説明

検査チップ及び計測装置

【課題】反応物が効率的に加熱又は冷却され製造費用の増加が抑制される検査チップ及び計測装置を提供する。
【解決手段】流路形成体、誘電体媒体及び導電体膜が検査チップに設けられる。流路形成体の表面には、接合領域及び露出領域が設けられる。流路形成体には、反応物収容空間及び熱媒体収容空間が形成される。反応物収容空間は、接合領域に開口を有し、露出領域に反応物出入口を有する。熱媒体収容空間は、露出領域に熱媒体出入口を有する。誘電体媒体の表面には、入射領域、反射領域及び出射領域が設けられる。入射領域へ入射した励起光が反射領域に全反射され出射領域から出射する。導電体膜の第1の主面は、接合領域に接合される。導電体膜の第2の主面は、反射領域に密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン励起蛍光分光法又は表面プラズモン共鳴法による計測に用いられる検査チップ及び表面プラズモン励起蛍光分光法又は表面プラズモン共鳴法による計測を行う計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体媒体の中を進む励起光が導電体膜と誘電体媒体との界面に全反射された場合は、界面からエバネッセント波がもれだし、導電体膜の中のプラズモンとエバネッセント波とが干渉する。界面への励起光の入射角が共鳴角に設定されプラズモンとエバネッセント波とが共鳴する場合にエバネッセント波の電場は著しく増強される。表面プラズモン励起蛍光分光(SPFS)法又は表面プラズモン共鳴(SPR)法による計測においては、この共鳴が利用される。
【0003】
SPFS法による計測においては、導電体膜の表面に被計測物が捕捉され、捕捉された被計測物が蛍光標識される。増強された電場は蛍光標識された被計測物に作用し、蛍光標識された被計測物からは表面プラズモン励起蛍光が放射される。さらに、表面プラズモン励起蛍光の光量が測定され、被計測物の有無、被計測物の捕捉量等が特定される。
【0004】
SPR法による計測においては、金属膜の表面に被計測物質が捕捉される。また、反射光の光量、散乱光の光量及び共鳴角並びにこれらの変化の全部又は一部が測定され、被計測物の有無、被計測物の捕捉量等が特定される。
【0005】
被計測物の捕捉、被計測物の蛍光標識等のために、試料液、蛍光標識液等の反応物が検査チップに収容され、検査チップの内部において反応物が反応させられる。この反応の進行は、反応物の温度の影響を受ける。したがって、反応物の温度によっては、反応の進行が遅くなり、計測に要する時間が長くなる。また、反応物の温度が変化した場合は計測の結果が変化する。このため、反応物の温度が管理されていない状態においては、計測の精度が低下し、計測結果も再現しにくい。そこで、反応物の温度を調整することが期待される。
【0006】
一方で、反応物を潤沢に準備できない場合がある。例えば、検体が人体から採取される場合は、人体への負荷を減らすために検体の量を減らすことが期待される。また、検体を処理する試薬が高価である場合は、検査の費用を減らすために試薬の量を減らすことが期待される。
【0007】
反応物を潤沢に準備できない場合は、反応物の熱容量が小さくなり、反応物が加熱されても熱容量が大きな検査チップに熱が奪われ、反応物を適切な温度に維持することは困難である。又は、熱容量が大きな検査チップに熱を奪われても反応物を適切な温度に維持するために反応物が過剰に加熱された場合は、反応物が熱により失活する危険がある。これらの問題は、反応物が冷却される場合も生じる。
【0008】
この問題を解決するためには、検査チップの温度を調整することも考えられる。特許文献1から3までは、その一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−276499号公報
【特許文献2】特開2010−203823号公報
【特許文献3】特開2008−139246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1及び2のように、検査チップの外部に熱源があって検査チップの外部から検査チップへ熱が伝達される場合は、熱が十分に伝達されず、検査チップ及びその内部の反応物が効率よく加熱されない。また、熱を伝達させるために検査チップの外部の機構と検査チップとを密着させる複雑な機構が必要になる。
【0011】
また、特許文献3のように、検査チップの内部に熱源がある場合は、検査チップの製造費用が増加する。検査チップは、計測の作業の安全、効率等を考慮すると使い捨てであることが望まれるので、検査チップの製造費用の増加は許容しがたい場合が多い。
【0012】
これらの問題は、反応物が加熱される場合だけでなく反応物が冷却される場合にも生じる。
【0013】
本発明は、これらの問題を解決するためになされる。本発明は、内部の反応物が効率的に加熱又は冷却され製造費用の増加が抑制される検査チップ及び計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1から第13までの局面は、表面プラズモン励起蛍光分光法又は表面プラズモン共鳴法による計測に用いられる検査チップに向けられる。
【0015】
本発明の第1の局面においては、構造物、誘電体媒体及び導電体膜が設けられる。構造物の表面には、接合領域及び露出領域が設けられる。構造物には、反応物収容空間及び熱媒体収容空間が形成される。反応物収容空間は、接合領域に開口を有し、露出領域に反応物出入口を有する。熱媒体収容空間は、露出領域に熱媒体出入口を有する。
【0016】
誘電体媒体の表面には、入射領域、反射領域及び出射領域が設けられる。入射領域へ入射した励起光が反射領域に全反射され出射領域から出射するように入射領域、反射領域及び出射領域が配置される。
【0017】
導電体膜の第1の主面は、接合領域に接合される。導電体膜の第2の主面は、反射領域に密着する。
【0018】
本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第2の局面においては、上記の熱媒体出入口が第1の熱媒体出入口であり、熱媒体収容空間が第2の熱媒体出入口を露出領域に有する。熱媒体収容空間は、第1の熱媒体出入口から構造物の内部を経由し第2の熱媒体出入口まで延在する流路である。
【0019】
本発明の第3の局面は、本発明の第2の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第3の局面においては、露出領域が一定の方向を向く出入口形成領域を有する。反応物出入口、第1の熱媒体出入口及び第2の熱媒体出入口は、出入口形成領域に設けられる。
【0020】
本発明の第4の局面は、本発明の第3の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第4の局面においては、出入口形成領域と接合領域とが反対方向を向く。
【0021】
本発明の第5の局面は、本発明の第2から第5までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第5の局面においては、上記の開口が第1の開口であり、熱媒体収容空間が第2の開口を有する。第1の表面は、一定の方向を向く開口形成領域を有する。第1の開口及び第2の開口は、開口形成領域に設けられる。
【0022】
本発明の第6の局面は、本発明の第2の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第6の局面においては、露出領域が第1の一定の方向を向く出入口形成領域を有し、第1の表面が第2の一定の方向を向く開口形成領域を有する。反応物出入口及び第1の熱媒体出入口は、出入口形成領域に設けられる。開口及び第2の熱媒体出入口は、開口形成領域に設けられる。
【0023】
本発明の第7の局面は、本発明の第1の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第7の局面においては、熱媒体収容空間が1個の熱媒体出入口を有する溜まりである。
【0024】
本発明の第8の局面は、本発明の第7の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第8の局面においては、露出領域が一定の方向を向く出入口形成領域を有する。反応物出入口及び熱媒体出入口は、出入口形成領域に設けられる。
【0025】
本発明の第9の局面は、本発明の第8の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第9の局面においては、出入口形成領域と接合領域とが反対方向を向く。
【0026】
本発明の第10の局面は、本発明の第7から第9までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第10の局面においては、上記の開口が第1の開口であり、熱媒体収容空間が第2の開口を有する。第1の表面は、一定の方向を向く開口形成領域を有する。第1の開口及び第2の開口は、開口形成領域に設けられる。第2の開口は、閉塞体に閉塞される。
【0027】
本発明の第11の局面は、本発明の第1から第10までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第11の局面においては、反応物出入口の形状と熱媒体出入口の形状とが同じである。
【0028】
本発明の第12の局面は、本発明の第1から第11までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第12の局面においては、反応物収容空間からの距離が異なり分離された2個以上の熱媒体収容空間が形成される。
【0029】
本発明の第13の局面は、本発明の第1から第12までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第12の局面においては、熱媒体収容空間の体積の合計が反応物収容空間の体積よりも大きい。
【0030】
本発明の第14の局面は、表面プラズモン励起蛍光分光法又は表面プラズモン共鳴法による計測を行う計測装置に向けられる。本発明の第14の局面においては、本発明の第1の局面の検査チップ、熱媒体供給機構及び測定機構が設けられる。熱媒体供給機構は、熱媒体の温度を調整し、熱媒体収容空間へ温度が調整された熱媒体を供給する。測定機構は、前記入射領域へ励起光を入射させ、表面プラズモン励起蛍光分光法又は表面プラズモン共鳴法による測定を行う。
【発明の効果】
【0031】
本発明の第1及び第14の局面によれば、検査チップが効率よく加熱又は冷却され、反応物収容空間に収容された反応物が効率よく加熱又は冷却される。反応に適した温度に維持される。また、検査チップの製造費用の増加が抑制される。
【0032】
本発明の第2の局面によれば、熱媒体の供給口と回収口とが分離され、熱媒体が効率よく循環させられる。
【0033】
本発明の第3及び第8の局面によれば、反応物を供給する機構及び熱媒体を供給する機構が容易に共通化される。
【0034】
本発明の第4及び第9の局面によれば、反応物を供給する機構及び熱媒体を供給する機構を誘電体媒体の反対側に設けることが容易になり、反応物を供給する機構及び熱媒体を供給する機構が誘電体媒体への励起光の照射を妨げにくくなる。
【0035】
本発明の第5、第6及び第10の局面によれば、射出成形により構造物が作製される場合に必要な金型が減り、検査チップの製造費用が減少する。
【0036】
本発明の第11の局面によれば、反応物を供給する機構及び熱媒体を供給する機構が容易に共通化される。
【0037】
本発明の第12の局面によれば、温度が細かく調整され、反応物が適切に加熱又は冷却される。
【0038】
本発明の第13の局面によれば、検査チップの加熱又は冷却に寄与する熱媒体が増加し、反応物が効率的に加熱又は冷却される。
【0039】
これらの及びこれら以外の本発明の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面とともに考慮されたときに下記の本発明の詳細な説明によってより明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態の計測装置の模式図である。
【図2】第1実施形態の検査チップの斜視図である。
【図3】第1実施形態の検査チップの断面図である。
【図4】第1実施形態の検査チップ及びその周辺の斜視図である。
【図5】試料液が反応物流路へ注入された状態の模式図である。
【図6】蛍光標識液が反応物流路へ注入された状態の模式図である。
【図7】計測の手順のフローチャートである。
【図8】試薬チップの断面図である。
【図9】第2実施形態の検査チップの斜視図である。
【図10】第2実施形態の検査チップの断面図である。
【図11】第3実施形態の検査チップの斜視図である。
【図12】第3実施形態の検査チップの断面図である。
【図13】第4実施形態の検査チップの斜視図である。
【図14】第5実施形態の検査チップの斜視図である。
【図15】第5実施形態の検査チップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
{第1実施形態}
(計測装置の概略)
第1実施形態は、計測装置及び検査チップに関する。
【0042】
図1の模式図は、第1実施形態の計測装置を示す。図2の模式図は、第1実施形態の検査チップの斜視図である。図3の模式図は、第1実施形態の検査チップの断面を示す。
【0043】
図1に示すように、第1実施形態の計測装置1000は、検査チップ1002、測定機構1004、供給回収機構1006及びコントローラ1008を備える。測定機構1004は、レーザダイオード1010、直線偏光板1012、ミラー1014、駆動機構1016、ローパスフィルタ1018、光電子増倍管1020及びフォトダイオード1022を備える。供給回収機構1006は、反応液供給機構1024、反応液回収機構1026、熱媒体循環機構1028、反応液供給配管1030、反応液回収配管1032、熱媒体供給配管1034a及び1034b並びに熱媒体回収配管1036a及び1036bを備える。
【0044】
図2及び図3に示すように、検査チップ1002は、金膜1100、プリズム1102、抗体固層膜1104、流路形成体1106並びにシール1108a及び1108bを備える。
【0045】
(計測の概略)
計測装置1000は、表面プラズモン励起蛍光分光法(SPFS)による計測を行う。検査チップ1002は、計測装置1000に取りつけられ、表面プラズモン励起蛍光分光法による計測に用いられる。計測装置1000は、主に、生化学検査、免疫検査、遺伝子検査に用いられる。
【0046】
計測が行われる場合には、流路形成体1106に形成された反応物流路1110へ反応液供給機構1024から試料液が供給され、試料液に含まれる被計測物が抗体固層膜1104に捕捉される。また、反応液供給機構1024から反応物流路1110へ蛍光標識液が供給され、捕捉された被計測物が蛍光標識される。
【0047】
このとき、流路形成体1106に形成された熱媒体流路1112a及び1112bへ熱媒体循環機構1028から熱媒体が供給される。これにより、検査チップ1002が効率よく加熱され、反応物流路1110に収容された試料液又は蛍光標識液が抗体抗原反応に適した温度に維持される。
【0048】
捕捉された被計測物が蛍光標識された状態において、励起光ELがプリズム1102に照射される。照射された励起光ELは、プリズム1102と金膜1100との界面で全反射される。
【0049】
プリズム1102と金膜1100との界面で励起光ELが全反射される場合は、金膜1100とプリズム1102との界面から金膜1100の側にエバネッセント波がもれだし、金膜1100の中のプラズモンとエバネッセント波とが干渉する。プラズモンとエバネッセント波とが共鳴する場合にエバネッセント波の電場は著しく増強される。増強された電場は蛍光標識された被計測物に作用し、蛍光標識された被計測物から表面プラズモン励起蛍光FLが放射される。表面プラズモン励起蛍光FLの光量は、光電子増倍管1020により測定される。光電子増倍管1020の測定結果から被計測物の有無、被計測物の捕捉量等がコントローラ1008により算出される。
【0050】
(検査チップの概略)
図2及び図3に示すように、金膜1100の第1の主面1114には、抗体固層膜1104が定着する。金膜1100の第1の主面1114は、流路形成体1106の表面1118の接合領域1120に接合される。金膜1100の第2の主面1116は、プリズム1102の表面1124の反射領域1128に密着する。抗体固層膜1104は、反応物流路1110に収容される。金膜1100の第1の主面1114に被計測物が吸着しうる場合は、抗体固層膜1104が省略されてもよい。
【0051】
金膜1100と流路形成体1106とは、接着、レーザ溶着、超音波溶着、クランプ圧着等により接合される。ただし、金膜1100と流路形成体1106とが他の方法により接合されてもよい。
【0052】
(金膜)
金膜1100は、薄膜である。金膜1100の膜厚は、望ましくは、30〜70nmである。ただし、金膜1100の膜厚がこの範囲外であってもよい。
【0053】
金膜1100は、スパッタリング、蒸着、メッキ等により反射領域1128に形成される。ただし、金膜1100が他の方法により形成されてもよい。
【0054】
金膜1100が金以外の導電体からなる膜に置き換えられてもよい。例えば、金膜1100が銀、アルミニウム等の金属又はこれらの金属を含む合金からなる膜に置き換えられてもよい。
【0055】
(プリズム)
プリズム1102の表面1124には、励起光ELの入射領域1126、反射領域1128及び出射領域1130が設けられる。入射領域1126、反射領域1128及び出射領域1130は、入射領域1126へ入射した励起光ELが反射領域1128に全反射され出射領域1130から出射するように配置される。
【0056】
プリズム1102は、台形柱体である。望ましくは、プリズム1102は、等脚台形柱体である。プリズム1102が台形柱体である場合は、プリズム1102の一方の傾斜側面が入射領域1126になり、プリズム1102の幅広の平行側面が反射領域1128になり、プリズム1102の他方の傾斜面が出射領域1130になる。
【0057】
プリズム1102の外形は、臨界角以上の入射角θで励起光ELが反射領域1128へ入射するように決められる。臨界角以上の入射角θで励起光ELが反射領域1128へ入射する限り、プリズム1102が台形柱体以外でもよく、プリズム1102が「プリズム」の範疇に含まれない形状物に置き換えられてもよい。例えば、プリズム1102が板に置き換えられてもよい。
【0058】
プリズム1102は、励起光ELに対して透明な材質からなる誘電体媒体である。望ましくは、プリズム1102は、屈折率が1.40〜1.75のガラス又は樹脂からなる。プリズム1102が樹脂からなる場合は、望ましくは、射出成形によりプリズム1102が製造される。ただし、プリズム1102が射出成形以外により製造されてもよい。
【0059】
(流路形成体の概略)
流路形成体1106には、反応物流路1110並びに熱媒体流路1112a及び1112bが形成される。熱媒体流路1112a及び1112bの片方が省略されてもよい。熱媒体流路1112a及び1112bから分離されたさらなる熱媒体流路が形成されてもよい。反応物流路1110と熱媒体流路1112aと熱媒体流路1112bとは分離される。したがって、反応物流路1110に収容された試料液又は蛍光標識液と熱媒体流路1112aに収容された熱媒体と熱媒体流路1112bに収容された熱媒体とは混合しない。分離された2個以上の熱媒体流路が形成される場合は、検査チップ1002の加熱に寄与する熱媒体が増加し、試料液又は蛍光標識液が効率的に加熱される。
【0060】
(反応物流路及び熱媒体流路の配置)
反応物流路1110並びに熱媒体流路1112a及び1112bは、接合領域2220に平行に配列される。望ましくは、熱媒体流路1112aと熱媒体流路1112bとの間に反応物流路1110が形成される。これにより、反応物流路1110の両側から加熱が行われ、試料液又は蛍光標識液が効率的に加熱される。ただし、他の位置に反応物流路1110が形成されてもよい。
【0061】
(流路形成体の表面)
流路形成体1106の外形形状は直方体又は立方体であり、流路形成体1106の表面1118は上面1192、側面1194及び下面1196を有する。流路形成体1106の表面1118には、接合領域1120、露出領域1122並びに閉塞領域1123a及び1123bが設けられる。接合領域1120は、金膜1100の第1の主面1114に接合される領域であり、下面1196の一部を占める。露出領域1122は、検査チップ1002の外部に露出する領域であり、下面1196の一部、上面1192及び側面1194を占める。閉塞領域1123a及び1123bは、それぞれ、シール1108a及び1108bが貼られる領域であり、下面1196の一部を占める。接合領域1120、露出領域1122並びに閉塞領域1123a及び1123bの配置が変更されてもよい。流路形成体1106の外形形状が直方体及び立方体以外であってもよい。
【0062】
(反応物流路)
反応物流路1110は、一方の反応液出入口1132から流路形成体1106の内部を経由し他方の反応液出入口1134まで延在し、試料液又は蛍光標識液を収容する反応液収容空間を提供する。反応液出入口1132及び1134は、露出領域1122に設けられる。これにより、反応液出入口1132及び1134への試料液及び蛍光標識液の供給並びに反応液出入口1132及び1134からの試料液及び蛍光標識液の回収が可能になる。反応液出入口1132と反応液出入口1134とは分離される。反応物流路1110が1個の反応物出入口を有する反応物溜まりに置き換えられてもよい。反応液出入口の数が3個以上に増やされてもよい。
【0063】
反応物流路1110は、表面露出流路1138並びに内部貫通流路1140及び1142を有する。
【0064】
表面露出流路1138は、接合領域1120に沿って延在し、接合領域1120に開口1144を有する。これにより、表面露出流路1138に試料液又は蛍光標識液が供給された場合に、それぞれ、第1の主面1114に試料液又は蛍光標識液が供給され、第1の主面1114に定着する抗体固層膜1104に試料液又は蛍光標識液が接触する。
【0065】
一方の内部貫通流路1140は、反応液出入口1132から表面露出流路1138の一方の端部まで延在する。他方の内部貫通流路1142は、反応液出入口1134から表面露出流路1138の他方の端部まで延在する。内部貫通流路1140及び1142により、反応液出入口1132又は1136に試料液又は蛍光標識液が供給された場合に、それぞれ、表面露出流路1138に試料液又は蛍光標識液が供給される。熱媒体出入口の数が3個以上に増やされてもよい。
【0066】
(熱媒体流路)
熱媒体流路1112a及び1112bは、それぞれ、熱媒体出入口1146a及び1146bから流路形成体1106の内部を経由し熱媒体出入口1148a及び1148bまで延在し、熱媒体を収容する熱媒体収容空間を提供する。熱媒体収容空間が2個以上の熱媒体出入口を有する熱媒体流路として提供される場合は、熱媒体の供給口と回収口とが分離され、熱媒体が効率よく循環させられる。
【0067】
熱媒体出入口1146a、1146b、1148a及び1148bは、露出領域1122に設けられる。これにより、熱媒体出入口1146a、1146b、1148a及び1148bへの熱媒体の供給並びに熱媒体出入口1146a、1146b、1148a及び1148bからの熱媒体の回収が可能になる。熱媒体出入口1146aと熱媒体出入口1148aとは分離される。熱媒体出入口1146bと熱媒体出入口1148bとは分離される。
【0068】
熱媒体流路1112a及び1112bは、望ましくは、同じ形状を有する。ただし、熱媒体流路1112a及び1112bが異なる形状を有してもよい。一方の熱媒体流路1112aは、表面露出流路1150a並びに内部貫通流路1152a及び1154aを有する。他方の熱媒体流路1112bは、表面露出流路1150b並びに内部貫通流路1152b及び1154bを有する。
【0069】
表面露出流路1150a及び1150bは、それぞれ、閉塞領域1123a及び1123bに沿って延在し、閉塞領域1123a及び1123bに開口1156a及び1156bを有する。表面露出流路1150a及び1150bの両方又は片方が流路形成体1106の内部を通り開口を有さない流路に置き換えられてもよい。この場合は、シール1108a及び1108bが省略される。
【0070】
一方の内部貫通流路1152a及び1152bは、それぞれ、熱媒体出入口1146a及び1146bから表面露出流路1150a及び1150bの一方の端部まで延在する。他方の内部貫通流路1154a及び1154bは、それぞれ、熱媒体出入口1148a及び1148bから表面露出流路1150a及び1150bの他方の端部まで延在する。
【0071】
(反応液出入口及び熱媒体出入口の望ましい配置)
望ましくは、反応液出入口1132及び1134並びに熱媒体出入口1146a、1146b、1148a及び1148bが上面1192に集中して設けられる。これにより、反応液を供給する機構並びに熱媒体を供給する機構が容易に共通化される。このことは、例えば、反応液出入口1132及び1134が上面1192に設けられ熱媒体出入口1146a、1146b、1148a及び1148bが側面1194に設けられた場合と対比すれば理解される。より一般的には、上面1192のような一定の方向を向く出入口形成領域が露出領域1122に存在する場合は、反応液出入口1132及び1134並びに熱媒体出入口1146a、1146b、1148a及び1148bが出入口形成領域に集中して設けられる。出入口形成領域は、望ましくは、連続面であるが、溝、線状突起等により2個以上の領域に分断されてもよい。
【0072】
反応液出入口1132及び1134並びに熱媒体出入口1146a、1146b、1148a及び1148bは、接合領域1120とは反対方向を向く上面1192に設けられる。これにより、供給回収機構1006をプリズム1102の反対側に設けることは容易であり、プリズム1102への励起光ELの照射を供給回収機構1006が妨げにくくなる。
【0073】
(反応物流路の開口及び熱媒体流路の開口の望ましい配置)
望ましくは、反応物流路1110の開口1144、熱媒体流路1112aの開口1156a及び熱媒体流路1112bの開口1156bが下面1196に集中して設けられる。これにより、射出成形により流路形成体1106が製造される場合に流路等の加工が必要な金型が減り、検査チップ1002の製造費用が減少する。ただし、流路形成体1106が射出成形以外により製造されてもよい。
【0074】
流路等の加工が必要な金型が減る理由は、反応物流路1110の開口1144並びに熱媒体流路1112a及び1112bの開口1156a及び1156bが一面の金型があたる下面1196に集中して設けられ、一面の金型で反応物流路1110並びに熱媒体流路1112a及び1112bが形成されるからである。より一般的には、下面1196のような一定の方向を向く開口形成領域が流路形成体1106の表面1118に存在する場合は、反応物流路1110の開口1144並びに熱媒体流路1112a及び1112bの開口1156a及び1156bが開口形成領域に集中して設けられる。開口形成領域は、望ましくは、連続面であるが、溝、線状突起等により2個以上の領域に分断されてもよい。
【0075】
(開口の閉塞)
閉塞領域1123a及び1123bには、それぞれ、シール1108a及び1108bが貼られる。開口1156a及び1156bは、それぞれ、シール1108a及び1108bにより閉塞される。これにより、熱媒体が流路形成体1106の内部に保持される。シール1108a及び1108b以外の閉塞体により、それぞれ、開口1156a及び1156bが閉塞されてもよい。例えば、樹脂からなる封止板が閉塞領域1123a及び1123bに溶着されてもよい。金膜1100又はプリズム1102により開口1156a及び1156bが閉塞されてもよい。
【0076】
(反応物流路及び熱媒体流路の延在方向の関係)
望ましくは、熱媒体流路1112a及び1112bの表面露出流路1150a及び1150bは、反応物流路1110の表面露出流路1138に平行に延在する。熱媒体流路1112a及び1112bの内部貫通流路1152a及び1152bは、反応物流路1110の内部貫通流路1140に平行に延在する。熱媒体流路1112a及び1112bの内部貫通流路1154a及び1154bは、反応物流路1110の内部貫通流路1142に平行に延在する。熱媒体流路1112a及び1112bの表面露出流路1150a及び1150bの流路長は、反応物流路1110の表面露出流路1138と同じである。熱媒体流路1112a及び1112bの内部貫通流路1152a及び1152bの流路長は、反応物流路1110の内部貫通流路1140と同じである。熱媒体流路1112a及び1112bの内部貫通流路1154a及び1154bの流路長は、反応物流路1110の内部貫通流路1142と同じである。これにより、熱媒体流路1112a及び1112bが反応物流路1110に平行に延在し、反応物流路1110から熱媒体流路1112a及び1112bの各々までの距離が均一になる。このことは、試料液又は蛍光標識液の全体を均一に加熱し、試料液又は蛍光標識液を効率的に加熱することに寄与する。ただし、熱媒体流路1112a及び1112bの両方又は片方が反応物流路1110と非平行に延在してもよい。
【0077】
(反応物流路及び熱媒体流路の体積の関係)
望ましくは、熱媒体流路1112a及び1112bの体積の合計は、反応物流路1110の体積より大きい。これにより、検査チップ1002の加熱に寄与する熱媒体が増加し、試料液又は蛍光標識液が効率的に加熱される。
【0078】
(流路形成体の結合物化)
流路形成体1106は、1個の構造物からなる。ただし、流路形成体1106が2個以上の構造物の結合物であってもよい。例えば、流路形成体1106が、表面露出流路1138、1150a及び1150bが形成されたシールと、内部貫通流路1140、1142、1152a、1152b、1154a及び1154bが形成されたブロックと、の結合物であってもよい。
【0079】
(供給回収機構)
図4の模式図は、検査チップ及びその周辺の斜視図である。
【0080】
図1及び図4に示すように、試料液又は蛍光標識液が反応物流路1110へ供給される場合は、反応液供給機構1024により反応液出入口1132へ試料液又は蛍光標識液が供給され、反応液回収機構1026により反応液出入口1134から試料液又は蛍光標識液が回収される。反応液供給機構1024及び反応液回収機構1026が一体化されてもよい。試料液又は蛍光標識液が循環されてもよい。反応液回収機構1026が省略され、計測装置1000の外部に試料液又は蛍光標識液が廃棄されてもよい。反応液供給機構1024、反応液回収機構1026、反応液供給配管1030及び反応液回収配管1032が省略され、マイクロピペット等を用いて手作業により反応液出入口1132へ試料液又は蛍光標識液が供給されてもよい。
【0081】
反応液供給機構1024と反応液出入口1132とは反応液供給配管1030により接続される。反応液供給配管1030と反応液供給機構1024との継ぎ目は、Oリング1200でシールされ、反応液供給配管1030と反応液出入口1132との継ぎ目は、Oリング1202でシールされる。
【0082】
反応液回収機構1026と反応液出入口1134とは、反応液回収配管1032により接続される。反応液回収配管1032と反応液回収機構1026との継ぎ目は、Oリング1204でシールされ、反応液回収配管1032と反応液出入口1134との継ぎ目は、Oリング1206でシールされる。
【0083】
熱媒体が熱媒体流路1112a及び1112bへ供給される場合は、熱媒体循環機構1028により熱媒体出入口1146a及び1046bへ熱媒体が供給され、熱媒体循環機構1028により熱媒体出入口1148a及び048bから熱媒体が回収され、熱媒体が循環させられる。熱媒体循環機構1028が熱媒体供給機構及び熱媒体回収機構へ分離されてもよく、熱媒体が循環させられなくてもよい。回収された熱媒体が計測装置1000の外部に廃棄されてもよい。熱媒体流路1112a及び1112bへ供給される熱媒体の温度は、望ましくは、同じであるが、異なってもよい。
【0084】
熱媒体循環機構1028と熱媒体出入口1046a及び1046bとは、それぞれ、熱媒体供給配管1034a及び1034bにより接続される。熱媒体供給配管1034a及び1034bと熱媒体循環機構1028との継ぎ目は、それぞれ、Oリング1208a及び1208bでシールされる。熱媒体供給配管1034a及び1034bと熱媒体出入口1046a及び1046bとの継ぎ目は、それぞれ、Oリング1210a及び1210bでシールされる。
【0085】
熱媒体循環機構1028と熱媒体出入口1048a及び1048bとは、それぞれ、熱媒体回収配管1036a及び1036bにより接続される。熱媒体回収配管1036a及び1036bと熱媒体循環機構1028との継ぎ目は、それぞれ、Oリング1212a及び1212bでシールされる。熱媒体回収配管1036a及び1036bと熱媒体出入口1048a及び1048bとの継ぎ目は、それぞれ、Oリング1214a及び1214bでシールされる。
【0086】
Oリング1200、1202、1204、1206、1208a、1208b、1210a、1210b、1212a、1212b、1214a及び1214bの全部又は一部がゴムパッキン等の他の種類の弾性体シール部材に置き換えられてもよい。
【0087】
(熱媒体の加熱)
図1に示すように、熱媒体循環機構1028には、加熱機構1038が内蔵される。検査チップ1002へ供給される熱媒体は加熱機構1038により加熱される。加熱機構1038は、例えば、電熱線を備える。
【0088】
典型的には、試料液又は蛍光標識液の反応性を向上するために試料液又は蛍光標識液が加熱される。しかし、計測装置1000が設置される環境の温度が高い場合、試料液又は蛍光標識液が熱に弱い場合等には、試料液又は蛍光標識液を冷却することが望まれる。その場合は、熱媒体循環機構1028に冷却機構が内蔵され、検査チップ1002へ供給される熱媒体が冷却機構により冷却される。冷却機構は、例えば、ヒートポンプ、ペルチエ素子等を備える。試料液及び蛍光標識液の一方が加熱され他方が冷却されることも許される。試料液及び蛍光標識液の一方が加熱又は冷却され他方が加熱も冷却もされないことも許される。試料液又は蛍光標識液が加熱された後に冷却されることも許される。試料液又は蛍光標識液が冷却された後に加熱されることも許される。
【0089】
より一般的には、熱媒体循環機構1028には温度調整機構が内蔵され、検査チップ1002へ供給される熱媒体が加熱又は冷却され、試料液、蛍光標識液等の反応物の温度が調整される。
【0090】
熱媒体は、典型的には、水等の液体である。ただし、熱媒体が、空気、二酸化炭素ガス、窒素ガス等の気体であってもよい。
【0091】
熱媒体に加えて、試料液又は蛍光標識液の温度が調整されもよい。
【0092】
(流路への試料液及び蛍光標識液の注入)
図5の模式図は、試料液が反応物流路へ注入された状態を示す。図6の模式図は、蛍光標識液が反応物流路へ注入された状態を示す。
【0093】
図5に示すように、試料液1300が反応物流路1110へ注入された場合は、試料液1300に含まれる抗原1302と抗体固層膜1104に含まれる抗体1304とが抗原抗体反応により結合し、抗原1302が抗体固層膜1104に捕捉される。また、抗原1302が抗体固層膜1104に捕捉された状態において蛍光標識液1306が反応物流路1110へ注入された場合は、図6に示すように、抗体固層膜1104に捕捉された抗原1302と蛍光標識液1306に含まれる蛍光標識抗体1308とが抗原抗体反応により結合し、抗体固層膜1104に捕捉された抗原1302が蛍光標識抗体1308に蛍光標識される。
【0094】
(試料液及び蛍光標識液)
試料液1300は、典型的には、血液等の人間からの採取物であるが、人間以外の生物からの採取物であってもよく、非生物からの採取物であってもよい。希釈、血球分離、試薬の混合等の前処理が採取物に対して行われてもよい。
【0095】
試料液1300及び蛍光標識液1306に代えて、それぞれ、気体又は流動性を有する固体からなる試料及び蛍光標識抗体含有物が反応物流路1110へ注入されてもよい。
【0096】
(抗体固層膜)
抗体固層膜1104は、非流動体からなる。したがって、試料液1300又は蛍光標識液1306が抗体固層膜1104に接触しても、抗体固層膜1104は移動しない。
【0097】
抗体1304は、均一に分布する。被計測物に応じて被計測物を捕捉する捕捉体は変更される。
【0098】
抗体固層膜1104は、例えば、ラバー製のアプリケーターによりパターニングされる。抗体固層膜1104の直径は、典型的には2mmであり、抗体固層膜1104の層厚は、典型的には100nm以下である。
【0099】
(レーザダイオード)
図1に示すように、レーザダイオード1010は、励起光ELを放射する。望ましくは、レーザダイオード1010から放射される励起光ELは、平行光線であり、直線偏光であり、単色光である。
【0100】
レーザダイオード1010が他の種類の光源に置き換えられてもよい。例えば、レーザダイオード1010が発光ダイオード、水銀灯、レーザダイオード以外のレーザ等に置き換えられてもよい。光源から放射される光が平行光線でない場合は、望ましくは、レンズ、ミラー、スリット等により光が平行光線へ変換される。光源から放射される光が直線偏光でない場合は、望ましくは、偏光子等により光が直線偏光に変換される。光源から放射される光が単色光でない場合は、望ましくは、回折格子等により光が単色光に変換される。
【0101】
(直線偏光板)
直線偏光板1012は、励起光ELの光路上にあり、励起光ELを直線偏光に変換する。励起光ELの偏光方向は、反射領域1128に対して励起光ELがp偏光になるように選択される。これにより、エバネッセント波のもれだしが増加し、表面プラズモン励起蛍光FLが増加し、計測の感度が向上する。
【0102】
レーザダイオード1010から放射された励起光ELはミラー1014により反射される。ミラー1014により反射された光はプリズム1102に照射される。プリズム1102に照射された光は、入射領域1126へ入射し、反射領域1128に反射され、出射領域1130から出射する。反射領域1128への励起光ELの入射角θは、全反射条件を満たす。したがって、励起光ELが反射領域1128へ入射した場合は、励起光ELが反射領域1128に全反射され、図6に示すように、金膜1100の側にエバネッセント波1310がもれだし、エバネッセント波1310が増強され、表面プラズモン励起蛍光FLが放射される。
【0103】
励起光ELの反射領域1128への入射角θを調整するため、図1に示すように、ミラー1014の位置及び姿勢が駆動機構1016により調整される。駆動機構1016は、モータ、圧電アクチュエータ等の駆動力源を備える。駆動機構1016は、ミラー1014を回転させ、ミラー1014の姿勢を調整する。駆動機構1016は、ミラー1014をリニアステージの上で移動させ、ミラー1014の位置を調整する。
【0104】
他の種類の光学系によりレーザダイオード1010から放射された励起光ELがプリズム1102に照射されてもよい。例えば、ミラー1014がプリズム等の他の種類の屈曲光学素子に置き換えられてもよい。ミラー1014以外の光学素子が設けられてもよい。ミラー1014の位置及び姿勢を調整する駆動機構1016に代えて、又は、ミラー1014の位置及び姿勢を調整する駆動機構1016に加えて、ミラー1014以外の光学素子の位置及び姿勢を調整する駆動機構が設けられてもよく、レーザダイオード1010の位置及び姿勢を調整する機構が設けられてもよい。
【0105】
(光電子増倍管)
光電子増倍管1020は、表面プラズモン励起蛍光FLの光路上にあり、表面プラズモン励起蛍光FLの光量を測定する。光電子増倍管1020が他の形式の光量センサに置き換えられてもよい。例えば、光電子増倍管1020が電荷結合素子(CCD)センサに置き換えられてもよい。
【0106】
(フォトダイオード)
フォトダイオード1022は、出射領域1130から出射した励起光EL、すなわち、反射光RLの光路上にあり、反射光RLの光量を測定する。ただし、フォトダイオード1022が他の形式の光量センサに置き換えられてもよい。例えば、フォトダイオード1022がフォトレジスタ又はフォトトランジスタに置き換えられてもよい。
【0107】
(ローパスフィルタ)
ローパスフィルタ1018は、カットオフ波長より長い波長の光を透過し、カットオフ波長より短い波長の光を減衰させる。カットオフ波長は、励起光ELの波長から表面プラズモン励起蛍光FLの波長までの範囲内で選択される。例えば、励起光ELの波長が約640nmであって表面プラズモン励起蛍光FLの波長が670nmである場合は、650nmがカットオフ波長として選択される。ローパスフィルタ1018が表面プラズモン励起蛍光FLの光路に挿入された場合は、散乱光はローパスフィルタ1018により減衰し、散乱光のごく一部が光電子増倍管1020に到達するが、表面プラズモン励起蛍光FLはローパスフィルタ1018を透過し、表面プラズモン励起蛍光FLの大部分が光電子増倍管1020に到達する。これにより、相対的に光量が小さい表面プラズモン励起蛍光FLの光量が測定される場合に相対的に光量が大きい散乱光の影響が抑制され、計測の精度が向上する。
【0108】
(計測装置の動作)
図7のフローチャートは、計測装置の動作を示す。
【0109】
図7に示すように、検査チップ1002及び試薬チップ1400が準備され、検査チップ1002及び試薬チップ1400が計測装置1000に取りつけられる(ステップS101)。
【0110】
図8の模式図は、試薬チップの断面を示す。
【0111】
試薬チップ1400の検体容器1402には、検体1412が収容される。試薬チップ1400の希釈液容器1404、蛍光標識液容器1406、洗浄液容器1408及びバッファ液容器1420には、それぞれ、希釈液1414、蛍光標識液1306、洗浄液1416及びバッファ液1422が予め収容される。試薬チップ1400の希釈容器1410には、試料液1300が収容されることが予定されている。
【0112】
検査チップ1002及び試薬チップ1400が取りつけられた後に、検体1412が希釈され、試料液1300が調製される(ステップS102)。検体1412が希釈される場合は、検体容器1402から希釈容器1410へ検体1412が送液され、希釈液容器1404から希釈容器1410へ希釈液1414が送液される。検体1412が希釈されずに検体1412がそのまま試料液1300になる場合もある。
【0113】
試料液1300が調製された後に、熱媒体流路1112a及び1112bへ熱媒体が供給される(ステップS103)。熱媒体流路1112a及び1112bへ熱媒体が供給される場合は、熱媒体循環機構1028がコントローラ1008により制御される。これにより、検査チップ1002の全体が加熱され、検査チップ1002の温度が目標温度に調整される。熱媒体の量は十分に多く、液体、気体等の流体である熱媒体と熱媒体流路1112a及び1112bの内面との接触は良好であるので、熱媒体から検査チップ1002へ迅速に熱が移動し、検査チップ1002の温度が迅速に調整される。試料液1300が調製される前に又は試料液1300が調製されるのと並行して、熱媒体流路1112a及び1112bへ熱媒体が供給されてもよい。
【0114】
熱媒体流路1112a及び1112bに熱媒体が収容されている状態において、バッファ液1422が反応物流路1110へ注入される(ステップS104)。バッファ液1422が反応物流路1110へ注入される場合は、反応液供給機構1024及び反応液回収機構1026がコントローラ1008により制御される。反応液供給機構1024により、バッファ液容器1420から汲み出されたバッファ液1422が反応物流路1110へ供給される。反応液回収機構1026により、反応物流路1110からバッファ液1422が回収される。
【0115】
反応物流路1110にバッファ液1422が収容されている状態において、入射角θが測定角θmに設定される(ステップS105)。試料液1300が調製される前に又は試料液1300が調製されるのに並行して入射角θが測定角θmに設定されてもよい。入射角θが測定角θmに設定される場合は、駆動機構1016及びフォトダイオード1022がコントローラ1008により制御される。ミラー1014の位置及び姿勢が駆動機構1016により調整され、入射角θが予想される共鳴角θrの近傍において走査される。入射角θの走査と並行して、反射光RLの光量がフォトダイオード1022により測定される。反射光RLの光量の測定値は、コントローラ1008へ転送される。反射光RLの光量が極小になる入射角θである共鳴角θrが特定され、共鳴角θrから測定角θmが決定される。共鳴角θrと電場増強度が極大になる入射角θとはわずかに異なるので、望ましくは、微小角が共鳴角θrに可算又は減算され測定角θmが決定される。
【0116】
入射角θが測定角θmに設定され、熱媒体流路1112a及び1112bに熱媒体が収容されている状態において、試料液1300及び蛍光標識液1306が反応物流路1110へ順次に注入される(ステップS106)。試料液1300及び蛍光標識液1306が反応物流路1110に順次に注入される場合は、反応液供給機構1024及び反応液回収機構1026がコントローラ1008により制御される。反応液供給機構1024により、希釈容器1410から汲み出された試料液1300が反応物流路1110へ供給され、蛍光標識液容器1406から汲み出された蛍光標識液1306が反応物流路1110へ供給される。反応液回収機構1026により、反応物流路1110から試料液1300及び蛍光標識液1306が回収される。これにより、試料液1300及び蛍光標識液1306が抗体固層膜1104に順次に供給され、蛍光標識された抗原1302が抗体固層膜1104に捕捉された状態になる。試料液1300及び蛍光標識液1306は加熱され、試料液1300及び蛍光標識液1306の温度は抗原抗体反応に適した温度に調整される。試料液1300及び蛍光標識液1306以外の試薬が反応物として供給されてもよく、抗原抗体反応以外の生化学反応が行われてもよい。
【0117】
試料液1300及び蛍光標識液1306が反応物流路1110に注入された後に、表面プラズモン励起蛍光FLの光量が測定される(ステップS107)。表面プラズモン励起蛍光FLの光量が測定される場合は、光電子増倍管1020がコントローラ1008により制御される。表面プラズモン励起蛍光FLの光量は光電子増倍管1020により測定される。表面プラズモン励起蛍光FLの光量の測定値は、コントローラ1008へ転送される。
【0118】
測定機構1006がSPFS法による測定に代えて表面プラズモン共鳴(SPR)法による測定を行ってもよい。測定機構1006がSPR法による測定を行う場合は、表面プラズモン励起蛍光FLの光量に代えて共鳴角θrの変化が測定される。
【0119】
{第2実施形態}
(検査チップの概略)
第2実施形態は、第1実施形態の検査チップに代えて採用される検査チップに関する。
【0120】
図9の模式図は、第2実施形態の検査チップの斜視図である。図10の模式図は、第2実施形態の検査チップの断面を示す。
【0121】
図9及び図10に示すように、第2実施形態の検査チップ2002は、金膜2100、プリズム2102、抗体固層膜2104、流路形成体2106並びにシール2108a及び2108bを備える。第2実施形態の金膜2100、プリズム2102、抗体固層膜2104並びにシール2108a及び2108bは、それぞれ、第1実施形態の金膜1100、プリズム1102、抗体固層膜1104並びにシール1108a及び1108bと同じものである。第2実施形態の流路形成体2106に形成される反応物流路2110は、第1実施形態の流路形成体1106に形成される反応物流路1110と同じものである。
【0122】
(第1実施形態と第2実施形態との相違)
第1実施形態と第2実施形態との相違は、熱媒体流路1112aが熱媒体流路2112a〜2112dへ置き換えられ、熱媒体流路1112bが熱媒体流路2112e〜2112hへ置き換えられることにある。
【0123】
(温度の異なる熱媒体の収容)
熱媒体流路2112a〜2112hは、分離される。したがって、熱媒体流路2112a〜2112dに収容される熱媒体は、混合しない。また、熱媒体流路2112e〜2112hに収容される熱媒体は、混合しない。このことは、熱媒体流路2112a〜2112dに温度が異なる熱媒体を収容し、熱媒体流路2112e〜2112hに温度が異なる熱媒体を収容することを可能にする。熱媒体流路の数が増減されてもよいが、反応物流路2110からの距離が異なり分離された2個以上の熱媒体流路が設けられる。
【0124】
反応物流路2110から熱媒体流路2112a〜2112dの各々までの距離は異なり、反応物流路2110から熱媒体流路2112e〜2112hの各々までの距離は異なる。熱媒体流路2112a〜2112dへは、異なる温度の熱媒体が供給される。また、熱媒体流路2112e〜2112hへは、異なる温度の熱媒体が供給される。
【0125】
試料液1300又は蛍光標識液1306が加熱される場合は、望ましくは、反応物流路2110へ相対的に近い熱媒体流路へ相対的に低温の熱媒体が供給され、反応物流路2110から相対的に遠い熱媒体流路へ相対的に高温の熱媒体が収容される。すなわち、反応物流路2110から遠ざかるほど、熱媒体流路へ供給される熱媒体の温度が高くなる。
【0126】
例えば、反応物流路2110へ1番目に近い熱媒体流路2112a及び2112eには4番目に高温の熱媒体が供給され、反応物流路2110へ2番目に近い熱媒体流路2112b及び2112fには3番目に高温の熱媒体が供給され、反応物流路2110へ3番目に近い熱媒体流路2112c及び2112gには2番目に高温の熱媒体が供給され、反応物流路2110へ4番目に近い熱媒体流路2112d及び2112hには1番目に高温の熱媒体が供給される。
【0127】
これにより、温度が細かく調整され、試料液1300又は蛍光標識液1306が適切に加熱される。このことは、熱媒体流路2112a〜2112hの全部に高温の熱媒体が供給される場合は、温度の上昇が速くなるが温度のオーバーシュートが発生し、試料液1300又は蛍光標識液1306が過剰な加熱により失活する場合があることから理解される。また、このことは、熱媒体流路2112a〜2112hの全部に低温の熱媒体が供給される場合は、温度の上昇が遅くなり、計測にかかる時間が長くなることからも理解される。ただし、熱媒体流路2112a〜2112hの全部に同じ温度の熱媒体が供給されてもよい。
【0128】
逆に、試料液1300又は蛍光標識液1306が冷却される場合は、望ましくは、反応物流路2110へ相対的に近い熱媒体流路へ相対的に高温の熱媒体が供給され、反応物流路2110から相対的に遠い熱媒体流路へ相対的に低温の熱媒体が収容される。すなわち、反応物流路2110から遠ざかるほど、熱媒体流路へ供給される熱媒体の温度が低くなる。
【0129】
第1実施形態の検査チップ1002に代えて第2実施形態の検査チップ2002が採用される場合は、熱媒体循環機構1028は、望ましくは、温度が異なる熱媒体を供給する。
【0130】
(反応物出入口及び熱媒体出入口の配置)
反応物流路2110は、反応物出入口2132から流路形成体2106の内部を経由して反応物出入口2134まで延在し、反応物を収容する反応物収容空間を提供する。反応物流路2110は、開口2144を有する。
【0131】
熱媒体流路2112a〜2112hは、それぞれ、熱媒体出入口2146a〜2146hから流路形成体2106の内部を経由して熱媒体出入口2148a〜2148hまで延在し、熱媒体を収容する熱媒体収容空間を提供する。熱媒体流路2112a〜2112hは、それぞれ、開口2156a〜2156hを有する。熱媒体は、熱媒体出入口2146a〜2146hへ供給され、熱媒体出入口2148a〜2148hから回収される。
【0132】
反応物出入口2132及び2134並びに熱媒体出入口2146a〜2146h及び2148a〜2148hは、流路形成体2106の表面2118の露出領域2122に設けられ、望ましくは、一定の方向を向く上面2192に集中して設けられる。これにより、反応液を供給する機構及び熱媒体を供給する機構が容易に共通化される。また、上面2192は、接合領域2120とは反対方向を向くので、供給回収機構1006をプリズム2102の反対側に設けることは容易であり、プリズム2102への励起光ELの照射を供給回収機構1006が妨げにくくなる。
【0133】
反応物流路2110の開口2144並びに熱媒体流路2112a及び2112eの開口2156a及び2156eは、接合領域2120に設けられる。熱媒体流路2112b〜2112d及び2112f〜2112hの開口2156b〜2156d及び2156f〜2156hは、それぞれ、閉塞領域2123a及び2123bに設けられる。望ましくは、開口2144及び2156a〜2156hは、一定の方向を向く下面2196に集中して設けられる。これにより、射出成形により流路形成体2106が作製される場合に流路等の加工が必要な金型が減り、検査チップ2002の製造費用が減少する。
【0134】
(反応物出入口及び熱媒体出入口の形状)
反応物流路2110の形状と熱媒体流路2112a〜2112hの各々の形状とは同じである。このため、反応物出入口2132及び2134並びに熱媒体出入口2146a〜2146h及び2148a〜2148hの形状は同じである。これにより、反応液を供給する機構及び熱媒体を供給する機構が容易に共通化される。
【0135】
反応物流路2110の形状と熱媒体流路2112a〜2112hの各々の形状とが同じである場合は、反応物流路2110の体積と2112a〜2112hの各々の体積とが同じになるが、熱媒体流路2112a〜2112hの体積の合計は反応物流路2110の体積より大きくなる。これにより、検査チップ2002の加熱に寄与する熱媒体が増加し、試料液及び蛍光標識液が効率的に加熱される。
【0136】
第2実施形態の検査チップ2002によれば、試料液及び蛍光標識液が効率的に加熱又は冷却され、検査チップ2002の製造費用の増加も抑制される。
【0137】
{第3実施形態}
(検査チップの概略)
第3実施形態は、第1実施形態の検査チップに代えて採用される検査チップに関する。
【0138】
図11の模式図は、第3実施形態の検査チップの斜視図である。図12の模式図は、第3実施形態の検査チップの断面を示す。
【0139】
図11及び図12に示すように、第3実施形態の検査チップ3002は、金膜3100、プリズム3102、抗体固層膜3104、流路形成体3106並びにシール3108a及び3108bを備える。第3実施形態の金膜3100、プリズム3102、抗体固層膜3104並びにシール3108a及び3108bは、それぞれ、第1実施形態の金膜1100、プリズム1102、抗体固層膜1104及びシール1108a及び1108bと同じものである。第3実施形態の流路形成体3106に形成される反応物流路3110は、第1実施形態の流路形成体1106に形成される反応物流路1110と同じものである。
【0140】
(第1実施形態と第3実施形態との相違)
第1実施形態と第3実施形態との相違は、熱媒体流路1112aが熱媒体溜まり(ウェル)3112aへ置き換えられ、熱媒体流路1112bが熱媒体溜まり3112bへ置き換えられることにある。
【0141】
(反応物出入口及び熱媒体出入口の配置)
反応物流路3110は、反応物出入口3132から流路形成体3106の内部を経由して反応物出入口3134まで延在し、反応物を収容する反応物収容空間を提供する。反応物流路3110は、開口3144を有する。
【0142】
熱媒体溜まり3112a及び3112bは、それぞれ、1個の熱媒体出入口3146a及び3146bを有し、熱媒体を収容する熱媒体収容空間を提供する。熱媒体溜まり3112a及び3112bは、それぞれ、開口3156a及び3156bを有する。熱媒体は、熱媒体出入口3146a及び3146bへ供給され、熱媒体出入口3146a及び3146bから回収される。
【0143】
反応物出入口3132及び3134並びに熱媒体出入口3146a及び3146bは、流路形成体3106の表面3118の露出領域3122に設けられ、望ましくは、一定の方向を向く上面3192に集中して設けられる。これにより、反応液を供給する機構及び熱媒体を供給する機構が容易に共通化される。また、上面3192は、接合領域3120とは反対方向を向くので、供給回収機構1006をプリズム3102の反対側に設けることは容易であり、プリズム3102への励起光ELの照射を供給回収機構1006が妨げにくくなる。
【0144】
反応物流路3110の開口3144は、接合領域3120に設けられる。熱媒体溜まり3112a及び3112bの開口3156a及び3156bは、それぞれ、閉塞領域3023a及び3023bに設けられる。熱媒体溜まり3112a及び3112bの開口3156a及び3156bは、それぞれ、シール3108a及び3108bに閉塞される。望ましくは、反応物流路3110の開口3144並びに熱媒体溜まり3112a及び3112bの開口3156a及び3156bは、一定の方向を向く下面3196に集中して設けられる。これにより、射出成形により流路形成体3106が作製される場合に流路等の加工が必要な金型が減り、検査チップ3002の製造費用が減少する。
【0145】
熱媒体溜まり3112a及び3112bの体積の合計は、反応物流路3110の体積より大きい。これにより、検査チップ3002の加熱に寄与する熱媒体が増加し、試料液又は蛍光標識液が効率的に加熱される。
【0146】
第3実施形態の検査チップ3002によれば、試料液及び蛍光標識液が効率的に加熱又は冷却され、検査チップ3002の製造費用の増加も抑制される。
【0147】
{第4実施形態}
第4実施形態は、第1実施形態の検査チップに代えて採用される検査チップに関する。
【0148】
図13の模式図は、第4実施形態の検査チップの斜視図である。
【0149】
図13に示すように、第4実施形態の検査チップ4002は、金膜4100、プリズム4102、抗体固層膜4104及び流路形成体4106を備える。第4実施形態の金膜4100、プリズム4102及び抗体固層膜4104は、それぞれ、第1実施形態の金膜1100、プリズム1102及び抗体固層膜1104と同じものである。第4実施形態の流路形成体4106に形成される反応物流路4110は、第1実施形態の流路形成体1106に形成される反応物流路1110と同じものである。
【0150】
(第1実施形態と第4実施形態との相違)
第1実施形態と第4実施形態との相違は、熱媒体流路1112a及び1112bが熱媒体溜まり4112へ置き換えられることにある。第4実施形態の熱媒体溜まり4112は、第3実施形態の熱媒体溜まり3112a及び3112bと異なり、反応物流路4110の周りを一周する。これにより、反応物流路4110に収容された試料液又は蛍光標識液が効率よく加熱される。
【0151】
(反応物出入口及び熱媒体出入口の配置)
反応物流路4110は、反応物出入口4132から流路形成体4106の内部を経由して反応物出入口4134まで延在し、反応物を収容する反応物収容空間を提供する。
【0152】
熱媒体溜まり4112は、1個の熱媒体出入口4146を有し、熱媒体を収容する熱媒体収容空間を提供する。熱媒体溜まり4112は、熱媒体出入口4146以外の開口を有しない。熱媒体は、熱媒体出入口4146へ供給され、熱媒体出入口4146から回収される。
【0153】
反応物出入口4132及び4134並びに熱媒体出入口4146は、流路形成体4106の表面4118の露出領域4122に設けられ、望ましくは、一定の方向を向く上面4192に集中して設けられる。これにより、反応液を供給する機構及び熱媒体を供給する機構が容易に共通化される。上面4132は、接合領域とは反対方向を向くので、供給回収機構1006をプリズム4102の反対側に設けることは容易であり、プリズム4102への励起光ELの照射を供給回収機構1006が妨げにくくなる。
【0154】
熱媒体溜まり4112の体積は、反応物流路4110の体積より大きい。これにより、検査チップ4002の加熱に寄与する熱媒体が増加し、試料液又は蛍光標識液が効率的に加熱される。
【0155】
第4実施形態の検査チップ4002によれば、試料液及び蛍光標識液が効率的に加熱又は冷却され、検査チップ4002の製造費用の増加も抑制される。
【0156】
{第5実施形態}
第5実施形態は、第1実施形態の検査チップに代えて採用される検査チップに関する。
【0157】
図14の模式図は、第5実施形態の検査チップの斜視図である。図15の模式図は、第5実施形態の検査チップの断面を示す。
【0158】
図14及び図15に示すように、第5実施形態の検査チップ5002は、金膜5100、プリズム5102、抗体固層膜5104及び流路形成体5106を備える。第5実施形態の検査チップ5002の金膜5100、プリズム5102及び抗体固層膜5104は、それぞれ、第1実施形態の検査チップ1002の金膜1100、プリズム1102及び抗体固層膜1104と同じものである。第5実施形態の流路形成体5106に形成される反応物流路5110は、第1実施形態の流路形成体1106に形成される反応物流路1110と同じものである。
【0159】
(第1実施形態と第5実施形態との相違)
第1実施形態と第5実施形態との相違は、熱媒体流路1112aが熱媒体流路5112aへ置き換えられ、熱媒体流路1112bが熱媒体流路5112bへ置き換えられることにある。
【0160】
(反応物出入口及び熱媒体出入口の配置)
反応物流路5110は、反応物出入口5132から流路形成体5106の内部を経由して反応物出入口5134まで延在し、反応物を収容する反応物収容空間を提供する。反応物流路5110は、開口5144を有する。
【0161】
熱媒体流路5112a及び5112bは、それぞれ、熱媒体出入口5146a及び5146bから流路形成体5106の内部を経由して熱媒体出入口5148a及び5148bまで延在し、熱媒体を収容する熱媒体収容空間を提供する。熱媒体流路5112a及び5112bは、熱媒体出入口5146a、5146b、5148a及び5148b以外の開口を有さない。熱媒体は、熱媒体出入口5146a及び5146bへ供給され、熱媒体出入口5148a及び5148bから回収される。
【0162】
反応物出入口5132及び5134並びに熱媒体出入口5146a及び5146bは、流路形成体5106の表面5118の露出領域5122に設けられ、望ましくは、一定の方向を向く上面5192に集中して設けられる。これにより、反応液を供給する機構及び熱媒体を供給する機構が容易に共通化される。また、上面5192は接合領域5120とは反対の方向を向くので、供給回収機構1006をプリズム5102の反対側に設けることは容易であり、プリズム5102への励起光ELの照射を供給回収機構1006が妨げにくくなる。
【0163】
開口5144は、接合領域5120に設けられる。熱媒体出入口5148a及び5148bは、露出領域5122に設けられる。望ましくは、開口5144及び熱媒体出入口5148a及び5148bは、一定の方向を向く下面5196に集中して設けられる。これにより、射出成形により流路形成体5106が作製される場合に流路等の加工が必要な金型が減り、検査チップ5002の製造費用が減少する。
【0164】
熱媒体流路5112a及び5112bの体積の合計は、反応物流路5110の体積より大きい。これにより、検査チップ5002の加熱に寄与する熱媒体が増加し、試料液及び蛍光標識液が効率的に加熱又は冷却される。
【0165】
第5実施形態の検査チップ5002によれば、試料液及び蛍光標識液が効率的に加熱又は冷却され、検査チップ5002の製造費用の増加も抑制される。
【0166】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において例示であり、この発明は上記の説明に限定されない。例示されない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定されうる。
【符号の説明】
【0167】
1002,2002,3002,4002,5002 検査チップ
1110,2110,3110,4110,5110 反応物流路
1112a,1112b,2112a〜2112h,5112a,5112b 熱媒体流路
3146a,3146b,4146 熱媒体溜まり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面プラズモン励起蛍光分光法又は表面プラズモン共鳴法による計測に用いられる検査チップであって、
第1の表面を有し、前記第1の表面が接合領域及び露出領域を有し、反応物収容空間及び熱媒体収容空間が形成され、前記反応物収容空間が前記接合領域に開口を有し前記露出領域に反応物出入口を有し、前記熱媒体収容空間が前記露出領域に熱媒体出入口を有する構造物と、
第2の表面を有し、前記第2の表面が入射領域、反射領域及び出射領域を有し、前記入射領域へ入射した励起光が前記反射領域に全反射され前記出射領域から出射するように前記入射領域、前記反射領域及び前記出射領域が配置される誘電体媒体と、
第1の主面及び第2の主面を有し、前記第1の主面が前記接合領域に接合され、前記第2の主面が前記反射領域に密着する導電体膜と、
を備える検査チップ。
【請求項2】
請求項1の検査チップにおいて、
前記熱媒体出入口が第1の熱媒体出入口であり、
前記熱媒体収容空間が第2の熱媒体出入口を前記露出領域に有し、
前記熱媒体収容空間が前記第1の熱媒体出入口から前記構造物の内部を経由し前記第2の熱媒体出入口まで延在する流路である
検査チップ。
【請求項3】
請求項2の検査チップにおいて、
前記露出領域が一定の方向を向く出入口形成領域を有し、
前記反応物出入口、前記第1の熱媒体出入口及び前記第2の熱媒体出入口が前記出入口形成領域に設けられる
検査チップ。
【請求項4】
請求項3の検査チップにおいて、
前記出入口形成領域と前記接合領域とが反対方向を向く
検査チップ。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれかの検査チップにおいて、
前記開口が第1の開口であり、
前記熱媒体収容空間が第2の開口を有し、
前記第1の表面が一定の方向を向く開口形成領域を有し、
前記第1の開口及び前記第2の開口が前記開口形成領域に設けられる
検査チップ。
【請求項6】
請求項2の検査チップにおいて、
前記露出領域が第1の一定の方向を向く出入口形成領域を有し、
前記第1の表面が第2の一定の方向を向く開口形成領域を有し、
前記反応物出入口及び前記第1の熱媒体出入口が前記出入口形成領域に設けられ、
前記開口及び前記第2の熱媒体出入口が前記開口形成領域に設けられる
検査チップ。
【請求項7】
請求項1の検査チップにおいて、
前記熱媒体収容空間が1個の前記熱媒体出入口を有する溜まりである
検査チップ。
【請求項8】
請求項7の検査チップにおいて、
前記露出領域が一定の方向を向く出入口形成領域を有し、
前記反応物出入口及び前記熱媒体出入口が前記出入口形成領域に設けられる
検査チップ。
【請求項9】
請求項8の検査チップにおいて、
前記出入口形成領域と前記接合領域とが反対方向を向く
検査チップ。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれかの検査チップにおいて、
前記開口が第1の開口であり、
前記熱媒体収容空間が第2の開口を有し、
前記第1の表面が一定の方向を向く開口形成領域を有し、
前記第1の開口及び前記第2の開口が前記開口形成領域に設けられる
検査チップ。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれかの検査チップにおいて、
前記反応物出入口の形状と前記熱媒体出入口の形状が同じである
検査チップ。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれかの検査チップにおいて、
前記反応物収容空間からの距離が異なり分離された2個以上の前記熱媒体収容空間が形成される
検査チップ。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれかの検査チップにおいて、
前記熱媒体収容空間の体積の合計が前記反応物収容空間の体積よりも大きい
検査チップ。
【請求項14】
表面プラズモン励起蛍光分光法又は表面プラズモン共鳴法による計測を行う計測装置であって、
第1の表面を有し、前記第1の表面が接合領域及び露出領域を有し、反応物収容空間及び熱媒体収容空間が形成され、前記反応物収容空間が前記接合領域に開口を有し前記露出領域に反応物出入口を有し、前記熱媒体収容空間が前記露出領域に熱媒体出入口を有する構造物と、
第2の表面を有し、前記第2の表面が入射領域、反射領域及び出射領域を有し、前記入射領域へ入射した励起光が前記反射領域に全反射され前記出射領域から出射するように前記入射領域、前記反射領域及び前記出射領域が配置される誘電体媒体と、
第1の主面及び第2の主面を有し、前記第1の主面が前記接合領域に接合され、前記第2の主面が前記反射領域に密着する導電体膜と、
熱媒体の温度を調整し、前記熱媒体収容空間へ温度が調整された熱媒体を供給する熱媒体供給機構と、
前記入射領域へ励起光を入射させ、表面プラズモン励起蛍光分光法又は表面プラズモン共鳴法による測定を行う測定機構と、
を備える計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−225778(P2012−225778A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93841(P2011−93841)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】