説明

検査方法、検査装置及び検査プログラム

【課題】電子機器の製品製造検査において検査時間を短縮する検査方法、検査装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】本発明は音声通信機能かつFM音源による着信音の音響再生出力をスピーカ及びヘッドホンから出力する機能を有する電子機器の製品製造検査時間の短縮方法であり、音声通信出力信号、音響再生回路であるスピーカ出力信号及びヘッドホン出力信号をそれぞれ電圧計で測定するさいに、測定レンジ切り替えが不要となるようにCPU(中央演算処理装置)からシリアルI/F(インターフェース)信号を使用してオーディオICの内部ゲインを調整することでレンジ切り替え時間を削除し実現する方法と、前記出力信号A、B、Cをそれぞれ測定する際に出力レベルをそのまま測定するのではなく、出力OFF状態から出力ON状態での出力論理の切り替わりを確認し、その切り替わりで検査の合否判定することで検査時間短縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の製品製造検査において検査時間を短縮する検査方法、検査装置及び検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、職場や家庭において携帯電話を始めとする電子機器の使用頻度が上がっており、増大する電子機器の需要に対応するため、電子機器の生産量を如何にしてあげるかが課題となっており、課題解決のため、製品製造検査の時間短縮が必要となっている。
【0003】
従来の製品製造検査技術として、次のような無線特性検査装置がある。この無線特性検査装置は、自動車電話に対する任意の検査項目を自動測定するためのプログラムを記憶したICカードを測定器に設け、制御部から順次出力される測定開始要求コマンドによりICカードのプログラムを起動する。そして、自動車電話の測定データを得た後、測定終了コマンドと測定データを上記制御部に送出し、制御部は測定終了コマンドを受けた後、測定データに基づいて自動車電話の検査の合否判定を行う(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、上記の従来技術ではICカードを備える測定器にしか適用できないという問題がある。
また、上記の従来技術では複数の同じ検査を同時に実行可能な場合において有効であるが、同時に検査できない異なる検査間においては測定器のレンジ切り替え時間が発生する。
【0005】
なお、測定器側の計測レンジ切り替えが不要である処理装置を実回路にて提供する従来技術もあるが、この従来技術では、特別な測定装置を必要とする(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】実開平5−15545
【特許文献2】特開2002−162251
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電子機器の製品製造検査において測定器のレンジ切り替え時間を削除して検査時間を短縮する検査方法、検査装置及び検査プログラムを提供することである。
本発明の他の目的は、特別な測定装置を用いることなく、検査する検査装置を制御することにより計測レンジ切り替え不要とする検査方法、検査装置及び検査プログラムを提供することである。
本発明の他の目的は、従来のものと比較して、高分解能及び高ダイナミックレンジを両立できる検査方法、検査装置及び検査プログラムを提供することである。
本発明の他の目的は、製品製造検査の時間短縮により、電子機器の生産量を向上することができる検査方法、検査装置及び検査プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。但し、それらの番号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明の検査方法は、電子装置(1000)の第1音声増幅部(323)からの出力信号を第1電圧レンジ(高電圧レンジH)で測定するステップと、
前記測定後、前記電子装置(1000)に制御コマンドを送信し、前記電子装置(1000)の第2音声増幅部(350)のゲインを変更するステップと、
前記変更されたゲインを保持しつつ、前記第2音声増幅部(350)からの出力信号を前記第1電圧レンジ(高電圧レンジH)で測定するステップとを具備する。
【0010】
本発明の他の検査方法は、電子装置(1000)の第1音声増幅部(323)又は第2音声増幅部(350)の出力電圧が、閾値以上であれば前記電子装置(1000)は正常に回路接続されていると判定するステップと、前記閾値未満であれば前記電子装置(1000)は正常に回路接続されていないと判定するステップとを具備する。
【0011】
本発明の全ての検査方法において、前記第1音声増幅部(323)は音声通信回路(500)の増幅部であり、前記第2音声増幅部(350)は音響再生回路(700)の増幅部である。
【0012】
本発明の検査装置(3000)は、電子装置(1000)からの複数の出力信号のうち2つを選択するスイッチ部(1030)と、前記選択された出力信号を加算し出力する差動加算回路(1040)と、前記差動加算回路(1040)から出力された信号電圧レベルを測定する測定部(1020)とを具備する。
また、前記測定部(1020)の測定レンジを固定した状態で、前記電子装置に制御コマンドを送信して、前記電子装置(1000)の出力回路のゲインの設定を変更する。
【0013】
本発明の他の検査装置(3000)は、電子装置(1000)からの複数の出力信号のうち2つを選択するスイッチ部(1030)と、前記選択された出力信号を加算し出力する差動加算回路(1040)と、前記差動加算回路(1040)の出力電圧を入力として、前記出力電圧が閾値以上であれば、第1電圧(high電圧:論理「1」)から第2電圧(low電圧:論理「0」)に論理が切り替わったことで回路接続されていると判定し、前記閾値未満であれば、前記第1電圧の状態を維持し、論理の切り替わりがないことから回路接続がされていないと判定する電圧検出回路(1100)とを具備する。
【0014】
本発明の他の検査装置(3000)において、前記電圧検出回路(1100)は、前記差動加算回路(1040)の出力の正弦波信号のプラス側電圧分を除き、マイナス側電圧をプラス出力に反転する反転型・半波整流回路(1510)と、前記反転型・半波整流回路(1510)の出力の正弦波信号から直流分を除くカップリングコンデンサと、前記直流分を除いたプラス電圧の半波整流信号を入力として、前記入力の信号レベルが前記閾値以上なら前記第2電圧(low電圧:論理「0」)、前記閾値未満なら前記第1電圧(high電圧:論理「1」)を出力するDetector回路(1520)と、前記Detector回路(1520)の出力を入力として、前記第1電圧を受けた場合、出力状態を第1電圧で出力し続け、前記第2電圧を受けた場合、出力状態を第1電圧から第2電圧に変更し、その状態を保持するラッチ回路(1530)とを具備する。
【0015】
本発明の全ての検査装置(3000)は、正弦波信号を出力する機能を持つ低周波発生部(1010)と、前記低周波発生部(1010)の出力信号を入力とする差動入力回路(1050)とを具備する。
また、前記差動入力回路(1050)が、前記差動入力回路(1050)の出力信号を前記電子装置(1000)の音声入力部に入力する。
【0016】
本発明の検査プログラムは、電子装置(1000)の第1音声増幅部(323)からの出力信号を第1電圧レンジ(高電圧レンジH)で測定するステップと、
前記測定後、前記電子装置(1000)に制御コマンドを送信し、前記電子装置(1000)の第2音声増幅部(350)のゲインを変更するステップと、
前記変更されたゲインを保持しつつ、前記第2音声増幅部(350)からの出力信号を前記第1電圧レンジ(高電圧レンジH)で測定するステップとを具備する。
【0017】
本発明の他の検査プログラムは、電子装置(1000)の第1音声増幅部(323)又は第2音声増幅部(350)の出力電圧が、閾値以上であれば前記電子装置(1000)は正常に回路接続されていると判定するステップと、前記閾値未満であれば前記電子装置(1000)は正常に回路接続されていないと判定するステップとを具備する。
【0018】
本発明の全ての検査プログラムにおいて、前記第1音声増幅部(323)は音声通信回路(500)の増幅部であり、前記第2音声増幅部(350)は音響再生回路(700)の増幅部である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によりある検査工程の総合検査時間の短縮をすることが可能となり、同じ検査時間でより多くの製造製品の検査を可能とできる。
音声通信回路や音響再生回路の検査にあたって、通常検査と同様な設備でかつ新たな回路を追加することなく検査時間の短縮ができるため、より安価に製造できる。
【0020】
本発明は、音声通信機能かつFM音源等の音響再生機能を有する電子機器の製品製造検査における全ての接続箇所の半田付けに問題がないか否かの確認を容易にする。
例えば、音声通信回路出力信号レベルや各種音響再生回路出力信号レベルを電圧計で測定することを、異なる複数の検査方法にて製造検査する場合、つまり、複数の検査におけるそれぞれ信号レベルの測定にて全ての接続箇所の半田付けに問題がないか否かを製造検査する場合に、前記の全接続ポイントを半田付け確認するため、それぞれの検査における音声・音響出力回路出力検査項目の信号レベル測定を行う際に必要なレベル測定を実施する電圧計の測定レンジを切り替える制御をなくす。そして、それら出力回路のゲイン設定値を制御コマンド使用して初期設定値から変更することで、測定レンジ切り替え時間を削除することで総合検査時間を短縮する。
【0021】
本発明では、半田付け接続確認する音声通信回路出力信号レベルや各種音響再生回路出力信号レベルを電圧計でそのまま測定するのではなく、出力電圧を入力としてある閾値電圧以上であれば論理電圧が「1」(high電圧)から「0」(low電圧)に論理が切り替わったことで問題なく回路接続されていると判定する。逆に、ある閾値電圧未満であれば論理電圧が「1」(high電圧)の状態を維持し、論理の切り替わりがないことから正常に回路接続されていないと判定する機能を持つ電圧検出回路を使用して論理判定することで、電圧計による出力信号電圧をそのまま測定するより短い時間で測定することで検査の検査時間を短縮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の第1実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1を基に本発明の構成要素を説明する。ここでは具体的な電子機器として携帯電話を例にする。但し、実際には、電子機器は携帯電話に限定されるものではない。
本発明の第1実施形態では、携帯電話1000、制御PC2000、検査治具3000が用いられる。
【0023】
携帯電話1000は音声信号を送受信及び着信音を出力する機能を備え、CPU(中央演算処理装置)100、FM音源LSI200、オーディオIC300、音声入力部400、音声出力部500、ヘッドホンジャック600、スピーカ700、メモリLSI800、無線部900を備える。
【0024】
制御PC2000は携帯電話1000と検査治具3000との間に製品製造検査する上で必要な制御コマンドを送受信する制御信号ライン及び検査用プログラム(検査用ソフト)を備える。
なお、制御PC2000はPCに限定されるものではなく、検査治具3000から出力信号を受け取り、携帯電話1000に制御コマンドを送信することができる装置であれば良い。
【0025】
検査治具3000は低周波発生部1010、電圧計1020、リレースイッチ1030、差動加算回路1040、差動入力回路1050を備える。
【0026】
携帯電話1000の構成について説明する。
CPU(中央演算処理装置)100は、音声を送受信できるよう接続先LSIを制御するなど携帯電話1000の制御全般を司る。また、CPU100は、オーディオIC300内部の各種AMPのゲインをシリアルI/F(インターフェース)により設定する機能、発信音声(上り音声)信号パスを応答音声(下り音声)信号パスに接続可能とするスイッチ、音声信号をソフトウェアでデジタル処理するためのSpeech DSP_I/F(インターフェース)を備える。ここで、DSP(Digital Signal Processor)とは、音声や画像などの処理に特化したマイクロプロセッサのことである。
【0027】
FM音源LSI200は、着信音のメロディー音データを出力する。
オーディオIC300は、上りパスゲイン設定部310、下りパスゲイン設定部320やオーディオ回路ゲイン設定部330、スピーカAMP(speaker amplifier)部350、ヘッドホンAMP(headphone amplifier)部340及びレジスタ部360を備え、そのレジスタ部360の設定値によりデジタルゲイン設定部のゲインあるいはスピーカAMP部350のようなアナログAMPのゲインを設定変更可能な機能を有する。
【0028】
音声入力部400は、通信相手へ送信する音声を入力するための機能を有する。
音声出力部500は、通信相手先から受信した音声を出力する。
ヘッドホンジャック600は、音声信号を入出力可能なイヤホンマイク及び着信音を出力可能なイヤホンレシーバを接続するためのインターフェースを備える。
スピーカ700は、ヘッドホンジャック600と同様に着信音を出力する。
無線部900は、音声信号を送受信するための無線信号に変換する機能を備える。
メモリLSI800は、初期設定の設定値を保存している。
【0029】
オーディオIC300の内部ブロックの構成について説明する。
上りパスゲイン設定部310は、通信相手への発信音声(上り側)信号のゲインをアナログAMP313、A/D(アナログ/デジタル)変換部312及びデジタルゲイン設定部311により設定する。
【0030】
下りパスゲイン設定部320は、通信相手からの応答音声(下り側)信号のゲインをデジタルゲイン設定部321、D/A(デジタル/アナログ)変換部322及びアナログAMP323により設定する。
【0031】
オーディオ回路ゲイン設定部330は、デジタルゲイン設定部331、D/A(デジタル/アナログ)変換部332によりFM音源LSI200の出力データやゲインを設定する。
【0032】
ヘッドホンAMP部340は、Lch(Left channel)及びRch(Right channel)出力用アナログAMP部であり、ヘッドホンジャック600と接続する。
【0033】
スピーカAMP部350は、speaker_plus出力であるSPKOP(speaker output positive)及びspeaker_minus出力であるSPKON(speaker output negative)用アナログAMP部であり、スピーカ700と接続する。
【0034】
レジスタ部360は、演算や実行状態の保持に用いる記憶素子であり、CPU100からオーディオ回路ゲイン設定部330内部の各種AMPのゲインの設定値をシリアルI/F(インタフェース)信号で受け取る。図1では、レジスタ部360は、上り/下りパスゲイン設定部310、320、オーディオ回路ゲイン設定部330、スピーカAMP部350及びヘッドホンAMP部340と接続されている。
【0035】
なお、図1に記載されているテストポイント(以下TP)10〜80は、音声通信回路(音声入力部400及び音声出力部500から入出力される上下音声信号回路ブロック)及び音響再生回路(FM音源LSI200出力データ(着信音のメロディーデータ)再生回路ブロック)を検査するためのテストポイントである。
【0036】
TP10はHPOL(headphone output left)端子ライン、TP20はMICP(microphone positive)端子ライン、TP30はRECOP(receiver output positive)端子ライン、TP40はMICN(microphone negative)端子ライン、TP50はRECON(receiver output negative)端子ライン、TP60はSPKOP端子ライン、TP70はSPKON端子ライン、TP80はHPOR(headphone output right)端子ラインに接続されて携帯電話1000内部の各種部品搭載用基板に備えられる。
【0037】
検査治具3000の構成について説明する。
低周波発生部1010は、1KHZ程度の正弦波信号出力機能を持つ。
電圧計1020は、信号レベル測定装置である。
リレースイッチ1030は、TP10、TP30、TP50〜80からの出力信号のうちどの信号を差動加算回路1040に入力するか切り替えるスイッチング機能を持つ。
差動加算回路1040は、リレースイッチ1030からの2つの出力信号を差動入力として合成出力する。
差動入力回路1050は、TP20及びTP40へ差動信号を出力する。
【0038】
図2Aを参照して差動加算回路1040の概要を説明する。
当該回路はリレースイッチ1030から負極入力信号と正極入力信号、2つの入力信号を受け取る。負極入力信号は直列に接続されたコンデンサC1と抵抗R1を経由し、正極入力信号は直列に接続されたコンデンサC2と抵抗R2を経由して差動増幅器、ここではオペアンプ(Operational amplifier)の負極と正極にそれぞれ入力される。
オペアンプの出力はコンデンサC3を経由して出力される。ここで、抵抗R1とオペアンプの間のノードは、オペアンプとコンデンサC3の間のノードと、抵抗R3を介して接続されている。
また、一方が接地されたコンデンサC4の他方は、抵抗R2とオペアンプの間のノードと抵抗R6を介して接続されている。更に、コンデンサC4と抵抗R2の間のノードは、抵抗R4を介して電源と接続され、抵抗R5を介して接地されている。
なお、オペアンプは差動増幅器の例であり、実際にはオペアンプに限定されるものではない。
【0039】
図2Bを参照して差動入力回路1050の概要を説明する。
当該回路は低周波発生部1010から負極入力信号を受け取る。その入力信号は直列に接続されたコンデンサC1と抵抗R1を経由して第1オペアンプの負極に入力され、コンデンサC2を経由して第2オペアンプの正極に入力される。
第1オペアンプの出力はコンデンサC3を経由して負極出力信号として出力される。ここで、抵抗R1と第1オペアンプの間のノードは、第1オペアンプとコンデンサC3の間のノードと、抵抗R2を介して接続されている。
また、一方が接地されたコンデンサC4の他方は、抵抗R5を介して、コンデンサC2と第2オペアンプの正極の間のノードに接続されている。コンデンサC4と抵抗R5の間の第1ノードは第1オペアンプの正極に接続されている。コンデンサC4と第1ノードの間の第2ノードは抵抗R3を介して電源と接続され、抵抗R4を介して接地されている。
第2オペアンプの出力はコンデンサC5を経由して正極出力信号として出力される。ここで、第2オペアンプの負極は、第2オペアンプと出力側コンデンサの間のノードと接続されている。
なお、第1、第2オペアンプは差動増幅器の例であり、実際にはオペアンプに限定されるものではない。
【0040】
図3は音声通信回路及び音響再生回路の検査検査方法を説明するための図である。
基本的に図1の構成と構成上の異なる部分は存在しない。しかし、レジスタ部360と上り/下りパスゲイン設定部310、320、オーディオ回路ゲイン設定部330、スピーカAMP部350及びヘッドホンAMP部340との接続線を記述しないことで、従来の検査では音声通信出力信号や、音響再生出力信号であるスピーカ出力信号及びヘッドホン出力信号の出力レベルをCPU100からシリアルI/Fを使用してオーディオIC300にメモリLSI800に保存されている初期値を展開して、それぞれの回路のゲイン設定が初期値として設定されたまま検査することを示している。
【0041】
第1実施形態の動作について図4Aのフローチャートを基に説明する。ここで先に図3に関する製品検査、言い換えると各種接続される回路パターン接続及び半田付け確認に関する一般的な音声通信機能回路の検査(音声入力部400と音声出力部500に接続するラインの接続確認)と音響再生回路の検査(FM音源LSI200の出力データをスピーカ700にて出力するスピーカ700に接続するラインの接続確認及びFM音源LSI200の出力データをヘッドホンジャック600にて出力するヘッドホンジャック600に接続するラインの接続確認)について説明しておく。
【0042】
一般的に、音声通信機能回路の検査と音響再生機能回路検査をそれぞれ実際の通信や音響再生に適する設定値として設定される初期設定のままで検査している。
音声通信出力信号レベルA、音響再生回路であるスピーカ出力信号レベルB及びヘッドホン出力信号レベルCの信号レベルをそれぞれ電圧計で測定するにあたって、各出力信号A、B、Cの出力信号レベル最大値が電圧計1020のある1レンジのみで測定できるとは限らなかった。そのため、初期設定の如何によっては出力信号A、B、Cのいずれかを計測するにあたって測定レンジの切り替えをする必要がある場合が存在し、1台の携帯電話の製造検査にあたって各種出力信号A、B、Cを測定するために電圧計1020の測定レンジを切り替えるという無駄な時間が存在していた。
【0043】
従って、総合検査時間の短縮には、単純に実際の検査に無関係な上述のレンジ切り替えの時間のような無駄時間を減らすことで実現可能であることがわかる。ここで、図4Aを用いて上記レンジ切り替え時間をなくす本発明の動作についてフローチャートで説明する。
【0044】
この時、出力信号A、B、Cの信号レベルはそれぞれ初期設定値により信号Aと信号Cの信号レベルは電圧計1020の高電圧レンジH(highレンジ)で測定しなければならないと仮定する。
言い換えると、出力信号A、Cの電圧レベル最低値が低電圧レンジ(lowレンジ)で測定できる最大値より高い信号レベルであり、出力信号Bの測定では電圧計1020の測定レンジを低電圧レンジLで測定しなければならないと仮定する。
【0045】
そこで、信号A〜Cまでを検査する検査順序を信号C(ヘッドホン出力:高電圧レンジHで測定)→A(音声通信回路出力:高電圧レンジHで測定)→B(スピーカ出力:低電圧レンジLで測定)であるとする。
【0046】
CPU100からヘッドホン出力するようにFM音源LSI200とオーディオIC300を制御し、ヘッドホン出力信号Cを高電圧レンジHでレベル測定する(ステップS411)。
【0047】
同様に、CPU100から音声通信出力するようにオーディオIC300を制御し、差動入力回路1050出力信号をTP20とTP40に入力し、CPU100内部で電気的に上り音声パスと下り音声パスが接続するようにスイッチングして、下り音声パスを経由した音声通信出力信号Aを高電圧レンジHでレベル測定する(ステップS412)。
【0048】
電圧測定レンジの切り替え動作を削除するために、PCからCPU100へCPU100よりスピーカAMP部350のゲインを初期値より高く設定するような制御コマンドを送信しスピーカAMP部350のゲインを変更する(ステップS413)。
【0049】
ステップS3で設定したゲインを保持しつつ、CPU100からスピーカ出力するようにFM音源LSI200とオーディオIC300を制御し、スピーカ出力信号Bを高電圧レンジHでレベル測定する(ステップS414)。
【0050】
なお、ステップS411〜ステップS414において、出力信号A、B、Cを高電圧レンジHでレベル測定したのは、上記の仮定のもとでの一例に過ぎず、実際には、低電圧レンジLに固定してレベル測定しても良い。
【0051】
ここで、図4Bに従来の検査手順概要を記述する。
なお、ここでは図4Aと同様に、音声通信出力信号レベルA、音響再生回路であるスピーカ出力信号レベルB及びヘッドホン出力信号レベルCの信号レベルをそれぞれ電圧計で測定するにあたって、出力信号A、Cの電圧レベル最低値が低電圧レンジ(lowレンジ)で測定できる最大値より高い信号レベルであり、出力信号Bの測定では電圧計1020の測定レンジを低電圧レンジLで測定しなければならないと仮定する。
図4Bが図4Aと異なる点は、S423における処理だけである。
S421、S422、S424については、それぞれS411、S412、S414と同様である。
従って、従来の検査手順では、電圧計レンジを高電圧レンジHから低電圧レンジLに変更する(ステップS423)という処理が、前記(ステップS413)の代わりに実行されている。
この処理の違いにより、本発明は従来の検査手順より検査時間の短縮ができる。
例えば、従来の検査手順では、測定用の電圧計1020での電圧レンジの切り替え時間がおよそ0.5sec程度必要であったとする。他方、本発明のスピーカAMP部350のゲインを変更する制御コマンドの送受信(応答)時間はおよそ0.1sec程度であり、差分として1台につき約0.4sec検査時間の短縮ができることになる。
【0052】
本発明の第2実施形態について図5A、図5Bを基に説明する。
図5Aにおいて、図1と大きく異なる点は検査冶具3000の構成部で電圧検出回路1500を備えること、電圧計1020が不要であることである。
この電圧検出回路1500は図5Bの通りの回路構成となっており、反転型・半波整流回路1510と、Detector回路1520と、ラッチ回路1530とを備える。
【0053】
反転型・半波整流回路1510は、測定する差動加算回路1040出力の正弦波信号のプラス側電圧分をカットし、マイナス側電圧をプラス出力に反転する。
【0054】
ここで、反転型・半波整流回路1510とDetector回路1520との間に、カップリングコンデンサ及びプルダウン抵抗がある。
カップリングコンデンサは、前記反転型・半波整流回路1510出力の正弦波信号から直流分をカットする。
プルダウン抵抗は、Detector回路1520の電圧検出部を論理不定とせぬための抵抗である。
【0055】
Detector回路1520は、直流分をカットしたプラス電圧の半波整流信号を入力として、その信号レベルがある閾値電圧D以上であることを検出した場合、検出出力として「low電圧」(論理「0」)を出力する。
逆に、ある閾値電圧D未満で電圧検出した場合、検出出力として「high電圧」(論理「1」)を出力する。
【0056】
ラッチ回路1530は、Detector回路1520出力を入力として、Detector回路1520出力が「high電圧」(論理「1」でDetector回路1520である閾値D未満で電圧検出した状態)を受けた場合、出力状態を「high電圧」(論理「1」)で出力し続ける。逆に「low電圧」(論理「0」で、Detector回路1520である閾値D以上を検出した状態)を受けた場合、出力状態を「high電圧」(論理「1」)から「low電圧」(論理「0」)に変更し、その状態を保持する。
【0057】
ここで、前記閾値電圧Dは音声出力部500に接続する音声通信回路出力信号及びヘッドホンジャック600に接続するヘッドホン出力である音響再生出力信号、並びにスピーカ700に接続するスピーカ出力である音響再生回路出力信号レベルの最低レベル電圧として設定しておく。
【0058】
本発明の第2実施形態の動作について図6のフローチャートをもとに説明する。
ここで第1実施形態と異なる点について概要説明する。第1実施形態では、音声通信機能回路の検査(音声入力部400と音声出力部500に接続するラインの接続確認)と音響再生回路の検査(FM音源LSI200の出力データをスピーカ700にて出力するスピーカ700に接続するラインの接続確認及びFM音源LSI200の出力データをヘッドホンジャック600にて出力するヘッドホンジャック600に接続するラインの接続確認)について、それら3つの出力信号レベルを電圧計1020で測定し、測定にあたって電圧計1020の測定レンジ切り替え時間を不要にするためCPU100からオーディオIC300に対してシリアルI/F信号を用いてゲイン変更するブロックのゲイン変更(先例では、スピーカAMP部350のゲインを初期値より高く設定)することにより実現し、結果として総合の検査時間を短縮していた。
【0059】
ここで述べる第2実施形態は測定する信号レベルをそのまま電圧計1020で測定せず、測定する信号レベルが最低出力レベルを満足しているかをラッチ回路1530の論理出力「0」、「1」判定から回路パターン接続及び半田付け確認し、電圧計1020で電圧が規格範囲内におさまる電圧レベルであるか電圧測定する時間を省くことにより検査時間を短縮するものである。
【0060】
ここで説明のために、音声通信出力信号レベルA、及び音響再生回路であるスピーカ出力信号レベルBの出力最低レベル電圧は同電位であり、その最低レベル電圧を閾値電圧Dと仮定、ヘッドホン出力信号レベルCの出力最低レベル電圧は電圧Eであり、電圧E<閾値電圧Dであると仮定する。
【0061】
ここで音響再生回路出力であるヘッドホン出力回路の接続確認、すなわちヘッドホン出力信号レベルCを測定することで第2実施形態の動作説明をする。
CPU100からヘッドホン出力するようにFM音源LSI200とオーディオIC300を制御し、ヘッドホン出力信号Cが出力されるよう設定する(ステップS601)。
【0062】
続いてヘッドホン出力信号C出力電圧が正常に接続していた場合に出力されうる最低電圧Eの電位をDetector回路1520で検出できる閾値電圧D以上に設定すべくCPU100からオーディオIC300を制御してヘッドホンAMP部340のゲインを初期値より高く設定する(ステップS602)。
【0063】
TP10及びTP80出力が差動加算回路1040に入力されるようリレースイッチ1030を制御し、差動加算回路1040出力を反転型・半波整流回路1510に入力する(ステップS603)。
【0064】
Detector回路1520は反転型・半波整流回路1510出力のプラス電位の半波正弦波整流電圧を閾値電圧D以上として検出し、検出出力として「low電圧」(論理「0」)を出力した場合(ステップS604)、Detector回路1520の「low電圧」を入力したラッチ回路1530は出力している論理レベルを「1」(high)から「0」(low)に変更して、以後本検査終了までその出力状態を保持する(ステップS605)。
【0065】
ラッチ回路1530の出力論理が「1」から「0」に変化したことを制御PC2000で検出することで、問題なく正常に回路が半田付け接続されている(OK)と判定する(ステップS606)。
ここで、前記(ステップS602)の設定から、正常に回路が半田付け接続されている場合、反転型・半波整流回路1510から出力されるプラス電位の正弦波整流電圧は確実に閾値電圧D以上としてDetector回路1520で検出される。
【0066】
逆に、Detector回路1520は反転型・半波整流回路1510出力のプラス電位の半波正弦波整流電圧を閾値電圧D未満として検出し、検出出力として「high電圧」(論理「1」)を出力し続けた場合(ステップS607)、Detector回路1520の「high電圧」を入力され続けるラッチ回路1530は出力している論理レベルを「1」(high)のまま維持し続ける(ステップS608)。
【0067】
ラッチ回路1530の出力論理が「1」のまま変化しないことを制御PC2000で検出することで、該当回路の半田付けが正常接続されていない(NG)と判定する(ステップS609)。
ここで、前記(ステップS602)の設定から、正常に回路が半田付け接続されていない場合、反転型・半波整流回路1510から出力されるプラス電位の正弦波整流電圧は確実に閾値電圧D未満であるためDetector回路1520で閾値電圧D以上として検出されない。
【0068】
音声通信出力信号レベルA、及び音響再生回路であるスピーカ出力信号レベルBも前記(ステップS602)を除く上記ヘッドホン出力信号レベルC測定とほぼ全く同様な方法で測定することで回路接続確認をできることになる。上記ヘッドホン出力信号レベルC測定のみの検査時間を第1実施形態によるヘッドホン出力信号レベルC測定のみ検査時間と比較した場合、電圧計の設定に依存するが、ヘッドホン出力信号レベルCをそのまま電圧計で測定した場合に要する時間は測定電圧の安定に要する時間などを考慮して、仮に約1secで電圧測定完了するとした場合、この第2実施形態による手法を用いれば、検査時間は主に反転型・半波整流回路1510、Detector回路1520及びラッチ回路1530の応答時間に依存することになり、これら回路の応答時間は一般的にも数十〜数百usecオーダーであるため、検査時間を概算数字で約0.1sec程度と考えられるため、1つの検査で約0.9secほど検査時間短縮できることとなる。
【0069】
なお、本発明の各実施形態において、「low電圧」(論理「0」)と「high電圧」(論理「1」)は、互いに異なる出力信号レベルであることを示すものであるため、実際には、「low電圧」(論理「0」)と「high電圧」(論理「1」)を置き換えて実施しても良い。
【0070】
なお、本発明の各実施形態において、制御PC2000と検査治具3000を一体化しても良い。すなわち、検査治具3000が直接携帯端末装置1000に検査上必要な制御コマンドを送信できるようにしても良い。
【0071】
また、本発明の各実施形態において、制御PC2000と携帯端末装置1000を一体化しても良い。すなわち、検査治具3000からの出力信号を、携帯端末装置1000にて検査上必要な制御コマンドに変換できるようにしても良い。あるいは、検査治具3000からの出力信号を直接制御コマンドとして認識するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の構成を示すブロック図である。
【図2A】図2Aは、差動加算回路を示すブロック図である。
【図2B】図2Bは、差動入力回路を示すブロック図である。
【図3】図3は、音声通信回路及び音響再生回路の検査方法を説明するためのブロック図である。
【図4A】図4Aは、本発明の動作を示すフローチャート図である。
【図4B】図4Bは、従来の検査の動作を示すフローチャート図である。
【図5A】図5Aは、本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図5B】図5Bは、本発明の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態の動作を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0073】
10… TP(テストポイント)
20… TP(テストポイント)
30… TP(テストポイント)
40… TP(テストポイント)
50… TP(テストポイント)
60… TP(テストポイント)
70… TP(テストポイント)
80… TP(テストポイント)
100… CPU
200… FM音源LSI
300… オーディオIC
310… 上りパスゲイン設定部
311… デジタルゲイン設定部
312… A/D(アナログ/デジタル)変換部
313… アナログAMP部
320… 下りパスゲイン設定部
321… デジタルゲイン設定部
322… A/D(アナログ/デジタル)変換部
323… アナログAMP部
330… オーディオ回路ゲイン設定部
331… デジタルゲイン設定部
332… A/D(アナログ/デジタル)変換部
340… ヘッドホンAMP(HPAMP)
350… スピーカAMP(SPKAMP)
360… レジスタ部
400… 音声入力部
500… 音声出力部
600… ヘッドホンジャック
700… スピーカ
800… メモリLSI
900… 無線部
1000… 携帯電話
1010… 低周波発生部
1020… 電圧計
1030… リレースイッチ
1040… 差動加算回路
1050… 差動入力回路
1500… 電圧検出回路
1510… 反転型・半波整流回路
1520… Detector回路
1530… ラッチ回路
2000… 制御PC
3000… 検査治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置の第1音声増幅部からの出力信号を第1電圧レンジで測定するステップと、
前記測定後、前記電子装置に制御コマンドを送信し、前記電子装置の第2音声増幅部のゲインを変更するステップと、
前記変更されたゲインを保持しつつ、前記第2音声増幅部からの出力信号を前記第1電圧レンジで測定するステップと
を具備する
検査方法。
【請求項2】
電子装置の第1音声増幅部又は第2音声増幅部の出力電圧が、閾値以上であれば前記電子装置は正常に回路接続されていると判定するステップと、
前記閾値未満であれば前記電子装置は正常に回路接続されていないと判定するステップと
を具備する
検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の検査方法において、
前記第1音声増幅部は音声通信回路の増幅部であり、前記第2音声増幅部は音響再生回路の増幅部である
検査方法。
【請求項4】
電子装置からの複数の出力信号のうち2つを選択するスイッチ部と、
前記選択された出力信号を加算し出力する差動加算回路と、
前記差動加算回路から出力された信号電圧レベルを測定する測定部と
を具備し、
前記測定部の測定レンジを固定した状態で、前記電子装置に制御コマンドを送信して、前記電子装置の出力回路のゲインの設定を変更する
検査装置。
【請求項5】
電子装置からの複数の出力信号のうち2つを選択するスイッチ部と、
前記選択された出力信号を加算し出力する差動加算回路と、
前記差動加算回路の出力電圧を入力として、前記出力電圧が閾値以上であれば、第1電圧から第2電圧に論理が切り替わったことで回路接続されていると判定し、前記閾値未満であれば、前記第1電圧の状態を維持し、論理の切り替わりがないことから回路接続がされていないと判定する電圧検出回路と
を具備する
検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の検査装置において、
前記電圧検出回路は、
前記差動加算回路の出力の正弦波信号のプラス側電圧分を除き、マイナス側電圧をプラス出力に反転する反転型・半波整流回路と、
前記反転型・半波整流回路の出力の正弦波信号から直流分を除くカップリングコンデンサと、
前記直流分を除いたプラス電圧の半波整流信号を入力として、前記入力の信号レベルが前記閾値以上なら前記第2電圧、前記閾値未満なら前記第1電圧を出力するDetector回路と、
前記Detector回路の出力を入力として、前記第1電圧を受けた場合、出力状態を第1電圧で出力し続け、前記第2電圧を受けた場合、出力状態を第1電圧から第2電圧に変更し、その状態を保持するラッチ回路と
を具備する
検査装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の検査装置において、
正弦波信号を出力する機能を持つ低周波発生部と、
前記低周波発生部の出力信号を入力とする差動入力回路と
を具備し、
前記差動入力回路が、前記差動入力回路の出力信号を前記電子装置の音声入力部に入力する
検査装置。
【請求項8】
電子装置の第1音声増幅部からの出力信号を第1電圧レンジで測定するステップと、
前記測定後、前記電子装置に制御コマンドを送信し、前記電子装置の第2音声増幅部のゲインを変更するステップと、
前記変更されたゲインを保持しつつ、前記第2音声増幅部からの出力信号を前記第1電圧レンジで測定するステップと
を具備する
検査プログラム。
【請求項9】
電子装置の第1音声増幅部又は第2音声増幅部の出力電圧が、閾値以上であれば前記電子装置は正常に回路接続されていると判定するステップと、
前記閾値未満であれば前記電子装置は正常に回路接続されていないと判定するステップと
を具備する
検査プログラム。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の検査プログラムにおいて、
前記第1音声増幅部は音声通信回路の増幅部であり、前記第2音声増幅部は音響再生回路の増幅部である
検査プログラム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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