説明

検査装置

【課題】 強毒型のA型インフルエンザウイルスを迅速に検査できる検査装置を提供する。
【解決手段】 滴下部を中心として、第1検査部と第2検査部とをストリップ上に配置し、強毒型のA型インフルエンザ核タンパクに対して反応性が低い抗体を使用する。第1検査部と第2検査部のいずれもが呈色するとき、強毒型でないA型インフルエンザウイルスについて陽性であり、強毒型のA型インフルエンザウイルスについて陰性であることが示され、第1検査部及び第2検査部の一方が呈色し、他方の呈色が一方の呈色より弱いとき、強毒型のA型インフルエンザウイルスについて陽性であることが示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強毒型のA型インフルエンザウイルスを迅速に検査できる検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスは、ヒトを含む多くの動物に感染し、インフルエンザを引き起こす病原体である。インフルエンザウイルスがヒトに感染すると、数日の潜伏期を経て、発熱、頭痛、関節を含む全身各部の痛み、脱力感、咳、のどの痛み等の症状を引き起こす。また、気管支炎、肺炎、中耳炎などを併発することも多く、さらに脳症、筋肉炎、心筋炎などを引き起し重篤な状態に陥る場合もある。特に、体力に乏しい、高齢者、乳幼児等では、命にかかわることもある。
【0003】
インフルエンザウイルスとしては、A型とB型の2つのタイプが知られており、このうち、A型インフルエンザウイルスは、赤血球凝集素(ヘマグルチニン:HA;H1〜H15)、ノイラミターゼNA(N1〜N9)由来の亜型(subtype)が多数存在し、多くの変異株が発生し、全世界的な大流行を引き起こすことがある。
【0004】
A型インフルエンザウイルスは、ヒトだけでなく、鳥、ブタ、馬、ミンク、クジラ等の動物にも感染する。通常、ヒトは、他の動物が感染するインフルエンザウイルスに感染することはほとんどなく、一般に、ヒトは、A香港型(H3N2)、Aソ連型(H1N1)などに感染するとされる。
【0005】
しかしながら、ウイルスの変異により、これまでヒトに感染しなかったウイルスが動物からヒトへ感染したり、さらには、ヒトからヒトへ感染するようになる場合がある。
【0006】
特に、東南アジア方面において、強毒型のA型インフルエンザウイルス(H5N1)が、ヒトに感染した例が報告され、多数の死亡例が出るなど、大きな問題になっている。強毒型でないA型インフルエンザウイルスに対しては、医薬及び治療法も改善されているが、ヒトが強毒型のA型インフルエンザウイルスに感染すると、対処が難しく死亡率が極めて高くなる。
【0007】
死亡率が高い強毒型のA型インフルエンザウイルスへの感染を実用的に検査する方法として、従来より遺伝子増幅法(PCR法)が用いられてきた(例えば、特許文献1:特表2008−502362号公報参照。)が、これによると、複雑な作業が必要で、検査だけでも6時間乃至二日程度の時間が必要になる。
【0008】
このように検査に長時間を要したのでは、実用にならない。感染が疑われる患者が、強毒型のA型インフルエンザウイルスに感染していたとすると、検査時間中に症状が進行し、重篤化するおそれが高く、陽性が確認されたときには既に手遅れとなっていることが考えられる。さらには、強毒型のA型インフルエンザウイルスがヒトからヒトへの感染力を持つ場合には、この患者から他者へ感染が広まり、ひいては、感染の蔓延も心配される。
【0009】
さて、イムノクロマト法による試薬を含む検査装置は、例えば、妊娠検査、あるいは感染症(肝炎ウイルス、アデノウイルス等)の検査に広く用いられている。さらに、A型インフルエンザウイルスやB型インフルエンザウイルスを検査できるイムノクロマト法による試薬を含む検査装置は、既に実用化されている。
【0010】
しかしながら、強毒型のA型インフルエンザウイルスを短時間で迅速に特定できる手法は知られていない。
【特許文献1】特表2008−502362号公報
【特許文献2】特開2008−14751号公報
【特許文献3】特開2006−118936号公報
【特許文献4】特開2000−2533876号公報
【特許文献5】特表2005−519619号公報
【特許文献6】特開2008−83024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、強毒型のA型インフルエンザウイルスを迅速に検査できる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の検査装置は、ストリップと、ストリップの中央部に配置される滴下部と、ストリップの第1端部に配置される第1吸水ろ紙と、滴下部よりも第1端部に至る第1流れ方向下流側に配置される第1塗布部と、第1塗布部と第1吸水ろ紙との間に配置され第1検査部を有する第1検査領域と、ストリップの第2端部に配置される第2吸水ろ紙と、滴下部よりも第2端部に至る第2流れ方向下流側に配置される第2塗布部と、第2塗布部と第2吸水ろ紙との間に配置され第2検査部を有する第2検査領域とを備える検査装置であって、第1検査部と第2検査部のいずれもが呈色しないとき、強毒型でないA型インフルエンザウイルスと強毒型のA型インフルエンザウイルスのいずれにも陰性であることが示され、第1検査部と第2検査部のいずれもが呈色するとき、強毒型でないA型インフルエンザウイルスについて陽性であり、強毒型のA型インフルエンザウイルスについて陰性であることが示され、第1検査部及び第2検査部の一方が呈色し、他方の呈色が一方の呈色よりも弱いとき、強毒型のA型インフルエンザウイルスについて陽性であることが示される。
【0013】
好ましくは、本発明の検査装置は、第1検査部及び第2検査部の一方が呈色し、他方の呈色がないとき、強毒型のA型インフルエンザウイルスについて陽性であることが示される。
【0014】
好ましくは、本発明の検査装置は、ストリップと、ストリップの中央部に配置される滴下部と、ストリップの第1端部に配置される第1吸水ろ紙と、滴下部よりも第1端部に至る第1流れ方向下流側に配置されA型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第1の抗体を標識したものを流動可能に保持する第1塗布部と、第1塗布部と第1吸水ろ紙との間に配置され、A型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第2の抗体が固相される第1検査部を有する第1検査領域と、ストリップの第2端部に配置される第2吸水ろ紙と、滴下部よりも第2端部に至る第2流れ方向下流側に配置されA型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第3の抗体を標識したものを流動可能に保持する第2塗布部と、第2塗布部と第2吸水ろ紙との間に配置され、A型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第4の抗体が固相される第2検査部を有する第2検査領域とを備える検査装置であって、第1、第2、第3及び第4の抗体のうち、一の抗体は、他の抗体に比べて強毒型のA型インフルエンザウイルスに対する反応性が低い。
【0015】
好ましくは、本発明の検査装置は、第1のストリップと第2のストリップとを備えてなる検査装置であって、第1のストリップは、第1の滴下部と、第1の滴下部から第1流れ方向に離れた位置に配置される第1吸水ろ紙と、第1の滴下部よりも第1流れ方向下流側に配置されA型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第1の抗体を標識したものを流動可能に保持する第1塗布部と、第1塗布部と第1吸水ろ紙との間に配置され、A型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第2の抗体が固相される第1検査部を有する第1検査領域とを備え、第2のストリップは、第2の滴下部と、第2の滴下部から第2流れ方向に離れた位置に配置される第2吸水ろ紙と、第2の滴下部よりも第2流れ方向下流側に配置されA型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第3の抗体を標識したものを流動可能に保持する第2塗布部と、第2塗布部と第2吸水ろ紙との間に配置され、A型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第4の抗体が固相される第2検査部を有する第2検査領域とを備え、第1、第2、第3及び第4の抗体のうち、一の抗体は、他の抗体に比べて強毒型のA型インフルエンザウイルスに対する反応性が低い。
【0016】
好ましくは、本発明の検査装置は、ストリップは、ケースに保持され、ケースは、滴下部に対応して開口する漏斗部と、検査領域に対応する観察窓とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の検査装置によれば、イムノクロマト法による試薬を含む検査装置と同等の検査時間で、呈色の強弱により、強毒型でないA型インフルエンザウイルスについての陽性と、強毒型のA型インフルエンザウイルスによる陽性とを、区別して明確に判定できる。
【0018】
短時間で、強毒型のA型インフルエンザウイルスによる陽性を特定できるため、患者を隔離し強毒型のA型インフルエンザの蔓延を防止できるし、患者を早期に集中的に治療できるため、予後を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(開発の経緯)
まず、本発明者らが本願発明の完成に達するまでの経緯を述べる。
【0020】
本発明者らは、A型インフルエンザウイルスの感染の有無を検査するにあたっては、種々のタイプのウイルスを検出できるようにするため、変異が少ない抗原タンパクを標的とすべきと考えた。具体的には、赤血球凝集素HAやノイラミニターゼNAそのものには、多数の亜型が存在するので、これらは標的としては適しない。一方、核タンパク(NP)は変異が少ないので、標的に適していると考えられる。
【0021】
そこで本発明者らは、A型インフルエンザウイルスのうち、ヒトに感染するとされるH1N1、H3N2の2つのタイプのA型インフルエンザウイルスを抗原に選んだ。また、抗インフルエンザ核タンパクモノクローナル抗体として、
Ab1(米国Fitzgerald社製、カタログナンバー:No.10−I50、クローンナンバー:M322211)、及び
Ab2(米国Fitzgerald社製、カタログナンバー:No.10−I50、クローンナンバー:M2110169)
の組み合わせを選定し、イムノクロマト法による試薬を含む検査装置の第1試作品を作製した。
【0022】
本発明者らは、いくつかのA型インフルエンザウイルスの亜型
H1N1(A/New Caledonia/20/1999)、
H3N2(A/Panama/2007/1999)、
H3N2(A/New York/55/2004)、及び
H3N2(A/Wyoming/03/2003)
について、第1試作品を使用して検査したところ、いずれも同等に良好な反応結果を得た。
【0023】
更に本発明者らは、第1試作品を使用し、鳥由来の株についても反応性を確認したところ、H1〜H15のほとんどの株について同等の反応性が確認できたが、ただ、
H5N1(A/Hong Kong/483/97)及び
H5N1(A/Viet Nam/1203/2004)
に関する反応性が他の場合に比べ極端に低いことが判明した。
【0024】
これらのH5N1型は、強毒型のA型インフルエンザウイルスである。この結果は、Ab1とAb2との組み合わせが強毒型のH5N1への反応性が弱いことを示唆する。
【0025】
本発明者らは、抗インフルエンザ核タンパクモノクローナル抗体として、
Ab3(米国Bios Pacific社製、クローンナンバー:A60010044P)
を追加し、Ab1とAb3とを入れ替え、Ab2とAb3との組み合わせによる第2試作品を作製した。第1試作品と第2試作品とは、抗体の組み合わせが異なる点を除き同一である。
【0026】
本発明者らは、第2試作品を使用し、鳥由来の株についても反応性を確認したところ、H5N1(A/Hong Kong/483/97)及びH5N1(A/Viet Nam/1203/2004)も含め、H1〜H15の全ての株について同等の反応性が確認できた。
【0027】
第1、第2試作品による結果を総合すると、Ab1は、通常のA型インフルエンザウイルスには良好な反応性を示すが、強毒型のH5N1型には極端に反応性が弱いことが推定される。
【0028】
本発明者らは、Ab1の性質をさらに明らかにするため、次の確認作業を実施した。
【0029】
一般的なA型インフルエンザウイルスの例としてH3N2(A/New York/55/2004)を選びその細胞培養物を作製し、また、強毒型のH5N1型の例としてH5N1(A/Viet Nam/1203/2004)の遺伝子組み換えタンパクを作製した。
【0030】
ここで、H5N1(A/Viet Nam/1203/2004)のアミノ酸配列は、
MASQGTKRSYEQMETGGERQNATEIRASVGRMVSGIGRFYIQMCTELKLSDYEGRLIQNSITIERMVLSAFDERRNRYLEEHPSAGKDPKKTGGPIYRRRDGKWVRELILYDKEEIRRIWRQANNGEDATAGLTHLMIWHSNLNDATYQRTRALVRTGMDPRMCSLMQGSTLPRRSGAAGAAVKGVGTMVMELIRMIKRGINDRNFWRGENGRRTRIAYERMCNILKGKFQTAAQRAMMDQVRESRNPGNAEIEDLIFLARSALILRGSVAHKSCLPACVYGLAVASGYDFEREGYSLVGIDPFRLLQNSQVFSLIRPNENPAHKSQLVWMACHSAAFEDLRVSSFIRGTRVVPRGQLSTRGVQIASNENMEAMDSNTLELRSRYWAIRTRSGGNTNQQRASAGQISVQPTFSVQRNLPFERATIMAAFTGNTEGRTSDMRTEIIRMMESARPEDVSFQGRGVFELSDEKATNPIVPSFDMNNEGSYFFGDNAEEYDN
であり、
H3N2(A/New York/55/2004)のアミノ酸配列は、
MASQGTKRSYEQMETDGDRQNATEIRASVGKMIDGIGRFYIQMCTELKLSDHEGRLIQNSLTIEKMVLSAFDERRNKYLEEHPSAGKDPKKTGGPIYRRVDGKWMRELVLYDKEEIRRIWRQANNGEDATAGLTHIMIWHSNLNDATYQRTRALVRTGMDPRMCSLMQGSTLPRRSGAAGAAVKGIGTMVMELIRMVKRGINDRNFWRGENGRKTRSAYERMCNILKGKFQTAAQRAMVDQVRESRNPGNAEIEDLIFLARSALILRGSVAHKSCLPACAYGPAVSSGYNFEKEGYSLVGIDPFKLLQNSQIYSLIRPNENPAHKSQLVWMACHSAAFEDLRLLSFIRGTKVSPRGKLSTRGVQIASNENMDNMGSSTLELRSGYWAIRTRSGGNTNQQRASAGQTSVQPTFSVQRNLPFEKSIIMAAFTGNTEGRTSDMRAEIIRMMEGAKPEEVSFRGRGVFELSDEKATNPIVPSFDMSNEGSYFFGDNAEEYDN
である。
【0031】
これら作製したものそれぞれについて、次の手順で処置した。
【0032】
(処置1)ELISA用96穴プレートに、50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)に1μg/mlとなるように希釈したAb1、Ab2、Ab3をそれぞれ50μl添加し、室温で1時間静置した。
【0033】
(処置2)各穴を400μlのPBS(0.02%ツイン20を含む。PBS−T)で1回洗浄し、200μlのブロッキング剤でブロッキングした。
【0034】
(処置3)各穴を400μlのPBS−Tで1回洗浄後、PBS−Tで20倍に希釈したH3N2抗原、H5N1抗原溶液を50μl添加し、室温で1時間静置した。
【0035】
(処置4)各穴を400μlのPBS−Tで3回洗浄後、PBS−Tで1μl/mlとなるように希釈したウサギ抗核タンパクポリクローナル抗体50μlを添加し、室温で1時間静置した。
【0036】
(処置5)各穴を400μlのPBS−Tで3回洗浄後、PBS−Tで5000倍に希釈した西洋ワサビペルオキシターゼ標識抗ウサギIgG抗体を50μl添加し、室温で30分間静置した。
【0037】
(処置6)各穴を400μlのPBS−Tで3回洗浄後、ペルオキシダーゼ基質を添加して発色させ、10分後に1M硫酸を添加して反応停止後、分光光度計により450nmの波長にて比色定量した。
【0038】
以上の処置を行った結果、Ab1、Ab2、Ab3のそれぞれについて次表のとおりの反応性が得られた。なお、次表では、Ab2の反応性を100%としてある。
【0039】
【表1】

【0040】
(表1)により、Ab1は、他の抗体Ab2、Ab3に比べ、H5N1に対する反応性が極端に低い(1.4%)ことが明らかとなった。なお、実験の結果、Ab1の反応部位は、核タンパクアミノ酸配列のN末端側から1〜188番目の部位のいずれかを認識していることが分かった。
【0041】
ここで、本明細書にいう強毒型H5N1の核タンパクに対する「低反応抗体」は、Ab1に限定されるものではなく、組み合わせて使用される他の抗体に比べ、H5N1に対する反応性が非常に低いものであれば差し支えない。「低反応抗体」は、組み合わせて使用される他の抗体に対し、H5N1に対する反応性が10分の1以下であることが好ましい。
【0042】
(原理)
以下、図1〜図8を参照しながら、本発明の検査装置の原理を説明する。結論を先に一言で言えば、この原理は、低反応性抗体が他の抗体に比べて、H5N1に対する反応性が非常に低いことを逆手にとって、強毒型のA型インフルエンザウイルスを短時間で迅速に特定する点にある。
【0043】
<パターン1>
A型インフルエンザウイルスを検査する系を図1(a)のように用意し、強毒型のA型インフルエンザを検査する系を図1(b)のように用意する。長尺なニトロセルロースメンブレンを主材とするストリップ1、2の流れ方向は、図1(a)、(b)において左から右(矢印N1、N2)に設定される。
【0044】
図1(a)に示すように、流れ方向N1の上流側に塗布部が設定され、塗布部には、抗体6(Ab3)を例えば、金コロイド3等で標識したものが流れ方向N1方向下流側へ向けて液体試料と共に流動できるように保持される。塗布部よりも流れ方向N1の下流側には、検査領域10が設定され、検査領域10には、抗体5(Ab2)が固相され検査部が形成される。
【0045】
図1(b)に示すように、流れ方向N2の上流側に塗布部が設定され、塗布部には、強毒型インフルエンザウイルスに反応性が低い低反応抗体4(Ab1)を例えば、金コロイド3等で標識したものが流れ方向N2方向下流側へ向けて液体試料と共に流動できるように保持される。塗布部よりも流れ方向N2の下流側には、検査領域10が設定され、検査領域10には、抗体5(Ab2)が固相され検査部が形成される。
【0046】
ここで、A型インフルエンザウイルスを検査する系では、図1(a)のようにいずれも低反応抗体でない抗体の組み合わせが使用され、強毒型のA型インフルエンザを検査する系では、図1(b)のように少なくとも一方の抗体が低反応抗体である点がポイントである。
【0047】
「強毒型でないA型インフルエンザウイルスの陽性検査」
さて、液体試料に強毒型でないA型インフルエンザウイルスの核タンパク8が含まれている場合、試料液体が塗布部に至ると、この核タンパク8は、抗体6及び低反応抗体4のいずれとも結合する。さらに、検査領域10まで至ると、この核タンパク8は、図1(a)の抗体5及び図1(b)の抗体5のいずれとも結合する。
【0048】
したがって、図2(a)に示すように、A型インフルエンザウイルスを検査する系において、抗体5−核タンパク8−抗体6−標識3というサンドウイッチ状結合物が固定され、検査領域10に標識3による呈色があらわれる。また、図2(b)に示すように、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系においても、抗体5−核タンパク8−低反応抗体4−標識3というサンドウイッチ状結合物が固定され、検査領域10に標識3による呈色があらわれる。
【0049】
「強毒型のA型インフルエンザウイルスの陽性検査」
次に、液体試料に強毒型のA型インフルエンザウイルスの核タンパク7が含まれている場合、試料液体が塗布部に至ると、この核タンパク7は、抗体6には結合するが、低反応抗体4とは結合しない。さらに、検査領域10まで至ると、この核タンパク7は、図1(a)の抗体5及び図1(b)の抗体5のいずれとも結合する。
【0050】
したがって、図3(a)に示すように、A型インフルエンザウイルスを検査する系において、抗体5−核タンパク7−抗体6−標識3というサンドウイッチ状結合物が固定され、検査領域10に標識3による呈色があらわれる。しかしながら、図3(b)に示すように、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系では、低反応抗体4と核タンパク7とは結合しないので、低反応抗体4を標識3で標識したものは、検査領域10よりもさらに下流側に流されてしまう。その結果、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系では、標識3による呈色が全くあらわれないか、あるいは呈色が非常に弱くなる。
【0051】
「呈色による検査結果」
以上の説明から、次の点が理解されよう。
【0052】
(検査結果1)A型インフルエンザウイルスを検査する系及び強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系の両方において、呈色が認められる場合、強毒型でないA型インフルエンザウイルスに感染しているという陽性判定を行える。
【0053】
(検査結果2)A型インフルエンザウイルスを検査する系のみにおいて呈色が認められ、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系において呈色が弱い(全く呈色が認められない場合を含む。)場合、強毒型のA型インフルエンザウイルスに感染しているという陽性判定を行える。
【0054】
(検査結果3)A型インフルエンザウイルスを検査する系及び強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系の両方において、呈色が認められない場合、いずれのA型インフルエンザウイルスにも感染していないという陰性判定を行える。なお、B型インフルエンザウイルス等検査対象外のウイルスについては、判定対象としていないが、併せて検査することを妨げるというわけではない。
【0055】
以上の検査結果を得るためには、一般のイムノクロマト法による試薬を含む検査装置とほとんど同じ時間しかかからない。即ち、約15分前後で検査結果が得られる。従前の手法が6時間以上の長時間を要していたのに比べれば、有利な点は明らかであろう。
【0056】
例えば、病院等のベッドサイドでの迅速な診断が可能となるし、空港などの検疫所で渡航者を検査し、感染の蔓延を水際で防止できるなど、効果は甚大である。
【0057】
上記検査結果2が該当する場合、患者を直ちに隔離し、強毒型のインフルエンザウイルスの蔓延を未然に防止することが期待できる。また、患者に集中的な治療を実施し、患者の予後を改善することも期待できる。
【0058】
実際、ベトナムで2004年〜2007年に分離されたウイルスの培養物に関し、強毒型でないA型インフルエンザウイルスと、強毒型のA型インフルエンザウイルスに関し、パターン1による試作品で検査を行い、その結果をPCR法により確認したところ、次表の結果を得た。
【0059】
【表2】

【0060】
(表2)から、100%の精度で、強毒型でないA型インフルエンザウイルスと、強毒型のA型インフルエンザウイルスとを識別できている点が理解されよう。
【0061】
さらに、本発明者らは、希釈倍率を変えて、パターン1による試作品をテストしたところ、次表の結果を得た。
【0062】
【表3】

【0063】
(表3)から、10倍希釈した場合でも、100倍希釈した場合でも、良好な検査結果が得られている点が理解されよう。
【0064】
以上の説明では、A型インフルエンザウイルスを検査する系及び強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系を併用する場合を説明した。こうすれば、検査結果1〜3を明確に識別できるので有利である。
【0065】
しかしながら、強毒型のA型インフルエンザウイルスが仮にも蔓延する等の緊急事態に至ることも考えられなくはない。このような場合、検査をより簡便にし、感染が疑わしい患者をいち早く隔離することを最優先すべき場合もあり得る。そのような場合には、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系のみを使用し、呈色があらわれなければ、直ちに患者を隔離するという使用法も考えられ、こうしても感染の蔓延を抑止することができ、本発明に包含される。
【0066】
<パターン2>
パターン1において述べたように、A型インフルエンザウイルスを検査する系では、いずれも低反応抗体でない抗体の組み合わせが使用され、強毒型のA型インフルエンザを検査する系では、少なくとも一方の抗体が低反応抗体である点がポイントである。
【0067】
このポイントを具備していれば、様々なバリュエーションが成立する。例えば、A型インフルエンザウイルスを検査する系を図4(a)のように用意し、強毒型のA型インフルエンザを検査する系を図4(b)のように用意する。
【0068】
図4(a)に示すように、流れ方向N1の上流側に塗布部が設定され、塗布部には、抗体5(Ab2)を例えば、金コロイド3等で標識したものが流れ方向N1方向下流側へ向けて液体試料と共に流動できるように保持される。塗布部よりも流れ方向N1の下流側には、検査領域10が設定され、検査領域10には、抗体6(Ab3)が固相され検査部が形成される。
【0069】
図4(b)に示すように、流れ方向N2の上流側に塗布部が設定され、塗布部には、抗体5(Ab2)を例えば、金コロイド3等で標識したものが流れ方向N2方向下流側へ向けて液体試料と共に流動できるように保持される。塗布部よりも流れ方向N2の下流側には、検査領域10が設定され、検査領域10には、低反応抗体4(Ab1)が固相され検査部が形成される。
【0070】
「強毒型でないA型インフルエンザウイルスの陽性検査」
さて、液体試料に強毒型でないA型インフルエンザウイルスの核タンパク8が含まれている場合、試料液体が塗布部に至ると、この核タンパク8は、図4(a)の抗体5及び図4(b)の抗体5のいずれとも結合する。さらに、検査領域10まで至ると、この核タンパク8は、図4(a)の抗体6及び図4(b)の低反応抗体4のいずれとも結合する。
【0071】
したがって、図5(a)に示すように、A型インフルエンザウイルスを検査する系において、抗体6−核タンパク8−抗体5−標識3というサンドウイッチ状結合物が固定され、検査領域10に標識3による呈色があらわれる。また、図5(b)に示すように、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系においても、低反応抗体4−核タンパク8−抗体5−標識3というサンドウイッチ状結合物が固定され、検査領域10に標識3による呈色があらわれる。
【0072】
「強毒型のA型インフルエンザウイルスの陽性検査」
次に、液体試料に強毒型のA型インフルエンザウイルスの核タンパク7が含まれている場合、試料液体が塗布部に至ると、この核タンパク7は、図4(a)の抗体5及び図4(b)の抗体5のいずれにも結合する。さらに、検査領域10まで至ると、この核タンパク7は、図4(a)の抗体6には結合するが、図4(b)の低反応抗体4には結合しない。
【0073】
したがって、図6(a)に示すように、A型インフルエンザウイルスを検査する系において、抗体6−核タンパク7−抗体5−標識3というサンドウイッチ状結合物が固定され、検査領域10に標識3による呈色があらわれる。しかしながら、図6(b)に示すように、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系では、低反応抗体4と核タンパク7とは結合しないので、抗体5を標識3で標識したものに核タンパク7が結合したものは、検査領域10よりもさらに下流側に流されてしまう。その結果、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系では、標識3による呈色があらわれない。
【0074】
なお、パターン1では、核タンパク7が抗体5と結合し、検査領域10に固定されるが、パターン2では、核タンパク7が抗体5と共に流れ去る点が異なる。しかしながら、検査領域10における呈色の有無に関しては、パターン1とパターン2とは同じ結果となる。
【0075】
「呈色による検査結果」
以上の説明から、パターン2においてもパターン1と同様に、次の点が理解されよう。
【0076】
(検査結果1)A型インフルエンザウイルスを検査する系及び強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系の両方において、呈色が認められる場合、強毒型でないA型インフルエンザウイルスに感染しているという陽性判定を行える。
【0077】
(検査結果2)A型インフルエンザウイルスを検査する系のみにおいて呈色が認められ、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系において呈色が弱い(呈色が全く認められない場合を含む。)場合、強毒型のA型インフルエンザウイルスに感染しているという陽性判定を行える。
【0078】
(検査結果3)A型インフルエンザウイルスを検査する系及び強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系の両方において、呈色が認められない場合、いずれのA型インフルエンザウイルスにも感染していないという陰性判定を行える。なお、B型インフルエンザウイルス等検査対象外のウイルスについては、判定対象としていないが、併せて検査することを妨げるというわけではない。
【0079】
以上の検査結果を得るためには、一般のイムノクロマト法による試薬を含む検査装置とほとんど同じ時間しかかからない。即ち、約15分前後で検査結果が得られる。従前の手法が6時間以上の長時間を要していたのに比べれば、有利な点は明らかであろう。
【0080】
例えば、病院等のベッドサイドでの迅速な診断が可能となるし、空港などの検疫所で渡航者を検査し、感染の蔓延を水際で防止できるなど、効果は甚大である。
【0081】
上記検査結果2が該当する場合、患者を直ちに隔離し、強毒型のインフルエンザウイルスの蔓延を未然に防止することが期待できる。また、患者に集中的な治療を実施し、患者の予後を改善することも期待できる。
【0082】
本発明者らは、希釈倍率を変えて、パターン1及びパターン2による試作品を比較テストしたところ、次表の結果を得た。
【0083】
【表4】

【0084】
(表4)から、10倍希釈した場合でも、100倍希釈した場合でも、良好な検査結果が得られている点が理解されよう。
【0085】
以上の説明では、A型インフルエンザウイルスを検査する系及び強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系を併用する場合を説明した。こうすれば、検査結果1〜3を明確に識別できるので有利である。
【0086】
しかしながら、強毒型のA型インフルエンザウイルスが仮にも蔓延する等の緊急事態に至ることも考えられなくはない。このような場合、検査をより簡便にし、感染が疑わしい患者をいち早く隔離することを最優先すべき場合もあり得る。そのような場合には、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系のみを使用し、呈色があらわれなければ、直ちに患者を隔離するという使用法も考えられ、こうしても感染の蔓延を抑止することができ、本発明に包含される。
【0087】
<パターン3、4>
パターン1、2の変形として、図7及び図8にそれぞれパターン3による例と、パターン4による例を示す。パターン3、4においても、パターン1、2と同様の結果が得られ、効果もほぼ同等である。
【0088】
もとより、本発明は、上記パターン1〜4に限定されるものではなく、さらに種々の変更が可能である。パターン1〜4あるいはそのほかのバリュエーションにおいて、抗体をできるだけ共通化できる組み合わせが、製造コストや製造の容易さを考慮すると好ましい。例えば、パターン1によると、検査領域10に固相される抗体が、図1(a)、(b)において抗体5で共通しているため、製造上好ましい。しかしながら、本発明は、このように抗体を共通させる場合に限定されるものではなく、種々のバリュエーションを包含するものである。
【0089】
(実施の形態1)
以上の原理を踏まえ、以下図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0090】
実施の形態1における検査装置は、図9において断面図で示される試験片と、この試験片を内部に収納するケース(図10の平面図参照。)とを備える。
【0091】
この試験片は、長手方向中央に、液体試料が滴下される滴下部11を有し、図9において、滴下部11から左側に向けてA型インフルエンザウイルスを検査する系が配置され、また、滴下部11から右側に向けて強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系が配置される。
【0092】
このように配置すると、滴下部11に液体試料を一度滴下するだけで、A型インフルエンザウイルスを検査する系による検査と、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系による検査とを同時並行して実施することができ、取り扱いが容易となる。
【0093】
即ち、実施の形態1における試験片は、概ね左右対称のレイアウトとなり、図9に示すように、試験片は、中央に上記2つの系の検査に共通して使用される滴下部11を有する。
【0094】
滴下部11の左右には、第1流れ方向N1(A型インフルエンザウイルスを検査する系)、第2流れ方向N2(強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系)についてそれぞれ、長尺なニトロセルロースメンブレンを主材とするストリップ1、2が配置される。ストリップ1、2は、裏打ちされていてもいなくてもよい。
【0095】
第1流れ方向N1に沿って、滴下部11に続けて、第1塗布部12が、滴下部11の流れ方向N1下流側に設けられ、第1塗布部12は、第1流れ方向N1に関する免疫反応成分を標識した標識粒子(例えば、金コロイド)を含む。
【0096】
第1吸水ろ紙14は、第1流れ方向N1の下流端部に設けられ、余分な試料を吸収し、矢印N1方向の吸引力を提供する。
【0097】
第1塗布部12と第1吸水ろ紙14との間に設定される第1検査領域16には、第1流れ方向N1に関する反応成分を固定したラインが配置され、免疫反応の結果サンドウイッチ反応物が生成されると、それに由来する着色ラインが呈される。
【0098】
着色ラインの状態(詳細は後述する。)により、第1流れ方向N1に関する検査結果(例えば、陽性か陰性か等)が判定される。着色ラインは、第1検査ライン18とリファレンスライン20とを含む。リファレンスライン20は、検査が適切に行われた場合必ず呈色するので、リファレンスライン20の呈色が認められない場合、検査が不適切であることが分かる。
【0099】
第1塗布部12と第1検査ライン18に使用される抗体は、パターン1〜4あるいはそのバリュエーションにおいて述べた、A型インフルエンザウイルスを検査する系の抗体の組み合わせに従う。
【0100】
第2流れ方向N2に沿って、滴下部11に続けて、第2塗布部13が、滴下部11の流れ方向N2下流側に設けられ、第2塗布部13は、第2流れ方向N2に関する免疫反応成分を標識した標識粒子(例えば、金コロイド)を含む。
【0101】
第2吸水ろ紙15は、第2流れ方向N2の下流端部に設けられ、余分な試料を吸収し、矢印N2方向の吸引力を提供する。
【0102】
第2塗布部13と第2吸水ろ紙15との間に設定される第2検査領域17には、第2流れ方向N2に関する反応成分を固定したラインが配置され、免疫反応の結果サンドウイッチ反応物が生成されると、それに由来する着色ラインが呈される。
【0103】
着色ラインの状態(詳細は後述する。)により、第2流れ方向N2に関する検査結果(例えば、陽性か陰性か等)が判定される。着色ラインは、第2検査ライン19とリファレンスライン21とを含む。リファレンスライン21は、検査が適切に行われた場合必ず呈色するので、リファレンスライン21の呈色が認められない場合、検査が不適切であることが分かる。
【0104】
第2塗布部13と第2検査ライン19に使用される抗体は、パターン1〜4あるいはそのバリュエーションにおいて述べた、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系の抗体の組み合わせに従う。
【0105】
実施の形態1のケース22は、図10に示すように、中央部には、試験片の滴下部11の位置にあわせて漏斗部23が下向きに突設され、漏斗部23の下端面は開口し、そこを介して下向きに試料を滴下部11に滴下できるようになっている。
【0106】
また、漏斗部23を中心として、検査領域16、17の位置にあわせ、それぞれ透明な第1観察窓24と第2観察窓25とが設けられる。
【0107】
次に、図11〜図14を参照しながら、着色ラインのパターンによる判定法を説明する。
【0108】
まず、液体試料を漏斗部23を介して滴下部11に滴下する前には、図11に示すように、第1観察窓24及び第2観察窓25のいずれについても、着色ラインはあらわれない。
【0109】
(失敗)液体試料を滴下し、15分程度の時間が経過しても、図11に示すように、リファレンスライン20、21のいずれかが呈色しない場合には、検査は失敗に終わったことになる。
【0110】
(陰性)液体試料を滴下し、15分程度の時間が経過した際、図12に示すように、リファレンスライン20、21のみが呈色し、第1検査ライン18及び第2検査ライン19のいずれもが呈色しない場合には、A型インフルエンザウイルスに感染していない(陰性)と判定される。
【0111】
(強毒型でないA型インフルエンザ陽性)液体試料を滴下し、15分程度の時間が経過した際、図13に示すように、リファレンスライン20、21が呈色し、第1検査ライン18及び第2検査ライン19のいずれもが呈色する場合には、強毒型でないA型インフルエンザウイルスに感染している(強毒型でないA型インフルエンザ陽性)と判定される。
【0112】
(強毒型のA型インフルエンザ陽性)液体試料を滴下し、15分程度の時間が経過した際、図14に示すように、リファレンスライン20、21が呈色し、第1検査ライン18が呈色するが第2検査ライン19の呈色が弱い(全く呈色しない場合を含む。)場合には、強毒型のA型インフルエンザウイルスに感染している(強毒型のA型インフルエンザ陽性)と判定される。
【0113】
以上のように、液体試料を滴下部11に一度滴下し、15分程度の時間待つだけで、失敗、陰性、強毒型でないA型インフルエンザ陽性、及び強毒型のA型インフルエンザ陽性を、明確に特定する検査結果を得ることができる。
【0114】
もし、強毒型のA型インフルエンザ陽性なる検査結果が得られたら、患者を直ちに隔離し、かつ、患者に集中的な治療を実施すべきである。
【0115】
(実施の形態2)
実施の形態1では、液体試料を滴下部11に一度滴下すればよい好ましい例を述べた。しかしながら、必ずしもそうしなくとも実用上十分な場合もあり、このような場合も、本願発明に包含される。
【0116】
即ち、図9に示した試験片を、図15に示すように、A型インフルエンザウイルスを検査する系と、強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系とで、別々に分けて設けても良い(なお繰り返しを避けるため、図15では、A型インフルエンザウイルスを検査する系の試験片のみを図示してある。)。
【0117】
このように複数の試験片を使用する場合、図16に示すように、ケース22を2つの試験片に共用するようにしても良いし、図17(a)、図17(b)に示すように、試験片ごとにケース22を分けてもよい。
【0118】
いずれにしても、複数の試験片を用いる場合には、それに応じて、漏斗部及び滴下部を複数設け、液体試料の滴下を複数回行う必要がある。
【0119】
しかしながら、各漏斗部が図16、図17(a)、図17(b)に示すように、接近していれば、手間はほとんど変わらないし、検査結果を得るまでの時間も実施の形態1と比べて大幅に延びることもない。したがって、図16、図17(a)、図17(b)に示される例も実用上十分であると言いうる。
【0120】
さらに、強毒型のA型インフルエンザウイルスが蔓延する等の場合には、感染が疑わしい患者をいち早く隔離することを最優先すべき場合もあり得る。そのような場合には、図17(b)に示される強毒型のA型インフルエンザウイルスを検査する系のみを使用し、呈色があらわれなければ、直ちに患者を隔離しても一定の実益があると考えられる。こうしても、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】(a)本発明のパターン1による試験片(A型)の模式図 (b)本発明のパターン1による試験片(強毒型)の模式図
【図2】(a)本発明のパターン1による試験片(A型)の模式図 (b)本発明のパターン1による試験片(強毒型)の模式図
【図3】(a)本発明のパターン1による試験片(A型)の模式図 (b)本発明のパターン1による試験片(強毒型)の模式図
【図4】(a)本発明のパターン2による試験片(A型)の模式図 (b)本発明のパターン2による試験片(強毒型)の模式図
【図5】(a)本発明のパターン2による試験片(A型)の模式図 (b)本発明のパターン2による試験片(強毒型)の模式図
【図6】(a)本発明のパターン2による試験片(A型)の模式図 (b)本発明のパターン2による試験片(強毒型)の模式図
【図7】(a)本発明のパターン3による試験片(A型)の模式図 (b)本発明のパターン3による試験片(強毒型)の模式図
【図8】(a)本発明のパターン4による試験片(A型)の模式図 (b)本発明のパターン4による試験片(強毒型)の模式図
【図9】本発明の実施の形態1における試験片の縦断面図
【図10】本発明の実施の形態1におけるケースの平面図
【図11】本発明の実施の形態1における検査装置の平面図
【図12】本発明の実施の形態1における検査装置の平面図
【図13】本発明の実施の形態1における検査装置の平面図
【図14】本発明の実施の形態1における検査装置の平面図
【図15】本発明の実施の形態2における試験片の縦断面図
【図16】本発明の実施の形態2における検査装置の平面図
【図17】(a)本発明の実施の形態2における検査装置の平面図 (b)本発明の実施の形態2における検査装置の平面図
【符号の説明】
【0122】
1、2 ストリップ
3 標識
4 低反応抗体
5、6 抗体
7、8 核タンパク
10 検査領域
11 滴下部
12 第1塗布部
13 第2塗布部
14、15 吸水ろ紙
16 第1検査領域
17 第2検査領域
18 第1検査ライン
19 第2検査ライン
20、21 リファレンスライン
22 ケース
23 漏斗部
24 第1観察窓
25 第2観察窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリップと、前記ストリップの中央部に配置される滴下部と、前記ストリップの第1端部に配置される第1吸水ろ紙と、前記滴下部よりも前記第1端部に至る第1流れ方向下流側に配置される第1塗布部と、前記第1塗布部と前記第1吸水ろ紙との間に配置され第1検査部を有する第1検査領域と、前記ストリップの第2端部に配置される第2吸水ろ紙と、前記滴下部よりも前記第2端部に至る第2流れ方向下流側に配置される第2塗布部と、前記第2塗布部と前記第2吸水ろ紙との間に配置され第2検査部を有する第2検査領域とを備える検査装置であって、
前記第1検査部と前記第2検査部のいずれもが呈色しないとき、強毒型でないA型インフルエンザウイルスと強毒型のA型インフルエンザウイルスのいずれにも陰性であることが示され、
前記第1検査部と前記第2検査部のいずれもが呈色するとき、強毒型でないA型インフルエンザウイルスについて陽性であり、強毒型のA型インフルエンザウイルスについて陰性であることが示され、
前記第1検査部及び前記第2検査部の一方が呈色し、他方の呈色が前記一方より弱いとき、強毒型のA型インフルエンザウイルスについて陽性であることが示されることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第1検査部及び前記第2検査部の一方が呈色し、他方の呈色がないとき、強毒型のA型インフルエンザウイルスについて陽性であることが示されることを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
ストリップと、前記ストリップの中央部に配置される滴下部と、前記ストリップの第1端部に配置される第1吸水ろ紙と、前記滴下部よりも前記第1端部に至る第1流れ方向下流側に配置されA型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第1の抗体を標識したものを流動可能に保持する第1塗布部と、前記第1塗布部と前記第1吸水ろ紙との間に配置され、A型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第2の抗体が固相される第1検査部を有する第1検査領域と、前記ストリップの第2端部に配置される第2吸水ろ紙と、前記滴下部よりも前記第2端部に至る第2流れ方向下流側に配置されA型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第3の抗体を標識したものを流動可能に保持する第2塗布部と、前記第2塗布部と前記第2吸水ろ紙との間に配置され、A型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第4の抗体が固相される第2検査部を有する第2検査領域とを備える検査装置であって、
前記第1、第2、第3及び第4の抗体のうち、一の抗体は、他の抗体に比べて強毒型のA型インフルエンザウイルスに対する反応性が低いことを特徴とする検査装置。
【請求項4】
第1のストリップと第2のストリップとを備えてなる検査装置であって、
前記第1のストリップは、第1の滴下部と、前記第1の滴下部から第1流れ方向に離れた位置に配置される第1吸水ろ紙と、前記第1の滴下部よりも第1流れ方向下流側に配置されA型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第1の抗体を標識したものを流動可能に保持する第1塗布部と、前記第1塗布部と前記第1吸水ろ紙との間に配置され、A型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第2の抗体が固相される第1検査部を有する第1検査領域とを備え、
前記第2のストリップは、第2の滴下部と、前記第2の滴下部から第2流れ方向に離れた位置に配置される第2吸水ろ紙と、前記第2の滴下部よりも第2流れ方向下流側に配置されA型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第3の抗体を標識したものを流動可能に保持する第2塗布部と、前記第2塗布部と前記第2吸水ろ紙との間に配置され、A型インフルエンザウイルスの核タンパク抗原に反応性を有する第4の抗体が固相される第2検査部を有する第2検査領域とを備え、
前記第1、第2、第3及び第4の抗体のうち、一の抗体は、他の抗体に比べて強毒型のA型インフルエンザウイルスに対する反応性が低いことを特徴とする検査装置。
【請求項5】
前記ストリップは、ケースに保持され、前記ケースは、前記滴下部に対応して開口する漏斗部と、前記検査領域に対応する観察窓とを備える請求項1から4のいずれかに記載の検査装置。
【請求項6】
前記第1のストリップは、第1のケースに保持され、
前記第2のストリップは、前記第1のケースとは別体に構成される第2のケースに保持され、
前記第1のケースは、前記第1の滴下部に対応して開口する第1の漏斗部と、前記第1検査領域に対応する第1の観察窓とを備え、
前記第2のケースは、前記第2の滴下部に対応して開口する第2の漏斗部と、前記第2検査領域に対応する第2の観察窓とを備える請求項4記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−19739(P2010−19739A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181631(P2008−181631)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年6月12日〜14日 社団法人日本アレルギー学会主催の「第20回日本アレルギー学会春季臨床大会」に発表
【出願人】(501372514)国立国際医療センター総長 (11)
【出願人】(598034720)株式会社ミズホメディー (17)
【Fターム(参考)】