説明

検査方法、検査装置

【課題】 微細なクラック等であっても確実にその存在を検出し、高精度な検査を行うことのできる検査方法、検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 検査装置10において、ロータリーソレノイド31の作動により支持ロッド32が回転し、その回転方向前方に設けられた前方側ストッパ36に当たり、これによって支持ロッド32は、打撃部材33が設けられた先端部側が回転方向前方に向けて弾性変形して撓み、打撃部材33が、フェライト磁石100を打撃するようにした。打撃直後、弾性変形していた支持ロッド32が元の状態に復元することで打撃部材33がフェライト磁石100から速やかに離間し、打撃部材33がフェライト磁石100を複数回打撃してしまうのを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト焼結磁石等における不良品選別を行うのに適した検査方法、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁石として主流となっているフェライト(焼結)磁石を製造するには、原料を所定の配合比で混合したものを仮焼してフェライト化させ、得られた仮焼体をサブミクロンサイズまで粉砕し、フェライト粒子からなる材料粉末を得る。次いで、材料粉末を磁場中で金型によって圧縮成形して成形体を得た後、この成形体を焼結することで、フェライト磁石となる焼結体を得る。
【0003】
このようにして得られた焼結体は、クラック等の不良が生じていないか、検査・選別が行われた後、良品のみが出荷される。
検査を行う手法としては、目視による検査が主流であるが、目視検査では、言うまでも無く手間がかかり、さらには、焼結体の表面のみに入ったヘアライン状の微細なクラック等を見落としてしまうこともある。確実性を向上させるには、アルコール等を塗布し、微細なクラック等が目立つようにして検査を行うこともできるが、これでは、アルコールの塗布にさらに手間がかかる。
【0004】
これに対し、焼結体を共鳴台上に落下させ、その共鳴音を解析することで、良否の判定を行うことが行われている(例えば、特許文献1参照。)。また、上記したような問題は、焼結体に限らず、各種の焼結品、鋳造品等の各種製品の検査を行う場合にも共通するものであり、製品に打撃部材に打撃を与え、発生した打音の減衰度によって、製品の良否を判定することも行われている(例えば、特許文献2、3参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−134118号公報
【特許文献2】特開平3−92758号公報
【特許文献3】特開2000−55893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、焼結体を共鳴台上に落下させるような手法では、落下時の衝撃により、本来良品である焼結体が破損してしまうこともある。また、落下して共鳴台に当たる箇所により、焼結体が発する音が異なり、安定した判定が行えず、特に上記したようなヘアライン状の微細なクラック等の存在は検出できないという問題もある。
また、特許文献2、3に開示されたような、打撃部材を用いて焼結体を打撃する手法では、いずれも、電磁石の吸引力や、ソレノイドを用い、打撃部材を直線的に移動させて焼結体を打撃している。しかしながら、このような手法では、打撃部材が焼結体を複数回打撃してしまう現象が生じる。図6は、このような現象が生じたときの打撃音をマイクロフォンで拾ったときの波形W1を表すものである。この図6に示すように、波形W1においては、打撃部材で打撃した時点h1だけでなく、その後、打撃部材が再度焼結体に衝突した時点h2の、計2回の打撃音を検出している。
このように、打撃部材が焼結体を複数回打撃してしまうと、図6に示したように、打撃音から検出される波形W1が乱れるため、これもクラック等の存在の検出に悪影響を与える。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、微細なクラック等であっても確実にその存在を検出し、高精度な検査を行うことのできる検査方法、検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、鋭意検討を行った発明者らは、以下のような知見を得た。
すなわち、打撃部材が焼結体等の検査対象物に衝突したとき、打撃部材および打撃部材を含む系はその衝撃により振動する。この振動により、打撃部材が、振動が減衰するまでの間に極短時間で複数回検査対象物を打撃してしまうのが上記の現象である。これを避けるためには、打撃部材が検査対象物に衝突した後、速やかに打撃部材を検査対象物から引き離せばよい。
しかしながら、打撃部材を検査対象物から引き離すのに、電磁石や直線往復動タイプのソレノイドを用いたのでは、打撃部材等の振動の振動数に対し、応答性や作動速度が十分ではなく、打撃部材で検査対象物を複数回打撃してしまうのを確実に防ぐのは困難である。さらに、電磁石や直線往復動タイプのソレノイドを用いる場合、実際には、打撃部材が検査対象物を打撃したことを確認して打撃部材を検査対象物を引き離すのではなく、タイマー等によってその作動タイミングが制御される。このため、打撃部材を検査対象物から引き離すタイミングを、打撃部材で検査対象物を打撃した直後に合わせるのは非常に難しい。打撃部材で打撃を行った後、打撃部材を検査対象物から引き離すタイミングが僅かでも遅ければ、上記問題は何ら解決できない。
そこで、本発明者らは、打撃部材を支持する支持部材を弾性変形させて検査対象物を打撃し、支持部材の弾性変形が元に戻る力を利用し、打撃部材を検査対象物から離間させるのが有効であることを見出した。
【0008】
これによりなされた本発明の検査方法は、検査対象物を打撃部材で打撃することで発生した打撃音に基づき、検査対象物の検査を行う方法であって、打撃部材を支持する支持部材を作動させてストッパに衝突させることで、支持部材を弾性変形させて打撃部材で検査対象物を打撃するステップと、打撃部材で検査対象物を打撃することで発生した打撃音に基づき、検査対象物の良否を判定するステップと、を含むことを特徴とする。検査対象物の良否を判定するステップでは、打撃音を波形解析し、波形の減衰時間を所定のしきい値と比較することで、検査対象物の良否を判定するのが好ましい。クラック等が生じた検査対象物は、波形の減衰時間が短くなるため、上記手法により検査対象物の良否を判定できる。
【0009】
さて、支持部材を作動させてストッパに衝突させると、支持部材および打撃部材の慣性力によって支持部材が弾性変形し、打撃部材で検査対象物を打撃することができる。そして、打撃後は、支持部材の弾性変形が元に戻る力を利用し、打撃部材を検査対象物から速やかに離間させることができる。
このような支持部材の弾性変形は様々な形態とすることができる。例えば、支持部材を棒状または板状とし、支持部材をたわませる構成とすることもできる。この場合、支持部材は、金属系材料等で形成するのが好ましい。他に、支持部材をゴム系材料等で形成して、支持部材を弾性変形させることもできる。この場合、例えば、打撃部材をロッドの先端に設け、このロッドの基端部に支持部材としてのゴム系材料を介在させるような構成が考えられる。
しかし、前述したように、打撃部材を検査対象物から高速で離間させるには、なるべく弾性係数の高い材料で支持部材を形成するのが好ましい。この点において、支持部材は、金属系材料等で形成するのが好ましい。
【0010】
打撃部材で検査対象物を打撃するときには、支持部材の中間部をストッパに衝突させるのが好ましい。
また、打撃部材で検査対象物を打撃するときには、支持部材の一端側を中心として支持部材を回転させ、支持部材の他端側に設けた打撃部材で検査対象物を打撃するのが好ましい。このような回転動作とすると、支持部材において打撃部材が設けられた側は外周側となり、支持部材の長さを十分に確保することで打撃部材の周速を容易に高めることができ、支持部材の弾性変形を容易に生じさせることができる。
このような支持部材の回転動作を行わせるには、ロータリーソレノイドが適している。ロータリーソレノイドは、応答性も高く、これによって、電磁石や直線往復動型で打撃部材を直線動作させる場合に比較し、打撃部材や支持部材を高速で動かすことが可能となる。その結果、弾性係数の高い材料で支持部材を形成した場合にも、この支持部材をストッパに衝突させて弾性変形を確実に生じさせることができる。
【0011】
このようにして、本発明の検査方法では、打撃部材で検査対象物を打撃するときには、支持部材をストッパに衝突させて弾性変形させ、打撃部材で検査対象物を1回のみ打撃することができる。
【0012】
本発明は、棒状または板状の支持部材を、支持部材の一端側を中心として回転させ、支持部材の他端側に設けた打撃部材で検査対象物を打撃するステップと、打撃部材で検査対象物を打撃することで発生した打撃音に基づき、検査対象物の良否を判定するステップと、を含むことを特徴とする検査方法とすることもできる。
このように、支持部材を回転させる場合、応答性の面で、支持部材をロータリーソレノイドにより回転動作させるのが好ましい。
打撃部材で検査対象物を打撃するときには、支持部材を回転させ、支持部材の中間部をストッパに衝突させて支持部材を弾性変形させるのが好ましい。このとき、支持部材の弾性変形の変形量が最大となる位置の近傍で、打撃部材で検査対象物を打撃するのが好ましい。これにより、打撃部材で検査対象物を打撃した直後に、支持部材に生じた弾性変形が元の状態に復元しはじめるため、打撃部材を検査対象物から速やかに離間させることができる。
【0013】
本発明は、検査対象物を打撃することで発生した打撃音に基づき、検査対象物の検査を行う装置であって、検査対象物を保持する保持部と、棒状または板状の支持部材と、支持部材の先端部に設けられ、保持部に保持された検査対象物を打撃するための打撃部材と、支持部材を、打撃部材が設けられた側とは反対側を中心として回転させるロータリーソレノイドと、ロータリーソレノイドで支持部材を回転させたときに支持部材の回転量を規制するストッパと、を備え、このストッパは、支持部材がストッパに当たって静止した状態では打撃部材と検査対象物との間に隙間が形成されるような位置に設けられていることを特徴とする検査装置とすることもできる。
このような構成において、ロータリーソレノイドで支持部材を回転させてストッパに衝突させたとき、支持部材またはストッパが弾性変形すれば、打撃部材で検査対象物を打撃することができる。そして、打撃後は、支持部材の弾性変形が元に戻る力を利用し、打撃部材を検査対象物から速やかに離間させることができる。
前記したように、打撃部材を検査対象物から高速で離間させるには、なるべく弾性係数の高い材料で弾性変形を生じさせるのが好ましい。この点において、弾性変形を生じる部材は、金属系材料等で形成するのが好ましい。したがって、ストッパではなく、棒状または板状の支持部材を弾性変形させ、これによって打撃部材で検査対象物を打撃するのが好ましい。言うまでも無く、細長いものの方が、断面2次モーメントが小さく、変形が生じやすいからである。
【0014】
本発明は、フェライト磁石となる焼結体だけでなく、鋳造品等、様々な製品の検査に適用することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、打撃部材が検査対象物を複数回打撃してしまうのを防ぎ、良否判定を高精度に行うことが可能となる。その結果、微細なクラック等であっても確実にその存在を検出し、高精度な検査を行うことが可能となる。もちろん、共鳴台上に落下させるときのように、検査時にクラックが生じるようなことも回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態におけるフェライト磁石の製造工程の流れの一例を示す図である。なお、本実施の形態で示すフェライト磁石の製造工程はあくまでも一例に過ぎず、適宜変更を加えることが可能なのは言うまでもない。
この図1に示すように、フェライト磁石を製造するには、まず原料を所定の配合比で混合したものを仮焼してフェライト化させる(ステップS101、S102)。原料としては、酸化物粉末、または焼成により酸化物となる化合物、例えば炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等の粉末を用いる。仮焼は、通常、空気中等の酸化性雰囲気中で行えば良い。
【0017】
次いで、得られた仮焼体を粗粉砕工程を経ることで粉砕し(ステップS103)、フェライト粒子からなる仮焼粉末を得る。次いでこの仮焼粉末に適宜添加物を添加し、微粉砕工程を経てサブミクロンサイズまで粉砕し(ステップS104)、主としてマグネトプランバイト型フェライトからなる微粉砕粉末を得る。粗粉砕工程、微粉砕工程は、湿式で行っても乾式で行ってもよい。ただし、仮焼体は一般に顆粒から構成されるので、粗粉砕工程を乾式で行い、次いで微粉砕工程を湿式で行うのが好ましい。その場合、粗粉砕工程で仮焼体を所定以下の粒径となるまで粗粉砕した後、微粉砕工程で粗粉砕粉と水とを含む粉砕用スラリーを調製し、これを用いて所定以下の粒径となるまでの微粉砕を行う。
【0018】
この後、湿式で磁場成形を行う場合、微粉砕粉末を分散媒に分散させることで所定濃度のスラリーを調製し、これを磁場成形する。微粉砕工程で湿式粉砕を行った場合、脱水工程(ステップS105)にてスラリーを濃縮することで、所定濃度のスラリーを調製するようにしても良い。
ここで、分散媒としては、水、あるいはヘキサン、トルエン、p-キシレン、メタノール等を用いることができる。
【0019】
そして、このスラリーを混練した後(ステップS106)、スラリーを型に注入し、所定方向の磁場をかけながら圧縮成形することで磁場成形を行う(ステップS107)。
この後、得られた成形体を焼成して焼結させることで、フェライト磁石を得る(ステップS108)。この後、所定形状への加工を経て、製品としてのフェライト磁石が完成する(ステップS109〜S110)。
【0020】
図2は、完成したフェライト磁石を検査するための検査装置10の構成を示す図である。本実施の形態において、検査対象物となるフェライト磁石100は、例えば瓦状断面を有したものとするが、これに限るものではない。
この図2に示すように、検査装置10は、フェライト磁石100を保持する保持部20と、保持部20に保持されたフェライト磁石100を打撃する打撃部30と、打撃部30でフェライト磁石100を打撃することで生じた打撃音を拾うマイクロフォン40と、マイクロフォン40で拾った打撃音に基づき、フェライト磁石100の良品・不良品の判定を行う判定装置50とを主に備えている。
【0021】
検査装置10においては、検査対象となるフェライト磁石100は、コンベア等の搬送装置によって順次保持部20に供給される。
保持部20では、例えば、フェライト磁石100の中心部を吸着パッド21で吸着保持するようになっている。
【0022】
打撃部30は、ロータリーソレノイド31によって保持された棒状の支持ロッド(支持部材)32の先端部に、保持部20で保持されたフェライト磁石100を打撃するための打撃部材33が設けられた構成となっている。
【0023】
ロータリーソレノイド31は、検査装置10の基台11に固定された取付ベース34に設けられている。ロータリーソレノイド31は、電圧が印加されることで、回転軸31aが所定方向に回転し、電圧の印加を停止すると内蔵された弾性部材の弾性力によって回転軸31aが逆方向回転し、元の位置に復帰するようになっている。本実施の形態において、ロータリーソレノイド31は、電圧が印加されたときに、図2において反時計回りに回転駆動されるようになっている。
【0024】
支持ロッド32は、例えば中空の金属製パイプから形成され、その基端部側が、ブラケット35を介し、ロータリーソレノイド31の回転軸31aに取り付けられている。これにより、支持ロッド32は、ロータリーソレノイド31の作動により、ロータリーソレノイド31の回転軸31aに支持された基端部側を中心として回転するようになっている。
【0025】
支持ロッド32の回転動作は、ロータリーソレノイド31に電圧を印加したときの回転方向、つまり図2において反時計回りに対しては、取付ベース34に設けられた前方側ストッパ(ストッパ)36により規制され、ロータリーソレノイド31に対する電圧の印加を停止したときの回転方向、つまり図2において時計回りに対しては、取付ベース34に設けられた後方側ストッパ37により規制される。
ここで、前方側ストッパ36は、支持ロッド32に対し、先端部の打撃部材33と基端部の回転軸31aに支持された部分との中間部に位置するよう設けられている。より詳しくは、前方側ストッパ36は、支持ロッド32に対し、先端部の打撃部材33と基端部の回転軸31aの中間よりも回転軸31a寄りの位置で支持ロッド32に当たるように設けられている。
【0026】
打撃部材33は、このような支持ロッド32の先端部に、取付ブラケット38を介して設けられている。この打撃部材33は、取付ブラケット38に対し、ロータリーソレノイド31に電圧を印加して回転駆動させたときの回転方向前方側に突出するように設けられ、その先端部33aは略半球状に形成されている。図3に示すように、この打撃部材33は、支持ロッド32を前方側ストッパ36に当てて静止させた状態で、先端部33aが、保持部20に保持されたフェライト磁石100に対し、所定寸法C、例えばC=2〜3mm、離間した状態となるよう設けられている。
【0027】
このような打撃部30は、ロータリーソレノイド31に電圧が印加されると、支持ロッド32がロータリーソレノイド31の回転軸31aと一体に所定方向に回転する。すると、支持ロッド32は前方側ストッパ36に当たり、これによって支持ロッド32は、支持ロッド32および質量のある打撃部材33の慣性力により、打撃部材33が設けられた先端部側が回転方向前方に向けて弾性変形して撓む。すると、静止状態で支持ロッド32を前方側ストッパ36に当てたときにはフェライト磁石100に対し所定寸法離間した状態となる打撃部材33が、前方側ストッパ36に当たった後も回転方向前方にさらに変位し、保持部20に保持されたフェライト磁石100を打撃する。
【0028】
打撃直後、弾性変形していた支持ロッド32が元の状態に復元することで、打撃部材33がフェライト磁石100から離間する。このとき、フェライト磁石100の打撃により、打撃部材33自体も弾性変形する。したがって、打撃部材33は、それ自体の弾性変形で生じる反発力によっても、フェライト磁石100から離間する。
このような動作からして、支持ロッド32を前方側ストッパ36に当てて静止させた状態で打撃部材33の先端部33aとフェライト磁石100との間に形成される隙間の寸法Cは、ロータリーソレノイド31の作動により支持ロッド32が回転して前方側ストッパ36にあたって弾性変形したときに、その弾性変形量が最大(振幅が最大)となる寸法と略等しくするのが好ましい。これにより、打撃部材33でフェライト磁石100を打撃した直後に、支持ロッド32に生じた弾性変形が元の状態に復元しはじめるため、打撃部材33をフェライト磁石100から速やかに離間させることができる。
【0029】
この後、ロータリーソレノイド31に対する電圧の印加を停止すると、ロータリーソレノイド31は逆方向に回転する。これによって、支持ロッド32が後方側ストッパ37に当たるまで回転し、支持ロッド32および打撃部材33は元の位置に戻る。
【0030】
図4に示すように、マイクロフォン40では、上記のようにして打撃部材33がフェライト磁石100を打撃したときの打撃音を拾う(ステップS201)。拾われた打撃音は、電気信号として判定装置50に送られる。
判定装置50では、マイクロフォン40から送られてきた電気信号を、内蔵する騒音計に送り、騒音計では、電気信号に基づき、マイクロフォン40で拾った打撃音の音量の時間的変化を検出する(ステップS202)。
検出された音量の時間的変化は、波形解析される(ステップS203)。これには、検出された音量の時間的変化を表す電気信号をA/D変換した後、波形解析に不要な成分をフィルタ処理で除去し、さらに2乗平均などの波形処理により特徴量の抽出が行われる。このようにして、例えば図5に示すような波形が得られる。
【0031】
判定装置50では、得られた波形に基づき、打撃部30で打撃したフェライト磁石100にクラック等の不良が生じているか否かを判定する(ステップS204)。これには、得られた波形の振幅が所定のレベルまで減衰する時間(以下、これを減衰時間と称する)を波形から得る。そして、得られた減衰時間が、予め設定したしきい値よりも大きいか否かを判定する。クラックが生じていると、波形の減衰時間が極端に短くなるため、これによりフェライト磁石100にクラック等が生じているか否かを判定できる。
判定結果は、検査装置10のコントローラ(図示無し)に送出される。
【0032】
検査装置10のコントローラ(図示無し)では、判定装置50によるフェライト磁石100の判定結果を確認する(ステップS205)。その確認結果に基づき、打撃部30で打撃したフェライト磁石100が不良品であるときには、検査装置10のコンベア等の搬送装置から、そのフェライト磁石100を排除し、不良品として排出する(ステップS206)。
【0033】
上述した検査装置10においては、ロータリーソレノイド31の作動により支持ロッド32が回転し、その回転方向前方に設けられた前方側ストッパ36に当たり、これによって支持ロッド32は、打撃部材33が設けられた先端部側が回転方向前方に向けて弾性変形して撓むようになっている。これにより、静止状態で支持ロッド32を前方側ストッパ36に当てたときにはフェライト磁石100に対し所定寸法Cだけ離間した状態となる打撃部材33が、回転動作時には前方側ストッパ36に当たった後も回転方向前方に変位し、フェライト磁石100を打撃する。そして、打撃直後、弾性変形していた支持ロッド32が元の状態に復元することで打撃部材33がフェライト磁石100から離間する。このような打撃部材33のフェライト磁石100からの離間動作は、電磁石やソレノイド等の駆動源によって行う場合に比較し、打撃部材33がフェライト磁石100を打撃した直後に間髪いれずに行われ、非常に応答性の高いものとなる。したがって、打撃部材33がフェライト磁石100を複数回打撃してしまうのを防ぎ、判定装置50における不良判定処理を高精度に行うことが可能となり、クラック等の不良の有無を確実に検査することが可能となる。もちろん、共鳴台上に落下させる場合のように、検査時にクラックが生じるようなことも回避できる。
【0034】
さらに、上記において、支持ロッド32は、ロータリーソレノイド31により基端部側を中心として回転運動するようになっている。これにより、打撃部材33は、支持ロッド32の長さに応じた周速で移動する。この、支持ロッド32のモーメント効果により、打撃部材33を高速で移動させることができ、これによって弾性を利用したフェライト磁石100の打撃動作を確実に行うことが可能となる。
【0035】
また、支持ロッド32は、前方側ストッパ36によってその回転動作が機械的に規制され、これによって支持ロッド32が弾性変形して打撃部材33でフェライト磁石100を打撃するようになっている。このようにして、前方側ストッパ36を設けることで、支持ロッド32が前方側ストッパ36に当たったときの撓み量、すなわち前方側ストッパ36に当たった後の打撃部材33の変位量を安定させることができ、フェライト磁石100の打撃動作を安定させることが可能となる。
【0036】
なお、上記実施の形態では、支持ロッド32が前方側ストッパ36に当たることで弾性変形し、その弾性変形を利用して打撃部材33によるフェライト磁石100の打撃動作を行うようにしたが、これに限るわけではない。例えば、支持ロッド32自体を、弾性部材を介してロータリーソレノイド31で支持するようにし、この弾性部材の弾性変形を利用すること等が考えられる。しかし、このような弾性部材として、コイルスプリング等のバネ部材や、ゴム系材料等を用いると、棒状、パイプ状の支持ロッド32に比較すれば弾性係数が大幅に低くなり、打撃部材33がフェライト磁石100を打撃した後に打撃部材33をフェライト磁石100から離間させるための応答性が低くなる。このため、打撃部材33がフェライト磁石100を複数回打撃してしまう現象を確実に回避できない可能性がある。
【0037】
また、フェライト磁石100を保持する保持部20や、不良判定を行う判定装置50の構成については何ら限定するものではなく、その機械的構成や、判定装置50において不良判定を行うための処理方法等については、適宜他の構成とすることが可能である。
さらに、棒状あるいは板状の支持ロッド32が前方側ストッパ36に当たることで弾性変形することを利用し、打撃部材33によるフェライト磁石100の打撃動作を行うのであれば、支持ロッド32は、ロータリーソレノイド31による回転動作ではなく、直線往復動作とすることも可能である。ただしその場合、上記実施の形態におけるロータリーソレノイド31に比較すれば応答性が低下してしまうという課題が残る。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施の形態におけるフェライト磁石の製造工程を示す図である。
【図2】フェライト磁石を打撃したときの打撃音により良否判別を行う検査装置を示す立面図である。
【図3】検査装置の要部を示す図である。
【図4】打撃音により良否判別を行うときの流れを示す図である。
【図5】打撃音の波形の例を示す図である。
【図6】打撃部材でフェライト磁石を複数回打撃したときの波形の例である。
【符号の説明】
【0039】
10…検査装置、20…保持部、30…打撃部、31…ロータリーソレノイド、31a…回転軸、32…支持ロッド(支持部材)、33a…先端部、33…打撃部材、36…前方側ストッパ(ストッパ)、40…マイクロフォン、50…判定装置、100…フェライト磁石(検査対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を打撃部材で打撃することで発生した打撃音に基づき、前記検査対象物の検査を行う方法であって、
前記打撃部材を支持する支持部材を作動させてストッパに衝突させることで、前記支持部材を弾性変形させて前記打撃部材で前記検査対象物を打撃するステップと、
前記打撃部材で前記検査対象物を打撃することで発生した前記打撃音に基づき、前記検査対象物の良否を判定するステップと、
を含むことを特徴とする検査方法。
【請求項2】
前記打撃部材で前記検査対象物を打撃するときには、前記支持部材の中間部を前記ストッパに衝突させることを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記打撃部材で前記検査対象物を打撃するときには、前記支持部材の一端側を中心として前記支持部材を回転させ、前記支持部材の他端側に設けた前記打撃部材で前記検査対象物を打撃することを特徴とする請求項1または2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記検査対象物の良否を判定するステップでは、前記打撃音を波形解析し、波形の減衰時間を所定のしきい値と比較することで、前記検査対象物の良否を判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項5】
前記打撃部材で前記検査対象物を打撃するときには、前記支持部材を前記ストッパに衝突させて弾性変形させ、前記打撃部材で前記検査対象物を1回のみ打撃することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項6】
棒状または板状の支持部材を、前記支持部材の一端側を中心として回転させ、前記支持部材の他端側に設けた打撃部材で検査対象物を打撃するステップと、
前記打撃部材で前記検査対象物を打撃することで発生した打撃音に基づき、前記検査対象物の良否を判定するステップと、
を含むことを特徴とする検査方法。
【請求項7】
前記支持部材をロータリーソレノイドにより回転動作させることを特徴とする請求項6に記載の検査方法。
【請求項8】
前記支持部材を回転させて前記支持部材の中間部をストッパに衝突させることで前記支持部材を弾性変形させ、前記弾性変形の変形量が最大となる位置の近傍で、前記打撃部材で前記検査対象物を打撃することを特徴とする請求項6または7に記載の検査方法。
【請求項9】
検査対象物を打撃することで発生した打撃音に基づき、前記検査対象物の検査を行う装置であって、
前記検査対象物を保持する保持部と、
棒状または板状の支持部材と、
前記支持部材の先端部に支持され、前記保持部に保持された前記検査対象物を打撃するための打撃部材と、
前記支持部材を、前記打撃部材が設けられた側とは反対側を中心として回転させるロータリーソレノイドと、
前記ロータリーソレノイドで前記支持部材を回転させたときに前記支持部材の回転量を規制するストッパと、を備え、
前記ストッパは、前記支持部材が前記ストッパに当たって静止した状態では、前記打撃部材と前記検査対象物との間に隙間が形成されるような位置に設けられていることを特徴とする検査装置。
【請求項10】
前記ロータリーソレノイドで前記支持部材を回転させて前記ストッパに衝突させることで前記支持部材を弾性変形させて、前記打撃部材で前記検査対象物を打撃することを特徴とする請求項9に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−250757(P2006−250757A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68421(P2005−68421)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】