説明

検診情報管理システム及び管理方法

【課題】 被験者の検診を効率的に行って、その診断費用を低減することが可能な検診情報管理システム、及び検診情報管理方法を提供する。
【解決手段】 被験者に対して実施される検診について、断層画像を取得して診断を行う画像診断を含む本検診(S106)と、画像診断よりも簡易な方法で行われる尿検査などのスクリーニング診断を含む予備検診(S101)とを組み合わせて検診を行い、それらの検診情報を検診情報データベースに記憶しておく。そして、予備検診情報での異常の有無について解析を行い(S102)、その解析結果で異常ありの場合に本検診を実施要と判断し、解析結果で異常なしの場合に本検診を実施不要と判断する(S103)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者に対する検診の実施状況、及び得られた結果等についての検診情報を管理する検診情報管理システム、及び検診情報管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポジトロン断層撮影法(PET:Positron Emission Tomography)は、被験者に対して陽電子(ポジトロン)を放出する放射性同位元素(RI)で標識された物質をトレーサとして投入し、RI物質から放出された陽電子が通常物質中の電子と対消滅して生成される一対のγ線を計測することによって、被験者についての情報を取得する方法である。
【0003】
このような方法を用いたPET装置では、RI物質を含むトレーサを被験者に投与し、上記した方法でRI物質からの一対のγ線を計測して、RI物質の体内分布を測定する。これにより、生体内での生理学的、生化学的情報を画像化、定量化した被験者の断層画像を取得し、この断層画像を参照して癌の検診、あるいは脳の検査などの画像診断を行うことが可能である。また、断層画像を取得して被験者の診断を行う方法としては、PET検査以外にも、CT検査、MRI検査等が実用化されている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平6−347555号公報
【特許文献2】特開2002−136508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したPET検査、CT検査、及びMRI検査などの画像診断によれば、被験者の内部情報を非侵襲で取得して、必要な診断を行うことが可能である。しかしながら、これらの断層画像を利用した診断では、装置が大型であり、また、1回の診断費用が高額になるという問題がある。このような高額な診断費用は、検診を定期的に繰り返して行うような場合に特に問題となる。
【0005】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、被験者の検診を効率的に行って、その診断費用を低減することが可能な検診情報管理システム、及び検診情報管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明による検診情報管理システムは、被験者の検診情報を管理する検診情報管理システムであって、(1)被験者の断層画像を取得して診断を行う画像診断を含む本検診についての本検診情報、及び画像診断に先立って行われるスクリーニング診断を含む予備検診についての予備検診情報の入力に用いられる検診情報入力手段と、(2)予備検診情報及び本検診情報を、被験者ごとに記憶する検診情報データベースと、(3)予備検診情報及び本検診情報に基づいて、被験者に対する検診の実施を管理する管理判断手段とを備え、(4)管理判断手段は、予備検診情報での異常の有無について解析を行う予備検診情報解析手段と、予備検診情報解析手段での解析結果に基づいて本検診の実施の要否を判断する本検診実施判断手段とを有し、(5)本検診実施判断手段は、解析結果で異常ありの場合に本検診を実施要と判断し、解析結果で異常なしの場合に本検診を実施不要と判断することを特徴とする。
【0007】
また、本発明による検診情報管理方法は、被験者の検診情報を管理する検診情報管理方法であって、(a)被験者の断層画像を取得して診断を行う画像診断を含む本検診についての本検診情報、及び画像診断に先立って行われるスクリーニング診断を含む予備検診についての予備検診情報を入力し、予備検診情報及び本検診情報を、検診情報データベースに被験者ごとに記憶する検診情報入力ステップと、(b)予備検診情報及び本検診情報に基づいて、被験者に対する検診の実施を管理する管理判断ステップとを備え、(c)管理判断ステップは、予備検診情報での異常の有無について解析を行う予備検診情報解析ステップと、予備検診情報解析ステップでの解析結果に基づいて本検診の実施の要否を判断する本検診実施判断ステップとを有し、(d)本検診実施判断ステップは、解析結果で異常ありの場合に本検診を実施要と判断し、解析結果で異常なしの場合に本検診を実施不要と判断することを特徴とする。
【0008】
上記した検診情報管理システム、及び管理方法においては、被験者に対して実施される検診について、断層画像を取得して診断を行う画像診断を含む本検診と、画像診断よりも簡易な方法で行われるスクリーニング診断を含む予備検診とを組み合わせて検診を行っている。そして、それらの検診情報を検診情報データベースに記憶するとともに、予備検診情報の解析結果において異常ありとされた場合に本検診を実施要と判断している。これにより、被験者の検診を効率的に行って、その診断費用を低減することが可能となる。
【0009】
ここで、検診情報が記憶されるデータベースについては、検診情報データベースは、被験者に対して所定の検診実施間隔おきに繰り返して実施される複数の検診のそれぞれでの予備検診情報及び本検診情報を記憶することが好ましい。これにより、定期的に実施される被験者の検診について、その効率を全体としてさらに向上することが可能となる。
【0010】
この場合、管理システムは、本検診実施判断手段が、検診情報データベースにおいて被験者についての前回の検診の情報が記憶されておらず初回の検診と判断される場合に、解析結果にかかわらず本検診を実施要と判断することが好ましい。同様に、管理方法では、本検診実施判断ステップが、検診情報データベースにおいて被験者についての前回の検診の情報が記憶されておらず初回の検診と判断される場合に、解析結果にかかわらず本検診を実施要と判断することが好ましい。これにより、被験者に対して必要な画像診断を確実に実施することができる。
【0011】
また、管理システムは、本検診実施判断手段が、2以上の整数nを本検診の強制的な実施のための回数条件として設定し、複数の検診のうちでn回おきの検診では、解析結果にかかわらず本検診を実施要と判断することが好ましい。同様に、管理方法では、本検診実施判断ステップが、2以上の整数nを本検診の強制的な実施のための回数条件として設定し、複数の検診のうちでn回おきの検診では、解析結果にかかわらず本検診を実施要と判断することが好ましい。このような方法によっても、被験者に対して必要な画像診断を確実に実施することができる。
【0012】
被験者に対する具体的な検診の内容については、予備検診は、スクリーニング診断として、尿検査、及び血液検査の少なくとも1つを含むことが好ましい。このような検査を本検診に先立つ予備検診として実施することにより、本検診の実施の要否についての判断を好適に行うことができる。また、本検診は、画像診断として、PET検査、CT検査、及びMRI検査の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の検診情報管理システム及び管理方法によれば、被験者に対して実施される検診について、断層画像を取得して診断を行う画像診断を含む本検診と、画像診断よりも簡易な方法で行われるスクリーニング診断を含む予備検診とを組み合わせて検診を行い、それらの検診情報を検診情報データベースに記憶するとともに、予備検診情報の解析結果において異常ありとされた場合に本検診を実施要と判断することにより、被験者の検診を効率的に行って、その診断費用を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面とともに本発明による検診情報管理システム、及び検診情報管理方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0015】
図1は、本発明による検診情報管理システムの一実施形態の構成を概略的に示すブロック図である。また、図2は、図1に示した管理システムにおいて実行される検診情報管理方法の基本概念を示す模式図である。
【0016】
ここで、図1に示す検診情報管理システム1Aは、被験者に対して実施される検診として予備検診と、本検診とを想定し、それらの検診の実施状況、及び得られた結果等について管理を行う管理システムである。本検診とは、被験者の断層画像を取得して診断を行う画像診断を含む検診である。このような本検診での画像診断の例としては、PET検査、X線CT(Computed Tomography)検査、MRI(Magnetic Resonance Imaging)検査などが挙げられる。また、予備検診とは、画像診断に先立って行われるスクリーニング診断を含む検診である。このような予備検診でのスクリーニング診断の例としては、尿検査、血液検査などが挙げられる。
【0017】
本実施形態の検診情報管理システム1Aは、検診情報管理装置10と、入力部50と、出力部60とを備えて構成されている。また、検診情報管理装置10は、検診情報入力制御部11と、管理情報出力制御部12と、検診情報データベース20と、管理判断部15とを有している。
【0018】
検診情報入力制御部11は、被験者の検診情報の管理装置10への入力を制御し、実行する。この入力制御部11に対して、入力部50が接続されている。入力部50は、被験者の検診についての検診情報の入力に用いられる検診情報入力手段である。本実施形態の管理システム1Aでは、検診情報として、被験者の断層画像を取得して診断を行う画像診断を含む本検診についての本検診情報、及び前記画像診断に先立って行われるスクリーニング診断を含む予備検診についての予備検診情報が、入力部50を介して管理装置10へと入力される。
【0019】
管理情報出力制御部12は、管理装置10において記憶、管理、または生成された被験者の検診についての管理情報の外部への出力を制御し、実行する。この出力制御部12に対して、出力部60が接続されている。出力部60は、被験者の予備検診、本検診の実施状況、実施予定、あるいは得られた結果等についての管理情報の出力に用いられる管理情報出力手段である。
【0020】
管理装置10の入力制御部11に接続される入力部50としては、例えば、キーボードやマウスなどの入力装置51、外部装置53が接続される外部I/F52などを用いることができる。ここで、外部I/F52を介して管理装置10に接続される外部装置53としては、例えば、被験者に対して所定の検査を行ってその結果を出力する検査装置が挙げられる。
【0021】
また、出力制御部12に接続される出力部60としては、例えば、操作者に対して管理情報を示すための出力画面を表示する表示装置61、管理情報を紙面に印刷して文書として出力する印刷装置62などを用いることができる。また、表示装置61については、上記した管理情報の出力画面に加えて、必要な検診情報を入力部50から操作者に入力させる際に用いられる入力画面を表示可能な構成とすることが好ましい。なお、このような入力画面については、出力画面とは別の表示装置に表示する構成としても良い。
【0022】
入力部50から検診情報入力制御部11を介して入力された検診情報は、管理装置10において必要に応じて、所定のデータ形式で検診情報データベース20に格納される(検診情報入力ステップ)。この検診情報データベース20は、被験者に対して実施済み、または実施予定の検診についての予備検診情報及び本検診情報を、被験者ごとに記憶するデータベースである。また、図1に示した例では、これらの予備検診情報及び本検診情報を含む検診データに加えて、被験者についての基本データ、病歴データ、及び検診の管理において参照される一般的な参照データがデータベース20に格納されている。
【0023】
また、このような検診情報データベース20に格納された検診情報に対して、管理判断部15が設けられている。管理判断部15は、データベース20に記憶された予備検診情報及び本検診情報に基づいて、被験者に対する検診の実施を管理する管理判断手段である(管理判断ステップ、図2参照)。管理判断部15は、データベース20に記憶された被験者の検診情報を参照し、その被験者についての検診の実施結果、あるいは今後の検診の実施予定について必要な判断を行う。また、管理判断部15によって判断された管理情報は、出力制御部12を介して出力部60から操作者へと出力される。
【0024】
本実施形態においては、管理判断部15は、予備検診情報解析部16と、本検診実施判断部17とを有している。予備検診情報解析部16は、予備検診(図2のS101)の結果を示す予備検診情報での異常の有無について解析を行う解析手段である(S102、予備検診情報解析ステップ)。この解析部16は、予備検診情報として予備検診の結果の生データが入力されている場合には、そのデータに対して閾値等の解析条件を適用して異常の有無についての解析結果を生成する。また、予備検診の解析結果が入力されている場合には、それをそのまま解析結果とする。
【0025】
本検診実施判断部17は、予備検診情報解析部16での解析結果に基づいて、その被験者に対する本検診(S106)の実施の要否を判断する判断手段である(S103、本検診実施判断ステップ)。具体的には、判断部17は、図2に模式的に示すように、被験者に対する画像診断を含む本検診の実施について、尿検査等による予備検診の解析結果を参照し、その解析結果で異常ありの場合に本検診を実施要と判断し、解析結果で異常なしの場合に本検診を実施不要と判断する。また、この判断部17による判断結果は、必要に応じて出力部60から操作者へと出力される。
【0026】
このような検診情報管理装置10は、例えば、検診情報管理に必要な予備検診情報解析処理及び本検診実施判断処理などの各種の処理を実行するCPUと、処理動作に必要な各ソフトウェアプログラム等が記憶されるROMと、検診情報データベース20に用いられる内部メモリまたは外部記憶装置などの記憶装置とによって構成することができる。
【0027】
上記実施形態による検診情報管理システム、及び検診情報管理方法の効果について説明する。
【0028】
図1及び図2に示した検診情報管理システム1A及び管理方法においては、被験者に対して実施される検診について、断層画像を取得して診断を行う画像診断を含む本検診と、画像診断よりも簡易な方法で行われるスクリーニング診断を含む予備検診とを組み合わせて検診を行っている。そして、それらの検診情報を検診情報データベース20に記憶するとともに、解析部16での予備検診情報の解析結果において異常ありとされた場合(例えば、癌の検診において癌の疑いありとされた場合)に、判断部17において本検診を実施要と判断している。
【0029】
ここで、画像診断を含む本検診としては、例えば、PET検査、CT検査、及びMRI検査の少なくとも1つが用いられる。PET検査は、RI物質を含む放射性薬剤を被験者の体内に入れ、体内から放出される放射線を観察することで血流量、酸素代謝、グルコース代謝、神経伝達物質などについての機能情報を取得する検査である。このような検査方法では、1回の検査費用が高額となり、また、被験者への放射線被曝がある。
【0030】
また、X線CT検査は、被験者にX線を照射して体内を透過させ、その透過率の違いから体内組織の解剖学的情報を取得する検査である。このような検査方法では、被験者への放射線被曝がある。また、MRI検査は、被験者に強い磁場を与えて体内での水素原子核の状態を観察することで体内組織の解剖学的情報、及び血液量などの機能情報を取得する検査である。
【0031】
これに対して、上記のように最初に簡易かつ安価な方法でスクリーニング診断を行って画像診断の必要があるかどうかを判断し、必要とされた場合にはじめて画像診断を行うことにより、被験者の検診を効率的に行って、その診断費用を低減することが可能となる。また、被験者に対する検診の実施による放射線被曝を最小限に抑えることができる。
【0032】
予備検診でのスクリーニング診断としては、尿検査、及び血液検査の少なくとも1つを含むことが好ましい。このような検査を本検診に先立つ予備検診として実施することにより、本検診の実施の要否についての判断を好適に行うことができる。また、このような予備検診は、非侵襲、手軽、かつ安価であるため、繰り返し検査を実施することが可能である。尿検査の具体的な例としては、癌において特異的に発現するたんぱく質等を分析する尿たんぱく質分析法、癌や感染症による免疫系の活性に関連するプテリジン類の量を分析する尿プテリジン類分析法、尿中の蛍光化合物に着目して分析を行う尿蛍光分析法などが挙げられる。
【0033】
また、画像診断を含む本検診に対する予備検診については、複数種類のスクリーニング診断を組み合わせて実施することが、本検診の実施の要否の判断精度を向上する上で好ましい。この場合のスクリーニング診断の組合せとしては、例えば、上記したような複数種類の尿検査(A尿検査、B尿検査、C尿検査、…)を組み合わせて用いる方法がある。あるいは、尿検査と血液検査とを組み合わせて用いる方法がある。また、尿検査、血液検査以外のスクリーニング診断を利用しても良い。
【0034】
また、本検診については、上記したように、画像診断として、PET検査、X線CT検査、及びMRI検査の少なくとも1つを含むことが好ましい。また、被験者に対する検診の精度を高めるため、PET検査、CT検査、及びMRI検査を組み合わせた総合画像診断、あるいは上記の3種類の検査にさらにUS(超音波)検査を組み合わせた総合画像診断を本検診としても良い。
【0035】
また、本管理システム1Aによる管理対象となる検診については、被験者に対して所定の検診実施間隔おきに繰り返して実施される複数の検診(定期検診)について総合的に管理を行うことが好ましい。この場合、検診情報データベース20には、被験者に定期的に実施される複数の検診のそれぞれでの予備検診情報及び本検診情報が記憶される。これにより、定期的に実施される被験者の検診について、その効率を全体としてさらに向上することが可能となる。
【0036】
このように定期的に検診を行う場合の検診実施間隔については、必要に応じて適宜設定すれば良いが、例えば1年間隔とすることができる。また、例えば3ヶ月間隔として、検診の精度を高めても良い。
【0037】
被験者に対して定期的に実施される検診に対する検診情報管理方法の具体的な例を、図3、図4に示す。図3は、図1に示した管理システム1Aで行われる検診情報管理方法の一例を示す模式図である。また、図4は、図1に示した管理システム1Aで行われる検診情報管理方法の他の例を示す模式図である。
【0038】
図3に示す管理方法においては、第1回検診(検診実施間隔が1年の場合には1年目の検診)では、予備検診として尿検査(S211)を実施するとともに、初回の検診であることを考慮して、予備検診情報での異常の有無の解析結果にかかわらず画像診断による本検診(S216)を行っている。また、第2回、第3回検診(2年目、3年目の検診)では、予備検診として尿検査(S221、S231)を実施するとともに、予備検診情報での異常の有無の解析結果で異常ありの場合のみ、画像診断による本検診(S226、S236)を行っている。
【0039】
このように、被験者に対する本検診の判断においては、検診情報データベース20に被験者についての前回の検診の情報が記憶されておらず初回の検診と判断される場合に、予備検診情報の解析結果にかかわらず強制的に本検診を実施要と判断することが好ましい。これにより、被験者に対して必要な画像診断を確実に実施することができる。また、この場合、2回目以降の検診については、上記したように原則通り、予備検診情報の解析結果で異常ありの場合のみ本検診を実施要と判断する方法を用いることができる。
【0040】
図4に示す管理方法においては、管理装置10の本検診実施判断部17において、2以上の整数nとして、n=3が本検診の強制的な実施のための回数条件として設定されている。具体的には、初回の検診である第1回検診では、予備検診の尿検査(S311)を実施するとともに、予備検診情報の解析結果にかかわらず本検診の画像診断(S316)を行っている。また、第2回、第3回検診では、予備検診の尿検査(S321、S331)を実施するとともに、予備検診情報の解析結果で異常ありの場合のみ、本検診の画像診断(S326、S336)を行っている。また、第4回検診では、予備検診の尿検査(S341)を実施するとともに、初回の検診から3回おきの検診(n回おきの検診)で画像診断が必要な時期であると判断し、予備検診情報での異常の有無の解析結果にかかわらず本検診の画像診断(S346)を行っている。
【0041】
このように、被験者に対する本検診の判断においては、2以上の整数nを本検診の強制的な実施が必要な回数条件として設定し、複数の検診のうちでn回おきの検診では、予備検診情報の解析結果にかかわらず本検診を実施要と判断することが好ましい。このような方法によっても、被験者に対して必要な画像診断を確実に実施することができる。また、この場合の回数条件の整数nについては、上記した例でのn=3に限らず、必要とされる検診の精度、設定されている検診の実施間隔等に応じて適宜設定することが好ましい。
【0042】
本発明による検診情報管理システム、及び管理方法についてさらに説明する。
【0043】
図5〜図7は、図1に示した管理システム1Aにおいて、検診情報データベース20に記憶されるデータの構成例を示す図である。図5に示すように、本構成例では、検診情報データベース20において、基本データ21と、検診データ22と、病歴データ23と、参照データ24とが格納されている。これらのデータのうち、参照データ24は、検診に関する一般的な情報についてのデータである。また、それ以外のデータ21、22、23については、それぞれ被験者に対応してあらかじめ与えられた被験者IDとともに、被験者ごとにデータが記憶、管理されている。
【0044】
基本データ21は、図5及び図6に示すように、被験者の氏名、性別、生年月日などの被験者の検診を管理する上で必要な個人データを含んでいる。また、病歴データ23は、これまでに被験者がかかった病気についての既往歴データ23a、及び検診についての追跡データ23bなどを含んでいる。また、参照データ24は、病気及びその診断、治療についての一般的な知識の一般データ、及び管理システム1Aが運用されている医療施設等で過去に蓄積された情報の蓄積データなどを含んでいる。
【0045】
検診データ22は、画像診断を含む本検診についての本検診情報、及びスクリーニング診断を含む予備検診についての予備検診情報を含むデータである。本構成例では、検診データ22は、図5及び図7に示すように、検診の前に被験者から提供された問診データ22a、身長、体重などの情報を含む身体測定データ22b、予備検診情報のデータである尿検査データ22c、同じく予備検診情報のデータである血液検査データ22d、及び本検診情報のデータである画像診断データ22eを含んでいる。
【0046】
図8は、図1に示した管理システム1Aにおいて操作者に対して表示される表示画面の構成の例を示す模式図である。このような表示画面は、例えば図1の構成において、操作者が参照可能なように表示装置61において表示される。
【0047】
図8の画面(a)は、検診情報の入力に用いられる入力画面、及び管理情報の出力に用いられる出力画面の両者の機能を有する表示画面80である。この画面80では、被験者の氏名等の基本データ、及び身体測定データの一部等の簡単な検診データを表示する基本情報表示部81と、病歴情報、問診情報、検診履歴などの各種のデータを表示する詳細情報表示部82と、予備検診情報の入力に用いられる予備検診結果入力表示部83と、本検診の実施の要否についての判断結果の出力に用いられる本検診判断出力表示部84とが設けられている。
【0048】
これらの表示部81〜84のうち、入力表示部83及び出力表示部84により、予備検診情報解析部16で解析される予備検診情報の入力、及び本検診実施判断部17で判断された本検診の実施の要否に関する必要な情報の出力が行われる。なお、このような予備検診情報の入力、及び本検診の実施に関する管理情報の出力については、本表示画面80では同一の画面で行っているが、別個の表示画面を用いて行う構成としても良い。
【0049】
図8の画面(b)は、検診情報データベース20に記憶される各種のデータ(図5〜図7参照)を操作者に表示するための表示画面90である。この画面90では、被験者の氏名等の基本データを表示する基本情報表示部91と、本検診情報、予備検診情報、及び病歴情報等を必要に応じて表示する詳細情報表示部92とが設けられている。また、詳細情報表示部92においては、表示内容選択部93が設けられている。これにより、この画面90は、本検診、予備検診、及び病歴のうちで表示部92で表示される内容を選択、切換可能な構成となっている。なお、図8においては、本検診情報が表示部92に表示された状態を例として示している。
【0050】
本発明による検診情報管理システム、及び管理方法は、上記実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、検診情報管理システムの具体的なハードウェア構成については、図1に示した構成に限らず、様々な構成を用いて良い。また、検診情報データベースに記憶されるデータの内容、形式等については、図5〜図7はその一例を示すものであり、具体的には他の構成を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、被験者の検診を効率的に行って、その診断費用を低減することが可能な検診情報管理システム、及び検診情報管理方法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】検診情報管理システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】検診情報管理方法の基本概念を示す模式図である。
【図3】検診情報管理方法の一例を示す模式図である。
【図4】検診情報管理方法の他の例を示す模式図である。
【図5】検診情報データベースに記憶されるデータの構成例を示す図である。
【図6】検診情報データベースに記憶されるデータの構成例を示す図である。
【図7】検診情報データベースに記憶されるデータの構成例を示す図である。
【図8】検診情報管理システムにおいて操作者に対して表示される表示画面の構成の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1A…検診情報管理システム、10…検診情報管理装置、11…検診情報入力制御部、12…管理情報出力制御部、15…管理判断部、16…予備検診情報解析部、17…本検診実施判断部、20…検診情報データベース、50…入力部、51…入力装置、52…外部I/F、53…外部装置、60…出力部、61…表示装置、62…印刷装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の検診情報を管理する検診情報管理システムであって、
被験者の断層画像を取得して診断を行う画像診断を含む本検診についての本検診情報、及び前記画像診断に先立って行われるスクリーニング診断を含む予備検診についての予備検診情報の入力に用いられる検診情報入力手段と、
前記予備検診情報及び前記本検診情報を、前記被験者ごとに記憶する検診情報データベースと、
前記予備検診情報及び前記本検診情報に基づいて、前記被験者に対する検診の実施を管理する管理判断手段とを備え、
前記管理判断手段は、
前記予備検診情報での異常の有無について解析を行う予備検診情報解析手段と、
前記予備検診情報解析手段での解析結果に基づいて前記本検診の実施の要否を判断する本検診実施判断手段とを有し、
前記本検診実施判断手段は、前記解析結果で異常ありの場合に前記本検診を実施要と判断し、前記解析結果で異常なしの場合に前記本検診を実施不要と判断することを特徴とする検診情報管理システム。
【請求項2】
前記検診情報データベースは、前記被験者に対して所定の検診実施間隔おきに繰り返して実施される複数の検診のそれぞれでの前記予備検診情報及び前記本検診情報を記憶することを特徴とする請求項1記載の検診情報管理システム。
【請求項3】
前記本検診実施判断手段は、前記検診情報データベースにおいて前記被験者についての前回の検診の情報が記憶されておらず初回の検診と判断される場合に、前記解析結果にかかわらず前記本検診を実施要と判断することを特徴とする請求項2記載の検診情報管理システム。
【請求項4】
前記本検診実施判断手段は、2以上の整数nを前記本検診の強制的な実施のための回数条件として設定し、前記複数の検診のうちでn回おきの検診では、前記解析結果にかかわらず前記本検診を実施要と判断することを特徴とする請求項2または3記載の検診情報管理システム。
【請求項5】
前記予備検診は、前記スクリーニング診断として、尿検査、及び血液検査の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の検診情報管理システム。
【請求項6】
前記本検診は、前記画像診断として、PET検査、CT検査、及びMRI検査の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の検診情報管理システム。
【請求項7】
被験者の検診情報を管理する検診情報管理方法であって、
被験者の断層画像を取得して診断を行う画像診断を含む本検診についての本検診情報、及び前記画像診断に先立って行われるスクリーニング診断を含む予備検診についての予備検診情報を入力し、前記予備検診情報及び前記本検診情報を、検診情報データベースに前記被験者ごとに記憶する検診情報入力ステップと、
前記予備検診情報及び前記本検診情報に基づいて、前記被験者に対する検診の実施を管理する管理判断ステップとを備え、
前記管理判断ステップは、
前記予備検診情報での異常の有無について解析を行う予備検診情報解析ステップと、
前記予備検診情報解析ステップでの解析結果に基づいて前記本検診の実施の要否を判断する本検診実施判断ステップとを有し、
前記本検診実施判断ステップは、前記解析結果で異常ありの場合に前記本検診を実施要と判断し、前記解析結果で異常なしの場合に前記本検診を実施不要と判断することを特徴とする検診情報管理方法。
【請求項8】
前記検診情報データベースは、前記被験者に対して所定の検診実施間隔おきに繰り返して実施される複数の検診のそれぞれでの前記予備検診情報及び前記本検診情報を記憶することを特徴とする請求項7記載の検診情報管理方法。
【請求項9】
前記本検診実施判断ステップは、前記検診情報データベースにおいて前記被験者についての前回の検診の情報が記憶されておらず初回の検診と判断される場合に、前記解析結果にかかわらず前記本検診を実施要と判断することを特徴とする請求項8記載の検診情報管理方法。
【請求項10】
前記本検診実施判断ステップは、2以上の整数nを前記本検診の強制的な実施のための回数条件として設定し、前記複数の検診のうちでn回おきの検診では、前記解析結果にかかわらず前記本検診を実施要と判断することを特徴とする請求項8または9記載の検診情報管理方法。
【請求項11】
前記予備検診は、前記スクリーニング診断として、尿検査、及び血液検査の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項記載の検診情報管理方法。
【請求項12】
前記本検診は、前記画像診断として、PET検査、CT検査、及びMRI検査の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7〜11のいずれか一項記載の検診情報管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−269247(P2008−269247A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110779(P2007−110779)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(507129433)
【出願人】(507129444)財団法人浜松光医学財団 (3)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】