説明

検査方法および検査システム

【課題】検査対象物における内容物の漏出状況を、精度よく簡単に検査することのできる検査方法を提供する。
【解決手段】蛍光物質を含む内容物が充填された容器50を検査対象物とする検査方法であって、照射部11(31)が検査対象物に紫外線を照射する工程と、撮像部12(32)が紫外線を照射された検査対象物を撮像する工程と、画像処理部13(33)が撮像された画像を画像処理して、多値化した処理画像を形成する工程と、判定部14(34)が所定の色属性を基準に処理画像から抽出された、もっとも明るい部分を含む抽出領域の面積値を算出するとともに、面積値と設定面積値とを比較することにより、検査対象物における内容物の漏出状況を判定する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法および検査システムに関し、より詳しくは、蛍光物質を含む内容物が充填された容器を検査対象物とする検査方法および検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器等の検査対象物の欠陥を検査する手法として、検査対象物をカメラで撮像し、このカメラによる画像を二値化するとともに、二値化した画像を元に検査対象物の良否を判定するようにしたものが知られている。この検査手法によれば、二値化した画像における黒または白の画素数をカウントして、その総画素数が所定範囲以内となっていないときに検査対象物が不良であると判定する。検査対象物にゴミや傷等異物の付着があれば黒または白の画素数が増減するため、それによって検査対象物の良否を判定することができる。
【0003】
上記の検査手法に基づき、容器内に充填された内容物中の異物の有無を検査するようにしたものがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−210992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば外用薬等の半固形状の内容物が充填される容器では、充填ノズルの引き上げ時に容器の口部付近に残存した内容物が、キャップ打栓に伴って容器の胴部等に付着したり、容器をロボットアーム等で掴んだ際に、充填された内容物が吐出する等して、その製造過程で内容物が漏出することがある。
【0006】
このような内容物の漏出状況を検査するため、上記従来の検査手法を用いても、検査対象物によっては、二値化した画像において内容物の漏出を判別することが難しく、正確な検査をおこなうことができない場合があった。したがって、内容物の漏出状況の検査は、目視にておこなわれることが多く、膨大な手間と時間を要していた。
【0007】
一方、内容物の漏出状況のみならず、異物の付着状況についても一連の検査動作の中で併せて検査することができれば、非常に好ましいものとなる。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、検査対象物における内容物の漏出状況を、精度よく簡単に検査することのできる検査方法を提供することにある。さらに本発明は、一連の検査動作の中で、検査対象物における異物の付着状況を併せて検査することのできる検査システムを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の検査方法は、蛍光物質を含む内容物が充填された容器を検査対象物とする検査方法であって、検査対象物に紫外線を照射する工程と、紫外線を照射された検査対象物を撮像する工程と、撮像された画像を画像処理して、多値化した処理画像を形成する工程と、所定の色属性を基準に該処理画像から抽出された、もっとも明るい部分を含む抽出領域の面積値を算出するとともに、該抽出領域の面積値と設定面積値とを比較することにより、検査対象物における内容物の漏出状況を判定する工程と、を有する。
【0010】
本発明の検査システムは、蛍光物質を含む内容物が充填された容器を検査対象物とする検査システムであって、検査対象物の一面側に対して、上記検査方法を実行する第1検査ステーションと、該第1検査ステーションを通過した検査対象物を、移動手段を介して、一定距離だけ上昇させたのちに一定方向に回転させ、回転中の検査対象物を撮像して得られる二値化した処理画像に基づき、検査対象物の全周における異物の付着状況を判定するするとともに、検査対象物の一面側と他面側とを反転状態にして下降させる第2検査ステーションと、該第2検査ステーションを通過した検査対象物の他面側に対して、上記検査方法を実行する第3検査ステーションと、を備えて構成される。
【0011】
上記検査システムは、検査対象物の内容物が、蛍光物質を基剤として含むものであることが好ましい。
【0012】
上記検査システムは、検査対象物の容器が、充填された内容物の紫外線による蛍光の発生を調整可能に形成されているものであることが好ましい。
【0013】
上記検査システムは、該内容物が、軟膏状、クリーム状、ゲル状、糊状、乳液状、半固形状の何れかをなすものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の検査方法は、蛍光物質を含む内容物が充填された容器を検査対象物とする検査方法であって、検査対象物に紫外線を照射する工程と、紫外線を照射された検査対象物を撮像する工程と、撮像された画像を画像処理して、多値化した処理画像を形成する工程と、所定の色属性を基準に該処理画像から抽出された、該基準よりも明るくなっている抽出領域の面積値により、検査対象物における内容物の充填状況を判定する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の検査方法によれば、検査対象物における内容物の漏出状況を、精度よく簡単に検査することが可能となる。また、本発明の検査システムによれば、一連の検査動作の中で、検査対象物における異物の付着状況を併せて検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る検査システムを示す全体正面図である。
【図2】実施形態に係る検査システムを示す全体平面図である。
【図3】実施形態に係る第1検査ステーションによる検査画像の例を示す図である。
【図4】実施形態に係る第2検査ステーションによる検査画像の例を示す図である。
【図5】実施形態に係る第2検査ステーションによる検査画像の例を示す図である。
【図6】実施形態に係る検査対象物を示す斜視図である。
【図7】検査画像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1〜図2は、実施形態に係る検査システム1を示しており、図1は全体正面図、図2は全体平面図である。図3は第1検査ステーション10による検査画像の例を示し、図4〜図5は第2検査ステーション20による検査画像の例を示している。図6は実施形態に係る検査対象物(外用製剤50)を示す斜視図である。
【0018】
本実施形態の検査システム1は、図1〜図2に示すように、外用製剤50を検査対象物とするものであり、第1検査ステーション10と、第2検査ステーション20と、第3検査ステーション30と、から構成される。外用製剤50は、搬送手段としてのコンベヤ5によって、搬送方向Aに水平搬送されており、このコンベヤ5に沿って順に、第1検査ステーション10、第2検査ステーション20、第3検査ステーション30が配設されている。第1検査ステーション10および第3検査ステーション30では、外用製剤50における内容物の漏出状況が検査され、第2ステーション20では、異物の付着状況が検査される。
また、図示しない前工程により、ロボットアーム等を用いて、外用製剤50がコンベヤ5の所定位置に一定数量ずつ順次載置されるとともに、検査システム1を通過した良品の外用製剤50が、図示しない後工程により、個別包装や箱詰め等の必要な処理をさらに施されるようになっている。
【0019】
外用製剤50は、図6に示す形状の容器53に、内容物としての外用薬60が充填されたものである。容器53は、図6に示すように、表裏対称に形成された容器本体55を備える。容器本体55は、表面側(一面側)53aと裏面側(他面側)53bを有する胴部56と、胴部56の上方に連設された首部57とによって構成されており、首部57上端の注入口に円筒形状のキャップ58が螺着されている。容器本体55は、充填された外用薬60の蛍光(後述)を遮ることができるように、半透明をなした薄肉厚に形成され、白色に着色されている。このような容器53は、例えばポリエチレン、ポリプロピレンその他適宜の合成樹脂材を成形することによって製造できる。
【0020】
外用薬60は、蛍光物質を含んでおり、検査システム1は、蛍光物質が紫外線の照射により励起し、蛍光が発生することを利用して、外用薬60の漏出状況を検査する。特に、蛍光物質が基剤として含まれる場合には、蛍光面積や蛍光強度が大きくなり、より確実な検査が可能となる。
【0021】
外用薬60は、適度の粘稠度で半固形状に形成されており、例えば皮膚疾患治療に用いられる。本実施形態の外用薬60は、主に白色ワセリンを含んだ基剤と、基剤中に分散されるごく微量(5〜10重量%程度)の薬効成分および必要に応じて添加されるゲル化剤等と、によって組成されており、全体として半透明の白色を呈している。
上記外用薬60の基剤としては、白色ワセリン以外にも、例えば黄色ワセリン、流動パラフィン、ヤシ油、オリーブ油、大豆油、ゴマ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ラウリン、ラノリン、牛脂、豚脂、ミツロウ、ミリスチン酸、ステアリン酸、ステアリルアルコール等の油性ないし親油性基剤、あるいはこれらを適宜組み合わせたものが用いられる。中でもワセリンや生物由来のものは、紫外線の照射によって蛍光を発し易い傾向が見られる。なお、内容物の用途等によっては、上記基剤として水溶性や乳剤性基剤が用いられることもある。
【0022】
上記外用製剤50を搬送するコンベヤ5は、図1〜図2に示すように、所定の収容部7を搬送方向Aに連続的に有する。各収容部7は、上記容器53を模った底浅の凹所8を備え、凹所8に収容された外用製剤50が、横並びの寝姿勢で一列に搬送されるようになっている。本実施形態では、8個の外用製剤50が1単位となり、この単位ごとに搬送や検査がおこなわれる。
【0023】
検査システム1の具体的な構成について説明する。
【0024】
第1検査ステーション10は、図1〜図2に示すように、外用製剤50に所定の紫外線を照射する照射部11と、これを撮像する撮像部12と、撮像部12に接続される画像処理部13および判定部14と、を主として備えている。
【0025】
照射部11は、高周波電源を利用する直管状のブラックライト蛍光ランプからなり、図1〜図2に示すように、搬送方向Aに沿ってコンベヤ5の両側に対設され、搬送されてきた1単位分(=8個)の外用製剤50に、斜め上方から逆ハの字状に紫外線を当てている。照射部11は、励起波長の光のみを照射する光学フィルターやランプカバー(図示せず)を適宜有する。図1〜図2中の9は、外乱光等を遮るために設けられた隔壁部材である(第2検査ステーション20および第3検査ステーション30においても同様)。本実施形態では、紫外線として波長300〜400nmの近紫外線を用いているが、検査対象物に応じて適宜の紫外線を選択してよい。
【0026】
撮像部12は、カラーCCDカメラ(例えば25万画素)で構成されており、図1〜図2に示すように、コンベヤ5の上方に2台設置されている。撮像部12は、凹所8に収容されて寝姿勢にある外用製剤50の表面側53aを撮像しており、1台の撮像部12に付き、4個の外用製剤50を撮像して画像取り込みができるようになっている。
【0027】
画像処理部13および判定部14は、汎用の画像解析装置等によって構成することができる。判定部14には、図1に示すように、モニタないしディスプレイからなる表示部15が接続されており、判定結果を表示できるようになっている。
【0028】
第2検査ステーション20は、図1〜図2に示すように、外用製剤50に所定の照射光(可視光)を照射する照射部21と、これを撮像する撮像部22と、撮像部22に接続される画像処理部23および判定部24と、これらの他さらに移動手段27と、を主として備えている。
【0029】
移動手段27は、図1〜図2に示すように、搬送方向Aに沿って片側一列に設けられた把持片28を有する。把持片28は、搬送されてきた1単位分(=8個)の外用製剤50の各キャップ58をそれぞれ着脱自在に把持する。そのため各収容部7の凹所8は、把持片28の先端を挿入可能なように把持片28の側に開口して形成されている(図2参照)。
把持片28は、図示しない適宜の駆動装置に接続されており、搬送方向Aに直交するように水平移動して外用製剤50のキャップ58に接離自在となされるとともに、外用製剤50を水平状態に把持しながら、コンベヤ5上を垂直に上下移動できるようになっている。また、把持片28は、図示しない適宜の回転装置にも接続されており、コンベヤ5上方に持ち上げた外用製剤50を、円筒形状をなすキャップ58の軸廻りに回転させることができるようになっている。
【0030】
照射部21は、白色LED光源を横長パネル状に形成してなり、図1〜図2に示すように、上記移動手段27の上方の高さ位置で、搬送方向Aに沿ってコンベヤ5の両側に対設されている。照射部21は、上記移動手段27によってコンベヤ5上方に持ち上げられた1単位分(=8個)の外用製剤50に、斜め上方から逆ハの字状に照射光を当てている。照射部21の光源として蛍光灯等を用いることもできるが、LEDは、明るさの均一性を保ち易く、しかも照射部21をコンパクトに構成できる点から、好ましい光源である。
【0031】
撮像部22は、CCDカメラ(例えば200万画素)で構成されており、図1〜図2に示すように、コンベヤ5の上方に4台設置されている。撮像部22は、上記移動手段27によって回転中の外用製剤50を上方から撮像しており、1台の撮像部22に付き、2個の外用製剤50を撮像して画像取り込みができるようになっている。外用製剤50の回転に伴い、各撮像部22が複数カットを撮像する。このため撮像部22は、高速度シャッター機能を備えたものが好ましい。外用製剤50の底面側に、さらに撮影部22を設けるようにすることもできる。
【0032】
画像処理部23および判定部24は、汎用の画像解析装置等によって構成することができる。判定部24には、図1に示すように、モニタないしディスプレイからなる表示部25が接続されており、判定結果を表示できるようになっている。
【0033】
第3検査ステーション30は、図1〜図2に示すように、外用製剤50に所定の紫外線を照射する照射部31と、これを撮像する撮像部32と、撮像部32に接続される画像処理部33および判定部34と、を主として備えている。判定部34には表示手段35が接続される。これらの各構成は、第1検査ステーション10と同一であるため、詳細な説明については省略する。
【0034】
なお、図示しないが、各検査ステーション10、20、30は、メモリ等の記憶手段、演算処理手段、所定のプログラム、キーボード等の入力手段その他必要なハードウェアおよびソフトウェアをそれぞれ適宜備えている。
【0035】
上記の如く構成される検査システム1を用いた具体的な検査手順について説明する。
【0036】
まず、第1検査ステーション10では、外用製剤50の表面側53aに対して、外用薬60の漏出状況が検査される。1単位分(=8個)の外用製剤50が第1検査ステーション10に到達すると、コンベヤ5が一旦停止される。外用製剤50は、表面側53aを上にした状態の寝姿勢となっているので、照射部11を介して紫外線を照射しながら、撮像部12によってこれらを撮像する。
【0037】
画像処理部13は、撮像で得られた画像データを取り込んで、所定の画像処理を施す。そして、各画素において、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色ごとに例えば256階調の濃度レベルに多値化した処理画像を形成する。各画素の色情報を元に変換処理した、グレースケールの濃淡画像を用いるようにしてもよい。判定部14は、この処理画像に基づき、漏出の有無を判定する。
【0038】
図3(a)(b)は、上記処理画像の一例を示している。外用薬60の漏出が無い場合には、図3(a)のような処理画像となる。外用薬60は、紫外線によって蛍光を発するものの、容器本体55の影響によって、処理画像では、外用薬60が充填された部分65が、蛍光を一部遮られて、薄明るく光って現れている。容器本体55が不透明等の構成であれば、外用薬60が充填された部分65の蛍光はさらに弱められる。
これに対して、外用薬60の漏出が有る場合には、図3(b)のような処理画像となる。外用薬60が充填された部分65は、上記のとおり薄明るく光って現れるが、一方で、表面側53aに漏出した外用薬60が、紫外線を直接的に受けて励起し、容器本体55によっても蛍光を遮られないことから、処理画像では、外用薬60が漏出した部分66が、上記部分65よりもさらに明るく、もっとも白っぽく光って現れることになる。
【0039】
判定部14は、かかる容器本体55の表面側53aに外用薬60が漏出した部分66とそれ以外の部分との蛍光度合い(明るさ)の違いにより、漏出の有無を判定する。上記外用製剤50のような検査対象物にあっては、可視光照射および二値化処理では、外用薬60が漏出した部分66を判別することはきわめて困難なことが多いが、本実施形態によれば、漏出の有無を精度よく簡単に判定することができる。
【0040】
より具体的には、所定の色属性を基準に処理画像内から、もっとも明るい部分を含み、かつ当該基準よりも明るくなっている一定領域を抽出して、これを抽出領域とする。例えば、所定の明度を基準にして、もっとも明度が大きい部分を含み、かつ明度が基準明度よりも大きくなっている一定領域(上記では66が相当)を抽出する。色属性としては、少なくとも明度を基準にするのがよいが、色相や彩度を考慮することもできる。
そして、上記抽出領域の面積値を算出するとともに、その面積値と設定面積値とを比較する。抽出領域の面積値が設定面積値以上の場合には、「漏出が有る」(不良品)と判定し、抽出領域の面積値が設定面積値未満の場合、あるいは領域自体を抽出できない場合には、「漏出が無い」(良品)と判定する。
【0041】
基準となる「所定の色属性(明度)」は、例えば漏出の有る不良サンプル数本を実際に計測し、容器本体55内に外用薬60が充填された部分65の平均的な明度と、表面側53aに外用薬60が漏出した部分66の平均的な明度とを調査することにより適宜定めることができる。外用薬60が充填された部分65を誤検知してしまうようなときは、基準となる明度を少し上げて調節する。
「設定面積値」は、例えば「5ドット」というように設定するが、検査対象物等によって好適な値は異なり得る。設定面積値が低すぎると、ノイズ(極小の埃・ゴミ等)が入り易くなる。
【0042】
なお、この実施形態では、図3(c)に示すように、処理画像中に複数の検査エリア70を設け、検査エリア70ごとに判定部14が判定をおこなうようになされている。これによれば、外用製剤50のどの部位で漏出が発生しているかの傾向を知ることができ、漏出防止の対策を図り易いものとなる。
【0043】
次に、第2検査ステーション20では、外用製剤50における異物の付着状況が検査される。「異物」とは、外用製剤50の製造過程で付着し得る、例えば繊維片・紙片、毛髪、汚れや傷等の製品品質に影響を及ぼすものである。撮像部22は、このように微細な異物を拡大して撮像する。本実施形態では、20〜25μm程度の太さの線状異物であっても判別できるようにしてある。
第1検査ステーション10を通過し、1単位分(=8個)の外用製剤50が第2検査ステーション20に到達すると、コンベヤ5が一旦停止され、これらの外用製剤50が、移動手段27によって一定距離だけ上昇される。その後、各外用製剤50が、一定方向に回転されるので、照射部21を介して照射光を照射しながら、撮像部22によってこれらを撮像する。外用製剤50を収容部7の凹所8から上昇させることで、撮像時における外用製剤50の回転がスムーズとなり、回転に伴う容器本体55の損傷等も防止できる。
【0044】
画像処理部23は、撮像で得られた画像データを取り込んで、所定の画像処理を施す。そして、各画素の明暗に応じて二値化したモノクロ(白黒)の処理画像を形成する。処理画像は、各画素を複数段階の濃淡レベルに量子化し、設定した二値化レベルにて二値化処理することにより形成できる。判定部24は、この処理画像に基づき、異物の付着有無を判定する。必要により位置補正やエッジ検出等の処理を施すようにしてもよい。
【0045】
異物が付着している場合、その部分が黒く現れるため、異物が付着していない場合と比べて、処理画像中の黒色画素数が増加する。したがって、例えば、処理画像中の一定範囲における黒色画素数または白色画素数を計算することで、異物の付着有無を判定できる。
【0046】
本実施形態では、外用製剤50が連続して1回転する間に、図4に示す如く8カット分が断続的に次々と撮像され、それぞれにおいて異物の付着有無が検査される。これにより、外用製剤50の全周に亘って、異物の付着状況を隈なく検査できるようになっている。
【0047】
図5は、上記処理画像の一例を示している。これに示すように、本実施形態では、容器53の各部形状等に応じて、複数の検査ブロック72が細かく設定され、検査精度を向上させている。図5中の73は、画像内の外用製剤50の幅寸法を通じて、その回転姿勢を検出する検出手段である。検出手段73を介して、外用製剤50の回転姿勢に対応した適切な検査ブロック72が、自動的に設定されるようになっている。
【0048】
上記外用製剤50は、撮像後さらに続けて半回転(よって合計1回転半)し、表面側53aと裏面側53bとを反転状態にして下降され、待機していた各収容部7の凹所8に戻される。これにより外用製剤50は、今度は裏面側53bを上にした状態の寝姿勢となって、再びコンベヤ5で搬送される。
【0049】
最後に、第3検査ステーション30では、外用製剤50の裏面側53bに対して、外用薬60の漏出状況が検査される。第2検査ステーション20を通過した1単位分(=8個)の上記外用製剤50が第3検査ステーション30に到達すると、コンベヤ5が一旦停止され、第1検査ステーション10と同様の要領で検査がおこなわれる(詳細な説明については省略する)。
【0050】
上記のとおり、外用製剤50は1単位分(=8個)ごとに所定位置で一旦停止しながら搬送されるが、コンベヤ5による搬送と各検査ステーション10、20、30による検査とがタイミングを合わせて制御されている。つまり、第1検査ステーション10で、或る1単位分の外用製剤50が検査されている間に、第2検査ステーション20では、第1検査ステーション10を通過した別の1単位分の外用製剤50が検査され、同時に、第3検査ステーション30では、第2検査ステーション20を通過したさらに別の1単位分の外用製剤50が検査されており、これが繰り返されるようになっている。
【0051】
なお、検査システム1を通過した外用製剤50は、各判定部14、24、34から出力される良否の判定信号に基づき、良品と判定された場合には、そのままコンベヤ5で次工程へと送出され、各判定部14、24、34の少なくとも何れかで不良品と判定された場合には、図示しないプッシャー等を介してコンベヤ5の外部へ排出されるようになっている。
【0052】
以上説明した検査システム1によれば、外用製剤50における外用薬60の漏出状況を精度よく簡単に検査することができる。上記のように、容器本体55と外用薬60とが、互いに「略同一色」(同一色の他、肉眼による離隔観察で容易に判別できない色を含む)からなる場合には、目視検査がきわめて難しく、特に効果的となる。
【0053】
また、検査システム1によれば、外用製剤50における異物の付着状況を併せて検査することができる。しかも、検査システム1であれば、外用薬60の漏出状況の検査と異物の付着状況の検査とを、一連の検査動作の中で、非常に効率的におこなうことができる。
さらに、容器53の側面に外用薬60が漏出しているような場合であっても、かかる外用薬60が、一定以上の厚みを有することから、外用製剤50の表面側53aないし裏面側53bの処理画像中に、容器53側面から外方に凸起した漏出部分66となって現れ得る。よって、検査システム1によれば、第1検査ステーション10および第3検査ステーション30にて、外用製剤50の表面側53aおよび裏面側53bに対して、所定の検査方法を実行することで、外用製剤50を回転等させることなく、外用製剤50全周における外用薬60の漏出状況を効率的に検査できる。
【0054】
以上の実施形態の記述は、本発明をこれに限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の修正や設計変更等が可能である。
【0055】
例えば、外用製剤50の検査単位数や撮像部12、22、32のカメラ台数等は適宜変更してよい。
上記実施形態では、外用製剤50を寝姿勢にて検査しているが、外用製剤50を起立姿勢等にて検査するような構成とすることもできる。
また、上記実施形態では、外用薬60が充填された容器53を検査対象物とする場合を例示して説明したが、本発明はこれに限らず、蛍光物質を含む他の医薬品や飲食品、化粧品等に幅広く適用することができる。容器53としては、様々な形状のものを採用してよく、内容物や容器53の着色等も任意に変更可能である。
内容物の形態についても限定はないが、とりわけ内容物が、或る程度の粘性を有する、軟膏状、クリーム状、ゲル状、糊状、乳液状、半固形状の何れかをなすような場合には、粉粒状等に比べて漏出した内容物が容器に付着し易く、本発明は優れた効果を発揮し得る。
【0056】
また、上記実施形態に係る検査方法を応用して、検査対象物における内容物の充填状況を検査することもできる。
図7(a)(b)は、上記第1検査ステーション10(または第3検査ステーション30)と同様の検査手順によって得られた処理画像を示しており、図7(a)は外用薬60が適切に充填された外用製剤50の処理画像の一例、図7(b)は外用薬60の充填が不十分な外用製剤50の処理画像の一例である。
【0057】
この検査に際しては、処理画像中に検査エリア75を設定し、所定の色属性(明度)を基準に検査エリア75内から、明度が基準明度よりも大きくなっている一定領域(図7(a)(b)中の65が相当)を抽出し、これを抽出領域とする。そして、抽出領域の面積値が正常範囲内にあれば、外用薬60が適切に充填されている、と判定できる。図7(b)に示すように、外用薬60の充填量が規定より不足しているような場合には、上記抽出領域の面積値が正常範囲を下まわり、外用薬60が適切に充填されていない、と判定されることとなる。なお、上記では、外用製剤50を起立姿勢にて検査するようにすれば、より正確な判定をおこない易い。
また、これ以外にも例えば、外用製剤50におけるキャップ58の装着状況や、充填された外用薬60中への異物混入状況等を併せて検査することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、外用薬等の蛍光物質を含む内容物が充填された容器を検査対象物とする検査において、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 検査システム
5 コンベヤ
10 第1検査ステーション
20 第2検査ステーション
30 第3検査ステーション
11、21、31 照射部
12、22、32 撮像部
13、23、33 画像処理部
14、24、34 判定部
27 移動手段
28 把持片
50 外用製剤
53 容器
53a 表面側
53b 裏面側
60 外用薬
A 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光物質を含む内容物が充填された容器を検査対象物とする検査方法であって、
検査対象物に紫外線を照射する工程と、
紫外線を照射された検査対象物を撮像する工程と、
撮像された画像を画像処理して、多値化した処理画像を形成する工程と、
所定の色属性を基準に該処理画像から抽出された、もっとも明るい部分を含む抽出領域の面積値を算出するとともに、該抽出領域の面積値と設定面積値とを比較することにより、検査対象物における内容物の漏出状況を判定する工程と、を有する検査方法。
【請求項2】
蛍光物質を含む内容物が充填された容器を検査対象物とする検査システムであって、
検査対象物の一面側に対して、請求項1に記載される検査方法を実行する第1検査ステーションと、
該第1検査ステーションを通過した検査対象物を、移動手段を介して、一定距離だけ上昇させたのちに一定方向に回転させ、回転中の検査対象物を撮像して得られる二値化した処理画像に基づき、検査対象物の全周における異物の付着状況を判定するするとともに、検査対象物の一面側と他面側とを反転状態にして下降させる第2検査ステーションと、
該第2検査ステーションを通過した検査対象物の他面側に対して、請求項1に記載される検査方法を実行する第3検査ステーションと、を備えた検査システム。
【請求項3】
検査対象物の内容物が、蛍光物質を基剤として含む請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
検査対象物の容器が、充填された内容物の紫外線による蛍光を遮るように形成されている請求項3に記載の検査システム。
【請求項5】
検査対象物の内容物が、軟膏状、クリーム状、ゲル状、糊状、乳液状、半固形状の何れかをなす請求項4に記載の検査システム。
【請求項6】
蛍光物質を含む内容物が充填された容器を検査対象物とする検査方法であって、
検査対象物に紫外線を照射する工程と、
紫外線を照射された検査対象物を撮像する工程と、
撮像された画像を画像処理して、多値化した処理画像を形成する工程と、
所定の色属性を基準に該処理画像から抽出された、該基準よりも明るくなっている抽出領域の面積値により、検査対象物における内容物の充填状況を判定する工程と、を有する検査方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−64526(P2011−64526A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214064(P2009−214064)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000137904)株式会社ミューチュアル (37)
【出願人】(506369911)株式会社日本電商ビジョンシステム (4)
【Fターム(参考)】