説明

検出装置

IMS装置は反応領域(3、103)に開口し且つプリコンセントレータ(9)を備える流入手段を有し、検体分子は反応領域(3、103)においてイオン化されるとともにシャッタ(11)を介してドリフト領域(2,102)に流されて収集及び分析される。ポンプ(21)及びフィルタ(22,23)手段は、ハウジング(1,101)に、イオン流と逆に流れるクリーンガスのフラッシング流を供給する。ハウジング(1,101)に接続する圧力パルサ(8)を瞬間的に作動することによって、ハウジング(1,101)内の圧力を一時的に低下させ、そして検体サンプルのボーラスをプリコンセントレータ(9)から吸い込む。サンプルのボーラスを吸い込む直前において、ポンプ(21)をオフしてフラッシング流を実質的にゼロになるまで減少させ、それによって検体分子が反応領域(3)内に滞留する時間を延長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応領域と、反応領域内で生成されるイオン種が検出される分析領域と、反応領域内にクリーンガスの流れを供給する手段とを含む種類の検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン移動度分光分析装置(ion mobility spectrometers)又はIMS装置は、爆発物、ドラッグ、ブリスター及び神経ガスなどの物質の検出にしばしば使用される。IMS装置は典型的には検出セルを有し、ここに被検物又は検体を含有する空気のサンプルがガス又は蒸気として連続的に供給される。検出セルは気圧下又は気圧付近下で作動するとともに、検出セルに沿った電圧勾配を発生させるためのエネルギーが与えられる電極を有する。空気サンプル中の分子は、放射能源やUV源を用いて又はコロナ放電によってイオン化され、一方の端にある静電ゲート(electrostatic gate)によって検出セルのドリフト領域(drift region)内に流入される。イオン化された分子はイオンの移動度に依存する速度で検出セルの反対の端に流される。イオンは、検出セルに沿った飛行の飛行時間の測定により識別される。従来のIMS装置においてはクリーンな乾燥ガスが反応領域又はイオン化領域内を通って連続的に流される。この手段によって連続的なサンプリングが可能となるとともにリカバリタイムが短縮される。検体サンプルがサンプルガス中にわずかな濃度でしか存在しない場合には、信号対ノイズ比が比較的低い可能性があり、信頼性の高い検出が非常に困難となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、信号対ノイズ比を向上させて信頼性の高い検出を可能とする検出装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一面によると、上記の種類の検出装置が提供され、この検出装置の特徴として、反応領域に検体ガス又は検体蒸気を瞬間的に流入させるための手段が設けられる。さらなる特徴としては、供給手段が、反応領域内の検体ガス又は検体蒸気の滞留時間を長くさせるために、反応領域内のクリーンガスの流れを反応領域内に検体ガス又は検体蒸気を流入させる直前で実質的にゼロになるまで減少させるために配置される。さらなる特徴としては、供給手段が、検体ガス又は検体蒸気を検出した後において反応領域内を流れるクリーンガスを増加させるために配置される。
【0005】
検体ガス又は検体蒸気を瞬間的に流入させるための手段は、好ましくは検出装置内の圧力を一時的に低下させるために配置される圧力パルサ(pressure pulser)を有する。また検出装置はプリコンセントレータ(preconcentrator)を備える流入手段を有し得る。反応領域内にクリーンガスを流すための手段は、クリーンガスを検出装置のほぼ長さに沿って流すように構成され得る。あるいは、反応領域内にクリーンガスを流すための手段は、検出装置の流入手段から遠い側の端と反応領域の流入手段から遠い側の端と間に接続される第一ガス流サーキットを有しており、前記検出装置は第一サーキットから流入手段に近接する反応領域の端まで伸びる第二サーキットを備え、そして前記第二サーキットはサンプルが流入される際には閉じている。前記検出装置はイオン移動度移分光分析であり得る。
【0006】
本発明の他の一面によると、物質検出方法が提供され、その方法は、反応チャンバー内に物質のサンプルを流入させる段階と、反応チャンバー内に検体ガスを流す段階と、サンプルからイオンを生成する段階と、検出のために反応チャンバーからコレクタにイオンを移動させる段階と、反応チャンバー内にサンプルが存在する時間を延長させるために反応チャンバー内のガス流を周期的に減少させる段階と、を有する。
【0007】
好ましくは、自身の長さに沿って電圧勾配を有しているドリフト領域を介して、イオンが反応チャンバーからコレクタへと移動される。
【0008】
次からは、例として、本発明によるIMS装置を図1及び図2を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の検出装置を概略的に示す図である。
【図2】代替的な検出装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず図1を参照すると、検出装置は全体的にチューブ管状であるハウジング1を有するイオン移動度移分光分析(IMS)のかたちをとり、このハウジング1は、その右側端寄りにドリフト領域又は分析領域2と、対向する左側端寄りに反応領域又はイオン化領域3とを備える。
【0011】
流入路(inlet conduit)4は一方の端5で開いており、空気又はその他のガス源又は蒸気源がサンプルされて分析される。空気又はガスは、流入路の流入口と対向する端に接続されるポンプ6を用いて流入路4内に吸い込まれる。流入路4に沿ういずれかの位置において、キャタピラ通路7が、関心のある分子を流入路から反応領域内に流すために、流入路と反応領域3内部の間を連絡している。検出装置内に物質を流入させるための様々な従来手段としては、その他にも、例えばピンホールや膜がある。圧力パルサ8は、拡張器(loudspeaker)に類似しており、米国特許第6073498号の記載と同じ様式でハウジング1に接続される。パルサ8はハウジング内の圧力を一時的に低下させるために断続的に作動し、そして、ボーラス(bolus)のかたちで反応領域3内にサンプル蒸気又はサンプルガスを吸い込む。プリコンセントレータ9は、流入路4又は通路7内に設けられることで検出装置自体の内部に設けられる。
【0012】
反応領域3は、検体物質の分子をイオン化するためのいくつかの手段、例えば高電位のコロナ放電ポイント10を備える。反応領域3及びドリフト領域2は両方とも気圧下又は気圧よりもわずかに低い圧力下にある。反応領域3及びドリフト領域2は、任意的に、従来の静電シャッター、例えばBradbury−Nielson型ゲート11によって互いに分離されることで、ドリフト領域内へのイオンの流れが制御される。ドリフト領域2には、対の電極12の組が、ドリフト領域2内の対向する側面に設けられると共にドリフト領域の長さに沿うように互いに距離を置いて設けられている。電圧源13は各電極対12に電圧を加え、この電圧は、ドリフト領域2の長さ方向の右側に向かう程高くなるように加えられるので、ゲート11を通り過ぎたイオンは電圧勾配を受けてドリフト領域の長さに沿って吸い込まれる。各イオンがコレクタプレート14に衝突することによって生成される電荷が、電気信号として処理ユニット15に供給される。処理ユニット15は信号を分析し、検出される異なるイオンの移動度を表すスペクトルを生成し、それをディスプレイ又は他の利用手段16に供給する。
【0013】
従来のIMS装置と同様に、ガス流システム20は、ハウジング1内部に沿って、イオン流と逆に流れるクリーンな乾燥空気の流れを供給する。ガス流システムは、ポンプ21を有するとともにポンプ21の流入口及び流出口に分子ふるいフィルタ22及び23を有する。流入フィルタ22は流入パイプ24に接続し、流入パイプ24は、反応領域3の左寄り即ち流入端近くでハウジング1内に開口している。流出フィルタ23は流出パイプ25に接続し、流出パイプ25はドリフト領域2の右寄り即ち下流端近くでハウジング1内に開口している。ポンプ21は反応領域3からガスを吸い込むとともに、ガスが、ドリフト領域2の右側端でハウジング1内に流れ戻る前に、第一フィルタ22、ポンプ21及び第二フィルタ23内に流れるように作動する。
【0014】
本発明の検出装置は従来のIMS装置とは異なる。本発明の検出装置は次のように構成されている。まず、ガス流システム20は、サンプルガス又はサンプル蒸気が流入される前にハウジング1にクリーンな乾燥ガスを供給する。そして、圧力パルサ8を作動してサンプルガス又はサンプル蒸気のボーラスを導入する直前に、ポンプ21をオフすることで、ハウジング1、特に反応領域3、へのガス流をゼロ又はゼロ付近になるまで減少させる。その後パルサ8を瞬間的に作動して、検体ガス又は検体蒸気のサンプルを反応領域3内に注入する。あるいは、パルサは省くことができ、流入させるサンプルガス又はサンプル蒸気を反応領域内に単に拡散させることも可能である。イオンはコロナポイント10によって実質的に動きのないサンプル群から連続的に生成され、このサンプル群は、連続ガス流を有する検出装置と比較すると、大幅に延長された滞留時間を有する。これにより、処理ユニット15は連続的なイオン移動度スペクトルを生成することができる。イオン化プロセスによってサンプルガス又はサンプル蒸気が激減することはないので、より長い平均イオン移動度スペクトルを取得することができる。これにより信号対ノイズ比が向上する。次の分析が要求される直前で、ポンプ21を再作動させ、検出装置内にクリーンな乾燥ガスを流して反応速度3内の前回サンプルを流し出す。
【0015】
反応領域内のガス流を止める又は大幅に減少させる必要性は、サンプルガス又はサンプル蒸気の滞留時間をイオン化のために延長させるためだけにあるので、ハウジング全体の中のガス流を止めることは必須ではない。いくつかのIMS装置は、ドリフト領域及び反応領域において別々のガス流路を有する。本発明に採用されるこの種類のIMS装置は図2に示されており、図1と対応する装置又は手段等は下二桁が同じ参照番号で示されている。これらの図に示されるように、第一フィルタ122に接続される注入パイプ124は、反応領域103の右寄り即ちシャッター111付近に位置する下流端に配置される。分岐パイプ(spur pipe)126は第二サーキットの一部を形成すると共にポンプ21の流出口と第二フィルタ123間を接続する。パイ(pie)126は第三分子ふるいフィルタ127の流入口まで伸びる。第三フィルタ127の流出口は第二流出パイプ128に接続し、第二流出パイプ128は、バルブ129を介して、反応領域103の左側端寄りでハウジング101内に開口している。バルブ129は処理ユニット115によってケーブル130を介して電気的に制御される。その手段においては、ポンプ121は連続的に作動し、クリーンな空気がドリフト領域102のコレクタがある端に流入し、反応領域103の下流端におけるシャッター111付近に流出する。処理ユニット115がバルブ129を開くと、ガスはまた分岐パイプ126、第三フィルタ127及び第二流出パイプ128を介して、反応領域103内に流れる。このガスは右側に流れ、流出パイプ124を介して領域103の外に流れる。サンプルが流入される際には、処理ユニット115はバルブ129を閉じ、ガスがパイプ118を介して反応領域103に流入されることを防ぐ。ガス流のこの部分はその時点でもまだ作動しているために、わずかなガスがドリフト領域102から反応領域103内に流れるが、しかしこれは反応領域の比較的小さな部分を通して流れるために、サンプルがイオン化効果を受けるための滞留時間はそれでも延長される。
【0016】
本発明は特に、検出装置内にサンプルがボーラスの形で流入されるような、例えばプリコンセントレータ流入システムを用いるような検出手段に適する。本発明はIMS装置に制限される必要はなく、その他の検出装置にも適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応領域(3,103)と、前記反応領域内で生成されるイオン種が検出される分析領域(2,102)と、前記反応領域内にクリーンガスの流れを供給する手段(20,120)と、を有している検出装置であって、
前記検出装置には、検体ガス又は検体蒸気を瞬間的に前記反応領域(3,103)へ流入させる手段(7,9,8,108)が設けられ、
前記クリーンガスの流れを供給する手段(20、120)が、前記検体ガス又は検体蒸気が反応領域内に存在する時間が増加するように、前記反応領域(3,103)内のクリーンガスの流れを、前記反応領域(3,103)に前記検体ガス又は検体蒸気を流入させる直前で実質的にゼロになるまで減少させるために設けられ、かつ、
前記クリーンガスの流れを供給する手段(20、120)が、前記検体ガス又は検体蒸気を検出した後において、前記反応領域内のクリーンガスの流れを増加させるために設けられている
ことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記検体ガス又は検体蒸気を瞬間的に前記反応領域に流入させる手段が、前記検出装置(1,101)内の圧力を一時的に減少させるために設けられる圧力パルサ(8、108)を有していることを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出装置が、プリコンセントレータ(9)を設けた流入手段(4〜7)を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記クリーンガスの流れを前記反応領域(3)内に供給する手段(20)が、クリーンガスを実質的に前記検出装置の長さに沿って流すために設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の検出装置。
【請求項5】
前記クリーンガスの流れを前記反応領域(3)内に供給する手段(120)が、前記検出装置(101)の前記流入手段から遠い側の端と前記反応領域(103)の前記流入手段から遠い側の端との間に接続されている第一ガス流サーキット(121〜124)を有し、
前記検出装置が、前記第一サーキットから前記流入手段に近接している前記反応領域(103)の端まで伸びている第二サーキット(126〜129)を有し、かつ、
前記第二サーキット(126〜129)が、サンプルが流入される際には閉じられているとする
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の検出装置。
【請求項6】
前記検出装置がイオン移動度分光分析装置であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の検出装置。
【請求項7】
物質を検出する方法であって、
前記反応チャンバー(3,103)内に前記物質のサンプルを流入する段階と、前記反応チャンバー内に検体ガスを流す段階と、前記サンプルからイオンを生成する段階と、イオン種を検出するために前記反応チャンバーからコレクタ(14)へイオンを移動させる段階と、前記反応チャンバー内にサンプルが存在する時間を延長するために前記反応チャンバー(3,103)内のガス流を周期的に減少させる段階と、
を有していることを特徴とする物質を検出する方法。
【請求項8】
自身の長さに沿って電圧勾配が発生しているドリフト領域(2,102)を介して、イオンを前記反応チャンバ(3,103)から前記コレクタ(14)へ移動させることを特徴とする請求項7に記載の物質を検出する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−513896(P2010−513896A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542187(P2009−542187)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004705
【国際公開番号】WO2008/074984
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(507235789)スミスズ ディテクション−ワトフォード リミテッド (25)
【Fターム(参考)】