説明

検査画像取得装置、パターン検査装置および検査画像取得方法

【課題】パターン検査装置の製造コストを削減しつつコントラストの高い検査画像を取得する。
【解決手段】パターン検査装置の画像取得部13は、光照射部131、ラインセンサ132、角度変更機構、および、検査対象であるウエブ9を搬送する搬送機構を備える。光照射部131からは、ウエブ9の薄膜パターンに対して透過性を有する波長の光が出射される。光照射部131からの光の照射角θ1およびラインセンサ132により撮像が行われる検出角θ2は、常に同じであり、これらの角度は角度変更機構により変更される。パターン検査装置では、予め検査画像のコントラストが高くなる照射角および検出角の設定角度が求められ、照射角および検出角が設定角度とされる。これにより、単一波長の光源を用いてラインセンサ132によりコントラストの高い検査画像を取得することができ、パターン検査装置の製造コストも削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に形成された薄膜パターンを検査する技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な分野において、フィルム状または板状の基材上に形成されたパターンの検査が行われている。例えば、特許文献1に開示されるパターン検査装置では、樹脂フィルム上に形成された配線パターンの検査が行われる。パターン検査装置では、光源に波長500nm以上の光のみを放射するLED(Light Emitting Diode)が用いられることにより、コントラストの良い画像が得られる。
【0003】
なお、特許文献2に開示される膜厚測定装置では、半導体レーザから透明ポリエステルフィルムに光が照射され、シリコンフォトダイオードにて正反射光強度が検出される。半導体レーザおよびシリコンフォトダイオードは、ステッピングモータにより、0°から90°の範囲内で移動し、光入射角が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−112845号公報
【特許文献2】特開2004−101505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、様々な電子機器にFPD(Flat Panel Display)が設けられる。このような表示装置の製造において透明電極等の透明なパターンの外観検査を行う場合、例えば、ガラス基板に光を照射し、反射光を受光することによりパターンの画像が取得される。取得された画像は処理された上で参照画像と比較され、パターンの欠陥の有無が判断される。
【0006】
検査装置では光源にランプやLED、LD(Laser Diode)等が使用され、検査対象における光干渉によりパターンと背景との間に明るさの差、すなわち、コントラストが生じる。光干渉を利用してパターンの画像を取得する場合、パターンやその上に存在する薄膜の厚さおよび光学定数等の影響により、コントラストの良い画像が取得可能な波長が変化する。したがって、光源としてランプおよび複数の干渉フィルタを切り替える機構が設けられたり、複数の波長を出射する複数のLEDが設けられる。このような手法を採用する場合、光源が大掛かりとなり、検査装置の製造コストが増大する。
【0007】
また、複数の波長の光を用いる場合、光学系における色消しや収差補正を多波長に対して実現する必要があり、光学系の設計および製作の難易度が上がり、光量の削減が必要となったり、光学系の製造コストが増大する。加えて、例えば、検査対象が感光性のレジストを含む場合、短い波長域の光を照射することができず、理想的な波長の光を使用してパターンを検査することができない場合がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、パターンの検査において、コントラストの高い検査画像の取得を低コストにて実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基材上に形成された薄膜パターンの検査に用いられる検査画像を取得する検査画像取得装置であって、前記薄膜パターンに対して透過性を有する波長の光を出射する光照射部と、前記光が照射される線状の撮像領域からの光を受光するラインセンサと、前記基材を前記撮像領域と交差する方向に前記撮像領域に対して相対的に移動する移動機構と、前記光照射部から前記撮像領域に至る光軸と前記基材の法線とのなす照射角と、前記撮像領域から前記ラインセンサに至る光軸と前記法線とのなす検出角とを等しく維持しつつ前記照射角および前記検出角を変更する角度変更機構とを備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の検査画像取得装置であって、前記照射角および前記検出角と、前記薄膜パターンと背景との間のコントラストとの関係を示すプロファイルを取得するプロファイル取得部と、前記プロファイルから前記照射角および前記検出角の設定角度を求める角度決定部とをさらに備える。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の検査画像取得装置であって、前記プロファイル取得部が、前記基材上における層構造および各層の膜厚に基づいて、前記プロファイルを求める。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の検査画像取得装置であって、前記各層の膜厚を求める膜厚計をさらに備え、前記プロファイル取得部が、前記膜厚計からの出力に基づいて前記プロファイルを求める。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の検査画像取得装置であって、前記撮像領域と前記ラインセンサとの間に配置された偏光子をさらに備える。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれかに記載の検査画像取得装置であって、前記撮像領域と前記ラインセンサとの間に配置された偏光子と、前記偏光子による偏光方向を変更する偏光切替機構とをさらに備え、前記プロファイル取得部が、前記プロファイルとして、p偏光光による前記薄膜パターンと前記背景との間の第1コントラストを示す第1プロファイルと、s偏光光による前記薄膜パターンと前記背景との間の第2コントラストを示す第2プロファイルとを取得し、前記角度決定部が、前記第1コントラストと前記第2コントラストとの積を用いて前記設定角度を求め、前記ラインセンサが、前記検査画像として、p偏光光による第1検査画像と、s偏光光による第2検査画像とを取得する。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の検査画像取得装置であって、前記薄膜パターンの膜厚が、10nm以上2000nm以下である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、基材上に形成された薄膜パターンを検査するパターン検査装置であって、請求項1ないし7のいずれかに記載の検査画像取得装置と、前記検査画像取得装置にて取得された検査画像に基づいて前記薄膜パターンの検査を実行する検査部とを備える。
【0017】
請求項9に記載の発明は、基材上に形成された薄膜パターンの検査に用いられる検査画像を取得する検査画像取得方法であって、前記薄膜パターンに対して透過性を有する波長の光を出射する光照射部から線状の撮像領域に至る光軸と前記基材の法線とのなす照射角の設定角度を求める工程と、前記照射角を前記設定角度に設定し、前記撮像領域からラインセンサに至る光軸と前記法線とのなす検出角も前記設定角度に設定する工程と、前記基材を前記撮像領域と交差する方向に前記撮像領域に対して相対的に移動する工程とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検査画像取得装置の製造コストを削減しつつコントラストの高い検査画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態に係るパターン検査装置の概略構成を示す図である。
【図2】画像取得部の正面図である。
【図3】画像取得部の平面図である。
【図4】画像取得部の背面図である。
【図5】パターン検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【図6】パターン検査装置の動作の流れを示す図である。
【図7】プロファイルの例を示す図である。
【図8】プロファイルの例を示す図である。
【図9】画像取得部の他の例を示す正面図である。
【図10.A】プロファイルの例を示す図である。
【図10.B】プロファイルの例を示す図である。
【図10.C】プロファイルの例を示す図である。
【図11.A】プロファイルの例を示す図である。
【図11.B】プロファイルの例を示す図である。
【図11.C】プロファイルの例を示す図である。
【図11.D】プロファイルの例を示す図である。
【図12】第2の実施の形態に係るパターン検査装置の機能構成の一部を示す図である。
【図13】パターン検査装置の動作の流れの一部を示す図である。
【図14】第3の実施の形態に係るパターン検査装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るパターン検査装置1の概略構成を示す正面図である。パターン検査装置1は、基材上に形成された多層の薄膜パターンの画像である検査画像を取得し、検査画像に基づいて薄膜パターンの検査を実行する。図1では、基材は、樹脂フィルムのウエブ、すなわち、連続シートである。薄膜パターンは、例えば、透明電極膜であり、本実施の形態では、基材および薄膜パターンは、透明膜により覆われる。実際には、基材上に反射防止膜等の他の層も設けられる。以下の説明では、薄膜パターンを単に「パターン」と呼ぶ。基材および基材上の膜をまとめて「ウエブ9」または「検査対象」と呼ぶ。ウエブ9は、静電容量型のタッチパネルの製造に用いられる。
【0021】
パターン検査装置1は、ウエブ9を搬送する搬送機構11と、膜厚計12と、画像取得部13とを備え、後述の全体制御部や検査部等をさらに備える。搬送機構11、膜厚計12および画像取得部13は、パターン検査装置1に含まれる検査画像取得装置10に対応する。搬送機構11は、図1の右側に位置する供給部111と、左側に位置する回収部112とを備える。供給部111は、検査前のウエブ9をロール91として支持し、左方向へとウエブ9を繰り出す。回収部112は、検査後のウエブ9をロール92として支持し、ウエブ9を回収する。
【0022】
膜厚計12および画像取得部13は、供給部111から回収部112に向かってこの順で配置される。膜厚計12は、光干渉式の分光膜厚計であり、測定光をウエブ9に照射し、反射光のスペクトルを取得する。予め設定された膜構造を前提として、計算上の各層の膜厚を変化させ、計算により求められる分光スペクトルを測定により取得された分光スペクトルにフィッティングすることにより各層の膜厚が求められる。
【0023】
図2は、画像取得部13の正面図であり、図3は平面図であり、図4は背面図である。画像取得部13は、ウエブ9上の撮像領域90に向かって光を出射する光照射部131と、撮像領域90からの反射光を受光するラインセンサ132と、光照射部131による光の照射角およびラインセンサ132による検出角を変更する角度変更機構133とを備える。画像取得部13には搬送機構11の一部が含まれると捉えられてもよい。ここで、照射角とは、光照射部131から撮像領域90に至る光軸J1とウエブ9の法線Nとのなす角θ1である。検出角とは、撮像領域90からラインセンサ132に至る光軸J2と法線Nとのなす角θ2である。
【0024】
光照射部131は、パターンに対して透過性を有する波長の光を出射する。光は、少なくとも線状の撮像領域90に照射される。光照射部131は、ウエブ9の搬送方向および上下方向に垂直な方向に配列された複数のLEDと、LEDからの光を均一化して撮像領域90へと導く光学系とを備える。ラインセンサ132は、1次元の撮像素子と、撮像領域90と撮像素子の受光面とを光学的に共役とする光学系とを備える。ウエブ9は、搬送機構11により、撮像領域90と交差する方向に搬送される。すなわち、搬送機構11はウエブ9の基材を撮像領域90に対して相対的に移動する移動機構である。本実施の形態では、ウエブ9は撮像領域90に対して垂直な方向に搬送されるが、撮像領域90は搬送方向に対して傾斜してもよい。
【0025】
なお、以下の説明では、必要に応じて基材とパターンとを区別して説明するが、検査対象(ウエブ9)の大部分は基材であることから、検査対象の取り扱い等に関しては、検査対象と基材とは厳密に区別することなく説明を行っている。
【0026】
角度変更機構133は、照射角θ1と検出角θ2とを等しく維持しつつ照射角θ1および検出角θ2を変更する。したがって、以下の説明における検出角の大きさは照射角の大きさでもあり、照射角の大きさは検出角の大きさでもある。光照射部131およびラインセンサ132は、角度変更機構133を介して、ベース壁134に支持される。ベース壁134は、搬送方向および上下方向に平行な板部材である。
【0027】
ベース壁134には、撮像領域90を中心とする円弧状の第1開口201および第2開口202が設けられる。第1開口201には光照射部131を支持する第1支持部21が挿入される。第2開口202にはラインセンサ132を支持する第2支持部22が挿入される。第1支持部21および第2支持部22は角度変更機構133の一部である。角度変更機構133は、さらに、光照射部131を移動させるための第1ガイド部231、第1モータ241、第1ラック251、並びに、ラインセンサ132を移動させるための第2ガイド部232、第2モータ242、第2ラック252を備える。
【0028】
第1ガイド部231は、第1開口201に沿ってベース壁134の光照射部131側に設けられ、撮像領域90を中心とする円周方向に光照射部131の移動を案内する。第1支持部21の移動体211は、第1ガイド部231に沿って移動する。第1支持部21はベース壁134の光照射部131とは反対側に支持板212をさらに備え、第1モータ241は支持板212に支持される。第1ラック251は、第1開口201に沿ってベース壁134の光照射部131とは反対側に設けられる。第1ラック251は第1モータ241の出力軸に設けられたピニオンギアと歯合し、駆動力を第1支持部21に与え、光照射部131を移動させる。
【0029】
ラインセンサ132を移動させる機構は、光照射部131を移動させる機構と同様である。すなわち、第2ガイド部232は、第2開口202に沿ってベース壁134のラインセンサ132側に設けられ、撮像領域90を中心とする円周方向にラインセンサ132の移動を案内する。第2支持部22の移動体221は、第2ガイド部232に沿って移動する。第2支持部22はベース壁134のラインセンサ132とは反対側に支持板222をさらに備え、第2モータ242は支持板222に支持される。第2ラック252は、第2開口202に沿ってベース壁134のラインセンサ132とは反対側に設けられる。第2ラック252は第2モータ242の出力軸に設けられたピニオンギアと歯合し、駆動力を第2支持部22に与え、ラインセンサ132を移動させる。
【0030】
図5は、パターン検査装置1の機能構成を示すブロック図である。破線にて囲む構成は、図1に示す構成である。パターン検査装置1は、膜厚計12からの出力が入力されるプロファイル取得部31、プロファイル取得部31にて求められた後述のプロファイルが入力される角度決定部32、全体を制御する全体制御部30、ラインセンサ132からの出力が入力される画像記憶部33、検査部34、および、検査結果を操作者や他の装置に出力する出力部35を備える。プロファイル取得部31、角度決定部32、画像記憶部33および全体制御部30は、検査画像取得装置10の一部である。
【0031】
図6は、パターン検査装置1の動作の流れ図である。パターン検査装置1では、まず、搬送機構11が制御されることにより、ウエブ9においてパターンが存在する領域が膜厚計12の下方に配置され、膜厚計12により各層の膜厚が取得される。さらに、搬送機構11が制御されることにより、パターンの周囲の領域である背景の領域が膜厚計12の下方に配置され、背景の領域においても各層の膜厚が取得される(ステップS11)。なお、パターンが存在する領域のみにおいて各層の膜厚が取得され、これらの膜厚から背景における各層の膜厚が推定されてもよい。
【0032】
膜厚の測定結果はプロファイル取得部31に入力される。プロファイル取得部31では、基材上における層構造および各層の膜厚に基づいて、(照射角および)検出角とコントラストとの関係を示すプロファイルが演算により求められる(ステップS12)。図7は取得されるプロファイルを例示する図である。実線811は厚さ30nmの透明電極パターン上に厚さ900nmの透明膜を形成した場合の検出角とコントラストとの関係を示す。背景では厚さ900nmの透明膜のみが存在するものとしている。照射光の波長は570nmである。
【0033】
ここで、コントラストとは、基材上にパターンを含む多層膜が存在する場合にラインセンサ132に入射する光の強度と、基材上に上記多層膜からパターンを除いた膜のみが存在する場合にラインセンサ132に入射する光の強度との比である。換言すれば、コントラストは、パターンと背景との間の明度比(=(パターン領域の明度)/(背景領域の明度))である。明度はその波長における反射率に対応し、明度比は反射率比でもある。もちろん、コントラストとしては、明度や反射率の差等の他の値が利用されてもよい。
【0034】
図7において、通常、コントラストが0.5以下または2以上の場合に良好なパターン検査が可能となる。実線811の場合、検出角がおよそ0°以上28°以下、または、40°以上45°以下の場合に、適切な検査画像が取得される。ただし、45°は図7における形式的な上限にすぎない。なお、コントラストが0.77以下または1.3以上であれば、条件によっては検査が可能である。好ましくは、コントラストは、0.67以下または1.5以上である。また、「コントラストが高い」とはコントラストが良好であることを指し、明暗がはっきり区別できる状態を意味する。コントラストが高いことは、必ずしもコントラストの値が大きいことを意味しない。
【0035】
図7の破線812は厚さ30nmの透明電極パターン上に厚さ960nmの透明膜を形成した場合の検出角とコントラストとの関係を示す。背景では厚さ960nmの透明膜のみが存在するものとしている。一点鎖線813は厚さ30nmの透明電極パターン上に厚さ1000nmの透明膜を形成した場合の検出角とコントラストとの関係を示す。背景では厚さ1000nmの透明膜のみが存在するものとしている。照射光の波長は570nmである。曲線811〜813にて示すように、透明膜の厚さが変化することにより、コントラストが高い検査画像が取得される検出角が大きく変化することが判る。
【0036】
すなわち、検出角を変化させると透明な各層を経由する光の光路長が変化して光の干渉状態が変化し、これにより、特定の検出角では高いコントラストが得られない場合であっても、波長を変えることなく検出角を変化させることにより、高いコントラストを得ることが可能となる。さらに換言すれば、検出角を変化させることにより、白色光源および多数のフィルタを用いて多数の波長から波長を選択してパターン検査を実行することと同等の検査が実現される。
【0037】
角度決定部32では、取得されたプロファイルに基づいて、照射角および検出角の設定すべき角度(以下、「設定角度」という。)が決定される(ステップS13)。設定角度の決定では、光照射部131およびラインセンサ132の可動範囲や他の検査条件が考慮される。設定角度は全体制御部30へと入力され、全体制御部30が角度変更機構133を制御することにより、照射角および検出角が設定角度となる(ステップS14)。
【0038】
上記準備作業が完了すると、光照射部131からの光の出射が開始され、搬送機構11によるウエブ9の搬送が開始される(ステップS15)。ラインセンサ132では、線状の撮像領域90のライン画像が高速に繰り返し取得される。これにより、画像記憶部33にパターンを示す2次元の画像データである検査画像データ331が取得される(ステップS16)。
【0039】
一方、画像記憶部33には、基準となる参照画像データ332も記憶されている。検査画像データ331および参照画像データ332は、検査部34へと送られ、検査部34にて両者を比較することにより、欠陥の有無が判定される(ステップS17)。ステップS16およびS17は、ウエブ9が一定の距離だけ搬送される毎に繰り返し実行され、ウエブ9に対する全ての検査が完了すると、光の照射およびウエブ9の搬送が停止され、検査が終了する(ステップS18)。
【0040】
以上に説明したように、パターン検査装置1では、撮像領域90に照射される光の波長を変更することなく、パターンと背景との間のコントラストが高い検査画像を取得することができる。これにより、波長を変更するための複雑な構造や多波長の光に対応した光学系の設計や煩雑な調整が不要となり、検査画像取得装置10およびパターン検査装置1の製造コストを削減することができる。さらに、例えば、感光性のレジストがパターン上の層に含まれる場合等のように、使用できない波長の光を避けたパターン検査を容易に行うことができる。
【0041】
また、プロファイル取得部31がプロファイルを取得するため、角度決定部32にて最も好ましい角度を容易に決定することができる。膜厚計12を用いることによりプロファイルを速やかに取得することができ、効率よく検査を行うことができる。
【0042】
図8は、パターンの膜厚が薄い場合のプロファイルを例示する図である。実線821は、30nmの透明電極膜上に650nmの透明膜を形成した場合のプロファイルを示す。長い破線822、短い破線823、一点鎖線824は、それぞれ透明電極膜の厚さを20nm、10nm、5nmに変更した場合のプロファイルを示し、透明膜の厚さは650nmである。背景では650nmの透明膜のみが存在するものとしており、以下の類似の図においても同様である。
【0043】
図8に示すように、実用上は、パターンの厚さは10nm以上であることが好ましい。また、透明電極にてパターンが形成される場合、パターンの厚さは、通常、100nm以下である。異なる膜種により透明なパターンが形成される場合でも、パターンの厚さは、通常、2000nm以下である。パターンには種々の材料が適用可能であり、例えば、クロムの薄膜でもよい。
【0044】
図9は画像取得部13の他の例を示す正面図である。図9に示す画像取得部13では、撮像領域90とラインセンサ132との間に偏光子136が配置される。これにより、ラインセンサ132にはウエブ9からの反射光のうち、p偏光光のみが入射する。パターン検査装置1の他の構成は図1と同様である。
【0045】
図9の画像取得部13を含むパターン検査装置1では、プロファイル取得部31にてp偏光光に関するプロファイルが取得される。すなわち、パターンが形成された領域からのp偏光光の強度と背景からのp偏光光の強度との比であるコントラストが検出角に依存して変化する様子が、プロファイルとして取得される。
【0046】
図10.A、図10.Bおよび図10.Cは、それぞれ厚さ30nmの透明電極パターン上に厚さ900nm、960nmおよび1000nmの透明膜を形成した場合のプロファイルを示す。光の波長は570nmである。実線841、843、845はp偏光光によるプロファイルを示し、破線842、844、846はs偏光光によるプロファイルを示す。これれらのプロファイルから、図10.Bおよび図10.Cに示す膜構造では、p偏光光を利用すると、偏光光を利用しない場合に比べてコントラストが高い検査画像が取得可能であることが判る。また、透明膜の厚さによって好ましい検出角が大きく変化することも判る。
【0047】
パターン検査装置1では、p偏光光のプロファイルに基づいて照射角および検出角が決定される。そして、p偏光光をラインセンサ132にて受光することにより、コントラストが高い画像を取得し、パターン検査の精度が向上される。なお、s偏光光を受光する方がコントラストが高い検査画像が取得される場合、ラインセンサ132にてs偏光光を受光するための偏光子136が設けられる。偏光光の利用は、パターンが非常に薄い場合に特に適している。
【0048】
図11.A、図11.B、図11.Cおよび図11.Dは、それぞれ30nm、20nm、10nmおよび5nmの厚さの透明電極パターンによるプロファイルを示す。光の波長は570nmである。実線851、853、855、857は、p偏光光によるプロファイルを示し、破線852、854、856、858は、s偏光光によるプロファイルを示す。これらのプロファイルにおいても、p偏光光を利用することにより、偏光光を使用しない場合よりもコントラストが高い検査画像を取得することが可能であることが判る。また、実用上、パターンの膜厚が10nm以上である場合に、コントラストを利用した検査が可能であることが判る。一般的に、パターンが薄い場合、検出角を大きくすることにより高いコントラストを得ることができる。
【0049】
図12は、第2の実施の形態に係るパターン検査装置1のプロファイル取得部31の周辺の機能構成を示す図である。第2の実施の形態ではパターン検査装置1から膜厚計12が省かれる。他の構成は第1の実施の形態と同様であり、以下、同様の構成には同符号を付す。
【0050】
プロファイル取得部31は、角度変更機構133を制御し、ラインセンサ132からの信号が入力される。プロファイルが取得される際には、まず、撮像領域90にパターンおよび背景が存在するように搬送機構11がウエブ9の位置決めを行う。次に、プロファイル取得部31が照射角および検出角を変更しつつ、ラインセンサ132が撮像領域90のライン画像を繰り返し取得する。プロファイル取得部31では、ラインセンサ132にてライン画像が取得される毎に、パターンの領域からの光強度と背景の領域からの光強度との比がコントラストとして求められる。照射角および検出角は等しく維持されたまま最小角から最大角まで変更される。これにより、検出角とコントラストとの関係を示すプロファイルが取得される(図13:ステップS21)。
【0051】
取得されたプロファイルは角度決定部32へと送られ、設定角度が決定される(図6:ステップS13)。以後、第1の実施の形態と同様の動作により、パターンの検査が実行される。
【0052】
第2の実施の形態においても、撮像領域90に照射される光の波長を変更することなく、パターンと背景との間のコントラストが高い検査画像を取得することができる。これにより、検査画像取得装置10およびパターン検査装置1の製造コストを削減することができる。さらに、膜厚計が省かれるため、検査画像取得装置10およびパターン検査装置1の製造コストをさらに削減することができる。
【0053】
図14は、第3の実施の形態に係るパターン検査装置1aの検査画像取得装置10aを示す図である。他の構成は図5と同様である。
【0054】
パターン検査装置1aは、搬送機構11aと、膜厚計12と、画像取得部13とを備え、搬送機構11aの構造および画像取得部13の一部が図1と異なるという点を除いて第1の実施の形態と同様である。また、検査対象は、透明電極膜や透明膜等が形成されたガラス基板9aである。
【0055】
搬送機構11aは、ガラス基板9aを上面上に保持するステージ41と、ステージ41の左右方向への移動を案内するガイドレール42と、モータ43と、モータ43の駆動力を伝達する図示省略の伝達機構とを備える。搬送機構11aはガラス基板9aの主要部である基材を撮像領域90に対して相対的に移動する移動機構である。画像取得部13には、撮像領域90とラインセンサ132との間に偏光子136が配置され、光軸を中心として偏光子136を回転する回転機構137がさらに設けられる。回転機構137は、偏光子136による偏光方向を変更する偏光切替機構である。
【0056】
検査が行われる際には、ステージ41上に検査対象であるガラス基板9aが保持され、二点鎖線にて示すように膜厚計12の下方にガラス基板9aが配置される。そして、ガラス基板9aの基材上の各層の膜厚が取得される(図6:ステップS11)。続いて、プロファイル取得部31が、膜厚計12の測定結果に基づいて、プロファイルとして、p偏光光によるパターンと背景との間の第1コントラストを示す第1プロファイルと、s偏光光によるパターンと背景との間の第2コントラストを示す第2プロファイルとを取得する(ステップS12)。
【0057】
角度決定部32は、第1コントラストと第2コントラストとの積を求め、この積が1から大きく異なる角度を設定角度として決定する(ステップS13)。この手法は、第1コントラストおよび第2コントラストのいずれもが1に近いが、積が1から比較的異なる場合に適している。
【0058】
なお、実質的に第1コントラストおよび第2コントラストの積が求められるのであれば、厳密な意味で第1プロファイルおよび第2プロファイルが準備される必要はない。例えば、パターンにおけるp偏光光による明度とs偏光光による明度との積と、背景におけるp偏光光による明度とs偏光光による明度との積との比を求めることにより、第1コントラストと第2コントラストとの積に相当する値が求められてもよい。このように、プロファイル取得部31と角度変更機構133とは厳密に区別可能な機能である必要はない。
【0059】
照射角および検出角が設定角度に設定されと(ステップS14)、光の照射およびステージ41の移動が開始され、画像取得部13によりp偏光光による第1検査画像が取得される。さらに、回転機構137により偏光子136が回転され、光の照射およびステージ41の移動が再度行われ、s偏光光による第2検査画像が取得される(ステップS15,S16)。
【0060】
検査部34では、第1検査画像の各画素の値と第2検査画像の対応する画素の値との積が求められ、積を画素値として有する画像に基づいてパターン検査が実行される(ステップS17)。パターン検査装置1aでは、p偏光光の強度とs偏光光の強度との積を用いて検査が行われるため、パターンと背景との間でこの積の差が大きい場合に適切な検査が実現される。また、種類の異なる2つの画像が利用されるため、検査の信頼性も向上する。パターン検査装置1aにおいても、光源の波長を切り替える機構が不要であるため、検査画像取得装置10aおよびパターン検査装置1aの製造コストを削減することができる。
【0061】
パターン検査装置1aでは、第1の実施の形態と同様に偏光子136を設けることなく検査が行われてもよく、p偏光光またはs偏光光のみを用いて検査が行われてもよい。また、膜厚計12が省略され、図13に示す動作が実行されてもよい。撮像領域90の長さに対してガラス基板9aの幅が大きい場合は、搬送機構11aにステージ41を図14の紙面に垂直な方向に移動する機構が追加され、ガラス基板9aを紙面に垂直な方向に移動して画像の取得および検査が繰り返される。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0063】
検査対象の基材は、フィルムやガラス基板には限定されず、樹脂板等の他の材料により形成されたものであってよい。基材上に形成される膜構造は、既述のように様々なものであってよく、通常、上記実施の形態にて例示したものよりも複雑な構造を有する。検査対象となるパターンは1種類には限定されず、複数種類であってもよい。この場合、各検査対象のパターンの検査の際に、このパターンに重なる他のパターンは、背景として扱われる。
【0064】
上記実施の形態では、背景は1種類であるものとして説明したが、背景は1種類には限定されない。背景が複数種類の場合、各背景に関してプロファイルが求められ、いずれの背景に対してもコントラストが高くなる照射角および検出角が角度決定部32にて決定される。
【0065】
薄膜パターンの組成は、照射光に対してある程度の透過性を有するのであれば、他の材料にて形成されたものであってよく、必ずしも可視光に対して透明である必要はない。パターンは透明電極には限定されず、他の用途のパターンであってもよい。ただし、パターン検査装置の用途としては、可視光を照射しても影ができない透明電極の検査に特に適している。
【0066】
基材を撮像領域に対して相対的に移動する移動機構は、基材を固定し、画像取得部13を移動する機構であってもよい。角度変更機構133は、照射角および検出角を個別に変更する機構ではなく、両角度を連動させる機構であってもよい。角度変更機構133では照射角および検出角は連続的に変化する必要はなく、例えば、数段階にのみ変更可能であってもよい。また、角度変更機構133は手動で角度を変更するものでもよい。図14では、偏光切替機構として回転機構137が設けられるが、偏光方向が異なる2つの偏光子を入れ替える機構が偏光切替機構として設けられてもよい。
【0067】
光照射部131から出射される光の波長は、単一には限定されず、複数の波長の光が選択的に出射可能であってもよい。光源にはLEDではなく、LDが設けられてもよい。さらに、ハロゲンランプ等のランプとフィルタとの組み合わせが光源として設けられてもよい。膜厚計12は、分光エリプソメータであってもよい。
【0068】
検査対象における膜構造および各層の膜厚が既知であれば、これらの情報が操作者によりプロファイル取得部31に直接入力され、膜厚計12が省かれてもよい。さらには、プロファイル取得部31および角度決定部32が省かれ、別途求められた照射角および検出角が利用されてもよい。また、上記実施の形態にて説明したパターン検査装置1,1aから検査部34が省かれ、検査画像取得装置10,10aのみの機能が利用されてもよい。検査部34としては様々なものが利用可能であり、必ずしも参照画像との比較により検査が実行される必要はない。
【0069】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0070】
1,1a パターン検査装置
9 ウエブ
9a ガラス基板
10,10a 検査画像取得装置
11,11a 搬送機構
12 膜厚計
31 プロファイル取得部
32 角度決定部
34 検査部
90 撮像領域
131 光照射部
132 ラインセンサ
133 角度変更機構
136 偏光子
137 回転機構
331 検査画像データ
J1,J2 光軸
S13〜S15 ステップ
θ1 照射角
θ2 検出角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された薄膜パターンの検査に用いられる検査画像を取得する検査画像取得装置であって、
前記薄膜パターンに対して透過性を有する波長の光を出射する光照射部と、
前記光が照射される線状の撮像領域からの光を受光するラインセンサと、
前記基材を前記撮像領域と交差する方向に前記撮像領域に対して相対的に移動する移動機構と、
前記光照射部から前記撮像領域に至る光軸と前記基材の法線とのなす照射角と、前記撮像領域から前記ラインセンサに至る光軸と前記法線とのなす検出角とを等しく維持しつつ前記照射角および前記検出角を変更する角度変更機構と、
を備えることを特徴とする検査画像取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査画像取得装置であって、
前記照射角および前記検出角と、前記薄膜パターンと背景との間のコントラストとの関係を示すプロファイルを取得するプロファイル取得部と、
前記プロファイルから前記照射角および前記検出角の設定角度を求める角度決定部と、
をさらに備えることを特徴とする検査画像取得装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査画像取得装置であって、
前記プロファイル取得部が、前記基材上における層構造および各層の膜厚に基づいて、前記プロファイルを求めることを特徴とする検査画像取得装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査画像取得装置であって、
前記各層の膜厚を求める膜厚計をさらに備え、
前記プロファイル取得部が、前記膜厚計からの出力に基づいて前記プロファイルを求めることを特徴とする検査画像取得装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の検査画像取得装置であって、
前記撮像領域と前記ラインセンサとの間に配置された偏光子をさらに備えることを特徴とする検査画像取得装置。
【請求項6】
請求項2ないし4のいずれかに記載の検査画像取得装置であって、
前記撮像領域と前記ラインセンサとの間に配置された偏光子と、
前記偏光子による偏光方向を変更する偏光切替機構と、
をさらに備え、
前記プロファイル取得部が、前記プロファイルとして、p偏光光による前記薄膜パターンと前記背景との間の第1コントラストを示す第1プロファイルと、s偏光光による前記薄膜パターンと前記背景との間の第2コントラストを示す第2プロファイルとを取得し、
前記角度決定部が、前記第1コントラストと前記第2コントラストとの積を用いて前記設定角度を求め、
前記ラインセンサが、前記検査画像として、p偏光光による第1検査画像と、s偏光光による第2検査画像とを取得することを特徴とする検査画像取得装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の検査画像取得装置であって、
前記薄膜パターンの膜厚が、10nm以上2000nm以下であることを特徴とする検査画像取得装置。
【請求項8】
基材上に形成された薄膜パターンを検査するパターン検査装置であって、
請求項1ないし7のいずれかに記載の検査画像取得装置と、
前記検査画像取得装置にて取得された検査画像に基づいて前記薄膜パターンの検査を実行する検査部と、
を備えることを特徴とするパターン検査装置。
【請求項9】
基材上に形成された薄膜パターンの検査に用いられる検査画像を取得する検査画像取得方法であって、
前記薄膜パターンに対して透過性を有する波長の光を出射する光照射部から線状の撮像領域に至る光軸と前記基材の法線とのなす照射角の設定角度を求める工程と、
前記照射角を前記設定角度に設定し、前記撮像領域からラインセンサに至る光軸と前記法線とのなす検出角も前記設定角度に設定する工程と、
前記基材を前記撮像領域と交差する方向に前記撮像領域に対して相対的に移動する工程と、
を備えることを特徴とする検査画像取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10.A】
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【図10.B】
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【図10.C】
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【図11.A】
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【図11.B】
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【図11.C】
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【図11.D】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−251808(P2012−251808A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123071(P2011−123071)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】