説明

検知材の作製方法

【課題】 簡便な方法により紙やフェルトなどの多孔シートに反応剤を定量的にスポット担持させて、反応剤を含ませた着色帯領域と反応剤を含ませない非着色帯領域とを交互に配置させた検知材を作製する方法を提供する。
【解決手段】 多孔シート上に、対象物質と接触することで着色する反応剤を担持した着色帯領域と該反応剤を担持しない非着色帯領域とを多孔シートの長さ方向に交互に配置させた検知材の作製方法であって、多孔シートの非着色帯領域となる部分を予め溶媒不透過部材で被覆し、この多孔シートを該反応剤が溶解した溶液中に浸漬し、その後多孔シートを取り出して溶媒を蒸発させることにより、該反応剤を多孔シートの着色帯領域となる部分に担持させることを特徴とする検知材の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に溶解している対象物質の濃度を目視により定量するための検知材の作製方法に関するものであり、さらに詳しくは、基材となる多孔シート上に、対象物質が接触することにより着色する反応剤を担持した着色帯領域と、該反応剤が担持していない非着色帯領域とが、その長さ方向に交互に形成された検知材において、反応剤を定量的に担持させることができ、加えて前記両領域の境界を明瞭とすることができる検知材の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水中に存在する物質の濃度を簡便な方法で目視定量できる検知材としては、例えば、対象物質と接触することにより着色する反応剤を均一に担持した連続した着色帯からなる検知用カラムが知られている(特許文献1、2、3参照)。
一方、反応剤を定量的に特定のスペースのみにスポット担持する方法としては、例えば、簀の子などにより、担持させたくない部分を覆い、反応剤溶液がかからないようにした上で、反応剤溶液を上から噴霧する方法やスポット部分のみを捺染する方法、インクジェット法により印刷する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−88828号公報
【特許文献2】特開2007−278921号公報
【特許文献3】特開2008−185363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の、簀の子などによって担持させたくない部分を覆い反応剤溶液を噴霧する方法を基材となる多孔シートに適用した場合、反応剤溶液の浸透性が高いため溶液が簀の子状の被覆材の下側まで広がり、反応剤を噴霧した部分と反応剤を担持させたくない部分との境界がにじみ、目視による定量性に劣るものとなった。また、この方法では被覆材上にも反応剤が噴霧されることとなり反応剤のロスが多く、また噴霧された反応剤のうちどれだけが定着したかを把握することが困難であり、定量性に劣るものであった。
【0005】
また、インクジェット法や捺染による方法は、上記した噴霧による方法に較べ、ある程度境界を明確にすることが可能であるが、使用するインクの粘度が糊状の高粘度に限られており、これらの方法でメタノールやエタノールなど揮発性の経時変化の起こりやすい低粘度の一般的な溶媒を使用することは難しかった。また、インクジェットプリンターでの印刷に使用されるインクは水溶性のものが多い。言い換えれば、インクジェットプリンターは水溶性のインクで印字することを基本に設計されている。このインクジェットプリンターを用い、多孔シートの基材に対し、にじみの小さなスポット印刷を行おうとすれば、インクには、水溶性の反応剤を溶解した水溶性インクを使用することとなる。多孔シートは水系で使用するものであるため、反応剤が水溶性であると、使用時に反応剤が溶出するといった不具合が生じてしまう。このため、従来のインクジェットプリンターでの印刷技術をそのまま多孔性シートの製造方法には適用できなかった。
【0006】
本発明は、簡便な方法により、基材となる多孔シート上に、対象物質の接触により着色する反応剤を定量性よく担持させることができ、加えて、反応剤が担持している着色帯領域と、対象物質の接触によって着色しない非着色帯領域とをその長さ方向に交互に形成する際に、前記両領域の境界が明瞭となるようにする作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した課題を解決するために鋭意検討した結果、多孔シートに浸漬させた反応剤を含む溶媒が蒸発する際に、反応剤を担持させたくない部分を溶媒不透過部材で被覆しておくことにより、意外にも溶媒不透過部材で覆われた多孔シート中の反応剤が溶媒不透過部材で覆われていない蒸発が生じている多孔シートの部分へほとんどが移動し、溶媒不透過部材で覆われた多孔シート中には反応剤がほとんど残存しないということを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の第一は、以下の各工程により、基材となる多孔シート上に、検知する対象物質と接触することで着色する反応剤を担持した着色帯領域と、該反応剤を担持しない非着色帯領域とをその長さ方向に沿って交互に設けることを特徴とする検知材の作製方法を要旨とするものである。
(a)非着色帯領域となる多孔シートの表面全周を溶媒不透過部材で被覆する工程
(b)前記(a)工程で得られた多孔シートを、該反応剤を溶媒に溶解して得た溶液中に浸漬し、多孔シート内の全域にわたり該溶液を含浸させる工程
(c)前記(b)工程を終えた多孔シートを該溶液から取出して溶媒が蒸発する条件下におき、溶媒不透過部材で被覆されていない着色帯領域となる多孔シート表面から溶媒を蒸発させることにより、溶媒不透過部材で被覆された多孔シート中に存在する反応剤の溶液を、溶媒不透過部材で被覆されていない多孔シート内に移行させつつ、移行した溶液に溶解している反応剤を、多孔シートを該溶液から取出した時点で溶媒不透過部材により被覆されていない多孔シート中に存在している反応剤とともに析出させて、溶媒不透過部材で被覆されていない着色帯領域となる多孔シート中に該反応剤を担持させる工程
(d)前記(c)工程を終えた多孔シートから溶媒不透過部材を取り除く工程
【0009】
また、本発明の第二は、以下の各工程により、基材となる多孔シート上に、検知する対象物質と接触することで着色する反応剤を担持した着色帯領域と、該反応剤を担持しない非着色帯領域とをその長さ方向に沿って交互に設けることを特徴とする検知材の作製方法を要旨とするものである。
(a)多孔シートを、該反応剤を溶媒に溶解して得た溶液中に浸漬し、多孔シート内の全域にわたり該溶液を含浸させる工程
(b)前記(a)工程を終えた多孔シートを該溶液から取出し、非着色帯領域となる多孔シートの表面全周を溶媒不透過部材で被覆する工程
(c)前記(b)工程で得られた多孔シートを溶媒が蒸発する条件下におき、溶媒不透過部材で被覆されていない着色帯領域となる多孔シート表面から溶媒を蒸発させることにより、溶媒不透過部材で被覆された多孔シート中に存在する反応剤の溶液を、溶媒不透過部材で被覆されていない多孔シート内に移行させつつ、移行した溶液に溶解している反応剤を、多孔シートを該溶液から取出した時点で溶媒不透過部材により被覆されていない多孔シート中に存在している反応剤とともに析出させて、溶媒不透過部材で被覆されていない着色帯領域となる多孔シート中に該反応剤を担持させる工程
(d)前記(c)工程を終えた多孔シートから溶媒不透過部材を取り除く工程
【0010】
上記した第一及び第二の発明において、好ましくは、溶媒が、メタノール、エタノール及びイソプロパノールからなる群より選ばれる1種又は2種以上のものであり、また好ましくは、多孔シートが、短繊維を熱融着して作製した吸水性多孔フェルトであるものであり、また好ましくは、対象物質が、リン酸イオン、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素及びアンモニア性窒素からなる群より選ばれるものであり、反応剤が四級アンモニウム塩を含むものである。
【0011】
なお、本発明において、「反応剤を担持しない」又は「反応剤が担持されていない」との表現は、反応剤を実質的に担持しない、又は反応剤が実質的に担持されていないために、多孔シート上におけるこの領域に検知する対象物質が接触しても目視によって着色を認識できる程度に反応剤が含有されていないことを意味するものとして用いる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の検知材の作製方法によれば、検知材の基材となる多孔シート上に、検知する対象物質の接触により着色する反応剤を定量性よく担持させることができ、さらに着色帯領域と、対象物質の接触によっても着色しない非着色帯領域とを、両領域の境界が明瞭となるように交互に形成させることができる。その結果、本発明の作製方法により得られた検知材を、液体中に溶解する対象物質の目視定量を目的として使用した場合には、対象物質との接触による着色の有無がより鮮明になり、対象物質の濃度に応じて着色する着色領域の数を知ることにより、より精度よく対象物質を目視定量することが可能となる。
【0013】
また、検知材の基材となる多孔シートとして、短繊維を熱融着させて作った吸水性多孔フェルトを用いた場合は、該フェルトは自立性を有する程度に強度があるため、現地での水質調査などに用いる場合には取り扱い性に優れるものとなる。さらに打ち抜き加工がし易いため、検知材を低コストで作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の作製方法により得られた検知材を用いて、水中の亜硝酸窒素を目視定量したときの結果を示す図である。
【図2】比較例1での作製方法により得られた検知材を用いて、水中の亜硝酸窒素を目視定量したときの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明において、対象物質としては、水又は水溶液中に存在するリン酸イオン、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素、アンモニア性窒素などが挙げられ、これら対象物質から誘導された陰イオン性着色物質がイオン対形成反応によって検知材に含まれる四級アンモニウム塩などの反応剤に捕捉されることにより着色することとなる。
【0017】
本発明の作製方法において用いられる、上記したような対象物質と接触することにより着色する反応剤としては、四級アンモニウム塩を含むものや、陰イオン交換樹脂などが挙げられ、四級アンモニウム塩を含むものとしては、ベンジルセチルジメチルアンモニウム(BCDMA)、セチルトリメチルアンモニウム(CTMA)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HTMA)の塩化物および臭化物が挙げられる。
【0018】
上記した対象物質と反応剤は、好ましい組合せがあり、例えば、リン酸イオン、亜硝酸性窒素に対しては塩化ベンジルセチルジメチルアンモニウム(BCDMA)、アンモニア性窒素に対しては塩化ベンジルセチルジメチルアンモニウム(BCDMA)あるいは塩化ベンジルセチルジメチルアンモニウム(BCDMA)とハイドロタルサイトの混合物である。
【0019】
本発明の作製方法により得られる検知材は、基材となる多孔シートに、上記した反応剤を担持した着色帯領域と、該反応剤を担持していない非着色帯領域とが長さ方向に交互に配置している検知材であり、その検知材を、上記した対象物質を含み、呈色試薬を添加して呈色させた測定試料水に浸漬させ、毛管吸引現象により、被検水を検知材中に流入展開させると着色帯領域の部分で対象物質が反応剤と反応して着色し、着色帯領域に担持されている反応剤に対して過剰な対象物質は更に先方へ展開し、次の着色帯領域に担持されている反応剤と反応し着色することとなる。このため、試料水中の対象物質の濃度に応じて発色する着色帯領域の個数が変化する。対象物質の濃度を予め定められたものに調製した溶液である標準液を用いた測定によって対象物質濃度と発色する着色帯領域の個数との関係を調べておけば、本発明の検知材を用いて簡便に対象物質の濃度測定ができる。なお、本発明でいう「着色」には、ある色から別の異なる色への着色、すなわち変色をも包含する意味で用いている。
【0020】
本発明において用いられる多孔シートとしては、対象物質を含む液体の毛管現象を利用するか、あるいはサイフォン方式によって溶液を浸透させることができ、かつ反応剤を担持することが可能なものであれば特に限定されるものではない。そのようなものとしては、短繊維を熱融着して作製した吸水性多孔フェルトや、ろ紙が挙げられ、これらの中で、短繊維を熱融着して作製した吸水性多孔フェルトが、強度があり、加工性も良く、かつ速い吸水速度が得られるためより好ましい。
【0021】
以下、本発明の検知材の作製方法における各工程について説明する。まず、第一の発明における(a)工程は、非着色帯領域となる多孔シートの表面全周を溶媒不透過部材により被覆する工程である。ここで、「溶媒不透過部材」における溶媒とは、上記した反応剤を溶解することができ、多孔シートから乾燥により蒸発して取り除くことができるものであれば特に限定はされないが、例えば、メタノール(沸点65℃)、エタノール(沸点78℃)及びイソプロパノール(沸点82℃)などの沸点が90℃以下の群より選ばれる1種又は2種以上のものが好ましい。
【0022】
本発明において用いられる上記した溶媒不透過部材としては、ガムテープやビニールテープやフィルム、あるいは金属板や樹脂板など、反応剤を溶解するために用いられる溶媒を透過しないものであれば如何なるものでも使用でき、これを非着色帯領域の幅に裁断して使用すればよい。また、市販品に同じ幅のテープがあれば好適である。
【0023】
多孔シートを溶媒不透過部材で被覆するには、上記非着色帯領域の幅のテープを多孔シートの表面の全周囲に被覆する必要がある。被覆する方法としては、溶媒不透過部材が本来有している接着力によればよいし、そうでない場合は市販の接着剤を用いて被覆すればよい。また、被覆する箇所は、検知材となったときに非着色帯領域となる部分であり、多孔シートの長さ方向に任意の幅で設ければよいが、例えば、1〜30mmが好ましく、3mm〜10mmがより好ましく、2mm〜3mmがさらに好ましい。一方、溶媒不透過部材を被覆しない領域は、検知材の着色帯領域となる箇所であり、この幅としては2mm〜10mmが好ましく、2mm〜5mmがより好ましく、2mm〜3mmがさらに好ましい。
【0024】
次に、(b)工程は、前記(a)工程で得られた多孔シートを、上記した反応剤を溶媒に溶解して得た溶液中に浸漬し、多孔シート内の全域にわたり該溶液を含浸させる工程である。この工程では、まず、反応剤を溶媒に溶解して反応剤の溶液を作製しておく。用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール及びイソプロパノールからなる群より選ばれる1種又は2種以上ものが好ましい。反応剤の溶液における反応剤の濃度としては、0.001〜5%であり、好ましくは0.02〜2%がよい。
【0025】
次に、この溶液に、溶媒不透過部材で被覆した多孔シートを浸漬し、溶液を多孔シート内の全域にわたり含浸させる。浸漬の時間としては、1〜10分程度であり、通常は3分程度でよい。
【0026】
次の(c)工程では、前記(b)工程を終えた多孔シートを反応剤の溶液から取出して溶媒が蒸発する条件下におく。条件としては、溶媒が多孔シート内を毛管移動する速度より早すぎないように、緩やかな条件で溶媒を蒸発させる必要があり、乾燥温度としては20℃〜60℃が好ましく、30℃〜40℃がより好ましい。
【0027】
この(c)工程を行うことによって、溶媒不透過部材で被覆されていない多孔シート表面から溶媒が蒸発し、溶媒不透過部材で被覆したシート中の反応剤の溶液が、蒸発が生じているシート部分に移行することとなり、溶媒不透過部材で被覆したシート中には反応剤がほとんど存在しないこととなる。そして、溶媒不透過部材で被覆していないシート内では溶媒が蒸発することにより反応剤が析出し、シート中に担持されることとなる。その結果、この溶媒不透過部材で被覆していない箇所が着色帯領域となる。
【0028】
次の(d)工程は、前記(c)工程を終えた多孔シートから溶媒不透過部材を取り除くことを行うものであり、これにより検知材が得られることとなる。必要に応じて、多孔シートを取扱いに便利な短冊状にカッティングすればよい。
【0029】
第二の発明は、基本的に、第一の発明の作製方法において、(a)工程と(b)工程の順序を逆にしたものである。
すなわち、第二の発明においては、まず(a)工程において、多孔シートを反応剤溶液に浸漬する。それにより多孔シート内の全域にわたり該溶液を含浸させる。
【0030】
次の(b)工程で、前記(a)工程を終えた多孔シートを該溶液から取出して、出来るだけ速やかに非着色帯領域となる多孔シートの表面の全周を溶媒不透過部材で被覆する。ここで用いる溶媒不透過部材や被覆の方法については、上記の第一の発明で説明したものが同様に採用できる。
【実施例】
【0031】
実施例1
吸水特性のポリエステル短繊維を熱接着して製造した吸水性多孔フェルト(例えば特許3059352号)のシート(横150mm×縦200mm×厚さ1mm、気孔率74%)の非着色帯領域とする箇所の表面全周を5mm幅の市販のガムテープからなる溶媒不透過部材を2mm間隔で長さ方向に並行に接着し、スリット状に被覆した。
【0032】
この多孔シートを反応剤である塩化ベンジルセチルジメチルアンモニウム(BCDMA)のエタノール溶液(濃度1000mg/L)中に3分間浸漬し、シート全体にBCDMA溶液を含浸させた。
【0033】
次いで、多孔シートを取出し、水平に置いて30℃の室温で、1時間、乾燥させた。ガムテープで覆われていないシートにある反応剤BCDMAを含むエタノール溶液は、表面がテープで覆われていないので、その面から空気中に蒸発するが、テープ下部に浸透した溶液は多孔シート内をテープで覆われていないスリット部まで毛管移動し、スリット部表面から蒸発する。溶媒が蒸発することにより、テープ下部の反応剤を含む溶液が、テープの幅方向の端部へ向かって移動し、ここで、テープの幅方向を略二分する位置を境界として、幅方向の2の端部へ半量ずつ溶液が移動し、結果として、もともとスリット部(2mm)にあった溶液中の反応剤と、スリット部両側のテープ下部にあった溶液の半量ずつ((5mm×1/2)の2倍)、即ち、5mm幅のテープ下部に保持された溶液に含まれる反応剤とをあわせた量が、スリット部に析出することとなる。担持量は、多孔シートへ浸透した全BCDMA量から計算できる。
【0034】
蒸発が終了した後、多孔シートからガムテープを取り除いた後、縦(幅)10mm×横(長さ)150mmにカッターにより切断した短冊状シートとすることにより検知材を作製した。
【0035】
比較例1
実施例1で用いた吸水性多孔フェルトのシートの上に幅5mm×スリット間隔2mmの簀の子を縦方向にスリットができるように乗せ、上部からスプレーノズルにより反応剤塩化ベンジルセチルジメチルアンモニウム(BCDMA)のエタノール溶液(濃度3500mg/L)を噴霧した。40℃、1時間、乾燥させ、反応剤BCDMAをスリット状にスポット担持した多孔シートを製造した。これを縦(幅)10mm×横(長さ)150mmにカッターにより切断した短冊状シートを作り、比較例の検知材とした。
【0036】
試験例
実施例1で得られた検知材と比較例1で得られた検知材を用いて、亜硝酸窒素を含む液体中の亜硝酸窒素の目視定量を行った。
まず、スルファニル酸、1-ナフトール、グルコースを1:1:8の割合で均一混合した呈色試薬を調整した。亜硝酸窒素 10mg/L, 20mg/Lを含む水50mLに対して、呈色試薬0.3mgを加えることにより、亜硝酸イオンは橙色の陰イオン性アゾ化合物を生成させた。呈色が安定した後、1規定の水酸化ナトリウム溶液1mLを加えてアルカリ性にした各濃度の溶液中に各検知材の先端部を浸漬させ5分間垂直に保持して、100mm高さまで毛管現象により溶液を供給して陽イオン性BCDMAと陰イオンのアゾ化合物とのイオン対形成により、BCDMAが担持された領域においては着色が観察された。
【0037】
実施例1で得られた検知材での結果を図1に、比較例1で得られた検知材での結果を図2に示した。図1から明らかなように、本発明の作製方法により得られた検知材を用いた場合、10mg/Lの場合で水面から5個目、20mg/Lの場合で7個目まで鮮明に着色されており、明確に個数から濃度を判定することができることが分かった。
一方、図2から明らかなように、比較例1で得られた検知材を用いた場合は、着色帯領域が10mg/Lの場合で水面から30mm(スポット4個)、20mg/Lの場合で35mm(スポット5個)付近で広がり、スポット間も着色が見られ、その先端が乱れて、不明瞭な終点になった。
【符号の説明】
【0038】
1 非着色帯領域
2 着色帯領域
3 実際に着色した着色帯領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の各工程により、基材となる多孔シート上に、検知する対象物質と接触することで着色する反応剤を担持した着色帯領域と、該反応剤を担持しない非着色帯領域とをその長さ方向に沿って交互に設けることを特徴とする検知材の作製方法。
(a)非着色帯領域となる多孔シートの表面全周を溶媒不透過部材で被覆する工程
(b)前記(a)工程で得られた多孔シートを、該反応剤を溶媒に溶解して得た溶液中に浸漬し、多孔シート内の全域にわたり該溶液を含浸させる工程
(c)前記(b)工程を終えた多孔シートを該溶液から取出して溶媒が蒸発する条件下におき、溶媒不透過部材で被覆されていない着色帯領域となる多孔シート表面から溶媒を蒸発させることにより、溶媒不透過部材で被覆された多孔シート中に存在する反応剤の溶液を、溶媒不透過部材で被覆されていない多孔シート内に移行させつつ、移行した溶液に溶解している反応剤を、多孔シートを該溶液から取出した時点で溶媒不透過部材により被覆されていない多孔シート中に存在している反応剤とともに析出させて、溶媒不透過部材で被覆されていない着色帯領域となる多孔シート中に該反応剤を担持させる工程
(d)前記(c)工程を終えた多孔シートから溶媒不透過部材を取り除く工程
【請求項2】
以下の各工程により、基材となる多孔シート上に、検知する対象物質と接触することで着色する反応剤を担持した着色帯領域と、該反応剤を担持しない非着色帯領域とをその長さ方向に沿って交互に設けることを特徴とする検知材の作製方法。
(a)多孔シートを、該反応剤を溶媒に溶解して得た溶液中に浸漬し、多孔シート内の全域にわたり該溶液を含浸させる工程
(b)前記(a)工程を終えた多孔シートを該溶液から取出し、非着色帯領域となる多孔シートの表面全周を溶媒不透過部材で被覆する工程
(c)前記(b)工程で得られた多孔シートを溶媒が蒸発する条件下におき、溶媒不透過部材で被覆されていない着色帯領域となる多孔シート表面から溶媒を蒸発させることにより、溶媒不透過部材で被覆された多孔シート中に存在する反応剤の溶液を、溶媒不透過部材で被覆されていない多孔シート内に移行させつつ、移行した溶液に溶解している反応剤を、多孔シートを該溶液から取出した時点で溶媒不透過部材により被覆されていない多孔シート中に存在している反応剤とともに析出させて、溶媒不透過部材で被覆されていない着色帯領域となる多孔シート中に該反応剤を担持させる工程
(d)前記(c)工程を終えた多孔シートから溶媒不透過部材を取り除く工程
【請求項3】
溶媒が、メタノール、エタノール及びイソプロパノールからなる群より選ばれる1種又は2種以上のものである請求項1又は2記載の検知材の作製方法。
【請求項4】
多孔シートが、短繊維を熱融着して作製した吸水性多孔フェルトである請求項1〜3のいずれかに記載の検知材の作製方法。
【請求項5】
対象物質が、リン酸イオン、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素及びアンモニア性窒素からなる群より選ばれるものであり、反応剤が四級アンモニウム塩を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の検知材の作製方法。

【図1】
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【図2】
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