説明

検査デバイスおよびそれを用いた検査装置

【課題】蛋白質をはじめとする各種の化学物質を、簡便、確実、迅速に検出することを可能にする。
【解決手段】多検体の反応を同時行う検査デバイスにおいて、全体が所定の波長範囲の光を透過可能な透明材料により形成されており、所定の形状を備えた保持部と、上記保持部の一方の端部から所定の間隔を空けて櫛状に複数突出形成されたフィンガー部とを有し、上記フィンガー部に物質を塗布し、上記フィンガー部に塗布した上記物質と検体とを接触させて反応させることにより検査作業の作業性を向上し、また、検査デバイスに光を透過させることにより溶液などの光測定の光学系を簡素化して検査作業を容易にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査デバイスおよびそれを用いた検査装置に関し、さらに詳細には、蛋白質をはじめとする各種の化学物質の検出に用いて好適な検査デバイスおよびそれを用いた検査装置に関し、特に、抗体抗原反応を用いた酵素標識法や蛍光体標識を光により検出する検出法に用いて有用な検査デバイスおよびそれを用いた検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蛋白質やその他の化学物質を検出する手法として、抗体抗原反応と酵素標識法や発色試薬を組み合わせた光による検出法が、ELISA法(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay:酵素免疫測定法)として広く利用されている。
【0003】
このELISA法は、現在においては既に標準的な技術として確立されているものであり、一般にELISA法の実施にあたっては、多種の化学反応を独立に行うため、ウェルと称される複数の小容器をアレイ状に並べた樹脂製の容器が用いられている。
【0004】
即ち、ELISA法の一般的な実施方法とは、特定物質と特異的に反応する抗体をウェルの底面に固定し、そのウェルに検体、標識体、発色剤などの各種溶液をピペットによって滴下、洗浄、排水を繰り返し、数段の化学反応を順次行い、検体中に含まれる特定の物質量に相関のある発色を得て、その発色具合について光吸収率を測定する機材(プレートリーダー)によって定量的に測定することで、検体中に含まれる特定の物質量を測定するというものである。
【0005】
しかしながら、上記したELISA法は、溶液滴下や洗浄のプロセスが煩雑なため、溶液滴下作業に相当な時間かかるとともに、検体数が多い場合や検出抗体が複数ある場合には、人為的なミスを起こす危険があるという問題点があった。
【0006】
こうしたミスを防ぎ、作業効率を高めるために自動化することが提案されているが、自動化された装置には溶液をピペッティングする機構を設ける必要があり、自動化にコストがかかるという新たな問題点を招来することが指摘されており、実際のところ、そのような装置は極めて高価格で販売されているものであった。
【0007】
一方、酵素標識法においては、検体の濃度が検出範囲より濃い場合に、短い時間で酵素反応が飽和してしまい、濃度差の検出範囲が実質的に狭いという問題点もあった。
【0008】
上記したような種々の問題点を解決するために、多くの検出方法がこれまでにも提案されてきているが、標準的なELISA法の知的資源との整合性がないことが隘路となって、普及に至っていないものも多いというのが実情であった。
【0009】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)(b)は、本発明の実施の形態の一例による検査デバイスの構成説明図であり、図1(a)は、本発明の実施の形態の一例による検査デバイスの斜視構成説明図であり、また、図1(b)は、図1のA矢視構成説明図である。
【図2】図2は、光源から本発明による検査デバイスへ光を入射した状態を示す説明図である。
【図3】図3は、本発明による検査デバイスの最も基本的な操作方法を示す概念説明図である。
【図4】図4は、本発明による検査デバイスを用いた検査装置の基本概念を示す説明図である。
【図5】図5は、本発明による検査デバイスを用いた光による検出法の説明図である。
【図6】図6は、本発明による検査デバイスの一部拡大構成説明図である。
【図7】図7は、本発明による検査デバイスを用いた光による検出法の一部拡大説明図である。
【図8】図8(a)(b)は、本発明による検査デバイスを用いた光による検出法の説明図である。
【図9】図9は、本発明による検査デバイスを用いた検査装置の実施の形態の一例による斜視構成説明図である。
【図10】図10は、図9に示す本発明による検査デバイスを用いた検査装置による検査方法の一例を示すものであり、図9のD矢視による概略構成説明図である。
【図11】図11は、図10に示す検査方法による検査工程の検査手順を示す概略構成説明図である。
【図12】図12は、本願発明者によるモデル実験の結果を示すグラフである。
【図13】図13は、図9に示す本発明による検査デバイスを用いた検査装置による検査方法の一例を示すものであり、図9のD矢視による概略構成説明図である。
【図14】図14は、本発明による検査デバイスの変形例を示す一部拡大説明図である。
【図15】図15(a)(b)(c)(d)は、本発明による検査デバイスにおける物質塗布部の変形例を示す説明図である。
【図16】図16は、本発明による検査デバイスを用いた光による検出法の変形例の説明図である。
【図17】図17(a)(b)は、本発明による検査デバイスにおけるフィンガー部の変形例の説明図である。
【図18】図18は、本発明による検査デバイスの変形例の構成説明図である。
【図19】図19(a)(b)は、本発明による検査デバイスを複数用いた使用例を示す説明図であり、図19(a)は、本発明による検査デバイスをY軸方向に沿って直列の並べた使用例を示す説明図であり、また、図19(b)は、本発明による検査デバイスをX軸方向の前後方向に並列に並べた使用例を示す説明図である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蛋白質をはじめとする各種の化学物質を、簡便、確実、迅速に検出することのできる検査デバイスおよびそれを用いた検査装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明による検査デバイスは、自動化しやすい構造により全体を構成し、また、低コスト化を図るともに、検出濃度範囲が広い反応実時間光計測法を適応できるようにして、上記した種々の問題点を解決しようとするものである。
【0013】
こうした本発明による検査デバイスは、大量生産に適しており、安価である上に従来の標準法であるELISA法を継承できるので、知的資源が無駄にならず、普及性に富んでいるのも利点である。
【0014】
そして、本発明による検査装置は、こうした本発明による検査デバイスを用いた検査工程の自動化を図るものである。
【0015】
即ち、本発明による検査デバイスは、多検体の反応を同時行う検査デバイスにおいて、全体が所定の波長範囲の光を透過可能な透明材料により形成されており、所定の形状を備えた保持部と、上記保持部の一方の端部から所定の間隔を空けて櫛状に複数突出形成されたフィンガー部とを有し、上記フィンガー部に物質を塗布し、上記フィンガー部に塗布した上記物質と検体とを接触させて反応させるようにしたものである。
【0016】
従って、上記した本発明による検査デバイスによれば、上記複数のフィンガー部のそれぞれに物質を塗布し、上記複数のフィンガー部に塗布した上記物質と検体とをそれぞれ接触させて反応させることにより検査作業の作業性を向上することができ、また、検査デバイスに光を透過させることにより溶液などの光測定の光学系が簡素化されて検査作業を容易にすることができる。
【0017】
また、本発明による検査デバイスは、上記した本発明による検査デバイスにおいて、上記フィンガー部は、先端部にレンズ面を形成され、上記保持部へ入射された光を上記フィンガー部へ伝播させて、上記フィンガー部の上記先端部から外部へ出射するようにしたものである。
【0018】
また、本発明による検査デバイスは、上記した本発明による検査デバイスにおいて、上記保持部は、外部から光を入射される領域にマイクロレンズ面を形成したものである。
【0019】
また、本発明による検査デバイスは、上記した本発明による検査デバイスにおいて、上記保持部は、上記フィンガー部の間に位置する領域が切除されたものである。
【0020】
また、本発明による検査デバイスは、多検体の反応を同時行う検査デバイスにおいて、所定の波長範囲の光を透過可能な透明材料により形成され、一方の端部たる先端部側が所定の間隔を空けて櫛状に配置された複数のフィンガー部と、上記複数のフィンガー部の他方の端部たる基部側を集合して固定する保持部とを有し、上記フィンガー部に物質を塗布し、上記フィンガー部に塗布した上記物質と検体とを接触させて反応させるようにしたものである。
【0021】
従って、上記した本発明による検査デバイスによれば、上記複数のフィンガー部のそれぞれに物質を塗布し、上記複数のフィンガー部に塗布した上記物質と検体とをそれぞれ接触させて反応させることにより検査作業の作業性を向上することができ、また、上記複数のフィンガー部に光を透過させることにより溶液などの光測定の光学系が簡素化されて検査作業を容易にすることができる。
【0022】
また、本発明による検査デバイスは、上記した本発明による検査デバイスにおいて、上記フィンガー部は、上記先端部の端面にレンズ面に形成され、上記フィンガー部の上記基部へ入射された光を伝播させて、上記先端部から外部へ出射するようにしたものである。
【0023】
また、本発明による検査デバイスは、上記した本発明による検査デバイスにおいて、上記フィンガー部の上記先端部は、水の表面張力により上記先端部間において水がブリッジしない間隔を空けて配置されたものである。
【0024】
また、本発明による検査デバイスは、上記した本発明による検査デバイスにおいて、上記フィンガー部は、上記物質を塗布する物質塗布部を備え、上記物質塗布部は、傾斜面を備えた凹み構造よりなるようにしたものである。
【0025】
また、本発明による検査デバイスは、上記した本発明による検査デバイスにおいて、上記フィンガー部は、上記物質を塗布する物質塗布部を備え、上記物質塗布部は、複数の溝部よりなるようにしたものである。
【0026】
また、本発明による検査装置は、多検体の反応を同時行う検査装置において、XYZ直交座標系におけるXY平面上において、複数の小容器をXY方向に整列してアレイ状に並べたウェルに対し、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9のいずれか1項に記載の上記検査デバイスを、Z軸方向に延長する上記フィンガー部がY軸方向に沿って整列するように支持する支持部材と、上記ウェルに対し、上記支持部材をZ軸方向に相対的に移動自在なZ軸方向移動機構とを有するようにしたものである。
【0027】
また、本発明による検査装置は、上記した本発明による検査装置において、さらに、上記ウェルに対し、上記支持部材をX軸方向に相対的に移動自在なX軸方向移動機構とを有するようにしたものである。
【0028】
また、本発明による検査装置は、上記した本発明による検査装置において、さらに、上記ウェルを構成する上記小容器の少なくとも一部の底面側に光検出器を配設したものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、以上説明したように構成されているので、蛋白質をはじめとする各種の化学物質を、簡便、確実、迅速に検出することができるようになるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による検査デバイスおよびそれを用いた検査装置の実施の形態の一例について詳細に説明するものとする。
【0031】
まず、はじめに、本発明による検査デバイスについて、その実施の形態の一例について説明する。
【0032】
ここで、図1(a)(b)には本発明の実施の形態の一例による検査デバイスの構成説明図が示されており、図1(a)は本発明の実施の形態の一例による検査デバイスの斜視構成説明図であり、図1(b)は図1のA矢視構成説明図である。
【0033】
なお、後述する説明においては、便宜上、図1(a)(b)における矢印B方向を上方側とし、図1(a)(b)における矢印C方向を下方側として説明する。
【0034】
この本発明による検査デバイス10は、図1(a)(b)に示されているように、櫛状の構造を備えている。
【0035】
より詳細には、検査デバイス10は、全体が所定の波長範囲の光を透過可能な透明材料により形成されており、略四角形状を備えた薄板状の保持部12と、保持部12の下端部12aから所定の間隔を空けて下方側へ櫛状に複数突出形成された細板状のフィンガー部14とを有して構成されている。
【0036】
そして、フィンガー部14の下端に位置する先端部18は、下方向に進むに連れて先細状に形成されている。
【0037】
なお、保持部12における符号12bは、保持部12の上端面を示している。
【0038】
ここで、保持部12の形状としては、略四角形状を備えた薄板状に限られるものではない。即ち、複数のフィンガー部14を設けることが可能な形状であれば、その形状は特に限定されるものではなく、適宜の形状を選択するようにしてよい。
【0039】
そして、この検査デバイス10のフィンガー部14には、検体と反応させる抗体などの各種の物質が塗布されて固定されることになる。
【0040】
また、フィンガー部14の形状も、後に詳述するように、細板状に限られるものではない。即ち、各種の物質を塗布可能な形状であれば、その形状は特に限定されるものではなく、適宜の形状を選択するようにしてよい。
【0041】
また、本実施の形態による検査デバイス10においては、検査作業者や検査デバイスを作成する者などが各種の物質を塗布する際の作業性を考慮して、フィンガー部14の下端側に、各種の物質を塗布する領域としての物質塗布部16を設けている。
【0042】
なお、フィンガー部14には、各種の物質を塗布する限定的な領域としての物質塗布部16を必ずしも設ける必要はなく、検査作業者がフィンガー部14の任意の箇所に各種の物質を塗布するようにしてもよい。
【0043】
こうした検査デバイス10の材質としては、樹脂やガラスなどの各種の材料を用いることが可能であるが、例えば、プラスチックなどの合成樹脂などを用いて一体成形により製造すると安価に大量生産することが容易である。
【0044】
また、検査デバイス10は、以下の(1)乃至(4)などに示すような条件を備えていることが、より好ましいものである。
【0045】
即ち、
(1)所定の波長範囲の光を透過可能な透明材料として合成樹脂により形成されている こと、
(2)抗体などの生物由来の物質と相性が良い合成樹脂で形成されていること、
(3)表面は可能な限り滑らかに形成され、内部を透過する光は断面で全反射し、簡単 なレンズ面を構成できるような高精度の成型技術で加工されていること、
(4)所定の間隔を空けて櫛状に複数突出形成されたフィンガー部14の間隔、即ち、 フィンガー部14のピッチP(隣合う先端部18同士の先細状最先部18aの頂 部間の距離:図1(b)を参照する。)は、1mm以上10mm以下とし、水の 表面張力により先端部18間において水がブリッジしない程度の大きさであるこ と、
などである。
【0046】
上記した条件を満たす材料としては、具体的には、例えば、蛋白質の吸着がよいポリスチレン(polystyrene)や、化学物質全般の吸着がよいアクリル樹脂(acrylic resin)であるメタクリル樹脂(polymethyl methacrylate:PMMA)あるいはポリカーボネイト樹脂(polycarbonate)、あるいは細胞接着性がよいニトロセルロース樹脂(nitrocellulose resin)、およびこれらの複合材料などが挙げられる。
【0047】
また、条件を満たすアクリル樹脂やポリカーボネイト樹脂の加工方法としては、例えば、精密金型を用いた射出成型などがある。
【0048】
ここで、図1(a)(b)を参照しながら検査デバイス10の寸法について説明すると、検査デバイス10は適宜の大きさに形成してよいものであるが、例えば、横方向の長さL1が80mm程度、縦方向の長さL2が40mm程度、前後方向の厚さTが2mm程度であることが好ましい。
【0049】
なお、上記した寸法は一例に過ぎないものであれ、上記した寸法よりも小型でもよいことは勿論であり、また、上記した寸法よりも大型でもよいことは勿論である。
【0050】
次に、検査デバイス10を構成する各構成部材について詳細に説明すると、まず、保持部12は、検査作業者が検査デバイス10を手指などにより保持したり、各種装置などに検査デバイス10を取り付ける際に用いる部位である。
【0051】
即ち、検査作業者や各種装置は、保持部12に触れることにより検査デバイス10を取り扱うことになる。
【0052】
また、フィンガー部14は、検査デバイス10の寸法を横方向の長さL1が80mm程度、縦方向の長さL2が40mm程度、前後方向の厚さTが2mm程度とした場合には、横方向の幅(太さ)Wを3乃至4mmとすることが好ましい。
【0053】
そして、上記したような寸法であれば、フィンガー部14のピッチPは、例えば、9mmに設定することが好ましい。
【0054】
ここで、上記した検査デバイス10の全体の寸法と同様に、上記したフィンガー部14の横方向の幅WやピッチPは、一例に過ぎないものであり、上記した寸法よりも小型でもよいことは勿論であり、また、上記した寸法よりも大型でもよいことは勿論であって、後述する容器類との関係で任意に設定すればよい。
【0055】
なお、後述する検査デバイス10の使用方法においては、上記した容器類として、ウェルと称されるアレイ状に小容器を複数並べた汎用の容器を用いた場合について説明するが、例えば、一般に96穴ウェルと称される96個の小容器をアレイ状に並べた汎用の容器を用いる場合には、フィンガー部14のピッチPを9mmに設定することが好ましい。
【0056】
さらに、物質塗布部16は、例えば、微小な凹み構造として形成することが好ましいが、必ずしも凹み構造として形成しなくてもよく、構造的には平面でもよい。
【0057】
なお、この実施の形態においては、物質塗布部16は、図1(a)におけるA矢視において、直径3mmの円形を備えた微小な凹み構造として形成されており、先細状最先部18aの頂部から当該円形の中心までの距離L3は5mmに設定されている。
【0058】
しかしながら、物質塗布部16の図1(a)におけるA矢視での形状は、円形に限られるものではなく、後述するように楕円形でもよく、また、三角形や四角形あるいは5角形以上の多角形の形状などの任意の形状に設定することができ、大きさも適宜に設定すればよい。
【0059】
また、フィンガー部14において物質塗布部16を配置する位置も、先細状最先部18aの頂部から適宜の距離だけ離れた位置に設定すればよく、例えば、検査デバイス10の寸法を横方向の長さL1が80mm程度、縦方向の長さL2が40mm程度、前後方向の厚さTが2mm程度とし、フィンガー部14の横方向の幅Wを3乃至4mmとし、ピッチPを9mmとした場合には、例えば、先細状最先部18aの頂部から2乃至10mm程度離れた位置に配置することが好ましい。
【0060】
そして、物質塗布部16には、上記したように、検体と反応させる抗体などの各種の物質が塗布されて固定される。
【0061】
なお、検査デバイス10のフィンガー部14における物質塗布部16への抗体などの物質の塗布方法や、塗布した物質の固定方法ならびに物質塗布部16以外への物質の塗布を防止するためのフィンガー部14のマスク方法などについては、従来より公知の技術を適用可能であるため、その詳細な説明は省略する。
【0062】
また、この物質塗布部16に塗布されて固定される物質としては、上記した検体と反応させる抗体などの他に、例えば、抗体以外の反応蛋白質やアレルゲンなどの抗原、DNA断片、その他の反応基などが挙げられる。
【0063】
そして、フィンガー部14の先端部18は、上記したように先細状最先部18aを備えており、後述するように光学的なレンズとしても機能するように、先細状最先部18aが、例えば、半球面状のレンズ面に形成されている。
【0064】
この先細状最先部18aに形成される半球面形状は、高精度な曲率で加工された光学的なレンズを構成するようにレンズ面として形成する。
【0065】
ここで、本発明による検査デバイス10を用いて検査を実施する際には、レンズとしても機能するようにレンズ面に形成された先細状最先部18aや、フィンガー部14における物質塗布部16の上方部位は、抗体などの物質が塗布されないようにマスクすることが好ましい。
【0066】
なお、フィンガー部14に物質塗布部16を設けず、また、フィンガー部14に物質塗布部16を設けてもこうしたマスクをせずに、フィンガー部14全面に抗体など物質を塗布、固定した場合でも、本発明による検査デバイス10を用いて何ら支障なく検査を実施するは可能である。
【0067】
しかしながら、こうした場合には、利用される抗体や物質の量が溶液の液面レベルで変化する恐れがあるので、検出精度の低下について考慮する必要がある。
【0068】
以上の構成において、上記した検査デバイス10の作用について、以下に詳細に説明することとする。
【0069】
即ち、この検査デバイス10は、櫛状のフィンガー部14を設けることにより、抗体などの物質を塗布した領域(この実施の形態においては、物質塗布部16である。)を各フィンガー部14毎に分離することができるという作用効果を奏するものである。
【0070】
こうした作用効果により、後述するように、検査における作業性を著しく向上することができる。
【0071】
さらに、検査デバイス10によれば、図2に示すように、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や光ファイバーの先端などの光源100から保持部12の上端面12bへ光を照射することにより、フィンガー部14が光の導波路として作用し、先端部18の先細状最先部18aから光ビーム102を外部へ照射することができる。
【0072】
即ち、光源100から照射された光は、保持部12を透過して、フィンガー部14に入射する。
【0073】
このとき、検査デバイス10の表面や断面を十分に滑らかに形成しておくと、低角度で入射した光は表面全反射を繰り返し、保持部12ならびにフィンガー部14を効率よく伝播して、先端部18へ達することになる。
【0074】
そして、先端部18の先細状最先部18aは、高精度な曲率で半球面状に加工された光学的なレンズ面を構成しているので、拡散角度の小さい光ビーム102が下方に向けて照射される。
【0075】
なお、光源100は、例えば、検査デバイス10の保持部12を支持する部材(図示せず。)などに固定するようにして、検査デバイス10と分離可能に構成することが好ましい。
【0076】
その理由は、検査デバイス10は、検査ごとに新品と交換することが望ましいものであり、検査工程における消耗品の一つとして扱うことが望まれる。
【0077】
即ち、望ましい使用状況においては、検査デバイス10は一度の検査ごとに新品と交換されるものであり、検査デバイス10の交換に際しては、保持部12を支持する部材(図示せず。)に検査デバイス10を正確に位置決めできるような機構を備えるようにして、当該支持する部材に固定された光源102と検査デバイス10との相対的な位置関係が、常にほぼ同じになるようにすることが好ましい。
【0078】
次に、検査デバイス10を用いた検査の方法について説明するが、検査デバイス10は、物質塗布部16に塗布されて固定された抗体などの各種反応物質を各種の溶液と反応させる検査に用いる。
【0079】
ここで、図3には、上記した検査における検査デバイス10の最も基本的な操作方法を示す概念説明図が表されている。
【0080】
即ち、多数の小容器202を一列に並べた容器であるウェル200を机上などの平面上に配置し、このウェル202を構成する各小容器202のそれぞれの中に、検査デバイス10の各フィンガー部14のそれぞれが挿入されるように、検査デバイス10を上下方向に移動させる。
【0081】
なお、上記した作業に用いるウェル200としては、従来より公知のウェルを用いることができる。
【0082】
この際に、フィンガー部14の物質塗布部16に塗布されて固定された物質が、小容器202内に充填された溶液に浸かるように、検査デバイス10を上下方向に移動させる。
【0083】
これにより、物質塗布部16に塗布されて固定された抗体などの各種反応物質と小容器202に充填された溶液とを、各フィンガー部14の物質塗布部16に塗布されて固定された物質毎に独立に反応させることができる。
【0084】
なお、検査工程における操作として、検査デバイス10を上下に揺動させることにより、小容器202内に充填された溶液を攪拌し、反応を促進させることが可能となる。
【0085】
なお、ウェル200を構成する各小容器202内には、それぞれ異なる溶液を入れることも可能であるし、また、同一の溶液を入れるようにしてもよい。
【0086】
ここで、各物質塗布部16に塗布されて固定された物質と反応させるべき溶液が同一であるならば、大きな容器に当該溶液を充填し、複数のフィンガー部14の各物質塗布部16に塗布されて固定された物質を当該大きな容器に充填された当該溶液に浸すようにしてもよいが、一般的に、抗体抗原反応などはコンタミネーション(雑混による汚染)に敏感であるので、図3に示すように、一つの小容器202に対して一つのフィンガー部14が対応するように構成することが好ましい。
【0087】
また、小容器202に充填する溶液量と当該小容器202の容量とには、若干の余裕を設けることが好ましい。
【0088】
その理由は、検査デバイス10のフィンガー部14が小容器202内に挿入されると、当該挿入されたフィンガー部14の体積分だけ小容器202の容量が相対的に減少し、小容器202から溶液が溢れ出る恐れがあるからである。
【0089】
また、当該挿入されたフィンガー部14の体積分だけ小容器202の容量が相対的に減少することを積極的に利用して、必要な溶液の量を節約することも可能である。
【0090】
ところで、例えば、抗原抗体反応などの検査反応においては、各物質塗布部16に塗布されて固定された物質を数種の液体と反応させる必要がある。
【0091】
そこで、検査デバイス10を移動させる構造を備えた本発明による検査装置を構築する際には、図4に示すように、検査デバイス10を上下方向たるZ軸方向(図4におけるXYZ直交座標系を示す参考図を参照する。)に移動可能に構築するとともに、検査デバイス10を前後方向であるX軸方向(図4におけるXYZ直交座標系を示す参考図を参照する。)に移動可能に構築することが好ましい。なお、本発明による検査装置の詳細については、図9を参照しながら後述する。
【0092】
また、検査に用いるウェルとしては、多数の小容器302aを一列に並べた第1小容器列302と多数の小容器304aを一列に並べた第2小容器列304と多数の小容器306aを一列に並べた第3小容器列306とにより、多数の小容器をXY方向に整列してアレイ状に並べたウェル300を用いるようにする。なお、このウェル300としては、従来より公知のウェルを用いることができる。
【0093】
そして、ウェル300の第1小容器列302と第2小容器列304と第3小容器列306とには、それぞれ異なる種類の溶液を充填しておく。
【0094】
そして、検査デバイス10のフィンガー部14をウェル300の第1小容器列302と第2小容器列304と第3小容器列306とに順次に浸けることにより、各物質塗布部16に塗布されて固定された物質を第1小容器列302と第2小容器列304と第3小容器列306とにそれぞれ充填された異なる種類の溶液と順次反応させることができる。
【0095】
なお、上記した説明から自明ではあるが、検査デバイス10のフィンガー部14を浸ける容器の数を増加すれば、容器の数に応じてさらに多くの溶液との反応が可能になる。
【0096】
後に詳述するが、一般的には2乃至4種類の溶液との反応を行うことにより、ELISA法において必要な化学反応を実行することができる。
【0097】
ところで、ELISA法においては、検査結果を溶液の発色として検出することができる。
【0098】
即ち、一定時間酵素反応した溶液に希硫酸などの反応停止液を用いて当該酵素反応を停止させ、溶液が充填されたウェル(小容器)の上方から光を照明して、ウェルの底面の下方に備え付けたフォトダイオードなどの光検出器により、当該溶液(発色剤)の吸光度を測定することが一般的に行われている。
【0099】
なお、ELISA法において広く用いられている手法によれば、波長460nm前後の青色光と波長630nm前後の赤色光とを使い、2波長の透過比率から溶液の吸光度を測定することが行われており、ウェルとしては上記各波長に透明な合成樹脂製のものを用いている。
【0100】
上記したように、従来の技術による溶液の発色の検出の手法によれば、反応停止液を用いて反応を停止させる必要があった。
【0101】
しかしながら、本発明による検査デバイス10を用いることにより、反応を停止させることなく溶液の発色を検出することができる。
【0102】
即ち、フィンガー部14の光の導波路としての作用を利用することにより、反応停止を行わずに酵素反応中の発色状況を実時間で計測することができる。
【0103】
このように、反応停止を行わずに酵素反応中の発色状況を実時間で計測する場合には、反応停止剤を使用して反応停止させて発色状況を計測する場合に比べて、検体中の目的物質の濃度が濃い場合に発色を迅速に検出することができるようになる。
【0104】
具体的には、図2に示したように、検査デバイス10の上方よりLEDなどの光源100を照明すると、光は各フィンガー部14を透過して、先端部18の先細状最先部18aから比較的細い光ビーム102として外部へ照明される。
【0105】
従って、図5に示すように、検査デバイス10を溶液400の入ったウェル200の小容器202内部に浸し、小容器202の底部の下方にフォトダイオードなどの光検出器500を配置するように構成すると、光検出器500により溶液400の光吸収に反比例した光電信号が得られることになる。
【0106】
ところで、実際には、小容器202の光吸収や各種のバラツキ(例えば、検査デバイス10の寸法のバラツキや光源100の出力のバラツキなどである。)などが原因となり、発色による溶液400の光吸収のみを正確には測定することが困難な場合がある。
【0107】
しかしながら、そうした場合においても、以下に詳細に説明する手法により、不確定なバラツキを補正することが可能であり、小容器202内の溶液400が酵素反応で発色する過程での光吸収を正確に定量計測することができる。
【0108】
ここで、図6には、検査デバイス10の一部拡大構成説明図が示されており、上方の光源100から保持部12へ入射された光たる入射光104は、入射角度が浅いものだけが表面全反射で下方へ伝播して、フィンガー部14を光導波路として先細状最先部18aへ到達する。
【0109】
ここで、先細状最先部18aは、上記したように所定の曲率を持った、例えば、半球状に形成されているため、レンズ面として作用し、光ビーム102は大きく広がることなく空気中ではやや集光するようにすることができる。
【0110】
そして、合成樹脂材料などにより形成されて上記したようにして光を透過させる検査デバイス10のフィンガー部14の先端部18を、図7に示すように溶液400中に浸すと、検査デバイス10を構成する合成樹脂材料などと溶液400との屈折率の比率が小さいので、溶液400中の光ビーム102は集光されることなく、ほぼ平行な光線束となって溶液400中を横切り、透明な合成樹脂などにより形成された小容器202の底面を透過して光検出器500へ到達する。
【0111】
ここで、光検出器500の受光面を光ビーム102の径よりも大きく設定すれば、光ビーム102の光線束は散乱などで多少広がったとしても、概ね全量が光検出器500で光電変換されることになる。
【0112】
従って、検査デバイス10によれば、全体の光学的な諸特性に対して敏感ではない光強度の計測を簡単に実現することができる。
【0113】
また、図8(a)(b)に示すように、フィンガー部14における物質塗布部16が溶液400中に浸された状態を維持しながら検査デバイス10をZ軸方向に上下動させると、溶液400中の光伝播距離を任意に選択することができる。
【0114】
即ち、図8(a)は、検査デバイス10を比較的上方に移動し、光の液中距離L4を大きくした状態を示している。
【0115】
一方、図8(b)は、検査デバイス10を比較的下方に移動し、光の液中距離L5を小さくした状態を示している。
【0116】
ここで、溶液400の光吸収がある場合には、光の液中距離と光検出器500に到達する光の量とは、溶液400の光吸収に反比例することが予想される。
【0117】
それに対して、小容器202の光吸収や屈折あるいは小容器202の各表面での反射などは、検査デバイス10の上下動により変化する光の液中距離とは無関係である。
【0118】
従って、図8(a)(b)に示すように、2つの異なる光の液中距離で観測される光検出器500の光検出値の差は、溶液400の光吸収にのみ関連する量となる。
【0119】
このため、検査デバイス10のZ軸方向に沿う上下移動の位置精度さえ正確であれば、溶液面の高低や小容器202の形状などに影響されない光検出値を得ることができるようになる。
【0120】
なお、光検出値の絶対値は、例えば、光吸収のない純水などを小容器202に入れた場合のデータで校正することにより得ることが可能となる。
【0121】
次に、本発明による検査デバイスを用いた検査装置について、その実施の形態の一例について説明する。
【0122】
即ち、図9には、上記した検査デバイス10を用いた検査装置の実施の形態の一例による斜視構成説明図が示されている。
【0123】
この検査装置600は、固定系のテーブル602上に、多数の小容器702aを一列に並べた第1小容器列702と多数の小容器704aを一列に並べた第2小容器列704と多数の小容器706aを一列に並べた第3小容器列706と多数の小容器708aを一列に並べた第4小容器列708とにより構成され、多数の小容器をXY方向(図9におけるXYZ直交座標系を示す参考図を参照する。)に整列してアレイ状に並べたウェル700を配している。
【0124】
なお、第4小容器列708を構成する小容器708aのそれぞれの底面の直下には、テーブル602との間に光検出器500が配設されている。
【0125】
この光検出器500は、図9に示すように、第4小容器列708を構成する各小容器708aにそれぞれ設置することが望ましい。
【0126】
また、ウェル700を構成する各小容器702a、704a、706a、708aは、全て交換可能な構造であることが望ましい。
【0127】
上記した交換以外の目的では、各小容器702a、704a、706a、708aならびに光検出器500はテーブル602に固定的に配置され、移動する必要はない。
【0128】
また、テーブル602には、検査デバイス10と光源100との相対的な位置関係を固定的に保持するとともに、検査デバイス10と光源100とを上下方向たるZ軸方向(図9におけるXYZ直交座標系を示す参考図を参照する。)および前後方向であるX軸方向(図9におけるXYZ直交座標系を示す参考図を参照する。)に一体的に移動する移動機構800が設けられている。
【0129】
より詳細には、この移動機構800は、X軸方向に沿って配置されたレール802と、レール802上を移動可能に配設されたX方向移動部材804と、Y軸方向に沿って延長するとともにX方向移動部材804に対してZ軸方向に移動可能に配設されたZ軸方向移動部材806とを有して構成されている。
【0130】
そして、このZ軸方向移動部材806に対し、保持部12がY軸方向に沿って延長するようにして検査デバイス10と光源100とが取り付けられている。
【0131】
なお、上記したように、検査デバイス10と光源100との相対的な位置は、検査デバイス10の交換によってバラツキが生じないようにする必要があり、交換以外では検査デバイス10と光源100とは相対的に固定されていて、検査デバイス10と光源100とは一体的に移動する。
【0132】
また、X方向移動部材804ならびにZ軸方向移動部材806は、例えば、パルスモーターと送りネジやリニアモータなどでX軸方向ならびにZ軸方向へ駆動されて、任意の位置へ迅速に移動できるように構成されているものとする。
【0133】
なお、こうした移動機構800としては、従来より公知の技術を適用することができるものであるので、その詳細な構成ならびに作用の説明は省略する。
【0134】
上記した構成において、この検査装置600においては、移動機構800による検査デバイス10のX方向への移動により、検査デバイス10を第1小容器列702、第2小容器列704、第3小容器列706ならびに第4小容器の上方に任意に移動することができるとともに、移動機構800による検査デバイス10のZ方向への移動により、検査デバイス10のフィンガー部14を第1小容器列702、第2小容器列704、第3小容器列706ならびに第4小容器を構成する各小容器702a、704a、706a、708a内に充填された各種溶液に浸けることができる。
【0135】
これにより、各小容器702a、704a、706a、708a内に充填された各種溶液と検査デバイス10の各フィンガー部14の各物質塗布部16に固定された物資とを反応させることができる。
【0136】
ここで、省エネルギーの観点ならびに光による不必要な化学反応を防ぐために、光源100は、通常は消灯していることが好ましい。
【0137】
そして、検査デバイス10を第4小容器列708の上方に移動した後に下降して、小容器708aに充填された溶液に各フィンガー部14の各物質塗布部16を浸した状況で光源100を点灯させることで、小容器708aの底面に配置された光検出器500によって、溶液の光吸収を上記した手法によって測定すればよい。
【0138】
なお、上記した検査装置600において、いずれの小容器にどのような反応溶液を充填して構成するかは任意であることは勿論であるが、例えば、図10に示すような構成とすることができる。
【0139】
即ち、図10は、図9のD矢視による概略構成説明図であるが、まず、第1小容器列702の小容器702aは洗浄液用の容器であり、給液管900から新しい洗浄液が供給されるように構成されている。
【0140】
なお、詳細な図示は省略するが、容器702aから溢れ出た廃液は、所定の廃液タンクに速やかに排出できるように廃液流路が構築されているものとする。
【0141】
次に、第2小容器列704の小容器704aには、検査対象である検体を充填するものとする。
【0142】
なお、この検査デバイス10においては、フィンガー部14の本数(この実施の形態においては、8本である。)の数だけの検体を同時に扱うことができるものである。
【0143】
また、第3小容器列706の小容器706aには、検査デバイス10のフィンガー部14に設けられた物質塗布部16に固定された抗体などの物質と検体とが反応したことを標識するための反応液を充填する。
【0144】
さらに、第4小容器列708の小容器708aには、標識と酵素反応などで発色する反応液を充填する。
【0145】
以上において説明したように、各小容器702a、704a、706a、708aのそれぞれに溶液を充填した場合には、例えば、図11に示す手順1乃至手順5の検査手順に従って操作を行えばよい。
【0146】
なお、この検査手順における手順1、手順2、手順3および手順4においては光源100は消灯しており、手順5においてのみ光源100を点灯する。
【0147】
以下、これら手順1乃至手順5の検査手順について、検査すべき物質として物質塗布部16に抗体を固定した場合を例にして詳細に説明する。
【0148】
〔手順1〕
検査デバイス10を小容器704aの上方へ移動し、それから検査デバイス10を下方へ移動して、小容器704aに充填された検体溶液に、検査デバイス10のフィンガー部14における物質塗布部16を浸し、物質塗布部16に固定された検査すべき抗体と検体とを反応させる。
【0149】
このとき、検体に抗体と結びつく抗原が含まれていれば、検査デバイス10の物質塗布部16に固定された抗体に結合し、検査デバイス10と一緒に移動するようになる。反応時間は、数分乃至20分程度である。
【0150】
また、反応を促進するため、移動機構800のZ軸方向移動部材806によって、検査デバイス10を上下に揺動させるようにしてもよい。
【0151】
〔手順2〕
検査デバイス10を小容器702aの上方へ移動し、それから検査デバイス10を下方へ移動して、小容器702aに充填された洗浄液にフィンガー部14を浸す。
【0152】
洗浄液は給液管900から小容器702a内に供給され、検査デバイス10表面に残留している不要な検体液を洗浄する。
【0153】
ここで、検査デバイス10の物質塗布部16に結合した抗体や抗原は簡単には解離しないので、洗浄によっても検査デバイス10に結合したまま残留している。洗浄時間は、数分程度である。
【0154】
また、洗浄を促進するため、移動機構800のZ軸方向移動部材806によって、検査デバイス10を上下に揺動させるようにしてもよい。
【0155】
〔手順3〕
検査デバイス10を小容器706aの上方へ移動し、それから検査デバイス10を下方へ移動して、小容器706aに充填された標識体溶液にフィンガー部14を浸す。
【0156】
なお、この反応には、一般的に2つの方法が用いられる。即ち、1つはサンドイッチ法と称される方法であり、検査対象の抗原に結合する標識体を伴った別種の抗体を結合させるという方法であって、一般に検出感度が高く低濃度の抗原検出に適している。
【0157】
また、もう1つの方法は競合法と称される方法であり、検査デバイスに塗布された抗体の未反応な部分に標識体を伴った検査対象の抗原を結合させるという方法であって、一般に検出感度は低いが、高い濃度の抗原検出に適している。
【0158】
上記した2つの方法のうちでどちらの方法を採用するかは検査の目的に応じて決定されるが、両者の手順や操作に違いはなく、フィンガー部14を標識体溶液に浸し、物質塗布部16の部位と標識体とを反応させる。
【0159】
なお、標識体には、一般に後述する発色反応を促す酵素が含まれる。反応時間は、数分乃至20分程度である。
【0160】
また、反応を促進するため、移動機構800のZ軸方向移動部材806によって、検査デバイス10を上下に揺動させるようにしてもよい。
【0161】
〔手順4〕
検査デバイス10を小容器702aの上方へ移動し、それから検査デバイス10を下方へ移動して、小容器702aに充填された洗浄液にフィンガー部14を浸す。
【0162】
即ち、上記した手順2と同様に、結合しない標識体を洗い流す処理を行う。洗浄時間は、数分程度である。
【0163】
また、洗浄を促進するため、移動機構800のZ軸方向移動部材806によって、検査デバイス10を上下に揺動させるようにしてもよい。
【0164】
〔手順5〕
検査デバイス10を小容器708aの上方に移動し、それから検査デバイス10を下方へ移動して、小容器708aに充填された発色液にフィンガー部14を浸す。
【0165】
フィンガー部14を発色液に浸すことにより、手順3で検査デバイス10の物質塗布部16の部位に結合させた標識体に含まれる酵素の働きによって、酵素の発色反応が起きることになる。なお、酵素の数は、手順3の処理でフィンガー部14を浸す標識体溶液により決定されているので、その量に応じて、酵素反応速度は異なり、結果として発色速度が異なる。光源100を必要に応じて点灯させて、上記した光吸収を測定する方法によって、この反応過程を実時間測定する。
【0166】
上記した手順1乃至手順5の検査手順に従って、検査デバイス10を用いた抗体抗原反応の検査が行われるものである。
【0167】
ここで、図12には、本願発明者によるモデル実験の結果が示されており、これは、2分毎に3種の検体を使って実時間測定の可能性を確認した実験の実験結果を示している。
【0168】
対象とする抗原は卵由来のアルブミンであり、検査デバイス10の代用として、抗アルブミンの抗体を固定した株式会社森永生化学研究所製食物アレルゲン検出キット(製品名:FASPEK 卵測定キット)のウェルの底面を利用し、サンドイッチ法に用いる標識体と発色液とについても同キットのものを用いた。
【0169】
検体として、卵白から抽出したアルブミンを0.1ppm(100ng/ml)含む水溶液、1ppm(1μg/ml)含む水溶液、対照として無抗原の水溶液を用いて比較した。
【0170】
図12に示すように、無検体溶液では発色反応に伴う光吸収は観察されなかったが、0.1ppmの抗原を含む検体液については、光吸収が反応4分後くらいから顕著になり、ほぼ直線的に時間と共に発色反応が進んでいることがわかる。
【0171】
また、1ppmの抗原を含む検体液については、光吸収は反応直後から始まり、直線的に時間と共に発色反応が進み、10分程度で飽和する傾向であることがわかる。
【0172】
なお、さらに薄い濃度を正確に検出するためには、さらに長い発色反応時間が必要であるが、濃度が濃いときには2乃至4分間で十分検出できることを確認することができた。観測光波長は、630nmである。
【0173】
次に、図13を参照しながら、上記した第1小容器列702、第2小容器列704、第3小容器列706および第4小容器列708に加えて、5列目の小容器列を用いた例について説明する。
【0174】
この図13に示す構成例は、5列目の小容器列を構成する小容器710aに充填するサンドイッチ用の抗体と小容器706aに充填する標識用の2次抗体とが別々の例である。 図13に示す構成例においては、詳細な説明は省略するが、図11で示した手順2の後に、小容器710aに充填された抗体に関する反応とその洗浄過程を追加した後に、手順3に進めばよいものであり、これにより反応の実行が可能である。
【0175】
なお、反応に用いる容器数は任意であるが、実用上、一般には4種類の容器、即ち、洗浄用の容器、検体用の容器、標識の容器および発色容器で十分であり、複雑な反応の場合でも7種類程度の容器があれば十分である。
【0176】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(9)に示すように変形することができるものである。
【0177】
(1)上記した実施の形態においては、検査装置600は、検査デバイス10を上下方向および前後方向に移動可能に構成したが、これに限られるものではないことは勿論であり、検査デバイス10を上下方向のみ、あるいは、検査デバイス10を前後方向のみに移動可能に構成してもよい。
【0178】
(2)上記した実施の形態においては、検査装置600は、検査デバイス10を上下方向および前後方向に移動可能に構成したが、これに限られるものではないことは勿論であり、ウェル700を上下方向および前後方向に移動可能に構成するようにしてもよい。
【0179】
即ち、検査装置600は、検査デバイス10とウェル700とを上下方向および前後方向に相対的に移動させればよいものであり、そのためには、検査デバイス10とウェル700といずれか一方を移動させてもよいし、あるいは、両者を移動させてもよい。
【0180】
(3)上記した実施の形態においては、検査デバイス10を照射する光源として、単一の波長の光源100を用いた場合について説明したが、光源の波長は単一に限られるものではなく、多種の波長特性を持つ光源を用いてもよく、その際には、多種の波長特性を持つ光源により適するように検査デバイス10の形状を変形してもよい。
【0181】
図14には、多種の波長特性を持つ光源を用いた場合の検査デバイス10の変形例である検査デバイス10’が示されている。
【0182】
なお、この検査デバイス10’においては、光源としては、赤色発光する第1LED106と青色発光する第2LED108と緑色発光する第3LED110との3種類の波長特性を持つ光源を用いている。
【0183】
そして、検査デバイス10’の保持部12の上端面12bにおける各フィンガー部14の直上の領域に、第1LED106と第2LED108とを配置し、保持部12の上端面12bにおける各フィンガー部14の中間位置に第3LED110を配置している。
【0184】
即ち、第3LED110から出射された光は、隣り合う2つのフィンガー部14で半分ずつの光を共用することになる。
【0185】
これら第1LED106、第2LED108および第3LED110は、例えば、光の照射方向が同一となるようにプリント基板などに実装し、保持部12の上端面12bから光を入射するように配置する。
【0186】
ここで、検査デバイス10’の保持部12の上端面12bの形状は、所定の曲率を備えた半円形状が連なるように形成されており、これによりマイクロレンズ面12cを構成している。
【0187】
このマイクロレンズ面12cは、第1LED106、第2LED108ならびに第3LED110から出射された光を集光するように設計し、第1LED106、第2LED108ならびに第3LED110から出射された光の光線束112が、検査デバイス10’の保持部12における各フィンガー部14の直上の領域周辺に集光するようにすることが好ましい。
【0188】
また、検査デバイス10’の保持部12は、その各フィンガー部14の直上の領域を除く領域、即ち、各フィンガー部14の間に位置する領域が切除されていて、保持部12に中抜き領域12dが形成されている
従って、第1LED106、第2LED108ならびに第3LED110から出射されてマイクロレンズ面12cにより集光された光線束112は、中抜き領域12dの端面で全反射して、フィンガー部14に導入される。
【0189】
なお、当然のことながら、光のうち全反射条件が成り立たない角度で中抜き領域12dの端面に到達した光は、当該端面を透過してしまうが、中抜き領域12dに光を吸収する材料を充填するなどして、迷走光を防ぐようにすればよい。
【0190】
そして、中抜き領域12dの端面で全反射するか、あるいは直接的にフィンガー部14の保持部12との接続領域に到達した光は、狭いフィンガー部14を伝播するので、先端部18の先細状最先部18aから綺麗な光ビーム102となって放出される。
【0191】
ここで、第1LED106と第2LED108と第3LED110とにおいては、それぞれ光伝達経路が異なるので、第1LED106と第2LED108と第3LED110とからそれぞれ出射された光が全く同じ条件で光ビームになることはないが、光の進入角度が浅い光線束だけがフィンガー部14に導入されるので、中抜き領域12dがない場合に比べて、第1LED106、第2LED108ならびに第3LED110による光ビーム形状や放出角度に差異が少ない。
【0192】
(4)上記した実施の形態においては、物質塗布部16を円形状の微小な凹み構造として形成した場合について説明したが、上記においても説明したように、物質塗布部16の形状として任意の形状を適宜に選択すればよいものである。
【0193】
また、本発明における物質塗布部16は、上記においても説明したように、単に物質を塗布する領域を示すに過ぎないものであり、微小な凹み構造などを設けることなく、物質を塗布する領域とその周辺の化学的なマスクであっても、本発明の作用効果を実現することができる。
【0194】
なお、物質塗布部16を構造上設ける場合には、例えば、図15(a)に示すように、図1におけるA矢視において楕円形状を備えるようにしてもよい。
【0195】
また、物質塗布部16に微小な凹み構造として形成する場合には、不本意な接触などで物質塗布部16の部位を損傷する恐れを避けることができるという利点があるが、こうした微小な凹み構造による物質塗布部16は、図15(b)に示すように、図1におけるE矢視においてフィンガー部14の両面に設けるようにしてもよいし、あるいは、図15(c)に示すように、図1におけるE矢視においてフィンガー部14の片面にのみ設けるようにしてもよい。
【0196】
あるいは、図示は省略するが、フィンガー部14の先端部18における所定の箇所の全周にわたって物質塗布部16を設けるようにしてもよい。
【0197】
さらに、図15(d)に示すように、物質塗布部16を深く斜めに凹ませるように形成してもよいことは勿論である。
【0198】
(5)上記した実施の形態においては、フィンガー部14の先端部18における先細状最先部18aから出射された光ビーム102を光検出器500により検出するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0199】
例えば、図15(d)に示すように、物質塗布部16を深く斜めに凹ませて傾斜して形成した場合には、図16に示すような構成を採用してもよい。
【0200】
即ち、図16には、図15(d)に示す傾斜した物質塗布部16を用いた蛍光計測法による光検出の基本構成例が示されている。
【0201】
この例においては、励起光114は、上記した説明と同様に、保持部12の上端面12bから光源100により入射され、フィンガー部14を伝播して先端部18へ至る。
【0202】
但し、光源100としてLEDを用いた場合には、その発光そのままでは励起光のスペクトルとして最適とはいえないので、干渉フィルターなどでスペクトルを調整して、最適化された光を励起光114として用いることが好ましい。
【0203】
一方、フィンガー部14の物質塗布部16には、蛍光標識が結合するような反応がなされるようにする。
【0204】
なお、フィンガー部14の物質塗布部16の表面は、平坦面でもよいが、若干の凸凹を設けるように形成して、抗体などの物質の接着表面積を増やすとともに、励起光114が全反射することを防止することが好ましい。
【0205】
以上のように構成すると、傾斜した物質塗布部16の部位に励起光が漏れ出し、抗体などの物質に結合した蛍光標識物質を励起して蛍光116を発する。
【0206】
この蛍光116は全方向に拡散するので、側面に設けたレンズ118で集光して、励起光114をカットするフィルター120を通して、光検出器122によって検出する。
【0207】
(6)上記した実施の形態においては、フィンガー部14や物質塗布部16の断面形状の詳細な説明は省略したが、これらフィンガー部14や物質塗布部16の断面形状としては、任意の形状を選択することができる。
【0208】
ここで、図17(a)(b)には、こうしたフィンガー部14や物質塗布部16の断面形状の他の例が示されており、それぞれ図1におけるA矢視図とその各断面形状を示す断面図が表されている。
【0209】
即ち、物質塗布部16は単純な平面でなくてもよく、また、フィンガー部14は板材を切って形成したような断面が角型でなくてもよい。
【0210】
即ち、図17(a)に示すように、フィンガー部14の断面形状は角形に形成するが、多数の溝部を形成することにより物質塗布部16を構成してもよい。
【0211】
このように、溝部を複数形成すると、物質塗布部16の表面積を増やすことができ、かつ、不本意な接触などから物質塗布部16を保護することができる。
【0212】
また、図17(b)に示すように、フィンガー部14を円柱部材により断面形状を丸形に形成し、その先端に多数の溝部を形成して物質塗布部16を形成するとともに、先端部18に球面レンズを形成するようにしてもよい。
【0213】
(7)上記した実施の形態においては、検査デバイス10を構成する保持部12とフィンガー部14とを一体成形した例を説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0214】
例えば、図18に示すように、一方の端部である先端部18’’に複数の溝部を形成して物質塗布部16’’を設けた、例えば、直径1mm程度の円柱あるいは角柱などをフィンガー部14’’として複数用意し、この複数のフィンガー部14’’の先端部18’’側が所定の間隔を空けて櫛状に配置されるようにするとともに、複数のフィンガー部14’’の他方の端部である基部側を集合させて、別の材料で作る保持部12””で当該基部側を固定したような構造で検査デバイス12’’を構成してもよい。
【0215】
ここで、保持部12””とフィンガー部14’’とを形成する材料については、少なくともフィンガー部14’’は、全体が所定の波長範囲の光を透過可能な透明材料により形成する。
【0216】
また、先端部18’’の端面は、レンズ面に形成することが好ましく、このように形成すると、フィンガー部14’’の基部へ入射された光を伝播させて先端部18’’から外部へ光ビームとして出射することができる。
【0217】
なお、図18に示す寸法例よりもさらに小さなものも製造可能で使用可能ではあるが、あまりに小さいと検体溶液や反応溶液の粘性が高い場合に液滴が先端部に付着して、フィンガー部間にブリッジしてしまうことがあり、実用上は、図18に示したような寸法例が最小に近いものと考えられる。
【0218】
また、上記した図18に示す変形例のフィンガー部14’’は、例えば、直径1mm程度の円柱あるいは角柱などにより構成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば、複数の光ファイバーを束ねた光ファイバーバンドルにより、フィンガー部14’’を構成するようにしてもよい。
【0219】
即ち、光ファイバーバンドルは光を伝送することができ、フィンガー部14’’における先端部18’’側をレンズ面に形成することなく、フィンガー部14’’の基部へ入射された光を伝播させて先端部18’’から外部へ光ビームとして出射することができる。
【0220】
なお、光ファイバーバンドルによりフィンガー部14’’を構成する場合には、微小な凹み構造や溝部などにより構造的に物質塗布部16’’を設ける必要はなく、フィンガー部14’’を構成する光ファイバーバンドルの所望の領域に物質を塗布するようにすればよい。
【0221】
(8)上記した実施の形態においては、検査デバイス10を1個のみ使用した例を示したが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0222】
例えば、図19(a)に示すように、検査デバイス10をY軸方向に沿って直列の2個並べて使用してもよい。
【0223】
また、図19(b)に示すように、検査デバイス10をX軸方向の前後方向に並列に2個並べて使用してもよい。
【0224】
このように、使用する検査デバイス10の数を増加すると、一度に処理できる検体数を増やすことができるものであり、使用する検査デバイス10の数は3個以上でもよい。
【0225】
勿論、1つの検査デバイス10のフィンガー部14の本数を増加することによっても、一度に処理できる検体数を増やすこともできるが、実用性を考慮すると、図19(a)(b)に示すように、複数の検査デバイス10を同時処理する方が簡単である。
【0226】
また、複数の検査デバイス10を独立に移動する機構や交換する機構、ウェルを自動的に交換する機構などを備えるようにして、さらに高機能な検査装置を構築するようにしてもよいことも勿論である。
【0227】
(9)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(8)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0228】
本発明は、食品の成分検査、医学的な諸検査、生化学研究に関わる諸検査、水質・土壌などの環境検査、農産物の農薬検出など、広く化学分析・成分検出検査に利用することができる。
【符号の説明】
【0229】
10、10’、10’’ 検査デバイス
12、12’’ 保持部
12a 下端部
12b 上端面
12c マイクロレンズ面
12d 中抜き領域
14、14’’ フィンガー部
16、16’’ 物質塗布部
18、18’’ 先端部
18a 先細状最先部
100 光源
102 光ビーム
104 入射光
106 第1LED
108 第2LED
110 第3LED
112 光線束
114 励起光
116 蛍光
118 レンズ
120 フィルター
122 光検出器
200、300、700 ウェル
202、302a、304a、306a、702a、704a、706a、708a、710a 小容器
302、702 第1小容器列
304、704 第2小容器列
306、706 第3小容器列
708 第4小容器列
400 溶液
500 光検出器
600 検査装置
602 テーブル
800 移動機構
802 レール
804 X方向移動部材
806 Z軸方向移動部材
900 給液管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多検体の反応を同時行う検査デバイスにおいて、
全体が所定の波長範囲の光を透過可能な透明材料により形成されており、
所定の形状を備えた保持部と、
前記保持部の一方の端部から所定の間隔を空けて櫛状に複数突出形成されたフィンガー部と
を有し、
前記フィンガー部に物質を塗布し、前記フィンガー部に塗布した前記物質と検体とを接触させて反応させる
ことを特徴とする検査デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の検査デバイスにおいて、
前記フィンガー部は、先端部にレンズ面を形成され、
前記保持部へ入射された光を前記フィンガー部へ伝播させて、前記フィンガー部の前記先端部から外部へ出射する
ことを特徴とする検査デバイス。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の検査デバイスにおいて、
前記保持部は、外部から光を入射される領域にマイクロレンズ面を形成した
ことを特徴とする検査デバイス。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載の検査デバイスにおいて、
前記保持部は、前記フィンガー部の間に位置する領域が切除された
ことを特徴とする検査デバイス。
【請求項5】
多検体の反応を同時行う検査デバイスにおいて、
所定の波長範囲の光を透過可能な透明材料により形成され、一方の端部たる先端部側が所定の間隔を空けて櫛状に配置された複数のフィンガー部と、
前記複数のフィンガー部の他方の端部たる基部側を集合して固定する保持部と
を有し、
前記フィンガー部に物質を塗布し、前記フィンガー部に塗布した前記物質と検体とを接触させて反応させる
ことを特徴とする検査デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の検査デバイスにおいて、
前記フィンガー部は、前記先端部の端面にレンズ面に形成され、
前記フィンガー部の前記基部へ入射された光を伝播させて、前記先端部から外部へ出射する
ことを特徴とする検査デバイス。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6のいずれか1項に記載の検査デバイスにおいて、
前記フィンガー部の前記先端部は、水の表面張力により前記先端部間において水がブリッジしない間隔を空けて配置された
ことを特徴とする検査デバイス。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7のいずれか1項に記載の検査デバイスにおいて、
前記フィンガー部は、前記物質を塗布する物質塗布部を備え、
前記物質塗布部は、傾斜面を備えた凹み構造よりなる
ことを特徴とする検査デバイス。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8のいずれか1項に記載の検査デバイスにおいて、
前記フィンガー部は、前記物質を塗布する物質塗布部を備え、
前記物質塗布部は、複数の溝部よりなる
ことを特徴とする検査デバイス。
【請求項10】
多検体の反応を同時行う検査装置において、
XYZ直交座標系におけるXY平面上において、複数の小容器をXY方向に整列してアレイ状に並べたウェルに対し、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9のいずれか1項に記載の前記検査デバイスを、Z軸方向に延長する前記フィンガー部がY軸方向に沿って整列するように支持する支持部材と、
前記ウェルに対し、前記支持部材をZ軸方向に相対的に移動自在なZ軸方向移動機構と
を有することを特徴とする検査装置。
【請求項11】
請求項10に記載の検査装置において、さらに、
前記ウェルに対し、前記支持部材をX軸方向に相対的に移動自在なX軸方向移動機構と
を有することを特徴とする検査装置。
【請求項12】
請求項10または11のいずれか1項に記載の検査装置において、さらに、
前記ウェルを構成する前記小容器の少なくとも一部の底面側に光検出器を配設した
ことを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図14】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−249512(P2010−249512A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76128(P2009−76128)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 SBIR技術革新事業・特定食物アレルゲンの迅速・簡易定量法の開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(306033715)ブレインビジョン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】