説明

検査前処理装置、検査前処理方法、及び検体処理装置

【課題】高い精度で、かつ、効率良く、検体の状態を検出することができる検査前処理装置及び検査前処理方法及び検体処理装置を提供する。
【解決手段】実施形態の検査前処理方法は、検体の検査処理に先立って検体を撮像して取得した前記検体の画像情報に基づき、画像処理により前記検体の明度を検出し、前記明度に基づいて前記検体の乳び状態を検出し、前記画像情報に基づき、画像処理により前記検体の色相を検出し、前記色相に基づいて前記検体の溶血状態を検出する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査前処理装置、検査前処理方法、及び検体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば生化学分析等の各種血液検査などの処理において、検体あるいは検体容器内の状態によって、検査結果に影響が出る場合がある。例えば血清が乳び・溶血・黄疸状態、またはフィブリンなどの不純物を含む状態、血餅不良状態などの場合には、その後の検査結果に影響し、あるいは検査を行うことができない。このため、一般的には、作業者の目視により検体の色を確認して検体の状態を検出する方法や、分析装置において試薬と反応した後の検体を検査することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−76185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の検査阻害要因の検出は検査の前に行うことで試薬や検査処理の無駄を防止できるが、より高精度かつ高速での処理が求められる。特に複数種類の阻害要因について順次検出を行う場合には長時間を要し、また異なる阻害要因が互いに影響する場合があるため正確な検出が困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態にかかる検査前処理方法は、検体の検査処理に先立って検体を撮像して取得した前記検体の画像情報に基づき、画像処理により前記検体の明度を検出し、前記明度に基づいて前記検体の乳び状態を検出し、前記画像情報に基づき、画像処理により前記検体の色相を検出し、前記色相に基づいて前記検体の溶血状態を検出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明にかかる検査前処理装置、検査前処理方法、及び検体処理装置によれば、高精度かつ高効率で検体の状態を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態に係る検査前処理装置の構成を示す平面図。
【図2】同検査前処理装置の構成を示す側面図。
【図3】同実施形態にかかる検体容器及び検体を示す説明図。
【図4】同実施形態にかかる検体処理方法の処理手順を示すフローチャート。
【図5】同検査前処理方法における検査阻害要因検出処理の工程を示すフローチャート。
【図6】同検査阻害要因検出工程の第1撮像処理を示す説明図。
【図7】同検査阻害要因検出工程のバーコード読取処理及び検体サイズ検出工程を示す説明図。
【図8】同検査阻害要因検出工程の第2撮像処理及び第3撮像処理を示す説明図。
【図9】同検査阻害要因検出工程バックライト画像を示す写真。
【図10】同検査阻害要因検出工程の位置検出処理を示す説明図。
【図11】同検査阻害要因検出工程の位置検出処理を示す説明図。
【図12】同検査阻害要因検出工程の領域特定処理を示す説明図。
【図13】同検査阻害要因検出工程のフィブリン含有検体を示す説明図。
【図14】同検査阻害要因検出工程の血餅不良検体を示す説明図。
【図15】他の実施形態にかかる分析装置の構成を示す説明図。
【図16】同分析装置の処理工程を示す工程説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態にかかる検査前処理装置10及び検査前処理方法について、図1乃至図14を参照して説明する。なお、各図において適宜構成を拡大、縮小、省略して示している。各図中の矢印X,Y,Zはそれぞれ直交する3方向を示している。
【0009】
図1、図2は、本実施形態にかかる検査前処理装置10を概略的に示す説明図である。検査前処理装置10は、検体の生化学分析等の各種検査処理に先立って予め検体の状態を検出する装置であり、例えば分析装置の前処理装置の1つとして用いられる。本実施形態においては検査阻害要因として、乳び、溶血、黄疸状態に加え、フィブリンや血餅不良などの検査阻害物含有状態を検出する。
【0010】
検査前処理装置10は、装置本体11と、所定の搬送経路20aに沿って試験管25(検体容器)を搬送する搬送部12と、検体を撮像して画像情報を取得する画像取得部14と、画像取得部14にて取得した各種画像に基づいて検査阻害要因検出処理を行う検査阻害要因検出部15と、を備えて構成される。
【0011】
図1及び図2に示すように、搬送部12は、装置本体11の上部に設けられたコンベヤ式のホルダ搬送機構であり、図中X軸方向に延びる搬送経路20aに沿って一定幅に設置された一対のガイドレール21と、ガイドレール21間において搬送経路20aにわたって配置された搬送ベルト22と、搬送ベルト22の裏側で回転駆動して搬送ベルト22を送る搬送ローラ等の駆動部と、を備えて構成されている。
【0012】
試験管25を保持するホルダ24は一対のガイドレール21間に係合して立位状態に支持され、搬送ベルト22の移動に伴って搬送される。また、搬送装置12はロボットアームなどの移載機構19を有している。
【0013】
検体25aを収容する検体容器としての試験管25は、ホルダ24に保持され立位状態で搬送経路20aに沿って搬送される。搬送経路20aに沿って設けられる各処理装置によって検体容器25または検体25aに各種の処理が行われる。試験管25は移載機構19により立位状態のまま搬送路20aからチャンバ45内の撮像ポイントP1に移載され、チャンバ45内において撮像処理(撮影処理)が行われる。撮像後の試験管45は再び移載機構19により搬送路20a上に戻され、下流側へ送られる。
【0014】
図3に示すように、試験管25は透明なガラス等から構成され、内部に検体を収容する円柱状の空間を有する円筒形状を成している。試験管25の外周側面には例えばラベル27が接着貼付され、ラベル27には検体25aの識別情報等の各種情報を示す識別情報表示部としてのバーコード27aが表示されている。
【0015】
試験管25の内部の検体25aは、血餅層25b、分離剤(シリコン)層25c、及び血清層25dの3層が分離して下から順番に配置されている。血餅層25bと分離剤層25cとの間に第1の境界面25e、分離剤層25cと血清層25dとの間に第2の境界面25f、血清層25d上に検体液面25gが形成される。
【0016】
ラベル27は、バックライト撮像の際にバックライトを照射した状態で光を透過させることができる所定幅を有する前後一対の露呈部27b(図3では一方のみ示す)が設けられている。
【0017】
なお、バックライト撮像で光を透過して画像情報取得が可能となるための条件として、撮像部41とバックライト43との間で光が透過できるように、試験管25の側周において前後一対の所定箇所を所望の幅(例えば2mm以上)で血清層25dの領域が露呈している必要がある。ここでは予め他の前処理によりラベル27の一対の所定領域が剥離されて露呈部27bを形成しているものを対象とするが、後述するように別装置において予め必要な部分のラベル27を剥離するラベル剥離処理を行ってもよい。
【0018】
図1及び図2に示すように、画像取得部14は、試験管25の側部を撮像して検体の画像情報を取得する撮像部41(画像検出手段)と、正面側から光を照射するフロントライト42と、背面側から光を照射するバックライト43と、バックライト43との間に設けられたスリット板44と、これらを収容するチャンバ45と、を備えている。
【0019】
フロントライト42は撮像部41の上下に配置された一対の白色LEDで構成され、試験管25の側部撮像正面方向(Y方向)から試験管25を照射する。バックライト43は例えば白色LEDで構成され、試験管25の側部撮像背面方向から光を照射する。スリット板44は、バックライト照明を透過させる必要な領域にスリット44aを有するとともにそれ以外の領域について光を遮断することにより光透過を規制し、バックライト撮像時の光の拡散を防ぐ。なお撮像ポイントP1においては撮像正面と背面にそれぞれ露呈部27b27bが位置するようにセットされる。
【0020】
撮像部41(画像検出手段)は、例えばCCDカメラなどの画像センサで構成され、撮像ポイントPの側方に設けられている。撮像部41はシャッタスピードが変更可能に構成されシャッタスピードを変化させながら繰り返し撮像処理を行うことで、明度を調整可能になっている。シャッタスピードが速いほどシャッタが開いている時間が短く、光量が少なくなる。一方シャッタスピードが遅いほどシャッタが開いている時間が長く、光量が多くなる。時間撮像部41は、撮影ポイントP1に立位状態に保持された試験管25の側方から検体25aの側面を撮像し、画像情報を取得する。取得した画像情報は、記憶部16に記録され、データ処理部17へ送られる。
【0021】
チャンバ45は例えば搬送路20aの側方に設けられている。チャンバ45内底部の所定位置には撮像ポイントP1が設けられ、ホルダ24が設置されている。チャンバ45の上面には試験管25の出し入れの際に開閉可能なリッドが設けられている。
【0022】
画像情報取得部14は制御部18の制御に応じて動作し、バックライト43により光照射しながら撮像するバックライト撮像と、フロントライト42により光照射しながら撮像するフロントライト撮像とを所定のタイミングで行う。
【0023】
撮像部41は、フロントライト撮像の際には試験管25aの前面に光を照射して正面から撮像を行うことにより透明な試験管25の内部の検体25aの画像情報を取得する。また、撮像部41は、バックライト撮像の際には前後の露呈部27bに光を透過させて正面側方から撮像することにより内部の検体25aの画像情報を取得する。
【0024】
検査阻害要因検出部15は、上記画像取得部14に加え、画像情報を含む各種データを記憶する記憶部16(記憶手段)と、各種データに基づき画像処理を含む演算・判定などのデータ処理を行うデータ処理部17と、各部の動作を制御する制御部18(制御手段)と、を備えて構成されている。
【0025】
以下、本実施形態にかかる検査前処理方法について図4及び図5のフローを参照して説明する。
【0026】
前処理として移載機構19により搬送路20aを流れる試験管25を保持し、チャンバ45内の撮影ポイントP1に設置する。なお、チャンバ45に試験管25を出し入れする所定のタイミングでリッドを開閉させ、撮像時にはリッドを閉じた状態として外部の光の侵入を遮断する。
【0027】
制御部18は、まずAct1として、画像取得部14を制御して第1撮像処理としてフロントライト撮像を行わせる。図6に示すようにフロントライト撮像(第1撮像)時には、フロントライト42により撮像正面側から検体容器25に光を照射し立位状態の検体容器25を正面側から撮像してフロント画像情報を取得する。
【0028】
制御部18は、Act1で取得した画像を第1画像として記憶部16に記憶させる。
【0029】
次に、データ処理部17に識別情報読取処理を行わせる(Act3)。図7に示すようにデータ処理部17はフロントライト撮像によって取得した第1画像情報に基づいて画像処理を行いバーコード27aに表示された識別情報を検出する。
【0030】
さらにデータ処理部17は第1画像情報に基づいて画像処理を行い、検体サイズを検出する。検体サイズとして例えば試験管25の管長L1及び管径D1を検出する(Act4)。
【0031】
次に画像取得部14を制御して領域特定用に第2撮像処理としてバックライト撮像を行わせる(Act5)。このバックライト撮像では、予め設定した境界特定用の設定光量及び設定シャッタスピードで、バックライト43により背面側から光照射し、検体25a及び検体25を透過した光を受光して撮像を行う。なお一度の撮像で境界特定を行うため、検体25aによる光透過を考慮して強めの光量に設定して境界特定用の撮像を行う。バックライト撮像処理によって取得した画像は、例えば図9に示すように、光を透過する露呈部27bのみが明るく、その他の部位が黒くなっている。
【0032】
次に、制御部18は、第2の画像情報に基づいて、画像処理により境界位置検出処理を行う(Act6)。データ処理部17において、図10に示すように、検体液面25gの液面位置と、第1の境界面25eの液面位置とを検出する。さらに図11に示すように、データ処理部17において画像処理(画像解析)により、第2の境界面25fの液面位置とラベル27の露呈部27bの位置及び幅を検出する。
【0033】
次に、制御部18は、Act6で求めた各種情報に基づいて、判定対象領域ARを特定する(Act7)。すなわち、図10に示すように、露呈部27bであって、検体液面25gの液面位置と第2の境界面25fの液面位置とに囲まれた部分が判定対象となる血清部分であるため、この部分を判定対象領域ARとして検出する。
【0034】
次に画像取得部14を制御して阻害要因検出用のバックライト撮像(第3撮像)を行わせる(Act8)。このバックライト撮像では、予め設定した初期光量で、バックライト43により背面側から光照射し、検体25a及び検体25を透過した光を受光して撮像を行う。バックライト撮像処理によって取得した画像は、例えば図9に示すように、光を透過する露呈部27bのみが明るく、その他の部位が黒くなっている。
【0035】
この画像情報を元に画像処理によりHSV方式で検体25aの画像の明度を検出し、検出した明度と予め定めた設定明度とを比較する(Act9)。設定明度未満である場合には(Act9のNo)、シャッタスピードを遅くなるように調節して再度撮像を行う(Act10)。予め設定された明度に到達するまで複数回繰り返し撮像を行う。例えば最初に基準のシャッタスピード(光量)で撮像を行い、取得した画像情報に基づき画像処理により明度をHSV方式で検出する。そして検出した明度が予め定めた設定明度以上であるか否かを判定する。そして撮像部41で取得した画像情報の明度が予め設定された設定明度に至ったら(Act9のYes)、撮像を終了する。
【0036】
さらに、制御部18は、設定明度に至ったシャッタスピードの速度情報を記憶部18に記憶させるとともに(Act11)、この設定明度で撮像して取得した画像におけるAct7で特定した対象領域Aに対応する部位の画像情報を、後述する各種判定処理に用いる第3の画像情報の対象画像として記憶部18に記憶させる(Act12)。
【0037】
次に、第3の画像情報から画像処理により乳び状態・溶血状態・黄疸状態に加え、フィブリン含有や血餅不良などの検査阻害要因を検出する検査阻害要因検出処理を行う(Act13)。
【0038】
検査阻害要因検出処理の処理工程について図5を参照して説明する。まず、データ処理部17では、Act11で記憶したシャッタスピード情報から乳びプレ判定を行う(Act21)。
【0039】
「乳び」とは脂肪が細分化され白濁した状態を呈するもの、脂肪が吸収されて白濁した状態のものである。この乳びによって一部の血液検査項目が正確に測れないことがある。この実施形態では乳びの白濁するという特性を利用し、HSV方式による判定を行う。
【0040】
なお、一般に、HSV方式による色相値は、光量が変化しても変動しにくいという特徴がある。一方、RGB方式によるRGBの色成分は光量が変化すると大きく変動するため、ここでは乳び及び溶血の判定にHSV方式を用いることで溶血状態が高精度に検出できる。
【0041】
上述したように、Act8〜11において、乳びプレ判定の一部としてHSV方式で検出した明度に基づいてシャッタスピードを調整している。バックライト撮像により検体を透過した光が所定の設定明度に至った時点において、シャッタスピードの値は検体25aの光透過性に対応している。このため、乳びプレ判定ではこのシャッタスピードから乳びの度合いを一次判定することとし、シャッタスピードが遅いほど検体の乳び状態が強いと判断し、乳びプレ判定を行う。例えば予め設定された複数の閾値との比較により複数段階のレベルで乳びレベルを判定する。
【0042】
次に、乳びプレ判定の結果と、第3の画像情報から、溶血一次判定を行う(Act22)。
【0043】
「溶血」とは、赤血球の崩壊により、赤血球内のヘモグロビンが細胞外に溶出する現象であり、このとき赤血球内の他の成分も溶出するため検査値等に影響を及ぼす。この実施形態では溶血することで血清が赤く変色する特性を利用して溶血状態の判定を行う。
【0044】
溶血プレ判定としては、データ処理部17にて、一定の明度に調整されたバックライト画像である第3の画像情報を元に、画像処理を行い、HSV方式により判定対象領域ARの色相値(0〜255)を検出する。
【0045】
なお、HSV方式での色相値は色相環のため、色相値が255に戻る可能性があるがこの場合には255を差し引いて0とする。なお、第3の画像情報は明度が一定になるようにシャッタスピードが調整されている。本実施形態ではシャッタスピードの調整により明度を一定として撮像した画像情報を用いて、溶血による色の違いを光量の変化による影響の少ないHSV方式のH(色相)にて判定することで、安定して色成分の抽出が可能となる。
【0046】
また、乳び成分含有の影響で色相が変化し、例えば乳びレベルが高いと検体25aの色が赤みがかるように影響する。このため、溶血判定(二次判定)として、溶血プレ判定の色相の値に基づき乳びプレ判定の結果に基づいて補正処理を行う(Act23)。すなわち、乳びプレ判定結果に基づいて、乳びレベルが高くまたはシャッタスピードが遅い場合には、Act22で検出した色相値をわずかに高くして溶血レベルを低くする補正処理を行う。この補正処理後の色相値に基づく溶血判定の結果を溶血状態の最終判定結果とする。
【0047】
一方、濁りの状態は溶血成分含有によって変化する。このため、本実施形態では乳びプレ判定の結果に、溶血程度に応じた補正を加えて乳び判定(二次判定)を行うこととした。乳び判定として、溶血の度合いによる明度への影響を差し引く補正処理を行う(Act24)。すなわち溶血判定(Act23)の結果に基づいて、溶血含有レベルが高い場合には光を通しにくくなるため、Act8で撮像結果に基づいて決定されたシャッタスピード値よりも速度を速く(シャッタの開時間を短く)、乳びレベルを低くするように、補正処理を行う。なお、Act23、24における補正量は予め乳びと溶血の相互の影響を考慮して設定する。この補正後のシャッタスピードに基づく乳び判定の結果を乳び状態の最終判定結果とする。
【0048】
次に黄疸状態を検出する。「黄疸」は、血液中のビリルビンが増加して、そのビリルビンによって皮膚や粘膜などの組織が黄色く沈着した状態であり、血清の場合にはビリルビンの増加で黄色成分が濃くなる傾向がある。
【0049】
本実施形態では黄疸が強くなる血清の色成分における緑成分が高くなる傾向を利用して判定を行う。なお、黄疸状態では赤成分が強く出るものもあれば緑成分が強く出るものもある。溶血や乳びと色成分が重なるため、色相のみによる判定は困難である。
【0050】
黄疸検体のデータを解析することにより黄疸検体では正常検体と比べて緑成分が高くなり青成分が低くなるということが分かった。これらのことを考慮して、本実施形態では黄疸状態の検出にRGB方式を採用した。
【0051】
なお、本実施形態において第3の画像情報についてはAct8において予め光量を一定に調整しているため、パラメータのばらつきが防止できる。
【0052】
また、乳びの場合には緑成分が高くなる傾向があるため、緑成分のみでの判定では、乳びかつ黄疸の場合には判定値が重なる可能性がある。また青成分のみでの判定では、溶血状態の場合と判定値が重なる可能性がある。これらのことを考慮して本実施形態ではまず、G/B値で黄疸の有無を判定した後に、Gの値によって黄疸の程度を判定することとした。
【0053】
まず、制御部18は、データ処理部17において、第3の画像情報に基づき、黄疸一次判定として、黄疸有無の判定処理を行わせる(Act25)。黄疸有無判定では、まず第3の画像情報に基づき、画像処理によりRGB方式で判定対象領域の各色の色成分を抽出し、この抽出したRGBの色成分における緑成分と青成分の比率(G/B値)に基づいて黄疸の有無を判定する。
【0054】
黄疸値が予め定めた閾値以上であった場合には黄疸有りと判定する。一方黄疸値が閾値未満であった場合には黄疸なしと判定する。黄疸値の閾値は、例えばG/B=7.0とした。
【0055】
そして、Act25において黄疸有りと判定した場合には、黄疸2次判定として、黄疸含有の程度を判定する(Act26)。黄疸含有程度判定は、Act25においてRGB方式で抽出した色成分におけるグリーンの絶対値(G値)に基づいて判定する。例えばGの値が高いほど黄疸レベルが高いと判定する。
【0056】
次に判定対象領域Aにフィブリンや血餅不良など正常な血清以外のもの(検査阻害物)を含有しているか否かを判定する(Act27)。
【0057】
図13には、フィブリン含有状態の検体容器の内部断面図<a>と、外側から見た状態<b>とをそれぞれ示す。「フィブリン」とは血液が凝固する際、最終的にできる産物でタンパク繊維(フィブリノーゲン)がのり状に固まったものである。血液検査では遠心分離して赤血球+フィブリンを沈め、上清である血清を得る。しかし凝固が通常より遅延するような状態では遠心分離時にはフィブリン析出が完了していなく、血清を分離した後になっても析出が続く場合がある。この場合、血清中に寒天状の半固体のものができることになり、自動分注の妨げとなる。フィブリンは肉眼で確認できるものや確認できないものもあり、さまざまな形状がある。フィブリンは血清内に浮かぶ半透明のものであり、フィブリンがある場合には判定対象領域の血清に濃淡の差が出る。
【0058】
図14には、血餅不良状態の検体容器の内部断面図<a>と、外側から見た状態<b>をそれぞれ示す。「血餅不良」とは遠心分離後、分離剤の十分な移動が起こらなかったため血清(血清・血漿)層と血餅(血餅・血球)層の中間において分離剤層が形成せず、完全に分離されない状態となる。この場合にはフィブリン析出と同じく自動分注の妨げとなる。
【0059】
これらの検査阻害物含有状態では、血清層における濃淡が均一ではなくなる。このため、Act27では、検査阻害物含有状態判定処理として、第3の画像情報に基づいて、画像解析により判定対象領域ARにおける濃淡の差を検出し、この濃淡の差に基づいて血清層が均一であるか否かを判定する。均一でない場合には検査阻害物含有状態であるとして判定される。
【0060】
さらにデータ処理部17において、Act21〜Act27において判定した各種検査阻害要因の判定結果に基づいて総合最終判定を行う(Act28)。総合最終判定として、例えば乳び判定の結果、溶血判定の結果、黄疸有無及び黄疸程度判定の結果、及び検査阻害物含有判定の結果に基づき、各項目のレベルが一定レベル以上である場合に検査不可とし、一定レベルに達しない場合に検査可能とし、あるいは予め定めた範囲内の場合には検査可能であるが検査結果の補正要等とする。
【0061】
本実施形態にかかる検査前処理装置10によれば以下のような効果が得られる。すなわち、光量の影響を受けにくいHSV方式を採用して乳び状態や溶血状態を判定することとしたため、高精度で判定を行うことができる。
【0062】
また、第2撮像処理としてバックライトのシャッタスピードを変化させて予め明度を調節した第3の画像情報を用い、一定の明度に保つことでその後の画像処理(画像解析)を高精度に処理できる。さらに互いに判定結果に影響しやすい乳び状態と溶血状態について補正処理を行うことにより、より高精度の判定が可能となる。
【0063】
また、HSV方式で乳び状態及び溶血状態を検出し、一定の明度に維持した共通の画像データからRGB方式で黄疸状態を検出することとしたため検出精度を向上できる。また、黄疸状態の判定にRGB方式を用いてG/B値に基づいて黄疸の有無を判定したため、正常検体や乳び・溶血状態の検体との差別化が可能であり、判定値が重なることを防止でき、高精度で検出することが可能となる。
【0064】
さらに、本実施形態では、一定の明度でバックライト撮像した第3の画像情報を、複数種類の判定に共通して用いることとしたため複数種類の検査阻害要因の判定を高速かつ高精度に処理できる。
【0065】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2施形態にかかる検体処理装置としての分析装置1について図15を参照して説明する。図15は、検査前処理装置10を備える分析装置1の概略的に示す平面図である。分析装置は個別に構成された複数の装置をそれぞれの搬送経路が連続するように並列配置して構成される。
【0066】
分析装置1は、所定の搬送経路の上流側から下流側に向かって、搬入装置63と、ラベル剥離装置62と、検査前処理装置10と、仕分装置(仕分手段)64と、搬出装置65と、分取・分注装置(分取・分注手段)66と、分析装置61と、が処理順に配置されて構成されている。各装置に試験管25を搬送するコンベヤ式の搬送部がそれぞれ設けられておりこれら複数の搬送部の搬送経路が連続するように配置されている。
【0067】
搬入装置63は搬送経路に沿ってホルダ24を搬送する搬送部と、ロボットアーム等の移載機構を備え、例えば側部に設けられたラック架設部68の試験管25を搬送経路上に移載する。
【0068】
ラベル剥離装置62は、搬送経路の側部に設けられた削り機構41を備えている。削り機構41にてラベル27を剥離し、露呈部27bを形成する。削り機構41は例え昇降移動可能な前後一対のカッタを有して構成されている。この削り機構41によって、搬送経路を移動する試験管25の側周に貼付されたラベル27を縦に一部削りとり、所定幅を有する前後一対の露呈部27bを形成する。
【0069】
検査前処理装置10は上記第1実施形態と同様に構成されている。この検査前処理装置10において、上記第1実施形態と同様にAct1〜Act28までの処理工程を行い、試験管25の側部から撮像した画像情報に基づいて画像処理により各種検査阻害要因検出処理を行う。
【0070】
仕分装置64は、ホルダ24を搬送する搬送部と、制御部18の制御に応じて検査阻害要因検出結果に基づいてホルダ24の搬送方向を案内する案内手段としてのゲート部71と、を備えている。
【0071】
搬送経路の途中には分岐部が設けられ、搬送経路から分岐して異なる経路を構成する分岐路が設けられている。ゲート部71は、制御部18の制御に応じて検査不可と判定された試験管25を分岐路に振り分けるよう切り替え動作をする。例えば、検査阻害要因があって検査不可と判別された検体25aを収容する試験管25については分岐路へ案内し、正常な試験管25は搬送経路に沿って下流側の分取・分注装置66に送られるように案内される。分岐路の下流側は乳び・溶血状態の検体用に正常な検体とは別工程を行う搬出装置65へ連続している。一方、乳び状態でも溶血状態でもない正常な検体は、搬送経路に沿って下流側の分取・分注装置66に案内される。
【0072】
搬出装置65は、例えば、検査阻害要因があって検査不可と判別された検体25aを収容する試験管25を搬出して分取・分注の対象から外す。
【0073】
分取・分注装置66は、搬送経路20aに沿ってホルダ24を搬送する搬送部と、試験管25の開口に対向するように配置された昇降可能な分取・分注チップを備えている。搬送経路上の所定位置に検体入り試験管25が配置され停止したとき、分取・分注チップによって検体入り試験管25から所定量の血清を分取し、別に送られてきたサンプルカップに分注する。血清が分注されたサンプルカップは、下流側の分析装置61に搬入され、分析処理が行われる。
【0074】
以下、図16を参照して分析装置1における処理手順を説明する。図16は分析装置1の処理の流れを示す。まず、上流側に設けられた搬入装置63により、試験管ラック68aに収納されている検体入り試験管25を把持し搬送経路上に移載する搬入処理が行われる(Act31)。搬送経路上にはホルダ24が待機しており、試験管25はホルダ24にセットされる。移載された試験管25はホルダ24に保持された状態でラベル剥離装置62に送られる。
【0075】
ラベル剥離装置62は、搬送経路にある試験管25の周面をラベル27で覆われていて撮像時に必要な露呈部27bが形成されていない試験管25に対して、必要な箇所のラベル27を一部剥離して露呈部27bを形成する(Act32)。例えば搬送経路の側部に設けられた一対の削り機構41により、試験管25の側周に貼付されたラベル27を縦に一部削りとり、所定幅を有する一対の露呈部27bを形成する。ラベル剥離後の試験管25は、搬送経路に沿って下流側の検査前処理装置10に送られる。
【0076】
検査前処理装置10において、上記第1実施形態と同様にAct1〜28の処理が行われる。検査阻害要因検出処理が終了した試験管25はホルダ24に立位状態で保持されたまま下流側の仕分け装置64に送られる。
【0077】
次に、検査前処理装置10の下流側に設けられた仕分装置64において、制御部18の制御により、Act28における総合判定結果に応じてゲート部71が切り替えられ、試験管25を振り分ける処理が成される(Act33)。例えば、検査不可と判別された検体25aを収容する試験管25は、ゲート部71が切り替えられることにより、分岐路へ案内され下流側の搬出装置65に案内される。一方、乳び状態でも溶血状態でもない正常な検体は、搬送経路に沿って下流側の分取・分注装置66に案内される。
【0078】
分岐路の下流側の搬出装置65では、検査阻害要因があって検査不可と判別された検体25aを収容する試験管25を搬出して分取・分注の対象から外す(Act34)。
【0079】
分取・分注装置66では、分取・分注チップによって正常な検体入りの試験管25から所定量の血清を分取し別に送られてきたサンプルカップに分注する分取・分注処理が行われる(Act35)。血清が分注されたサンプルカップは、下流側の搬出装置から搬出され、下流側の連結路を通って分析装置61に搬入される。そして、分析装置61において各種反応を検査する分析処理が行われる(Act36)。
【0080】
本実施形態にかかる分析装置1によれば、予め検査前処理として検査阻害要因を検出することにより、分析処理を行う前に検査阻害要因に応じて試薬の希釈倍率や検査条件を変更し、あるいは検査の対象から外すことにより、検査処理の無駄や試薬の無駄を防止することができる。また、複数の検査阻害要因について共通の画像を用いて画像解析を行うことで高速かつ高精度に検出することができる。
【0081】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば上述の実施形態では1つの試験管25毎に検体処理を行う場合について例示したが、複数の試験管25について同時に処理を行ってもよい。
【0082】
上記実施形態では乳び、溶血に加え、黄疸や検査阻害物含有状態を含む複数の検査阻害要因について検出する場合を例示したが、このうちいずれかを省略してもよいし、他の項目を追加してもよい。さらに一定明度に設定した時点での撮像情報を共通して用いることとしたが、他の画像情報を改めて撮像して対象画像情報としてもよい。
【0083】
上記実施形態では予め所定領域においてラベル27が剥離され、一対の露呈部27bが形成された試験管25を対象とした例を示したが、これに限られるものではない。例えば画像取得前に試験管25のラベル27を剥離するラベル剥離装置を搬送路の上流側、あるいは別装置として設けることにより、撮像の前処理として所定の位置に露呈部27bが形成されていない場合に撮像に必要な所定の領域を剥離するようにしてもよい。例えばラベル27が試験管25の全周を覆っている場合には、ラベル剥離装置により必要な部分のラベルを剥離するようにしてもよい。また試験管25の向きを変える機構を設けて光透過可能な条件を成立させる前処理を行う構成としてもよい。
【0084】
また、上記実施形態に例示された各構成要素を削除してもよく、各構成要素の形状、構造、材質等を変更してもよい。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0085】
A…搬送経路、AR…判定対象領域、A1…判定対象領域、1…分析装置(検体処理装置)、10…検査前処理装置、11…装置本体、12…搬送部、14…画像取得部、14…制御部、15…検査阻害要因検出部、16…記憶部、17…データ処理部、18…制御部、20a…搬送経路、20…搬送部、24…ホルダ、25…試験管、25a…検体、25…検体容器、25b…血餅層、25c…分離剤層、25d…血清層、25e…第1の境界面、25f…第2の境界面、25g…検体液面、27…ラベル、27a…バーコード、27b…露呈部、41…撮像部、42…フロントライト、43…バックライト、44…スリット板、61…分析装置、62…ラベル剥離装置、63…搬入装置、64…仕分装置、65…搬出装置、66…分取・分注装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の検査処理に先立って検体を撮像して取得した前記検体の画像情報に基づき、画像処理により前記検体の明度を検出し、前記明度に基づいて前記検体の乳び状態を検出し、
前記画像情報に基づき、画像処理により前記検体の色相を検出し、前記色相に基づいて前記検体の溶血状態を検出する、ことを特徴とする検査前処理方法。
【請求項2】
HSV方式で前記検体の明度及び色相を検出するとともに、
前記色相と前記明度に基づいて前記溶血状態の補正を行い、
前記溶血状態の検出結果に基づいて前記検体の乳び状態の補正を行う、ことを特徴とする請求項1記載の検査前処理方法。
【請求項3】
前記バックライト撮像で取得した画像の明度に基づき、前記バックライト撮像におけるシャッタスピードを調整して、画像の明度が所定値に至るまで前記撮像を繰り返し行い、
前記明度が所定値に至った状態での前記シャッタスピード値に基づいて、前記乳び状態を検出し、
前記所定値に至った状態でのシャッタスピードにて撮像した対象画像情報に基づいて画像処理により前記色相を検出して前記溶血状態を検出することを特徴とする請求項2記載の検査前処理方法。
【請求項4】
前記画像情報から画像処理により前記検体のRGBの色成分情報を検出し、前記色成分情報に基づいて前記検体の黄疸状態を検出することを特徴とする請求項3記載の検査前処理方法。
【請求項5】
前記画像情報から画像処理により対象領域における画像の濃淡情報を検出し、前記濃淡情報に基づいて前記検体の検査阻害物含有状態を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の検査前処理方法。
【請求項6】
検体を収容する検体容器を正面側から光照射した状態で撮像してフロントライト画像情報を取得し、
前記フロントライト画像情報に基づき、画像処理により、前記検体容器に付された識別情報を読み取り、
前記フロントライト画像情報に基づき、画像処理により前記検体容器のサイズ情報を検出し、
前記検体容器を背面側から光照射した状態で撮像してバックライト画像情報を取得し、
前記バックライト画像情報に基づき、前記検体容器内の液層の液面位置を検出し、
前記液面位置に基づいて前記バックライト画像情報における判定対象領域を検出し、
前記検体容器を背面側から光照射した状態で撮像してバックライト画像情報の前記判定対象領域における明度及び色相に基づいて前記検体の乳び状態及び溶血状態を検出することを特徴とする請求項3記載の検査前処理方法。
【請求項7】
検体の検査処理に先立って検体を撮像して取得する画像取得部と、
請求項1乃至6に記載の検査前処理方法を行う検査前検体状態検出部と、を備えたことを特徴とする検査前処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の検査前処理装置と、
搬送経路の前記検査前検体状態検出部よりも下流側に設けられ、前記検体を試薬と反応させて前記検体を分析する分析処理を行う分析部と、を備えたことを特徴とする検体処理装置。
【請求項9】
所定の搬送経路の前記検査前処理装置の前記画像取得部よりも下流側であって前記分析部よりも上流側に設けられ、前記検体容器内の検体を分取してサンプルカップに分注する分取・分注部と、
所定の搬送経路の前記検査前処理装置の前記画像取得部よりも下流側であって前記分取・分注部よりも上流側に設けられ、前記検査前検体状態検出の結果に応じて前記検体容器の仕分け処理を行う仕分手段と、を備えたことを特徴とする請求項8記載の検体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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