説明

検査シート

【課題】皮膚の状態を幅広く正確に検査する検査シートを提供する。
【解決手段】皮膚から発生する分泌物と接触することによって色が変化する同一の試薬それぞれを含み、同一量の前記分泌物に対して、色の変化の状態がそれぞれ異なる複数の試薬保持部を備える。また、複数の試薬保持部は、同一量の分泌物に対して、単位時間当たりの色の変化量がそれぞれ異なってもよい。また、複数の試薬保持部は、同一量の前記分泌物に対して、色の変化が開始するタイミングがそれぞれ異なってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査シートに関する。特に、本発明は、被検者の皮膚の状態を検査する検査シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の試薬にそれぞれ水溶性ポリマー層を設け、検体が接触する時刻をそれぞれ異ならせる多項目尿試験紙が記載されている。さらに、特許文献2には、酵素含有試薬を有し、水和した時にグルコースと反応してインジケータの色を変える化学タイマが記載されている。
【特許文献1】特開平9−96635号公報
【特許文献2】特開平10−142225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1および特許文献2では、全ての被検者に対して、同量の尿を用いて試験を実施して、最適のタイミングにおいて正しい色調を観察している。しかしながら、被検者の皮膚から分泌した分泌物で検査する場合、被検者ごと単位時間当たりの分泌量が異なるので、被検者ごとに水溶性ポリマー層の設定、または被検者ごとに検査時間を設定する必要がある。このため、全ての被検者が同じ検査シートを利用した場合、最適のタイミングにおいて、正しい色調を観察することは難しく、また様々な質感を有する全ての被検者の肌を、同じ検査シートで詳細に観察するのは難しい。
【0004】
そこで本発明は、上記の課題を解決することができる検査シートを提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、検査シートは、皮膚から発生する分泌物と接触することによって色が変化する同一の試薬それぞれを含み、同一量の前記分泌物に対して、色の変化の状態がそれぞれ異なる複数の試薬保持部を備える。
【0006】
複数の試薬保持部は、同一量の分泌物に対して、単位時間当たりの色の変化量がそれぞれ異なってもよい。また、複数の試薬保持部は、同一量の前記分泌物に対して、色の変化が開始するタイミングがそれぞれ異なってもよい。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、複数の試薬保持部がそれぞれ異なる反応態様を示すことで、より正確に検査結果を示すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、検査シート1の正面図を示す。検査シート1は、色見本5、表シート6、透明シート11、透明シート11にそれぞれ被覆された第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14を備える。なお、本実施例では、検査シート1が試薬保持部を3つ備える場合を示すが、複数備えられていれば数は限定しない。
【0011】
第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14は、検査シート1の皮膚と接触する面に設けられる。透明シート11は、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれを視認する面を被覆すると共に皮膚と接する面を有する。表シート6は、所定の色で透明シート11の皮膚に接する面と対面に設けられている。また、表シート6は、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれを、透明シート11を介して視認できる位置に透孔を有する。色見本5は、表シート6の透明シート11と接する面と対面上の任意の位置に設けられる。なお、検査シート1は、検査が実施される前において、皮膚との貼付面に剥離シートを備える。さらに、検査シート1は、剥離シートと透明シート11との間に粘着層を備える。
【0012】
第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14は、それぞれ被検者の皮膚から発生する分泌物と接触することで色が変化する同一の試薬を含む。第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14は、同一量の分泌物に対して、色の変化の状態がそれぞれ異なる。それぞれの試薬は、検査シート1が貼付された領域の一部に含まれる皮膚の表面の水分または皮脂等の存在により変色する。具体的には、被検者の水分を計測する場合、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14は無水塩化コバルト塩を試薬として含み、無水塩化コバルト塩の青は、被検者から蒸散した水分に反応することで、塩化コバルト六水和物の赤に変化する。なお、試薬はpH指示薬等であってもよい。
【0013】
第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14は、同一量の分泌物に対して、単位時間当たりの色の変化量がそれぞれ異なる。即ち、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14は、検査開始から、それぞれが異なった反応速度または異なった反応開始タイミングで分泌物と反応して呈色反応を示す。ここで、被検者の皮膚から発生する分泌物とは、液体、水分、油分、汗、または皮脂等であってもよい。変色した第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14は、一定時間経過後に、それぞれが呈する色の組み合わせが示された色見本5と比較されて、被検者の皮膚の状態が判断される。なお、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14と皮膚とが接触する面に、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14が保持する試薬と皮膚とが直接に接触することを避けるべく、水分または皮脂を透過するが試薬を透過しない不織布等の層を備えてもよい。
【0014】
透明シート11は、柔軟性を有し、透明性に優れ、また強靭性にも優れた樹脂フィルムが好ましい。具体的には、高分子樹脂フィルムであってよく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびポリアミド系合成繊維等であってよい。高分子樹脂フィルムの重合度および平均分子量等は、検査シート1の使用状況、並びに検査シート1に要求される柔軟性、および耐久性等に応じて適宜決定してよい。
【0015】
色見本5は、検査開始から一定時間経過後における、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14が呈する色の組み合わせを示す。また、色見本5は、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14が呈する色の組み合わせに対応する皮膚の状態の指標を示す。
【0016】
また、検査シート1、検査シート1を撮像する撮像装置30、および解析装置40を備える検査システムであってもよい。検査システムは、皮膚に貼り付けられた検査シート1を撮像装置30で撮像して、皮膚の状態を検査する。
【0017】
まず、検査シート1は、人体の皮膚に貼付される。第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14が保持する試薬は、検査シート1が貼付された領域の一部に含まれる皮膚の表面の水分または皮脂等の存在により変色する。そして、撮像装置30は、透明シート11のそれぞれを透過した光を撮像して、撮像した画像を示す撮像画像データを、ネットワーク50を介して解析装置40に送信する。解析装置40は、撮像画像データが示す撮像画像から、皮膚の状態を解析する。
【0018】
撮像装置30は、検査シート1を撮像する。撮像装置30が撮像した撮像画像を示す撮像画像データは、LANおよびインターネット等のネットワーク50を介して、撮像画像を解析して皮膚の状態を判断する解析装置40に送信される。また、撮像装置30は、撮像装置30を電気通信的に接続可能なクレードルに保持されてよい。そして、クレードルはネットワーク50を介して解析装置40と通信可能に接続される。係る場合に、撮像装置30は、クレードルを介して解析装置40に撮像画像データを送信してもよい。
【0019】
解析装置40は、撮像装置30が撮像した検査シート1の撮像画像から、皮膚の状態を解析する。解析装置40は、PCまたはサーバであってよい。具体的には、解析装置40は、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14が呈した色をそれぞれ取得し、それら色の組み合わせと、解析装置40が有する色の組み合わせに対応する皮膚の状態を示す色見本データとから皮膚の状態を解析する。
【0020】
図2は、色見本5の正面図を示す。色見本5は、検査後に第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれが示す色の違いを列方向に示す。また、色見本5は、検査後に第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれが示す色の組み合わせを行方向に示す。さらに、色見本5は、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれが示す色の組み合わせ、即ち行方向にあわせて、被検者の皮膚の状態の指標を示す。第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれが呈する色と、色見本5が示す第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14の色の組み合わせとから、皮膚の状態を判断する。
【0021】
図3は、検査シート1の側方断面図の第一の実施形態を示す。検査シート1は、色見本5、表シート6、第一透過部7、第二透過部8、第三透過部9、粘着層10、透明シート11、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14を備える。
【0022】
第一透過部7、第二透過部8、第三透過部9は、それぞれ検査シート1の皮膚に接触する位置に設けられる。そして、第一透過部7、第二透過部8、第三透過部9は、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14の皮膚に対向する面に隣接してそれぞれ設けられ、分泌物をそれぞれ透過する。第一試薬保持部12は、第一透過部7の上面、即ち、第一透過部7の皮膚に接触する面と反対の面に接触して配置される。第二試薬保持部13は、第二透過部8の上面、即ち、第二透過部8の皮膚に接触する面と反対の面に接触して配置される。第三試薬保持部14は、第三透過部9の上面、即ち、第三透過部9の皮膚と接触する面と反対の面に接触して配置される。なお、第一透過部7、第二透過部8、第三透過部9は、アセチルセルロース、ポリスルホン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニリデン等の多孔質材料で形成される。
【0023】
透明シート11は、第一透過部7、第二透過部8、および第三透過部9の上面に接触して配置される。透明シート11は、第一透過部7、第二透過部8、および第三透過部9、並びに第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14を被覆する。また、粘着層10は、透明シート11の下面、即ち、透明シート11の皮膚と対向する面に設けられる。なお、粘着層10は、例えば、アクリル系粘着剤であってよい。
【0024】
表シート6は、透明シート11の上面、即ち、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14に接触する面と反対の面に接触して配置される。表シート6は、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれを、透明シート11を介して視認できる位置に透孔を有する。色見本5は、表シート6の透明シート11に接触する面と反対の面上に設けられる。
【0025】
第一透過部7は、皮膚から第一試薬保持部12に貫通する複数の貫通孔を有する。第二透過部8は、皮膚から第二試薬保持部13に貫通する複数の貫通孔を有する。第三透過部9は、皮膚から第三試薬保持部14に貫通する複数の貫通孔を有する。第一透過部7、第二透過部8、および第三透過部9がそれぞれ有する複数の貫通孔は、それぞれの透過部ごとに、大きさがそれぞれ異なる。例えば、第一透過部7、第二透過部8、および第三透過部9は、それぞれ大、中、小の大きさの貫通孔を有するものとする。即ち、一定の皮膚から分泌される分泌物の蒸散量に対して、第一透過部7は、多くの分泌物を第一試薬保持部12へと透過する。また、第二透過部8は、中程度の分泌物を第二試薬保持部13へと透過する。さらに、第三透過部は、少ない分泌物を第三試薬保持部14へと透過する。
【0026】
第一透過部7、第二透過部8、および第三透過部9のそれぞれは、透過部ごとに異なった大きさの貫通孔を含むことで、検査開始後、単位時間当たりに皮膚から第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれに到達させる分泌物の量がそれぞれ異なる。なお、第一透過部7、第二透過部8、および第三透過部9のそれぞれは、単位面積当たりの数が透過部ごとにそれぞれ異なる同一の大きさの貫通孔を有していても良い。検査開始から一定時間経過後において、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14は、それぞれが接する透過部から浸透する分泌物の量がそれぞれ異なることで、それぞれ異なった色の変化量を示す。
【0027】
図4は、本発明の第一実施形態に係る試薬保持部の色の変化を示す。図4において、縦軸はそれぞれの試薬保持部の色の変化量を示し、横軸は皮膚から分泌した分泌物の蒸散量を示す。皮膚からの分泌物の蒸散量に対する、第一試薬保持部12の色の変化量をaに示す。皮膚からの分泌物の蒸散量に対する、第二試薬保持部13の色の変化量をbに示す。皮膚からの分泌物の蒸散量に対する、第三試薬保持部14の色の変化量をcに示す。なお、色の変化量とは、色相の変化量の他に、色が濃くなっていく量、および色が淡くなっていく量も含む。また、蒸散量に対するそれぞれの試薬保持部の色の変化する速さは、a、b、およびcの傾きで表される。
【0028】
検査開始から一定時間経過後における皮膚からの分泌物の蒸散量がkであった場合、第一試薬保持部12は、多くの試薬が反応して既に色が十分変化している状態を示す。第二試薬保持部13は、色変化が進行途上で、試薬の半分以上が変化した状態を示す。第三試薬保持部14は、色変化が進行途上で、試薬の約半分が変化した状態を示す。このように、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれが含む試薬は、異なった反応速度で色変化する。
【0029】
第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれが含む試薬の反応速度を異ならせることで、試薬保持部が一つである場合に対して、正確な皮膚の状態を検査できる。さらには、様々な皮膚の状態をより幅広く検査することができる。例えば、皮膚が乾燥しており、分泌物の蒸散量が極端に少ない皮膚を検査した場合であっても、第一試薬保持部12が含む試薬の色が大きく変化する。したがって、乾燥した皮膚の蒸散量を正確に検査できる。また、皮膚がよく潤っており、分泌物の蒸散量が極端に多い皮膚を検査した場合であっても、第三試薬保持部14が含む試薬の色は、飽和することなく、変化し続ける。したがって、よく潤った皮膚の蒸散量も正確に検査できる。ゆえに、一つの検査シート1で、様々な皮膚の状態を検査することができる。
【0030】
図5は、検査シート1の側方断面図の第二の実施形態を示す。検査シート1は、色見本5、表シート6、粘着層10、透明シート11、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、第三試薬保持部14、第一透過部24、第二透過部25、および第三透過部26を備える。
【0031】
なお、本実施形態に係る検査シート1は、第一透過部24、第二透過部25、および第三透過部26が、それぞれ透過層および吸収材料を有する点を除き、図1から図4の上記説明における検査シート1と略同一の機能および構成を有する。従って、以下の説明においては、第一透過部24、第二透過部25、および第三透過部26を除く他の構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0032】
第一透過部24は、第一試薬保持部12の皮膚と対向する面に隣接して設けられる。第一透過部24は、第一透過層15と、第一吸収材料18とを有する。第一透過層15は、第一透過部24の皮膚と接触する面に設けられる。また、第一吸収材料18は、第一透過部24の第一試薬保持部12と接する面に設けられる。
【0033】
第二透過部25は、第二試薬保持部13の皮膚と対向する面に隣接して設けられる。第二透過部25は、第二透過層16と、第二吸収材料19とを有する。第二透過層16は、第二透過部25の皮膚と接触する面に設けられる。また、第二吸収材料19は、第二透過部25の第二試薬保持部13と接する面に設けられる。
【0034】
第三透過部26は、第三試薬保持部14の皮膚と対向する面に隣接して設けられる。第三透過部26は、第三透過層17と、第三吸収材料20とを有する。第三透過層17は、第三透過部26の皮膚と接触する面に設けられる。また、第三吸収材料20は、第三透過部26の第三試薬保持部14と接する面に設けられる。
【0035】
第一透過層15、第二透過層16、および第三透過層17は、それぞれが皮膚から同量の分泌物を、第一吸収材料18、第二吸収材料19、および第三吸収材料20へと浸透させる。第一吸収材料18、第二吸収材料19、および第三吸収材料20は、それぞれ第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれよりも先に、皮膚からの分泌物を吸収する。具体的には、塩化コバルトを試薬として皮膚の水分を検査する場合、第一吸収材料18、第二吸収材料19、および第三吸収材料20は、シリカゲル、ゼオライト等の水分吸収部材を用いる。第一吸収材料18、第二吸収材料19、および第三吸収材料20は、皮膚からの分泌物を十分吸収した後、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13および第三試薬保持部14へ、皮膚からの分泌物を浸透させる。
【0036】
第一吸収材料18、第二吸収材料19、および第三吸収材料20は、分泌物の吸収量がそれぞれ異なるように設計されている。即ち、第一吸収材料18、第二吸収材料19、および、第三吸収材料20は、それぞれが異なった厚さ、または異なった部材を有して、それぞれ異なった時間で飽和状態となる。その結果、第一吸収材料18、第二吸収材料19、および第三吸収材料20は、それぞれ異なった時間で第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14へと分泌物を到達させる。そして、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14は、同一量の前記分泌物に対して、それぞれ異なったタイミングで分泌物と反応して色変化する。なお、第一吸収材料18、第二吸収材料19、または第三吸収材料20のいずれか一つが、分泌物を吸収しない構造であってもよい。即ち、第一吸収材料18が分泌物を吸収しない構造であったとすると、第一吸収材料18は、第一透過層15を浸透した分泌物をそのまま透過して、第一試薬保持部12へと到達させる。この場合、第一試薬保持部12は、検査開始から分泌物による色変化を開始する。本実施形態では、第一吸収材料18が分泌物を吸収しない構造であり、第二吸収材料19が少ない、第三吸収材料が多い分泌物の吸収量を有する場合で説明する。
【0037】
図6は、本発明の第二実施形態に係る試薬保持部の色の変化を示す。図6において、縦軸はそれぞれの試薬保持部の色の変化量を示し、横軸は皮膚から分泌した分泌物の蒸散量を示す。皮膚からの分泌物の蒸散量に対する、第一試薬保持部12の色の変化量をaに示す。皮膚からの分泌物の蒸散量に対する、第二試薬保持部13の色の変化量をbに示す。皮膚からの分泌物の蒸散量に対する、第三試薬保持部14の色の変化量をcに示す。なお、色の変化量とは、色相の変化量の他に、色が濃くなっていく量、および色が淡くなっていく量も含む。また、蒸散量に対するそれぞれの試薬保持部の色の変化する速さは、a、b、およびcの傾きで表される。
【0038】
検査を開始すると、第一試薬保持部12は、分泌物の蒸散量がlになるまで色変化して、蒸散量lにおいて色変化が終了する。第二試薬保持部13は、皮膚からの分泌物の蒸散量がlに達した場合に、皮膚からの分泌物との反応を開始する。第二試薬保持部13は、皮膚からの分泌物が蒸散量lに達した場合に反応を開始して、蒸散量lにおいて色変化が終了する。第三試薬保持部14は、皮膚からの分泌物の蒸散量がlに達した場合に、皮膚からの分泌物との反応を開始する。第三試薬保持部14は、皮膚からの分泌物が蒸散量lに達した場合に反応を開始して、蒸散量lになるまで色変化して、蒸散量lにおいて色変化が終了する。
【0039】
検査開始から一定時間経過後における皮膚からの分泌物の蒸散量がkであった場合、第一試薬保持部12および第二試薬保持部13は、それぞれ多くの試薬が反応して既に色が十分変化している状態を示す。第三試薬保持部14は、色変化が進行途上で、試薬の1/4程度が変化した状態を示す。このように、それぞれの試薬保持部は、蒸散量にあわせて順次反応していく。
【0040】
第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14は、それぞれが順次反応するので、水分が極端に多い被検者、または水分が極端に少ない被検者に対して、どちらにも同じ時間で正確な検査を実施できる。また、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれが別々に反応するので、検査シート1を厚くすることなく、長時間の検査をすることができる。即ち、分泌物の蒸散量がlに達するまで検査することができる。
【0041】
図7は、本発明の第二実施形態に係る試薬保持部の色の変化における別の例を示す。図7において、縦軸はそれぞれの試薬保持部の色の変化量を示し、横軸は皮膚から分泌した分泌物の蒸散量を示す。皮膚からの分泌物の蒸散量に対する、第一試薬保持部12の色の変化量をaに示す。皮膚からの分泌物の蒸散量に対する、第二試薬保持部13の色の変化量をbに示す。皮膚からの分泌物の蒸散量に対する、第三試薬保持部14の色の変化量をcに示す。なお、色の変化量とは、色相の変化量の他に、色が濃くなっていく量、および色が淡くなっていく量も含む。また、蒸散量に対するそれぞれの試薬保持部の色の変化する速さは、a、b、およびcの傾きで表される。
【0042】
検査開始から一定時間経過後における、分泌物の蒸散量がkであった場合、第一試薬保持部12は、それぞれ多くの試薬が反応して既に色が十分変化している状態を示す。第二試薬保持部13は、色変化が進行途上で、試薬の2/3程度が変化した状態を示す。また、第三試薬保持部14は、色変化が進行途上で、試薬の1/3程度が変化した状態を示す。このように、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれが含む試薬は、異なったタイミングで変化を開始して、同じ速度で色変化する。
【0043】
複数の試薬保持部を備え、それぞれの試薬保持部が含む試薬に、色変化の開始タイミングを異ならせることで、試薬保持部が一つである場合に対して、正確な皮膚の状態を検査できる。さらには、検査シート1が、複数の試薬保持部を備えることで、様々な皮膚の状態をより幅広く検査することができる。例えば、皮膚が乾燥し、分泌物の蒸散量が極端に少ない皮膚を検査した場合、第一試薬保持部12が含む試薬は、少ない蒸散量に対して変化を開始する。また、皮膚がよく潤っており、分泌物の蒸散量が極端に多い皮膚を検査した場合、第三試薬保持部14が含む試薬の色は、多い蒸散量に対して遅い開始タイミングで色変化を開始する。ゆえに、一つの検査シート1で、様々な皮膚の状態を有する被検者を検査することができる。
【0044】
第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14は、それぞれが異なった反応タイミングで色反応するとともに、同じ速度で分泌物と色反応するので、試薬保持部がひとつである場合に対して、正確な皮膚の状態を検査できる。さらには、様々な皮膚の状態をより幅広く検査することができる。即ち、皮膚の状態に対して、第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14が、それぞれ異なった色を示すので、正確な皮膚の状態を検査できると共に、水分の多い皮膚も水分の少ない皮膚も幅広く検査することができる。さらには、第一吸収材料18、第二吸収材料19、および第三吸収材料20が、それぞれ異なった分泌物の吸収量を有することで、それぞれが対応する第一試薬保持部12、第二試薬保持部13、および第三試薬保持部14のそれぞれの色反応の開始タイミングを制御できる。
【0045】
図8は、検査シート1の側方断面図の第三の実施形態を示す。検査シート1は、色見本5、表シート6、粘着層10、透明シート11、第一試薬保持部21、第二試薬保持部22、第三試薬保持部23、第一透過部27、第二透過部28、および第三透過部29を備える。
【0046】
なお、本実施形態に係る検査シート1は、第一試薬保持部21、第二試薬保持部22、および第三試薬保持部23が含む試薬の濃度がそれぞれ異なる点と、第一透過部27、第二透過部28、および第三透過部29が同一の浸透量を有する点を除き、図1から図4の上記説明における検査シート1と略同一の機能および構成を有する。また、第一透過部27、第二透過部28、および第三透過部29は、図5から図7における第一透過層15、第二透過層16、および第三透過層17と略同一の機能および構成を有する。従って、以下の説明においては、第一試薬保持部21、第二試薬保持部22、および第三試薬保持部23を除く他の構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0047】
第一試薬保持部21は、第一透過部27の上面、即ち、皮膚と接触する面と反対の面に設けられる。第二試薬保持部22は、第二透過部28の上面、即ち、皮膚と接触する面と反対の面に設けられる。第三試薬保持部23は、第三透過部29の上面、即ち、皮膚と接触する面と反対の面に設けられる。
【0048】
また、第一試薬保持部21、第二試薬保持部22、および第三試薬保持部23は、それぞれ異なった濃度の試薬を含む。なお、それぞれの試薬保持部が含む試薬の量は、単位面積当たりの試薬の量、または単位体積当たりの試薬の量を異ならせることで実現できる。本実施形態では、第一試薬保持部21、第二試薬保持部22、および第三試薬保持部23は、それぞれ薄い、中間、濃い濃度の試薬を含むものとする。
【0049】
図9は、本発明の第三実施形態に係る試薬保持部の色の変化を示す。図9において、縦軸はそれぞれの試薬保持部の色の変化量を示し、横軸は皮膚から分泌した分泌物の蒸散量を示す。皮膚からの分泌物の蒸散量に対する、第一試薬保持部21の色の変化量をaに示す。皮膚からの分泌物の蒸散量に対する、第二試薬保持部22の色の変化量をbに示す。皮膚からの分泌物の蒸散量に対する、第三試薬保持部23の色の変化量をcに示す。なお、色の変化量とは、色相の変化量の他に、色が濃くなっていく量、および色が淡くなっていく量も含む。また、蒸散量に対するそれぞれの試薬保持部の色の変化する速さは、a、b、およびcの傾きで表される。
【0050】
検査開始から一定時間経過後における皮膚からの分泌物の蒸散量がkであった場合、第一試薬保持部21は、多くの試薬が反応して既に色が十分変化している状態を示す。第二試薬保持部22は、色変化が進行途上で、試薬の4/5が変化した状態を示す。第三試薬保持部23は、色変化が進行途上で、試薬の約半分が変化した状態を示す。このように、それぞれの試薬保持部が含む試薬は、異なった蒸散量で反応が完結する。
【0051】
第一試薬保持部21、第二試薬保持部22、および第三試薬保持部23は、それぞれが異なった濃度の試薬を含むことで、試薬検査開始から一定時間経過後において、それぞれが異なった色を呈する。即ち、第一試薬保持部21、第二試薬保持部22、および第三試薬保持部23には色の差が生じる。この色の差により、第一試薬保持部21、第二試薬保持部22、および第三試薬保持部23の色反応の違いが見えやすくなるので、正確な皮膚の状態を検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】検査シート1の正面図を示す。
【図2】色見本5の正面図を示す。
【図3】検査シート1の側方断面図の第一の実施形態を示す。
【図4】本発明の第一実施形態に係る試薬保持部の色の変化を示す。
【図5】検査シート1の側方断面図の第二の実施形態を示す。
【図6】本発明の第二実施形態に係る試薬保持部の色の変化を示す。
【図7】本発明の第二実施形態に係る試薬保持部の色の変化における別の例を示す。
【図8】検査シート1の側方断面図の第三の実施形態を示す。
【図9】本発明の第三実施形態に係る試薬保持部の色の変化を示す。
【符号の説明】
【0053】
1 検査シート
5 色見本
6 表シート
7 第一透過部
8 第二透過部
9 第三透過部
10 粘着層
11 透明シート
12 第一試薬保持部
13 第二試薬保持部
14 第三試薬保持部
15 第一透過層
16 第二透過層
17 第三透過層
18 第一吸収材料
19 第二吸収材料
20 第三吸収材料
21 第一試薬保持部
22 第二試薬保持部
23 第三試薬保持部
24 第一透過部
25 第二透過部
26 第三透過部
27 第一透過部
28 第二透過部
29 第三透過部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚から発生する分泌物と接触することによって色が変化する同一の試薬それぞれを含み、同一量の前記分泌物に対して、色の変化の状態がそれぞれ異なる複数の試薬保持部
を備える検査シート。
【請求項2】
前記複数の試薬保持部は、同一量の前記分泌物に対して、単位時間当たりの色の変化量がそれぞれ異なる請求項1に記載の検査シート。
【請求項3】
前記複数の試薬保持部の前記皮膚に対向する面に隣接してそれぞれ設けられ、前記分泌物をそれぞれ透過する複数の透過部
をさらに備え、
前記複数の透過部は、単位時間当たりに前記皮膚から前記複数の試薬保持部のそれぞれに到達させる前記分泌物の量がそれぞれ異なる請求項2に記載の検査シート。
【請求項4】
前記複数の透過部は、前記皮膚から前記複数の試薬保持部のそれぞれへ貫通する貫通孔を有し、
前記複数の透過部がそれぞれ有する前記貫通孔の大きさがそれぞれ異なる請求項3に記載の検査シート。
【請求項5】
前記複数の透過部は、前記皮膚から前記複数の試薬保持部のそれぞれへ貫通する貫通孔を有し、
前記複数の透過部がそれぞれ有する前記貫通孔の単位面積当たりの数がそれぞれ異なる請求項3に記載の検査シート。
【請求項6】
前記複数の試薬保持部は、同一量の前記分泌物に対して、色の変化が開始するタイミングがそれぞれ異なる請求項1に記載の検査シート。
【請求項7】
前記複数の試薬保持部の前記皮膚に対向する面に隣接してそれぞれ設けられ、前記分泌物をそれぞれ透過する複数の透過部
をさらに備え、
前記複数の透過部は、前記分泌物を前記複数の試薬保持部のそれぞれに到達させるまでの時間がそれぞれ異なる請求項6に記載の検査シート。
【請求項8】
前記複数の透過部は、前記分泌物を吸収する材料を有し、前記分泌物の吸収量がそれぞれ異なる請求項7に記載の検査シート。
【請求項9】
前記複数の試薬保持部がそれぞれ含む前記試薬の濃度がそれぞれ異なる請求項1に記載の検査シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−298481(P2008−298481A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142489(P2007−142489)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】