説明

検査システム

【課題】ドアパネル等の複数の部品が取り付けられるワークについて、ワークの変形を十分にも込んだ検査が可能な検査システムを提供すること。
【解決手段】ドアパネルWと、このドアパネルWに取り付けられる複数の部品とを備え、ドアパネルWがボディに支持されることでこのボディに組み付けられるドアアセンブリについて、検査システム1はドアパネルWの加工精度を検査する。検査システム1は、ドアアセンブリをボディに組み付ける場合と同一の姿勢で、ドアパネルWを支持する支持機構10と、この支持機構10により支持されたドアパネルWに対し、略鉛直方向に沿って所定の荷重を加える荷重再現装置20と、この荷重再現装置20によりドアパネルWに荷重が加えられた状態で、ドアパネルWの所定の特徴部の位置を測定する測定装置30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システムに関する。詳しくは、ドアパネルの加工精度を検査する検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造工程において、ドアアセンブリは、ボディを組み立てる工程とは別の工程で組み立てられた後に、このボディの所定の位置に組み付けられる。
ドアアセンブリを組み立てる工程では、先ず、アウタパネルとインナパネルとを組み合わせて略矩形状のドアパネルを組立てて、このドアパネルの加工精度を検査することで良否を判定する。次に、良品と判定されたドアパネルに、ドアガラス、スピーカ、及びガーニッシュの他、ドアガラスをスライドする電装ユニット等の複数の部品を取り付けることでドアアセンブリが組み立てられる。
【0003】
以上のように組み立てられたドアアセンブリは、複数のヒンジでドアパネルの一端側を片持ち支持することにより、ボディに対して開閉可能に組み付けられる。したがって、ドアアセンブリをボディに取り付けた実車の状態では、ドアパネルには複数の部品の重みによる荷重が作用し、ドアパネルは変形した状態となる。このため、上述のドアパネルの組立て及び加工精度の検査では、実車の状態で作用する荷重による変形を見込んでおく必要がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、検査用ゲージにドアパネルをセットし、セットしたドアパネルを複数のセンサでセンシングすることにより、ドアパネルの加工精度を検査する検査システムが示されている。具体的には、この検査システムでは、先ず、ドアパネルを下端側及び側面から支持する支持機構が設けられた検査用ゲージに、ドアパネルを立てた状態でセットする。次に、このドアパネルの基準位置及び形状を複数のセンサで計測し、計測した基準位置及び形状に基づいて、実車の状態におけるドアパネルとボディとの間に生じる隙間や段差をコンピュータにより算出することで、ドアパネルの加工精度を検査する。
【特許文献1】特開2006−153805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この検査システムでは、実車とは大きく異なる状態におけるドアパネルのセンシングに基づいて、ドアパネルの加工精度を検査する。したがって、実車の状態、すなわちドアパネルに複数の部品を取り付け、さらにこのドアパネルを片持ち支持した場合に生じるドアパネルの変形は、経験やテストに基づいて推定する必要がある。このため、ドアパネルの加工精度の検査において、実車の状態における変形を十分に見込むことができず、結果としてドアアセンブリの商品性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、ドアパネル等の複数の部品が取り付けられるワークについて、ワークの変形を十分に見込んだ検査が可能な検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の検査システムは、ワーク(例えば、後述のドアパネルW)と、当該ワークに取り付けられる複数の部品と、を備え、前記ワークがボディに支持されることで当該ボディに組み付けられるアセンブリ(例えば、後述のドアアセンブリ)について、前記ワークの加工精度を検査する検査システム(例えば、後述の検査システム1)であって、前記アセンブリを前記ボディに組み付ける場合と同一の姿勢で、前記ワークを支持する支持手段(例えば、後述の支持機構10)と、当該支持手段により支持されたワークに対し、略鉛直方向に沿って所定の荷重を加える荷重再現手段(例えば、後述の荷重再現装置20及び制御装置40)と、当該荷重再現手段により前記ワークに荷重が加えられた状態で、前記ワークの所定の特徴部の位置を測定する測定手段(例えば、後述の測定装置30)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、アセンブリをボディに組み付ける場合と同一の姿勢でワークを支持し、この支持されたワークに対し略鉛直方向に沿って所定の荷重を加えた状態で、ワークの所定の特徴部の位置を測定する。ここで、アセンブリを構成する際にワークに取り付けられる複数の部品による重みを考慮した荷重をワークに加えることにより、アセンブリとしてボディに組み付けた場合に、ワークに作用する荷重を実際に加えた状態で、特徴部の位置を測定することができる。すなわち、実際にワークに荷重を加えた状態で特徴部の位置を測定することにより、ボディに組み付けた際におけるワークの変形を推定することなく検査できる。これにより、検査システムによる検査精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の検査システムによれば、実際にワークに荷重を加えた状態で特徴部の位置を測定することにより、ボディに組み付けた際におけるワークの変形を推定することなく検査できる。これにより、検査システムによる検査精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る検査システムの構成を示す模式図。
検査システム1は、例えば自動車の製造工場に設けられ、自動車の一部を構成するワークを検査対象とし、このワークの加工精度を検査する。
【0011】
本実施形態では、アウタパネルとインナパネルとを合わせて構成された自動車のドアパネルWを、検査システム1による検査対象のワークとする。すなわち、検査システム1でドアパネルWの加工精度を検査した後には、このドアパネルWに、ドアガラス、スピーカ、及びガーニッシュの他、ドアガラスをスライドする電装ユニット等の複数の部品を取り付けることにより、ドアアセンブリを製造する。さらに、製造したドアアセンブリは、ドアパネルWの前端部WFを片持ち支持することにより、自動車のボディに開閉可能に組み付けられる。
【0012】
検査システム1は、支持手段としての支持機構10と、荷重再現手段としての荷重再現装置20と、測定手段としての測定装置30と、これら支持機構10、荷重再現装置20、及び測定装置30を制御する制御装置40と、を備える。
【0013】
支持機構10は、床面に固定された支柱19と、この支柱19に設けられた第1パネル支持装置11及び第2パネル支持装置12と、を含んで構成され、ドアアセンブリとしてボディに組み付ける場合と同一の姿勢でドアパネルWを支持する。
【0014】
第1パネル支持装置11及び第2パネル支持装置12は、それぞれ、ドアパネルWの前端部WFを支持する略棒状の第1パネル支持治具13及び第2パネル支持治具14を備える。これらパネル支持装置11,12は、それぞれ、パネル支持治具13,14の支柱19に対する位置及び姿勢を変更し、ドアパネルWの前端部WFを所定の姿勢で支持する。
【0015】
図2は、ドアパネルWの前端部WFの構成を示す斜視図である。
ドアパネルWの前端部WFは、略平らに形成されるとともに、図示しない2つのヒンジブラケットがボルト固定される第1ヒンジ取付穴W1及び第2ヒンジ取付穴W2が形成されている。ドアパネルWは、これらヒンジ取付穴W1,W2に取り付けられたヒンジブラケットを介してボディに組み付けられる。
【0016】
第1パネル支持治具13及び第2パネル支持治具14の先端側には、それぞれ、支持ピン15,16が形成されており、これら支持ピン15,16をヒンジ取付穴W1,W2に挿入することで、ドアパネルWを前端部WFで支持する。
【0017】
図1に戻って、荷重再現装置20は、略棒状のフック21と、このフック21に略鉛直方向に沿って所定の大きさの荷重をかけるフック駆動装置22と、を含んで構成される。
【0018】
フック21の先端側は、ドアパネルWの後端部WRのうち下端側に形成されたフック係止穴W3に係止する。
フック駆動装置22は、支持機構10により支持されたドアパネルWに対し、フック21を介してフック係止穴W3において、略鉛直方向に沿って所定の荷重を加える。フック駆動装置22は、制御装置40に接続されており、この制御装置から送信された制御信号に応じて動作する。
【0019】
測定装置30は、ドアパネルWの周囲の床面に固定された複数の支柱38,39と、これら支柱38,39に設けられた複数の位置センサ31,32,33を含んで構成され、ドアパネルWに形成された複数の特徴部の位置を測定する。ここで、ドアパネルWの特徴部とは、ドアパネルWの加工精度を検査する際に、目安となる部分である。
【0020】
位置センサ31,32,33は、それぞれ、カメラとレーザ距離センサとを備える。このカメラは、ドアパネルWにおける特徴部の位置を検出する。また、レーザ距離センサは、レーザ光をドアパネルWへ射出し、その反射光を検出することにより、光源から特徴部までの距離を計測する。これにより、位置センサ31,32,33は、それぞれ、ドアパネルWに形成された各特徴部の3次元空間内における位置を検出する。また、これら位置センサ31,32,33は、制御装置40に接続されており、各特徴部の位置に関する検出信号を制御装置40に送信する。
【0021】
制御装置40は、表示装置、入力装置、CPU、ROM、RAM、及びハードディスク等のハードウェアを含んで構成される。図1には、これらハードウェアにより機能する機能ブロックとしての、記憶部41、信号処理部42、及び良否判定部43のみを図示する。
【0022】
記憶部41には、上述のようにドアアセンブリをボディに組み付けた際に、このドアアセンブリのドアパネルWに作用する荷重に関するデータが、車種ごとに格納される。
信号処理部42は、記憶部41に格納されたドアパネルWに作用する荷重に関するデータに基づいて、この荷重を荷重再現装置20により再現するためにフック21に加える最適な荷重を算出し、算出した荷重に応じた制御信号をフック駆動部22に送信する。
良否判定部43は、測定装置30の位置センサ31,32,33から送信されたドアパネルWの各特徴部の位置に関する検出信号を処理し、ドアパネルWの加工精度の良否を判定する。より具体的には、位置センサ31,32,33から送信された検出信号に基づいて、検出されたドアパネルWの各特徴部の位置と、予め良品と判定されたドアパネルの各特徴部の位置とを比較し、この比較に基づいて良否を判定する。
【0023】
以上のような検査システム1により、ドアパネルWを検査する手順について説明する。
先ず、支持機構10のパネル支持装置11,12により、ドアアセンブリとしてボディに組み付ける場合と同一の姿勢でドアパネルWを支持する。
次に、荷重再現装置20のフック21をドアパネルWのフック係止穴W3に係止させ、このフック21に略鉛直方向に沿って荷重を加える。
次に、荷重再現装置20によりドアパネルWに荷重が加えられた状態で、ドアパネルWの各特徴部の位置を測定装置30の位置センサ31,32,33により測定する。
次に、測定装置30された各特徴部の位置に基づいて、ドアパネルWの良否を判定する。
【0024】
本実施形態によれば、以下のような作用効果がある。
ドアアセンブリをボディに組み付ける場合と同一の姿勢でドアパネルWを支持し、この支持されたドアパネルWに対し略鉛直方向に沿って所定の荷重を加えた状態で、ドアアセンブリWの所定の複数の特徴部の位置を測定する。ここで、ドアアセンブリを構成する際にドアパネルWに取り付けられる複数の部品による重みを考慮した荷重をドアパネルWに加えることにより、ドアアセンブリとしてボディに組み付けた場合に、ドアパネルWに作用する荷重を実際に加えた状態で、特徴部の位置を測定することができる。すなわち、実際にドアパネルWに荷重を加えた状態で特徴部の位置を測定することにより、ボディに組み付けた際におけるドアパネルWの変形を推定することなく検査できる。これにより、検査システム1による検査精度を向上することができる。
【0025】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上記実施形態では、検査システム1の検査対象のワークとして、ドアパネルWを用いたがこれに限るものではない。すなわち、実車時におけるワークが、検査時におけるワークから変形するものであれば、検査対象としてのワークはドアパネルに限らない。
【0026】
上記実施形態では、荷重再現装置20によりドアパネルWの後端部WRの下端側に形成されたフック係止穴W3に荷重を加えたが、荷重再現装置20により荷重を加える位置及び数はこれに限らない。すなわち、荷重を加える位置及び数を増やすことで、実際にドアアセンブリとしてボディに組み付けた際に作用する荷重に近い荷重を加えることができるので、検査システムによる検査精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る検査システムの構成を示す模式図である。
【図2】前記実施形態に係るドアパネルの前端部の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1…検査システム
W…ドアパネル(ワーク)
10…支持機構(支持手段)
20…荷重再現装置(荷重再現手段)
30…測定装置(測定手段)
40…制御装置(荷重再現手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークと、当該ワークに取り付けられる複数の部品と、を備え、前記ワークがボディに支持されることで当該ボディに組み付けられるアセンブリについて、前記ワークの加工精度を検査する検査システムであって、
前記アセンブリを前記ボディに組み付ける場合と同一の姿勢で、前記ワークを支持する支持手段と、
当該支持手段により支持されたワークに対し、略鉛直方向に沿って所定の荷重を加える荷重再現手段と、
当該荷重再現手段により前記ワークに荷重が加えられた状態で、前記ワークの所定の特徴部の位置を測定する測定手段と、を備えることを特徴とする検査システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−294015(P2009−294015A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146566(P2008−146566)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】