検査装置、検査対象受体、および検査システム
【課題】検査対象受体の計測部位に対して上下方向とは異なる方向から光学計測を行う場合でも、光源とセンサとを結ぶ光路に対する他の検査対象受体の干渉を抑制可能な検査装置、検査対象受体、および検査システムを提供する。
【解決手段】検査装置1では、検査対象受体2を保持する箱状の受体ホルダ100が垂直軸を中心に回転されて、垂直面と平行をなす姿勢で保持された検査対象受体2に遠心力が付与される。受体ホルダ100が所定量公転されたのち、検査対象受体2の貯留部に光を透過させて液体が計測される。計測部7は、受体ホルダ100が回転される範囲の外側に、光源71および光センサ72を有する。液体の計測時には、光路が貯留部を通る位置に計測対象の受体ホルダ100が自転され、且つ、光路から離間する位置まで他の受体ホルダ100が自転される。
【解決手段】検査装置1では、検査対象受体2を保持する箱状の受体ホルダ100が垂直軸を中心に回転されて、垂直面と平行をなす姿勢で保持された検査対象受体2に遠心力が付与される。受体ホルダ100が所定量公転されたのち、検査対象受体2の貯留部に光を透過させて液体が計測される。計測部7は、受体ホルダ100が回転される範囲の外側に、光源71および光センサ72を有する。液体の計測時には、光路が貯留部を通る位置に計測対象の受体ホルダ100が自転され、且つ、光路から離間する位置まで他の受体ホルダ100が自転される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的、医学的、生物学的な検査を行うための検査対象受体、当該検査対象受体を回転させて遠心力を付与する検査装置、および、これらから構成される検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロチップまたは検査チップと呼ばれる検査対象受体を遠心処理して、生体物質および化学物質等を検査する検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、中央部に設けられた液導入口と、液導入口から周縁部に延びる複数の流路とを備えた分析用具、および、当該分析用具を水平に回転させて検査を行う分析装置が開示されている。このような検査装置では、検査対象受体の遠心処理によって、検査対象物が流路の下流側に設けられた計測部位まで移動する。遠心処理の実行後、検査対象受体の計測部位に光源から光を照射し、検査対象物を透過した光をセンサで受光することで、検査結果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−150804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に例示する水平回転型の検査装置では、検査対象受体の計測部位に対して上下方向に光を透過することで、検査対象物を光学計測することができる。この場合、光源とセンサとの距離(つまり、光路の長さ)は、検査対象受体の厚み以上であればよいため、光路は相対的に短くすることができる。一方、検査対象受体の計測部位に対して上下方向とは異なる方向から光学計測を行う場合、回転部に光源とセンサがかからないように光源とセンサを配置するため、光源とセンサとの距離が大きくなることがある。この場合、光路中に装置の部材が干渉するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、検査対象受体の計測部位に対して上下方向とは異なる方向から光学計測を行う場合でも、光源とセンサとを結ぶ光路に対する他の検査対象受体の干渉を抑制可能な検査装置、検査対象受体、および検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様に係る検査装置は、検査対象物である液体が注入される注入口と、前記注入口から注入された前記液体が移動可能な平面方向に延びる流路と、前記流路の下流側に移動した前記液体が貯留される貯留部とが形成された検査対象受体を、前記検査対象受体から離間した第一の軸線を中心に回転させて、遠心力によって前記液体を前記流路内で移動させる検査装置であって、前記流路の延設方向と前記第一の軸線を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で、前記検査対象受体をそれぞれ保持する複数の受体ホルダと、前記複数の受体ホルダの少なくとも一つに前記検査対象受体が保持された状態で、前記複数の受体ホルダを前記第一の軸線を中心に一方向へ回転させる第一駆動部と、前記仮想的な平面に対して直交する方向に延びる第二の軸線を中心に、前記複数の受体ホルダをそれぞれ双方向に回転可能な第二駆動部と、前記第一駆動部によって前記複数の受体ホルダが所定量回転されたのち、前記受体ホルダに保持されている前記検査対象受体ごとに、前記貯留部に遠心方向と交差する方向から光を透過させて、前記液体を計測する計測部とを備え、前記計測部は、前記受体ホルダが回転される範囲の外側から、計測対象の前記検査対象受体の前記貯留部に光を照射する光源と、前記受体ホルダが回転される範囲の外側で、前記貯留部を透過した光を受光するセンサとを有し、前記第二駆動部は、前記計測部による前記液体の計測時に、計測対象の前記検査対象受体を保持した前記受体ホルダである対象ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路が前記貯留部を通る位置に回転させ、且つ、前記対象ホルダとは異なる他の前記受体ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路から離間する位置に回転させる。
【0007】
上記検査装置では、検査対象受体を保持する箱状の受体ホルダが第一の軸線を中心に回転されて、流路の延設方向と第一の軸線を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で保持された検査対象受体に遠心力が付与される。受体ホルダが所定量回転されたのち、貯留部に光を透過させて液体が計測される。計測部は、受体ホルダが回転される範囲の外側に、光源およびセンサを有する。液体の計測時には、光路が貯留部を通る位置に対象ホルダが回転され、且つ、光路から離間する位置に他の受体ホルダが回転される。これにより、液体の計測時に光路が他の受体ホルダによって干渉されることが防止され、対象ホルダに保持された検査対象受体の貯留部に存在する液体を正確に計測できる。
【0008】
上記検査装置において、前記第二駆動部は、前記計測部による前記液体の計測時に、前記対象ホルダの回転角度を第一角度に変更し、且つ、前記対象ホルダとは異なる他の前記受体ホルダのうちで前記光路に位置する干渉ホルダを、前記第一角度に対して所定の角度差を有する第二角度に変更してもよい。この場合、干渉ホルダを対象ホルダとは異なる角度で回転させるだけで、液体の計測時に光路が干渉ホルダによって干渉されることを防止できる。
【0009】
上記検査装置において、前記複数の受体ホルダは、前記検査対象受体を挿脱可能な内部空間を有する同一形状の箱状体であり、前記受体ホルダは、前記流路の延設方向と略平行な前記受体ホルダの両側面に対向して設けられた一対の開口部であって、前記検査対象受体が前記受体ホルダに挿入されている状態で、前記貯留部が前記遠心方向と交差する方向に露出される計測口を有し、前記第一角度は、前記計測部による前記液体の計測時に、前記対象ホルダの前記計測口を前記光路が通る回転角度であり、前記第二角度は、前記計測部による前記液体の計測時に、前記干渉ホルダから離間した位置を前記光路が通る回転角度であってもよい。
【0010】
この場合、複数の受体ホルダは、同一形状の箱状体であって、内部に挿入された検査対象受体の貯留部を露出させる計測口を有する。液体の計測時には、対象ホルダは光路が計測口を通る角度に変更され、干渉ホルダは光路から離間する第二角度に変更される。したがって、対象ホルダに保持された検査対象受体の貯留部に存在する液体を、計測口を通る光路によって正確に計測できる。
【0011】
本発明の第二の態様に係る検査対象受体は、前記検査装置に使用される前記検査対象受体であって、前記貯留部は、前記検査対象受体を保持した前記受体ホルダが前記第一角度および前記第二角度のいずれに回転されたかに関わらず、前記貯留部に流入した液体の流出が規制される部位であってもよい。この場合、複数の受体ホルダが第一角度および第二角度のいずれに回転された場合でも、検査対象受体では貯留部からの液体の流出が規制される。よって、複数の対象ホルダでそれぞれ保持されている検査対象受体を連続して計測できる。
【0012】
上記検査装置において、前記複数の受体ホルダは、前記第一の軸線を中心に点対称で複数組配置され、前記第二駆動部は、前記第一の軸線を中心に点対称で配置された各組の前記受体ホルダを、それぞれ連動させて回転させ、前記計測部は、前記第一の軸線を中心に点対称をなす一組で配置され、前記一組の計測部は、点対称で配置された一組の前記受体ホルダを、それぞれ前記対象ホルダとして計測してもよい。この場合、一組の受体ホルダに保持されている各検査対象受体を、一組の計測部で同時に計測できる。
【0013】
本発明の第三の態様に係る検査システムは、検査対象物である液体が収容される検査対象受体と、前記検査対象受体から離間した第一の軸線を中心に前記検査対象受体を回転させて、前記検査対象受体に遠心力を付与して前記液体を計測する検査装置とを備えた検査システムであって、前記検査対象受体は、前記液体が注入される注入口と、前記注入口から注入された前記液体が移動可能な平面方向に延びる流路と、前記流路の下流側に移動した前記液体が貯留される貯留部とを備え、前記検査装置は、前記流路の延設方向と前記第一の軸線を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で、前記検査対象受体をそれぞれ保持する複数の受体ホルダと、前記複数の受体ホルダの少なくとも一つに前記検査対象受体が保持された状態で、前記複数の受体ホルダを前記第一の軸線を中心に一方向へ回転させる第一駆動部と、前記仮想的な平面に対して直交する方向に延びる第二の軸線を中心に、前記複数の受体ホルダをそれぞれ双方向に回転可能な第二駆動部と、前記第一駆動部によって前記複数の受体ホルダが所定量回転されたのち、前記受体ホルダに保持されている前記検査対象受体ごとに、前記貯留部に遠心方向と交差する方向から光を透過させて、前記液体を計測する計測部とを備え、前記計測部は、前記受体ホルダが回転される範囲の外側から、計測対象の前記検査対象受体の前記貯留部に光を照射する光源と、前記受体ホルダが回転される範囲の外側で、前記貯留部を透過した光を受光するセンサとを有し、前記第二駆動部は、前記計測部による前記液体の計測時に、計測対象の前記検査対象受体を保持した前記受体ホルダである対象ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路が前記貯留部を通る位置に回転させ、且つ、前記対象ホルダとは異なる他の前記受体ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路から離間する位置に回転させる。
【0014】
上記検査システムでは、検査対象受体を保持する箱状の受体ホルダが第一の軸線を中心に回転されて、流路の延設方向と第一の軸線を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で保持された検査対象受体に遠心力が付与される。受体ホルダが所定量回転されたのち、貯留部に光を透過させて液体が計測される。計測部は、受体ホルダが回転される範囲の外側に、光源およびセンサを有する。液体の計測時には、光路が貯留部を通る位置に対象ホルダが回転され、且つ、光路から離間する位置に他の受体ホルダが回転される。これにより、液体の計測時に光路が他の受体ホルダによって干渉されることを防ぎ、対象ホルダの貯留部に存在する液体を正確に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】定常状態の受体ホルダ100A、100Eが計測位置にある検査装置1の平面図である。
【図2】図1に示す検査装置1の左側面図である。
【図3】図2に示す検査装置1を45度公転させた左側面図である。
【図4】定常状態の受体ホルダ100B、100Fが計測位置にある検査装置1の左側面図である。
【図5】図4に示す検査装置1を45度公転させた左側面図である。
【図6】受体ホルダ100の斜視図である。
【図7】検査対象受体2の正面図である。
【図8】検査対象受体2が収容された受体ホルダ100の正面図である。
【図9】制御装置90の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】定常状態で公転された受体ホルダ100における、検査対象受体2の状態変化を示す図である。
【図11】変位状態で公転された受体ホルダ100における、検査対象受体2の状態変化を示す図である。
【図12】定常状態の受体ホルダ100における、遠心処理後の検査対象受体2の状態変化を示す図である。
【図13】変位状態の受体ホルダ100における、遠心処理後の検査対象受体2の状態変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、単なる説明例である。
【0017】
本実施形態では、検査対象である液体(以下、検体と呼ぶ。)および検体に混合される液体(以下、試薬と呼ぶ。)を収容可能な検査対象受体2を用いて、検査装置1で検査が行われる場合を例示する。検査装置1は、検査対象受体2から離間した第一の軸線である垂直軸を中心とした回転によって、検査対象受体2に遠心力を付与することができる。また、検査装置1は、検査対象受体2を第二の軸線である水平軸を中心に回転させることによって、検査対象受体2に付与される遠心力の方向(以下、遠心方向と呼ぶ。)を切り替え可能である。
【0018】
図1〜図5を参照して、検査装置1の概略構造について説明する。以下の説明では、図1の上方、下方、右方、左方、紙面手前側、紙面奥側を、それぞれ、検査装置1の左方、右方、前方、後方、上方、下方とする。図2〜図5の上方、下方、右方、左方、紙面手前側、紙面奥側を、それぞれ、検査装置1の上方、下方、前方、後方、右方、左方とする。なお、理解を容易にするために、図1では上部筐体30の天板が取り除かれた状態を示し、図2〜図5では上部筐体30および上部プレート61を図示していない。また、図2〜図5に示す検査装置1の左側面図は、検査装置1の左右方向中心(図1では前後方向中心)における縦断面を示している。
【0019】
図1〜図5に示すように、検査装置1は、上部筐体30、下部筐体31、ターンテーブル33、複数の受体ホルダ100、角度変更機構34、制御装置90などを備える。下部筐体31は、検査装置1の設置面に四隅の脚部50で支持されており、ターンテーブル33を垂直軸まわりに回転させる駆動機構が内部に設けられている。ターンテーブル33は、下部筐体31の上面側に設けられた、複数の受体ホルダ100が上方に保持される円盤状の回転体である。受体ホルダ100は、検査対象受体2を内部に保持する箱状体である。角度変更機構34は、ターンテーブル33に設けられた、複数の受体ホルダ100を水平軸まわりに回転させる駆動機構である。上部筐体30は、下部筐体31の上側に固定されており、検査対象受体2に収容された液体を光学的に計測する計測部7が内部に設けられている。制御装置90は、検査装置1の遠心処理や計測処理等を制御するコントローラである。
【0020】
下部筐体31の詳細構造を説明する。下部筐体31は、枠部材を組み合わせた箱状のフレーム構造を有する。下部筐体31の上面には、平面視長方形の板材である上板32が設けられている。上板32の上側には、ターンテーブル33が回転自在に設けられている。下部筐体31の内部には、ターンテーブル33を回転させる機構が、次のように設けられている。
【0021】
下部筐体31の内部には、前後方向(図2〜図5では左右方向)へ水平に延びる中フレーム部材52が架設されている。下部筐体31内の後方寄りに、ターンテーブル33を回転させるための駆動力を供給する主軸モータ35が設置されている。主軸モータ35の軸36は、上方に突出しており、プーリ37が固定されている。平面視で下部筐体31の中央部には、下部筐体31の内部から上方に延びる垂直な主軸57が設けられている。主軸57は、上板32を貫通して、下部筐体31の上側に突出している。主軸57の上端部は、平面視でターンテーブル33の中央部に接続されている。
【0022】
上板32の直下には、主軸57が貫通する保持金具である支持部材53が設けられている。支持部材53は、一対のフレーム54によって中フレーム部材52に固定されている。主軸57は、支持部材53によって回転自在に保持されている。主軸57における支持部材53の下側には、プーリ38が固定されている。プーリ37、38に亘って、ベルト39が掛け渡されている。主軸モータ35が軸36を回転させると、プーリ37、ベルト39、プーリ38を介して駆動力が主軸57に伝達される。このとき、主軸57の回転に連動して、ターンテーブル33が主軸57を中心に回転する。
【0023】
下部筐体31内の前方寄りに、下部筐体31の底面から上板32の下面まで垂直に延びるガイドレール56が設けられている。T字型板状の連結金具であるT型プレート48は、ガイドレール56に沿って下部筐体31内で上下方向に移動可能である。T型プレート48の左側(図2〜図5では紙面奥側)の面には、横長の溝部80が形成されている。
【0024】
先述の主軸57は、内部が中空の筒状体である。内軸40は、主軸57の内部で上下方向に移動可能な垂直軸である。内軸40の上端部は、主軸57内を貫通して後述の丸ラックギア43に接続されている。主軸57の下側には、中フレーム部材52に固定された軸受55が設けられている。軸受55の下方には、T型プレート48の後端部に固定された軸受41が設けられている。軸受41の内部には、図示外のベアリングが設けられるとともに、内軸40の下端部が挿入されている。内軸40の中間部および下端部は、それぞれ、軸受55、41によって回転自在に保持される。
【0025】
T型プレート48の左側には、T型プレート48を上下動させるためのステッピングモータ51が、図示外の固定具によって固定されている。ステッピングモータ51の軸58は、右側(図2〜図5では紙面手前側)に向けて突出しており、先端に円盤状のカム板59が固定されている。カム板59の右側の面には、円柱状の突起70が設けられている。突起70の先端部は先述の溝部80に挿入されているため、突起70は溝部80内を摺動可能である。ステッピングモータ51が軸58を回転させると、カム板59の回転に連動して突起70が上下動する。このとき、溝部80に挿入されている突起70に連動して、T型プレート48がガイドレール56に沿って上下動する。
【0026】
角度変更機構34の詳細構造を説明する。角度変更機構34は、ターンテーブル33の上面に固定された、L字型板状の連結金具である複数のL型プレート6(第一プレート60および第二プレート63)を有する。各L型プレート6は、ターンテーブル33の中心近傍に固定された基部から上方に延び、且つ、その上端部がターンテーブル33の径方向外側に向けて延びている。各L型プレート6の間には、内軸40に固定された丸ラックギア43が設けられている。丸ラックギア43は、縦長の金属製の棒状部材であり、上下方向に亘って全周にギアが刻まれている。
【0027】
本実施形態では、8つのL型プレート6(4つの第一プレート60および4つの第二プレート63)が、平面視でターンテーブル33の回転中心から放射状に延びるように交互配置されている。8つのL型プレート6は、隣り合う第一プレート60および第二プレート63が平面視で45度をなすように均等配置されている。つまり、8つのL型プレート6は、ターンテーブル33の回転中心を挟んで(つまり、平面視で主軸57を中心に)、点対称に配置された二組の第一プレート60と、点対称に配置された二組の第二プレート63とを含む。第二プレート63は、第一プレート60よりも上方まで延びている。
【0028】
各L型プレート6(つまり、第一プレート60、第二プレート63)の延設方向の先端側では、ギア45が有する水平な軸46が回転自在に軸支されている。軸46は受体ホルダ100に固定されているため、ギア45の回転に連動して受体ホルダ100も軸46を中心に回転する。各L型プレート6は、ギア45よりもターンテーブル33の回転中心側に、水平軸まわりに回転自在に支持されたピニオンギア44が設けられている。
【0029】
各第一プレート60では、ピニオンギア44がギア45および丸ラックギア43にそれぞれ噛合している。一方、各第二プレート63は、ピニオンギア44およびギア45の上側に、水平軸まわりに回転自在に支持されたギア47が設けられている。各第二プレート63では、ピニオンギア44がギア47および丸ラックギア43にそれぞれ噛合し、且つ、ギア47がギア45にそれぞれ噛合している。
【0030】
本実施形態では、8つのL型プレート6に設けられた8つの受体ホルダ100A〜100Hが、平面視で丸ラックギア43を中心に45度間隔で配置されている(図1参照)。詳細には、4つの第一プレート60に設けられた4つの受体ホルダ100A、100C、100E、100Gが、平面視で90度間隔に配置されている。受体ホルダ100A、100Eが公転中心を挟んで対向配置された一組をなし、受体ホルダ100C、100Gが公転中心を挟んで対向配置された一組をなす。また、4つの第二プレート63に設けられた4つの受体ホルダ100B、100D、100F、100Hが平面視で90度間隔に配置されている。受体ホルダ100B、100Fが公転中心を挟んで対向配置された一組をなし、受体ホルダ100D、100Hが公転中心を挟んで対向配置された一組をなす。
【0031】
丸ラックギア43の上端部には、円柱状のガイド部材42が設けられている。ターンテーブル33の回転中心の近傍には、複数のフレーム62が立設されている。複数のフレーム62の上端部は、板状の上部プレート61にそれぞれ固定されている。ガイド部材42は、上部プレート61の中央部に形成された開口部に挿入された状態で、上下方向に摺動可能に保持されている。
【0032】
各第一プレート60では、丸ラックギア43の上下動に連動して、ピニオンギア44、ギア45がそれぞれ従動回転し、ひいては受体ホルダ100A〜100Hが軸46を中心に回転する。すなわち、4つの第一プレート60に支持された4つの受体ホルダ100A、100C、100E、100Gが、水平軸まわりに同一の方向および角度で回転する。一方、各第二プレート63は、丸ラックギア43の上下動に連動して、ピニオンギア44、ギア47、ギア45がそれぞれ従動回転し、ひいては受体ホルダ100が軸46を中心に回転する。すなわち、4つの第二プレート63に支持された4つの受体ホルダ100B、100D、100F、100Hが、水平軸まわりに同一の方向および角度で回転する。ただし、第一プレート60のチップホルダ100と第二プレート63のチップホルダ100とは、水平軸まわりの反対方向に回転する。
【0033】
本実施形態では、主軸モータ35がターンテーブル33を回転駆動するのに伴って、受体ホルダ100A〜100Hが主軸57(すなわち、第一の軸線である垂直軸)を中心に回転して、検査対象受体2に遠心力が付与される。受体ホルダ100の垂直軸まわりの回転を、「公転」と呼ぶ。一方、ステッピングモータ51が内軸40を上下動させるのに伴って、受体ホルダ100A〜100Hが軸46(すなわち、第二の軸線である水平軸)を中心に回転して、検査対象受体2に作用する遠心方向が相対変化する。受体ホルダ100の水平軸まわりの回転を、「自転」と呼ぶ。なお、各受体ホルダ100A〜100Hは、自転および公転に伴う角度変化に関係なく、後述の流路24、25(図7参照)の延設方向と主軸57を含む仮想的な平面(つまり、垂直面)とが平行をなす姿勢で、それぞれ検査対象受体2を内部に保持する。
【0034】
T型プレート48と受体ホルダ100A〜100Hの自転角度との関係を説明する。なお、図1〜図3では、第一プレート60の受体ホルダ100A、100C、100E、100Gが、後述の定常状態である。さらに、図1および図2は、受体ホルダ100A、100Eが、後述の計測位置(図1では、丸ラックギア43の左右両側)に位置している。ただし、図3は説明の便宜のために、各受体ホルダ100A〜100Hの自転角度を変更せずに、図1及び図2に示す検査装置1を平面視で反時計回りに45度公転させている。
【0035】
一方、図4、図5では、第二プレート63の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hが、後述の定常状態である。さらに、図4は、受体ホルダ100B、100Fが、後述の計測位置に位置している。ただし、図5は説明の便宜のために、各受体ホルダ100A〜100Hの自転角度を変更せずに、図4に示す検査装置1を平面視で反時計回りに45度公転させている。なお、図2〜図5では、丸ラックギア43の前後に配置された一対の受体ホルダ100を実線で示し、一対の受体ホルダ100の両隣り(図1では上下両側)に位置する他の受体ホルダ100を仮想線で示している。
【0036】
T型プレート48が可動範囲の最下端まで下降した状態(図1〜図3参照)では、丸ラックギア43も可動範囲の最下端まで下降する。このとき、第一プレート60の受体ホルダ100A、100C、100E、100Gは、自転角度が0度の状態(以下、定常状態と呼ぶ。)になる(図2参照)。一方、第二プレート63の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hは、定常状態から90度水平軸まわりに回転した状態(以下、変位状態と呼ぶ。)になる(図3参照)。
【0037】
T型プレート48が可動範囲の最上端まで上昇した状態(図4、図5参照)では、丸ラックギア43も可動範囲の最上端まで上降する。このとき、第二プレート63の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hは、定常状態になる(図4参照)。一方、第一プレート60の受体ホルダ100A、100C、100E、100Gは、変位状態になる(図5参照)。つまり、各受体ホルダ100が自転可能な角度幅(以下、自転可能範囲と呼ぶ。)は、定常状態(0度)から変位状態(90度)までの範囲である。
【0038】
上部筐体30の詳細構造を説明する。上部筐体30は、枠部材を組み合わせた箱状のフレーム構造を有し、上板32の上側に設置されている。より詳細には、上部筐体30は、平面視でターンテーブル33の外周側に設けられており、受体ホルダ100が回転される範囲を取り囲む対向壁81を有する。
【0039】
上部筐体30の内部における前後両側に、一対の計測部7が設けられている。各計測部7は、後述の流路24、25(図7参照)の延設方向と交差する方向(本実施形態では、流路24、25の延設方向と直交する水平方向)に延びる光を、計測対象の検査対象受体2(詳細には、後述の貯留部23)に透過させることで、検査対象受体2内の液体を計測する。各計測部7は、計測光を発する光源71と、光源71から発せられた計測光を検出する光センサ72とをそれぞれ有する。
【0040】
前側の計測部7では、光源71が検査装置1の右前部(図1では右下部)に設けられる一方、光センサ72は検査装置1の左前部(図1では右上部)に設けられている。後側の計測部7では、光源71が検査装置1の左後部(図1では左上部)に設けられる一方、光センサ72は検査装置1の右後部(図1では左下部)に設けられている。つまり、各計測部7の光源71および光センサ72は、受体ホルダ100の回転範囲の外側において、ターンテーブル33の左右両側(図1では上下両側)にそれぞれ配置されている。
【0041】
前側の計測部7では、光源71から検査装置1の左側に発せられた計測光が、光センサ72で受光される。後側の計測部7では、光源71から検査装置1の右側に発せられた計測光が、光センサ72で受光される。光源71と光センサ72とを結ぶ光路の高さ位置は、定常状態の受体ホルダ100を基準として、後述の計測口120(図6参照)の高さ位置と等しい。なお、対向壁81には、各計測部7の光源71および光センサ72を上部筐体30の外部(詳細には、ターンテーブル33側)に露出させるための露出口(図示外)が形成されている。
【0042】
本実施形態では、主軸57を中心に公転する複数の受体ホルダ100のうちで、計測位置(図1参照)に存在し、且つ、定常状態である一組の受体ホルダ100に保持されている2つの検査対象受体2が、計測対象の検査対象受体2となる。より具体的には、検査装置1の左右方向に延びる2つの計測光が、平面視で一組の受体ホルダ100の前後面に対して直交する位置が、計測位置である。計測対象の検査対象受体2では、計測光が後述の計測口120を通る。
【0043】
検査装置1の動作概要について説明する。検査装置1の遠心処理時には、ターンテーブル33の回転によって各受体ホルダ100A〜100Hが公転して、検査対象受体2に遠心力が付与される。このとき、丸ラックギア43の上下動によって各受体ホルダ100A〜100Hが自転することで、検査対象受体2に付与される遠心力の方向が変化する。これにより、検査対象受体2内の液体が撹拌される。
【0044】
検査装置1の計測処理時には、図1に示すように、まず受体ホルダ100A、100Eが計測位置に移動される。さらに、図2に示すように、丸ラックギア43が可動範囲の最下端まで下降して、第一プレート60の受体ホルダ100A、100C、100E、100Gは定常状態になる。この状態で、受体ホルダ100A、100Eの各計測口120を通る2つの光路が形成されて、受体ホルダ100A、100Eに保持された各検査対象受体2に収容された液体が検査される。
【0045】
このとき、第二プレート63の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hは変位状態にある。つまり、受体ホルダ100A上に形成された光路に干渉しやすい両隣りの受体ホルダ100B、100Hは、いずれも変位状態である。同時に、受体ホルダ100E上に形成された光路に干渉しやすい両隣りの受体ホルダ100D、100Fは、いずれも変位状態である。これにより、受体ホルダ100B、100D、100F、100Hは、いずれも受体ホルダ100A、100Eの各計測口120よりも上方に退避されるため、光路に干渉するおそれが防止される。
【0046】
受体ホルダ100A、100Eの計測終了後、ターンテーブル33が45度回転することで、図4に示すように、受体ホルダ100B、100Fが計測位置に移動する。さらに、丸ラックギア43が可動範囲の最上端まで上昇して、第二プレート63の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hは定常状態になる。この状態で、受体ホルダ100B、100Fの各計測口120を通る2つの光路が形成されて、受体ホルダ100B、100Fに保持された各検査対象受体2に収容された液体が検査される。
【0047】
このとき、第一プレート60の受体ホルダ100A、100C、100E、100Gは変位状態にある。つまり、受体ホルダ100B上に形成された光路に干渉しやすい両隣りの受体ホルダ100C、100Aは、いずれも変位状態である。同時に、受体ホルダ100F上に形成された光路に干渉しやすい両隣りの受体ホルダ100G、100Eは、いずれも変位状態である。これにより、受体ホルダ100A、100C、100E、100Gは、いずれも受体ホルダ100A、100Eの各計測口120よりも上方に退避されるため、光路に干渉するおそれが防止される。
【0048】
受体ホルダ100B、100Fの計測終了後、ターンテーブル33が45度回転し、丸ラックギア43が可動範囲の最下端まで下降して、受体ホルダ100C、100G上に形成された2つの光路によって各検査対象受体2が計測される。受体ホルダ100C、100Gの計測終了後、ターンテーブル33が45度回転し、丸ラックギア43が可動範囲の最上端まで上昇して、受体ホルダ100D、100H上に形成された2つの光路によって各検査対象受体2が計測される。いずれの場合も、光路が形成される受体ホルダ100に隣接する他の受体ホルダ100は変位状態であるため、他の受体ホルダ100による光路への干渉が防止される。
【0049】
図6を参照して、受体ホルダ100の詳細構造を説明する。以下の説明では、図6の上方、下方、右下方、左上方、左下方、左上方を、それぞれ、受体ホルダ100の上方、下方、左方、右方、前方、後方とする。先述したように、ターンテーブル33の上方には、一対の受体ホルダ100がターンテーブル33の回転中心を挟んで対向配置されている。各受体ホルダ100は、上側以外を取り囲む壁部(底壁101、右壁102、左壁103、前壁104、後壁105)を有し、上側に開口部107が形成されている。開口部107は、後述の検査対象受体2に対応して平面視で長方形状に形成されている。よって、検査対象受体2は、開口部107を介して受体ホルダ100が有する内部空間に挿脱可能である。
【0050】
受体ホルダ100は、開口部107を開閉可能な蓋106を有する。蓋106は、開口部107よりも一回り大きい平面視で長方形状の板状部材である。右壁102の上端部には、蓋106の長手方向の一端部を回転自在に支持するヒンジ110が設けられている。一方、蓋106の長手方向の他端部には、ロック機構111が設けられている。ロック機構111は、レバー部材113および支持部材112から構成される。レバー部材113は、上下に延びる小片の板状体であって、下端部に係止爪114を有し、上端部に押圧部115を有する。支持部材112は、レバー部材113の長手方向中央部を回動可能に支持する。
【0051】
左壁103の上端部には、蓋106が閉じられた状態で、係止爪114が嵌まる凹部109が形成されている。レバー部材113は、図示外のばねによって、係止爪114を凹部109に係止する方向に付勢される。これにより、受体ホルダ100内に検査対象受体2が挿入されて蓋106が閉じられると、ロック機構111によって蓋106の自然開放が防止される。この状態では、蓋106の内面が検査対象受体2の上端部に当接して、検査対象受体2が受体ホルダ100の内部で固定される。なお、受体ホルダ100に対して検査対象受体2を挿脱する場合は、ユーザは押圧部115を操作することで蓋106を開放することができる。
【0052】
なお、L型プレート6から延びる軸46は後壁105に連結されており、軸46の回転に伴って受体ホルダ100が自転する(図2〜図5参照)。受体ホルダ100が定常状態である場合、ヒンジ110がターンテーブル33の内側を向き、ロック機構111がターンテーブル33の外側を向くように保持される(図1、図2、図4参照)。したがって、定常状態の受体ホルダ100が公転されている場合、左壁103が遠心方向の下流側を向き、右壁102側が遠心方向の上流側を向く。一方、受体ホルダ100が変位状態である場合、ヒンジ110が下側を向き、ロック機構111が上側を向くように保持される(図3、図5参照)。したがって、変位状態の受体ホルダ100が公転されている場合、底壁101が遠心方向の下流側を向き、蓋106が遠心方向の上流側を向く。
【0053】
受体ホルダ100は、検査対象受体2に貯留された液体を計測するための開口部である計測口120を有する。計測口120は、受体ホルダ100の両側面である前壁104および後壁105に対向配置された一対の開口部121、122である。計測口120は、受体ホルダ100における遠心方向の下流側、且つ、定常状態で重力方向の下流側となる位置に設けられる。より具体的には、開口部121は前壁104の左下部分(図6では右下部分)に設けられ、開口部122は後壁105の左下部分(図6では右下部分)に設けられている。開口部121、122は、同一の正方形状に形成されており、受体ホルダ100の内部空間を介して前後方向に連通している。
【0054】
図7を参照して、検査対象受体2の詳細構造を説明する。以下の説明では、図7の上方、下方、左方、右方、紙面手前側、紙面奥側を、それぞれ、検査対象受体2の上方、下方、右方、左方、前方、後方とする。検査対象受体2は、正面視で正方形状をなし、所定の厚みを有する透明な合成樹脂の板材20を主体とする。板材20の正面には、3つの窪みである貯留部21、22、23と、2つの溝部である流路24、25とが形成されている。
【0055】
貯留部21は、検査対象受体2の右上部分(図7では左上部分)に形成され、検査対象受体2に注入された検体が貯留される。貯留部22は、検査対象受体2の貯留部21の下側に形成され、検査対象受体2に注入された試薬が貯留される。貯留部23は、検査対象受体2の左下部分(図7では右下部分)に形成され、遠心処理によって検体および試薬を撹拌した液体が貯留される。流路24は、貯留部21から貯留部23まで延び、注入された検体が遠心力に応じて移動可能である。流路25は、貯留部22から貯留部23まで延び、注入された試薬が遠心力に応じて移動可能である。
【0056】
貯留部23は、検査対象受体2を保持した受体ホルダ100の自転角度が0度〜90度のいずれの場合でも、流入した液体の流出が規制される部位である。具体的には、貯留部23は、正面視で菱形状に形成されて、上端部に流路24、25が接続されている。貯留部23における流路24、25の接続部の直下には、貯留部23の内部に突出するように右下方へ延びる逆流防止壁231が設けられている。逆流防止壁231は、貯留部23に流入した液体が流路24、25に逆流するのを規制する。
【0057】
さらに、貯留部23の下端部から逆流防止壁231までの上下方向の距離H1は、検査対象受体2が定常状態の受体ホルダ100に保持された状態で、検査対象受体2内に注入される検体および試薬の混合液を収容可能な深さである。貯留部23の左端部から逆流防止壁231までの左右方向の距離H2は、検査対象受体2が変位状態の受体ホルダ100に保持された状態で、検査対象受体2内に注入される検体および試薬の混合液を収容可能な深さである。
【0058】
板材20の正面は、透明の合成樹脂の薄板から構成されたカバー部材200によって封止されている。カバー部材200には、貯留部21に検体を注入するための開口である注入口201と、貯留部22に試薬を注入するための開口である注入口202とが形成されている。なお、検体および試薬が注入されたのち、注入口201および注入口202に封止パッチ210がそれぞれ貼り付けられる。これにより、貯留部21、22に貯留された検体および試薬は、注入口201、202から検査対象受体2の外部に流出することが防止される。
【0059】
図8を参照して、検査対象受体2が収容された受体ホルダ100について説明する。検査対象受体2は、受体ホルダ100と前後左右方向が一致するように、開口部107を介して受体ホルダ100内へ縦方向に挿入される。蓋106が閉じられると、受体ホルダ100内で検査対象受体2が固定される。これにより、検査対象受体2の貯留部23は、計測口120を介して、流路24、25の延設方向と交差する方向(本実施形態では、流路24、25の延設方向と直交する水平方向)に露出される。詳細には、開口部121、122を介して、貯留部23が受体ホルダ100の前方および後方にそれぞれ露出される。
【0060】
図9を参照して、制御装置90の電気的構成について説明する。制御装置90は、検査装置1の主制御を司るCPU91と、各種データを一時的に記憶するRAM92と、制御プログラムを記憶したROM93とを有する。CPU91には、制御装置90に対する指示を入力するための操作部94、各種データやプログラムを記憶するハードディスク装置(HDD)95、各種情報を表示するディスプレイ96などが接続されている。
【0061】
さらに、CPU91には、公転コントローラ97、自転コントローラ98、計測コントローラ99などが接続されている。公転コントローラ97は、主軸モータ35を回転駆動することで、受体ホルダ100A〜100Hの公転を制御する。自転コントローラ98は、ステッピングモータ51を回転駆動することで、受体ホルダ100A〜100Hの自転を制御する。計測コントローラ99は、一対の計測部7のそれぞれについて、光源71の発光制御および光センサ72の検出制御を行うことで、検査対象物の光学計測を実行する。
【0062】
図10〜図13を参照して、検査装置1を用いた検査方法について説明する。ユーザは検査実行前に、検査対象受体2の貯留部21、22にそれぞれ検体および試薬を滴下し、注入口201、202をそれぞれ封止パッチ210で封止する。その後、ユーザは検査対象受体2を受体ホルダ100A〜100H内にそれぞれ挿入し、操作部94から処理開始のコマンドを入力する。これにより、CPU91は、ROM93に記憶されている制御プログラムに基づいて、以下に例示するような検査処理を実行する。なお、図10および図11では、検査対象受体2に作用する遠心方向を矢印で示している。
【0063】
まず、自転コントローラ98は、丸ラックギア43を可動範囲の最下端まで下降させる。これにより、第一プレート60の受体ホルダ100(つまり、受体ホルダ100A、100C、100E、100G)は定常状態となり(図2参照)、第二プレート63の受体ホルダ100(つまり、受体ホルダ100B、100D、100F、100H)は変位状態となる(図3参照)。公転コントローラ97はターンテーブル33を回転して、受体ホルダ100A〜100Hを所定の回転数で公転する遠心処理が開始される。この遠心処理によって、第一プレート60の受体ホルダ100では、図10に示すように、貯留部21内の検体は遠心力によって流路24を経由して貯留部23に流入する。貯留部22内の試薬は遠心力によって流路25を経由して貯留部23に流入して、検体と混合する。なお、第二プレート63の受体ホルダ100は変位状態であるため、貯留部21、22内の検体および試薬は移動しないか、あるいは、移動したとしても微量である。
【0064】
遠心処理の開始から所定時間が経過すると、自転コントローラ98は丸ラックギア43を可動範囲の最上端まで上昇させる。これにより、第二プレート63の受体ホルダ100は−90度自転して定常状態となり(図4参照)、第一プレート60の受体ホルダ100は90度自転して変位状態となる(図5参照)。この状態で遠心処理が継続することで、第一プレート60の受体ホルダ100では、図11に示すように、貯留部23内で検体および試薬の混合液が遠心方向の変化によって撹拌される。一方、第二プレート63の受体ホルダ100では、図10に示すように、貯留部21、22内の検体および試薬が遠心力によって流路24、25を移動し、貯留部23内で混合される。
【0065】
さらに所定時間が経過すると、自転コントローラ98は丸ラックギア43を可動範囲の最下端まで下降させる。これにより、第一プレート60の受体ホルダ100は定常状態となり(図2参照)、第二プレート63の受体ホルダ100は変位状態となる(図3参照)。この状態で遠心処理が継続することで、第二プレート63の受体ホルダ100では、図11に示すように、貯留部23内で検体および試薬の混合液が遠心方向の変化によって撹拌される。なお、第一プレート60の受体ホルダ100は定常状態に戻っているため、図10に示す状態で再度撹拌される。
【0066】
さらに所定時間が経過すると、一組の第一プレート60の受体ホルダ100A、100Eが計測位置(図1参照)に停止するように、公転コントローラ97はターンテーブル33の公転位置を制御する。このとき、第一プレート60の受体ホルダ100では、図12に示すように、貯留部23内で混合液が距離H1の範囲内で貯留される。第二プレート63の受体ホルダ100では、図13に示すように、貯留部23内で混合液が距離H2の範囲内で貯留される。いずれの受体ホルダ100においても、逆流防止壁231によって貯留部23からの混合液の流出が防止される。
【0067】
この状態で、計測コントローラ99は、遠心処理後の検査対象受体2内に存在する液体の計測処理を実行する。具体的には、各計測部7では、それぞれ光源71から光センサ72に向けて計測光が射出される。各計測光は、計測位置に存在する一組の受体ホルダ100A、100Eの各計測口120を経由するため、各計測口120から露出する検査対象受体2の貯留部23を透過する光路をそれぞれ形成する。各計測光は貯留部23内の混合液を透過する際に減衰するため、各光センサ72の受光量に基づいて混合液の検査結果が得られる。つまり、一回の計測処理によって、一組の受体ホルダ100に保持された各検査対象受体2内に存在する各混合液を同時に計測することができる。
【0068】
本実施形態では、計測位置に存在する一組の受体ホルダ100に隣り合う他の受体ホルダ100が、計測光に干渉しないように変位状態に制御される。図1に示す例では、計測位置に存在する第一プレート60の受体ホルダ100A、100Eが定常状態であるのに対し、その両側に位置する第二プレート63の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hが変位状態である。その結果、受体ホルダ100A、100Eの各貯留部23は、他の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hに被覆されることなく左右方向に露出する(図2参照)。
【0069】
これにより、計測位置に存在する受体ホルダ100の貯留部23を透過する光路が、他の受体ホルダ100に干渉されることなく形成されて、正確な計測結果を得ることができる。また、光路に干渉する他の受体ホルダ100を光路と略直交する方向に回転移動させることで、相対的に短い移動距離で光路から離間させることができる。さらに、光源71と光センサ72とを結ぶ光路を、平面視で他の受体ホルダ100に重なる位置に形成できる。そのため、光源71と光センサ72の配置の自由度が高まるのみならず、光源71および光センサ72を光路が相対的に短くなる位置に配置することができる。
【0070】
次いで、ターンテーブル33が45度公転し、且つ、丸ラックギア43が可動範囲の最上端まで上昇する。これにより、第二プレート63の受体ホルダ100は定常状態となり(図4参照)、第一プレート60の受体ホルダ100は変位状態となり(図5参照)、一組の第二プレート63の受体ホルダ100B、100Fが計測位置に移動する。このとき、第一プレート60の受体ホルダ100では、図13に示すように、貯留部23内で混合液が距離H2の範囲内で貯留される。第二プレート63の受体ホルダ100では、図12に示すように、貯留部23内で混合液が距離H1の範囲内で貯留される。この状態で、上記と同様に計測処理が実行される。
【0071】
さらに、ターンテーブル33が45度公転し、且つ、丸ラックギア43が可動範囲の最下端まで下降する。これにより、第一プレート60の受体ホルダ100は定常状態となり(図2参照)、第二プレート63の受体ホルダ100は変位状態となる(図3参照)、他の一組の第一プレート60の受体ホルダ100C、100Gが計測位置に移動する。この状態で、上記と同様に計測処理が実行される。
【0072】
最後に、ターンテーブル33が45度公転し、且つ、丸ラックギア43が可動範囲の最上端まで上昇する。第二プレート63の受体ホルダ100は定常状態となり(図4参照)、第一プレート60の受体ホルダ100は変位状態となり(図5参照)、他の一組の第二プレート63の受体ホルダ100D、100Hが計測位置に移動する。この状態で、上記と同様に計測処理が実行される。以上の検査方法によって、検査装置1が有する8つの受体ホルダ100A〜100Hに保持された全ての検査対象受体2について、混合液の計測が実行される。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の検査装置1によれば、検査対象受体2を保持する箱状の受体ホルダ100が主軸57を中心に公転されて、流路24、25の延設方向と主軸57を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で保持された検査対象受体2に遠心力が付与される。受体ホルダ100が所定量公転されたのち、貯留部23に光を透過させて混合液が計測される。計測部7は、受体ホルダ100が公転される範囲の外側に、光源71および光センサ72を有する。混合液の計測時には、検査対象受体2の貯留部23を光路が通る位置に計測対象の受体ホルダ100が自転され、且つ、光路から離間する位置まで他の受体ホルダ100が自転される。
【0074】
これにより、混合液の計測時に光路が他の受体ホルダ100によって干渉されることが防止され、計測対象の受体ホルダ100に保持された検査対象受体2の貯留部23に存在する混合液を正確に計測できる。また、検査対象受体2の貯留部23に対して上下方向とは異なる方向から光学計測を行う場合でも、光源71と光センサ72とを結ぶ光路の長さを抑制することができる。ひいては、光路が相対的に長くなることに伴う計測精度の悪化を抑制し、さらに検査装置1の小型化を実現することができる。
【0075】
また、光路に位置する他の受体ホルダ100を計測対象の受体ホルダ100とは異なる角度で自転させるだけで、混合液の計測時に光路が他の受体ホルダ100によって干渉されることを防止できる。より詳細には、混合液の計測時には、計測対象の受体ホルダ100は光路が計測口120を通る角度(0度)に変更され、他の受体ホルダ100は光路から離間する角度(90度)に変更される。したがって、計測対象の受体ホルダ100に保持された検査対象受体2の貯留部23に存在する混合液を、計測口120を通る光路によって正確に計測できる。
【0076】
また、複数の受体ホルダ100が0度および90度のいずれに自転された場合でも、検査対象受体2では貯留部23からの混合液の流出が規制される。よって、複数の受体ホルダ100でそれぞれ保持されている検査対象受体2を連続して計測できる。さらに、一組の受体ホルダ100に保持されている検査対象受体2を、一組の計測部7で同時に計測することで、多数の検査対象受体2を用いて効率的に検査を行うことができる。
【0077】
上記実施形態において、主軸モータ35が本発明の「第一駆動部」に相当する。ステッピングモータ51が本発明の「第二駆動部」に相当する。検査対象受体2を備えた検査装置1が、本発明の「検査システム」に相当する。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、検査装置1、検査対象受体2、受体ホルダ100の各構造や、受体ホルダ100の数量、自転角度、遠心方向などは単なる例示であり、測定する条件に合わせて決定すればよい。
【0079】
すなわち、上記実施形態の検査装置1では、最大8つの検査対象受体を同時に検査するために8つの受体ホルダ100を備えているが、受体ホルダ100の数量は適宜変更可能である。また、上記実施形態の角度変更機構34では、一つの可動部材(丸ラックギア43)を介して複数の受体ホルダ100を同時に自転させているが、受体ホルダ100を自転させる構造は適宜変更可能である。例えば、複数組の受体ホルダ100を組単位で独立して自転させる構造を採用してもよいし、複数の受体ホルダ100を全て独立して自転させる構造を採用してもよい。
【0080】
上記実施形態の検査装置1では、受体ホルダ100の自転角度が0度〜90度である。これに代えて、検査装置1は他の角度範囲(例えば、0度〜180度)で、受体ホルダ100を自転させてもよい。また、光路を妨げる他の受体ホルダ100の自転角度は90度に限定されず、光路を妨げる他の受体ホルダ100は光路から離間する角度(例えば、45度)で自転されればよい。
【符号の説明】
【0081】
1 検査装置
2 検査対象受体
7 計測部
20 板材
23 貯留部
24 流路
25 流路
35 主軸モータ
46 軸
51 ステッピングモータ
57 主軸
71 光源
72 光センサ
100 受体ホルダ
120 計測口
121 開口部
122 開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的、医学的、生物学的な検査を行うための検査対象受体、当該検査対象受体を回転させて遠心力を付与する検査装置、および、これらから構成される検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロチップまたは検査チップと呼ばれる検査対象受体を遠心処理して、生体物質および化学物質等を検査する検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、中央部に設けられた液導入口と、液導入口から周縁部に延びる複数の流路とを備えた分析用具、および、当該分析用具を水平に回転させて検査を行う分析装置が開示されている。このような検査装置では、検査対象受体の遠心処理によって、検査対象物が流路の下流側に設けられた計測部位まで移動する。遠心処理の実行後、検査対象受体の計測部位に光源から光を照射し、検査対象物を透過した光をセンサで受光することで、検査結果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−150804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に例示する水平回転型の検査装置では、検査対象受体の計測部位に対して上下方向に光を透過することで、検査対象物を光学計測することができる。この場合、光源とセンサとの距離(つまり、光路の長さ)は、検査対象受体の厚み以上であればよいため、光路は相対的に短くすることができる。一方、検査対象受体の計測部位に対して上下方向とは異なる方向から光学計測を行う場合、回転部に光源とセンサがかからないように光源とセンサを配置するため、光源とセンサとの距離が大きくなることがある。この場合、光路中に装置の部材が干渉するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、検査対象受体の計測部位に対して上下方向とは異なる方向から光学計測を行う場合でも、光源とセンサとを結ぶ光路に対する他の検査対象受体の干渉を抑制可能な検査装置、検査対象受体、および検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様に係る検査装置は、検査対象物である液体が注入される注入口と、前記注入口から注入された前記液体が移動可能な平面方向に延びる流路と、前記流路の下流側に移動した前記液体が貯留される貯留部とが形成された検査対象受体を、前記検査対象受体から離間した第一の軸線を中心に回転させて、遠心力によって前記液体を前記流路内で移動させる検査装置であって、前記流路の延設方向と前記第一の軸線を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で、前記検査対象受体をそれぞれ保持する複数の受体ホルダと、前記複数の受体ホルダの少なくとも一つに前記検査対象受体が保持された状態で、前記複数の受体ホルダを前記第一の軸線を中心に一方向へ回転させる第一駆動部と、前記仮想的な平面に対して直交する方向に延びる第二の軸線を中心に、前記複数の受体ホルダをそれぞれ双方向に回転可能な第二駆動部と、前記第一駆動部によって前記複数の受体ホルダが所定量回転されたのち、前記受体ホルダに保持されている前記検査対象受体ごとに、前記貯留部に遠心方向と交差する方向から光を透過させて、前記液体を計測する計測部とを備え、前記計測部は、前記受体ホルダが回転される範囲の外側から、計測対象の前記検査対象受体の前記貯留部に光を照射する光源と、前記受体ホルダが回転される範囲の外側で、前記貯留部を透過した光を受光するセンサとを有し、前記第二駆動部は、前記計測部による前記液体の計測時に、計測対象の前記検査対象受体を保持した前記受体ホルダである対象ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路が前記貯留部を通る位置に回転させ、且つ、前記対象ホルダとは異なる他の前記受体ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路から離間する位置に回転させる。
【0007】
上記検査装置では、検査対象受体を保持する箱状の受体ホルダが第一の軸線を中心に回転されて、流路の延設方向と第一の軸線を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で保持された検査対象受体に遠心力が付与される。受体ホルダが所定量回転されたのち、貯留部に光を透過させて液体が計測される。計測部は、受体ホルダが回転される範囲の外側に、光源およびセンサを有する。液体の計測時には、光路が貯留部を通る位置に対象ホルダが回転され、且つ、光路から離間する位置に他の受体ホルダが回転される。これにより、液体の計測時に光路が他の受体ホルダによって干渉されることが防止され、対象ホルダに保持された検査対象受体の貯留部に存在する液体を正確に計測できる。
【0008】
上記検査装置において、前記第二駆動部は、前記計測部による前記液体の計測時に、前記対象ホルダの回転角度を第一角度に変更し、且つ、前記対象ホルダとは異なる他の前記受体ホルダのうちで前記光路に位置する干渉ホルダを、前記第一角度に対して所定の角度差を有する第二角度に変更してもよい。この場合、干渉ホルダを対象ホルダとは異なる角度で回転させるだけで、液体の計測時に光路が干渉ホルダによって干渉されることを防止できる。
【0009】
上記検査装置において、前記複数の受体ホルダは、前記検査対象受体を挿脱可能な内部空間を有する同一形状の箱状体であり、前記受体ホルダは、前記流路の延設方向と略平行な前記受体ホルダの両側面に対向して設けられた一対の開口部であって、前記検査対象受体が前記受体ホルダに挿入されている状態で、前記貯留部が前記遠心方向と交差する方向に露出される計測口を有し、前記第一角度は、前記計測部による前記液体の計測時に、前記対象ホルダの前記計測口を前記光路が通る回転角度であり、前記第二角度は、前記計測部による前記液体の計測時に、前記干渉ホルダから離間した位置を前記光路が通る回転角度であってもよい。
【0010】
この場合、複数の受体ホルダは、同一形状の箱状体であって、内部に挿入された検査対象受体の貯留部を露出させる計測口を有する。液体の計測時には、対象ホルダは光路が計測口を通る角度に変更され、干渉ホルダは光路から離間する第二角度に変更される。したがって、対象ホルダに保持された検査対象受体の貯留部に存在する液体を、計測口を通る光路によって正確に計測できる。
【0011】
本発明の第二の態様に係る検査対象受体は、前記検査装置に使用される前記検査対象受体であって、前記貯留部は、前記検査対象受体を保持した前記受体ホルダが前記第一角度および前記第二角度のいずれに回転されたかに関わらず、前記貯留部に流入した液体の流出が規制される部位であってもよい。この場合、複数の受体ホルダが第一角度および第二角度のいずれに回転された場合でも、検査対象受体では貯留部からの液体の流出が規制される。よって、複数の対象ホルダでそれぞれ保持されている検査対象受体を連続して計測できる。
【0012】
上記検査装置において、前記複数の受体ホルダは、前記第一の軸線を中心に点対称で複数組配置され、前記第二駆動部は、前記第一の軸線を中心に点対称で配置された各組の前記受体ホルダを、それぞれ連動させて回転させ、前記計測部は、前記第一の軸線を中心に点対称をなす一組で配置され、前記一組の計測部は、点対称で配置された一組の前記受体ホルダを、それぞれ前記対象ホルダとして計測してもよい。この場合、一組の受体ホルダに保持されている各検査対象受体を、一組の計測部で同時に計測できる。
【0013】
本発明の第三の態様に係る検査システムは、検査対象物である液体が収容される検査対象受体と、前記検査対象受体から離間した第一の軸線を中心に前記検査対象受体を回転させて、前記検査対象受体に遠心力を付与して前記液体を計測する検査装置とを備えた検査システムであって、前記検査対象受体は、前記液体が注入される注入口と、前記注入口から注入された前記液体が移動可能な平面方向に延びる流路と、前記流路の下流側に移動した前記液体が貯留される貯留部とを備え、前記検査装置は、前記流路の延設方向と前記第一の軸線を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で、前記検査対象受体をそれぞれ保持する複数の受体ホルダと、前記複数の受体ホルダの少なくとも一つに前記検査対象受体が保持された状態で、前記複数の受体ホルダを前記第一の軸線を中心に一方向へ回転させる第一駆動部と、前記仮想的な平面に対して直交する方向に延びる第二の軸線を中心に、前記複数の受体ホルダをそれぞれ双方向に回転可能な第二駆動部と、前記第一駆動部によって前記複数の受体ホルダが所定量回転されたのち、前記受体ホルダに保持されている前記検査対象受体ごとに、前記貯留部に遠心方向と交差する方向から光を透過させて、前記液体を計測する計測部とを備え、前記計測部は、前記受体ホルダが回転される範囲の外側から、計測対象の前記検査対象受体の前記貯留部に光を照射する光源と、前記受体ホルダが回転される範囲の外側で、前記貯留部を透過した光を受光するセンサとを有し、前記第二駆動部は、前記計測部による前記液体の計測時に、計測対象の前記検査対象受体を保持した前記受体ホルダである対象ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路が前記貯留部を通る位置に回転させ、且つ、前記対象ホルダとは異なる他の前記受体ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路から離間する位置に回転させる。
【0014】
上記検査システムでは、検査対象受体を保持する箱状の受体ホルダが第一の軸線を中心に回転されて、流路の延設方向と第一の軸線を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で保持された検査対象受体に遠心力が付与される。受体ホルダが所定量回転されたのち、貯留部に光を透過させて液体が計測される。計測部は、受体ホルダが回転される範囲の外側に、光源およびセンサを有する。液体の計測時には、光路が貯留部を通る位置に対象ホルダが回転され、且つ、光路から離間する位置に他の受体ホルダが回転される。これにより、液体の計測時に光路が他の受体ホルダによって干渉されることを防ぎ、対象ホルダの貯留部に存在する液体を正確に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】定常状態の受体ホルダ100A、100Eが計測位置にある検査装置1の平面図である。
【図2】図1に示す検査装置1の左側面図である。
【図3】図2に示す検査装置1を45度公転させた左側面図である。
【図4】定常状態の受体ホルダ100B、100Fが計測位置にある検査装置1の左側面図である。
【図5】図4に示す検査装置1を45度公転させた左側面図である。
【図6】受体ホルダ100の斜視図である。
【図7】検査対象受体2の正面図である。
【図8】検査対象受体2が収容された受体ホルダ100の正面図である。
【図9】制御装置90の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】定常状態で公転された受体ホルダ100における、検査対象受体2の状態変化を示す図である。
【図11】変位状態で公転された受体ホルダ100における、検査対象受体2の状態変化を示す図である。
【図12】定常状態の受体ホルダ100における、遠心処理後の検査対象受体2の状態変化を示す図である。
【図13】変位状態の受体ホルダ100における、遠心処理後の検査対象受体2の状態変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、単なる説明例である。
【0017】
本実施形態では、検査対象である液体(以下、検体と呼ぶ。)および検体に混合される液体(以下、試薬と呼ぶ。)を収容可能な検査対象受体2を用いて、検査装置1で検査が行われる場合を例示する。検査装置1は、検査対象受体2から離間した第一の軸線である垂直軸を中心とした回転によって、検査対象受体2に遠心力を付与することができる。また、検査装置1は、検査対象受体2を第二の軸線である水平軸を中心に回転させることによって、検査対象受体2に付与される遠心力の方向(以下、遠心方向と呼ぶ。)を切り替え可能である。
【0018】
図1〜図5を参照して、検査装置1の概略構造について説明する。以下の説明では、図1の上方、下方、右方、左方、紙面手前側、紙面奥側を、それぞれ、検査装置1の左方、右方、前方、後方、上方、下方とする。図2〜図5の上方、下方、右方、左方、紙面手前側、紙面奥側を、それぞれ、検査装置1の上方、下方、前方、後方、右方、左方とする。なお、理解を容易にするために、図1では上部筐体30の天板が取り除かれた状態を示し、図2〜図5では上部筐体30および上部プレート61を図示していない。また、図2〜図5に示す検査装置1の左側面図は、検査装置1の左右方向中心(図1では前後方向中心)における縦断面を示している。
【0019】
図1〜図5に示すように、検査装置1は、上部筐体30、下部筐体31、ターンテーブル33、複数の受体ホルダ100、角度変更機構34、制御装置90などを備える。下部筐体31は、検査装置1の設置面に四隅の脚部50で支持されており、ターンテーブル33を垂直軸まわりに回転させる駆動機構が内部に設けられている。ターンテーブル33は、下部筐体31の上面側に設けられた、複数の受体ホルダ100が上方に保持される円盤状の回転体である。受体ホルダ100は、検査対象受体2を内部に保持する箱状体である。角度変更機構34は、ターンテーブル33に設けられた、複数の受体ホルダ100を水平軸まわりに回転させる駆動機構である。上部筐体30は、下部筐体31の上側に固定されており、検査対象受体2に収容された液体を光学的に計測する計測部7が内部に設けられている。制御装置90は、検査装置1の遠心処理や計測処理等を制御するコントローラである。
【0020】
下部筐体31の詳細構造を説明する。下部筐体31は、枠部材を組み合わせた箱状のフレーム構造を有する。下部筐体31の上面には、平面視長方形の板材である上板32が設けられている。上板32の上側には、ターンテーブル33が回転自在に設けられている。下部筐体31の内部には、ターンテーブル33を回転させる機構が、次のように設けられている。
【0021】
下部筐体31の内部には、前後方向(図2〜図5では左右方向)へ水平に延びる中フレーム部材52が架設されている。下部筐体31内の後方寄りに、ターンテーブル33を回転させるための駆動力を供給する主軸モータ35が設置されている。主軸モータ35の軸36は、上方に突出しており、プーリ37が固定されている。平面視で下部筐体31の中央部には、下部筐体31の内部から上方に延びる垂直な主軸57が設けられている。主軸57は、上板32を貫通して、下部筐体31の上側に突出している。主軸57の上端部は、平面視でターンテーブル33の中央部に接続されている。
【0022】
上板32の直下には、主軸57が貫通する保持金具である支持部材53が設けられている。支持部材53は、一対のフレーム54によって中フレーム部材52に固定されている。主軸57は、支持部材53によって回転自在に保持されている。主軸57における支持部材53の下側には、プーリ38が固定されている。プーリ37、38に亘って、ベルト39が掛け渡されている。主軸モータ35が軸36を回転させると、プーリ37、ベルト39、プーリ38を介して駆動力が主軸57に伝達される。このとき、主軸57の回転に連動して、ターンテーブル33が主軸57を中心に回転する。
【0023】
下部筐体31内の前方寄りに、下部筐体31の底面から上板32の下面まで垂直に延びるガイドレール56が設けられている。T字型板状の連結金具であるT型プレート48は、ガイドレール56に沿って下部筐体31内で上下方向に移動可能である。T型プレート48の左側(図2〜図5では紙面奥側)の面には、横長の溝部80が形成されている。
【0024】
先述の主軸57は、内部が中空の筒状体である。内軸40は、主軸57の内部で上下方向に移動可能な垂直軸である。内軸40の上端部は、主軸57内を貫通して後述の丸ラックギア43に接続されている。主軸57の下側には、中フレーム部材52に固定された軸受55が設けられている。軸受55の下方には、T型プレート48の後端部に固定された軸受41が設けられている。軸受41の内部には、図示外のベアリングが設けられるとともに、内軸40の下端部が挿入されている。内軸40の中間部および下端部は、それぞれ、軸受55、41によって回転自在に保持される。
【0025】
T型プレート48の左側には、T型プレート48を上下動させるためのステッピングモータ51が、図示外の固定具によって固定されている。ステッピングモータ51の軸58は、右側(図2〜図5では紙面手前側)に向けて突出しており、先端に円盤状のカム板59が固定されている。カム板59の右側の面には、円柱状の突起70が設けられている。突起70の先端部は先述の溝部80に挿入されているため、突起70は溝部80内を摺動可能である。ステッピングモータ51が軸58を回転させると、カム板59の回転に連動して突起70が上下動する。このとき、溝部80に挿入されている突起70に連動して、T型プレート48がガイドレール56に沿って上下動する。
【0026】
角度変更機構34の詳細構造を説明する。角度変更機構34は、ターンテーブル33の上面に固定された、L字型板状の連結金具である複数のL型プレート6(第一プレート60および第二プレート63)を有する。各L型プレート6は、ターンテーブル33の中心近傍に固定された基部から上方に延び、且つ、その上端部がターンテーブル33の径方向外側に向けて延びている。各L型プレート6の間には、内軸40に固定された丸ラックギア43が設けられている。丸ラックギア43は、縦長の金属製の棒状部材であり、上下方向に亘って全周にギアが刻まれている。
【0027】
本実施形態では、8つのL型プレート6(4つの第一プレート60および4つの第二プレート63)が、平面視でターンテーブル33の回転中心から放射状に延びるように交互配置されている。8つのL型プレート6は、隣り合う第一プレート60および第二プレート63が平面視で45度をなすように均等配置されている。つまり、8つのL型プレート6は、ターンテーブル33の回転中心を挟んで(つまり、平面視で主軸57を中心に)、点対称に配置された二組の第一プレート60と、点対称に配置された二組の第二プレート63とを含む。第二プレート63は、第一プレート60よりも上方まで延びている。
【0028】
各L型プレート6(つまり、第一プレート60、第二プレート63)の延設方向の先端側では、ギア45が有する水平な軸46が回転自在に軸支されている。軸46は受体ホルダ100に固定されているため、ギア45の回転に連動して受体ホルダ100も軸46を中心に回転する。各L型プレート6は、ギア45よりもターンテーブル33の回転中心側に、水平軸まわりに回転自在に支持されたピニオンギア44が設けられている。
【0029】
各第一プレート60では、ピニオンギア44がギア45および丸ラックギア43にそれぞれ噛合している。一方、各第二プレート63は、ピニオンギア44およびギア45の上側に、水平軸まわりに回転自在に支持されたギア47が設けられている。各第二プレート63では、ピニオンギア44がギア47および丸ラックギア43にそれぞれ噛合し、且つ、ギア47がギア45にそれぞれ噛合している。
【0030】
本実施形態では、8つのL型プレート6に設けられた8つの受体ホルダ100A〜100Hが、平面視で丸ラックギア43を中心に45度間隔で配置されている(図1参照)。詳細には、4つの第一プレート60に設けられた4つの受体ホルダ100A、100C、100E、100Gが、平面視で90度間隔に配置されている。受体ホルダ100A、100Eが公転中心を挟んで対向配置された一組をなし、受体ホルダ100C、100Gが公転中心を挟んで対向配置された一組をなす。また、4つの第二プレート63に設けられた4つの受体ホルダ100B、100D、100F、100Hが平面視で90度間隔に配置されている。受体ホルダ100B、100Fが公転中心を挟んで対向配置された一組をなし、受体ホルダ100D、100Hが公転中心を挟んで対向配置された一組をなす。
【0031】
丸ラックギア43の上端部には、円柱状のガイド部材42が設けられている。ターンテーブル33の回転中心の近傍には、複数のフレーム62が立設されている。複数のフレーム62の上端部は、板状の上部プレート61にそれぞれ固定されている。ガイド部材42は、上部プレート61の中央部に形成された開口部に挿入された状態で、上下方向に摺動可能に保持されている。
【0032】
各第一プレート60では、丸ラックギア43の上下動に連動して、ピニオンギア44、ギア45がそれぞれ従動回転し、ひいては受体ホルダ100A〜100Hが軸46を中心に回転する。すなわち、4つの第一プレート60に支持された4つの受体ホルダ100A、100C、100E、100Gが、水平軸まわりに同一の方向および角度で回転する。一方、各第二プレート63は、丸ラックギア43の上下動に連動して、ピニオンギア44、ギア47、ギア45がそれぞれ従動回転し、ひいては受体ホルダ100が軸46を中心に回転する。すなわち、4つの第二プレート63に支持された4つの受体ホルダ100B、100D、100F、100Hが、水平軸まわりに同一の方向および角度で回転する。ただし、第一プレート60のチップホルダ100と第二プレート63のチップホルダ100とは、水平軸まわりの反対方向に回転する。
【0033】
本実施形態では、主軸モータ35がターンテーブル33を回転駆動するのに伴って、受体ホルダ100A〜100Hが主軸57(すなわち、第一の軸線である垂直軸)を中心に回転して、検査対象受体2に遠心力が付与される。受体ホルダ100の垂直軸まわりの回転を、「公転」と呼ぶ。一方、ステッピングモータ51が内軸40を上下動させるのに伴って、受体ホルダ100A〜100Hが軸46(すなわち、第二の軸線である水平軸)を中心に回転して、検査対象受体2に作用する遠心方向が相対変化する。受体ホルダ100の水平軸まわりの回転を、「自転」と呼ぶ。なお、各受体ホルダ100A〜100Hは、自転および公転に伴う角度変化に関係なく、後述の流路24、25(図7参照)の延設方向と主軸57を含む仮想的な平面(つまり、垂直面)とが平行をなす姿勢で、それぞれ検査対象受体2を内部に保持する。
【0034】
T型プレート48と受体ホルダ100A〜100Hの自転角度との関係を説明する。なお、図1〜図3では、第一プレート60の受体ホルダ100A、100C、100E、100Gが、後述の定常状態である。さらに、図1および図2は、受体ホルダ100A、100Eが、後述の計測位置(図1では、丸ラックギア43の左右両側)に位置している。ただし、図3は説明の便宜のために、各受体ホルダ100A〜100Hの自転角度を変更せずに、図1及び図2に示す検査装置1を平面視で反時計回りに45度公転させている。
【0035】
一方、図4、図5では、第二プレート63の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hが、後述の定常状態である。さらに、図4は、受体ホルダ100B、100Fが、後述の計測位置に位置している。ただし、図5は説明の便宜のために、各受体ホルダ100A〜100Hの自転角度を変更せずに、図4に示す検査装置1を平面視で反時計回りに45度公転させている。なお、図2〜図5では、丸ラックギア43の前後に配置された一対の受体ホルダ100を実線で示し、一対の受体ホルダ100の両隣り(図1では上下両側)に位置する他の受体ホルダ100を仮想線で示している。
【0036】
T型プレート48が可動範囲の最下端まで下降した状態(図1〜図3参照)では、丸ラックギア43も可動範囲の最下端まで下降する。このとき、第一プレート60の受体ホルダ100A、100C、100E、100Gは、自転角度が0度の状態(以下、定常状態と呼ぶ。)になる(図2参照)。一方、第二プレート63の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hは、定常状態から90度水平軸まわりに回転した状態(以下、変位状態と呼ぶ。)になる(図3参照)。
【0037】
T型プレート48が可動範囲の最上端まで上昇した状態(図4、図5参照)では、丸ラックギア43も可動範囲の最上端まで上降する。このとき、第二プレート63の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hは、定常状態になる(図4参照)。一方、第一プレート60の受体ホルダ100A、100C、100E、100Gは、変位状態になる(図5参照)。つまり、各受体ホルダ100が自転可能な角度幅(以下、自転可能範囲と呼ぶ。)は、定常状態(0度)から変位状態(90度)までの範囲である。
【0038】
上部筐体30の詳細構造を説明する。上部筐体30は、枠部材を組み合わせた箱状のフレーム構造を有し、上板32の上側に設置されている。より詳細には、上部筐体30は、平面視でターンテーブル33の外周側に設けられており、受体ホルダ100が回転される範囲を取り囲む対向壁81を有する。
【0039】
上部筐体30の内部における前後両側に、一対の計測部7が設けられている。各計測部7は、後述の流路24、25(図7参照)の延設方向と交差する方向(本実施形態では、流路24、25の延設方向と直交する水平方向)に延びる光を、計測対象の検査対象受体2(詳細には、後述の貯留部23)に透過させることで、検査対象受体2内の液体を計測する。各計測部7は、計測光を発する光源71と、光源71から発せられた計測光を検出する光センサ72とをそれぞれ有する。
【0040】
前側の計測部7では、光源71が検査装置1の右前部(図1では右下部)に設けられる一方、光センサ72は検査装置1の左前部(図1では右上部)に設けられている。後側の計測部7では、光源71が検査装置1の左後部(図1では左上部)に設けられる一方、光センサ72は検査装置1の右後部(図1では左下部)に設けられている。つまり、各計測部7の光源71および光センサ72は、受体ホルダ100の回転範囲の外側において、ターンテーブル33の左右両側(図1では上下両側)にそれぞれ配置されている。
【0041】
前側の計測部7では、光源71から検査装置1の左側に発せられた計測光が、光センサ72で受光される。後側の計測部7では、光源71から検査装置1の右側に発せられた計測光が、光センサ72で受光される。光源71と光センサ72とを結ぶ光路の高さ位置は、定常状態の受体ホルダ100を基準として、後述の計測口120(図6参照)の高さ位置と等しい。なお、対向壁81には、各計測部7の光源71および光センサ72を上部筐体30の外部(詳細には、ターンテーブル33側)に露出させるための露出口(図示外)が形成されている。
【0042】
本実施形態では、主軸57を中心に公転する複数の受体ホルダ100のうちで、計測位置(図1参照)に存在し、且つ、定常状態である一組の受体ホルダ100に保持されている2つの検査対象受体2が、計測対象の検査対象受体2となる。より具体的には、検査装置1の左右方向に延びる2つの計測光が、平面視で一組の受体ホルダ100の前後面に対して直交する位置が、計測位置である。計測対象の検査対象受体2では、計測光が後述の計測口120を通る。
【0043】
検査装置1の動作概要について説明する。検査装置1の遠心処理時には、ターンテーブル33の回転によって各受体ホルダ100A〜100Hが公転して、検査対象受体2に遠心力が付与される。このとき、丸ラックギア43の上下動によって各受体ホルダ100A〜100Hが自転することで、検査対象受体2に付与される遠心力の方向が変化する。これにより、検査対象受体2内の液体が撹拌される。
【0044】
検査装置1の計測処理時には、図1に示すように、まず受体ホルダ100A、100Eが計測位置に移動される。さらに、図2に示すように、丸ラックギア43が可動範囲の最下端まで下降して、第一プレート60の受体ホルダ100A、100C、100E、100Gは定常状態になる。この状態で、受体ホルダ100A、100Eの各計測口120を通る2つの光路が形成されて、受体ホルダ100A、100Eに保持された各検査対象受体2に収容された液体が検査される。
【0045】
このとき、第二プレート63の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hは変位状態にある。つまり、受体ホルダ100A上に形成された光路に干渉しやすい両隣りの受体ホルダ100B、100Hは、いずれも変位状態である。同時に、受体ホルダ100E上に形成された光路に干渉しやすい両隣りの受体ホルダ100D、100Fは、いずれも変位状態である。これにより、受体ホルダ100B、100D、100F、100Hは、いずれも受体ホルダ100A、100Eの各計測口120よりも上方に退避されるため、光路に干渉するおそれが防止される。
【0046】
受体ホルダ100A、100Eの計測終了後、ターンテーブル33が45度回転することで、図4に示すように、受体ホルダ100B、100Fが計測位置に移動する。さらに、丸ラックギア43が可動範囲の最上端まで上昇して、第二プレート63の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hは定常状態になる。この状態で、受体ホルダ100B、100Fの各計測口120を通る2つの光路が形成されて、受体ホルダ100B、100Fに保持された各検査対象受体2に収容された液体が検査される。
【0047】
このとき、第一プレート60の受体ホルダ100A、100C、100E、100Gは変位状態にある。つまり、受体ホルダ100B上に形成された光路に干渉しやすい両隣りの受体ホルダ100C、100Aは、いずれも変位状態である。同時に、受体ホルダ100F上に形成された光路に干渉しやすい両隣りの受体ホルダ100G、100Eは、いずれも変位状態である。これにより、受体ホルダ100A、100C、100E、100Gは、いずれも受体ホルダ100A、100Eの各計測口120よりも上方に退避されるため、光路に干渉するおそれが防止される。
【0048】
受体ホルダ100B、100Fの計測終了後、ターンテーブル33が45度回転し、丸ラックギア43が可動範囲の最下端まで下降して、受体ホルダ100C、100G上に形成された2つの光路によって各検査対象受体2が計測される。受体ホルダ100C、100Gの計測終了後、ターンテーブル33が45度回転し、丸ラックギア43が可動範囲の最上端まで上昇して、受体ホルダ100D、100H上に形成された2つの光路によって各検査対象受体2が計測される。いずれの場合も、光路が形成される受体ホルダ100に隣接する他の受体ホルダ100は変位状態であるため、他の受体ホルダ100による光路への干渉が防止される。
【0049】
図6を参照して、受体ホルダ100の詳細構造を説明する。以下の説明では、図6の上方、下方、右下方、左上方、左下方、左上方を、それぞれ、受体ホルダ100の上方、下方、左方、右方、前方、後方とする。先述したように、ターンテーブル33の上方には、一対の受体ホルダ100がターンテーブル33の回転中心を挟んで対向配置されている。各受体ホルダ100は、上側以外を取り囲む壁部(底壁101、右壁102、左壁103、前壁104、後壁105)を有し、上側に開口部107が形成されている。開口部107は、後述の検査対象受体2に対応して平面視で長方形状に形成されている。よって、検査対象受体2は、開口部107を介して受体ホルダ100が有する内部空間に挿脱可能である。
【0050】
受体ホルダ100は、開口部107を開閉可能な蓋106を有する。蓋106は、開口部107よりも一回り大きい平面視で長方形状の板状部材である。右壁102の上端部には、蓋106の長手方向の一端部を回転自在に支持するヒンジ110が設けられている。一方、蓋106の長手方向の他端部には、ロック機構111が設けられている。ロック機構111は、レバー部材113および支持部材112から構成される。レバー部材113は、上下に延びる小片の板状体であって、下端部に係止爪114を有し、上端部に押圧部115を有する。支持部材112は、レバー部材113の長手方向中央部を回動可能に支持する。
【0051】
左壁103の上端部には、蓋106が閉じられた状態で、係止爪114が嵌まる凹部109が形成されている。レバー部材113は、図示外のばねによって、係止爪114を凹部109に係止する方向に付勢される。これにより、受体ホルダ100内に検査対象受体2が挿入されて蓋106が閉じられると、ロック機構111によって蓋106の自然開放が防止される。この状態では、蓋106の内面が検査対象受体2の上端部に当接して、検査対象受体2が受体ホルダ100の内部で固定される。なお、受体ホルダ100に対して検査対象受体2を挿脱する場合は、ユーザは押圧部115を操作することで蓋106を開放することができる。
【0052】
なお、L型プレート6から延びる軸46は後壁105に連結されており、軸46の回転に伴って受体ホルダ100が自転する(図2〜図5参照)。受体ホルダ100が定常状態である場合、ヒンジ110がターンテーブル33の内側を向き、ロック機構111がターンテーブル33の外側を向くように保持される(図1、図2、図4参照)。したがって、定常状態の受体ホルダ100が公転されている場合、左壁103が遠心方向の下流側を向き、右壁102側が遠心方向の上流側を向く。一方、受体ホルダ100が変位状態である場合、ヒンジ110が下側を向き、ロック機構111が上側を向くように保持される(図3、図5参照)。したがって、変位状態の受体ホルダ100が公転されている場合、底壁101が遠心方向の下流側を向き、蓋106が遠心方向の上流側を向く。
【0053】
受体ホルダ100は、検査対象受体2に貯留された液体を計測するための開口部である計測口120を有する。計測口120は、受体ホルダ100の両側面である前壁104および後壁105に対向配置された一対の開口部121、122である。計測口120は、受体ホルダ100における遠心方向の下流側、且つ、定常状態で重力方向の下流側となる位置に設けられる。より具体的には、開口部121は前壁104の左下部分(図6では右下部分)に設けられ、開口部122は後壁105の左下部分(図6では右下部分)に設けられている。開口部121、122は、同一の正方形状に形成されており、受体ホルダ100の内部空間を介して前後方向に連通している。
【0054】
図7を参照して、検査対象受体2の詳細構造を説明する。以下の説明では、図7の上方、下方、左方、右方、紙面手前側、紙面奥側を、それぞれ、検査対象受体2の上方、下方、右方、左方、前方、後方とする。検査対象受体2は、正面視で正方形状をなし、所定の厚みを有する透明な合成樹脂の板材20を主体とする。板材20の正面には、3つの窪みである貯留部21、22、23と、2つの溝部である流路24、25とが形成されている。
【0055】
貯留部21は、検査対象受体2の右上部分(図7では左上部分)に形成され、検査対象受体2に注入された検体が貯留される。貯留部22は、検査対象受体2の貯留部21の下側に形成され、検査対象受体2に注入された試薬が貯留される。貯留部23は、検査対象受体2の左下部分(図7では右下部分)に形成され、遠心処理によって検体および試薬を撹拌した液体が貯留される。流路24は、貯留部21から貯留部23まで延び、注入された検体が遠心力に応じて移動可能である。流路25は、貯留部22から貯留部23まで延び、注入された試薬が遠心力に応じて移動可能である。
【0056】
貯留部23は、検査対象受体2を保持した受体ホルダ100の自転角度が0度〜90度のいずれの場合でも、流入した液体の流出が規制される部位である。具体的には、貯留部23は、正面視で菱形状に形成されて、上端部に流路24、25が接続されている。貯留部23における流路24、25の接続部の直下には、貯留部23の内部に突出するように右下方へ延びる逆流防止壁231が設けられている。逆流防止壁231は、貯留部23に流入した液体が流路24、25に逆流するのを規制する。
【0057】
さらに、貯留部23の下端部から逆流防止壁231までの上下方向の距離H1は、検査対象受体2が定常状態の受体ホルダ100に保持された状態で、検査対象受体2内に注入される検体および試薬の混合液を収容可能な深さである。貯留部23の左端部から逆流防止壁231までの左右方向の距離H2は、検査対象受体2が変位状態の受体ホルダ100に保持された状態で、検査対象受体2内に注入される検体および試薬の混合液を収容可能な深さである。
【0058】
板材20の正面は、透明の合成樹脂の薄板から構成されたカバー部材200によって封止されている。カバー部材200には、貯留部21に検体を注入するための開口である注入口201と、貯留部22に試薬を注入するための開口である注入口202とが形成されている。なお、検体および試薬が注入されたのち、注入口201および注入口202に封止パッチ210がそれぞれ貼り付けられる。これにより、貯留部21、22に貯留された検体および試薬は、注入口201、202から検査対象受体2の外部に流出することが防止される。
【0059】
図8を参照して、検査対象受体2が収容された受体ホルダ100について説明する。検査対象受体2は、受体ホルダ100と前後左右方向が一致するように、開口部107を介して受体ホルダ100内へ縦方向に挿入される。蓋106が閉じられると、受体ホルダ100内で検査対象受体2が固定される。これにより、検査対象受体2の貯留部23は、計測口120を介して、流路24、25の延設方向と交差する方向(本実施形態では、流路24、25の延設方向と直交する水平方向)に露出される。詳細には、開口部121、122を介して、貯留部23が受体ホルダ100の前方および後方にそれぞれ露出される。
【0060】
図9を参照して、制御装置90の電気的構成について説明する。制御装置90は、検査装置1の主制御を司るCPU91と、各種データを一時的に記憶するRAM92と、制御プログラムを記憶したROM93とを有する。CPU91には、制御装置90に対する指示を入力するための操作部94、各種データやプログラムを記憶するハードディスク装置(HDD)95、各種情報を表示するディスプレイ96などが接続されている。
【0061】
さらに、CPU91には、公転コントローラ97、自転コントローラ98、計測コントローラ99などが接続されている。公転コントローラ97は、主軸モータ35を回転駆動することで、受体ホルダ100A〜100Hの公転を制御する。自転コントローラ98は、ステッピングモータ51を回転駆動することで、受体ホルダ100A〜100Hの自転を制御する。計測コントローラ99は、一対の計測部7のそれぞれについて、光源71の発光制御および光センサ72の検出制御を行うことで、検査対象物の光学計測を実行する。
【0062】
図10〜図13を参照して、検査装置1を用いた検査方法について説明する。ユーザは検査実行前に、検査対象受体2の貯留部21、22にそれぞれ検体および試薬を滴下し、注入口201、202をそれぞれ封止パッチ210で封止する。その後、ユーザは検査対象受体2を受体ホルダ100A〜100H内にそれぞれ挿入し、操作部94から処理開始のコマンドを入力する。これにより、CPU91は、ROM93に記憶されている制御プログラムに基づいて、以下に例示するような検査処理を実行する。なお、図10および図11では、検査対象受体2に作用する遠心方向を矢印で示している。
【0063】
まず、自転コントローラ98は、丸ラックギア43を可動範囲の最下端まで下降させる。これにより、第一プレート60の受体ホルダ100(つまり、受体ホルダ100A、100C、100E、100G)は定常状態となり(図2参照)、第二プレート63の受体ホルダ100(つまり、受体ホルダ100B、100D、100F、100H)は変位状態となる(図3参照)。公転コントローラ97はターンテーブル33を回転して、受体ホルダ100A〜100Hを所定の回転数で公転する遠心処理が開始される。この遠心処理によって、第一プレート60の受体ホルダ100では、図10に示すように、貯留部21内の検体は遠心力によって流路24を経由して貯留部23に流入する。貯留部22内の試薬は遠心力によって流路25を経由して貯留部23に流入して、検体と混合する。なお、第二プレート63の受体ホルダ100は変位状態であるため、貯留部21、22内の検体および試薬は移動しないか、あるいは、移動したとしても微量である。
【0064】
遠心処理の開始から所定時間が経過すると、自転コントローラ98は丸ラックギア43を可動範囲の最上端まで上昇させる。これにより、第二プレート63の受体ホルダ100は−90度自転して定常状態となり(図4参照)、第一プレート60の受体ホルダ100は90度自転して変位状態となる(図5参照)。この状態で遠心処理が継続することで、第一プレート60の受体ホルダ100では、図11に示すように、貯留部23内で検体および試薬の混合液が遠心方向の変化によって撹拌される。一方、第二プレート63の受体ホルダ100では、図10に示すように、貯留部21、22内の検体および試薬が遠心力によって流路24、25を移動し、貯留部23内で混合される。
【0065】
さらに所定時間が経過すると、自転コントローラ98は丸ラックギア43を可動範囲の最下端まで下降させる。これにより、第一プレート60の受体ホルダ100は定常状態となり(図2参照)、第二プレート63の受体ホルダ100は変位状態となる(図3参照)。この状態で遠心処理が継続することで、第二プレート63の受体ホルダ100では、図11に示すように、貯留部23内で検体および試薬の混合液が遠心方向の変化によって撹拌される。なお、第一プレート60の受体ホルダ100は定常状態に戻っているため、図10に示す状態で再度撹拌される。
【0066】
さらに所定時間が経過すると、一組の第一プレート60の受体ホルダ100A、100Eが計測位置(図1参照)に停止するように、公転コントローラ97はターンテーブル33の公転位置を制御する。このとき、第一プレート60の受体ホルダ100では、図12に示すように、貯留部23内で混合液が距離H1の範囲内で貯留される。第二プレート63の受体ホルダ100では、図13に示すように、貯留部23内で混合液が距離H2の範囲内で貯留される。いずれの受体ホルダ100においても、逆流防止壁231によって貯留部23からの混合液の流出が防止される。
【0067】
この状態で、計測コントローラ99は、遠心処理後の検査対象受体2内に存在する液体の計測処理を実行する。具体的には、各計測部7では、それぞれ光源71から光センサ72に向けて計測光が射出される。各計測光は、計測位置に存在する一組の受体ホルダ100A、100Eの各計測口120を経由するため、各計測口120から露出する検査対象受体2の貯留部23を透過する光路をそれぞれ形成する。各計測光は貯留部23内の混合液を透過する際に減衰するため、各光センサ72の受光量に基づいて混合液の検査結果が得られる。つまり、一回の計測処理によって、一組の受体ホルダ100に保持された各検査対象受体2内に存在する各混合液を同時に計測することができる。
【0068】
本実施形態では、計測位置に存在する一組の受体ホルダ100に隣り合う他の受体ホルダ100が、計測光に干渉しないように変位状態に制御される。図1に示す例では、計測位置に存在する第一プレート60の受体ホルダ100A、100Eが定常状態であるのに対し、その両側に位置する第二プレート63の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hが変位状態である。その結果、受体ホルダ100A、100Eの各貯留部23は、他の受体ホルダ100B、100D、100F、100Hに被覆されることなく左右方向に露出する(図2参照)。
【0069】
これにより、計測位置に存在する受体ホルダ100の貯留部23を透過する光路が、他の受体ホルダ100に干渉されることなく形成されて、正確な計測結果を得ることができる。また、光路に干渉する他の受体ホルダ100を光路と略直交する方向に回転移動させることで、相対的に短い移動距離で光路から離間させることができる。さらに、光源71と光センサ72とを結ぶ光路を、平面視で他の受体ホルダ100に重なる位置に形成できる。そのため、光源71と光センサ72の配置の自由度が高まるのみならず、光源71および光センサ72を光路が相対的に短くなる位置に配置することができる。
【0070】
次いで、ターンテーブル33が45度公転し、且つ、丸ラックギア43が可動範囲の最上端まで上昇する。これにより、第二プレート63の受体ホルダ100は定常状態となり(図4参照)、第一プレート60の受体ホルダ100は変位状態となり(図5参照)、一組の第二プレート63の受体ホルダ100B、100Fが計測位置に移動する。このとき、第一プレート60の受体ホルダ100では、図13に示すように、貯留部23内で混合液が距離H2の範囲内で貯留される。第二プレート63の受体ホルダ100では、図12に示すように、貯留部23内で混合液が距離H1の範囲内で貯留される。この状態で、上記と同様に計測処理が実行される。
【0071】
さらに、ターンテーブル33が45度公転し、且つ、丸ラックギア43が可動範囲の最下端まで下降する。これにより、第一プレート60の受体ホルダ100は定常状態となり(図2参照)、第二プレート63の受体ホルダ100は変位状態となる(図3参照)、他の一組の第一プレート60の受体ホルダ100C、100Gが計測位置に移動する。この状態で、上記と同様に計測処理が実行される。
【0072】
最後に、ターンテーブル33が45度公転し、且つ、丸ラックギア43が可動範囲の最上端まで上昇する。第二プレート63の受体ホルダ100は定常状態となり(図4参照)、第一プレート60の受体ホルダ100は変位状態となり(図5参照)、他の一組の第二プレート63の受体ホルダ100D、100Hが計測位置に移動する。この状態で、上記と同様に計測処理が実行される。以上の検査方法によって、検査装置1が有する8つの受体ホルダ100A〜100Hに保持された全ての検査対象受体2について、混合液の計測が実行される。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の検査装置1によれば、検査対象受体2を保持する箱状の受体ホルダ100が主軸57を中心に公転されて、流路24、25の延設方向と主軸57を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で保持された検査対象受体2に遠心力が付与される。受体ホルダ100が所定量公転されたのち、貯留部23に光を透過させて混合液が計測される。計測部7は、受体ホルダ100が公転される範囲の外側に、光源71および光センサ72を有する。混合液の計測時には、検査対象受体2の貯留部23を光路が通る位置に計測対象の受体ホルダ100が自転され、且つ、光路から離間する位置まで他の受体ホルダ100が自転される。
【0074】
これにより、混合液の計測時に光路が他の受体ホルダ100によって干渉されることが防止され、計測対象の受体ホルダ100に保持された検査対象受体2の貯留部23に存在する混合液を正確に計測できる。また、検査対象受体2の貯留部23に対して上下方向とは異なる方向から光学計測を行う場合でも、光源71と光センサ72とを結ぶ光路の長さを抑制することができる。ひいては、光路が相対的に長くなることに伴う計測精度の悪化を抑制し、さらに検査装置1の小型化を実現することができる。
【0075】
また、光路に位置する他の受体ホルダ100を計測対象の受体ホルダ100とは異なる角度で自転させるだけで、混合液の計測時に光路が他の受体ホルダ100によって干渉されることを防止できる。より詳細には、混合液の計測時には、計測対象の受体ホルダ100は光路が計測口120を通る角度(0度)に変更され、他の受体ホルダ100は光路から離間する角度(90度)に変更される。したがって、計測対象の受体ホルダ100に保持された検査対象受体2の貯留部23に存在する混合液を、計測口120を通る光路によって正確に計測できる。
【0076】
また、複数の受体ホルダ100が0度および90度のいずれに自転された場合でも、検査対象受体2では貯留部23からの混合液の流出が規制される。よって、複数の受体ホルダ100でそれぞれ保持されている検査対象受体2を連続して計測できる。さらに、一組の受体ホルダ100に保持されている検査対象受体2を、一組の計測部7で同時に計測することで、多数の検査対象受体2を用いて効率的に検査を行うことができる。
【0077】
上記実施形態において、主軸モータ35が本発明の「第一駆動部」に相当する。ステッピングモータ51が本発明の「第二駆動部」に相当する。検査対象受体2を備えた検査装置1が、本発明の「検査システム」に相当する。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、検査装置1、検査対象受体2、受体ホルダ100の各構造や、受体ホルダ100の数量、自転角度、遠心方向などは単なる例示であり、測定する条件に合わせて決定すればよい。
【0079】
すなわち、上記実施形態の検査装置1では、最大8つの検査対象受体を同時に検査するために8つの受体ホルダ100を備えているが、受体ホルダ100の数量は適宜変更可能である。また、上記実施形態の角度変更機構34では、一つの可動部材(丸ラックギア43)を介して複数の受体ホルダ100を同時に自転させているが、受体ホルダ100を自転させる構造は適宜変更可能である。例えば、複数組の受体ホルダ100を組単位で独立して自転させる構造を採用してもよいし、複数の受体ホルダ100を全て独立して自転させる構造を採用してもよい。
【0080】
上記実施形態の検査装置1では、受体ホルダ100の自転角度が0度〜90度である。これに代えて、検査装置1は他の角度範囲(例えば、0度〜180度)で、受体ホルダ100を自転させてもよい。また、光路を妨げる他の受体ホルダ100の自転角度は90度に限定されず、光路を妨げる他の受体ホルダ100は光路から離間する角度(例えば、45度)で自転されればよい。
【符号の説明】
【0081】
1 検査装置
2 検査対象受体
7 計測部
20 板材
23 貯留部
24 流路
25 流路
35 主軸モータ
46 軸
51 ステッピングモータ
57 主軸
71 光源
72 光センサ
100 受体ホルダ
120 計測口
121 開口部
122 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物である液体が注入される注入口と、前記注入口から注入された前記液体が移動可能な平面方向に延びる流路と、前記流路の下流側に移動した前記液体が貯留される貯留部とが形成された検査対象受体を、前記検査対象受体から離間した第一の軸線を中心に回転させて、遠心力によって前記液体を前記流路内で移動させる検査装置であって、
前記流路の延設方向と前記第一の軸線を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で、前記検査対象受体をそれぞれ保持する複数の受体ホルダと、
前記複数の受体ホルダの少なくとも一つに前記検査対象受体が保持された状態で、前記複数の受体ホルダを前記第一の軸線を中心に一方向へ回転させる第一駆動部と、
前記仮想的な平面に対して直交する方向に延びる第二の軸線を中心に、前記複数の受体ホルダをそれぞれ双方向に回転可能な第二駆動部と、
前記第一駆動部によって前記複数の受体ホルダが所定量回転されたのち、前記受体ホルダに保持されている前記検査対象受体ごとに、前記貯留部に遠心方向と交差する方向から光を透過させて、前記液体を計測する計測部とを備え、
前記計測部は、前記受体ホルダが回転される範囲の外側から、計測対象の前記検査対象受体の前記貯留部に光を照射する光源と、前記受体ホルダが回転される範囲の外側で、前記貯留部を透過した光を受光するセンサとを有し、
前記第二駆動部は、前記計測部による前記液体の計測時に、計測対象の前記検査対象受体を保持した前記受体ホルダである対象ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路が前記貯留部を通る位置に回転させ、且つ、前記対象ホルダとは異なる他の前記受体ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路から離間する位置に回転させることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第二駆動部は、前記計測部による前記液体の計測時に、前記対象ホルダの回転角度を第一角度に変更し、且つ、前記対象ホルダとは異なる他の前記受体ホルダのうちで前記光路上に位置する干渉ホルダを、前記第一角度に対して所定の角度差を有する第二角度に変更することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記複数の受体ホルダは、前記検査対象受体を挿脱可能な内部空間を有する同一形状の箱状体であり、
前記受体ホルダは、前記流路の延設方向と略平行な前記受体ホルダの両側面に対向して設けられた一対の開口部であって、前記検査対象受体が前記受体ホルダに挿入されている状態で、前記貯留部が前記遠心方向と交差する方向に露出される計測口を有し、
前記第一角度は、前記計測部による前記液体の計測時に、前記対象ホルダの前記計測口を前記光路が通る回転角度であり、
前記第二角度は、前記計測部による前記液体の計測時に、前記干渉ホルダから離間した位置を前記光路が通る回転角度であることを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査装置に使用される前記検査対象受体であって、
前記貯留部は、前記検査対象受体を保持した前記受体ホルダが前記第一角度および前記第二角度のいずれに回転されたかに関わらず、前記貯留部に流入した液体の流出が規制される部位であることを特徴とする検査対象受体。
【請求項5】
前記複数の受体ホルダは、前記第一の軸線を中心に点対称で複数組配置され、
前記第二駆動部は、前記第一の軸線を中心に点対称で配置された各組の前記受体ホルダを、それぞれ連動させて回転させ、
前記計測部は、前記第一の軸線を中心に点対称をなす一組で配置され、
前記一組の計測部は、点対称で配置された一組の前記受体ホルダを、それぞれ前記対象ホルダとして計測することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の検査装置。
【請求項6】
検査対象物である液体が収容される検査対象受体と、前記検査対象受体から離間した第一の軸線を中心に前記検査対象受体を回転させて、前記検査対象受体に遠心力を付与して前記液体を計測する検査装置とを備えた検査システムであって、
前記検査対象受体は、
前記液体が注入される注入口と、
前記注入口から注入された前記液体が移動可能な平面方向に延びる流路と、
前記流路の下流側に移動した前記液体が貯留される貯留部とを備え、
前記検査装置は、
前記流路の延設方向と前記第一の軸線を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で、前記検査対象受体をそれぞれ保持する複数の受体ホルダと、
前記複数の受体ホルダの少なくとも一つに前記検査対象受体が保持された状態で、前記複数の受体ホルダを前記第一の軸線を中心に一方向へ回転させる第一駆動部と、
前記仮想的な平面に対して直交する方向に延びる第二の軸線を中心に、前記複数の受体ホルダをそれぞれ双方向に回転可能な第二駆動部と、
前記第一駆動部によって前記複数の受体ホルダが所定量回転されたのち、前記受体ホルダに保持されている前記検査対象受体ごとに、前記貯留部に遠心方向と交差する方向から光を透過させて、前記液体を計測する計測部とを備え、
前記計測部は、前記受体ホルダが回転される範囲の外側から、計測対象の前記検査対象受体の前記貯留部に光を照射する光源と、前記受体ホルダが回転される範囲の外側で、前記貯留部を透過した光を受光するセンサとを有し、
前記第二駆動部は、前記計測部による前記液体の計測時に、計測対象の前記検査対象受体を保持した前記受体ホルダである対象ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路が前記貯留部を通る位置に回転させ、且つ、前記対象ホルダとは異なる他の前記受体ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路から離間する位置に回転させることを特徴とする検査システム。
【請求項1】
検査対象物である液体が注入される注入口と、前記注入口から注入された前記液体が移動可能な平面方向に延びる流路と、前記流路の下流側に移動した前記液体が貯留される貯留部とが形成された検査対象受体を、前記検査対象受体から離間した第一の軸線を中心に回転させて、遠心力によって前記液体を前記流路内で移動させる検査装置であって、
前記流路の延設方向と前記第一の軸線を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で、前記検査対象受体をそれぞれ保持する複数の受体ホルダと、
前記複数の受体ホルダの少なくとも一つに前記検査対象受体が保持された状態で、前記複数の受体ホルダを前記第一の軸線を中心に一方向へ回転させる第一駆動部と、
前記仮想的な平面に対して直交する方向に延びる第二の軸線を中心に、前記複数の受体ホルダをそれぞれ双方向に回転可能な第二駆動部と、
前記第一駆動部によって前記複数の受体ホルダが所定量回転されたのち、前記受体ホルダに保持されている前記検査対象受体ごとに、前記貯留部に遠心方向と交差する方向から光を透過させて、前記液体を計測する計測部とを備え、
前記計測部は、前記受体ホルダが回転される範囲の外側から、計測対象の前記検査対象受体の前記貯留部に光を照射する光源と、前記受体ホルダが回転される範囲の外側で、前記貯留部を透過した光を受光するセンサとを有し、
前記第二駆動部は、前記計測部による前記液体の計測時に、計測対象の前記検査対象受体を保持した前記受体ホルダである対象ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路が前記貯留部を通る位置に回転させ、且つ、前記対象ホルダとは異なる他の前記受体ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路から離間する位置に回転させることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第二駆動部は、前記計測部による前記液体の計測時に、前記対象ホルダの回転角度を第一角度に変更し、且つ、前記対象ホルダとは異なる他の前記受体ホルダのうちで前記光路上に位置する干渉ホルダを、前記第一角度に対して所定の角度差を有する第二角度に変更することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記複数の受体ホルダは、前記検査対象受体を挿脱可能な内部空間を有する同一形状の箱状体であり、
前記受体ホルダは、前記流路の延設方向と略平行な前記受体ホルダの両側面に対向して設けられた一対の開口部であって、前記検査対象受体が前記受体ホルダに挿入されている状態で、前記貯留部が前記遠心方向と交差する方向に露出される計測口を有し、
前記第一角度は、前記計測部による前記液体の計測時に、前記対象ホルダの前記計測口を前記光路が通る回転角度であり、
前記第二角度は、前記計測部による前記液体の計測時に、前記干渉ホルダから離間した位置を前記光路が通る回転角度であることを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査装置に使用される前記検査対象受体であって、
前記貯留部は、前記検査対象受体を保持した前記受体ホルダが前記第一角度および前記第二角度のいずれに回転されたかに関わらず、前記貯留部に流入した液体の流出が規制される部位であることを特徴とする検査対象受体。
【請求項5】
前記複数の受体ホルダは、前記第一の軸線を中心に点対称で複数組配置され、
前記第二駆動部は、前記第一の軸線を中心に点対称で配置された各組の前記受体ホルダを、それぞれ連動させて回転させ、
前記計測部は、前記第一の軸線を中心に点対称をなす一組で配置され、
前記一組の計測部は、点対称で配置された一組の前記受体ホルダを、それぞれ前記対象ホルダとして計測することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の検査装置。
【請求項6】
検査対象物である液体が収容される検査対象受体と、前記検査対象受体から離間した第一の軸線を中心に前記検査対象受体を回転させて、前記検査対象受体に遠心力を付与して前記液体を計測する検査装置とを備えた検査システムであって、
前記検査対象受体は、
前記液体が注入される注入口と、
前記注入口から注入された前記液体が移動可能な平面方向に延びる流路と、
前記流路の下流側に移動した前記液体が貯留される貯留部とを備え、
前記検査装置は、
前記流路の延設方向と前記第一の軸線を含む仮想的な平面とが平行をなす姿勢で、前記検査対象受体をそれぞれ保持する複数の受体ホルダと、
前記複数の受体ホルダの少なくとも一つに前記検査対象受体が保持された状態で、前記複数の受体ホルダを前記第一の軸線を中心に一方向へ回転させる第一駆動部と、
前記仮想的な平面に対して直交する方向に延びる第二の軸線を中心に、前記複数の受体ホルダをそれぞれ双方向に回転可能な第二駆動部と、
前記第一駆動部によって前記複数の受体ホルダが所定量回転されたのち、前記受体ホルダに保持されている前記検査対象受体ごとに、前記貯留部に遠心方向と交差する方向から光を透過させて、前記液体を計測する計測部とを備え、
前記計測部は、前記受体ホルダが回転される範囲の外側から、計測対象の前記検査対象受体の前記貯留部に光を照射する光源と、前記受体ホルダが回転される範囲の外側で、前記貯留部を透過した光を受光するセンサとを有し、
前記第二駆動部は、前記計測部による前記液体の計測時に、計測対象の前記検査対象受体を保持した前記受体ホルダである対象ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路が前記貯留部を通る位置に回転させ、且つ、前記対象ホルダとは異なる他の前記受体ホルダを、前記光源および前記センサを結ぶ光路から離間する位置に回転させることを特徴とする検査システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−79818(P2013−79818A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218627(P2011−218627)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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