説明

検査対象受体、その検査対象受体を備えた液体混合システム、及びその液体混合システムを用いる液体混合方法

【課題】遠心力付与装置の検査用回転パターンを変えることなく、かつ遠心力付与装置以外の装置を必要とすることなく、検査対象受体内の検体と試薬とが混合するタイミングを変えることができる。
【解決手段】
マイクロチップ1の板部材2の流路形成面2Aには、検体投入部3と、第1流路21と、貯留槽16と、混合槽20と、第2流路22と、が形成されている。第1流路21は、マイクロチップ1が遠心力CFの向きに対して第1の回転角度30°以上に自転された際に、投入された検査対象の液体ELが液体投入部3から貯留槽16に流れるよう形成されている。第2流路22は、マイクロチップ1が遠心力CFの向きに対して第1の回転角度30°より大きな第2の回転角度60°以上に自転された際に、貯められた検査対象の液体ELが貯留槽16から混合槽20に流れるよう形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の検体に試薬を混合するための検査対象受体であるマイクロチップ、及びそのマイクロチップを備えた液体混合システム、及びその液体混合システムを用いる液体混合方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、遠心力付与装置によりマイクロチップを回転させる回転パターンを変えることなく、かつ遠心力付与装置以外の装置を必要とすることなく、検体と試薬とが混ざるタイミングを変えることができるマイクロチップ、及びそのマイクロチップを備えた液体混合システム、及びその液体混合システムを用いる液体混合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液等の検体に試薬を混合し検体の状態を調べるためのチップとして、マイクロチップが知られている。マイクロチップを遠心力付与装置に装着し、遠心力付与装置を回転駆動することにより、検体と試薬とが混合される。
【0003】
マイクロチップ内において、検体と複数の試薬とが混ざるタイミングが所望のタイミングと異なると、所望の検査結果が得られない可能性がある。ゆえに、マイクロチップの検体と試薬とが所望のタイミングで混合されるように、遠心力付与装置の回転方向切替機構によって回転方向を変えるタイミングを制御する必要がある。換言すると、検体と試薬とを混ぜるタイミングに応じて、遠心力付与装置の回転方向切替機構の回転方向を変えるタイミング(以下、検査用回転パターンと称する)を変える必要がある。
【0004】
そして、特許文献1に示すように、検査用回転パターンを記したバーコードをマイクロチップに付加し、バーコードリーダによってそのマイクロチップのバーコードを読み取ることで、そのマイクロチップに対する遠心力付与装置の回転パターンを自動的に認識し、回転方向切替機構を駆動させる方法がある。
【0005】
具体的には、以下の工程をたどる。バーコードプリンタによってバーコードがマイクロチップに付加される。バーコードが付加されたマイクロチップが遠心力付与装置に装着される。マイクロチップが装着された遠心力付与装置が回転駆動される。マイクロチップがバーコードリーダ読み取り位置に移動される。バーコードリーダによって、マイクロチップのバーコードが読み取られる。バーコードリーダによって読み取られたバーコード情報が遠心力付与装置の制御部へ送られる。送られたバーコード情報を基に制御部に記憶されている複数の検査用回転パターンから該当する検査用回転パターンが選択される。選択された検査用回転パターンに応じて、遠心力付与装置の回転方向切替機構が駆動される。検査用回転パターンに従って回転方向切替機構が駆動された結果、マイクロチップ内の試薬と検体とが混合される。このように、マイクロチップごとに検体と試薬とを混ぜるタイミングが異なったとしても、自動的に回転方向を切替ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−8875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、バーコード等のコードを用いた従来の遠心力付与装置の回転駆動方法は、遠心力付与装置とは別に、バーコードプリンタ、バーコードリーダ等の装置を必要とする問題がある。また、従来の遠心力付与装置の回転駆動方法は、遠心力付与装置の回転駆動動作とは別に、バーコードをマイクロチップに付加する作業、マイクロチップのバーコードを読み取る動作、マイクロチップごとに遠心力付与装置の制御部が回転パターンを選択する制御処理、を必要とする問題もある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、遠心力付与装置の自転駆動部の自転パターンである検査用回転パターンを変えることなく、かつ遠心力付与装置以外の装置を必要とすることなく、検査対象受体内の検体と試薬とが混合するタイミングを変えることができる検査対象受体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の検査対象受体は、回転体と、前記回転体上に設けられ、所定の流路形成面を有する検査対象受体を保持可能な保持体と、前記回転体を回転させ、前記保持体により保持された前記検査対象受体の前記所定の流路形成面に平行な方向に遠心力を付与する公転駆動部と、前記保持体により保持された前記検査対象受体の所定の流路形成面に直交する自転軸線を中心にして前記保持体を複数の所定の回転角度に変更する自転駆動部と、を備える遠心力付与装置に使用される検査対象受体であって、前記検査対象受体の所定の流路形成面には、検査対象の液体が投入される検体投入部と、検査対象の液体が貯留可能に形成された貯留槽と、前記検査対象受体が前記遠心力の向きに対して前記複数の所定の回転角度のうち第1の回転角度以上に自転された際に、前記検体投入部から供給される検査対象の液体が前記貯留槽へ流れるよう形成された第1流路と、検査対象の液体と試薬とを混合する混合槽と、前記検査対象受体が前記遠心力の向きに対して前記第1の回転角度より大きな第2の回転角度以上に自転された際に、前記貯留槽に貯められる検査対象の液体が前記混合槽へ流れるよう形成された第2流路と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の検査対象受体によれば、前記第1流路は、検査対象の液体が前記貯留槽へ流れるように第1延設方向に延びる第1壁部を有し、前記第2流路は、検査対象の液体が前記混合槽へ流れるように第2延設方向に延びる第2壁部を有し、前記検査対象受体が所定の自転方向に前記第1の回転角度に自転された際に、前記第1壁部は、前記所定の自転方向において前記遠心力の向きから前記第1延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、前記検査対象受体が前記所定の自転方向に前記第2の回転角度に自転された際に、前記第2壁部は、前記所定の自転方向において前記遠心力の向きから前記第2延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の液体混合システムによれば、第1の検査対象受体としての請求項1又は2に記載の検査対象受体と、所定の流路形成面を有し、前記第1の検査対象受体とは異なる第2の検査対象受体と、遠心力付与装置と、を備える液体混合システムであって、前記第2の検査対象受体の所定の流路形成面には、検査対象の液体を投入する検体投入部と、検査対象の液体と試薬とを混合する第1混合槽と、前記第2の検査対象受体が前記遠心力の向きに対して前記第2の回転角度より小さい第3の回転角度に自転された際に、前記第2の検査対象受体の検体投入部から供給される検査対象の液体が前記第2の検査対象受体の第1混合槽へ流れるよう形成された第1流路と、を備え、前記遠心力付与装置は、回転体と、前記回転体上に設けられ、前記第1及び第2の検査対象受体を含む複数の検査対象受体を装着可能に構成され、前記複数の検査対象受体をそれぞれ保持する複数の保持体と、前記回転体を回転させ、前記複数の保持体に遠心力を付与する公転駆動部と、前記複数の保持体によりそれぞれ保持された前記複数の検査対象受体の各検査対象受体の流路形成面に直交する自転軸線を中心にして前記複数の保持体の各々を前記複数の所定の回転角度に変更する自転駆動部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の液体混合システムによれば、前記第1の検査対象受体の前記第1流路は、検査対象の液体が前記貯留槽へ流れるように第1延設方向に延びる第1壁部を有し、前記第1の検査対象受体の前記第2流路は、検査対象の液体が前記混合槽へ流れるように第2延設方向に延びる第2壁部を有し、前記第1の検査対象受体が所定の自転方向としての第1自転方向に前記第1の回転角度に自転された際に、前記第1壁部は、前記第1自転方向において前記遠心力の向きから前記第1延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、前記第1の検査対象受体が前記第1自転方向に前記第2の回転角度に自転された際に、前記第2壁部は、前記第1自転方向において前記遠心力の向きから前記第2延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、前記第2の検査対象受体の第1流路は、検査対象の液体が前記第2の検査対象受体の第1混合槽へ流れるように第3延設方向に延びる第1壁部を有し、前記第2の検査対象受体が第2自転方向に前記第3の回転角度に自転された際に、前記第2の検査対象受体の第1壁部は、前記第2自転方向において前記遠心力の向きから前記第3延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の液体混合システムによれば、前記第2の検査対象受体の所定の流路形成面には、前記第2の検査対象受体の第1混合槽にて混合された混合液体と試薬とを混合する第2混合槽と、前記第2の検査対象受体が前記遠心力の向きに対して前記第2の回転角度に自転された際に、前記混合液体が前記第1混合槽から前記第2混合槽へ流れるよう形成された第2流路と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の液体混合システムによれば、前記第1の検査対象受体の第1流路は、検査対象の液体が前記貯留槽へ流れるように第1延設方向に延びる第1壁部を有し、前記第1の検査対象受体の第2流路は、検査対象の液体が前記混合槽へ流れるように第2延設方向に延びる第2壁部を有し、前記第1の検査対象受体が所定の自転方向としての第1自転方向に前記第1の回転角度に自転された際に、前記第1の検査対象受体の第1壁部は、前記第1自転方向において前記遠心力の向きから前記第1延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、前記第1の検査対象受体が前記第1自転方向に前記第2の回転角度に自転された際に、前記第1の検査対象受体の第2壁部は、前記第1自転方向において前記遠心力の向きから前記第2延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、前記第2の検査対象受体の第1流路は、検査対象の液体が前記第2の検査対象受体の第1混合槽へ流れるように第3延設方向に延びる第1壁部を有し、前記第2の検査対象受体が第2自転方向に前記第3の回転角度に自転された際に、前記第2の検査対象受体の第1壁部は、前記第2自転方向において前記遠心力の向きから前記第3延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、前記第2の検査対象受体の第2流路は、前記混合液体が前記第2の検査対象受体の第2混合槽へ流れるように第4延設方向に延びる第2壁部を有し、前記第2の検査対象受体が前記第2自転方向に前記第2の回転角度に自転された際に、前記第2の検査対象受体の第2壁部は、前記第2自転方向において前記遠心力の向きから前記第4延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の液体混合方法は、請求項3〜6のいずれかに記載の液体混合システムを用いる液体混合方法であって、前記第1の検査対象受体及び前記第2の検査対象受体含む複数の検査対象受体を保持する複数の保持体に遠心力が付与されるよう回転体を回転させる回転工程と、前記複数の保持体を同時に前記第1の回転角度に自転させる第1自転工程と、前記複数の保持体を同時に前記第2の回転角度に自転させる第2自転工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の検査対象受体によれば、検査対象受体が遠心力の向きに対して第2の回転角度以上に自転された際に、貯留槽に貯められる検査対象の液体が混合槽へ流れるよう形成された第2流路を備える。これにより、検査対象受体が複数の所定の回転角度のうち、第2の回転角度より小さな回転角度に自転された際は、検査対象の液体が貯留槽に貯留され、混合槽には流れない。そして、検査対象受体が第2の回転角度以上に自転された際は、貯留槽に貯められる検査対象の液体が第2流路に流れる。第2流路に流れた検査対象の液体は、混合槽に流れ、試薬と混合される。この結果、遠心力付与装置の検査用回転パターンを変えることなく、かつ遠心力付与装置以外の装置を必要とすることなく、検査対象受体内の検査対象の液体と試薬とが混合するタイミングを変えることができる。
【0017】
請求項2に記載の検査対象受体によれば、第1壁部は、所定の自転方向において遠心力の向きから第1延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、第2壁部は、所定の自転方向において遠心力の向きから第2延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成される。これにより、第1流路から貯留槽に貯められた液体が、検査対象受体が第2の回転角度に自転された際に第2流路から混合槽に流動される。その結果、特別な装置を用いることなく、遠心力付与装置の遠心力の向きに対する検査対象受体の角度を徐々に大きくしていくだけで、容易に検査対象受体内の検査対象の液体と試薬とが混合するタイミングを変えることができる。
【0018】
請求項3に記載の複数の液体混合システムによれば、複数の検査対象受体が装着可能に構成される複数の保持体を備える。複数の検査対象受体を保持する複数の保持体が自転の回転角度を異にして公転すると、各保持体に作用する遠心力の強さが異なり、公転駆動部に加わる負荷が大きく変動し、遠心力付与装置の液体混合タイミングの精度に悪影響を与え、場合によっては遠心力付与装置の耐久性を低下させる恐れがある。それゆえ、複数の検査対象受体を保持する複数の保持体が同一の検査用回転パターンで回転されることが望ましい。また、複数の検査対象受体のうちの第2の検査対象受体は、第1の回転角度以上、かつ前記第2の回転角度より小さく自転された際に、検査対象の液体が第2の検査対象受体の検体投入部から第1流路を通り第1混合槽へ流れるよう構成されている。これにより、遠心力付与装置が複数の検査対象受体の自転の角度を徐々に大きくしていくと、第2の検査対象受体の検体投入部内の検査対象の液体は、第1の検査対象受体内の検査対象の液体が第1の検査対象受体の検体投入部から第1の検査対象受体の第2流路を通り混合槽へ流れるタイミングより早いタイミングで第2の検査対象受体内の第1流路を流れる。第2の検査対象受体内の第1流路を流れた検査対象の液体は、第2の検査対象受体の第1混合槽に到達し、第2の検査対象受体内の検査対象の液体と試薬とが混合される。その後、遠心力付与装置が第2の回転角度になるよう駆動されると、第1の検査対象受体の貯留槽内の検査対象の液体は、第1の検査対象受体の第2流路を流れる。そして、第1の検査対象受体内の第2流路を流れた検査対象の液体は、第1の検査対象受体の混合槽に到達し、第1の検査対象受体の検査対象の液体と試薬とが混合される。この結果、同一の検査用回転パターンで複数の検査対象受体を回転させたとしても、遠心力付与装置以外の装置を必要とすることなく、試薬と検査対象の液体とを混合させるタイミングを比較的速くする必要がある第2の検査対象受体と、その第2の検査対象受体より試薬と検査対象の液体とを混合させるタイミングを比較的遅くする必要がある第1の検査対象受体とにおいて、検査回数1回で、所望のタイミングで試薬と検査対象の液体とを混合することができる。
【0019】
請求項4に記載の複数の液体混合システムによれば、第2の検査対象受体が第3の回転角度に自転された際に、第2の検査対象受体の第1壁部は、第2自転方向において遠心力の向きから第3延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成される。これにより、特別な装置を用いることなく、遠心力付与装置の遠心力の向きに対する検査対象受体の角度を徐々に大きくしていくだけで、検査回数1回で、かつ同一の検査用回転パターンで、容易に第1の検査対象受体の検査対象の液体と試薬との混合タイミングと、第2の検査対象受体の検査対象の液体と試薬との混合タイミングと、を所望のタイミングに変えることができる。
【0020】
請求項5に記載の液体混合システムによれば、第2の検査対象受体が遠心力の向きに対して第2の回転角度に自転された際に、混合液体が第1混合槽から第2混合槽へ流れるよう形成された第2流路を備える。これにより、第1の検査対象受体及び第2の検査対象受体が第2の回転角度に自転された際に、第1の検査対象受体内の検査対象の液体は、試薬と混合され、第2の検査対象受体内の混合液体は、別の試薬と混合される。その結果、検査回数1回で、かつ同一の検査用回転パターンで、異なる混合回数の液体をそれぞれ作成することができる。
【0021】
請求項6に記載の液体混合システムによれば、第2の検査対象受体が第2の回転角度に自転された際に、第2の検査対象受体の第2壁部は、第2自転方向において遠心力の向きから第4延設方向までの角度が直角又は鈍角となる。これにより、特別な装置を用いることなく、遠心力付与装置の遠心力の向きに対する検査対象受体の角度を徐々に大きくしていくだけで、検査回数1回で、かつ同一の検査用回転パターンで、容易に第1の検査対象受体と第2の検査対象受体とで、異なる混合回数の液体をそれぞれ作成することができる。
【0022】
請求項7に液体混合方法によれば、第1の検査対象受体及び第2の検査対象受体を含む複数の検査対象受体を保持する複数の保持体を同時に第1の回転角度に自転させる第1自転工程と、複数の保持体を同時に第2の回転角度に自転させる第2自転工程と、を有する。これにより、特別な装置を用いることなく、遠心力付与装置の遠心力の向きに対する検査対象受体の角度を徐々に大きくしていくだけで、検査回数1回で、第1の検査対象受体及び第2の検査対象受体の検査対象の液体と試薬とを混合するタイミングが異なっていたとしても、所望のタイミングで各検査対象受体の検査対象の液体と試薬とを混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係るマイクロチップ1を示す斜視図。
【図2】マイクロチップ1の板部材2の平面図。
【図3】マイクロチップ1の板部材2に形成された第1貯留槽16の付近領域26の拡大図。
【図4】マイクロチップ1の板部材2に形成された第2貯留槽18の付近領域27の拡大図。
【図5】マイクロチップ1とは異なる別のマイクロチップ101の板部材102の平面図。
【図6】回転角度α=0°の状態でマイクロチップ1、101が装着された遠心力付与装置30の正面図。
【図7】マイクロチップ1、101が回転角度α=90°の状態で遠心力付与装置30のチップホルダ47L、47Rに装着される様子を示す正面図。
【図8】遠心力付与装置30の検査プログラム30aを示すフローチャート。
【図9】チップホルダ47の回転角度を変更してマイクロチップ1、101に遠心力CFを付加する角度変更プログラムS11のフローチャート。
【図10】回転角度α4=90°の状態で、遠心力CFを付与する前の検体及び試薬を充填した状態にあるマイクロチップ1の平面図。
【図11】回転角度α0=0°の状態で、遠心力CFを付与する前の検体及び試薬を充填した状態にあるマイクロチップ1の平面図。
【図12】遠心力CFの向きに対する回転角度α0=0°の状態にあるマイクロチップ1の平面図。
【図13】遠心力CFの向きに対する回転角度α1=30°の状態にあるマイクロチップ1の平面図。
【図14】遠心力CFの向きに対する回転角度α2=45°の状態にあるマイクロチップ1の平面図。
【図15】遠心力CFの向きに対する回転角度α3=60°の状態にあるマイクロチップ1の平面図。
【図16】遠心力CFの向きに対する回転角度α4=90°の状態にあるマイクロチップ1の平面図。
【図17】遠心力CFの付与を終了し、回転角度α4=90°の状態にあるマイクロチップ1の平面図。
【図18】回転角度α4=90°の状態で、遠心力CFを付与する前の検体及び試薬を充填した状態にあるマイクロチップ101の平面図。
【図19】回転角度α0=0°の状態で、遠心力CFを付与する前の検体及び試薬を充填した状態にあるマイクロチップ101の平面図。
【図20】遠心力CFの向きに対する回転角度α0=0°の状態にあるマイクロチップ101の平面図。
【図21】遠心力CFの向きに対する回転角度α1=30°の状態にあるマイクロチップ101の平面図。
【図22】遠心力CFの向きに対する回転角度α2=45°の状態にあるマイクロチップ101の平面図。
【図23】遠心力CFの向きに対する回転角度α3=60°の状態にあるマイクロチップ101の平面図。
【図24】遠心力CFの向きに対する回転角度α4=90°の状態にあるマイクロチップ101の平面図。
【図25】遠心力CFの付与を終了し、回転角度α4=90°の状態にあるマイクロチップ101の平面図。
【図26】本発明の第2実施形態に係るマイクロチップ1Bの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るマイクロチップ1と、複数の試薬を投入及び供給可能な構成部分を備える点でマイクロチップ1とは異なる別のマイクロチップ101と、両マイクロチップ1、101が自転可能に装着される遠心力付与装置30と、を備える液体混合システムについて説明する。
【0025】
遠心力付与装置30の方向について、具体的に図6を用いて説明する。遠心力付与装置30は、主軸57と、T型プレート48と、チップホルダ47L、47Rと、を含む。T型プレート48は、溝部80を有する。主軸57の延設方向を上下方向とする。溝部80の延設方向を左右方向とする。上下方向と左右方向とに垂直な方向を前後方向とする。図6に示すように、遠心力付与装置30のチップホルダ47L、47Rは、主軸57を軸線として、公転され、遠心力CFが付与される。チップホルダ47Lは、回転軸線LAを中心として第1の自転方向LDに自転される。同様に、チップホルダ47Rは、回転軸線RAを中心として第2の自転方向RDに自転される。
【0026】
図1は、液体混合システムにおいて使用されるマイクロチップ1を示す斜視図である。本実施形態に係るマイクロチップ1の詳細な構成について図1〜図4を参照して説明する。マイクロチップ1は遠心力付与装置30に装着されて種々の回転角度に変更されるが、図1に示す3つの矢印の方向は、遠心力付与装置30がマイクロチップ1を装着して図7に示す所定の初期回転位置にある状態における、遠心力付与装置30の上下方向、左右方向、及び前後方向を表す。
【0027】
(マイクロチップ1の詳細な構成)
マイクロチップ1の構造について図1を参照して説明する。図1に示すように、マイクロチップ1は、板部材2と、カバー部材24と、を備える。
【0028】
板部材2は、長方形状の透明な板である。板部材2の厚みは、約1〜10mm程度である。板部材2の縦幅、横幅は、それぞれ約10〜100mm程度である。板部材2は、その板部材2の厚み方向である前後方向に深さを有する所定の流路が形成された流路形成面2Aを有する。流路形成面2Aは、所定の流路が形成できる程度の面積を有する。所定の流路は、検査対象の液体(以下、検体と記す)を流すために形成される。板部材2は、例えば合成樹脂から形成される。板部材2は、例えば射出成形にて製造される。
【0029】
カバー部材24は、例えば前から見て長方形の可とう性を有すフィルムである。なお、図1では、説明の便宜上カバー部材24の厚みを誇張して表現しているが、カバー部材24の厚みは、約0.1〜0.5mm程度である。カバー部材24は、板部材2に形成された所定の流路を覆うことが可能な程度の面積を有する。カバー部材24の縦幅、横幅は、それぞれ約10〜100mm程度である。カバー部材24の接着層は、板部材2の流路が形成された流路形成面2Aに接着可能なようカバー部材24の表面に設けられる。カバー部材24は、例えば合成樹脂からなる。
【0030】
図2は、マイクロチップ1の平面図である。図2を用いて、板部材2の内部構造について説明する。板部材2の流路形成面2Aは、検体投入部3と、試薬投入部6と、検体供給路7と、試薬供給路10と、空間部11と、第1流路21と、第1貯留槽16と、第2流路22と、第2貯留槽18と、第3流路23と、混合槽20と、が前後方向に深さを有するように形成されている。
【0031】
検体投入部3は、検体が投入される槽である。検体投入部3は、所定量の検体を収容可能な容積を有する。所定量の検体とは、約0.01〜1ml程度の検体である。検体は、例えば血液、血漿、又は血清である。検体供給路7は、検体投入部3の下端に接続される。
【0032】
検体供給路7は、検体投入部3の下端から下向きに延びる流路であり、本実施形態では、検体供給路7の延設方向は上下方向に平行である。検体供給路7の左右方向の幅は、検体投入部3内の検体が、下向きにかかる重力により空間部11に流出しない程度に、検体投入部3の左右方向の幅と比較して狭く設定される。検体投入部3の左右方向の幅は、例えば0.1mm程度である。空間部11は、検体供給路7の下端に接続される。
【0033】
試薬投入部6は、試薬が投入される槽である。試薬投入部6は、所定量の試薬を収容可能な容積を有する。所定量の試薬とは、約0.01〜1ml程度の試薬である。検体投入部3、及び試薬投入部6について、マイクロチップ1を前から見た場合、右側に検体投入部3が、左側に試薬投入部6が形成される。試薬供給路10は、試薬投入部6の下端に接続される。
【0034】
試薬供給路10は、試薬投入部6の下端から下向きに延びる流路である。試薬供給路10の左右方向の幅は、試薬投入部6内の試薬が、下向きにかかる重力により混合槽20に流出しない程度に、検体投入部3の左右方向の幅と比較して狭く設定される。試薬供給路10の左右方向の幅は、例えば0.1mm程度である。混合槽20は、試薬供給路10の下端に接続される。
【0035】
空間部11は、検体供給路7から供給される検体を所定量計量可能な容積を有する。空間部11は、計量部14と、余剰槽15と、を備える。
【0036】
計量部14は、第1壁部21Aと、余剰側壁部13と、を備える。余剰側壁部13の右端部は、第1壁部21Aの左端部より下に設けられる。
【0037】
余剰槽15は、計量部14の余剰側壁部13の下方に形成される。余剰槽15は、計量部14で所定量計量して余剰側壁部13より右側に流れ出た所定量の余剰液を溜めることが可能な容積を有する。
【0038】
図3は、マイクロチップ1の第1貯留槽16の付近領域26の拡大図である。図3に示すように、第1流路21は、計量部14の左側に接続される。第1流路21は、第1斜め流路211と、第1下流路212と、を備える。
【0039】
第1斜め流路211は、計量部14の左端から左斜め上方に延びる流路である。第1斜め流路211は、第1壁部21Aを備える。第1壁部21Aは、計量部14と、第1流路21と、に渡って設けられる。第1壁部21Aは、第1斜め流路211の下側の壁であり、前後方向に延びる面を有する壁部である。角度θ1は、遠心力付与装置30の第1の自転方向LDにおいて、第1壁部21Aから、第1壁部21Aから左方向に伸びる仮想線RL1までの角度である。角度θ1は、鋭角の角度、例えば30°である。第1下流路212は、第1斜め流路211の左端に接続される。
【0040】
第1下流路212は、下向きに延びる。第1斜め流路211は、第1下流路212の上方部分の右側に接続される。第1貯留槽16の上端は、第1下流路212の下端と接続される。
【0041】
第1貯留槽16は、第1下流路212から流れてきた検体を収容可能な容積を有する。第1貯留槽16は、例えば前から見て四角形状を有する。第2流路22は、第1貯留槽16の左端に接続される。
【0042】
第2流路22は、第2斜め流路221と、第2下流路222と、を備える。
【0043】
第2斜め流路221は、第1貯留槽16の左端から左斜め上方に延びる流路である。第2斜め流路221は、第2壁部22Aを備える。第2壁部22Aは、第2斜め流路221の下側の壁であり、前後方向に延びる面を有する壁部である。角度θ2は、遠心力付与装置30の第1の自転方向LDにおいて、第2壁部22Aから、第2壁部22Aから左方向に伸びる仮想線RL2までの角度である。角度θ2は、角度θ1より大きい鋭角の角度、例えば45°である。第2下流路222は、第2斜め流路221の左端に接続される。第2壁部22Aの左端は、第1貯留槽16の上端よりも上に設けられる。
【0044】
第2下流路222は、下向きに延びる。第2斜め流路221は、第2下流路222の上方部分の右側に接続される。第2貯留槽18の上端は、第2下流路222の下端と接続される。
【0045】
図4は、マイクロチップ1の第2貯留槽18の付近領域27の拡大図である。図4に示すように、第2貯留槽18は、第2流路22の第2下流路222から流れてきた検体を収容可能な容積を有する。第2貯留槽18は、例えば前から見て四角形状を有する。第3流路23は、第2貯留槽18の左端に接続される。
【0046】
第3流路23は、第3斜め流路231と、第3下流路232と、を備える。
【0047】
第3斜め流路231は、第2貯留槽18の左端から左斜め上方に延びる流路である。第3斜め流路231は、第3壁部23Aを備える。第3壁部23Aは、第3斜め流路231の下側の壁であり、前後方向に延びる面を有する壁部である。角度θ3は、遠心力付与装置30の第1の自転方向LDにおいて、第3壁部23Aから、第3壁部23Aから左方向に伸びる仮想線RL3までの角度である。角度θ3は、θ2より大きい鋭角の角度、例えば60°である。第3下流路232は、第3斜め流路231の左端に接続される。第3壁部23Aの左端は、第2貯留槽18の上端より上に設けられる。
【0048】
なお、角度θ1、θ2、θ3は、0°<θ1<θ2<θ3≦90°の関係を満たす角度である。液体投入部3内に投入され計量部14に流出された検体がそのまま第1貯留槽16に流れ込まないよう、θ1は0°より大きい。第1貯留槽16に流れ込んだ検体がそのまま第2貯留槽18に流れ込まないよう、θ2はθ1より大きい。第2貯留槽18に流れ込んだ検体がそのまま混合槽20に流れ込まないよう、θ3はθ2より大きい。特別な流路設計を必要とすることなく、第2貯留槽18に流れ込んだ検体が混合槽20に流れ込むように、θ3は90°以下が望ましい。
【0049】
第3下流路232は、下向きに延びる。第3斜め流路231は、第3下流路232の上方部分の右側に接続される。混合槽20の右上端は、第3下流路232の下端と接続される。
【0050】
混合槽20は、第3下流路232から流れてきた検体及び、試薬供給路10から流れてきた試薬を収容可能な容積を有する。混合槽20は、例えば前から見て四角形状を有する。試薬供給路10は、混合槽20の上端に接続される。
【0051】
(マイクロチップ101の詳細な構成)
図5は、液体混合システムに使用され、複数の試薬を投入及び供給可能な構成部分を備える点でマイクロチップ1とは異なる別のマイクロチップ101の平面図である。マイクロチップ101の詳細な構成について図5を参照して説明する。
【0052】
図5に示す2つの矢印の方向、及び両矢印に直交する方向は、マイクロチップ101が遠心力付与装置30に装着されて図7に示す所定の初期回転位置にある状態における、上下方向、左右方向、及び前後方向を表す。
【0053】
図5に示すように、マイクロチップ101は、マイクロチップ1と比較して、第1試薬投入部104、第2試薬投入部105、第1試薬供給路108、及び第2試薬供給路109の4つの構成部分を更に備える点を除き、同一の形状を有する。具体的には、マイクロチップ1の板部材2、流路形成面2A、検体投入部3、検体供給路7、空間部11、計量部14、第1壁部21A、余剰側壁部13、余剰槽15、第1流路21、第2流路22、及び第3流路23に相当するマイクロチップ101の構成は、順に板部材102、流路形成面102A、検体投入部103、検体供給路107、空間部111、計量部114、第1壁部121A、余剰側壁部113、余剰槽115、第1流路121、第2流路122、及び第3流路123と称する。さらに、マイクロチップ1の試薬投入部6、試薬供給路10、第1貯留槽16、第2貯留槽18、及び混合槽20に相当するマイクロチップ101の構成は、それぞれ第3試薬投入部106、第3試薬供給路110、第1混合槽116、第2混合槽118、及び第3混合槽120と称する。
【0054】
第1試薬投入部104、及び第2試薬投入部105は、それぞれ検体投入部103と同様の形状を有する。第2試薬供給路108、及び第3試薬供給路109は、それぞれ検体供給路107と同様の形状を有する。図5に示すマイクロチップ101の具体的構成では、検体供給路107の延設方向は、マイクロチップ1の検体供給路7の延設方向と同様に上下方向に平行である。第2試薬供給路108の下端は、第1混合槽116の上端に接続される。第3試薬供給路109の下端は、第2混合槽118の上端に接続される。
【0055】
(遠心力付与装置30の詳細な構成)
図6は、本実施形態に係るマイクロチップ1、101が装着される遠心力付与装置30の正面図である。図6を参照して、遠心力付与装置30について説明する。なお、図6に示す3つの矢印の方向は、図1に示す上下方向、左右方向、及び前後方向に相当する方向を表す。
【0056】
遠心力付与装置30は、ターンテーブル33と、チップホルダ47と、図示外の制御装置と、を含む。遠心力付与装置30は、上記のように構成されたマイクロチップ1,101を保持した後述するチップホルダ47を所定の自転角度に保持して、後述するターンテーブル33を公転させて遠心力CFを付与する。
【0057】
ターンテーブル33は、上下方向を軸として、回転可能に設けられる。ターンテーブル33は、円盤状に設けられる。
【0058】
図6に示すように、チップホルダ47は、回転角度αを0°から90°まで設定できる。チップホルダ47は、チップホルダ47Lと、チップホルダ47Rと、を備える。チップホルダ47Lは、マイクロチップ1より1回り大きく形成され、蓋としての上面、側面、及び底面47LBで囲まれた箱状の部材である。チップホルダ47Lと同様に、チップホルダ47Rは、マイクロチップ101より1回り大きく形成され、蓋としての上面、側面、及び底面47RBで囲まれた箱状の部材である。ターンテーブル33を公転させると、チップホルダ47L、47R内のマイクロチップ1、101の流路形成面2A、102Aに平行な方向にそれぞれ遠心力CFが付与される。さらに、チップホルダ47L、47Rは、マイクロチップ1の流路形成面2A、マイクロチップ101の流路形成面102Aがターンテーブル33の上面と直交する状態でマイクロチップ1、101を保持する。
【0059】
制御装置は、図示外のCPU、RAM、ROM等を備える。ROMは、図8に示す検査プログラム30aを記憶する。制御装置は、検査プログラム30aに従って、ターンテーブル33の公転、及びチップホルダ47の所定角度への自転を制御する。
【0060】
(遠心力付与装置30の公転機構)
遠心力付与装置30の公転機構について図6を用いて説明する。遠心力付与装置30の公転機構は、主軸モータ35と、軸36と、モータプーリ37と、主軸プーリ38と、ベルト39と、主軸57と、ターンテーブル33と、を含む。
【0061】
主軸モータ35は、ターンテーブル33を公転させるために設けられている。主軸モータ35は、回転可能な軸36を備える。
【0062】
モータプーリ37は、軸36に固定される。
【0063】
ベルト39は、モータプーリ37及び主軸プーリ38間に掛け渡されている。
【0064】
主軸プーリ38は、主軸57に固定される。
【0065】
主軸57は、上方向に延設されて上板32の中央部を突き抜けている。主軸57は、ターンテーブル33と接続される。
【0066】
ターンテーブル33は、主軸57を中心に回転可能に設けられる。
【0067】
遠心力付与装置30の公転機構の動作について説明する。主軸モータ35の軸36が回転されると、モータプーリ37、ベルト39及び主軸プーリ38を介して駆動力が主軸57に伝達されてターンテーブル33が公転する。ターンテーブル33が公転すると、チップホルダ47に遠心力CFが付与される。
【0068】
(遠心力付与装置30の自転機構)
遠心力付与装置30の自転機構について図6を用いて説明する。遠心力付与装置30の自転機構は、ステッピングモータ51と、軸58と、カム板59と、突起70と、T型プレート48と、ガイドレール56と、軸受41と、第2軸40と、ラックギア43と、ガイド部材42と、ピニオンギア44と、L型プレート60と、ギア45と、チップホルダ47L、47Rと、を含む。
【0069】
ステッピングモータ51は、チップホルダ47を回転させるために設けられる。ステッピングモータ51は、軸58と、カム板59と、を備える。カム板59は、前から見て円盤状である。カム板59は、軸58の周りに配置され、軸58に固定される。突起70は、カム板59の前方に設けられる。突起70は、前から見て円形状である。
【0070】
T型プレート48は、ガイドレール56上を、上下方向に移動可能に設けられる。T型プレート48は、溝部80を備える。溝部80は、左右方向に延びる溝である。溝部80は、突起70が左右方向に摺動可能に設けられる。図6に示す状態が、T型プレート48が1番下まで下がった状態である。図7に示す状態が、T型プレート48が1番上まで上がった状態である。
【0071】
軸受41は、T型プレート48に接続される。軸受41は、第2軸40の下端部に備えられる。軸受41は、第2軸40を回動可能に保持する。
【0072】
主軸57の内部は中空になっている。第2軸40は、主軸57の内部に、内軸として設けられる。第2軸40は、ラックギア43に接続される。
【0073】
ラックギア43は、上下方向に延びる板状の部材である。ギアが、ラックギア43の左右の側端部に各々刻まれている。ガイド部材42は、ラックギア43を摺動可能に保持する。ラックギア43の両側端部のギアは、1対のピニオンギア44に噛合している。
【0074】
1対のL型プレート60は、1対のギア45を備える。
【0075】
1対のギア45は、1対の回転軸線LA、RAを備える。マイクロチップ1、101の流路形成面2A、102Aが前後方向に直交する場合、1対の回転軸線LA、RAは前後方向に延びる。即ち、1対の回転軸線LA、RAの延長方向と、流路形成面2A、102Aと、は直交する。一対のギア45は、両ピニオンギア44にそれぞれ噛合している。一対のギア45は、L型プレート60に1対の回転軸線LA、RAを中心として自転可能に設けられる。
【0076】
チップホルダ47L,47Rは、両ギア45の回転軸線LA、RAにそれぞれ固定される。
【0077】
遠心力付与装置30の自転機構の動作について説明する。ステッピングモータ51の軸58が回転すると、カム板59が回転する。カム板59が回転すると、カム板59に備えられた突起70が軸58を中心に回転する。突起70が軸58を中心に回転すると、突起70が溝部80内を左右方向に摺動しながら、上下方向に移動する。突起70が上下方向に移動すると、T型プレート48がガイドレール56に沿って上下方向に移動する。T型プレート48が上下方向に移動すると、軸受41を介して、第2軸40が上下動する。第2軸40が上下動すると、ラックギア43が上下動する。ラックギア43が上下動すると、両ピニオンギア44が回転する。両ピニオンギア44が回転すると、両ギア45が回転する。両ギア45が回転すると、両ギア45に固定されたチップホルダ47L,47Rが、両ギア45の回転軸線LA、RAを中心にして自転する。
【0078】
チップホルダ47L、47Rの回転について図6を用いて具体的に説明する。チップホルダ47Lは、左側のギア45の回転軸線LAを中心として、回転角度α=0°からα=90°まで回転する。回転軸線LAは、チップホルダ47Lに保持されたマイクロチップ1の流路形成面2Aに直交する。チップホルダ47Lの回転角度α=0°からα=90°への自転方向を第1の自転方向LDとする。同様に、チップホルダ47Rは、右側のギア45の回転軸線RAを中心として、回転角度α=0°からα=90°まで回転する。回転軸線RAは、チップホルダ47Rに保持されたマイクロチップ101の流路形成面102Aに直交する。チップホルダ47Rの回転角度α=0°からα=90°への自転方向を第2の自転方向RDとする。
【0079】
さらに、チップホルダ47L、47Rは、同一の回転角度で回転する。回転角度α0=0°の状態では、図6に示すように、チップホルダ47Lの底面47LBが遠心力付与装置30の左側に向けられる。同様に、回転角度α0=0°の状態では、チップホルダ47Rの底面47RBがチップホルダ47Lの底面47LBとは反対側である遠心力付与装置30の右側に向けられる。回転角度α=90°の状態では、図7に示すように、チップホルダ47Lの底面47LB及びチップホルダ47Rの底面47RBが遠心力付与装置30の下側に向けられる。
【0080】
(マイクロチップ1、101のチップホルダ47L、47Rへの装着方法)
図7を用いて、マイクロチップ1、101のチップホルダ47L、47Rへの装着方法について説明する。なお、図7のマイクロチップ1,101は、検体及び試薬が予め投入され、カバー部材24が予め貼られている。図2のマイクロチップ1の流路形成面2Aが図7のチップホルダ47Lの前側に向き、図2のマイクロチップ1の下側と図7のチップホルダ47Lの底面47LBとを対向させた状態とする。そして、マイクロチップ1は、図2のマイクロチップ1の下側と図7のチップホルダ47Lの底面47LBとが近づくように、図7の下向きにチップホルダ47Lに挿入され、チップホルダ47Lの蓋が閉じられる。このようにして、マイクロチップ1のチップホルダ47Lへの装着を完了する。
【0081】
同様に、図5のマイクロチップ101の流路形成面102Aが図7のチップホルダ47Rの後側に向き、図5のマイクロチップ101の下側と図7のチップホルダ47Rの底面47RBとを対向させた状態とする。そして、マイクロチップ101は、図5のマイクロチップ101の下側と図7のチップホルダ47Rの底面47RBとが近づくように、図7の下向きにチップホルダ47Rに挿入され、チップホルダ47Rの蓋が閉じられる。このようにして、マイクロチップ101のチップホルダ47Rへの装着を完了する。
【0082】
(検査プログラム30aに従う処理)
図8は、遠心力付与装置30の検査プログラム30aを示すフローチャートである。図8に示すフローチャートを参照して、本実施形態の遠心力付与装置30のCPUが実行する検査プログラム30aについて説明する。
【0083】
遠心力付与装置30のCPUは、検査を開始するための操作部が操作されると、遠心力付与装置30のROMに記憶された検査プログラム30aを読み出してその実行を開始する(S10)。
【0084】
後述する角度変更プログラムS11に従って、チップホルダ47が複数の回転角度αに保持され、ターンテーブル33が回転されチップホルダ47に遠心力CFを付与する(S11)。
【0085】
代数Nに初期値である1を代入する。代数Nは、マイクロチップ1、101の透過光を何回測定したかを示す値である(S12)。代数Nは、制御装置のRAMに記憶される。
【0086】
代数Nが透過光の測定必要回数Nmax以下か否かを判断する(S13)。測定必要回数Nmaxは、予め制御装置のROMに記憶される。測定必要回数Nmaxは、例えば1〜20程度の数である。代数Nが透過光の測定必要回数Nmax以下である場合(Yes)、S14へ進む。代数Nが透過光の測定必要回数Nmaxより大きい場合(No)、S19へ進む。
【0087】
チップホルダ47L内のマイクロチップ1の混合槽20が遠心力付与装置30の図示しない光源から出射される検査光の光路上に位置するようにターンテーブル33を停止させる(S14)。光路は、遠心力付与装置30の光源から出射された検査光が混合槽20を通過して遠心力付与装置30の図示しない検出器に入射されるように設けられる。
【0088】
チップホルダ47L内のマイクロチップ1の混合槽20内の液体に図示しない光源から検査光を出射する。混合槽20を通過した透過光を検出器にて受光する。検出器にて受光された透過光の強度は、制御装置のRAMに記憶される(S15)。
【0089】
チップホルダ47R内のマイクロチップ101の混合槽120が、混合槽20と同様に、検査光の光路上に位置するようにターンテーブル33を半回転させる(S16)。
【0090】
チップホルダ47R内のマイクロチップ101の混合槽120内の液体に向けて検査光を出射する。混合層120を通過した透過光を検出器にて受光する。検出器にて受光された透過光の強度は、制御装置のRAMに記憶される(S17)。
【0091】
代数Nに1を加える(S18)。S18後、S13へ戻る。
【0092】
制御装置のRAMに記憶された透過光の値から吸光度を算出し、既知の濃度をもつ複数の検査液の吸光度を測定して、対象物質の濃度と吸光度との検量線を用いて、対象物質の濃度を算出する(S19)。なお、本実施形態においては、光源及び検出部を用いて透過光の値を測定することで対象物質の濃度を算出したが、他の測定方法で対象物質の濃度を求めてもよい。
【0093】
マイクロチップ1、101に注入された検体の対象物質の濃度を、図示外のコンピュータの画面に表示させる(S20)。
【0094】
検査プログラム30aを終了する(S21)。
【0095】
(角度変更プログラムS11の詳細なフローチャート)
図9は、チップホルダ47の回転角度αを変更してマイクロチップ1、101に異なる方向の遠心力CFを付加する処理のフローチャートである。角度変更プログラムS11について図9〜図25を用いて説明する。
【0096】
図10、図11、図18、及び図19に示す3つの矢印の方向は、遠心力付与装置30にマイクロチップ1,101が装着されて図7に示す所定の初期回転位置にある状態における、上下方向、左右方向、及び前後方向を表す。
【0097】
マイクロチップ1、101がチップホルダ47L、47Rに装着され、検査を開始するための操作部が操作されると、角度変更プログラム21aを開始する(S30)。
【0098】
S31の状態のマイクロチップ1及び遠心力付与装置30について図10を用いて説明する。図10は、遠心力CFを付与する前の検体EL及び試薬M1を充填し、遠心力付与装置30の所定の初期回転位置(α4=90°)にある状態におけるマイクロチップ1の平面図である。図10に示すように、遠心力CFを付与する前の状態では、検体投入部3内の検体EL、及び試薬投入部6内の試薬M1は、下向きにかかる重力により液体が流れない程度に検体供給路7及び試薬供給路10のそれぞれの左右方向の幅が狭く設定されているために、検体供給路7、及び試薬供給路10を流れない(S31)。
【0099】
S31の状態のマイクロチップ101及び遠心力付与装置30について図18を用いて説明する。図18は、遠心力CFを付与する前の検体EL、第1試薬M1、第2試薬M2、及び第3試薬M3を充填し、遠心力付与装置30の所定の初期回転位置(α4=90°)にある状態におけるマイクロチップ101の平面図である。図18に示すように、遠心力CFを付与する前の状態では、検体投入部103内の検体ELと、第1試薬投入部104内の試薬M1、第2試薬投入部105内の試薬M2、及び第3試薬投入部106内の試薬M3は、下向きにかかる重力により液体が流れない程度に検体供給路107と試薬供給路108〜110とのそれぞれの左右方向の幅が狭く設定されているために、検体供給路107、第1試薬供給路108、第2試薬供給路109、及び第3試薬供給路110を流れない(S31)。
【0100】
S32の状態のマイクロチップ1及び遠心力付与装置30について図11を用いて説明する。図11は、回転角度α0=0°の状態で、遠心力CFを付与する前の検体及び試薬を充填した状態にあるマイクロチップ1の平面図である。CPUの制御により、図6に示すマイクロチップ101の状態、即ち遠心力付与装置30のチップホルダ47L内のマイクロチップ1の下側が遠心力付与装置30の左を向くように(α0=0)、ステッピングモータ51を回転させる(S32)。図11に示すように、遠心力CFが付与されていないため、検体投入部3内の検体EL、及び試薬投入部6内の試薬M1は、検体供給路7、及び試薬供給路10を流れない(S32)。
【0101】
S32の状態のマイクロチップ101及び遠心力付与装置30について図19を用いて説明する。図19は、回転角度α0=0°の状態で、遠心力CFを付与する前の検体及び試薬を充填した状態にあるマイクロチップ101の平面図である。CPUの制御により、図6に示すマイクロチップ101の状態、即ち遠心力付与装置30のチップホルダ47R内のマイクロチップ101の下側が遠心力付与装置30の右を向くように(α0=0)、ステッピングモータ51を回転させる(S32)。図19に示すように、遠心力CFが付与されていないため、検体投入部103内の検体EL、第1試薬投入部104内の試薬M1、第2試薬投入部105内の試薬M2、第3試薬投入部106内の試薬M3、は、検体供給路107、第1試薬供給路108、第2試薬供給路109、及び第3試薬供給路110を流れない(S32)。
【0102】
S33の状態のマイクロチップ1及び遠心力付与装置30について説明する。マイクロチップ1への遠心力CFの遠心加速度が500G〔m/s〕(重力加速度G=9.8m/s)となるように、主軸モータ35を駆動し、ターンテーブル33を回転させながら、マイクロチップ1の検体供給路7の延設方向と遠心力CFの向きとの間の角度α0=0°の状態で、10秒間保持する(S33)。
【0103】
図12は、遠心力CFの向きに対する回転角度αがα0=0°の状態にあるマイクロチップ1の平面図である。この処理S33により、図12に示すように、検体投入部3から投入された検体ELは、ターンテーブル33の回転による遠心力CFにより検体供給路7を経由して、空間部11の計量部14に流出する。また、余剰側壁部13の右端部が、第1壁部21Aの左端部より下に設けられている。ゆえに、第1壁部21Aと余剰側壁部13とにより定められる容積を超える量の検体ELは、余剰側壁部13の右端部を乗り越えて余剰槽15に流出する。従って、第1壁部21Aと余剰側壁部13とで作られる計量部14において、所定量の検体ELが計量される。この第1壁部21Aと余剰側壁部13とにより定められる容積は、計量したい容積に基づいて予め設定される。同様に、図12に示すように、試薬投入部6から投入された試薬M1は、ターンテーブル33の回転による遠心力CFにより試薬供給路10を経由して、混合槽20に流出する。
【0104】
S33の状態のマイクロチップ101及び遠心力付与装置30について説明する。マイクロチップ101は、マイクロチップ1の角度設定及び回転と同様に、チップホルダ47Rの角度α=0°に設定されて回転する。即ち、マイクロチップ1と同様に、マイクロチップ101への遠心力CFの遠心加速度が500G〔m/s〕となるように、主軸モータ35を回転させ、ターンテーブル33を回転させながら、マイクロチップ101の検体供給路107の延設方向と遠心力CFの向きとの間の角度α0=0°状態で、10秒間保持する(S33)。
【0105】
図20は、遠心力CFの向きに対する回転角度αがα0=0°の状態にあるマイクロチップ101の平面図である。マイクロチップ1と同様に、この処理S33により、図20に示すように、検体投入部103から投入した検体ELは、遠心力CFにより検体供給路107を経由して、空間部111に流出し溜まる。第1試薬投入部104から投入された第1試薬M1は、遠心力CFにより第1試薬供給路108を経由して、第1混合槽116に流出して溜まる。同様に、第2試薬投入部105から投入された第2試薬M2は、遠心力CFにより第2試薬供給路109を経由して、第2混合槽118に流出して溜まる。同様に、第3試薬投入部106から投入された第3試薬M3は、遠心力CFにより第3試薬供給路110を経由して、第3混合槽120に流出して溜まる。
【0106】
S34の状態のマイクロチップ1及び遠心力付与装置30について図13を用いて説明する。図13は、遠心力CFの向きに対する回転角度αがα1=30°の状態にあるマイクロチップ1の平面図である。図13に示すように、マイクロチップ1への遠心力CFの遠心加速度を500G〔m/s〕に保ったまま、CPUの制御により、遠心力付与装置30のチップホルダ47L内のマイクロチップ1の下側が遠心力付与装置30の斜め下を向くように、具体的にはチップホルダ47L内のマイクロチップ1の検体供給路7の延設方向と遠心力CFの向きとの間の回転角度αが、前記遠心力CFの向きから第1の自転方向LDにα1=30°になるようにステッピングモータ51を回転させ、チップホルダ47Lのマイクロチップ1の回転角度α1=30°の状態で、10秒間保持する(S34)。
【0107】
角度θaは、第1流路21内において、第1壁部21Aの延設方向と遠心力CFの向きとのなす角度であり、遠心力CFの向きから第1の自転方向LDに測った角度である。この処理S34により、図13に示すように、角度θaが90°になる。これにより、図13に示すように、マイクロチップ1の計量部14で計量された検体ELが第1流路21内の第1壁部21Aの左端部を乗り越えて第1貯留槽16に流れ込み溜まる。角度θaが直角又は鈍角であれば、検体ELは第1貯留槽16に流れ込み溜まる。
【0108】
角度θbは、第2流路22内において、遠心力CFの向きと第2壁部22Aの延設方向とのなす角度であり、遠心力CFの向きから第1の自転方向LDに測った角度である。この処理S34により、図13に示す角度θbが75°(鋭角)となる。このため、第1貯留槽16に溜まった検体ELは、第2貯留槽18に流れ込まない。角度θbが鋭角であれば、検体ELは第2貯留槽18に流れ込まない。
【0109】
S34の状態のマイクロチップ101及び遠心力付与装置30について図21を用いて説明する。図21は、遠心力CFの向きに対する回転角度αがα1=30°の状態にあるマイクロチップ101の平面図である。処理S34により、図21に示すように、遠心力付与装置30のチップホルダ47R内のマイクロチップ101の下側が遠心力付与装置30の斜め下を向くように、具体的にはチップホルダ47R内のマイクロチップ101の検体供給路107の延設方向と遠心力CFの向きとの間の回転角度αが、前記遠心力CFの向きから第1の自転方向RDにα1=30°になるようにステッピングモータ51を回転させ、チップホルダ47Rのマイクロチップ101の回転角度α1=30°の状態で、10秒間保持する(S34)。
【0110】
角度θa1は、第1流路121において第1壁部121Aの延設方向と遠心力CFの向きとのなす角度であり、遠心力CFの向きから第2の自転方向RDに測った角度である。マイクロチップ1と同様に、処理S34により、角度θa1が90°になる。これにより、図21に示すように、計量部114で計り取られた検体ELが第1流路121内の第1壁部121Aの左端部を乗り越えて第1混合槽116に流れ込む。そして、S31の処理で第1混合槽116に溜まった第1試薬M1と混合され、混合液体B1となる。角度θa1が直角又は鈍角になれば、検体ELは第1混合槽116に流出する。
【0111】
角度θb1は、第2流路122において第2壁部122Aの延設方向と遠心力CFの向きとのなす角度であり、遠心力CFの向きから第2の自転方向RDに測った角度である。この処理S34により、図21に示す角度θb1が75°(鋭角)となる。このため、第1混合槽116に溜まった混合液体B1は、第2流路122内の第2壁部122A左端部を越えて、第2混合槽118へ移動しない。角度θb1が鋭角であれば、混合液体B1は第2混合槽118に流れ込まない。
【0112】
角度θc1は、第3流路123において第3壁部123Aの延設方向と遠心力CFの向きとのなす角度であり、遠心力CFの向きから第2の自転方向RDに測った角度である。この処理S34により、図21に示す角度θc1が60°(鋭角)となる。このため、第2混合槽118に溜まった第2試薬M2は、第3流路123内の第3壁部123Aの先端部を越えて、第3混合槽120へ移動しない。角度θc1が鋭角であれば、第2試薬M2は第3混合槽120に流れ込まない。
【0113】
S35の状態のマイクロチップ1及び遠心力付与装置30について図14を用いて説明する。図14は、遠心力CFの向きに対する回転角度αがα2=45°の状態にあるマイクロチップ1の平面図である。マイクロチップ1への遠心力CFの遠心加速度を500G〔m/s〕に保ったまま、上記同様の制御で、遠心力付与装置30のチップホルダ47L内のマイクロチップ1の下側が遠心力付与装置30の斜め下を向くように、具体的には図14に示すマイクロチップ1の検体供給路7の延設方向と遠心力CFの向きとの間の回転角度αが、前記遠心力CFの向きから第1の自転方向LDにα2=45°になるようにステッピングモータ51を回転させ、チップホルダ47Lのマイクロチップ1の回転角度α2=45°の状態で、10秒間保持する(S35)。
【0114】
この処理S35により、図14に示す角度θbが90°になる。これにより、図14に示すように、第1貯留槽16に溜まった検体ELが第2流路22内の第2壁部22Aの先端部を乗り越えて第2貯留槽18に流れ込む。角度θbが直角又は鈍角であれば、検体ELは第2貯留槽18に流れ込み溜まる。
【0115】
角度θcは、第3流路23内において、遠心力CFの向きと第3壁部23Aの延設方向とのなす角度であり、遠心力CFの向きから第1の自転方向LDに測った角度である。この処理S35により、図14に示す角度θcが75°(鋭角)となる。このため、第2貯留槽18に溜まった検体ELは、第3流路23内の第3壁部23Aの先端部を越えて、混合槽20に流れ込まない。角度θcが鋭角であれば、検体ELは混合槽20に流れ込まない。
【0116】
S35の状態のマイクロチップ101及び遠心力付与装置30について図22を用いて説明する。図22は、遠心力CFの向きに対する回転角度αがα2=45°の状態にあるマイクロチップ101の平面図である。処理S35により、図22に示すように、遠心力付与装置30のチップホルダ47R内のマイクロチップ101の下側が遠心力付与装置30の斜め下を向くように、具体的にはチップホルダ47R内のマイクロチップ101の検体供給路107の延設方向と遠心力CFの向きとの間の回転角度αが、前記遠心力CFの向きから第1の自転方向RDにα2=45°になるようにステッピングモータ51を回転させ、チップホルダ47Rのマイクロチップ101の回転角度α2=45°の状態で、10秒間保持する(S35)。
【0117】
この処理S35により、マイクロチップ1と同様に、角度θb1が90°になる。このため、図22に示すように、マイクロチップ101の第1混合槽116の混合液体B1が第2流路122内の第2壁部122Aの先端部を乗り越えて第2混合槽118に流れ込む。そして、S33の処理で第2混合槽118に溜まった第2試薬M2と混合され、混合液体B2となる。角度θb1が直角又は鈍角になれば、混合液体B1は第2混合槽118に流れ込む。
【0118】
この処理S35により、図22に示すθc1が75°(鋭角)となる。このため、第2混合槽118に溜まった混合液体B2は、第3流路123内の第3壁部123Aの先端部を越えて、第3混合槽120に流れ込まない。角度θc1が鋭角であれば、検体ELは第3混合槽120に流れ込まない。
【0119】
S36の状態のマイクロチップ1及び遠心力付与装置30について図15を用いて説明する。図15は、遠心力CFの向きに対する回転角度αがα3=60°の状態にあるマイクロチップ1の平面図である。マイクロチップ1への遠心力CFの遠心加速度を500G〔m/s〕に保ったまま、上記同様の制御で、遠心力付与装置30のチップホルダ47L内のマイクロチップ1の下側が遠心力付与装置30の斜め下を向くように、具体的には、図15に示すマイクロチップ1の検体供給路7の延設方向と遠心力CFの向きとの間の回転角度αが、前記遠心力CFの向きから第1の自転方向LDにα3=60°になるようにステッピングモータ51を回転させ、チップホルダ47Lのマイクロチップ1の回転角度α3=60°の状態で、10秒間保持する(S36)。
【0120】
この処理S36により、角度θcが90°になる。これにより、図15に示すように、第2貯留槽18に溜まった検体ELが第3流路23内の第3壁部23Aの先端部を乗り越えて混合槽20に流れ込む。そして、検体ELは、S31の処理で混合槽20に溜まった試薬M1と混合され、混合液体B4となる。角度θcが直角又は鈍角であれば、検体ELは混合槽20に流出する。
【0121】
S36の状態のマイクロチップ101及び遠心力付与装置30について図23を用いて説明する。図23は、遠心力CFの向きに対する回転角度αがα3=60°の状態にあるマイクロチップ101の平面図である。
【0122】
この処理S36により、遠心力付与装置30のチップホルダ47R内のマイクロチップ101の下側が遠心力付与装置30の斜め下を向くように、具体的には、図23に示すマイクロチップ101の検体供給路107の延設方向と遠心力CFの向きとの間の回転角度αが、前記遠心力CFの向きから第1の自転方向RDにα3=60°になるようにステッピングモータ51を回転させ、チップホルダ47Rのマイクロチップ101の回転角度α3=60°の状態で、10秒間保持する(S36)。この処理S36により、マイクロチップ1と同様に、角度θc1が90°となる。このため、図23に示すように、第2混合槽118内の混合液体B2が第3流路123内の第3壁部123Aの先端部を乗り越えて第3混合槽120に流れ込み、S31の処理で第3混合槽120に溜まった第3試薬M3と混合され、混合液体B3となる。
【0123】
S37の状態のマイクロチップ1及び遠心力付与装置30について図16を用いて説明する。図16は、遠心力CFの向きに対する回転角度αがα4=90°の状態にあるマイクロチップ1の平面図である。マイクロチップ1への遠心力CFの遠心加速度を500G〔m/s〕に保ったまま、上記同様の制御で、遠心力付与装置30のチップホルダ47L内のマイクロチップ1の下側が遠心力付与装置30の下を向くように、具体的には、図16に示すマイクロチップ1の検体供給路7の延設方向と遠心力CFの向きとの間の回転角度αが、前記遠心力CFの向きから第1の自転方向LDにα4=90°になるようにステッピングモータ51を回転させる(S37)。この処理S37により、混合槽20内の第3流路23から遠い側に混合液体B4が寄せられる。
【0124】
S37の状態のマイクロチップ101及び遠心力付与装置30について図24を用いて説明する。図24は、遠心力CFの向きに対する回転角度αがα4=90°の状態にあるマイクロチップ101の平面図である。処理S37により、遠心力付与装置30のチップホルダ47R内のマイクロチップ101の下側が遠心力付与装置30の下を向くように、具体的には、図24に示すマイクロチップ101の検体供給路107の延設方向と遠心力CFの向きとの間の回転角度αが、前記遠心力CFの向きから第1の自転方向RDにα4=90°になるように回転される(S37)。処理S37により、混合槽120内の第3流路123から遠い側に混合液体B3が寄せられる。
【0125】
S38の状態のマイクロチップ1及び遠心力付与装置30について図17を用いて説明する。図17は、遠心力CFの付与を終了し、回転角度αがα4=90°の状態にあるマイクロチップ1の平面図である。ターンテーブル33の回転を停止させ、遠心力CFの付与を終了する(S38)。この処理S38により、図17に示すように、混合槽20の下部の混合液体B4が攪拌されて溜まる。この際、余剰槽15に溜まった余剰の検体ELは余剰槽15の外部に流出しない。
【0126】
S38の状態のマイクロチップ101について図25を用いて説明する。図25は、遠心力CFの付与を終了し、回転角度αがα4=90°の状態にあるマイクロチップ101の平面図である。マイクロチップ1と同様に、この処理S38により、図25に示すように、マイクロチップ101の第3混合槽120の下部に混合液体B3が攪拌されて溜まる。この際、余剰槽115に溜まった余剰の検体ELは余剰槽115の外部に流出しない。
【0127】
遠心力付与装置30のターンテーブル33を停止させ、角度変更プログラムS11を終了する(S39)。
【0128】
(第1の実施形態の効果)
マイクロチップ1,101を用いることにより、ステッピングモータ51の同一の自転駆動パターン、かつ1回の検査工程により、異なるタイミングで各マイクロチップ内の検体と試薬とを混合することができる。
【0129】
また、マイクロチップ1,101を用いることにより、ステッピングモータ51の同一の自転駆動パターン、かつ1回の検査工程により、両マイクロチップ内で異なる数の試薬を混合し、混合液体B3、B4を同時に作成することができる。
【0130】
(第2の実施形態)
図26は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロチップ1Bの平面図である。本発明の第2の実施形態に係るマイクロチップ1Bについて図26を参照して説明する。図26に示す3つの矢印の方向は、遠心力付与装置30のチップホルダ47Lにマイクロチップ1Bを装着して所定の初期回転位置にある状態における、上下方向、左右方向、及び前後方向を表す。
【0131】
第1の実施形態に係るマイクロチップ1は、計量部11にて検体ELを計量したが、検体を計量しなくてもよい。具体的には、図26に示すように、マイクロチップ1Bは、マイクロチップ1と異なり、検体供給路7から流れてきた検体を溜める検体溜部11Bを備える。検体溜部11Bは、計量部及び余剰槽を有していないため、検体を計量、余剰溜めしない。逆に、第1貯留槽、第2貯留槽、混合槽、第1混合槽、第2混合槽、第3混合槽等、第1流路、第2流路、第3流路等の各種槽及び流路のいずれかに、計量部及び余剰槽が設けられていても良い。各種槽及び流路に計量部及び余剰槽が設けられていることにより、混ぜ合わせる検体及び試薬の量を計量することができる。その結果、予めマイクロチップ1、101に注入する試薬及び検体を計量しなくても、所定の回転角度にチップホルダを変更させるだけで、検体及び試薬を適切な量で混合させることができる。
【0132】
第1の実施形態に係るマイクロチップ1は、第1流路21が第1貯留槽16の上端に接続された。しかしながら、第1流路は第1下流路を有さず、第1貯留槽の右端に接続されてもよい。具体的には、図26に示すように、第1流路21Bは、検体溜部11Bの左端に接続され、斜め上方に延び、貯留槽16Bの右端に接続される。第2流路、第3流路においても同様に、貯留槽又は混合槽の右端に接続されていてもよい。第1流路、第2流路、及び第3流路の断面積の大きさは特に制限されず、断面積の大きさは、第1壁部、第2壁部、及び第3壁部が、所定の延設方向に延びており、検体又は試薬が流動可能に設計されていれば、例えば前記流路の下流側に近づくに従って大きくなったり小さくなったりしてもよい。
【0133】
第1の実施形態に係るマイクロチップ1は、貯留槽として、第1貯留槽16と、第2貯留槽18と、を備えていた。しかしながら、貯留槽は、1つであってもよい。具体的には、図26に示すように、マイクロチップ1Bは、マイクロチップ1と異なり、第2貯留槽18、及び第3流路23の2つの構成部分を備えておらず、第1貯留槽16の代わりに貯留槽16B、第2流路22の代わりに第2流路22Bを備える。第2壁部22ABは、第2流路22Bの下側の壁であり、前後方向に延びる面を有する壁部である。角度θ4は、遠心力付与装置30の第1の自転方向LDにおいて、第2壁部22ABから、第2壁部22ABから左方向に伸びる仮想線RL4までの角度である。角度θ4は、鋭角の角度、例えば60°である。第2壁部が、検体と試薬とが所定の混合タイミングに混合されるよう所定の方向に延びているならば、貯留槽は1つであっても、3つ以上であっても構わない。同様に、第1の実施形態においては、マイクロチップ1、101は、第1流路21、第2流路22、及び第3流路23の計3つの流路がそれぞれ備えられていたが、流路は、2つであっても、4つ以上あっても構わない。
【0134】
図26に示すように、第2壁部22ABは、貯留槽16Bの左下端と第2流路22Bとに渡って、設けられていてもよい。これにより、貯留槽16B内の検体は、第2流路22Bに流れやすくなる。第2壁部に限らず、第1壁部、第3壁部も同様に、計量部と第1流路、第2貯留槽と第3流路、に渡って、設けられていてもよい。貯留槽は、検体を収容可能な容積を有していれば多角形、又は円形、楕円形等の面取りされている形であってもよい。同様に、混合槽は、混合液体を収容可能な容積を有していれば、多角形、円形、楕円形等の面取りされている形であってもよい。
【0135】
第1の実施形態に係るマイクロチップ1は、試薬投入部6と、試薬供給路10と、を備える。しかしながら、試薬投入部6、及び試薬供給路10はなくても構わない。図26に示すように、マイクロチップ1Bは、第1の実施形態に係るマイクロチップ1と異なり、試薬投入部6と、試薬供給路10と、が設けられていない。その代わりに、混合槽20Bに直接試薬を予め投入しておいて、混合槽20Bにて、試薬と検体とを混合する。同様に、検体投入部3と検体供給路7とは、なくてもよく、検体溜部11Bに直接検体を予め投入しておいてもよい。ただし、混合槽20B内の液体が、第2流路22Bを通って逆流しないように、第2流路22Bの下端は、混合槽20B上端の中心付近に接続されている必要がある。また、具体的には、第2流路22Bの延設方向を挟んで、混合槽20Bの左側、及び右側に、それぞれ試薬、又は混合液体が貯留可能な程度の容積を有する必要がある。第2流路22Bの下端が、混合槽20B上端の中心付近に接続されているため、遠心力CFの付与前のα4=90°の状態、遠心力CFの付与前のα0=0°の状態、及び遠心力CFの付与している間のα4=90°の状態等、角度変更プログラムS11のいずれの状態においても、混合槽20B内の液体が、第2流路22Bに逆流することはない。
【0136】
(マイクロチップの流路及び槽に関する変形例)
本実施形態においては、マイクロチップ1は、流路形成面2Aに向かって、右側に検体投入部3、左側に試薬投入部6が設けられたが、左側に検体投入部3、右側に試薬投入部6、即ち流路及び槽の構成を左右対称に配置しても良い。ただし、図7において、チップホルダ47Lにマイクロチップの流路形成面を後ろ側に向けて挿入する必要がある。マイクロチップ101も同様に流路及び槽の構成を左右対称に配置してもよい。ただし、図7において、チップホルダ47Rに流路形成面を前側に向けて挿入する必要がある。
【0137】
本実施形態においては、検体投入部3、試薬投入部6は前後方向の厚みが一定であったが、検体投入部3、試薬投入部6は、検体供給路7、試薬供給路10に近づくにつれ、前後方向の厚みを薄くしていってもよい。検体供給路7、試薬供給路10の前後方向の厚みを薄くすることで、より微量の検体及び試薬を精度よく計量することができる。
【0138】
本実施形態においては、マイクロチップ1、101共に、検体ELは1つあったが、それぞれのマイクロチップ1、101内に検体は、2つ以上あっても構わない。本実施形態においては、マイクロチップ101の検体ELは、第1試薬M1、第2試薬M2、第3試薬M3の3つの試薬と混合されたが、第1試薬投入部104、第2試薬投入部105、又は第3試薬投入部106のいずれかの1つの試薬投入部に試薬を投入せず、検体ELと2つの試薬とを混合させてもよい。同様に、第1試薬投入部104、又は第2試薬投入部105のみに、試薬を1つ投入し、検体ELと1つの試薬とを混合させてもよい。試薬投入部を新たに設け、検体ELと4つ以上の試薬とを混合させてもよい。
【0139】
なお、本実施形態では、検体は、血液、血漿、又は血清として説明したが、これに限ることない。具体的には、検体は、薬剤等の試薬、試薬と血液との混合液体等であってもよく、所望の検査に応じて利用者によって適宜選択可能である。
【0140】
(マイクロチップの流路及び槽以外の変形例)
本実施形態においては、板部材2,102及びカバー部材24の材質は特に制限されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAR)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリブタジエン樹脂(PBD)、生分解性ポリマー(BP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの有機材料を用いることができる。また、シリコン、ガラス、石英等の無機材料を用いても良い。
【0141】
本実施形態においては、板部材2,102は、長方形の板であったが、流路が形成できる程度の面積を有す流路形成面を有していれば、正方形等の多角形、又は円形、楕円形等の面取りされている形であってもよい。チップホルダ47L、47Rは、前記種々の板部材の形状に合わせて収納可能に形成されていればよい。
【0142】
本実施形態においては、カバー部材24は、可とう性のフィルムだけではなく、フィルムよりも剛性の高いシート状の物質であっても構わない。また、板部材2と同程度以上の硬度を有し、同質の材料からなる基板であってもよい。基板は、例えば特開2006−234600号公報に記載されて公知である。
【0143】
本実施形態においては、板部材2,102は射出成形にて製造したが、真空成形等の他の各種樹脂成形法や、機械切削等により製造してもよい。
【0144】
(遠心力付与装置の変形例)
本実施形態においては、チップホルダ47L、47Rは、マイクロチップ1の流路形成面2A、及びマイクロチップ101の流路形成面102Aがターンテーブル33の上面と直交する状態でマイクロチップ1、101を保持したが、チップホルダ47L、47Rは、マイクロチップの流路形成面がターンテーブルの上面と平行な状態でマイクロチップを保持してもよい。マイクロチップの流路形成面がターンテーブルの上面と平行な状態でマイクロチップを保持する遠心力付与装置は、例えば特開2008−8875号公報に記載されているように公知である。これに限らず、遠心力付与装置は、チップホルダに遠心力CFを付加し、チップホルダを所定の回転角度に変更できる構成であればよい。
【0145】
本実施形態においては、チップホルダ47は、チップホルダ47Lと、チップホルダ47Rと、を備えていたが、チップホルダ47は3つ以上あっても構わない。
【0146】
本実施形態においては、ターンテーブル33は、円盤状であったが、上下方向を軸として回転可能に設けられていれば多角形状等種々の形状であっても構わない。
【0147】
本実施形態においては、遠心力付与装置30は、検査光を出射する光源と、透過光を受光する検出部と、を備えたが、遠心力付与装置に光源、及び検出部が設けられていなくてもよい。具体的には、角度変更プログラムが終了後、即ち検体と試薬とを混合した後、遠心力付与装置30とは別の光源及び検出部を備える装置にマイクロチップ1、101を装着し、透過光の測定を行うことができる。
【0148】
本実施形態においては、1対の回転軸線LA、RAの延長方向と、流路形成面2A、102Aと、は直交していた。しかしながら、前記直交とは、必ずしも流路形成面2A、102Aと1対の回転軸線LA、RAの延長方向とのなす角度が数学的意味において直角であることを意味せず、1対の回転軸線LA、RAを中心として所定の自転角度に変更した際に遠心力CFの向きを所望の方向に切り替えられる程度に所定の誤差を許容し鋭角又は鈍角であってもよい。
【0149】
本実施形態においては、チップホルダ47L、47R内のマイクロチップ1、101の流路形成面2A、102Aに平行な方向にそれぞれ遠心力CFが付与された。しかしながら、前記平行な方向とは、必ずしも流路形成面2A、102Aと遠心力CFの向きが数学的な意味において平行であることを意味せず、遠心力CFを付与させることで各種流路及び槽内で所望の方向にマイクロチップ内の液体を流動させることができる程度に所定の誤差を許容し交差してもよい。上記所定の誤差に伴い、第1の自転方向LD、第2の自転方向RDも、方向の変化を許容する。
【0150】
本実施形態においては、遠心力付与装置30の遠心力は、α0、α1、α2、α3、α4のいずれの回転角度においても、同じ500G〔m/s〕であったが、所定の流路又は槽を検体又は混合液体が移動可能な程度の力であれば、遠心力がα0、α1、α2、α3、α4のそれぞれの回転角度で、異なっていたとしても構わない。また、遠心力CFの遠心加速度は、例えば100G〜5000G〔m/s〕程度の値であればよい。同様に、遠心力付与装置30の回転時間は、α0、α1、α2、α3のいずれの回転角度においても、10秒であったが、所定の流路又は槽を検体又は混合液体が移動可能な程度の時間であれば、回転時間がα0、α1、α2、α3のそれぞれの回転角度で、異なっていたとしても構わない。回転時間は、例えば1〜30秒程度の時間であればよい。
【0151】
本実施形態においては、回転角度αは順に、角度α0=0°、α1=30°、α2=45°、及びα3=60°に変更されたが、0°≦α0<α1<α2<α3≦90°の関係を満たしていればよい。さらに回転角度αは、角度θ1、θ2、θ3との関係性を交えると、0°≦α0<θ1≦α1<θ2≦α2<θ3≦α3≦90°の関係を満たしていればよい。0°≦α0<θ1であるため、回転角度αがα0に設定された際に、計量部14内の検体ELが、角度θ1に延設される第1壁部21Aを有する第1流路21を通って、第1貯留槽16に流れ込むことはない。θ1≦α1<θ2であるため、回転角度αがα1に設定された際に、計量部14内の検体ELが、角度θ1に延設される第1壁部21Aを有する第1流路21を通って、確実に第1貯留槽16に流れ込む。θ2≦α2<θ3であるため、回転角度αがα2に設定された際に、第1貯留槽16の検体ELが、角度θ2に延設される第2壁部22Aを有する第1流路22を通って、確実に第2貯留槽18に流れ込む。θ3≦α3であるため、回転角度αがα3に設定された際に、第2貯留槽18の検体ELが、角度θ3に延設される第3壁部23Aを有する第3流路23を通って、確実に混合槽20に流れ込む。
【0152】
また、上述した説明では、実施形態および変形例について別々の例として説明したが、これに限ることはない。即ち、それぞれを組み合わせた構成として、実施形態および一部の変形例を適宜組み合わせて利用してもよい。
【0153】
最後に、上述した実施形態は本発明の一例であり、本発明は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、必要に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0154】
本実施形態におけるマイクロチップ1,1Bは、本発明に係る検査対象受体の一例である。本実施形態における流路形成面2Aは、本発明における流路形成面の一例である。本実施形態におけるマイクロチップ1、1Bは、本発明に係る第1の検査対象受体の一例である。本実施形態における角度α0=0°、α1=30°、α2=45°、及びα3=60°は、本発明における複数の所定の回転角度の一例である。本実施形態における検体ELは、本発明における検査対象の液体の一例である。本実施形態における試薬M1は、本発明における試薬の一例である。本実施形態における検体投入部3は、本発明における検体投入部の一例である。本実施形態における第1流路21は、本発明における第1流路の一例である。本実施形態における第1貯留槽16、第2貯留槽18、又は貯留槽16Bは、本発明における貯留槽の一例である。本実施形態における混合槽20は、本発明における混合槽の一例である。本実施形態における第2流路22は、本発明における第2流路の一例である。本実施形態における混合液体B1、又はB2は、本発明における混合液体の一例である。本実施形態における回転軸線LA、RAは、本発明における自転軸線の一例である。本実施形態における第1の自転方向LD、及び第2の自転方向RDは、順に本発明における第1自転方向、及び第2自転方向の一例である。
【0155】
本実施形態におけるマイクロチップ101は、本発明における第2の検査対象受体の一例である。本実施形態における流路形成面102Aは、本発明における第2の検査対象受体の流路形成面の一例である。本実施形態における第1混合槽116、又は第2混合槽118は、本発明における第2の検査対象受体の第1混合槽の一例である。本実施形態における第3混合槽120は、本発明における第2の検査対象受体の第2混合槽の一例である。本実施形態における検体投入部103は、本発明における第2の検査対象受体の検体投入部の一例である。本実施形態における第1流路121、第2流路122は、順に本発明における第2の検査対象受体の第1流路、第2の検査対象受体の第2流路の一例である。本実施形態におけるマイクロチップ1、101は、本発明における複数の検査対象受体の一例である。
【0156】
本実施形態における主軸57に垂直な方向に作用する遠心力CFの向きは、本発明における遠心力の向きの一例である。本実施形態における遠心力付与装置30は、本発明における遠心力付与装置の一例である。本実施形態におけるターンテーブル33は、本発明における回転体の一例である。本実施形態におけるチップホルダ47は、本発明における保持体の一例である。本実施形態におけるチップホルダ47L、47Rは、本発明における複数の保持体の一例である。本実施形態における主軸モータ35は、本発明における公転駆動部の一例である。本実施形態におけるステッピングモータ47は、本発明における自転駆動部の一例である。本実施形態におけるマイクロチップ1、101、及び遠心力付与装置30は、本実施形態における液体混合システムの一例である。
【0157】
本実施形態における第1壁部21A、及び第2壁部22Aは、順に本発明における第1壁部、及び第2壁部の一例である。本実施形態における角度α1=30°、又は角度α2=45°は、第1の回転角度の一例である。本実施形態における角度α1=30°、又は角度α2=45°は、第3の回転角度の一例である。本実施形態における角度α3=60°は、第2の回転角度の一例である。本実施形態における角度α3=60°は、第4の回転角度の一例である。
【0158】
本実施形態における第1壁部21Aの延設方向、第2壁部22Aの延設方向は、順に本発明における第1延設方向、第2延設方向の一例である。本実施形態における第1壁部121Aの延設方向、第2壁部122Aの延設方向は、順に本発明における第3延設方向、第4延設方向の一例である。本実施形態における角度θa、θbは、本発明における「遠心力の向きから第1延設方向までの角度」の一例である。本実施形態における角度θa1、θb1は、本発明における「遠心力の向きから第3延設方向までの角度」の一例である。本実施形態における角度θcは、本発明における「遠心力の向きから第2延設方向までの角度」の一例である。本実施形態における角度θc1は、本発明における「遠心力の向きから第4延設方向までの角度」の一例である。
【0159】
本実施形態におけるS11は、本発明における液体混合方法の一例である。本実施形態におけるS33は、本発明における回転工程の一例である。本実施形態におけるS34、又はS35は、本発明における第1自転工程の一例である。本実施形態におけるS36は、本発明における第2自転工程の一例である。
【符号の説明】
【0160】
1 マイクロチップ
2 板部材
2A 流路形成面
3 検体投入部
6 試薬投入部
7 検体供給路
10 試薬供給路
11 空間部
13 余剰側壁部
14 計量部
15 余剰槽
16 第1貯留槽
18 第2貯留槽
20 混合槽
21 第1流路
21A 第1壁部
22 第2流路
22A 第2壁部
23 第3流路
23A 第3壁部
24 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、
前記回転体上に設けられ、所定の流路形成面を有する検査対象受体を保持可能な保持体と、
前記回転体を回転させ、前記保持体により保持された前記検査対象受体の前記所定の流路形成面に平行な方向に遠心力を付与する公転駆動部と、
前記保持体により保持された前記検査対象受体の所定の流路形成面に直交する自転軸線を中心にして前記保持体を複数の所定の回転角度に変更する自転駆動部と、を備える遠心力付与装置に使用される検査対象受体であって、
前記検査対象受体の所定の流路形成面には、
検査対象の液体が投入される検体投入部と、
検査対象の液体が貯留可能に形成された貯留槽と、
前記検査対象受体が前記遠心力の向きに対して前記複数の所定の回転角度のうち第1の回転角度以上に自転された際に、前記検体投入部から供給される検査対象の液体が前記貯留槽へ流れるよう形成された第1流路と、
検査対象の液体と試薬とを混合する混合槽と、
前記検査対象受体が前記遠心力の向きに対して前記第1の回転角度より大きな第2の回転角度以上に自転された際に、前記貯留槽に貯められる検査対象の液体が前記混合槽へ流れるよう形成された第2流路と、
を備えることを特徴とする検査対象受体。
【請求項2】
前記第1流路は、検査対象の液体が前記貯留槽へ流れるように第1延設方向に延びる第1壁部を有し、
前記第2流路は、検査対象の液体が前記混合槽へ流れるように第2延設方向に延びる第2壁部を有し、
前記検査対象受体が所定の自転方向に前記第1の回転角度に自転された際に、前記第1壁部は、前記所定の自転方向において前記遠心力の向きから前記第1延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、
前記検査対象受体が前記所定の自転方向に前記第2の回転角度に自転された際に、前記第2壁部は、前記所定の自転方向において前記遠心力の向きから前記第2延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の検査対象受体。
【請求項3】
第1の検査対象受体としての請求項1又は2に記載の検査対象受体と、所定の流路形成面を有し、前記第1の検査対象受体とは異なる第2の検査対象受体と、遠心力付与装置と、を備える液体混合システムであって、
前記第2の検査対象受体の所定の流路形成面には、
検査対象の液体を投入する検体投入部と、
検査対象の液体と試薬とを混合する第1混合槽と、
前記第2の検査対象受体が前記遠心力の向きに対して前記第2の回転角度より小さい第3の回転角度に自転された際に、前記第2の検査対象受体の検体投入部から供給される検査対象の液体が前記第2の検査対象受体の第1混合槽へ流れるよう形成された第1流路と、を備え、
前記遠心力付与装置は、
回転体と、
前記回転体上に設けられ、前記第1及び第2の検査対象受体を含む複数の検査対象受体を装着可能に構成され、前記複数の検査対象受体をそれぞれ保持する複数の保持体と、
前記回転体を回転させ、前記複数の保持体に遠心力を付与する公転駆動部と、
前記複数の保持体によりそれぞれ保持された前記複数の検査対象受体の各検査対象受体の流路形成面に直交する自転軸線を中心にして前記複数の保持体の各々を前記複数の所定の回転角度に変更する自転駆動部と、
を備えることを特徴とする液体混合システム。
【請求項4】
前記第1の検査対象受体の前記第1流路は、検査対象の液体が前記貯留槽へ流れるように第1延設方向に延びる第1壁部を有し、
前記第1の検査対象受体の前記第2流路は、検査対象の液体が前記混合槽へ流れるように第2延設方向に延びる第2壁部を有し、
前記第1の検査対象受体が所定の自転方向としての第1自転方向に前記第1の回転角度に自転された際に、前記第1壁部は、前記第1自転方向において前記遠心力の向きから前記第1延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、
前記第1の検査対象受体が前記第1自転方向に前記第2の回転角度に自転された際に、前記第2壁部は、前記第1自転方向において前記遠心力の向きから前記第2延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、
前記第2の検査対象受体の第1流路は、検査対象の液体が前記第2の検査対象受体の第1混合槽へ流れるように第3延設方向に延びる第1壁部を有し、
前記第2の検査対象受体が第2自転方向に前記第3の回転角度に自転された際に、前記第2の検査対象受体の第1壁部は、前記第2自転方向において前記遠心力の向きから前記第3延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成されることを特徴とする請求項3に記載の液体混合システム。
【請求項5】
前記第2の検査対象受体の所定の流路形成面には、
前記第2の検査対象受体の第1混合槽にて混合された混合液体と試薬とを混合する第2混合槽と、
前記第2の検査対象受体が前記遠心力の向きに対して前記第2の回転角度に自転された際に、前記混合液体が前記第1混合槽から前記第2混合槽へ流れるよう形成された第2流路と、を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体混合システム。
【請求項6】
前記第1の検査対象受体の第1流路は、検査対象の液体が前記貯留槽へ流れるように第1延設方向に延びる第1壁部を有し、
前記第1の検査対象受体の第2流路は、検査対象の液体が前記混合槽へ流れるように第2延設方向に延びる第2壁部を有し、
前記第1の検査対象受体が所定の自転方向としての第1自転方向に前記第1の回転角度に自転された際に、前記第1の検査対象受体の第1壁部は、前記第1自転方向において前記遠心力の向きから前記第1延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、
前記第1の検査対象受体が前記第1自転方向に前記第2の回転角度に自転された際に、前記第1の検査対象受体の第2壁部は、前記第1自転方向において前記遠心力の向きから前記第2延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、
前記第2の検査対象受体の第1流路は、検査対象の液体が前記第2の検査対象受体の第1混合槽へ流れるように第3延設方向に延びる第1壁部を有し、
前記第2の検査対象受体が第2自転方向に前記第3の回転角度に自転された際に、前記第2の検査対象受体の第1壁部は、前記第2自転方向において前記遠心力の向きから前記第3延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成され、
前記第2の検査対象受体の第2流路は、前記混合液体が前記第2の検査対象受体の第2混合槽へ流れるように第4延設方向に延びる第2壁部を有し、
前記第2の検査対象受体が前記第2自転方向に前記第2の回転角度に自転された際に、前記第2の検査対象受体の第2壁部は、前記第2自転方向において前記遠心力の向きから前記第4延設方向までの角度が直角又は鈍角となるように形成されることを特徴とする請求項5に記載の液体混合システム。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の液体混合システムを用いる液体混合方法であって、
前記第1の検査対象受体及び前記第2の検査対象受体含む複数の検査対象受体を保持する複数の保持体に遠心力が付与されるよう回転体を回転させる回転工程と、
前記複数の保持体を同時に前記第1の回転角度に自転させる第1自転工程と、
前記複数の保持体を同時に前記第2の回転角度に自転させる第2自転工程と、
を有することを特徴とする液体混合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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