説明

検査装置及び検査方法

【課題】試料に実在する欠陥に起因する輝度変化を、各種ノイズから分離して検出できる検査装置を実現する。
【解決手段】本発明では、試料表面上に主走査方向に整列した複数個の走査スポットを形成し、試料表面の同一の部位を、主走査方向に整列したn個の走査スポットにより所定の時間間隔で順次走査する。n個の走査スポットからの反射ビームをそれぞれ光検出素子により受光する。信号処理装置は、n個の光検出素子から出力される輝度信号中に、所定の閾値を超えると共に互いに時間的又は位置的に対応する輝度変化が存在する場合、試料上に欠陥が存在するものと判定する。本発明によれば、試料表面上に形成された欠陥に起因する輝度変化は、光源ノイズや光検出器の熱雑音から分離して検出されるので、疑似欠陥が増大することなく、欠陥の検出感度を高く設定することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ、フォトマスク或いはマスクブランクス等の試料に存在する微細な欠陥を検出するのに好適な検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハやフォトマスク或いはマスクブランクス等の試料に存在する欠陥を検出する欠陥検査装置として、試料表面を光ビームにより走査し、試料からの反射光を光検出器により受光し、光検出器から出力される輝度信号を所定の閾値と比較することにより欠陥を検出する検査装置が既知である(例えば、特許文献1参照)。この既知の検査装置では、副走査方向に整列した複数の光ビームを用いて試料表面を走査し、試料からの正反射光をフォトダイオードアレイにより検出している。そして、フォトダイオードから出力される輝度信号を閾値と比較し、閾値を超える輝度変化が検出された場合試料に欠陥が存在するものと判定している。すなわち、試料表面に異物付着等による欠陥が存在すると、入射する照明光が散乱し、光検出器に入射する正反射光の光量が低下する。従って、光検出器から出力される輝度信号を所定の閾値と比較し、閾値を超える輝度変化が検出された場合欠陥であると判定している。
【0003】
別の検査装置として、検査される試料表面の同一の部位を2本の照明ビームにより走査し、試料表面からの散乱光を別々に検出する検査装置が既知である(例えば、特許文献2参照)。この既知の検査装置では、回転するステージ上に試料を配置し、試料に向けて2本の照明ビームを投射し、試料上に2個の光スポットを形成している。これら2個の光スポットは、所定の時間間隔を以て同一の軌跡に沿って試料表面を走査する。そして、各光スポットからの散乱光は2つの光検出器によりそれぞれ検出され、2つの光検出器からの出力信号の和を算出し、総散乱光信号を形成している。
【特許文献1】特開2001−27611号公報
【特許文献2】特開2008−8803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体デバイスの微細化に伴い、現在の半導体デバイスの線幅は64nmに設定され、次世代の半導体デバイスの線幅は16nmを目標としている。従って、このような微細な半導体デバイスの製造工程においては、欠陥検査装置の性能として数nm〜数10nm程度の大きさの微細な欠陥を検出できることが強く要請されている。一方、検出すべき欠陥が微細化するにしたがって、光検出器から出力される輝度信号中に現れる輝度変化も一層小さくなる。このため、より微細な欠陥を検出するためには、欠陥検出の閾値をより低く設定し、より小さい輝度変化を検出する必要がある。しかしながら、閾値を低く設定すると、受光素子の熱雑音による電気的なノイズや光源ノイズに起因する輝度変化も検出されるため、試料上の欠陥以外の要因に起因する輝度変化も多数検出され、疑似欠陥が増大する不具合が生じてしまう。すなわち、欠陥の検出感度を高くすることと疑似欠陥の検出を抑制することとは、トレードオフの関係にある。
【0005】
上述した特許文献1に記載の検査装置は、共焦点走査装置を構成しているため、高い分解能が得られ、検出感度の高い欠陥検査装置が構成されている。また、副走査方向に整列したマルチビームを用いて試料表面を走査しているので、高いスループットが得られる利点も達成される。しかしながら、試料表面からの正反射光を光検出器により受光し、光検出器からの出力信号の輝度変化に基づいて欠陥が検出されるため、試料に存在する欠陥以外の要因による輝度変化が輝度信号中に出現し、このような要因による輝度変化も欠陥として検出する欠点がある。すなわち、受光素子の熱雑音により電気的なノイズが発生すると、光検出器の出力信号中に輝度変化が出現する。また、光源から出射する光ビーム中にノイズが出現すると、同様に光検出器からの出力信号中に輝度変化が出現し、疑似欠陥として検出される不具合がある。従って、試料表面に存在する欠陥に起因する輝度変化を、それ以外のノイズ等に起因する輝度変化から分離して検出する検査装置の開発が強く要請されている。
【0006】
上述した欠点を解消する方法として、照明光源のパワーを増大し、試料表面に対してより強力な走査ビームを投射し、光検出器から出力される輝度信号のS/N比を高くする方法が想定される。しかしながら、光源のパワーを増大することにより、光検出器から出力される輝度信号のS/N比が向上するものの、試料に対して熱損傷を与えるおそれがある。例えば、マスクブランクスの検査においては、高い輝度の走査ビームによりクロム膜の表面を走査すると、ガラス基板の表面に形成したクロム膜が溶融するおそれがある。従って、照明光源のパワーを増大してS/N比を高くする方法には限界がある。
【0007】
特許文献2に記載されているように、試料に与える熱損傷を回避する方法として、照明光源から出射した照明ビームを複数の照明ビームに分割し、複数の照明ビームにより試料表面を走査する方法が提案されている。しかしながら、照明光源から出射したレーザビームを複数の走査ビームに分割して走査した場合、平均的な強度の走査ビームで試料の同一の部位を複数回走査するにすぎず、平均的な検査データを得ることは可能であるが、欠陥検出の感度を改善する根本的な解決策とはならない。特に、微細な欠陥に起因する散乱光の輝度変化は微小であるため、光検出器の熱雑音や光源ノイズに埋もれてしまい、微細な欠陥を検出するには限界がある。
【0008】
本発明の目的は、試料表面に存在する欠陥に起因して発生した輝度変化を、光源ノイズや光検出器の熱雑音等から分離して検出できる検査装置を実現することにある。
さらに、本発明の別の目的は、疑似欠陥が増大することなく、数nmないし数10nm程度の微細な欠陥を検出できる検査装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による検査装置は、光ビームを放出する光源と、
mを1以上の自然数としnを2以上の自然数とした場合に、光源から出射した光ビームを、主走査方向と直交する第1の方向に整列したm本の走査ビームを含む走査ビーム列を第1の方向と直交する第2の方向に所定の間隔をもってn列有する走査ビームアレイに変換するビーム分割手段と、
検査されるべき試料を支持するステージと、
前記走査ビームアレイとステージ上に配置した試料とを、主走査方向である前記第2の方向に相対移動させる走査手段と、
前記走査ビームアレイをステージ上の試料に向けて投射し、試料上に前記第1及び第2の方向と対応する方向に整列したm×n個の走査スポットを形成する対物レンズと、
前記第1及び第2の方向と対応する方向に整列し、試料上に形成された走査スポットから出射したm×n本の反射ビームをそれぞれ受光するm×n個の光検出素子を有する光検出手段と、
光検出手段からの出力信号を受け取り、試料に存在する欠陥を検出する信号処理装置とを具え、
前記試料表面の同一の部位は、主走査方向に整列したn個の走査スポットにより所定の時間間隔で順次走査され、
前記信号処理装置は、主走査方向に整列した走査スポットからの反射ビームをそれぞれ受光するn個の光検出素子から出力される輝度信号中に、所定の閾値を超えると共に互いに時間的又は位置的に対応する輝度変化が存在する場合、試料上に欠陥が存在するものと判定することを特徴とする。
【0010】
本発明では、試料表面の同一の位置を光スポットにより時間的にずらして複数回走査し、光検出手段から出力される輝度信号中に時間的又は位置的に対応する輝度変化が存在するか否かを判定し、対応する輝度変化が検出された場合試料上に形成された欠陥に起因する輝度変化であると判断する。従って、光検出素子から出力される輝度信号中に出現した多数の輝度変化から試料に実在する欠陥に起因する輝度変化だけをノイズ等に起因する輝度変化から分離して検出することができる。
【0011】
本発明による検査方法は、試料表面を光ビームにより走査し、試料からの反射光を光検出手段により受光し、光検出手段から出力される輝度信号に基づいて試料に存在する欠陥を検出する検査方法であって、
mを1以上の自然数としnを2以上の自然数とした場合に、主走査方向と直交する第1の方向に整列したm本の走査ビームを含む走査ビーム列を第1の方向と直交する第2の方向に所定の間隔をもってn列有する走査ビームアレイを形成する工程と、
走査ビームアレイをステージ上の試料に向けて投射し、試料上に前記第1及び第2の方向と対応する方向に整列したm×n個の走査スポットを形成する工程と、
前記走査ビームアレイとステージ上に配置した試料とを主走査方向及び副走査方向に相対移動させ、m×n個の走査スポットで試料表面を走査する工程と、
前記m×n個の走査スポットからの反射ビームをm×n個の光検出素子を有する光検出手段により受光する工程と、
光検出手段からの出力信号を受け取り、試料に存在する欠陥を検出する欠陥検出工程とを具え、
前記試料表面の同一の部位は、主走査方向に整列したn個の走査スポットにより所定の時間間隔で順次走査され、
前記欠陥検出工程において、主走査方向に整列した走査スポットからの反射ビームを受光するn個の光検出素子から出力される輝度信号中に、所定の閾値を超えると共に互いに時間的又は位置的に対応する輝度変化が存在する場合、試料上に欠陥が存在するものと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果を要約すると以下の通りである。
(1) 本発明では、試料の同一の部位を所定の時間間隔で複数回走査し、時間的又は位置的に対応する輝度変化を検出しているので、試料表面に形成された欠陥に起因する輝度変化を光源ノイズや光検出器の熱雑音等の各種ノイズから分離して検出することができる。
(2) 本発明では、試料に実在する欠陥に起因する輝度変化をノイズから分離して検出することができるので、各種ノイズに起因する輝度変化と同程度の微細な輝度変化であっても、試料に実在する微細な欠陥に起因する輝度変化を検出することが可能になる。この結果、試料に存在する数nm程度のサイズの欠陥を、疑似欠陥が増大することなく検出することが可能になる。
(3) 本発明では、光源から出射した光ビームを複数の走査ビームに分割し、試料の同一の部位を複数回走査しているので、試料に対して熱損傷を与えることなく、高精度の欠陥検出を行うことができる。
(4) また、欠陥位置情報にノイズ等により誤差が含まれていたとしても、適切な閾値により共通欠陥と判断することもできるので、疑似欠陥を低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による欠陥検出方法を説明するための線図である。
【図2】本発明による検査装置の光学系の構成を示す図である。
【図3】試料の表面上に形成される光スポットの整列状態を示す図である。
【図4】本発明による光検出手段の一例を示す図である。
【図5】信号処理装置の一例を示す図である。
【図6】信号処理装置の変形例を示す図である。
【図7】欠陥判定手段の処理内容を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明による欠陥検出方法の原理を説明するための線図である。図1(A)は、走査ビームにより試料上に形成される光スポットを示す。この説明では、試料の表面上に走査方向にそって整列した2個の光スポットが形成されるものとする。これら光スポット1及び2は、走査方向に整列すると共に走査方向にそって距離dだけ離間し、光スポットが離間距離dだけ移動する走査時間をΔtとする。2つの光スポット1及び2は、同一の走査ラインLにそって所定の走査速度で移動する。従って、試料の走査ラインL上の各部位は、初めに光スポット1により走査され、Δtの時間が経過した後光スポット2により走査される。
【0015】
図1(B)は、光スポット1及び2から発生する試料表面からの反射光を光検出器により受光した際の光検出器から出力される輝度信号を示す。上段に光スポット1の輝度信号を示し、下段は光スポット2から発生する輝度信号を示す。横軸は時間を示し、縦軸は輝度値を示す。尚、欠陥検出のために用いられる上限及び下限閾値を2点鎖線で示す。光スポット1からの反射光による輝度信号から、上限及び下限閾値を超える4個のピーク輝度変化a〜dが検出されたものとする。また、光スポット2からの反射光による輝度信号から、下限閾値を超える3個のピーク輝度変化e、f及びgが検出されたものとする。従来の欠陥検出方法では、光検出器から出力される輝度信号を所定の閾値と比較し、閾値を超える輝度変化が検出された場合当該部位に欠陥が存在するものと判定される。従って、光スポット1からの反射光を用いて欠陥検出を行った場合、4個のピーク輝度について欠陥であると判定され、光スポット2からの反射光を用いて欠陥検出を行った場合3個の欠陥が検出されることになる。
【0016】
図1(C)は、図1(B)に示す光スポット1により形成される輝度信号を時間間隔Δtだけ遅延補正を行い、光スポット1及び2により形成される2つの輝度信号を時間的に対応して図示する。すなわち、光スポット1及び2により形成される輝度信号は、同一の時刻において同一の部位を走査するように図示する。光スポット1により形成されるピーク輝度変化aと光スポット2により形成されるピーク輝度変化eは時間的に対応し、試料の同一の部位を走査した際に発生している。また、ピーク輝度変化dとgも時間的に対応し、試料の同一の部位を走査した際に発生している。すなわち、光スポット1の輝度信号中の輝度変化a及びdと光スポット2の輝度信号中の輝度変化e及びgとは、それぞれ互いに位置的に対応している。よって、輝度変化aとeは試料の同一の部位を走査した際に発生した輝度変化と判定される。また、輝度変化dとgも試料の同一の部位を走査した際に発生した輝度変化と判定される。これに対して、光スポット1により形成された輝度変化b及びcについては、光スポット2により形成される輝度信号中に対応する輝度変化が出現していない。また、光スポット2により形成された輝度変化fについても、光スポット1により形成される輝度信号中に位置的に対応する輝度変化が出現していない。従って、光スポット1の輝度信号中に含まれる2個の輝度変化b及びc並びに光スポット2の輝度信号に含まれる1個の輝度変化fは、試料の表面状態に起因して発生したものではなく、試料上の欠陥以外の要因により発生したものと判定される。
【0017】
試料表面上に異物付着等による欠陥が実際に存在する場合、すなわち実欠陥が存在する場合、当該欠陥上を2個の光スポットが時間的にずれて走査すると、2個の光スポットから形成される2つの輝度信号中には必ず時間的又は位置的に対応した位置に輝度変化が発生する。これに対して、受光素子の熱雑音による電気的ノイズや光源ノイズが存在する場合、これらのノイズは時間的にランダムに出現する。すなわち、検査される試料表面上に実在する欠陥に起因して輝度信号中に出現する輝度変化は時間的に規則的に発生し、電気的又は光学的なノイズ成分は時間的にランダム出現する。従って、走査方向に整列した2個の光スポットを用いて所定の時間間隔で試料表面の同一の位置を走査した場合、実欠陥が存在すると、所定の時間間隔でほぼ同様な輝度変化が検出され、電気的又は光学的なノイズが発生すると一方の輝度信号にだけに輝度変化が出現する確率が高いものとなる。
【0018】
上述した概念に基づき、本発明では、光ビームの走査方向にそって整列した複数の光スポットを形成し、これら光スポットから発生する反射光を光検出器によりそれぞれ受光する。そして、光検出器から出力される輝度信号の対応する位置に閾値を超える輝度変化が出現するか否かを判定する。そして、各光検出器から出力される輝度信号の対応する位置に輝度変化が検出された場合、検出された輝度変化は試料の表面に実在する欠陥による輝度変化であると判定する。これ以外の輝度変化は、試料表面以外の要因により出現した輝度変化であると判定する。このように構成すれば、光検出器から出力される輝度信号中に閾値を超える多数の輝度変化が出現しても、試料表面に形成された欠陥に起因する輝度変化を光源ノイズや光検出器の熱雑音等から分離して検出することができる。すなわち、各種ノイズに起因する輝度変化とほぼ同等の微小な輝度変化であっても、試料表面の欠陥に起因する輝度変化だけを特定して検出することが可能になる。この結果、欠陥検出の閾値を一層低く設定して検出感度を高くしても、疑似欠陥が増大することなく、数nm〜10nm程度の大きさの微細な欠陥を検出することが可能になる。
【0019】
図2は本発明による検査装置の光学系の構成を示す図である。光ビームを放出する光源としてレーザ光源1を用いる。レーザ光源としては、連続発振するレーザ光源及び疑似連続波(QCW)を放出する高速パルスレーザが用いられる。また、YAGレーザの2倍波、3倍波又は4倍波を発生するレーザ装置、或いは488nmの波長のレーザビームを放出するArガスレーザを用いることができる。レーザ光源以外の光源として、水銀ランプやキセノンランプを用いることもできる。
【0020】
レーザ光源1から出射したレーザビームは、ビーム分割手段として機能する2次元回折格子2に入射する。2次元回折格子2としてホログラム型の回折格子が用いられる。この2次元回折格子2は、mを1以上の自然数としnを2以上の自然数とした場合に、レーザ光源から出射したレーザビームをm行n列の走査ビームアレイに変換する。すなわち、2次元回折格子2は、試料表面を走査する主走査方向と直交する方向を第1の方向(副走査方向)とし、主走査方向を第2の方向とした場合に、第1の方向に沿ってライン状に整列したm本の走査ビームを含む走査ビーム列を、第2の方向(主走査方向)に沿って所定の間隔を以てn列整列するように形成する。本例では、図面を明瞭にするため、第1の方向にそって5本の走査ビームを形成し、第2の方向に沿って2列の走査ビーム列を形成する。勿論、第1の方向に数10本の走査ビームを形成し、第2の方向に3列又は4列の走査ビーム列を形成することも可能である。尚、図1において、5本の整列した走査ビームだけを図示したが、紙面と直交する方向に第1及び第2の2列の走査ビーム列が形成されているものとする。尚、レーザ光源1と回折格子2は、1本の光ビームからm×n本の走査ビームを形成する光源装置として機能する。
【0021】
5×2本の走査ビームは、リレーレンズ3及び4を経て偏光ビームスプリッタ5に入射し、偏光ビームスプリッタ5を透過してポリゴンミラー6に入射する。ポリゴンミラー6は、第1及び第2の走査ビーム列を主走査方向に沿って周期的に高速偏向する走査手段として機能する。ポリゴンミラー6の回転位置は、ポリゴンミラーに連結したエンコーダ(図示せず)により検出され、ポリゴンミラーの回転位置情報、すなわち、試料面上に形成される走査スポットの主走査方向の位置情報として信号処理装置7に供給する。尚、図1において、ポリゴンミラー6の回転軸線は紙面と直交する方向に延在するように図示したが、紙面内方向に延在するものとする。
【0022】
ポリゴンミラー6により偏向された走査ビームアレイは、リレーレンズ8及び9並びに1/4波長板10を経て対物レンズ11に入射する。対物レンズ11は、5×2本の走査ビームを微小スポット状に集束し、ステージ12上に配置された試料13上にm×n個の走査スポットアレイを形成する。試料上に形成される走査スポットの直径は、例えば450nmに設定する。図3は、第1及び第2の走査ビーム列が試料13の表面上に形成する走査スポットアレイを模式的に示す。第1の走査ビーム列は、ポリゴンミラーの偏向方向である主走査方向と直交する第1の方向に沿ってライン状に整列した5個の走査スポット20a〜20eを含む第1の走査スポット列20を形成する。また、第2の走査ビーム列も同様に、第1の方向に沿ってライン状に整列した5個の走査スポット21a〜21eを含む第2の走査スポット列21を形成する。
【0023】
第1の走査スポット列20と第2の走査スポット列21は、第2の方向(主走査方向)にそって距離dだけ離間する。また、第1及び第2の走査スポット列の互いに対応する走査スポット(例えば、走査スポット20aと21a、20bと21b……………20eと21e)は、主走査方向にそって同一線上を走査する。従って、試料の各部位は、第1の走査スポット列の走査スポットにより走査された後、時間Δtだけ遅れて第2の走査スポット列の走査スポットにより走査される。ここで、時間間隔Δtは、走査スポット列間の距離dを走査速度で除算した時間である。ここで、時間間隔Δtは、試料表面が走査スポットの走査により昇温した後周囲温度まで降温する時間間隔に設定することが好ましく、例えば光ビームの走査速度やパワー、スポット径、試料表面に形成された薄膜の厚さや光吸収係数等のファクタに基づいて設定される。
【0024】
検査されるべき試料13を支持するステージ12は、第1及び第2の方向に移動するXYステージで構成する。本例では、ポリゴンミラーによるビーム偏向により主走査を行い、ステージ12の第1の方向の移動により副走査を行う。そして、ポリゴンミラーによる主走査方向のビームスキャンとステージの副走査方向の移動により試料のほぼ全面をm×n本の走査ビームで走査する。
【0025】
検査の対象となる試料として、ガラス基板上に遮光膜やモリブデンシリコン膜が形成されているマスクブランクス、ガラス基板上にマスクパターンが形成されているフォトマスク、各種金属膜が形成されている半導体ウェハ、透明基板上に磁性膜や金属膜が形成されているディスク媒体が挙げられる。
【0026】
図2を参照するに、ステージ12にはサーボモータ14が連結され、サーボモータは信号処理装置7から供給される駆動信号により駆動する。また、ステージ12には位置センサ15が連結され、ステージ12の位置情報は位置センサ15により検出され、検出された位置信号は信号処理装置7に供給する。従って、試料13上に形成される走査スポットの主走査方向の位置はポリゴンミラー6の回転位置情報から求められ、副走査方向の位置はステージに連結された位置センサ15から出力されるステージ位置情報により求められる。
【0027】
走査スポット20a〜20e及び21a〜21eから発生する反射ビームは、対物レンズ11により集光され、1/4波長板10並びにリレーレンズ9及び8を経てポリゴンミラー6に入射する。入射した反射ビームは、ポリゴンミラーによりデスキャンされ、偏光ビームスプリッタ5に入射する。偏光ビームスプリッタに入射する反射光は、1/4波長板10を2回透過しているので、その偏光面で反射し、結像レンズ16を介して光検出手段17に入射する。
【0028】
本例では、光検出手段として、フォトダイオードアレイを用いる。図4に光検出手段の一例の構成を示す。光検出手段17は、第1の方向と対応する方向に整列した5個のフォトダイオード30a〜30eを有する第1の光検出素子列30と、第1の光検出素子列30から第2の方向と対応する方向に所定の距離だけ離間し、第1の方向と対応する方向に整列した5個のフォトダイオード31a〜31eを有する第2の光検出素子列31とを有する。各フォトダイオードは、ピンホール状の開口部を有する光入射面を有する。従って、各フォトダイオードには、試料表面からの散乱光はほとんど入射せず、主として試料表面からの正反射光が入射する。従って、本発明による検査装置においては、試料表面上には微小な光スポットアレイが形成され、光スポットからの正反射光は光入射開口(ピンホール)を介してフォトダイオード(光検出素子)に入射するので、本発明による検査装置は、明視野照明光学系を構成すると共に共焦点走査装置を構成することになる。
【0029】
試料表面が正常な場合、試料表面からの正反射光が各フォトダイオードに入射し、各フォトダイオードから所定の輝度の輝度信号が出力される。一方、試料の表面上に異物欠陥が存在すると、異物上に入射した走査ビームは散乱光となり、フォトダイオードに入射する光量が低下し、フォトダイオードからの出力信号中に大きな輝度変化が出現する。同様に、試料表面に凹状又は凸状の欠陥が存在する場合、フォトダイオードに入射する光量が低下し、大きな輝度変化が検出される。また、試料表面に高反射率の異物が存在する場合、反射光の強度が高くなり、フォトダイオードに入射する光量が増大し、フォトダイオードからの出力信号中に大きな輝度変化が出現する。
【0030】
各フォトダイオード30a〜30e及び31a〜31eで発生した電荷は、信号処理装置7から供給される駆動信号により順次読み出され、信号処理装置7に供給される。信号処理装置7は、光検出手段7から供給される輝度信号、並びにステージ位置信号、ポリゴンミラー回転位置信号及び走査ビームの識別番号を用いて、閾値を超える輝度変化を検出すると共に検出された輝度変化のアドレスを特定して欠陥メモリに記憶する。
【0031】
図5は信号処理装置の一例を示す図である。第1及び第2の光検出素子列30及び31の各フォトダイオードの出力信号は増幅器アレイ32の各増幅器によりそれぞれ増幅され、同期手段33に供給される。同期手段33は、先行して走査する第1の走査スポット列20からの反射光を受光する第1の光検出素子列30の各フォトダイオード30a〜30eからの出力信号を時間間隔Δtだけ遅延させ、第1の光検出素子列の各フォトダイオード30a〜30eからの出力信号と第2の光検出素子列の各フォトダイオード31a〜31eからの出力信号とを時間軸上において対応させる。この同期処理により、主走査方向に整列し同一の走査ライン上を走査する2個の走査スポットに基づく輝度信号は同一の時間軸にそって処理されることになる。
【0032】
同期して出力される第1の光検出素子列30の各フォトダイオードからの出力信号は第1の比較器アレイ34aの各比較器に供給され、第2の光検出素子列31の各フォトダイオードからの出力信号は第2の比較器アレイ34bの各比較器に供給される。各比較器は、所定の上限と下限閾値とにより規定される閾値範囲を有し、入力した輝度信号が閾値を超えるか否かに応じて論理(0,1)の信号を出力する。すなわち、各フォトダイオードからの出力信号中に所定の閾値を超える輝度変化が存在する場合、各比較器は、論理「1」信号を出力し、閾値を超える輝度変化が出現したことを示す。この場合、輝度変化のサイズは、クロック数で表すことができる。一方、閾値を超える輝度変化が出現しない場合、各比較器は領域論理「0」信号を出力する。比較器アレイ34から0/1の論理信号が出力されるので、後段の処理においてデジタル的に信号処理することが可能となる。
【0033】
第1及び第2の比較器アレイ34a及び34bからの出力信号は、5個のアンドゲート35a〜35eを有するアンドゲートアレイ35に供給する。各アンドゲートは、走査方向に整列した走査スポットからの反射光を受光するフォトダイオードからの出力信号を受け取る。すなわち、第1のアンドゲートは第1の光検出素子列30の第1のフォトダイオード30aからの出力信号の閾値比較処理の結果を示す信号及び第2の光検出素子列31の第1のフォトダイオード31aからの出力信号の閾値比較処理の結果を示す信号を受け取る。また、第2のアンドゲート35bは、第1の光検出素子列の第2のフォトダイオード30bからの出力信号の閾値比較処理の結果信号及び第2の光検出素子列の第2のフォトダイオード31bからの出力信号の閾値比較処理の結果信号を受け取る。第3〜第5のアンドゲート35c〜35eも同様な信号を受け取る。
【0034】
各アンドゲートは、2つの入力信号について論理積を演算し、2つの入力信号が「1」の場合「1」の信号を出力し、それ以外の場合は「0」信号を出力する。すなわち、試料上の同一の部位をΔtの時間間隔で2回走査した場合、両方の走査において閾値を超える輝度変化が検出された場合だけ「1」信号が出力され、それ以外の場合、例えば一方の輝度信号にだけ閾値を超える輝度変化が出現し他方の輝度信号中の対応する位置に閾値を超える輝度変化が出現しない場合「0」信号が出力される。従って、アンドゲートからの「1」の出力信号は、試料上の欠陥を走査することにより発生する信号であると判定される。
【0035】
アンドゲートアレイ35の出力信号は欠陥判定手段36に供給される。欠陥判定手段36には、主走査方向の走査位置を示すポリゴンミラーの回転位置信号及び副走査方向の走査位置を示すステージ位置信号が供給される。欠陥判定手段36は、アンドゲートアレイから「1」の出力信号が入力した場合、試料上に実在する欠陥が検出されたものと判断し、その時点におけるポリゴンミラーの回転位置信号及びステージ位置信号並びに光検出素子の識別番号を用いて試料の欠陥のアドレス情報を作成し、検出された欠陥の識別番号とアドレス情報を対として欠陥メモリ37に記憶する。尚、アンドゲートからの出力信号のクロックパルス数を用いて欠陥のサイズを表すことも可能である。従って、欠陥メモリ37には、検出された欠陥の識別番号とアドレス情報及びサイズ情報を記憶することも可能である。
【0036】
図6は信号処理装置の変形例を示す線図である。尚、図5で用いた部材と同一の部材には同一符号を付して説明する。第1及び第2の光検出素子列30及び31の各フォトダイオードの出力信号は増幅器アレイ32の各増幅器によりそれぞれ増幅され、第1及び第2の比較器アレイ34a及び34bの各比較器に供給され、所定の閾値と比較される。各比較器は、上限閾値と下限閾値により規定される閾値範囲を有し、入力した輝度信号が閾値範囲を超えるか否かに応じて論理(0,1)に相当する信号を出力する。例えば、各フォトダイオードからの出力信号中に所定の閾値を超える輝度変化が存在する場合、各比較器は、論理「1」信号を出力し、閾値を超える輝度変化が出現しない場合、各比較器は領域論理「0」信号を出力する。尚、検出された輝度変化が閾値を超えた場合、閾値を超える時間、すなわちクロック数を輝度変化のサイズとして比較結果に含めて後段に送出する。比較器アレイから0/1の信号が出力されるので、以後の処理手段においてデジタル的に信号処理を行うことができる。
【0037】
第1及び第2の比較器アレイによる比較結果は、第1及び第2の欠陥候補検出手段40a及び40bにそれぞれ供給する。第1及び第2の欠陥候補検出手段40a及び40bには、各光スポットの試料上の走査位置を示すポリゴンミラー位置信号及びステージ位置信号も供給される。第1及び第2の欠陥候補検出手段は、閾値範囲を超える輝度変化の発生を示す「1」信号が入力した際、当該輝度変化を欠陥候補とみなし、その輝度変化が発生した試料上の位置を示すアドレス及び欠陥のサイズ(クロック数)を第1及び第2の欠陥候補メモリ41a及び41bにそれぞれ供給する。第1及び第2の欠陥候補メモリ41a及び41bは、欠陥候補の識別番号とその主走査方向及び副走査方向のアドレス及び欠陥候補のサイズを欠陥候補情報として記憶する。
【0038】
第1及び第2の欠陥候補メモリ41a及び41bにそれぞれ記憶されている第1及び第2の欠陥候補情報は、欠陥判定手段42に供給する。欠陥判定手段42は、第1及び第2の欠陥候補情報を位置的に照合し、試料に実在する欠陥に起因する輝度変化か否かを判定する。そして、判定結果を欠陥メモリ37に記憶する。
【0039】
図7は、欠陥判定手段42における欠陥判定手法の一例を示す図である。本例では、第1の欠陥候補メモリ41aに記憶された第1の欠陥候補情報、すなわち第1の光スポット列20の走査により検出された輝度変化情報と、第2の欠陥候補メモリ41bに記憶された第2の欠陥候補情報、すなわち時間間隔Δtだけ遅延して同一の部位を走査する第2の光スポット列21の走査により検出された輝度変化情報とを位置的に重ね合わせ、閾値を超える輝度変化が試料に実在する欠陥に起因する輝度変化か否かを判定する。
【0040】
図7(A)は、所定の検査エリアにおける第1及び第2の欠陥候補情報を模式的に示す。横軸は主走査方向の位置を示し、縦軸は光検出素子の識別番号(副走査方向の位置)を示す。図7(A)の左側の図面は、第1の欠陥候補情報の欠陥候補を白丸で示し、図7(A)の右側の図面は第2の欠陥候補情報の欠陥候補を×印で示す。
【0041】
欠陥判定手段42は、2つの欠陥候補メモリに記憶されている欠陥候補情報を位置的に整合させて重ね合わせる手段を有し、図7(A)に示す第1及び第2の欠陥候補情報を重ね合わす。重ね合わせの結果を図7(B)に示す。重ね合わせの結果として、第1の光スポットの走査により検出された閾値を超える輝度変化、第2の光スポットの走査により検出された閾値を超える輝度変化、及び、第1及び第2の両方の光スポットの走査により検出された閾値を超える輝度変化が混在する。
【0042】
欠陥判定手段42は、重ね合わされた欠陥候補情報から、第1の欠陥候補情報の欠陥候補と第2の欠陥候補情報の欠陥候補とが位置的に重なり合った輝度変化だけを抽出する抽出処理を行う。この抽出処理の結果を図7(C)に示す。図7(C)において、黒丸は第1の欠陥候補と第2の欠陥候補とが重なり合った輝度変化だけを示す。図7(C)に示すように、位置的に重なり合った欠陥候補だけを抽出することにより、閾値超える多数の欠陥候補から試料に実在する欠陥に起因する輝度変化だけをノイズ等による輝度変化から分離して検出することが可能になる。
【0043】
尚、図7に示す照合方法は一例であり、他の照合方法を用いて第1及び第2の欠陥候補情報の欠陥候補を照合することも可能である。例えば、第1の欠陥候補情報をベースにし、第1の欠陥候補情報の各欠陥候補のアドレスごとに第2の欠陥候補情報の対応するアドレスに欠陥候補が存在するか否かを以て照合することも可能である。
【0044】
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変形や変更が可能である。例えば上述した実施例では、主走査方向に整列したn個の走査スポットからの反射ビームをそれぞれ受光する光検出素子からの輝度信号をアンドゲートに入力させて、互いに対応する輝度変化を同時に検出する構成としたが、先行する走査スポットからの反射ビームを受光する光検出素子からの出力信号中に所定の閾値を超える輝度変化が検出された場合、その後所定の時間間隔Δtが経過した後対応する輝度変化が検出されるか否かを以て実欠陥か否かを判断することも可能である。この場合、時間Δt遅延して主走査を行う第2の走査スポットからの反射ビームを受光する光検出素子の出力側にウンドウコンパレータを接続し、閾値を超える輝度変化が検出された後時間間隔Δt経過した後に対応する輝度変化が検出されるように構成することができる。
【0045】
さらに、上述した実施例では、主走査をポリゴンミラーにより行ったが、ステージを主走査方向及び副走査方向にジグザグ状に移動させることにより試料の全面を走査することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 レーザ光源
2 回折格子
3,4,8,9 リレーレンズ
5 偏光ビームスプリッタ
6 ポリゴンミラー
7 信号処理装置
10 1/4波長板
11 対物レンズ
12 ステージ
13 試料
14 モータ
15 位置センサ
16 結像レンズ
17 光検出手段
20 第1の走査スポット列
21 第2の走査スポット列
30 第1の光検出素子列
31 第2の光検出素子列
32 増幅器アレイ
33 同期手段
34 比較器アレイ
35 アンドゲートアレイ
36 欠陥判定手段
37 欠陥メモリ
40a,40b 欠陥候補検出手段
41a,41b 欠陥候補メモリ
42 欠陥判定手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを放出する光源と、
mを1以上の自然数としnを2以上の自然数とした場合に、光源から出射した光ビームを、主走査方向と直交する第1の方向に整列したm本の走査ビームを含む走査ビーム列を第1の方向と直交する第2の方向に所定の間隔をもってn列有する走査ビームアレイに変換するビーム分割手段と、
検査されるべき試料を支持するステージと、
前記走査ビームアレイとステージ上に配置した試料とを、主走査方向である前記第2の方向に相対移動させる走査手段と、
前記走査ビームアレイをステージ上の試料に向けて投射し、試料上に前記第1及び第2の方向と対応する方向に整列したm×n個の走査スポットを形成する対物レンズと、
前記第1及び第2の方向と対応する方向に整列し、試料上に形成された走査スポットから出射したm×n本の反射ビームをそれぞれ受光するm×n個の光検出素子を有する光検出手段と、
光検出手段からの出力信号を受け取り、試料に存在する欠陥を検出する信号処理装置とを具え、
前記試料表面の同一の部位は、主走査方向に整列したn個の走査スポットにより所定の時間間隔で順次走査され、
前記信号処理装置は、主走査方向に整列した走査スポットからの反射ビームをそれぞれ受光するn個の光検出素子から出力される輝度信号中に、所定の閾値を超えると共に互いに時間的又は位置的に対応する輝度変化が存在する場合、試料上に欠陥が存在するものと判定することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、前記光検出手段の各光検出素子は、試料からの正反射光を受光するように構成され、
当該検査装置は、明視野照明光学系を構成すると共に共焦点走査装置として構成されていることを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の検査装置において、前記光検出手段は、m個の光検出素子を含む光検出素子列をn列有し、
前記信号処理装置は、さらに、前記光検出素子から出力される輝度信号を所定の閾値と比較するm個の比較器を含むn列の比較器列を有する比較器アレイを有し、各比較器は、上限閾値と下限閾値とにより規定される閾値範囲を有し、入力した輝度信号が閾値範囲内か否かに応じて「0」又は「1」の信号を出力することを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査装置において、前記信号処理装置は、さらに、前記光検出手段の光検出素子から出力される輝度信号を同期させる同期手段と、主走査方向と対応する方向に整列したn個の光検出素子からの出力信号について閾値比較処理を行うn個の比較器からの出力信号が入力し、これら入力信号の論理積を出力するm個のアンドゲートを含むアンドゲートアレイとを有し、アンドゲートから出力される論理積の結果に基づいて試料上に欠陥が存在するか否かを判定することを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の検査装置において、前記信号処理装置は、前記アンドゲートアレイからの出力信号、及び、試料上における走査スポットの位置を示す位置信号を受け取る欠陥判定手段を有し、当該欠陥判定手段は、検出された欠陥のアドレスを欠陥メモリに出力し、欠陥メモリには検出された欠陥の識別情報とアドレス情報とが対として記憶されることを特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項3に記載の検査装置において、前記信号処理装置は、さらに、前記比較器アレイからの出力信号と、前記試料上の光スポットの位置を示す位置信号とを受け取り、欠陥候補情報を形成する欠陥候補検出手段と、
欠陥候補検出手段により検出された欠陥候補のアドレスを照合して試料に実在する欠陥を特定する欠陥判定手段とを有することを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検査装置において、前記欠陥候補検出手段は、各比較器列からの比較結果及び光スポットの位置情報を受け取るn個の欠陥候補検出段を有し、前記欠陥判定手段は、n個の欠陥候補検出段により形成された欠陥候補のアドレスを互いに照合し、欠陥候補のアドレスが互いに一致した場合、当該欠陥候補を試料に実在する欠陥であると判定することを特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の検査装置において、前記光源はレーザ光源により構成され、前記ビーム分割手段は、入射したレーザビームをm×n本の走査ビームに変換する回折格子により構成されていることを特徴とする検査装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の検査装置において、前記走査手段は、複数の反射面を有し、入射したm×n本の走査ビームを主走査方向に周期的に偏向するポリゴンミラーにより構成され、前記ステージは主走査方向と直交する副走査方向に移動し、ポリゴンミラーのビーム偏向動作とステージ移動により試料のほぼ全面をm×n本の走査ビームで走査することを特徴とする検査装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の検査装置において、前記試料として、ガラス基板上に遮光膜が形成されているマスクブランクス、各種金属膜が形成されている半導体ウエハ、フォトマスク、又は透明基板上に金属膜が形成されているディスク媒体が用いられることを特徴とする検査装置。
【請求項11】
試料表面を光ビームにより走査し、光検出手段により試料からの反射光を受光し、光検出手段から出力される輝度信号に基づいて試料に存在する欠陥を検出する検査方法であって、
mを1以上の自然数としnを2以上の自然数とした場合に、主走査方向と直交する第1の方向に整列したm本の走査ビームを含む走査ビーム列を第1の方向と直交する第2の方向に所定の間隔をもってn列有する走査ビームアレイを形成する工程と、
走査ビームアレイをステージ上の試料に向けて投射し、試料上に前記第1及び第2の方向と対応する方向に整列したm×n個の走査スポットを形成する工程と、
前記走査ビームアレイとステージ上に配置した試料とを主走査方向及び副走査方向に相対移動させ、m×n個の走査スポットで試料表面を走査する工程と、
前記m×n個の走査スポットからの反射ビームをm×n個の光検出素子を有する光検出手段により受光する工程と、
光検出手段からの出力信号を受け取り、試料に存在する欠陥を検出する欠陥検出工程とを具え、
前記試料表面の同一の部位は、主走査方向に整列したn個の走査スポットにより所定の時間間隔で順次走査され、
前記欠陥検出工程において、主走査方向に整列した走査スポットからの反射ビームをそれぞれ受光するn個の光検出素子から出力される輝度信号中に、所定の閾値を超えると共に互いに時間的又は位置的に対応する輝度変化が存在する場合、試料上に欠陥が存在するものと判定することを特徴とする検査方法。
【請求項12】
請求項11に記載の検査方法において、前記欠陥検出工程は、前記n個の光検出素子から出力される輝度信号を所定の閾値範囲とそれぞれ比較し、閾値範囲を超える輝度変化が検出された場合、当該輝度変化を欠陥候補と判定する工程と、
前記n個の光検出素子から出力される輝度信号について、検出された欠陥候補のアドレスを照合し、位置的に対応する欠陥候補が存在する場合、当該輝度変化を発生する試料上の位置に欠陥が実在するものと判定することを特徴とする検査方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−19766(P2013−19766A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153406(P2011−153406)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】