説明

検出装置

【課題】生体等の被験体から放射される蛍光を精度良く、且つ、安価に検出可能な検出装置を提供する。
【解決手段】被験体100に励起光を照射する入射用ファイバ6と、励起光の照射により被験体100から放射される蛍光を受光する反射用ファイバ7と、先端部分に、入射用ファイバ6および反射用ファイバ7を保持するプローブ保持部10と、プローブ保持部10の先端部分に着脱自在に取り付けられ、且つ、被験体100に接触する被験体接触面を有するアタッチメント5とを備え、アタッチメント5は、プローブ保持部10の先端部分がアタッチメント5の被験体接触面から被験体100側に突出することなく、プローブ保持部10の先端部分に取り付けられる検出装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光の照射により被験体が放射する蛍光を検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の欧米化に伴い、生活習慣病患者が増加し、医学的、社会的問題が深刻となっている。現在、日本における糖尿病患者は800万人、その予備軍を含めると2000万人にのぼるとも言われている。糖尿病の三大合併症は、「網膜症、腎症、神経障害」である。さらに、糖尿病は動脈硬化症の要因ともなり、心臓疾患や脳疾患までもが懸念される。
【0003】
糖尿病は、食習慣や生活習慣の乱れ、肥満による脂肪細胞からの分泌物の影響、酸化ストレスから、すい臓の機能が低下し、血糖値をコントロールするインシュリンが不足したり、効能が低下したりすることで発症する。糖尿病にかかると排尿の回数や量が多い、のどがかわくなどの症状が現れるが、これだけであれば病気だという自覚症状が無く、病院などでの検査により発覚することが殆どである。このことが、「サイレント」な糖尿病患者が多い由縁である。
【0004】
病院などで合併症による異常な症状が表れてからでは、すでに病状が進行していることが多く、完治することは難しい。特に、合併症は治療が困難なものが多く、他の生活習慣病と同様に予防が重要視されている。予防を行なうためには早期発見と治療効果判定が不可欠であり、それを目的とした糖尿病の検査が多数存在している。
【0005】
血中に異常な量の糖質や脂質が存在する環境下で、酸化ストレスが加わると、タンパク質と、糖質または脂質とが反応を起こし、AGEs(Advanced Glycation Endproducts;後期糖化反応生成物)が生成される。AGEsはタンパク質の非酵素的糖付加反応(メイラード反応)により形成される最終生成物である。AGEsは黄褐色を呈し、蛍光を発する物質であって、近くに存在する蛋白と結合して架橋を形成する性質を有している。
【0006】
このAGEsは、血管壁に沈着、侵入したり、免疫システムの一部を担うマクロファージに作用してタンパク質の一種であるサイトカインを放出させ、炎症を引き起こしたりして、動脈硬化を発症させると言われている。
【0007】
糖尿病の場合、血糖の上昇に伴い、AGEsも増加する。AGEsをモニタリングすることで、糖尿病の早期発見、あるいは進行状況を把握することができる。このようにAGEsをモニタリングすることで、真性糖尿病をスクリーニングする手法として、例えば特許文献1に記載の方法が報告されている。
【0008】
この方法では、被験者の前腕の皮膚に励起光を照射し、皮膚コラーゲンに結合したAGEsからの蛍光スペクトルを検出する。検出した蛍光スペクトルと、予め決定されたモデルとを比較することでAGEsをモニタリングしている。これにより、侵襲することなく、AGEsのデータを取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2007−510159号公報(2007年4月19日公表)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上で述べたような前腕の皮膚といった生体に励起光を照射し、生体が放射する蛍光を検出するとき、その蛍光の検出強度は、その生体の物理的状態に大きく依存することが知られている。例えば、前腕の皮膚は弾性があるため、検出したい部位やその周辺に負荷がかかっていた場合、検出光が透過する組織部分の体積や厚み等が変化する。その変化により、体外へ放出される信号レベルに差が生じる。
【0011】
特許文献1に記載の方法では、被験者がその前腕を置くための置き台を用いている。この置き台は、ファイバ束を被験者の前腕の皮膚と接触した状態に保持する固定具である。置き台には開口部が設けられており、この開口部に被験者は自身の前腕を接触させる。被験者の前腕は開口部に載せられると、その前腕の自重により開口部に押し付けられる。ファイバ束は、光源ファイバと検出器ファイバとからなり、その送達/収集端が被験者の前腕の皮膚の一部である検出部位に接触させられる。
【0012】
置き台は、被験者の前腕下側の皮膚がファイバ束の送達/収集端と接触している間、被験者が快適にその前腕を載せておく手段を提供する。
【0013】
しかしながら、被験者の前腕の自重は、当然のことながら千差万別である。したがって、被験者の前腕の自重による、前腕への負荷の大きさは被験者ごとに大きく異なってしまう。
【0014】
また、被験者が自身の前腕を置き台に設置した後、被験者の前腕に励起光を照射し、その照射位置から放射される蛍光を検出するまでに要する時間は、被験者ごとに異なるのが通常である。この検出までに要する時間は、被験者の動作速度や、被験者の前腕の長さなどに、大きく依存するものだからである。この時間の違いも、上で述べた場合と同様、被験者の前腕への負荷の大きさを被験者ごとに異ならせてしまう。
【0015】
このような、被験者の前腕への負荷の大きさの違いは、被験者の前腕の検出部位を圧迫する度合いの強弱を招くものである。このことは、被験者の皮膚の組織状態を変化させることになり、その変化により、検出部位から放射される蛍光を、安定的に再現性良く、検出することができないといった課題があった。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、生体等の被験体が放射する蛍光を精度良く、且つ、簡易に検出可能な検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に係る検出装置は、被験体に励起光を照射する照射部と、前記励起光の照射により前記被験体から放射される蛍光を受光する受光部と、先端部分に、前記照射部および前記受光部を保持する保持部と、前記保持部の先端部分に着脱自在に取り付けられ、且つ、前記被験体に接触する被験体接触面を有する着脱部とを備え、前記着脱部は、前記保持部の先端部分が前記被験体接触面から前記被験体側に突出することなく、前記保持部の先端部分に取り付けられる。
【0018】
上記構成によれば、照射部から出射される励起光が被験体に照射されると、その励起光の照射により、被験体から蛍光が放射される。この蛍光は受光部により受光され、検出される。
【0019】
ここで、この蛍光の検出の際、被験体と保持部の先端部分との接触状態の如何によっては、被験体から放射される蛍光の検出精度が低下する。なぜなら、その接触状態の如何により、被験体の状態が変化し、その変化により、被験体から放射される蛍光が再現性良く放射されなくなるからである。
【0020】
そこで、上記構成では、保持部の先端部分が着脱部の被験体接触面から被験体側に突出しないようにして保持部の先端部分に着脱部を取り付けることにより、被験体に接触する部材の面積を保持部の先端部分のみの場合よりも大きくしている。
【0021】
これにより、被験体に対して掛かる圧力が軽減される。例えば、ヒトの腕のように弾性があるものを被験体とした場合、過度な圧力は、被験体の形状を変えてしまうことがある。その際、上記構成であれば、被験体と、保持部の先端部分および着脱部との接触状態を適切に保ち、被験体が放射する蛍光を安定的に再現性よく検出することができる。
【0022】
前記保持部は、前記先端部分に前記被験体に対向する被験体対向面を有し、前記着脱部の被験体接触面は、前記保持部の被験体対向面よりも面積が大きいことが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、着脱部がない場合に比べ、被験体に掛かる圧力を一定比率以下に分散させることができる。
【0024】
前記着脱部は、前記保持部の先端部分の一部を除く外側面から締め付けていることが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、被験体の検出位置を目視することができる。保持部の先端部分と被験体の検出位置との位置関係を確認しつつ、検出することにより、より適切な位置に保持部の先端部分を接触させることができ、これにより、より正確な蛍光検出を行なうことができる。
【0026】
前記着脱部は、前記保持部の先端部分の一部の外側面を露出させるように残余の外側面を覆っていることが好ましい。
【0027】
前記着脱部は、前記保持部の先端部分の、前記被験体に対する対向状態を確認できる大きさを持つ、切り欠き形状部または開口部を有することが好ましい。
【0028】
前記着脱部は、低弾性素材を用いて構成されていることが好ましい。
【0029】
上記構成によれば、被験体に掛かる圧力を、より確実に分散させることができる。
【0030】
前記着脱部は、非光透過性素材を用いて構成されていることが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、着脱部のみを被験体に接触させ、保持部の先端部分を被験体に接触させずに、蛍光検出を行なう場合でも、着脱部を介しての迷光による誤検出を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の検出装置は、以上のように、被験体に励起光を照射する照射部と、前記励起光の照射により前記被験体から放射される蛍光を受光する受光部と、先端部分に、前記照射部および前記受光部を保持する保持部と、前記保持部の先端部分に着脱自在に取り付けられ、且つ、前記被験体に接触する被験体接触面を有する着脱部とを備え、前記着脱部は、前記保持部の先端部分が前記被験体接触面から前記被験体側に突出することなく、前記保持部の先端部分に取り付けられる。
【0033】
それゆえ、生体等の被験体が放射する蛍光を精度良く、且つ、簡易に検出可能という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る検出装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】アタッチメント、プローブおよびプローブ保持部を被験体側から見た模式図である。
【図3】アタッチメント、プローブおよびプローブ保持部と被験体との対向状態を説明する説明図である。
【図4】プローブの模式図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る検出装置の概略構成を示す模式図であり、(a)は、切り欠き形状部を持つ場合のアタッチメントを示す図であり、(b)は、開口部をもつ場合のアタッチメントを示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る検出装置の概略構成を示す模式図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る検出装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0036】
本発明の実施形態について、図1〜4に基づいて説明すると以下の通りである。
【0037】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態に係る検出装置は、被験体に対して励起光を照射し、その励起光の照射により被験体から放射された蛍光を受光し、検出する検出装置である。この検出装置は、例えば、被験体となる被験者の体の一部に、励起光源から出射された励起光を照射する。励起光が照射された、被験者の体の一部からは、蛍光が放射される。この検出装置は、このようにして放射された蛍光を受光し、その蛍光を検出する。
【0038】
この検出装置は、次のような測定装置に搭載されるのが好ましい。例えば、被験者の体の一部から放射される蛍光の蛍光スペクトル(蛍光特性)を解析し、その解析結果を用いて、被験者の体の一部に含まれるAGEs蓄積量(蛍光物質量)を測定する測定装置である。このような測定装置は、自身に搭載された検出装置を用いることにより、被験者の体の一部から蛍光を放射させ、その蛍光を検出する。
【0039】
もちろん、本発明の一実施形態に係る検出装置は、人や動物といった生物のみを被験体として扱うものではなく、生活機能を持たない無生物についても被験体として取り扱うことが可能である。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係る検出装置1の概略構成を示す模式図である。検出装置1は、図1に示すように、励起光を出射する励起光源2と、被験体100から放射される蛍光を検出する検出部3と、励起光源2および検出部3の各々の動作を制御する制御部4と、被験体100と接触するアタッチメント(着脱部)5と、励起光源2から出射される励起光を導光するための入射用ファイバ(照射部)6と、被験体100から放射される蛍光を導光するための反射用ファイバ(受光部)7と、入射用ファイバ6および反射用ファイバ7を固定するファイバ固定具8と、ファイバ固定具8により固定された入射用ファイバ6および反射用ファイバ7を有する、入射・反射同軸系光ファイバであるプローブ9と、プローブ9の被験体100側の一端が挿入されたプローブ保持部10と、を備えている。
【0041】
(励起光源2)
励起光源2は、被験体100に照射する励起光を生成する光源である。励起光源2として用いられる光源の種類としては、ハロゲンやキセノン光源のような管球タイプのものや、LED、LD等が利用可能である。
【0042】
励起光源2は、出射する励起光の波長、出力強度、照射時間等の条件の切り替えや調整を行なうことができる。この条件の切り替えおよび調整は、励起光源駆動回路を用いて行なうことができる。
【0043】
励起光源駆動回路は、励起光源2が出射する励起光の波長や出力強度、照射時間等の条件の切り替えや調整を行なうためのものである。励起光源駆動回路は、励起光源2が励起光を出射する際に必要とする駆動電流を励起光源2に出力することによって、励起光源2を駆動させる。励起光源駆動回路は、駆動電流の出力の有無やその電流値、周期、振幅等を調節し、上で述べたような励起光の波長、出力強度、照射時間等の条件の切り替えや調整を実現する。
【0044】
励起光源駆動回路による、このような駆動電流の調節は、制御部4に制御される。
【0045】
励起光源2は、複数の波長を照射できる構造となっていれば特に制限はなく、LEDの他に、LD(Laser Diode)、それらを集積化した光源ユニット、ハロゲン系ランプ等を用いることができる。
【0046】
励起光源2から出射された励起光は、入射用ファイバ6およびプローブ9を介して、被験体100に照射される。
【0047】
(検出部3)
検出部3は、被験体100に励起光が照射されることによって、被験体100から放射された蛍光を、プローブ9および反射用ファイバ7を介して、検出する。検出部3は、その検出結果を制御部4に出力する。
【0048】
検出部3としては、CCDアレイやCMOSイメージセンサといった半導体検出器、光電子倍増管(PMT)やチャンネルトロン検出器等が利用可能である。検出装置1の可搬性を高める上では、半導体検出器を用いるほうが有利である。
【0049】
なお、検出部3は、分光器を備えるものであってもよい。
【0050】
(制御部4)
制御部4は、励起光源駆動回路の励起光源2の駆動電流調節や、被験体100から放射された蛍光を検出部3が検出した後、その検出強度の算出・表示を行なうためのものである。制御部4としては、パーソナルコンピュータ等が利用可能である。
【0051】
(アタッチメント5)
アタッチメント5は、プローブ保持部10の先端部分に着脱可能(着脱自在)なように取り付けられるものである。アタッチメント5は、図1に示すように、プローブ保持部10の先端部分に装着され、被験体100との接触先端として用いられる。
【0052】
図2は、アタッチメント5、プローブ9およびプローブ保持部10を被験体100側から見た平面図、図3は、アタッチメント5、プローブ9およびプローブ保持部10と、被験体100との対向状態を説明する説明図である。図3に示すように、アタッチメント5の被験体100側端面(被験体接触面)は平滑な平面であり、被験体100に対向し、接触する。
【0053】
アタッチメント5の被験体100側端面は、プローブ保持部10の先端部分の被験体100側端面(被験体対向面)と同一面を形成する。この同一面は被験体100に接触することになる。したがって、プローブ保持部10の先端部分の被験体100側端面のみが被験体100に接触する場合と比較して、被験体100に部材(ここでは、アタッチメント5およびプローブ保持部10)が接触する面積が増加する。
【0054】
アタッチメント5の形状は、例えば、図2に示すように、ドーナツ型を用いることができる。ただし、プローブ保持部10の先端部分を挿入できる、着脱可能な開口部があれば、その形状は限定されない。アタッチメント5は一定の厚みを有し、被験体100側端面の面積は、プローブ保持部10の先端部分の被験体100側端面の面積と併せても、被験体100の検出位置または検出部位の面積を上回らない大きさとする。
【0055】
アタッチメント5には、アタッチメント5の被験体100側端面と直交する方向に、ネジ穴が設けられており、ネジ(例えば、イモネジ等)11を利用してアタッチメント5の外側からネジ11を挿し込み、アタッチメント5とプローブ保持部10の先端部とを固定する。図1では、90度の角度で2箇所にネジ11を挿し込んでアタッチメント5とプローブ保持部10の先端部とを固定しているが、固定の詳細は限定されない。
【0056】
アタッチメント5は、例えば、低弾性素材を用いることができる。その低弾性素材は、例えば、ステンレス鋼(SUS)である。このような低弾性素材を用いることにより、被験体100とアタッチメント5の被験体100側端面との接触状態を、その接触面内において、一様にすることができる。具体的には、その接触面内において、被験体100に掛かる圧力を一定比率以下に分散させることができる。
【0057】
なお、アタッチメント5はプローブ保持部10よりも低弾性であることが好ましい。プローブ保持部10よりも高弾性である場合と比較して、その接触面内における、被験体100に掛かる圧力の分散度合いを、より大きくすることができる。より低弾性であるアタッチメント5を用いることにより、被験体100とアタッチメント5の被験体100側端面との接触状態を、その接触面内において、より一様にすることができるからである。
【0058】
(入射用ファイバ6、反射用ファイバ7、ファイバ固定具8およびプローブ9)
プローブ9は、被験体100に照射される励起光を導光する入射用ファイバ6と、被験体100から放射される蛍光を導光する反射用ファイバ7と、を備えている。
【0059】
プローブ9において、入射用ファイバ6は被験体100側の端部(照射部)が被験体100と対向し、その端部から被験体100に照射される励起光が出射される。このような被験体100側の端部は、複数の検出機会にわたって、被験体100に対して励起光を照射する照射部として機能する。
【0060】
また、入射用ファイバ6は、励起光源2側の端部がSMAコネクタを通して励起光源2と結合されている。励起光源2から出射される励起光は、この励起光源2側の端部から入射用ファイバ6に入射される。
【0061】
入射用ファイバ6は、例えば、光ファイバを用いることができる。光ファイバを用いることにより、励起光をできるだけ損失無く、励起光源2側から被験体100側まで導くことができる。
【0062】
また、プローブ9において、反射用ファイバ7は被験体100側の端部(受光部)が被験体100と対向し、その端部から被験体100が放射する蛍光が入射される。入射された蛍光は、反射用ファイバ7を介して、検出部3に導光される。このような被験体100側の端部は、複数の検出機会にわたって、励起光が被験体100に照射されることによって放射される蛍光を受光する受光部として機能する。
【0063】
また、反射用ファイバ7は、検出部3側の端部がSMAコネクタを通して検出部3と結合されている。反射用ファイバ7を導光する蛍光は、検出部3側の端部から検出部3に出射される。
【0064】
反射用ファイバ7は、例えば、光ファイバを用いることができる。光ファイバを用いることにより、蛍光をできるだけ損失無く、被験体100側から検出部3側まで導くことができる。
【0065】
ファイバ固定具8は、入射用ファイバ6と反射用ファイバ7とを一纏めに束ねて、プローブ9に導いている。ファイバ固定具8は、例えば、その大きさが10〜20mmφである。
【0066】
プローブ9は、入射用ファイバ6および反射用ファイバ7を備えているものであるが、それらの配置は、例えば、図4に示す配置である。中心部分に反射用ファイバ7を配置し、その周りを取り囲むように複数の入射用ファイバ6を配置するようにする。この場合、入射用ファイバ6の直径は、例えば、100μm〜200μmであり、反射用ファイバ7の直径は、例えば、1000μmである。
【0067】
ただし、入射用ファイバ6および反射用ファイバ7の詳細な配置は問わない。
【0068】
(プローブ保持部10)
プローブ保持部10は、プローブ9の一端が挿入され、ペン軸やドライバの柄のように作業する際に、検出装置1の利用者が握る部位である。もちろん、利用者が必ずしも握る必要は無く、例えば、機械的な機構を用いることにより、人手により保持されない場合もある。
【0069】
プローブ9、すなわち、入射用ファイバ6および反射用ファイバ7は、例えば、光ファイバを用いている。このため、プローブ9の先端部分をそのまま、検出装置1の利用者が持ったり、握ったりした場合、利用者の力の入れ具合によっては、プローブ9の先端部分の劣化や破損などを招くおそれがある。また、そもそも、プローブ9の細い先端部分自体を、利用者が持ったり、握ったりすることは、利用者にとってあまり使い勝手がよくない。なぜなら、プローブ9の先端部分を、被験体100の検出位置や検出部位に対向するように、動かすことが必要だからである。
【0070】
もちろん、プローブ保持部10を利用者が必ずしも握る必要は無く、例えば、機械的な機構を用いることにより、人手により保持されない場合もあることは言うまでもない。
【0071】
なお、プローブ保持部10は、例えば、ステンレス鋼(SUS)を用いることができる。もちろん、プラスチック等を用いてもよい。
【0072】
(検出装置1の効果)
以上のように検出装置1では、プローブ保持部10にアタッチメント5を取り付けることにより、被験体100の検出位置や検出部位と、アタッチメント5およびプローブ保持部10との接触状態を安定化させることができる。
【0073】
したがって、検出時における、被験体100への負荷の大きさの変動が抑えられ、被験体の検出位置や検出部位を圧迫する度合いの強弱を小さくすることができる。
【0074】
それゆえ、検出部位から放射される蛍光を、安定的に再現性良く、検出することができる。
【0075】
本実施形態は、AGEsの検出に限らず、被験体への接触状態が異なることにより検出値が異なる可能性のある検出を行うための検出装置に適用できる。
【0076】
〔実施形態2〕
次に、本発明の実施形態2について説明する。なお、以下に説明する他の図面においては、上述した各構成部材に対応する変形例を図示することがある。これら変形例については、上述した対応する構成部材に付記した符号(数字)にa、b、c・・・のアルファベットを付記することにより、対応関係を明らかにしつつ変形例であることを示すこととする。
【0077】
アタッチメント5は、例えば、光の透過性がない、すなわち、非光透過性素材を用いてもよい。
【0078】
アタッチメント5に非光透過性素材を用いることにより、より確実に迷光が受光部に侵入することを防止することができる。
【0079】
特に、アタッチメント5に光の透過性のあるもの、すなわち、光透過性素材を用いる場合、プローブ保持部10の先端部分の被験体100側端面を被験体100に対向させるのみならず、被験体100に接触させる必要がある。なぜなら、アタッチメント5の外部から迷光がアタッチメント5を透過し、プローブ保持部10の先端部分の被験体100側端面から受光部に入射してしまうおそれがあるからである。このような迷光の、受光部への入射は、検出部3の蛍光検出の精度を低下させる要因となる。
【0080】
一方、本実施形態2では、図6に示すように、非光透過性素材を用いたアタッチメント5cを用いることにより、プローブ保持部10の先端部分の被験体100側端面を被験体100に対向させつつ、接触させない状態にすることもできる。
【0081】
なお、図3および図6に示すように、アタッチメント5および5cは、プローブ保持部10の先端部分がアタッチメント5および5cの被験体100側端面から被験体100側に突出することなく、プローブ保持部10の先端部分に取り付けられる、ということができる。
【0082】
〔実施形態3〕
次に、本発明の実施形態3について説明する。
【0083】
本実施形態3では、プローブ保持部10の先端部分にアタッチメント5が取り付けられたときの圧力分散比について、図2を用いて説明する。
【0084】
検出装置1は、被験体100に対し、励起光を照射し、それによって被験体100から放射された蛍光を受光し、検出する際、アタッチメント5がない場合に比べ、被験体100に掛かる圧力を一定比率以下に分散させる検出装置である。図2は、アタッチメント5の概略構成を示す模式図である。ここで、dprobeはプローブ保持部10の半径であり、dattachはアタッチメント5を装着した場合の半径を指している。
【0085】
このように、アタッチメント5およびプローブ保持部10の断面がともに円の場合、その面積比は、円の半径の2乗に比例する。例えば、dprobe:dattach=1:2の場合、面積比はSprobe:Sattach=1:4となる。また、被験体100に掛かる圧力は、それらの間の面積比に反比例する。例えば、一定の力をかけた場合、Sprobe:Sattach=1:4だとすると、同一単面積において、Pprobe:Pattach=1:0.25となる。ここでは例として、アタッチメント5およびプローブ保持部10ともに円形の場合を示したが、その他の形状の場合でも、面積比が算出できれば、同一単面積における圧力比を算出することができる。
【0086】
本実施形態3における圧力分散比率については、対象となる被験体100が組織の状態変化を起こす圧力のしきい値により異なる。また、アタッチメント5およびプローブ保持部10を被験体100に接触させる手段によっても、被験体100に掛かりうる圧力が変化する。したがって、あらかじめこれらを調べておき、掛かりうる圧力の上限値とプローブ保持部10の断面積を算出したうえで、許容されるアタッチメント5の断面積が決定される。そして、それに従いアタッチメント5を設計・作成するのが好ましい。
【0087】
具体例として、dprobeが5mmで、dattachが15mmとした時の比率を説明する。その時のdprobeとdattachの比率はdprobe:dattach=1:3となる。その時の面積比はSprobe:Sattach=1:9となる。その時の圧力比はPprobe:Pattach=1:0.11となり、被験体100にかかる圧力は、アタッチメント5を取り付ける場合と比較し、約10分の1になることが分かる。
【0088】
〔実施形態4〕
次に、本発明の実施形態4について説明する。
【0089】
図5は、本発明の実施形態4に係る検出装置を説明する説明図であり、(a)は、切り欠き形状部12を持つ場合のアタッチメント5aを示す図であり、(b)は、開口部13をもつ場合のアタッチメント5bを示す図である。
【0090】
本実施形態4に係る検出装置は、図5に示すように、被験体102に対し、励起光を照射し、それによって被験体102から放射された蛍光を受光し、検出する際、プローブ保持部10、より具体的に言えば、プローブ9の、被験体102に対する接触状態または対向状態が確認できる切り欠き形状部12を持つアタッチメント5a、または、開口部13を持つアタッチメント5bを用いる。
【0091】
言い換えれば、アタッチメント5aおよび5bは、それぞれ、切り欠き形状部12および開口部13を持つことにより、プローブ保持部10の先端部分の一部を除く外側面から、プローブ保持部10をネジ11aおよび11bを用いて締め付けている。
【0092】
さらに、言い換えれば、アタッチメント5aおよび5bは、それぞれ、プローブ保持部10の先端部分の一部の外側面を露出させるように、残余の外側面を覆っている。
【0093】
なお、本実施形態4に係る検出装置においても、図1に示した実施形態1と同じく、励起光を出射する励起光源2と、被験体102から放射される蛍光を検出する検出部3と、励起光源2および検出部3の各々の動作を制御する制御部4と、励起光源2から出射される励起光を導光するための入射用ファイバ6と、被験体102から放射される蛍光を導光するための反射用ファイバ7と、入射用ファイバ6および反射用ファイバ7を固定するファイバ固定具8と、を備えている。
【0094】
このようにして、図5に示すように、利用者は自身の目101により、切り欠き形状部12または開口部13を介して、プローブ9の、被験体102に対する接触状態または対向状態を目視確認できる。これにより、プローブ9の中心軸を被験体102の検出位置や検出部位に正確に接触させることができる。また、プローブ9の中心軸の被験体102に対する接触位置または対向位置の確認が容易となる。
【0095】
〔実施形態5〕
次に、本発明の実施形態5について説明する。
【0096】
本実施形態5では、本発明を固定具で固定して使うやり方について、図7を用いて説明する。
【0097】
固定具14は、アタッチメント5およびプローブ保持部10が接触する透明部材15と、被験体103(ここでは、被験者の前腕)に巻き付けられるリストバンド16と、を備えている。透明部材15は、例えば、ガラスやプラスチックなどである。
【0098】
例えば、固定具14を被験体103に巻きつけ、透明部材15を検出位置に固定し、本発明の検出装置を透明部材15に当て、検出すればよい。
【0099】
このやり方によると、被験体103の検出位置と、アタッチメント5およびプローブ保持部10との接触状態をより安定化させることができる。
【0100】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0101】
なお、本発明は、以下のようにも表現することができる。すなわち、本発明は、被験体に励起光を照射し、前記被験体が放射する蛍光を検出する検出装置であって、前記蛍光を受光する受光部と、前記受光部と前記被験体との接触状態を適切に保持するアタッチメントとを備え、前記アタッチメントは前記受光部と端面が一致しており、かつ、これにより保持される適切接触状態において、前記蛍光を検出する検出装置である。
【0102】
前記適切接触状態は、前記アタッチメントがない場合に比べ、前記被験体に掛かる圧力を一定比率以下に分散させることが好ましい。
【0103】
前記アタッチメントは、前記受光部の前記被験体に対する接触状態が確認できる切り欠き形状または開口部を持つことが好ましい。
【0104】
前記アタッチメントは低弾性素材であり、かつ、光の透過性がないことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、被験体と被験体から放射される蛍光を受光する受光部との対向状態が一定でないために、被験体の組織状態の変化が生じ、検出結果が異なってしまう検出装置に適用することができ、その結果、被験体と受光部の対向状態を簡易に適切にすることができ、安定的で再現性の高い蛍光検出を行なうことが可能となる。
【符号の説明】
【0106】
1 検出装置
2 励起光源
3 検出部
4 制御部
5、5a、5b、5c アタッチメント(着脱部)
6 入射用ファイバ(照射部)
7 反射用ファイバ(受光部)
8 ファイバ固定具
9 プローブ
10 プローブ保持部
11、11a、11b、11c ネジ
12 切り欠き形状部
13 開口部
14 固定具
15 透明部材
16 リストバンド
100、102、103 被験体
101 目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体に励起光を照射する照射部と、
前記励起光の照射により前記被験体から放射される蛍光を受光する受光部と、
先端部分に、前記照射部および前記受光部を保持する保持部と、
前記保持部の先端部分に着脱自在に取り付けられ、且つ、前記被験体に接触する被験体接触面を有する着脱部と
を備え、
前記着脱部は、前記保持部の先端部分が前記被験体接触面から前記被験体側に突出することなく、前記保持部の先端部分に取り付けられることを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記先端部分に前記被験体に対向する被験体対向面を有し、
前記着脱部の被験体接触面は、前記保持部の被験体対向面よりも面積が大きいことを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記着脱部は、前記保持部の先端部分の一部を除く外側面から締め付けていることを特徴とする請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記着脱部は、前記保持部の先端部分の一部の外側面を露出させるように残余の外側面を覆っていることを特徴とする請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記着脱部は、前記保持部の先端部分の、前記被験体に対する対向状態を確認できる大きさを持つ、切り欠き形状部または開口部を有することを特徴とする請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記着脱部は、低弾性素材を用いて構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記着脱部は、非光透過性素材を用いて構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−251976(P2012−251976A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127134(P2011−127134)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】