説明

検査装置、印刷システムおよび印刷物の検査方法

【課題】印刷物の欠陥有無の判定を正しく行うことができる検査装置、印刷システムおよび印刷物の検査方法を提供する。
【解決手段】検査装置200は、複数の印刷物に対応する複数の元画像を画像IDと関連付けて格納する格納部250と、印刷物の画像形成に用いた元画像の画像IDを含む排紙画像情報を取得する取得部260と、画像形成装置100から排出された検査対象の印刷物の画像を読み取る読取部220と、格納部250に格納された複数の元画像のうち、検査対象の印刷物に対応する排紙画像情報に含まれる画像IDに関連付けられた元画像と、読取部220が読み取った読取画像とを比較して、検査対象の印刷物の欠陥有無を判定する判定部240とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物を検査する検査装置、印刷システムおよび印刷物の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置が生成した印刷物を検査する検査装置が知られている。画像形成装置は、元画像に基づいて印刷媒体に画像を形成することで印刷物を生成する。検査装置は、画像形成装置から排出された検査対象の印刷物から読取手段によって画像を読み取り、画像形成装置が印刷物の生成に用いた元画像と、読取手段が印刷物から読み取った読取画像とを比較することで、印刷物の欠陥有無を判定する。
【0003】
例えば、検査装置は、複数の印刷物に対応する複数の元画像を格納する画像バッファと、検査対象の印刷物に対応する元画像を展開する元画像用フレームメモリと、検査対象の印刷物の読取画像を展開する読取画像用フレームメモリとを備える。そして、画像バッファに格納された複数の元画像のうち、検査対象の印刷物に対応する元画像を元画像用フレームメモリにセットし、読取手段により検査対象の印刷物から読み取られた読取画像を読取画像用フレームメモリにセットして、両者の比較検査を行う。
【0004】
検査装置は、検査の過程における何らかの異常により、欠陥の無い正常な印刷物を欠陥有りと誤って判定してしまう場合がある。特許文献1には、検査の過程で生じたエラーの原因を簡便に究明できるようにするために、読取画像に対して施した補正処理に関する情報を読取画像に付加しておき、欠陥有りと判定された印刷物に対応する読取画像および元画像を、それらがどのジョブの何ページ目に対応するものであるかを示す情報と関連付けて登録することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検査装置において誤判定が生じる要因の1つとして、検査対象の印刷物に対応する元画像が元画像用フレームメモリに正しくセットされないことが挙げられる。例えば、画像バッファに格納された複数の元画像のうち、検査対象の印刷物に対応する元画像とは異なる元画像を元画像用フレームメモリにセットしてしまうと、印刷物の欠陥有無の判定を正しく行うことができない。
【0006】
元画像は、通常、画像形成装置がその元画像に基づいて印刷媒体に画像を形成する際に検査装置に送られて、検査装置の画像バッファに格納される。したがって、画像形成装置が元画像に基づいて印刷媒体に画像を形成する順番と、その元画像に対応する印刷物が画像形成装置から検査装置に排出される順番とが一致していれば、検査装置は、元画像を画像バッファに格納された順番で元画像用フレームメモリにセットすることで、印刷物の欠陥有無を正しく判定することができる。
【0007】
しかしながら、実際には、画像形成装置が元画像に基づいて印刷媒体に画像を形成する順番と、その元画像に対応する印刷物が画像形成装置から検査装置に排出される順番とが一致しない場合がある。例えば、複数ページの両面印刷を高速で行う場合、まず、連続して搬送される複数の印刷媒体の表面側に続けて画像を形成し、その後、表面側に画像が形成された印刷媒体が反転されると、この印刷媒体の裏面側への画像の形成と、表面側に画像が形成されていない印刷媒体の表面側への画像の形成とを交互に行うことがある。このような場合には、画像形成装置が元画像に基づいて印刷媒体に画像を形成する順番と、その元画像に対応する印刷物が画像形成装置から検査装置に排出される順番とが一致せず、画像バッファに格納された順番で元画像を元画像用フレームメモリにセットすると、印刷物の欠陥有無の判定を正しく行うことができない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、印刷物の欠陥有無の判定を正しく行うことができる検査装置、印刷システムおよび印刷物の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る検査装置は、画像形成装置が元画像に基づいて印刷媒体に画像を形成することで生成した印刷物を検査する検査装置であって、複数の前記印刷物に対応する複数の前記元画像を画像IDと関連付けて格納する格納手段と、前記画像形成装置から排出される前記印刷物の画像に関する排紙画像情報であって、少なくとも該印刷物に対応する前記元画像の画像IDを含む前記排紙画像情報を取得する取得手段と、前記画像形成装置から排出された検査対象の前記印刷物の画像を読み取る読取手段と、前記格納手段に格納された複数の前記元画像のうち、検査対象の前記印刷物に対応する前記排紙画像情報に含まれる画像IDに関連付けられた前記元画像と、前記読取手段が読み取った読取画像とを比較して、検査対象の前記印刷物の欠陥有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る印刷システムは、元画像に基づいて印刷媒体に画像を形成して印刷物を生成する画像形成装置と、前記画像形成装置が生成した前記印刷物を検査する検査装置と、を備える印刷システムであって、前記画像形成装置は、前記印刷物に対応する前記元画像を画像IDと関連付けて前記検査装置に転送する元画像転送手段と、排出する前記印刷物の画像に関する排紙画像情報であって、少なくとも該印刷物に対応する前記元画像の画像IDを含む前記排紙画像情報を、前記検査装置に転送する排紙画像情報転送手段と、を備え、前記検査装置は、前記元画像転送手段から転送された複数の前記元画像を画像IDと関連付けて格納する格納手段と、前記排紙画像情報転送手段から転送された前記排紙画像情報を取得する取得手段と、前記画像形成装置から排出された検査対象の前記印刷物の画像を読み取る読取手段と、前記格納手段に格納された複数の前記元画像のうち、検査対象の前記印刷物に対応する前記排紙画像情報に含まれる画像IDに関連付けられた前記元画像と、前記読取手段が読み取った読取画像とを比較して、検査対象の前記印刷物の欠陥有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る印刷物の検査方法は、画像形成装置が元画像に基づいて印刷媒体に画像を形成することで生成した印刷物を検査する検査装置により実行される印刷物の検査方法であって、前記検査装置の格納手段が、複数の前記印刷物に対応する複数の前記元画像を画像IDと関連付けて格納するステップと、前記検査装置の取得手段が、前記画像形成装置から排出される前記印刷物の画像に関する排紙画像情報であって、少なくとも該印刷物に対応する前記元画像の画像IDを含む前記排紙画像情報を取得するステップと、前記検査装置の読取手段が、前記画像形成装置から排出された検査対象の前記印刷物の画像を読み取るステップと、前記検査装置の判定手段が、前記格納手段に格納された複数の前記元画像のうち、検査対象の前記印刷物に対応する前記排紙画像情報に含まれる画像IDに関連付けられた前記元画像と、前記読取手段が読み取った読取画像とを比較して、検査対象の前記印刷物の欠陥有無を判定するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検査対象の印刷物に対応する排紙画像情報に含まれる画像IDに基づいて、格納手段に格納された複数の元画像のうち、検査対象の印刷物に対応する元画像を特定することができるので、印刷物の欠陥有無の判定を正しく行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施形態に係る印刷システムの概要を示す模式図である。
【図2】図2は、画像形成装置の概略構成を示す構成図である。
【図3】図3は、検査装置の概略構成を示す構成図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る検査装置の特徴的な構成を説明する説明図である。
【図5】図5は、検査装置の動作の概略を説明するフローチャートである。
【図6】図6は、排紙画像情報取得コマンドを説明する説明図である。
【図7】図7は、印刷物属性情報取得コマンドを説明する説明図である。
【図8】図8は、画像形成装置から検査装置にコマンドを転送するタイミングと検査装置の動作との関係を比較例として説明するタイミングチャートである。
【図9】図9は、画像形成装置から検査装置にコマンドを転送するタイミングと検査装置の動作との関係を説明するタイミングチャートである。
【図10】図10は、第2の実施形態に係る検査装置の特徴的な構成を説明する説明図である。
【図11】図11は、排紙画像情報取得コマンドを説明する説明図である。
【図12】図12は、第3の実施形態に係る検査装置の特徴的な構成を説明する説明図である。
【図13】図13は、排紙画像情報取得コマンドを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る検査装置、印刷システムおよび印刷物の検査方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る印刷システムの概要を示す模式図である。印刷システムは、印刷物を生成する画像形成装置100と、画像形成装置100が生成した印刷物を検査する検査装置200と、検査装置200により欠陥無しと判定された印刷物に対して後処理を行う後処理装置300とを備える。
【0016】
画像形成装置100は、元画像に基づいて、給紙トレイ110から給紙される印刷媒体に画像を形成し、印刷物を生成する。画像形成プロセスの方式は、例えば、電子写真方式やインクジェット記録方式などである。電子写真方式の場合は、元画像に応じた書き込み光を感光体に照射して静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーで現像してトナー像を生成する。このトナー像を直接、あるいは中間転写体を介して給紙トレイ110から給紙された印刷媒体に転写し、定着装置によりトナー像を印刷媒体に定着させて印刷物を生成する。インクジェット方式の場合は、元画像に基づいて印字ヘッドを駆動してインク滴を吐出し、給紙トレイ110から給紙された記録媒体に印字ヘッドから吐出したインク滴を付着させて印刷物を生成する。画像形成装置100により生成された印刷物は、検査装置200へと排出される。
【0017】
検査装置200は、画像形成装置100から排出された印刷物を下流側に搬送しながら印刷物の画像を読み取り、画像形成装置100が印刷物を生成する際に用いた元画像と、印刷物から読み取った読取画像とを比較することで、印刷物の欠陥有無を判定する。検査装置200は、欠陥有無の判定結果に応じて印刷物の排出経路を切り替える。欠陥有りと判定された印刷物は、欠陥排紙トレイ210に排出される。一方、欠陥無しと判定された印刷物は、後処理装置300へと排出される。
【0018】
後処理装置300は、検査装置200から排出された印刷物に対して、例えば、折り曲げ処理、ステープル処理、穴あけ処理など、指定された後処理を施す。後処理が施された印刷物は、印刷物排紙トレイ310に排出される。
【0019】
以上のような印刷システムでは、画像形成装置100により生成された印刷物のうち、検査装置200によって欠陥無しと判定された印刷物のみに対して、後処理装置300による後処理が施されて印刷物排紙トレイ310に排出される。したがって、最終的に得られる印刷物の品質を維持することができる。
【0020】
図2は、画像形成装置100の概略構成を示す構成図である。この画像形成装置100は、電子写真方式により印刷媒体に4色フルカラーの画像を形成する構成の画像形成装置であり、特に多数枚の印刷媒体を連続的に搬送して高速で印刷を行うプロダクション用途に適した画像形成装置である。この画像形成装置100は、図2に示すように、中間転写体としての転写ベルト109の走行方向(図中矢印B方向)に沿って配置された4つの画像形成ユニット101a,101b,101c,101dを備える。
【0021】
画像形成ユニット101aは、感光体としての感光ドラム102aと、ドラム帯電器103aと、露光装置104aと、現像器105aと、転写器106aと、クリーニング装置107aとを備えて構成されている。画像形成ユニット101b〜101dも、画像形成ユニット101aと同様に、感光ドラム102b〜102d、ドラム帯電器103b〜103d、露光装置104b〜104d、現像器105b〜105d、転写器106b〜106d、クリーニング装置107b〜107dを備えて構成されている。画像形成ユニット101a〜101dは、例えば、画像形成ユニット101aがイエロー、画像形成ユニット101bがマゼンダ、画像形成ユニット101cがシアン、画像形成ユニット101dがブラック、とそれぞれ異なる色の画像を形成する。
【0022】
感光ドラム102aは、画像形成時に図中矢印A方向に回転を始め、画像形成動作が終了するまで回転を続ける。感光ドラム102aが回転を開始すると、ドラム帯電器103aに高電圧が印加され、感光ドラム102aの表面に負の電荷が均一に帯電される。その後、帯電された感光ドラム102aの表面に、露光装置104aから元画像に応じて変調された書き込み光が照射され、感光ドラム102aに元画像に応じた静電潜像が形成される。そして、感光ドラム102aの回転により静電潜像が形成された部分が現像器105aと対向する位置に到達すると、現像器105aから負電荷に帯電したトナーが静電潜像へと引き付けられ、静電潜像がトナーにより現像されて感光ドラム102a上にトナー像が形成される。
【0023】
感光ドラム102a上に形成されたトナー像は、転写ベルト109を挟んで転写器106aと対向する位置に到達すると、転写器106aに印加された高電圧の作用によって転写ベルト109側に引きつけられ、図中矢印B方向に移動している転写ベルト109上に転写(一次転写)される。なお、転写ベルト109に転写されずに感光ドラム102a上に残留したトナーは、クリーニング装置107aにより清掃される。
【0024】
画像形成ユニット101aに続いて画像形成ユニット101bでも同様に画像形成動作が行われ、感光ドラム102b上に形成されたトナー像が、転写器106bに印加された高電圧の作用により転写ベルト109上に転写(一次転写)される。このとき、感光ドラム102b上に形成されたトナー像が転写器106bと対向する位置に到達するタイミングが、感光ドラム102aから転写ベルト109上に転写されたトナー像が転写ベルト109の移動により転写器106bの位置に到達するタイミングに合うように制御されることで、感光ドラム102aから転写されたトナー像と感光ドラム102bから転写されたトナー像とが転写ベルト109上で重ね合わされる。
【0025】
同様に、画像形成ユニット101cの感光ドラム102c上に形成されたトナー像と、画像形成ユニット101dの感光ドラム102d上に形成されたトナー像が順次転写ベルト109上に転写されることにより、転写ベルト109上にはフルカラーのトナー像が形成されることになる。
【0026】
一方、給紙トレイ110からは、印刷媒体が給紙される。給紙トレイ110から給紙された印刷媒体は、図中矢印H方向に搬送され、転写ベルト109上に形成されたフルカラーのトナー像と同期して用紙転写器111と対向する位置に到達する。そして、用紙転写器111に印加された高電圧の作用によって、転写ベルト109上に形成されたフルカラーのトナー像が印刷媒体上に転写(二次転写)される。なお、印刷媒体に転写されずに転写ベルト109上に残留したトナーは、ベルト清掃機構108によって清掃される。
【0027】
フルカラーのトナー像が転写された印刷媒体は定着装置112へと搬送される。そして、定着装置112によって熱および圧力が与えられることにより、印刷媒体上に転写されたフルカラーのトナー像が印刷媒体に定着する。その後、反転排紙を行わない片面印刷の場合は、トナー像が定着された印刷媒体が印刷物として、図中矢印L1で示す経路を通って検査装置200へと排出される。
【0028】
また、反転排紙や両面印刷を行う場合には、トナー像が形成された印刷媒体が図中矢印L2で示す経路を通って反転ローラ113に一旦引き込まれ、反転ローラ113が逆転することによって、反転した状態で送り出される。そして、反転排紙の場合には、反転した印刷媒体が印刷物として、図中矢印L3で示す経路を通って検査装置200へと排出される。また、両面印刷の場合には、反転した印刷媒体が図中矢印L4で示す経路を通って用紙転写器111と対向する位置に戻され、再びトナー像の転写が行われる。その後、定着装置112でトナー像の定着が行われ、検査装置200に印刷物として排出される。
【0029】
画像形成装置100の排出口には出口センサ115が設けられており、この出口センサ115により印刷物の排出が検知される。
【0030】
上述した画像形成装置100における一連の画像形成プロセスは、プリンタコントローラ120のプロセス制御部121によって制御される。プロセス制御部121は、印刷物を生成するためのジョブの設定内容に基づいて、画像形成ユニット101a〜101dの動作、印刷媒体の給紙や搬送、定着装置112の動作など、印刷物の生成に関わる一連の動作を統括的に制御する。
【0031】
また、本実施形態に係る画像形成装置100のプリンタコントローラ120は、上記のプロセス制御部121のほか、元画像転送部122と、排紙画像情報転送部123とを備える。
【0032】
元画像転送部122は、画像の形成に用いた元画像を、該元画像を識別するための画像IDと関連付けて検査装置200に転送する。元画像転送部122による元画像の転送は、例えば、露光装置104a〜104dから感光ドラム102a〜102dに対して元画像に応じて変調された書き込み光が照射され、元画像に応じた画像の書き込みが行われるタイミング(以下、画像形成開始時という。)に合わせて行われる。このとき、元画像転送部122は、転送の対象となる各元画像に対して画像IDを関連付けて検査装置200に転送する。
【0033】
画像IDは、例えば、ジョブの設定内容に応じてプロセス制御部121が予め決定し、元画像転送部122に伝達する。なお、画像IDは、すべての元画像に固有の情報である必要はない。つまり、画像IDは、本実施形態に係る印刷システムにおいて同時に処理が行われる複数の印刷物に対応する複数の元画像を各々識別できればよく、例えば、同時に処理される印刷物の最大数が10であれば、10種類の画像IDを用いればよい。
【0034】
排紙画像情報転送部123は、画像形成装置100から排出される印刷物の画像に関する排紙画像情報を検査装置200に転送する。排紙画像情報は、画像形成装置100から排出される印刷物ごとに、プロセス制御部121により生成されて排紙画像情報転送部123に伝達される。排紙画像情報転送部123は、印刷物が画像形成装置100から排出される順番に合わせて、それぞれの印刷物に対応する排紙画像情報を検査装置200に転送する。
【0035】
本実施形態の排紙画像情報は、対応する印刷物の生成に用いた元画像の画像IDを含む。印刷物が上面と下面のいずれか一方の面にのみ画像が形成された片面印刷の場合は、この印刷物に対応する排紙画像情報は、印刷物の一方の面の画像の形成に用いた元画像の画像IDを含む。印刷物が上面と下面の両方両面印刷の場合、この印刷部に対応する排紙画像情報は、印刷物の上面の画像の形成に用いた元画像の画像IDと、印刷物の下面の画像の形成に用いた元画像の画像IDとを含む。
【0036】
排紙画像情報転送部123による排紙画像情報の転送は、例えば、片面印刷の印刷物に対応する排紙画像情報については、印刷物の一方の面に対する画像形成開始時に行われ、両面印刷の印刷物に対応する排紙画像情報については、印刷物のすでに画像が形成された面とは逆側の面の画像形成開始時に行われる。したがって、排紙画像情報が検査装置200に転送される順番は、対応する印刷物が画像形成装置100から排出される順番と常に一致する。
【0037】
次に、検査装置200について説明する。図3は、検査装置200の概略構成を示す構成図である。まず、図3を参照して検査装置200の概要を説明する。
【0038】
画像形成装置100から排出された検査対象の印刷物は、搬送ローラ201によって検査装置200内を搬送される。検査装置200内を搬送される検査対象の印刷物は、読取部220の読取位置を通過する際に、読取部220により画像の読み取りが行われる。画像の読み取りが行われた検査対象の印刷物は、さらに下流側の切替部230へと搬送される。切替部230は、判定部240による印刷物の欠陥有無の判定結果に応じて動作し、欠陥無しと判定された印刷物を第1排出経路L11に導くとともに、欠陥有りと判定された印刷物を第2排出経路L12へと導く。欠陥無しと判定されて第1排出経路L11に導かれた印刷物は、第1排出ローラ202によって後処理装置300に排出される。一方、欠陥有りと判定されて第2排出経路L12に導かれた印刷物は、第2排出ローラ203によって、欠陥排紙トレイ210に排出される。
【0039】
判定部240は、読取手段220により読み取られた検査対象の印刷物の読取画像と、画像形成装置100から転送されて格納部250に格納された検査対象の印刷物に対応した元画像とを比較して、検査対象の印刷物の欠陥有無を判定する。このとき、判定部240は、画像形成装置200から転送されて取得部260に取得された排紙画像情報に含まれる画像IDに基づいて、格納部250に格納されている複数の元画像の中から、検査対象の印刷物に対応した元画像を特定し、読取画像との比較対象とする。これにより、検査対象の印刷物の欠陥有無を正しく判定することができる。
【0040】
次に、図4を参照して、検査装置200の具体的な構成例について説明する。図4は、検査装置200の特徴的な構成を説明する説明図である。
【0041】
読取部220は、検査対象の印刷物の上面の画像を読み取る上面画像読取部221と、検査対象の印刷物の下面の画像を読み取る下面画像読取部222とを備える。上面画像読取部221および下面画像読取部222は、例えば、CIS(Contact Image Sensor)などの光学読取センサにより構成することができる。
【0042】
格納部250は、画像形成装置100の元画像転送部122により転送された複数の元画像を、各元画像の画像IDと関連付けて、元画像転送部122から転送された順番で格納する。格納部250は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)などのファイル格納装置により構成することができる。
【0043】
取得部260は、画像形成装置100の排紙画像情報転送部123により転送された排紙画像情報を取得し、取得した排紙画像情報に対応する印刷物に対する判定部240での欠陥判定処理が開始されるまで、取得した排紙画像情報を保持する。取得部260は、例えばFIFOメモリとして構成され、複数の排紙画像情報を保持している場合は、取得した順番が古い排紙画像情報から順に判定部240に供給する。
【0044】
画像形成装置100の排紙画像情報転送部123は、上述したように、対応する印刷物が画像形成装置100から排出される順番で、排紙画像情報を検査装置200に転送する。したがって、取得部260に保持された未処理の排紙画像情報のうち、取得した順番が最も古い排紙画像情報は、検査対象の印刷物に対応した排紙画像情報である。取得部260をこのように構成することで、検査対象の印刷物に対応した排紙画像情報を判定部240に供給することができる。
【0045】
判定部240は、2つの読取画像用フレームメモリ241a,241bと、2つの元画像用フレームメモリ242a,242bと、2つの比較器243a,243bとを備える。
【0046】
読取画像用フレームメモリ241aは、検査対象の印刷物の上面の読取画像を展開するフレームメモリであり、読取画像用フレームメモリ241bは、検査対象の印刷物の下面の読取画像を展開するフレームメモリである。また、元画像用フレームメモリ242aは、検査対象の印刷物の上面の画像形成に用いた元画像を展開するフレームメモリであり、元画像用フレームメモリ242bは、検査対象の印刷物の上面の画像形成に用いた元画像を展開するフレームメモリである。また、比較器243aは、読取画像用フレームメモリ241aにセットされた読取画像と元画像用フレームメモリ242aにセットされた元画像とを比較する比較器であり、比較器243bは、読取画像用フレームメモリ241bにセットされた読取画像と元画像用フレームメモリ242bにセットされた元画像とを比較する比較器である。
【0047】
判定部240は、検査対象の印刷物が読取部220に搬送されて画像の読み取りが行われると、上面画像読取部221により読み取られた印刷物の上面の読取画像を読取画像用フレームメモリ241aにセットするとともに、下面画像読取部222により読み取られた印刷物の下面の読取画像を読取画像用フレームメモリ241bにセットする。また、判定部260は、取得部260から供給される排紙画像情報に含まれる画像IDに基づいて、格納部250に格納された複数の元画像のうち、元画像用フレームメモリ242a,242bにセットすべき元画像を特定する。すなわち、判定部260は、排紙画像情報に含まれる、印刷物の上面の画像の形成に用いた元画像の画像IDと関連付けて格納部250に格納された元画像を元画像用フレームメモリ242aにセットし、排紙画像情報に含まれる、印刷物の下面の画像の形成に用いた元画像の画像IDと関連付けて格納部250に格納された元画像を元画像用フレームメモリ242bにセットする。
【0048】
図4では、上面:画像ID=02と、下面:画像ID=01とを含む排紙画像情報が、取得部260が取得した順番で最も古い排紙画像情報として、取得部260に保持されている状態を示している。また、格納部250には、画像ID=01に関連付けられた元画像、画像ID=03に関連付けられた元画像、・・・、画像ID=02に関連付けられた元画像、・・・、がこの順番で格納されている状態を示している。この場合、画像形成装置100から次に排出される検査対象の印刷物は、上面:画像ID=02と、下面:画像ID=01とを含む排紙画像情報に対応した印刷物である。判定部240は、この排紙画像情報に含まれる画像ID=02に関連付けて格納部250に格納されている元画像を元画像用フレームメモリ242aにセットし、排紙画像情報に含まれる画像ID=01に関連付けて格納部250に格納されている元画像を元画像用フレームメモリ242bにセットする。これにより、格納部250に格納されている元画像の順番が、検査対象の印刷物に対応する元画像と一致していなくても、検査対象の印刷物に対応する元画像を正しくセットすることができる。
【0049】
次に、判定部240は、読取画像用フレームメモリ241aにセットされた読取画像と元画像用フレームメモリ242aにセットされた元画像とを比較器243aにより比較するとともに、読取画像用フレームメモリ241bにセットされた読取画像と元画像用フレームメモリ242bにセットされた元画像とを比較器243bにより比較する。そして、判定部240は、比較器243a,243bの少なくともいずれかにおいて、例えば、予め定めた基準を超える差分が検出された場合に、検査対象の印刷物を欠陥有りと判定し、予め定めた基準を超える差分が比較器243a,243bの双方において検出されない場合に、検査対象の印刷物を欠陥無しと判定する。
【0050】
判定部240は、検査対象の印刷物に対する欠陥有無の判定結果に応じた制御指令を切替部230に出力する。切替部230は、判定部240からの制御指令に応じて、欠陥有りと判定された印刷物を第2排出経路L12へと導いて欠陥排紙トレイ210に排出させ、欠陥無しと判定された印刷物を第1排出経路L11へと導いて後処理装置300に排出させるように動作する。
【0051】
図5は、本実施形態に係る検査装置200の動作の概略を説明するフローチャートである。
【0052】
画像形成装置100において元画像に基づく画像形成が行われ、画像形成装置100の元画像転送部122により検査装置200に対して元画像が転送されると、格納部250が、転送された元画像を画像IDと関連付けて格納する(ステップS101)。このステップS101の処理は、画像形成装置100から元画像が転送されるたびに行われる。
【0053】
また、画像形成装置100の排紙画像情報転送部123により検査装置200に対して排紙画像情報が転送されると、取得部260が、転送された排紙画像情報を取得して、該排紙画像情報に基づく処理が行われるまで、取得した排紙画像情報を保持する(ステップS102)。このステップS102の処理は、画像形成装置100から排紙画像情報が転送されるたびに行われ、取得した順番が古い排紙画像情報から順に判定部240に供給される。
【0054】
画像形成装置100から検査対象の印刷物が排出され、読取部220に搬送されると、読取部220がこの検査対象の印刷物から画像を読み取る(ステップS103)。読取部220により読み取られた読取画像は、判定部240の読取画像用フレームメモリ241a,241bにセットされる(ステップS104)。また、判定部240は、取得部260から供給される排紙画像情報に含まれる画像IDに基づいて、格納部250に格納されている複数の元画像のうち、検査対象の印刷物に対応する元画像を特定し、特定した元画像を元画像用フレームメモリ242a,242bにセットする(ステップS105)。
【0055】
そして、判定部240は、比較器243a,243bを用いて、読取画像用フレームメモリ241a,241bにセットされた読取画像と元画像用フレームメモリ242a,242bにセットされた元画像とを比較検査し(ステップS106)、検査対象の印刷物に欠陥が有るか否かを判定する(ステップS107)。
【0056】
ステップS107の判定により、検査対象の印刷物に欠陥が有ると判定された場合(ステップS107:Yes)、判定部240からの制御指令に応じて、印刷物を第2排出経路L12に導くように切替部230が動作する。これにより、切替部230に搬送された印刷物が第2排出経路L12を通って欠陥排紙トレイ210に排出される(ステップS108)。一方、ステップS107の判定により、検査対象の印刷物に欠陥が無いと判定された場合(ステップS107:No)、判定部240からの制御指令に応じて、印刷物を第1排出経路L11に導くように切替部230が動作する。これにより、切替部230に搬送された印刷物が第1排出経路L11を通って後処理装置300へと排出される(ステップS109)。
【0057】
次に、本実施形態の排紙画像情報について、さらに詳しく説明する。排紙画像情報は、例えば、排紙画像情報の取得を要求するコマンド(以下、排紙画像情報取得コマンドという。)に続くデータ(取得要求の対象となるパラメータ)として、印刷物を識別する印刷物IDとともに、画像形成装置100から検査装置200に転送される。
【0058】
図6は、本実施形態における排紙画像情報取得コマンドを説明する説明図である。本実施形態では、排紙画像情報取得コマンドに続いて、排紙画像情報に対応する印刷物の印刷物IDと、当該印刷物IDで識別される印刷物の上面の画像形成に用いた元画像の画像IDと、印刷物IDで識別される印刷物の下面の画像形成に用いた元画像の画像IDとが、画像形成装置100から検査装置200に転送される。検査装置200の取得部260は、画像形成装置100からの排紙画像情報取得コマンドに応じて、排紙画像情報取得コマンドに続いて転送される一連のデータを取得し、排紙画像情報として保持する。
【0059】
また、画像形成装置100から検査装置200に対しては、排紙画像情報のほかに、印刷物属性情報が転送される。印刷物属性情報は、画像形成装置100が排出する印刷物のサイズを示すサイズ情報、該印刷物の最終排出先(欠陥排紙トレイ210を除く)を示す排出先情報、該印刷物に対して後処理装置300で実行する後処理の内容を示す後処理情報などを含む。この印刷物属性情報は、例えば図7に示すように、印刷物属性情報の取得を要求するコマンド(以下、印刷物属性情報取得コマンドという。)に続くデータとして、印刷物を識別する印刷物IDとともに、画像形成装置100から検査装置200に転送される。
【0060】
また、画像形成装置100が印刷物を排出するタイミング、つまり、画像形成装置100の出口センサ115が印刷物を検知したタイミングで、画像形成装置100から検査装置200に対して印刷物排紙コマンドが送られる。検査装置200は、この印刷物排紙コマンドにより画像形成装置100から検査対象の印刷物が排出されたことを認識し、読取部220が検査対象の印刷物から画像を読み取ることが可能な状態となり、また、判定部240が検査対象の印刷物に対応した元画像を元画像用フレームメモリ242a,242bにセットする。
【0061】
ここで、上述した印刷物属性情報取得コマンドおよび排紙画像情報取得コマンドを、画像形成装置100から印刷物が排出された後、つまり、画像形成装置100から印刷物排紙コマンドが転送された後に検査装置200に転送しようとすると、検査装置200が正常に動作しない場合がある。
【0062】
図8は、画像形成装置100から検査装置200にコマンドを転送するタイミングと検査装置200の動作との関係を比較例として説明するタイミングチャートである。図8の比較例は、画像形成装置100の出口センサ115がオンし、画像形成装置100から検査装置200に印刷物排出コマンドC1が転送された後、印刷物属性情報取得コマンドC2と印刷物属性情報D2とが転送され、さらにその後、排紙画像情報取得コマンドC3と排紙画像情報D3とが転送される場合を示している。
【0063】
画像形成装置100から排出された検査対象の印刷物は、検査装置200の搬送ローラ201により下流側に搬送され、印刷物の先端が読取部220に到達すると、読取部220による画像の読み取りが開始される。そして、印刷物の後端が読取部220を通過すると、読取部220による画像の読み取りは終了し、判定部240による印刷物の欠陥有無の判定を開始することが可能な状態になる。しかし、図8に示す比較例においては、画像形成装置100から印刷物が排出された後に検査装置200に対するコマンドの転送が集中しているため、読取部220による画像の読み取りが終了してもすぐに判定部240による判定を開始することができず、判定部240による印刷物の欠陥有無の判定が遅れる。その結果、印刷物が切替部230に到達するまでの間に判定部240による判定が終了せず、切替部230による排出経路の切り替えを正しく実行できなくなることが懸念される。
【0064】
そこで、本実施形態に係る印刷システムにおいては、画像形成装置100から検査装置200に対して、上述した印刷物属性情報取得コマンドC2および印刷物属性情報D2と、排紙画像情報取得コマンドC3および排紙画像情報D3とを、対応する印刷物が画像形成装置100から排出される前のタイミングで転送する。また、印刷物属性情報取得コマンドC2および印刷物属性情報D2の転送タイミングと、排紙画像情報取得コマンドC3および排紙画像情報D3の転送タイミングとを異ならせる。これにより、画像形成装置100から印刷物が排出された後にコマンドの転送が集中しないようにし、上記の問題を解決する。
【0065】
図9は、本実施形態に係る印刷システムにおいて、画像形成装置100から検査装置200にコマンドを転送するタイミングの一例と検査装置200の動作との関係を説明するタイミングチャートである。図9の例では、画像形成装置100から検査装置200への印刷物属性情報取得コマンドC2および印刷物属性情報D2の転送を、対応する印刷物について給紙トレイ110から記録媒体の給紙が開始されるタイミングで実施する。また、図9の例では、画像形成装置100から検査装置200への排紙画像情報取得コマンドC3および排紙画像情報D3の転送を、対応する印刷物が片面印刷の場合は片面の画像形成開始時、対応する印刷物が両面印刷の場合はすでに画像が形成された面とは逆側の面の画像形成開始時に実施する。
【0066】
図9の例で示すように、画像形成装置100から検査装置200に対して、印刷物が排出される前の互いに異なるタイミングで、印刷物属性情報取得コマンドC2および印刷物属性情報D2と、排紙画像情報取得コマンドC3および排紙画像情報D3とをそれぞれ転送することで、画像形成装置100から印刷物が排出される際には、印刷物排紙コマンドC1が画像形成装置100から検査装置200に転送されるのみとなる。つまり、印刷物が排出された後に検査装置200に対するコマンドの転送が集中することはない。したがって、画像形成装置100から排出された印刷物に対して、検査装置200の読取部220による画像の読み取りが終了すると、判定部240がすぐにこの印刷物の欠陥有無の判定を開始することが可能となり、判定部240の判定の遅れに起因する切替部230の動作不良を有効に抑制することができる。なお、排紙画像情報D3は、上述したように、対応する印刷物が画像形成装置100から排出される順番で検査装置200に転送されるので、印刷物が排出される前のタイミングで検査装置200に転送しても問題はない。また、印刷物属性情報D2は、印刷物IDによって排紙画像情報D3と関連付けられるため、排紙画像情報D3と同様、印刷物が排出される前のタイミングで検査装置200に転送しても問題はない。
【0067】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態に係る印刷システムでは、検査装置200の判定部240が、検査対象の印刷物に対応する排紙画像情報に含まれる画像IDに基づいて、格納部250に格納された複数の元画像のうち、検査対象の印刷物の画像形成に用いた元画像を特定して元画像用フレームメモリ242a,242bにセットする。したがって、元画像に基づいて印刷媒体に画像が形成される順番と、その画像を含む印刷物が画像形成装置100から排出される順番とが一致していない場合でも、検査対象の印刷物に対応した正しい元画像を元画像用フレームメモリ242a,242bにセットすることができ、印刷物の欠陥有無の判定を正しく行うことができる。
【0068】
また、本実施形態に係る印刷システムによれば、画像形成装置100から印刷物が排出される前の異なるタイミングで、この印刷物に対応する排紙画像情報と印刷物属性情報とをそれぞれ検査装置200に転送するようにしているので、判定部240の判定の遅れに起因する切替部230の動作不良を有効に抑制することができる。
【0069】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、排紙画像情報が、元画像の画像IDに加えて、対応する印刷物の画像が元画像に対して反転されているか否かを示す画像反転情報を含んでいる。印刷システムの基本的な構成および動作は、第1の実施形態と同様である。以下、第1の実施形態と共通の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略し、第2の実施形態の特徴部分についてのみ説明する。
【0070】
図10は、第2の実施形態に係る検査装置200Aの特徴的な構成を説明する説明図である。本実施形態に係る検査装置200Aは、第1の実施形態の判定部240に代えて、判定部240Aを備える。また、取得部260が画像形成装置100から取得する排紙画像情報には、対応する印刷物の画像形成に用いた元画像の画像IDに加えて、画像反転情報が含まれている。本実施形態の排紙画像情報に含まれる画像反転情報は、対応する印刷物が片面印刷であれば、画像が形成された面の画像が元画像に対して反転されたものであるか否かを示し、対応する印刷物が両面印刷であれば、一方の面に形成された画像と他方の面に形成された画像のそれぞれについて、元画像に対して反転されたものであるか否かを示している。
【0071】
判定部240Aは、第1の実施形態の判定部240の機能に加え、さらに、排紙画像情報に含まれる画像反転情報に基づいて、元画像用フレームメモリ242a,242bにセットする元画像の向きを設定する機能を有している。すなわち、判定部240Aは、格納部250に格納された複数の元画像のうち、取得部260から供給された排紙画像情報に含まれる画像IDに関連付けて格納部250に格納されている元画像を読み出す。そして、判定部240Aは、排紙画像情報に含まれる画像反転情報が反転無しを示すものであれば、格納部250から読み出した元画像をそのまま元画像用フレームメモリ242a,242bにセットし、排紙画像情報に含まれる画像反転情報が反転有りを示すものであれば、格納部250から読み出した元画像の向きを反転させて元画像用フレームメモリ242a,242bにセットする。
【0072】
図10の例では、検査対象の印刷物に対応する排紙画像情報、つまり、取得部260が取得した順番で最も古い排紙画像情報は、上面の画像ID=02、下面の画像ID=01を含み、上面の画像には反転がなく、下面の画像は反転されていることを示す画像反転情報が含まれている。したがって、判定部240Aは、格納部250に格納されている複数の元画像のうち、画像ID=02に関連付けて格納されている元画像を読み出してそのまま元画像用フレームメモリ242aにセットするとともに、画像ID=01に関連付けて格納されている元画像を読み出し、元画像の向きを反転させて元画像用フレームメモリ242bにセットする。
【0073】
本実施形態の排紙画像情報は、第1の実施形態の排紙画像情報と同様に、例えば、排紙画像情報取得コマンドに続くデータとして、対応する印刷物の印刷物IDとともに、画像形成装置100から検査装置200Aに転送される。図11は、本実施形態における排紙画像情報取得コマンドを説明する説明図である。本実施形態では、排紙画像情報取得コマンドに続いて、排紙画像情報に対応する印刷物の印刷物IDと、当該印刷物IDで識別される印刷物の上面の画像形成に用いた元画像の画像IDと、印刷物IDで識別される印刷物の下面の画像形成に用いた元画像の画像IDと、印刷物の上面の画像と下面の画像のそれぞれについて元画像に対して反転されているか否かを示す画像反転情報とが、画像形成装置100から検査装置200Aに転送される。検査装置200Aの取得部260は、画像形成装置100からの排紙画像情報取得コマンドに応じて、排紙画像情報取得コマンドに続いて転送される一連のデータを取得し、排紙画像情報として保持する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る印刷システムでは、画像形成装置100から検査装置200Aに転送される排紙画像情報が、対応する印刷物の画像形成に用いた元画像の画像IDに加えて、対応する印刷物の画像が元画像に対して反転されているか否かを示す画像反転情報を含んでいる。そして、検査装置200Aの判定部240Aは、排紙画像情報に含まれる画像IDに基づいて元画像用フレームメモリ242a,242bにセットする元画像を特定し、排紙画像情報に含まれる画像反転情報に基づいて、特定した元画像を元画像用フレームメモリ242a,242bにセットする向きを設定する。したがって、検査対象の印刷物に対応した正しい元画像を正しい向きで元画像用フレームメモリ242a,242bにセットすることができ、印刷物の欠陥有無の判定を正しく行うことができる。
【0075】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、排紙画像情報が、元画像の画像IDおよび画像反転情報に加えて、対応する印刷物の上面と下面のそれぞれについて画像が形成されているか否かを示す画像有無情報を含んでいる。印刷システムの基本的な構成および動作は、第1の実施形態および第2の実施形態と同様である。以下、第1の実施形態および第2の実施形態と共通の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略し、第3の実施形態の特徴部分についてのみ説明する。
【0076】
図12は、第3の実施形態に係る検査装置200Bの特徴的な構成を説明する説明図である。本実施形態に係る検査装置200Bは、第1の実施形態の判定部240、第2の実施形態の判定部240Aに代えて、判定部240Bを備える。また、取得部260が画像形成装置100から取得する排紙画像情報には、対応する印刷物の画像形成に用いた元画像の画像ID、対応する印刷物の画像が元画像に対して反転されているか否かを示す画像反転情報に加えて、画像有無情報が含まれている。本実施形態の排紙画像情報に含まれる画像有無情報は、対応する印刷物の上面および下面のそれぞれについて、画像が形成されているか否かを示している。つまり、対応する印刷物が片面印刷であれば、画像有無情報は、画像が形成される一方の面に画像があり、他方の面には画像がないことを示す。また、対応する印刷物が両面印刷であれば、画像有無情報は、上面と下面の双方に画像があることを示す。
【0077】
判定部240Bは、第2の実施形態の判定部240Aの機能に加え、さらに、排紙画像情報に含まれる画像有無情報に基づいて、検査対象の印刷物の上面および下面の比較検査を行うか否かを決定する機能を有している。すなわち、判定部240Bは、排紙画像情報に含まれる画像有無情報が印刷物の上面に画像が無いことを示していれば、元画像用フレームメモリ242aにセットする元画像の読み出しを行わず、比較器243aを用いた比較検査も行わない。また、判定部240Bは、排紙画像情報に含まれる画像有無情報が印刷物の下面に画像が無いことを示していれば、元画像用フレームメモリ242bにセットする元画像の読み出しを行わず、比較器243aを用いた比較検査も行わない。判定部240Bは、排紙画像情報に含まれる画像有無情報で画像が形成されていることが示されている面についてのみ、排紙画像情報に含まれる画像IDに基づいて格納部250から元画像を読み出して、元画像用フレームメモリ242a,242bにセットする。
【0078】
図12の例では、検査対象の印刷物に対応する排紙画像情報、つまり、取得部260が取得した順番で最も古い排紙画像情報は、印刷物の上面に画像が無く、印刷物の下面に画像が形成されていることを示す画像有無情報が含まれている。また、印刷物の下面の画像ID=01を含み、印刷物の下面の画像が反転されていることを示す画像反転情報が含まれている。したがって、判定部240Bは、格納部250に格納されている複数の元画像のうち、画像ID=01に関連付けて格納されている元画像を読み出し、元画像の向きを反転させて元画像用フレームメモリ242bにセットし、元画像用フレームメモリ242aへの元画像のセットは行わない。また、元画像と読取画像との比較検査は、比較器243bを用いた比較検査のみを行い、比較器243aを用いた比較検査は行わない。
【0079】
本実施形態の排紙画像情報は、第1の実施形態や第2の実施形態の排紙画像情報と同様に、例えば、排紙画像情報取得コマンドに続くデータとして、対応する印刷物の印刷物IDとともに、画像形成装置100から検査装置200Bに転送される。図13は、本実施形態における排紙画像情報取得コマンドを説明する説明図である。本実施形態では、排紙画像情報取得コマンドに続いて、排紙画像情報に対応する印刷物の印刷物IDと、当該印刷物IDで識別される印刷物の上面の画像形成に用いた元画像の画像IDと、上面に画像が形成されているか否かを示す画像有無情報と、印刷物IDで識別される印刷物の下面の画像形成に用いた元画像の画像IDと、下面に画像が形成されているか否かを示す画像有無情報と、印刷物の上面の画像と下面の画像のそれぞれについて元画像に対して反転されているか否かを示す画像反転情報とが、画像形成装置100から検査装置200Bに転送される。検査装置200Bの取得部260は、画像形成装置100からの排紙画像情報取得コマンドに応じて、排紙画像情報取得コマンドに続いて転送される一連のデータを取得し、排紙画像情報として保持する。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係る印刷システムでは、画像形成装置100から検査装置200Bに転送される排紙画像情報が、対応する印刷物の画像形成に用いた元画像の画像IDと、対応する印刷物の画像が元画像に対して反転されているか否かを示す画像反転情報とに加え、対応する印刷物の上面と下面のそれぞれについて画像が形成されているか否かを示す画像有無情報を含んでいる。そして、検査装置200Bの判定部240Bは、排紙画像情報に含まれる画像有無情報に基づいて、検査対象の印刷物の上面および下面の比較検査を行うか否かを決定し、画像が形成された面についてのみ、排紙画像情報に含まれる画像IDに基づいて元画像用フレームメモリ242a,242bにセットする元画像を特定し、排紙画像情報に含まれる画像反転情報に基づいて、特定した元画像を元画像用フレームメモリ242a,242bにセットする向きを設定する。したがって、検査対象の印刷物に対応した正しい元画像を正しい向きで元画像用フレームメモリ242a,242bにセットすることができ、印刷物の欠陥有無の判定を正しく行うことができるとともに、印刷物の画像が形成されていない面の不要な比較検査を省略して、負荷を軽減させることができる。
【0081】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を加えながら具体化することができる。例えば、上述した各実施形態では、検査装置を画像形成装置とは別の装置として構成しているが、検査装置の機能を画像形成装置の一機能として実装するようにしてもよい。
【0082】
また、上述した各実施形態では、印刷物の画像形成に用いた元画像を画像形成装置から検査装置に転送するようにしているが、画像形成装置からではなく、例えば、印刷システムを統括的にコントロールするプリンタサーバなどの別の装置から検査装置に元画像を転送するようにしてもよい。また、上述した実施形態では、排紙画像情報や印刷物属性情報を画像形成装置から検査装置に転送するようにしているが、元画像と同様に、画像形成装置からではなく、例えばプリンタサーバなどの別の装置から検査装置に排紙画像情報や印刷物属性情報を転送するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
100 画像形成装置
120 プリンタコントローラ
121 プロセス制御部
122 元画像転送部
123 排紙画像情報転送部
200,200A,200B 検査装置
220 読取部
230 切替部
240,240A,240B 判定部
250 格納部
260 取得部
300 後処理装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特許第4626151号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置が元画像に基づいて印刷媒体に画像を形成することで生成した印刷物を検査する検査装置であって、
複数の前記印刷物に対応する複数の前記元画像を画像IDと関連付けて格納する格納手段と、
前記画像形成装置から排出される前記印刷物の画像に関する排紙画像情報であって、少なくとも該印刷物に対応する前記元画像の画像IDを含む前記排紙画像情報を取得する取得手段と、
前記画像形成装置から排出された検査対象の前記印刷物の画像を読み取る読取手段と、
前記格納手段に格納された複数の前記元画像のうち、検査対象の前記印刷物に対応する前記排紙画像情報に含まれる画像IDに関連付けられた前記元画像と、前記読取手段が読み取った読取画像とを比較して、検査対象の前記印刷物の欠陥有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記排紙画像情報は、前記印刷物の画像が前記元画像に対して反転されているか否かを示す画像反転情報を含み、
前記判定手段は、検査対象の前記印刷物に対応する前記排紙画像情報に含まれる前記画像反転情報に基づいて、前記読取画像と比較する前記元画像の向きを設定することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記排紙画像情報は、前記印刷物の上面と下面のそれぞれについて画像が形成されているか否かを示す画像有無情報を含み、
前記判定手段は、検査対象の前記印刷物に対応する前記排紙画像情報に含まれる前記画像有無情報に基づいて、検査対象の前記印刷物の上面と下面のうち、画像が形成されている面の前記読取画像を前記元画像と比較することを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記排紙画像情報の取得を要求するコマンドに応じて、前記排紙画像情報に含まれる複数の情報を、該排紙画像情報に対応する前記印刷物の印刷物IDとともに、順次取得することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記取得手段は、検査対象の前記印刷物に対応する前記排紙画像情報を、検査対象の前記印刷物が前記画像形成装置から排出される前に取得することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記取得手段は、前記画像形成装置から排出される前記印刷物に関する印刷物属性情報であって、該印刷物のサイズ、該印刷物の最終排出先、該印刷物に対して要求される後処理の種類のうち、少なくとも1つを含む前記印刷物属性情報をさらに取得することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記取得手段は、検査対象の前記印刷物に対応する前記排紙画像情報を、検査対象の前記印刷物が前記画像形成装置から排出される排出時よりも前の第1の時点で取得するとともに、検査対象の前記印刷物に対応する前記印刷物属性情報を、前記排出時よりも前で、且つ、前記第1の時点とは異なる第2の時点で取得することを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
元画像に基づいて印刷媒体に画像を形成して印刷物を生成する画像形成装置と、
前記画像形成装置が生成した前記印刷物を検査する検査装置と、を備える印刷システムであって、
前記画像形成装置は、
前記印刷物に対応する前記元画像を画像IDと関連付けて前記検査装置に転送する元画像転送手段と、
排出する前記印刷物の画像に関する排紙画像情報であって、少なくとも該印刷物に対応する前記元画像の画像IDを含む前記排紙画像情報を、前記検査装置に転送する排紙画像情報転送手段と、を備え、
前記検査装置は、
前記元画像転送手段から転送された複数の前記元画像を画像IDと関連付けて格納する格納手段と、
前記排紙画像情報転送手段から転送された前記排紙画像情報を取得する取得手段と、
前記画像形成装置から排出された検査対象の前記印刷物の画像を読み取る読取手段と、
前記格納手段に格納された複数の前記元画像のうち、検査対象の前記印刷物に対応する前記排紙画像情報に含まれる画像IDに関連付けられた前記元画像と、前記読取手段が読み取った読取画像とを比較して、検査対象の前記印刷物の欠陥有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項9】
画像形成装置が元画像に基づいて印刷媒体に画像を形成することで生成した印刷物を検査する検査装置により実行される印刷物の検査方法であって、
前記検査装置の格納手段が、複数の前記印刷物に対応する複数の前記元画像を画像IDと関連付けて格納するステップと、
前記検査装置の取得手段が、前記画像形成装置から排出される前記印刷物の画像に関する排紙画像情報であって、少なくとも該印刷物に対応する前記元画像の画像IDを含む前記排紙画像情報を取得するステップと、
前記検査装置の読取手段が、前記画像形成装置から排出された検査対象の前記印刷物の画像を読み取るステップと、
前記検査装置の判定手段が、前記格納手段に格納された複数の前記元画像のうち、検査対象の前記印刷物に対応する前記排紙画像情報に含まれる画像IDに関連付けられた前記元画像と、前記読取手段が読み取った読取画像とを比較して、検査対象の前記印刷物の欠陥有無を判定するステップと、を含むことを特徴とする印刷物の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−108770(P2013−108770A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251965(P2011−251965)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】