説明

検査装置及び検査方法

【課題】周期性のあるパターンを持つ被検査体のムラ欠陥を検出する場合に、映り込みの判別を短時間に行うことが出来、さらに大面積の被検査体の検査時間を短縮する検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】基板を載置して搬送する搬送手段と、基板を照明する第一の照明手段と第二の照明手段と、第一の照明手段の照明角度を変化させる第一の照明角度変化手段と、第二の照明手段の照明角度を変化させる第二の照明角度変化手段と、第一の照明手段によって照明された基板を撮像する第一の撮像手段と、第二の照明手段によって照明された基板を撮像する第二の撮像手段と、第一の撮像手段及び第二の撮像手段によって得られた画像を処理する画像処理部と、前記搬送手段と、第一と第二の照明手段と、第一と第二の照明角度変化手段と、第一の撮像手段及び第二の撮像手段と、を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期性パターンを有する被検査体においてパターンのムラ欠陥を検査するための検査装置及び検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周期性パターンとは、一定の形状が一定の間隔を持って配列されたパターンの集合体を称す。例えば、ストライプ状のパターンが所定の周期で配列した一次元の周期性パターン、または島状や格子状の単位パターンが所定の周期で配列した行列状のパターン等が該当する。周期性パターンを有する被検査体の一例として、半導体装置、撮像デバイス及び表示デバイス等を製造する際にフォトリソグラフィ処理の露光工程で用いられるフォトマスクが挙げられる。さらに撮像デバイスや表示デバイスに用いられるカラーフィルタやブラックマトリクスなどが挙げられる。
【0003】
このような周期性パターンを有する被検査体において、その周期や個々の単位パターン形状に異常が発生しているとき、ムラ欠陥として観察される。
【0004】
周期性パターンを有する被検査体、例えばCCDやCMOSなどの撮像デバイスや各種表示装置などの表示デバイスを製造する場合に用いられるフォトマスクにおけるムラ欠陥は、周期的な画素のパターンの周期ずれや位置ずれやサイズ変化といった変動が、規則的に配列して発生していることが原因であることが多い。そのため個々のパターン検査では発見することが困難で、周期性パターンを広い領域において観察した時に初めて認識できる欠陥である。
【0005】
周期性パターンにおける従来のムラ検査は、同軸の透過照明や平面照明を用いて透過画像を撮像し、各々の画像での光強度を比較することによって正常部とムラ欠陥部の視認を行っている。しかし、正常部とムラ欠陥部における光の強度差は必ずしも大きいとは限らず、得られる画像のコントラストは低い。そのため、コントラストの低い画像に対しその強度差の処理方法を工夫することでコントラストの向上を図り、ムラ欠陥部を抽出して検査を行っている(特許文献1参照)。
【0006】
近年、半導体回路の微細化や、微細でかつ高い輝度出力を目指した表示機器の開発、また高い感度をもつ撮像機器の開発により、これらの製品で使用される周期性パターンはいっそう微細化したり開口部比率が増大したりする傾向が進んでいる。将来的には、より開口部が大きく、より微細な形状の周期性パターンのムラ検査装置及びムラ検査方法が必要となる。
【0007】
この様な従来の光の振幅による光の強度(明るさ)の強弱からムラ欠陥を検出する方法では限界がある。格子状周期性パターンの遮光部のムラ、特に開口部の大きいパターンのムラを撮像した画像において、正常部とムラ欠陥部でのコントラスト向上が期待できず、強度差の処理を工夫したとしても元の画像のコントラストが低い画像の場合の検査では、目視での官能検査方法より低い検査能力しか達成できないという問題がある。
【0008】
そこで、周期性のあるパターン、例えばブラックマトリクスに発生するムラ欠陥を安定的かつ高精度に検出することを目的として、例えば特許文献2の検査装置が提案された。特許文献2の検査装置は、照明光を被検査体に照射し、周期性パターンによって生じる透過回折光の画像を撮像して検査するというものである。周期性パターンの正常部では開口部の形状・ピッチが一定となるため互いに干渉し一定の方向に回折光を生じる。それに対
し、ムラ欠陥部では開口部の形状、ピッチが不規則になるため、形状、ピッチに応じて種々の方向に、種々の強さで回折光が生じる。この検査装置では、正常部とムラ欠陥部における回折光強度コントラストの違いから、ムラ欠陥部を検出する。
【0009】
周期性パターンを持つ被検査体の1つとして例えば撮像装置用のフォトマスクが挙げられるが、フォトマスクは、透明基板上にクロム等の遮光膜やMoSi等のハーフトーン膜が設けられ、これが選択的に除去されることで所定のパターンを形成して構成されたものが知られており、半導体回路、撮像デバイス及び表示デバイスなどの製造工程で用いられる。
【0010】
フォトマスクの製作にはまず、透明基板上に遮光膜(またはハーフトーン膜)を成膜したものにフォトレジストを塗布する。次にフォトレジスト上に描画装置で所定のパターンを描画する。その後、描画したフォトレジスト膜を現像し、描画部か非描画部のどちらか一方を選択的に除去する。現像によって残されたフォトレジスト膜をマスクとして遮光膜にパターン形状をエッチングし、その後残されたフォトレジストを除去することでフォトマスクが完成する。エッチングの手法として、遮光膜に対して腐食性を有す液体を使用するウェットエッチングや、遮光膜に対し腐食性を有す気体によるドライエッチングが挙げられる。
【0011】
フォトマスクにおいては、パターンを描画する際、一般的に電子ビーム描画装置やレーザビーム描画装置が用いられる。これらのパターン描画装置では、フォトマスク上の所定サイズの領域(描画単位領域)内にあるパターンを描画したら、次の描画単位領域に移ってその中にあるパターンを描画する、というステップアンドリピート方式でフォトマスク全体のパターンを描画する。
【0012】
フォトマスクの描画工程では、ある描画単位領域と隣接する描画単位領域の境界部分において、数nmオーダーで、ピッチずれ、サイズ変化及び位置ずれといった描画パターンの変動が連続して生じることが知られている。つまり、この描画単位領域の大きさの周期でムラ欠陥が発生する傾向があり、周期性パターン領域におけるムラ欠陥の発生様式、面内分布は、描画単位領域形状に依存するといってもよい。例えば描画単位領域の形状が帯状であった場合には、ムラ欠陥も帯または線が描画単位領域の寸法の周期で規則的に整列した画像が見られることがある。また描画単位領域の形状が矩形であった場合、ムラ欠陥は濃淡のある市松模様に似た画像となって見られることがある。この様にムラ欠陥は人工的な模様として見られることもある。
【0013】
この様なムラ欠陥検出の検査装置や検査方法の対象である被検査体は周期性パターンの周囲に周期性パターン以外の形状をもつパターンが設置されることがある。例えば半導体製品においては配線やフォトリソグラフィ工程で露光するための位置合わせに用いるアライメントパターンなどである。またCCDやCMOSなど撮像装置用のフォトマスク上には信号を取り出すための配線パターンなどが、画素を製造するための周期性パターンの設置された領域の周囲に配置されている事がある。前述のムラ欠陥検出の検査装置や検査方法では、これらの被検査領域外のパターンに照明が当たり、その反射光や散乱光が迷光となって周期性パターンの被検査領域に映り込むことがある。これらの映り込みは実際に生じているムラ欠陥と区別しながら検査を行う必要がある。
【0014】
ムラ欠陥と映り込みとを区別する作業は、異なる条件での検査方法や別の検査装置による多重チェックが必要な場合もあり、時間や装置の運用効率低下に繋がる問題となっている。そのため検査装置や検査方法には映り込みの生じない装置構造や光学系が求められる。
【0015】
映り込みは照明の条件によって見える位置が変化する事が知られている。その為、ムラ欠陥と映り込みとを区別する作業の一例として、照明光の照射角度を変える事によって実際のムラ欠陥との判別をする手法が採られる場合がある。
【0016】
フォトマスクに設置される配線やアライメントパターンは矩形や直線からなるパターンが多く用いられている。そのためこれらのパターンによって生じる迷光や映り込みも矩形や直線的なパターンとなる。このような映り込みが生じている場合、フォトマスクにムラ欠陥が実際に生じているのか、映り込みなのかを判断するのは容易ではない。カメラなどでムラ欠陥の画像を取得する場合は、実際のムラ欠陥と映り込みと疑われる欠陥が検出された場所を、他の検査装置や方法によって再度検査・確認することが必要となる。
【0017】
これらの工程が追加されるのを避ける為には、映り込みが生じにくい検査方法の確立が必要とされる。そのために例えば特許文献3の様な機構が提案されている。
【0018】
しかしながら特許文献3で示された検査方法では、照明の照射角度や検査可能な領域に制限が加えられる。ムラ欠陥を撮像する場合には照明の角度によって画像のコントラストが大きく変化する。そのために照明の照射角度がフォトマスク内のパターン配置によって制限されると、最もムラ欠陥と正常部とのコントラストが得られる照明の条件を選択できなくなる可能性が危惧される。また仮に被検査体である周期性パターンが同一の単位パターン、同一の周期で設置されていても、周辺のパターン配置によって検査時に許容される照明角度が変化するため、同じ条件での評価が出来なくなるという問題が生じる。また、ムラ欠陥は周期性パターンの被検査領域内のあらゆる場所に生じる可能性を持っており、検査不可能な領域の発生は望ましくない。映り込みの発生を抑えると共に被検査体への照明条件の制約を少なくする検査装置や検査方法が必要である。
【0019】
また表示デバイスの製作に関する近年の技術動向として、製作時に使用するガラス基板の大型化が挙げられる。具体的には、ブラックマトリクスやカラーフィルタ、さらにこれらを製作するためのフォトマスクなどが該当する。個々の表示デバイスのサイズの大型化によって大型のガラス基板を使用する場合と、複数の小型の表示デバイスのパターンを1枚のガラス基板に設置することによって生産費用の削減を図る場合がある。小型の表示デバイスのパターンを1枚のガラス上に複数設置する場合には、パターン設置後にガラス基板を表示デバイス1つずつの領域に切り離す工程を取る。上記のいずれかによる、大面積のガラス基板に設置される周期パターンのムラ欠陥を検査する場合、検査時間はガラスの面積に比例して増大する。
【0020】
この様に大面積の表面を検査する場合、ラインセンサカメラによって被検査体表面を走査しながら、被検査体の画像を取得する手法が用いられる事がある。ラインセンサカメラを用いる利点としては、ある1つの条件下において大面積の画像の取得を短時間で行える事である。エリアセンサカメラを用いる場合、同一の倍率のレンズを使用する際において、一般にカメラ視野の対辺距離がラインセンサカメラと比較して短い。その為、先述のフォトマスクの描画方法と同様に、ステップアンドリピート方式によって被検査体表面の画像を取得する必要が生じ、同面積の画像を取得する際にラインセンサカメラと比較して長い時間が掛かる。
【0021】
他方、エリアセンサカメラを使用する際の利点として、同一箇所の経時変化を捉えられる点が挙げられる。ラインセンサカメラの場合、撮像時に撮像対象との相対距離が時間によって変化する為、同一箇所の経時変化を確認する為には、再度対象とする場所へカメラを戻して再度撮像動作をさせる必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2002−148210号公報
【特許文献2】特開2006−208084号公報
【特許文献3】特開2008−26306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は上記の様な問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは撮像デバイス用フォトマスクや表示デバイス用フォトマスクの様に周期性のあるパターンを持つ被検査体のムラ欠陥を検出する場合に、映り込みの判別を短時間に行うことが出来、さらに大面積の被検査体の検査時間を短縮することが可能な検査装置及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の課題を解決するため本発明の請求項1は、基板表面に周期性パターンが形成された基板を周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査する装置であって、
基板を載置して搬送する搬送手段と、
基板を照明する第一の照明手段と第二の照明手段と、
第一の照明手段の照明角度を変化させる第一の照明角度変化手段と、
第二の照明手段の照明角度を変化させる第二の照明角度変化手段と、
第一の照明手段によって照明された基板を撮像する第一の撮像手段と、
第二の照明手段によって照明された基板を撮像する第二の撮像手段と、
第一の撮像手段及び第二の撮像手段によって得られた画像を処理する画像処理部と、
前記搬送手段と、第一と第二の照明手段と、第一と第二の照明角度変化手段と、第一の撮像手段及び第二の撮像手段と、を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする検査装置である。
【0025】
本発明の請求項2は、前記第一の照明手段と第二の照明手段は、被検査基板に対して垂直な面内及び水平な面内で照明角度を変化させることを特徴とする請求項1に記載の検査装置である。
【0026】
本発明の請求項3は、前記第一の撮像手段はエリアカメラであり、前記第二の撮像手段はラインセンサカメラであることを特徴とする請求項1に記載の検査装置である。
【0027】
本発明の請求項4は、前記画像処理部は、前記第一の撮像手段によって撮像された画像を処理して抽出された欠陥候補を、前記第二の撮像手段によって撮像して、該撮像画像から真の欠陥を抽出することを特徴とする請求項1に記載の検査装置である。
【0028】
本発明の請求項5は、基板表面に周期性パターンが形成された基板を周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査する方法であって、
基板を載置して搬送する搬送工程と、
基板を照明する第一の照明工程と第二の照明工程と、
第一の照明工程の照明角度を変化させる第一の照明角度変化工程と、
第二の照明工程の照明角度を変化させる第二の照明角度変化工程と、
第一の照明工程によって照明された基板を撮像する第一の撮像工程と、
第二の照明工程によって照明された基板を撮像する第二の撮像工程と、
第一の撮像工程及び第二の撮像工程によって得られた画像を処理する画像処理工程と、
前記搬送工程と、第一と第二の照明工程と、第一と第二の照明角度変化工程と、第一の撮像工程及び第二の撮像工程と、を制御する制御工程と、を用いて周期性パターンが形成された基板を検査する検査方法である。
【0029】
本発明の請求項6は、前記第一の照明工程と第二の照明工程は、被検査基板に対して垂直な面内及び水平な面内で照明角度を変化することを特徴とする請求項5に記載の検査方法である。
【0030】
本発明の請求項7は、前記第一の撮像工程にエリアカメラを用い、前記第二の撮像工程にラインセンサカメラを用いることを特徴とする請求項5に記載の検査方法である。
【0031】
本発明の請求項8は、前記画像処理工程を用いて、前記第一の撮像工程によって撮像された画像を処理して抽出された欠陥候補を前記第二の撮像工程によって撮像して該撮像画像から真の欠陥を抽出することを特徴とする請求項5に記載の検査方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明による周期性パターンの検査装置及び検査方法によれば、周期性のあるパターンである撮像デバイス用フォトマスクや表示デバイス用フォトマスクなどの被検査体の検査において、検出された欠陥から映り込みとムラ欠陥とを効率的に弁別することが可能となる。
【0033】
また、大面積の被検査領域に対しても、画像取得時間が短縮することが出来、その結果、検査時間の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の方法を適用するムラ検査装置の一形態の概略図
【図2】本発明の方法を適用するムラ検査装置の一形態の被検査体保持ステージの一例を示す概略図
【図3】カメラの撮像方式によるステージ移動の軌跡の違いを示す模式図
【図4】周期性パターンの設置された領域に投光した場合の被検査体内部の光線の一例を示す概略図
【図5】照明角度Φの変化によって映り込み位置が変わることを示す概略図
【図6】透明な被検査体に屈折率が異なる領域から光が入射した場合の光線の概略図
【図7】実欠陥と映り込みの区別を行う為のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0035】
エリアセンサカメラを使用する場合、異なる照明条件を適用した場合の画像の変化をリアルタイムに評価できる。この特性を利用して、ムラ欠陥と映り込みとの判別を行う上で有利となる。
【0036】
また、照明角度を変える様な検査方法を採る場合、照明角度の位置決め精度が低い場合、最もムラ欠陥のコントラストが得られる様に照明角度等の条件を調整して最適化するために、画像の取得とムラ欠陥のコントラスト算出を繰り返し、最適な照明角度を求める場合がある。この様な場合において、エリアカメラはムラ欠陥の画像において照明角度などの撮像条件の刻々とした変化に従って変わる欠陥のコントラストの変化を捉え、最適な照明角度を求める事が出来る。
【0037】
図1は本発明に係る実施形態の方法を適用する検査装置50を概略的に示した構成図である。図1では透過回折光を得るための装置構成例を示している。なお、本装置は外乱光や迷光を極力低減させた暗環境で使用されることが望ましい。
【0038】
図1に示される本発明に係る検査装置50は、基板10を載置して搬送する搬送手段である搬送部52と、基板10を照明する第一の照明手段である第一の照明装置305と第
二の照明手段である第二の照明装置315と、第一の照明装置305の照明角度を変化させる第一の照明角度変化手段である第一の円弧レール303と、第二の照明装置315の照明角度を変化させる第二の照明角度変化手段である第二の円弧レール313と、第一の照明装置305によって照明された基板を撮像する第一の撮像手段である第一の撮像装置201と、第二の照明装置315によって照明された基板を撮像する第二の撮像手段である第二の撮像装置211と、第一の撮像装置201及び第二の撮像装置211によって得られた画像を処理する画像処理部71と、前記搬送ステージ52と、第一と第二の照明装置305、315と、第一と第二の円弧レール303、313と、を制御する制御部70と、を備えている。
【0039】
搬送部52は被検査体10の位置決め動作及び基板搬送動作が可能なX−Y−θステージであって、照明部300は基板10を照明する第一の照明手段である第一の照明装置305と、第二の照明手段である第二の照明装置315と、第一と第二の円弧レール303、313と、を備えている。また、撮像部200は第一の撮像装置201と、第二の撮像装置211と、を備えている。被検査体10の基板面には周期性パターンが形成されている。ここで基板面とは被検査体10の厚さ方向の一方に位置する面である。
【0040】
撮像部200は、エリアカメラ201、エリアカメラ用レンズ202、ラインセンサカメラ211、ラインセンサカメラ用レンズ212から構成される。撮像部200にて、被検査体10を撮像し、被検査体の撮像画像を取得する。
【0041】
照明部300では、エリアカメラ201の光軸方向に円弧の中心が位置する円弧レール303が設置されている。円弧レール303には照明投光部301が設けられており、照明装置305からはライトガイド306を用いて導光している。円弧レール303上で照明投光部301を駆動することによって被検査体10の基板面に対して垂直方向の照射角度Φ1の変更を可能とする。円弧レール303上のどの位置にあっても照明投光部301は、X−Y−θステージ52上の所定位置に照明光を照射することができるように調整されており、これによって、X−Y−θステージ52上の被検査体10の基板面に対して、様々な照射角度からの照射が可能となっている。照明投光部301には平行光学系が設けられており、また、照明光の波長域を変化させる機構を具備しても良い。
【0042】
照明部300は、さらにラインセンサカメラ211の光軸方向に円弧の中心が位置する円弧レール313を具備するものとする。円弧レール313上で照明投光部311を駆動することによって被検査体10の基板面に対して垂直方向の照射角度Φの変更を可能とする。これらはラインセンサカメラによる撮像時に使用する照明である。照明投光部311には平行光学系が設けられている。なお、311及び313は、301及び303と必ずしも別部品とする必要は無く、位置を移動させることによって代替しても良い。
【0043】
尚、206、216は撮像装置201、211の制御装置である。55は搬送装置の52の動作制御装置である。更に72は、情報表示部、73は例えばタッチパネルを備えた情報入力部である。
【0044】
図2は図1のX−Y−θステージ52を円弧レール303側から見たものである。X−Y−θステージ52は、被検査体10を図2のX軸方向及びY軸方向に平行移動する機能と、被検査体10をその基板表面と直交する基板面法線周りの回転方向に360°回転させる機能を有する(この回転中心の軸をΘ軸とする)。これによって、予め設定した動作手順に従って被検査体10をX軸及びY軸方向に駆動する。また、Θ軸を中心として被被検査体10を面内回転させることにより、被検査体10の基板面内への照明照射方向の調整が可能である。尚、12は検査対象の遮光膜部、13は非検査対象の遮光膜部を示す。
【0045】
図1に示すラインセンサカメラ211のラインセンサの配列方向は、X方向と平行である。ラインセンサカメラによる被検査体10の画像取得を行う場合には、まずX方向の画像取得位置までX−Y−θステージ52を移動させた後、Y方向へ移動させながらラインセンサカメラによって画像取り込みを行う。
【0046】
図3はカメラの撮像方式によるステージ移動の軌跡の違いを示す模式図である。図3(a)はエリアカメラ201を使用し、被検査体全体を撮像する場合の一例を示す。被検査体を覆う様に9つの領域に分割して、8回のステージ移動によって被検査体を包含する9つの画像を取得する。一方、図3(b)はラインセンサカメラ211を使用し、被検査体全体を撮像する場合の一例を示す。被検査体を2つの領域に分割して、3回のステージ移動によって被検査体を包含する2つの画像を取得する。
【0047】
制御部70は、照明部300、X−Y−θステージ52、撮像部200を構成する機器類の動作制御を行う。画像処理部71は、撮像部200からの出力を画像情報、あるいは信号情報として入力を行い、演算処理を行う。さらにその処理結果や処理画像を、表示手段72に表示する。
【0048】
図1では撮像部200と照明部300が、被検査体10の基板を挟んで配置されているが、撮像部200と照明部300が被検査体10の同一面側に配置しても良い。
【0049】
図4に、被検査領域である周期性パターン12に開口部14Aを経由した光によって映り込みが生じている場合における光の経路を示す。図4に示される入射光40が周辺パターンの開口部14Aから入射角+Φで入射した後、ガラス基板11の裏面(遮光膜面12とは反対側の面)で反射した後、周期パターンが設けられている遮光膜面12へ到達し、遮光膜面のレンズ側への鉛直方向へ回折する光がカメラ201へ映り込む。図4の位置関係においてカメラ201で画像を取得すると、図中のaとcの領域は映り込みが生じないが、bで示す領域は開口部14Aからの反射光が映り込む事によりaやcよりも明るく見える。即ち、遮光膜層からの回折光41と映り込みを含む回折光42がカメラ201へ映り込む。開口部14Aの端から、映り込みが生じる位置までの距離をdとする。尚、51は、基板の保持治具を示す。
【0050】
図4の状態でカメラ201や、211(図1に示すカメラ)を用いて遮光膜面12のパターンを撮像した画像の模式図を図5(a)〜(c)に示す。図5(a)〜(c)は照明投光部301の照射角度をΦ11(a)、Φ12(b)、Φ13(c)に変化させた場合の撮像した画像の模式図である。正常部61に対してムラ欠陥63の画像輝度が高い場合を示している。映り込み64も周期性パターン61の領域内に写っている。この画像に対しムラ欠陥検出処理を適用すると、ムラ欠陥63のみならず映り込み64もムラ欠陥として検出されてしまう。
【0051】
上記検査装置50の構成において周辺パターンから映り込みまでの範囲を示す距離dを以下に求める。
【0052】
図6に検査対象である周期性パターンと異なる開口部を持つ周辺パターンに照明角度Φで投光する場合を示す。投光された光は被検査体の透明基板11の入射面の界面では透明基板11と空気との屈折率が異なるため、透明基板11の界面で角度αで屈折しつつ透明基板11へ入射する。また入射角度Φと屈折角度αの関係式は数1で示される。これを式1とする。
【0053】
【数1】

【0054】
入射した光は透明基板11の裏面から基板の外へ一部は透過し、また遮光膜の無い開口部などに入射した一部の光は基板裏側で反射し、再び遮光膜のある面へ戻ってくる。周辺パターンから映り込みまでの距離dは、入射光が基板に入射した位置から、光が基板表面へ反射して戻る位置までの距離である。周辺パターンから映り込みまでの範囲を示す距離dは数2で示される。これを式2とする。
【0055】
【数2】

【0056】
上記式1と式2より上記検査装置50の構成において周辺パターンから映り込みまでの範囲を示す距離dは数3で求められる。これを式3とする。式3によればdは照明角度Φの変数で表される事が分かる。ここでnは被検査基板外の空間の屈折率、nは被検査基板の透明基板11の屈折率で、tは透明基板11の厚さである。Φは照明投光部301の照射角度である。Φは検査対象の遮光膜面に垂直な方向を0°とする。Φ=90°のとき、被検査体へY軸正方向から被検査体へ投光される。
【0057】
【数3】

【0058】
エリアカメラで被検査領域を撮像しながら照明角度Φを図5(d)〜(f)に示すようにΦ11〜Φ13に変化させた場合、映り込みまで範囲dが(a)〜(c)に示されるように変化する。一方でパターン上に実際にあるムラ欠陥63の位置は変化しない為、実欠陥と映り込みを容易に判別する事ができる。
【0059】
(適用例1)
本発明による周期性パターンの検査装置を適用して欠陥を検出する場合のフローをフローチャート図7と、図1のムラ検査装置の概要図と、を用いて説明する。
【0060】
先ず、ステージ52をエリアカメラ201の直下に移動する(S1)。次にエリアカメラ201用の照明投光部301を点灯し(S2)、エリアカメラ201用の照明投光部301の照明角度Φを0度へ移動する(S3)。n=−1とし(S4)、更にnをインクリメントしてn=n+1とし(S5)、上記照明角度ΦをΦ=Φ+n×Aとし(ここでAはΦの画像取得間隔)(S6)、先ず照明投光部301の照明角度をΦに移動した(S7)後、撮像に適当な画像輝度になるまで光源装置の出力を調整する(S8)。ここでいう適当な画像輝度になるまで光源装置の出力を調整するとは、検査に適当な条件に、光源装置の出力を調整することを示す。
【0061】
その後、エリアカメラ201による画像を取得する(S9)。取得した画像から欠陥検出処理を行う(S10)。この時点でΦ=Φ+n×AがΦの可動限界角度内か否かの判断を行い(S11)、可動限界角度を超えている場合(S11のYES)はステップ(S12)に移行する。即ち、ステップ(S12)では、検出された欠陥から、上記Φによって位置が変わらないものをムラ欠陥として抽出する(S12)。
【0062】
抽出されたムラ欠陥の画像コントラストが最も高い照明角度Φ´を抽出し(S13)、
Φ=Φ´となるようにラインセンサカメラ211用照明311を移動し(S14)、ラインセンサカメラ211による被検査体の全体を撮像する(S16)。
【0063】
ラインセンサカメラ211によって得られた被検査体の全体画像を画像処理部71によって画像処理され、ムラ欠陥を検査する(S16)。
【0064】
ステップ(S11)でΦ=Φ+n×AがΦの可動限界角度を超えていない場合(
S11のNO)はステップ(S5)に移行し、上記Φを変化させてステップ(S6)以降を実行する。
【0065】
以上のように、エリアカメラ201によって連続撮像しながら照明角度Φ1を変化させ、図5に示す被検査領域12の全体、もしくは一部の領域を撮像する。次に領域内における画像輝度の局所的な変動部を検出する。その中から照明角度によって変化しないものを抽出する。ここで抽出された欠陥は、欠陥候補であるがムラ欠陥である可能性が高い。こうして位置を同定した欠陥候補について、正常部との画像輝度差が最大となる照明角度Φ´を求める。この照明角度をラインセンサカメラによる撮像系へ反映する。図1に示す円弧レール313によって、ラインセンサカメラ用照明311の照明角度ΦをΦ(この場合は求めた照明角度Φ´を指す)と同じ角度に設定し、ムラ欠陥を撮像する為の最適な照明角度条件がラインセンサカメラによる撮像系に対して設定される。その後、ラインセンサカメラ211を使用し、被検査対象領域の画像を取得する。この画像データを処理部70によって処理する事により、ムラ欠陥の検査を行うものとする。このように、エリアカメラによって抽出された欠陥部分を、更に、照明角度ΦをΦ(この場合は求めた照明角度Φ´を指す)と同じ角度に設定してラインセンサカメラで検査することによって、ラインセンサカメラを用いて照明角度を変化させながら被検査領域を検査する場合に比べて、短時間でしかも精度の高い検査を行うことが出来る。
【0066】
(適用例2)
適用例2を説明する。検査終了後、ムラ欠陥として検出された箇所について、エリアカメラによって実際のムラ欠陥か、映り込みかを短時間で確認する事が可能となる。検査に使用した照明角度条件Φを中心に照明角度を変化させ、局所的に画像輝度変動がある部分が移動するかどうかを確認すれば良い。この時ラインセンサカメラでは、照明条件を変化させる事とステージ移動による撮像動作を繰り返す必要がある。一方でエリアセンサカメラの画像を使用する場合では、ステージを移動させる必要が無い為、短時間で確認作業が完了する。
【0067】
上記説明では、照明角度を変化させた場合を説明したが、エリアカメラによる照明条件設定においては、照明光の波長を一定量ずつ変化させながら一定時間間隔で画像取得し、ムラ欠陥検査に最適な照明波長条件の探索をする事も可能である。また、被検査体の設置角度Θを一定量ずつ変化させながら一定時間間隔で画像取得し、ムラ欠陥検査に最適な照明波長条件の探索をする事も可能である。
【0068】
このように本発明による周期性パターンの検査装置及び検査方法によれば、検出された欠陥から、映り込みとムラ欠陥とを効率的に弁別することが可能になり、その結果、被検査体の映り込みによる欠陥の誤判定を防ぐことが出来、更に、大面積の被検査体の検査においても検査時間を短縮することが可能になる。
【符号の説明】
【0069】
10…被検査体
11…透明基板
12…検査対象の遮光膜部
13…検査対象外の遮光膜部
14…開口部
40…入射光
41…遮光膜層からの回折光
42…映り込みを含む回折光
50…検査装置
51…透明基板の保持治具
52…搬送装置
55…搬送装置動作制御装置
61…任意の照明条件で撮像した遮光膜層
63…ムラ欠陥
64…映り込みの一例
66…映り込みを生じさせる光線の軌跡の一例
70…制御部
71…画像処理部
72…情報表示手段
73…情報入力手段
200…撮像部
201…エリアカメラ
202…エリアカメラ用撮像レンズ
206…エリアカメラ制御装置
211…ラインセンサカメラ
202…ラインセンサカメラ用撮像レンズ
206…ラインセンサカメラ制御装置
300…照明部
301…エリアカメラ用投光部
303…エリアカメラ用円弧レール
305…エリアカメラ用照明装置(第一の照明装置)
306…エリアカメラ用ライトガイド
311…ラインセンサカメラ用投光部
313…ラインセンサカメラ用円弧レール
315…ラインセンサカメラ用照明装置(第二の照明装置)
316…ラインセンサカメラ用ライトガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に周期性パターンが形成された基板を周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査する装置であって、
基板を載置して搬送する搬送手段と、
基板を照明する第一の照明手段と第二の照明手段と、
第一の照明手段の照明角度を変化させる第一の照明角度変化手段と、
第二の照明手段の照明角度を変化させる第二の照明角度変化手段と、
第一の照明手段によって照明された基板を撮像する第一の撮像手段と、
第二の照明手段によって照明された基板を撮像する第二の撮像手段と、
第一の撮像手段及び第二の撮像手段によって得られた画像を処理する画像処理部と、
前記搬送手段と、第一と第二の照明手段と、第一と第二の照明角度変化手段と、第一の撮像手段及び第二の撮像手段と、を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第一の照明手段と第二の照明手段は、被検査基板に対して垂直な面内及び水平な面内で照明角度を変化させることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第一の撮像手段はエリアカメラであり、前記第二の撮像手段はラインセンサカメラであることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記第一の撮像手段によって撮像された画像を処理して抽出された欠陥候補を、前記第二の撮像手段によって撮像して、該撮像画像から真の欠陥を抽出することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
基板表面に周期性パターンが形成された基板を周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査する方法であって、
基板を載置して搬送する搬送工程と、
基板を照明する第一の照明工程と第二の照明工程と、
第一の照明工程の照明角度を変化させる第一の照明角度変化工程と、
第二の照明工程の照明角度を変化させる第二の照明角度変化工程と、
第一の照明工程によって照明された基板を撮像する第一の撮像工程と、
第二の照明工程によって照明された基板を撮像する第二の撮像工程と、
第一の撮像工程及び第二の撮像工程によって得られた画像を処理する画像処理工程と、
前記搬送工程と、第一と第二の照明工程と、第一と第二の照明角度変化工程と、第一の撮像工程及び第二の撮像工程と、を制御する制御工程と、を用いて周期性パターンが形成された基板を検査する検査方法。
【請求項6】
前記第一の照明工程と第二の照明工程は、被検査基板に対して垂直な面内及び水平な面内で照明角度を変化することを特徴とする請求項5に記載の検査方法。
【請求項7】
前記第一の撮像工程にエリアカメラを用い、前記第二の撮像工程にラインセンサカメラを用いることを特徴とする請求項5に記載の検査方法。
【請求項8】
前記画像処理工程を用いて、前記第一の撮像工程によって撮像された画像を処理して抽出された欠陥候補を、前記第二の撮像工程によって撮像して該撮像画像から真の欠陥を抽出することを特徴とする請求項5に記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−242268(P2012−242268A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113380(P2011−113380)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】