説明

検査装置

【課題】 従来の光の散乱を用いた異物検出と、反射結像型電子顕微鏡による異物検出とでは、全く原理が異なることから、得られた異物検査データを直接比較することはできず、総合的な異物管理ができない課題があった。また、同一のウェハを、散乱光を用いた検査装置と反射結像型電子顕微鏡との別々の装置で検査を実施すると、二つの装置間でのウェハ搬送中に新たな異物が付着する危険性を除外できず、厳密な検査データの比較ができないという課題があった。
【解決手段】 反射結像型電子顕微鏡の対物レンズの周囲に、レーザー光導入システムと、散乱光検出器を配置し、同一の装置で散乱光による異物検出と、反射結像型電子顕微鏡による異物検出とを実施できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Siウェハ上の異物の有無を検査する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリやCPUなどの半導体デバイス製造では、鏡面状に研磨されたSiウェハ上に微細な回路を形成する。Siウェハ上の微細回路の寸法は微細化が進んで、典型的な寸法は将来20ナノメートル以下になるとされており、この様な微細寸法の回路パターンを形成する技術の研究開発が精力的に進められている。
【0003】
このような微細回路の基板となるSiウェハ上に、微細回路の最小寸法程度の異物が存在すると、回路パターンの形成過程において欠陥が生じ、製造されたデバイスが正常に動作しなくなる。従って、例えば20ナノメートルの寸法の微細回路の製造工程では、少なくとも20ナノメートルの大きさの極微小異物が無いことを事前に確認することが必要である。
【0004】
これまで、Si基板上の極微小異物の有無の検査には、レーザー光をウェハ表面に照射して異物で散乱された光を検知する技術(光学散乱式検査技術)が用いられてきた。しかし、散乱光の強度は、異物の大きさの6乗に比例して減少するため、微細回路の寸法が小さくなり検出が要求される異物の大きさも小さくなると、急速に散乱強度が減少し、レーザー光の短波長化や検出器の高感度化にもかかわらず、20ナノメートル以下の大きさの異物を光の散乱で検出することは極めて困難となっている。
【0005】
このような極微細異物を検出できる技術としては、走査電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などがある。これらの顕微鏡は極めて高い空間分解能を有しており、20ナノメートルのサイズの異物の像を得ることは容易である。しかしながら、これらの顕微鏡の像を得るために必要な時間は、ミクロンサイズの小さい視野には実用的な時間であるが、例えば、直径300ミリのSiウェハ表面全てを、十分な分解能(10ナノメートルを仮定)で検査しようとすると、極めて長い時間となり、試算では、原子間力顕微鏡では約20年、走査電子顕微鏡では2ヶ月の検査時間が必要となる。
【0006】
一方、近年、検査速度の高速化を図った新たな電子線応用検査方法が、特許文献1や特許文献2に開示されている。これらの検査技術は、照射する電子線の加速電圧に近い負電位をウェハに与えることで、ウェハ上の検査視野全体に電子線を照射し、ウェハ表面近傍で電子を反射させ、反射した電子を電子レンズで結像し検査用の電子像を得る。但し、反射電子と言っても、特許文献1に開示された技術は、照射電子線の加速電圧より負の電位をウェハに与え、照射電子線がウェハに衝突する前に、負の電位によって反射された電子(ミラー電子)を結像する、ミラー電子顕微鏡(MEM:Mirror Electron Microscope)を応用した検査技術であり、一方、特許文献2に開示された技術は、照射電子線の加速電圧に対し、例えば数V程度の正の電位をウェハに与え、照射電子線がウェハ表面に極めて低エネルギーで衝突し反射した電子を結像する、低エネルギー反射電子顕微鏡(LEEM:Low Energy Electron Microscope)を応用した検査技術である。
【0007】
本明細書中で「反射電子」と記述する場合には、ミラー電子と低エネルギー反射電子の両者を含むものとする。また、ミラー電子あるいは低エネルギー反射電子を結像する電子顕微鏡を、以下では一括して反射結像型電子顕微鏡と記述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−108864号公報
【特許文献2】特開2005−228743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の反射結像型電子顕微鏡を用いた検査は、走査電子顕微鏡を用いた検査装置に比べて高速であるが、従来の光学散乱方式の異物検査装置との比較では、10倍以上時間がかかると試算される。光学散乱式検査装置を反射結像型電子顕微鏡で完全に入れ替えると、極微細の異物の検出はできるものの製造ラインの生産性を著しく劣化させるため、製造ラインでは、全数検査の光学散乱式検査装置と、抜き取り検査の反射結像型電子顕微鏡検査装置とを併用することになる。
【0010】
しかしながら、従来の光学散乱式検査装置の異物検出と、反射結像型電子顕微鏡による異物検出とでは、全く原理が異なることから、得られた異物検査データを直接比較することはできず、総合的な異物管理ができない課題があった。また、同一のウェハを光学散乱式検査装置と反射結像型電子顕微鏡との別々の装置で検査を実施するとしても、二つの装置間でのウェハ搬送中に新たな異物が付着する危険性を除外できず、厳密な検査データの比較ができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、反射結像型電子顕微鏡の対物レンズの周囲に、レーザー光導入システムと、散乱光検出器を配置し、同一の装置で散乱光による異物検出と、反射結像型電子顕微鏡による異物検出とを実施できるようにした。
【0012】
具体的には、本発明は、電子を略平行電子ビームとして、試料に照射し、試料表面近傍で反射した電子ビームを試料表面上に形成した電界によって引き上げ、電子光学的手段によって電子像を得る、反射結像型電子顕微鏡を用いた検査装置において、反射結像型電子顕微鏡の対物レンズの周囲に、可視から紫外線領域の範囲の光を発生させる光源と、光源と対向する位置に、光源から発生し前記試料表面で反射する光を受光する受光器と、光源と対向しない位置に、光源から発生し試料表面で散乱した光を検出する1つまたは複数の検出器を備えたことを特徴とする検査装置である。
【0013】
また、光源はレーザー光源であり、そのレーザー光源は対物レンズの側方の空間に、試料の検査領域に向けて配置することを特徴とする検査装置である。
【0014】
また、レーザー光源から発生するレーザー光が出射口で発生する散乱光が検出器に検出されることを防ぐための絶縁体材料の中空筒を出射口に備えたことを特徴とする検査装置である。
【0015】
また、検出器が試料の検査領域を中心に複数放射状に配置されていることを特徴とする検査装置ある。
【0016】
また、対物レンズの周囲を、空間を介して壁で囲い、壁の上部に前記検出器を配置し、壁は内側が反射面となっている曲面反射鏡であり、検出器は環状検出器であることを特徴とする検査装置である。
【0017】
また、受光器は受光器に設けられた開口から入射させた反射光を、その内側で散乱させる容器であり、その内部に光学レンズを備えていることを特徴とする検査装置である。
【0018】
または、容器は、途中で曲げた構造であり、その内部の曲げ部に反射鏡を備え、容器の内部に反射光が通過できる開口を備えていることを特徴とする、検査装置。
【0019】
さらに、電子を略平行電子ビームとして、試料に照射し、該試料表面近傍で反射した前記電子ビームを前記試料表面上に形成した電界によって引き上げ、電子光学的手段によって電子像を得る、反射結像型電子顕微鏡を用いた検査装置において、電子像は電気信号に変換され、異物判定部により異物情報を記憶するとともに、反射結像型電子顕微鏡の対物レンズの周囲に、可視から紫外線領域の範囲の光を発生させる光源と、光源と対向する位置に、光源から発生し試料表面で反射する光を受光する受光器と、光源と対向しない位置に、光源から発生し試料表面で散乱した光を検出する1つまたは複数の検出器を備えた光学式異物検査ユニットを有し、検出器により異物からの信号が検出されると、光学式異物検査ユニット制御部に記憶されることにより、異物判定部に記憶された異物情報と、光学式異物検査ユニット制御部に記憶された異物情報を直接比較することを特徴とする検査装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、従来の高速な光学散乱式による検査結果と、高感度な反射結像型電子顕微鏡による検査結果とを直接比較することができ、半導体デバイスの製造ラインの生産性を落とすことなく、製造ラインにおける極微細異物管理を実施することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の装置構成を説明する図である。
【図2A】本発明の第1の実施例を説明する図である。
【図2B】図2AのAA’断面を説明する図である。
【図2C】図2AのBB’断面を説明する図である。
【図3】本発明の第1の実施例を説明する図である。
【図4】本発明の第2の実施例を説明する図である。
【図5】本発明の第3の実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0022】
本発明である反射結像型電子顕微鏡を用いた異物検査装置全体について、図1を用いて説明する。但し、図1には真空排気用のポンプやその制御装置、排気系配管、被検査ウェハの搬送系などは略されている。また、電子線の軌道は、説明のため実際の軌道より誇張されている。
【0023】
まず、電子線照射に係る部分について説明する。電子銃101から放出された照射電子線100aは、コンデンサレンズ102によって収束されながら、セパレータ103により偏向されて、試料である被検査ウェハ104に略平行束の電子線となって照射される。
【0024】
電子銃101には、光源径が小さく大きな電流値が得られる、Zr/O/W型のショットキー電子源が用いられるが、より高い電流値が得られるLaB6電子源等、他の電子源を用いてもよい。また、電子銃101は、電子源近傍に磁界レンズを配する磁界重畳型電子銃であってもよい。電子銃101への引出電圧、引き出された電子線の加速電圧、および電子源フィラメントの加熱電流などの、電子銃の運転に必要な電圧と電流は電子銃制御装置105により供給、制御されている。
【0025】
コンデンサレンズ102は、図では1つに描かれているがより平行度の高い照射電子線が得られる様、複数のレンズを組み合わせたシステムであっても良い。コンデンサレンズ102は、対物レンズ107の後焦点面に電子線が集束するように調整される。対物レンズ107は、複数の電極からなる静電レンズか、または、磁界レンズである。
【0026】
セパレータ103は、被検査ウェハ104に向かう照射電子線と、被検査ウェハ104から戻ってくる反射電子(ミラー電子、或いは低エネルギー反射電子)とを分離するために設置される。本実施例では、E×B偏向器を利用したセパレータを用いている。E×B偏向器は、上方から来た電子線を偏向し、下方から来た電子線を直進させるように設定できる。この場合、図のように照射電子線を供給する電子光学鏡筒は傾斜され、反射された電子を結像する電子光学鏡筒は直立する。セパレータとして、磁界セクターを使用することも可能である。電子線の光軸に垂直な方向に磁界を設置し、照射電子線を被検査ウェハ104の方向へ偏向し、被検査ウェハ104からの電子は照射電子線の来る方向とは異なる方向へ偏向する。照射電子線鏡筒の光軸と電子線結像鏡筒の光軸とは、対物レンズの光軸を中心に左右対称の配置の場合、被検査ウエハ104からの電子は照射電子線の来る方向とは正反対の方向へ偏向する。
【0027】
セパレータによって照射電子線100aが偏向されるとき、セパレータ103により収差が発生する。この収差を補正する必要がある場合は、セパレータ103がE×B偏向器の場合では、収差補正用のE×B偏向器106が配置される。また、セパレータ103が磁界セクターの場合は、補助的なコイルを設けて補正される。
【0028】
セパレータ103によって偏向された照射電子線100aは、対物レンズ107により、被検査ウェハ104表面に対し垂直に入射する平行束の電子線に形成される。前述のように、対物レンズ107の後焦点に電子線が集束されるように、照射系コンデンサレンズ102が調整されるので、平行性の高い電子線を被検査ウェハ104に対して照射できる。照射電子線100aが照射する被検査ウェハ104上の領域は、例えば1000μm等といった面積を有する。
【0029】
被検査ウェハ104は移動ステージ108の上に絶縁部材109を介して戴置されている。移動ステージ108は、被検査ウェハ104の中心を回転中心とした回転運動、および、ウェハの半径方向への直進運動とその垂直方向の直進運動、上下方向の直進運動を行うことができる。移動ステージ108が回転しながら被検査ウェハ104の半径方向に移動することにより、被検査ウェハ104の全面を隈なく検査する。移動ステージ108の運動は、移動ステージ制御装置110によって制御されている。
【0030】
電子線の加速電圧とほぼ等しい負電位が、被検査ウェハ104表面に印加されるように、高圧電源111が装備されている。照射電子線100aが、この負電位によって被検査ウェハ104の手前で減速され、表面電位の設定に依存して被検査ウェハ104に衝突する前、または、低エネルギーでの衝突によって、反対方向に反射されるように、高圧電源111を調整する。ウェハで反射された電子は、反射電子100bとなる。
【0031】
反射電子100bは対物レンズ107により第1の像を形成する。セパレータ103は本実施例ではE×B偏向器であるので、下方から進行した電子線に対しては偏向作用を持たないように制御され、反射電子100bは偏向を受けずに進行し、第1の像は中間電子レンズ112、投影電子レンズ113によって順次結像される。これらの中間レンズ112及び投影レンズ113は、静電または磁界レンズである。最終的な電子像は画像検出部114に拡大投影される。第1の像は、セパレータ103の中心に形成されることが望ましい。これにより、セパレータ103の電磁界による像への収差の影響を最小限にできるからである。また、図1では投影電子レンズ113は1つの電子レンズとして描かれているが、高い倍率の拡大や像歪の補正などのために複数の電子レンズで構成される場合もある。
【0032】
画像検出部114は反射電子100bの像を電気信号に変換し異物判定部115に送る。また、これまで述べてきた様々な電子レンズやセパレータ103などの電子光学系の制御は、電子光学系制御装置116が行っている。
【0033】
次に、画像検出部114について説明する。画像検出には、反射電子像を光学像に変換するための蛍光板114aと光学画像検出装置114bとを光学像伝達系114cにより光学結合させる。光学像伝達系114cとして、光ファイバー束が用いられている。光ファイバー束は、細い光ファイバーを束ねたもので、光学像を効率よく伝達できる。また、十分な光量をもった蛍光像が得られる場合は光学伝達効率を低くしても良く、上記光ファイバー束の代わりに光学レンズを用い、光学レンズによって蛍光板114a上の光学像を光学画像検出素子114bの受光面上に結像させる場合もある。また、光学像伝達系に増幅装置を挿入し、光学画像検出装置114bに十分な光量の光学像を伝達することもできる。光学画像検出装置114bは、その受光面上に結像された光学像を電気的な画像信号に変換して出力する。光学画像検出装置114bには、時間遅延積分(TDI)型のCCDを用いたTDIセンサが用いられている。電子光学系の調整などで移動ステージ108を静止して画像を得る際は、光学画像検出装置は、通常のCCDカメラ撮像モードで動作させる。
【0034】
画像検出部114としては、上記のように、電子像を一度光学像に返還してからその光学像を画像信号として出力する場合の他、電子線に対して感度のある検出器、例えばマイクロチャネルプレートなどを用いて、光学像への変換を経ずに直接画像信号として出力する装置を用いることもできる。
【0035】
異物判定部115は、画像検出部114からの画像データから異物の有無を判定し、異物があった場合、画像データ、及びステージ制御装置110からのステージ位置に関するデータを元に異物のウェハ上の座標を算出する。また、異物画像の強度プロファイルから異物の大きさを推定し、異物の位置、大きさを記憶する。
【0036】
装置各部の動作条件は、検査装置制御部117から入出力される。検査装置制御部117には、予め電子線発生時の加速電圧、電子線偏向幅・偏向速度、ステージ移動速度、画像検出素子からの画像信号取り込みタイミング等々の諸条件が入力されており、各要素の制御装置を総括的に制御し、ユーザーとのインターフェースとなる。検査装置制御部117は、役割を分担し通信回線で結合された複数の計算機から構成される場合もある。また、モニタ付入出力装置118が設置されている。
【0037】
本発明の反射結像型電子顕微鏡では、光学式異物検査ユニット119が対物レンズ107の周囲に対物レンズを囲むように配されている。光学式異物検査ユニット119は、光学式異物検査ユニット制御装置120によって制御されており、異物からの信号が検出された場合は、散乱光強度の値と共に、移動ステージ制御装置110からのステージ座標の情報と組み合わせて、光学式異物検査ユニット制御装置120内に保存される。光学式異物検査ユニット119の動作条件は、光学式異物検査ユニット制御装置120に記憶された条件、または、モニタ付入出力装置118からのユーザーの入力を元に検査前に設定される。
【0038】
光学式異物検査ユニット119は、ウェハ表面照射用のレーザー光源119a、1つまたは複数の散乱光検出器119b、反射光受光器119cから構成され、それらの構成例を図2に示した。これら各要素の配置を下方(ウェハ104側)からみた様子を図2Aに示す。また図2AのAA’断面を簡易的に図2Bに、BB’断面を簡易的に図2Cに、それぞれ示している。但し、本図は各要素の配置を簡易的に示しており、実際の大きさや形状、設置距離を反映した図ではない。
【0039】
レーザー光源119aは、対物レンズ107の側方の空間に設置され、斜め方向からウェハ104上の検査領域に向けてレーザー光121を発生させる。本実施例では、図2Bに示すように対物レンズ107の側方から、水平方向斜め下方向に向けて配置する。レーザー光源119aは、レーザー光121を効率よく照射できるように集光光学系を備えており、本発明の反射結像型電子顕微鏡の観察視野の内側を照射する。また、レーザー光出射口から対物レンズ107近傍までは中空の筒133内にレーザー光を通すことにより、レーザー光出射口で発生する散乱光が散乱光検出器119bに検出されることをできる限り防ぐ構造となっている。レーザー光121が通る中空の筒133は、対物レンズ107やウェハ104に接近するため、セラミックスなど絶縁体であることが望ましい。
【0040】
ウェハ104上のレーザー光照射領域内に異物がある場合、レーザー光121は四方に散乱される。この散乱光は対物レンズ107の周囲に配置する散乱光検出器119bで検出される。散乱光の強度は異物の大きさが小さくなると極度に減少するので、散乱光検出器119bは光電子増倍管やマイクロチャネルプレートなどの高感度な検出器を用いる。それぞれの散乱光検出器119bは、受光面がウェハ104の検査領域の方向を向いて設置されている。本実施例では総計6個の散乱光検出器が被検査ウエハ104のレーザー光照射位置に受光面122を向けて対象に配置されているが、散乱光検出の効率と散乱光検出器119bの大きさとを考慮し、その数を増減してもよい。散乱光検出器119bの受光面122は、ウェハ表面異物からの散乱光のみを受光し、その他の散乱光が入りにくくするために、散乱光検出器119bの開口部より奥まったところに配置している。
【0041】
微弱な散乱光を検出するために、上述の如く高感度な検出器119bが用いられているため、反射結像型電子顕微鏡内のウェハ104が収納される真空チャンバ内では、散乱光検出器119bが感度を有する波長の光の中で異物に散乱されて発生する以外の光の発生を、ほぼ完全に防ぐ必要がある。真空外から内部を覗くための窓は外光が入らない様に塞ぎ、移動ステージ制御に必要な位置センサなどからの発光も停止または遮光する。特に、レーザー光121がウェハ104の表面で反射された光は、強度も強く真空チャンバ内で散乱されない様にしなければならない。そのため、本発明では光学式異物検査ユニット119に反射光受光器119cがレーザー光源119aに対向するようにその開口がウェハ104の検査領域の方向を向いて設置されている。
【0042】
図3に反射光受光器119cの構成例を示す。反射光受光器119cは、内部に空間を持つ容器形状であり、ウェハで反射されたレーザー光を開口部から内部に受光させ、その内部(内壁)で散乱させ、その散乱光が外部にできる限り漏れない様に構成されている。反射レーザー光123は、筒状の遮光ガイド124を通って散乱ボックス125の中に導入される。遮光ガイド124と散乱ボックス125の内側(内壁)は、光の反射率を低下する様に表面を粗くし、また必要であれば光を吸収する材料で覆われる。遮光ガイド124および散乱ボックス125内にレーザー光を導入する遮光ガイド124の開口の径は、反射レーザー光123の方向の変動を考慮して、開口の内縁がレーザー光123にかからない範囲で、なるべく小さい径とする。散乱ボックス125内には凹レンズ126が設置され、レーザー光が散乱ボックス125内に広がって照射される。凹レンズ126の代わりに焦点距離の短い凸レンズでもよい。焦点距離はレンズ位置と散乱ボックス終端までの距離より短い必要がある。この構成により、ウェハ表面で反射されたレーザー光123は、遮光ガイド124を介して散乱ボックス125内で散乱され、その散乱光が外部に戻る開口は小さいため、異物検出への影響を抑えることができる。
【0043】
本実施例によれば、高感度で異物を検出できる反射結像型電子顕微鏡を用いた異物検査動作と、感度は落ちるものの、高速で異物検査を実施できる光散乱方式による異物検査動作とを、同一の装置で実施することができる。
【0044】
この結果、反射結像型電子顕微鏡の異物判定部115に記憶された異物情報と、光学式異物検査ユニット119の光学異物検査ユニット制御部120に記憶された異物情報を直接比較することが可能になり、総合的な異物管理を実現することができる。
【実施例2】
【0045】
図4は、光学散乱方式の異物検出感度を向上させることを目的に照射レーザーの光量を増したため、反射レーザー光123の強度が強く、図3の容器形状の反射光受光器119cの散乱ボックス125内からの散乱光が反射光受光器119cの開口部から外部に戻る光量をさらに抑える必要がある場合の、反射光受光器119cの構成例を示す。
【0046】
本構成例では、反射光受光器119cを内部に空間を持つL字容器形状とし、凹レンズではなく第1の開口127を通った反射レーザー光123を、曲面を有する反射鏡で方向を変えるとともに、さらに奥の第2の開口129の位置に集光させ、第2の開口129の位置より後方に反射レーザー光123を導入して散乱させる。反射鏡128により第2の開口129の位置に集光させることにより、第2の開口129の開口径を小さくすることができ、散乱光が外部に漏れる量を著しく低減できる。また、反射レーザー光123の進行方向も変えられているので、この反射光受光器119cの開口部から漏れる散乱光をさらに低減できる。
【0047】
本実施例を用いれば、光量の大きいレーザー光源を使用しても、ウェハ表面の反射による光を漏らさないようにできるため、ウェハ表面異物からの散乱光を高感度で検出することができる。
【0048】
なお、本実施例では反射受光器119cの形状をL字形状としたが、散乱光が外部に戻る光量を抑える形状であれば、S字やT字、U字等、他の形状としても良い。
【実施例3】
【0049】
図5は、本発明における光学式異物検査ユニット119の、実施例1、実施例2と異なる実施例を示す。図は対物レンズ107の中心軸を通る面で切った断面を示している。本実施例では、図2に示した様に散乱光検出器119bを放射状に配置するのではなく、対物レンズ107の側方周囲を囲うように、内側(内壁)が反射鏡となっている曲面集光鏡130を配置する。また、対物レンズ107の外側は、光が反射されるように鏡面となっている。
【0050】
曲面集光鏡130には、レーザー光源119aからのレーザー光121が遮られる事無くウェハ104表面に照射され、また、ウェハ104による反射光が遮られる事なく反射光受光器119cに入射するように、光路に当たる部分には開口が設けられている。
【0051】
レーザー光121がウェハ104に照射されると、異物によって生じた散乱光131は、対物レンズ107の外側(外壁)や、曲面集光鏡130の内側で反射され、環状検出器132に導かれ、散乱強度を測定する。環状検出器132はマイクロチャネルプレートなどの高感度光検出器である。あるいは、光ファイバーの束で構成し、束の終端を光電子増倍管に集めて構成してもよい。
【0052】
本実施例によれば、環状検出器132により対物レンズ107の周囲全てが検出器になるので、異物による散乱光を逃がすことなく、効率よく集めることができ、より高感度の異物検査を実施できる。
【符号の説明】
【0053】
100a…照射電子線、100b…反射電子線、101…電子銃、102…コンデンサレンズ、103…セパレータ、104…被検査ウェハ、105…電子銃制御装置、106…E×B偏向器、107…対物レンズ、108…移動ステージ、109…絶縁部材、110…移動ステージ制御装置、111…高圧電源、112…中間レンズ、113…投影レンズ、114…画像検出部、114a…蛍光板、114b…光学画像検出装置、114c…光学像伝達系、115…異物判定部、116…電子光学系制御装置、117…検査装置制御部、118…モニタ付入出力装置、119…光学式異物検査ユニット、119a…レーザー光源、119b…散乱光検出器、119c…反射光受光器、120…光学式異物検査ユニット制御部、121…レーザー光、122…受光面、123…反射レーザー光、124…遮光ガイド、125…散乱ボックス、126…凹レンズ、127…第1の開口、128…反射鏡、129…第2の開口、130…曲面集光鏡、131…散乱光、132…環状検出器、133…中空の筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を略平行電子ビームとして、試料に照射し、該試料表面近傍で反射した前記電子ビームを前記試料表面上に形成した電界によって引き上げ、電子光学的手段によって電子像を得る、反射結像型電子顕微鏡を用いた検査装置において、
前記反射結像型電子顕微鏡の対物レンズの周囲に、可視から紫外線領域の範囲の光を発生させる光源と、該光源と対向する位置に、該光源から発生し前記試料表面で反射する光を受光する受光器と、前記光源と対向しない位置に、該光源から発生し前記試料表面で散乱した光を検出する1つまたは複数の検出器を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、前記光源がレーザー光源であることを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置において、前記レーザー光源は前記対物レンズの側方の空間に、前記試料の検査領域に向けて配置することを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の検査装置において、前記レーザー光源から発生するレーザー光が出射口で発生する散乱光が前記検出器に検出されることを防ぐための絶縁体材料の中空筒を前記出射口に備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の検査装置において、前記検出器が前記試料の検査領域を中心に複数放射状に配置されていることを特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項1に記載の検査装置において、前記対物レンズの周囲を、空間を介して壁で囲い、該壁の上部に前記検出器を配置したことを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検査装置において、前記壁は内側が反射面となっている曲面反射鏡であり、前記検出器は環状検出器であることを特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項1に記載の検査装置において、前記受光器は、該受光器に設けられた開口から入射させた反射光を、その内壁で散乱させる容器形状であることを特徴とする検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の検査装置において、前記容器は、その内部に光学レンズを備えていることを特徴とする検査装置。
【請求項10】
請求項8に記載の検査装置において、前記容器は、曲げた形状であり、曲げ部の内部に反射鏡を備えていることを特徴とする検査装置。
【請求項11】
請求項10に記載の検査装置において、前記容器の内部に前記反射光が通過できる開口を備えていることを特徴とする検査装置。
【請求項12】
電子を略平行電子ビームとして、試料に照射し、該試料表面近傍で反射した前記電子ビームを前記試料表面上に形成した電界によって引き上げ、電子光学的手段によって電子像を得る、反射結像型電子顕微鏡において、
前記電子像は電気信号に変換され、異物判定部により異物情報を記憶するとともに、
前記反射結像型電子顕微鏡の対物レンズの周囲に、可視から紫外線領域の範囲の光を発生させる光源と、該光源と対向する位置に、該光源から発生し前記試料表面で反射する光を受光する受光器と、前記光源と対向しない位置に、前記光源から発生し前記試料表面で散乱した光を検出する1つまたは複数の検出器を備えた光学式異物検査ユニットを有し、
前記検出器により異物からの信号が検出されると、光学式異物検査ユニット制御部に記憶し、
前記異物判定部に記憶された異物情報と、前記光学式異物検査ユニット制御部に記憶された異物情報とを直接比較することを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−64675(P2013−64675A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204073(P2011−204073)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】