検出装置及び方法
【課題】通信インフラを必要とせず、対象物との位置関係を有効に把握することを可能とする検出装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明による検出装置は、電波の発信源の位置を検出するための検出装置であって、複数のアンテナ(101〜104)と、前記複数のアンテナを介して前記発信源からの電波をそれぞれ受信する複数の受信部(201〜204)と、前記複数の受信部でそれぞれ受信された前記電波の各受信強度の相対値を演算し、該相対値を正規化して観測値として出力する演算部(300)と、前記観測値に基づいて前記発信源の位置を判定する判定部(400)とを備える。これにより、対象物の位置を検出する。
【解決手段】本発明による検出装置は、電波の発信源の位置を検出するための検出装置であって、複数のアンテナ(101〜104)と、前記複数のアンテナを介して前記発信源からの電波をそれぞれ受信する複数の受信部(201〜204)と、前記複数の受信部でそれぞれ受信された前記電波の各受信強度の相対値を演算し、該相対値を正規化して観測値として出力する演算部(300)と、前記観測値に基づいて前記発信源の位置を判定する判定部(400)とを備える。これにより、対象物の位置を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の発信源の位置を検出するための検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本では、交通事故の約40%が交差点付近で発生しており、重大な社会問題となっている。交差点における事故の大半は、右左折時における巻き込み事故や対面衝突であり、運転者の認知の遅れや死角(NLOS:non-line of sight)からの飛び出しが主な原因である。従って、死角に存在する歩行者などの対象を検知して運転者に警報を発することにより、運転者による車両の運転を支援するための研究が進められている。
【0003】
例えば、J. Ibanez-Guzmanらは、GPSで得られた自車両の位置を車両間通信で互いに交換するための研究を行った。しかしながら、都市部におけるGPSの位置精度は、電波の乱反射や遮蔽によって低下することが知られている。自動車の場合には、ジャイロセンサやカーナビシステムの道路情報等を参照して位置補正を行うことができるため、位置精度を改善することはできるが、歩行者や自転車においては、そのような位置補正機能を利用することは難しく、交差点での事故を防止するためのアプリケーションにGPSの利用は適さない。
【0004】
また、現在のところ、GPSにより得られる位置精度は10〜数10メートルに留まり、この種のアプリケーションに必要とされる位置精度を得ることができない。GPSの位置精度を改善するための手段として準天頂衛星が注目されているが、都市部では同時に4つ以上の衛星信号を受信することができる時間帯は限られるため、この種のアプリケーションにおいては、事実上、準天頂衛星による位置精度の改善を期待することはできない。
【0005】
GPSに代わるシステムとして、車載のカメラ、レーダ、ライダ(LIDAR)を用いて対象を検知する車載システムが挙げられる。例えば、P. GeismannらやY. Huangらは、ステレオカメラを用いて測定される深度情報をもとに歩行者を検出して運転支援を行うシステムを提案した。また、本願発明者らは、車載単眼カメラを用いた歩行者検出技術を提案した。この種の車載システムは、現在までに、ステレオカメラやミリ波センサを利用した前方衝突防止システムとして実用化されているものもある。
【0006】
しかしながら、GPSに代わる上述の車載システムによれば、インフラを必要とせず、車両内でシステムを完結させることができるものの、他の車両や建物等に視線を遮られることにより生じる死角領域に存在する対象を認識することはできない。また、この種の車載システムが対応できる状況は限られており、車両、自転車、歩行者による複合的な要因が存在する交差点での状況に有効に対応することは困難である。
【0007】
こうした死角に関する車載システムの欠点を補うためのシステムとして路車協調システムが挙げれる。この路車協調システムでは、5〜10メートル程度の高さに設置された路側センサにより、交差点へ接近する車両の位置および速度の計測や、横断歩道付近の歩行者の位置の検出等を行い、この路側センサにより得られた情報を路車間通信により各車両に提供する。これにより、各車両の運転者は自車両から死角となる領域に存在する対象を認識することができ、右折車両と直進車両との衝突事故や歩行者巻き込み事故等、交差点での事故の防止に貢献している。
【0008】
しかしながら、この路車協調システムによれば、十分な効果を得るためには路側センサをいくつも設置する必要があるため、前述の車載システムに比較して多大なコストを要し、また設置場所やコストの制約から、その導入がごく一部の大規模な交差点に限られている。
【0009】
上述した各種の従来技術が抱える欠点を解消する技術として、例えば特開2008−186274号公報(特許文献1)に開示された警戒対象検出装置がある。この装置によれば、歩行者等の警戒対象に備えられた発信源から送信される電波を、車両の前部と後部にそれぞれ配置されたアンテナにより受信する。そして、前部のアンテナでの受信強度と後部のアンテナでの受信強度とを比較することにより、警戒対象が車両の前方及び後方の何れに存在するのかを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−186274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の公開公報に開示された技術によれば、警戒対象が存在する方向を大まかに判定することはできるものの、その位置を特定することはできない。また、仮に発信源からの電波の受信信号強度に基づいて警戒対象までの距離を推定することができるとしても、電波の伝搬経路の環境変化、或いは発信源である送信機の送信出力の低下等により受信信号強度が変動すると、その警戒対象までの距離を正しく推定することができなくなる。従って、車両の運転者は、警戒対象の位置を把握することが困難になり、警戒対象に対して注意を有効に払うことができない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、通信インフラを必要とせず、対象物との位置関係を有効に把握することを可能とする検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る検出装置は、電波の発信源の位置を検出するための検出装置であって、複数のアンテナと、前記複数のアンテナを介して前記発信源からの電波をそれぞれ受信する複数の受信手段と、前記複数の受信手段でそれぞれ受信された前記電波の各受信強度の組み合わせに基づいて前記発信源の位置を判定する判定手段と、を備えた検出装置の構成を有する。
【0014】
上記検出装置において、前記判定手段は、前記複数の受信手段でそれぞれ受信された前記電波の各受信強度の相対値を演算し、該相対値の組み合わせを観測値とし、該観測値に基づいて前記発信源の位置を判定することを特徴とする。
【0015】
上記検出装置において、前記相対値は、正規化された値であることを特徴とする。
【0016】
上記検出装置において、前記判定手段は、前記発信源の位置に対応する座標値と前記観測値に対応する参照値とが記述された参照テーブルを備え、前記観測値と前記参照テーブルに記述された参照値との間の相関を演算し、最も高い相関を示す参照値に対応する座標値から、前記発信源の位置を特定することを特徴とする。
【0017】
上記検出装置において、前記参照値は、前記発信源が前記座標値で示される位置にあるときに前記観測値として得られるべき値に相当するものであることを特徴とする。
【0018】
上記検出装置において、前記判定手段は、更に、前記発信源の位置の経時変化を追跡し、該経時変化に基づいて前記発信源の運動状況を判定することを特徴とする。
【0019】
上記検出装置において、当該検出装置が車両に搭載されると共に、前記車両の運動状況又は運転者による運転操作を検出するための手段と、前記発信源の位置に基づいて警報を発するための手段を更に備え、前記車両の運動状況又は前記運転者による運転操作を前記警報に反映させることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る検出方法は、電波の発信源の位置を検出するための検出方法であって、複数のアンテナを介して前記発信源からの電波をそれぞれ受信する段階と、前記複数の受信手段で受信された前記電波の各受信強度の組み合わせに基づいて前記発信源の位置を判定する段階と、を含む検出方法の構成を有する。
【0021】
また、本発明に係る検出方法は、電波の発信源の位置を検出するための検出方法であって、複数の受信手段が、複数のアンテナを介して前記発信源からの電波をそれぞれ受信する段階と、演算手段が、前記複数の受信手段で受信された前記電波の各受信強度の相対値の組み合わせを演算し、該相対値の組み合わせを観測値として出力する段階と、判定手段が、前記観測値に基づいて前記発信源の位置を判定する段階と、を含む検出方法の構成を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡易な構成で、電波の受信信号強度の変動による影響を抑制しながら、その発信源の位置を検出することができ、この発信源が備えられた対象物が死角領域に存在する場合であっても、その存在を検出することができる。
従って、例えば、死角領域の多い交差点等において、運転者が自車両から他車両や歩行者等の位置を把握することが可能になり、車両の運転を支援することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による検出装置の利用環境の例を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態による検出装置の構成を示すためのブロック図である。
【図3】本発明の実施形態による検出装置が備える複数のアンテナの車両上の配置を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態による参照テーブルを作成する方法を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施形態による参照テーブルを作成する過程で得られる受信信号強度を階調により表現したイメージを示す図である。
【図6】本発明の実施形態による参照テーブルの一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態による検出装置により得られた対象物の位置の表示例を示す図である。
【図8】本発明による試作装置を説明するための図である。
【図9】本発明による試作装置の実験方法を説明するための図である。
【図10】本発明による試作装置の実験結果を説明するための図である。
【図11】本発明による試作装置の実験結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
本発明は、広範な分野において電波の発信源の位置(または、発信源までの距離とその方向)を検出するために利用可能であるが、本実施形態では、とりわけ交差点での車両の運転を支援するために自車両に対する他車両や歩行者の位置を検出する場合を例として説明する。
なお、本実施形態では、本検出装置が受信する電波の発信源を備えた他車両や歩行者等を、適宜、「対象物」と称す。
【0025】
(本実施形態で想定する交差点での事故の形態)
先ず、図1を参照しながら、本実施形態で想定する交差点での典型的な交通事故の形態について説明する。
交差点での典型的な事故は、図1に示すケース1〜3に大別される。
このうち、ケース1は、自車両が右折する際に対向車両と衝突する場合を示している。このケース1では、対向車線上で一時停止中の大型車両により死角領域が生じ、この死角領域により、対向車線上を遠方から交差点に接近する他の車両を自車両から直接確認することが困難である。そのため、右折中の自車両が死角領域から現れた対向車両と衝突する事故が発生し得る。このような事故の発生を防止するためには、死角領域に存在する対向車両を的確に検出することが要求され、その進行方向も含めて検出することが望ましい。
【0026】
また、ケース2は、自車両が右折(または左折)する際に横断中の歩行者と衝突する場合を示している。このケース2では、横断歩道周辺の歩行者は様々な方向から右折中の自車両に接近してくる可能性がある。従って、自車両の近傍に存在する様々な方向からの歩行者を的確に検出することが要求される。また、自車両と衝突するおそれのない歩行者については警報を発しないよう、各歩行者の位置を個別的に検出することが望ましい。
【0027】
更に、ケース3は、左折する際に、それまで自車両の左後方を走行していた後続の自転車や自動二輪車を巻き込む場合を示している。このケース3では、自車両の左後方の領域は、運転者にとって目視確認が困難な領域であるため、そのような領域に存在する他の車両等を運転者が見落として巻き込むおそれがある。従って、自車両の左後方に位置する他の車両等を的確に検出することが要求される。
【0028】
(本実施形態の概要)
次に、本実施形態の概要を説明する。
前述したように、一般の車載システムやライダ(LIDAR)システムは、反射波等の検出に基づくものであるため、その原理上、障害物によって生じる死角領域に存在する他の車両や歩行者等を検出することはできない。また、路車協調システムは、センサの設置場所やコストにより、その導入が制約される。
【0029】
本実施形態では、これらの不都合を解消するため、検出の対象物となる車両および歩行者等が電波の発信源である送信機を備え、この送信機から送信される電波を受信することにより、受信側の車両において対象物の位置を検出する。この場合、電波の回折現象を利用して死角領域からの電波を受信することにより、この死角領域に存在する対象物を把握することを可能としている。
【0030】
また、本実施形態では、受信側の車両の四隅にアンテナを設置し、計4個のアンテナでそれぞれ受信される電波の受信信号強度の相対値に基づいて対象物の位置を検出する。或いは、受信側の車両に対する対象物の方向、対象物の移動方向(接近/離反)、対象物までの距離(遠/近)を推定する。
【0031】
この場合、送信機の送信出力の変動や周囲環境の変動等に起因した電波強度の変動による誤検出を防止するため、上記相対値を正規化した量に基づいて対象物の位置を検出する。そして、この検出結果を基に運転者に警報を発することで、前述したような事故の発生が懸念される交差点等での車両の運転を有効に支援する。
【0032】
(本実施形態による検出装置の構成)
次に、図2乃至図5を参照して、本実施形態による検出装置の構成を詳細に説明する。
図2に示すように、本検出装置は、複数のアンテナ101〜104、複数の受信部(「受信手段」)201〜204、演算部300、判定部400、および記憶部500から構成される。本実施形態では、演算部300および判定部400が請求項に記載の「判定手段」を構成する。
なお、本実施形態では、記憶部500は判定部400の構成要素であるものとする。ただし、このような定義は、説明の便宜のためであり、記憶部500を独立の構成要素として取り扱ってもよい。
【0033】
ここで、アンテナ101〜104は、車両上の所定位置に配置され、本実施形態では、図3(a)〜(c)に例示するように、車両600の四隅に配置される。即ち、アンテナ101は車両600の左前部に配置され、アンテナ102は車両600の右前部に配置され、アンテナ103は車両600の右後部に配置され、アンテナ104は車両600の左後部に配置される。
【0034】
また、本実施形態では、アンテナ101〜104は指向性を有するものとし、前部に配置されるアンテナ101,102の受信方向は、それぞれ車両600の左前方および右前方に設定され、後部に配置されるアンテナ103,104の受信方向は、それぞれ車両600の右後方および左後方に設定される。これらアンテナ101〜104の配置関係は、基本的には、後述の「参照テーブル」を生成するときのアンテナの配置関係と同じに設定される。
【0035】
なお、本実施形態では、4個のアンテナ101〜104を使用するが、これに限定されることなく、複数個の任意の個数のアンテナを使用することができ、好ましくは3個以上のアンテナを使用することができる。また、本実施形態では、車両の四隅にアンテナを配置するが、これに限定されることなく、対象物の位置を判定する際に使用する後述の「参照テーブル」を有意に生成することができる限度において、車両上のどのような部位に配置してもよく、それらの受信方向をどのように設定してもよい。例えば、車両の前中央部、後中央部、左フェンダ部、右フェンダ部など、車両のどのような部位にアンテナを配置してもよい。
【0036】
また、本実施形態では、アンテナ101〜104は指向性を有するものとするが、これに限定されることなく、無指向性アンテナを採用してもよく、例えば車両が電波の遮蔽体として作用することにより、無指向性アンテナが指向性を獲得してもよい。何れにしても、後述の「参照テーブル」を有意に生成することができる限度において、アンテナ自体の指向性の有無は問わない。
【0037】
説明を図2に戻すと、4個のアンテナ101〜104は、それぞれ受信部201〜204に接続される。受信部201〜204は、対象物に備えられた発信源からの電波をそれぞれアンテナ101〜104を介して受信するためのものであり、本実施形態では、Zigbee規格に適合した無線通信デバイス(Zigbee-Chip)を用いて構成される。従って、他車両や歩行者等の対象物に備えられる電波の発信源も、このZigbee規格に適合した送信機を備える。
【0038】
ここで、Zigbee規格は短距離無線通信の規格の一つであり、IEEE 802.15.4-2003に基づいている。この規格によれば、メッシュ(Mesh)型のネットワークを構成することができ、低コストかつ低消費電力であるため、アドホック通信に適している。また、Zigbee規格で採用されている周波数帯は2.4GHz帯であり、日本国内では公道上で自由に使用可能な周波数帯である。この周波数帯では電波の回折現象が比較的顕著に発生するため、交差点等での障害物により生じる死角領域からでも電波を受信することが可能である。
【0039】
また、Zigbee規格はCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collosion Avoidance)方式を採用しているため、パケットの衝突を自動的に検出して再送信を行うことで、パケットの衝突による通信上の問題を回避することができる。加えて、Zigbee規格では、デバイス毎に16ビットの固有IDが割り振られ、送信パケットはその情報を含んでいる。従って、この情報を用いれば、複数の送信機からのパケットを識別することができ、電波の送信元が歩行者であるのか、自転車であるのか、車両であるのかを判別することが可能になる。
【0040】
受信部201〜204では、車両の四隅に設置されたアンテナ101〜104を介してそれぞれ受信された電波の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)が測定される。この受信信号強度は、時刻tでの観測値z(t)=[z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)]Tとして表される。ここで、z1(t)、z2(t)、z3(t)、z4(t)は、時刻tで受信部201,202,203,204においてそれぞれ受信された受信信号強度を表す。この観測値z(t)=[z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)]Tは演算部300に供給される。
【0041】
演算部300は、観測値z(t)の相対値zn,m(t)を演算し、この相対値を正規化して値z’n,m(t)として出力するものである。このような演算の目的は、前述したように、電波の送信出力の変動や周囲環境の変動等に起因した受信信号強度の変動による影響を排除することにある。
【0042】
ここで、例えば送信機のバッテリ残量の低下による送信出力の変動や周囲環境の変動によって、発信源から出力される電波の強度が変動したとしても、その影響の度合いは全てのアンテナ101〜104について概ね同等であるため、これらアンテナ101〜104を介して得られる受信信号強度間の相対関係は維持される。また、これら受信信号強度間の相対関係は発信源の位置に応じて決定される。従って、このような相対関係に基づく相対値zn,m(t)を正規化することで、送信機の送信出力の変動等による影響を排除し、対象物の位置を正しく検出することが可能になる。
【0043】
以下では、説明の便宜上、相対値zn,m(t)を正規化して得られる値z’n,m(t)を「正規化相対観測値z’n,m(t)」と称す。
【0044】
ここで、演算部300において、相対値zn,m(t)は次式(1)により演算される。
zn,m(t)=zn-zm ; 1≦n<m≦4 …(1)
【0045】
式(1)において、n、mは、4個のアンテナ101〜104(または受信部201〜204)のうちの二つを表し、(n,m)=(1,2), (1,3), (1,4), (2,3), (2,4), (3,4)の6通りの組み合わせが存在する。
【0046】
演算部300は、式(1)により、時刻tにおいて4個のアンテナ101〜104のうちの任意の二つで受信された受信信号強度の差分(zn-zm)を演算して相対値zn,m(t)を求める。この場合、n、mの6通りの組み合わせに応じて、相対値zn,m(t)として次の6個の値が得られる。
【0047】
z1,2(t)=z1-z2
z1,3(t)=z1-z3
z1,4(t)=z1-z4
z2,3(t)=z2-z3
z2,4(t)=z2-z4
z3,4(t)=z3-z4
【0048】
このようにして得られた相対値zn,m(t)は次式(2)により正規化され、これにより正規化相対観測値z’n,m(t)が得られる。
z’n,m(t)=|zn,m(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}| …(2)
【0049】
式(2)において、max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}は、4個の値z1(t)、z2(t)、z3(t)、z4(t)のうち、最も大きな値を表している。
式(2)により得られる正規化相対観測値z’n,m(t)についても、n、mの組み合わせに応じて、上述の相対値zn,m(t)に対応した次の6個の値が得られ、これら6個の値からなる正規化相対観測値z’n,m(t)は判定部400に供給される。
【0050】
z’1,2(t)=|z1,2(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}|
z’1,3(t)=|z1,3(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}|
z’1,4(t)=|z1,4(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}|
z’2,3(t)=|z2,3(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}|
z’2,4(t)=|z2,4(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}|
z’3,4(t)=|z3,4(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}|
【0051】
判定部400は、正規化相対観測値z’n,m(t)に基づいて後述の参照テーブルを参照することにより、発信源の位置を判定するものであるが、その詳細については本検出装置の動作の説明で述べることとする。
【0052】
判定部400が備える記憶部500には、参照テーブルが格納されている。この参照テーブルには、上述の正規化相対観測値z’n,m(t)に相当する値が参照値として発信源の座標値と共に記述され、これら参照値と座標値は予め実験的に取得される。
【0053】
ここで、図4及び図5を参照しながら参照テーブルについて詳細に説明する。
この参照テーブルは、図4に例示するように、xy平面上の所定のグリッドに電波の発信源(図示なし)を位置させ、車両600に配置された前述のアンテナ101〜104を介して得られる電波の受信信号強度を測定することにより作成される。この例では、車両600の中心位置は原点に配置され、グリッドが、40m×58mの範囲に2m間隔で行列状に配置されている。
【0054】
なお、図4の例では、y軸方向に関して車両の中心位置はグリッド上にはなく、グリッド間に存在するが、このようなグリッドの定義は任意であり、この例に限定されない。
【0055】
電波の発信源が図4に示すxy平面上のグリッドに位置するときに車両600上のアンテナを介して測定される受信信号強度cn(x,y)を次式(3)で表す。
cn(x,y) ; n=1,2,3,4 -20≦x≦20, -29≦y≦29 …(3)
【0056】
式(3)において、nは、アンテナ101〜104(または受信部201〜204)のうちの任意の一つを表す。即ち、c1(x,y)はアンテナ101を介して受信部201で受信された受信信号強度を表し、同様に、c2(x,y)〜c4(x,y)は、それぞれアンテナ102〜104を介して受信部202〜204で受信された受信信号強度を表す。また、(x,y)は、発信源の座標値を表す。
【0057】
全てのグリッドについて、c1(x,y)〜c4(x,y)のそれぞれの値が測定され、これは、前述の観測値z(t)=[z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)]Tに対応する量である。
【0058】
図5に、一例として、車両600の右前部に設置されたアンテナ102を介して測定されたc2(x,y)の値を階調により表現したイメージを示す。同図では、c2(x,y)の値(即ち、受信信号強度)が大きいほど、高い階調で表現されている。
【0059】
図5に示す例では、車両600の左後方の領域に比較して前方及び右方向の領域の階調が高く、この領域から到来する電波の受信信号強度が大きいことが示されている。とりわけ、アンテナ102の受信方向と一致する右前方から到来する電波の受信信号強度が大きくなっている。一方、アンテナ102からは車両600の陰にあたる左後方の領域の階調が低く、この領域から到来する電波の受信信号強度が小さいことが把握される。また、アンテナ102に近い領域ほど、受信信号強度が大きく、アンテナ102から離れるほど、受信信号強度が小さいことが把握される。
【0060】
特に図示していないが、車両600の左前部に設置されたアンテナ101を介して測定されたc1(x,y)の値から得られるイメージは、基本的には、図5のイメージとy軸に関して線対照である。また、車両600の右後部に設置されたアンテナ103を介して測定されたc3(x,y)の値から得られるイメージは、基本的には、図5のイメージとx軸に関して線対照である。更に、車両600の左後部に設置されたアンテナ104を介して測定されたc4(x,y)の値から得られるイメージは、基本的には、図5のイメージと原点に関して点対照である。
【0061】
このように、同一の発信源からの電波を4個のアンテナ101〜104を介して受信して得られるc1(x,y)〜c4(x,y)の値は相互に異なり、各座標値(x,y)について得られるc1(x,y)〜c4(x,y)の各値の組み合わせは各座標値(x,y)について固有である。従って、逆に、c1(x,y)〜c4(x,y)の値の組み合わせから発信源の座標値を特定することができる。
【0062】
上述のようにして測定された各グリッドでの受信信号強度cn(x,y)から、次式(4)により相対値cn,m(t)が演算される。
cn,m(x,y)=cn(x,y)-cm(x,y) ; 1≦n<m≦4 …(4)
【0063】
式(4)において、n、mは、図4のxy平面上の原点に位置する車両600に設置された4個のアンテナ101〜104(または受信部201〜204)のうちの二つを表し、(n,m)=(1,2), (1,3), (1,4), (2,3), (2,4), (3,4)の6通りの組み合わせが存在する。これらn、mの6通りの組み合わせに応じて、相対値cn,m(x,y)として次の6個の値が得られる。
【0064】
c1,2(x,y)=c1(x,y)-c2(x,y)
c1,3(x,y)=c1(x,y)-c3(x,y)
c1,4(x,y)=c1(x,y)-c4(x,y)
c2,3(x,y)=c2(x,y)-c3(x,y)
c2,4(x,y)=c2(x,y)-c4(x,y)
c3,4(x,y)=c3(x,y)-c4(x,y)
【0065】
このように従って得られた相対値cn,m(x,y)は、前述の観測値z(t)から得られる相対値zn,m(t)に対応する量である。
【0066】
相対値cn,m(x,y)は次式(5)により正規化され、値c’n,m(x,y)が演算される。以下では、説明の便宜上、相対値cn,m(x,y)を正規化して得られる値c’n,m(x,y)を「正規化相対参照値c’n,m(x,y)」と称す。
c’n,m(x,y)=|cn,m(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}| …(5)
【0067】
式(5)において、max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}は、c1(x,y)、c2(x,y)、c3(x,y)、c4(x,y)の値のうち、最も大きな値を表している。
式(5)により得られる正規化相対参照値c’n,m(x,y)についても、n、mの組み合わせに応じて、上述の正規化相対観測値c’n,m(t)に対応した次の6個の値が得られる。
【0068】
c’1,2(x,y)=|c1,2(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}|
c’1,3(x,y)=|c1,3(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}|
c’1,4(x,y)=|c1,4(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}|
c’2,3(x,y)=|c2,3(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}|
c’2,4(x,y)=|c2,4(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}|
c’3,4(x,y)=|c3,4(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}|
【0069】
このようにして得られた正規化相対参照値c’n,m(x,y)は、発信源が座標値(x,y)で示される位置にあるときに、前述の観測値z(t)から演算部300により得られるべき正規化相対観測値z’n,m(t)に相当する量である。
図6に示すように、正規化相対参照値c’n,m(x,y)は、その値が測定されたときの座標値(x,y)と共に参照テーブルに記述され、図2に示す記憶装置500に格納される。
【0070】
このように、参照テーブルには、図4に示す40m×58mの範囲内に位置する実際の発信源からの電波を受信したときに得られるであろう正規化相対観測値z’n,m(t)が、正規化相対参照値c’n,m(x,y)として記述されている。従って、参照テーブルに記述された正規化相対参照値c’n,m(x,y)の中から、実際に得られた正規化相対観測値z’n,m(t)に最も近似する値を探し出し、その値が測定されたときの座標値(x,y)から実際の対象物の位置を判定することが可能になる。
【0071】
なお、本実施形態では、図2に示した本検出装置は、車両に搭載される車載システムとして構成されるが、各構成要素がどのように実現されるのかについては特に限定されるものではなく、例えば、演算部300および判定部400は、ナビゲーションシステムの機能により実現されてもよい。また、本検出装置は、車載システムとしてではなく、固定型または携帯型の端末として構成してもよい。
【0072】
(本実施形態による検出装置の動作)
次に、本検出装置の動作(検出方法)を説明する。
上述したように、図2に示すアンテナ101〜104を介して受信部201〜204が発信源からの電波を受信すると、受信部201〜204は、受信信号強度である観測値z(t)を測定して演算部300に与える。演算部300は、観測値z(t)から正規化相対観測値z’n,m(t)を演算して判定部400に与える。
【0073】
判定部400は、正規化相対観測値z’n,m(t)に基づいて、記憶部500に格納された図6に示す参照テーブルを参照することにより発信源の位置を判定する。本実施形態では、判定部400は、実際に観測された正規化相対観測値z’n,m(t)と、参照テーブルに記述された各正規化相対参照値c’n,m(x,y)とを比較し、参照テーブルに規定された正規化相対参照値c’n,m(x,y)のうち、実際に観測された正規化相対観測値z’n,m(t)と最も相関の高い値を検索する。そして、この検索されれた正規化相対参照値に対応する座標値(x,y)から対象物の位置を判定する。
【0074】
具体的には、判定部400は、実際に観測された正規化相対観測値z’n,m(t)と、参照テーブルに記述された各正規化相対参照値c’n,m(x,y)との間の相関度を計算する。そして、参照テーブルに記述された正規化相対参照値c’n,m(x,y)のうち、最も高い相関度を与える正規化相対参照値c’n,m(x,y)が測定されたときの座標値(x,y)を、発信源の位置、即ち対象物の位置として判定する。
【0075】
本実施形態では、上記相関度として、正規化相対観測値z’n,m(t)と参照テーブル内の各正規化相対参照値c’n,m(x,y)との間のユークリッド距離Dを計算する。そして、参照テーブルに記述された正規化相対参照値c’n,m(x,y)のうち、最も小さいユークリッド距離Dを与える値が測定されたときの座標値(x,y)、即ち、正規化相対観測値z’n,m(t)と最も近似する正規化相対参照値c’n,m(x,y)が測定されたときの座標値(x,y)から、発信源の位置を判定する。
【0076】
上記ユークリッド距離Dは次式(6)により与えられる。
D = [{z’1,2(t)-c’1,2(x,y)}2 + {z’1,3(t)-c’1,3(x,y)}2 + {z’1,4(t)-c’1,4(x,y)}2 + {z’2,3(t)-c’2,3(x,y)}2 + {z’2,4(t)-c’2,4(x,y)}2 + {(z’3,4(t)-c’3,4(x,y)}2]1/2 …(6)
【0077】
本実施形態では、上記相関度としてユークリッド距離Dを評価するが、ユークリッド距離Dに限定されることなく、どのような手法を用いて相関度を計算してもよい。例えばノイズにより、正規化相対観測値z’n,m(t)の6個の値z’1,2(t),…,z’3,4(t)のうち、1個の値z’1,2(t)が、対応する正規化相対参照値c’n,m(x,y)の値c’1,2(x,y)と著しく異なっているためにユークリッド距離Dが大きくなったとしても、この値を除く他の5個の値が極めて近似していれば、相関度が高いと考えることができ、そのような手法を採用してもよい。従って、対象物の位置を有意に判定することができる限度において、相関度なる用語の意味をどのように定義してもよく、例えば類似なる概念により定義してもよい。
【0078】
また、参照テーブルに記述される座標値(x,y)は、車両から発信源までの具体的な距離のxy成分に限らず、発信源の位置を特定することができる限度において、どのような形式の情報であってもよい。例えば、前述の図4のxy平面上のグリッドに番号を付与し、この番号を座標値として使用してもよい。また、参照テーブルを格納するための記憶部500を構成するメモリのアドレスとして座標値を規定してもよく、このメモリとして例えばCAM(Content Addressable Memory)を使用してもよい。
【0079】
判定部400は、上述のようにして対象物の位置を判定し、その位置情報を出力する。
単に位置情報だけを必要とする一般的な用途であれば、この位置情報を最終的な出力とすることができるが、本実施形態では、交差点等での車両の運転を支援する目的上、判定部400は、その位置情報に基づいて警報を発するための警報手段を備える。
なお、本実施形態では、形式的に判定部400の構成に警報手段を含めるが、これに限定されることなく、警報手段を独立の構成要素としてもよい。
【0080】
判定部400が備える警報手段は、対象物(発信源)のの位置情報に基づいて、例えば音声情報、画像情報、あるいは機械的振動等により運転者に対して警報を発する。例えば、図7に示すように、位置情報は表示装置(図示なし)の画面上に表示される。同図に示す3つの画面は、自車両の前方を右から左に移動する発信源の位置が経時的に変化する様子を示している。即ち、同図において、左画面は、自車両の右前方に位置する発信源の位置を表示し、中央画面は、更に発信源が左方向に移動したときの位置を表示し、右画面は、更に発信源が自車両の左前方に移動したときの位置が表示されている。
【0081】
また、判定部400は、このような発信源の位置の経時変化を追跡し、この経時変化に基づいて発信源の運動状況を判定し、この運動状況に応じて警報を発してもよい。例えば、図7の例では、左画面と中央画面から把握される発信源の位置の経時変化から、発信源が自車両の進行方向を横切るように運動を継続することが予測される。この運動の状況から、自車両と発信源を備えた対象物が衝突する可能性が予測されるため、判定部400は、運転者に警報を発し、この発信源を備えた対象物に対する注意を促す。
【0082】
また、図7に示す表示例に限らず、例えば、車両の周囲をxy平面の第1象限から第4象限に区分し、この象限により他車両の位置を表示してもよい。この場合、例えば、図7の左画面および中央画面に代えて、xy平面の第1象限全体が発信源の位置として表示され、図7の右画面に代えて第2象限全体が発信源の位置として表示される。このような表示形態によれば、運転者は注意を払うべき方向を直感的に把握することができる。
【0083】
また、画像情報と共に音声情報により警報を発するものとしてもよく、または、音声情報のみにより警報を発するものとしてもよい。
【0084】
また、本検出装置は、自車両600の運動状況又は運転者による運転操作を検出するための手段を更に備え、判定部400が、自車両600の運動状況又は運転者による運転操作を上述の警報手段による警報に反映させてもよい。例えば、自車両600が右方向に旋回運動していることが検出された場合、または、運転者が右方向の指示器を操作したことが検出された場合、判定部400は、例えば自車両の後方および左方向を除外し、自車両の前方および右方向の発信源のみについて運転者に警報を発してもよい。
【0085】
この場合において、全方向の発信源を対象として位置を判定した後に、自車両の前方および右方向の発信源のみを警報の対象として選択してもよい。これにより、警報に要する処理の負荷を軽減することができると共に、運転者にとって不要な警告を抑制することができる。または、演算部300は、例えば前述の参照テーブルの一部をマスクすることにより、自車両の後方および左方向の対象物の位置を判定するために必要とされる演算処理を省略し、これら以外の対象物の位置のみを判定および警報の対象として選択してもよく、これにより位置判定に要する演算処理の負荷を軽減することができる。
【0086】
以上により、本実施形態による検出装置によれば、簡易な構成で、発信源が備えられた対象物が死角領域に存在する場合であっても、その存在を検出することができる。
従って、例えば死角領域の多い交差点等において、運転者が自車両から他車両や歩行者等の位置を有効に把握することが可能になり、車両の運転を支援することが可能になる。
【0087】
(試作装置)
次に、図8〜図11を参照して、本実施形態による検出装置の機能を検証するために試作した装置(以下、「試作装置」と称す)の概要を説明する。
【0088】
本試作装置は、前述の図2に示す例えばアンテナ101と受信部201を図8(c)に示すような1個の受信ユニットとして、合計4個の受信ユニットを備え、各受信ユニットは車両の四隅に設置される。本試作装置は、送信機の位置によってそれぞれ変化する各受信ユニットでの受信電波強度を基に、図8(a)に示すように、車両に対する送信機の方向(1−4)、移動方向(接近/離反)、距離(遠方/近傍)の大まかな推定を行い、交差点等での運転支援を実現する。
【0089】
4個の受信ユニットは、前述のようにZigbee規格に適合したXbeeチップを用いて構成される。この受信ユニットは、図8(b)に示すように、電波吸収材で覆われた遮蔽箱に収容され、この遮蔽箱の一部には開口部が形成されている。この開口部を通じて内部の受信ユニットのアンテナが電波を受信する。従って、遮蔽箱の効果により、送信機の方向を向いたアンテナの受信電波強度は高く、反対側の受信強度は低くなり、またその差は距離に応じて変化するため、これらのアンテナでの受信強度を用いて発信源の位置を推定することができる。前述の実施形態による検出装置の機能を検証するため、本試作装置の4個の受信ユニットは、図8(d)に示すように、車両の周囲に三脚に乗せて仮設置された。
【0090】
また、本試作装置では、路面での反射によるノイズの影響を抑え、位置の推定を安定化させるため、パーティクルフィルタを適用した。本手法のフィルタでは、状態ベクトルを“x(t)=[x(t)y(t)vx(t)vy(t)]T”と定義する。送信機の位置“(x,y)”はここに含まれる。パーティクルフィルタにおいて、確率密度関数“P(x(t)|z(t))”は、サンプルパーティクルの集合“S(t)={s(1)(t), s(2)(t),…}”で定義される。それぞれのパーティクルは状態ベクトルと同じ次元および要素を持つ。
【0091】
パーティクルフィルタの更新フェイズにおいて、新しいサンプルの集合“S(t+1)”は前の時間のサンプル“S(t)”とそれに対応する尤度“π(t)={π(1)(t),π(2)(t),…}”によって計算される。それぞれの尤度“π(k)(t)”はサンプル“s(k)(t)”のひとつひとつに対応し、その値は尤度関数“L(z(t,n,m)|s(k)(t))”を用いて求める。最終的なフィルタの性能はこの尤度関数によって決まる。本試作装置では、この関数を次式(7)のように定義した。ただし、次式において、“Σ”の適用範囲は、1≦n<m≦4である。
L(z(t,n,m)|s(k)(t))=exp[Σa(n,m){z(t,n,m)-C(x,y,n,m)}2/σ2]+O …(7)
【0092】
ここで、“O”は、推定を安定させるためのオフセットであり、“σ2”は、便宜的に想定されたホワイトノイズの分散値である。また、“a(n,m)”は、それぞれの、尤度に対する正規化値の重み付けである。これらの値は、経験的に定められた。“C(x,y,n,m)”の“(x,y)”は、それぞれの“s(k)(t)”が保持している要素であり、その関数はその位置に於いて想定される各正規化値を返す。そのため尤度関数“L(z|s)”は想定された値と実際の値を比較し、近ければ近いほど大きな尤度を与える関数である。
【0093】
次に、対象物に備えられる発信源として使用される送信機の状態推定について述べる。
本試作装置では、最終的な推定の結果として、送信機のおおよその方向、近づいているか遠ざかっているか、および近くにいるか遠くにいるかといった3つの状態を出力し、それらを元に衝突回避を目指した。全ての状態推定は、上述したフィルタリングの結果を用いているため、衝突回避の精度は位置推定の精度に依存する。本試作装置で採用した正規化値は、送信機の状態や、周辺の環境による電波の変化に影響されにくく、結果推定も図10に示すように、安定させることができた。この図10は、高出力送信モードおよび低出力送信モードでそれぞれ得られる受信信号強度を表す二つのグラフを含んでおり、これらのグラフでは前述の式(7)に基づいて、近くと遠くを推定している。それぞれの図は、縦軸が観測されたそのままの受信信号強度(RSSI)の値を表し、横軸が時間を表しており、対象物が遠方から接近して通過するまでの一連の受信信号強度の変化の様子を表している。図10に示すように、電波強度が高くても低くても、センサの値の差が大きいところは「近く」と判定し、小さいところは「遠く」と判定できていることがわかる。
【0094】
次に、実験結果を説明する。
本試作装置では、交差点付近での事故を想定して、図9に示すように2種類の実験を行った。ひとつは、図1のケース1に表されるような右折中の対向車との対面衝突であり、もうひとつは、ケース2,3に表されるような、近傍の歩行者や自転車との衝突である。これらの事故形態はあくまで例であり、本装置は、他の例や交差点以外での事故防止に適用することができる。この実験では、時系列で受信信号強度(RSSI)データを収集し、前述の参照テーブルの正規化相対参照値に基づいて推定を行った。
【0095】
接近する車両の方向は、図9(a)に示す交差点を基準としたものであるため、フィルタリングで得られた推定位置を変換する必要がある。本試作装置では、送信機を自転車に取り付け、図9(a)に示された点線上を移動してデータを収集した。番号(1)−(4)は行われた実験のシナリオ番号である。それぞれ別の方向から交差点に接近している。スタート地点は、交差点の中心から20mの地点であり、そこからおよそ30mにわたって走行したデータを記録した。
この実験では、観測車両は右折待ちの状態で停車した。対向車は遠方から接近してくるため、最初は接近、途中から離反になる。方向については、大部分は良好に判定された。
【0096】
次に、歩行者との衝突回避について説明する。
図9(b)に示されたラインを辿って計測を行った。シナリオ(5)から(12)は、近傍の位置と動きをテストするためのものであり、シナリオ(13)と(14)は周囲で相対位置が前後するような併走自転車を想定したものである。この実験から、併走自転車が近傍にいる状態を検出することができた。
【0097】
図11に、同一対象物について、ステレオカメラの深度情報から得られた位置と、本試作装置によって検出された位置とを対比して示す。この例では、対象物が自車両の前方を左右方向に移動している。同図11(a)において、白丸のプロットが本試作装置により推定された位置を表す。また、同図11(b)は、本試作装置により推定された位置と正しい位置との誤差距離を示すものであり、その横軸が、車両の中心から正しい位置までの距離を示し、縦軸が誤差距離を示す。図11から理解されるように、本試作装置によって検出された位置は、ステレオカメラによって検出された位置と近似し、十分な位置精度を有していることが確認された。
【0098】
次に、正規化による安定化の効果について説明する。
本試作装置では、送信機の状態や周囲の環境による電波強度の変化に対する頑健性を得るために、受信信号強度(RSSI)を正規化して推定を行った。それを検証するため、送信電波強度を変化させて実験を行った。この実験から、送信電波強度を変化させても、結果に変化はないことが確認され、正規化の効果を実証することができた。
【0099】
以上、本発明による実施形態と試作装置による検証を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、どのように変形し修正してもよい。
【0100】
例えば、上述の実施形態では、相対値zn,m(t)および相対値cn,m(x,y)を正規化するものとしたが、これに限定されることなく、例えば電波の発信源の送信出力や周囲環境等の変動の影響を考慮する必要がないのであれば、複数の受信部201〜204から供給される受信信号強度zn(t)の各値z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)の組み合わせに基づいて対象物(発信源)の位置を検出することも可能である。この場合、図6に示す参照テーブルには、参照値として受信信号強度cn(x,y)の各値c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)が記述される。この例によれば、演算部300を省略することができ、判定部400は、参照テーブルを参照することにより、観測値zn(t)の各値の組み合わせに基づいて対象物(発信源)の位置を判定する。
【0101】
また、例えば電波の発信源の送信出力や周囲環境等の変動の影響を考慮する必要がないのであれば、相対値zn,m(t)を正規化せず、相対値zn,m(t)の各値z1,2(t),z1,3(t),z1,4(t),z2,3(t),z2,4(t),z3,4(t)の組み合わせに基づいて対象物(発信源)の位置を検出することも可能である。この場合、図6に示す参照テーブルには、参照値として相対値cn,m(t)の各値c1,2(t),c1,3(t),c1,4(t),c2,3(t),c2,4(t),c3,4(t)が記述される。この例によれば、演算部300は、複数の受信部201〜204から供給される受信信号強度の相対値zn,m(t)を演算し、その相対値zn,m(t)の各値を観測値として出力し、判定部400が、その相対値zn,m(t)の各値の組み合わせに基づいて対象物(発信源)の位置を判定する。
【0102】
また、上述の実施形態では、相対値zn,m(t)および相対値cn,m(x,y)を、それぞれ、最大値max{z1(t),t2(t),z3(t),z4(t)}および最大値max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}を用いて正規化するものとしたが、正規化の手法について、この例に限定されることなく、電波の発信源の送信出力や周囲環境等の変動の影響を抑制することができれば、他の量を用いて正規化することも可能である。
【符号の説明】
【0103】
101〜104…アンテナ(センサ)、201〜204…受信部、300…演算部、400…判定部、500…記憶部、600…車両。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の発信源の位置を検出するための検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本では、交通事故の約40%が交差点付近で発生しており、重大な社会問題となっている。交差点における事故の大半は、右左折時における巻き込み事故や対面衝突であり、運転者の認知の遅れや死角(NLOS:non-line of sight)からの飛び出しが主な原因である。従って、死角に存在する歩行者などの対象を検知して運転者に警報を発することにより、運転者による車両の運転を支援するための研究が進められている。
【0003】
例えば、J. Ibanez-Guzmanらは、GPSで得られた自車両の位置を車両間通信で互いに交換するための研究を行った。しかしながら、都市部におけるGPSの位置精度は、電波の乱反射や遮蔽によって低下することが知られている。自動車の場合には、ジャイロセンサやカーナビシステムの道路情報等を参照して位置補正を行うことができるため、位置精度を改善することはできるが、歩行者や自転車においては、そのような位置補正機能を利用することは難しく、交差点での事故を防止するためのアプリケーションにGPSの利用は適さない。
【0004】
また、現在のところ、GPSにより得られる位置精度は10〜数10メートルに留まり、この種のアプリケーションに必要とされる位置精度を得ることができない。GPSの位置精度を改善するための手段として準天頂衛星が注目されているが、都市部では同時に4つ以上の衛星信号を受信することができる時間帯は限られるため、この種のアプリケーションにおいては、事実上、準天頂衛星による位置精度の改善を期待することはできない。
【0005】
GPSに代わるシステムとして、車載のカメラ、レーダ、ライダ(LIDAR)を用いて対象を検知する車載システムが挙げられる。例えば、P. GeismannらやY. Huangらは、ステレオカメラを用いて測定される深度情報をもとに歩行者を検出して運転支援を行うシステムを提案した。また、本願発明者らは、車載単眼カメラを用いた歩行者検出技術を提案した。この種の車載システムは、現在までに、ステレオカメラやミリ波センサを利用した前方衝突防止システムとして実用化されているものもある。
【0006】
しかしながら、GPSに代わる上述の車載システムによれば、インフラを必要とせず、車両内でシステムを完結させることができるものの、他の車両や建物等に視線を遮られることにより生じる死角領域に存在する対象を認識することはできない。また、この種の車載システムが対応できる状況は限られており、車両、自転車、歩行者による複合的な要因が存在する交差点での状況に有効に対応することは困難である。
【0007】
こうした死角に関する車載システムの欠点を補うためのシステムとして路車協調システムが挙げれる。この路車協調システムでは、5〜10メートル程度の高さに設置された路側センサにより、交差点へ接近する車両の位置および速度の計測や、横断歩道付近の歩行者の位置の検出等を行い、この路側センサにより得られた情報を路車間通信により各車両に提供する。これにより、各車両の運転者は自車両から死角となる領域に存在する対象を認識することができ、右折車両と直進車両との衝突事故や歩行者巻き込み事故等、交差点での事故の防止に貢献している。
【0008】
しかしながら、この路車協調システムによれば、十分な効果を得るためには路側センサをいくつも設置する必要があるため、前述の車載システムに比較して多大なコストを要し、また設置場所やコストの制約から、その導入がごく一部の大規模な交差点に限られている。
【0009】
上述した各種の従来技術が抱える欠点を解消する技術として、例えば特開2008−186274号公報(特許文献1)に開示された警戒対象検出装置がある。この装置によれば、歩行者等の警戒対象に備えられた発信源から送信される電波を、車両の前部と後部にそれぞれ配置されたアンテナにより受信する。そして、前部のアンテナでの受信強度と後部のアンテナでの受信強度とを比較することにより、警戒対象が車両の前方及び後方の何れに存在するのかを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−186274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の公開公報に開示された技術によれば、警戒対象が存在する方向を大まかに判定することはできるものの、その位置を特定することはできない。また、仮に発信源からの電波の受信信号強度に基づいて警戒対象までの距離を推定することができるとしても、電波の伝搬経路の環境変化、或いは発信源である送信機の送信出力の低下等により受信信号強度が変動すると、その警戒対象までの距離を正しく推定することができなくなる。従って、車両の運転者は、警戒対象の位置を把握することが困難になり、警戒対象に対して注意を有効に払うことができない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、通信インフラを必要とせず、対象物との位置関係を有効に把握することを可能とする検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る検出装置は、電波の発信源の位置を検出するための検出装置であって、複数のアンテナと、前記複数のアンテナを介して前記発信源からの電波をそれぞれ受信する複数の受信手段と、前記複数の受信手段でそれぞれ受信された前記電波の各受信強度の組み合わせに基づいて前記発信源の位置を判定する判定手段と、を備えた検出装置の構成を有する。
【0014】
上記検出装置において、前記判定手段は、前記複数の受信手段でそれぞれ受信された前記電波の各受信強度の相対値を演算し、該相対値の組み合わせを観測値とし、該観測値に基づいて前記発信源の位置を判定することを特徴とする。
【0015】
上記検出装置において、前記相対値は、正規化された値であることを特徴とする。
【0016】
上記検出装置において、前記判定手段は、前記発信源の位置に対応する座標値と前記観測値に対応する参照値とが記述された参照テーブルを備え、前記観測値と前記参照テーブルに記述された参照値との間の相関を演算し、最も高い相関を示す参照値に対応する座標値から、前記発信源の位置を特定することを特徴とする。
【0017】
上記検出装置において、前記参照値は、前記発信源が前記座標値で示される位置にあるときに前記観測値として得られるべき値に相当するものであることを特徴とする。
【0018】
上記検出装置において、前記判定手段は、更に、前記発信源の位置の経時変化を追跡し、該経時変化に基づいて前記発信源の運動状況を判定することを特徴とする。
【0019】
上記検出装置において、当該検出装置が車両に搭載されると共に、前記車両の運動状況又は運転者による運転操作を検出するための手段と、前記発信源の位置に基づいて警報を発するための手段を更に備え、前記車両の運動状況又は前記運転者による運転操作を前記警報に反映させることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る検出方法は、電波の発信源の位置を検出するための検出方法であって、複数のアンテナを介して前記発信源からの電波をそれぞれ受信する段階と、前記複数の受信手段で受信された前記電波の各受信強度の組み合わせに基づいて前記発信源の位置を判定する段階と、を含む検出方法の構成を有する。
【0021】
また、本発明に係る検出方法は、電波の発信源の位置を検出するための検出方法であって、複数の受信手段が、複数のアンテナを介して前記発信源からの電波をそれぞれ受信する段階と、演算手段が、前記複数の受信手段で受信された前記電波の各受信強度の相対値の組み合わせを演算し、該相対値の組み合わせを観測値として出力する段階と、判定手段が、前記観測値に基づいて前記発信源の位置を判定する段階と、を含む検出方法の構成を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡易な構成で、電波の受信信号強度の変動による影響を抑制しながら、その発信源の位置を検出することができ、この発信源が備えられた対象物が死角領域に存在する場合であっても、その存在を検出することができる。
従って、例えば、死角領域の多い交差点等において、運転者が自車両から他車両や歩行者等の位置を把握することが可能になり、車両の運転を支援することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による検出装置の利用環境の例を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態による検出装置の構成を示すためのブロック図である。
【図3】本発明の実施形態による検出装置が備える複数のアンテナの車両上の配置を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態による参照テーブルを作成する方法を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施形態による参照テーブルを作成する過程で得られる受信信号強度を階調により表現したイメージを示す図である。
【図6】本発明の実施形態による参照テーブルの一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態による検出装置により得られた対象物の位置の表示例を示す図である。
【図8】本発明による試作装置を説明するための図である。
【図9】本発明による試作装置の実験方法を説明するための図である。
【図10】本発明による試作装置の実験結果を説明するための図である。
【図11】本発明による試作装置の実験結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
本発明は、広範な分野において電波の発信源の位置(または、発信源までの距離とその方向)を検出するために利用可能であるが、本実施形態では、とりわけ交差点での車両の運転を支援するために自車両に対する他車両や歩行者の位置を検出する場合を例として説明する。
なお、本実施形態では、本検出装置が受信する電波の発信源を備えた他車両や歩行者等を、適宜、「対象物」と称す。
【0025】
(本実施形態で想定する交差点での事故の形態)
先ず、図1を参照しながら、本実施形態で想定する交差点での典型的な交通事故の形態について説明する。
交差点での典型的な事故は、図1に示すケース1〜3に大別される。
このうち、ケース1は、自車両が右折する際に対向車両と衝突する場合を示している。このケース1では、対向車線上で一時停止中の大型車両により死角領域が生じ、この死角領域により、対向車線上を遠方から交差点に接近する他の車両を自車両から直接確認することが困難である。そのため、右折中の自車両が死角領域から現れた対向車両と衝突する事故が発生し得る。このような事故の発生を防止するためには、死角領域に存在する対向車両を的確に検出することが要求され、その進行方向も含めて検出することが望ましい。
【0026】
また、ケース2は、自車両が右折(または左折)する際に横断中の歩行者と衝突する場合を示している。このケース2では、横断歩道周辺の歩行者は様々な方向から右折中の自車両に接近してくる可能性がある。従って、自車両の近傍に存在する様々な方向からの歩行者を的確に検出することが要求される。また、自車両と衝突するおそれのない歩行者については警報を発しないよう、各歩行者の位置を個別的に検出することが望ましい。
【0027】
更に、ケース3は、左折する際に、それまで自車両の左後方を走行していた後続の自転車や自動二輪車を巻き込む場合を示している。このケース3では、自車両の左後方の領域は、運転者にとって目視確認が困難な領域であるため、そのような領域に存在する他の車両等を運転者が見落として巻き込むおそれがある。従って、自車両の左後方に位置する他の車両等を的確に検出することが要求される。
【0028】
(本実施形態の概要)
次に、本実施形態の概要を説明する。
前述したように、一般の車載システムやライダ(LIDAR)システムは、反射波等の検出に基づくものであるため、その原理上、障害物によって生じる死角領域に存在する他の車両や歩行者等を検出することはできない。また、路車協調システムは、センサの設置場所やコストにより、その導入が制約される。
【0029】
本実施形態では、これらの不都合を解消するため、検出の対象物となる車両および歩行者等が電波の発信源である送信機を備え、この送信機から送信される電波を受信することにより、受信側の車両において対象物の位置を検出する。この場合、電波の回折現象を利用して死角領域からの電波を受信することにより、この死角領域に存在する対象物を把握することを可能としている。
【0030】
また、本実施形態では、受信側の車両の四隅にアンテナを設置し、計4個のアンテナでそれぞれ受信される電波の受信信号強度の相対値に基づいて対象物の位置を検出する。或いは、受信側の車両に対する対象物の方向、対象物の移動方向(接近/離反)、対象物までの距離(遠/近)を推定する。
【0031】
この場合、送信機の送信出力の変動や周囲環境の変動等に起因した電波強度の変動による誤検出を防止するため、上記相対値を正規化した量に基づいて対象物の位置を検出する。そして、この検出結果を基に運転者に警報を発することで、前述したような事故の発生が懸念される交差点等での車両の運転を有効に支援する。
【0032】
(本実施形態による検出装置の構成)
次に、図2乃至図5を参照して、本実施形態による検出装置の構成を詳細に説明する。
図2に示すように、本検出装置は、複数のアンテナ101〜104、複数の受信部(「受信手段」)201〜204、演算部300、判定部400、および記憶部500から構成される。本実施形態では、演算部300および判定部400が請求項に記載の「判定手段」を構成する。
なお、本実施形態では、記憶部500は判定部400の構成要素であるものとする。ただし、このような定義は、説明の便宜のためであり、記憶部500を独立の構成要素として取り扱ってもよい。
【0033】
ここで、アンテナ101〜104は、車両上の所定位置に配置され、本実施形態では、図3(a)〜(c)に例示するように、車両600の四隅に配置される。即ち、アンテナ101は車両600の左前部に配置され、アンテナ102は車両600の右前部に配置され、アンテナ103は車両600の右後部に配置され、アンテナ104は車両600の左後部に配置される。
【0034】
また、本実施形態では、アンテナ101〜104は指向性を有するものとし、前部に配置されるアンテナ101,102の受信方向は、それぞれ車両600の左前方および右前方に設定され、後部に配置されるアンテナ103,104の受信方向は、それぞれ車両600の右後方および左後方に設定される。これらアンテナ101〜104の配置関係は、基本的には、後述の「参照テーブル」を生成するときのアンテナの配置関係と同じに設定される。
【0035】
なお、本実施形態では、4個のアンテナ101〜104を使用するが、これに限定されることなく、複数個の任意の個数のアンテナを使用することができ、好ましくは3個以上のアンテナを使用することができる。また、本実施形態では、車両の四隅にアンテナを配置するが、これに限定されることなく、対象物の位置を判定する際に使用する後述の「参照テーブル」を有意に生成することができる限度において、車両上のどのような部位に配置してもよく、それらの受信方向をどのように設定してもよい。例えば、車両の前中央部、後中央部、左フェンダ部、右フェンダ部など、車両のどのような部位にアンテナを配置してもよい。
【0036】
また、本実施形態では、アンテナ101〜104は指向性を有するものとするが、これに限定されることなく、無指向性アンテナを採用してもよく、例えば車両が電波の遮蔽体として作用することにより、無指向性アンテナが指向性を獲得してもよい。何れにしても、後述の「参照テーブル」を有意に生成することができる限度において、アンテナ自体の指向性の有無は問わない。
【0037】
説明を図2に戻すと、4個のアンテナ101〜104は、それぞれ受信部201〜204に接続される。受信部201〜204は、対象物に備えられた発信源からの電波をそれぞれアンテナ101〜104を介して受信するためのものであり、本実施形態では、Zigbee規格に適合した無線通信デバイス(Zigbee-Chip)を用いて構成される。従って、他車両や歩行者等の対象物に備えられる電波の発信源も、このZigbee規格に適合した送信機を備える。
【0038】
ここで、Zigbee規格は短距離無線通信の規格の一つであり、IEEE 802.15.4-2003に基づいている。この規格によれば、メッシュ(Mesh)型のネットワークを構成することができ、低コストかつ低消費電力であるため、アドホック通信に適している。また、Zigbee規格で採用されている周波数帯は2.4GHz帯であり、日本国内では公道上で自由に使用可能な周波数帯である。この周波数帯では電波の回折現象が比較的顕著に発生するため、交差点等での障害物により生じる死角領域からでも電波を受信することが可能である。
【0039】
また、Zigbee規格はCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collosion Avoidance)方式を採用しているため、パケットの衝突を自動的に検出して再送信を行うことで、パケットの衝突による通信上の問題を回避することができる。加えて、Zigbee規格では、デバイス毎に16ビットの固有IDが割り振られ、送信パケットはその情報を含んでいる。従って、この情報を用いれば、複数の送信機からのパケットを識別することができ、電波の送信元が歩行者であるのか、自転車であるのか、車両であるのかを判別することが可能になる。
【0040】
受信部201〜204では、車両の四隅に設置されたアンテナ101〜104を介してそれぞれ受信された電波の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)が測定される。この受信信号強度は、時刻tでの観測値z(t)=[z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)]Tとして表される。ここで、z1(t)、z2(t)、z3(t)、z4(t)は、時刻tで受信部201,202,203,204においてそれぞれ受信された受信信号強度を表す。この観測値z(t)=[z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)]Tは演算部300に供給される。
【0041】
演算部300は、観測値z(t)の相対値zn,m(t)を演算し、この相対値を正規化して値z’n,m(t)として出力するものである。このような演算の目的は、前述したように、電波の送信出力の変動や周囲環境の変動等に起因した受信信号強度の変動による影響を排除することにある。
【0042】
ここで、例えば送信機のバッテリ残量の低下による送信出力の変動や周囲環境の変動によって、発信源から出力される電波の強度が変動したとしても、その影響の度合いは全てのアンテナ101〜104について概ね同等であるため、これらアンテナ101〜104を介して得られる受信信号強度間の相対関係は維持される。また、これら受信信号強度間の相対関係は発信源の位置に応じて決定される。従って、このような相対関係に基づく相対値zn,m(t)を正規化することで、送信機の送信出力の変動等による影響を排除し、対象物の位置を正しく検出することが可能になる。
【0043】
以下では、説明の便宜上、相対値zn,m(t)を正規化して得られる値z’n,m(t)を「正規化相対観測値z’n,m(t)」と称す。
【0044】
ここで、演算部300において、相対値zn,m(t)は次式(1)により演算される。
zn,m(t)=zn-zm ; 1≦n<m≦4 …(1)
【0045】
式(1)において、n、mは、4個のアンテナ101〜104(または受信部201〜204)のうちの二つを表し、(n,m)=(1,2), (1,3), (1,4), (2,3), (2,4), (3,4)の6通りの組み合わせが存在する。
【0046】
演算部300は、式(1)により、時刻tにおいて4個のアンテナ101〜104のうちの任意の二つで受信された受信信号強度の差分(zn-zm)を演算して相対値zn,m(t)を求める。この場合、n、mの6通りの組み合わせに応じて、相対値zn,m(t)として次の6個の値が得られる。
【0047】
z1,2(t)=z1-z2
z1,3(t)=z1-z3
z1,4(t)=z1-z4
z2,3(t)=z2-z3
z2,4(t)=z2-z4
z3,4(t)=z3-z4
【0048】
このようにして得られた相対値zn,m(t)は次式(2)により正規化され、これにより正規化相対観測値z’n,m(t)が得られる。
z’n,m(t)=|zn,m(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}| …(2)
【0049】
式(2)において、max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}は、4個の値z1(t)、z2(t)、z3(t)、z4(t)のうち、最も大きな値を表している。
式(2)により得られる正規化相対観測値z’n,m(t)についても、n、mの組み合わせに応じて、上述の相対値zn,m(t)に対応した次の6個の値が得られ、これら6個の値からなる正規化相対観測値z’n,m(t)は判定部400に供給される。
【0050】
z’1,2(t)=|z1,2(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}|
z’1,3(t)=|z1,3(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}|
z’1,4(t)=|z1,4(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}|
z’2,3(t)=|z2,3(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}|
z’2,4(t)=|z2,4(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}|
z’3,4(t)=|z3,4(t)/max{z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)}|
【0051】
判定部400は、正規化相対観測値z’n,m(t)に基づいて後述の参照テーブルを参照することにより、発信源の位置を判定するものであるが、その詳細については本検出装置の動作の説明で述べることとする。
【0052】
判定部400が備える記憶部500には、参照テーブルが格納されている。この参照テーブルには、上述の正規化相対観測値z’n,m(t)に相当する値が参照値として発信源の座標値と共に記述され、これら参照値と座標値は予め実験的に取得される。
【0053】
ここで、図4及び図5を参照しながら参照テーブルについて詳細に説明する。
この参照テーブルは、図4に例示するように、xy平面上の所定のグリッドに電波の発信源(図示なし)を位置させ、車両600に配置された前述のアンテナ101〜104を介して得られる電波の受信信号強度を測定することにより作成される。この例では、車両600の中心位置は原点に配置され、グリッドが、40m×58mの範囲に2m間隔で行列状に配置されている。
【0054】
なお、図4の例では、y軸方向に関して車両の中心位置はグリッド上にはなく、グリッド間に存在するが、このようなグリッドの定義は任意であり、この例に限定されない。
【0055】
電波の発信源が図4に示すxy平面上のグリッドに位置するときに車両600上のアンテナを介して測定される受信信号強度cn(x,y)を次式(3)で表す。
cn(x,y) ; n=1,2,3,4 -20≦x≦20, -29≦y≦29 …(3)
【0056】
式(3)において、nは、アンテナ101〜104(または受信部201〜204)のうちの任意の一つを表す。即ち、c1(x,y)はアンテナ101を介して受信部201で受信された受信信号強度を表し、同様に、c2(x,y)〜c4(x,y)は、それぞれアンテナ102〜104を介して受信部202〜204で受信された受信信号強度を表す。また、(x,y)は、発信源の座標値を表す。
【0057】
全てのグリッドについて、c1(x,y)〜c4(x,y)のそれぞれの値が測定され、これは、前述の観測値z(t)=[z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)]Tに対応する量である。
【0058】
図5に、一例として、車両600の右前部に設置されたアンテナ102を介して測定されたc2(x,y)の値を階調により表現したイメージを示す。同図では、c2(x,y)の値(即ち、受信信号強度)が大きいほど、高い階調で表現されている。
【0059】
図5に示す例では、車両600の左後方の領域に比較して前方及び右方向の領域の階調が高く、この領域から到来する電波の受信信号強度が大きいことが示されている。とりわけ、アンテナ102の受信方向と一致する右前方から到来する電波の受信信号強度が大きくなっている。一方、アンテナ102からは車両600の陰にあたる左後方の領域の階調が低く、この領域から到来する電波の受信信号強度が小さいことが把握される。また、アンテナ102に近い領域ほど、受信信号強度が大きく、アンテナ102から離れるほど、受信信号強度が小さいことが把握される。
【0060】
特に図示していないが、車両600の左前部に設置されたアンテナ101を介して測定されたc1(x,y)の値から得られるイメージは、基本的には、図5のイメージとy軸に関して線対照である。また、車両600の右後部に設置されたアンテナ103を介して測定されたc3(x,y)の値から得られるイメージは、基本的には、図5のイメージとx軸に関して線対照である。更に、車両600の左後部に設置されたアンテナ104を介して測定されたc4(x,y)の値から得られるイメージは、基本的には、図5のイメージと原点に関して点対照である。
【0061】
このように、同一の発信源からの電波を4個のアンテナ101〜104を介して受信して得られるc1(x,y)〜c4(x,y)の値は相互に異なり、各座標値(x,y)について得られるc1(x,y)〜c4(x,y)の各値の組み合わせは各座標値(x,y)について固有である。従って、逆に、c1(x,y)〜c4(x,y)の値の組み合わせから発信源の座標値を特定することができる。
【0062】
上述のようにして測定された各グリッドでの受信信号強度cn(x,y)から、次式(4)により相対値cn,m(t)が演算される。
cn,m(x,y)=cn(x,y)-cm(x,y) ; 1≦n<m≦4 …(4)
【0063】
式(4)において、n、mは、図4のxy平面上の原点に位置する車両600に設置された4個のアンテナ101〜104(または受信部201〜204)のうちの二つを表し、(n,m)=(1,2), (1,3), (1,4), (2,3), (2,4), (3,4)の6通りの組み合わせが存在する。これらn、mの6通りの組み合わせに応じて、相対値cn,m(x,y)として次の6個の値が得られる。
【0064】
c1,2(x,y)=c1(x,y)-c2(x,y)
c1,3(x,y)=c1(x,y)-c3(x,y)
c1,4(x,y)=c1(x,y)-c4(x,y)
c2,3(x,y)=c2(x,y)-c3(x,y)
c2,4(x,y)=c2(x,y)-c4(x,y)
c3,4(x,y)=c3(x,y)-c4(x,y)
【0065】
このように従って得られた相対値cn,m(x,y)は、前述の観測値z(t)から得られる相対値zn,m(t)に対応する量である。
【0066】
相対値cn,m(x,y)は次式(5)により正規化され、値c’n,m(x,y)が演算される。以下では、説明の便宜上、相対値cn,m(x,y)を正規化して得られる値c’n,m(x,y)を「正規化相対参照値c’n,m(x,y)」と称す。
c’n,m(x,y)=|cn,m(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}| …(5)
【0067】
式(5)において、max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}は、c1(x,y)、c2(x,y)、c3(x,y)、c4(x,y)の値のうち、最も大きな値を表している。
式(5)により得られる正規化相対参照値c’n,m(x,y)についても、n、mの組み合わせに応じて、上述の正規化相対観測値c’n,m(t)に対応した次の6個の値が得られる。
【0068】
c’1,2(x,y)=|c1,2(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}|
c’1,3(x,y)=|c1,3(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}|
c’1,4(x,y)=|c1,4(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}|
c’2,3(x,y)=|c2,3(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}|
c’2,4(x,y)=|c2,4(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}|
c’3,4(x,y)=|c3,4(x,y)/max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}|
【0069】
このようにして得られた正規化相対参照値c’n,m(x,y)は、発信源が座標値(x,y)で示される位置にあるときに、前述の観測値z(t)から演算部300により得られるべき正規化相対観測値z’n,m(t)に相当する量である。
図6に示すように、正規化相対参照値c’n,m(x,y)は、その値が測定されたときの座標値(x,y)と共に参照テーブルに記述され、図2に示す記憶装置500に格納される。
【0070】
このように、参照テーブルには、図4に示す40m×58mの範囲内に位置する実際の発信源からの電波を受信したときに得られるであろう正規化相対観測値z’n,m(t)が、正規化相対参照値c’n,m(x,y)として記述されている。従って、参照テーブルに記述された正規化相対参照値c’n,m(x,y)の中から、実際に得られた正規化相対観測値z’n,m(t)に最も近似する値を探し出し、その値が測定されたときの座標値(x,y)から実際の対象物の位置を判定することが可能になる。
【0071】
なお、本実施形態では、図2に示した本検出装置は、車両に搭載される車載システムとして構成されるが、各構成要素がどのように実現されるのかについては特に限定されるものではなく、例えば、演算部300および判定部400は、ナビゲーションシステムの機能により実現されてもよい。また、本検出装置は、車載システムとしてではなく、固定型または携帯型の端末として構成してもよい。
【0072】
(本実施形態による検出装置の動作)
次に、本検出装置の動作(検出方法)を説明する。
上述したように、図2に示すアンテナ101〜104を介して受信部201〜204が発信源からの電波を受信すると、受信部201〜204は、受信信号強度である観測値z(t)を測定して演算部300に与える。演算部300は、観測値z(t)から正規化相対観測値z’n,m(t)を演算して判定部400に与える。
【0073】
判定部400は、正規化相対観測値z’n,m(t)に基づいて、記憶部500に格納された図6に示す参照テーブルを参照することにより発信源の位置を判定する。本実施形態では、判定部400は、実際に観測された正規化相対観測値z’n,m(t)と、参照テーブルに記述された各正規化相対参照値c’n,m(x,y)とを比較し、参照テーブルに規定された正規化相対参照値c’n,m(x,y)のうち、実際に観測された正規化相対観測値z’n,m(t)と最も相関の高い値を検索する。そして、この検索されれた正規化相対参照値に対応する座標値(x,y)から対象物の位置を判定する。
【0074】
具体的には、判定部400は、実際に観測された正規化相対観測値z’n,m(t)と、参照テーブルに記述された各正規化相対参照値c’n,m(x,y)との間の相関度を計算する。そして、参照テーブルに記述された正規化相対参照値c’n,m(x,y)のうち、最も高い相関度を与える正規化相対参照値c’n,m(x,y)が測定されたときの座標値(x,y)を、発信源の位置、即ち対象物の位置として判定する。
【0075】
本実施形態では、上記相関度として、正規化相対観測値z’n,m(t)と参照テーブル内の各正規化相対参照値c’n,m(x,y)との間のユークリッド距離Dを計算する。そして、参照テーブルに記述された正規化相対参照値c’n,m(x,y)のうち、最も小さいユークリッド距離Dを与える値が測定されたときの座標値(x,y)、即ち、正規化相対観測値z’n,m(t)と最も近似する正規化相対参照値c’n,m(x,y)が測定されたときの座標値(x,y)から、発信源の位置を判定する。
【0076】
上記ユークリッド距離Dは次式(6)により与えられる。
D = [{z’1,2(t)-c’1,2(x,y)}2 + {z’1,3(t)-c’1,3(x,y)}2 + {z’1,4(t)-c’1,4(x,y)}2 + {z’2,3(t)-c’2,3(x,y)}2 + {z’2,4(t)-c’2,4(x,y)}2 + {(z’3,4(t)-c’3,4(x,y)}2]1/2 …(6)
【0077】
本実施形態では、上記相関度としてユークリッド距離Dを評価するが、ユークリッド距離Dに限定されることなく、どのような手法を用いて相関度を計算してもよい。例えばノイズにより、正規化相対観測値z’n,m(t)の6個の値z’1,2(t),…,z’3,4(t)のうち、1個の値z’1,2(t)が、対応する正規化相対参照値c’n,m(x,y)の値c’1,2(x,y)と著しく異なっているためにユークリッド距離Dが大きくなったとしても、この値を除く他の5個の値が極めて近似していれば、相関度が高いと考えることができ、そのような手法を採用してもよい。従って、対象物の位置を有意に判定することができる限度において、相関度なる用語の意味をどのように定義してもよく、例えば類似なる概念により定義してもよい。
【0078】
また、参照テーブルに記述される座標値(x,y)は、車両から発信源までの具体的な距離のxy成分に限らず、発信源の位置を特定することができる限度において、どのような形式の情報であってもよい。例えば、前述の図4のxy平面上のグリッドに番号を付与し、この番号を座標値として使用してもよい。また、参照テーブルを格納するための記憶部500を構成するメモリのアドレスとして座標値を規定してもよく、このメモリとして例えばCAM(Content Addressable Memory)を使用してもよい。
【0079】
判定部400は、上述のようにして対象物の位置を判定し、その位置情報を出力する。
単に位置情報だけを必要とする一般的な用途であれば、この位置情報を最終的な出力とすることができるが、本実施形態では、交差点等での車両の運転を支援する目的上、判定部400は、その位置情報に基づいて警報を発するための警報手段を備える。
なお、本実施形態では、形式的に判定部400の構成に警報手段を含めるが、これに限定されることなく、警報手段を独立の構成要素としてもよい。
【0080】
判定部400が備える警報手段は、対象物(発信源)のの位置情報に基づいて、例えば音声情報、画像情報、あるいは機械的振動等により運転者に対して警報を発する。例えば、図7に示すように、位置情報は表示装置(図示なし)の画面上に表示される。同図に示す3つの画面は、自車両の前方を右から左に移動する発信源の位置が経時的に変化する様子を示している。即ち、同図において、左画面は、自車両の右前方に位置する発信源の位置を表示し、中央画面は、更に発信源が左方向に移動したときの位置を表示し、右画面は、更に発信源が自車両の左前方に移動したときの位置が表示されている。
【0081】
また、判定部400は、このような発信源の位置の経時変化を追跡し、この経時変化に基づいて発信源の運動状況を判定し、この運動状況に応じて警報を発してもよい。例えば、図7の例では、左画面と中央画面から把握される発信源の位置の経時変化から、発信源が自車両の進行方向を横切るように運動を継続することが予測される。この運動の状況から、自車両と発信源を備えた対象物が衝突する可能性が予測されるため、判定部400は、運転者に警報を発し、この発信源を備えた対象物に対する注意を促す。
【0082】
また、図7に示す表示例に限らず、例えば、車両の周囲をxy平面の第1象限から第4象限に区分し、この象限により他車両の位置を表示してもよい。この場合、例えば、図7の左画面および中央画面に代えて、xy平面の第1象限全体が発信源の位置として表示され、図7の右画面に代えて第2象限全体が発信源の位置として表示される。このような表示形態によれば、運転者は注意を払うべき方向を直感的に把握することができる。
【0083】
また、画像情報と共に音声情報により警報を発するものとしてもよく、または、音声情報のみにより警報を発するものとしてもよい。
【0084】
また、本検出装置は、自車両600の運動状況又は運転者による運転操作を検出するための手段を更に備え、判定部400が、自車両600の運動状況又は運転者による運転操作を上述の警報手段による警報に反映させてもよい。例えば、自車両600が右方向に旋回運動していることが検出された場合、または、運転者が右方向の指示器を操作したことが検出された場合、判定部400は、例えば自車両の後方および左方向を除外し、自車両の前方および右方向の発信源のみについて運転者に警報を発してもよい。
【0085】
この場合において、全方向の発信源を対象として位置を判定した後に、自車両の前方および右方向の発信源のみを警報の対象として選択してもよい。これにより、警報に要する処理の負荷を軽減することができると共に、運転者にとって不要な警告を抑制することができる。または、演算部300は、例えば前述の参照テーブルの一部をマスクすることにより、自車両の後方および左方向の対象物の位置を判定するために必要とされる演算処理を省略し、これら以外の対象物の位置のみを判定および警報の対象として選択してもよく、これにより位置判定に要する演算処理の負荷を軽減することができる。
【0086】
以上により、本実施形態による検出装置によれば、簡易な構成で、発信源が備えられた対象物が死角領域に存在する場合であっても、その存在を検出することができる。
従って、例えば死角領域の多い交差点等において、運転者が自車両から他車両や歩行者等の位置を有効に把握することが可能になり、車両の運転を支援することが可能になる。
【0087】
(試作装置)
次に、図8〜図11を参照して、本実施形態による検出装置の機能を検証するために試作した装置(以下、「試作装置」と称す)の概要を説明する。
【0088】
本試作装置は、前述の図2に示す例えばアンテナ101と受信部201を図8(c)に示すような1個の受信ユニットとして、合計4個の受信ユニットを備え、各受信ユニットは車両の四隅に設置される。本試作装置は、送信機の位置によってそれぞれ変化する各受信ユニットでの受信電波強度を基に、図8(a)に示すように、車両に対する送信機の方向(1−4)、移動方向(接近/離反)、距離(遠方/近傍)の大まかな推定を行い、交差点等での運転支援を実現する。
【0089】
4個の受信ユニットは、前述のようにZigbee規格に適合したXbeeチップを用いて構成される。この受信ユニットは、図8(b)に示すように、電波吸収材で覆われた遮蔽箱に収容され、この遮蔽箱の一部には開口部が形成されている。この開口部を通じて内部の受信ユニットのアンテナが電波を受信する。従って、遮蔽箱の効果により、送信機の方向を向いたアンテナの受信電波強度は高く、反対側の受信強度は低くなり、またその差は距離に応じて変化するため、これらのアンテナでの受信強度を用いて発信源の位置を推定することができる。前述の実施形態による検出装置の機能を検証するため、本試作装置の4個の受信ユニットは、図8(d)に示すように、車両の周囲に三脚に乗せて仮設置された。
【0090】
また、本試作装置では、路面での反射によるノイズの影響を抑え、位置の推定を安定化させるため、パーティクルフィルタを適用した。本手法のフィルタでは、状態ベクトルを“x(t)=[x(t)y(t)vx(t)vy(t)]T”と定義する。送信機の位置“(x,y)”はここに含まれる。パーティクルフィルタにおいて、確率密度関数“P(x(t)|z(t))”は、サンプルパーティクルの集合“S(t)={s(1)(t), s(2)(t),…}”で定義される。それぞれのパーティクルは状態ベクトルと同じ次元および要素を持つ。
【0091】
パーティクルフィルタの更新フェイズにおいて、新しいサンプルの集合“S(t+1)”は前の時間のサンプル“S(t)”とそれに対応する尤度“π(t)={π(1)(t),π(2)(t),…}”によって計算される。それぞれの尤度“π(k)(t)”はサンプル“s(k)(t)”のひとつひとつに対応し、その値は尤度関数“L(z(t,n,m)|s(k)(t))”を用いて求める。最終的なフィルタの性能はこの尤度関数によって決まる。本試作装置では、この関数を次式(7)のように定義した。ただし、次式において、“Σ”の適用範囲は、1≦n<m≦4である。
L(z(t,n,m)|s(k)(t))=exp[Σa(n,m){z(t,n,m)-C(x,y,n,m)}2/σ2]+O …(7)
【0092】
ここで、“O”は、推定を安定させるためのオフセットであり、“σ2”は、便宜的に想定されたホワイトノイズの分散値である。また、“a(n,m)”は、それぞれの、尤度に対する正規化値の重み付けである。これらの値は、経験的に定められた。“C(x,y,n,m)”の“(x,y)”は、それぞれの“s(k)(t)”が保持している要素であり、その関数はその位置に於いて想定される各正規化値を返す。そのため尤度関数“L(z|s)”は想定された値と実際の値を比較し、近ければ近いほど大きな尤度を与える関数である。
【0093】
次に、対象物に備えられる発信源として使用される送信機の状態推定について述べる。
本試作装置では、最終的な推定の結果として、送信機のおおよその方向、近づいているか遠ざかっているか、および近くにいるか遠くにいるかといった3つの状態を出力し、それらを元に衝突回避を目指した。全ての状態推定は、上述したフィルタリングの結果を用いているため、衝突回避の精度は位置推定の精度に依存する。本試作装置で採用した正規化値は、送信機の状態や、周辺の環境による電波の変化に影響されにくく、結果推定も図10に示すように、安定させることができた。この図10は、高出力送信モードおよび低出力送信モードでそれぞれ得られる受信信号強度を表す二つのグラフを含んでおり、これらのグラフでは前述の式(7)に基づいて、近くと遠くを推定している。それぞれの図は、縦軸が観測されたそのままの受信信号強度(RSSI)の値を表し、横軸が時間を表しており、対象物が遠方から接近して通過するまでの一連の受信信号強度の変化の様子を表している。図10に示すように、電波強度が高くても低くても、センサの値の差が大きいところは「近く」と判定し、小さいところは「遠く」と判定できていることがわかる。
【0094】
次に、実験結果を説明する。
本試作装置では、交差点付近での事故を想定して、図9に示すように2種類の実験を行った。ひとつは、図1のケース1に表されるような右折中の対向車との対面衝突であり、もうひとつは、ケース2,3に表されるような、近傍の歩行者や自転車との衝突である。これらの事故形態はあくまで例であり、本装置は、他の例や交差点以外での事故防止に適用することができる。この実験では、時系列で受信信号強度(RSSI)データを収集し、前述の参照テーブルの正規化相対参照値に基づいて推定を行った。
【0095】
接近する車両の方向は、図9(a)に示す交差点を基準としたものであるため、フィルタリングで得られた推定位置を変換する必要がある。本試作装置では、送信機を自転車に取り付け、図9(a)に示された点線上を移動してデータを収集した。番号(1)−(4)は行われた実験のシナリオ番号である。それぞれ別の方向から交差点に接近している。スタート地点は、交差点の中心から20mの地点であり、そこからおよそ30mにわたって走行したデータを記録した。
この実験では、観測車両は右折待ちの状態で停車した。対向車は遠方から接近してくるため、最初は接近、途中から離反になる。方向については、大部分は良好に判定された。
【0096】
次に、歩行者との衝突回避について説明する。
図9(b)に示されたラインを辿って計測を行った。シナリオ(5)から(12)は、近傍の位置と動きをテストするためのものであり、シナリオ(13)と(14)は周囲で相対位置が前後するような併走自転車を想定したものである。この実験から、併走自転車が近傍にいる状態を検出することができた。
【0097】
図11に、同一対象物について、ステレオカメラの深度情報から得られた位置と、本試作装置によって検出された位置とを対比して示す。この例では、対象物が自車両の前方を左右方向に移動している。同図11(a)において、白丸のプロットが本試作装置により推定された位置を表す。また、同図11(b)は、本試作装置により推定された位置と正しい位置との誤差距離を示すものであり、その横軸が、車両の中心から正しい位置までの距離を示し、縦軸が誤差距離を示す。図11から理解されるように、本試作装置によって検出された位置は、ステレオカメラによって検出された位置と近似し、十分な位置精度を有していることが確認された。
【0098】
次に、正規化による安定化の効果について説明する。
本試作装置では、送信機の状態や周囲の環境による電波強度の変化に対する頑健性を得るために、受信信号強度(RSSI)を正規化して推定を行った。それを検証するため、送信電波強度を変化させて実験を行った。この実験から、送信電波強度を変化させても、結果に変化はないことが確認され、正規化の効果を実証することができた。
【0099】
以上、本発明による実施形態と試作装置による検証を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、どのように変形し修正してもよい。
【0100】
例えば、上述の実施形態では、相対値zn,m(t)および相対値cn,m(x,y)を正規化するものとしたが、これに限定されることなく、例えば電波の発信源の送信出力や周囲環境等の変動の影響を考慮する必要がないのであれば、複数の受信部201〜204から供給される受信信号強度zn(t)の各値z1(t),z2(t),z3(t),z4(t)の組み合わせに基づいて対象物(発信源)の位置を検出することも可能である。この場合、図6に示す参照テーブルには、参照値として受信信号強度cn(x,y)の各値c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)が記述される。この例によれば、演算部300を省略することができ、判定部400は、参照テーブルを参照することにより、観測値zn(t)の各値の組み合わせに基づいて対象物(発信源)の位置を判定する。
【0101】
また、例えば電波の発信源の送信出力や周囲環境等の変動の影響を考慮する必要がないのであれば、相対値zn,m(t)を正規化せず、相対値zn,m(t)の各値z1,2(t),z1,3(t),z1,4(t),z2,3(t),z2,4(t),z3,4(t)の組み合わせに基づいて対象物(発信源)の位置を検出することも可能である。この場合、図6に示す参照テーブルには、参照値として相対値cn,m(t)の各値c1,2(t),c1,3(t),c1,4(t),c2,3(t),c2,4(t),c3,4(t)が記述される。この例によれば、演算部300は、複数の受信部201〜204から供給される受信信号強度の相対値zn,m(t)を演算し、その相対値zn,m(t)の各値を観測値として出力し、判定部400が、その相対値zn,m(t)の各値の組み合わせに基づいて対象物(発信源)の位置を判定する。
【0102】
また、上述の実施形態では、相対値zn,m(t)および相対値cn,m(x,y)を、それぞれ、最大値max{z1(t),t2(t),z3(t),z4(t)}および最大値max{c1(x,y),c2(x,y),c3(x,y),c4(x,y)}を用いて正規化するものとしたが、正規化の手法について、この例に限定されることなく、電波の発信源の送信出力や周囲環境等の変動の影響を抑制することができれば、他の量を用いて正規化することも可能である。
【符号の説明】
【0103】
101〜104…アンテナ(センサ)、201〜204…受信部、300…演算部、400…判定部、500…記憶部、600…車両。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の発信源の位置を検出するための検出装置であって、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナを介して前記発信源からの電波をそれぞれ受信する複数の受信手段と、
前記複数の受信手段でそれぞれ受信された前記電波の各受信強度の組み合わせに基づいて前記発信源の位置を判定する判定手段と、
を備えた検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記複数の受信手段でそれぞれ受信された前記電波の各受信強度の相対値を演算し、該相対値の組み合わせを観測値とし、該観測値に基づいて前記発信源の位置を判定することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記相対値は、正規化された値であることを特徴とする請求項2記載の検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記発信源の位置に対応する座標値と前記観測値に対応する参照値とが記述された参照テーブルを備え、
前記観測値と前記参照テーブルに記述された参照値との間の相関を演算し、最も高い相関を示す参照値に対応する座標値から、前記発信源の位置を特定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の検出装置。
【請求項5】
前記参照値は、前記発信源が前記座標値で示される位置にあるときに前記観測値として得られるべき値に相当するものであることを特徴とする請求項4記載の検出装置。
【請求項6】
前記判定手段は、更に、前記発信源の位置の経時変化を追跡し、該経時変化に基づいて前記発信源の運動状況を判定することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の検出装置。
【請求項7】
当該検出装置が車両に搭載されると共に、前記車両の運動状況又は運転者による運転操作を検出するための手段と、前記発信源の位置に基づいて警報を発するための手段を更に備え、
前記車両の運動状況又は前記運転者による運転操作を前記警報に反映させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の検出装置。
【請求項8】
電波の発信源の位置を検出するための検出方法であって、
複数のアンテナを介して前記発信源からの電波をそれぞれ受信する段階と、
前記複数の受信手段で受信された前記電波の各受信強度の組み合わせに基づいて前記発信源の位置を判定する段階と、
を含む検出方法。
【請求項1】
電波の発信源の位置を検出するための検出装置であって、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナを介して前記発信源からの電波をそれぞれ受信する複数の受信手段と、
前記複数の受信手段でそれぞれ受信された前記電波の各受信強度の組み合わせに基づいて前記発信源の位置を判定する判定手段と、
を備えた検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記複数の受信手段でそれぞれ受信された前記電波の各受信強度の相対値を演算し、該相対値の組み合わせを観測値とし、該観測値に基づいて前記発信源の位置を判定することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記相対値は、正規化された値であることを特徴とする請求項2記載の検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記発信源の位置に対応する座標値と前記観測値に対応する参照値とが記述された参照テーブルを備え、
前記観測値と前記参照テーブルに記述された参照値との間の相関を演算し、最も高い相関を示す参照値に対応する座標値から、前記発信源の位置を特定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の検出装置。
【請求項5】
前記参照値は、前記発信源が前記座標値で示される位置にあるときに前記観測値として得られるべき値に相当するものであることを特徴とする請求項4記載の検出装置。
【請求項6】
前記判定手段は、更に、前記発信源の位置の経時変化を追跡し、該経時変化に基づいて前記発信源の運動状況を判定することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の検出装置。
【請求項7】
当該検出装置が車両に搭載されると共に、前記車両の運動状況又は運転者による運転操作を検出するための手段と、前記発信源の位置に基づいて警報を発するための手段を更に備え、
前記車両の運動状況又は前記運転者による運転操作を前記警報に反映させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の検出装置。
【請求項8】
電波の発信源の位置を検出するための検出方法であって、
複数のアンテナを介して前記発信源からの電波をそれぞれ受信する段階と、
前記複数の受信手段で受信された前記電波の各受信強度の組み合わせに基づいて前記発信源の位置を判定する段階と、
を含む検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図8】
【公開番号】特開2012−242181(P2012−242181A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110777(P2011−110777)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(801000049)一般財団法人生産技術研究奨励会 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(801000049)一般財団法人生産技術研究奨励会 (72)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]