説明

検査器具

【課題】成形、組み立てが容易で、操作性の良いまた気密性の高い菌等の検査器具を提供する。
【解決手段】筒状のボディと、ボディ内に係止されるシール部材と、シール部材に取り付けられた棒の先端に検査部分に接触させる採取部を備えるサンプリング部材と、サンプリング部材を内在させボディの一端に係止されシール部材とでボディ内に第3区画室を形成するチューブと、ボディの他端に係止されシール部材とでボディ内に第1区画室を形成するカップと、先端に突起を備えカップ内に係止されカップ内に第2区画室を形成するプランジャーと、からなり、第1区画室に第1液を備え、第2区画室に第2液を備え、サンプリング部材でサンプリングした後、チューブをボディに押し込み、第1液をチューブ内に流下させ、所定時間経過後に、キャップを押し込み突起でカップに穴を形成し、第1、第2液を混合させることを特徴とする検査器具の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌等を検査するための検査器具に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、細菌を検査するための検査器具は、2種類の液体(培養液及び殺菌液)を検査器具の一極に配置し、各液体をシールで分離していた。
【0003】
しかしながら、従来の検査器具ではシールによって分離して保管されている各液体は順次に前記シールを折りながら分離を解除して使用されており、各液体の分離の解除方法が同じ操作であるため使用する液体の順番を間違えることがあった。
【0004】
また、上記のように各液体が検査器具の一極に配置されていることも、使用する液体の順番の間違いを起こす原因となっていた。
【0005】
さらに、一極で保管されている各液体は分離するためのシールを挟んで隣設しているためシールの精度が高いことが要求され、シールの精度が低い場合には保管中に液体が混ざる可能性があった。
【0006】
そして、従来の検査器具では組立の後加工として、シールの超音波溶着を必要とするためコストがかかり、生産性を高めることが難しかった。上述のような従来技術として特許文献1、2などが公開されている。
【0007】
それら問題を解決すべく、本願発明者等は、使用する液体の順番を間違えることなく、各液体の分離がしっかりしているため保管中に液体が混ざる可能性が極めて低く、後加工に超音波溶着を必要としない液保管検査キットを開発している(特許文献3)。
【0008】
特許文献3に記載の発明「液保管検査キット」は、(1)下端に棒状突起を形成したプランジャーと、(2)前記プランジャーを挿入するための第2区画室と空間を設けた中空のボディと、(3)上部にシールを内包する第1区画室を設け下部には(4)サンプリング部材を備えて前記空間内に取り付けられるカップと、(5)上部に内筒と外筒を形成し内部に中空の第3区画室を設け前記外筒を前記ボディの空間内に螺入して連結するチューブとからなることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−42080号公報
【特許文献2】特開2008−128761号公報
【特許文献3】特開2010−91479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3の発明は、保管、流通段階において2液が混合することはないが、製造段階においては、ボディ3内部に薄膜3dを形成し、またシール4のリブ4aでカップ5の孔5dをシールしなければならなく形状が複雑で成形、組み立てが困難であった。
【0011】
他方、ユーザーからは、(1)培養液(第1液)を充填した第1区画室5aとサンプリング部材7の菌採取部7aが位置する第3区画室6aが小さな孔5dによって連通されているため培養液及び殺菌液である第2液の第3区画室6aへの流下がスムーズでないこと、(2)ゆるやかな部品同士の係止のため誤操作で部品が分解されてしまうこと、(3)さらにプランジャーが先に押されてしまう可能性があるなど操作方法について指摘されていた。
【0012】
そこで、本発明は、使用する液体の順番を間違えることなく、各液体の分離がしっかりしているため保管中に液体が混ざる可能性が極めて低く、後加工に超音波溶着を必要としないためコストが下がり生産性が高くなることに加えて、形状を単純化して成形しやすくかつ組み立てを容易にし、一層生産性を高めるとともに、第1、第2液の流下をスムーズにし、誤操作による部品の分解を防止し、より作業性の良いまた気密性の高い検査器具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するために、筒状のボディと、前記ボディ内に係止されるシール部材と、前記シール部材に取り付けられた棒の先端に検査部分に接触させる採取部を備えるサンプリング部材と、前記サンプリング部材を内在させ前記ボディの一端に係止され前記シール部材とで前記ボディ内に第3区画室を形成するチューブと、前記ボディの他端に係止され前記シール部材とで前記ボディ内に第1区画室を形成するカップと、先端に突起を備え前記カップ内に係止され前記カップ内に第2区画室を形成するプランジャーと、からなり、前記第1区画室に第1液を備え、前記第2区画室に第2液を備え、前記サンプリング部材でサンプリングした後、前記チューブを前記ボディに押し込むことにより前記シール部材の係止が解除されスライドし前記第1区画と前記第3区画が連通し、前記第1液を前記チューブ内に流下させ前記採取部に接触させ、所定時間経過後に前記プランジャーを押圧し前記プランジャーの係止を解除して前記カップ内に押し込み前記突起で前記カップに穴を形成し前記第2液を前記チューブ内に流下させて、第1、第2液を混合させることを特徴とする検査器具の構成とした。さらに、前記ボディと前記カップの隙間に係止され、前記プランジャーを覆うキャップを備え、前記キャップを押圧することで前記キャップの係止を解除し前記プランジャーを押圧することを特徴とする前記記載の検査器具の構成とした。
【0014】
また、前記プランジャーの突起で穴を開ける前記カップの前記第1液側の底部の一部を窪ませ、薄膜としたことを特徴とする前記何れかに記載の検査器具の構成とした。また、前記薄膜は、前記カップの底部の一部を窪ませた凹部を金型成形し、その後、円筒でプレスし前記凹部の周囲を一段窪ませて薄膜としたことを特徴とする前記記載の検査器具の構成とした。
【0015】
さらに、前記キャップの端部には、部分的にキャップ内方向に略水平に突出した内突起を形成し、前記カップには、一端に前記内突起の回転を抑止する段差部、他端には回転させないストッパを備える溝を設け、前記キャップを前記段差部方向へ回転させることで前記内突起が段差部を越え、前記キャップの係止が解除されるとともに、さらに、前記カップには、前記キャップの押圧方向にスライドするための溝であるガイドが形成され、反押圧方向の前記カップには前記キャップの脱落防止の係止部が形成されたことを特徴とする前記記載の検査器具の構成とした。また、前記キャップに、前記キャップの係止を解除する回転方向を表示したことを特徴とする前記記載の検査器具の構成とした。
【0016】
加えて、前記第1液が菌培養液であり、前記第2液が殺菌液であることを特徴とする前記何れかに記載の検査器具の構成、前記ボディ、チューブ、カップが透明で、かつ前記培養又は殺菌液が培養液の組成毎に異なる色に着色されたことを特徴とする前記記載の検査器具の構成、前記キャップを、前記培養液の着色と同系色に着色したことを特徴とする前記記載の検査器具の構成とした。そして、複数の異なる培養液を充填した検査器具を1セットとしたことを特徴とする前記記載の菌検査器具セットの構成とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明の検査器具は、上記構成であるから次の効果を発揮する。各液体の分離解除方法が異なるため、液体の分離解除をする際にどちらの液体の分離をしているかを容易に把握することができるため、液体の使用順を間違える可能性が極めて低い。また、上記の構成にも拘わらず誤操作をした場合であっても、液体同士が検査器具内で混ざるだけであり、各液体が検査器具外に出ることがなく、安全に処理することができる。更に、後加工として必要とされていた超音波溶着の必要がなくなったため、コストが下がり生産性を上げることが可能となった。
【0018】
加えて、薄膜をカップの底部に形成したこと、さらに薄膜を凹部を成形した後に円筒でプレスして薄膜を形成したこと、チューブ上部全体を開口させたことで、成形、組み立てが容易で、生産性が高くかつ製造コストを一層低く抑えることができる。そして、チューブ上部全体を開口させたために、第1液、第2液の第3区画室への流下がスムーズで第1区画室での滞留量が極めて少なくなる。検査精度、殺菌による安全性が一層高まる。
【0019】
また、キャップの端部には、部分的にキャップ内方に向け突出した内突起を形成し、カップには、内突起の回転を抑止する段差部を形成し、キャップを回転させることで内突起が段差部を越え、キャップの係止が解除されるとともに、さらに、カップには、キャップの押圧方向にスライドガイドである溝が形成され、反押圧方向のカップにはキャップの脱落防止の係止部が形成されたこと、さらにキャップに解除のための回転方向を表示することにより、誤操作、部品の分解が防止されるとともに、作業性が良い。
【0020】
さらに、培養液の色を培養組成、即ち目的の微生物にあった培養液毎に異なる色を着色することで、簡易に目的の検査器具を選択し、誤検査を防止することができる。さらに、キャップにも同系色の色を着色することで一層誤検査予防になる。また、キャップにキャップの回転方向を表示することで、誤操作を防止し、操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明である検査器具の1例の断面図である。
【図2】本発明である検査器具を構成するボディの説明図である。
【図3】本発明である検査器具を構成するシール部材の説明図である。
【図4】本発明である検査器具を構成するチューブの説明図である。
【図5】本発明である検査器具を構成するカップの説明図である。
【図6】本発明である検査器具を構成するプランジャーの説明図である。
【図7】本発明である検査器具を構成するキャップの説明図である。
【図8】本発明である検査器具の使用方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1に示すように、本発明の一例である検査器具1は、ボディ2と、シール部材3と、サンプリング部材4と、チューブ5と、カップ6と、プランジャー7と、から構成される。
【0024】
より詳しくは、検査器具1は、筒状のボディ2と、ボディ2内に係止されるシール部材3と、シール部材3に取り付けられた棒4bの先端に検査部分に接触させる採取部4aを備えるサンプリング部材4と、サンプリング部材4を内在させボディ2の一端に係止されシール部材3とでボディ2内に第3区画室9を形成するチューブ5と、ボディ2の他端に係止されシール部材3とでボディ2内に第1区画室10を形成するカップ6と、先端に突起7bを備えカップ6内に係止されカップ6内に第2区画室11を形成するプランジャー7と、ボディ2とカップ6の隙間に係止されプランジャー7を覆うキャップ8と、からなる。
【0025】
そして、第1区画室10には菌培養液である第1液12を備え、第2区画室11には殺菌液である第2液13を備える。なお、第1液12、第2液13は、分析する対象により培養液、殺菌液に限らず、2段階で液を混合する生物・化学反応用の液としてもよく、その場合には、生物反応、化学分析用の検査器具としても利用できる。
【0026】
以下、各部材を添付の図2〜6を参照してより詳細に説明する。図2は、検査器具1を構成するボディ2の説明図である。図2(A)が側面図、(B)が(A)の矢印B方向からの矢視図、(C)が(B)におけるC−C線断面図である。
【0027】
図2に示すように、ボディ2は、内部が中空2aの筒状で、両端内部がテーパー2b、2mに形成され、外観上1つの段差部2iを有し、内部には複数の段差部が形成されている。テーパー2bはチューブ5との嵌合をスムーズにする。テーパー2mは、キャップ8との嵌合をスムーズにする。
【0028】
段差部2qは、キャップ8側の径が大きいことに起因し、手でボディ2を持ちキャップ8を押し込むとき手が滑らないようするための引っかかりとなる。また、テーパー2b側内部にはネジ山2cが形成されチューブ5と螺合する。
【0029】
ネジ山2cより内部には、隙間2dを設けて突出部2eが形成されている。突出部2eは、チューブ5の螺合に従って、チューブ5側面に密着してシールする。チューブ5は反開口部方向にいくにしたがってやや径が大きくなっている。隙間2dは突出部2eの径がチューブ径にそって拡張しやすくするために設けられている。また、突出部2eは、チューブ5が螺合したときチューブ5のネジ部5cを係止し、チューブ5の螺合深度の位置決めとなる。
【0030】
段差部2f、2gは、シール部材3を係止するためのものである。段差部2hは、カップ6を底部6bを係止し、カップ6の挿入位置の位置決めである。段差部2iはカップ6の突条6dを係止し、段差部2hと同様に、カップ6の挿入位置の位置決めである。
【0031】
段差部2jは、段差部2iとともに、キャップ8の端部8hを係止し、キャップ8の押し込み位置の位置決めである。内部の肉厚部2kは、カップ6の底部6b側を強固に係止する部分である。
【0032】
ボディ2の段差部2qより反ネジ山2c側の外周面は肉薄部2nと肉厚部2pが交互に形成され、角をまるめた略6角形形状をしている。これにより、検査器具1を横にして置いたときでも、転がることがなく、不意の落下事故などによる破損が低減する。
【0033】
図3は、検査器具1を構成するシール部材3の説明図である。図3(A)が側面図、(B)が(A)の矢印B方向からの矢視図、(C)が矢印C方向からの矢視図、(D)が(C)におけるD−D線断面図である。
【0034】
図3に示すように、シール部材3は、係止部3sと、筒3bと、ガイド3eと、リブ3gと、からなる。
【0035】
係止部3sは、凹部3mを設けボディ2に接触するシール面3nを有する円盤形で、ボディ2の段差部2fと段差部2gの間に密着係止し、第1区画室10と第3区画室9をシールして仕切る。係止部3sの底面には、筒3b及びガイド3eが立設する。上面には、溝3p、溝3qが形成される。溝3pは、係止部3sの径がボディ2の係止箇所よりやや大きく密着性を高めているため、収縮できるように設けた。溝3qは、プランジャー7の突起7bがシール部材3に当たらないように設けた。
【0036】
筒3bは、サンプリング部材4の棒4bを嵌着させる穴3aが形成されている。穴3aは、先端内側にテーパー3cが形成され、サンプリング部材4の棒4bの嵌着をスムーズにしている。そして、穴3aの内周面には、前記棒4bを係止するための突起3dが2本設けられている。
【0037】
ガイド3eは、係止部3sの底面に間隔をあけ等間隔に3本形成されている。ガイド3eは、シール部材3をボディ2内の係止箇所に回転などすることなくスムーズに挿入させるためのガイドである。先端はテーパー3rに形成され、シール部材3のボディ2への挿入を一層スムーズにする。また、ガイド3e間の隙間は、第1液12、第2液13のチューブ5内への流下のための下流路3fとなる。
【0038】
リブ3gは、係止部3sの上面に隙間をあけ等間隔に3本立設する。リブ3gは、シール部材3をボディ2内の係止箇所に回転などすることなくスムーズに挿入させるためのガイドであるとともに、チューブ5によりキャップ8側に押し上げられスライドしたき、カップにあたり必要以上に第1液12、第2液13の通路を広げないよう、また第1区画室10でシール部材が回転などしないようカップ6に係止する。
【0039】
また、リブ3gには、リブ3gの立設方向にそって、突起3hが形成されている。突起3hは、係止解除されたシール部材3のスライド方向に対して垂直方向の回転等を防止し、第1区画室10内部に液の流下路を塞がないように設けた。
【0040】
突起3hの下端はテーパー3kになっている。テーパー3kは、シール部材3をボディ2内に挿入するとき、ボディ2内の段差部に引っかからないよう、スムーズに挿入できるよう設けた。リブ3g間の隙間は、第1液12、第2液13のチューブ5内への流下のための上流路3iとなる。
【0041】
図4は、検査器具1を構成するチューブ5の説明図である。図4(A)が側面図、(B)が(A)の矢印B方向からの矢視図、(C)が矢印C方向からの矢視図、(D)が(C)におけるD−D線断面図である。
【0042】
チューブ5は、図4に示すように、一端に開口部5iを有し、先端部5bが有底で、サンプリング部材4を内在させる内部中空5aで、ボディ2の一端にネジ部5cで係止されシール部材3とでボディ2内に第3区画室9を形成する。
【0043】
開口部5iは外周面をテーパー5hに成形している。ボディ2への挿入をスムーズにするためである。
【0044】
チューブ5の外周面には、ネジ部5cが形成されている。ネジ部5cは、ボディ2のネジ山2cに螺合する。ネジ部5cは、チューブの外周面に対向する位置に2箇所設けた。ネジ部5cは、チューブ5の螺合によりボディ2の突出部2eに当接し、チューブ5の螺合深度を決める。
【0045】
チューブ5の外周面には、溝5e、段差部5d、突部5gが形成されている。これらは、ネジ部5cと同様、チューブ5の螺合深度位置の位置決めであるとともに、これはボディ2のテーパー2b部としっかり嵌着し、チューブ5の外周面とボディ2内面との密閉性を高める作用がある。
【0046】
さらに、チューブ5の外周面の突部5g下方には、先端部5bに向け複数本の突起が形成され、チューブ5の強度補強とともに、チューブ5の螺合のときの滑り止め5fである。
【0047】
図5は、検査器具1を構成するカップ6の説明図である。図5(A)が側面図、(B)が(A)を90°回転させたときの側面図、(C)が(A)の矢印C方向からの矢視図、(D)が矢印D方向からの矢視図、(E)が(D)におけるE−E線断面図である。
【0048】
図5に示すように、カップ6は、一端に開口部6o、底部6bを有し、内部中空6aで、ボディ2の段差部2hまで挿入される。カップ6の内部にはプランジャー7が挿入される。
【0049】
カップ6の開口部6oの内外はそれぞれ、内テーパー6p、外テーパー6qが形成され、それぞれプランジャー7の挿入、キャップ8の挿入をスムーズにしている。
【0050】
底部6bには、薄膜部が形成されている。薄膜部は、図5(F)に示す拡大図で明らかなように、底部6b先端より窪んだ凹部6lと、凹部6lよりさらにドーナツ状に窪んだ薄膜6cからなる。
【0051】
底部3b側の外周面の突条6r、6s、溝6tは、ボディ2の肉厚部2kに強固に係止さるためのものである。カップ6の外周面の略中央の突条6dは、ボディ2の段差部2iに係止される。突条6dに設けられた複数の挿入方向の突条6nは、一層強固にボディ2の段差部2iに係止される。
【0052】
カップ6の開口部6o側の外テーパー6qは、図5(A)(B)に示すように、段差部6jが両端にある一段低い凹部6uが対向した位置に形成され、それ以外は係止部6vである。カップ6外周に凹部6uからキャップ8の内突起8cを嵌め、係止部6vからはキャップ8が脱落しない構成になっている。
【0053】
カップ6の凹部6uの下方にはキャップ8の内突起8cを保持する細い溝6eが形成され、溝6eの一端には内突起8cが容易に乗り越えられる段差部6yが他端には内突起8cのスライドを止めるストッパ6xが形成されている。
【0054】
そして、キャップ8の内突起8cが乗り越えた段差部6yの先の係止部6v下方は、キャップ8の押圧方向にスライドするための溝である内突起8c幅のガイド6wが形成されている。他方、凹部6下方は、キャップ8の内突起8cが引っかかり、回転阻止する隆起部6zが形成され、ガイド6wに到達したキャップ8は回転することがなく、押圧方向へスライドさせることを容易にさせており、誤操作を防止するのに役立つ。
【0055】
カップ6内部には、複数の段差部、突条が形成されている。段差部6f、6gは、底部6bにいくにしたがって、カップ6内部の径を狭め気密性を高めている。段差部6gが使用前のプランジャー7の第1、2突条7d、7e及び溝7fの位置で、組み立て位置である。段差部6fは、プランジャー7の第1、第2、第3突条7d、7e、7k及び溝7fの押し込み後の目安位置である。
【0056】
突条6h及び段差部6i、6kは、使用前のプランジャー7の第1、第2、第3突条7g、7h、7m及び溝7iの保持位置である。なお、プランジャー7の第1、第2、第3突条7g、7h、7m及び溝7iはシール性保持のために設けた。段差部6mはシール性保持、6nはプランジャー7脱落防止のために設けた。
【0057】
図6は、検査器具1を構成するプランジャー7の説明図である。図6(A)が側面図、(B)が(A)の矢印B方向からの矢視図、(C)が矢印C方向からの矢視図、(D)が(C)におけるD−D線断面図である。
【0058】
図6に示すように、プランジャー7は、末端7cに開口部を有し、他端は中央から外周に向け肉厚部7pを形成した有底かつ中空7aで、底部外部には棒状の突起7bが設けてなる筒7nである。肉厚部7pは、突起7bにかかる圧力を分散させ、底部の強度を高めたものである。なお、突条、溝については図5カップ6の部分で説明したのでここでは説明を省略する。
【0059】
図7は、検査器具1を構成するキャップ8の説明図である。図7(A)が側面図、(B)が(A)の矢印B方向からの矢視図、(C)が矢印C方向からの矢視図、(D)が(C)におけるD−D線断面図である。
【0060】
図7に示すように、キャップ8は、プランジャー7の末端7c部を収納するための開口部を端部8hに有し、有底で、内部中空8aである。キャップ8外周面には、回転時の滑り止め8eのための突起が端部8hから末端8f方向に複数形成されている。
【0061】
キャップ端部8h外周面には突出した突条8bが形成され、ボディ2とプランジャー7の隙間に係止する。キャップ端部8h外周面には対向した位置に内部側に突出した内突起8cが形成され、上述のように、カップ6の凹部6u、係止部6v、溝6e、段差部6y、ガイド6w等と作用する。
【0062】
また、キャップ8の内底8dには、キャップ8がカップ6の段差部6yを越える回転方向である矢印8gが印刷等され表示されている。キャップを透明とした場合は、末端8f内部でよいが、不透明であれば、末端8f外周に印刷、プレス等する。これにより、キャップ8の回転誤操作により、第2液13の混合不備を低減させることができ、操作性が向上する。
【0063】
なお、カップ6は突条6rなどできつくボディ2に係止され、プランジャー7も第1突条7d等でカップ6にきつく係止されているので、誤ってキャップ8がボディ2から脱落しても、第2液13が液漏れすることはない。
【0064】
検査器具1を構成する部品は、シール部材3、プランジャー7、キャップ8をポリエチレン、ボディ2、カップ6はポリエチレンより硬いポリプロピレン、またチューブ5はポリエチレンより硬いポリスチレンとすると、それら各部品は嵌合しやすく、密着性が高くなる。しかし、それらに部品をそれら素材に限定するものではない。なお、それら部品を透明、半透明とすると、培養液、殺菌液の色変化を検査器具1を分解することなく観察できるため好ましい。
【0065】
本発明である検査器具1の使用方法を図8に断面図で示す。図8(A)は、使用前の図で図1と同一である。図8(B)は、サンプリング部材4を検査部分に接触させた後に、培養液である第1液で、培養している状態を示す図である。図8(C)は、菌培養後に、第1液に殺菌液である第2液を混合した殺菌処理中の状況を示す図である。なお、図8左側が下で、右側が上である。
【0066】
以下、検査器具1の操作工程を詳しく説明する。図8(A)に示すように、検査器具1は、筒状のボディ2と、ボディ2内に係止されるシール部材3と、シール部材3に取り付けられた棒4bの先端に検査部分に接触させる採取部4aを備えるサンプリング部材4と、サンプリング部材4を内在させボディ2の一端に係止されシール部材3とでボディ2内に第3区画室9を形成するチューブ5と、ボディ2の他端に係止されシール部材3とでボディ2内に第1区画室10を形成するカップ6と、先端に突起7bを備えカップ6内に係止されカップ6内に第2区画室11を形成するプランジャー7と、ボディ2とカップ6の隙間に係止されプランジャー7を覆うキャップ8と、からなる。
【0067】
そして、第1区画室10には菌培養液である第1液12を備え、第2区画室11には殺菌液である第2液13を備える。
【0068】
先ず、ボディ2の一端に螺合され係止しているチューブ5を回転させてボディ2から外し、採取部4aを露出させる。次いで採取部4aを検査対象に擦りつけ、菌を採取部4aに付着させる。そして、再度チューブ5をボディ2に螺合させる。
【0069】
さらに、図8(B)に示すように、螺合を進め、チューブ5をボディ2内に押し込む(図8(A)と(B)の間の点線間矢印分)と、シール部材3とボディ2の係止が解除され、反チューブ5側にスライドし、第1区画室10と第3区画室がチューブ5の上端開口部5iで連通(ボディ2とシール部材3間(点線内)にも通路形成される。)し、第1液12がチューブ5内に流下(一点鎖線矢印)して採取部4aに接触する。その状態で、目的の培養条件において菌の増殖の有無を確認する。
【0070】
菌有無は、菌の増殖に伴う培養液のpH変化、濁度変化、顕微鏡による観察、菌の分泌物或いは菌の消化に反応して培養液中に組成させた物質の変化に伴う培養液色の変化など、従来から行われている検査指標で判断することができる。
【0071】
菌の培養後は、図8(C)に示すように、キャップ8を押圧し、ボディ2内に押し込む(図8(B)と(C)の間の点線間矢印分)ことで、プランジャー7の突起7bが薄膜6cを破壊、貫通し、カップ6に第1区画室10と第2区画室11を連通する穴(一点鎖線円)を穿設する。そして、殺菌液である第2液13は、チューブ内に流下(一点鎖線矢印)して第1液に混合され、混合液14となる。これにより、培養液に菌が増殖しても、殺菌処理を行うことができ、その他の特別な殺菌処理を行うことなく、検査器具1を安全に、廃棄することができる。
【0072】
以上のように、検査器具1を操作するため、誤操作が防止され、操作が簡易でかつ検査器具1を安全に廃棄することがきる。
【符号の説明】
【0073】
1 検査器具
2 ボディ
2a 中空
2b テーパー
2c ネジ山
2d 隙間
2e 突出部
2f 段差部
2g 段差部
2h 段差部
2i 段差部
2j 段差部
2k 肉厚部
2m テーパー
2n 肉薄部
2p 肉厚部
2q 段差部
3 シール部材
3a 穴
3b 筒
3c テーパー
3d 突起
3e ガイド
3f 下流路
3g リブ
3h 突起
3i 上流路
3k テーパー
3m 凹部
3n シール面
3p 溝
3q 溝
3r テーパー
3s 係止部
4 サンプリング部材
4a 採取部
4b 棒
5 チューブ
5a 中空
5b 先端部
5c ネジ部
5d 段差部
5e 溝
5f 滑り止め
5g 突部
5h テーパー
5i 開口部
6 カップ
6a 中空
6b 底部
6c 薄膜
6d 突条
6e 溝
6f 段差部
6g 段差部
6h 突条
6i 段差部
6j 段差部
6k 段差部
6l 凹部
6m 段差部
6n 突条
6o 開口部
6p 内テーパー
6q 外テーパー
6r 突条
6s 突条
6t 溝
6u 凹部
6v 係止部
6w ガイド
6x ストッパ
6y 段差部
6z 隆起部
7 プランジャー
7a 中空
7b 突起
7c 末端
7d 第1突条
7e 第2突条
7f 溝
7g 第1突条
7h 第2突条
7i 溝
7k 第3突条
7m 第3突条
7n 筒
7p 肉厚部
8 キャップ
8a 中空
8b 突条
8c 内突起
8d 内底
8e 滑り止め
8f 末端
8g 矢印
8h 端部
9 第3区画室
10 第1区画室
11 第2区画室
12 第1液
13 第2液
14 混合液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のボディと、前記ボディ内に係止されるシール部材と、前記シール部材に取り付けられた棒の先端に検査部分に接触させる採取部を備えるサンプリング部材と、前記サンプリング部材を内在させ前記ボディの一端に係止され前記シール部材とで前記ボディ内に第3区画室を形成するチューブと、前記ボディの他端に係止され前記シール部材とで前記ボディ内に第1区画室を形成するカップと、先端に突起を備え前記カップ内に係止され前記カップ内に第2区画室を形成するプランジャーと、からなり、
前記第1区画室に第1液を備え、前記第2区画室に第2液を備え、
前記サンプリング部材でサンプリングした後、前記チューブを前記ボディに押し込むことにより前記シール部材の係止が解除されスライドし前記第1区画と前記第3区画が連通し、前記第1液を前記チューブ内に流下させ前記採取部に接触させ、所定時間経過後に前記プランジャーを押圧し前記プランジャーの係止を解除して前記カップ内に押し込み前記突起で前記カップに穴を形成し前記第2液を前記チューブ内に流下させて、第1、第2液を混合させることを特徴とする検査器具。
【請求項2】
さらに、前記ボディと前記カップの隙間に係止され、前記プランジャーを覆うキャップを備え、前記キャップを押圧することで前記キャップの係止を解除し前記プランジャーを押圧することを特徴とする請求項1に記載の検査器具。
【請求項3】
前記プランジャーの突起で穴を開ける前記カップの前記第1液側の底部の一部を窪ませ、薄膜としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の検査器具。
【請求項4】
前記薄膜は、前記カップの底部の一部を窪ませた凹部を金型成形し、その後、円筒でプレスし前記凹部の周囲を一段窪ませて薄膜としたことを特徴とする請求項3に記載の検査器具。
【請求項5】
前記キャップの端部には、部分的にキャップ内方向に略水平に突出した内突起を形成し、前記カップには、一端に前記内突起の回転を抑止する段差部、他端には回転させないストッパを備える溝を設け、前記キャップを前記段差部方向へ回転させることで前記内突起が段差部を越え、前記キャップの係止が解除されるとともに、さらに、前記カップには、前記キャップの押圧方向にスライドするための溝であるガイドが形成され、反押圧方向の前記カップには前記キャップの脱落防止の係止部が形成されたことを特徴とする請求項4に記載の検査器具。
【請求項6】
前記キャップに、前記キャップの係止を解除する回転方向を表示したことを特徴とする請求項5に記載の検査器具。
【請求項7】
前記第1液が菌培養液であり、前記第2液が殺菌液であることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の検査器具。
【請求項8】
前記ボディ、チューブ、カップが透明で、かつ前記培養又は殺菌液が培養液の組成毎に異なる色に着色されたことを特徴とする請求項7に記載の検査器具。
【請求項9】
前記キャップを、前記培養液の着色と同系色に着色したことを特徴とする請求項8に記載の検査器具。
【請求項10】
複数の異なる培養液を充填した検査器具を1セットとしたことを特徴とする請求項9に記載の菌検査器具セット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−247757(P2011−247757A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121508(P2010−121508)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(393032125)油化電子株式会社 (36)
【出願人】(598080484)株式会社テイエフビー (2)
【Fターム(参考)】