検査装置
【課題】検査対象物を撮影するための光路内の一部にその光路を遮るように介在物を挿入しても、その介在物が画像に与える影響を抑えて検査を正確に実施することが可能な検査装置を提供する。
【解決手段】検査対象物としてのボトル2を照明装置3からの赤外光を含む照明光で照明しつつボトル2の赤外波長域の画像をカメラ11にて撮影し、得られた画像に基づいてボトル2を検査する検査装置1において、照明装置3からボトル2を経てカメラ11に至る光路内に、該光路を部分的に遮るようにネックホールド50を挿入し、そのネックホールド50をボトル2のネック部2dと噛み合わせてボトル2の落下を防止する。ネックホールド50は赤外光の波長域に対して透過性を有する材料にて形成する。
【解決手段】検査対象物としてのボトル2を照明装置3からの赤外光を含む照明光で照明しつつボトル2の赤外波長域の画像をカメラ11にて撮影し、得られた画像に基づいてボトル2を検査する検査装置1において、照明装置3からボトル2を経てカメラ11に至る光路内に、該光路を部分的に遮るようにネックホールド50を挿入し、そのネックホールド50をボトル2のネック部2dと噛み合わせてボトル2の落下を防止する。ネックホールド50は赤外光の波長域に対して透過性を有する材料にて形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル型の容器等の検査対象物を撮像手段で撮影して検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料ボトル等の容器の検査には画像処理を利用した検査装置が多用されている。この種の検査装置においては、光学系の光路内にその光路を部分的に遮るように介在物を配置すると、撮影される光束にいわゆるケラレが生じ、その影響で画像の一部に暗い影が発生して、画像の輝度分布に基づく異物、傷等の検出を正確に行うことができなかった。このため、そのような介在物が光学系の光路内に存在しないように装置を設計する必要があった。なお、赤外カメラの保護窓に関する技術として、赤外光に対して透過性を有する基板の表面にダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド構造を含む炭素膜(DLC)、又は超高分子量高密度ポリエチレン膜を保護膜として設ける技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−372763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、容器の撮影対象箇所とこれに対する照明方向との関係においては、光路内に容器の姿勢保持のための部材等を配置せざるを得ないことがある。この場合には、検査に支障が生じるような影が画像内に現われないように何らかの対策を講じる必要がある。上述した特許文献1の保護窓はカメラの前面において光路を全面的に横断するように配置され、光路内の一部に影を出現させるものではない。従って、光路内の一部に保持部材等の介在物を挿入した場合の影響について特許文献1では何ら検討されていない。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、検査対象物を撮影するための光路内の一部にその光路を遮るように介在物を挿入しても、その介在物が画像に与える影響を抑えて検査を正確に実施することが可能な検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の検査装置は、検査対象物(2)を照明手段(3)からの赤外光を含む照明光で照明しつつ該検査対象物の赤外波長域の画像を撮像手段(11)にて撮影し、得られた画像に基づいて検査対象物を検査する検査装置(1)において、前記照明手段から前記検査対象物を経て前記撮像手段に至る光路内に該光路を部分的に遮るように挿入される介在物(50)を備え、前記介在物が赤外光の波長域に対して透過性を有する材料としての、顔料を含まない高分子ポリエチレン系樹脂にて形成され、前記撮像手段が近赤外波長域を含む750〜950nmの波長域の画像を撮影するように設けられることにより、上述した課題を解決する。
【0007】
本発明の検査装置によれば、検査対象物の近赤外光による画像を撮影する一方で、その近赤外光に対して透過性を有する材料にて介在物を形成しているので、介在物による近赤外光のケラレを抑え、それにより撮像手段にて撮影される画像に対して介在物が与える影響を抑えつつ、検査対象物を明瞭に撮影することができる。
【0008】
また、近赤外波長域を含む750〜950nmの波長域を利用して画像を撮影しているので、他の波長域を利用する場合と比較して検査対象物をより明瞭に撮影して検査を容易かつ高精度に実施することができる。そして、顔料を含まない高分子ポリエチレン系樹脂は近赤外光波長域において高い透過性を有しており、光路の一部を介在物で遮った場合でも近赤外光による画像に介在物の影が全く生じないか、仮に影が生じたとしてもその影響を検査に支障がない程度に抑えることができる。
【0009】
本発明の一形態においては、粘度法ASTMD2857で試験したときの前記高分子ポリエチレン系樹脂の分子量が100〜600万の範囲であってもよい。前記照明手段の照明光が850nmにピークを有する近赤外光であってもよい。
【0010】
本発明の一形態において、前記介在物は前記照明手段から前記検査対象物に至る光路内に設けられてもよい。この形態によれば、照明手段からの照明光の光路に介在物が存在しても、検査対象物を均一に照明してその介在物が画像に与える影響を抑えることができる。
【0011】
本発明の一形態においては、前記介在物として、前記検査対象物を所定の姿勢に保持する保持部材(50)が設けられてもよい。この形態によれば、検査対象物の安定性を高めつつ、その保持部材が画像に与える影響を抑えることができる。
【0012】
保持部材を設ける形態においては、前記検査対象物がボトル型の容器(2)であり、前記照明手段は前記容器を口元側から照明するように設けられ、前記撮像手段は前記容器を底面側から撮影するように設けられ、前記保持部材は前記容器に対して外周側から接触するように設けられてもよい。この形態によれば、ボトル型の容器を口元側から照明しつつ、ボトル型の容器を透過した光束による画像を撮像手段にて撮影することができる。しかもその画像には保持部材の影響が全く生じないか、仮に生じてもその影響を検査に支障がない程度に抑えることができる。これにより、容器の底に沈んでいる異物等を暗部として確実に判別することができる。
【0013】
本発明の一形態において、前記容器はポリエチレンテレフタレート樹脂製であり、該容器の内部には前記照明光に対して透過性を有する飲料が充填されていてもよい。
【0014】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
以上に説明したように、本発明の検査装置によれば、検査対象物の近赤外光による画像を撮影する一方で、その近赤外光に対して透過性を有する材料にて介在物を形成しているので、介在物による近赤外光のケラレを抑え、それにより撮像手段にて撮影される画像に対して介在物が与える影響を抑えつつ、検査対象物を明瞭に撮影して正確に検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一形態に係る検査装置の要部を示す図。
【図2】図1の検査装置に設けられた筒状体付近の横断面図。
【図3】本発明が適用された検査装置の正面図。
【図4】図3の検査装置の平面図。
【図5】図3の検査装置のV−V線よりも下方における平面図。
【図6】一方のホイール装置の斜視図。
【図7】ネックホールドを下方からみた平面図。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った断面図。
【図9】ネックホールドの他の形態を示す図。
【図10】搬送ホイールの他の形態を示す図。
【図11】覆い部材を重ね合わせる他の形態を示す図。
【図12】実施例1〜3で撮影された画像を示す図。
【図13】実施例4及び5で撮影された画像を示す図。
【図14】比較例1で撮影された画像を示す図。
【図15】比較例2〜4で撮影された画像を示す図。
【図16】比較例5及び6で撮影された画像を示す図。
【図17】比較例7で撮影された画像を示す図。
【図18】比較例8で撮影された画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一形態を説明する。まず、図1を参照して検査装置の要部を説明する。
検査装置1は、検査対象の容器としてのペットボトル(以下、ボトルと略称する。)2を照明するための上部照明装置(照明手段)3及び下部照明装置7を備えている。上部照明装置3は、ボトル2の中心線CLの上方に離して設けられてボトル2を外周斜め上方から照明する。下部照明装置7はボトル2の底面2a側をその外周の斜め下方から照明する。
【0018】
上部照明装置3は、リング状の発光器(光源)4と、その発光器4の中心部を塞ぐ蓋体5とを備えている。発光器4は近赤外域(波長750〜950nm)の照明光を射出する。発光器4の下方にはボトル2の外周を取り囲む筒状体6が設けられている。蓋体5及び筒状体6は発光器4から射出された照明光をボトル2に向かって反射させる。上部照明装置3に加えて筒状体6を設けることにより、発光器4から照射される照明光をボトル2の周囲に満遍なく拡散させてボトル2の全周に亘ってほぼ均一な照明光を作り出すことができる。なお、ボトル2には近赤外光に対して透過性を有する飲料が充填され、かつボトル2の口元はキャップ2bにて密封されている。キャップ2bについては、それよりも下方において照明光が均一に回り込むので透過性を有する材料にて形成することを要しない。
【0019】
下部照明装置7はボトル2よりも下方に離して配置されたリング状の発光器7aから照射される可視光によりボトル2を照明する。下部照明装置7の下方には撮影装置8が設けられている。撮影装置8は、下部照明装置7の下方に配置されたフレネルレンズ9と、そのフレネルレンズ9を通過した光束のうち近赤外域の光束を透過し、可視域の光束を反射するコールドミラー10と、近赤外域の光束に基づく画像を撮影する第1カメラ(撮像手段)11と、可視域の光束に基づく像を撮影する第2カメラ12とを備えている。第1カメラ11は上部照明装置3の照明光による透過光画像を撮像し、第2カメラ12は下部照明装置7の照明光による反射光画像を撮像する。カメラ11、12が撮影した画像は不図示の画像処理装置に導かれ、そこでは透過光画像と反射光画像とに基づいてボトル2の底に沈んでいる異物の有無が判定される。判定方法は、異物に対応する暗部が画像中に存在するか否かを検査することにより行われるが、その詳細は本発明の要旨ではないので説明を省略する。
【0020】
検査装置1は、ボトル2を鉛直に立てた状態で保持しつつ搬送する手段としてハンドリング装置20をさらに備えている。ハンドリング装置20は図3以下に詳しく示されているが、まずはその要部を図1及び図2により説明する。ハンドリング装置20は、ボトル2の胴部2cを搬送ホイール34とベルト41とで挟み込んで保持するとともに、さらにはボトル2のネック部2dにネックホールド(保持部材)50を噛み合わせてネック部2dを下方から保持する。
【0021】
図2に示すように、筒状体6は一対の半円筒型の覆い部材45を組み合わせて形成されており、ネックホールド50は一方の覆い部材45を半径方向に貫いて筒状体6の内部に突出する。すなわち、ネックホールド50は、上部照明装置3からボトル2を経由して第1カメラ11に至る光路内にその光路を部分的に遮るように挿入されることにより、本発明における介在物として作用する。このようなネックホールド50を設ける場合、上部照明装置3の照明光(近赤外光)の一部がネックホールド50によって遮断され、第1カメラ11にて撮影される画像の一部に影が生じるおそれがある。そこで、ネックホールド50は、第1カメラ11による撮影光束、すなわち近赤外光に対して透過性を有する材料にて形成されている。しかも、近赤外光の透過性を妨げないように、ネックホールド50の材料には顔料が含まれないものが選択される。このような材料としては、顔料を含まない高分子ポリエチレン系樹脂を好適に用いることができ、より好ましくは分子量100〜600万程度の超高分子量ポリエチレン系樹脂(UHMW−PE)を用いることができる。
なお、分子量は粘度法ASTMD2857にて試験したときの値による。このような樹脂の具体例としては、作新工業株式会社が商品名「ニューライト」を付して提供する高分子ポリエチレン系樹脂がある。上記の樹脂の使用に合わせて、上部照明装置3の照明光は波長850nmをピークとした近赤外光とされている。そのような近赤外光に対する材料の透過特性は、例えばフーリエ変換赤外分光光学計(FTIR)によって検査することができる。FTIRを利用して近赤外光を検査に支障が生じないレベルで透過できる材料であれば本形態のネックホールド50の材料として適宜に用いることができる。
【0022】
次に、ハンドリング装置20の詳細を説明する。図3〜図6はハンドリング装置20が組み込まれた検査装置1の全体構成を示し、図3は正面図、図4は平面図、図5は図3のV−V線よりも下方に関する平面図、図6は図3の左側に配置されたホイール装置の斜視図である。これらの図に示すように、ハンドリング装置20は、左右一対のホイール装置21と、各ホイール装置21を駆動する駆動装置22とを備えている。各ホイール装置21は、下部ホイール25及び上部ホイール26を備えている。なお、図3に示したように、以下の説明では、左右の下部ホイール25及び上部ホイール26をそれぞれ添え字L、Rを付して区別することがある。両者を区別する必要がないときはそれらを参照符号25又は26で代表する。左側の上部ホイール26Lが第1の回転体、右側の上部ホイール26Rが第2の回転体にそれぞれ相当する。
【0023】
各ホイール装置21において、ホイール25、26は鉛直方向に延びる回転軸27に対して同軸に設けられている。回転軸27にはカップリング28が一体回転可能かつ軸方向には移動不能に取り付けられ、下部ホイール25はそのカップリング28を介して回転軸27に連結されることにより、回転軸27と一体に回転可能である。
【0024】
下部ホイール25には3本のロッド29…29が回転軸27と平行に取り付けられている。上部ホイール26はそれらの3本のロッド29上の適宜の位置で固定されている。従って、ロッド29を介して下部ホイール25と上部ホイール26とは一体回転可能に連結され、それにより上部ホイール26も回転軸27と一体に回転する。なお、ロッド29に対する上部ホイール26の固定位置はロッド29の軸線方向、すなわち鉛直方向に調整可能である。
【0025】
駆動装置22は左右のホイール装置21を回転軸27の回りに回転駆動するためのものであり、駆動源としての電動モータ30と、その電動モータ30の回転を減速して左側の回転軸27に伝達する減速機構31と、左側の回転軸27の回転を右側の回転軸27に伝達する一対のギア32、32とを備えている。ギア32間のギア比は1:1であり、従って、電動モータ30の回転により左右の回転軸27は互いに等しい角速度で逆方向に回転駆動される。これにより、左右のホイール装置21間において、下部ホイール25及び上部ホイール26は電動モータ30にて互いに等しい速度でそれぞれ逆方向(図4の矢印R方向)に回転駆動される。
【0026】
図3に示すように、左側の下部ホイール25Lの上面には上下一対の搬送ホイール34、34がそれぞれの外周を下部ホイール25Lよりも外側に突出させて取り付けられている。これらの下部ホイール25Lと搬送ホイール34とによってボトル2に対する搬送体が構成される。図5に示すように、各搬送ホイール34(図5では下側のホイールが隠れて見えていない。)の外周には、複数(図では12個)のポケット35…35が周方向に一定のピッチで設けられている。これらのポケット35はボトル2を搬送ホイール34の外周上に保持するためのものであり、搬送ホイール34の外周を概略半円状に凹ませることによって形成されている。各ポケット35にボトル2を押し付けるため、搬送ホイール34の周囲にはボトル押え機構(容器押え機構)40が設けられている。
【0027】
ボトル押え機構40は、ベルト41と、それらのベルト41が巻き掛けられる複数のプーリ42…42と、ベルト41の張力を調整するテンションアジャスタ43とを備えている。ベルト41は回転軸27の方向に関しては上下の搬送ホイール34、34のほぼ中間位置に配置され、ホイール34の周方向に関してはホイール34の外周のほぼ半周程度に沿って延びるように張り巡らされている。さらに、搬送ホイール34、34のそれぞれのポケット35の間には、ベルト41のポケット35側への変位を規制するベルト受け36がホイール34の半径方向外側へ突出するように設けられている。ベルト受け36はその先端(ベルト41に対する接触位置)にベルト受け36とベルト41との間の摩擦抵抗を減らすためのローラ37を備えている。ローラ37はベルト41の走行方向に沿って回転可能である。つまり、各ローラ37は回転軸27と平行な回転軸線の回りに回転可能である。但し、ローラ37は省略してもよい。図6ではローラ37の図示が省略されている。
図3に示したように、ローラ37の上下にはベルト41の幅方向(鉛直方向)へのずれを規制するためのフランジ38、38が設けられている。テンションアジャスタ43はエアシリンダ等のアクチュエータを内蔵し、ロッド43aと連結された一つのプーリ42の位置をロッド43aの軸線方向に変化させてベルト41の張力を調整する。
【0028】
従って、左側の下部ホイール25Lが図5の矢印R方向に回転すると仮定すれば、その回転方向の上流側にてベルト41を折り返すプーリ42の付近がポケット35に対するボトル取込位置Paとなる。不図示の搬送ラインにより前工程からボトル取込位置Paまで搬送されたボトル2はポケット35に取り込まれてベルト41によりポケット35内に押さえ込まれる。ポケット35に保持されたボトル2はホイール25Lの回転に伴って左右のホイール25、25が最も接近する検査位置Pb(図3及び図4も参照)まで搬送され、そこで検査を受ける。さらに検査位置Pbで検査されたボトル2はホイール25Lの回転に伴って下流側のプーリ42の付近まで搬送される。下流側のプーリ42の付近がポケット35からのボトル取出位置Pcとなる。ボトル取出位置Pcにてボトル2からベルト41が離間してボトル2がポケット35から解放される。ポケット35から解放されたボトル2は不図示の搬送ラインにより後工程へ送られる。
【0029】
このように、ハンドリング装置20においては、駆動装置21、左側の下部ホイール25L、回転軸27、搬送ホイール34、ベルト受け36(ローラ37を含む)、及びボトル押え機構40の組み合わせによってボトル2の搬送装置(搬送手段)23が構成されている。また、ポケット35及びボトル押え機構40によって容器保持手段が構成されている。なお、ベルト41がボトル2をポケット35に押さえ付ける力は、ボトル2の底面側を支えることなくポケット35にボトル2を確実に保持でき、かつベルト41の押し付け力でボトル2が変形しない範囲に定めるとよい。ベルト41による押し付け力の最小値はベルト41に加える張力にて調整でき、最大値はベルト受け36のポケット35に対する突出量にて調整できる。
【0030】
図3及び図4に示すように、左右の上部ホイール26のそれぞれには複数の覆い部材45…45が連結板46を介して周方向に一定のピッチで取り付けられている。各ホイール26に対する覆い部材45の取り付け個数はポケット35の個数に等しい。図2において既に説明したように、覆い部材45はボトル2の中心線CLの方向に延びる円筒型を半割した半円筒形状に形成されている。覆い部材45は、その円筒型の中心線が対応するポケット35の中心線と略一致するようにして上部ホイール26の外周に取り付けられている。覆い部材45の内周面45aはボトル2を取り囲むに適した曲率で湾曲しているが、その曲率半径は右側のホイール26Rの覆い部材45の方が、左側のホイール26Lの覆い部材45のそれよりも僅かに大きく形成されている。そして、各覆い部材45の周方向の長さは検査位置Pbにて互いの端部が幾らか重複するように定められている。また、左右のホイール26上の覆い部材45の周速度が互いに等しくなるように、各回転軸27から覆い部材45の曲率中心までの距離は互いに等しく定められている。以上のように覆い部材45が設けられることにより、検査位置Pbで筒状体6を形成してボトル2の上部を取り囲むことができる。なお、各覆い部材45の内周面45aは、図1に示した発光器4の照明光を効率よく反射できるように白色の反射面として構成されている。
【0031】
検査位置Pbの上方には、ホイール装置21に保持された覆い部材45やボトル2と干渉しないように上部照明装置3が配置されている。また、検査位置Pbの下方にはホイール装置21に保持されたボトル2と干渉しないように下部照明装置7が設けられ、その下部照明装置7の下方にはさらに撮影装置8が設けられている。これらの照明装置3及び7はボトル2の中心線CLの方向(鉛直方向)に関して定位置に取り付けておけばよく、昇降させる必要はない。さらに、左側の上部ホイール26Lには、上述したネックホールド50が覆い部材45と1:1に対応付けて設けられている。ネックホールド50は覆い部材45を半径方向に貫くように設けられており、その後端部が連結板46に固定される。
上部ホイール26Lにネックホールド50を固定してもよい。
【0032】
図7はネックホールド50を図3の下方からみたときの平面図であり、図8は図7のVIII−VIII線に沿った断面図である。これらの図に示すように、ネックホールド50は概略矩形平板状に形成されており、その先端にはボトル2のネック部2dと噛み合う円弧状の凹部50aが形成されている。凹部50aの曲率はネック部2dのそれと略一致する。図8から明らかなように、凹部50aの下面側にはテーパ面50bが形成されている。テーパ面50bはボトル2のネック部2dから胴部2cに移行する部分に設けられたショルダ部2e(図1参照)とネックホールド50との干渉を避けつつ、ネックホールド50をネック部2dに対して深く噛み合わせるために設けられている。図7に示したように、ネックホールド50の後端部には、ボルト等の固定手段を利用してネックホールド50を連結板46又は上部ホイール26に固定するための取付穴50cが形成されている。ネックホールド50の幅W及び板厚tは適宜に設定してよい。なお、ネックホールド50は矩形平板状に限らず、図9に示すように先端部を中心角θの扇状に形成する等、適宜の変形が可能である。中心角θも適宜に選択することができる。
【0033】
以上のように構成された検査装置1においては、ホイール装置21の回転軸27が駆動装置22にて一定速度で回転駆動されることにより、搬送ホイール34のポケット35にボトル2が1本ずつ順次取り込まれる。ポケット35に取り込まれたボトル2のネック部2dにはネックホールド50が噛み合わされ、それによりボトル2の落下が確実に防がれる。
【0034】
検査位置Pbにおいては、ボトル2が覆い部材45によって囲まれつつ上部照明装置3及び下部照明装置7によって上下から照明される。このとき上部照明装置3の照明光が覆い部材45の内周面45aで反射されることによりボトル2が周方向に関してほぼ均等に上部照明装置3からの照明光で照明される。これらの照明光によるボトル底面の透過光画像及び反射光画像が撮影装置8にて撮影され、得られた画像に基づいてボトル2の底面に沈殿した異物の有無が判定される。ネックホールド50が上部照明装置3の照明光に対して高い透過性を有する高分子ポリエチレン系樹脂にて形成されているので、ネックホールド50が光路内に存在してもボトル2はほぼ均一に照明される。従って、第1カメラ11の撮影した画像において、ネックホールド50の存在に起因する光量低下が殆ど生じず、異物の有無を精度よく判定することができる。
【0035】
検査終了後のボトル2は検査位置Pbから搬出され、その際に筒状体6を形成していた一対の覆い部材45が互いに離間して筒状体6が分割される。従って、検査終了後のボトル2は筒状体6に邪魔されることなく検査位置Pbから離れてボトル取出位置Pcまで搬出される。ボトル取出位置Pcにおいてベルト41及びネックホールド50がボトル2から離間してハンドリング装置20によるボトル2の保持が解除される。ハンドリング装置20から解放されたボトル2は不図示の搬送手段により検査装置1から後工程へ送られる。
【0036】
本形態の検査装置1によれば次のような利点もある。一対の上部ホイール26L、26Rに取り付けられた一対の覆い部材45をホイール26L、26Rが最も接近する検査位置Pbにて組み合わせて筒状体6を形成し、しかも、一方の上部ホイール26Lと同軸上を一体回転する下部ホイール25Rを利用してボトル2を覆い部材45と同軸上に保持しつつ検査位置Pbに対して搬入及び搬出しているので、覆い部材45やボトル2を昇降させることなく筒状体6にてボトル2を取り囲み、また筒状体6と干渉することなくボトル2を筒状体6から取り出すことができる。従って、筒状体6やボトル2の昇降機構が不要で装置を簡素化でき、かつ動作がシンプルであることからボトル2の搬送速度の高速化にも容易に対応することができる。
【0037】
また、上記の形態では、ベルト41からボトル2に加わる押し付け力をベルト受け36にて制限しているので、ボトル2に意図せぬ過剰な力が加わるおそれがなく、ボトル2の変形を確実に防止できる。特にベルト受け36の先端にローラ37が設けられているので、ベルト受け36に対するベルト41の滑りが容易に生じるようになり、各ポケット35の間でベルト41による押し付け力が確実に均一化される利点がある。さらに、ローラ37にはフランジ38が設けられているので、ベルト41のずり落ちやせり上がりを防止できる。従って、ボトル2に内容物が充填されている状態でもベルト41により複数のポケット35のそれぞれにボトル2を確実に拘束することができる。なお、ローラ37が省略されてベルト受け36が図6に示したような単純なブロック形状に形成される場合にはベルト受け36の先端にフランジ37を一体に設けてもよい。但し、ベルト受け36を省略してベルト41とポケット35とでボトル2を挟むようにしてもよい。
【0038】
上記の形態では、回転体としての上部ホイール26の一方(左側の上部ホイール26L)と同軸上を一体回転できるように搬送ホイール34を設け、そのポケット35にボトル2を保持させることにより各ボトル2を対応する覆い部材45と略同軸に保持しつつ搬送しているため、検査位置Pbへの搬入及び搬出時において覆い部材45とボトル2とがずれるおそれがない利点がある。但し、検査位置Pbにて覆い部材45が組み合わされて筒状体6が形成される動作に同期して、ボトル2をホイール26の回転方向前方に向けて検査位置Pbに搬入し、検査位置Pbから覆い部材45が離れて筒状体6が分離される動作に同期してボトル2を検査位置Pbからホイール26の回転方向前方に向けて搬出できる限りは、例えば検査位置Pbにおける上部ホイール26の接線方向に沿ってボトル2を直線的に搬送するタイプの搬送装置としても構わない。そのような搬送装置を設ける場合には、上部ホイール26を検査位置Pbまで拡張したと仮定したときの検査位置Pbにおけるホイール26の接線方向速度とボトル2の搬送速度とを一致させることにより、上部ホイール26の回転に合わせてボトル2を回転方向前方に搬入及び搬出することができる。
この場合でも検査装置Pbにおいてネックホールド50をボトル2のネック部2dと噛み合わせてボトル2の落下を確実に防止することができる。
【0039】
上記の形態では覆い部材45を反射板として機能させているが、覆い部材45そのものを発光可能な照明装置として構成してもよい。覆い部材45は下部照明装置7からの照明光をボトル2に向けて反射させるものでもよい。対向位置に繰り出された一対の覆い部材45のそれぞれの端部は必ずしも重複させる必要はない。照明光の強度分布に問題がなければ、覆い部材45同士の間に多少の隙間が生じても構わない。覆い部材45は半円筒形に限らず、中心線CLの方向に延びる筒型を半割した形状であれば適宜に変更可能である。例えば覆い部材45は中心線CLと直交する断面上において多角形状の断面を有するものでもよい。
【0040】
左右の上部ホイール26L、26Rのそれぞれに設けられる覆い部材45の個数は一致している必要はない。例えば図10に示すように左右に異なる径のホイール26A、26Bを設けて互いに異なる個数の覆い部材45を取り付けてもよい。このような場合でも、各ホイール26A、26B上における覆い部材45の周方向の間隔(ピッチ)が互いに等しく、かつ覆い部材45の周速が左右で一致するように各ホイール26を駆動すれば一対の覆い部材45にて筒状体6を順次形成することができる。なお、図10の例ではホイール26の角速度が左右で異なることになるが、その調整はギア32、32間のギア比を変化させて行えばよい。
【0041】
上記の形態では、左右で覆い部材45の曲率を変えて一方の覆い部材45の内側に他方の覆い部材45の端部を重ね合わせているが、図11に示すように一方の覆い部材45と他方の覆い部材45とを周方向に互い違いにずらして組み合わせてもよい。
【0042】
本発明が適用される検査装置は図示の構成に限定されず、種々の形態にて実施してよい。例えば、上記の形態において一つのボトル2に対して複数のネックホールド50を設けてもよい。ネックホールドは必ずしも筒状体を貫くように設けられる必要はない。ネックホールドに代え、又は追加してボトル2の適宜の箇所を本発明に従って構成された保持部材にて保持してもよい。可視光による画像の検査が不要であれば、下部照明装置7、コールドミラー10及び第2カメラ12は省略してよい。照明手段、撮像手段及び検査対象物の位置関係は図示の例に限らず適宜に変更してよい。検査対象の容器はペットボトルに限らず、ガラスビンその他各種の容器を対象としてよい。本発明の検査装置は、容器に限らず各種の物品を検査対象としてよい。さらに、光路内に挿入される介在物は検査対象物の保持部材に限らない。光路の一部を遮るように挿入される各種の介在物を本発明に従って構成してよい。例えば検査対象物を搬送するための各種の部品、照明装置、撮像手段等に対する水滴の付着を防止するためのカバー等を本発明に従って構成すれば、それらの介在物が撮影光束に与える影響を抑えて、正確に検査を実施することができる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の実施例について説明する。図1に示した検査装置1を試作し、第1カメラ11にてボトル2の底面側の画像を撮影してネックホールド50が画像に与える影響を検討した。実施例においては、ネックホールドの形状及び寸法を変えてそれらの影響も検討した。また、比較例として、ネックホールドの材質を変更したときの画像も検討した。
各実施例及び比較例において得られた画像を図12〜図18に示す。なお、いずれの例においても、上部照明装置3の照明光は850nmにピークを有する近赤外光とし、ボトル2は、容量500mlのPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)製とした。ボトル2の内部には上部照明装置3の照明光に対して透過性を有する飲料を充填した。照明光は、LED(約100個)を光源とし、総消費電力12Wで照射した。第1カメラ11が撮影した画像の輝度を225階調に等間隔で区分し、ボトル2の底部の最も明るい部分の階調を255として画像中の輝度分布を表現した。各例におけるネックホールドの形状、幅W又は中心角θ(図7又は図9参照)、厚さt(図8参照)、原料樹脂、顔料の有無、及び図面(画像)の対応関係は下表の通りである。なお、原料樹脂に関してUHMW−PEは超高分子量ポリエチレン樹脂であり、顔料のないものとしては作新工業株式会社が品番NL−Wを付して提供する樹脂を、顔料入りのものとしては同社が品番NL−ASBを付して提供する樹脂をそれぞれ用いた。POMはポリアセタール樹脂の略である。各例において、ネックホールドは画像中の右下にその影が現われるべきように配置されている。
【0044】
【表1】
【0045】
図12及び図13から明らかなように、顔料を含まない超高分子量ポリエチレン樹脂製のネックホールドを使用した実施例1〜5においては、幅W又は中心角θ、及び厚さtを問わず、画像中にネックホールドの影が現われない。一方、図14〜図18に示した比較例1〜8においては、いずれも画像の右下にネックホールドの影が暗部として明らかに現われている。
【符号の説明】
【0046】
1 検査装置
2 ボトル(容器、検査対象物)
2a ボトルの底面
2b ボトルのキャップ
2c ボトルの胴部
2d ボトルのネック部
3 上部照明装置(照明手段)
6 筒状体
11 第1カメラ(撮像手段)
20 ハンドリング装置
26L、26R 上部ホイール(回転体)
34 搬送ホイール(搬送ホイール)
35 ポケット
41 ベルト
50 ネックホールド(保持部材、介在物)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル型の容器等の検査対象物を撮像手段で撮影して検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料ボトル等の容器の検査には画像処理を利用した検査装置が多用されている。この種の検査装置においては、光学系の光路内にその光路を部分的に遮るように介在物を配置すると、撮影される光束にいわゆるケラレが生じ、その影響で画像の一部に暗い影が発生して、画像の輝度分布に基づく異物、傷等の検出を正確に行うことができなかった。このため、そのような介在物が光学系の光路内に存在しないように装置を設計する必要があった。なお、赤外カメラの保護窓に関する技術として、赤外光に対して透過性を有する基板の表面にダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド構造を含む炭素膜(DLC)、又は超高分子量高密度ポリエチレン膜を保護膜として設ける技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−372763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、容器の撮影対象箇所とこれに対する照明方向との関係においては、光路内に容器の姿勢保持のための部材等を配置せざるを得ないことがある。この場合には、検査に支障が生じるような影が画像内に現われないように何らかの対策を講じる必要がある。上述した特許文献1の保護窓はカメラの前面において光路を全面的に横断するように配置され、光路内の一部に影を出現させるものではない。従って、光路内の一部に保持部材等の介在物を挿入した場合の影響について特許文献1では何ら検討されていない。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、検査対象物を撮影するための光路内の一部にその光路を遮るように介在物を挿入しても、その介在物が画像に与える影響を抑えて検査を正確に実施することが可能な検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の検査装置は、検査対象物(2)を照明手段(3)からの赤外光を含む照明光で照明しつつ該検査対象物の赤外波長域の画像を撮像手段(11)にて撮影し、得られた画像に基づいて検査対象物を検査する検査装置(1)において、前記照明手段から前記検査対象物を経て前記撮像手段に至る光路内に該光路を部分的に遮るように挿入される介在物(50)を備え、前記介在物が赤外光の波長域に対して透過性を有する材料としての、顔料を含まない高分子ポリエチレン系樹脂にて形成され、前記撮像手段が近赤外波長域を含む750〜950nmの波長域の画像を撮影するように設けられることにより、上述した課題を解決する。
【0007】
本発明の検査装置によれば、検査対象物の近赤外光による画像を撮影する一方で、その近赤外光に対して透過性を有する材料にて介在物を形成しているので、介在物による近赤外光のケラレを抑え、それにより撮像手段にて撮影される画像に対して介在物が与える影響を抑えつつ、検査対象物を明瞭に撮影することができる。
【0008】
また、近赤外波長域を含む750〜950nmの波長域を利用して画像を撮影しているので、他の波長域を利用する場合と比較して検査対象物をより明瞭に撮影して検査を容易かつ高精度に実施することができる。そして、顔料を含まない高分子ポリエチレン系樹脂は近赤外光波長域において高い透過性を有しており、光路の一部を介在物で遮った場合でも近赤外光による画像に介在物の影が全く生じないか、仮に影が生じたとしてもその影響を検査に支障がない程度に抑えることができる。
【0009】
本発明の一形態においては、粘度法ASTMD2857で試験したときの前記高分子ポリエチレン系樹脂の分子量が100〜600万の範囲であってもよい。前記照明手段の照明光が850nmにピークを有する近赤外光であってもよい。
【0010】
本発明の一形態において、前記介在物は前記照明手段から前記検査対象物に至る光路内に設けられてもよい。この形態によれば、照明手段からの照明光の光路に介在物が存在しても、検査対象物を均一に照明してその介在物が画像に与える影響を抑えることができる。
【0011】
本発明の一形態においては、前記介在物として、前記検査対象物を所定の姿勢に保持する保持部材(50)が設けられてもよい。この形態によれば、検査対象物の安定性を高めつつ、その保持部材が画像に与える影響を抑えることができる。
【0012】
保持部材を設ける形態においては、前記検査対象物がボトル型の容器(2)であり、前記照明手段は前記容器を口元側から照明するように設けられ、前記撮像手段は前記容器を底面側から撮影するように設けられ、前記保持部材は前記容器に対して外周側から接触するように設けられてもよい。この形態によれば、ボトル型の容器を口元側から照明しつつ、ボトル型の容器を透過した光束による画像を撮像手段にて撮影することができる。しかもその画像には保持部材の影響が全く生じないか、仮に生じてもその影響を検査に支障がない程度に抑えることができる。これにより、容器の底に沈んでいる異物等を暗部として確実に判別することができる。
【0013】
本発明の一形態において、前記容器はポリエチレンテレフタレート樹脂製であり、該容器の内部には前記照明光に対して透過性を有する飲料が充填されていてもよい。
【0014】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
以上に説明したように、本発明の検査装置によれば、検査対象物の近赤外光による画像を撮影する一方で、その近赤外光に対して透過性を有する材料にて介在物を形成しているので、介在物による近赤外光のケラレを抑え、それにより撮像手段にて撮影される画像に対して介在物が与える影響を抑えつつ、検査対象物を明瞭に撮影して正確に検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一形態に係る検査装置の要部を示す図。
【図2】図1の検査装置に設けられた筒状体付近の横断面図。
【図3】本発明が適用された検査装置の正面図。
【図4】図3の検査装置の平面図。
【図5】図3の検査装置のV−V線よりも下方における平面図。
【図6】一方のホイール装置の斜視図。
【図7】ネックホールドを下方からみた平面図。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った断面図。
【図9】ネックホールドの他の形態を示す図。
【図10】搬送ホイールの他の形態を示す図。
【図11】覆い部材を重ね合わせる他の形態を示す図。
【図12】実施例1〜3で撮影された画像を示す図。
【図13】実施例4及び5で撮影された画像を示す図。
【図14】比較例1で撮影された画像を示す図。
【図15】比較例2〜4で撮影された画像を示す図。
【図16】比較例5及び6で撮影された画像を示す図。
【図17】比較例7で撮影された画像を示す図。
【図18】比較例8で撮影された画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一形態を説明する。まず、図1を参照して検査装置の要部を説明する。
検査装置1は、検査対象の容器としてのペットボトル(以下、ボトルと略称する。)2を照明するための上部照明装置(照明手段)3及び下部照明装置7を備えている。上部照明装置3は、ボトル2の中心線CLの上方に離して設けられてボトル2を外周斜め上方から照明する。下部照明装置7はボトル2の底面2a側をその外周の斜め下方から照明する。
【0018】
上部照明装置3は、リング状の発光器(光源)4と、その発光器4の中心部を塞ぐ蓋体5とを備えている。発光器4は近赤外域(波長750〜950nm)の照明光を射出する。発光器4の下方にはボトル2の外周を取り囲む筒状体6が設けられている。蓋体5及び筒状体6は発光器4から射出された照明光をボトル2に向かって反射させる。上部照明装置3に加えて筒状体6を設けることにより、発光器4から照射される照明光をボトル2の周囲に満遍なく拡散させてボトル2の全周に亘ってほぼ均一な照明光を作り出すことができる。なお、ボトル2には近赤外光に対して透過性を有する飲料が充填され、かつボトル2の口元はキャップ2bにて密封されている。キャップ2bについては、それよりも下方において照明光が均一に回り込むので透過性を有する材料にて形成することを要しない。
【0019】
下部照明装置7はボトル2よりも下方に離して配置されたリング状の発光器7aから照射される可視光によりボトル2を照明する。下部照明装置7の下方には撮影装置8が設けられている。撮影装置8は、下部照明装置7の下方に配置されたフレネルレンズ9と、そのフレネルレンズ9を通過した光束のうち近赤外域の光束を透過し、可視域の光束を反射するコールドミラー10と、近赤外域の光束に基づく画像を撮影する第1カメラ(撮像手段)11と、可視域の光束に基づく像を撮影する第2カメラ12とを備えている。第1カメラ11は上部照明装置3の照明光による透過光画像を撮像し、第2カメラ12は下部照明装置7の照明光による反射光画像を撮像する。カメラ11、12が撮影した画像は不図示の画像処理装置に導かれ、そこでは透過光画像と反射光画像とに基づいてボトル2の底に沈んでいる異物の有無が判定される。判定方法は、異物に対応する暗部が画像中に存在するか否かを検査することにより行われるが、その詳細は本発明の要旨ではないので説明を省略する。
【0020】
検査装置1は、ボトル2を鉛直に立てた状態で保持しつつ搬送する手段としてハンドリング装置20をさらに備えている。ハンドリング装置20は図3以下に詳しく示されているが、まずはその要部を図1及び図2により説明する。ハンドリング装置20は、ボトル2の胴部2cを搬送ホイール34とベルト41とで挟み込んで保持するとともに、さらにはボトル2のネック部2dにネックホールド(保持部材)50を噛み合わせてネック部2dを下方から保持する。
【0021】
図2に示すように、筒状体6は一対の半円筒型の覆い部材45を組み合わせて形成されており、ネックホールド50は一方の覆い部材45を半径方向に貫いて筒状体6の内部に突出する。すなわち、ネックホールド50は、上部照明装置3からボトル2を経由して第1カメラ11に至る光路内にその光路を部分的に遮るように挿入されることにより、本発明における介在物として作用する。このようなネックホールド50を設ける場合、上部照明装置3の照明光(近赤外光)の一部がネックホールド50によって遮断され、第1カメラ11にて撮影される画像の一部に影が生じるおそれがある。そこで、ネックホールド50は、第1カメラ11による撮影光束、すなわち近赤外光に対して透過性を有する材料にて形成されている。しかも、近赤外光の透過性を妨げないように、ネックホールド50の材料には顔料が含まれないものが選択される。このような材料としては、顔料を含まない高分子ポリエチレン系樹脂を好適に用いることができ、より好ましくは分子量100〜600万程度の超高分子量ポリエチレン系樹脂(UHMW−PE)を用いることができる。
なお、分子量は粘度法ASTMD2857にて試験したときの値による。このような樹脂の具体例としては、作新工業株式会社が商品名「ニューライト」を付して提供する高分子ポリエチレン系樹脂がある。上記の樹脂の使用に合わせて、上部照明装置3の照明光は波長850nmをピークとした近赤外光とされている。そのような近赤外光に対する材料の透過特性は、例えばフーリエ変換赤外分光光学計(FTIR)によって検査することができる。FTIRを利用して近赤外光を検査に支障が生じないレベルで透過できる材料であれば本形態のネックホールド50の材料として適宜に用いることができる。
【0022】
次に、ハンドリング装置20の詳細を説明する。図3〜図6はハンドリング装置20が組み込まれた検査装置1の全体構成を示し、図3は正面図、図4は平面図、図5は図3のV−V線よりも下方に関する平面図、図6は図3の左側に配置されたホイール装置の斜視図である。これらの図に示すように、ハンドリング装置20は、左右一対のホイール装置21と、各ホイール装置21を駆動する駆動装置22とを備えている。各ホイール装置21は、下部ホイール25及び上部ホイール26を備えている。なお、図3に示したように、以下の説明では、左右の下部ホイール25及び上部ホイール26をそれぞれ添え字L、Rを付して区別することがある。両者を区別する必要がないときはそれらを参照符号25又は26で代表する。左側の上部ホイール26Lが第1の回転体、右側の上部ホイール26Rが第2の回転体にそれぞれ相当する。
【0023】
各ホイール装置21において、ホイール25、26は鉛直方向に延びる回転軸27に対して同軸に設けられている。回転軸27にはカップリング28が一体回転可能かつ軸方向には移動不能に取り付けられ、下部ホイール25はそのカップリング28を介して回転軸27に連結されることにより、回転軸27と一体に回転可能である。
【0024】
下部ホイール25には3本のロッド29…29が回転軸27と平行に取り付けられている。上部ホイール26はそれらの3本のロッド29上の適宜の位置で固定されている。従って、ロッド29を介して下部ホイール25と上部ホイール26とは一体回転可能に連結され、それにより上部ホイール26も回転軸27と一体に回転する。なお、ロッド29に対する上部ホイール26の固定位置はロッド29の軸線方向、すなわち鉛直方向に調整可能である。
【0025】
駆動装置22は左右のホイール装置21を回転軸27の回りに回転駆動するためのものであり、駆動源としての電動モータ30と、その電動モータ30の回転を減速して左側の回転軸27に伝達する減速機構31と、左側の回転軸27の回転を右側の回転軸27に伝達する一対のギア32、32とを備えている。ギア32間のギア比は1:1であり、従って、電動モータ30の回転により左右の回転軸27は互いに等しい角速度で逆方向に回転駆動される。これにより、左右のホイール装置21間において、下部ホイール25及び上部ホイール26は電動モータ30にて互いに等しい速度でそれぞれ逆方向(図4の矢印R方向)に回転駆動される。
【0026】
図3に示すように、左側の下部ホイール25Lの上面には上下一対の搬送ホイール34、34がそれぞれの外周を下部ホイール25Lよりも外側に突出させて取り付けられている。これらの下部ホイール25Lと搬送ホイール34とによってボトル2に対する搬送体が構成される。図5に示すように、各搬送ホイール34(図5では下側のホイールが隠れて見えていない。)の外周には、複数(図では12個)のポケット35…35が周方向に一定のピッチで設けられている。これらのポケット35はボトル2を搬送ホイール34の外周上に保持するためのものであり、搬送ホイール34の外周を概略半円状に凹ませることによって形成されている。各ポケット35にボトル2を押し付けるため、搬送ホイール34の周囲にはボトル押え機構(容器押え機構)40が設けられている。
【0027】
ボトル押え機構40は、ベルト41と、それらのベルト41が巻き掛けられる複数のプーリ42…42と、ベルト41の張力を調整するテンションアジャスタ43とを備えている。ベルト41は回転軸27の方向に関しては上下の搬送ホイール34、34のほぼ中間位置に配置され、ホイール34の周方向に関してはホイール34の外周のほぼ半周程度に沿って延びるように張り巡らされている。さらに、搬送ホイール34、34のそれぞれのポケット35の間には、ベルト41のポケット35側への変位を規制するベルト受け36がホイール34の半径方向外側へ突出するように設けられている。ベルト受け36はその先端(ベルト41に対する接触位置)にベルト受け36とベルト41との間の摩擦抵抗を減らすためのローラ37を備えている。ローラ37はベルト41の走行方向に沿って回転可能である。つまり、各ローラ37は回転軸27と平行な回転軸線の回りに回転可能である。但し、ローラ37は省略してもよい。図6ではローラ37の図示が省略されている。
図3に示したように、ローラ37の上下にはベルト41の幅方向(鉛直方向)へのずれを規制するためのフランジ38、38が設けられている。テンションアジャスタ43はエアシリンダ等のアクチュエータを内蔵し、ロッド43aと連結された一つのプーリ42の位置をロッド43aの軸線方向に変化させてベルト41の張力を調整する。
【0028】
従って、左側の下部ホイール25Lが図5の矢印R方向に回転すると仮定すれば、その回転方向の上流側にてベルト41を折り返すプーリ42の付近がポケット35に対するボトル取込位置Paとなる。不図示の搬送ラインにより前工程からボトル取込位置Paまで搬送されたボトル2はポケット35に取り込まれてベルト41によりポケット35内に押さえ込まれる。ポケット35に保持されたボトル2はホイール25Lの回転に伴って左右のホイール25、25が最も接近する検査位置Pb(図3及び図4も参照)まで搬送され、そこで検査を受ける。さらに検査位置Pbで検査されたボトル2はホイール25Lの回転に伴って下流側のプーリ42の付近まで搬送される。下流側のプーリ42の付近がポケット35からのボトル取出位置Pcとなる。ボトル取出位置Pcにてボトル2からベルト41が離間してボトル2がポケット35から解放される。ポケット35から解放されたボトル2は不図示の搬送ラインにより後工程へ送られる。
【0029】
このように、ハンドリング装置20においては、駆動装置21、左側の下部ホイール25L、回転軸27、搬送ホイール34、ベルト受け36(ローラ37を含む)、及びボトル押え機構40の組み合わせによってボトル2の搬送装置(搬送手段)23が構成されている。また、ポケット35及びボトル押え機構40によって容器保持手段が構成されている。なお、ベルト41がボトル2をポケット35に押さえ付ける力は、ボトル2の底面側を支えることなくポケット35にボトル2を確実に保持でき、かつベルト41の押し付け力でボトル2が変形しない範囲に定めるとよい。ベルト41による押し付け力の最小値はベルト41に加える張力にて調整でき、最大値はベルト受け36のポケット35に対する突出量にて調整できる。
【0030】
図3及び図4に示すように、左右の上部ホイール26のそれぞれには複数の覆い部材45…45が連結板46を介して周方向に一定のピッチで取り付けられている。各ホイール26に対する覆い部材45の取り付け個数はポケット35の個数に等しい。図2において既に説明したように、覆い部材45はボトル2の中心線CLの方向に延びる円筒型を半割した半円筒形状に形成されている。覆い部材45は、その円筒型の中心線が対応するポケット35の中心線と略一致するようにして上部ホイール26の外周に取り付けられている。覆い部材45の内周面45aはボトル2を取り囲むに適した曲率で湾曲しているが、その曲率半径は右側のホイール26Rの覆い部材45の方が、左側のホイール26Lの覆い部材45のそれよりも僅かに大きく形成されている。そして、各覆い部材45の周方向の長さは検査位置Pbにて互いの端部が幾らか重複するように定められている。また、左右のホイール26上の覆い部材45の周速度が互いに等しくなるように、各回転軸27から覆い部材45の曲率中心までの距離は互いに等しく定められている。以上のように覆い部材45が設けられることにより、検査位置Pbで筒状体6を形成してボトル2の上部を取り囲むことができる。なお、各覆い部材45の内周面45aは、図1に示した発光器4の照明光を効率よく反射できるように白色の反射面として構成されている。
【0031】
検査位置Pbの上方には、ホイール装置21に保持された覆い部材45やボトル2と干渉しないように上部照明装置3が配置されている。また、検査位置Pbの下方にはホイール装置21に保持されたボトル2と干渉しないように下部照明装置7が設けられ、その下部照明装置7の下方にはさらに撮影装置8が設けられている。これらの照明装置3及び7はボトル2の中心線CLの方向(鉛直方向)に関して定位置に取り付けておけばよく、昇降させる必要はない。さらに、左側の上部ホイール26Lには、上述したネックホールド50が覆い部材45と1:1に対応付けて設けられている。ネックホールド50は覆い部材45を半径方向に貫くように設けられており、その後端部が連結板46に固定される。
上部ホイール26Lにネックホールド50を固定してもよい。
【0032】
図7はネックホールド50を図3の下方からみたときの平面図であり、図8は図7のVIII−VIII線に沿った断面図である。これらの図に示すように、ネックホールド50は概略矩形平板状に形成されており、その先端にはボトル2のネック部2dと噛み合う円弧状の凹部50aが形成されている。凹部50aの曲率はネック部2dのそれと略一致する。図8から明らかなように、凹部50aの下面側にはテーパ面50bが形成されている。テーパ面50bはボトル2のネック部2dから胴部2cに移行する部分に設けられたショルダ部2e(図1参照)とネックホールド50との干渉を避けつつ、ネックホールド50をネック部2dに対して深く噛み合わせるために設けられている。図7に示したように、ネックホールド50の後端部には、ボルト等の固定手段を利用してネックホールド50を連結板46又は上部ホイール26に固定するための取付穴50cが形成されている。ネックホールド50の幅W及び板厚tは適宜に設定してよい。なお、ネックホールド50は矩形平板状に限らず、図9に示すように先端部を中心角θの扇状に形成する等、適宜の変形が可能である。中心角θも適宜に選択することができる。
【0033】
以上のように構成された検査装置1においては、ホイール装置21の回転軸27が駆動装置22にて一定速度で回転駆動されることにより、搬送ホイール34のポケット35にボトル2が1本ずつ順次取り込まれる。ポケット35に取り込まれたボトル2のネック部2dにはネックホールド50が噛み合わされ、それによりボトル2の落下が確実に防がれる。
【0034】
検査位置Pbにおいては、ボトル2が覆い部材45によって囲まれつつ上部照明装置3及び下部照明装置7によって上下から照明される。このとき上部照明装置3の照明光が覆い部材45の内周面45aで反射されることによりボトル2が周方向に関してほぼ均等に上部照明装置3からの照明光で照明される。これらの照明光によるボトル底面の透過光画像及び反射光画像が撮影装置8にて撮影され、得られた画像に基づいてボトル2の底面に沈殿した異物の有無が判定される。ネックホールド50が上部照明装置3の照明光に対して高い透過性を有する高分子ポリエチレン系樹脂にて形成されているので、ネックホールド50が光路内に存在してもボトル2はほぼ均一に照明される。従って、第1カメラ11の撮影した画像において、ネックホールド50の存在に起因する光量低下が殆ど生じず、異物の有無を精度よく判定することができる。
【0035】
検査終了後のボトル2は検査位置Pbから搬出され、その際に筒状体6を形成していた一対の覆い部材45が互いに離間して筒状体6が分割される。従って、検査終了後のボトル2は筒状体6に邪魔されることなく検査位置Pbから離れてボトル取出位置Pcまで搬出される。ボトル取出位置Pcにおいてベルト41及びネックホールド50がボトル2から離間してハンドリング装置20によるボトル2の保持が解除される。ハンドリング装置20から解放されたボトル2は不図示の搬送手段により検査装置1から後工程へ送られる。
【0036】
本形態の検査装置1によれば次のような利点もある。一対の上部ホイール26L、26Rに取り付けられた一対の覆い部材45をホイール26L、26Rが最も接近する検査位置Pbにて組み合わせて筒状体6を形成し、しかも、一方の上部ホイール26Lと同軸上を一体回転する下部ホイール25Rを利用してボトル2を覆い部材45と同軸上に保持しつつ検査位置Pbに対して搬入及び搬出しているので、覆い部材45やボトル2を昇降させることなく筒状体6にてボトル2を取り囲み、また筒状体6と干渉することなくボトル2を筒状体6から取り出すことができる。従って、筒状体6やボトル2の昇降機構が不要で装置を簡素化でき、かつ動作がシンプルであることからボトル2の搬送速度の高速化にも容易に対応することができる。
【0037】
また、上記の形態では、ベルト41からボトル2に加わる押し付け力をベルト受け36にて制限しているので、ボトル2に意図せぬ過剰な力が加わるおそれがなく、ボトル2の変形を確実に防止できる。特にベルト受け36の先端にローラ37が設けられているので、ベルト受け36に対するベルト41の滑りが容易に生じるようになり、各ポケット35の間でベルト41による押し付け力が確実に均一化される利点がある。さらに、ローラ37にはフランジ38が設けられているので、ベルト41のずり落ちやせり上がりを防止できる。従って、ボトル2に内容物が充填されている状態でもベルト41により複数のポケット35のそれぞれにボトル2を確実に拘束することができる。なお、ローラ37が省略されてベルト受け36が図6に示したような単純なブロック形状に形成される場合にはベルト受け36の先端にフランジ37を一体に設けてもよい。但し、ベルト受け36を省略してベルト41とポケット35とでボトル2を挟むようにしてもよい。
【0038】
上記の形態では、回転体としての上部ホイール26の一方(左側の上部ホイール26L)と同軸上を一体回転できるように搬送ホイール34を設け、そのポケット35にボトル2を保持させることにより各ボトル2を対応する覆い部材45と略同軸に保持しつつ搬送しているため、検査位置Pbへの搬入及び搬出時において覆い部材45とボトル2とがずれるおそれがない利点がある。但し、検査位置Pbにて覆い部材45が組み合わされて筒状体6が形成される動作に同期して、ボトル2をホイール26の回転方向前方に向けて検査位置Pbに搬入し、検査位置Pbから覆い部材45が離れて筒状体6が分離される動作に同期してボトル2を検査位置Pbからホイール26の回転方向前方に向けて搬出できる限りは、例えば検査位置Pbにおける上部ホイール26の接線方向に沿ってボトル2を直線的に搬送するタイプの搬送装置としても構わない。そのような搬送装置を設ける場合には、上部ホイール26を検査位置Pbまで拡張したと仮定したときの検査位置Pbにおけるホイール26の接線方向速度とボトル2の搬送速度とを一致させることにより、上部ホイール26の回転に合わせてボトル2を回転方向前方に搬入及び搬出することができる。
この場合でも検査装置Pbにおいてネックホールド50をボトル2のネック部2dと噛み合わせてボトル2の落下を確実に防止することができる。
【0039】
上記の形態では覆い部材45を反射板として機能させているが、覆い部材45そのものを発光可能な照明装置として構成してもよい。覆い部材45は下部照明装置7からの照明光をボトル2に向けて反射させるものでもよい。対向位置に繰り出された一対の覆い部材45のそれぞれの端部は必ずしも重複させる必要はない。照明光の強度分布に問題がなければ、覆い部材45同士の間に多少の隙間が生じても構わない。覆い部材45は半円筒形に限らず、中心線CLの方向に延びる筒型を半割した形状であれば適宜に変更可能である。例えば覆い部材45は中心線CLと直交する断面上において多角形状の断面を有するものでもよい。
【0040】
左右の上部ホイール26L、26Rのそれぞれに設けられる覆い部材45の個数は一致している必要はない。例えば図10に示すように左右に異なる径のホイール26A、26Bを設けて互いに異なる個数の覆い部材45を取り付けてもよい。このような場合でも、各ホイール26A、26B上における覆い部材45の周方向の間隔(ピッチ)が互いに等しく、かつ覆い部材45の周速が左右で一致するように各ホイール26を駆動すれば一対の覆い部材45にて筒状体6を順次形成することができる。なお、図10の例ではホイール26の角速度が左右で異なることになるが、その調整はギア32、32間のギア比を変化させて行えばよい。
【0041】
上記の形態では、左右で覆い部材45の曲率を変えて一方の覆い部材45の内側に他方の覆い部材45の端部を重ね合わせているが、図11に示すように一方の覆い部材45と他方の覆い部材45とを周方向に互い違いにずらして組み合わせてもよい。
【0042】
本発明が適用される検査装置は図示の構成に限定されず、種々の形態にて実施してよい。例えば、上記の形態において一つのボトル2に対して複数のネックホールド50を設けてもよい。ネックホールドは必ずしも筒状体を貫くように設けられる必要はない。ネックホールドに代え、又は追加してボトル2の適宜の箇所を本発明に従って構成された保持部材にて保持してもよい。可視光による画像の検査が不要であれば、下部照明装置7、コールドミラー10及び第2カメラ12は省略してよい。照明手段、撮像手段及び検査対象物の位置関係は図示の例に限らず適宜に変更してよい。検査対象の容器はペットボトルに限らず、ガラスビンその他各種の容器を対象としてよい。本発明の検査装置は、容器に限らず各種の物品を検査対象としてよい。さらに、光路内に挿入される介在物は検査対象物の保持部材に限らない。光路の一部を遮るように挿入される各種の介在物を本発明に従って構成してよい。例えば検査対象物を搬送するための各種の部品、照明装置、撮像手段等に対する水滴の付着を防止するためのカバー等を本発明に従って構成すれば、それらの介在物が撮影光束に与える影響を抑えて、正確に検査を実施することができる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の実施例について説明する。図1に示した検査装置1を試作し、第1カメラ11にてボトル2の底面側の画像を撮影してネックホールド50が画像に与える影響を検討した。実施例においては、ネックホールドの形状及び寸法を変えてそれらの影響も検討した。また、比較例として、ネックホールドの材質を変更したときの画像も検討した。
各実施例及び比較例において得られた画像を図12〜図18に示す。なお、いずれの例においても、上部照明装置3の照明光は850nmにピークを有する近赤外光とし、ボトル2は、容量500mlのPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)製とした。ボトル2の内部には上部照明装置3の照明光に対して透過性を有する飲料を充填した。照明光は、LED(約100個)を光源とし、総消費電力12Wで照射した。第1カメラ11が撮影した画像の輝度を225階調に等間隔で区分し、ボトル2の底部の最も明るい部分の階調を255として画像中の輝度分布を表現した。各例におけるネックホールドの形状、幅W又は中心角θ(図7又は図9参照)、厚さt(図8参照)、原料樹脂、顔料の有無、及び図面(画像)の対応関係は下表の通りである。なお、原料樹脂に関してUHMW−PEは超高分子量ポリエチレン樹脂であり、顔料のないものとしては作新工業株式会社が品番NL−Wを付して提供する樹脂を、顔料入りのものとしては同社が品番NL−ASBを付して提供する樹脂をそれぞれ用いた。POMはポリアセタール樹脂の略である。各例において、ネックホールドは画像中の右下にその影が現われるべきように配置されている。
【0044】
【表1】
【0045】
図12及び図13から明らかなように、顔料を含まない超高分子量ポリエチレン樹脂製のネックホールドを使用した実施例1〜5においては、幅W又は中心角θ、及び厚さtを問わず、画像中にネックホールドの影が現われない。一方、図14〜図18に示した比較例1〜8においては、いずれも画像の右下にネックホールドの影が暗部として明らかに現われている。
【符号の説明】
【0046】
1 検査装置
2 ボトル(容器、検査対象物)
2a ボトルの底面
2b ボトルのキャップ
2c ボトルの胴部
2d ボトルのネック部
3 上部照明装置(照明手段)
6 筒状体
11 第1カメラ(撮像手段)
20 ハンドリング装置
26L、26R 上部ホイール(回転体)
34 搬送ホイール(搬送ホイール)
35 ポケット
41 ベルト
50 ネックホールド(保持部材、介在物)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を照明手段からの近赤外光を含む照明光で照明しつつ該検査対象物の近赤外波長域の画像を撮像手段にて撮影し、得られた画像に基づいて検査対象物を検査する検査装置において、前記照明手段から前記検査対象物を経て前記撮像手段に至る光路内に該光路を部分的に遮るように挿入される介在物を備え、前記介在物が近赤外光の波長域に対して透過性を有する材料としての、顔料を含まない高分子ポリエチレン系樹脂にて形成され、前記撮像手段が近赤外波長域を含む750〜950nmの波長域の画像を撮影するように設けられていることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
粘度法ASTMD2857で試験したときの前記高分子ポリエチレン系樹脂の分子量が100〜600万の範囲である請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記照明手段の照明光が850nmにピークを有する近赤外光である請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記介在物が前記照明手段から前記検査対象物に至る光路内に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記介在物として、前記検査対象物を所定の姿勢に保持する保持部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記検査対象物がボトル型の容器であり、前記照明手段は前記容器を口元側から照明するように設けられ、前記撮像手段は前記容器を底面側から撮影するように設けられ、前記保持部材は前記容器に対して外周側から接触するように設けられていることを特徴とする請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記容器がポリエチレンテレフタレート樹脂製であり、該容器の内部には前記照明光に対して透過性を有する飲料が充填されていることを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【請求項1】
検査対象物を照明手段からの近赤外光を含む照明光で照明しつつ該検査対象物の近赤外波長域の画像を撮像手段にて撮影し、得られた画像に基づいて検査対象物を検査する検査装置において、前記照明手段から前記検査対象物を経て前記撮像手段に至る光路内に該光路を部分的に遮るように挿入される介在物を備え、前記介在物が近赤外光の波長域に対して透過性を有する材料としての、顔料を含まない高分子ポリエチレン系樹脂にて形成され、前記撮像手段が近赤外波長域を含む750〜950nmの波長域の画像を撮影するように設けられていることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
粘度法ASTMD2857で試験したときの前記高分子ポリエチレン系樹脂の分子量が100〜600万の範囲である請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記照明手段の照明光が850nmにピークを有する近赤外光である請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記介在物が前記照明手段から前記検査対象物に至る光路内に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記介在物として、前記検査対象物を所定の姿勢に保持する保持部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記検査対象物がボトル型の容器であり、前記照明手段は前記容器を口元側から照明するように設けられ、前記撮像手段は前記容器を底面側から撮影するように設けられ、前記保持部材は前記容器に対して外周側から接触するように設けられていることを特徴とする請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記容器がポリエチレンテレフタレート樹脂製であり、該容器の内部には前記照明光に対して透過性を有する飲料が充填されていることを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−33641(P2011−33641A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258906(P2010−258906)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【分割の表示】特願2005−104783(P2005−104783)の分割
【原出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【分割の表示】特願2005−104783(P2005−104783)の分割
【原出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】
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