検査装置および検査方法
【課題】 検査結果における異常検出の原因となる可能性を予め検出する。
【解決手段】 機器試薬決定手段9は、入力された検査IDをキーとして、検査試薬データ記憶手段7に記憶された検査ID別対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定する。決定した検査機器および検査試薬について、期限判断手段11は、当該使用機器についての検査機器期限決定データを検査機器データ記憶手段5から、当該検査試薬についての検査試薬期限決定データを検査試薬データ記憶手段7から読み出し、前記入力された検査日が、前記機器検査期限および検査試薬期限を徒過しているか否か判断する。報知手段13は、前記検査日が、前記検査有効日または調製試薬有効日を徒過している場合には、これを報知する。
【解決手段】 機器試薬決定手段9は、入力された検査IDをキーとして、検査試薬データ記憶手段7に記憶された検査ID別対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定する。決定した検査機器および検査試薬について、期限判断手段11は、当該使用機器についての検査機器期限決定データを検査機器データ記憶手段5から、当該検査試薬についての検査試薬期限決定データを検査試薬データ記憶手段7から読み出し、前記入力された検査日が、前記機器検査期限および検査試薬期限を徒過しているか否か判断する。報知手段13は、前記検査日が、前記検査有効日または調製試薬有効日を徒過している場合には、これを報知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンピュータを用いた検査装置に関し、特に、検査前処理の確認に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬品等の品質管理として、以下のような目的で、種種の検査がおこなわれている。
【0003】
(1)原料、資材、製品(中間製品を含む)の品質(力価、純度など)が規格に適合しているかの確認、
(2)品質の偏りやばらつきを調査して製造工程へのフィードバックを行うことによる各工程における安定性の向上、
(3)品質異常の発生原因の究明、
(4)製品の安定性の調査。
【0004】
かかる検査報告において、従来は、各種の試験結果に基づき、異常があった場合に、遡及してその原因を探るという手法を採用していた。すなわち、その試験に用いた機器、試薬を含め、適正に試験が行われたことを前提とするものであった。
【0005】
特許文献1には、検体の測定についてコンピュータを用いる検体検査システムが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−66050号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記試験結果については、試験に用いる機器や試薬に問題があっても結果的には正常という試験結果がなされる場合もあった。すなわち、ある試験結果が正常である場合でも、それは、異常があった試薬を用いた結果、種種の要因の関与によりたまたま異常を検出しなかった場合もある。
【0008】
この発明は、上記問題を解決し、検査結果の信頼性を向上させる検査装置を提供することを目的とする。詳しくは、検査結果における異常検出の原因となる可能性を予め検出することができる検査装置を提供することを目的とする。さらに詳しくは、検査に用いる検査装置および検査に用いる検査試薬の異常を検出できる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1)本発明にかかる検査装置は、1)検査に用いる検査機器の使用期限を決定する検査機器期限決定データを記憶する検査機器データ記憶手段、2)検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データを記憶する検査試薬データ記憶手段、3)検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた検査ID別対応データを記憶した検査ID別対応データ記憶手段、4)検査IDおよび検査日を入力する入力手段、5)前記入力された検査IDをキーとして、前記検査ID別対応データ記憶手段に記憶された検査ID別対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定する機器試薬決定手段、6)前記機器試薬決定手段が決定した検査機器および検査試薬について、前記検査機器別データ記憶手段から当該使用機器についての検査機器期限決定データと、前記検査試薬データ記憶手段から当該検査試薬についての検査試薬期限決定データを読み出し、前記入力された検査日が、前記機器検査期限および検査試薬期限を徒過しているか否か判断する期限判断手段、7)前記検査日が、前記機器検査期限または前記検査試薬期限のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知する報知手段を備えている。したがって、試験に用いる機器や試薬の異常を報知することができる。
【0010】
2)本発明にかかる検査方法は、コンピュータを用いて、検査前に検査機器および検査試薬が適正であるかを検査する検査方法であって、A)前記コンピュータの記憶部に、a1)検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた機器試薬対応データ、a2)各検査機器ごとの検査期限を決定する検査機器期限決定データ、a3)前記各検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データを記憶させておき、B)前記コンピュータは、検査IDが入力されると、当該検査IDをキーとして、前記機器試薬対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定し、C)前記検査機器期限決定データおよび前記検査試薬期限決定データを用いて、与えられた検査日が、前記検査機器期限または検査試薬期限のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知する。したがって、試験に用いる機器や試薬の異常を報知することができる。
【0011】
3)本発明にかかるプログラムは、コンピュータを、検査前に検査機器および検査試薬が適正であるかを検査する検査装置として機能させるプログラムであって、A)前記コンピュータには、a1)検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた機器試薬対応データ、a2)各検査機器ごとの検査期限を決定する検査機器期限決定データ、a3)前記各検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データが記憶されており、B)前記コンピュータに以下の処理を実行させること、検査IDが入力されると、当該検査IDをキーとして、前記機器試薬対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定し、C)前記検査機器期限決定データおよび前記検査試薬期限決定データを用いて、与えられた検査日が、前記検査機器期限または検査試薬期限のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知する。したがって、試験に用いる機器や試薬の異常を報知することができる。
【0012】
4)本発明にかかるプログラムは、さらに、前記コンピュータの記憶部に、前記検査試薬が試薬として機能するための定められている試薬特性値の許容管理データおよび、各検査試薬毎に測定した測定試薬特性値を記憶しておき、前記決定された検査試薬について、前記測定試薬特性値が、前記許容管理データ範囲内か否かを判断させ、前記測定試薬特性値が、前記許容管理データ範囲内でない場合には、これを前記報知手段にて操作者に報知させる。したがって、試験に用いる試薬が変質していないか等を報知することができる。
【0013】
5)本発明にかかるプログラムは、A)前記コンピュータの記憶部に、以下の1)〜3)を記憶させ、1)前記各検査試薬について検査に用いる標準品および精度管理品、2)前記許容管理データとして、前記検査試薬特性値許容管理データに加えて、当該検査において用いられる前記標準品の標準品許容管理データおよび当該検査において用いられる前記精度管理品の許容管理データ、3)前記決定した検査試薬を用いて前記標準品および精度管理品を測定した測定標準品特性値および測定精度管理品特性値、B)前記測定標準品特性値および/または測定精度管理品特性値が、前記許容管理データの範囲内か否かを判断させ、前記測定標準品特性値および/または測定精度管理品特性値が、前記許容管理データ範囲内ではない場合には、これを操作者に報知させる。したがって、前記測定標準品特性値および/または測定精度管理品特性値の異常を報知することができる。
【0014】
6)本発明にかかるプログラムは、前記コンピュータの記憶部に、前記検査対象の検体の許容管理データを記憶しておき、前記検査対象の検体についての測定値が、前記許容管理データの範囲内か否かを判断させ、前記許容管理データ範囲内ではない場合には、これを操作者に報知させる。したがって、前記検査対象の検体についての異常を報知することができる。
【0015】
なお、本明細書において、「調製試薬」とは、調製済みの試薬をいう。また、「報知」とは、実施形態に示すように、操作者に画面上で報知することはもちろん、画面上もしくはこれを印字して当該検査手法の信頼性を第三者に知らせることも含む。
【0016】
また、「検査機器」とは実施形態では使用機器が、「検査試薬」は調製試薬がそれぞれ該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
1.概略および機能ブロックの説明
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に、本発明にかかる検査装置1の機能ブロック図を示す。
【0018】
検査装置1は、検査ID別対応データ記憶手段3、検査機器データ記憶手段5、検査試薬データ記憶手段7、入力手段8、機器試薬決定手段9、期限判断手段11、および報知手段13を備えている。
【0019】
検査機器データ記憶手段5は、検査に用いる検査機器の使用期限を決定する検査機器期限決定データを記憶する。検査試薬データ記憶手段7は、検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データを記憶する。検査ID別対応データ記憶手段3は、検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた検査ID別対応データを記憶する。入力手段8は操作者の命令に応じて、検査IDおよび検査日を入力する。機器試薬決定手段9は、入力された検査IDをキーとして、検査ID別対応データ記憶手段3に記憶された検査ID別対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定する。期限判断手段11は、機器試薬決定手段9が決定した検査機器および検査試薬について、検査機器別データ記憶手段5から当該使用機器についての検査機器期限決定データと、検査試薬データ記憶手段7から当該検査試薬についての検査試薬期限決定データを読み出し、前記入力された検査日が、前記機器検査期限および検査試薬期限を徒過しているか否か判断する。報知手段13は、前記検査日が、前記検査有効日または調製試薬有効日のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知する。
【0020】
2.検査装置1のハードウェア構成
図1に示す検査装置1のハードウェア構成について図2を用いて説明する。図2は、検査装置1をCPUを用いて構成したハードウェア構成の一例である。
【0021】
検査装置1は、CPU23、メモリ27、ハードディスク26、CDD(CD−ROMドライブ)25、入力デバイス28、モニタ30,およびバスライン29を備えている。
【0022】
CPU23は、ハードディスク26に記憶されたプログラムにしたがいバスライン29を介して、各部を制御する。なお、本実施形態においては、オペレーティングシステム26oとして、マイクロソフト社製のWindowsXP(商標)を採用した。
【0023】
ハードディスク26は、後述するプログラムが記憶されたプログラム記憶部26s、マスタファイル記憶部26m、検査結果記憶部26kを有する。このプログラムは、CDD25を介して、プログラムが記憶されたCD−ROM25aから読み出されてハードディスク26にインストールされたものである。なお、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク(FD)、ICカード等のプログラムをコンピュータ可読の記録媒体から、ハードディスクにインストールさせるようにしてもよい。さらに、通信回線を用いてダウンロードするようにしてもよい。
【0024】
本実施形態においては、プログラムをCD−ROMからハードディスク26にインストールさせることにより、CD−ROMに記憶させたプログラムを間接的にコンピュータに実行させるようにしている。しかし、これに限定されることなく、CD−ROMに記憶させたプログラムをCDD25から直接的に実行するようにしてもよい。なお、コンピュータによって、実行可能なプログラムとしては、そのままインストールするだけで直接実行可能なものはもちろん、一旦他の形態等に変換が必要なもの(例えば、データ圧縮されているものを、解凍する等)、さらには、他のモジュール部分と組み合せて実行可能なものも含む。
【0025】
マスタファイル記憶部26mには、機器・試薬構成マスタ、試薬マスタ、機器マスタ、試薬調製マスタファイル、参照品マスタが記憶される。各マスタファイルについて図3〜図7を用いて説明する。
【0026】
機器・試薬構成マスタのデータ構造を図3に示す。機器・試薬構成マスタは、試験(検査内容)について、使用する試薬および機器が記憶されている。この場合、使用機器のタグ番号、使用試薬コード、使用試薬管理番号などが記憶されている。
【0027】
試薬マスタのデータ構造を図4に示す。試薬マスタは、試薬毎に、試薬の名称や特性値の上限下限(測定の許容範囲)およびアラーム日などが記憶されている。アラーム日とは、試薬としての有効期限の所定期間前になると警告アラームを表示するための日数である。
【0028】
機器マスタのデータ構造を図5に示す。機器マスタは、機器毎に、機器の名称や使用区分、有効期限などが記憶されている。
【0029】
試薬調製マスタのデータ構造を図6に示す。試薬調製マスタは、調製試薬毎に、管理番号、試薬コード、調製者、有効期限、アラーム日、これらに加えて、ペーハー値(pH),電気伝導度(EC),吸光度(OD)などの当該試薬の属性の測定結果などが記憶されている。なお、ECは、溶液のイオン状態(特に塩濃度に関連)の指標になるもので、例えば蛋白質製剤では、イオン状態の違いにより同じ蛋白質でも溶液中で異なる性状を示す。ODは、溶液中における物質の吸光性をいう。吸光度を測定することで、例えば特定の蛋白質の濃度を知ることができる。すなわち、ODは、この場合特定の蛋白質溶液の濃度の指標となる。
【0030】
試薬調製マスタと試薬マスタの違いについて説明する。試薬マスタには、一般的な試薬の特性などが記憶されており、試薬調製マスタには、試薬マスタに記憶された試薬について、調製された試薬に関する実際の測定値が記憶される。
【0031】
参照品マスタのデータ構造を図7に示す。参照品マスタは、検査結果が所定の基準を満たしているかを判断するためのデータが記憶されている。
【0032】
このように、マスタファイル記憶部26mには、検査前処理で用いるマスタファイルと検査の後処理で用いるマスタファイルとが記憶される。なお、前記マスタファイルについては、検査前処理および後処理の双方で用いられるものも存在する。各マスタファイルの参照については、後述する。
【0033】
4.フローチャート
検査装置1における処理について、図8を用いて説明する。操作者は、入力デバイス28からこれからおこなう検査を特定する検査IDおよび検査日を入力する。なお、検査日はコンピュータ内の日付を利用して自動入力するようにしてもよい。以下、試験を実行する日が2003年6月27日で、検査として、試験「アルミニウム含有試験(AL)」が入力されたものとして説明する。
【0034】
CPU23は、試験内容が指定されると、検査内容を決定する(図8ステップS1)。CPU23は、検査内容が決定されると測定前処理判断をおこなう(ステップS3)。測定前処理判断の詳細について図9を用いて説明する。
【0035】
CPU23は、図3に示す機器・試薬構成マスタを参照して、使用する機器および調製試薬を決定する(図9ステップS11)。この場合、検査は試験「アルミニウム含有試験(AL)」なので、使用機器としては「HH1XI0261」 、「HH1ZA0023」が、使用する試薬として管理番号「20021218」、「20030501」の調製試薬が特定される。
【0036】
つぎに、CPU23は、機器の有効期限またはアラーム日が経過しているか否か判断する(ステップS13)。使用機器の有効期限を越えているか否かは、機器マスタに記憶された有効期限を参照すれば、判断することができる。この場合、使用機器「HH1XI0261」は、機器マスタ(図5参照)では、有効期限が「200306」となっている。これは、2003年6月末を意味する。一方、検査日が2003年6月27日であるので、CPU23は、有効期限を越えていないと判断する。また、使用機器「HH1ZA0023」についても、有効期限が「200309」(2003年9月末)であるので、有効期限を越えていないと判断する。また、アラーム日の経過は、機器マスタ(図5参照)の有効期限から使用機器ごとのアラーム日を演算して、このアラーム日が経過しているか否か判断すればよい。本実施形態においては、アラーム日を有効期限の2ヶ月前と設定した。したがって、この場合、使用機器「HH1XI0261」のアラーム日は、2003年4月末となる。現在は2003年6月27日であるので、CPU23は、使用機器「HH1XI0261」については、アラーム日を経過していると判断する。また、使用機器「HH1ZA0023」は有効期限は2003年9月30日であるので、アラーム日は7月30日となる。したがってCPU23は、使用機器「HH1ZA0023」についてはアラーム日が経過していないと判断する。結局、この場合、使用機器「HH1XI0261」については、アラーム日を経過したと記憶される(ステップS15)。
【0037】
なお、有効期限が経過している場合には、当然アラーム日も経過しているので、有効期限を経過している使用機器についてはアラーム日を判断しなくてもよい。
【0038】
つぎに、CPU23は、調製試薬の有効期限またはアラーム日が超過しているか否か判断する(図9ステップS17)。具体的には、CPU23は、調製試薬として用いる管理番号「20021218」、「20030501」の試薬について、試薬調製マスタに設定されている有効期限またはアラーム日を越えていないか否か判断する。この場合、管理番号「20021218」の試薬についての有効期限は2003年6月17日、アラーム日は2003年5月18日であり、管理番号「20030501」の試薬について有効期限は2003年5月14日、アラーム日は2003年5月07日である。これに対して、検査日は2003年6月27日である。したがって、CPU23は、いずれの試薬も有効期限を越えていると判断し、管理番号「20021218」、「20030501」の試薬についていずれも有効期限切れと記憶する(ステップS19)。
【0039】
つぎに、CPU23は、調製試薬について予め測定した測定結果が管理幅内か否か判断する(図9ステップS21)。これは、試薬調製マスタ(図6参照)の測定結果が、試薬マスタ(図4参照)に設定された範囲内か否か判断すればよい。この場合、調剤試薬「20021218」は、pH,ECがそれぞれ”5.61"、”3.83”である。この調剤試薬「20021218」は、試薬コードが「HH1SAB」であるので、試薬マスタを参照して、許容範囲は、pH,ECがそれぞれ”5.55〜5.75"、”-9999999〜9999999”、である。したがって、管理範囲内と判断する。また、調剤試薬「20030501」は、ODがそれぞれ”0.61”である。この管理番号の試薬「HH1SRS」の許容範囲は試薬マスタを参照すると、ODの下限が”0.85”、である。したがって、CPU23は、試薬「HH1SRS」が管理範囲内でないと記憶する(図9ステップS23)。
【0040】
CPU23は、測定前処理結果画面を表示する(ステップS25)。この場合、ステップS15,ステップS19,ステップS23における記憶が程度に応じてアラーム表示される。本実施形態においては、図10に示すように、アラーム日を越えている場合には該当部分を黄色で表示する黄色アラームで、有効期限切れや管理幅外である場合には該当部分を赤色で表示する赤アラームでこれを操作者に報知するようにした。図10においては、領域51に機器に関するアラームを、領域53に試薬に関するアラームを表示することにより、注意すべきことを操作者に表示するようにした。
【0041】
操作者は、測定前処理が終了すると、測定をおこなう。以下では、検量線法を採用した。検量線法とは、既知の溶液(標準液列)について、今回の計測対象の物質と同じ条件で測定し、既知の物質の検量線を求め、かかる検量線から未知の物質の特性を計測する方法をいう。
【0042】
CPU23は、測定前処理が終了すると、測定後処理を実行する(図8ステップS5)。測定後処理について図11を用いて説明する。操作者は測定結果を入力する(ステップS41)。本実施形態においては、検量線を求めるための検量線データの測定値と、検体データの測定値を入力する。この場合、図12Aに示すように、検量線データとして、濃度が「BL」にて、「0.511」,「0.605」,「0.642」が,濃度が「2μg/ml」にて「0.023」,「1.040」,「1.047」が、濃度が「4μg/ml」にて「1.575」,「1.474」,「1.290」が入力されたものとする。また、図12Bに示すように、検体データとして、検体名「TSY004-4-K」について、3回の計測がおこなわれ、その測定生データとして、希釈倍率「10」,採取量「1.0」で、「1.064」,「1.124」,「1.049」と、希釈倍率「20」,採取量「0.5」で「1.017」,「1.020」,「1.030」と、希釈倍率「40」,採取量「2.0」で「1.021」,「1.028」,「1.022」が入力され、また、検体名「TSY005-4-K」について、2回の計測がおこなわれ、その測定生データとして、希釈倍率「20」,採取量「1.0」で「1.069」,「1.074」,「1.083」と、希釈倍率「10」,採取量「1.0」で「1.596」,「1.668」,「1.615」が入力されたものとする。
【0043】
なお、濃度が「BL」とは、溶液中に検出対象物質が含まれていないブランク状態をいう。
【0044】
なお、検量線データについては、測定値があきらかに誤っているというデータが存在する場合がある。この場合でいえば、濃度が「2μg/ml」の場合の「0.023」という値である。このようなデータは、明らかな誤りであるので、操作者は、これを入力したときに、何らかの測定ミスと考えて、かかるデータを削除することができる。
【0045】
かかる検量線データ削除処理は割り込み処理にて実行される。検量線データ削除処理について、図13を用いて説明する。検量線データが入力されると、CPU23は、図14Aに示すような入力結果表示画面を表示する。操作者は、これを見て、削除対象の項目のチェックボックスをクリックする。この場合、濃度が「2μg/ml」の場合の「0.023」という値は明らかな誤りと判断できるので、これ削除するために、チェックボックス71をクリックする。
【0046】
かかるクリックを受けて、CPU23は、図13に示す割り込みプログラムを実行する。まず、図14Bに示す画面を表示し(図13ステップS61)、備考欄に入力があるかないか判断する(ステップS63)。備考欄に入力がある状態で、図14Bに示すボタン58が選択されると、CPU23は、画面を図14Aに示す画面に切替え、黄色アラームを図13Aに示す領域57に表示する(図13ステップS65)。このように備考欄59に説明文が入力されない限り、このままこの状態を保持するよう画面をロックすることにより、操作者は自己の都合で、勝手にデータ削除ができなくなる。
【0047】
CPU23は、割り込み処理が終了すると、図11ステップS43に戻り、検量線測定値から、検量線データについて、回帰分析、補正値の演算、含量、CV値の演算をおこなう(図11ステップS43)。まず回帰分析であるが、各濃度毎の複数の測定値を用いて、回帰分析をおこない、定義できる直線を決定する。この場合、濃度と測定値との関係を図15に示すような直線93で表す。この直線93は、数値a(回帰係数)と数値b(回帰定数)で表される(y=ax+b)。なお、寄与率は検量線データの測定値の相関係数(JISZ8101参照のこと)をもとめ、これを2乗した値を採用した。CPU23は、かかる値をハードディスクに記憶する。
【0048】
つぎに、CPU23は、各測定値から、濃度がブランクの場合の平均を、減算した値を補正値として演算する。この場合であれば、濃度が「BL」の場合の測定値は、「0.511」,「0.605」,「0.642」であるので、これらの平均値は「0.586」となる。したがって、濃度「2μg/ml」の場合、補正値は各々、「0.454」、「0.461」となる。濃度「4μg/ml」についても同様に演算する。なお、測定値「0.023」については削除されているが、表示はそのままなされている。
【0049】
つぎに、CPU23は、含量を演算し、これを用いてさらにCV値を演算する。含量換算、CV値の演算は、従来と同様におこなえばよい。含量は、得られた補正値を前記直線93に当てはめ、その濃度を含量とすればよい。たとえば、補正値「0.888」であれば、y軸の値を「0.888」として、回帰分析して求めた直線93と交わる点を求めて、そのx軸の値に希釈倍率をかけた値が含量となる。CV値は、こうして求めた値を各濃度毎に、複数の測定値について標準偏差を求め、これを平均値で除算し、その百分率で表すことにより求めることができる。このようにして、CV値としては、濃度BLのときの測定値「0.511」,「0.605」,「0.642」から値「11.5」が、濃度が「2μg/ml」のときの測定値「0.023」,「1.040」,「1.047」から、値「1.1」が、濃度が「4μg/ml」のときの測定値「1.575」,「1.474」,「1.290」から、値「16.8」が得られる。得られた値をCPU23は、ハードディスクに記憶する。
【0050】
つぎに、CPU23は、検量線の測定値から求めた、補正値、CV値、回帰係数、回帰定数および寄与率が、所定の範囲内か否か判断する(図11ステップS45)。具体的には、参照品マスタ(図7参照)の補正値は管理幅内か、CV値が管理幅内か、回帰係数が管理幅内か、回帰定数が管理幅内か、寄与率が管理幅内か判断すればよい。CPU23は、所定の範囲内でないと判断した場合には、当該項目について赤アラームとして記憶する(ステップS47)。この場合、補正値が、濃度2の場合、回帰係数aが「0.2014」であり、参照品マスタに記憶された回帰係数管理幅下限「0.2123」を下回っており、また、回帰定数bが回帰定数管理幅上限「0.0261」を越えている。また、寄与率は寄与率管理幅下限「0.999」を下回っているので、回帰係数、回帰定数、および寄与率のいずれも赤アラームとして記憶する。これらの値が異常ということは、検査対象となる基礎データが所定の範囲内にないので、当該テストはやり直す必要があることを表している。
【0051】
つぎに、CPU23は、検体データから含量、CV値を演算する(ステップS49)。含量、CV値の演算手法は、検量線データの場合と同様であるので、説明は省略する。
【0052】
つぎに、CPU23は、検体データについて、異常がないか否か判断する(ステップS51)。具体的には、補正値が、参照品マスタ(図7参照)の検量線上限、下限の範囲内か検量線に当てはめた含量の幅内か、CV値が管理幅内かを判断する。CPU23は、所定の範囲内でないと判断した場合には、当該項目について赤アラームとして記憶する(ステップS53)。
【0053】
この場合、補正値としては、検体名TSY004-4-K-2、検体名TSY004-4-K-3、検体名TSY005-4-K-2が赤アラームとして記憶される。補正値が範囲内か否かは以下のようにして判断される。直線93の数値範囲の上限下限は、濃度2〜4μg/mlの場合の、数値であるので、この場合、直線93の値a,bに代入すると、下限「0.4575」、上限「0.8603」であることがわかる。したがって、検体名TSY004-4-K-2については、補正値0.431,0.434,0.444であり、赤アラームに該当する。検体名TSY004-4-K-3も同様である。検体名TSY005-4-K-2については、補正値の平均値もまた、上限を超えている。したがって、これも赤アラームとして記憶される。
【0054】
また、含量としては、検体名TSY005-4-K-2が赤アラームとして記憶される。なぜなら、かかる検体については、含量の平均値÷希釈倍率÷採取量で表される値(48.94÷10÷1.0=4.894)が、検量線上限の値「4」を越えているからである。
【0055】
また、CV値については、検体名TSY004-4-K-1が検体CV上限の値「5」を越えている。したがって、これも赤アラームとして記憶される。
【0056】
CPU23は、図16に示すような画面に、各値及びアラームを表示する(ステップS55)。尚、図16に示すフォームについては予め作成しておき、数値のみ代入するようにすればよい。操作者はかかる表示を見て、検体データだけでなく、検量線データに赤アラームがあることを知る。
【0057】
検量線法ではこの検量線データに信頼性がおけない場合には、そもそも、検査自体が成り立たない。したがって、検体データの数値にかかわらず、操作者は再試験が必要であることを把握することができる。また、検体データのみに赤アラームがある場合には、検量線データは信頼でき、検体データが信頼できないことを知ることができる。また、検量線データのみに赤アラームがある場合には、検量線データが信頼できないにもかかわらず、検体データにアラーム無しということは、検体データにも異常があるおそれがあることが分かる。
【0058】
なお、前記検量線データの削除は、データ入力時に限らず、一旦検体データの含量などを計算した後におこなわれる場合がある。操作者が気づくタイミングが不明だからである。また、検量線データについては、検体データの含量演算などにも採用されるので、途中でデータ削除があると、ステップS43以下の処理をやり直す。
【0059】
このように、本実施形態においては、測定前に検査に用いる機器、試薬についての異常を検出して、操作者に報知する。したがって、機器・試薬の使用前のチェック漏れ、測定データや測定操作上の異常発生報告漏れ、測定の妥当性の再チェックを事前に確認することができる。
【0060】
特に、機器保守点検記録は月締めで、試薬調製記録などは日締めなど、管理の仕方が統一されていないような場合でも、異常を発見するのが簡易となる。また、品質劣化のおそれがある使用機器や使用試薬の使用を確実に操作者に報知することができる。
【0061】
5.他の実施形態
本実施形態においては、アルミニウム含量試験を例にCV値を検出したが、試験内容によっては別項目となる。すなわち、特定の試験について、測定結果を判断する特性値の管理幅を記憶しておくようにすればよい。
【0062】
また、検査試薬でなく、たとえば、標準品や測定精度管理品(QCコントロール)についても同様に、異常を報知することができる。なお、標準品やQCコントロールについては、検査によって異なるので、調製試薬ごとに用いる標準品、QCコントロールの対応情報(たとえばテーブル)を別途記憶しておき、調製試薬が決定されるとかかる対応情報から、標準品、QCコントロールを決定し、その許容幅を読み出して、同様に判断するようにすればよい。
【0063】
また、上記のような検査装置または検査に用いる検査利用物質ではなく、検査対象である検体についても、その許容管理データを記憶しておき、検査結果がかかる許容管理データ範囲内ではない場合には、これを操作者に報知するようにしてもよい。
【0064】
さらには、測定結果を判断する特性値の管理幅を逸脱したデータや操作者が入力若しくは選択した説明文を検索し、どの試験のどの過程に異常が見られたかを画面上若しくはこれを印字して検査手法の信頼性を操作者若しくは第三者に知らせてもよい。
【0065】
本実施形態においては、検査機器期限決定データとして、検査有効日それ自体を記憶するようにしたが、検査有効日を決定するための情報を記憶するようにしてもよい。試薬期限決定データについても同様である。
【0066】
また、解析法として検量線法を採用した場合について説明したが、これに限定されず、他の解析法、たとえば、平行線定量法などを採用してもよい。
【0067】
本実施形態においては、図1に示す機能を実現する為に、CPUを用い、ソフトウェアによってこれを実現している。しかし、その一部もしくは全てを、ロジック回路等のハードウェアによって実現してもよい。
【0068】
なお、上記プログラムの一部の処理をオペレーティングシステム(OS)にさせるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明にかかる検査装置1の機能ブロック図である。
【図2】検査装置1をCPUを用いて実現したハードウエア構成の一例を示す図である。
【図3】機器・試薬構成マスタのデータ構造を示す。
【図4】試薬マスタのデータ構造を示す。
【図5】機器マスタのデータ構造を示す。
【図6】試薬調製マスタのデータ構造を示す。
【図7】参照品マスタのデータ構造を示す。
【図8】全体のフローチャートである。
【図9】測定前処理のフローチャートである。
【図10】測定前におけるアラーム表示の画面例である。
【図11】測定後処理のフローチャートである。
【図12】入力される検査結果データである。
【図13】検量線データのデータ削除処理のフローチャートである。
【図14】検量線データのデータ削除処理における画面の表示例である。
【図15】直線性を説明する図である。
【図16】測定後におけるアラーム表示画面例である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・・検査装置
23・・・CPU
27・・・メモリ
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンピュータを用いた検査装置に関し、特に、検査前処理の確認に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬品等の品質管理として、以下のような目的で、種種の検査がおこなわれている。
【0003】
(1)原料、資材、製品(中間製品を含む)の品質(力価、純度など)が規格に適合しているかの確認、
(2)品質の偏りやばらつきを調査して製造工程へのフィードバックを行うことによる各工程における安定性の向上、
(3)品質異常の発生原因の究明、
(4)製品の安定性の調査。
【0004】
かかる検査報告において、従来は、各種の試験結果に基づき、異常があった場合に、遡及してその原因を探るという手法を採用していた。すなわち、その試験に用いた機器、試薬を含め、適正に試験が行われたことを前提とするものであった。
【0005】
特許文献1には、検体の測定についてコンピュータを用いる検体検査システムが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−66050号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記試験結果については、試験に用いる機器や試薬に問題があっても結果的には正常という試験結果がなされる場合もあった。すなわち、ある試験結果が正常である場合でも、それは、異常があった試薬を用いた結果、種種の要因の関与によりたまたま異常を検出しなかった場合もある。
【0008】
この発明は、上記問題を解決し、検査結果の信頼性を向上させる検査装置を提供することを目的とする。詳しくは、検査結果における異常検出の原因となる可能性を予め検出することができる検査装置を提供することを目的とする。さらに詳しくは、検査に用いる検査装置および検査に用いる検査試薬の異常を検出できる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1)本発明にかかる検査装置は、1)検査に用いる検査機器の使用期限を決定する検査機器期限決定データを記憶する検査機器データ記憶手段、2)検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データを記憶する検査試薬データ記憶手段、3)検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた検査ID別対応データを記憶した検査ID別対応データ記憶手段、4)検査IDおよび検査日を入力する入力手段、5)前記入力された検査IDをキーとして、前記検査ID別対応データ記憶手段に記憶された検査ID別対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定する機器試薬決定手段、6)前記機器試薬決定手段が決定した検査機器および検査試薬について、前記検査機器別データ記憶手段から当該使用機器についての検査機器期限決定データと、前記検査試薬データ記憶手段から当該検査試薬についての検査試薬期限決定データを読み出し、前記入力された検査日が、前記機器検査期限および検査試薬期限を徒過しているか否か判断する期限判断手段、7)前記検査日が、前記機器検査期限または前記検査試薬期限のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知する報知手段を備えている。したがって、試験に用いる機器や試薬の異常を報知することができる。
【0010】
2)本発明にかかる検査方法は、コンピュータを用いて、検査前に検査機器および検査試薬が適正であるかを検査する検査方法であって、A)前記コンピュータの記憶部に、a1)検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた機器試薬対応データ、a2)各検査機器ごとの検査期限を決定する検査機器期限決定データ、a3)前記各検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データを記憶させておき、B)前記コンピュータは、検査IDが入力されると、当該検査IDをキーとして、前記機器試薬対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定し、C)前記検査機器期限決定データおよび前記検査試薬期限決定データを用いて、与えられた検査日が、前記検査機器期限または検査試薬期限のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知する。したがって、試験に用いる機器や試薬の異常を報知することができる。
【0011】
3)本発明にかかるプログラムは、コンピュータを、検査前に検査機器および検査試薬が適正であるかを検査する検査装置として機能させるプログラムであって、A)前記コンピュータには、a1)検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた機器試薬対応データ、a2)各検査機器ごとの検査期限を決定する検査機器期限決定データ、a3)前記各検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データが記憶されており、B)前記コンピュータに以下の処理を実行させること、検査IDが入力されると、当該検査IDをキーとして、前記機器試薬対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定し、C)前記検査機器期限決定データおよび前記検査試薬期限決定データを用いて、与えられた検査日が、前記検査機器期限または検査試薬期限のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知する。したがって、試験に用いる機器や試薬の異常を報知することができる。
【0012】
4)本発明にかかるプログラムは、さらに、前記コンピュータの記憶部に、前記検査試薬が試薬として機能するための定められている試薬特性値の許容管理データおよび、各検査試薬毎に測定した測定試薬特性値を記憶しておき、前記決定された検査試薬について、前記測定試薬特性値が、前記許容管理データ範囲内か否かを判断させ、前記測定試薬特性値が、前記許容管理データ範囲内でない場合には、これを前記報知手段にて操作者に報知させる。したがって、試験に用いる試薬が変質していないか等を報知することができる。
【0013】
5)本発明にかかるプログラムは、A)前記コンピュータの記憶部に、以下の1)〜3)を記憶させ、1)前記各検査試薬について検査に用いる標準品および精度管理品、2)前記許容管理データとして、前記検査試薬特性値許容管理データに加えて、当該検査において用いられる前記標準品の標準品許容管理データおよび当該検査において用いられる前記精度管理品の許容管理データ、3)前記決定した検査試薬を用いて前記標準品および精度管理品を測定した測定標準品特性値および測定精度管理品特性値、B)前記測定標準品特性値および/または測定精度管理品特性値が、前記許容管理データの範囲内か否かを判断させ、前記測定標準品特性値および/または測定精度管理品特性値が、前記許容管理データ範囲内ではない場合には、これを操作者に報知させる。したがって、前記測定標準品特性値および/または測定精度管理品特性値の異常を報知することができる。
【0014】
6)本発明にかかるプログラムは、前記コンピュータの記憶部に、前記検査対象の検体の許容管理データを記憶しておき、前記検査対象の検体についての測定値が、前記許容管理データの範囲内か否かを判断させ、前記許容管理データ範囲内ではない場合には、これを操作者に報知させる。したがって、前記検査対象の検体についての異常を報知することができる。
【0015】
なお、本明細書において、「調製試薬」とは、調製済みの試薬をいう。また、「報知」とは、実施形態に示すように、操作者に画面上で報知することはもちろん、画面上もしくはこれを印字して当該検査手法の信頼性を第三者に知らせることも含む。
【0016】
また、「検査機器」とは実施形態では使用機器が、「検査試薬」は調製試薬がそれぞれ該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
1.概略および機能ブロックの説明
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に、本発明にかかる検査装置1の機能ブロック図を示す。
【0018】
検査装置1は、検査ID別対応データ記憶手段3、検査機器データ記憶手段5、検査試薬データ記憶手段7、入力手段8、機器試薬決定手段9、期限判断手段11、および報知手段13を備えている。
【0019】
検査機器データ記憶手段5は、検査に用いる検査機器の使用期限を決定する検査機器期限決定データを記憶する。検査試薬データ記憶手段7は、検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データを記憶する。検査ID別対応データ記憶手段3は、検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた検査ID別対応データを記憶する。入力手段8は操作者の命令に応じて、検査IDおよび検査日を入力する。機器試薬決定手段9は、入力された検査IDをキーとして、検査ID別対応データ記憶手段3に記憶された検査ID別対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定する。期限判断手段11は、機器試薬決定手段9が決定した検査機器および検査試薬について、検査機器別データ記憶手段5から当該使用機器についての検査機器期限決定データと、検査試薬データ記憶手段7から当該検査試薬についての検査試薬期限決定データを読み出し、前記入力された検査日が、前記機器検査期限および検査試薬期限を徒過しているか否か判断する。報知手段13は、前記検査日が、前記検査有効日または調製試薬有効日のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知する。
【0020】
2.検査装置1のハードウェア構成
図1に示す検査装置1のハードウェア構成について図2を用いて説明する。図2は、検査装置1をCPUを用いて構成したハードウェア構成の一例である。
【0021】
検査装置1は、CPU23、メモリ27、ハードディスク26、CDD(CD−ROMドライブ)25、入力デバイス28、モニタ30,およびバスライン29を備えている。
【0022】
CPU23は、ハードディスク26に記憶されたプログラムにしたがいバスライン29を介して、各部を制御する。なお、本実施形態においては、オペレーティングシステム26oとして、マイクロソフト社製のWindowsXP(商標)を採用した。
【0023】
ハードディスク26は、後述するプログラムが記憶されたプログラム記憶部26s、マスタファイル記憶部26m、検査結果記憶部26kを有する。このプログラムは、CDD25を介して、プログラムが記憶されたCD−ROM25aから読み出されてハードディスク26にインストールされたものである。なお、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク(FD)、ICカード等のプログラムをコンピュータ可読の記録媒体から、ハードディスクにインストールさせるようにしてもよい。さらに、通信回線を用いてダウンロードするようにしてもよい。
【0024】
本実施形態においては、プログラムをCD−ROMからハードディスク26にインストールさせることにより、CD−ROMに記憶させたプログラムを間接的にコンピュータに実行させるようにしている。しかし、これに限定されることなく、CD−ROMに記憶させたプログラムをCDD25から直接的に実行するようにしてもよい。なお、コンピュータによって、実行可能なプログラムとしては、そのままインストールするだけで直接実行可能なものはもちろん、一旦他の形態等に変換が必要なもの(例えば、データ圧縮されているものを、解凍する等)、さらには、他のモジュール部分と組み合せて実行可能なものも含む。
【0025】
マスタファイル記憶部26mには、機器・試薬構成マスタ、試薬マスタ、機器マスタ、試薬調製マスタファイル、参照品マスタが記憶される。各マスタファイルについて図3〜図7を用いて説明する。
【0026】
機器・試薬構成マスタのデータ構造を図3に示す。機器・試薬構成マスタは、試験(検査内容)について、使用する試薬および機器が記憶されている。この場合、使用機器のタグ番号、使用試薬コード、使用試薬管理番号などが記憶されている。
【0027】
試薬マスタのデータ構造を図4に示す。試薬マスタは、試薬毎に、試薬の名称や特性値の上限下限(測定の許容範囲)およびアラーム日などが記憶されている。アラーム日とは、試薬としての有効期限の所定期間前になると警告アラームを表示するための日数である。
【0028】
機器マスタのデータ構造を図5に示す。機器マスタは、機器毎に、機器の名称や使用区分、有効期限などが記憶されている。
【0029】
試薬調製マスタのデータ構造を図6に示す。試薬調製マスタは、調製試薬毎に、管理番号、試薬コード、調製者、有効期限、アラーム日、これらに加えて、ペーハー値(pH),電気伝導度(EC),吸光度(OD)などの当該試薬の属性の測定結果などが記憶されている。なお、ECは、溶液のイオン状態(特に塩濃度に関連)の指標になるもので、例えば蛋白質製剤では、イオン状態の違いにより同じ蛋白質でも溶液中で異なる性状を示す。ODは、溶液中における物質の吸光性をいう。吸光度を測定することで、例えば特定の蛋白質の濃度を知ることができる。すなわち、ODは、この場合特定の蛋白質溶液の濃度の指標となる。
【0030】
試薬調製マスタと試薬マスタの違いについて説明する。試薬マスタには、一般的な試薬の特性などが記憶されており、試薬調製マスタには、試薬マスタに記憶された試薬について、調製された試薬に関する実際の測定値が記憶される。
【0031】
参照品マスタのデータ構造を図7に示す。参照品マスタは、検査結果が所定の基準を満たしているかを判断するためのデータが記憶されている。
【0032】
このように、マスタファイル記憶部26mには、検査前処理で用いるマスタファイルと検査の後処理で用いるマスタファイルとが記憶される。なお、前記マスタファイルについては、検査前処理および後処理の双方で用いられるものも存在する。各マスタファイルの参照については、後述する。
【0033】
4.フローチャート
検査装置1における処理について、図8を用いて説明する。操作者は、入力デバイス28からこれからおこなう検査を特定する検査IDおよび検査日を入力する。なお、検査日はコンピュータ内の日付を利用して自動入力するようにしてもよい。以下、試験を実行する日が2003年6月27日で、検査として、試験「アルミニウム含有試験(AL)」が入力されたものとして説明する。
【0034】
CPU23は、試験内容が指定されると、検査内容を決定する(図8ステップS1)。CPU23は、検査内容が決定されると測定前処理判断をおこなう(ステップS3)。測定前処理判断の詳細について図9を用いて説明する。
【0035】
CPU23は、図3に示す機器・試薬構成マスタを参照して、使用する機器および調製試薬を決定する(図9ステップS11)。この場合、検査は試験「アルミニウム含有試験(AL)」なので、使用機器としては「HH1XI0261」 、「HH1ZA0023」が、使用する試薬として管理番号「20021218」、「20030501」の調製試薬が特定される。
【0036】
つぎに、CPU23は、機器の有効期限またはアラーム日が経過しているか否か判断する(ステップS13)。使用機器の有効期限を越えているか否かは、機器マスタに記憶された有効期限を参照すれば、判断することができる。この場合、使用機器「HH1XI0261」は、機器マスタ(図5参照)では、有効期限が「200306」となっている。これは、2003年6月末を意味する。一方、検査日が2003年6月27日であるので、CPU23は、有効期限を越えていないと判断する。また、使用機器「HH1ZA0023」についても、有効期限が「200309」(2003年9月末)であるので、有効期限を越えていないと判断する。また、アラーム日の経過は、機器マスタ(図5参照)の有効期限から使用機器ごとのアラーム日を演算して、このアラーム日が経過しているか否か判断すればよい。本実施形態においては、アラーム日を有効期限の2ヶ月前と設定した。したがって、この場合、使用機器「HH1XI0261」のアラーム日は、2003年4月末となる。現在は2003年6月27日であるので、CPU23は、使用機器「HH1XI0261」については、アラーム日を経過していると判断する。また、使用機器「HH1ZA0023」は有効期限は2003年9月30日であるので、アラーム日は7月30日となる。したがってCPU23は、使用機器「HH1ZA0023」についてはアラーム日が経過していないと判断する。結局、この場合、使用機器「HH1XI0261」については、アラーム日を経過したと記憶される(ステップS15)。
【0037】
なお、有効期限が経過している場合には、当然アラーム日も経過しているので、有効期限を経過している使用機器についてはアラーム日を判断しなくてもよい。
【0038】
つぎに、CPU23は、調製試薬の有効期限またはアラーム日が超過しているか否か判断する(図9ステップS17)。具体的には、CPU23は、調製試薬として用いる管理番号「20021218」、「20030501」の試薬について、試薬調製マスタに設定されている有効期限またはアラーム日を越えていないか否か判断する。この場合、管理番号「20021218」の試薬についての有効期限は2003年6月17日、アラーム日は2003年5月18日であり、管理番号「20030501」の試薬について有効期限は2003年5月14日、アラーム日は2003年5月07日である。これに対して、検査日は2003年6月27日である。したがって、CPU23は、いずれの試薬も有効期限を越えていると判断し、管理番号「20021218」、「20030501」の試薬についていずれも有効期限切れと記憶する(ステップS19)。
【0039】
つぎに、CPU23は、調製試薬について予め測定した測定結果が管理幅内か否か判断する(図9ステップS21)。これは、試薬調製マスタ(図6参照)の測定結果が、試薬マスタ(図4参照)に設定された範囲内か否か判断すればよい。この場合、調剤試薬「20021218」は、pH,ECがそれぞれ”5.61"、”3.83”である。この調剤試薬「20021218」は、試薬コードが「HH1SAB」であるので、試薬マスタを参照して、許容範囲は、pH,ECがそれぞれ”5.55〜5.75"、”-9999999〜9999999”、である。したがって、管理範囲内と判断する。また、調剤試薬「20030501」は、ODがそれぞれ”0.61”である。この管理番号の試薬「HH1SRS」の許容範囲は試薬マスタを参照すると、ODの下限が”0.85”、である。したがって、CPU23は、試薬「HH1SRS」が管理範囲内でないと記憶する(図9ステップS23)。
【0040】
CPU23は、測定前処理結果画面を表示する(ステップS25)。この場合、ステップS15,ステップS19,ステップS23における記憶が程度に応じてアラーム表示される。本実施形態においては、図10に示すように、アラーム日を越えている場合には該当部分を黄色で表示する黄色アラームで、有効期限切れや管理幅外である場合には該当部分を赤色で表示する赤アラームでこれを操作者に報知するようにした。図10においては、領域51に機器に関するアラームを、領域53に試薬に関するアラームを表示することにより、注意すべきことを操作者に表示するようにした。
【0041】
操作者は、測定前処理が終了すると、測定をおこなう。以下では、検量線法を採用した。検量線法とは、既知の溶液(標準液列)について、今回の計測対象の物質と同じ条件で測定し、既知の物質の検量線を求め、かかる検量線から未知の物質の特性を計測する方法をいう。
【0042】
CPU23は、測定前処理が終了すると、測定後処理を実行する(図8ステップS5)。測定後処理について図11を用いて説明する。操作者は測定結果を入力する(ステップS41)。本実施形態においては、検量線を求めるための検量線データの測定値と、検体データの測定値を入力する。この場合、図12Aに示すように、検量線データとして、濃度が「BL」にて、「0.511」,「0.605」,「0.642」が,濃度が「2μg/ml」にて「0.023」,「1.040」,「1.047」が、濃度が「4μg/ml」にて「1.575」,「1.474」,「1.290」が入力されたものとする。また、図12Bに示すように、検体データとして、検体名「TSY004-4-K」について、3回の計測がおこなわれ、その測定生データとして、希釈倍率「10」,採取量「1.0」で、「1.064」,「1.124」,「1.049」と、希釈倍率「20」,採取量「0.5」で「1.017」,「1.020」,「1.030」と、希釈倍率「40」,採取量「2.0」で「1.021」,「1.028」,「1.022」が入力され、また、検体名「TSY005-4-K」について、2回の計測がおこなわれ、その測定生データとして、希釈倍率「20」,採取量「1.0」で「1.069」,「1.074」,「1.083」と、希釈倍率「10」,採取量「1.0」で「1.596」,「1.668」,「1.615」が入力されたものとする。
【0043】
なお、濃度が「BL」とは、溶液中に検出対象物質が含まれていないブランク状態をいう。
【0044】
なお、検量線データについては、測定値があきらかに誤っているというデータが存在する場合がある。この場合でいえば、濃度が「2μg/ml」の場合の「0.023」という値である。このようなデータは、明らかな誤りであるので、操作者は、これを入力したときに、何らかの測定ミスと考えて、かかるデータを削除することができる。
【0045】
かかる検量線データ削除処理は割り込み処理にて実行される。検量線データ削除処理について、図13を用いて説明する。検量線データが入力されると、CPU23は、図14Aに示すような入力結果表示画面を表示する。操作者は、これを見て、削除対象の項目のチェックボックスをクリックする。この場合、濃度が「2μg/ml」の場合の「0.023」という値は明らかな誤りと判断できるので、これ削除するために、チェックボックス71をクリックする。
【0046】
かかるクリックを受けて、CPU23は、図13に示す割り込みプログラムを実行する。まず、図14Bに示す画面を表示し(図13ステップS61)、備考欄に入力があるかないか判断する(ステップS63)。備考欄に入力がある状態で、図14Bに示すボタン58が選択されると、CPU23は、画面を図14Aに示す画面に切替え、黄色アラームを図13Aに示す領域57に表示する(図13ステップS65)。このように備考欄59に説明文が入力されない限り、このままこの状態を保持するよう画面をロックすることにより、操作者は自己の都合で、勝手にデータ削除ができなくなる。
【0047】
CPU23は、割り込み処理が終了すると、図11ステップS43に戻り、検量線測定値から、検量線データについて、回帰分析、補正値の演算、含量、CV値の演算をおこなう(図11ステップS43)。まず回帰分析であるが、各濃度毎の複数の測定値を用いて、回帰分析をおこない、定義できる直線を決定する。この場合、濃度と測定値との関係を図15に示すような直線93で表す。この直線93は、数値a(回帰係数)と数値b(回帰定数)で表される(y=ax+b)。なお、寄与率は検量線データの測定値の相関係数(JISZ8101参照のこと)をもとめ、これを2乗した値を採用した。CPU23は、かかる値をハードディスクに記憶する。
【0048】
つぎに、CPU23は、各測定値から、濃度がブランクの場合の平均を、減算した値を補正値として演算する。この場合であれば、濃度が「BL」の場合の測定値は、「0.511」,「0.605」,「0.642」であるので、これらの平均値は「0.586」となる。したがって、濃度「2μg/ml」の場合、補正値は各々、「0.454」、「0.461」となる。濃度「4μg/ml」についても同様に演算する。なお、測定値「0.023」については削除されているが、表示はそのままなされている。
【0049】
つぎに、CPU23は、含量を演算し、これを用いてさらにCV値を演算する。含量換算、CV値の演算は、従来と同様におこなえばよい。含量は、得られた補正値を前記直線93に当てはめ、その濃度を含量とすればよい。たとえば、補正値「0.888」であれば、y軸の値を「0.888」として、回帰分析して求めた直線93と交わる点を求めて、そのx軸の値に希釈倍率をかけた値が含量となる。CV値は、こうして求めた値を各濃度毎に、複数の測定値について標準偏差を求め、これを平均値で除算し、その百分率で表すことにより求めることができる。このようにして、CV値としては、濃度BLのときの測定値「0.511」,「0.605」,「0.642」から値「11.5」が、濃度が「2μg/ml」のときの測定値「0.023」,「1.040」,「1.047」から、値「1.1」が、濃度が「4μg/ml」のときの測定値「1.575」,「1.474」,「1.290」から、値「16.8」が得られる。得られた値をCPU23は、ハードディスクに記憶する。
【0050】
つぎに、CPU23は、検量線の測定値から求めた、補正値、CV値、回帰係数、回帰定数および寄与率が、所定の範囲内か否か判断する(図11ステップS45)。具体的には、参照品マスタ(図7参照)の補正値は管理幅内か、CV値が管理幅内か、回帰係数が管理幅内か、回帰定数が管理幅内か、寄与率が管理幅内か判断すればよい。CPU23は、所定の範囲内でないと判断した場合には、当該項目について赤アラームとして記憶する(ステップS47)。この場合、補正値が、濃度2の場合、回帰係数aが「0.2014」であり、参照品マスタに記憶された回帰係数管理幅下限「0.2123」を下回っており、また、回帰定数bが回帰定数管理幅上限「0.0261」を越えている。また、寄与率は寄与率管理幅下限「0.999」を下回っているので、回帰係数、回帰定数、および寄与率のいずれも赤アラームとして記憶する。これらの値が異常ということは、検査対象となる基礎データが所定の範囲内にないので、当該テストはやり直す必要があることを表している。
【0051】
つぎに、CPU23は、検体データから含量、CV値を演算する(ステップS49)。含量、CV値の演算手法は、検量線データの場合と同様であるので、説明は省略する。
【0052】
つぎに、CPU23は、検体データについて、異常がないか否か判断する(ステップS51)。具体的には、補正値が、参照品マスタ(図7参照)の検量線上限、下限の範囲内か検量線に当てはめた含量の幅内か、CV値が管理幅内かを判断する。CPU23は、所定の範囲内でないと判断した場合には、当該項目について赤アラームとして記憶する(ステップS53)。
【0053】
この場合、補正値としては、検体名TSY004-4-K-2、検体名TSY004-4-K-3、検体名TSY005-4-K-2が赤アラームとして記憶される。補正値が範囲内か否かは以下のようにして判断される。直線93の数値範囲の上限下限は、濃度2〜4μg/mlの場合の、数値であるので、この場合、直線93の値a,bに代入すると、下限「0.4575」、上限「0.8603」であることがわかる。したがって、検体名TSY004-4-K-2については、補正値0.431,0.434,0.444であり、赤アラームに該当する。検体名TSY004-4-K-3も同様である。検体名TSY005-4-K-2については、補正値の平均値もまた、上限を超えている。したがって、これも赤アラームとして記憶される。
【0054】
また、含量としては、検体名TSY005-4-K-2が赤アラームとして記憶される。なぜなら、かかる検体については、含量の平均値÷希釈倍率÷採取量で表される値(48.94÷10÷1.0=4.894)が、検量線上限の値「4」を越えているからである。
【0055】
また、CV値については、検体名TSY004-4-K-1が検体CV上限の値「5」を越えている。したがって、これも赤アラームとして記憶される。
【0056】
CPU23は、図16に示すような画面に、各値及びアラームを表示する(ステップS55)。尚、図16に示すフォームについては予め作成しておき、数値のみ代入するようにすればよい。操作者はかかる表示を見て、検体データだけでなく、検量線データに赤アラームがあることを知る。
【0057】
検量線法ではこの検量線データに信頼性がおけない場合には、そもそも、検査自体が成り立たない。したがって、検体データの数値にかかわらず、操作者は再試験が必要であることを把握することができる。また、検体データのみに赤アラームがある場合には、検量線データは信頼でき、検体データが信頼できないことを知ることができる。また、検量線データのみに赤アラームがある場合には、検量線データが信頼できないにもかかわらず、検体データにアラーム無しということは、検体データにも異常があるおそれがあることが分かる。
【0058】
なお、前記検量線データの削除は、データ入力時に限らず、一旦検体データの含量などを計算した後におこなわれる場合がある。操作者が気づくタイミングが不明だからである。また、検量線データについては、検体データの含量演算などにも採用されるので、途中でデータ削除があると、ステップS43以下の処理をやり直す。
【0059】
このように、本実施形態においては、測定前に検査に用いる機器、試薬についての異常を検出して、操作者に報知する。したがって、機器・試薬の使用前のチェック漏れ、測定データや測定操作上の異常発生報告漏れ、測定の妥当性の再チェックを事前に確認することができる。
【0060】
特に、機器保守点検記録は月締めで、試薬調製記録などは日締めなど、管理の仕方が統一されていないような場合でも、異常を発見するのが簡易となる。また、品質劣化のおそれがある使用機器や使用試薬の使用を確実に操作者に報知することができる。
【0061】
5.他の実施形態
本実施形態においては、アルミニウム含量試験を例にCV値を検出したが、試験内容によっては別項目となる。すなわち、特定の試験について、測定結果を判断する特性値の管理幅を記憶しておくようにすればよい。
【0062】
また、検査試薬でなく、たとえば、標準品や測定精度管理品(QCコントロール)についても同様に、異常を報知することができる。なお、標準品やQCコントロールについては、検査によって異なるので、調製試薬ごとに用いる標準品、QCコントロールの対応情報(たとえばテーブル)を別途記憶しておき、調製試薬が決定されるとかかる対応情報から、標準品、QCコントロールを決定し、その許容幅を読み出して、同様に判断するようにすればよい。
【0063】
また、上記のような検査装置または検査に用いる検査利用物質ではなく、検査対象である検体についても、その許容管理データを記憶しておき、検査結果がかかる許容管理データ範囲内ではない場合には、これを操作者に報知するようにしてもよい。
【0064】
さらには、測定結果を判断する特性値の管理幅を逸脱したデータや操作者が入力若しくは選択した説明文を検索し、どの試験のどの過程に異常が見られたかを画面上若しくはこれを印字して検査手法の信頼性を操作者若しくは第三者に知らせてもよい。
【0065】
本実施形態においては、検査機器期限決定データとして、検査有効日それ自体を記憶するようにしたが、検査有効日を決定するための情報を記憶するようにしてもよい。試薬期限決定データについても同様である。
【0066】
また、解析法として検量線法を採用した場合について説明したが、これに限定されず、他の解析法、たとえば、平行線定量法などを採用してもよい。
【0067】
本実施形態においては、図1に示す機能を実現する為に、CPUを用い、ソフトウェアによってこれを実現している。しかし、その一部もしくは全てを、ロジック回路等のハードウェアによって実現してもよい。
【0068】
なお、上記プログラムの一部の処理をオペレーティングシステム(OS)にさせるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明にかかる検査装置1の機能ブロック図である。
【図2】検査装置1をCPUを用いて実現したハードウエア構成の一例を示す図である。
【図3】機器・試薬構成マスタのデータ構造を示す。
【図4】試薬マスタのデータ構造を示す。
【図5】機器マスタのデータ構造を示す。
【図6】試薬調製マスタのデータ構造を示す。
【図7】参照品マスタのデータ構造を示す。
【図8】全体のフローチャートである。
【図9】測定前処理のフローチャートである。
【図10】測定前におけるアラーム表示の画面例である。
【図11】測定後処理のフローチャートである。
【図12】入力される検査結果データである。
【図13】検量線データのデータ削除処理のフローチャートである。
【図14】検量線データのデータ削除処理における画面の表示例である。
【図15】直線性を説明する図である。
【図16】測定後におけるアラーム表示画面例である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・・検査装置
23・・・CPU
27・・・メモリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査に用いる検査機器の使用期限を決定する検査機器期限決定データを記憶する検査機器データ記憶手段、
検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データを記憶する検査試薬データ記憶手段、
検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた検査ID別対応データを記憶した検査ID別対応データ記憶手段、
検査IDおよび検査日を入力する入力手段、
前記入力された検査IDをキーとして、前記検査ID別対応データ記憶手段に記憶された検査ID別対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定する機器試薬決定手段、
前記機器試薬決定手段が決定した検査機器および検査試薬について、前記検査機器別データ記憶手段から当該使用機器についての検査機器期限決定データと、前記検査試薬データ記憶手段から当該検査試薬についての検査試薬期限決定データを読み出し、前記入力された検査日が、前記機器検査期限および検査試薬期限を徒過しているか否か判断する期限判断手段、
前記検査日が、前記機器検査期限または前記検査試薬期限のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知する報知手段、
を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
コンピュータを用いて、検査前に検査機器および検査試薬が適正であるかを検査する検査方法であって、
前記コンピュータの記憶部に、1)検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた機器試薬対応データ、2)各検査機器ごとの検査期限を決定する検査機器期限決定データ、3)前記各検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データを記憶させておき、
前記コンピュータは、検査IDが入力されると、当該検査IDをキーとして、前記機器試薬対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定し、
前記検査機器期限決定データおよび前記検査試薬期限決定データを用いて、与えられた検査日が、前記検査機器期限または検査試薬期限のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知すること、
を特徴とするコンピュータを用いた検査方法。
【請求項3】
コンピュータを、検査前に検査機器および検査試薬が適正であるかを検査する検査装置として機能させるプログラムであって、
前記コンピュータには、1)検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた機器試薬対応データ、2)各検査機器ごとの検査期限を決定する検査機器期限決定データ、3)前記各検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データが記憶されており、
前記コンピュータに以下の処理を実行させること、
検査IDが入力されると、当該検査IDをキーとして、前記機器試薬対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定し、
前記検査機器期限決定データおよび前記検査試薬期限決定データを用いて、与えられた検査日が、前記検査機器期限または検査試薬期限のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知する、
を特徴とするプログラム。
【請求項4】
請求項3のプログラムにおいて、さらに、以下の処理を実行させること、
前記コンピュータの記憶部に、前記検査試薬が試薬として機能するために定められている試薬特性値の許容管理データおよび、各検査試薬毎に測定した測定試薬特性値を記憶しておき、
前記決定された検査試薬について、前記測定試薬特性値が、前記許容管理データ範囲内か否かを判断させ、
前記測定試薬特性値が、前記許容管理データ範囲内でない場合には、これを操作者に報知させること、
を特徴とするプログラム。
【請求項5】
請求項4のプログラムにおいて、さらに、以下の処理を実行させること、
A)前記コンピュータの記憶部に、以下の1)〜3)を記憶させ、
1)前記各検査試薬について検査に用いる標準品および精度管理品、
2)前記許容管理データとして、前記検査試薬特性値許容管理データに加えて、当該検査において用いられる前記標準品の標準品許容管理データおよび当該検査において用いられる前記精度管理品の許容管理データ、
3)前記決定した検査試薬を用いて前記標準品および精度管理品を測定した測定標準品特性値および測定精度管理品特性値、
B)前記測定標準品特性値および/または測定精度管理品特性値が、前記許容管理データの範囲内か否かを判断させ、前記測定標準品特性値および/または測定精度管理品特性値が、前記許容管理データ範囲内ではない場合には、これを操作者に報知させること、
を特徴とするもの。
【請求項6】
請求項5のプログラムにおいて、さらに、以下の処理を実行させること、
前記コンピュータの記憶部に、前記検査対象の検体の許容管理データを記憶しておき、
前記検査対象の検体についての測定値が、前記許容管理データの範囲内か否かを判断させ、前記許容管理データ範囲内ではない場合には、これを操作者に報知させること、
を特徴とするもの。
【請求項1】
検査に用いる検査機器の使用期限を決定する検査機器期限決定データを記憶する検査機器データ記憶手段、
検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データを記憶する検査試薬データ記憶手段、
検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた検査ID別対応データを記憶した検査ID別対応データ記憶手段、
検査IDおよび検査日を入力する入力手段、
前記入力された検査IDをキーとして、前記検査ID別対応データ記憶手段に記憶された検査ID別対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定する機器試薬決定手段、
前記機器試薬決定手段が決定した検査機器および検査試薬について、前記検査機器別データ記憶手段から当該使用機器についての検査機器期限決定データと、前記検査試薬データ記憶手段から当該検査試薬についての検査試薬期限決定データを読み出し、前記入力された検査日が、前記機器検査期限および検査試薬期限を徒過しているか否か判断する期限判断手段、
前記検査日が、前記機器検査期限または前記検査試薬期限のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知する報知手段、
を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
コンピュータを用いて、検査前に検査機器および検査試薬が適正であるかを検査する検査方法であって、
前記コンピュータの記憶部に、1)検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた機器試薬対応データ、2)各検査機器ごとの検査期限を決定する検査機器期限決定データ、3)前記各検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データを記憶させておき、
前記コンピュータは、検査IDが入力されると、当該検査IDをキーとして、前記機器試薬対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定し、
前記検査機器期限決定データおよび前記検査試薬期限決定データを用いて、与えられた検査日が、前記検査機器期限または検査試薬期限のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知すること、
を特徴とするコンピュータを用いた検査方法。
【請求項3】
コンピュータを、検査前に検査機器および検査試薬が適正であるかを検査する検査装置として機能させるプログラムであって、
前記コンピュータには、1)検査IDに対して、検査機器および検査試薬が対応づけられた機器試薬対応データ、2)各検査機器ごとの検査期限を決定する検査機器期限決定データ、3)前記各検査に用いる検査試薬の使用期限を決定する検査試薬期限決定データが記憶されており、
前記コンピュータに以下の処理を実行させること、
検査IDが入力されると、当該検査IDをキーとして、前記機器試薬対応データから、当該検査IDに対応する検査機器および検査試薬を決定し、
前記検査機器期限決定データおよび前記検査試薬期限決定データを用いて、与えられた検査日が、前記検査機器期限または検査試薬期限のいずれか、または双方を徒過している場合には、これを報知する、
を特徴とするプログラム。
【請求項4】
請求項3のプログラムにおいて、さらに、以下の処理を実行させること、
前記コンピュータの記憶部に、前記検査試薬が試薬として機能するために定められている試薬特性値の許容管理データおよび、各検査試薬毎に測定した測定試薬特性値を記憶しておき、
前記決定された検査試薬について、前記測定試薬特性値が、前記許容管理データ範囲内か否かを判断させ、
前記測定試薬特性値が、前記許容管理データ範囲内でない場合には、これを操作者に報知させること、
を特徴とするプログラム。
【請求項5】
請求項4のプログラムにおいて、さらに、以下の処理を実行させること、
A)前記コンピュータの記憶部に、以下の1)〜3)を記憶させ、
1)前記各検査試薬について検査に用いる標準品および精度管理品、
2)前記許容管理データとして、前記検査試薬特性値許容管理データに加えて、当該検査において用いられる前記標準品の標準品許容管理データおよび当該検査において用いられる前記精度管理品の許容管理データ、
3)前記決定した検査試薬を用いて前記標準品および精度管理品を測定した測定標準品特性値および測定精度管理品特性値、
B)前記測定標準品特性値および/または測定精度管理品特性値が、前記許容管理データの範囲内か否かを判断させ、前記測定標準品特性値および/または測定精度管理品特性値が、前記許容管理データ範囲内ではない場合には、これを操作者に報知させること、
を特徴とするもの。
【請求項6】
請求項5のプログラムにおいて、さらに、以下の処理を実行させること、
前記コンピュータの記憶部に、前記検査対象の検体の許容管理データを記憶しておき、
前記検査対象の検体についての測定値が、前記許容管理データの範囲内か否かを判断させ、前記許容管理データ範囲内ではない場合には、これを操作者に報知させること、
を特徴とするもの。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−84253(P2006−84253A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267904(P2004−267904)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000173555)財団法人化学及血清療法研究所 (86)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000173555)財団法人化学及血清療法研究所 (86)
【Fターム(参考)】
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