説明

検査装置、他の手術台、搬送装置と連係する手術台

【課題】 検査装置で要処置箇所が発見された場合でも、天板間の角度を変更もしくは調整して対応できる手術台を提供する。
【解決手段】 背板(8a)、腰板(8b)及び脚板(8c)に分割され、チェーン(30,35,40)により関節接続された3枚天板のそれぞれが手術台フレーム1の背板、腰板及び脚板の各部の動作に追従するとともに、天板分割部の少なくとも一方の側と縦方向にスライド可能に連結(15,22)する。これらのチェーン(30,35,40)は、検査の障害にならない構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、他の手術台、患者の搬送装置等と連係する手術台に関するものであり、さらに詳しく述べるならば、MRI装置、X線CTアンギオ装置、CT装置などの検査装置により患者の処置状態を観察し、その結果に基づいてさらに処置をすることができる手術台装置に関するものである。同様に、一つの手術台で手術後、特化した他の手術台に患者を搬送し、あるいは手術後患者を搬送装置に引き渡し、病床まで送るように何らかの装置と連係する手術台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手術台から離れた場所にある検査装置と連係するように構成した手術台は、特許文献1、特開2000−232969号公報にて公知であり、この手術台においては、患者を載せた1枚天板を手術台からMRI検査装置にスライドさせて検査を行っている。
【0003】
さらに、連係手術台ではない一般の手術台の従来技術も説明する。
特許文献2、特開2004−194682号公報に記載した手術台は、コラムに備えられたモーターにより縦方向にスライドするテーブルに患者を載せ、テーブルの一部をX線透過可能な材料より構成することにより、上下からX線撮影できる手術台に関する。この特許文献では、X線透過領域を拡大するために、油圧シリンダー配置位置に着目し、テーブルのストロークを例えば2分割し、分割数に応じた本数、即ち2本の液圧シリンダーを平行に配置することにより、ストロークの倍距離往復スライド可能とする。したがって、この手術台は同じ手術台の領域で検査を行うものであり、場所的に離れた検査装置と連係するものではない。なお、この特許文献には、手術台の天板を互いに関節を介して連結する腰板、脚板、背板の3枚とする分割天板の記載がある。
【0004】
特許文献3、特開2003−305091号公報にて提案された手術台では、腰板とその前後の分割天板を関節接続し、腰板の空胴部に設けられた駆動手段により脚板及び背板を関節軸の周りに回動し、さらに背板と脚板の間は着脱自在に連結している。ここで示された構造では天板の下方に駆動手段などが配置されているから、これらがX線撮影を妨害し、MRI装置では磁気発生を起こし、さらに他の手術台に移動する場合の負荷を高める。また、分割天板を関節接続する歯車は摩滅により発生する金属粉末が天板に付着して検査精度に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−232969号公報
【特許文献2】特開2004−194682号公報
【特許文献3】特開2003−305091号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】瑞穂医科工業株式会社カタログ、TABLE MODEL MST-7200シリーズ、2003年9月発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来技術のうち、他の検査装置などと連係することを開示したものは特許文献1のみである。但し、特許文献1で提案されている1枚天板では、天板間の角度を変更して任意の箇所を手術できないので、MRI装置で要処置箇所が発見された場合でも、手術領域に戻った際に天板間の角度を変更もしくは調整することはできない。さらに、分割天板を折り曲げた状態で手術を行ない、これを伸展して病床まで患者を運ぶなどといった臨機応変の対応をとることもできない。
特許文献2,3では、患者を支持した天板を術者が検査装置に移動させ、また手術領域に復帰させることは可能であるが、天板の付帯機構がかなりの重量となるために、術者及び補助者の負担を考えると極めて困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、MRI装置、X線CTアンギオ装置、CT装置などの検査装置や、他の手術台、搬送装置などと連係する手術台において、より確実に検査結果を手術に反映することができ、さらに検査装置などと手術領域の間の移動に伴う機械的負荷に耐えることができる手術台を提供することを目的とする。
【0009】
本発明に係る、一の手術台と、検査装置、他の手術台、搬送装置等(以下「検査装置等」と称する)の何れかとの間で移動させて連係する第1の手術台は、関節接続された前記一の手術台フレームの背板、腰板及び脚板の各部の動作に追従するように、該手術台フレームに坦持された、背板、腰板及び脚板よりなる分割天板を関節接続する蝶板プレートを、前記検査装置による検査の障害にならないように、且つ天板分割部の少なくとも一方の側と縦方向にスライド可能に連結するとともに、前記一の手術台フレームから分離された分割天板を移動させる搬送器を付設したことを特徴とする。
本発明に係る、患者を支持する天板を一の手術台と、検査装置、他の手術台、搬送装置等(以下「検査装置等」と称する)との間で移動させて連係する第2の手術台は、関節接続された一の手術台フレームの背板、腰板及び脚板の各部の動作に追従するように、該手術台フレームに坦持された、背板、腰板及び脚板よりなる分割天板を関節接続するチェーンを、前記検査の障害にならないように、且つ天板分割部の少なくとも一方の側と縦方向にスライド可能に連結するとともに、前記一の手術台フレームから分離された分割天板を移動させる搬送器を付設したことを特徴とする。
以下、検査装置の代表例であるMRI装置と連係する手術台の例を主に説明する。
【0010】
図1は、MRI装置及び手術台ならびにこれらの周辺装置を概念的に示している。図中、1は手術台、2は患者、3,4は検査装置、他の手術台もしくは搬送装置、5は手術台フレームを支持し、駆動する通常コラムと称される手段、8は天板である。
手術台1の台車6に装着された支持・駆動手段5は、天板8を支持するフレームの昇降、紙面に直交する軸及び平行な軸の周りの回動運動を行う。さらに、手術台1のフレームは、背板、腰板及び脚板に分割されており、それぞれが独立して分割天板間の軸の周りを枢動する関節構造をもつことにより、仰臥位、半側仰臥位、半坐位、腰臥位、側臥位、コンコルド体位、縫合位、ジャックナイフ体位などをとりうる(非特許文献1、瑞穂医科工業株式会社カタログ、TABLE MODEL MST-7200シリーズ、2003年9月発行)。
【0011】
続いて、本第1及び第2発明が最も特徴とする天板について説明する。
天板は、縦方向に、背板、腰板及び脚板に3分割されている。これらの分割天板は、手術台フレームに坦持されており、手術台フレームの各部を折り畳みもしくは屈曲し、あるいは伸展する動作に追従して種々のポジションをとる。即ち、手術台フレームに装着された駆動手段が手術台フレームを枢動させるが、天板8は手術台フレームに追随して運動する。したがって、天板8には駆動機構は設けられていず、軽量であるために、患者とともに天板8を検査装置3,4に移動することが容易である。さらに、天板8は手術台フレームに単に置かれているだけであり、補助的に簡単な位置ずれ防止ストッパーなどを併用することはあるが、手術後手術台フレームから分離され直ちに検査装置等に天板を移動させることができる。
【0012】
本発明においては、これら分割天板の間を蝶板プレート又はチェーンなどの関節接続構造で連結することにより、伸展・屈曲を可能にする。但し、特許文献2、3のような油圧シリンダーを用いた関節接続構造では、その構成材料である鉄などの磁性物質がMRI検査を妨げ、またX線を透過せずX線検査を妨げるおそれがある。よって、本発明の関節構造はチタン、ステンレス、強化プラスチックなどの非磁性材料から製作される。また、これらの材料からなる関節接続であっても、大型かつ/又は厚肉であると、接続部材がX線撮影の陰影を生じるために、小型かつ薄肉であることが必要である。厚さについては、この接続部材が天板の側面に配置される場合は、幅は特に問題にならないが、中央に配置される場合は、アルミニウム当量試験でアルミニウム当量として2mm以下が好ましい。シリンダーと同様な問題はモーター等の電気的駆動手段を利用した関節接続でも生じる。さらに、油圧シリンダーから漏れる油が分割天板に付着して検査精度を下げるおそれがある。よって、本発明の関節接続構造は上述したような検査障害をもたらさないこと、換言すると、非磁性、X線透過性、小型、機械・電気的駆動手段と非接続、圧力油を内蔵しないなどの要件を備えることが必要である。
【0013】
本発明の第1手術台で使用される蝶板プレートは、中心軸と管体との嵌め込み構造を要素としており、上記した関節接続構造の要件を満たしており、しかも摺動箇所が少なく、また摩滅粉は関節構造の外にほとんど漏れない。上記中心軸と同軸状管体にそれぞれプレートを固着し、プレートと分割天板を連結する。
【0014】
本発明の第2手術台で使用されるチェーンも上記した関節接続構造の要件を満たしており、しかも、ワイヤーなどと比べて屈曲が簡単であり、特定の方向にしか撓まないために、天板の折り畳みが容易である。但し、チェーンでは各駒が摺動し、微衝突をするために摩滅箇所が蝶板と比べて多くなるので、ステンレスなどについては窒化するなどの耐摩耗処理を行うことが望ましい。
【0015】
また、蝶板プレートもしくはチェーンの少なくとも一方の側は分割天板の縦方向にスライド可能に連結している。このために、屈曲、伸展の際に蝶板プレート等と天板が縦方向に相互にずれを起こして、天板及び患者にかかる荷重が緩和される。特に、手術台から検査装置に天板を搬送する場合は、一旦天板を手術台から搬送器に移すが、この際分割天板が僅かにスライドすると、手術直後の患者にかかる力を低く抑えることができる。また、天板自体にかかる応力も少なくなり、繰返し使用の際天板が変形することも抑えることができる。この天板の変形は天板の局部的厚さの微小変化をもたらし、同じX線検査装置で検査していてもX線透過量の変化をもたらし、検査結果の評価にも影響を与えることがあるので、連係手術台では重要である。
【0016】
また、本発明の分割天板は手術台フレームから分離されて、搬送装置により移動される。即ち、従来の手術台のように手術台と一緒に移動されるのではないので、術者及び補助者が搬送装置を押して所定の位置に簡単に移動することができる。また、搬送装置は検査の障害となるようなシリンダーなどは一切なく簡単なフレーム構造である。
【0017】
上述のところから蝶板プレート(チェーンも同じ)が天板に接続される方式は次の六通りである。なお、スライドしない連結部は周知のねじ、ボルトなどにより手術台フレームに固定する。
【0018】
【表1】

【0019】
上記スライド区分c、fの第1の手術台の実施態様を、図2〜4を参照して以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図2は伸展状態の天板全体を示し、図3は背板と腰板の間の連結部拡大図である。
図中、8は樹脂製もしくは木製の天板であり、これは背板8a、腰板8b、脚板8cに分割されており、4枚の蝶板プレート20により一体に連結されている。蝶板プレート20は2個以上あればよく、例えば、幅方向中央に1個、合計2個の蝶板プレートを使用してもよく、さらに背板8aと腰板8bの間は1個の蝶板プレート20を使用してもよい。
【0021】
なお、腰板8bと連結された蝶板プレート20aの一方の側は腰板8bの裏側に位置しており、図示されていない。各分割天板にはスロット15が縦方向に板厚を貫いて延在している。蝶板プレート20aの脚板側下面及び腰板側プレート20bの上面からは係合ピン22がそれぞれ上向き及び下向きにスロット15内に突出している。係合ピン22の先端にはスロット15の幅より大径の先端頭部23(図4)が固着されているので、係合ピン22は縦方向には移動中に先端頭部23と天板の間では摩擦が起り、伸展・屈曲時に天板から脱落しない。さらに蝶板プレート20と当接する天板には補強金属板17を接合して、摩耗を少なくしている。
【0022】
以上説明した図2〜4を参照した実施態様では、各分割天板に配置された蝶板プレートはスライド可能であるので、あらゆる手術台動作において、天板の伸展・屈曲と連動して、何れかの蝶板プレートがスライドする。
【0023】
さらに、本発明の最も好ましい実施態様によると、図3に示すように、縦方向のスロット15に対して直交方向に延在する退避スロット24を形成し、天板を検査装置に移動する際には、天板を水平ポジションに戻し、係合ピン22を退避スロット24に押進させ、スロット内で縦方向に拘束する。背板8a、脚板8cのスロットは、蝶板プレート20に覆われており一部しか見えないが、腰板側係合ピン22が退避スロット24で拘束されると、係合ピン22が背板8a、脚板8cでも拘束されるような位置に形成されている。したがって,手動により、蝶板プレート20を退避スロット24の位置まで縦方向に移動し、続いて、横方向に移動させて係合ピン22を退避スロット20に押し込むと、分割天板がロックされる。これらの操作は、患者を支えている分割天板を移動させるのではなく、蝶板プレートの移動により行うので極めて簡単である。このロック状態で天板を検査装置に移動し、また手術台に戻すと、移動中の天板の変形などが少なくなり、移動中に分割天板が衝突し、あるいは引き離されて手術位置を変形させることも避けることができる。
【0024】
図5〜8を参照して本発明の第2手術台の実施態様を説明する。
本発明の第2の手術台で関節接続構造に使用されるチェーンを構成する雌駒30及び雄駒35はそれぞれ図5及び6に示されている。これらの雌駒30及び雄駒35を一対の結合要素として、これを多数連結してチェーンを構成する。雌駒30は一対の駒本体31a,31bの間を連結部32で架橋したH形状を有しており、駒本体31a,31bには合計で4個のピン孔33a,33bを貫通させている。駒本体31a,31bの中間は雄駒が嵌入する間隙34となっている。
【0025】
一方、雄駒35は駒本体36の中心から突出片37を左右に突出させており、合計で2個のピン孔39が突出片37の両側に形成されている。雄駒35の嵌合部38が雌駒30の間隙34に入り込み、ピン孔34,39にピン(図示せず)が挿入されると、これら30,35はピンを中心として駒が枢動可能に接続される。この結合を所望の長さだけ繰返す。
【0026】
図7には、分割天板8a,8bは屈曲・伸展するとともに縦方向にスライドするようにチェーン40を分割天板8a,8bの溝42に組込んだ状態が示されている。チェーン40の一端には連結ロッド43を固定し、図示されない左側に設けられたばねによりチェーン40に張力を与えている。また、ばね張力を超える引張力が分割天板8a,8bに加えられると、ばねが伸びて天板がスライドする。
【0027】
上記したばね及びチェーンは両端において分割天板と回転可能な方式で連結されている。したがって、連結ロッド43を図7の状態から90°回転させて図9に示す状態にすると、チェーン40の向きも90°転換され、天板面内での動きだけが許容されるようになり、分割天板8a,8bは拘束される。
【0028】
なお、図5〜8では、第2手術台の実施例として、端部を有するチェーンの例を説明したが、通常の無終端チェーンを用いても同様に屈曲・伸展・スライドは可能である。
また、図3〜4の実施態様と図5〜8の実施態様を適宜組合わせて、蝶板プレート20のスライド構造をスロット15,ピン22に代えて、ばね接続にすることも可能である。即ち、蝶板プレートを天板溝内に設けたばねにより蝶板の一部と弾性的に接続する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上説明したように、本発明に係る手術台の天板は、検査装置、他の手術台、搬送装置などと手術台の間の移動が極めて簡単であり、迅速に行うことができる。
さらに、MRI検査装置などと連係する手術台では、手術台フレームのポジション変更が多くなるが、本発明の手術台では天板のスライドを利用して、天板の過負荷、変形、ガタなどを避けることができ、同時にポジション変更に伴う患者の姿勢変更の一部を天板のスライドで吸収できるので、上記したポジション変更に充分に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る検査装置と連係できる第1の手術台の一実施例を示す全体図である。
【図2】本発明の一実施例に係る天板の平面図である。
【図3】図2に示される天板の連結部の拡大図である。
【図4】スロットとピンの係合構造を示す図面である。
【図5】雌駒の図面である。
【図6】雄駒の図面である。
【図7】スライド状態の本発明第2の手術台を示す一部正面図である。
【図8】拘束状態の本発明第2の手術台を示す一部正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 手術台
8 天板
8a 背板
8b 腰板
8c 脚板
15 スロット
20 蝶板プレート
30 雌駒
35 雄駒
40 チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を支持する天板を一の手術台と、検査装置、他の手術台、搬送装置等(以下「検査装置等」と称する)との間で移動させて連係する手術台において、関節接続された一の手術台フレームの背板、腰板及び脚板の各部の動作に追従するように、該手術台フレームに坦持された、背板、腰板及び脚板よりなる分割天板を関節接続するチェーンを、前記検査の障害にならないように、且つ天板分割部の少なくとも一方の側と縦方向にスライド可能に連結するとともに、前記一の手術台フレームから分離された分割天板を移動させる搬送器を付設したことを特徴とする検査装置等と連係する手術台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−147794(P2011−147794A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43948(P2011−43948)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【分割の表示】特願2005−194674(P2005−194674)の分割
【原出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000193612)瑞穂医科工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】