説明

検査液分析装置用使い捨て成分検出具

【課題】 部品数が少なく構造が簡単で、検査液を容易にかつ安全に注入にでき、しかも検査液と雰囲気との接触を極力避けることができ、正確な検査値を得ることのできる検査液分析装置用の使い捨て成分検出具を提供する。
【解決手段】 ハウジング100の内部に検査液通路101を備え、前記検査液通路101の上流部分に検査液注入孔102を設け、下流部分に排気孔104を設け、検査液通路101中に注入された検査液の少なくとも一つの成分を検出可能なセンサ装置103を、その検出部が前記検査液通路101における前記注入孔102と排気孔104との間の部分に露出し、かつ、その端子部がハウジング100の外部に露出するように設け、排気孔104に、空気に対しては透過性で液体に対しては不透過性の材料から成る栓部材105を設ける。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、人間や動物等の体液等の検査液中のガス成分やpH値等を測定及び分析することができる検査液分析装置に使用可能な検査液中の成分を検出する装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の検査液分析装置は、例えば病院又は分析センタ等の施設内や事故現場等の屋外等において患者の心肺機能を検査する目的で血液の酸性度pH、炭酸ガス分圧PCO2、酸素分圧PO2、ナトリウムNa、カリウムK、塩素Cl、イオン化カルシウムCa、尿素窒素BUN、グルコースGlu、ヘマトクリットHct、重炭酸イオンHCO3−、酸素飽和度SO2、全二酸化炭素TCO2、塩基過剰BE、ヘモグロビンHgbのような各種ガス濃度やイオン濃度を測定・分析するのに使用され、据置き型や携帯型のもが種々提案され実用に供されている。
特に携帯型の分析装置としては例えば、特公平8−20398 号公報に、検査液中の成分を検出する複数の検出部を有するセンサ装置を備えた成分検出具を分析装置本体と別体に備えた形式の分析装置が開示されている。
前記した成分検出具は、 ハウジング内に 分析すべき液体サンプル(以下、本願に合わせて検査液と称する。)を保持する保持部と、 該保持部と連通する検査液通路と、 検査液通路の途中に設けられたセンサ装置と、 検査液通路の下流に設けられた貯留部と、 内部に所定量の空気を収容し、外部からの押圧力によって変形可能な部分を有する空気収容部と、 該空気収容部と前記保持部とを連通する空気圧供給路とを備え、 検査液分析装置本体に着脱可能に構成されている。
上記したように構成された成分検出具は専用の分析装置に着脱可能に構成され、作業者が分析すべき検査液を保持部に滴下した後、成分検出具を前記分析装置に装着すると、分析装置側に設けられた押圧手段が前記空気収容部を押圧して空気収容部内の空気を保持部側に押し出し、この空気圧によって保持部に保持された検査液を検査液通路に流して、センサ装置の検出部に接触させるように構成されている。
上記したように従来の携帯型分析装置用の成分検出具は、検査液を保持部で一時的に保持しておき、分析装置で機械的に押圧することで空気収容部から押し出される空気で検査液をセンサ装置の検出部まで押し流すように構成されているので、検査液を押し出す空気量を常に一定に保つことができ、保持部に所定量の検査液が正確に保持されていれば確実に検査液をセンサ装置の検出部に供給することが可能にるという効果を奏する。また、空気収容部から押し出される空気量と、検査液通路のセンサ装置の検出部までの距離と、検査液保持部の容積とが固定されているので、必要な検査液の量を必要最低限まで減らすことが可能になり、微量な検査液で分析が行えるという効果も併せて奏する。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来の携帯型分析装置用の成分検出具は、必要な検査液の量の低減や成分検出具自体の小型化は達成できるが、検査液保持部に供給する空気量が一定に保たれるように構成されているので保持部に保持させる検査液の量も当然一定にする必要があり、しかもその量が微量であるため、結果として、非常に小さい検査液保持部に分析すべき検査液を必要量正確に滴下しなければならないという困難な作業を作業者に強いることになるという問題があった。
特に、このような成分検出具を使用する携帯型の検査液分析装置は、病院又は分析センタ等の施設内での使用よりも、事故現場や救急車等の屋外や移動中の車両等で使用されることの方が多いため、上記したような微量な検査液を成分検出具の保持部に必要量正確に滴下するという細かい作業は作業者にとって大きな負担になるので問題である。
また、検査液保持部が小さいと、検査液を上手に保持部に滴下できずに検査液がハウジング表面に漏れ出たりする等して、作業者が患者の血液等の感染性のある検査液に直接触れてしまう危険がある。
さらに、上記したように検査液を滴下するという構成を採っていると、検査液の滴下時に検査液が雰囲気に触れ、検査液中の測定すべき成分が影響を受け、正確な測定ができなくなる可能性があるという問題もある。
さらにまた、上記した従来の成分検出具は、それ自体に変形可能な空気収容部を設けたり、分析装置側に前記空気収容部を押圧する機構を設けなければならないので、それ自体の構成が複雑になるばかりでなく、分析装置の構成も複雑にするという問題もある。
【0004】
そこで、本考案は、このような従来の検査液分析装置用の使い捨て成分検出具に伴う様々な問題点を解決して、部品数が少なく構造が簡単で、検査液を容易にかつ安全に注入にでき、しかも検査液と雰囲気との接触を極力避けることができ、正確な検査値を得ることのできる検査液分析装置用の使い捨て成分検出具を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本考案による検査液分析装置用の使い捨て成分検出具は、ハウジングの内部に検査液通路を備え、前記検査液通路の上流部分に検査液注入孔を設け、下流部分に排気孔を設け、検査液通路中に注入された検査液の少なくとも一つの成分を検出可能なセンサ装置を、その検出部が前記検査液通路における前記注入孔と排気孔との間の部分に露出し、かつ、その端子部がハウジングの外部に露出するように設け、前記排気孔に、空気に対しては透過性で液体に対しては不透過性の材料から成る栓部材を設け、前記端子部を、前記検出部の検出結果に基づいて検査液中の少なくとも一つの成分を分析可能な分析装置に脱着可能に接続できるように構成したことを特徴とするものである。
【0006】
【考案の実施の形態】
図1は、本考案の一つの実施の形態を示す検査液分析装置用使い捨て成分検出具(以下、単に検出具と称する。)の概略上面図及びA−A断面図である。
図1(a)に示すように、検出具は、ハウジング100の内部に検査液通路101を備え、この検査液通路101の上流端部に検査液注入孔102が、また、下流端部に排気孔103が各々形成されている。また検査液通路101の途中には、検査液中の分析すべき成分を検出するためのセンサ装置104が設けられている。詳細には図示していないが、前記センサ装置104は、その検出部が検査液用通路101の中に露出するように配置され、また、その端子部分がハウジング100の外部に露出するように配置されており、不図示の分析装置に端子部分を装着することができるように構成されている。 また、図1(b)に示すように排気孔103には空気に対しては透過性で液体に対しては不透過性の特性を持つように形成された栓部材105が装着されている。この栓部材105は、例えば、撥水性材料からなる多孔性合成樹脂の孔内に吸水率の高い吸水性樹脂を含有させたものから成る。
上記したように構成された成分検出具の作用について簡単に説明すると、この成分検出具は、始めにその注入孔102が外部に露出するように適当な分析装置にセットされる。この時、センサ装置104の端子部は分析装置の検出結果入力端子に接続される。そして、作業者が検査液注入器106のノズル部分106aを注入孔102に挿着し、検査液注入器106で注入孔102から血液等の検査液を注入すると、検査液が前記栓部材105に至った時点で前記吸水性樹脂が検査液を吸収して膨張し前記多孔性合成樹脂の各孔を塞ぐので、栓部材105が排気孔103を密閉し、それ以上注入器106で検査液を注入できないようにする。これにより、検査液通路101の内部は注入孔102から排気孔103までが確実に検査液で満たされるので、注入孔102と排気孔103の間に設けられたセンサ装置104の検出部に検査液が確実に供給されるようになる。センサ装置104の検出部は検査液に触れると所定の成分と反応し、その結果が端子部に電流値又は電圧値として現れる。分析装置側ではこの端子部から得られる電流値や電圧値に基づいて各成分の測定や分析を行い、適当なモニターに表示したり、また、プリントアウトしたりする。 上記したように作業者は、検査液を注入する時には、単に注入器のノズル部を注入孔に装着して、それ以上注入できなくなるまで注入器で検査液を注入するだけで、検出具内に検出に必要な量の検査液を確実に注入できるようになるので、作業者は注入量等に注意を払う必要がない。
尚、前記検査液通路101の形態は様々な形態が考えられ、例えば、前記センサ装置104より下流側に所定量の検査液を貯めることができる容積を有する廃液部を設け、この廃液部の下流部に排気孔を設けてもよい。このように廃液部を設けることにより注入可能な検査液の量を増やしたり、後述する校正液を流すことも可能になる。また、検査液通路101の長さは、センサ装置の検出部の数や注入可能にすべき検査液の量に応じて適宜設定され得る。
さらに、前記注入孔102は、注入器106のノズル部分106aが液密に嵌合できるように形成するのが好ましく、例えば、注射器のノズル部分のJIS規格の寸法及び形状に合わせて、前記ノズル部分が液密に嵌合できるように先細に形成してもよく、また、注入孔102及び/又は注入器のノズル部分106aにシール部材を設けてもよい。
また、前記検出具は、必要に応じてセンサ装置の各検出部に対する校正を行う校正液を収容する収容部と、該収容部から前記検査液通路101における前記センサ装置の上流部分に連通する連通路とを備え、検査液を注入する前に、前記校正液をセンサ装置に流して各検出部の校正を行えるように構成され得る。
【0007】
【実施例】
次に、本考案に係る検出具のさらに具体的な実施例を図2〜図8に示した一実施例を参照しながら説明していく。
図2は本考案に係る検出具の概略展開図であり、図3は後述するハウジング組立後の検出具における検査液通路の概略上面図である。
図面に示すように、検出具は、透明または半透明なプラスチックのような適当な材料から成るハウジング1を備えている。このハウジング1は、互いに重畳される二枚の基板1A、1B及び両面に接着層を備えた薄い仕切板1Cから成り、二枚の基板1A、1Bで前記仕切板1Cを挟み、該仕切板2で二枚の基板1A及び1Bが液密に接合されるように組み立てられる。
【0008】
一方の基板1Aには、その内側面すなわち薄い仕切板1Cと対向する面に、検査すべき人間または動物の体液等の検査液を通す溝から成る検査液通路2が基板1Aの周囲縁部に沿ってコの字状に形成されている。この検査液通路2の上流端にはハウジングの外部と連通する検査液の注入孔3が形成されており、また、検査液通路2の下流部分にはジグザグ状に形成された第1の廃液部4が形成されている。
図4は、基盤1Aにおける前記注入孔3に対応する部分の部分断面図であり、図面に示すように前記注入孔3は基板1Aの内側面から外側面へ僅かにテーパー状に広がり、基板1Aの外側面における注入孔3の周囲には案内肩部3aが設けられている。これにより注入孔3に注射器等の検査液注入器(図示せず)を密閉的に挿着でき、雰囲気に触れないように検査液を検査液通路2に注入できるように構成されている。
【0009】
第1の廃液部4を構成している溝は図2及び図3に示すようにジグザグに形成され、その幅及び深さは、十分容積を得るために検査液通路2の他の部分より大きく設定されている。
また、検査液通路2は図2及び図3に示すように、注入孔3からのびる比較的幅の狭い部分2aと、この比較的幅の狭い部分2aに続く検出部当接部分2bと、検出部当接部分2bにつづく括れ部分2cと、括れ部分2cから第1の廃液部4へ伸びる部分2dとを備えている。検査液通路2のセンサ当接部分2bの上流部分には校正液通路の一部を構成する細溝6が内方へ向って形成されている。さらに検査液通路3のセンサ当接部分3bには周縁部に向かってのびる分枝通路7が形成され、その先端は貫通孔8で終端している。この貫通孔8は参照電極に相対するように位置決めされ、ゲル状の飽和塩化カリウム溶液が装填され得る。
さらに一方の基板1Aのコの字状の検査液通路2で囲まれた内側領域には開口部9が形成されており、この開口部9は測定時に後で説明する校正液容器を押圧する手段を受けるために設けられている。
さらにまた一方の基板1Aのほぼ中央部には、後述する検査液分析装置に検出具を挿入する際の案内及び係止用の貫通孔10が設けられている。
【0010】
他方の基板1Bには、その内側面すなわち薄い仕切板1Cと対向する面に、センサ装置11を装着するための浅い凹面12が一つの隅角部に沿って形成され、そして一方の基板1Aにおける開口部9に相応した位置には校正液容器13の装着凹面14が形成されている。
図5は、校正液容器13及び基板1Bにおける前記装着凹面14に対応する部分の拡大図であり、図面に示すように校正液容器13は、ガス透過性のない、又は低い材質から成り、内部にセンサ装置11における各検出部の校正用の試薬を密閉的に収容している。本実施例では前記校正液容器は外周縁部13aが、少なくとも後述する分析装置の押圧手段で押圧された時の内圧で剥離しない強度で接着されている。前記外周縁部13aには、放出部13bが形成されており、この放出部13bに対応する部分は、少なくとも後述する分析装置の押圧手段で押圧された時の内圧で剥離可能に易剥離シーラントで接着されている。この易剥離シーラントによる剥離機構としては、シーラントと被着体が完全に融着しておらず、適度な強度で剥がせる状態の界面剥離機構、コーティング層やラミネートフィルムの層間で剥離可能な層間剥離機構、又は開封時にシーラント層の内部凝集破壊により剥離する凝集剥離機構等が考えられ得る。
上記したように校正液容器を形成することにより、後述する分析装置の押圧手段で押圧された時に放出部13bのみが剥離して開封状態となり、内部の試薬が校正液容器から放出できるようになる。このように、易剥離シーラントを用いて放出部を形成することで校正液を放出させるために校正液容器を針状物で破く構成を採っている検出具に比べて校正液容器の強度を全体として高くすることができ、その結果、ガス透過性の低い素材が使えるので検出具保存時の試薬の保存性が著しく向上する。
また、基板1Bにおける装着凹面14の前記校正液容器13の放出部13bに対応する部分から、一方の基板1Aにおける校正液通路の一部を構成している細溝6の自由端に相応した位置までには校正液通路の一部を成す細溝16が形成されている。この細溝16は、組立られた時に仕切板1Cに設けられた孔23を介して一方の基板1Aに形成された細溝6と連通して一本の校正液通路を構成して前記校正液容器13の放出部13bと検査液通路2との連通させ、検査液の測定に先立ってセンサ装置11の各センサ装置の各端子部を校正するために校正液容器13が分析装置の押圧手段によって押圧され、その放出部13bが剥離した時に校正液容器13中の校正液を検査液通路2における検出部当接部2bに流す。
尚、図面には詳細に示していないが、校正液容器装着凹面14、校正液通路の一部を成す細溝16、及び校正液容器13には、校正液容器13の放出部13bから試薬が放出した時に、試薬が他の部分に漏れでないで確実に細溝16内に流れ込むために案内溝を設ける等の様々な構成が採られることは言うまでもない。
【0011】
また、符号17は、一方の基板1Aにおける第1の廃液部4に対応した位置に該廃液部4と対称形状に形成されたジグザグの溝から成る第2の廃液部を示しており、この廃液部17は、組立られた時に仕切板1Cに設けられた孔24を介して一方の基板1Aに形成された第1の廃液部4と連通して連続する一本の廃液通路を構成する(図3参照)。また、廃液部17の下流端部には外部と連通する排気孔18が形成されており、この排気孔18には図6に示すように空気に対しては透過性で液体に対しては不透過性の働きをする栓部材19が装着されている(図6は、基板1Bにおける排気孔18部分の部分断面図を示している。)。
この栓部材19は、例えば、撥水性材料からなる多孔性合成樹脂の孔内に吸水率の高い吸水性樹脂を含有させたものから成り、検査液注入器で注入孔3から血液等の検査液を注入すると、検査液が前記栓部材19に至った時点で前記吸水性樹脂が検査液を吸収して膨張し前記多孔性合成樹脂の各孔を塞ぐので、栓部材19が排気孔18を密閉し、それ以上注入器で検査液を注入できなくなる。これにより、検査液通路2の内部は注入孔3から排気孔18までが確実に検査液で満たされるので、注入孔3と排気孔18の間に設けられたセンサ装置11の検出部に検査液が確実に供給されるようになる。
【0012】
図7は、センサ装置11の概略拡大図である。図面に示すように、このセンサ装置11は、絶縁性基板11a上に導電性インキを塗布して形成された電極を有する複数の検出部11bを備えている。
この検出部11bは、酸性度PH、炭酸ガス分圧PCO2、酸素分圧PO2、ナトリウムNa、カリウムK、塩素Cl、イオン化カルシウムCa、尿素窒素BUN、グルコースGlu、ヘマトクリットHct、重炭酸イオンHCO3−、酸素飽和度SO2、全二酸化炭素TCO2、塩基過剰BE、ヘモグロビンHgb等のような検出すべき成分に応じて、各電極の検査液通路2に対応する部分に、検出すべきガス成分が透過可能なガス透過膜や、検出すべき成分に反応する化学物質や天然物質を塗布してなる試薬層が適宜設けられ得る。
また、前記検出部11bは、例えば、血液中の酸素分圧やグルコース濃度を測定するために電流検出方式を用いる場合にはさらに対極を備え、また、検査液中の水素、ナトリウム又はカリウム等のイオン濃度を測定するために電位差検出方式を用いる場合にはさらに参照電極を備え、さらにまた、ヘマトクリット量を測定するために検査液中の電導度を測定する場合には、それらの間に交流電圧を印加する等、検出すべき成分に応じて様々な形態を採ることができる。
なお、 図示実施例では検出部11bはこれら検査値のうち8種類の検査値を測定できるように配列されている。
また各検出部11bは導電性インキを塗布して成る導体11dを介して基板11aの一側縁部に沿って整列して設けた端子11eに接続され、これらの端子11eは、ハウジング1を組み立てた時に基板1Aから外部に露出するように配置されている。すなわち、図8はハウジング1を組み立てた状態を示す概略斜視図であるが、この図面から分かるように一方の基板1Aの幅は他方の基板1Bより若干小さく構成されており、前記端子11eは二つの基板1A及び1Bを重ねた時に基板1Bにおける基板1Aから突出する部分に配置されている。
尚、前記絶縁性基板は、セラミック、ガラス、ガラスエポキシ、プラスチック等、検査液によって侵されない材質のものであれば任意の絶縁性材料が使用され得るが、使い捨てであるため安価で扱い易いポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックフィルム等が好ましい。
また、導電性インキを塗布する印刷方法としては、好ましくは効率よく大量に均一なものが形成できるスクリーン印刷法が考えられ得るが、これに限定されることなくインキジェット法、ノズルコーティング法、ディスペンサー印刷、又はキャスティング等任意の方法を用いることができる。
【0013】
一方の基板1Aにおける貫通孔10に対応した他方の基板1B上の位置には貫通孔20が設けられ、二枚の基板1A、1Bを互いに貼合わせた時にこれら貫通孔10及び20が整列して合致するようにされている。
【0014】
また仕切板1Cには、一方の基板1Aにおける検査液通路2の検出部当接部分2b及び分枝通路7に沿った位置に複数の開口部21が設けられ、検査液通路2の検出部当接部分2b及び分枝通路7に流れてくる検査液がこれらの開口部21を通して他方の基板1B上の各検出部11c及び電極11bと接触するようにされている。
さらに仕切板1Cは、一方の基板1Aにおける貫通孔10及び他方の基板1B上の貫通孔20に対応した位置に設けられた孔22、一方の基板1Aの細溝6の自由端と他方の基板1Bの細溝16の自由端とを連通させ一本の校正液通路を形成させるための孔23、及び一方の基板1Aの廃液部4と他方の基板1Bの廃液部17とを連通させて連続した廃液部を形成させるための孔24を備えている。
【0015】
図9は本考案による検出具を使用可能な検査液分析装置の一実施例としての携帯型分析装置の概略斜視図を示し、図10は分析装置の内部処理を概略的に示すブロック図である。
この携帯型分析器は図2〜図8に例示したカード式使い捨て検出具を挿入する挿入口30と、カード式使い捨て検出具における各検出部で検出した出力信号を演算処理する演算処理部31と、演算処理部31の演算結果を記憶する記憶部32と、ケーシングの上面部に配置され、演算処理部31の演算結果のデータを表示する表示部33と、演算処理部31の演算結果のデータを印刷するプリンタ34とから成っている。図9に示す表示部33には装置の操作部が組み込まれており、また装置内部には校正液容器押圧手段が設けられており、この校正液容器押圧手段はカード式使い捨て検出具を挿入することにより、作動できるようにされている。
【0016】
上記したように構成された分析装置と検出具との動作について患者の血液分析を例に挙げて説明する。
まず、用意したカード型使い捨て検出具を携帯型分析器の挿入口30に差し込んでセンサ装置の各検出部の校正測定を行う。すなわちカード式使い捨て検出具を挿入することにより、測定項目を判別し、自動的に携帯型分析器内の試薬容器押圧手段が作動され、検出具の基板1Aに形成された開口部9を通って校正液容器13を所定の圧力で押圧する。これにより、校正液容器13の放出部13bが剥離して内部に収容された校正液が校正液通路6,16に放出され、この校正液通路6,16を介して検査液通路2の検出部当接部2bに流され、校正液が検出部11bに接触する。分析装置側ではこの時に各端子11eから検出される電流値や電圧値等に基づいて各検出部11bに対する校正を行う。
【0017】
その後、患者から採取した血液の入った注射器のノズルをカード式使い捨て検出具における注入孔3に嵌合させて血液を内部の検査液通路2へ注入する。この際、検査液通路2は検出部当接部分2bの上流側に比較的幅の狭い部分2aを備え、また下流側に括れ部分2cを備えているので、血液の注入圧力にばらつきがあっても、注入された血液は検査液通路2の検出部当接部分2bに沿ってをゆっくりと安定して流れ、センサ装置の各端子部は所望の検査値を安定して正確に検知することができる。こうして検査液通路2の検出部当接部分2bを通過した血液は括れ部分2cから下流部分2dを通り第1の廃液部4へ流入する。この場合注射器による血液の注入中、第1の廃液部4内の血液の溜まり状態を外部から監視することにより血液の注入量を容易に認識することができる。また、第1の廃液部4に繋がる第2の廃液部17の下流端部、即ち、検査液通路2の下流端部に形成された排気孔18には空気に対しては透過性で液体に対しては不透過性の栓部材19が装着されているので、特別血液の注入量を注意して監視していなくても血液が前記栓部材19まで注入さ検査液通路2が一杯になると前記栓部材19が排気口18を密閉して、自動的にそれ以上血液が注入できなくなる。
また従来のように注入した血液を検査具内に保持しておき校正操作後、検査具内に保持していた血液の検査値測定をおこなうものと違って、本考案において検査具への血液注入と実質的に同時に血液の検査値測定をおこなうので正確な測定値を得ることができる。
【0018】
こうして各検出部11bで検出された電流値及び電圧値は端子11eから、携帯型分析器内の演算処理部31に送られ、演算処理されて、酸性度PH、炭酸ガス分圧PCO2、酸素分圧PO2、ナトリウムNa、カリウムK、塩素Cl、イオン化カルシウム Ca、尿素窒素BUN、グルコースGlu、ヘマトクリットHct、重炭酸イオンHCO3−、酸素飽和度SO2、全二酸化炭素TCO2、塩基過剰BE、ヘモグロビンHgbのような各種ガス濃度やイオン濃度に関するデータが出力され、これらのデータは一方では記憶部33に記憶されると共に、ケーシングの上面部に配置された表示部33に表示される。そしてこれらのデータは必要によりプリンタ34を作動させてプリントアウトすることができる。
【0019】
ところで図示実施例ではハウジング1が二枚の基板1A及び1Bと仕切板1Cで構成されているが、これは本実施例に限定されることなく、内部に検査液通路が形成できる構成であれば任意の構成が考えられ得る。
また、図示実施例では、二枚の基板は全体を透明または半透明の材料で構成しているが、これは本実施例に限定されることなく不透明材料で構成してもよく、また、第1、第2の廃液部4及び17内の何れかの状態を確認できるように一部を透視可能な材料で構成してもよい。
また本実施例では、一方の基板を他方の基板より幅を狭く形成することによりセンサ装置の端子を露出させているが、二枚の基板を同じ寸法に構成してセンサ装置の端子をその側面に露出するように構成してもよい。
さらに、図示実施例では両面に接着層を備えた仕切板で二枚の基板を接着するように構成しているが、これは本実施例に限定されることなく直接接着剤で接合してもよい。
また、センサ装置はハウジングと別体に設けているが、ハウジングに直接検出部等を設けてもよい。
さらにまた、検出部の数は検査値の数及び種類に応じて任意に設定することができる。
また、図示実施例では、検出具は、易剥離可能な放出部を備えた校正液容器を備え、検査液の分析前に各検出部を校正できるように構成されているが、この構成は本実施例に限定されることなく、校正液容器は必要に応じて設ければよい。
また、校正液容器を設ける場合にも、校正液容器の構成は本実施例に限定されることなく、例えば、使用時に分析装置又は検出具のハウジングに設けた針状部材で穴を開けて内部の試薬を検査液通路の検出部に向けて放出するように構成してもよい。
【0020】
【考案の効果】
本考案による使い捨て成分検出具は、ハウジングの内部に検査液通路を備え、前記検査液通路の上流部分に検査液注入孔を設け、下流部分に排気孔を設け、検査液通路中に注入された検査液の少なくとも一つの成分を検出可能なセンサ装置を、その検出部が前記検査液通路における前記注入孔と排気孔との間の部分に露出し、かつ、その端子部がハウジングの外部に露出するように設け、前記排気孔に、空気に対しては透過性で液体に対しては不透過性の材料から成る栓部材を設けているので、分析すべき検査液を注射器等の注入器で検査液通路における検出部まで直接注入できるようになり、また、前記栓部材が空気に対しては透過性で液体に対しては不透過性の材料で構成され、検査液通路の下流端で検査液の漏れだしを防止するので、注入に際して作業者は特に検査液の注入量を気にすることもないので作業性が非常によいという効果を奏する。
さらに、検査液を検査液通路における検出部まで直接注入できるように構成することで、検査液を一時的に保持する部分や保持した検査液を検出部まで送る機構等を設ける必要がなくなり、検出具自体は勿論、該検出具を使用する分析装置の構成も簡略化できるという効果を奏する。
また、前記栓部材を、吸水性合成樹脂を含有する撥水性の多孔性合成樹脂体で形成することにより、検査液が検査液通路の下流端部にある栓部材までくると、前記吸水性合成樹脂が検査液を吸収して膨張し前記多孔性合成樹脂体の各孔を塞ぎ、自動的に排気孔を密閉してそれ以上検査液を注入できないようになるという効果を奏する。
さらに、前記検査液通路における少なくとも前記センサ装置より下流側に所定量の検査液を貯めることができる容積を有する廃液部を設け、前記排気孔を廃液部に設けることで、検査すべき検査液の注入量のばらつきに対する融通性が大きくでき、操作性及び作業性が容易となる。
さらにまた、検査液の注入孔を、検査液注入器のノズル部分が液密に嵌合できるように、例えば、検査液注入器が注射器である場合には、そのノズル部分のJIS規格の寸法及び形状に合わせて先細に形成すると、検査液注入時に検査液を雰囲気に触れることなく注入することができるようになり、測定値に対する雰囲気の影響を避けることができ、検出データの信頼性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本考案の一つの実施の形態を示す検査液分析装置用使い捨て成分検出具(以下、単に検出具と称する。)の概略上面図であり、(b)は図1(a)における概略A−A断面図である。
【図2】 本考案に係る検出具の概略展開図である。
【図3】 ハウジング組立後の検出具における検査液通路の概略上面図である。
【図4】 基盤1Aにおける前記注入孔3に対応する部分の部分断面図である。
【図5】 校正液容器13及び基板1Bにおける前記装着凹面14に対応する部分の拡大図である。
【図6】 基板1Bにおける排気孔18部分の部分断面図である。
【図7】 センサ装置11の概略拡大図である。
【図8】 図7はハウジング1を組み立てた状態を示す概略斜視図である。
【図9】 本考案による検出具を使用可能な携帯型分析器の一実施例を示す概略斜視図である。
【図10】 図9に示す携帯型分析器の構成を示すブロック線図である。
【符号の説明】
100 ハウジング
101 検査液通路
102 注入孔
103 センサ装置
104 排気孔
105 栓部材
106 検査液注入器
106a ノズル部分
1 ハウジング
1A 基板
1B 基板
1C 仕切板
2 検査液通路
2a 注入孔3からのびる比較的幅の狭い部分
2b 検出部当接部分
2c 括れ部分
2d 括れ部分2cから第1の廃液部4へ伸びる部分
3 注入孔
4 廃液部
6 校正液通路の一部を構成する細溝
7 分岐通路
8 貫通孔
9 押圧用開孔
10 貫通孔
11 センサ装置
11a 基板
11b 検出部
11d 導体
11e 端子
12 凹面
13 校正液容器
13a 外周縁部
13b 放出部
14 校正液容器装着凹面
16 校正液通路の一部を構成する細溝
17 第2の廃液部
18 排気孔
19 栓部材
20 貫通孔
21 開口部
22 貫通孔
23 細溝6及び16を連通する孔
24 第1廃液部4及び第2廃液部17とを連通する孔
30 挿入口
31 演算処理部
32 記憶部
33 表示部
34 プリンタ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングの内部に検査液通路を備え、前記検査液通路の上流部分に検査液注入孔を設け、下流部分に排気孔を設け、検査液通路中に注入された検査液の少なくとも一つの成分を検出可能なセンサ装置を、その検出部が前記検査液通路における前記注入孔と排気孔との間の部分に露出し、かつ、その端子部がハウジングの外部に露出するように設け、前記排気孔に、空気に対しては透過性で液体に対しては不透過性の材料から成る栓部材を設け、前記端子部を、前記検出部の検出結果に基づいて検査液中の少なくとも一つの成分を分析可能な分析装置に脱着可能に接続できるように構成したことを特徴とする検査液分析装置用使い捨て成分検出具。
【請求項2】 前記栓部材が、吸水性合成樹脂を含有する撥水性の多孔性合成樹脂体から成ることを特徴とする請求項1に記載の成分検出具。
【請求項3】 前記検査液通路が、少なくとも前記センサ装置より下流側に所定量の検査液を貯めることができる容積を有する廃液部を備え、前記排気孔が廃液部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の成分検出具。
【請求項4】 検査液注入孔を、検査液注入器のノズル部分が液密に嵌合できるように構成したことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の成分検出具。
【請求項5】 前記検査液通路が、前記センサ装置の検出部が露出した部分と検査液注入孔との間で分岐する校正液通路を備え、前記校正液通路の上流部分に外部からの押圧力によって内部の校正液を校正液通路に放出する校正液容器を設けたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の成分検出具。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【登録番号】第3046991号
【登録日】平成10年(1998)1月7日
【発行日】平成10年(1998)3月24日
【考案の名称】検査液分析装置用使い捨て成分検出具
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−8030
【出願日】平成9年(1997)9月9日
【出願人】(591086854)株式会社テクノメデイカ (50)