説明

検査装置の給電装置

【課題】被測定物に対し電流を流して検査する検査装置を被測定物の製造ラインに投入する場合において、被測定物の検査のための待ち時間の大幅な短縮を図り、全体としての検査時間(タクトタイム)を短縮することを可能とする検査装置用の給電装置を提供する。
【解決手段】被測定物200に電流を流すことで検査を行う検査装置において使用する給電装置を、検査装置側に給電手段を設け、被測定物側に集電手段を設けることにより、被測定物200が検査装置に搬入される際に、給電手段と集電手段を電気的に接続させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物に電流を流して検査する検査装置に使用する、前記被測定物に給電する検査装置用の給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物に電流を流した状態で検査する方法について、被測定物として太陽電池モジュールを例として説明する。
【0003】
例えば、太陽エネルギーの利用方法として、シリコン型の太陽電池が知られている。太陽電池の製造においては、太陽電池が目的の発電能力を有しているかどうかの性能評価が重要である。性能評価には、通常、出力特性の測定がされる。
【0004】
出力特性は、光照射下において、太陽電池の電流電圧特性を測定する光電変換特性として行われる。光源としては、太陽光が望ましいのであるが、天候により強度が変化することから、ソーラーシミュレーターが使用されている。
ソーラーシミュレーターでは、太陽光に代えてキセノンランプやメタルハライドランプ等を使用している。また、これらの光源を長時間点灯していると、温度上昇などにより光量が変化する。そこで、これらのランプのフラッシュ光を用い、横軸を電圧、縦軸を電流として、収集したデータをプロットすることにより太陽電池の出力特性曲線を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、ソーラーシミュレーターと異なる方法による検査装置として、シリコンの多結晶型の太陽電池素子に対して順方向に電圧を印加することで、エレクトロルミネッセンス(EL)を生じさせる方法によるものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
EL発光検査装置では、太陽電池素子から発光されるELを観察することによって、電流密度分布が分かり、電流密度分布の不均一から太陽電池素子の欠陥を知ることができる。すなわち、発光しない部分が欠陥部分と判断でき、この欠陥部分の面積が予め決められた量より少なければ、所定の発電能力を有するものと判断できることになる。
【0006】
また、上記のEL発光検査装置と同種のものとして、サーモグラフィー検査装置も知られている。このサーモグラフィー検査装置では、太陽電池素子等の製品では欠陥部位での電気抵抗が大きく通電によりジュール熱を発生して発熱することを利用する。すなわち、該検査装置に太陽電池セル等の被測定物を搬入し、これに電流を流すことで、発熱しているか否かを撮影により確認することにより、太陽電池セルでの欠陥の有無を検出できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−88419号公報
【特許文献2】WO2006/059615
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したEL検査、サーモグラフィー検査を行う、これまでの検査装置では、被測定物である太陽電池モジュールを、検査装置内に搬入し所定の位置で位置決めした後に、太陽電池モジュールへの通電(給電)を行うように構成していた。したがって、通電して検査可能になるまでの待ち時間分は、検査を開始することができない。これは、太陽電池モジュールの太陽電池セルに電流が流れてから発光または発熱するまでの間にはある程度の時間、たとえば5〜30秒の時間を要するためである。
【0009】
そして、上述したように被測定物が検査装置内に搬入され位置固定された後に被測定物へ通電する構造をもつ従来の検査装置では、その検査手順や構造上等の理由から検査時間を短縮することが難しいという問題があった。
【0010】
これについて詳述すると、上述したEL検査装置においては、該検査装置において被測定物である太陽電池モジュールに通電する際に、装置内で所定位置で位置決めし、さらに通電用のケーブルを接続する等の作業が面倒かつ煩雑であり、しかも通電から発光するまでの間の待ち時間も数秒程度あり、検査装置内で位置決めしてからの通電では全体の検査時間が長くかかるという問題があった。
【0011】
また、上述したEL検査、サーモグラフィー検査等の検査装置では、被測定物を装置内に搬入して位置決めした際に、該被測定物に外部電源に接続されているケーブルを接続する必要があるが、従来一般に作業者の人手によって個々に行っているために、煩雑な作業を必要とし、検査時間が嵩む原因にもなっている。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、被測定物に対し電流を流して検査する検査装置を該被測定物の製造ラインに投入する場合において、被測定物の検査のための待ち時間の大幅な短縮を図り、全体としての検査時間(タクトタイム)を短縮することを可能とする検査装置用の給電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するための第1発明の検査装置用の給電装置は、被測定物に電流を流すことで前記被測定物の検査を行う検査装置用の給電装置であって、前記検査装置側に給電手段を設け、前記被測定物側に集電手段を設け、前記給電手段と前記集電手段とを、前記検査装置に前記被測定物を搬送中に電気的に接続可能な構成したことを特徴とする。
第1発明によれば、被測定物側に集電手段を設け、検査装置側に給電手段を設けることにより、検査装置内に被測定物を搬送する際に被測定物へ給電を行うことができるので、これにより検査装置内の所定位置に被測定物が位置決めされる際には、前記給電により被測定物は発光状態または発熱状態となっており、検査時間を最小限とし、検査装置としての検査時間を最大限に短縮することができる。
さらに本給電装置を検査装置に採用することにより、検査時間を短縮することができるので、短縮された検査時間分、検査装置に別の検査機能を追加することができる。したがって、被測定物に対し複数種類の検査を同時または連続して行うことができ、結果として被測定物の品質を向上させることができる。
【0014】
第2発明の検査装置用の給電装置は、第1発明の検査装置用の給電装置において、前記被測定物上に設けられた集電手段を、被測定物上に仮固定するように構成したことを特徴とする。
第2発明によれば、被測定物が検査装置に搬入される前に、集電手段は作業者が被測定物側に仮固定し、検査装置から搬出された後に取外しするものの、被測定物が検査装置に搬入される過程において被測定物に給電されので、検査装置用の給電装置を簡単かつ安価に構成することができる。
【0015】
第3発明の検査装置用の給電装置は、第1発明または第2発明の検査装置用の給電装置において、前記給電手段は、帯状導体を含む構成とし、前記集電手段は、前記給電手段の帯状導体と接触する接触子を備えていることを特徴とする。
第3発明によれば、集電手段に前記給電手段の帯状導体と接触する接触子を設け、前記給電手段の帯状導体と集電手段の接触子は、弾性的に摺接させることにより電気的な接続を得ることができるから、被測定物を検査装置内へ搬送している途中での給電が確実に行える。
【0016】
第4発明の検査装置用の給電装置は、第1発明または第2発明の検査装置用の給電装置において、前記集電手段は、帯状導体を含む構成とし、前記給電手段は、前記集電手段の帯状導体と接触する接触子を備えていることを特徴とする。
第4発明によれば、給電手段に前記集電手段の帯状導体と接触する接触子を設け、前記集電手段の帯状導体と給電手段の接触子は、弾性的に摺接させることにより電気的な接続を得ることができるから、被測定物を搬送している途中での給電が確実に行える。
【0017】
第5発明の検査装置用の給電装置は、第4発明の検査装置用の給電装置において、前記給電手段は、被測定物の搬送方向に沿って複数個設けたことを特徴とする。
第5発明によれば、被測定物側に設けた集電手段は帯状導体を含む構成であり、検査装置側に給電手段を複数個設けているので、被測定物の搬送方向の長さが短くなっても、常に確実な給電が可能となる。
【0018】
第6発明の検査装置用の給電装置は、第1発明から第5発明のいずれかの検査装置用の給電装置において、前記集電手段と前記給電手段による電気的接続によって、前記被測定物を前記検査装置に搬送しながら該被測定物への給電を行い前記被測定物の検査を行うことを特徴とする。
第6発明によれば、本発明の給電装置により、被測定物を検査装置に搬送中に給電しながら検査を行うことができるので、検査装置のタクトタイムをさらに大幅に短縮することができる。
【0019】
第7発明の検査装置用の給電装置は、第1発明から第6発明のいずれかの検査装置用の給電装置において、前記検査装置は暗室を備え、前記被測定物が発光または発熱し、その状態を前記検査装置の撮影手段等により撮影することにより、前記被測定物の検査を行うことを特徴とする。
第7発明によれば、給電装置は、暗室内に収納可能であり、被測定物への給電後の発光状態または発熱状態を暗室で撮影手段により撮影し確実に取得できるため、確実な検査が可能となる。
【0020】
第8発明の検査装置用の給電装置は、第1発明から第7発明のいずれかの検査装置用の給電装置において、前記被測定物は太陽電池モジュールの構成部材であり、前記検査装置は、EL発光を利用した検査またはサーモグラフィー検査を行うように構成した検査装置であることを特徴とする。
第8発明によれば、太陽電池モジュールの太陽電池セル(薄膜型のセルも含む)をEL検査、サーモグラフィー検査等を行う検査装置用の給電装置として用いることができ、太陽電池モジュールの検査の待ち時間、ひいては検査時間の大幅な短縮を図ることができる。
検査装置としてサーモグラフィー検査装置においては、被測定物に給電して加熱し被測定物の温度を上昇させる必要があり、このような検査装置には本発明の給電装置を採用することは、検査時間、特に前準備時間の短縮に効果がある。
さらにEL検査およびサーモグラフィー検査とラマン分光器を複合化させた検査装置においては、太陽電池セル以外の構成部材の検査時間の短縮も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の検査装置用の給電装置を使用して検査する被測定物の例としての太陽電池モジュールの構成を説明するための図であって、(a)は太陽電池モジュールの内部の太陽電池セル(シリコンセル)が分かるように記載した平面図、(b)はその断面図である。
【図2】本発明の検査装置用の給電装置を使用する検査装置の説明図。
【図3】本発明に係る検査装置用の給電装置の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図4】図3の給電装置において、これを構成する給電手段と集電手段との関係の概略説明図であって、(a)は給電装置の被測定物の搬送方向から見た図、(b)は(a)のA−A矢視図である。
【図5】図3のL部分の詳細斜視図。
【図6】本発明に係る検査装置用の給電装置の別の実施形態を示す概略斜視図である。
【図7】図6の給電装置において、これを構成する給電手段と集電手段との関係の概略説明図であって、(a)は給電装置の被測定物の搬送方向から見た図、(b)は(a)のB−B矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から図7により、本発明に係る検査装置用の給電装置の本実施形態を説明する。
本実施形態の説明では、被測定物200は太陽電池モジュールの太陽電池セル(シリコンセル)を例とし、検査装置100は太陽電池モジュールのEL検査またはサーモグラフィー検査を行うための検査装置を例としている。ただし本発明は、上記の例としての被測定物および検査装置に限定されるものでは無い。
【0023】
<1>被測定物200(太陽電池モジュール)
まず、本発明の検査装置用の給電装置が扱う対象である被測定物としての太陽モジュール200を、図1(a),(b)を用いて以下に説明する。
【0024】
被測定物である太陽電池モジュール200は、図1(a),(b)に示すように、角型の太陽電池セル28がリード線29により複数直列に接続されたストリング25を形成し、さらにそのストリングを複数列リード線29により接続した構造となっている。
【0025】
ここで、被測定物である太陽電池モジュール200としては、太陽電池セル28が1枚のみのものでもよく、太陽電池セル28を複数枚直線的につないだストリング25の状態でもよく、ストリング25を平行に複数列並べ、太陽電池セル28がマトリックス状に配置された太陽電池パネル30でもよい。
【0026】
また、被測定物の断面構造は、図1(b)に示すように、上側に配置された裏面材22と下側に配置された透明カバーガラス21の間に、充填材23、24を介して複数列のストリング25をサンドイッチした構成を有する。ここで、裏面材22は例えばポリエチレン樹脂などの不透明な材料が使用される。充填材23,24には例えばEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂などが使用される。複数列のストリング25が、電極26,27の間で,太陽電池セル28を、リード線29を介して接続した構成である。
【0027】
このような太陽電池モジュール200は、上記のように構成部材を積層しラミネート装置などにより、真空の加熱状態下で圧力を加え、EVAを架橋反応させてラミネート加工して得られる。
【0028】
また、被測定物200としては、一般に薄膜式と呼ばれる太陽電池を対象とすることもできる。
【0029】
この薄膜式の代表的な構造例では、下側に配置された透明カバーガラスには、予め透明電極、半導体、裏面電極からなる発電素子が蒸着してある。そして、このような薄膜型太陽電池モジュールは、透明カバーガラスを下向きに配置し、ガラス上の太陽電池素子の上に充填材を被せ、更に、充填材の上に裏面材を被せた構造で、同じようにラミネート加工することにより得られる。
【0030】
このように被測定物としての薄膜式の太陽電池モジュールは、結晶系セルが蒸着された発電素子に変わるだけで、基本的な封止構造は前記した結晶系セルの場合と同じである。
【0031】
ここで、本発明による検査装置100での被測定物である太陽電池モジュール200としては、一辺のサイズは大型のもでは例えば1〜2m程度である矩形板状を呈する。
【0032】
<2>検査装置100
本発明の給電装置を使用することができる検査装置としては、EL光を用いた太陽電池セルの欠陥検査装置、サーモグラフィー検査装置や通電確認装置などがある。本実施形態の説明では、このうちEL光を用いた太陽電池セルの欠陥検査装置(以下欠陥検査装置という)やサーモグラフィー検査装置を例にして検査装置100の形態をする。
【0033】
検査装置100は、図2に示すように略箱型形状のベースフレームMの上面Sに遮光カバーKが設けられている。被測定物である太陽電池パネル200は、遮光カバーKに適宜設けられた開閉扉が開きベースフレーム上に設けられた搬送装置により検査装置内に搬入され位置決め載置される。本実施例の場合は、太陽電池パネルは、図2の矢印の搬送方向に搬送される。太陽電池パネルが検査装置に搬入されると扉が閉じ検査測定が開始される。検査測定が終了すると開閉扉が開き太陽電池パネルは搬出される。
【0034】
検査装置100のベースフレームMは、箱形の暗室となっている。図示は省略するが、暗室には、遮光カバー内に搬入された被測定物である太陽電池モジュール200の発光または発熱状態を検出するための検出手段、例えば撮影用カメラ等の撮影手段またその移動機構が設けられている。
【0035】
暗室外には、パソコンを利用した画像処理装置等、各種駆動制御を行う制御装置等といった必要とされる機器、装置等が付設されている。本発明の給電装置は、検査装置100の遮光カバー内に被測定物の搬送方向に略平行になるように設けられている。本発明の給電装置の実施形態は、図3から図7を用いて以下詳しく述べる。
【0036】
<3>給電装置の実施形態1
図3および図4は、本実施形態1の検査装置用の給電装置の説明図である。図面では、本発明を特徴づける給電装置に関連する部位のみを示す。図5は、図3のL部分を拡大した詳細図である。
図3は、検査装置100の内部に被測定物である太陽電池モジュールが搬入された状態を示す。暗室Mは省略している。
【0037】
被測定物である太陽モジュール200は、検査装置100の遮光カバーK内に、前工程からの検査装置100へ受け渡される。太陽モジュール200が、図3に示すように、検査装置内に搬入載置され、検査測定動作が行われる。
【0038】
本発明に係る実施形態1の給電装置300は、検査装置100側の搬送方向と略平行に適宜の位置に給電手段として断面がほぼコの字状フレームの給電手段310を備える。
【0039】
一方、被測定物である太陽電池モジュール200側には、集電手段320として、集電部材325が図1の太陽電池モジュールの裏面材22上に仮固定されている。集電部材320の仮固定は、太陽電池モジュールが本検査装置内に搬入される前に、作業者により仮固定する。仮固定の方法は、集電手段320と太陽電池モジュールの裏面材22との間に接着用シールなどによる簡易的な方法で良い。
【0040】
被測定物に仮固定する集電手段320に、図4に示す様に太陽電池モジュール200の端子ボックスBから引き出された正極側ケーブルCと負極側ケーブルCを接続する。この接続作業も太陽電池モジュール200が検査装置100に搬入される前、集電手段320を仮固定した直後に作業者が行なう。
【0041】
前記給電手段310の断面構造は、図4(a)に示す通りである。
すなわち、断面がほぼコの字状フレーム311の内側に、正極側給電用の銅線および負極側給電用の銅線による帯状導体312,312が、該フレームに対して絶縁板317を介してして設けられている。このフレームの下側に被測定物を検査装置100に搬入する駆動ローラ313が複数個設けられている。また、フレーム311の上側部分にも、集電部材325を押える構成でフリーローラ314が複数個設けられている。このフレーム内に設けられた駆動ローラ313と同型の駆動ローラは、検査装置100内に被測定物を搬入するために用いられるものでもあり、被測定物の幅寸法(搬送方向と直角な方向)に合わせて1対設けられている。
【0042】
被測定物が検査装置100内に搬入されると、給電手段310の帯状導体312の正極側導体と負極側導体が集電手段320の接触子と接触する。集電部材320の取り付け位置に若干のバラツキが有っても確実に集電部材325の接触子326と給電手段310の帯状導体(給電用導線)312が接触するように構成されている。
【0043】
図4(b)に示すように、集電手段320は、ブロック状の集電部材325に接触子326,326が設けられている。接触子326は、ブロック状の集電部材325に絶縁板327を介して取り付けされている。さらにこの接触子326、326は、給電手段310側の前記帯状導体312,312に対し弾性的に撓んで摺接する状態になるように構成されている。したがって、太陽電池モジュールが搬送され、給電手段310を設けた位置に到達すると、集電部材325側の接触子326,326が給電手段310側の帯状導体312,312に弾性的に摺接し、搬送中の電気的接続を保ち、これにより太陽電池モジュール200側への給電が行われるようになっている。
【0044】
上述の給電装置300には、上述した以外に電源、給電制御コントローラ等の必要とされる機器、装置などが適宜附属されている。
【0045】
<4>検査装置と給電装置の動作
被測定物として太陽電池モジュール200を例として、EL検査、サーモグラフィー検査を行う検査装置100に使用される本発明の給電装置の使用方法を以下に説明する。
【0046】
ラミネート処理後の太陽電池モジュール200は、前工程でのコンベアなどで本発明に係る検査装置100の前まで搬送される。次に、給電装置300を構成する集電手段320を被測定物である太陽電池モジュール上の適宜の位置(給電手段と接続ガ可能な位置)に接着シート等で仮固定される。
【0047】
さらに、このとき、この集電部材320には、図4(b)に示すように各太陽電池モジュール200の端子ボックスBから引き出された正極側ケーブルCおよび負極側ケーブルCを集電部材325の各接触子326,326に電気的に接続されるように、作業者の手作業で接続される。
【0048】
その後、太陽電池モジュール200は、検査装置100の搬送用の駆動ローラ313上に移載れる。そして検査装置内に配設した給電手段310の配設位置において集電手段320(集電部材325)の接触子326,326が給電手段310の帯状導体312,312に弾性的に摺接し、電気的接続が得られて図示しない電源からの給電が行われることになる。
【0049】
そして、この搬送中において給電状態に置かれた太陽電池モジュール200は、検査装置100の遮光カバーK内の所定の検査位置まで搬送され、該検査位置において位置決めされる。太陽電池モジュール200の太陽電池セル28の発光状態または発熱状態を図示しないカメラなどの撮影手段により撮影が行われ、欠陥部位の検出が行われる。
【0050】
太陽電池モジュールの検査が完了し、検査装置から太陽電池モジュールが搬出された後、作業者は、集電部材320に接続されていた端子ボックスBから引き出されたケーブルCを取外し、仮固定されていた集電部材320を取り外しする。
【0051】
また、上述した撮影によって得られる画像データがパソコンなどからなる画像処理装置に送られる。そして、この画像処理装置は、各太陽電池セル28の画像から発光しない部分や発熱している部分を取り出して分析し、太陽電池セル28ごとの合否を判断し、全ての太陽電池セルについての合否の結果から、太陽電池パネル8全体としての合否を判断することで、検査が行われる。この場合の給電手段310の配設位置、配設長さ等は、給電により太陽電池セル28が発光または発熱するに必要な時間、搬送時間、搬送速度などを考慮して適宜設定すればよい。
【0052】
本発明に係る給電装置300によれば、給電手段310と集電手段320との摺接による電気的接続によって、被測定物である太陽電池モジュール200の検査装置へ搬入中に給電を行うことができる。したがって、検査装置内の所定位置での位置決め時には、前記給電により被測定物に発光または発熱が生じており、検査にあたっての待ち時間を最小限とし、検査装置としての検査時間を最大限に短縮することができる。
【0053】
ここで、給電手段310や集電手段320は、作業者が被測定物である太陽電池モジュール200に仮固定するものの、太陽電池モジュールが検査装置に搬入される過程においての給電が可能となるものであり、検査装置において検査のための待ち時間を短縮でき、これにより全体としての検査時間を短縮することができる。
【0054】
特に、太陽電池モジュールの検査装置への搬入時に給電が可能となり、しかも検査時間を短縮できるから、検査装置に別の検査機能を追加することができる。したがって、太陽電池モジュールに対し複数種類の検査を同時または連続して行うことができ、結果として太陽電池モジュールの品質を向上させることができる。
【0055】
<5>給電装置の実施形態2
図6および図7により、本発明に係る検査装置の給電装置における別の実施形態を説明する。図6は、検査装置100の内部に被測定物である太陽電池モジュールが搬入された状態を示す。この本実施形態の給電装置400は、図6に示すように、給電手段410と集電手段420から構成されている。
【0056】
前記給電手段410及び集電手段420の構造について、図7(a)および図7(b)により説明する。
【0057】
図7(a)に示すように、給電手段410は、コの字状フレ−ム411の内側に、正極側給電用の接触子および負極側給電用の接触子を設けたブロック状の給電部材415を複数個起立して設けている。本実施形態では、図6に示すように、3個設けている。接触子416は、実施形態1と同様の構成であり、1つの集電部材415に絶縁板417を介して2つ設けられている。このフレーム411の下側に太陽電池モジュールを検査装置100に搬入する駆動ローラ413が複数個設けられている。また、フレーム411の上側部分にも、集電手段420を押える構成でフリーローラ414が複数個設けられている。このフレーム内に設けられた駆動ローラ413と同型の駆動ローラは、検査装置100内に被測定物を搬入するために用いられるものでもあり、被測定物の幅寸法(搬送方向と直角な方向)に合わせて1対設けられている。
【0058】
また給電手段410は、図7(b)に示すように、ブロック状の給電部材415に接触子416,416が設けられている。この接触子416の構成は、実施形態1と同様である。集電手段420側の前記帯状導体422,422に対し弾性的に撓んで摺接する状態になるように構成されている。したがって、太陽電池モジュールが搬送され、給電部材415を設けた位置に到達すると、給電部材415側の接触子416,416が集電手段420側の帯状導体422,422に弾性的に摺接し、搬送中の電気的接続を保ち、これにより太陽電池モジュール側への給電が行われるようになっている。
【0059】
集電手段420は、断面が矩形板状の集電部材425の側面に正極側給電用の銅線および負極側給電用の銅線による帯状導体422,422が絶縁板427を介して設けられている。
【0060】
この集電部材425は、太陽電池モジュール200が検査装置100内に搬入される前に作業者が接着シートなどにより、太陽電池モジュールの裏面材22上に仮固定される。また太陽電池モジュールを検査装置100内に搬入する前に、図7に示す様に太陽電池モジュールの端子ボックスBから引き出された正極側ケーブルCと負極側ケーブルCを集電部材425の帯状導体に接続する。集電手段420の仮固定および端子ボックスから引出されたケーブルの集電手段への接続は、実施形態1同様作業者が行う。
【0061】
太陽電池モジュールが検査装置に搬入されると、太陽電池モジュ−ルは検査装置100内で1対の駆動ローラ423上を走行しながら搬入される。また集電部材425の上側は、フリーローラ424で抑えながら搬入される。この時、給電手段410の接触子416、416が集電手段の帯状導体422の正極側導体と負極側導体と接触する。集電手段420の取り付け位置に若干のバラツキが有っても、給電手段410の接触子と集電部材425の帯状導体(集電用導線)422が確実に接触するように構成されている。
【0062】
ここで、集給電手段410を複数個設けているのは、被測定物の搬送方向の長さが短い場合に、給電が中断してしまうために、これを防止するためである。
【0063】
このような給電装置400は、前述した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0064】
なお、本発明は上述した実施形態で説明した構造には限定されず、検査装置の給電装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
例えば給電手段および集電手段の帯状導体(実施形態1の312、実施形態2の422)、接触子(実施形態1の326,実施形態2の416)の形状、構造等は適宜変更できるものである。被測定物を検査装置内に搬送する際に電気的接続を確保できる構成のものであればよい。
【0065】
また、上述した実施形態では、検査装置として、太陽電池セル、太陽電池セルを一列に接続したストリング、ストリングを平行に複数配置した太陽電池パネルなど、太陽電池一般の性能を検査する装置である場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、適宜の分野等においての種々の被測定物に適用できることは言うまでもない。更に、電気的接続により給電だけでなく電流の取り出しを行えるものでも、適宜適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
100 検査装置
200 被測定物(太陽電池モジュール)
28 太陽電池セル(シリコンセル)
29 リード線
300 給電装置(実施形態1)
310 給電手段
320 集電手段
400 給電装置(実施形態2)
410 給電手段
420 集電手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に電流を流すことで前記被測定物の検査を行う検査装置用の給電装置であって、
前記検査装置側に給電手段を設け、
前記被測定物側に集電手段を設け、
前記給電手段と前記集電手段とを、前記検査装置に前記被測定物を搬送中に電気的に接続可能な構成したことを特徴とする検査装置用の給電装置。
【請求項2】
請求項1記載の前記検査装置の給電装置において、
前記被測定物上に設けられた集電手段を、被測定物上に仮固定するように構成したことを特徴とする前記検査装置用の給電装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の前記検査装置用の給電装置において、
前記給電手段は、帯状導体を含む構成とし、
前記集電手段は、前記給電手段の帯状導体と接触する接触子を備えていることを特徴とする前記検査装置用の給電装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の前記検査装置用の給電装置において、
前記集電手段は、帯状導体を含む構成とし、
前記給電手段は、前記集電手段の帯状導体と接触する接触子を備えていることを特徴とする前記検査装置用の給電装置。
【請求項5】
請求項4に記載の前記検査装置用の給電装置において、
前記給電手段は、被測定物の搬送方向に沿って複数個設けたことを特徴とする検査装置用の給電装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の検査装置用の給電装置において、
前記集電手段と前記給電手段による電気的接続によって、前記被測定物を前記検査装置に搬送しながら該被測定物への給電を行い前記被測定物の検査を行うことを特徴とする検査装置用の給電装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の検査装置用の給電装置において、
前記検査装置は暗室を備え、
前記被測定物が発光または発熱し、その状態を前記検査装置の撮影手段等により撮影することにより、前記被測定物の検査を行うことを特徴とする検査装置用の給電装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の検査装置用の給電装置において、
前記被測定物は太陽電池モジュールの構成部材であり、
前記検査装置は、EL発光を利用した検査またはサーモグラフィー検査を行うように構成した検査装置であることを特徴とする検査装置用の給電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−89759(P2012−89759A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236762(P2010−236762)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(709002303)日清紡メカトロニクス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】