説明

検出装置及びステージ装置

【課題】 本発明は高精度に可動されるステージの位置及び傾きを正確に検出することを課題とする。
【解決手段】 透過型検出装置22は、第1ステージ14の移動方向に延在形成された透明体角度格子30と、透明体角度格子30を垂直状態に保持する透明基板32と、透明体角度格子30に向けて複数の平行光を発光する発光部34と、透明体角度格子30を透過した複数の平行光を受光する受光部36とを有する。受光部36には9個のフォトダイオードが配置され、透明体角度格子30を透過した複数の平行光の受光強度分布を検出する。そして、受光部36で検出された強度分布の変化から固定側の透明体角度格子30に対する発光部34の位置及び傾き角度を検出することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置及びステージ装置に係り、特に高精度に可動されるステージの状態の検出を行う検出装置及びステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IT技術の根幹である半導体デバイスの高集積化、低価格化に対応し、半導体デバイスを製造する半導体露光装置に対する高生産性、高精度化、高速化等の要求が高まっている。半導体露光装置のキーコンポーネントであるステージには10nm前後の精度と数百mmの移動範囲を持った高速多自由度ステージ装置が要求される。そのため、ステージの多自由度位置と姿勢を精密に計測し、その結果をフィードバックしてステージの位置決め制御を行うことが必要となる。
【0003】
従来の位置決め装置の位置計測方式としては、光学式リニアエンコーダ、レーザ測長機やオートコリメータ等が一般的に用いられてきた。これらは、基本的には1次元の長さあるいは姿勢測定を基本原理としており、その複数軸の組み合わせによって、位置あるいは姿勢の計測を行っていた。
【0004】
また、高精度計測に用いられているレーザ干渉計では、レーザ光を用いてステージ(位置決め対象物)の位置の計測を行うため、ステージの置かれている装置内の空気の揺らぎなどによって、計測の値精度が低下するという問題があった。また、レーザ干渉計では、光学部品をステージの外部(周囲)にしか置くことができず、且つ空気の揺らぎを防止するために各方向毎にレーザの光路となる金属パイプを装架する必要があるため、ステージ装置全体が大型化し、構成が煩雑となるなどの問題点がある。
【0005】
さらに、ステージがZ軸回りに回転した場合には、ステージからの反射光が干渉計の受光部から外れて、XY方向の位置検出ができなくなるという問題があった。このような問題を解決する検出装置として、基準格子(角度格子)にレーザ光を照射し、基準格子により反射される反射光をXY方向の2次元角度を2次元角度センサにより検出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図1は、基準格子と2次元角度センサとを有した検出装置の概略図である。図1に示すように、従来の検出装置300では、1本の2次元角度センサ290の出力変化によりXY方向の位置の検出を行っていた。
【0007】
ここでの2次元角度センサ290は、基準格子の面の傾斜を検出するものであり、これにより基準格子の面の法線方向の変化を見ることができ、2次元角度センサ290により、XY方向(2方向)の傾斜または法線変化を検出することができる。基準格子320は、平面上の直交する2方向(X方向及びY方向)に既知の関数で変化する山と谷とが集合してなるもののことであり、基準格子320の形状には、正弦波が用いられる。
【0008】
次に、図2を参照して、図1に示した2次元角度センサ290について説明する。図2は、2次元角度センサを示した図である。2次元角度センサ290は、オートコリメーション法に基づいた幾何光学的なセンサである。
【0009】
図2に示すように、レーザ光源301から照射された1本のレーザ光310は、偏光ビームスプリッタ302と1/4波長板303を通過し、基準格子320の表面に入射する。基準格子320の表面で反射されたレーザ光312は偏光ビームスプリッタ302で反射され、レーザ光312はオートコリメータ305に入射する。オートコリメータ305は、対物レンズ306とスポット位置を検出する検出器307とを含んだ構成とされている。
【特許文献1】特許2960013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記オートコリメーション法では、対物レンズ306の焦点にある標板(一般には十字線)を無限遠に結像させて、対物レンズ306の先にある平面鏡によって反射された平行光を標板面に共役な位置に結像させ、結像した十字線の面内の変位から平面鏡の微小な角度の変位を読み取るため、オートコリメータ305等の高価でかつ複雑な部品を必要とし、検出装置300のコストが高くなってしまうという問題があった。
【0011】
また、高分解能の位置検出を行うため、基準格子320とマルチスポットとの周期が短くなるにつれ、光の干渉と回折によって幾何光学的な原理が成立しない可能性があるため、精度良く検出することが困難であるという問題があった。また、2次元の変位(X方向及びY方向の変位)と3つの姿勢変化(X軸に対する回転方向、Y軸に対する回転方向、及びZ軸に対する回転方向)との5つの自由度の状態について検出するためには、3つの2次元角度センサ300が必要となり、センサ間の調整が難しいという問題があった。
【0012】
さらに、ステージ装置において、例えば、ステージを移動させる際に位置検出しながらステージの両側に設けられた一対のリニアモータを駆動制御しているが、その際の位置検出精度を高めるために上記検出装置300をよりコンパクトな構成としてリニアモータの移動量や傾きを正確に検出する必要がある。
【0013】
また、上記以外の検出装置としては、ステージの移動方向に延在形成されたスリット板に対して移動する光センサによってスリット数を光学的に検出してステージの位置を検出するリニアスケールがある。このリニアスケールでは、移動方向の変位量を検出することができるものの、その他の方向(例えば、上下方向やステージの各軸回りの傾き角度)を検出することができない。
【0014】
そのため、従来のステージ装置では、ステージの両側に一対のリニアスケールを配置し、一対のリニアスケールによって検出された検出信号の差からステージのヨーイング角を演算していた。そして、ステージのその他の方向の傾き角度を検出せずにステージの移動を制御していた。
【0015】
従って、従来のステージ装置において、リニアスケールから得られる移動方向の位置(移動量)に基づいてリニアモータを駆動制御しているため、ステージを移動させる際の状態を正確に把握しておらず、ステージが傾いた場合にどの方向にどの位傾いたかを正確に検出できなかった。
【0016】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、製造しやすい形状の基準格子を用いて、ステージの変位及び傾き角度の検出を容易に行うことができ、かつ検出の精度を向上することのできる検出装置及びステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記課題を解決するため、以下のような特徴を有する。
【0018】
請求項1記載の発明は、表面に所定の曲率半径を有する凹曲面と凸曲面とが2次元方向に交互に形成された検出面を有する基準格子と、前記基準格子に対して移動可能に設けられ、前記基準格子の鉛直方向から前記検出面に向けて複数の平行光を発光する発光部と、前記発光部と一体的に移動するように設けられ、前記基準格子を透過した前記複数の平行光を受光する複数の受光素子を有する受光部と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の発明は、表面に所定の曲率半径を有する凹曲面と凸曲面とが2次元方向に交互に形成された検出面を有する基準格子と、前記基準格子の裏面に形成された反射面と、前記基準格子に対して移動可能に設けられ、前記基準格子の鉛直方向から前記検出面に向けて複数の平行光を発光する発光部と、前記発光部と一体的に移動するように設けられ、前記反射面から反射した複数の平行光を受光する複数の受光素子を有する受光部と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の発明は、表面に所定の曲率半径を有する凹曲面と凸曲面とが2次元方向に交互に形成された検出面を有する基準格子と、前記検出面に形成された反射面と、前記基準格子に対して移動可能に設けられ、前記基準格子の鉛直方向から前記検出面に向けて複数の平行光を発光する発光部と、前記発光部と一体的に移動するように設けられ、前記反射面から反射した複数の平行光を受光する複数の受光素子を有する受光部と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項4記載の発明は、前記発光部が、光源と、該光源からの光を複数の平行光に分光する分光手段と、を有することを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の発明は、前記分光手段が、所定の曲率半径を有する凹曲面と凸曲面とが2次元方向に交互に形成された入射面を有することを特徴とする。
【0023】
請求項6記載の発明は、前記受光部が、前記複数の平行光よりも多い数の受光素子を有しており、一つの光に対して少なくとも1以上の受光素子を配したことを特徴とする。
【0024】
請求項7記載の発明は、前記受光素子で受光された前記複数の平行光の光強度に応じた検出信号が入力され、各光強度分布の変化から前記基準格子に対する前記発光部の相対的な移動量を演算する演算手段を有することを特徴とする。
【0025】
請求項8記載の発明は、前記演算手段が、前記複数の受光素子で受光された前記複数の平行光の光強度分布の変化に基づいて前記検出面に対する前記発光部及び受光部の相対的な傾き角度を演算することを特徴とする。
【0026】
請求項9記載の発明は、前記基準格子が、透明基板と、該透明基板の表側に設けられた第1の基準格子と、前記第1の基準格子と180度の向きとなるように、前記透明基板の裏側に設けられた第2の基準格子と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
請求項10記載の発明は、ベースと、該ベースに対して移動可能に設けられたステージと、前記ステージに駆動力を付与する駆動手段と、前記ステージの移動を検出する前記請求項1乃至9の何れかに記載の検出装置と、前記検出装置の検出結果に応じて前記ステージが所定速度で移動するように前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
請求項11記載の発明は、前記駆動手段が、一対のリニアモータであり、前記制御手段が、前記一対のリニアモータを並進駆動することを特徴とする。
【0029】
請求項12記載の発明は、前記請求項1乃至9の何れかに記載の検出装置を前記リニアモータの近傍に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、一つの発光部と受光部との間に基準格子を配置するといった構成であるので、構成の簡素化及びコンパクト化を図ることが可能になり、且つ基準格子に対する発光部、受光部の相対位置を複数の平行光の受光強度分布の変化から基準格子の検出面に対応する2方向及び基準格子に対する各方向の傾き角度を正確に検出することができる。また、発光部及び受光部を基準格子の反射面に対向させ、反射面から反射した複数の平行光を受光する構成であるので、構成の簡素化及びコンパクト化を図ることが可能になり、且つ基準格子に対する発光部、受光部の相対位置を複数の平行光の受光強度分布の変化から基準格子の検出面に対応する2方向及び基準格子に対する各方向の傾き角度を正確に検出することができる。
【0031】
また、本発明の検出装置を用いたステージ装置では、ステージの移動を複数の平行光を発光する発光部と、基準格子を透過または反射した複数の平行光を受光する受光部とにより、基準格子の検出面に対応するステージの2方向の位置検出を正確に行えると共に、各方向のステージの傾き角度を同時に検出することができ、ステージの傾きを修正するようにステージを駆動制御することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面と共に本発明の一実施例について説明する。
【実施例1】
【0033】
図3は本発明になる検出装置の実施例1が適用されたステージ装置の主要構成要素を示す概念図である。尚、本実施例では、後述する透過型検出装置22の構成及び作動原理を説明する際の便宜上、以下では透明体角度格子30に対して光を照射する方向をZ方向としており、図3においては左右方向をZ方向として説明する。
図3に示されるように、ステージ装置10は、ベース12と、ベース12に対して移動可能に設けられた第1ステージ14と、第1ステージ14に搭載され左右方向に移動可能に設けられた第2ステージ16と、第1ステージ14の両端を並進駆動する一対のリニアモータ(駆動手段)18,20と、リニアモータ18の近傍に配置された透過型検出装置22と、第2ステージ16を駆動するリニアモータ24と、リニアモータ24と平行に配置されたリニアスケール26とを有する。
【0034】
透過型検出装置22は、本発明の要部を構成しており、後述するように第1ステージ14の移動位置を主検出対象としており、移動方向(X方向)以外の方向に対する運動誤差要因となる上下方向(Y方向)、各軸回りの角度θx、θy、θzも同時に検出することができるように構成されている。
【0035】
透過型検出装置22及びXリニアスケール26により検出された検出信号は、座標変換器27により座標変換されて制御装置28に入力される。制御装置28は、予め設定されて演算式に基づいてリニアモータ18,20,24へ供給される制御量を演算する演算手段(制御プログラム)を有し、演算により得られた制御信号を各サーボアンプ29a〜29cに出力する。そして、各サーボアンプ29a〜29cで増幅された駆動信号は、リニアモータ18,20,24へ供給されてリニアモータ18,20,24が駆動される。
【0036】
また、透過型検出装置22では、後述するように第1ステージ14のX,Y方向の変位及びθz方向の傾き角度を検出することができる。そのため、制御装置28では、透過型検出装置22によって検出された各方向の検出データに基づいて第1ステージ14が傾かないようにリニアモータ18,20を高精度に並進駆動することが可能になる。
【0037】
ここで、透過型サーフェスエンコーダとして用いられる透過型検出装置22の構成について図4を参照して説明する。
図4に示されるように、透過型検出装置22は、第1ステージ14の移動方向に延在形成された透明体角度格子(基準格子)30と、透明体角度格子30を垂直状態に保持する透明基板32と、透明体角度格子30に向けて複数の平行光を発光する発光部34と、透明体角度格子30を透過した複数の平行光を受光する受光部36とを有する。
【0038】
透明基板32は、透明なガラス板などからなり、固定側となるベース12に垂直状態に固定されている。そして、透明基板32の表面には、透明体角度格子30が固着されている。透明体角度格子30及び透明基板32は、透明材によって形成されているため、発光部34から照射された光が透過する性質を有している。
【0039】
また、透明体角度格子30は、図5に拡大して示すように表面に所定の曲率半径を有する正弦波形状の輪郭右で立体的な凹曲面と凸曲面とが2次元方向に交互に形成された検出面30aが形成されている。この検出面30aの凹凸形状は、例えば、金型を押し付けることにより微細な凹曲面、凸曲面を均一、且つ高精度に形成することが可能になる。
【0040】
発光部34は、透明体角度格子30の表面の鉛直方向に対向するように設けられている。また、受光部36は、透明体角度格子30の裏面の鉛直方向に対向するように設けられている。そして、発光部34及び受光部36は、可動側となる第1ステージ14に固定されたブラケット(図示せず)により一体的に支持されており、且つ透明体角度格子30及び透明基板32を介して正対するように保持されている。
【0041】
そのため、発光部34及び受光部36は、第1ステージ14と共にY方向に駆動されると、透明体角度格子30及び透明基板32に対して移動することになる。その際、発光部34から発光された複数の平行光が検出面30aの凹曲面と凸曲面によって屈折されて透過して受光部36に受光される。受光部36には、後述するように発光部34からの複数の平行光を受光する複数の受光素子が所定間隔で設けられている。そして、発光部34からの光が検出面30aの凹曲面と凸曲面とを透過する位置によって屈折率が変化して受光部36での各光の受光強度分布の変化から透明体角度格子30に対する発光部34及び受光部36の移動量を求めることが可能になる。
【0042】
図6は図4において透過型検出装置22の構成をX方向からみた構成図である。
図6に示されるように、発光部34は、例えば、レーザダイオードからなる光源34aからの光を複数本(例えば、n=9本)の平行光に分光しており、光源34aの出射面には、分光手段としてのグリッドパターンを有する正方形の分光板38が取り付けられている。
【0043】
図7は分光板38のグリットパターンの一例を拡大して示す図である。図7に示されるように、分光板38は、X方向及びY方向の2次元平面に9つの微小開口38A〜38Iが所定間隔Lで格子状に形成されている。分光板38は、光源34aから照射された光40を微小開口38A〜38Iにより、9つの光42〜42に分光するためのものである。
【0044】
尚、図7では、分光板38に9つの微小開口38A〜38Iを設けた構成を例に挙げて説明したが、微小開口の配置数及び間隔については、任意に設定することができ、例えば、微小開口をX方向及びY方向に10×10個配置することも可能である。従って、分光板38によって分光される光の数(換言すると、受光部36に照射されるスポット数)は、微小開口の配置数を選択することにより任意の数に設定することができる。
【0045】
微小開口38A〜38Iは、検出面30aに形成された凹曲面及び凸曲面の配設ピッチFと同一寸法となるように形成されている。また、分光板38の微小開口38A〜38Iを通過した9本の光42〜42は、平行光となって透明体角度格子30の検出面30aに照射されるため、透明体角度格子30の配設ピッチFと等間隔(または開口部38A〜38Iを通過する際の回折により配設ピッチFの整数倍の間隔)でマルチスポットが生成される。
【0046】
また、透明体角度格子30を透過した9本の光42〜42は、受光部36の直前に配置された対物レンズ44により受光部36の受光面36aに集光される。
【0047】
図8に示されるように、受光部36の受光面36aには、透明体角度格子30を透過した9本の光42〜42を受光するフォトダイオード51〜59が設けられている。
【0048】
次に、図8を参照して、受光部36について説明する。図8中に破線で示した丸印は、それぞれのフォトダイオード51〜59に到達した光42〜42のマルチスポットを示している。受光部36の受光面36aに設けられたフォトダイオード51〜59は、光42〜42の受光強度に応じた検出信号を出力する。フォトダイオード51〜59のうち受光面36aの四隅に配置されたフォトダイオード51,53,57,59は、一対の受光素子を組み合わせた2分割PDからなり、受光面36aの中央に配置されたフォトダイオード55は4個の受光素子を組み合わせた4分割PDからなる。
【0049】
受光面36aの左上に配置された2分割PD51は、三角形状に形成された受光素子(51a,51b)が一組となって光42の光強度を検出し、右上の角部に配置された2分割PD53は三角形状に形成された受光素子(53a,53b)が一組となって光42の光強度を検出し、左下の角部に配置された2分割PD57は三角形状に形成された受光素子(57a,57b)が一組となって光42の光強度を検出し、右下の角部に配置された2分割PD59は三角形状に形成された受光素子(59a,59b)が一組となって光42の光強度を検出する。
【0050】
また、受光面36aの中央に配置された4分割PD55は、4個の受光素子55a〜55dがX方向及びY方向に2列ずつとなるように並設されており、4個の受光素子55a〜55dにより中央に照射される光42の光強度を検出する。また、受光面36aの4辺の中間に配置された、フォトダイオード52,54,56,58は、夫々光42,42,42,42の光強度を検出する。本実施例では、上記9個のフォトダイオード51〜59を有する受光部36によって検出された光42〜42の強度分布の変化により、第1ステージ14の位置及び傾き角度の検出を行う。
【0051】
続いて、透過型検出装置22のシミュレーション結果について説明する。
透明体角度格子30を用いたモデルでは、透明体角度格子30の検出面30aの表面形状は式(1)に示すように2次元に正弦波を重ね合わせた凹曲面と凸曲面となっている。
【0052】
【数1】

ここで、透明体角度格子形状のピッチPx,Pyは数100μm以下のオーダーであり、振幅Ax,Ayは数100nm以下のオーダーであり、これに光を入射すると回折格子のような役割を果たす。そこで、ここでは検出装置22のモデルを立てるに当たり光を波として扱い、振幅、位相を計算することで解析した。すなわち、ここで用いるのは幾何光学のモデルではなく波動光学のモデルである。
【0053】
図9に示されるように、透明体角度格子30の鉛直方向からほぼ垂直に光が位置(x,y)に入射するものとする。このとき、面Σ1から面Σ2まで進むと、光は距離2A-h(x,y)だけ進んだ後、透明体角度格子30内を距離h(x,y)だけ進み透明体角度格子30を透過する。透明体角度格子30の屈折率をn、透明体角度格子30外の屈折率を1とすると、この光が面Σ1から面Σ2まで進んだときの光路長Lは式(2)のように表される。
【0054】
【数2】

面Σ1から面Σ2まで進んだときLだけ光路長があるので、それに波数k(=2π/λ,λ:光の波長)をかけたkLだけ位相が遅れることになる。よって、透明体角度格子30の持つ位相関数G(x,y)は以下の式(3)のように表せる。
【0055】
【数3】

透明体角度格子30にX方向,Y方向の変位とZ軸回りの回転が生じたときは、式(4)を以下の式(5)のようにして表現できる。
【0056】
【数4】

以上が透明体角度格子30のモデルのシミュレーション結果である。
【0057】
続いて、透明体角度格子30を用いた透過型検出装置22の光学系について説明する。
図6に示されるように、透過型検出装置22の光学系において、レーザ光源(LD)34aから出た平行光42〜42は、微小開口38A〜38Iを有する格子状の分光板38に入射する。分光板38の各微小開口38A〜38Iで回折した光は、互いに干渉し、透明体角度格子30上ではグリッドパターンの開口間隔と同じ間隔でピークの立つ平行光42〜42(マルチビーム)が生成される。平行光42〜42は、透明体角度格子30を透過した後、対物レンズ44によって受光部36の受光面36aに集光される。
【0058】
この光学系の受光部36の受光面36a上の強度分布を求めるために、ここでは、光学系を要素ごとに分け、それぞれの要素の持つ光波の振幅項と位相項に影響を与える関数を使い、それらを元にしてua,ua’,…,udと順に計算していく手法を取った。この光学系は発光部34、分光板38、透明体角度格子30、対物レンズ44、そして要素間の光波伝播空間からなる。
【0059】
以下順にこれらの関数について述べる。発光部34は強度がガウシアン分布の平行光uaを出すものとする。すなわち、同一面内に位相のそろった波であるので、位相項を無視し、振幅項にガウシアンのルートを取った値として以下の式(6)のように定義する。
【0060】
【数5】

分光板38は、グリッドパターンの各微小開口38A〜38Iに入射した光は透過するが、それ以外の光は遮る。よって、その透過関数g(x,y)は以下の式(7)で表せる。
【0061】
【数6】

透明体角度格子30は先に述べたとおりである。
対物レンズ44は平面波を入射すると球面波にする作用があることから、その位相関数L(x,y)は式(8)で表される。
【0062】
【数7】

光の空間の伝播はフレネル回折の式で考えられる。面Σ1から出た光は距離zだけ離れた面Σ2まで伝播する。このとき、フレネル回折の式は以下の式(9)で表せる。
【0063】
【数8】

ここで、u0(x0,y0)は面Σ1での波面、u(x,y)は面Σ2での波面、iは虚数単位、λは光の波長である。
【0064】
式(9)は畳み込み積分であり、以下の式(10)のようにフーリエ変換を用いた形に変形できる。ここで、F[v(x,y)]はv(x,y)のフーリエ変換、F-1[ω(x,y)]はω(x,y)の逆フーリエ変換を表す。
【0065】
【数9】

以上を元に、このモデルをまとめ、受光部36の受光面36aの強度分布I(x,y)を求めると以下のようになる。
【0066】
【数10】

ここで、上記受光部36の受光面36aの強度分布I(x,y)のシミュレーションを行うと、以下のような結果が得られた。
【0067】
式(11)に従って、強度分布I(x,y)を計算した結果を図10に示す。このときのシミュレーション条件は、表1に示す。また、計算領域は等間隔にメッシュを切るが、このときのメッシュのサイズは3μm×3μmで、XY平面に1024×1024点を取って行った。
【0068】
【表1】

この結果からも分かるように、多数のピークが一定周期で並んでいることが分かる。これは、図6に示されるように、分光板38のグリッドパターン(図7を参照)と透明体角度格子30を光が通るときに、それらで光が回折し、対物レンズ44上で干渉し合い生成されているからである。
【0069】
先ず、X方向への変位が生じたときの平行光42〜42が照射される各スポットの強度変化について説明する。
固定側の透明体角度格子30に対して可動側に設けられた発光部34からの光42〜42がX方向に変位したときに図10に示す強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討したところ、強度分布は図11(A)〜(E)に示すように変化した。図11(A)〜(E)からも分かるように、X方向のピークの高さ分布が変化している。また、Y方向の分布は変化していないことが分かる。
【0070】
次にY変位が生じたときの各スポットの強度変化について説明する。
透明体角度格子30に対して発光部34からの光42〜42がY方向に変位したときに図10に示す強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討したところ、強度分布は図12(A)〜(E)に示すように変化した。図12(A)〜(E)に示されるように、X方向に変位したときと同様にY方向のピークの高さ分布が変化していることが分かる。また、X方向の分布は変化していないことが分かる。
【0071】
次にθZ方向への回転が生じたときの各スポットの強度変化について説明する。
透明体角度格子30に対して発光部34からの光42〜42がθZ方向へ回転したときに図10にしめす強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討したところ、図13(A)〜(E)に示されるように変化した。しかしながら、この場合、スポットの変化がほとんど見られないため、図14(A)〜(E)に図13(A)〜(E)のスポットの一部の拡大して示す。図14(A)〜(E)に示されるように、θz方向への回転が生じると、スポット全体がスポット中心のピーク(ここでは最も強度の強いピーク)を軸として同じθZ方向への回転することが分かる。
【0072】
ここで、4分割PD55を用いた位置検出方法について説明する。
透明体角度格子30に対するX方向,Y方向の変位に対して、光42〜42のスポット強度はそれぞれX方向,Y方向にのみピークの高さが変化することが分かった。この原理を利用して図15に示す4分割PD55を用いてこれらの変位を検出することができる。以下にその検出原理及びシミュレーション結果を示す。
【0073】
4分割PD55は、前述したように4つの受光素子55a〜55dをX、Y方向に2列ずつ組み合わせたものであり、4個のフォトダイオードを設けた場合と実質的に同一である。
【0074】
図15において、X方向,Y方向のセンサ出力をSX,SYとすると、受光素子55a〜55dの出力を図15に示すI1〜I4を用いてそれぞれ以下のように定義する。
【0075】
【数11】

図16に上記4分割PD55を用いた場合のX変位のシミュレーションによる検出結果を示し、図17に上記4分割PD55を用いた場合のY変位のシミュレーションによる検出結果を示す。尚、図16、図17において、X変位を実線で示し、Y変位を一点鎖線で示す。図16、図17に示されるように、正弦波に近い形状で変位を検出できることが分かる。
【0076】
更に、図18に示すように、このプローブを2本用いることで、X,Y変位の相対的な位置関係からθz方向の回転も求めることができる。
【0077】
ここで、多素子型PDを用いた位置・姿勢検出方法について説明する。
上記4分割PD55を用いる検出方法とは異なり、多素子型PDを用いてスポットのピーク一つ一つの挙動を検出することでより多くの自由度を検出することが可能になる。受光部36の受光面36a(図8参照)では、XY方向に一定の周期で多数のピークが並ぶことになる。その多数あるピークの中で中心の9つのピークに対して、図19に示すようなフォトダイオード51〜54,56〜59を配置する。この受光部36は、受光面36aの4辺に1素子のフォトダイオード52,54,56,58が配置され、受光面36aの4隅には正方形を斜めにカットした2分割PD51,53,57,59が配置されている。この多素子型PDからなる受光部36を用いて位置・姿勢の3自由度を検出する方法を、以下順にXY位置の検出方法、θzの検出方法について述べる。
【0078】
まず、XY位置の検出方法について述べる。
図20(A)〜(E)は一例として実施例1のX方向の変位を検出する方法を示している。X方向に変位が生じると図20(A)〜(E)に示すようにフォトダイオード51〜54,56〜59上でスポットのピークがX方向に関してのみ高さ分布が変化する。そこで、受光部36のX方向のセンサ出力をSXとして、受光面36aのX方向2辺の中間位置に配置されたフォトダイオード54,56の強度検出値IX1,IX2を使って以下の式(14)の計算より求める。Y方向も同様にして受光部36のセンサ出力をSYとして、受光面36aのY方向2辺の中間位置に配置されたフォトダイオード52,58の強度検出値IY1,IY2を使って式(15)の計算より求める。
【0079】
【数12】

次に、Z軸回りのθz方向の検出方法について説明する。
θz回転が生じると、光42〜42のスポット全体がスポット中心のピークを軸として同じθzだけ回転する。そこで受光面36aの4隅に配置された2分割PD51,53,57,59の8個の受光素子を使ってスポットの強度変化を検出することでθzを検出できる。図21(A)〜(C)に実施例1のXY位置の検出方法の検出原理を示す。2分割PD51,53,57,59の8個の受光素子51a,51b,53a,53b,57a,57b,59a,59bの出力をIθz1,Iθz2,Iθz3,Iθz4,Iθz5,Iθz6,Iθz7,Iθz8とすると、受光部36のθz方向の出力Sθzは、以下の式(16)より求められる。
【0080】
【数13】

図22に実施例1のX方向変位の検出結果を示し、図23に実施例1のY方向変位の検出結果を示し、図24に実施例1のθz方向の検出結果を示す。図22に示されるように、X方向変位に対してSX,SθY,SθZが正弦波に近い曲線で変化するため、X方向変位を検出できることが分かる。このように、フォトダイオード54,56によりX方向変位を検出することが可能になる。
【0081】
また、図23に示されるように、Y方向変位に対してSY, SθX,SθZが正弦波に近い曲線で変位するため、Y方向変位を検出できることが分かる。このように、フォトダイオード52,58によりY方向変位を検出することが可能になる。
【0082】
また、図24に示されるように、Z軸回りの回転に対してSθZが正弦波に近い曲線で変位するため、θz方向を検出できることが分かる。このように、2分割PD51,53,57,59の出力から得られる出力Sθzにより、θz方向の変位を検出することが可能になる。従って、受光部36のセンサ出力によってX,Y方向及びθz方向を検出することができるので、透明体角度格子30を垂直状態に取り付ける透過型検出装置22を用いて、第1ステージ14のX,Y方向変位、ピッチング方向、ローリング方向の傾き角度を検出することが可能になる。そのため、透過型検出装置22からの検出信号が入力される制御装置28(図3参照)では、第1ステージ14を移動させる過程で受光部36から得られたX,Y方向及びθx,θz方向の検出信号に基づいて、第1ステージ14がピッチング動作及びローリング動作を抑制するようにリニアモータ18,20を駆動制御することが可能になる。
【0083】
尚、図22乃至図24に示すSθX ,SθYは、検出信号としては出力が小さいので、基板32の裏面にも透明体角度格子30を固着する構成とすることにより、出力が増大して検出信号として使用することが可能になる。図25に示されるように、透過型検出装置22では、基板32の表面及び裏面に一対の透明体角度格子30を背中合わせに固着する構成、すなわち、基板32の表側に設けられた第1の基準格子30と、第1の基準格子30と180度の向きとなるように、基板32の裏側に設けられた第2の基準格子30とにより、Z方向を除くX方向、Y方向の位置及び各軸回りの角度θx、θy、θzの検出信号を得ることが可能になる。
【実施例2】
【0084】
反射型サーフェスエンコーダとして用いられる反射型検出装置70の構成について図26を参照して説明する。
図26に示されるように、反射型検出装置70は、第1ステージ14の移動方向に延在形成された透明体角度格子(基準格子)30と、透明体角度格子30を垂直状態に保持する反射面(ミラー)74aが形成された基板74と、透明体角度格子30に向けて複数の平行光を発光し、反射面74aからの反射光を受光する光センサユニット76とを備える。光センサユニット76は、複数の平行光を発光する発光部(図示せず)と、透明体角度格子30を透過して反射面74aで反射した複数の反射光を受光する受光部(図示せず)とを有する。
【0085】
反射型検出装置70では、透明体角度格子30の検出面30aに対向する側に光センサユニット76を設ける構成であるので、前述した実施例1のものよりも透明体角度格子30をリニアモータ18に近接することが可能になり、その分リニアモータ18の近い位置でX方向、Y方向及び各軸回りの角度θx、θy、θzを検出することが可能になる。
【0086】
ここで、反射型検出装置70の状態検出の原理について説明する。
図27に反射面74aに貼り付けた透明体角度格子30のモデルを示す。透明体角度格子30の検出面30aの形状は、前述した実施例1と同様に式(17)に示すように2次元に正弦波を重ね合わせたものとなっている。
【0087】
【数14】

ここで、透明体角度格子30の表面形状のピッチPx,Pyは数100μm以下のオーダー、そして振幅Ax,Ayは数100nm以下のオーダーであり、これに光を入射すると回折格子のような役割を果たす。そこで、ここでは、前述した実施例1と同様に反射型検出装置70のモデルを立てるに当たり光を波として扱い、振幅、位相を計算することで解析した。すなわち、ここで用いるのは幾何光学のモデルではなく波動光学のモデルである。
【0088】
また、以下の説明では、図27のように透明体角度格子30の鉛直方向から光が位置(x,y)に入射するものとする。このとき、面Σから基板74の反射面74aまで進むとき、光は距離2A-h(x,y)だけ進んだ後、透明体角度格子30内に入射し、距離h(x,y)だけ進む。そして、反射面74aによって反射された光は、再び同じ光路を辿り、面Σまで進む。
【0089】
また、光が反射面74aで反射されるところでそのまま透過するように仮想したモデルを図28に示す。このとき、透明体角度格子30の屈折率をn、透明体角度格子30外の屈折率を1とすると、この光が面Σから入射し、再び面Σ(図28ではΣ’)まで進むときの光路長Lは式(18)のように表される。
【0090】
【数15】

光が面Σから再び面Σまで進んだときLだけ光路長があるので、それに波数k(=2π/λ,λ:光の波長)をかけたkLだけ位相が遅れることになる。よって、透明体角度格子30の持つ位相関数Gr(x,y)は以下の式(19)のように表せる。
【0091】
【数16】

透明体角度格子30にX方向、Y方向の変位とX,Y,Z軸回りの回転が生じたときは式(20)を以下の式(21)のようにして表現できる。
【0092】
【数17】

以上が反射面74aに貼り付けた透明体角度格子30のモデルである。
【0093】
図29に実施例2の反射型検出装置70の光学系を示す。尚、図29において、前述した実施例1と同一部分には同一符号を付す。
【0094】
光センサユニット76は、発光部34と受光部36とを有する構成であるので、発光部34と受光部36とを別体に設けるものよりも装置全体を小型化することが可能になる。発光部34のレーザ光源(LD)34aから出た平行光40は、微小開口が2次元に一定周期に並んだグリッドパターンを有する分光板38に入射する。
【0095】
分光板38において、グリッドパターンの各微小開口38A〜38Iで回折された光は、互いに干渉し、偏向ビームスプリッタ(PBS)78と1/4波長板80を透過する。そして、透明体角度格子30上では、グリッドパターンの開口間隔と同じ間隔でピークの立つ9本の平行光42〜42が生成される。
【0096】
さらに、透明体角度格子30を透過して反射面74aで反射され再び透明体角度格子30を透過した後、偏向ビームスプリッタ78で90度の方向に反射され、対物レンズ44によって受光部36の受光面36a上に集光される。
【0097】
前述した実施例1で述べた方法と同様に、このモデルをまとめ受光部36の受光面36a上の強度分布I(x,y)を求めると以下のようになる。
【0098】
【数18】

式(22)に従って、強度分布I(x,y)を計算した結果を図30に示す。このときのシミュレーション条件は、表2に示す通りである。
【0099】
【表2】

図30に示す結果からも分かるように、多数のピークが一定周期で並んでいることが分かる。これは、光がグリッドパターンと透明体角度格子30を通るときに、それらで光が回折され、対物レンズ44上で干渉し合い生成されているからである。
【0100】
ここで、X変位が生じたときの平行光42〜42が照射される各スポットの強度変化について説明する。
固定側に取り付けられた透明体角度格子30に対して可動側に設けられた光センサユニット76がX方向に変位したときに図30に示す強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討した結果を図31(A)〜(E)に示す。図31(A)〜(E)からも分かるようにX方向のピークの高さ分布が変化している。また、図31によりY方向の分布は変化していないことが分かる。
【0101】
次に、Y変位が生じたときの平行光42〜42が照射される各スポット変化について説明する。
透明体角度格子30に対して光センサユニット76がY方向に変位したときに、図30の強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討したところ図32(A)〜(E)に示すような結果が得られた。図32(A)〜(E)に示すように、X方向に変位したときと同様にY方向のピークの高さ分布が変化していることが分かる。また、X方向の分布は変化していないことが分かる。
【0102】
次に、X軸回りのθx方向の回転が生じたときの各スポットの強度変化について説明する。
透明体角度格子30に対してθx方向の回転が生じたときに図30の強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討したところ図33(A)〜(E)に示すような結果が得られた。図33(A)〜(E)に示されるように、スポットの変化が小さくてわかりにくいので、図34(A)〜(E)に図33(A)〜(E)のスポットの中心のピークの拡大図を示す。図34(A)〜(E)によりスポットのピークがY方向に移動していることが分かる。
【0103】
次に、θY回転が生じたときの各スポットの強度変化について説明する。
透明体角度格子30にθY回転が生じたときに図30に示す強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討した。図35(A)〜(E)にθY回転が生じたときの各スポットの強度変化を示す。ここで、図35(A)〜(E)では、スポットの強度変化がほとんど見られないため、図36(A)〜(E)に図35(A)〜(E)のスポットの中心のピークの拡大図を示す。図36(A)〜(E)からピークがX方向に移動していることが分かる。
【0104】
次に、Z軸回りのθz方向の回転が生じたときの各スポットの強度変化について説明する。
透明体角度格子30に対してθz方向に回転が生じたときに図30の強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討したところ図37(A)〜(E)に示すような結果が得られた。図37(A)〜(E)に示されるように、スポットの変化がほとんど見られないため、図38(A)〜(E)に図37(A)〜(E)のスポットの一部の拡大図を示す。θz方向の回転が生じると、スポット全体がスポット中心のピーク(ここでは最も強度の強いピーク)を軸として同じ角度θzだけ回転することが分かる。
【0105】
ここで、4分割PD55を用いた位置検出方法について説明する。
透明体角度格子30のX方向,Y方向の変位に対して、スポット強度はそれぞれX方向,Y方向にのみピークの高さが変化することが分かった。それを利用して、前述した実施例1と同じ図15に示す4分割PD55を用いてこれらの変位を検出することができる。尚、4分割PD55の検出原理は、前述した説明と同じなので、ここでは省略する。
【0106】
図39に実施例2のX変位のシミュレーションの検出結果を示し、図40に実施例2のY変位のシミュレーションの検出結果を示す。図39、図40に示すように、実施例1の場合と同様に正弦波に近い形状でX,Y変位を検出できることが分かる。
【0107】
更に、前述した図18に示した透過型スケールと同じ原理で、図39、図40に示すプローブを2本用いて、両者の相対的な位置関係からθzの回転も求めることができる。
【0108】
また、透明体角度格子30に対するスポットの移動量を検出することでθx,θを検出することが可能になる。
【0109】
次に、多素子型PDを用いた位置・姿勢検出方法について説明する。
上記4分割PD55を用いる検出方法とは異なり、フォトダイオード51〜59により各光42〜42のスポットのピーク一つ一つの挙動を検出することでより多くの自由度を検出することが可能になる。受光部36の受光面36aでは、XY方向に一定の周期で多数のピークが並ぶように検出される。その多数あるピークの中で中心の9つのピークに対して、前述した図8に示すような受光面36aにフォトダイオード51〜59を配置する。これは、図19に示すフォトダイオード51〜54,56〜59に加えて中心部に4分割PD55を配置したものである。
【0110】
次に、この受光部36を用いて位置・姿勢の5自由度を検出する方法を述べるが、XY位置の検出方法及びθzの検出方法は、前述した実施例1の場合と同じであるので、ここでは、その説明を省略し、θx,θ方向の回転の検出方法について述べる。
【0111】
透明体角度格子30に対して発光部34がθx,θ方向に回転した場合、透明体角度格子30の検出面30aに照射された各光42〜42の各スポットがそれぞれX,Y方向に移動する。
【0112】
そこで、通常のオートコリメーション法と同じようにして受光面36aの中央にある4分割PD55を使ってX方向とY方向のスポットの移動量を検出することにより、θx,θ方向の回転は検出できる。図41(A)〜(C)は、例として実施例2のθ方向の回転の検出原理を示している。図41(A)〜(C)において、4分割PD55の出力をIθxy1,Iθxy2,Iθxy3,Iθxy4とすると、センサθ出力SθY,θx出力SθXは以下の式(23),(24)より求められる。
【0113】
【数19】

図42に実施例2のX方向変位の検出結果を示す。図43に実施例2のY方向変位の検出結果を示す。図42,図43に示されるように、正弦波に近い形状でX,Y変位を検出できることがわかる。また、図44に実施例2のθxの検出結果を示し、図45に実施例2のθYの検出結果を示す。また、図46に実施例2のθz方向の検出結果を示す。
【0114】
このように、反射型検出装置70では、フォトダイオード51〜59により検出された強度分布の変化からX,Y方向及びθx,θ,θz方向の回転動作も検出することが可能になる。
【実施例3】
【0115】
反射面角度格子を用いた反射型検出装置90の構成について図47を参照して説明する。
図47に示されるように、反射型検出装置90は、第1ステージ14の移動方向に延在形成された反射面角度格子(基準格子)92と、反射面角度格子92を垂直状態に保持する基板94と、反射面角度格子92に向けて複数の平行光を発光し、反射光を受光する光センサユニット76とを備える。反射面角度格子92は、検出面92aの表面に光を反射する反射膜が形成されている。光センサユニット76は、複数の平行光を発光する発光部(図示せず)と、反射面角度格子92の検出面92aで反射した複数の反射光を受光する受光部(図示せず)とを有する。
【0116】
反射型検出装置90では、反射面角度格子92の検出面92aに対向する側に光センサユニット76を設ける構成であるので、前述した実施例1のものよりも反射面角度格子92をリニアモータ18に近接することが可能になり、その分リニアモータ18の近い位置でX方向、Y方向及び各軸回りの角度θx、θy、θzを検出することが可能になる。
【0117】
ここで、反射型検出装置90の状態検出の原理について説明する。
【0118】
図48に反射面角度格子92のモデルを示す。反射面角度格子92の形状は、前述した実施例1,2と同様に式(25)に示すように2次元に正弦波を重ね合わせたものとなっている。
【0119】
【数20】

ここで、反射面角度格子92の表面形状のピッチPx,Pyは数100μm以下のオーダー、そして振幅Ax,Ayは数100nm以下のオーダーであり、これに光を入射すると回折格子のような役割を果たす。そこで、ここではエンコーダのモデルを立てるに当たり光を波として扱い、振幅、位相を計算することで解析した。すなわち、ここで用いるのは幾何光学のモデルではなく波動光学のモデルである。
【0120】
図のように反射面角度格子92の上からほぼ垂直に光が位置(x,y)に入射するものとする。このとき、光は面Σから距離2A-h(x,y)だけ進んだ後、反射面角度格子92の検出面82aに形成された反射膜によって反射される。また、光が面Σから入射し、再び面Σ(図2ではΣ')まで進むときの光路長Lは、式(26)のように表される。
【0121】
【数21】

面Σから再び面Σまで進んだときLだけ光路長があるので、それに波数k(=2π/λ,λ:光の波長)をかけたkLだけ位相が遅れることになる。よって、反射面角度格子92の持つ位相関数Gr(x,y)は、以下の式(27)のように表せる。
【0122】
【数22】

反射面角度格子92にX方向,Y方向の変位とX,Y,Z軸回りの回転が生じたときは式(28)を以下の式(29)のようにして表現できる。
【0123】
【数23】

以上が反射面角度格子92のモデルである。
【0124】
次に、上記反射面角度格子92を用いた反射型検出装置90について説明する。
図49は実施例3の反射型サーフェスエンコーダの光学系を示す。尚、図49において、前述した実施例2と同一部分には同一符号を付す。
【0125】
図49に示されるように、光センサユニット76は、発光部34と受光部36とを有する構成であるので、発光部34と受光部36とを別体に設けるものよりも装置全体を小型化することが可能になる。発光部34のレーザ光源(LD)34aから出た平行光40は、微小開口が2次元に一定周期に並んだグリッドパターンを有する分光板38に入射する。
【0126】
分光板38において、グリッドパターンの各微小開口38A〜38Iで回折された光は、互いに干渉し、偏向ビームスプリッタ(PBS)78と1/4波長板80を透過する。そして、透明体角度格子30上では、グリッドパターンの開口間隔と同じ間隔でピークの立つ9本の平行光42〜42が生成される。
【0127】
さらに、反射面角度格子92の検出面92aの反射膜で反射され、偏向ビームスプリッタ78で90度の方向に反射され、対物レンズ44によって受光部36の受光面36a上に集光される。
【0128】
前述した実施例1で述べた方法と同様に、このモデルをまとめ受光部36の受光面36a上の強度分布I(x,y)を求めると以下のようになる。
【0129】
【数24】

次に、実施例3のシミュレーションの結果について説明する。
上式(30)に従って、強度分布I(x,y)を計算した結果を図50に示す。このときのシミュレーション条件は、表3に示す通りである。
【0130】
【表3】

図50に示すシミュレーションの結果からも分かるように、多数のピークが一定周期で並んでいることが分かる。これは、分光板38のグリッドパターンと反射面角度格子92を光が反射するときに、それらで光が回折し、対物レンズ44上で干渉し合い生成されているからである。
【0131】
次に、X変位が生じたときの平行光42〜42が照射される各スポットの強度変化について説明する。
固定側の反射面角度格子92に対して可動側に設けられた光センサユニット76がX方向に変位したときに図50に示すの強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討した。図51(A)〜(E)にX変位が生じたときの各スポットの強度変化を示す。図51(A)〜(E)からも分かるようにX方向のピークの高さ分布が変化している。また、図51(A)〜(E)によりY方向の分布は変化していないことが分かる。
【0132】
次に、Y変位が生じたときの各スポットの強度変化について説明する。
反射面角度格子92に対して光センサユニット76がY方向に変位したときに図50に示す強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討した。図52(A)〜(E)にY変位が生じたときの各スポットの強度変化を示す。図52(A)〜(E)からX方向に変位したときと同様にY方向のピークの高さ分布が変化していることが分かる。また、図52(A)〜(E)によりX方向の分布は変化していないことが分かる。
【0133】
次にθx回転が生じたときの各スポットの強度変化について説明する。
反射面角度格子92に対して光センサユニット76がθx方向に回転した場合、図50に示す強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討した。図53(A)〜(E)にθx回転が生じたときの各スポットの強度変化を示す。図53(A)〜(E)では、スポットの変化がほとんど見られないため、図54(A)〜(E)に図53(A)〜(E)のスポットの中心のピークの拡大図を示す。図54(A)〜(E)によりピークがY方向に移動していることが分かる。
【0134】
次にθ回転が生じたときの各スポットの強度変化について説明する。
反射面角度格子92に対して光センサユニット76がθ方向に回転した場合、図50に示す強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討した。図55(A)〜(E)にθ回転が生じたときの各スポットの強度変化を示す。図55(A)〜(E)では、各スポットの変化がほとんど見られないため、図56(A)〜(E)に図55(A)〜(E)の各スポットの中心のピークの拡大図を示す。図56(A)〜(E)によりピークがX方向に移動していることが分かる。
【0135】
次にθz回転が生じたときの各スポットの強度変化について説明する。
反射面角度格子92に対して光センサユニット76がθz方向に回転した場合、図50の強度分布がどのように変化するかシミュレーションで検討した。図57(A)〜(E)にθz回転が生じたときの強度変化を示す。ここで、図57(A)〜(E)では、スポットの強度変化がほとんど見られないため、図58(A)〜(E)に図57(A)〜(E)のスポットの一部の拡大図を示す。図57(A)〜(E)により、θz方向の回転が生じると、スポット全体がスポット中心のピークを軸として同じθzだけ回転することがわかる。
【0136】
次に、4分割PD55を用いた位置検出方法について説明する。
反射面角度格子92のX方向、Y方向の変位に対してスポット強度は、それぞれX方向,Y方向にのみピークの高さが変化することが分かった。それを利用して前述した実施例1と同じ図15に示す4分割PD55を用いてこれらの変位を検出することができる。4分割PD55による検出原理は、前述した実施例1と同じなので、ここではその説明を省略する。
【0137】
続いて、実施例3のシミュレーション結果を以下で説明する。
図59に実施例3のX変位の検出結果を示し、図60に実施例3のY変位の検出結果を示す。図59、図60から正弦波に近い形状でX,Y変位を検出できることが分かる。
【0138】
更に、前述した図18に示した透過型スケールと同じ原理で図59、図60に示すこのプローブを2本用いて反射面角度格子82と光センサユニット76との相対的な位置関係からθzの回転も求めることができる。また、スポットの移動量を検出することでθx,θを検出できる。
【0139】
次に多素子型PDを有する受光部36を用いた位置・姿勢検出方法について説明する。
前述した実施例2で述べた方法と同じ方法で、図8に示す受光部36を用いてスポットのピーク一つ一つの挙動を検出することでより多くの自由度を検出することができる。検出原理は、前述した実施例2と同じなので省略する。
【0140】
次に、多素子型PDを有する受光部36のシミュレーション結果について説明する。
図61に実施例3のX変位の検出結果を示し、図62に実施例3のY変位の検出結果を示す。図61、図62に示されるように、正弦波に近い形状でX,Y変位を検出できることが分かる。また、図63に実施例3のθxの検出結果を示し、図64に実施例3のθの検出結果を示す。また、図65に実施例3のθzの検出結果を示す。
【0141】
このように、反射型検出装置90では、フォトダイオード51〜59により検出された強度分布の変化からX,Y方向及びθx,θ,θz方向の回転動作も検出することが可能になる。
【実施例4】
【0142】
図66は反射型検出装置に用いられる実施例4の光センサユニット100を示す図である。尚、図66において、前述した図29に示す実施例2の光センサユニット76と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0143】
図66に示されるように、光センサユニット100は、発光部34と受光部36とを有しており、発光部34のレーザ光源(LD)34aから出た平行光40は、分光手段として機能する透明体角度格子102の入射面102aに入射する。
【0144】
透明体角度格子102の入射面102aは、前述した透明体角度格子30の検出面30aと同様な形状に構成されている。すなわち、入射面102aは、表面に所定の曲率半径を有する正弦波形状の輪郭右で立体的な凹曲面と凸曲面とが2次元方向に交互に形成されている。この入射面102aの凹凸形状は、前述した透明体角度格子30と同様な方法で微細な凹曲面、凸曲面を均一、且つ高精度に形成される。
【0145】
発光部34は、透明体角度格子102の入射面102aに対して鉛直方向から対向するように設けられている。発光部34から出射された平行光40は、入射面102a全体に照射されるため、入射面102aの凹曲面及び凸曲面が微細なレンズとして機能することにより、凹曲面で拡散した光と凸曲面で収束した光とが重なり合った複数の光に分光される。このときの分光された光の数やピッチは、凹曲面及び凸曲面の曲率半径によって選択的に設定することが可能である。
【0146】
従って、前述した分光板38の代わりに透明体角度格子102を分光手段として用いることにより分光板38よりも精密な分光が可能になる。
【0147】
透明体角度格子102によって分光された光は、偏向ビームスプリッタ(PBS)78と1/4波長板80を透過する。そして、透明体角度格子30上では、所定間隔でピークの立つ平行光42〜42が生成される。
【0148】
さらに、透明体角度格子30を透過して反射面74aで反射され再び透明体角度格子30を透過した後、偏向ビームスプリッタ78で90度の方向に反射され、対物レンズ44によって受光部36の受光面36a上に集光される。
【0149】
ここで、透明体角度格子102を分光手段として用いた場合のシミュレーション結果について説明する。
【0150】
微細正弦波を2次元に展開した形状の入射面102aを有する透明体角度格子102と2次元角度センサを組合わせたサーフェスエンコーダとしての検出装置では、正弦波角度格子30と同様の形状を持つ透明体角度格子102を用いることでビーム効率の高い光学系を実現すると共に、透明体角度格子30と透明体角度格子102との相対変位として同様に多自由度位置検出が行える。
【0151】
透明体角度格子30,102を用いたDual正弦波格子型サーフェスエンコーダの有効性を以下の条件(表4参照)でシミュレーションしたところ図67乃至図71に示すような結果が得られた。
【0152】
【表4】

図67(A)〜(D)は透明体角度格子102により生成されたマルチスポットの実験データを示すグラフである。図67(A)は、X方向に対するマルチスポットの強度を示すグラフ、図67(B)は、Y方向に対するマルチスポットの強度を示すグラフ、図67(C)は、X方向に対するマルチスポットの一部の強度を拡大して示すグラフ、図67(D)は、Y方向に対するマルチスポットの一部の強度を拡大して示すグラフである。
【0153】
図67(A)〜(D)に示されるように、透明体角度格子102により生成されたマルチスポットは、X方向及びY方向に周期的なピークを有する複数のスポットが得られ、且つX方向及びY方向の中央の強度が最大となるように形成されることが分かる。
【0154】
ここでは、説明の便宜上、受光部36の受光素子に4分割PDを用いた場合の検出シミュレーション結果について説明する。
【0155】
図68は4分割PD上で受光された受光スポットの強度分布を解析した結果を示すグラフである。図68に示されるように、4分割PD上には、所定間隔で強度がピークとなる平行光42〜42が検出されることが分かる。
【0156】
図69(A)〜(D)は透明体角度格子30がX方向に相対変位(Y=0)した場合のマルチスポットの変化を示すグラフである。図69(A)の停止状態から図69(B)に示す変位状態では、マルチスポットのピーク分布のうち左側(X=0より−側)が減少して右側(X=0より+側)のピーク値が突出することにより透明体角度格子30が右側(X=0より+側)に変位したことが分かる。また、図69(C)の停止状態から図69(D)に示す変位状態では、マルチスポットのピーク分布のうち右側(X=0より−側)が減少して左側(X=0より+側)のピーク値が突出することにより透明体角度格子30が左側(X=0より−側)に変位したことが分かる。
【0157】
図70(A)〜(D)は透明体角度格子102がY方向に相対変位(X=0)した場合のマルチスポットの変化を示すグラフである。図70(A)の停止状態から図70(B)に示す変位状態では、マルチスポットのピーク分布のうち前側(Y=0より−側)が減少して後側(Y=0より+側)のピーク値が突出することにより透明体角度格子30が後側(Y=0より+側)に変位したことが分かる。また、図70(C)の停止状態から図70(D)に示す変位状態では、マルチスポットのピーク分布のうち後側(Y=0より+側)が減少して前側(Y=0より−側)のピーク値が突出することにより透明体角度格子30が前側(Y=0より−側)に変位したことが分かる。
【0158】
図71は4分割PDのX方向変位に対する出力変化をシミュレートした実験結果である。図72は4分割PDのY方向変位に対する出力変化をシミュレートした実験結果である。
【0159】
図71に示されるように、X方向変位の相対変位が生じた場合には、Y方向の出力は変化しないがX方向の出力が正弦波状に変化することが分かる。また、図72に示されるように、Y方向変位の相対変位が生じた場合には、X方向の出力は変化しないがY方向の出力が正弦波状に変化することが分かる。
【0160】
このように、透明体角度格子102を分光手段として用いた構成とすることにより、X方向変位の相対変位及びY方向変位の相対変位を受光部36の出力変化から検出することが可能であることが検証された。
【0161】
また、受光部36の受光素子に多素子型PD(前述した図8を参照)やCCD素子を用いることによって、XY位置のほかにピッチング、ローリング、ヨーイングなどの各軸回りの回動による傾き姿勢も計測することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0162】
上記実施例では、ステージの位置を検出する検出装置を一例として説明したが、これに限らず、他の可動体の移動位置及び移動に伴う状態(傾き)を検出することができるのは勿論である。
【0163】
また、検出装置としては、例えば、リニアエンコーダ以外としてロータリエンコーダにも適用することも可能であり、さらには、ステージ装置以外のものとしてはハードディスク装置やデジタル・ビデオ・ディスク装置にも適用することができる。
【0164】
また、マウスなどのパーソナルコンピュータの入力装置やコンピュータゲーム装置の入力装置にも適用することが可能である。
【0165】
さらに、物流関係の対象物情報(例えば、荷物の位置情報)や商品の2次元バーコードの検出装置にも応用することができるので、ICタグと同等な高密度光タグへの応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】基準格子と2次元角度センサとを有した従来の検出装置の概略図である。
【図2】2次元角度センサの構成例を示した図である。
【図3】本発明になる検出装置の実施例1が適用されたステージ装置の主要構成要素を示す概念図である。
【図4】透過型検出装置22の構成を示す斜視図である。
【図5】透明体角度格子30の検出面に複数の光を照射する様子を拡大して示す斜視図である。
【図6】透過型検出装置22の構成をX方向からみた構成図である。
【図7】分光板38のグリッドパターンの一例を拡大して示す図である。
【図8】フォトダイオード51〜59が配置された受光面36aを拡大して示す図である。
【図9】透明体角度格子30に光が位置(x,y)に入射するモデルを示す図である。
【図10】実施例1の強度分布I(x,y) のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図11】透明体角度格子30に対して発光部34がX方向へ回転したときの強度分布の変化のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図12】透明体角度格子30に対して発光部34がY方向へ回転したときの強度分布の変化のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】透明体角度格子30に対して発光部34がθZ方向へ回転したときの強度分布の変化のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図14】図13(A)〜(E)のスポットの一部を拡大して示すグラフである。
【図15】4分割PD55を拡大して示す図である。
【図16】4分割PD55を用いた場合のX変位のシミュレーションによる検出結果を示すグラフである。
【図17】4分割PD55を用いた場合のY変位のシミュレーションによる検出結果を示すグラフである。
【図18】X,Y変位の相対的な位置関係からθz方向の回転も求める方法を説明するための図である。
【図19】受光部36のフォトダイオード51〜54,56〜59の配置を示す図である。
【図20】実施例1のX方向の変位を検出する方法を示す図である。
【図21】実施例1のXY位置の検出方法の検出原理を示す図である。
【図22】実施例1のX方向変位の検出結果を示すグラフである。
【図23】実施例1のY方向変位の検出結果を示すグラフである。
【図24】実施例1のθz方向の検出結果を示すグラフである。
【図25】実施例1の変形例を示す光学系の図である。
【図26】実施例2の反射型検出装置70の構成を示す斜視図である。
【図27】実施例2の反射面74aに貼り付けた透明体角度格子30のモデルを示す図である。
【図28】実施例2の光が反射面74aで反射されるところでそのまま透過するように仮想したモデルを示す図である。
【図29】実施例2の反射型検出装置70の光学系を示す図である。
【図30】実施例2の強度分布I(x,y) のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図31】透明体角度格子30に対してX方向に変位したときの強度分布の変化のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図32】透明体角度格子30に対してY方向に変位したときの強度分布の変化のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図33】透明体角度格子30に対してθx方向の回転が生じたときの強度分布の変化のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図34】図33(A)〜(E)のスポットの中心のピークを拡大して示すグラフである。
【図35】実施例2のθY回転が生じたときの各スポットの強度変化を示すグラフである。
【図36】図35(A)〜(E)のスポットの中心のピークを拡大して示すグラフである。
【図37】実施例2のθz方向に回転が生じたときの強度変化を示すグラフである。
【図38】図37(A)〜(E)のスポットの一部を拡大して示すグラフである。
【図39】実施例2のX変位のシミュレーションの検出結果を示すグラフである。
【図40】実施例2のY変位のシミュレーションの検出結果を示すグラフである。
【図41】実施例2のθ方向の回転の検出原理を示す図である。
【図42】実施例2のX方向変位の検出結果を示すグラフである。
【図43】実施例2のY方向変位の検出結果を示すグラフである。
【図44】実施例2のθxの検出結果を示すグラフである。
【図45】実施例2のθYの検出結果を示すグラフである。
【図46】実施例2のθz方向の検出結果を示すグラフである。
【図47】実施例3の反射面角度格子を用いた反射型検出装置90の構成を示す斜視図である。
【図48】実施例3の反射面角度格子92のモデルを示す図である。
【図49】実施例3の反射型サーフェスエンコーダの光学系を示す図である。
【図50】実施例3の強度分布I(x,y)のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図51】実施例3のX変位が生じたときの各スポットの強度変化を示すグラフである。
【図52】実施例3のY変位が生じたときの各スポットの強度変化を示すグラフである。
【図53】実施例3のθx回転が生じたときの各スポットの強度変化を示すグラフである。
【図54】図53(A)〜(E)のスポットの中心のピークを拡大して示すグラフである。
【図55】実施例3のθ回転が生じたときの各スポットの強度変化を示すグラフである。
【図56】図55(A)〜(E)の各スポットの中心のピークの拡大図を示すグラフである。
【図57】実施例3のθz回転が生じたときの強度変化を示すグラフである。
【図58】図57(A)〜(E)のスポットの一部を拡大して示すグラフである。
【図59】実施例3のX変位の検出結果を示すグラフである。
【図60】実施例3のY変位の検出結果を示すグラフである。
【図61】実施例3のX変位の検出結果を示すグラフである。
【図62】実施例3のY変位の検出結果を示すグラフである。
【図63】実施例3のθxの検出結果を示すグラフである。
【図64】実施例3のθの検出結果を示すグラフである。
【図65】実施例3のθzの検出結果を示すグラフである。
【図66】反射型検出装置に用いられる実施例4の光センサユニット100を示す図である。
【図67】実施例4の透明体角度格子102により生成されたマルチスポットの実験データを示すグラフである。
【図68】実施例4の4分割PD上で受光された受光スポットの強度分布を解析した結果を示すグラフである。
【図69】実施例4の透明体角度格子30がX方向に相対変位(Y=0)した場合のマルチスポットの変化を示すグラフである。
【図70】実施例4の透明体角度格子30がY方向に相対変位(X=0)した場合のマルチスポットの変化を示すグラフである。
【図71】実施例4の4分割PDのX方向変位に対する出力変化をシミュレートした実験結果である。
【図72】実施例4の4分割PDのY方向変位に対する出力変化をシミュレートした実験結果である。
【符号の説明】
【0167】
10 ステージ装置
12 ベース
14 第1ステージ
16 第2ステージ
18,20,24 リニアモータ
22 透過型検出装置
28 制御装置
30,102 透明体角度格子
32 透明基板
34 発光部
34a レーザ光源(LD)
36 受光部
38 分光板
51〜59 フォトダイオード
70 反射型検出装置
74 基板
76,100 光センサユニット
78 偏向ビームスプリッタ(PBS)
90 反射型検出装置
92 反射面角度格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に所定の曲率半径を有する凹曲面と凸曲面とが2次元方向に交互に形成された検出面を有する基準格子と、
前記基準格子に対して移動可能に設けられ、前記基準格子の鉛直方向から前記検出面に向けて複数の平行光を発光する発光部と、
前記発光部と一体的に移動するように設けられ、前記基準格子を透過した前記複数の平行光を受光する複数の受光素子を有する受光部と、
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
表面に所定の曲率半径を有する凹曲面と凸曲面とが2次元方向に交互に形成された検出面を有する基準格子と、
前記基準格子の裏面に形成された反射面と、
前記基準格子に対して移動可能に設けられ、前記基準格子の鉛直方向から前記検出面に向けて複数の平行光を発光する発光部と、
前記発光部と一体的に移動するように設けられ、前記反射面から反射した複数の平行光を受光する複数の受光素子を有する受光部と、
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項3】
表面に所定の曲率半径を有する凹曲面と凸曲面とが2次元方向に交互に形成された検出面を有する基準格子と、
前記検出面に形成された反射面と、
前記基準格子に対して移動可能に設けられ、前記基準格子の鉛直方向から前記検出面に向けて複数の平行光を発光する発光部と、
前記発光部と一体的に移動するように設けられ、前記反射面から反射した複数の平行光を受光する複数の受光素子を有する受光部と、
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項4】
前記発光部は、
光源と、
該光源からの光を複数の平行光に分光する分光手段と、
を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の検出装置。
【請求項5】
前記分光手段は、所定の曲率半径を有する凹曲面と凸曲面とが2次元方向に交互に形成された入射面を有することを特徴とする請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記受光部は、前記複数の平行光よりも多い数の受光素子を有しており、一つの光に対して少なくとも1以上の受光素子を配したことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の検出装置。
【請求項7】
前記受光素子で受光された前記複数の平行光の光強度に応じた検出信号が入力され、各光強度分布の変化から前記基準格子に対する前記発光部の相対的な移動量を演算する演算手段を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の検出装置。
【請求項8】
前記演算手段は、前記複数の受光素子で受光された前記複数の平行光の光強度分布の変化に基づいて前記検出面に対する前記発光部及び受光部の相対的な傾き角度を演算することを特徴とする請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記基準格子は、
透明基板と、
該透明基板の表側に設けられた第1の基準格子と、
前記第1の基準格子と180度の向きとなるように、前記透明基板の裏側に設けられた第2の基準格子と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項10】
ベースと、
該ベースに対して移動可能に設けられたステージと、
前記ステージに駆動力を付与する駆動手段と、
前記ステージの移動を検出する前記請求項1乃至9の何れかに記載の検出装置と、
前記検出装置の検出結果に応じて前記ステージが所定速度で移動するように前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするステージ装置。
【請求項11】
前記駆動手段は、一対のリニアモータであり、
前記制御手段は、前記一対のリニアモータを並進駆動することを特徴とする請求項10に記載のステージ装置。
【請求項12】
前記請求項1乃至9の何れかに記載の検出装置を前記リニアモータの近傍に設けたことを特徴とする請求項10に記載のステージ装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図71】
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【図72】
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【図1】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【公開番号】特開2006−10645(P2006−10645A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191828(P2004−191828)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】