検査装置
検査装置1は、搬送路上を搬送される紙幣に紫外線を照射する光源12Aと、紙幣に赤外線を照射する光源12Bと、紙幣から発生する光を受光するフォトセンサ17と、光源12A,12Bを高速で個々に切り換えて点灯させるように制御する光源制御処理部20と、識別処理部22とを有している。識別処理部22は、まず光源12A,12Bを順番に点灯させて紙幣に光を照射した時に略同一時間内に受光して得られるフォトセンサ17の2つの検出信号(出力信号)を各々入力し、フォトセンサ17の出力比を算出する。そして、このフォトセンサ17の出力比の算出データを、予めメモリ部21に記憶された基準データと比較・照合することにより、紙幣3の真偽判定及び金種判定を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路上を通る紙幣及び伝票類等の真偽や種類の判別等の検査を行う検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙幣等の紙葉類の検査を行う検査装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、紙葉類の表面反射を測定するフォトセンサと、紙葉類に対して光を照射する照明部とを備え、紙葉類の金種や真偽を識別するものが知られている。
【特許文献1】特開2002−74450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年では、紙幣や証券等の偽造対策として、2種類以上のセキュリティ用の特徴パターンを紙幣等に設けることがある。この場合には、そのような特徴パターンを正確に見分けて、紙幣等の金種判別や真偽判別を高精度に行う必要がある。
【0004】
本発明の目的は、対象物の認識精度を向上させることができる検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、搬送路上を通る対象物を検査する検査装置であって、複数の波長帯域の光を対象物に照射する照明部と、対象物から発生する光を受光する少なくとも1つの受光検知素子と、照明部により対象物に複数の波長帯域の光を照射した時に対象物から発生する光を受光検知素子で略同一時間内に受光することによって得られる複数の検出信号を合成し、この合成データを予め設定された基準データと比較・照合することにより、対象物を識別する識別処理部とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
このような検査装置において、搬送路上を通る対象物が所定位置に到達すると、照明部により複数の波長帯域の光が対象物に照射され、その時に対象物から発生する光が受光検知素子で受光される。対象物から発生する光は、照明部により照射される複数の波長帯域の光ごとに異なるものである。このため、受光検知素子の検出信号としては、複数の波長帯域の光に応じた複数の検出信号が得られる。これらの複数の検出信号は、複数の波長帯域の光を対象物に照射した時に対象物から発生する光を略同一時間内に受光して得たものであるため、対象物の任意の同一領域についての検出信号である。そして、識別処理部によって、そのような複数の検出信号から合成データが生成され、この合成データを基準データと比較・照合することで対象物の識別処理が行われる。このような手法を採用することにより、例えば照明部により照射された光を受けると、波長帯域の異なる複数の光成分を生じさせる複数種類の特徴パターンが対象物に設けられている場合でも、これらの特徴パターンを正確に判定することができる。これにより、対象物の認識精度が向上する。
【0007】
好ましくは、識別処理部は、合成データとして、照明部により対象物に複数の波長帯域の光を照射した時に対象物から発生する光を受光検知素子で略同一時間内に受光することによって得られる複数の検出値の比を求める。対象物が搬送路上を通るときに、対象物の上下動(搬送バタツキ)が発生すると、照明部により対象物に光が照射された時の対象物の照明位置が高さ方向にずれるため、受光検知素子の検出値が変動する。しかし、対象物の搬送バタツキがあっても、対象物から発生する光を受光検知素子で略同一時間内に受光したときには、複数の波長帯域の光に対応する複数の検出信号は、対象物が実質的に同じ搬送高さ位置にある状態での検出信号となる。他方、対象物から発生する光を受光検知素子で略同一時間内に受光することによって得られた複数の検出値の比は、対象物の搬送高さ位置に拘らず、常にほぼ一定となる。従って、その点に着目し、合成データとして複数の検出値の比を用いることにより、対象物の搬送バタツキが生じても、受光検知素子の検出値の変動による影響を受けることなく、対象物の識別を行うことができる。これにより、対象物の認識精度が更に向上する。
【0008】
また、好ましくは、照明部は、波長帯域の異なる光を照射する複数の光源と、各光源を個々に切り換えて点灯させるように制御する点灯制御部とを有する。このような構成では、複数の光源を高速で切り換えて点灯させ、その時に対象物から発生する光を順番に1つの受光検知素子で受光することにより、対象物に複数の波長帯域の光を照射した時に対象物から発生する光を確実に略同一時間内に受光することができる。この場合には、使用する受光検知素子が1つで済むので、部品コストの削減を図ることができる。
【0009】
また、照明部は、波長帯域の異なる光を照射する複数の光源を有し、受光検知素子は、各光源より対象物に光を照射した時に対象物から発生する光を各光源に対応して別々に受光するように複数有していても良い。このような構成では、例えば搬送路上を通る対象物が所定位置に達したときに、全ての光源を常時点灯させる。そして、その時に対象物から発生する各光源に対応する光をそれぞれ別々の受光検知素子により同タイミングで受光することにより、対象物に複数の波長帯域の光を照射した時に対象物から発生する光を確実に略同一時間内に受光することができる。この場合には、光源の点灯時に生じるノイズの影響が少なくなり、光源の発光レベルが安定化する。また、光源の点灯制御を容易に行うことができる。
【0010】
このとき、搬送路と各受光検知素子との間には、各光源より対象物に光を照射した時に対象物から発生する複数の特徴をもった光成分のうち一部の光成分のみを透過させる光学フィルタがそれぞれ配置されていることが好ましい。この場合には、対象物から発生する同じ特徴をもった光成分が複数の受光検知素子に入射されることを防止できる。これにより、検査装置の小型化等の為に複数の受光検知素子を近接して配置した場合でも、各受光検知素子に対する光のクロストークが確実に抑えられるため、各受光検知素子が不要な光成分をノイズとして受光してしまうことを防止できる。なお、対象物から発生する特徴をもった光成分としては、対象物に紫外線を当てると発生する蛍光成分や、対象物に赤外線を当てた時の反射成分等がある。
【0011】
さらに、好ましくは、複数の光源は、紫外線を照射する第1光源と、赤外線を照射する第2光源とを含む。これにより、対象物に紫外線を照射した時に対象物で生じる蛍光のレベルと、対象物に赤外線を照射した時に対象物で反射する赤外線のレベルとを検知することができる。
【0012】
このとき、搬送路と受光検知素子との間には、第1光源より照射される紫外線を除去する紫外線除去フィルタが配置されていることが好ましい。これにより、第1光源から照射される紫外線がノイズとして受光検知素子に入射されることを防止できる。
【0013】
また、搬送路と第1光源及び第2光源との間には、第1光源より照射される紫外線に含まれる可視光成分を除去すると共に、第2光源から照射される赤外線を透過させる紫外線・赤外線透過フィルタが配置されていることが好ましい。これにより、第1光源から照射される紫外線に含まれる可視光成分がノイズとして受光検知素子に入射されることを防止できる。
【0014】
さらに、好ましくは、複数の光源は、紫外線を照射する第1光源と、赤外線を照射する第2光源と、緑色の光を照射する第3の光源とを含む。これにより、緑色光を照射したときの検出信号も対象物の判定に加味されるので、対象物の認識精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、搬送路上を通る対象物の真偽等を精度良く認識することができる。これにより、高精度に偽造された対象物にも十分に対処することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係る検査装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】図2は、図1に示す筐体の水平方向断面図である。
【図3】図3は、図1に示す制御ユニットの機能ブロックを示す図である。
【図4】図4は、図2に示す2つの光源の点灯タイミングを示す図である。
【図5】図5は、図3に示す識別処理部の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図6は、図2に示す2つの光源より紙幣に光を照射した時に受光して得られるフォトセンサの出力値データとフォトセンサの出力比データとをモデル化して示した図である。
【図7】図7は、本発明に係る検査装置の第2の実施形態を示す構成図である。
【図8】図8は、図7に示す筐体の水平方向断面図である。
【図9】図9は、図8のIX−IX線断面図である。
【図10】図10は、図7に示す制御ユニットの機能ブロックを示す図である。
【図11】図11は、図8に示す2つの光源の点灯タイミングを示す図である。
【図12】図12は、図10に示す識別処理部の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実際に2つの光源より紙幣に光を照射した時に受光して得られるフォトセンサの出力データの一例とフォトセンサの出力比データの一例とを示した図である。
【図14】図14は、他の実施形態に係る検査装置における筐体の水平方向断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1…検査装置、2…搬送路、3…紙幣(対象物)、7…センサユニット、8…制御ユニット、12A…光源(第1光源、照明部)、12B…光源(第2光源、照明部)、16…紫外線・赤外線透過フィルタ、17…フォトセンサ、17A,17B…フォトセンサ、18…集光レンズ(紫外線除去フィルタ)、20…光源制御処理部(照明部)、21…メモリ部、22…識別処理部、30…検査装置、31…センサユニット、32…制御ユニット、35…可視光透過フィルタ(光学フィルタ)、36…赤外線透過フィルタ(光学フィルタ)、37…光源制御処理部(照明部)、38…メモリ部、39…識別処理部。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係わる検査装置の好適な一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る検査装置の第1の実施形態を示す構成図である。同図において、本実施形態の検査装置1は、搬送路2上を通る紙幣3の真偽判別及び金種判別を行うための装置であり、例えば紙幣計数機に組み込まれている。紙幣3には、偽造対策に有効なセキュリティ用の特徴パターンとして、赤外線(IR光)を反射させる赤外インクと、紫外線(UV光)を受けると蛍光を生じさせる蛍光インクとが含まれている。
【0020】
搬送路2は、窓部4aを有する上搬送ガイド板4と下搬送ガイド板5とで形成されている。紙幣3をスムーズに搬送させるために、上搬送ガイド板4と下搬送ガイド板5との間には2〜3mm程度の隙間が設けられている。搬送路2の途中には、紙幣3を矢印方向に搬送させる複数の搬送ローラ6が配置されている。
【0021】
検査装置1は、上搬送ガイド板4上に配置されたセンサユニット7と、このセンサユニット7と接続された制御ユニット8とを有している。センサユニット7は略直方体形状の筺体9を有し、この筺体9内には、高さ方向に延在する仕切り部10が設けられている。
【0022】
仕切り部10により形成された筺体9の一方の空間11a内には、図2に示すように、搬送路2上を搬送される紙幣3の表面に光を照射する2つの光源12A,12Bが収容されている。光源12Aは、紫外成分(約200〜400nm帯)を含む光を発生させる紫外線LEDであり、光源12Bは、赤外成分(約780〜1400nm帯)を含む光を発生させる赤外線LEDである。光源12A,12Bは、紙幣3の略同一箇所に光を照射するように並んで配置されていると共に、筐体9の上面部に設けられた回路プリント基板13に固定されている。
【0023】
また、回路プリント基板13には、光源12A,12Bの照射光量をモニタするモニタ用フォトセンサ14A,14Bが実装されている。このフォトセンサ14A,14Bは、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタ等の受光検知素子である。
【0024】
この筺体9の下部には、防塵ガラス板15が固定されている。防塵ガラス板15は、紫外線及び赤外線の透過率が極めて高い材料で形成されている。防塵ガラス板15の下面部は、搬送路2の窓部4aに固定されている。
【0025】
防塵ガラス板15と光源12A,12Bとの間には、紫外線・赤外線透過フィルタ16が配置されている。紫外線・赤外線透過フィルタ16は、光源12Aから照射される光に含まれる可視光成分(約380〜780nm帯)を除去すると共に、光源12Bから照射される赤外線を透過させる光学フィルタである。このような紫外線・赤外線透過フィルタ16を設けることにより、可視光成分が紙幣3の表面で反射して不要なノイズとなることを防止できる。
【0026】
仕切り部10により形成された筐体9の他方の空間11b内には、光源12A,12Bより紙幣3の表面に光を照射した時に紙幣3の表面から発生する光を受光する検知用のフォトセンサ17が収容されている。フォトセンサ17は、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタ等の受光検知素子であり、回路プリント基板13に固定されている。
【0027】
防塵ガラス板15とフォトセンサ17との間には、紫外線を除去する紫外線除去フィルタ機能を有する集光レンズ18が配置されている。これにより、紙幣3の表面から発する光は、集光レンズ18を通ってフォトセンサ17に入射されることになる。このとき、集光レンズ18の紫外線除去フィルタ機能によって、光源12Aから照射される紫外線をフォトセンサ17がノイズとして受光することは無い。
【0028】
回路プリント基板13には、上記の光源12A,12Bやフォトセンサ17等の他に、電子回路部品(図示せず)及び外部接続用コネクタ19が実装されている。外部接続用コネクタ19には、上記の制御ユニット8が電気ケーブルで接続されている。
【0029】
制御ユニット8は、図3に示すように、光源制御処理部20、メモリ部21及び識別処理部22(識別手段)を有している。なお、光源12A,12B及び光源制御処理部20は、紙幣3を照らす照明部(照明手段)を構成する。
【0030】
光源制御処理部20は、紙幣到来センサ(図示せず)によって搬送路2上を通る紙幣3が上搬送ガイド板4の窓部4a上に達したことが検出されると、点灯制御部を構成し、センサユニット7の回路プリント基板13に実装された光源駆動回路(図示せず)に制御信号を送出して、光源12A,12Bをそれぞれ個別に制御する。このとき、光源制御処理部20は、図4に示すように、光源12A,12Bを高速で個々に切り換えて点灯させるように制御する。なお、光源12A,12Bの点灯切り換え周期は、例えば1〜10ms程度である。
【0031】
メモリ部21には、紙幣判別用の基準データが予め記憶されている。この基準データとしては、紙幣3の長手方向に対する複数の検査領域について、光源12Aから光を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17の出力値(検出値)P1と光源12Bから光を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17の出力値P2との比(以下、フォトセンサ17の出力比という)が用いられる。このフォトセンサ17の出力比の基準データは、本物の紙幣3を搬送路2上に搬送させ、光源12A,12Bを上記のように切り換えて点灯させた時に順番に受光して得られたフォトセンサ17の検出値P1,P2から求められる。このとき、光源12A,12Bの点灯は高速で切り換えられるので、光源12A,12Bから光を照射した時のフォトセンサ17の検出値P1,P2は、略同一時間内に受光して得られた値となる。
【0032】
このとき、光源(赤外線LED)12Bの光量は、紙幣3における無印刷の領域に照射した時のフォトセンサ17の出力値(出力電圧)がフォトセンサ17の出力飽和レベルに近い電圧(例えば4V)となるように設定されている。また、光源(紫外線LED)12Aの光量は、紙幣3における無印刷の領域に照射した時のフォトセンサ17の出力電圧がフォトセンサ17の低レベルに近い電圧(例えば1V)となるように設定されている。
【0033】
識別処理部22は、フォトセンサ17の検出信号(出力信号)を入力し、所定の演算を行い、メモリ部21に記憶された紙幣判別用の基準データを用いて紙幣3の判別を行う。この識別処理部22の処理手順の詳細を図5に示す。
【0034】
同図において、まず光源12A,12Bを順番に点灯させて搬送中の紙幣3に光を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17の2つの検出信号を各々入力する(手順101)。このとき、光源12A,12Bの点灯は、上述したように光源制御処理部20によって高速で切り換えられるので、光源12A,12Bに対応するフォトセンサ17の2つの検出信号は、略同一時間内に受光して得られた信号である。
【0035】
続いて、この時のフォトセンサ17の検出値P1,P2からフォトセンサ17の出力比を算出する(手順102)。そして、この算出したフォトセンサ17の出力比をメモリ部21に格納する(手順103)。
【0036】
続いて、1枚の紙幣3の全検査領域について、フォトセンサ17の出力比を算出したかどうかを判断し(手順104)、フォトセンサ17の出力比を全て算出していないときは、上記の手順101〜103を繰り返し実行する。一方、フォトセンサ17の出力比を全て算出したときは、フォトセンサ17の出力比についての全算出データ及び基準データをメモリ部21から読み出し、各算出データを基準データとを比較・照合することにより、紙幣3の真偽判定及び金種判定を行う(手順105)。
【0037】
図6は、光源12A,12Bの点灯を切り換えて紙幣3に光を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17の出力値データと、この出力値データから算出されたフォトセンサ17の出力比データをモデル化して示したものである。
【0038】
図6(a)は、搬送路2上で紙幣3を搬送させた場合のフォトセンサ17の出力値データを示している。図6(b)の三角印は、図6(a)に示した出力値データのうち、光源12Bより紙幣3に赤外線を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17の出力値P2のみを示している。図6(c)の三角印は、図6(a)に示した出力値データのうち、光源12Aより紙幣3に紫外線を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17の出力値P1のみを示している。なお、図6(b),(c)の黒丸印は、参考として、紙幣3の上下動(搬送バタツキ)が無いと仮定した場合のフォトセンサ17の出力値データを示したものである。ただし、上述したように搬送路2を形成する上搬送ガイド板4と下搬送ガイド板5との間には所定の隙間が設けられているため、実際の紙幣3の搬送中には、紙幣3の上下動(搬送バタツキ)が生じることが多い。この場合には、図6(b),(c)の三角印で示すように、フォトセンサ17の出力値が変動する。
【0039】
図6(b)中のX部分は、光源12Bより紙幣3に赤外線を照射した時に特徴となる部分である。紙幣3に付された特徴パターンの一つである赤外インクに赤外線を当てると、赤外インクで赤外線が反射し、その結果フォトセンサ17の出力値が変化する。この特徴となるX部分では、他の部分に比べてフォトセンサ17の出力値が低くなる。図6(c)中のY部分は、光源12Aより紙幣3に紫外線を照射した時に特徴となる部分である。紙幣3に付されたもう一つの特徴パターンである蛍光インクに紫外線を当てると、蛍光インクで蛍光が生じ、その結果フォトセンサ17の出力値が変化する。この特徴となるY部分では、他の部分に比べてフォトセンサ17の出力値が高くなる。
【0040】
図6(d)は、図6(a)に示した隣り合うフォトセンサ17の出力値P1,P2から求めたフォトセンサ17の出力比(P2/P1)のデータを示している。隣り合うフォトセンサ17の出力値P1,P2は、紙幣3の同じ検査領域を略同一時間内に光検出して得た値である。つまり、隣り合うフォトセンサ17の出力値P1,P2は、紙幣3がほぼ同じ搬送高さ位置にある時の値である。また、その時に得られるフォトセンサ17の出力比は、紙幣3の搬送高さ位置に係わらず、常にほぼ一定となる。従って、紙幣3の搬送バタツキによりフォトセンサ17の出力変動が生じても、フォトセンサ17の出力比の変動は殆ど無い。
【0041】
以上のように本実施形態にあっては、2種類の光源12A,12Bより交互に紙幣3に光を照射し、その時に紙幣3から発生する光を受光することによって得られるフォトセンサ17の2つの出力信号を取り込んでフォトセンサ17の出力比を求め、これを基準データと比較・照合して紙幣3の識別を行うので、2種類のセキュリティ用特徴パターンが紙幣3に設けられている場合でも、そのような特徴パターンの有無、位置、レベル等を正確に判定できる。また、特徴パターンだけでなく、紙幣3の紙質の差なども判定可能である。さらに、フォトセンサ17の出力比を用いて紙幣3の識別を行うことにより、紙幣3の搬送バタツキの影響を受けなくて済む。このため、例えばコントラストの低い印刷パターン等が付された紙幣3の識別も高精度に行える。以上により、紙幣3の認識精度が向上するので、近年において精度が向上したコピー機等により作られた偽造紙幣の真偽判定等も確実に行うことができる。
【0042】
また、2つの光源12A,12Bを切り換えて点灯させることにより、使用するフォトセンサ17が1つであっても、紙幣3に紫外線を照射した時に紙幣3から発生する光と紙幣3に赤外線を照射した時に紙幣3から発生する光とを略同一時間内に受光することができる。このため、部品点数を最小限に抑えることが可能となる。
【0043】
図7は、本発明に係る検査装置の第2の実施形態を示す構成図である。図中、第1の実施形態と同一または同等の部材には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
本実施形態の検査装置30は、第1の実施形態におけるセンサユニット7及び制御ユニット8に代えて、センサユニット31及び制御ユニット32を有している。センサユニット31における筐体9の空間11b内には、図8及び図9に示すように、2つのフォトセンサ17A,17Bが並んで収容されている。フォトセンサ17Aは、光源12Aより紙幣3に紫外線を照射した時に紙幣3から発生する光を受光するように配置され、フォトセンサ17Bは、光源12Bより紙幣3に赤外線を照射した時に紙幣3から発生する光を受光するように配置されている。
【0045】
また、筐体9の空間11b内には、回路プリント基板13から集光レンズ18まで高さ方向に延在した仕切り部33が設けられている。上記のフォトセンサ17A,17Bは、その仕切り部33を挟むように配置されている。また、筐体9の空間11a内には、仕切り部33に対応して、光源12A,12Bに挟まれた仕切り部34が設けられている。
【0046】
フォトセンサ17Aと集光レンズ18との間には、可視光透過フィルタ35が配置されている。この可視光透過フィルタ35は、光源12Aより紙幣3に紫外線を照射した時に紙幣3で生じた蛍光(可視光)を透過させると共に、光源12Bより紙幣3に赤外線を照射した時に紙幣3で反射した赤外線を除去する光学フィルタである。フォトセンサ17Bと集光レンズ18との間には、赤外線透過フィルタ36が配置されている。この赤外線透過フィルタ36は、光源12Bより紙幣3に赤外線を照射した時に紙幣3で反射した赤外線を透過させると共に、光源12Aより紙幣3に紫外線を照射した時に紙幣3で生じた蛍光及び紫外線の反射光を除去する光学フィルタである。このような可視光透過フィルタ35及び赤外線透過フィルタ36を設けることにより、フォトセンサ17A,17Bに対する光のクロストークが確実に抑えられる。
【0047】
制御ユニット32は、図10に示すように、光源制御処理部37(照明部を構成する一要素)、メモリ部38及び識別処理部39(識別手段)を有している。光源制御処理部37は、紙幣到来センサ(図示せず)によって搬送路2上を通る紙幣3が上搬送ガイド板4の窓部4a上に達したことが検出されると、図11に示すように、光源12A,12Bを所定時間だけ点灯し続けるように点灯制御部を構成する光源駆動回路(図示せず)を制御する。
【0048】
メモリ部38には、紙幣判別用の基準データが予め記憶されている。この基準データとしては、紙幣3の長手方向に対する複数の検査領域について、光源12Aから光を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17Aの出力値P1と光源12Bから光を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17Bの出力値P2との比(以下、フォトセンサ17A,17Bの出力比)が用いられる。このフォトセンサ17A,17Bの出力比の基準データは、本物の紙幣3を搬送路2上に搬送させ、光源12A,12Bを一緒に点灯させた時に同時に受光して得られたフォトセンサ17A,17Bの出力値から求められる。
【0049】
識別処理部39は、フォトセンサ17A,17Bの出力信号を入力し、所定の演算を行い、メモリ部38に記憶された紙幣判別用の基準データを用いて紙幣3の判別を行う。この識別処理部39の処理手順の詳細を図12に示す。
【0050】
同図において、まず光源12A,12Bを同時に点灯させて搬送中の紙幣3に光を照射した時に同タイミングで受光して得られるフォトセンサ17A,17Bの検出信号を入力する(手順111)。続いて、この時のフォトセンサ17Aの検出値P1及びフォトセンサ17Bの検出値P2から、フォトセンサ17A,17Bの出力比を算出し(手順112)、これをメモリ部38に格納する(手順113)。続いて、1枚の紙幣3の全検査領域について、フォトセンサ17A,17Bの出力比を算出したかどうかを判断し(手順114)、フォトセンサ17A,17Bの出力比を全て算出したときは、各算出データと基準データとを比較・照合することにより、紙幣3の真偽判定及び金種判定を行う(手順115)。
【0051】
以上のように本実施形態では、光源12A,12Bを同時点灯させた時に同タイミングで受光して得られたフォトセンサ17A,17Bの出力値から、フォトセンサ17A,17Bの出力比を求め、これを用いて紙幣3を識別するので、第1の実施形態と同様に、紙幣3に付された2種類のセキュリティ用特徴パターン等を正しく判定できると共に、紙幣3の搬送バタツキの影響等を受けることなく識別が行える。これにより、紙幣3の認識精度が向上するので、高精度な偽造紙幣に十分に対応することが可能となる。
【0052】
また、2つのフォトセンサ17A,17Bを使用し、光源12A,12Bを所定時間だけ同時に点灯し続けるようにしたので、光源12A,12Bの点灯時に生じるノイズの影響が少なくなり、光源12A,12Bの発光量が安定化する。また、光源12A,12Bの点灯制御を簡素化することができる。
【0053】
図13(a)は、実際に光源12Bより紙幣3に赤外線を照射した時のフォトセンサ17Bの出力データの一例を示したものであり、図13(b)は、実際に光源12Aより紙幣3に紫外線を照射した時のフォトセンサ17Aの出力データの一例を示したものである。また、図13(c)は、図13(a),(b)に示すフォトセンサ17A,17Bの出力データから求めたフォトセンサ17A,17Bの出力比のデータを示したものである。このようなフォトセンサ17A,17Bの出力比データを用いることで、紙幣3の搬送バタツキの影響を殆ど受けない鑑別処理が実現可能となる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、フォトセンサの出力比データを用いて紙幣3の識別を行うようにしたが、光源12A,12Bより紙幣3に光を照射した時に同一時間内に受光して得られるフォトセンサの出力信号を合成したデータであれば、例えばフォトセンサの出力差データ等も使用可能である。この場合でも、得られた合成データを基準データと比較・照合することにより、紙幣3に設けられた特徴パターン等を正確に判定できるため、紙幣3の認識精度を向上させることが可能である。
【0055】
また、上記実施形態では、波長帯域の異なる光を照射する2つの光源12A,12Bを使用したが、特にこれに限られず、3つ以上の光源を使用しても良い、例えば、光源に可視光を用いた場合では、その使用する光源により紙幣の細部のデータの採取が可能となる。
【0056】
図14は、光源として上述した紫外線LED及び赤外線LEDに加えて、第3の光源として緑色のLEDを検査装置のセンサユニットに組み込んだ実施形態を示す図である。
【0057】
図14に示されるセンサユニット57は、図1及び図2に示されるセンサユニット7に類似した構成を備えており、センサユニット7に代わって検査装置1に組み込むことができるものである。センサユニット57は略直方体形状の筐体59を有し、筐体59内には、検査装置の高さ方向に延在する仕切り部60が設けられている。
【0058】
仕切り部60により形成された筐体57の一方の空間61a内には、3つの光源62A,62B,62Cが収容されている。光源62Aは紫外成分を含む光を発生させる紫外線LEDであり、光源62Bは赤外成分を含む光を発生させる赤外線LEDであり、光源62Cは緑色光を発生させる緑色LEDである。筐体57の上面部に設けられた回路プリント基板(図示しない)には、光源62A,62B,62Cの照射光量をモニタするモニタ用フォトセンサ64A,64B,64Cが実装されている。また、光が紙幣の表面で反射して不要なノイズとなることを防止するために、不要な光成分を除去することができる光学フィルタ66が筐体57の下面部に配置されている。
【0059】
仕切り部60により形成された筐体57の他方の空間61b内には、検知用フォトセンサ67及び光学フィルタ68が収容されている。フォトセンサ67は、光源62A,62B,62Cより紙幣の表面に光を照射したときに紙幣の表面から発生する光を受光するものであり、上記の回路プリント基板(図示しない)に固定されている。光学フィルタ68は、紙幣の表面から発生する光のうちフォトセンサ67に不要な光成分を除去するためのものである。
【0060】
なお、光学フィルタ66,68は、センサユニット57において特に必須の構成要素ではない。
【0061】
図7に示されるセンサユニット57は、緑色LEDである光源62Cと、光源62Cの照射光量をモニタするモニタ用フォトセンサ64Cを備えること、及び、フィルタ16,18の機能が異なることを除いては、図2に示される第1の実施形態におけるセンサユニット7と同様の構成を備える。そのため、図3に示される制御ユニット8の光源処理部20にて光源62Cに対応させた処理を行わせることで、上述の第1の実施形態に係る検査装置と同様に搬送路2上を通る紙幣3の真偽判別及び金種判別を行うことができる。
【0062】
このように、緑色のLEDを第3の光源に用いた場合、緑色光を照射したときのフォトセンサの出力データも紙幣判定に加味されるので、より高い紙幣の認識が可能となる。緑色のLEDは可視光の中では紙幣の印刷パターンの各色に対し高いコントラストが得られると共に波長の短いLEDの中では比較的安価で輝度も高いので、第3の光源に好適である。
【0063】
なお、センサユニット57のように3つの光源を備えるセンサユニットは、上述の第2の実施形態に係る検査装置30のセンサユニット31(図7,8及び9参照)のように、3つのフォトセンサを設け、そのフォトセンサ間を仕切り部で区切ることで紙幣の表面から発生する光を光源別に受光する構成に変更しても良い。
【0064】
また、上記実施形態では複数の光源を利用しているが、光源としては、白色光源のように、複数の波長帯域をもった光を照射する1つの光源を使用してもよい。
【0065】
さらに、上記実施形態は、紙幣を検査するものであるが、本発明の検査装置は、特に紙幣には限られず、伝票、証券、カード等といった検査対象物にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、搬送路上を通る対象物の真偽等を精度良く認識することができる。これにより、高精度に偽造された対象物にも十分に対処することが可能となる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路上を通る紙幣及び伝票類等の真偽や種類の判別等の検査を行う検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙幣等の紙葉類の検査を行う検査装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、紙葉類の表面反射を測定するフォトセンサと、紙葉類に対して光を照射する照明部とを備え、紙葉類の金種や真偽を識別するものが知られている。
【特許文献1】特開2002−74450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年では、紙幣や証券等の偽造対策として、2種類以上のセキュリティ用の特徴パターンを紙幣等に設けることがある。この場合には、そのような特徴パターンを正確に見分けて、紙幣等の金種判別や真偽判別を高精度に行う必要がある。
【0004】
本発明の目的は、対象物の認識精度を向上させることができる検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、搬送路上を通る対象物を検査する検査装置であって、複数の波長帯域の光を対象物に照射する照明部と、対象物から発生する光を受光する少なくとも1つの受光検知素子と、照明部により対象物に複数の波長帯域の光を照射した時に対象物から発生する光を受光検知素子で略同一時間内に受光することによって得られる複数の検出信号を合成し、この合成データを予め設定された基準データと比較・照合することにより、対象物を識別する識別処理部とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
このような検査装置において、搬送路上を通る対象物が所定位置に到達すると、照明部により複数の波長帯域の光が対象物に照射され、その時に対象物から発生する光が受光検知素子で受光される。対象物から発生する光は、照明部により照射される複数の波長帯域の光ごとに異なるものである。このため、受光検知素子の検出信号としては、複数の波長帯域の光に応じた複数の検出信号が得られる。これらの複数の検出信号は、複数の波長帯域の光を対象物に照射した時に対象物から発生する光を略同一時間内に受光して得たものであるため、対象物の任意の同一領域についての検出信号である。そして、識別処理部によって、そのような複数の検出信号から合成データが生成され、この合成データを基準データと比較・照合することで対象物の識別処理が行われる。このような手法を採用することにより、例えば照明部により照射された光を受けると、波長帯域の異なる複数の光成分を生じさせる複数種類の特徴パターンが対象物に設けられている場合でも、これらの特徴パターンを正確に判定することができる。これにより、対象物の認識精度が向上する。
【0007】
好ましくは、識別処理部は、合成データとして、照明部により対象物に複数の波長帯域の光を照射した時に対象物から発生する光を受光検知素子で略同一時間内に受光することによって得られる複数の検出値の比を求める。対象物が搬送路上を通るときに、対象物の上下動(搬送バタツキ)が発生すると、照明部により対象物に光が照射された時の対象物の照明位置が高さ方向にずれるため、受光検知素子の検出値が変動する。しかし、対象物の搬送バタツキがあっても、対象物から発生する光を受光検知素子で略同一時間内に受光したときには、複数の波長帯域の光に対応する複数の検出信号は、対象物が実質的に同じ搬送高さ位置にある状態での検出信号となる。他方、対象物から発生する光を受光検知素子で略同一時間内に受光することによって得られた複数の検出値の比は、対象物の搬送高さ位置に拘らず、常にほぼ一定となる。従って、その点に着目し、合成データとして複数の検出値の比を用いることにより、対象物の搬送バタツキが生じても、受光検知素子の検出値の変動による影響を受けることなく、対象物の識別を行うことができる。これにより、対象物の認識精度が更に向上する。
【0008】
また、好ましくは、照明部は、波長帯域の異なる光を照射する複数の光源と、各光源を個々に切り換えて点灯させるように制御する点灯制御部とを有する。このような構成では、複数の光源を高速で切り換えて点灯させ、その時に対象物から発生する光を順番に1つの受光検知素子で受光することにより、対象物に複数の波長帯域の光を照射した時に対象物から発生する光を確実に略同一時間内に受光することができる。この場合には、使用する受光検知素子が1つで済むので、部品コストの削減を図ることができる。
【0009】
また、照明部は、波長帯域の異なる光を照射する複数の光源を有し、受光検知素子は、各光源より対象物に光を照射した時に対象物から発生する光を各光源に対応して別々に受光するように複数有していても良い。このような構成では、例えば搬送路上を通る対象物が所定位置に達したときに、全ての光源を常時点灯させる。そして、その時に対象物から発生する各光源に対応する光をそれぞれ別々の受光検知素子により同タイミングで受光することにより、対象物に複数の波長帯域の光を照射した時に対象物から発生する光を確実に略同一時間内に受光することができる。この場合には、光源の点灯時に生じるノイズの影響が少なくなり、光源の発光レベルが安定化する。また、光源の点灯制御を容易に行うことができる。
【0010】
このとき、搬送路と各受光検知素子との間には、各光源より対象物に光を照射した時に対象物から発生する複数の特徴をもった光成分のうち一部の光成分のみを透過させる光学フィルタがそれぞれ配置されていることが好ましい。この場合には、対象物から発生する同じ特徴をもった光成分が複数の受光検知素子に入射されることを防止できる。これにより、検査装置の小型化等の為に複数の受光検知素子を近接して配置した場合でも、各受光検知素子に対する光のクロストークが確実に抑えられるため、各受光検知素子が不要な光成分をノイズとして受光してしまうことを防止できる。なお、対象物から発生する特徴をもった光成分としては、対象物に紫外線を当てると発生する蛍光成分や、対象物に赤外線を当てた時の反射成分等がある。
【0011】
さらに、好ましくは、複数の光源は、紫外線を照射する第1光源と、赤外線を照射する第2光源とを含む。これにより、対象物に紫外線を照射した時に対象物で生じる蛍光のレベルと、対象物に赤外線を照射した時に対象物で反射する赤外線のレベルとを検知することができる。
【0012】
このとき、搬送路と受光検知素子との間には、第1光源より照射される紫外線を除去する紫外線除去フィルタが配置されていることが好ましい。これにより、第1光源から照射される紫外線がノイズとして受光検知素子に入射されることを防止できる。
【0013】
また、搬送路と第1光源及び第2光源との間には、第1光源より照射される紫外線に含まれる可視光成分を除去すると共に、第2光源から照射される赤外線を透過させる紫外線・赤外線透過フィルタが配置されていることが好ましい。これにより、第1光源から照射される紫外線に含まれる可視光成分がノイズとして受光検知素子に入射されることを防止できる。
【0014】
さらに、好ましくは、複数の光源は、紫外線を照射する第1光源と、赤外線を照射する第2光源と、緑色の光を照射する第3の光源とを含む。これにより、緑色光を照射したときの検出信号も対象物の判定に加味されるので、対象物の認識精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、搬送路上を通る対象物の真偽等を精度良く認識することができる。これにより、高精度に偽造された対象物にも十分に対処することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係る検査装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】図2は、図1に示す筐体の水平方向断面図である。
【図3】図3は、図1に示す制御ユニットの機能ブロックを示す図である。
【図4】図4は、図2に示す2つの光源の点灯タイミングを示す図である。
【図5】図5は、図3に示す識別処理部の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図6は、図2に示す2つの光源より紙幣に光を照射した時に受光して得られるフォトセンサの出力値データとフォトセンサの出力比データとをモデル化して示した図である。
【図7】図7は、本発明に係る検査装置の第2の実施形態を示す構成図である。
【図8】図8は、図7に示す筐体の水平方向断面図である。
【図9】図9は、図8のIX−IX線断面図である。
【図10】図10は、図7に示す制御ユニットの機能ブロックを示す図である。
【図11】図11は、図8に示す2つの光源の点灯タイミングを示す図である。
【図12】図12は、図10に示す識別処理部の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実際に2つの光源より紙幣に光を照射した時に受光して得られるフォトセンサの出力データの一例とフォトセンサの出力比データの一例とを示した図である。
【図14】図14は、他の実施形態に係る検査装置における筐体の水平方向断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1…検査装置、2…搬送路、3…紙幣(対象物)、7…センサユニット、8…制御ユニット、12A…光源(第1光源、照明部)、12B…光源(第2光源、照明部)、16…紫外線・赤外線透過フィルタ、17…フォトセンサ、17A,17B…フォトセンサ、18…集光レンズ(紫外線除去フィルタ)、20…光源制御処理部(照明部)、21…メモリ部、22…識別処理部、30…検査装置、31…センサユニット、32…制御ユニット、35…可視光透過フィルタ(光学フィルタ)、36…赤外線透過フィルタ(光学フィルタ)、37…光源制御処理部(照明部)、38…メモリ部、39…識別処理部。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係わる検査装置の好適な一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る検査装置の第1の実施形態を示す構成図である。同図において、本実施形態の検査装置1は、搬送路2上を通る紙幣3の真偽判別及び金種判別を行うための装置であり、例えば紙幣計数機に組み込まれている。紙幣3には、偽造対策に有効なセキュリティ用の特徴パターンとして、赤外線(IR光)を反射させる赤外インクと、紫外線(UV光)を受けると蛍光を生じさせる蛍光インクとが含まれている。
【0020】
搬送路2は、窓部4aを有する上搬送ガイド板4と下搬送ガイド板5とで形成されている。紙幣3をスムーズに搬送させるために、上搬送ガイド板4と下搬送ガイド板5との間には2〜3mm程度の隙間が設けられている。搬送路2の途中には、紙幣3を矢印方向に搬送させる複数の搬送ローラ6が配置されている。
【0021】
検査装置1は、上搬送ガイド板4上に配置されたセンサユニット7と、このセンサユニット7と接続された制御ユニット8とを有している。センサユニット7は略直方体形状の筺体9を有し、この筺体9内には、高さ方向に延在する仕切り部10が設けられている。
【0022】
仕切り部10により形成された筺体9の一方の空間11a内には、図2に示すように、搬送路2上を搬送される紙幣3の表面に光を照射する2つの光源12A,12Bが収容されている。光源12Aは、紫外成分(約200〜400nm帯)を含む光を発生させる紫外線LEDであり、光源12Bは、赤外成分(約780〜1400nm帯)を含む光を発生させる赤外線LEDである。光源12A,12Bは、紙幣3の略同一箇所に光を照射するように並んで配置されていると共に、筐体9の上面部に設けられた回路プリント基板13に固定されている。
【0023】
また、回路プリント基板13には、光源12A,12Bの照射光量をモニタするモニタ用フォトセンサ14A,14Bが実装されている。このフォトセンサ14A,14Bは、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタ等の受光検知素子である。
【0024】
この筺体9の下部には、防塵ガラス板15が固定されている。防塵ガラス板15は、紫外線及び赤外線の透過率が極めて高い材料で形成されている。防塵ガラス板15の下面部は、搬送路2の窓部4aに固定されている。
【0025】
防塵ガラス板15と光源12A,12Bとの間には、紫外線・赤外線透過フィルタ16が配置されている。紫外線・赤外線透過フィルタ16は、光源12Aから照射される光に含まれる可視光成分(約380〜780nm帯)を除去すると共に、光源12Bから照射される赤外線を透過させる光学フィルタである。このような紫外線・赤外線透過フィルタ16を設けることにより、可視光成分が紙幣3の表面で反射して不要なノイズとなることを防止できる。
【0026】
仕切り部10により形成された筐体9の他方の空間11b内には、光源12A,12Bより紙幣3の表面に光を照射した時に紙幣3の表面から発生する光を受光する検知用のフォトセンサ17が収容されている。フォトセンサ17は、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタ等の受光検知素子であり、回路プリント基板13に固定されている。
【0027】
防塵ガラス板15とフォトセンサ17との間には、紫外線を除去する紫外線除去フィルタ機能を有する集光レンズ18が配置されている。これにより、紙幣3の表面から発する光は、集光レンズ18を通ってフォトセンサ17に入射されることになる。このとき、集光レンズ18の紫外線除去フィルタ機能によって、光源12Aから照射される紫外線をフォトセンサ17がノイズとして受光することは無い。
【0028】
回路プリント基板13には、上記の光源12A,12Bやフォトセンサ17等の他に、電子回路部品(図示せず)及び外部接続用コネクタ19が実装されている。外部接続用コネクタ19には、上記の制御ユニット8が電気ケーブルで接続されている。
【0029】
制御ユニット8は、図3に示すように、光源制御処理部20、メモリ部21及び識別処理部22(識別手段)を有している。なお、光源12A,12B及び光源制御処理部20は、紙幣3を照らす照明部(照明手段)を構成する。
【0030】
光源制御処理部20は、紙幣到来センサ(図示せず)によって搬送路2上を通る紙幣3が上搬送ガイド板4の窓部4a上に達したことが検出されると、点灯制御部を構成し、センサユニット7の回路プリント基板13に実装された光源駆動回路(図示せず)に制御信号を送出して、光源12A,12Bをそれぞれ個別に制御する。このとき、光源制御処理部20は、図4に示すように、光源12A,12Bを高速で個々に切り換えて点灯させるように制御する。なお、光源12A,12Bの点灯切り換え周期は、例えば1〜10ms程度である。
【0031】
メモリ部21には、紙幣判別用の基準データが予め記憶されている。この基準データとしては、紙幣3の長手方向に対する複数の検査領域について、光源12Aから光を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17の出力値(検出値)P1と光源12Bから光を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17の出力値P2との比(以下、フォトセンサ17の出力比という)が用いられる。このフォトセンサ17の出力比の基準データは、本物の紙幣3を搬送路2上に搬送させ、光源12A,12Bを上記のように切り換えて点灯させた時に順番に受光して得られたフォトセンサ17の検出値P1,P2から求められる。このとき、光源12A,12Bの点灯は高速で切り換えられるので、光源12A,12Bから光を照射した時のフォトセンサ17の検出値P1,P2は、略同一時間内に受光して得られた値となる。
【0032】
このとき、光源(赤外線LED)12Bの光量は、紙幣3における無印刷の領域に照射した時のフォトセンサ17の出力値(出力電圧)がフォトセンサ17の出力飽和レベルに近い電圧(例えば4V)となるように設定されている。また、光源(紫外線LED)12Aの光量は、紙幣3における無印刷の領域に照射した時のフォトセンサ17の出力電圧がフォトセンサ17の低レベルに近い電圧(例えば1V)となるように設定されている。
【0033】
識別処理部22は、フォトセンサ17の検出信号(出力信号)を入力し、所定の演算を行い、メモリ部21に記憶された紙幣判別用の基準データを用いて紙幣3の判別を行う。この識別処理部22の処理手順の詳細を図5に示す。
【0034】
同図において、まず光源12A,12Bを順番に点灯させて搬送中の紙幣3に光を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17の2つの検出信号を各々入力する(手順101)。このとき、光源12A,12Bの点灯は、上述したように光源制御処理部20によって高速で切り換えられるので、光源12A,12Bに対応するフォトセンサ17の2つの検出信号は、略同一時間内に受光して得られた信号である。
【0035】
続いて、この時のフォトセンサ17の検出値P1,P2からフォトセンサ17の出力比を算出する(手順102)。そして、この算出したフォトセンサ17の出力比をメモリ部21に格納する(手順103)。
【0036】
続いて、1枚の紙幣3の全検査領域について、フォトセンサ17の出力比を算出したかどうかを判断し(手順104)、フォトセンサ17の出力比を全て算出していないときは、上記の手順101〜103を繰り返し実行する。一方、フォトセンサ17の出力比を全て算出したときは、フォトセンサ17の出力比についての全算出データ及び基準データをメモリ部21から読み出し、各算出データを基準データとを比較・照合することにより、紙幣3の真偽判定及び金種判定を行う(手順105)。
【0037】
図6は、光源12A,12Bの点灯を切り換えて紙幣3に光を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17の出力値データと、この出力値データから算出されたフォトセンサ17の出力比データをモデル化して示したものである。
【0038】
図6(a)は、搬送路2上で紙幣3を搬送させた場合のフォトセンサ17の出力値データを示している。図6(b)の三角印は、図6(a)に示した出力値データのうち、光源12Bより紙幣3に赤外線を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17の出力値P2のみを示している。図6(c)の三角印は、図6(a)に示した出力値データのうち、光源12Aより紙幣3に紫外線を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17の出力値P1のみを示している。なお、図6(b),(c)の黒丸印は、参考として、紙幣3の上下動(搬送バタツキ)が無いと仮定した場合のフォトセンサ17の出力値データを示したものである。ただし、上述したように搬送路2を形成する上搬送ガイド板4と下搬送ガイド板5との間には所定の隙間が設けられているため、実際の紙幣3の搬送中には、紙幣3の上下動(搬送バタツキ)が生じることが多い。この場合には、図6(b),(c)の三角印で示すように、フォトセンサ17の出力値が変動する。
【0039】
図6(b)中のX部分は、光源12Bより紙幣3に赤外線を照射した時に特徴となる部分である。紙幣3に付された特徴パターンの一つである赤外インクに赤外線を当てると、赤外インクで赤外線が反射し、その結果フォトセンサ17の出力値が変化する。この特徴となるX部分では、他の部分に比べてフォトセンサ17の出力値が低くなる。図6(c)中のY部分は、光源12Aより紙幣3に紫外線を照射した時に特徴となる部分である。紙幣3に付されたもう一つの特徴パターンである蛍光インクに紫外線を当てると、蛍光インクで蛍光が生じ、その結果フォトセンサ17の出力値が変化する。この特徴となるY部分では、他の部分に比べてフォトセンサ17の出力値が高くなる。
【0040】
図6(d)は、図6(a)に示した隣り合うフォトセンサ17の出力値P1,P2から求めたフォトセンサ17の出力比(P2/P1)のデータを示している。隣り合うフォトセンサ17の出力値P1,P2は、紙幣3の同じ検査領域を略同一時間内に光検出して得た値である。つまり、隣り合うフォトセンサ17の出力値P1,P2は、紙幣3がほぼ同じ搬送高さ位置にある時の値である。また、その時に得られるフォトセンサ17の出力比は、紙幣3の搬送高さ位置に係わらず、常にほぼ一定となる。従って、紙幣3の搬送バタツキによりフォトセンサ17の出力変動が生じても、フォトセンサ17の出力比の変動は殆ど無い。
【0041】
以上のように本実施形態にあっては、2種類の光源12A,12Bより交互に紙幣3に光を照射し、その時に紙幣3から発生する光を受光することによって得られるフォトセンサ17の2つの出力信号を取り込んでフォトセンサ17の出力比を求め、これを基準データと比較・照合して紙幣3の識別を行うので、2種類のセキュリティ用特徴パターンが紙幣3に設けられている場合でも、そのような特徴パターンの有無、位置、レベル等を正確に判定できる。また、特徴パターンだけでなく、紙幣3の紙質の差なども判定可能である。さらに、フォトセンサ17の出力比を用いて紙幣3の識別を行うことにより、紙幣3の搬送バタツキの影響を受けなくて済む。このため、例えばコントラストの低い印刷パターン等が付された紙幣3の識別も高精度に行える。以上により、紙幣3の認識精度が向上するので、近年において精度が向上したコピー機等により作られた偽造紙幣の真偽判定等も確実に行うことができる。
【0042】
また、2つの光源12A,12Bを切り換えて点灯させることにより、使用するフォトセンサ17が1つであっても、紙幣3に紫外線を照射した時に紙幣3から発生する光と紙幣3に赤外線を照射した時に紙幣3から発生する光とを略同一時間内に受光することができる。このため、部品点数を最小限に抑えることが可能となる。
【0043】
図7は、本発明に係る検査装置の第2の実施形態を示す構成図である。図中、第1の実施形態と同一または同等の部材には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
本実施形態の検査装置30は、第1の実施形態におけるセンサユニット7及び制御ユニット8に代えて、センサユニット31及び制御ユニット32を有している。センサユニット31における筐体9の空間11b内には、図8及び図9に示すように、2つのフォトセンサ17A,17Bが並んで収容されている。フォトセンサ17Aは、光源12Aより紙幣3に紫外線を照射した時に紙幣3から発生する光を受光するように配置され、フォトセンサ17Bは、光源12Bより紙幣3に赤外線を照射した時に紙幣3から発生する光を受光するように配置されている。
【0045】
また、筐体9の空間11b内には、回路プリント基板13から集光レンズ18まで高さ方向に延在した仕切り部33が設けられている。上記のフォトセンサ17A,17Bは、その仕切り部33を挟むように配置されている。また、筐体9の空間11a内には、仕切り部33に対応して、光源12A,12Bに挟まれた仕切り部34が設けられている。
【0046】
フォトセンサ17Aと集光レンズ18との間には、可視光透過フィルタ35が配置されている。この可視光透過フィルタ35は、光源12Aより紙幣3に紫外線を照射した時に紙幣3で生じた蛍光(可視光)を透過させると共に、光源12Bより紙幣3に赤外線を照射した時に紙幣3で反射した赤外線を除去する光学フィルタである。フォトセンサ17Bと集光レンズ18との間には、赤外線透過フィルタ36が配置されている。この赤外線透過フィルタ36は、光源12Bより紙幣3に赤外線を照射した時に紙幣3で反射した赤外線を透過させると共に、光源12Aより紙幣3に紫外線を照射した時に紙幣3で生じた蛍光及び紫外線の反射光を除去する光学フィルタである。このような可視光透過フィルタ35及び赤外線透過フィルタ36を設けることにより、フォトセンサ17A,17Bに対する光のクロストークが確実に抑えられる。
【0047】
制御ユニット32は、図10に示すように、光源制御処理部37(照明部を構成する一要素)、メモリ部38及び識別処理部39(識別手段)を有している。光源制御処理部37は、紙幣到来センサ(図示せず)によって搬送路2上を通る紙幣3が上搬送ガイド板4の窓部4a上に達したことが検出されると、図11に示すように、光源12A,12Bを所定時間だけ点灯し続けるように点灯制御部を構成する光源駆動回路(図示せず)を制御する。
【0048】
メモリ部38には、紙幣判別用の基準データが予め記憶されている。この基準データとしては、紙幣3の長手方向に対する複数の検査領域について、光源12Aから光を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17Aの出力値P1と光源12Bから光を照射した時に受光して得られるフォトセンサ17Bの出力値P2との比(以下、フォトセンサ17A,17Bの出力比)が用いられる。このフォトセンサ17A,17Bの出力比の基準データは、本物の紙幣3を搬送路2上に搬送させ、光源12A,12Bを一緒に点灯させた時に同時に受光して得られたフォトセンサ17A,17Bの出力値から求められる。
【0049】
識別処理部39は、フォトセンサ17A,17Bの出力信号を入力し、所定の演算を行い、メモリ部38に記憶された紙幣判別用の基準データを用いて紙幣3の判別を行う。この識別処理部39の処理手順の詳細を図12に示す。
【0050】
同図において、まず光源12A,12Bを同時に点灯させて搬送中の紙幣3に光を照射した時に同タイミングで受光して得られるフォトセンサ17A,17Bの検出信号を入力する(手順111)。続いて、この時のフォトセンサ17Aの検出値P1及びフォトセンサ17Bの検出値P2から、フォトセンサ17A,17Bの出力比を算出し(手順112)、これをメモリ部38に格納する(手順113)。続いて、1枚の紙幣3の全検査領域について、フォトセンサ17A,17Bの出力比を算出したかどうかを判断し(手順114)、フォトセンサ17A,17Bの出力比を全て算出したときは、各算出データと基準データとを比較・照合することにより、紙幣3の真偽判定及び金種判定を行う(手順115)。
【0051】
以上のように本実施形態では、光源12A,12Bを同時点灯させた時に同タイミングで受光して得られたフォトセンサ17A,17Bの出力値から、フォトセンサ17A,17Bの出力比を求め、これを用いて紙幣3を識別するので、第1の実施形態と同様に、紙幣3に付された2種類のセキュリティ用特徴パターン等を正しく判定できると共に、紙幣3の搬送バタツキの影響等を受けることなく識別が行える。これにより、紙幣3の認識精度が向上するので、高精度な偽造紙幣に十分に対応することが可能となる。
【0052】
また、2つのフォトセンサ17A,17Bを使用し、光源12A,12Bを所定時間だけ同時に点灯し続けるようにしたので、光源12A,12Bの点灯時に生じるノイズの影響が少なくなり、光源12A,12Bの発光量が安定化する。また、光源12A,12Bの点灯制御を簡素化することができる。
【0053】
図13(a)は、実際に光源12Bより紙幣3に赤外線を照射した時のフォトセンサ17Bの出力データの一例を示したものであり、図13(b)は、実際に光源12Aより紙幣3に紫外線を照射した時のフォトセンサ17Aの出力データの一例を示したものである。また、図13(c)は、図13(a),(b)に示すフォトセンサ17A,17Bの出力データから求めたフォトセンサ17A,17Bの出力比のデータを示したものである。このようなフォトセンサ17A,17Bの出力比データを用いることで、紙幣3の搬送バタツキの影響を殆ど受けない鑑別処理が実現可能となる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、フォトセンサの出力比データを用いて紙幣3の識別を行うようにしたが、光源12A,12Bより紙幣3に光を照射した時に同一時間内に受光して得られるフォトセンサの出力信号を合成したデータであれば、例えばフォトセンサの出力差データ等も使用可能である。この場合でも、得られた合成データを基準データと比較・照合することにより、紙幣3に設けられた特徴パターン等を正確に判定できるため、紙幣3の認識精度を向上させることが可能である。
【0055】
また、上記実施形態では、波長帯域の異なる光を照射する2つの光源12A,12Bを使用したが、特にこれに限られず、3つ以上の光源を使用しても良い、例えば、光源に可視光を用いた場合では、その使用する光源により紙幣の細部のデータの採取が可能となる。
【0056】
図14は、光源として上述した紫外線LED及び赤外線LEDに加えて、第3の光源として緑色のLEDを検査装置のセンサユニットに組み込んだ実施形態を示す図である。
【0057】
図14に示されるセンサユニット57は、図1及び図2に示されるセンサユニット7に類似した構成を備えており、センサユニット7に代わって検査装置1に組み込むことができるものである。センサユニット57は略直方体形状の筐体59を有し、筐体59内には、検査装置の高さ方向に延在する仕切り部60が設けられている。
【0058】
仕切り部60により形成された筐体57の一方の空間61a内には、3つの光源62A,62B,62Cが収容されている。光源62Aは紫外成分を含む光を発生させる紫外線LEDであり、光源62Bは赤外成分を含む光を発生させる赤外線LEDであり、光源62Cは緑色光を発生させる緑色LEDである。筐体57の上面部に設けられた回路プリント基板(図示しない)には、光源62A,62B,62Cの照射光量をモニタするモニタ用フォトセンサ64A,64B,64Cが実装されている。また、光が紙幣の表面で反射して不要なノイズとなることを防止するために、不要な光成分を除去することができる光学フィルタ66が筐体57の下面部に配置されている。
【0059】
仕切り部60により形成された筐体57の他方の空間61b内には、検知用フォトセンサ67及び光学フィルタ68が収容されている。フォトセンサ67は、光源62A,62B,62Cより紙幣の表面に光を照射したときに紙幣の表面から発生する光を受光するものであり、上記の回路プリント基板(図示しない)に固定されている。光学フィルタ68は、紙幣の表面から発生する光のうちフォトセンサ67に不要な光成分を除去するためのものである。
【0060】
なお、光学フィルタ66,68は、センサユニット57において特に必須の構成要素ではない。
【0061】
図7に示されるセンサユニット57は、緑色LEDである光源62Cと、光源62Cの照射光量をモニタするモニタ用フォトセンサ64Cを備えること、及び、フィルタ16,18の機能が異なることを除いては、図2に示される第1の実施形態におけるセンサユニット7と同様の構成を備える。そのため、図3に示される制御ユニット8の光源処理部20にて光源62Cに対応させた処理を行わせることで、上述の第1の実施形態に係る検査装置と同様に搬送路2上を通る紙幣3の真偽判別及び金種判別を行うことができる。
【0062】
このように、緑色のLEDを第3の光源に用いた場合、緑色光を照射したときのフォトセンサの出力データも紙幣判定に加味されるので、より高い紙幣の認識が可能となる。緑色のLEDは可視光の中では紙幣の印刷パターンの各色に対し高いコントラストが得られると共に波長の短いLEDの中では比較的安価で輝度も高いので、第3の光源に好適である。
【0063】
なお、センサユニット57のように3つの光源を備えるセンサユニットは、上述の第2の実施形態に係る検査装置30のセンサユニット31(図7,8及び9参照)のように、3つのフォトセンサを設け、そのフォトセンサ間を仕切り部で区切ることで紙幣の表面から発生する光を光源別に受光する構成に変更しても良い。
【0064】
また、上記実施形態では複数の光源を利用しているが、光源としては、白色光源のように、複数の波長帯域をもった光を照射する1つの光源を使用してもよい。
【0065】
さらに、上記実施形態は、紙幣を検査するものであるが、本発明の検査装置は、特に紙幣には限られず、伝票、証券、カード等といった検査対象物にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、搬送路上を通る対象物の真偽等を精度良く認識することができる。これにより、高精度に偽造された対象物にも十分に対処することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路上を通る対象物を検査する検査装置であって、
複数の波長帯域の光を前記対象物に照射する照明部と、
前記対象物から発生する光を受光する少なくとも1つの受光検知素子と、
前記照明部により前記対象物に前記複数の波長帯域の光を照射した時に前記対象物から発生する光を前記受光検知素子で略同一時間内に受光することによって得られる複数の検出信号を合成し、この合成データを予め設定された基準データと比較・照合することにより、前記対象物を識別する識別処理部とを備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記識別処理部は、前記合成データとして、前記照明部により前記対象物に前記複数の波長帯域の光を照射した時に前記対象物から発生する光を前記受光検知素子で略同一時間内に受光することによって得られる複数の検出値の比を求めることを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記照明部は、波長帯域の異なる光を照射する複数の光源と、前記各光源を個々に切り換えて点灯させるように制御する点灯制御部とを有することを特徴とする請求項1または2記載の検査装置。
【請求項4】
前記照明部は、波長帯域の異なる光を照射する複数の光源を有し、
前記受光検知素子は、前記各光源より前記対象物に光を照射した時に前記対象物から発生する光を前記各光源に対応して別々に受光するように複数有していることを特徴とする請求項1または2記載の検査装置。
【請求項5】
前記搬送路と前記各受光検知素子との間には、前記各光源より前記対象物に光を照射した時に前記対象物から発生する複数の特徴をもった光成分のうち一部の光成分のみを透過させる光学フィルタがそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項4記載の検査装置。
【請求項6】
前記複数の光源は、紫外線を照射する第1光源と、赤外線を照射する第2光源とを含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項7】
前記搬送路と前記受光検知素子との間には、前記第1光源より照射される紫外線を除去する紫外線除去フィルタが配置されていることを特徴とする請求項6記載の検査装置。
【請求項8】
前記搬送路と前記第1光源及び前記第2光源との間には、前記第1光源より照射される紫外線に含まれる可視光成分を除去すると共に、前記第2光源より照射される赤外線を透過させる紫外線・赤外線透過フィルタが配置されていることを特徴とする請求項6または7記載の検査装置。
【請求項9】
前記複数の光源は、紫外線を照射する第1光源と、赤外線を照射する第2光源と、緑色の光を照射する第3光源とを含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項1】
搬送路上を通る対象物を検査する検査装置であって、
複数の波長帯域の光を前記対象物に照射する照明部と、
前記対象物から発生する光を受光する少なくとも1つの受光検知素子と、
前記照明部により前記対象物に前記複数の波長帯域の光を照射した時に前記対象物から発生する光を前記受光検知素子で略同一時間内に受光することによって得られる複数の検出信号を合成し、この合成データを予め設定された基準データと比較・照合することにより、前記対象物を識別する識別処理部とを備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記識別処理部は、前記合成データとして、前記照明部により前記対象物に前記複数の波長帯域の光を照射した時に前記対象物から発生する光を前記受光検知素子で略同一時間内に受光することによって得られる複数の検出値の比を求めることを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記照明部は、波長帯域の異なる光を照射する複数の光源と、前記各光源を個々に切り換えて点灯させるように制御する点灯制御部とを有することを特徴とする請求項1または2記載の検査装置。
【請求項4】
前記照明部は、波長帯域の異なる光を照射する複数の光源を有し、
前記受光検知素子は、前記各光源より前記対象物に光を照射した時に前記対象物から発生する光を前記各光源に対応して別々に受光するように複数有していることを特徴とする請求項1または2記載の検査装置。
【請求項5】
前記搬送路と前記各受光検知素子との間には、前記各光源より前記対象物に光を照射した時に前記対象物から発生する複数の特徴をもった光成分のうち一部の光成分のみを透過させる光学フィルタがそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項4記載の検査装置。
【請求項6】
前記複数の光源は、紫外線を照射する第1光源と、赤外線を照射する第2光源とを含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項7】
前記搬送路と前記受光検知素子との間には、前記第1光源より照射される紫外線を除去する紫外線除去フィルタが配置されていることを特徴とする請求項6記載の検査装置。
【請求項8】
前記搬送路と前記第1光源及び前記第2光源との間には、前記第1光源より照射される紫外線に含まれる可視光成分を除去すると共に、前記第2光源より照射される赤外線を透過させる紫外線・赤外線透過フィルタが配置されていることを特徴とする請求項6または7記載の検査装置。
【請求項9】
前記複数の光源は、紫外線を照射する第1光源と、赤外線を照射する第2光源と、緑色の光を照射する第3光源とを含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項記載の検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【国際公開番号】WO2005/078670
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【発行日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517927(P2005−517927)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001573
【国際出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【発行日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2005/001573
【国際出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
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