説明

検査用キット

【課題】衛生上の見地から取り扱い者に触れたり、外部環境に露出することが望ましくない検体を安全に、かつ効率よく取り扱い、処理することが可能で、小型の検査用キットを提供する。
【解決手段】検体採取治具2として、応力を加えて変形させることが可能な小径部41と、小径部との境界部から他方端部に至り、検体採取治具を容器6に挿入した後、さらに奥側に押し込んで小径部を変形させるだけの応力を加えた場合にも、軸方向の寸法が変化しないだけの剛性を有する、小径部よりも直径が大きい大径部42と、小径部の一方端部側に設けられた検体採取部1とを備えた検体採取治具を用い、検体採取後の検体採取治具2を容器6に挿入した後、さらに奥側に押し込んで小径部41を変形させることにより、容器6の軸方向における検体採取治具2の長さが、折り曲げられる前の検体採取治具2の長さの67%以下になるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の鼻、咽頭、結膜、尿道、子宮、膣、糞便、尿、喀痰などを検体採取治具で採取して検査に供するために用いられる検査用キットに関し、詳しくは、採取された検体を、取り扱い者に触れることなく検査に供することが可能な検査用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫測定法用の被験試料は、被疑患者の涙液、眼脂、喀痰、唾液、便などの生体試料や患部を清拭したガーゼ、綿棒などを、予め試験容器に入れておいた抽出液に浸漬して検体を分散又は溶解して調製される。
【0003】
ところで、衛生上の見地から、取り扱い者に触れることなく処理することが望ましい検体について所定の検査を行うための検査用キットとして、従来は、例えば図10および図11に示すような便中の毒素検査のための検査用キットが用いられていた。
【0004】
この検査用キットは、図10および図11に示すように、検体を収容し、希釈液で希釈するための容器として機能するとともに、一方側の蓋(すなわち、下記のフィルタ側の蓋)としても機能するキャップ・容器51と、一端側のフィルタ保持部55aには検体を希釈液で薄めた希釈混合液52をろ過するためのフィルタ53が配設され、他端側にはフィルタ53によりろ過された希釈混合液52を滴下するためのノズル部54が設けられた滴下用チューブ55と、滴下用チューブ55のノズル部54側の蓋として機能するノズル側キャップ56とを備えている。
【0005】
そして、この検査用キットを使用するにあたっては、図11に示すように、キャップ・容器51に検体を希釈液で薄めた希釈混合液52が収容された状態で、滴下用チューブ55のフィルタ53が配設された側をキャップ・容器51の開口部に挿入し、さらに、滴下用チューブ55をいっぱいにまで押し込んで、希釈混合液52を、フィルタ53を通過させることによりろ過して、滴下用チューブ55内に充填する。
【0006】
その後、滴下用チューブ55の胴体部分55bを指で押して撓ませる(たわませる)ことにより、滴下用チューブ55内のろ過された希釈混合液52を、試験液を含浸させたプレート61上に滴下して、毒素の有無(あるいは多少)を検査する。
【0007】
上述のようにして検査用キットを用いることにより、便中の毒素検査を効率よく行うことが可能になる。
【0008】
しかしながら、上記従来の検査用キットの場合、滴下用チューブ55のノズル部54が封止されていないため、検査用キットを振ったり、横向きにしたりすると内部の希釈混合液52が漏れ出すおそれがあるため、希釈混合液52を十分に混合しにくく、抽出効率が低下して検査に支障をきたしたり、衛生上の問題を生じたりするおそれがある。
【0009】
また、その他の従来の検体収容用容器として、図12に示すように、インフルエンザウィルスを含む希釈検体71を入れる容器本体72と、希釈検体71を濾過して検査デバイス上に供給できるようにするためのフィルタ73と、フィルタ73を通過した希釈検体71を通過させて、テストデバイス75に供給するノズル74とを備えた検体収容用容器76が提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
しかし、この特許文献1の検体収容用容器76の場合も、ノズル74が封止されていないため、検体収容用容器76を振ったり、横向きにしたりすると内部の希釈検体71が漏れ出すおそれがあり、衛生上好ましくないという問題点がある。
【0011】
また、感染力の強いウイルスや微生物が検体に含まれる場合、上記のような被験試料の調製方法では、使用済みの綿棒や抽出液の廃棄管理を適正に行わないと、院内感染などの二次的な感染拡大を招くおそれがある。
【0012】
そこで、本出願人は、取り扱い者に触れることなく検体を処理して、検査に供することが可能な検査用キットとして、図13および図14に示すよな検査用キットを提案している(特許文献2参照)。
【0013】
この検査用キットは、図13および図14に示すように、(a)一端側に、検体を採取すべき検体採取部1を備えた検体採取治具2と、(b)一端側に開口部3を備えているとともに、開口部3が設けられた側とは逆側の他端側に、薄膜状部分4を有する底部5を備え、検体採取後の検体採取治具2の検体採取部1を浸漬して、採取された検体を移行させるべき抽出液を内部に収容する容器本体6aと、(c)容器本体6aの開口部3を封止して、抽出液8を、容器本体6aとにより形成される密閉空間内に封止する抽出液封止蓋7a(検体を抽出液8に移行させる前の段階で用いる開口部封止蓋7)と、(d)容器本体6aに収容された抽出液8に、検体採取治具2の検体採取部1を浸漬し、採取された検体を抽出液8に移行させた後、検体採取治具2を折り曲げることなく、抽出液8とともに、容器本体6aとにより形成される密閉空間9(図14参照)に封止する検体採取治具収容機能付き封止蓋7b(検体を抽出液8に移行させた後の段階で用いる開口部封止蓋7)と、検体採取治具収容機能付き封止蓋7bにより容器本体6aが封止された段階で、容器本体6aの底部5の薄膜状部分4に、抽出液8を通過させる貫通孔(図示せず)を形成する貫通孔形成用尖端部12を備えるとともに、貫通孔を通過した抽出液8を通過させて外部に取り出すことができるように配設された液通路13とを備えた開封治具14と、(e)容器本体6aの薄膜状部分4に形成された貫通孔から、液通路13を経て抽出液8の少なくとも一部を外部に取り出して検査に供した後に液通路13を封止する液通路封止蓋15とを備えている。
【0014】
そして、この検査用キットを用いた場合、検体採取治具による検体の採取から、検査後の検体の廃棄に至る工程で、検体が取り扱い者に触れたり、外部に露出あるいは飛散したりすることを防止して、例えばインフルエンザウィルスの検査を行うべき検体などの、取り扱いが問題になりやすい検体を、衛生的にかつ効率よく取り扱うことができるという効果が得られる。
【0015】
しかし、この検査用キットの場合、検体採取治具を容器本体6aに収容して、検体採取治具収容機能付き封止蓋7bを施した場合、寸法が大きくなってしまうことから、検査機関への搬送や、検査までの保管の効率化などの見地から、さらに小型化が可能な検査用キットが要求されるに至っている。
【特許文献1】国際公開第2004/081568号パンフレット
【特許文献2】特開2008−107332
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するものであり、例えば、感染力の強いインフルエンザウィルス、アデノウイルス、さらには、二次感染の危険性が高い結核菌、鳥インフルエンザウイルスなどの感染性の細菌やウイルスの検査などに用いられる検体のように、衛生上の見地から、取り扱い者に触れたり外部環境に露出することが望ましくないような検体を安全に、かつ効率よく取り扱い、処理することが可能な、小型の検査用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明(請求項1)の検査用キットは、
(a)検体を採取するための検体採取治具であって、
所定の位置から一方端部に至り、応力を加えることにより変形させることが可能な小径部と、
前記小径部との境界部から他方端部に至り、把持して検体採取操作を行った場合に大きな変形を生じることがなく、かつ、下記(イ)の工程において検体採取治具を容器に挿入した後、さらに奥側に押し込んで前記小径部を変形させるだけの応力を加えた場合にも、軸方向の寸法が変化しないような剛性を備えた、前記小径部よりも直径が大きい大径部と、
前記小径部の前記一方端部側に設けられた、検体を採取・保持する検体採取部と
を備えた検体採取治具と、
(b)前記検体採取治具の、採取された検体が付着した前記検体採取部を浸漬して、検体を移行させるべき抽出液が内部に収容・密封された筒状の容器であって、
密閉状態を解除して、検体採取後の前記検体採取治具を挿入し、かつ、前記検体採取治具の挿入後に内部を密閉することができるように構成された開閉部と、
前記検体が前記抽出液に移行した後の段階で、密閉状態を解除して、前記抽出液を外部に排出して検査に供するとともに、その後に再び密閉することができるように構成された密閉機能を有する抽出液排出部とを備えた容器と
を具備し、
(イ)検体採取後の前記検体採取治具は、前記容器の密閉状態を解除した前記開閉部から、前記検体採取部が先端側になるように前記容器に挿入した後、さらに奥側に押し込むことにより、前記小径部が折り曲げられ、前記容器の内部空間の軸方向の少なくとも一箇所において、軸方向に直交する断面に、前記小径部の断面が2個以上認められ、かつ、前記小径部が折り曲げられた後の前記検体採取治具の、前記容器の軸方向における長さが、折り曲げられる前の前記検体採取治具の長さの67%以下になるように構成されており、
(ロ)前記(イ)の工程で折り曲げられた前記検体採取治具を内部に収容した状態で、前記容器の前記開閉部を密閉することにより、前記検体採取治具が前記容器の内部に密封されるように構成されていること
を特徴としている。
【0018】
請求項2の検査用キットは、前記検体採取治具の、前記大径部の軸方向における所定の位置に、折り曲げることにより、前記所定の位置で前記大径部を切断・分割することを可能にするための折り曲げ予備加工が施されており、検体採取後に、前記大径部を前記所定の位置で切断・分割した後、切断・分割された前記検体採取治具全体を前記容器内に収容・密封することができるように構成されているとともに、
前記切断・分割された前記大径部の長さおよび、前記小径部が折り曲げられ、かつ、前記大径部の一部が切断・分割された後の前記検体採取治具の、前記容器の軸方向における長さが、前記大径部が切断・分割される前で、かつ、前記小径部が折り曲げられる前の前記検体採取治具の長さの50%以下になるように構成されていること
を特徴としている。
【0019】
また、請求項3の検査用キットは、前記検体採取治具の、前記大径部を前記所定の位置で切断・分割することを可能にするため、前記大径部の軸方向における所定の位置に、外周面を周回するように切り込みが設けられ、かつ、前記切り込みが、ノッチ効果により前記切り込み部分に応力集中を生じさせて、耐折損強度を低下させることができるように形成されたものであり、
検体採取後に、前記大径部を前記所定の位置で切断・分割した後、切断・分割された前記検体採取治具全体を前記容器内に収容・密封することができるように構成されているとともに、
前記切断・分割された前記大径部の長さおよび、前記小径部が折り曲げられ、かつ、前記大径部の一部が切断・分割された後の前記検体採取治具の、前記容器の軸方向における長さが、前記大径部が切断・分割される前で、かつ、前記小径部が折り曲げられる前の前記検体採取治具の長さの50%以下になるように構成されていること
を特徴としている。
【0020】
また、請求項4の検査用キットは、前記切断・分割された前記大径部の長さおよび、前記小径部が折り曲げられ、かつ、前記大径部の一部が切断・分割された後の前記検体採取治具の、前記容器の軸方向における長さが、前記大径部が切断・分割される前で、かつ、前記小径部が折り曲げられる前の前記検体採取治具の長さの40%以下になるように構成されていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の検査用キットにおいては、請求項5のように、前記検体採取治具の、前記小径部の折り曲げる前の長さが、前記容器の内部空間の軸方向長さの0.8〜2.2倍の範囲にあることが望ましい。
【0022】
さらに、本発明の検査用キットにおいて、請求項6のように、前記検体採取治具は、前記小径部の先端である一方端部に綿球を備えた綿棒であることが望ましい。
【0023】
また、本発明の検査用キットにおいては、請求項7のように、
前記容器が、一端側に設けられた開閉部であって、開口部と該開口部を密閉するための開口封止蓋を備え、前記開口封止蓋を操作することにより密閉状態を解除して、検体採取後の前記検体採取治具を挿入し、かつ、前記検体採取治具の挿入後に前記開口封止蓋を操作することにより内部を密閉することができるように構成された開閉部と、前記開口部が設けられた側とは逆側の他端側に設けられた抽出液排出部であって、前記検体が前記抽出液に移行した後の段階で、密閉状態を解除して、前記抽出液を外部に排出して検査に供するとともに、その後に再び密閉することができるように構成された密閉機能を有する抽出液排出部とを備えた容器であることが望ましい。
【0024】
また、本発明の検査用キットにおいては、請求項8のように、
前記抽出液排出部が、
前記開口部が配設された前記一端側と対向する前記他端側の底部に配設された薄膜状部分と、
前記薄膜状部分に、前記抽出液を通過させる貫通孔を形成する貫通孔形成用尖端部を備えるとともに、前記貫通孔を通過した前記抽出液を通過させて外部に取り出すことができるように配設された液通路とを備えた開封治具と、
前記薄膜状部分に形成された前記貫通孔から、前記液通路を経て前記抽出液の少なくとも一部を外部に取り出して検査に供した後に、前記液通路を封止する液通路封止蓋と
を具備するものであることが望ましい。
【0025】
また、請求項9の検査用キットは、
(a)前記容器の前記底部は、前記容器の前記他端側の先端から後退した位置に上げ底状に配設されており、
(b)前記開封治具は、
前記容器の内周側の、前記他端側から前記底部までの開封治具収容領域に、前記容器の内周面と密着するようにはまり込む筒状部と、
前記筒状部の一端側に配設された前記貫通孔形成用尖端部と、
前記筒状部の内側部分と連通する液取出用流路であって、その端部が前記抽出液の取り出し口として機能し、かつ、前記液通路を封止するための液通路封止蓋が取り付けられる封止蓋取り付け部として機能する、前記筒状部の内側部分とともに前記液通路を構成する液取出用流路と
を備えており、
前記開封治具を前記開封治具収容領域に押し込むことにより、前記開封治具と前記容器の間が密封されるとともに、前記容器の前記底部の前記薄膜状部分に貫通孔が形成されるように構成されていること
を特徴としている。
【0026】
また、本発明の検査用キットにおいては、請求項10のように、前記開封治具の前記液通路には、固形物を濾過して除去するためのフィルタが配設されていることが望ましい。
【0027】
また、本発明の検査用キットは、請求項11のように、感染症検査に用いられるものであることを特徴としている。
【0028】
また、本発明の検査用キットは、請求項12のように、インフルエンザウィルスの検査に用いられるものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0029】
本発明(請求項1)の検査用キットは、(a)小径部と、大径部と、小径部の一方端部側に設けられた検体採取部とを備えた検体採取治具と、(b)検体採取治具の、採取された検体が付着した検体採取部を浸漬して、検体を移行させるべき抽出液が内部に収容・密封された筒状の容器であって、密閉状態を解除して、検体採取後の検体採取治具を挿入し、かつ、検体採取治具の挿入後に内部を密閉することができるように構成された開閉部と、検体が抽出液に移行した後の段階で、密閉状態を解除して、抽出液を外部に排出して検査に供するとともに、その後に再び密閉することができるように構成された抽出液排出部とを備えた容器とを備えており、かつ、(イ)検体採取治具は、容器に挿入した後、さらに奥側に押し込むことにより、小径部が折り曲げられ、容器の内部空間の軸方向の少なくとも一箇所において、軸方向に直交する断面に、小径部の断面が2個以上認められ、かつ、折り曲げられた後の検体採取治具の長さが、折り曲げられる前の検体採取治具の長さの67%(2/3)以下になるように構成され、(ロ)上記(イ)の工程で折り曲げられた検体採取治具を内部に収容した状態で、容器の開閉部を密閉することにより、抽出液および検体採取治具を容器の内部空間に密閉することができるように構成されているため、検体採取時などにおける取り扱い性を犠牲にすることなく小型化することが可能になるとともに、取り扱い者に触れたり、外部環境に露出することが望ましくないような検体を、検体採取治具による検体の採取から、検査後の検体の廃棄に至る工程で、安全に取り扱い、処理することが可能になる。より具体的には、検体が採取される病棟から、検査室や検査機関までの搬送の工程、検査室や検査機関で検査した後の廃棄の行程などにおいて、検体が外部環境や人体に触れることを防止して,安全に取り扱い、処理することができる。
【0030】
小径部が折り曲げられた後の検体採取治具の、容器の軸方向における長さが、折り曲げられる前の長さの67%(2/3)以下になるように調整することは、大径部と小径部の長さの関係、および、それらと容器の内部空間の軸方向の長さの関係などを調整することによって行うことができる。
なお、折り曲げ後の検体採取治具の、容器の軸方向における長さを、折り曲げられる前の長さの2/3(67%)以下にすることができれば、実用上、有意性のある小型化を実現することができる。
なお、検体採取後の検体採取治具を挿入し、かつ、検体採取治具の挿入後に内部を密閉することができるように構成された開閉部の具体的な構成と、密閉状態を解除して、抽出液を外部に排出して検査に供するとともに、その後に再び密閉することができるように構成された抽出液排出部の具体的な構成には特に制約はなく、公知の種々の機構を採用することが可能である。
また、上記開閉部と抽出液排出部の配設位置についても特別の制約はなく、開閉部と抽出液排出部を容器の一端側と他端側に設けてもよい。また、容器の一端側に開閉部を設け、開閉部の一部(例えば開閉部を構成する封止蓋)に、抽出液排出部として、開閉可能なノズルを設けた構成などを採用することも可能である。
【0031】
また、請求項2のように、検体採取治具の、大径部の軸方向における所定の位置に、折り曲げることにより、所定の位置で大径部を切断・分割することを可能にするための折り曲げ予備加工が施され、検体採取後に、大径部を折り曲げ予備加工が施された位置で切断・分割した後、切断・分割された検体採取治具全体を容器内に収容・密封することができるように構成されているとともに、切断・分割された大径部の長さおよび、小径部が折り曲げられ、かつ、大径部の一部が切断・分割された後の検体採取治具の、容器の軸方向における長さが、大径部が切断・分割される前で、かつ、小径部が折り曲げられる前の検体採取治具の長さの50%以下になるように構成されている場合、検体採取時の良好な操作性を損なわないだけの大径部の長さを確保しつつ、採取後の検査用キットの小型化をより効率よく実現することができるようになる。
なお、大径部を切断・分割する位置や、小径部の長さと容器の軸方向の長さの関係などを適切に調整することによって、折り曲げ後の検体採取治具の長さを、確実に折り曲げ前の長さの50%以下にまで短くすることができる。
【0032】
また、請求項3の検査用キットのように、検体採取治具の、大径部を所定の位置で切断・分割することを可能にするため、大径部の軸方向における所定の位置に、外周面を周回するように切り込みを設けるとともに、該切り込みを、ノッチ効果により切り込み部分に応力集中を生じさせて、耐折損強度を低下させることができるようなものとした場合、検体採取時の良好な操作性を損なわないだけの大径部の長さを確保しつつ、採取後の検査用キットの小型化をより効率よく実現することができるようになる。
【0033】
なお、この請求項3のような構成とした場合、通常は、大きく折り曲げても折損することがないような、検体採取時における安全性に優れる一方で、折り曲げたりする方法では切断することができないような材料(例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂)を用いて検体採取治具が形成されている場合にも、上記切り込みが形成された所定の位置で大径部を、容易かつ確実に切断・分割することが可能になり、安全性の高い検査用キットを提供することができて、特に有意義である。
【0034】
なお、「ノッチ効果により切り込み部分に応力集中を生じさせて、耐折損強度を低下させることができる」ような切り込みを形成する方法としては、例えば、鋭利な刃を備えた治具(カッターなど)を用いて、上記大径部を周回するように、深さが大径部の直径の1/5から1/30程度の切り目を入れる方法などが例示される。
【0035】
また、請求項4の検査用キットのように、切断・分割された大径部の長さおよび、小径部が折り曲げられ、かつ、大径部の一部が切断・分割された後の検体採取治具の、容器の軸方向における長さが、大径部が切断・分割される前で、かつ、小径部が折り曲げられる前の検体採取治具の長さの40%以下になるようにした場合、より小型化した状態で、保管、搬送などを行うことが可能になり、本発明をさらに実効あらしめることができる。
【0036】
また、請求項5のように、検体採取治具の小径部の、折り曲げる前における長さを、容器の内部空間の軸方向長さの0.8〜2.2倍の範囲とすることにより、小径部を容易かつ確実に折り曲げることが可能になるとともに、小径部を折り曲げることによる小型化の効果を十分に得ることが可能になり、有意義である。
【0037】
また、請求項6のように、検体採取治具として、小径部の先端である一方端部に綿球を備えた綿棒を用いることにより、特殊な治具を必要とせずに検体を採取することが可能な検査用キットを提供することが可能になり、本発明をさらに実効あらしめることができる。
【0038】
なお、「綿球」とは文字どおり綿からなるものに限られるものではなく、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維からなるものであってもよい。また、合成繊維をフロック加工して球状の綿球を形成したものを使用してもよい。
なお、本発明においては、検体採取治具として、上述の綿棒に限らず、一端側にブラシなどの、検体を採取・保持することが可能な種々の検体採取部を備えた構成のものを用いることが可能である。
【0039】
また、請求項7のように、容器が、一端側に設けられた開閉部であって、開口部と該開口部を密閉するための開口封止蓋を備え、開口封止蓋を操作することにより密閉状態を解除して、検体採取後の検体採取治具を挿入し、かつ、検体採取治具の挿入後に開口封止蓋を操作することにより内部を密閉することができるように構成された開閉部と、開口部が設けられた側とは逆側の他端側に設けられた抽出液排出部であって、検体が抽出液に移行した後の段階で、密閉状態を解除して、抽出液を外部に排出して検査に供するとともに、その後に再び密閉することができるように構成された密閉機能を有する抽出液排出部とを備えた容器である場合、取り扱い者に触れたり、外部環境に露出することが望ましくないような検体を、検体採取治具による検体の採取から、検査後の検体の廃棄に至るまで、より安全かつ確実に取り扱い、処理することが可能になり、本発明をさらに実効あらしめることができる。
【0040】
また、請求項8のように、抽出液排出部が、開口部が配設された一端側と対向する他端側の底部に配設された薄膜状部分と、薄膜状部分に、抽出液を通過させる貫通孔を形成する貫通孔形成用尖端部を備えるとともに、貫通孔を通過した抽出液を通過させて外部に取り出すことができるように配設された液通路とを備えた開封治具と、薄膜状部分に形成された貫通孔から、液通路を経て抽出液の少なくとも一部を外部に取り出して検査に供した後に液通路を封止する液通路封止蓋とを具備する構成とした場合、開封治具を容器の開封治具収容領域に押し込むことにより、容器の底部の薄膜状部分に貫通孔を形成して、液通路を経て抽出液を検査に供することが可能になるとともに、その後に、液通路を封止することが可能になり、本発明をより実効あらしめることが可能になる。
【0041】
また、請求項9のように、(a)容器の底部が、容器の他端側の先端から後退した位置に上げ底状に配設されており、(b)開封治具が、容器の内周側の開封治具収容領域に、容器の内周面と密着するようにはまり込む筒状部と、筒状部の一端側に配設された貫通孔形成用尖端部と、筒状部の内側部分と連通する液取出用流路であって、その端部が抽出液の取り出し口として機能し、かつ、液通路を封止するための液通路封止蓋が取り付けられる封止蓋取り付け部として機能する、筒状部の内側部分ととともに液通路を構成する液取出用流路とを備え、開封治具を開封治具収容領域に押し込むことにより、開封治具と容器の間が密封されるとともに、容器の底部の薄膜状部分に貫通孔が形成されるように構成した場合、開封治具を容器の開封治具収容領域に押し込むことにより、容器の底部の薄膜状部分に貫通孔を形成するとともに、開封治具と容器の間を密封することが可能になり、液取出用流路のみから抽出液を取り出すことができる状態に確実にすることが可能になり、本発明をさらに実効あらしめることが可能になる。
【0042】
また、請求項10の検査用キットのように、開封治具の液通路には、固形物を濾過して除去するためのフィルタを配設することにより、検体を含む抽出液を濾過して、固形分が含まれていない状態で検査に供することが可能になる。すなわち、この請求項9の構成を備えた検査用キットは、固形分を含むような検体を取り扱う場合に特に有意義である。
【0043】
また、本発明の検査用キットは、請求項11のように、感染症検査に用いるのに適しており、この検査用キットを用いることにより、感染症検査を、安全にしかも効率よく実施することが可能になる。
【0044】
また、本発明の検査用キットは、請求項12のように、インフルエンザウィルスの検査に用いるのに適しており、この検査用キットを用いることにより、インフルエンザウィルスの検査を、安全にしかも効率よく実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例にかかる、検体採取治具と容器とを備えてなる検査用キットの構成を示す分解図(要部断面図)である。
【図2】本発明の一実施例にかかる検査用キットを用いる方法の一工程を示す図であり、抽出液に、検体採取治具の検体採取部を浸漬した状態を示す図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる検査用キットを用いる方法の一工程を示す図であり、抽出液に、検体採取治具の検体採取部を浸漬させ、さらに奥側に押し込んで、小径部を湾曲させてループ状に変形させた状態を示す図である。
【図4】図3の状態で、検体採取治具の大径部を切り欠きが形成された位置で折り曲げることにより、検体採取治具の大径部を切断・分割した状態を示す図である。
【図5】容器に検体採取治具を収容した後、容器の開口部を開口部封止蓋により封止した状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施例にかかる検査用キットを構成する開封治具を示す図であり、(a)は正面断面図、(b)は側面図である。
【図7】(a)、(b)は、本発明の一実施例にかかる検査用キットを用いる方法の一工程を示す正面断面図であり、容器の底部の薄膜状部分に貫通孔を形成する工程を示す図、(c)は開封治具を断面としていない側面断面図である。
【図8】図8は、図3のP−P線による断面を示す図である。
【図9】本発明の一実施例にかかる検査用キットを用いる方法の一工程を示す図であり、貫通孔から、液通路を経て抽出液を外部に取り出して検査に供する工程を示す図である。
【図9A】本発明の検査用キットにおいて用いられる検体採取治具の変形例を示す図である。
【図10】便中の毒素検査のための検査用キットとして用いられている従来の容器を示す図である。
【図11】図10に示す従来の容器の使用方法を説明する図である。
【図12】従来の他の検体収容用容器の構成を示す図である。
【図13】従来の検査用キットの構成を示す分解図である。
【図14】従来の検査用キットの使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に本発明の実施例を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0047】
この実施例1では、インフルエンザウィルスの検査に用いられる検査用キットを例にとって説明する。
【0048】
図1は本発明の一実施例にかかるインフルエンザウィルスの検査用キットの構成を示す分解図(要部断面図)である。
【0049】
この実施例の検査用キットは、図1に示すように、検体採取治具2と有底筒状の容器6とを備えている。
【0050】
検体採取治具2は、所定の位置から一方端部に至り、力を加えることにより変形させることが可能な小径部41と、小径部41の終了位置から他方端部に至り、把持して検体採取操作を行った場合に大きな変形を生じることがなく、かつ、その後の工程において検体採取治具2を容器6に挿入した後、さらに奥側に押し込んだ場合にも、軸方向の寸法が変化しないような剛性を備えた、小径部41よりも直径が大きい大径部42とを備えている。そして、小径部41の一方端部側に設けられた、検体を採取・保持するための検体採取部1とを備えている。
この検体採取治具2の小径部41および大径部42は樹脂製で一体に形成されており、この実施例では、小径部41および大径部42を構成する樹脂としてポリスチレンが用いられている。なお、検体採取治具2の小径部41および大径部42を構成する材料としては、ポリスチレン以外にも、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂を用いることが可能であり、さらに他の材料を用いることも可能である。
上述のように、検体採取治具2の小径部41および大径部42を構成する材料に特別の制約はないが、小径部41を構成する材料は、検体採取治具2を容器6に挿入した後、さらに奥側に押し込むことにより、小径部41に本発明の効果を奏しうるような変形を生じさせるものであることが必要である。
【0051】
なお、小径部41は、大径部42に近い位置において径が徐々に大きくなり、それに伴って剛性も徐々に大きくなるように構成してもよい。このように構成することにより、検体採取時や、検体採取後に容器6に押し込んで小径部を折り曲げる際などにおける検体採取治具2の操作性を向上させることができる場合がある。
【0052】
なお、検体採取治具2としては、小径部41の先端である一方端部に検体採取部1として綿球を備えた綿棒が用いられている。なお、綿棒としては、合成繊維をフロック加工して綿球を形成したものを使用してもよい。
さらに、本発明においては、検体採取治具として、上述のような綿棒に限らず、一端側にブラシなど、検体を採取し、保持することが可能な検体採取部を備えた種々の構成のものを用いることが可能である。
【0053】
また、容器6には、検体採取治具2の、採取された検体が付着した検体採取部1を浸漬して、検体を移行させるべき抽出液8が収容・密封されている。
【0054】
そして、容器6の一端側(図1では上端側)には、開口部3が設けられているとともに、該開口部3を密閉するための開口封止蓋7が設けられ、開口封止蓋7を操作することにより密閉状態を解除して、検体採取後の検体採取治具2を挿入し、かつ、検体採取治具2の挿入後に開口封止蓋7を操作して内部を密閉することができるように構成されている。すなわち、この実施例では,開口部3と開口封止蓋7とにより開閉部が形成されている。
【0055】
なお、開口部6と開口封止蓋7にはネジが形成されており、両者が互いに螺合して、開口部3が開口封止蓋7により封止されるように構成されている。
【0056】
また、容器6の開口部3が設けられた側とは逆側の他端側(図1では下端側)には、検体が抽出液8に移行した後の段階で、密閉状態を解除して、抽出液8を外部に排出して検査に供するとともに、その後に再び密閉することができるように構成された密閉機能を有する抽出液排出部10が設けられている。
【0057】
この実施例の検査用キットにおいては、検体採取後の検体採取治具2は、図2に示すように、容器6の開口部3から、検体採取部1が先端側になるように容器6に挿入して、検体採取部1が抽出液8に浸漬するようにした後、図3に示すように、さらに奥側に押し込むことにより、小径部41が折り曲げられ(この実施例では湾曲してループ状になるように構成されている)、検体採取治具2全体としての長さが短くなるように構成されている。
【0058】
また、検体採取治具2の、大径部42の軸方向における所定の位置には、大径部42を所定の位置で折り曲げることにより、容易に切断・分割することを可能にするための折り曲げ予備加工として、V字状の切り欠き43(図1など)を形成する加工が施されており、大径部42をこの切り欠き43が形成された位置で折り曲げることにより、大径部42を切断・分割して、検体採取治具2全体を、その長さをさらに短くした状態で容器6内に収容・密封することができるように構成されている(図4,図5参照)。
【0059】
なお、本発明においては、通常、小径部41が折り曲げられた後、あるいは、小径部41が折り曲げられ、かつ、大径部が切断・分割された後の、検体採取治具2の、容器6の軸方向における長さが、小径部41が折り曲げられる前で、かつ、大径部が切断・分割される検体採取治具2の全体の長さの50%以下になるように、検体採取治具2の小径部41,大径部42の長さ寸法や、容器6の軸方向長さ寸法などが定められる。
【0060】
この実施例では、検体採取治具2の小径部41の長さL1と、大径部42の長さL2とはほぼ同じとされている。そして、上記切り欠き43は、大径部42の約2/3を折り取ることができるような位置(図1について言えば、大径部の上から約2/3の位置)に形成されている。
また、本発明においては、通常、検体採取治具2の、小径部41の折り曲げる前の長さL1(図1)は、容器6の内部空間Sの軸方向長さLS(図1,図3)の0.8〜2.2倍の範囲とすることが望ましく、この実施例においては、L1/LS=1.05とされている。
【0061】
そして、この実施例の検査用キットにおいては、検体採取治具2の小径部42が折り曲げられ、かつ、大径部が途中で切断・分割され、検体採取治具2の全体が容器6の内部に収容された状態で、容器6の開口部3を開口封止蓋7により密閉することにより、検体採取治具2を容器6の内部に密封することができるように構成されている(図5参照)。
【0062】
また、容器6の抽出液排出部10は、開口部3が配設された一端側と対向する他端側の底部5に配設された薄膜状部分4と、薄膜状部分4に、抽出液8を通過させる貫通孔11(図7(b),(c))を形成する貫通孔形成用尖端部12を備えるとともに、貫通孔11を通過した抽出液を通過させて外部に取り出すことができるように配設された液通路13とを備えた開封治具14(図6(a),(b)参照)と、薄膜状部分4に形成された貫通孔11から、液通路13を経て抽出液の少なくとも一部を外部に取り出して検査に供した後に液通路13を封止する液通路封止蓋15とを具備している。
【0063】
この容器6の抽出液排出部10の構成をさらに具体的に説明する。図1,図6,図7などに示すように、容器6の底部5は、容器6の他端側の先端から後退した位置に上げ底状に配設されている。そして、開封治具14は、図6(a),(b)、図7(a)〜(c)に示すように、容器6の内周側の、他端側から底部5までの開封治具収容領域16に、容器6の内周面と密着するようにはまり込む筒状部1と、筒状部17の一端側に配設された貫通孔形成用尖端部12と、筒状部17の内側部分と連通する液取出用流路であって、その端部が抽出液の取り出し口18として機能し、かつ、液通路13を封止するための液通路封止蓋15が取り付けられる封止蓋取り付け部として機能する、筒状部17の内側部分とともに液通路13を構成する液取出用流路19とを備えており、開封治具14を開封治具収容領域16に押し込むことにより、開封治具14と容器6の間が密封されるとともに、容器6の底部5の薄膜状部分4に貫通孔11が形成されるように構成されている。
【0064】
なお、この実施例の検査用キットにおいては、容器6内の抽出液8を、より確実に外部に取り出しやすくするために、図6(a),(b)に示すように、開封治具14の、貫通孔形成用尖端部12は、先端側の厚みの薄い部分12aと、基端側の厚みの厚い部分12bとを備え、先端側の厚みの薄い部分12aと、基端側の厚みの厚い部分12bとの間に段差部12cが形成されている。このような構成とした場合、図7(a)〜(c)に示すように、段差部12cが容器6の底部5の薄膜状部分4を押して変形を生じさせることから、貫通孔11の近傍に隙間が形成されやすくなり、容器6内の抽出液8を、該隙間を経てより確実に外部に取り出しやすくなる。すなわち、先端側の厚みの薄い部分12aにより底部5の薄膜部分4を突き破るとともに、段差部12cにより、この突き破られた薄膜部分4を確実に上方に押し上げて、貫通孔11の近傍に抽出液8の通路を確実に形成することが可能になり、容器6内の抽出液8を該通路を経て確実に外部に取り出すことができる。
【0065】
なお、図6(a)などに示すように、開封治具14の液通路13には、抽出液8が検体に由来する固形物を含有している場合にも、抽出液8を濾過して、固形分が含まれていない状態で検査に供することができるように、固形物を濾過して除去するためのフィルタ20が配設されている。
このフィルタ20は、検体が抽出された抽出液の粘性を低下させる作用を果たす場合もある。
【0066】
上述のような構成を備えたこの実施例の検査用キットにおいては、開封治具14を容器6の開封治具収容領域16に押し込むことにより、容器6の底部5の薄膜状部分4に貫通孔11を形成するとともに、開封治具14と容器6の間を密封することが可能になり、抽出液8を他の部分から漏出させることなく、液取出用流路19のみから抽出液8を確実に取り出すことが可能になる。
【0067】
また、開封治具14の、貫通孔形成用尖端部12には、容器6の底部5の薄膜状部分4を貫通する貫通方向に略平行なスリット21(図2(b)、図7(c)参照)が形成されている。これにより、貫通孔形成用尖端部12により容器6の底部5の薄膜状部分4を突き破って貫通孔11を形成した場合に、容器6内の抽出液8を、スリット21を経て外部に確実に取り出すことが可能になる。
【0068】
なお、この実施例の検査用キットでは、検体採取治具2を除いて、検査用キットを構成する各構成部材は、透明または半透明で、かつ可撓性を備えた材料(この実施例では低密度ポリエチレン)から形成されており、内容物の量を目視で確認することができるとともに、貫通孔11(図7(b),(c)参照)を形成した後に、容器6を押圧して変形させる(例えば、容器6の胴部を軽く押さえる)ことにより、抽出液8を、開封治具14の液通路13の先端の取り出し口18から滴下させて供給することができるように構成されている。
【0069】
次に、上記検査用キットの使用方法、すなわち、検査用キットを用いて検体を処理し、インフルエンザウィルスの検査を行う方法について説明する。
【0070】
(1)まず、一端側に、検体を採取すべき検体採取部1を備えた検体採取治具2により検体(例えば喉の粘膜など)を採取する。
【0071】
(2)薄膜状部分4を有する底部5を備えた容器6の開口部3から開口部封止蓋7を取り外し、図2に示すように、検体採取後の検体採取治具2を、容器6の開口部3から、検体採取部1が先端側になるように容器6に挿入して、容器6に収容された抽出液8に、検体採取治具2の検体採取部1を浸漬させ、さらに図3に示すように、検体採取治具2を奥側に押し込み、小径部41を湾曲させてループ状に変形させる。
【0072】
なお、図8は、図3のP−P線による断面を示す図である。すなわち、図8は、図3に示すように、容器6の内部空間Sの軸方向の少なくとも一箇所(P−P線による断面の位置)において、内部空間Sを軸方向に直交する方向に切断した場合の断面を示す図であり、小径部41の断面が3個認められる状態を示している。なお、P−P線による断面が小径部41の曲折部の頂点にある場合には、小径部41の断面が2個だけ認められる場合がある。
【0073】
(3)それから、図4に示すように、検体採取治具2の大径部42を、所定の位置で切断・分割するための折り曲げ予備加工として切り欠き43が形成された位置で折り曲げることにより、大径部42を切断・分割する。
【0074】
小径部41が折り曲げられ、かつ、大径部42が切り欠き43が形成された位置で切断・分割されることにより、切断・分割された大径部42aの長さおよび、小径部41が折り曲げられ、かつ、大径部42の一部42aが切断・分割された後の検体採取治具2の、容器6の軸方向における長さは、元の検体採取治具(図1の状態の検体採取治具)2の長さの小径部41の、容器6の軸方向における長さは、折り曲げられる前の小径部41の長さの50%以下(1/2以下)になる。
なお、小径部の変形の態様は必ずしもループ状である必要はなく、例えば、湾曲の程度の大きいS字状や、そのような湾曲の程度の大きいS字状部分を複数備えた蛇行状などであってもよい。
【0075】
(4)そして、大径部42の切断・分割された部分42aを含む検体採取治具2の全体を容器内に収容し、図5に示すように、容器6の開口部3を開口部封止蓋7により封止して、検体採取治具2を抽出液8とともに、容器6と開口部封止蓋7により形成される内部空間Sに封止する。
この状態で抽出液8は内部空間S内に密封された状態となるので、全体を揺動させたり、振盪したりして、検体と抽出液とを十分に混合することが可能になる。
【0076】
また、本発明においては、容器6の、底部5を備えた他端側領域付近31(図1)の側壁部分は、開口部3が設けられた一端側領域付近32(図1)の側壁部分よりも柔軟に構成されていることが望ましい。
具体的には、容器6の、底部5を備えた他端側領域付近31の側壁部分に、指で押さえることにより変形させることが可能で、押圧力を取り除くと元の形状に復元する程度の柔軟性を持たせることが好ましい。
【0077】
このように、容器6の、底部5を備えた他端側領域付近31の側壁部分を、開口部3が設けられた一端側領域付近32の側壁部分よりも柔軟にする方法としては、例えば、上記他端側領域付近31の側壁部分の肉厚を、上記一端側領域付近32の側壁部分の肉厚よりも薄くする方法などが例示される。
このようにした場合、他端側領域付近31の側壁部分を押圧して検体採取治具2の検体採取部1を揉み、抽出液8と検体採取部1とを十分に馴染ませて抽出効率を向上させることが可能になり好ましい。また、抽出液8を容器6から排出する際には、上記他端側領域付近31の側壁部分を押圧することにより、抽出液8を迅速に排出させることが可能になり好ましい。
【0078】
(5)次に、図7(a)に示すように、容器6の底部5の薄膜状部分4に、貫通孔形成用尖端部12を備えた開封治具14を、液通路封止蓋15が取り付けられた状態で容器6の底部5の内周側に嵌合させ、さらに、図7(b),(c)に示すように、開封治具14を底部5に向かって押し込み、開封治具14の貫通孔形成用尖端部12により、底部5の薄膜状部分4に、抽出液8を通過させる貫通孔11を形成する。
このとき、液通路封止蓋15が取り付けられているので、貫通孔11が形成されても抽出液8が外部に漏出することはない。
【0079】
(6)その後、図9に示すように、液通路封止蓋15を取り外し、容器6の薄膜状部分4に形成された貫通孔11から、液通路13を経て抽出液8の少なくとも一部を外部に取り出して検査に供する。
【0080】
このとき、開封治具14の、貫通孔形成用尖端部12に、薄膜状部分4を貫通する貫通方向に略平行なスリット21および段差部12cが形成されているので、貫通孔形成用尖端部12により容器6の底部5の薄膜状部分4を突き破って貫通孔11を形成した場合に、図7(b),(c)に示すように、段差部12cが容器6の底部5の薄膜状部分4の貫通孔近傍に当接して、薄膜状部分4に変形を生じさせることから、貫通孔11の近傍に、抽出液8が通過する隙間が形成されやすくなるとともに、スリット21が抽出液8の流路となるため、抽出液8を外部に確実に取り出して、容易に検査に供することができる。
【0081】
(7)そして、上述のように、抽出液8の取り出し後に、液通路封止蓋15により液通路13を封止して(すなわち、図7(b),(c)に示されているような状態として)、抽出液8が外部に漏出しない状態で、検査用キット全体を廃棄する(例えば、専用の廃棄用容器などに入れてまとめて廃棄する)ことが可能な状態とする。
【0082】
これにより、インフルエンザウィルスの検査などに用いられる検体のように、衛生上の見地から取り扱い者に触れたり、外部環境に露出することが望ましくないような検体を効率よく取り扱い、処理することが可能になる。
【0083】
また、液通路封止蓋15を、例えば、開封治具14の下端部全体を覆うようなキャップ状にすることも可能であり、このように構成した場合、検体抽出後の抽出液を開封治具14の液取出用通路19から滴下させた後の、抽出液が付着している可能性のある部分をより確実に覆うことが可能になり、感染防止の見地から好ましい。
【0084】
また、上記実施例では検体採取治具を構成する大径部の一部を切断・分割するようにした場合を例にとって説明したが、例えば、検体採取治具を構成する大径部の長さを予めある程度短くしておくことにより、大径部の一部を切断・分割しなくても、検体採取後に検体採取治具を容器内に密封した段階における有効な小型化を実現することが可能である。
【0085】
また、上記実施例では、検体採取治具2の、大径部42の所定の位置にV字状の切り欠き43(図1など)を形成して、大径部42を切り欠き43が形成された位置で折り曲げることにより、容易に切断・分割することができるようにしたが、例えば、鋭利な刃を備えた治具(カッターなど)を用いて、図9Aに示すように、深さが大径部42の直径の1/5から1/30程度の切り目(切り込み)44を、大径部42を周回するように形成することにより、ノッチ効果によって切り込み部分に応力集中を生じさせて、耐折損強度を低下させ、所定の位置で大径部42を切断できるようにすることも可能である。
【0086】
そして、このような切り目(切り込み)44を形成する方法によれば、大きく折り曲げても折損するようなことがなく、検体採取時における安全性に優れる一方で、折り曲げたりする方法では切断することができないような材料(例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂)を用いて検体採取治具2を形成した場合にも、上記切り込み44が形成された所定の位置で、大径部42を容易かつ確実に切断・分割することが可能になり、安全性の高い検査用キットを提供することができて、有意義である。
【0087】
本発明はさらにその他の点においても上記実施例に限定されるものではなく、検体採取部を備えた検体採取治具の具体的な構成、検体採取治具を変形させる際の変形の具体的な態様、容器や開口封止蓋の形状や構造、開封治具の構成などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
上述のように、本発明によれば、感染性の細菌やウイルスの検査などに用いられる検体のように、衛生上の見地から、取り扱い者に触れたり、外部環境に露出することが望ましくないような検体を、安全に、かつ効率よく取り扱い、処理することが可能になる。したがって、本発明は、検体処理の技術分野や、それに用いられる検査用キットの分野に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 検体採取部
2 検体採取治具
3 開口部
4 薄膜状部分
5 底部
6 容器
7 開口部封止蓋
8 抽出液
10 抽出液排出部
11 貫通孔
12 貫通孔形成用尖端部
12a 先端側の厚みの薄い部分
12b 基端側の厚みの厚い部分
12c 段差部
13 液通路
14 開封治具
15 液通路封止蓋
16 開封治具収容領域
17 筒状部
18 取り出し口
19 液取出用流路
20 フィルタ
21 スリット
31 他端側領域付近
32 一端側領域付近
41 小径部
42 大径部
43 切り欠き
44 切り込み
S 容器の内部空間
1 折り曲げる前の小径部の長さ
2 大径部の長さ
S 容器の内部空間の軸方向長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)検体を採取するための検体採取治具であって、
所定の位置から一方端部に至り、応力を加えることにより変形させることが可能な小径部と、
前記小径部との境界部から他方端部に至り、把持して検体採取操作を行った場合に大きな変形を生じることがなく、かつ、下記(イ)の工程において検体採取治具を容器に挿入した後、さらに奥側に押し込んで前記小径部を変形させるだけの応力を加えた場合にも、軸方向の寸法が変化しないような剛性を備えた、前記小径部よりも直径が大きい大径部と、
前記小径部の前記一方端部側に設けられた、検体を採取・保持する検体採取部と
を備えた検体採取治具と、
(b)前記検体採取治具の、採取された検体が付着した前記検体採取部を浸漬して、検体を移行させるべき抽出液が内部に収容・密封された筒状の容器であって、
密閉状態を解除して、検体採取後の前記検体採取治具を挿入し、かつ、前記検体採取治具の挿入後に内部を密閉することができるように構成された開閉部と、
前記検体が前記抽出液に移行した後の段階で、密閉状態を解除して、前記抽出液を外部に排出して検査に供するとともに、その後に再び密閉することができるように構成された密閉機能を有する抽出液排出部とを備えた容器と
を具備し、
(イ)検体採取後の前記検体採取治具は、前記容器の、密閉状態を解除した前記開閉部から、前記検体採取部が先端側になるように前記容器に挿入した後、さらに奥側に押し込むことにより、前記小径部が折り曲げられ、前記容器の内部空間の軸方向の少なくとも一箇所において、軸方向に直交する断面に、前記小径部の断面が2個以上認められ、かつ、前記小径部が折り曲げられた後の前記検体採取治具の、前記容器の軸方向における長さが、折り曲げられる前の前記検体採取治具の長さの67%以下になるように構成されており、
(ロ)前記(イ)の工程で折り曲げられた前記検体採取治具を内部に収容した状態で、前記容器の前記開閉部を密閉することにより、前記検体採取治具が前記容器の内部に密封されるように構成されていること
を特徴とする検査用キット。
【請求項2】
前記検体採取治具の、前記大径部の軸方向における所定の位置に、折り曲げることにより、前記所定の位置で前記大径部を切断・分割することを可能にするための折り曲げ予備加工が施されており、検体採取後に、前記大径部を前記所定の位置で切断・分割した後、切断・分割された前記検体採取治具全体を前記容器内に収容・密封することができるように構成されているとともに、
前記切断・分割された前記大径部の長さおよび、前記小径部が折り曲げられ、かつ、前記大径部の一部が切断・分割された後の前記検体採取治具の、前記容器の軸方向における長さが、前記大径部が切断・分割される前で、かつ、前記小径部が折り曲げられる前の前記検体採取治具の長さの50%以下になるように構成されていること
を特徴とする請求項1記載の検査用キット。
【請求項3】
前記検体採取治具の、前記大径部を前記所定の位置で切断・分割することを可能にするため、前記大径部の軸方向における所定の位置に、外周面を周回するように切り込みが設けられ、かつ、前記切り込みが、ノッチ効果により前記切り込み部分に応力集中を生じさせて、耐折損強度を低下させることができるように形成されたものであり、
検体採取後に、前記大径部を前記所定の位置で切断・分割した後、切断・分割された前記検体採取治具全体を前記容器内に収容・密封することができるように構成されているとともに、
前記切断・分割された前記大径部の長さおよび、前記小径部が折り曲げられ、かつ、前記大径部の一部が切断・分割された後の前記検体採取治具の、前記容器の軸方向における長さが、前記大径部が切断・分割される前で、かつ、前記小径部が折り曲げられる前の前記検体採取治具の長さの50%以下になるように構成されていること
を特徴とする請求項1記載の検査用キット。
【請求項4】
前記切断・分割された前記大径部の長さおよび、前記小径部が折り曲げられ、かつ、前記大径部の一部が切断・分割された後の前記検体採取治具の、前記容器の軸方向における長さが、前記大径部が切断・分割される前で、かつ、前記小径部が折り曲げられる前の前記検体採取治具の長さの40%以下になるように構成されていることを特徴とする請求項2または3記載の検査用キット。
【請求項5】
前記検体採取治具の、前記小径部の折り曲げる前の長さが、前記容器の内部空間の軸方向長さの0.8〜2.2倍の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の検査用キット。
【請求項6】
前記検体採取治具は、前記小径部の先端である一方端部に綿球を備えた綿棒であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の検査用キット。
【請求項7】
前記容器が、一端側に設けられた開閉部であって、開口部と該開口部を密閉するための開口封止蓋を備え、前記開口封止蓋を操作することにより密閉状態を解除して、検体採取後の前記検体採取治具を挿入し、かつ、前記検体採取治具の挿入後に前記開口封止蓋を操作することにより内部を密閉することができるように構成された開閉部と、前記開口部が設けられた側とは逆側の他端側に設けられた抽出液排出部であって、前記検体が前記抽出液に移行した後の段階で、密閉状態を解除して、前記抽出液を外部に排出して検査に供するとともに、その後に再び密閉することができるように構成された密閉機能を有する抽出液排出部とを備えた容器であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の検査用キット。
【請求項8】
前記抽出液排出部が、
前記開口部が配設された前記一端側と対向する前記他端側の底部に配設された薄膜状部分と、
前記薄膜状部分に、前記抽出液を通過させる貫通孔を形成する貫通孔形成用尖端部を備えるとともに、前記貫通孔を通過した前記抽出液を通過させて外部に取り出すことができるように配設された液通路とを備えた開封治具と、
前記薄膜状部分に形成された前記貫通孔から、前記液通路を経て前記抽出液の少なくとも一部を外部に取り出して検査に供した後に、前記液通路を封止する液通路封止蓋と
を具備していることを特徴とする請求項7記載の検査用キット。
【請求項9】
(a)前記容器の前記底部は、前記容器の前記他端側の先端から後退した位置に上げ底状に配設されており、
(b)前記開封治具は、
前記容器の内周側の、前記他端側から前記底部までの開封治具収容領域に、前記容器の内周面と密着するようにはまり込む筒状部と、
前記筒状部の一端側に配設された前記貫通孔形成用尖端部と、
前記筒状部の内側部分と連通する液取出用流路であって、その端部が前記抽出液の取り出し口として機能し、かつ、前記液通路を封止するための液通路封止蓋が取り付けられる封止蓋取り付け部として機能する、前記筒状部の内側部分とともに前記液通路を構成する液取出用流路と
を備えており、
前記開封治具を前記開封治具収容領域に押し込むことにより、前記開封治具と前記容器の間が密封されるとともに、前記容器の前記底部の前記薄膜状部分に貫通孔が形成されるように構成されていること
を特徴とする請求項8記載の検査用キット。
【請求項10】
前記開封治具の前記液通路には、固形物を濾過して除去するためのフィルタが配設されていることを特徴とする請求項8または9記載の検査用キット。
【請求項11】
感染症検査に用いられるものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の検査用キット。
【請求項12】
インフルエンザウィルスの検査に用いられるものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の検査用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図9A】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−37501(P2012−37501A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21796(P2011−21796)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(500016039)株式会社シン・コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】