検査領域設定方法およびX線検査システム
【課題】X線画像を用いて被検査対象を検査する場合に、被検査対象における検査領域を精度よく設定することが可能なX線検査方法を提供する。
【解決手段】被検査物の検査を実行するX線検査装置において、被検査物における検査領域を設定する検査領域設定方法は、被検査物の検査対象を含む第1の領域の可視画像を撮像するステップ(S104)と、被検査物の検査対象を含む第2の領域に対して、X線画像を撮像するステップ(S112)と、第1の領域についての可視画像と第2の領域についてのX線画像を、位置および倍率をそろえて、検査対象の位置を示すマークとともに同時に表示するステップ(S118)と、表示した検査対象のマークの位置およびX線画像における検査対象の位置について確認の入力を受け付け、検査領域を確定するステップ(S120)とを備える。
【解決手段】被検査物の検査を実行するX線検査装置において、被検査物における検査領域を設定する検査領域設定方法は、被検査物の検査対象を含む第1の領域の可視画像を撮像するステップ(S104)と、被検査物の検査対象を含む第2の領域に対して、X線画像を撮像するステップ(S112)と、第1の領域についての可視画像と第2の領域についてのX線画像を、位置および倍率をそろえて、検査対象の位置を示すマークとともに同時に表示するステップ(S118)と、表示した検査対象のマークの位置およびX線画像における検査対象の位置について確認の入力を受け付け、検査領域を確定するステップ(S120)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査領域設定方法およびX線検査システムに関し、より特定的には、プリント基板と回路部品との間の接合の良否等を検査するのに用いられる検査領域設定方法およびX線検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板(以下、単に「基板」ともいう)においてはんだ付けされた部品について、はんだ付けの状態の良否等を非破壊検査で検査するために、X線CT(Computed Tomography)がしばしば用いられている。X線CTでは、対象物を複数の方向からX線により撮像し、X線が吸収された度合い(減衰量)の分布を示す複数枚の透視画像を取得する。さらに、複数枚の透視画像に基づく再構成処理を行ない、検査対象のX線吸収係数の分布の2次元データもしくは3次元データを得る。
【0003】
このような検査では、多数の同一形状の基板について、それぞれ同じ位置を次々と検査する場合があり、このような場合、位置決めの基準にする被測定物を用いて検査位置の検査装置への教示(ティーチング)が行なわれる。そして、教示された検査の位置について、同種の被測定物のX線透視画像が次々に生成され、当該透視画像に基づいて、各被測定物についての検査が行なわれる。
【0004】
このような検査に関する技術は、従来から種々開示されている。たとえば、特許文献1や特許文献2に開示された技術では、ティーチングにおいて、検査位置の入力を受付ける際に、被測定物の可視光画像が表示される。
【0005】
基板に関し、上記したような部品のはんだ付けの状態の良否等を検査するためには、部品の位置だけでなく、部品におけるはんだ付けの位置等、検査対象とする位置や形状を指定する情報が設定されていることが必要とされる。
【0006】
しかし、従来の検査装置では、基板に、BGA(Ball Grid Array)のようにはんだ付けの部分が部品本体に隠れて見えない部品が実装されている場合、はんだ付けの位置などの情報の入力の正確性は、ユーザの経験に左右されるところが大きく、このため、検査の精度がユーザの経験によって大きく左右されるという問題があった。また、QFP(Quad Flat Package)のようなパッケージ部品についても、部品ごとに多数存在するはんだ付けの位置をユーザが逐一指定することが必要であったため、ユーザに煩雑な作業を要求することとなっていたという問題があった。
【0007】
そこで、上述したようなX線CTをインラインの検査装置として使用する場合においては、上記のような問題点の改善のために、複数存在する基板の検査箇所について、検査領域および検査ロジックをティーチングすることが知られている。たとえば、特許文献3(特開2010−160071号公報)には、ユーザが部品が外形と位置を教示すると、CT再構成を行い、ボール(電極の位置)電極の位置を抽出することが開示されている。
【0008】
また、特許文献4(特開2006−220640号公報)には、X線源とディテクタに対して回転可能な被検体の保持機構と、X線源と同軸方向から、撮像するCCDカメラで撮像を行い、X線源に対して位置合わせが不要で位置ヅレが無く、正確に検出することが可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−218784号公報
【特許文献2】特開2007−127490号公報
【特許文献3】特開2010−160071号公報
【特許文献4】特開2006−220640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、たとえば、特開2010−160071号公報に開示されるように、可視光画像において検査領域の位置を矩形等による表示する構成では、必ずしも、ユーザにとって検査位置が正しいかを判断するのに十分な情報が表示されておらず、検査の精度には、やはり、ユーザの経験に負うところが残る。
【0011】
また、基板検査においては、基板の表面だけでなく、裏面も検査をする場合が存在するが、この場合は表面、裏面の位置合わせを正確に行った上で重ね合わせた後、ユーザが検査対象及びその位置を確認をしないと誤った領域を検査領域として設定してしまう可能性がある。
【0012】
さらに、特開2006−220640号公報に開示された技術では、透過画像とCCD画像を同軸で撮像し、表面画像と内部画像を合わせて表示する。これは解析的に用いられることが前提であり、自動検査を行う検査位置設定ではない。さらに、たとえば、プリント基板のようにカメラの視野、X線検査機の視野よりも対象物が大きい場合は、検査領域を設定することが出来ない。
【0013】
本発明はかかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、X線画像を用いて被検査対象を検査する場合に、被検査対象における検査領域を精度よく設定することが可能な検査領域設定方法およびX線検査システムを提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、被検査物が電子部品の実装された基板である場合に、実装部品と基板との接続配線についての情報が正確にかつ容易に入力される検査領域設定方法、X線検査装置およびX線検査プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の1つの局面にしたがうと、検査領域設定方法であって、X線を用いて被検査物の検査を実行するX線検査装置において、被検査物における検査領域を設定する検査領域設定方法であって、被検査物の検査対象を含む第1の領域の可視画像を撮像するステップと、被検査物の検査対象を含む第2の領域に対して、X線画像を撮像するステップと、第1の領域についての可視画像と第2の領域についてのX線画像を、位置および倍率をそろえて、検査対象の位置を示すマークとともに同時に表示するステップと、表示した検査対象のマークの位置およびX線画像における検査対象の位置について確認の入力を受け付け、検査領域を確定するステップとを備える。
【0016】
好ましくは、被検査物は、複数の電子部品が搭載された基板であり、可視画像を撮像するステップは、基板の表面側の第1の可視画像および裏面側の第2の可視画像を撮像するステップを含み、同時に表示するステップは、第1または第2の可視画像の一方とX線画像との位置および倍率をそろえて表示するステップを含み、確定するステップは、表面側および裏面側それぞれの検査領域を確定するステップを含む。
【0017】
好ましくは、X線画像は、複数の透視方向から撮影された複数のX線画像に基づいて再構成された被検査物の検査対象を含む領域の再構成画像である。
【0018】
好ましくは、再構成画像は、第1および第2の可視画像においては、死角となる検査対象を含む部分における基板に平行な断面での断層画像である。
【0019】
好ましくは、X線画像は、被検査物のX線の透過画像である。
この発明の他の局面に従うと、X線を用いて被検査物を検査するX線検査システムであって、被検査物における検査対象の位置を指定する情報を格納するための記憶手段と、被検査物の検査対象を含む第1の領域の可視画像を撮像する可視光画像撮影手段と、被検査物の検査対象を含む第2の領域に対して、X線画像を撮像するX線画像撮影手段と、第1の領域についての可視画像と第2の領域についてのX線画像を、位置および倍率をそろえて表示するとともに、記憶手段に格納された情報に基づいて検査対象の位置を示すマークを同時に表示する出力手段と、表示した検査対象のマークの位置およびX線画像における検査対象の位置について確認の入力を受け付ける入力手段と、入力に応じて、確定された検査領域を特定するための設定情報を記憶手段に格納する制御手段とを備える。
【0020】
好ましくは、被検査物は、複数の電子部品が搭載された基板であり、可視光画像撮影手段は、基板の表面側の第1の可視画像および裏面側の第2の可視画像を撮像し、出力手段は、第1または第2の可視画像の一方とX線画像との位置および倍率をそろえて表示し、制御手段は、表面側および裏面側それぞれの検査領域を特定するための設定情報を記憶手段に格納する。
【0021】
好ましくは、X線画像は、複数の透視方向から撮影された複数のX線画像に基づいて再構成された被検査物の検査対象を含む領域の再構成画像である。
【0022】
好ましくは、再構成画像は、第1および第2の可視画像においては、死角となる検査対象を含む部分における基板に平行な断面での断層画像である。
【0023】
好ましくは、X線画像は、被検査物のX線の透過画像である。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、X線画像と可視光画像を重ね合わせて検査位置を表示するためユーザが検査対象物と検査位置との関係を把握することができ、ユーザが視認しやすいとの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係るX線検査装置100の概略ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係るX線検査装置100の構成を説明するための図である。
【図3】本実施の形態におけるティーチング処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図4】図3に示した「画像の位置合せ処理(S114)」と「画像の伸縮・重ね合わせ処理(S116)」とを説明するためのフローチャートである。
【図5】基板の表側の可視光画像と裏側の可視光画像とX線画像との位置合わせを説明するための概念図である。
【図6】可視光画像とX線画像とを重ね合わせて表示するにあたり、光学画像の透過率を設定する画面の例である。
【図7】可視光画像(表側)とX線再構成画像とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【図8】図7に示した画像をさらに縮小して、半導体チップ全体のはんだづけ位置を確認するための表示例を示す図である。
【図9】可視光画像(裏側)と部品番号とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【図10】可視光画像(裏側)とX線透過画像とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【図11】図10と同様に表示を可視光画像(裏側)とX線透過画像とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【図12】本実施の形態に係るX線検査の流れをフローチャート形式で示す図である。
【図13】2値化画像内のはんだ面積に基づく良否判定について説明するための図である。
【図14】X線検査装置100の他の構成を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部分には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。また、本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸とは、互いに直行する軸を言うものとする。
【0027】
(構成の概略)
図1を参照して、本実施の形態に係るX線検査装置100の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るX線検査装置100の概略ブロック図である。
【0028】
X線検査装置100は、X線18を出力するX線源10と、X線検出器23と、画像取得制御機構30と、検査対象1の位置を移動する検査対象駆動機構110とを備える。さらに、X線検査装置100は、入力部40と、出力部50と、X線源制御機構60と、変位計114と、光学カメラ116(図示せず)、検査対象位置制御機構120と、演算部70と、記憶部90とを備える。さらに、X線検査装置100は、CAD(Computer Aided Design)データ等に基づいて、検査対象となる基板に実装される電子部品の型番、部品自身の基板における配置位置、配置方向、部品のサイズ、基板内のはんだ付け用の電極パッド配置(すなわち、ハンダづけのされる位置の配置)などに関する情報を格納するための検査対象データベース(以下、「検査対象DB」)200とを備える。
【0029】
なお、変位計114と光学カメラ116については、後に詳しく説明する。
検査対象1は、X線源10とX線検出器23との間に配置される。本実施の形態においては、検査対象1は、部品が実装された回路基板であるとする。なお、図1では、下から順にX線源10、検査対象1、X線検出器23が設置されているが、X線源の保守性の観点より、下から順に、X線検出器23、検査対象1、X線源10との並びでこれらを配置してもよい。
【0030】
X線源10は、X線源制御機構60によって制御され、検査対象1に対して、X線18を照射する。本実施の形態では、検査対象1は、回路部品を実装した基板であるものとする。特に限定されないが、X線源10は、外部からの制御に応じて、焦点位置をターゲット上で移動させることが可能な走査型X線源とすることが可能である。
【0031】
検査対象1は、検査対象駆動機構110により移動される。検査対象駆動機構110の具体的な構成については、後述する。検査対象位置制御機構120は、演算部70からの指示に基づいて、検査対象駆動機構110の動作を制御する。
【0032】
X線検出器23は、X線源10から出力され、検査対象1を透過したX線を検出して画像化する2次元X線検出器である。X線検出器23としては、I.I.(Image Intensifier)管や、FPD(フラットパネルディテクタ)を用いることができる。設置スペースの観点からは、X線検出器23には、FPDを用いることが望ましい。また、インライン検査で使うことができるようにX線検出器23は、高感度であることが望ましく、CdTeを使った直接変換方式のFPDであることが特に望ましい。
【0033】
画像取得制御機構30は、検出器駆動制御機構32と、画像データ取得部34を含む。検出器駆動制御機構32は、演算部70からの指示に基づき、X線検出器駆動部22の動作を制御し、X線検出器23を移動する。画像データ取得部34は、演算部70から指定されたX線検出器23の画像データを取得する。
【0034】
入力部40は、ユーザからの指示入力等を受け付けるための操作入力機器である。出力部50は、測定結果等を外部に出力する装置である。本実施の形態では、出力部50は、演算部70で構成されたX線画像等を表示するためのディスプレイである。
【0035】
すなわち、ユーザは、入力部40を介して様々な入力を実行することができ、演算部70の処理によって得られる種々の演算結果が出力部50に表示される。出力部50に表示される画像は、後に説明するティーチング処理のために使用される他、ユーザによる目視の良否判定のために出力されてもよいし、あるいは、後で説明する良否判定部78の良否判定結果として出力されてもよい。
【0036】
X線源制御機構60は、電子ビームの出力を制御する電子ビーム制御部62を含む。電子ビーム制御部62は、演算部70から、X線焦点位置、X線エネルギー(管電圧、管電流)の指定をうける。指定されるX線エネルギーは、検査対象の構成によって異なる。
【0037】
演算部70は、記憶部90に格納されたプログラム96を実行して各部を制御し、また、所定の演算処理を実施する。演算部70は、X線源制御部72と、画像取得制御部74と、再構成部76と、良否判定部78と、検査対象位置制御部80と、X線焦点位置計算部82と、撮像条件設定部84と、検査情報生成部86とを含む。
【0038】
X線源制御部72は、X線焦点位置、X線エネルギーを決定し、X線源制御機構60に指令を送る。
【0039】
画像取得制御部74は、X線検出器23が画像を取得するように、画像取得制御機構30に指令を送る。また、画像取得制御部74は、画像取得制御機構30から、画像データ
を取得する。
【0040】
再構成部76は、画像取得制御部74により取得された複数の画像データから3次元データを再構成する。
【0041】
良否判定部78は、部品が実装される基板表面の高さ(基板高さ)を求め、基板高さの断層画像をもとに検査対象の良否を判定する。なお、良否判定を行なうアルゴリズム、あるいは、アルゴリズムへの入力情報は、検査対象によって異なるため、良否判定部78は、これらを撮像条件情報94から入手する。
【0042】
検査対象位置制御部80は、検査対象位置制御機構120を介し、検査対象駆動機構110を制御する。
【0043】
X線焦点位置計算部82は、検査対象1のある検査エリアを検査する際に、その検査エリアに対するX線焦点位置や照射角などを計算する。
【0044】
撮像条件設定部84は、検査対象1に応じて、X線源10からX線を出力する際の条件(たとえば、X線源に対する印加電圧、撮像時間等)を設定する。
【0045】
記憶部90は、X線焦点位置情報92と、撮像条件情報94と、上述した演算部70が実行する各機能を実現するためのプログラム96と、X線検出器23が撮像した画像データ98とを含む。X線焦点位置情報92には、X線焦点位置計算部82によって計算されたX線焦点位置が含まれる。撮像条件情報94は、撮像条件設定部84によって設定された撮像条件や、良否判定を行なうアルゴリズムに関する情報を含む。
【0046】
なお、記憶部90および検査対象DB200は、データを蓄積することができるものであればよい。記憶部90は、例えば、RAM(Random Access Memory)やEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read−Only Memory)やHDD(Hard Disc Drive)等の記憶装置により構成される。検査対象DB200は、HDDでもよいし、あるいは、ネットワークで接続された他のコンピュータに設けられた記憶装置でもよい。
【0047】
(具体的構成)
本実施の形態に係るX線検査装置100の具体的構成について、図2を参照して説明する。図2は、本実施の形態に係るX線検査装置100の構成を説明するための図である。なお、図2において、図1と同一部分には、同一符号を付している。また、図2では、図1に示した部分のうち、X線焦点位置の制御、X線検出器位置の制御、検査対象位置の制御等に直接関係し、説明に必要な部分を抜き出して記載している。
【0048】
X線源10は、本実施の形態では、コーンビーム型の線源であるものとする。なお、上述したように、X線源10は、X線を発生する位置(X線焦点位置)を指定された方向に走査可能な、走査型X線源であってもよい。X線源10は、X線源制御機構60を通した演算部70からの命令に従って、X線を発生させる。
【0049】
X線源10は、密閉型のX線源であり、X線検査装置100の上部もしくは下部に据え付けられている。なお、X線源10のターゲットは透過型であってもよいし、反射型であってもよい。X線源10は、稼動部(図示しない)に取り付けられており、垂直方向に移動可能であるものとする。
【0050】
X線検出器23は、検査対象1(基板)を挟むようにX線源10と対向した位置に配置される。X線検出器23は、X線源10から照射されたX線を画像化する。また、X線検出器23はX線検出器駆動部22に取り付けられている。X線検出器駆動部22は、3次
元ステージであって、X線検出器23を、水平方向および垂直方向に移動可能である。
【0051】
検査対象駆動機構110は、X線源10とX線検出器23との間に設置される。検査対象駆動機構110は、ステージ111a,111b、および、ステージ111a,111bに付属されている基板レール112a,112bを含む。ステージ111a,111bは、検査対象1を水平方向に平行移動可能である。基板レール112a,112bは、各々、検査対象1を上下からはさみこむことで基板を固定している。
【0052】
ステージ111a,111bおよび基板レール112a,112bの動作は、基板駆動制御機構126によって制御される。
【0053】
図2を参照して、X線検査装置100は、変位計114および光学カメラ116(これは、図1では示していなかった)を備える。変位計114は、基板までの距離を測定する。したがって、変位計114は、後で詳述する基板の反りを計測することが可能である。光学カメラ116は可視光により基板を撮影する。光学カメラ116は、検査する位置の設定のためのフィデューシャルマークの撮影に用いられる。変位計114および光学カメラ116は、X線による撮像時にはX線に被爆しないように退避機構(図示していない)により、X線が照射されない領域に退避される。
【0054】
また、光学カメラ116には、図示しない取付機構により照明装置115が取付けられている。照明装置115は、光学カメラ116の視野(撮像エリア)全体を均一に点灯する。本実施の形態では、照明装置115は、白色光を発するリング形状のLED(Light Emitting Diode)光源とされるが、これに限定されず、他の光源であっても良い。また、必ずしも光学カメラ116と一体的に設けられなくてもよく、光学カメラ116に対して独立して設けられてもよい。また、照明装置115も、光学カメラ116等と同様に、X線による撮像時にはX線に被爆しないように退避機構(図示していない)により、X線が照射されない領域に退避される。
【0055】
以上の構成により、X線検査装置100は、線源−基板間距離と線源−ディテクタ間の距離の比(拡大率)を変更することができる。その結果、X線検査装置100は、X線検出器23で撮像される検査対象1の大きさ(したがって、分解能)を変更できる。
【0056】
また、X線検査装置100は、様々な方向から基板を撮像できるように、基板とX線検出器23とを稼動できる。本実施の形態では、この様々な方向からの撮像結果を基に、CT(Computed Tomography)と呼ばれる3次元データ生成手法を用いて、検査対象1の3次元データを生成する。
【0057】
また、本実施の形態では、X線検査装置100は、インライン検査に用いられる。インライン検査のために、検査対象駆動機構110は、基板を搬入出する機構をさらに含む。ただし、このような基板の搬入出機構は、図2には示していない。基板の搬入出機構としては、基板レール上に配置したベルトコンベアが用いられるのが一般的である。あるいは搬入出機構としてプッシャと呼ばれる棒を用いてもよい。プッシャにより基板をレール上で滑らせることにより、基板を移動させることができる。
【0058】
演算部70としては、一般的な中央演算装置(CPU)を用いることができる。記憶部90は、主記憶部90aと補助記憶部90bとを含む。主記憶部90aとしてはメモリを、補助記憶部90bとしてはHDD(ハードディスクドライブ)を、例えば用いることができる。つまり、演算部70および記憶部90としては、一般的な計算機を使用可能である。
【0059】
(ティーチング処理の流れ)
以下では、検査対象物である電子部品が表面側および裏面側に実装されているプリント基板を例にとって、本実施の形態のX線検査装置100の動作について説明する。
【0060】
X線検査装置100には、検査対象1の検査に関し、事前に、検査対象1における検査位置等についての教示(ティーチング)をする情報を入力できる。このような情報を入力する処理(ティーチング処理)の内容について、当該処理のフローチャートである図3を参照して説明する。なお、ティーチング処理は、X線検査装置100において、検査情報生成部86によって実現される。また、ティーチング処理において生成された、検査の教示に関する情報は、たとえば撮像条件情報94として記憶部90に記憶される。
【0061】
図3は、本実施の形態におけるティーチング処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0062】
図3を参照して、ティーチング処理が開始されると(S100)、まず、検査対象である基板が裏向き(光学カメラ116側に裏面が向かう方向)に搬入される(S102)。
【0063】
続いて、X線検査装置100は、基板が裏向きの状態で光学カメラ116により可視光画像を撮影する(S104)。その後、基板は、いったん、可視光画像を撮影できる駆動範囲からは搬出され(S106)、所定の反転機構(図1および図2には図示せず)により、向きが反転され、再び、基板が表向きの状態で搬入され(S108)、基板の表側の状態で光学カメラ116により可視光画像が撮影される(S112)。
【0064】
引き続いて、基板が表向きの状態で、X線画像の撮影が行なわれる(S112)。
以上により、基板の表側の可視光画像と裏側の可視光画像とが撮影され、さらに、X線画像が撮影されたので、X線検査装置100の演算部70の制御により、これら3つの画像の位置合せが実行され(S114)、さらに、画像の伸縮(倍率の変更)と重ね合わせ処理が実行される(S116)。さらに、演算部70の制御により、出力部50に対して、重ね合わせ画像の表示が行なわれる(S118)。特に限定されないが、たとえば、表側の可視光画像とX線画像とが重ね合わされた画像から表示がされるものとして説明する。
【0065】
ここで、検査対象DB200に格納されている情報に基づいて、上記のような重ね合わされた画像に、さらに重畳して、表側に実装される部品の検査対象(ここでは、はんだボール)の位置を示すマーク、たとえば、矩形のマークも併せて表示される。ここで、ユーザは、このようなマークの位置が検査領域(「検査ウィンドウ」と呼ぶ)として適切であるかを表示に基づいて判断し、適切であれば、検査ウィンドウを確定するための確認入力を行なう。一方で、もしも適切でない場合には、たとえば、手動により、検査ウィンドウの位置および方向を適切と判断される位置・方向に動かし、その上で、確認入力を行う。このような確認入力に応じて、演算部70は、記憶部90の撮像条件情報として、表側の検査対象部品に対する検査ウィンドウの相対的な位置を設定情報として格納する。この場合、たとえば、特に限定されないが、記憶部90には、部品の所定の基準点(部品の外形の所定の角部分等)に対する相対的な位置として、検査ウィンドウが設定される(S120)。
【0066】
次に、演算部70の制御により、出力部50からの出力が、裏面側の表示に切り替わり(S122)、表側と同様にして、裏側についての重ね合わせ画像表示され(S124)、検査対象DB200に格納されている情報に基づいて、上記のような重ね合わされた画像に、さらに重畳して、裏側に実装される部品の検査対象(ここでは、はんだボール)の位置を示すマーク(検査ウィンドウ)も併せて表示される。ここでも、ユーザは、このようなマークの位置が検査ウィンドウとして適切であるかを表示に基づいて判断し、適切であれば、検査ウィンドウを確定するための確認入力を行なう。一方で、もしも適切でない場合には、たとえば、手動により、検査ウィンドウの位置および方向を適切と判断される位置・方向に動かし、その上で、確認入力を行う。このような確認入力に応じても、演算部70は、記憶部90の撮像条件情報として、裏側の検査対象部品に対する検査ウィンドウの相対的な位置を設定情報として格納する。この場合も、たとえば、特に限定されないが、記憶部90には、部品の所定の基準点(部品の外形の所定の角部分等)に対する相対的な位置として、検査ウィンドウが設定される(S126)。
【0067】
さらに、後に説明するような検査基準の設定がユーザにより行なわれ、検査結果を試行的に得て動作の確認をするためのテストが実行される(S128)。さらに、基板が搬出され(S130)、ティーチング処理が終了する(S130)。
【0068】
図4は、図3に示した「画像の位置合せ処理(S114)」と「画像の伸縮・重ね合わせ処理(S116)」とを説明するためのフローチャートである。
【0069】
なお、以下の説明では、特に限定されないが、光学カメラおよびX線カメラ(X線検出器23によりX線画像を撮影する構成を便宜上、「X線カメラ」と呼ぶ)の光学倍率は、製造組立て時に、規定値に設定しておくものとする。光学カメラおよびX線カメラの性能としては、たとえば、以下のような値であるものとする。
【0070】
光学カメラ: 分解能:22μm
X線カメラ: 分解能:可変 10、15、20、25、30μm
このうち、ティーチングのウィンドウ設定に用いるX線カメラの分解能は、20μmとする。すなわち、光学カメラとX線カメラとの分解能とは、必ずしも一致していない。また、製造時において、光学カメラで撮影された表側の画像上の位置と、これに対応するX線カメラで撮影された画像上の位置とは、両者が一致するように較正されているものとする。
【0071】
そこで、以下に説明するように、光学カメラの画像を拡大することにより、X線カメラの分解能20μmに合わせる。なお、両者の分解能の関係では、光学カメラの画像を縮小することが必要な場合もありうる。
【0072】
図4を参照して、可視光画像(表側)の画像中心を基準に、上記の例では、以下のような倍率の拡大が実行されることになる(S200)。
【0073】
光学カメラ画像(重ね合わせ用画像)のサイズ
=光学カメラ画像(オリジナル)のサイズ×22/20
続いて、可視光画像(表側)とX線画像とが重ねあわされる(S202)。
【0074】
ここで、このような重ね合わせの位置の基準としては、たとえば、フィデューシャルマークを用いることができる。フィデューシャルマークは、基板の対角方向の端に、銅配線パターンで形成されている。したがって、基板の形状や、基板に対する配線の形成位置のオフセットなどに影響されることなく、プリント基板への銅配線パターンについて一義に、デバイス位置を規定することができる。
【0075】
次に、可視光画像(表側)の画像から、所定のフィデューシャルマークの位置(たとえば、基板表側の左上の基板の角)が検出され(S204)、このようにして抽出された「基板左上の基板の角」の画像上の位置Aが記憶部90に保存される(S206)。
【0076】
さらに、可視光画像(裏側)の画像中心を基準に、表側と同様にして、画像の拡大処理が実行される(S210)。
【0077】
次に、可視光画像(裏側)の画像から、所定のフィデューシャルマークの位置(たとえば、基板裏側左上の基板の角)が検出され(S212)、このようにして抽出された「基板裏側左上の基板の角」の画像上の位置Aとの差分(Δ(x、y))が記憶部90に保存される(S212)。
【0078】
裏面側の画像については、可視光画像(裏側)とX線画像とを、Δ(x、y)だけずらして、両者を重ね合わせる(S214)。
【0079】
上述したように、本実施の形態では、表面の可視光画像における基板の角を基準として、可視光画像とX線画像との位置合せを行い、検査ウィンドウの位置を特定する。特定された位置は、部品に対しての相対的な座標として登録されるので、このようにして登録されても、これは、部品についての基準座標(フィデューシャルマークを基準とした座標)で登録されたことになる。
【0080】
CADデータ上では、プリント基板上に実装される各部品について、部品の品番、部品中心の座標(X,Y)、部品の回転角度θが登録されている。ここでは、検査ウィンドウは、検査したいハンダの領域であり、部品の品番ごと(部品の種類ごと)に登録する。
【0081】
なお、本実施の形態においては、後に説明するように、検査時には、基板の搬入後に、フィデューシャルマークの撮影および基板高さの計測などが行なわれる。基板高さの計測が行なわれるので、X線画像がCT画像(再構成画像)である場合は、測定された基板高さから所定の高さの断面を表示することで、表面のハンダ部分の画像を表示できる。また、基板高さと基板の厚みの情報から、X線画像が再構成画像(CT画像)である場合は、[(測定された基板高さ)−(基板厚み)−(所定の高さ)]の断面を表示することで、裏面のハンダ部分の画像を表示できる。
【0082】
図5は、上述したような基板の表側の可視光画像と裏側の可視光画像とX線画像との位置合わせを説明するための概念図である。
【0083】
前提として、上述のとおり、光学カメラとX線カメラの相対位置は、製造組み立て時に、オフセット値を計測・設定しておくことにより、光学カメラで撮影された表側の画像上の位置と、これに対応するX線カメラで撮影された画像上の位置とは、両者が一致するように較正されているものとする。
【0084】
そして、図5に示されるように、可視光画像(表側)をリファレンスとして、可視光画像(裏側)の位置を合せと、可視光画像(表側)とX線画像は、基板の入れ替えをしていないので、自然と位置があうことになる。ここで、X線画像は、単一のX線透過画像でもよいし、複数の方向から同一箇所を撮影した複数のX線透過画像から再構成した再構成画像(CT画像)でもよい。
【0085】
図6は、可視光画像とX線画像とを重ね合わせて表示するにあたり、光学画像の透過率(重ね合わされたX線画像を可視光画像越しに見えるように表示する際の透過の割合)を設定する画面の例である。
【0086】
図6に示されるように、透過率を事前にまたは事後に適切な値に設定することにより、後に説明するように、可視光画像とX線画像とを重ね合わせて表示した際の検査対象の領域の視認性が向上する。
【0087】
なお、図6中に存在するボタン等で設定可能なパラメータは以下のとおりである。
【0088】
【表1】
【0089】
図7は、可視光画像(表側)とX線再構成画像とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【0090】
図7に示されるように、表側上面から撮影した可視光画像(表側)と基板と平行な方向であって基板表面から指定された高さのX線再構成画像の平面画像とが重ね合わされて表示されるとともに、X線再構成画像の平面画像中の指定された断面を示す再構成画像も併せて表示されている。
【0091】
さらに、表側上面から撮影した可視光画像(表側)とX線再構成画像の平面画像とが重ね合わされて表示された画像中には、CADデータに基づいて、基板(表側)上のはんだづけ用の電極パッド(ランド)の位置が矩形形状で表示されている。なお、矩形形状のウィンドウ(検査ウィンドウ)は、事前に設定されている部品については、自動的に「カメラ画像」の画面で表示される。事前に設定がない場合は、手動で、ユーザにより設定されてもよい。
【0092】
ユーザは、必要に応じて、この矩形形状の位置調整を行った上で、確認入力(たとえば、保存ボタンのクリック)を実行する。
【0093】
同様の画像表示と位置調整が事前に、可視光画像(裏側)とX線再構成画像とについて実行されている。なお、表と裏の表示の切り替えに応じて、X線再構成画像の表示も、表示の向きに合うように切り替えられるものとする。
【0094】
図8は、図7に示した画像をさらに縮小して、半導体チップ全体のはんだづけ位置を確認するための表示例を示す図である。
【0095】
図9は、可視光画像(裏側)と部品番号とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【0096】
図10は、可視光画像(裏側)とX線透過画像とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【0097】
X線再構成画像を表示させるか、X線透過画像を表示させるかは、ユーザの選択により設定できるものとする。
【0098】
タブの切り替えにより、可視光画像については、基板の表側を表示するか裏側を表示するかが切り替えられる。
【0099】
表と裏の表示の切り替えに応じて、X線透過画像の表示も、表示の向きに合うように切り替えられるものとする。
【0100】
図11は、図10と同様に表示を可視光画像(裏側)とX線透過画像とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【0101】
図11では、表側上面から撮影した可視光画像(表側)とX線透過画像とが重ね合わされて表示された画像中には、CADデータに基づいて、基板(表側)上のはんだづけ用の電極パッド(ランド)の位置が矩形形状で表示されている。
【0102】
ユーザは、必要に応じて、この矩形形状の位置調整を行った上で、確認入力(たとえば、保存ボタンのクリック)を実行する。
【0103】
以上のような処理により、可視光画像とX線画像とを重ね合わせて表示の位置をその画像に対して確認できる。このとき、X線像があることで、ハンダのある領域が、ユーザに対して可視化され、CADデータに基づく、基板上のはんだづけ用の電極パッド(ランド)の位置との一致を確認できる。
【0104】
(検査処理の流れ)
図12は、本実施の形態に係るX線検査の流れをフローチャート形式で示す図である。図12を参照して、本実施の形態に係るX線検査全体の流れについて説明する。
【0105】
図12を参照して、まず、処理が開始されると(ステップSA1)、X線検査装置100は、検査対象駆動機構110により、基板をX線検査装置100内部の規定位置に搬入する(ステップSA3)。規定位置は、通常、X線検査装置100の中央、すなわち、X線照射範囲の中央に設定されていることが好ましい。ただし、規定位置は、X線検出器23が基板のX線透視画像を撮像可能な位置であれば構わない。
【0106】
ステップSA5において、X線検査装置100は、光学カメラ116により、フィデューシャルマークを撮影する。また、X線検査装置100は、フィデューシャルマークの位置に基づいて、必要があれば、基板位置を補正する。具体的には、X線検査装置100は、搬入時と同様に基板位置を移動させる。これらの処理により、X線検査装置100は、基板搬入時に生じた基板位置のずれや基板の傾きを認識し、ずれおよび傾きを補正することが可能である。
【0107】
ステップSA7において、X線検査装置100は、変位計114を用いて、再構成領域(以下、視野ともいう)中の基板の高さを測定する。X線検査装置100は、計測された基板の高さを、主記憶部90aに保存しておく。保存された基板の高さは、後述するCT撮像時に使用される。
【0108】
一度の撮像では検査対象1全体を撮像できないなど、検査対象1が複数の視野を含む場合は、X線検査装置100は、CT撮像を行なう前に、全ての視野について、基板高さを計測しておく。これは、CT撮像時に変位計114が被爆しないように退避させる必要があることによる。このように基板高さを予め全て計測する方が、各視野のCT撮像の都度、基板高さを計測するのに比べて、全体の検査時間を短縮できる。
【0109】
ステップSA9において、X線検査装置100は、検査対象1内で、1つの視野を複数の方向から撮像する。本実施の形態では、X線検査装置100は、基板とX線検出器23とを水平方向に円軌道を描くように移動させて、視野を複数の方向から撮像する。撮像時の基板およびX線検出器23の位置は、照射角度θR、線源−基板間距離(FOD)、線源−検出器間距離(FID)により決定される。基板およびX線検出器23は、X線検出器23の中心に視野の中心が撮像されるように配置される。なお、基板およびX線検出器23の軌道は円でなくてもよく、矩形や直線等であってもよい。
【0110】
撮像枚数は、使用者により設定可能であるものとする。使用者は、求められる再構成データの精度に基づいて撮像枚数を決定することが好ましい。撮像枚数は、通常は、4〜256枚程度である。しかしながら、撮像枚数はこれに限られるものではない。例えば、X線検査装置100は、256枚を超える枚数の画像を撮像してももちろん構わない。
【0111】
ステップSA11において、X線検査装置100は、複数方向の撮像画像から再構成データを生成する。再構成処理は、様々な方法が提案されており、たとえば、Feldkamp法を用いることができる。
【0112】
ステップSA13において、X線検査装置100は、基板高さ、すなわち、部品が配置されている基板表面の高さを抽出する。ステップSA13で行なわれる処理の詳細については、後述する。
【0113】
ステップSA15において、X線検査装置100は、基板高さから高さ方向に所定の距
離だけ離れた高さの断層画像を、検査に用いる検査画像として取得する。ここで、検査画像の高さと基板高さとの間の距離は、使用者により設定されるものとする。なお、この距離は、検査対象1の設計データおよび検査方法に応じて設定されることが好ましい。本実施の形態では、部品が配置されている基板の表面から、部品が配置されている側に少し離れた高さの断層画像が検査画像に設定される。
【0114】
ステップSA17において、X線検査装置100は、検査画像を用いて、視野の良否判定を行なう。すなわち、X線検査装置100は、加熱後のはんだのぬれ性、はんだのボイドおよびブリッジの有無、異物の有無などを検査する。様々な良否判定手法が周知であり、X線検査装置100は、検査項目に適した良否判定手法を用いればよい。
【0115】
本実施の形態では、良否判定部78は、2値化画像内のはんだ面積に基づいて、実装基板の良否を判定する。以下、図13を参照して、本実施の形態における基板の良否判定の態様について説明する。図13は、2値化画像内のはんだ面積に基づく良否判定について説明するための図である。
【0116】
図13(A)は、電子部品が実装された基板の斜視図である。基板501上に、第1の部品502と、第2の部品503とが実装されている。第2の部品503は、BGA(Ball Grid Array)504等により、基板501に物理的および電気的に接続されている。
【0117】
図13(B)は、基板501と第2の部品503との接続箇所を基板501の面に垂直な断面で切った断面図である。BGA504は、第2の部品503と基板501の表面層505とを接続する。BGA504は、加熱され、加熱後の状態506に変形する。ただし、加熱後の状態506にボイド507が生じる場合がある。また、複数のはんだボール(以下、「ボール端子」とも言う)が結合しブリッジ508を形成する場合もある。
【0118】
X線検査装置100は、はんだボールを含むと期待される領域の3次元データを生成し、3次元データを切り出して断層画像を作成する。X線検査装置100は、作成した断層画像を2値化し、画像をはんだとそれ以外に分離した2値化画像を取得する。この2値化処理には、判別分析法等の一般的な2値化処理を用いることが可能である。検査装置は、2値化画像から白(もしくは1)の部分のラベリングを行ない、はんだを区別したラベリング画像を取得する。このラベリング処理には、ラスタスキャンによって連結の有無を判定するような一般的なラベリング処理を用いることが可能である。
【0119】
基板501の面に平行な断面の一例を、図13(C)に示す。図13(C)は、図13(B)において破線で示した断面で切った接続箇所の断面図である。図13(C)では、はんだを白、はんだ以外を斜線で示している。ここでは、正常、ボイド、ブリッジの3種類の状態を示した。図13(C)を参照して、ボイド507がある場合、はんだ内にはんだがない部分が生じる。ブリッジ508がある場合、正常時に比べ広範な領域にはんだが観察される。
【0120】
検査装置は、ラベリング画像からそれぞれのはんだの面積(白もしくは1の画素の個数)を計数し、はんだの面積を求める。検査装置は、面積が一定の範囲内であれば良品、それ以外であれば不良とすることで、はんだ接合面の良否を判定する。この一定の範囲の閾値は、予めユーザにより設定されることが一般的である。
【0121】
図12に戻って、ステップSA18において、X線検査装置100は、すべての視野に対して良否判定を行なったかどうか判断する。良否判定を行なっていない視野がある場合(ステップSA18においてNO)、X線検査装置100は、CT撮像(ステップSA9)からの処理を繰り返す。一方、すべての視野に対して良否判定が行なわれた場合(ステップSA18においてYES)、処理をステップSA19に進める。
【0122】
ステップSA19において、X線検査装置100は、基板をX線検査装置100から搬出する。具体的には、X線検査装置100は、検査対象駆動機構110により、基板をX線検査装置100の外に移動する。
【0123】
以上で、X線検査装置100は、1つの検査対象1についての検査を終了する(ステップSA21)。X線検査装置100は、複数の検査対象1についてのインライン検査を実行する場合には、ここまで説明したステップSA1からステップSA21までの一連の処理を繰り返す。
【0124】
図14は、X線検査装置100の他の構成を説明するための概念図である。
図1に示した構成では、検査対象DB200は、X線検査装置100の内部に設けられる構成であった。
【0125】
しかしながら、X線検査装置100がインラインで使用される場合、必ずしもCADデータ等は、このX線検査装置100に格納される必要はなく、図14に示されるように、ネットワークで接続され、製造ラインの外に配置される外部データ作成装置内に、検査対象DB200が格納されていてもよい。
【0126】
以上説明したような本実施の形態のX線検査装置100の構成により、X線画像と可視光画像を重ね合わせて検査位置を表示するためユーザが検査対象物(例:はんだボール)と検査位置との関係を把握することができ、ユーザが視認しやすいとの効果がある。
【0127】
また、裏面及び裏面を位置を合わせて検査位置を確定させ、表面と裏面の位置合わせを精度良く実行できる。
【0128】
さらに、表面/裏面に関連するCT断層画像を表示するようにしたため、表面/裏面について対象物が見分けやすくなる。
【0129】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0130】
1 検査対象、10 X線源、12 基板、18 X線、22 X線検出器駆動部、23 X線検出器、30 画像取得制御機構、32 検出器駆動制御機構、34 画像データ取得部、40 入力部、50 出力部、60 X線源制御機構、62 電子ビーム制御部、70 演算部、72 X線源制御部、74 画像取得制御部、76 再構成部、78 良否判定部、80 検査対象位置制御部、82 X線焦点位置計算部、84 撮像条件設定部、86 検査情報生成部、90 記憶部、92 X線焦点位置情報、94 撮像条件情報、96 プログラム、98 画像データ、100 X線検査装置、110 検査対象位置駆動機構、111a,111b ステージ、112a,112b 基板レール、114 変位計、116 光学カメラ、120 検査対象位置制御機構。
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査領域設定方法およびX線検査システムに関し、より特定的には、プリント基板と回路部品との間の接合の良否等を検査するのに用いられる検査領域設定方法およびX線検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板(以下、単に「基板」ともいう)においてはんだ付けされた部品について、はんだ付けの状態の良否等を非破壊検査で検査するために、X線CT(Computed Tomography)がしばしば用いられている。X線CTでは、対象物を複数の方向からX線により撮像し、X線が吸収された度合い(減衰量)の分布を示す複数枚の透視画像を取得する。さらに、複数枚の透視画像に基づく再構成処理を行ない、検査対象のX線吸収係数の分布の2次元データもしくは3次元データを得る。
【0003】
このような検査では、多数の同一形状の基板について、それぞれ同じ位置を次々と検査する場合があり、このような場合、位置決めの基準にする被測定物を用いて検査位置の検査装置への教示(ティーチング)が行なわれる。そして、教示された検査の位置について、同種の被測定物のX線透視画像が次々に生成され、当該透視画像に基づいて、各被測定物についての検査が行なわれる。
【0004】
このような検査に関する技術は、従来から種々開示されている。たとえば、特許文献1や特許文献2に開示された技術では、ティーチングにおいて、検査位置の入力を受付ける際に、被測定物の可視光画像が表示される。
【0005】
基板に関し、上記したような部品のはんだ付けの状態の良否等を検査するためには、部品の位置だけでなく、部品におけるはんだ付けの位置等、検査対象とする位置や形状を指定する情報が設定されていることが必要とされる。
【0006】
しかし、従来の検査装置では、基板に、BGA(Ball Grid Array)のようにはんだ付けの部分が部品本体に隠れて見えない部品が実装されている場合、はんだ付けの位置などの情報の入力の正確性は、ユーザの経験に左右されるところが大きく、このため、検査の精度がユーザの経験によって大きく左右されるという問題があった。また、QFP(Quad Flat Package)のようなパッケージ部品についても、部品ごとに多数存在するはんだ付けの位置をユーザが逐一指定することが必要であったため、ユーザに煩雑な作業を要求することとなっていたという問題があった。
【0007】
そこで、上述したようなX線CTをインラインの検査装置として使用する場合においては、上記のような問題点の改善のために、複数存在する基板の検査箇所について、検査領域および検査ロジックをティーチングすることが知られている。たとえば、特許文献3(特開2010−160071号公報)には、ユーザが部品が外形と位置を教示すると、CT再構成を行い、ボール(電極の位置)電極の位置を抽出することが開示されている。
【0008】
また、特許文献4(特開2006−220640号公報)には、X線源とディテクタに対して回転可能な被検体の保持機構と、X線源と同軸方向から、撮像するCCDカメラで撮像を行い、X線源に対して位置合わせが不要で位置ヅレが無く、正確に検出することが可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−218784号公報
【特許文献2】特開2007−127490号公報
【特許文献3】特開2010−160071号公報
【特許文献4】特開2006−220640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、たとえば、特開2010−160071号公報に開示されるように、可視光画像において検査領域の位置を矩形等による表示する構成では、必ずしも、ユーザにとって検査位置が正しいかを判断するのに十分な情報が表示されておらず、検査の精度には、やはり、ユーザの経験に負うところが残る。
【0011】
また、基板検査においては、基板の表面だけでなく、裏面も検査をする場合が存在するが、この場合は表面、裏面の位置合わせを正確に行った上で重ね合わせた後、ユーザが検査対象及びその位置を確認をしないと誤った領域を検査領域として設定してしまう可能性がある。
【0012】
さらに、特開2006−220640号公報に開示された技術では、透過画像とCCD画像を同軸で撮像し、表面画像と内部画像を合わせて表示する。これは解析的に用いられることが前提であり、自動検査を行う検査位置設定ではない。さらに、たとえば、プリント基板のようにカメラの視野、X線検査機の視野よりも対象物が大きい場合は、検査領域を設定することが出来ない。
【0013】
本発明はかかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、X線画像を用いて被検査対象を検査する場合に、被検査対象における検査領域を精度よく設定することが可能な検査領域設定方法およびX線検査システムを提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、被検査物が電子部品の実装された基板である場合に、実装部品と基板との接続配線についての情報が正確にかつ容易に入力される検査領域設定方法、X線検査装置およびX線検査プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の1つの局面にしたがうと、検査領域設定方法であって、X線を用いて被検査物の検査を実行するX線検査装置において、被検査物における検査領域を設定する検査領域設定方法であって、被検査物の検査対象を含む第1の領域の可視画像を撮像するステップと、被検査物の検査対象を含む第2の領域に対して、X線画像を撮像するステップと、第1の領域についての可視画像と第2の領域についてのX線画像を、位置および倍率をそろえて、検査対象の位置を示すマークとともに同時に表示するステップと、表示した検査対象のマークの位置およびX線画像における検査対象の位置について確認の入力を受け付け、検査領域を確定するステップとを備える。
【0016】
好ましくは、被検査物は、複数の電子部品が搭載された基板であり、可視画像を撮像するステップは、基板の表面側の第1の可視画像および裏面側の第2の可視画像を撮像するステップを含み、同時に表示するステップは、第1または第2の可視画像の一方とX線画像との位置および倍率をそろえて表示するステップを含み、確定するステップは、表面側および裏面側それぞれの検査領域を確定するステップを含む。
【0017】
好ましくは、X線画像は、複数の透視方向から撮影された複数のX線画像に基づいて再構成された被検査物の検査対象を含む領域の再構成画像である。
【0018】
好ましくは、再構成画像は、第1および第2の可視画像においては、死角となる検査対象を含む部分における基板に平行な断面での断層画像である。
【0019】
好ましくは、X線画像は、被検査物のX線の透過画像である。
この発明の他の局面に従うと、X線を用いて被検査物を検査するX線検査システムであって、被検査物における検査対象の位置を指定する情報を格納するための記憶手段と、被検査物の検査対象を含む第1の領域の可視画像を撮像する可視光画像撮影手段と、被検査物の検査対象を含む第2の領域に対して、X線画像を撮像するX線画像撮影手段と、第1の領域についての可視画像と第2の領域についてのX線画像を、位置および倍率をそろえて表示するとともに、記憶手段に格納された情報に基づいて検査対象の位置を示すマークを同時に表示する出力手段と、表示した検査対象のマークの位置およびX線画像における検査対象の位置について確認の入力を受け付ける入力手段と、入力に応じて、確定された検査領域を特定するための設定情報を記憶手段に格納する制御手段とを備える。
【0020】
好ましくは、被検査物は、複数の電子部品が搭載された基板であり、可視光画像撮影手段は、基板の表面側の第1の可視画像および裏面側の第2の可視画像を撮像し、出力手段は、第1または第2の可視画像の一方とX線画像との位置および倍率をそろえて表示し、制御手段は、表面側および裏面側それぞれの検査領域を特定するための設定情報を記憶手段に格納する。
【0021】
好ましくは、X線画像は、複数の透視方向から撮影された複数のX線画像に基づいて再構成された被検査物の検査対象を含む領域の再構成画像である。
【0022】
好ましくは、再構成画像は、第1および第2の可視画像においては、死角となる検査対象を含む部分における基板に平行な断面での断層画像である。
【0023】
好ましくは、X線画像は、被検査物のX線の透過画像である。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、X線画像と可視光画像を重ね合わせて検査位置を表示するためユーザが検査対象物と検査位置との関係を把握することができ、ユーザが視認しやすいとの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係るX線検査装置100の概略ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係るX線検査装置100の構成を説明するための図である。
【図3】本実施の形態におけるティーチング処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図4】図3に示した「画像の位置合せ処理(S114)」と「画像の伸縮・重ね合わせ処理(S116)」とを説明するためのフローチャートである。
【図5】基板の表側の可視光画像と裏側の可視光画像とX線画像との位置合わせを説明するための概念図である。
【図6】可視光画像とX線画像とを重ね合わせて表示するにあたり、光学画像の透過率を設定する画面の例である。
【図7】可視光画像(表側)とX線再構成画像とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【図8】図7に示した画像をさらに縮小して、半導体チップ全体のはんだづけ位置を確認するための表示例を示す図である。
【図9】可視光画像(裏側)と部品番号とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【図10】可視光画像(裏側)とX線透過画像とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【図11】図10と同様に表示を可視光画像(裏側)とX線透過画像とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【図12】本実施の形態に係るX線検査の流れをフローチャート形式で示す図である。
【図13】2値化画像内のはんだ面積に基づく良否判定について説明するための図である。
【図14】X線検査装置100の他の構成を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部分には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。また、本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸とは、互いに直行する軸を言うものとする。
【0027】
(構成の概略)
図1を参照して、本実施の形態に係るX線検査装置100の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るX線検査装置100の概略ブロック図である。
【0028】
X線検査装置100は、X線18を出力するX線源10と、X線検出器23と、画像取得制御機構30と、検査対象1の位置を移動する検査対象駆動機構110とを備える。さらに、X線検査装置100は、入力部40と、出力部50と、X線源制御機構60と、変位計114と、光学カメラ116(図示せず)、検査対象位置制御機構120と、演算部70と、記憶部90とを備える。さらに、X線検査装置100は、CAD(Computer Aided Design)データ等に基づいて、検査対象となる基板に実装される電子部品の型番、部品自身の基板における配置位置、配置方向、部品のサイズ、基板内のはんだ付け用の電極パッド配置(すなわち、ハンダづけのされる位置の配置)などに関する情報を格納するための検査対象データベース(以下、「検査対象DB」)200とを備える。
【0029】
なお、変位計114と光学カメラ116については、後に詳しく説明する。
検査対象1は、X線源10とX線検出器23との間に配置される。本実施の形態においては、検査対象1は、部品が実装された回路基板であるとする。なお、図1では、下から順にX線源10、検査対象1、X線検出器23が設置されているが、X線源の保守性の観点より、下から順に、X線検出器23、検査対象1、X線源10との並びでこれらを配置してもよい。
【0030】
X線源10は、X線源制御機構60によって制御され、検査対象1に対して、X線18を照射する。本実施の形態では、検査対象1は、回路部品を実装した基板であるものとする。特に限定されないが、X線源10は、外部からの制御に応じて、焦点位置をターゲット上で移動させることが可能な走査型X線源とすることが可能である。
【0031】
検査対象1は、検査対象駆動機構110により移動される。検査対象駆動機構110の具体的な構成については、後述する。検査対象位置制御機構120は、演算部70からの指示に基づいて、検査対象駆動機構110の動作を制御する。
【0032】
X線検出器23は、X線源10から出力され、検査対象1を透過したX線を検出して画像化する2次元X線検出器である。X線検出器23としては、I.I.(Image Intensifier)管や、FPD(フラットパネルディテクタ)を用いることができる。設置スペースの観点からは、X線検出器23には、FPDを用いることが望ましい。また、インライン検査で使うことができるようにX線検出器23は、高感度であることが望ましく、CdTeを使った直接変換方式のFPDであることが特に望ましい。
【0033】
画像取得制御機構30は、検出器駆動制御機構32と、画像データ取得部34を含む。検出器駆動制御機構32は、演算部70からの指示に基づき、X線検出器駆動部22の動作を制御し、X線検出器23を移動する。画像データ取得部34は、演算部70から指定されたX線検出器23の画像データを取得する。
【0034】
入力部40は、ユーザからの指示入力等を受け付けるための操作入力機器である。出力部50は、測定結果等を外部に出力する装置である。本実施の形態では、出力部50は、演算部70で構成されたX線画像等を表示するためのディスプレイである。
【0035】
すなわち、ユーザは、入力部40を介して様々な入力を実行することができ、演算部70の処理によって得られる種々の演算結果が出力部50に表示される。出力部50に表示される画像は、後に説明するティーチング処理のために使用される他、ユーザによる目視の良否判定のために出力されてもよいし、あるいは、後で説明する良否判定部78の良否判定結果として出力されてもよい。
【0036】
X線源制御機構60は、電子ビームの出力を制御する電子ビーム制御部62を含む。電子ビーム制御部62は、演算部70から、X線焦点位置、X線エネルギー(管電圧、管電流)の指定をうける。指定されるX線エネルギーは、検査対象の構成によって異なる。
【0037】
演算部70は、記憶部90に格納されたプログラム96を実行して各部を制御し、また、所定の演算処理を実施する。演算部70は、X線源制御部72と、画像取得制御部74と、再構成部76と、良否判定部78と、検査対象位置制御部80と、X線焦点位置計算部82と、撮像条件設定部84と、検査情報生成部86とを含む。
【0038】
X線源制御部72は、X線焦点位置、X線エネルギーを決定し、X線源制御機構60に指令を送る。
【0039】
画像取得制御部74は、X線検出器23が画像を取得するように、画像取得制御機構30に指令を送る。また、画像取得制御部74は、画像取得制御機構30から、画像データ
を取得する。
【0040】
再構成部76は、画像取得制御部74により取得された複数の画像データから3次元データを再構成する。
【0041】
良否判定部78は、部品が実装される基板表面の高さ(基板高さ)を求め、基板高さの断層画像をもとに検査対象の良否を判定する。なお、良否判定を行なうアルゴリズム、あるいは、アルゴリズムへの入力情報は、検査対象によって異なるため、良否判定部78は、これらを撮像条件情報94から入手する。
【0042】
検査対象位置制御部80は、検査対象位置制御機構120を介し、検査対象駆動機構110を制御する。
【0043】
X線焦点位置計算部82は、検査対象1のある検査エリアを検査する際に、その検査エリアに対するX線焦点位置や照射角などを計算する。
【0044】
撮像条件設定部84は、検査対象1に応じて、X線源10からX線を出力する際の条件(たとえば、X線源に対する印加電圧、撮像時間等)を設定する。
【0045】
記憶部90は、X線焦点位置情報92と、撮像条件情報94と、上述した演算部70が実行する各機能を実現するためのプログラム96と、X線検出器23が撮像した画像データ98とを含む。X線焦点位置情報92には、X線焦点位置計算部82によって計算されたX線焦点位置が含まれる。撮像条件情報94は、撮像条件設定部84によって設定された撮像条件や、良否判定を行なうアルゴリズムに関する情報を含む。
【0046】
なお、記憶部90および検査対象DB200は、データを蓄積することができるものであればよい。記憶部90は、例えば、RAM(Random Access Memory)やEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read−Only Memory)やHDD(Hard Disc Drive)等の記憶装置により構成される。検査対象DB200は、HDDでもよいし、あるいは、ネットワークで接続された他のコンピュータに設けられた記憶装置でもよい。
【0047】
(具体的構成)
本実施の形態に係るX線検査装置100の具体的構成について、図2を参照して説明する。図2は、本実施の形態に係るX線検査装置100の構成を説明するための図である。なお、図2において、図1と同一部分には、同一符号を付している。また、図2では、図1に示した部分のうち、X線焦点位置の制御、X線検出器位置の制御、検査対象位置の制御等に直接関係し、説明に必要な部分を抜き出して記載している。
【0048】
X線源10は、本実施の形態では、コーンビーム型の線源であるものとする。なお、上述したように、X線源10は、X線を発生する位置(X線焦点位置)を指定された方向に走査可能な、走査型X線源であってもよい。X線源10は、X線源制御機構60を通した演算部70からの命令に従って、X線を発生させる。
【0049】
X線源10は、密閉型のX線源であり、X線検査装置100の上部もしくは下部に据え付けられている。なお、X線源10のターゲットは透過型であってもよいし、反射型であってもよい。X線源10は、稼動部(図示しない)に取り付けられており、垂直方向に移動可能であるものとする。
【0050】
X線検出器23は、検査対象1(基板)を挟むようにX線源10と対向した位置に配置される。X線検出器23は、X線源10から照射されたX線を画像化する。また、X線検出器23はX線検出器駆動部22に取り付けられている。X線検出器駆動部22は、3次
元ステージであって、X線検出器23を、水平方向および垂直方向に移動可能である。
【0051】
検査対象駆動機構110は、X線源10とX線検出器23との間に設置される。検査対象駆動機構110は、ステージ111a,111b、および、ステージ111a,111bに付属されている基板レール112a,112bを含む。ステージ111a,111bは、検査対象1を水平方向に平行移動可能である。基板レール112a,112bは、各々、検査対象1を上下からはさみこむことで基板を固定している。
【0052】
ステージ111a,111bおよび基板レール112a,112bの動作は、基板駆動制御機構126によって制御される。
【0053】
図2を参照して、X線検査装置100は、変位計114および光学カメラ116(これは、図1では示していなかった)を備える。変位計114は、基板までの距離を測定する。したがって、変位計114は、後で詳述する基板の反りを計測することが可能である。光学カメラ116は可視光により基板を撮影する。光学カメラ116は、検査する位置の設定のためのフィデューシャルマークの撮影に用いられる。変位計114および光学カメラ116は、X線による撮像時にはX線に被爆しないように退避機構(図示していない)により、X線が照射されない領域に退避される。
【0054】
また、光学カメラ116には、図示しない取付機構により照明装置115が取付けられている。照明装置115は、光学カメラ116の視野(撮像エリア)全体を均一に点灯する。本実施の形態では、照明装置115は、白色光を発するリング形状のLED(Light Emitting Diode)光源とされるが、これに限定されず、他の光源であっても良い。また、必ずしも光学カメラ116と一体的に設けられなくてもよく、光学カメラ116に対して独立して設けられてもよい。また、照明装置115も、光学カメラ116等と同様に、X線による撮像時にはX線に被爆しないように退避機構(図示していない)により、X線が照射されない領域に退避される。
【0055】
以上の構成により、X線検査装置100は、線源−基板間距離と線源−ディテクタ間の距離の比(拡大率)を変更することができる。その結果、X線検査装置100は、X線検出器23で撮像される検査対象1の大きさ(したがって、分解能)を変更できる。
【0056】
また、X線検査装置100は、様々な方向から基板を撮像できるように、基板とX線検出器23とを稼動できる。本実施の形態では、この様々な方向からの撮像結果を基に、CT(Computed Tomography)と呼ばれる3次元データ生成手法を用いて、検査対象1の3次元データを生成する。
【0057】
また、本実施の形態では、X線検査装置100は、インライン検査に用いられる。インライン検査のために、検査対象駆動機構110は、基板を搬入出する機構をさらに含む。ただし、このような基板の搬入出機構は、図2には示していない。基板の搬入出機構としては、基板レール上に配置したベルトコンベアが用いられるのが一般的である。あるいは搬入出機構としてプッシャと呼ばれる棒を用いてもよい。プッシャにより基板をレール上で滑らせることにより、基板を移動させることができる。
【0058】
演算部70としては、一般的な中央演算装置(CPU)を用いることができる。記憶部90は、主記憶部90aと補助記憶部90bとを含む。主記憶部90aとしてはメモリを、補助記憶部90bとしてはHDD(ハードディスクドライブ)を、例えば用いることができる。つまり、演算部70および記憶部90としては、一般的な計算機を使用可能である。
【0059】
(ティーチング処理の流れ)
以下では、検査対象物である電子部品が表面側および裏面側に実装されているプリント基板を例にとって、本実施の形態のX線検査装置100の動作について説明する。
【0060】
X線検査装置100には、検査対象1の検査に関し、事前に、検査対象1における検査位置等についての教示(ティーチング)をする情報を入力できる。このような情報を入力する処理(ティーチング処理)の内容について、当該処理のフローチャートである図3を参照して説明する。なお、ティーチング処理は、X線検査装置100において、検査情報生成部86によって実現される。また、ティーチング処理において生成された、検査の教示に関する情報は、たとえば撮像条件情報94として記憶部90に記憶される。
【0061】
図3は、本実施の形態におけるティーチング処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0062】
図3を参照して、ティーチング処理が開始されると(S100)、まず、検査対象である基板が裏向き(光学カメラ116側に裏面が向かう方向)に搬入される(S102)。
【0063】
続いて、X線検査装置100は、基板が裏向きの状態で光学カメラ116により可視光画像を撮影する(S104)。その後、基板は、いったん、可視光画像を撮影できる駆動範囲からは搬出され(S106)、所定の反転機構(図1および図2には図示せず)により、向きが反転され、再び、基板が表向きの状態で搬入され(S108)、基板の表側の状態で光学カメラ116により可視光画像が撮影される(S112)。
【0064】
引き続いて、基板が表向きの状態で、X線画像の撮影が行なわれる(S112)。
以上により、基板の表側の可視光画像と裏側の可視光画像とが撮影され、さらに、X線画像が撮影されたので、X線検査装置100の演算部70の制御により、これら3つの画像の位置合せが実行され(S114)、さらに、画像の伸縮(倍率の変更)と重ね合わせ処理が実行される(S116)。さらに、演算部70の制御により、出力部50に対して、重ね合わせ画像の表示が行なわれる(S118)。特に限定されないが、たとえば、表側の可視光画像とX線画像とが重ね合わされた画像から表示がされるものとして説明する。
【0065】
ここで、検査対象DB200に格納されている情報に基づいて、上記のような重ね合わされた画像に、さらに重畳して、表側に実装される部品の検査対象(ここでは、はんだボール)の位置を示すマーク、たとえば、矩形のマークも併せて表示される。ここで、ユーザは、このようなマークの位置が検査領域(「検査ウィンドウ」と呼ぶ)として適切であるかを表示に基づいて判断し、適切であれば、検査ウィンドウを確定するための確認入力を行なう。一方で、もしも適切でない場合には、たとえば、手動により、検査ウィンドウの位置および方向を適切と判断される位置・方向に動かし、その上で、確認入力を行う。このような確認入力に応じて、演算部70は、記憶部90の撮像条件情報として、表側の検査対象部品に対する検査ウィンドウの相対的な位置を設定情報として格納する。この場合、たとえば、特に限定されないが、記憶部90には、部品の所定の基準点(部品の外形の所定の角部分等)に対する相対的な位置として、検査ウィンドウが設定される(S120)。
【0066】
次に、演算部70の制御により、出力部50からの出力が、裏面側の表示に切り替わり(S122)、表側と同様にして、裏側についての重ね合わせ画像表示され(S124)、検査対象DB200に格納されている情報に基づいて、上記のような重ね合わされた画像に、さらに重畳して、裏側に実装される部品の検査対象(ここでは、はんだボール)の位置を示すマーク(検査ウィンドウ)も併せて表示される。ここでも、ユーザは、このようなマークの位置が検査ウィンドウとして適切であるかを表示に基づいて判断し、適切であれば、検査ウィンドウを確定するための確認入力を行なう。一方で、もしも適切でない場合には、たとえば、手動により、検査ウィンドウの位置および方向を適切と判断される位置・方向に動かし、その上で、確認入力を行う。このような確認入力に応じても、演算部70は、記憶部90の撮像条件情報として、裏側の検査対象部品に対する検査ウィンドウの相対的な位置を設定情報として格納する。この場合も、たとえば、特に限定されないが、記憶部90には、部品の所定の基準点(部品の外形の所定の角部分等)に対する相対的な位置として、検査ウィンドウが設定される(S126)。
【0067】
さらに、後に説明するような検査基準の設定がユーザにより行なわれ、検査結果を試行的に得て動作の確認をするためのテストが実行される(S128)。さらに、基板が搬出され(S130)、ティーチング処理が終了する(S130)。
【0068】
図4は、図3に示した「画像の位置合せ処理(S114)」と「画像の伸縮・重ね合わせ処理(S116)」とを説明するためのフローチャートである。
【0069】
なお、以下の説明では、特に限定されないが、光学カメラおよびX線カメラ(X線検出器23によりX線画像を撮影する構成を便宜上、「X線カメラ」と呼ぶ)の光学倍率は、製造組立て時に、規定値に設定しておくものとする。光学カメラおよびX線カメラの性能としては、たとえば、以下のような値であるものとする。
【0070】
光学カメラ: 分解能:22μm
X線カメラ: 分解能:可変 10、15、20、25、30μm
このうち、ティーチングのウィンドウ設定に用いるX線カメラの分解能は、20μmとする。すなわち、光学カメラとX線カメラとの分解能とは、必ずしも一致していない。また、製造時において、光学カメラで撮影された表側の画像上の位置と、これに対応するX線カメラで撮影された画像上の位置とは、両者が一致するように較正されているものとする。
【0071】
そこで、以下に説明するように、光学カメラの画像を拡大することにより、X線カメラの分解能20μmに合わせる。なお、両者の分解能の関係では、光学カメラの画像を縮小することが必要な場合もありうる。
【0072】
図4を参照して、可視光画像(表側)の画像中心を基準に、上記の例では、以下のような倍率の拡大が実行されることになる(S200)。
【0073】
光学カメラ画像(重ね合わせ用画像)のサイズ
=光学カメラ画像(オリジナル)のサイズ×22/20
続いて、可視光画像(表側)とX線画像とが重ねあわされる(S202)。
【0074】
ここで、このような重ね合わせの位置の基準としては、たとえば、フィデューシャルマークを用いることができる。フィデューシャルマークは、基板の対角方向の端に、銅配線パターンで形成されている。したがって、基板の形状や、基板に対する配線の形成位置のオフセットなどに影響されることなく、プリント基板への銅配線パターンについて一義に、デバイス位置を規定することができる。
【0075】
次に、可視光画像(表側)の画像から、所定のフィデューシャルマークの位置(たとえば、基板表側の左上の基板の角)が検出され(S204)、このようにして抽出された「基板左上の基板の角」の画像上の位置Aが記憶部90に保存される(S206)。
【0076】
さらに、可視光画像(裏側)の画像中心を基準に、表側と同様にして、画像の拡大処理が実行される(S210)。
【0077】
次に、可視光画像(裏側)の画像から、所定のフィデューシャルマークの位置(たとえば、基板裏側左上の基板の角)が検出され(S212)、このようにして抽出された「基板裏側左上の基板の角」の画像上の位置Aとの差分(Δ(x、y))が記憶部90に保存される(S212)。
【0078】
裏面側の画像については、可視光画像(裏側)とX線画像とを、Δ(x、y)だけずらして、両者を重ね合わせる(S214)。
【0079】
上述したように、本実施の形態では、表面の可視光画像における基板の角を基準として、可視光画像とX線画像との位置合せを行い、検査ウィンドウの位置を特定する。特定された位置は、部品に対しての相対的な座標として登録されるので、このようにして登録されても、これは、部品についての基準座標(フィデューシャルマークを基準とした座標)で登録されたことになる。
【0080】
CADデータ上では、プリント基板上に実装される各部品について、部品の品番、部品中心の座標(X,Y)、部品の回転角度θが登録されている。ここでは、検査ウィンドウは、検査したいハンダの領域であり、部品の品番ごと(部品の種類ごと)に登録する。
【0081】
なお、本実施の形態においては、後に説明するように、検査時には、基板の搬入後に、フィデューシャルマークの撮影および基板高さの計測などが行なわれる。基板高さの計測が行なわれるので、X線画像がCT画像(再構成画像)である場合は、測定された基板高さから所定の高さの断面を表示することで、表面のハンダ部分の画像を表示できる。また、基板高さと基板の厚みの情報から、X線画像が再構成画像(CT画像)である場合は、[(測定された基板高さ)−(基板厚み)−(所定の高さ)]の断面を表示することで、裏面のハンダ部分の画像を表示できる。
【0082】
図5は、上述したような基板の表側の可視光画像と裏側の可視光画像とX線画像との位置合わせを説明するための概念図である。
【0083】
前提として、上述のとおり、光学カメラとX線カメラの相対位置は、製造組み立て時に、オフセット値を計測・設定しておくことにより、光学カメラで撮影された表側の画像上の位置と、これに対応するX線カメラで撮影された画像上の位置とは、両者が一致するように較正されているものとする。
【0084】
そして、図5に示されるように、可視光画像(表側)をリファレンスとして、可視光画像(裏側)の位置を合せと、可視光画像(表側)とX線画像は、基板の入れ替えをしていないので、自然と位置があうことになる。ここで、X線画像は、単一のX線透過画像でもよいし、複数の方向から同一箇所を撮影した複数のX線透過画像から再構成した再構成画像(CT画像)でもよい。
【0085】
図6は、可視光画像とX線画像とを重ね合わせて表示するにあたり、光学画像の透過率(重ね合わされたX線画像を可視光画像越しに見えるように表示する際の透過の割合)を設定する画面の例である。
【0086】
図6に示されるように、透過率を事前にまたは事後に適切な値に設定することにより、後に説明するように、可視光画像とX線画像とを重ね合わせて表示した際の検査対象の領域の視認性が向上する。
【0087】
なお、図6中に存在するボタン等で設定可能なパラメータは以下のとおりである。
【0088】
【表1】
【0089】
図7は、可視光画像(表側)とX線再構成画像とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【0090】
図7に示されるように、表側上面から撮影した可視光画像(表側)と基板と平行な方向であって基板表面から指定された高さのX線再構成画像の平面画像とが重ね合わされて表示されるとともに、X線再構成画像の平面画像中の指定された断面を示す再構成画像も併せて表示されている。
【0091】
さらに、表側上面から撮影した可視光画像(表側)とX線再構成画像の平面画像とが重ね合わされて表示された画像中には、CADデータに基づいて、基板(表側)上のはんだづけ用の電極パッド(ランド)の位置が矩形形状で表示されている。なお、矩形形状のウィンドウ(検査ウィンドウ)は、事前に設定されている部品については、自動的に「カメラ画像」の画面で表示される。事前に設定がない場合は、手動で、ユーザにより設定されてもよい。
【0092】
ユーザは、必要に応じて、この矩形形状の位置調整を行った上で、確認入力(たとえば、保存ボタンのクリック)を実行する。
【0093】
同様の画像表示と位置調整が事前に、可視光画像(裏側)とX線再構成画像とについて実行されている。なお、表と裏の表示の切り替えに応じて、X線再構成画像の表示も、表示の向きに合うように切り替えられるものとする。
【0094】
図8は、図7に示した画像をさらに縮小して、半導体チップ全体のはんだづけ位置を確認するための表示例を示す図である。
【0095】
図9は、可視光画像(裏側)と部品番号とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【0096】
図10は、可視光画像(裏側)とX線透過画像とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【0097】
X線再構成画像を表示させるか、X線透過画像を表示させるかは、ユーザの選択により設定できるものとする。
【0098】
タブの切り替えにより、可視光画像については、基板の表側を表示するか裏側を表示するかが切り替えられる。
【0099】
表と裏の表示の切り替えに応じて、X線透過画像の表示も、表示の向きに合うように切り替えられるものとする。
【0100】
図11は、図10と同様に表示を可視光画像(裏側)とX線透過画像とを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
【0101】
図11では、表側上面から撮影した可視光画像(表側)とX線透過画像とが重ね合わされて表示された画像中には、CADデータに基づいて、基板(表側)上のはんだづけ用の電極パッド(ランド)の位置が矩形形状で表示されている。
【0102】
ユーザは、必要に応じて、この矩形形状の位置調整を行った上で、確認入力(たとえば、保存ボタンのクリック)を実行する。
【0103】
以上のような処理により、可視光画像とX線画像とを重ね合わせて表示の位置をその画像に対して確認できる。このとき、X線像があることで、ハンダのある領域が、ユーザに対して可視化され、CADデータに基づく、基板上のはんだづけ用の電極パッド(ランド)の位置との一致を確認できる。
【0104】
(検査処理の流れ)
図12は、本実施の形態に係るX線検査の流れをフローチャート形式で示す図である。図12を参照して、本実施の形態に係るX線検査全体の流れについて説明する。
【0105】
図12を参照して、まず、処理が開始されると(ステップSA1)、X線検査装置100は、検査対象駆動機構110により、基板をX線検査装置100内部の規定位置に搬入する(ステップSA3)。規定位置は、通常、X線検査装置100の中央、すなわち、X線照射範囲の中央に設定されていることが好ましい。ただし、規定位置は、X線検出器23が基板のX線透視画像を撮像可能な位置であれば構わない。
【0106】
ステップSA5において、X線検査装置100は、光学カメラ116により、フィデューシャルマークを撮影する。また、X線検査装置100は、フィデューシャルマークの位置に基づいて、必要があれば、基板位置を補正する。具体的には、X線検査装置100は、搬入時と同様に基板位置を移動させる。これらの処理により、X線検査装置100は、基板搬入時に生じた基板位置のずれや基板の傾きを認識し、ずれおよび傾きを補正することが可能である。
【0107】
ステップSA7において、X線検査装置100は、変位計114を用いて、再構成領域(以下、視野ともいう)中の基板の高さを測定する。X線検査装置100は、計測された基板の高さを、主記憶部90aに保存しておく。保存された基板の高さは、後述するCT撮像時に使用される。
【0108】
一度の撮像では検査対象1全体を撮像できないなど、検査対象1が複数の視野を含む場合は、X線検査装置100は、CT撮像を行なう前に、全ての視野について、基板高さを計測しておく。これは、CT撮像時に変位計114が被爆しないように退避させる必要があることによる。このように基板高さを予め全て計測する方が、各視野のCT撮像の都度、基板高さを計測するのに比べて、全体の検査時間を短縮できる。
【0109】
ステップSA9において、X線検査装置100は、検査対象1内で、1つの視野を複数の方向から撮像する。本実施の形態では、X線検査装置100は、基板とX線検出器23とを水平方向に円軌道を描くように移動させて、視野を複数の方向から撮像する。撮像時の基板およびX線検出器23の位置は、照射角度θR、線源−基板間距離(FOD)、線源−検出器間距離(FID)により決定される。基板およびX線検出器23は、X線検出器23の中心に視野の中心が撮像されるように配置される。なお、基板およびX線検出器23の軌道は円でなくてもよく、矩形や直線等であってもよい。
【0110】
撮像枚数は、使用者により設定可能であるものとする。使用者は、求められる再構成データの精度に基づいて撮像枚数を決定することが好ましい。撮像枚数は、通常は、4〜256枚程度である。しかしながら、撮像枚数はこれに限られるものではない。例えば、X線検査装置100は、256枚を超える枚数の画像を撮像してももちろん構わない。
【0111】
ステップSA11において、X線検査装置100は、複数方向の撮像画像から再構成データを生成する。再構成処理は、様々な方法が提案されており、たとえば、Feldkamp法を用いることができる。
【0112】
ステップSA13において、X線検査装置100は、基板高さ、すなわち、部品が配置されている基板表面の高さを抽出する。ステップSA13で行なわれる処理の詳細については、後述する。
【0113】
ステップSA15において、X線検査装置100は、基板高さから高さ方向に所定の距
離だけ離れた高さの断層画像を、検査に用いる検査画像として取得する。ここで、検査画像の高さと基板高さとの間の距離は、使用者により設定されるものとする。なお、この距離は、検査対象1の設計データおよび検査方法に応じて設定されることが好ましい。本実施の形態では、部品が配置されている基板の表面から、部品が配置されている側に少し離れた高さの断層画像が検査画像に設定される。
【0114】
ステップSA17において、X線検査装置100は、検査画像を用いて、視野の良否判定を行なう。すなわち、X線検査装置100は、加熱後のはんだのぬれ性、はんだのボイドおよびブリッジの有無、異物の有無などを検査する。様々な良否判定手法が周知であり、X線検査装置100は、検査項目に適した良否判定手法を用いればよい。
【0115】
本実施の形態では、良否判定部78は、2値化画像内のはんだ面積に基づいて、実装基板の良否を判定する。以下、図13を参照して、本実施の形態における基板の良否判定の態様について説明する。図13は、2値化画像内のはんだ面積に基づく良否判定について説明するための図である。
【0116】
図13(A)は、電子部品が実装された基板の斜視図である。基板501上に、第1の部品502と、第2の部品503とが実装されている。第2の部品503は、BGA(Ball Grid Array)504等により、基板501に物理的および電気的に接続されている。
【0117】
図13(B)は、基板501と第2の部品503との接続箇所を基板501の面に垂直な断面で切った断面図である。BGA504は、第2の部品503と基板501の表面層505とを接続する。BGA504は、加熱され、加熱後の状態506に変形する。ただし、加熱後の状態506にボイド507が生じる場合がある。また、複数のはんだボール(以下、「ボール端子」とも言う)が結合しブリッジ508を形成する場合もある。
【0118】
X線検査装置100は、はんだボールを含むと期待される領域の3次元データを生成し、3次元データを切り出して断層画像を作成する。X線検査装置100は、作成した断層画像を2値化し、画像をはんだとそれ以外に分離した2値化画像を取得する。この2値化処理には、判別分析法等の一般的な2値化処理を用いることが可能である。検査装置は、2値化画像から白(もしくは1)の部分のラベリングを行ない、はんだを区別したラベリング画像を取得する。このラベリング処理には、ラスタスキャンによって連結の有無を判定するような一般的なラベリング処理を用いることが可能である。
【0119】
基板501の面に平行な断面の一例を、図13(C)に示す。図13(C)は、図13(B)において破線で示した断面で切った接続箇所の断面図である。図13(C)では、はんだを白、はんだ以外を斜線で示している。ここでは、正常、ボイド、ブリッジの3種類の状態を示した。図13(C)を参照して、ボイド507がある場合、はんだ内にはんだがない部分が生じる。ブリッジ508がある場合、正常時に比べ広範な領域にはんだが観察される。
【0120】
検査装置は、ラベリング画像からそれぞれのはんだの面積(白もしくは1の画素の個数)を計数し、はんだの面積を求める。検査装置は、面積が一定の範囲内であれば良品、それ以外であれば不良とすることで、はんだ接合面の良否を判定する。この一定の範囲の閾値は、予めユーザにより設定されることが一般的である。
【0121】
図12に戻って、ステップSA18において、X線検査装置100は、すべての視野に対して良否判定を行なったかどうか判断する。良否判定を行なっていない視野がある場合(ステップSA18においてNO)、X線検査装置100は、CT撮像(ステップSA9)からの処理を繰り返す。一方、すべての視野に対して良否判定が行なわれた場合(ステップSA18においてYES)、処理をステップSA19に進める。
【0122】
ステップSA19において、X線検査装置100は、基板をX線検査装置100から搬出する。具体的には、X線検査装置100は、検査対象駆動機構110により、基板をX線検査装置100の外に移動する。
【0123】
以上で、X線検査装置100は、1つの検査対象1についての検査を終了する(ステップSA21)。X線検査装置100は、複数の検査対象1についてのインライン検査を実行する場合には、ここまで説明したステップSA1からステップSA21までの一連の処理を繰り返す。
【0124】
図14は、X線検査装置100の他の構成を説明するための概念図である。
図1に示した構成では、検査対象DB200は、X線検査装置100の内部に設けられる構成であった。
【0125】
しかしながら、X線検査装置100がインラインで使用される場合、必ずしもCADデータ等は、このX線検査装置100に格納される必要はなく、図14に示されるように、ネットワークで接続され、製造ラインの外に配置される外部データ作成装置内に、検査対象DB200が格納されていてもよい。
【0126】
以上説明したような本実施の形態のX線検査装置100の構成により、X線画像と可視光画像を重ね合わせて検査位置を表示するためユーザが検査対象物(例:はんだボール)と検査位置との関係を把握することができ、ユーザが視認しやすいとの効果がある。
【0127】
また、裏面及び裏面を位置を合わせて検査位置を確定させ、表面と裏面の位置合わせを精度良く実行できる。
【0128】
さらに、表面/裏面に関連するCT断層画像を表示するようにしたため、表面/裏面について対象物が見分けやすくなる。
【0129】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0130】
1 検査対象、10 X線源、12 基板、18 X線、22 X線検出器駆動部、23 X線検出器、30 画像取得制御機構、32 検出器駆動制御機構、34 画像データ取得部、40 入力部、50 出力部、60 X線源制御機構、62 電子ビーム制御部、70 演算部、72 X線源制御部、74 画像取得制御部、76 再構成部、78 良否判定部、80 検査対象位置制御部、82 X線焦点位置計算部、84 撮像条件設定部、86 検査情報生成部、90 記憶部、92 X線焦点位置情報、94 撮像条件情報、96 プログラム、98 画像データ、100 X線検査装置、110 検査対象位置駆動機構、111a,111b ステージ、112a,112b 基板レール、114 変位計、116 光学カメラ、120 検査対象位置制御機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を用いて被検査物の検査を実行するX線検査装置において、前記被検査物における検査領域を設定する検査領域設定方法であって、
前記被検査物の検査対象を含む第1の領域の可視画像を撮像するステップと、
前記被検査物の前記検査対象を含む第2の領域に対して、X線画像を撮像するステップと、
前記第1の領域についての前記可視画像と前記第2の領域についての前記X線画像を、位置および倍率をそろえて、前記検査対象の位置を示すマークとともに同時に表示するステップと、
表示した前記検査対象の前記マークの位置および前記X線画像における前記検査対象の位置について確認の入力を受け付け、前記検査領域を確定するステップとを備える、検査領域設定方法。
【請求項2】
前記被検査物は、複数の電子部品が搭載された基板であり、
前記可視画像を撮像するステップは、前記基板の表面側の第1の可視画像および裏面側の第2の可視画像を撮像するステップを含み、
前記同時に表示するステップは、前記第1または第2の可視画像の一方と前記X線画像との位置および倍率をそろえて表示するステップを含み、
前記確定するステップは、表面側および裏面側それぞれの前記検査領域を確定するステップを含む、請求項1記載の検査領域設定方法。
【請求項3】
前記X線画像は、複数の透視方向から撮影された複数のX線画像に基づいて再構成された前記被検査物の前記検査対象を含む領域の再構成画像である、請求項2記載の検査領域設定方法。
【請求項4】
前記再構成画像は、前記第1および第2の可視画像においては、死角となる前記検査対象を含む部分における前記基板に平行な断面での断層画像である、請求項3記載の検査領域設定方法。
【請求項5】
前記X線画像は、前記前記被検査物のX線の透過画像である、請求項1記載の検査領域設定方法。
【請求項6】
X線を用いて被検査物を検査するX線検査システムであって、
前記被検査物における検査対象の位置を指定する情報を格納するための記憶手段と、
前記被検査物の前記検査対象を含む第1の領域の可視画像を撮像する可視光画像撮影手段と、
前記被検査物の前記検査対象を含む第2の領域に対して、X線画像を撮像するX線画像撮影手段と、
前記第1の領域についての前記可視画像と前記第2の領域についての前記X線画像を、位置および倍率をそろえて表示するとともに、前記記憶手段に格納された情報に基づいて前記検査対象の位置を示すマークを同時に表示する出力手段と、
表示した前記検査対象の前記マークの位置および前記X線画像における前記検査対象の位置について確認の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力に応じて、確定された前記検査領域を特定するための設定情報を前記記憶手段に格納する制御手段とを備える、X線検査システム。
【請求項7】
前記被検査物は、複数の電子部品が搭載された基板であり、
前記可視光画像撮影手段は、前記基板の表面側の第1の可視画像および裏面側の第2の可視画像を撮像し、
前記出力手段は、前記第1または第2の可視画像の一方と前記X線画像との位置および倍率をそろえて表示し、
前記制御手段は、表面側および裏面側それぞれの前記検査領域を特定するための設定情報を前記記憶手段に格納する、請求項6記載のX線検査システム。
【請求項8】
前記X線画像は、複数の透視方向から撮影された複数のX線画像に基づいて再構成された前記被検査物の前記検査対象を含む領域の再構成画像である、請求項7記載のX線検査システム。
【請求項9】
前記再構成画像は、前記第1および第2の可視画像においては、死角となる前記検査対象を含む部分における前記基板に平行な断面での断層画像である、請求項8記載のX線検査システム。
【請求項10】
前記X線画像は、前記前記被検査物のX線の透過画像である、請求項6記載のX線検査システム。
【請求項1】
X線を用いて被検査物の検査を実行するX線検査装置において、前記被検査物における検査領域を設定する検査領域設定方法であって、
前記被検査物の検査対象を含む第1の領域の可視画像を撮像するステップと、
前記被検査物の前記検査対象を含む第2の領域に対して、X線画像を撮像するステップと、
前記第1の領域についての前記可視画像と前記第2の領域についての前記X線画像を、位置および倍率をそろえて、前記検査対象の位置を示すマークとともに同時に表示するステップと、
表示した前記検査対象の前記マークの位置および前記X線画像における前記検査対象の位置について確認の入力を受け付け、前記検査領域を確定するステップとを備える、検査領域設定方法。
【請求項2】
前記被検査物は、複数の電子部品が搭載された基板であり、
前記可視画像を撮像するステップは、前記基板の表面側の第1の可視画像および裏面側の第2の可視画像を撮像するステップを含み、
前記同時に表示するステップは、前記第1または第2の可視画像の一方と前記X線画像との位置および倍率をそろえて表示するステップを含み、
前記確定するステップは、表面側および裏面側それぞれの前記検査領域を確定するステップを含む、請求項1記載の検査領域設定方法。
【請求項3】
前記X線画像は、複数の透視方向から撮影された複数のX線画像に基づいて再構成された前記被検査物の前記検査対象を含む領域の再構成画像である、請求項2記載の検査領域設定方法。
【請求項4】
前記再構成画像は、前記第1および第2の可視画像においては、死角となる前記検査対象を含む部分における前記基板に平行な断面での断層画像である、請求項3記載の検査領域設定方法。
【請求項5】
前記X線画像は、前記前記被検査物のX線の透過画像である、請求項1記載の検査領域設定方法。
【請求項6】
X線を用いて被検査物を検査するX線検査システムであって、
前記被検査物における検査対象の位置を指定する情報を格納するための記憶手段と、
前記被検査物の前記検査対象を含む第1の領域の可視画像を撮像する可視光画像撮影手段と、
前記被検査物の前記検査対象を含む第2の領域に対して、X線画像を撮像するX線画像撮影手段と、
前記第1の領域についての前記可視画像と前記第2の領域についての前記X線画像を、位置および倍率をそろえて表示するとともに、前記記憶手段に格納された情報に基づいて前記検査対象の位置を示すマークを同時に表示する出力手段と、
表示した前記検査対象の前記マークの位置および前記X線画像における前記検査対象の位置について確認の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力に応じて、確定された前記検査領域を特定するための設定情報を前記記憶手段に格納する制御手段とを備える、X線検査システム。
【請求項7】
前記被検査物は、複数の電子部品が搭載された基板であり、
前記可視光画像撮影手段は、前記基板の表面側の第1の可視画像および裏面側の第2の可視画像を撮像し、
前記出力手段は、前記第1または第2の可視画像の一方と前記X線画像との位置および倍率をそろえて表示し、
前記制御手段は、表面側および裏面側それぞれの前記検査領域を特定するための設定情報を前記記憶手段に格納する、請求項6記載のX線検査システム。
【請求項8】
前記X線画像は、複数の透視方向から撮影された複数のX線画像に基づいて再構成された前記被検査物の前記検査対象を含む領域の再構成画像である、請求項7記載のX線検査システム。
【請求項9】
前記再構成画像は、前記第1および第2の可視画像においては、死角となる前記検査対象を含む部分における前記基板に平行な断面での断層画像である、請求項8記載のX線検査システム。
【請求項10】
前記X線画像は、前記前記被検査物のX線の透過画像である、請求項6記載のX線検査システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【公開番号】特開2012−237729(P2012−237729A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108608(P2011−108608)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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