検査用具
【課題】カンピロバクターの選択増菌培地を簡単にかつ短時間で調製することができ、増菌培地の調製のために滅菌容器を用意する必要も無い検査用具を提供する。
【解決手段】柔軟性を有する透明の樹脂材料で形成された密閉可能な包装袋10の内部に、1回の検査に必要な量の基礎培地粉末12、1回の検査に必要な量のウマ溶血液が封入され包装袋外部から加えられる押圧力によって破裂する第1の内部包装袋14、および、1回の検査に必要な量のサプリメント液が封入され包装袋外部から加えられる押圧力によって破裂する第2の内部包装袋16とを収容して、包装袋10を密封した。
【解決手段】柔軟性を有する透明の樹脂材料で形成された密閉可能な包装袋10の内部に、1回の検査に必要な量の基礎培地粉末12、1回の検査に必要な量のウマ溶血液が封入され包装袋外部から加えられる押圧力によって破裂する第1の内部包装袋14、および、1回の検査に必要な量のサプリメント液が封入され包装袋外部から加えられる押圧力によって破裂する第2の内部包装袋16とを収容して、包装袋10を密封した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食中毒の原因菌の1つであるカンピロバクターを検出するカンピロバクターの検査において、カンピロバクターを選択増菌培養するための増菌培地を調製するときに使用されるカンピロバクター検査用具に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉等の食品中からカンピロバクターを検出する検査は、例えば以下のようにサンプルの調製、増菌培養、分離培養、同定といった順で各操作を行うことにより実施される。
まず、検体から25g(もしくは25mL)の試料を採取し、その試料をストマックバッグに入れた後、増菌培地100mLを添加してホモジナイズ(均質化)することにより、サンプルを調製する。増菌培地としては、通常、プレストン増菌培地が使用され(例えば、特許文献1参照。)、菌損傷の可能性が高い場合などにボルトン増菌培地が使用される(例えば、特許文献2参照。)。次に、プレストン増菌培地を使用したときには、微好気条件下(あるいは好気条件下)において42±1℃の温度で24−48時間、増菌培養を行う。また、ボルトン増菌培地を使用したときには、微好気条件下(あるいは好気条件下)において35±1℃の温度で4時間培養した後、42±1℃の温度で24−44時間、増菌培養を行うか、42±1℃の温度で24−48時間、増菌培養を行う。次に、増菌培養した液を分離培地に画線塗沫し、42±1℃の温度で24−48時間、分離培養する。分離培地としては、例えばmCCDA培地が使用される。この分離培養後に、菌の同定を行う。例えば、培地上のコロニーを観察し、疑わし形状のコロニーを幾つか採取して、血液寒天培地およびこれと同等の糖の含有が少ない非選択培地に塗沫し、42±1℃の温度で24−48時間培養する。そして、グラム染色などによる菌形の確認、カタラーゼ陽性の有無、オキシダーゼ陽性の有無、ラテックス凝集テストでの陽性の有無などによって鑑別同定する。
【0003】
上記したカンピロバクターの検査で使用される増菌培地は、例えば次のようにして調製されている。すなわち、プレストン増菌培地は、ペプトン、ラブ−レムコ末および塩化ナトリウムを含む基礎培地粉末を精製水に懸濁させ加熱して溶解させ滅菌処理された基礎培地と、ウマ溶血液と、アセトン/滅菌精製水(1:1)で溶解させたカンピロバクター選択サプリメントおよびカンピロバクター発育サプリメントとを無菌的に混和させて調製され、滅菌容器に分注される。また、ボルトン増菌培地は、肉ペプトン、ラクトアルブミン加水分解物、酵母エキス、塩化ナトリウム等を含む基礎培地粉末を精製水に懸濁させ加熱して溶解させ滅菌処理された基礎培地と、ウマ溶血液と、エチルアルコール/滅菌精製水(1:1)で溶解させたボルトン選択サプリメントとを無菌的に混和させて調製され、滅菌容器に分注される。
【特許文献1】特表2005−516627号公報(第7−8頁、第18頁)
【特許文献2】特表2005−511014号公報(第7頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カンピロバクターの検査を行う臨床検査機関、食品工場、医療機関などの事業所においては、従来、基礎培地粉末および発育サプリメントや選択サプリメントを購入し保管しておき、検査を行う前などに、上記したような作業で増菌培地を調製し、その調製された増菌培地を使用して増菌培養を行うようにしていた。このため、1回の検査に必要な量の基礎培地粉末を秤取したり、基礎培地を滅菌処理したり、選択サプリメント等を溶媒に溶解させたり、容器内で基礎培地とウマ溶血液と選択サプリメント等とを攪拌して混和させたりするなどして増菌培地を調製する必要があり、これらの作業に手間と時間がかかっていた。また、滅菌容器を用意しておく必要がある、といった問題点がある。
【0005】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、カンピロバクターの選択増菌培地を簡単にかつ短時間で調製することができ、増菌培地の調製のために特に滅菌容器を用意する必要も無いカンピロバクター検査用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、カンピロバクターを検出する検査のための増菌培地を調製するカンピロバクター検査用具において、柔軟性もしくは可撓性を有する透明もしくは半透明の樹脂材料で形成された密閉可能な包装体の内部に、1回の検査に必要な量の基礎培地粉末を収容するとともに、1回の検査に必要な量のウマ溶血液および1回の検査に必要な量のサプリメント液が封入され包装体の外部から加えられる押圧力によって破裂する内部包装体を収容し、前記包装体を密封して構成され、使用時に、前記包装体を開封して包装体内へ滅菌精製水を注入し、包装体内部の基礎培地粉末を滅菌精製水で溶解させ、前記内部包装体を破裂させて、基礎培地とウマ溶血液とサプリメント液とを混合させ、包装体内でカンピロバクターの選択増菌培地を調製し、その増菌培地が収容された包装体内へ検体を注入して増菌培養することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の検査用具において、前記内部包装体が、ウマ溶血液が封入された第1の内部包装体と、サプリメント液が封入された第2の内部包装体との2つの内部包装体に分けられ、使用時に前記第1の内部包装体および前記第2の内部包装体をそれぞれ破裂させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の検査用具において、前記基礎培地粉末がプレストン基礎培地であり、前記サプリメント液がカンピロバクター発育サプリメントおよびカンピロバクター選択サプリメントであることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の検査用具において、前記基礎培地粉末がプレストン基礎培地であり、前記サプリメント液がカンピロバクター発育サプリメントおよびカンピロバクター選択サプリメントであって、前記内部包装体が、ウマ溶血液が封入された第1の内部包装体と、カンピロバクター発育サプリメントが封入された第2の内部包装体と、カンピロバクター選択サプリメントが封入された第3の内部包装体との3つの内部包装体に分けられ、使用時に前記第1の内部包装体、前記第2の内部包装体および前記第3の内部包装体をそれぞれ破裂させることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の検査用具において、前記基礎培地粉末がボルトン基礎培地であり、前記サプリメント液がカンピロバクター選択サプリメントであることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の検査用具において、基礎培地粉末および内部包装体が収容されて密封された前記包装体が凍結されて保存され、使用時に、前記内部包装体内に封入されたウマ溶血液およびサプリメント液がそれぞれ解凍されることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の検査用具において、基礎培地粉末および内部包装体が収容されて密封され凍結された前記包装体に対しγ線、X線または電子線が照射されて前記基礎培地粉末が滅菌処理されたことを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の検査用具において、前記内部包装体が、フィルム材料で密閉袋状に形成され周縁部の少なくとも一部が弱く接着されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明の検査用具においては、包装体を開封し、包装体内へ滅菌精製水を注入して、包装体内部の基礎培地粉末を滅菌精製水で溶解させる。そして、包装体の外面を指で押して包装体内の内部包装体に対し押圧力を加えることにより、内部包装体が破裂して、内部包装体内からウマ溶血液およびサプリメント液が流出する。この後、基礎培地とウマ溶血液とサプリメント液とを混合させ、それらを十分に混和させることにより、包装体内で1回の検査に必要な量のカンピロバクターの選択増菌培地が調製される。この増菌培地が収容された包装体内へ検体を注入し、包装体を密閉して、ホモジナイズすることにより、カンピロバクターの増菌培養が行われる。
したがって、請求項1に係る発明の検査用具を使用すると、カンピロバクターの選択増菌培地を簡単にかつ短時間で調製することができ、増菌培地の調製のために特に滅菌容器を用意する必要も無い。
【0015】
請求項2に係る発明の検査用具では、包装体の外面を指で押して包装体内の第1の内部包装体および第2の内部包装体に対しそれぞれ押圧力を加えることにより、第1の内部包装体および第2の内部包装体がそれぞれ破裂して、第1の内部包装体内からウマ溶血液が流出し、第2の内部包装体内からサプリメント液が流出する。
【0016】
請求項3に係る発明の検査用具では、プレストン増菌培地を簡単にかつ短時間で調製することができる。
【0017】
請求項4に係る発明の検査用具では、包装体の外面を指で押して包装体内の第1の内部包装体、第2の内部包装体および第3の内部包装体に対しそれぞれ押圧力を加えることにより、第1の内部包装体、第2の内部包装体および第3の内部包装体がそれぞれ破裂して、第1の内部包装体内からウマ溶血液が流出し、第2の内部包装体内からカンピロバクター発育サプリメントが流出し、第3の内部包装体内からカンピロバクター選択サプリメントが流出する。そして、この検査用具では、プレストン増菌培地を簡単にかつ短時間で調製することができる。
【0018】
請求項5に係る発明の検査用具では、ボルトン増菌培地を簡単にかつ短時間で調製することができる。
【0019】
請求項6に係る発明の検査用具では、内部包装体内に収容されたウマ溶血液およびサプリメント液を長期間にわたり安定して保存することが可能になる。
【0020】
請求項7に係る発明の検査用具では、包装体内への基礎培地粉末の封入操作を無菌的に行うことが困難である場合に、包装体内に基礎培地粉末を封入した後にそれを滅菌処理することができる。
【0021】
請求項8に係る発明の検査用具では、包装体の外面を指で押して包装体内の内部包装体に対し押圧力を加えることにより、内部包装体は、弱く接着された周縁部が容易に剥離して破裂する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明の実施形態の1例を示し、検査用具の一部を破断した状態で示す平面図である。
【0023】
この検査用具は、柔軟性(あるいは可撓性)を有する透明(あるいは半透明)の樹脂材料、例えばナイロン、ポリエチレン等で形成された包装袋10の内部に基礎培地粉末12と2つの内部包装袋14、16とを収容し、包装袋10を密封して構成されている。包装袋10は、この例では袋自体を自立させることが可能であるスタンド袋である。包装袋10の上辺部付近には、包装袋10を構成する2枚のフィルム状シート間にファスナ18が介挿され、ファスナ18を構成する線状雄部材と線状雌部材とが各フィルム状シートにそれぞれ溶着されている。そして、ファスナ18の線状雄部材と線状雌部材とを咬合および離脱させることにより、包装袋10が密閉および開口される。包装袋10の上辺部は、包装袋10を構成する2枚のフィルム状シート枚同士が熱接着されて、その熱接着部20により包装袋10が密封されている。また、熱接着部20とファスナ18との間に切取線22が印刷されている。なお、切取線22を印刷する代わりに、熱接着部20とファスナ18との間に、包装袋10の両側辺から僅かにV字形にそれぞれ切り込まれたノッチを形設するようにしてもよい。図2に平面図を示すように、切取線22に沿ってフィルム状シートをハサミ等で切断し、あるいは、ノッチの形成部分で2枚のフィルム状シートを引き裂くことにより、密封された包装袋10が開封される。
【0024】
包装袋10の内部に封入される基礎培地粉末12の量は、1回の検査に必要な量とされる。また、第1の内部包装袋14内には、1回の検査に必要な量のウマ溶血液が封入され、第2の内部包装袋16内には、1回の検査に必要な量のサプリメント液が封入されている。第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16はそれぞれ、包装袋10の外面を指で押して第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16に対しそれぞれ押圧力を加えることにより破裂するように形成されている。例えば、第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16はそれぞれ、フィルム材料で密閉袋状に形成されて、その周縁部24、26の一部が熱接着等により弱く接着された構成を有している。そして、第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16に対し力が加えられることにより、弱く接着された周縁部24、26が容易に剥離して、第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16がそれぞれ破裂し、第1の内部包装袋14内からウマ溶血液が流出し、第2の内部包装袋16内からサプリメント液が流出するようになっている。
【0025】
基礎培地粉末の組成としては、プレストン増菌培地の調製用ではペプトン、ラブ−レムコ末および塩化ナトリウムを含み、ボルトン増菌培地の調製用では肉ペプトン、ラクトアルブミン加水分解物、酵母エキス、塩化ナトリウムなどを含む。第2の内部包装袋16内に封入されるサプリメント液は、プレストン増菌培地の調製用では、カンピロバクター発育サプリメント(組成:ピルビン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムおよび硫酸鉄(水和塩))とプレストンカンピロバクター選択サプリメント(組成:ポリミキシンB、リファンピシン、トリメトプリムおよびシクロヘキシミド)とをアセトン/滅菌精製水(1:1)で溶解させて調製されている。また、ボルトン増菌培地の調製用では、ボルトン選択サプリメント(組成:セフォペラゾン、バンコマイシン、トリメトプリムおよびシクロヘキシミド)をエチルアルコール/滅菌精製水(1:1)で溶解させて調製されている。
【0026】
基礎培地粉末12、第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16が収容されて密封された包装袋10は、凍結処理されて、第1の内部包装袋14内のウマ溶血液および第2の内部包装袋16内のサプリメント液が凍結される。ウマ溶血液およびサプリメント液は、冷蔵や室温では長期保存することができないが、包装袋10を凍結処理することにより、この検査用具を長期間にわたり安定して保存することが可能となる。この検査用具は、臨床検査機関、食品工場、医療機関などの事業所において凍結保存され、カンピロバクターの選択増菌培養が必要になったときに取り出され、第1の内部包装袋14内に封入されたウマ溶血液および第2の内部包装袋16内に封入されたサプリメント液を解凍してから使用する。なお、包装袋10内への基礎培地粉末12の封入操作は無菌的に行われるが、それが困難である場合などには、包装袋10の内部に基礎培地粉末12、第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16を密封し、包装袋10を凍結させた後に、包装袋10に対しγ線、X線または電子線を照射して、基礎培地粉末12を滅菌処理する。このときに、γ線等の線量を適切に調整することにより、培地の性能を低下させることなく基礎培地粉末を無菌化することができる。
【0027】
この検査用具のより具体的な作製例を示すと、100mLのボルトン選択増菌培地を調製する場合には、滅菌済みのファスナ付き透明スタンド袋に、滅菌済みボルトン選択増菌ブイヨン(粉末)2.76gを入れる。また、滅菌した小袋に無菌ウマ溶血液5mLを入れて密封し、別の滅菌小袋に、セフォペラゾン2mg、バンコマイシン2mg、トリメトプリム2mgおよびシクロヘキシミド5.1mgをエチルアルコール/滅菌精製水(1:1)1mLで溶解させた無菌溶液を密封する。そして、スタンド袋内へ滅菌小袋を入れた後、スタンド袋の開口部を熱接着して密封する。
【0028】
上記した検査用具を用いてカンピロバクターの検査を行うときは、凍結状態のウマ溶血液およびサプリメント液を解凍して室温状態に戻してから、まず、包装袋10の上辺部近くの切取線22に沿ってフィルム状シートを切断し、包装袋10を開封して、包装袋10内へ1倍濃度となるように滅菌精製水を注入する。包装袋10の上辺部をファスナ18で密閉した後、包装袋10内部の基礎培地粉末12を滅菌精製水で溶解させる。次に、包装袋10の外面を指で押して包装袋10内の第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16に対しそれぞれ押圧力を加えることにより、第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16をそれぞれ破裂させて、第1の内部包装袋14内からウマ溶血液を流出させ、第2の内部包装袋16内からサプリメント液を流出させる。この後、基礎培地とウマ溶血液とサプリメント液とを混合させ、それらを十分に混和させることにより、包装袋10内で1回の検査に必要な量のカンピロバクターの選択増菌培地を調製する。そして、増菌培地が収容された包装袋10内へ1回の検査に必要な量の検体を注入して、定法通りに軽くホモジナイズし、包装袋10内に空気が出来るだけ残らないようにして包装袋10をファスナ18で密封する。この後は、定法通りに包装袋10内でカンピロバクターの増菌培養を行うようにする。
【0029】
なお、上記した実施形態では、第1の内部包装袋14内にウマ溶血液を封入し、第2の内部包装袋16内にサプリメント液を封入するようにしたが、1つの内部包装袋内にウマ溶血液と共にサプリメント液を封入して、その1つの内部包装袋を包装袋10の内部に収容するようにしてもよい。また、例えばプレストン増菌培地の調製用では、内部包装袋を3つにし、第1の内部包装袋内にウマ溶血液を封入し、第2の内部包装袋内にカンピロバクター発育サプリメントを封入し、第3の内部包装袋内にプレストンカンピロバクター選択サプリメントを封入するようにしてもよい。また、複数の内部包装袋を包装袋10の内部に収容する場合において、複数の内部包装袋を同時に破裂させる必要は特に無い。例えばボルトン増菌培地による増菌培養においては、包装袋10内部の基礎培地粉末12を滅菌精製水で溶解させた後に、まず、包装袋10内の第1の内部包装袋14だけに対し押圧力を加えることにより、第1の内部包装袋14だけを破裂させて、第1の内部包装袋14内からウマ溶血液を流出させる。この状態で、微好気条件下、35±1℃の温度で4時間培養した後に、第2の内部包装袋16に対し押圧力を加えることにより、第2の内部包装袋16を破裂させて、第2の内部包装袋16内から抗生剤であるボルトン選択サプリメントの液を流出させ、そのサプリメント液を培地に十分に混和させ、この状態で、42±1℃の温度で24−44時間、増菌培養を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施形態の1例を示し、検査用具の一部を破断した状態で示す平面図である。
【図2】図1に示した検査用具の包装袋を開封した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 包装袋
12 基礎培地粉末
14 第1の内部包装袋
16 第2の内部包装袋
18 ファスナ
20 熱接着部
22 切取線
24、26 内部包装袋の弱く接着された周縁部
【技術分野】
【0001】
この発明は、食中毒の原因菌の1つであるカンピロバクターを検出するカンピロバクターの検査において、カンピロバクターを選択増菌培養するための増菌培地を調製するときに使用されるカンピロバクター検査用具に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉等の食品中からカンピロバクターを検出する検査は、例えば以下のようにサンプルの調製、増菌培養、分離培養、同定といった順で各操作を行うことにより実施される。
まず、検体から25g(もしくは25mL)の試料を採取し、その試料をストマックバッグに入れた後、増菌培地100mLを添加してホモジナイズ(均質化)することにより、サンプルを調製する。増菌培地としては、通常、プレストン増菌培地が使用され(例えば、特許文献1参照。)、菌損傷の可能性が高い場合などにボルトン増菌培地が使用される(例えば、特許文献2参照。)。次に、プレストン増菌培地を使用したときには、微好気条件下(あるいは好気条件下)において42±1℃の温度で24−48時間、増菌培養を行う。また、ボルトン増菌培地を使用したときには、微好気条件下(あるいは好気条件下)において35±1℃の温度で4時間培養した後、42±1℃の温度で24−44時間、増菌培養を行うか、42±1℃の温度で24−48時間、増菌培養を行う。次に、増菌培養した液を分離培地に画線塗沫し、42±1℃の温度で24−48時間、分離培養する。分離培地としては、例えばmCCDA培地が使用される。この分離培養後に、菌の同定を行う。例えば、培地上のコロニーを観察し、疑わし形状のコロニーを幾つか採取して、血液寒天培地およびこれと同等の糖の含有が少ない非選択培地に塗沫し、42±1℃の温度で24−48時間培養する。そして、グラム染色などによる菌形の確認、カタラーゼ陽性の有無、オキシダーゼ陽性の有無、ラテックス凝集テストでの陽性の有無などによって鑑別同定する。
【0003】
上記したカンピロバクターの検査で使用される増菌培地は、例えば次のようにして調製されている。すなわち、プレストン増菌培地は、ペプトン、ラブ−レムコ末および塩化ナトリウムを含む基礎培地粉末を精製水に懸濁させ加熱して溶解させ滅菌処理された基礎培地と、ウマ溶血液と、アセトン/滅菌精製水(1:1)で溶解させたカンピロバクター選択サプリメントおよびカンピロバクター発育サプリメントとを無菌的に混和させて調製され、滅菌容器に分注される。また、ボルトン増菌培地は、肉ペプトン、ラクトアルブミン加水分解物、酵母エキス、塩化ナトリウム等を含む基礎培地粉末を精製水に懸濁させ加熱して溶解させ滅菌処理された基礎培地と、ウマ溶血液と、エチルアルコール/滅菌精製水(1:1)で溶解させたボルトン選択サプリメントとを無菌的に混和させて調製され、滅菌容器に分注される。
【特許文献1】特表2005−516627号公報(第7−8頁、第18頁)
【特許文献2】特表2005−511014号公報(第7頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カンピロバクターの検査を行う臨床検査機関、食品工場、医療機関などの事業所においては、従来、基礎培地粉末および発育サプリメントや選択サプリメントを購入し保管しておき、検査を行う前などに、上記したような作業で増菌培地を調製し、その調製された増菌培地を使用して増菌培養を行うようにしていた。このため、1回の検査に必要な量の基礎培地粉末を秤取したり、基礎培地を滅菌処理したり、選択サプリメント等を溶媒に溶解させたり、容器内で基礎培地とウマ溶血液と選択サプリメント等とを攪拌して混和させたりするなどして増菌培地を調製する必要があり、これらの作業に手間と時間がかかっていた。また、滅菌容器を用意しておく必要がある、といった問題点がある。
【0005】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、カンピロバクターの選択増菌培地を簡単にかつ短時間で調製することができ、増菌培地の調製のために特に滅菌容器を用意する必要も無いカンピロバクター検査用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、カンピロバクターを検出する検査のための増菌培地を調製するカンピロバクター検査用具において、柔軟性もしくは可撓性を有する透明もしくは半透明の樹脂材料で形成された密閉可能な包装体の内部に、1回の検査に必要な量の基礎培地粉末を収容するとともに、1回の検査に必要な量のウマ溶血液および1回の検査に必要な量のサプリメント液が封入され包装体の外部から加えられる押圧力によって破裂する内部包装体を収容し、前記包装体を密封して構成され、使用時に、前記包装体を開封して包装体内へ滅菌精製水を注入し、包装体内部の基礎培地粉末を滅菌精製水で溶解させ、前記内部包装体を破裂させて、基礎培地とウマ溶血液とサプリメント液とを混合させ、包装体内でカンピロバクターの選択増菌培地を調製し、その増菌培地が収容された包装体内へ検体を注入して増菌培養することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の検査用具において、前記内部包装体が、ウマ溶血液が封入された第1の内部包装体と、サプリメント液が封入された第2の内部包装体との2つの内部包装体に分けられ、使用時に前記第1の内部包装体および前記第2の内部包装体をそれぞれ破裂させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の検査用具において、前記基礎培地粉末がプレストン基礎培地であり、前記サプリメント液がカンピロバクター発育サプリメントおよびカンピロバクター選択サプリメントであることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の検査用具において、前記基礎培地粉末がプレストン基礎培地であり、前記サプリメント液がカンピロバクター発育サプリメントおよびカンピロバクター選択サプリメントであって、前記内部包装体が、ウマ溶血液が封入された第1の内部包装体と、カンピロバクター発育サプリメントが封入された第2の内部包装体と、カンピロバクター選択サプリメントが封入された第3の内部包装体との3つの内部包装体に分けられ、使用時に前記第1の内部包装体、前記第2の内部包装体および前記第3の内部包装体をそれぞれ破裂させることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の検査用具において、前記基礎培地粉末がボルトン基礎培地であり、前記サプリメント液がカンピロバクター選択サプリメントであることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の検査用具において、基礎培地粉末および内部包装体が収容されて密封された前記包装体が凍結されて保存され、使用時に、前記内部包装体内に封入されたウマ溶血液およびサプリメント液がそれぞれ解凍されることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の検査用具において、基礎培地粉末および内部包装体が収容されて密封され凍結された前記包装体に対しγ線、X線または電子線が照射されて前記基礎培地粉末が滅菌処理されたことを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の検査用具において、前記内部包装体が、フィルム材料で密閉袋状に形成され周縁部の少なくとも一部が弱く接着されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明の検査用具においては、包装体を開封し、包装体内へ滅菌精製水を注入して、包装体内部の基礎培地粉末を滅菌精製水で溶解させる。そして、包装体の外面を指で押して包装体内の内部包装体に対し押圧力を加えることにより、内部包装体が破裂して、内部包装体内からウマ溶血液およびサプリメント液が流出する。この後、基礎培地とウマ溶血液とサプリメント液とを混合させ、それらを十分に混和させることにより、包装体内で1回の検査に必要な量のカンピロバクターの選択増菌培地が調製される。この増菌培地が収容された包装体内へ検体を注入し、包装体を密閉して、ホモジナイズすることにより、カンピロバクターの増菌培養が行われる。
したがって、請求項1に係る発明の検査用具を使用すると、カンピロバクターの選択増菌培地を簡単にかつ短時間で調製することができ、増菌培地の調製のために特に滅菌容器を用意する必要も無い。
【0015】
請求項2に係る発明の検査用具では、包装体の外面を指で押して包装体内の第1の内部包装体および第2の内部包装体に対しそれぞれ押圧力を加えることにより、第1の内部包装体および第2の内部包装体がそれぞれ破裂して、第1の内部包装体内からウマ溶血液が流出し、第2の内部包装体内からサプリメント液が流出する。
【0016】
請求項3に係る発明の検査用具では、プレストン増菌培地を簡単にかつ短時間で調製することができる。
【0017】
請求項4に係る発明の検査用具では、包装体の外面を指で押して包装体内の第1の内部包装体、第2の内部包装体および第3の内部包装体に対しそれぞれ押圧力を加えることにより、第1の内部包装体、第2の内部包装体および第3の内部包装体がそれぞれ破裂して、第1の内部包装体内からウマ溶血液が流出し、第2の内部包装体内からカンピロバクター発育サプリメントが流出し、第3の内部包装体内からカンピロバクター選択サプリメントが流出する。そして、この検査用具では、プレストン増菌培地を簡単にかつ短時間で調製することができる。
【0018】
請求項5に係る発明の検査用具では、ボルトン増菌培地を簡単にかつ短時間で調製することができる。
【0019】
請求項6に係る発明の検査用具では、内部包装体内に収容されたウマ溶血液およびサプリメント液を長期間にわたり安定して保存することが可能になる。
【0020】
請求項7に係る発明の検査用具では、包装体内への基礎培地粉末の封入操作を無菌的に行うことが困難である場合に、包装体内に基礎培地粉末を封入した後にそれを滅菌処理することができる。
【0021】
請求項8に係る発明の検査用具では、包装体の外面を指で押して包装体内の内部包装体に対し押圧力を加えることにより、内部包装体は、弱く接着された周縁部が容易に剥離して破裂する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明の実施形態の1例を示し、検査用具の一部を破断した状態で示す平面図である。
【0023】
この検査用具は、柔軟性(あるいは可撓性)を有する透明(あるいは半透明)の樹脂材料、例えばナイロン、ポリエチレン等で形成された包装袋10の内部に基礎培地粉末12と2つの内部包装袋14、16とを収容し、包装袋10を密封して構成されている。包装袋10は、この例では袋自体を自立させることが可能であるスタンド袋である。包装袋10の上辺部付近には、包装袋10を構成する2枚のフィルム状シート間にファスナ18が介挿され、ファスナ18を構成する線状雄部材と線状雌部材とが各フィルム状シートにそれぞれ溶着されている。そして、ファスナ18の線状雄部材と線状雌部材とを咬合および離脱させることにより、包装袋10が密閉および開口される。包装袋10の上辺部は、包装袋10を構成する2枚のフィルム状シート枚同士が熱接着されて、その熱接着部20により包装袋10が密封されている。また、熱接着部20とファスナ18との間に切取線22が印刷されている。なお、切取線22を印刷する代わりに、熱接着部20とファスナ18との間に、包装袋10の両側辺から僅かにV字形にそれぞれ切り込まれたノッチを形設するようにしてもよい。図2に平面図を示すように、切取線22に沿ってフィルム状シートをハサミ等で切断し、あるいは、ノッチの形成部分で2枚のフィルム状シートを引き裂くことにより、密封された包装袋10が開封される。
【0024】
包装袋10の内部に封入される基礎培地粉末12の量は、1回の検査に必要な量とされる。また、第1の内部包装袋14内には、1回の検査に必要な量のウマ溶血液が封入され、第2の内部包装袋16内には、1回の検査に必要な量のサプリメント液が封入されている。第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16はそれぞれ、包装袋10の外面を指で押して第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16に対しそれぞれ押圧力を加えることにより破裂するように形成されている。例えば、第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16はそれぞれ、フィルム材料で密閉袋状に形成されて、その周縁部24、26の一部が熱接着等により弱く接着された構成を有している。そして、第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16に対し力が加えられることにより、弱く接着された周縁部24、26が容易に剥離して、第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16がそれぞれ破裂し、第1の内部包装袋14内からウマ溶血液が流出し、第2の内部包装袋16内からサプリメント液が流出するようになっている。
【0025】
基礎培地粉末の組成としては、プレストン増菌培地の調製用ではペプトン、ラブ−レムコ末および塩化ナトリウムを含み、ボルトン増菌培地の調製用では肉ペプトン、ラクトアルブミン加水分解物、酵母エキス、塩化ナトリウムなどを含む。第2の内部包装袋16内に封入されるサプリメント液は、プレストン増菌培地の調製用では、カンピロバクター発育サプリメント(組成:ピルビン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムおよび硫酸鉄(水和塩))とプレストンカンピロバクター選択サプリメント(組成:ポリミキシンB、リファンピシン、トリメトプリムおよびシクロヘキシミド)とをアセトン/滅菌精製水(1:1)で溶解させて調製されている。また、ボルトン増菌培地の調製用では、ボルトン選択サプリメント(組成:セフォペラゾン、バンコマイシン、トリメトプリムおよびシクロヘキシミド)をエチルアルコール/滅菌精製水(1:1)で溶解させて調製されている。
【0026】
基礎培地粉末12、第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16が収容されて密封された包装袋10は、凍結処理されて、第1の内部包装袋14内のウマ溶血液および第2の内部包装袋16内のサプリメント液が凍結される。ウマ溶血液およびサプリメント液は、冷蔵や室温では長期保存することができないが、包装袋10を凍結処理することにより、この検査用具を長期間にわたり安定して保存することが可能となる。この検査用具は、臨床検査機関、食品工場、医療機関などの事業所において凍結保存され、カンピロバクターの選択増菌培養が必要になったときに取り出され、第1の内部包装袋14内に封入されたウマ溶血液および第2の内部包装袋16内に封入されたサプリメント液を解凍してから使用する。なお、包装袋10内への基礎培地粉末12の封入操作は無菌的に行われるが、それが困難である場合などには、包装袋10の内部に基礎培地粉末12、第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16を密封し、包装袋10を凍結させた後に、包装袋10に対しγ線、X線または電子線を照射して、基礎培地粉末12を滅菌処理する。このときに、γ線等の線量を適切に調整することにより、培地の性能を低下させることなく基礎培地粉末を無菌化することができる。
【0027】
この検査用具のより具体的な作製例を示すと、100mLのボルトン選択増菌培地を調製する場合には、滅菌済みのファスナ付き透明スタンド袋に、滅菌済みボルトン選択増菌ブイヨン(粉末)2.76gを入れる。また、滅菌した小袋に無菌ウマ溶血液5mLを入れて密封し、別の滅菌小袋に、セフォペラゾン2mg、バンコマイシン2mg、トリメトプリム2mgおよびシクロヘキシミド5.1mgをエチルアルコール/滅菌精製水(1:1)1mLで溶解させた無菌溶液を密封する。そして、スタンド袋内へ滅菌小袋を入れた後、スタンド袋の開口部を熱接着して密封する。
【0028】
上記した検査用具を用いてカンピロバクターの検査を行うときは、凍結状態のウマ溶血液およびサプリメント液を解凍して室温状態に戻してから、まず、包装袋10の上辺部近くの切取線22に沿ってフィルム状シートを切断し、包装袋10を開封して、包装袋10内へ1倍濃度となるように滅菌精製水を注入する。包装袋10の上辺部をファスナ18で密閉した後、包装袋10内部の基礎培地粉末12を滅菌精製水で溶解させる。次に、包装袋10の外面を指で押して包装袋10内の第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16に対しそれぞれ押圧力を加えることにより、第1の内部包装袋14および第2の内部包装袋16をそれぞれ破裂させて、第1の内部包装袋14内からウマ溶血液を流出させ、第2の内部包装袋16内からサプリメント液を流出させる。この後、基礎培地とウマ溶血液とサプリメント液とを混合させ、それらを十分に混和させることにより、包装袋10内で1回の検査に必要な量のカンピロバクターの選択増菌培地を調製する。そして、増菌培地が収容された包装袋10内へ1回の検査に必要な量の検体を注入して、定法通りに軽くホモジナイズし、包装袋10内に空気が出来るだけ残らないようにして包装袋10をファスナ18で密封する。この後は、定法通りに包装袋10内でカンピロバクターの増菌培養を行うようにする。
【0029】
なお、上記した実施形態では、第1の内部包装袋14内にウマ溶血液を封入し、第2の内部包装袋16内にサプリメント液を封入するようにしたが、1つの内部包装袋内にウマ溶血液と共にサプリメント液を封入して、その1つの内部包装袋を包装袋10の内部に収容するようにしてもよい。また、例えばプレストン増菌培地の調製用では、内部包装袋を3つにし、第1の内部包装袋内にウマ溶血液を封入し、第2の内部包装袋内にカンピロバクター発育サプリメントを封入し、第3の内部包装袋内にプレストンカンピロバクター選択サプリメントを封入するようにしてもよい。また、複数の内部包装袋を包装袋10の内部に収容する場合において、複数の内部包装袋を同時に破裂させる必要は特に無い。例えばボルトン増菌培地による増菌培養においては、包装袋10内部の基礎培地粉末12を滅菌精製水で溶解させた後に、まず、包装袋10内の第1の内部包装袋14だけに対し押圧力を加えることにより、第1の内部包装袋14だけを破裂させて、第1の内部包装袋14内からウマ溶血液を流出させる。この状態で、微好気条件下、35±1℃の温度で4時間培養した後に、第2の内部包装袋16に対し押圧力を加えることにより、第2の内部包装袋16を破裂させて、第2の内部包装袋16内から抗生剤であるボルトン選択サプリメントの液を流出させ、そのサプリメント液を培地に十分に混和させ、この状態で、42±1℃の温度で24−44時間、増菌培養を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施形態の1例を示し、検査用具の一部を破断した状態で示す平面図である。
【図2】図1に示した検査用具の包装袋を開封した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 包装袋
12 基礎培地粉末
14 第1の内部包装袋
16 第2の内部包装袋
18 ファスナ
20 熱接着部
22 切取線
24、26 内部包装袋の弱く接着された周縁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性もしくは可撓性を有する透明もしくは半透明の樹脂材料で形成された密閉可能な包装体の内部に、1回の検査に必要な量の基礎培地粉末を収容するとともに、1回の検査に必要な量のウマ溶血液および1回の検査に必要な量のサプリメント液が封入され包装体の外部から加えられる押圧力によって破裂する内部包装体を収容し、前記包装体を密封して構成され、
使用時に、前記包装体を開封して包装体内へ滅菌精製水を注入し、包装体内部の基礎培地粉末を滅菌精製水で溶解させ、前記内部包装体を破裂させて、基礎培地とウマ溶血液とサプリメント液とを混合させ、包装体内でカンピロバクターの選択増菌培地を調製し、その増菌培地が収容された包装体内へ検体を注入して増菌培養することを特徴とするカンピロバクター検査用具。
【請求項2】
前記内部包装体が、ウマ溶血液が封入された第1の内部包装体と、サプリメント液が封入された第2の内部包装体との2つの内部包装体に分けられ、
使用時に前記第1の内部包装体および前記第2の内部包装体をそれぞれ破裂させる請求項1に記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項3】
前記基礎培地粉末がプレストン基礎培地であり、前記サプリメント液がカンピロバクター発育サプリメントおよびカンピロバクター選択サプリメントである請求項1または請求項2に記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項4】
前記基礎培地粉末がプレストン基礎培地であり、前記サプリメント液がカンピロバクター発育サプリメントおよびカンピロバクター選択サプリメントであって、
前記内部包装体が、ウマ溶血液が封入された第1の内部包装体と、カンピロバクター発育サプリメントが封入された第2の内部包装体と、カンピロバクター選択サプリメントが封入された第3の内部包装体との3つの内部包装体に分けられ、
使用時に前記第1の内部包装体、前記第2の内部包装体および前記第3の内部包装体をそれぞれ破裂させる請求項1に記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項5】
前記基礎培地粉末がボルトン基礎培地であり、前記サプリメント液がカンピロバクター選択サプリメントである請求項1または請求項2に記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項6】
基礎培地粉末および内部包装体が収容されて密封された前記包装体が凍結されて保存され、使用時に、前記内部包装体内に封入されたウマ溶血液およびサプリメント液がそれぞれ解凍される請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項7】
基礎培地粉末および内部包装体が収容されて密封され凍結された前記包装体に対しγ線、X線または電子線が照射されて前記基礎培地粉末が滅菌処理された請求項6に記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項8】
前記内部包装体が、フィルム材料で密閉袋状に形成され周縁部の少なくとも一部が弱く接着されたものである請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項1】
柔軟性もしくは可撓性を有する透明もしくは半透明の樹脂材料で形成された密閉可能な包装体の内部に、1回の検査に必要な量の基礎培地粉末を収容するとともに、1回の検査に必要な量のウマ溶血液および1回の検査に必要な量のサプリメント液が封入され包装体の外部から加えられる押圧力によって破裂する内部包装体を収容し、前記包装体を密封して構成され、
使用時に、前記包装体を開封して包装体内へ滅菌精製水を注入し、包装体内部の基礎培地粉末を滅菌精製水で溶解させ、前記内部包装体を破裂させて、基礎培地とウマ溶血液とサプリメント液とを混合させ、包装体内でカンピロバクターの選択増菌培地を調製し、その増菌培地が収容された包装体内へ検体を注入して増菌培養することを特徴とするカンピロバクター検査用具。
【請求項2】
前記内部包装体が、ウマ溶血液が封入された第1の内部包装体と、サプリメント液が封入された第2の内部包装体との2つの内部包装体に分けられ、
使用時に前記第1の内部包装体および前記第2の内部包装体をそれぞれ破裂させる請求項1に記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項3】
前記基礎培地粉末がプレストン基礎培地であり、前記サプリメント液がカンピロバクター発育サプリメントおよびカンピロバクター選択サプリメントである請求項1または請求項2に記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項4】
前記基礎培地粉末がプレストン基礎培地であり、前記サプリメント液がカンピロバクター発育サプリメントおよびカンピロバクター選択サプリメントであって、
前記内部包装体が、ウマ溶血液が封入された第1の内部包装体と、カンピロバクター発育サプリメントが封入された第2の内部包装体と、カンピロバクター選択サプリメントが封入された第3の内部包装体との3つの内部包装体に分けられ、
使用時に前記第1の内部包装体、前記第2の内部包装体および前記第3の内部包装体をそれぞれ破裂させる請求項1に記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項5】
前記基礎培地粉末がボルトン基礎培地であり、前記サプリメント液がカンピロバクター選択サプリメントである請求項1または請求項2に記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項6】
基礎培地粉末および内部包装体が収容されて密封された前記包装体が凍結されて保存され、使用時に、前記内部包装体内に封入されたウマ溶血液およびサプリメント液がそれぞれ解凍される請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項7】
基礎培地粉末および内部包装体が収容されて密封され凍結された前記包装体に対しγ線、X線または電子線が照射されて前記基礎培地粉末が滅菌処理された請求項6に記載のカンピロバクター検査用具。
【請求項8】
前記内部包装体が、フィルム材料で密閉袋状に形成され周縁部の少なくとも一部が弱く接着されたものである請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のカンピロバクター検査用具。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2010−57390(P2010−57390A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224439(P2008−224439)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(591237641)株式会社日研生物医学研究所 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(591237641)株式会社日研生物医学研究所 (10)
【Fターム(参考)】
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