任意の姿勢・位置で固定して取り付ける検出装置の取付装置及び車両構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
取付対象物に設置される検出装置として、取付対象物である車両に取り付けられ、車両の周囲を撮像するためのカメラや、車両と車両周囲に存在する物体との距離を検出するためのレーザー装置等が挙げられる。車両に上記カメラを取り付けるための取付装置として、例えば特許文献1に示すような取付装置が開示されている。
特許文献1に開示されている取付装置は、第1の支持体を車両の構成体であるラジエータグリルに止着すると共に、第2の支持体を第1の支持体に止着し、第1の支持体と第2の支持体とによって上記ラジエータグリルを挟み込むと共に、第1の支持体と第2の支持体との少なくとも一方によってカメラを支持するという構成を有するカメラ取付装置である。
そして、上記ラジエータグリルに対して第1の支持体及び第2の支持体が位置決めされ、上記第1の支持体又は上記第2の支持体に対して上記カメラが位置決めされることで、車両と上記カメラの位置決めが行われていた。
【特許文献1】特開2005−271715号公報(第9頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、検出装置を高い取付精度で取付対象物に取り付ける必要性が高まっている。例えば、車両に複数のカメラを取り付け、それらのカメラから得た撮像情報により、車両周囲の状況を社内モニタに表示するなどして車両の搭乗者に伝えるシステムが開発されている。そのような場合では、上記カメラの取り付けにおいて従来よりも厳格な取付精度が必要とされる。
しかし、従来の取付装置では、カメラは上記ラジエータグリルや上記支持体等によって位置決めがなされていたため、カメラの取付精度は、各部材の成形精度及び組立精度に依存していた。そのため、必要な取付精度を確保できない場合は、どの部材が不具合を引き起こしているかを探し出し、また、その部材は不良品となり、さらに、そのような不具合が発生した原因を追究するために、組立工程だけでなく各部材の成形工程までチェックする必要があり、必要な取付精度を確保するために多大な手間及び費用が発生していた。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、各部材の成形精度及び組立精度に対して過度に厳格な精度を求めることなく、検出装置を高い取付精度で取付対象物に取り付けることのできる検出装置の取付装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では、検出装置を取付対象物に固定して取り付ける検出装置の取付装置であって、取付対象物に取り付けられる取付部材と、取付部材の一面と摺動自在に当接する当接面を備え、検出装置を保持する保持部材と、を有し、上記一面と上記当接面との一方は、所定の曲率で形成された凹曲面を有し、上記一面と上記当接面との他方は、上記凹曲面の曲率と対応する曲率を有する凸曲面を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、取付対象物に取り付けられた取付部材の上記一面と、検出装置を保持する保持部材の上記当接面とを、摺動させて相対的な位置の調整を行うことにより、検出装置を取付対象物に相対的な任意の姿勢・位置で固定して取り付けることができる。
【0006】
また、本発明では、凹曲面及び凸曲面は、球面であるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、取付対象物に取り付けられた取付部材の上記一面と、検出装置を保持する保持部材の上記当接面とを、全方位的に相対移動させることができる。
【0007】
また、本発明では、保持部材の当接面と逆側の面に当接して、取付部材との間で、保持部材を挟持するカラー部材を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、取付部材とカラー部材との間で、保持部材を挟持し固定することができる。また、取付部材及びカラー部材の保持部材を挟持する側の面は、曲面部を有する形状となっており、上記曲面部によって保持部材を挟持するため、上記挟持の工程において各部材にひずみ等が生じることが少なく、また、取付部材と保持部材との固定も強固なものとすることができる。
【0008】
また、本発明では、保持部材の当接面と逆側の面に当接して、取付対象物との間で、取付部材と保持部材とを挟持するカラー部材を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、取付対象物とカラー部材との間で、取付部材と保持部材とを挟持し固定することができる。また、取付対象物及びカラー部材の取付部材と保持部材とを挟持する側の面は、曲面部を有する形状となっており、上記曲面部によって取付部材と保持部材とを挟持するため、上記挟持の工程において各部材にひずみ等が生じることが少なく、また、取付部材と保持部材との固定も強固なものとすることができる。
【0009】
また、本発明では、取付部材と保持部材との一方は、雌ネジ部を有し、取付部材と保持部材との他方は、上記雌ネジ部と連通して貫通する連通孔を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、締結部材を上記連通孔に通し、上記雌ネジ部に締結することで、取付部材と保持部材とを固定することができる。この構成においては、取付部材と保持部材とを固定するためのカラー部材等を使用しないため、部材の数を少なくすることができる。
【0010】
また、本発明では、検出装置は撮像装置であるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、撮像装置を取付対象物に取り付けるにあたり、撮像装置と取付対象物との相対的な姿勢・位置を調整することができる。
【0011】
また、本発明では、取付対象物は車両であるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、検出装置を車両に取り付けるにあたり、検出装置と車両との相対的な姿勢・位置を調整することができる。
【0012】
また、本発明では、上記の取付装置を有する車両構成体であるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、車両構成体自体に上記の取付装置が設けられているため、取付対象物に取り付けられた取付部材の上記一面と、検出装置を保持する保持部材の上記当接面とを、摺動させて相対的な位置の調整を行うことにより、検出装置を車両構成体に相対的な任意の姿勢・位置で固定して取り付けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
上記のように、本発明では、検出装置を取付対象物に相対的な任意の姿勢・位置で固定して取り付けることができる。そのため、検出装置、取付対象物及び取付装置の各部材の成形精度や組立精度が原因となって、取り付け作業を行ったのみでは、検出装置の取付対象物に対する取付精度が必要な精度内に入らない場合であっても、上記調整を行うことにより、検出装置を高い取付精度で取付対象物に取り付けることができる。
【0014】
したがって、本発明によれば、上記各部材の成形精度及び組立精度に対して過度に厳格な精度を求めることなく、検出装置を高い取付精度で取付対象物に取り付けることができる。結果として、従来の取付装置を用いた場合に必要であった、必要な取付精度を確保するための手間及び費用を減少させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態を、図1ないし図6に基づいて説明する。
なお、本実施形態において、取付対象物は車両とし、車両の前進方向を前方とする。また、車両の左右方向に延びる任意の軸をX軸、車両の上下方向に延びる任意の軸をY軸、車両の前後方向に延びる任意の軸をZ軸とした場合、以下、上記X軸を中心とした角度調整をピッチ調整、上記Y軸を中心とした角度調整をヨー調整、上記Z軸を中心とした角度調整をロール調整と規定する。
【0016】
図1は、本実施形態における検出装置(撮像装置)4及び検出装置の取付装置Tの設置場所を示す概略図である。
検出装置4及び取付装置Tは、ラジエータグリル(車両構成体)5に設置される。ラジエータグリル5は、複数の水平方向に延びる部材及び複数の垂直方向に延びる部材が一体となって成形された部材である。また、ラジエータグリル5には、水平方向に延びる部材の一部に切り欠きが設けられ、取付装置Tが挿入される部分が形成されており、その部分に取付装置Tが設置されている。
【0017】
図2は、本実施形態における取付装置Tの各部材の配置の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、取付装置Tは、取付部材1と、保持部材2と、カラー部材3とが順次配置され一体的に設けられた構成となっている。
図3は、図1におけるA矢視図である。
図3に示すように、取付装置Tは、取付部材1において、ラジエータグリル5に第1締結部材61を用いて取り付けられている。
【0018】
図4は、本実施形態における取付部材1を示しており、(a)は、取付部材1の正面図、(b)は、側面図である。
取付部材1は、正面視矩形の第1球面部11と、第1球面部11の四隅からX軸方向に延出する取付片15とを備えている。
第1球面部11は、前方に臨んだ凹形状の球面(一面、凹曲面)11Sを有している。第1球面部11の球面は、検出装置4と車両との相対的な姿勢について、必要な調整範囲を確保できる曲率で形成されている。第1球面部11は、その中央部に、厚さ方向に貫通する第1孔部12を有しており、第1孔部12周辺に、厚さ方向に貫通する4つの第1長穴14を有している。第1長穴14は、Y軸方向に延びる形状となっており、検出装置4と車両との相対的な姿勢について、必要な調整範囲を確保できる長さ及び幅で形成されている。
取付片15は、厚さ方向に貫通する締結用孔部16を有している。
【0019】
図5は、本実施形態における保持部材2を示しており、(a)は、保持部材2の正面図、(b)は、側面図である。
保持部材2は、板状に形成された第2球面部21と、第2球面部21の、取付部材1の逆側に設けられた検出装置保持部25とを備えている。
【0020】
第2球面部21は、板状かつ正面視略リング状に形成されており、後方に臨んだ、第1球面部11に対応した曲率(略同一の曲率)で形成された凸形状の球面(当接面、凸曲面)21S1と、球面21S1の逆側の面である凹形状の球面21S2とを有している。
また、第2球面部21は、取付部材1の第1長穴14に対応した位置に、厚さ方向に貫通する4つの第2長穴24を有している。第2長穴24は、X軸方向に延びる形状となっており、検出装置4と車両との相対的な姿勢について、必要な調整範囲を確保できる長さ及び幅で形成されている。
【0021】
検出装置保持部25は、略円筒状に形成されており、延在方向の両端部に形状の異なる開口部をそれぞれ有している。上記両端部のうち一端部は、上記円筒の幅方向断面と略同一の形状である開口部22を有しており、第2球面部21の内周端部と接続されている。一方、他端部は、検出装置4が貫通する開口部26を有している。
撮像装置である検出装置4は、その先端部が開口部26から検出装置保持部25の外部に突出し、その撮像の向きが前方斜め下向きとなるように、検出装置保持部25の内部に設置されている。検出装置4の上記先端部の逆側には、ケーブル(図示せず)が連結されており、上記ケーブルは、取付部材1の第1孔部12及び保持部材2の開口部22を貫通している。
【0022】
図6は、本実施形態におけるカラー部材3を示しており、(a)は、カラー部材3の正面図、(b)は、側面図である。
カラー部材3は、図6(a)に示すように正面視略リング状に形成されており、後方に臨んだ、球面21S2に対応した曲率(略同一の曲率)で形成された凸形状の球面3Sを有している。カラー部材3は、取付部材1の第1長穴14及び保持部材2の第2長穴24に対応した位置に、厚さ方向に延び、貫通して形成された4つの雌ネジ部34を有している。
【0023】
続いて、本実施形態における取付装置Tを用いた場合の、検出装置4のラジエータグリル5への取付・調整作業について説明する。なお、本実施形態では、検出装置4の保持部材2への取付は既に終了しているものとする。
【0024】
図2及び図3に示すように、第1球面部11の凹形状側(球面11S)に、第2球面部21の凸形状側(球面21S1)を当接させ、第2球面部21の凹形状側(球面21S2)に、カラー部材3の凸形状側(球面3S)を当接させる。この時、保持部材2は、検出装置4の撮像の向きが前方斜め下向きとなる姿勢で、取付部材1に取り付けられる。
その後、第1長穴14、第2長穴24及び雌ネジ部34を連通して配置させ、第2締結部材62を締結する。この時、第2締結部材62は、完全には締め付けず、第1球面部11と第2球面部21が摺動自在な程度に締結しておく。
【0025】
次に、取付部材1の締結用孔部16に第1締結部材61を通し、ラジエータグリル5の雌ネジ部(図示せず)に締結させることにより、取付部材1をラジエータグリル5に結合させる。
【0026】
この状態で、保持部材2の取付部材1に対する相対的な位置を調整する。検出装置4の撮影画像をモニタ等で確認しつつ、検出装置4が車両との関係で適切な方向に向くように保持部材2の位置を調整する。
【0027】
第2締結部材62が第1長穴14に沿う範囲で、第1球面部11と第2球面部21とが摺動しつつ、保持部材2を取付部材1に対してY軸方向に移動させると、ピッチ調整を行うことができる。また、第2締結部材62が第2長穴24に沿う範囲で、第1球面部11と第2球面部21とが摺動しつつ、保持部材2を取付部材1に対してX軸方向に移動させると、ヨー調整を行うことができる。さらに、第1球面部11と第2球面部21とが摺動しつつ、取付部材1が有する第1孔部12の中心部を中心にして保持部材2を回転させると、ロール調整を行うことができる。
【0028】
検出装置4の角度調整が終了した後、第2締結部材62を完全に締め付け、取付部材1とカラー部材3との間で保持部材2を挟持することにより、取付部材1と保持部材2とを結合する。
以上により、検出装置4を車両に対して相対的な任意の姿勢で固定することができる。
【0029】
したがって、第1の実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、第1球面部11と第2球面部21とを摺動自在に当接させ、検出装置4の撮影画像をモニタ等で確認しながら、検出装置4の車両に対する相対的な姿勢を調整し、検出装置4を高い取付精度で車両に固定して取り付ける。
【0030】
そのため、例えばラジエータグリル5等の車両構成体、検出装置4及び取付装置Tの各部材の、成形精度又は組立精度が必要な精度に入っていない場合であっても、本実施形態における取付装置Tの調整機能を利用することで、検出装置4を高い取付精度で取付対象物たる車両に取り付けることができる。
したがって、本実施形態では、必要な取付精度を確保できない場合を各段に減少させることができる。結果として、本実施形態では、必要な取付精度を確保するために従来発生していた、多大な手間・費用を減少させることができるという効果がある。
【0031】
また、本実施形態では、第1球面部11及び第2球面部21は球面を有しているため、全方位的に相対移動が可能であり、この相対移動によりピッチ調整、ヨー調整及びロール調整を行うことが可能である。
そして、本実施形態では、これらの調整を行うための必要な部材は、取付部材1、保持部材2及びカラー部材3の3点であるため、取付装置Tのコストを低廉に抑えることができるだけでなく、取付装置Tの省スペース化にも資することとなり、配置スペースの少ない車両においても取付装置Tを設置することができるという効果がある。
【0032】
さらに、本実施形態では、カラー部材3は保持部材2における第2球面部21の前方側に曲面で当接する形状となっており、上記曲面によって保持部材2を挟持するため、上記挟持の工程において各部材にひずみ等が生じることが少なく、保持部材2の位置の調整をした後の完全な締め付け時に、調整時の位置からずれてしまうことが少ない。よって、本実施形態では、調整の手間を減少させることができるという効果がある。また、本実施形態では、同じ理由により、取付部材1と保持部材2との固定を強固なものとすることができるため、振動などが加えられたとしても、調整した位置がずれにくい取付装置Tを提供することができるという効果がある。
【0033】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態における検出装置の取付装置T2を、図7ないし図9に基づいて説明する。なお、図7ないし図9において、図1ないし図6に示す第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施形態における検出装置4の設置場所は、第1の実施形態における場所と同一であるため、その説明を省略する。なお、本実施形態においても、取付対象物は車両とし、車両の前進方向を前方とする。
【0034】
図7は、本実施形態における取付装置T2の各部材の配置の構成を示す斜視図である。
図7に示すように、取付装置T2は、取付部材1と、保持部材2とを有している。
取付部材1は、ラジエータグリル(車両構成体、図示せず)に取り付けられている。この取付方法は第1の実施形態と同一であるため、その説明を省略する。
図7に示すように、保持部材2は、取付部材1の前面に配置されている。
【0035】
図8は、本実施形態における取付部材1を示しており、(a)は、取付部材1の正面図、(b)は、側面図である。
取付部材1の第1球面部11は、その中央部に、厚さ方向に貫通する第1孔部12を有しており、第1孔部12周辺に、厚さ方向に貫通する4つの保持部材締結用孔部(連通孔)17を有している。保持部材締結用孔部17は、検出装置4と車両との相対的な姿勢について、必要な調整範囲を確保できる大きさで形成されている。
【0036】
図9は、本実施形態における保持部材2を示しており、(a)は、保持部材2の正面図、(b)は、側面図である。
保持部材2は、開口部22の周辺で、保持部材締結用孔部17に対応した位置に、厚さ方向に延び、貫通して形成された4つの雌ネジ部28を有している。
【0037】
続いて、本実施形態における取付装置T2を用いた場合の、撮像装置である検出装置4のラジエータグリルへの取付・調整作業について説明する。なお、本実施形態では、検出装置4の保持部材2への取付は既に終了しているものとする。
【0038】
取付部材1の第1球面部11の凹形状側(球面11S)に、保持部材2の第2球面部21の凸形状側(球面21S1)を当接させる。この時、保持部材2は、検出装置4の撮像の向きが前方斜め下向きとなる姿勢で、取付部材1に取り付けられる。
その後、保持部材締結用孔部17び雌ネジ部28を連通して配置させ、第2締結部材(図示せず)を締結する。この時、第2締結部材は、完全には締め付けず、第1球面部11と第2球面部21が摺動自在な程度に締結しておく。
【0039】
次に、取付部材1の締結用孔部16に第1締結部材(図示せず)を通し、ラジエータグリルの雌ネジ部(図示せず)に締結させることにより、取付部材1をラジエータグリルに結合する。
この状態で、保持部材2の取付部材1に対する相対的な位置を調整する。調整は、第1の実施形態と同様の方法で行うことができる。この調整により、ピッチ調整、ヨー調整及びロール調整といった検出装置4の車両に対する相対的な角度調整を行うことができる。
【0040】
検出装置4の角度調整が終了した後、第2締結部材を完全に締め付け、取付部材1と保持部材2とを結合する。
以上により、検出装置4を車両に対して相対的な任意の姿勢で固定することができる。
【0041】
したがって、第2の実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
まず、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、必要な取付精度を確保するために従来発生していた、多大な手間・費用を減少させることができるという効果がある。
【0042】
また、本実施形態では、第1球面部11及び第2球面部21は球面を有しているため、全方位的に相対移動が可能であり、この相対移動によりピッチ調整、ヨー調整及びロール調整を行うことが可能である。
そして、本実施形態では、これらの調整を行うための必要な部材は、取付部材1及び保持部材2の2点であるため、取付装置T2のコストを低廉に抑えることができるだけでなく、取付装置T2の省スペース化にも資することとなり、配置スペースの少ない車両においても取付装置T2を設置することができるという効果がある。
【0043】
なお、前述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲においてプロセス条件や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、取付部材1には第1球面部11、保持部材2には第2球面部21という球面が形成されているが、このような部分を球面以外の、断面輪郭が所定の曲率を有する円弧で、一方向に延びるカマボコ状の凸曲面及びこの凸曲面に対応する凹曲面としてもよい。
このような凸曲面及び凹曲面を取付部材1及び保持部材2上に形成することで、ピッチ調整及びヨー調整のうちいずれか1つの角度調整を行うことに加え、検出装置4の車両に対する、X軸方向及びY軸方向のうちいずれか1つの位置の調整を行うことができる。
【0045】
また、上記実施形態では、取付部材1は前方に臨んで凹形状であり、保持部材2は後方に臨んで凸形状であるが、この実施形態とは逆に、取付部材1は前方に臨んで凸形状であり、保持部材2は後方に臨んで凹形状であってもよい。
【0046】
また、第1の実施形態では、カラー部材3は、取付部材1との間で、保持部材2を挟持しているが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、カラー部材は3、取付対象物との間で、取付部材1と保持部材2とを挟持する構成としてもよい。
また、カラー部材3の形状を変更し、カラー部材3のみで、取付部材1と保持部材2とを挟持する構成としてもよい。
【0047】
また、第2の実施形態では、取付部材1に保持部材締結用孔部17が形成され、保持部材2に雌ネジ部28が形成されているが、この実施形態とは逆に、取付部材1に雌ネジ部が形成され、保持部材2に取付部材締結用孔部が形成されていてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、保持部材2の雌ネジ部28及びカラー部材3の雌ネジ部34は、厚さ方向に延び、貫通して形成されているが、少なくとも一方向に開口して形成されていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、検出装置4として撮像装置が用いられているが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、電磁波等(例として、電波、光、レーザー、X線等)又は音波を用いて周囲の情報を検出する装置であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、撮像装置である検出装置4は、取付対象物としての車両の構成体であるラジエータグリル5に取り付けられるが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、取付対象物の周囲を検出可能な箇所ならばどこでもよい。
取付対象物としての車両における他の取付箇所を例示すると、前面ならばバックミラー取付部、側面ならばサイドミラー取付部、背面ならばライセンスフィニッシャ等が挙げられる。
【0051】
また、上記実施形態では、取付対象物として車両が用いられているが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、他の構造物等であってもよい。また、取付対象物としての車両においても、1輪又は複数の車輪数を持つ車両であってもよい。また、キャタピラー等で移動する車両、軌道上を移動する車両であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、検出装置4を取付対象物に取り付けるための取付装置T又はT2が用いられているが、取付対象物としての車両の構成体が、取付装置T又はT2を有する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1の実施形態における検出装置4及び取付装置Tの設置場所を示す概略図である。
【図2】第1の実施形態における取付装置Tの各部材の配置の構成を示す斜視図である。
【図3】図1におけるA矢視図である。
【図4】第1の実施形態における取付部材1を示しており、(a)は、取付部材1の正面図、(b)は、側面図である。
【図5】第1の実施形態における保持部材2を示しており、(a)は、保持部材2の正面図、(b)は、側面図である。
【図6】第1の実施形態におけるカラー部材3を示しており、(a)は、カラー部材3の正面図、(b)は、側面図である。
【図7】第2の実施形態における取付装置T2の各部材の配置の構成を示す斜視図である。
【図8】第2の実施形態における取付部材1を示しており、(a)は、取付部材1の正面図、(b)は、側面図である。
【図9】第2の実施形態における保持部材2を示しており、(a)は、保持部材2の正面図、(b)は、側面図である。
【符号の説明】
【0054】
T…第1の実施形態における検出装置の取付装置、T2…第2の実施形態における検出装置の取付装置、1…取付部材、11S…球面(一面、凹曲面)、17…保持部材締結用孔部(連通孔)、2…保持部材、21S1…球面(当接面、凸曲面)、28…雌ネジ部、3…カラー部材、4…検出装置(撮像装置)、5…ラジエータグリル(車両構成体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出装置を取付対象物に固定して取り付ける検出装置の取付装置であって、
前記取付対象物に取り付けられる取付部材と、
前記取付部材の一面と摺動自在に当接する当接面を備え、前記検出装置を保持する保持部材と、を有し、
前記一面と前記当接面との一方は、所定の曲率で形成された凹曲面を有し、
前記一面と前記当接面との他方は、前記凹曲面の曲率と対応する曲率を有する凸曲面を有することを特徴とする検出装置の取付装置。
【請求項2】
前記凹曲面及び前記凸曲面は、球面であることを特徴とする請求項1に記載の検出装置の取付装置。
【請求項3】
前記保持部材の前記当接面と逆側の面に当接して、前記取付部材との間で、前記保持部材を挟持するカラー部材を有することを特徴とする請求項1または2に記載の検出装置の取付装置。
【請求項4】
前記保持部材の前記当接面と逆側の面に当接して、前記取付対象物との間で、前記取付部材と前記保持部材とを挟持するカラー部材を有することを特徴とする請求項1または2に記載の検出装置の取付装置。
【請求項5】
前記取付部材と前記保持部材との一方は、雌ネジ部を有し、
前記取付部材と前記保持部材との他方は、前記雌ネジ部と連通して貫通する連通孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載の検出装置の取付装置。
【請求項6】
前記検出装置は、撮像装置であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の検出装置の取付装置。
【請求項7】
前記取付対象物は車両であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の検出装置の取付装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の前記取付装置を有することを特徴とする車両構成体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−6105(P2010−6105A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164225(P2008−164225)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(504136889)株式会社ファルテック (57)
【Fターム(参考)】