説明

検針作業支援装置、及びコンピュータプログラム

【課題】作業停電によって給電タイプのメーターが動作しないが故に、せっかく検針に赴いた労力が無に帰するような事態の発生を未然に防止すること。
【解決手段】電気メーターの検針順路中に作業停電が重なるバッティングの有無を判定し(ステップS103)、バッティングが発生する場合(ステップS103のYES)、その検針順路中に、給電なければ動作しない給電タイプの電気メーターが含まれているかどうかを判定し(ステップS104)、給電タイプの電気メーターが含まれている場合には(ステップS104のYES)、その電気メーターの検針順序を例えば最後に入れ替えた検針順路変更データを作成し(ステップS109)、正規の検針順路データに替えて、検針順路変更データを検針用端末にダウンロードさせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気メーター、ガスメーター、水道メーターなどの各種のメーターを検針するに際して利用される検針用端末にダウンロードする検針順路データを管理するための検針作業支援装置、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気メーター、ガスメーター、水道メーターなどの各種のメーターを検針するに際して、従来から、携帯型の検針用端末が利用されている。検針用端末は、一般的に、検針をするメーターが設置されている需要家毎の入力画面を検針順路に従い表示し、検針員が読み取ったその需要家のメーターの数値を入力画面から入力できるようにした端末である。このような検針用端末は、例えば、特許文献1に「携帯型検針データ収集処理装置」として紹介され、特許文献2に「携帯情報端末」として紹介されている。
【0003】
検針用端末は、ハードウェアという側面から見ると、特許文献2に記載されているようなPDA(Personal Digital Assistance)などの携帯情報端末であったり、ハンディターミナルであったりする(PDAは登録商標)。このような端末において、需要家毎の入力画面を検針順路に従い表示して検針した数値を入力できるのは、そのための特有のコンピュータプログラムをインストールし、需要家毎の入力画面を検針順路に従い提供するデータ、いわば検針順路データを保存しているからに他ならない。検針順路データは、予め作成されて記憶装置に記憶保存され、例えばサーバーから個々の検針用端末にダウンロードされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−073366号公報
【特許文献2】特開2008−021078公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検針作業の対象であるメーターの中には、給電なしに動作する非給電タイプのみならず、給電を受けて初めて動作する給電タイプのものがある。給電タイプのメーターは、当然のことながら、給電を受けなければ動作せず、したがって、停電時には動作しない。このため、検針員が検針作業に赴いた際、その地域で停電が発生していると、せっかく検針に赴いたにも拘らず、そのメーターの検針作業を行なうことができず、無駄足になってしまう。
【0006】
その一方で、突発的に発生する事故停電の場合であれば兎も角、作業停電の場合には、予め停電する日時及び場所が分かっている。このため、作業停電の場合であれば、検針員が検針に赴いたにも拘らず検針を行なうことができなかったという事態の発生を、なんとか未然に食い止めることができそうなものである。
【0007】
ところが、現状、作業停電の事実すら検針員には知らされていないことが一般的であり、ましてや、システム上、作業停電と検針作業とを関係付けるようなことは、全く行なわれていない。
【0008】
この出願の出願人は、作業停電と検針作業との関係性をキーとして特許の先行技術調査をしてみた。その結果、数件の特許公開公報を抽出した。特許文献2も、そのうちの一つである。しかしながら、特許文献2を初めとする数件の先行技術文献は、検針時に作業停電があることを需要家に知らせるためのシステム構成を主眼としており、これらの先行技術文献からは、検針に赴いたことが無駄足になってしまうという上記状況を打破するためのヒントは、全く得られなかった。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、作業停電によって給電タイプのメーターが動作しないが故に、せっかく検針に赴いた労力が無に帰するような事態の発生を未然に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の検針作業支援装置は、情報処理を実行する情報処理部を備え、前記情報処理部が、(1)記憶装置に記憶された、メーターの検針作業に利用する検針用端末にダウンロードさせてこの検針用端末に前記メーターの検針順路を報知させる検針順路データと、作業停電の日時及び場所を特定する作業停電データと、検針対象となる前記メーターが給電なしに動作する非給電タイプなのか給電によって動作する給電タイプなのかの別を個々に記憶するメーターデータと、にアクセスするアクセス手段と、(2)前記検針順路データによって特定される検針順路中の予め決められた範囲に前記作業停電データによって特定される作業停電の日時及び場所が重なる第1の状況の発生の有無を判定する第1の判定手段と、(3)前記第1の状況が発生すると判定した場合、当該第1の状況を発生させる前記予め決められた範囲内の前記メーターに前記メーターデータによって特定される前記給電タイプのものが含まれている第2の状況の発生の有無を判定する第2の判定手段と、(4)前記第2状況の発生を判定した場合、前記第1の状況を発生させる前記予め決められた範囲の検針順序を当該第1の状況を発生させない検針順序に入れ替えた検針順路変更データを作成する作成手段と、(5)前記検針順路データに替えて前記検針順路変更データを前記検針用端末にダウンロードさせる変更手段と、を備えることによって上記課題を解決する。
【0011】
本発明の機械読み取り可能なコンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされ、当該コンピュータに、(1)記憶装置に記憶された、メーターの検針作業に利用する検針用端末にダウンロードさせてこの検針用端末に前記メーターの検針順路を報知させる検針順路データと、作業停電の日時及び場所を特定する作業停電データと、検針対象となる前記メーターが給電なしに動作する非給電タイプなのか給電によって動作する給電タイプなのかの別を個々に記憶するメーターデータと、にアクセスするアクセス機能と、(2)前記検針順路データによって特定される検針順路中の予め決められた範囲に前記作業停電データによって特定される作業停電の日時及び場所が重なる第1の状況の発生の有無を判定する第1の判定機能と、(3)前記第1の状況が発生すると判定した場合、当該第1の状況を発生させる前記予め決められた範囲内の前記メーターに前記メーターデータによって特定される前記給電タイプのものが含まれている第2の状況の発生の有無を判定する第2の判定機能と、(4)前記第2状況の発生を判定した場合、前記第1の状況を発生させる前記予め決められた範囲の検針順序を当該第1の状況を発生させない検針順序に入れ替えた検針順路変更データを作成する作成機能と、(5)前記検針順路データに替えて前記検針順路変更データを前記検針用端末にダウンロードさせる変更機能と、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検針順路データによって特定される検針順路中の予め決められた範囲に設置されるメーターが作業停電によって給電停止される場合、当該範囲の検針順序を入れ替えた検針順路変更データを作成し、これを検針用端末にダウンロードするようにしたので、作業停電によって給電タイプのメーターが動作しないが故に、せっかく検針に赴いた労力が無に帰するような事態の発生を未然に防止することができ、したがって、検針作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の一形態として、システム全体の概略構造を示すブロック図。
【図2】営業所における営業所システムの概略構造を示すブロック図。
【図3】顧客データベースの管理項目の一例を示す模式図。
【図4】検針作業データベースの管理項目の一例を示す模式図。
【図5】作業停電データベースの管理項目の一例を示す模式図。
【図6】計器データベースの管理項目の一例を示す模式図。
【図7】検針順路変更処理の流れを示すフローチャート。
【図8】検針順路データ(あるいは検針順路変更データ)のダウンロード処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.システム構成
(1)システムの概要
実施の一形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態は、検針員が所持してメーターを検針するに際して利用される検針用端末51(図2参照)に、検針順路データをダウンロードするためのシステムである。ここでは、検針対象となるメーターとして、電気の需要家宅に設置されている電気メーター(電力量計)を想定している。このため、本実施の形態は、電力事業者が管理運営するシステムの一例を示している。
【0015】
図1に示すように、本システムは、例えば電力事業者の本社に設置されてその管理下におかれるホストコンピュータ101を主体とし、このホストコンピュータ101と複数個所に配されている発電所201、変電所301、事業所401、及び営業所501とを、通信ネットワークCNを介してデータ通信可能に接続している。実際のところ、ホストコンピュータ101は、直接的に通信ネットワークCNに接続しているわけではなく、本社設置の通信用のコンピュータ(図示せず)を介して上記発電所201などの各所とデータ通信を行なう。同様に、図1中に示す発電所201、変電所301、事業所401、及び営業所501は、特有の設備名として表記しているが、云うまでもなく、ホストコンピュータ101とデータ通信を実行するのは、それらの設備に設置されている通信用のコンピュータである。このようなデータ通信のためのシステム構成は周知なので、図1では簡略化して示しているわけである。
【0016】
前述したとおり、本実施の形態は、検針用端末51に検針順路データをダウンロードするためのシステムである。このため、図1中の発電所201、変電所301、事業所401、及び営業所501のうち、本実施の形態において表舞台に立つのは、営業所501である。営業所501は、検針作業を行なう検針員を擁し、個々の検針員に検針用端末51を持たせて検針作業を遂行させる。
【0017】
(2)本社システム
ホストコンピュータ101は、記憶装置111に対してアクセス可能であり、それ故、記憶装置111が記憶する顧客データベース112、検針作業データベース113、作業停電データベース114、及び計器データベース115などに対してデータを取得したり書き込んだりすることができる。記憶装置111は、ホストコンピュータ101とは別の大容量な外部記憶装置として設けられ、例えば、ホストコンピュータ101と構内ネットワーク(図示せず)を介して接続されていたり、あるいは、インターフェースを介して直接接続されていたりする。もっとも、記憶装置111の全部又は一部をホストコンピュータ101が備える記憶装置、例えばHDDや不揮発性のメモリに担わせることも、記憶容量に問題なければ十分に可能である。更には、本社以外の場所に記憶装置111を設置し、ホストコンピュータ101からのアクセスを受け付けるように構築しても良い。
【0018】
このようなホストコンピュータ101は、各種処理を実行するCPUとROMやRAMなどのメモリとからなる情報処理部を有し、例えば自らのHDDにインストールしているOS(オペレーティングシステム)の下、同様にインストールしているコンピュータプログラムに従い情報処理を実行するコンピュータである(全て図示せず)。本実施の形態でのホストコンピュータ101の役割は、インストールしている検針作業支援用のコンピュータプログラムに従い、最適な検針順路データを検針用端末51にダウンロードすることにある。より詳しくは、検針作業データベース113が記憶管理している検針順路データを検針作業の例えば二営業日前に確定し、これを一営業日前に営業所501に送信出力する。この際、ホストコンピュータ101は、作業停電データベース114にアクセスして作業停電に関する情報を取得し、必要に応じて検針順路変更データを作成し、検針順路データに替えて検針順路変更データを営業所501に送信出力する。検針順路変更データは、検針作業データベース113が記憶管理している検針順路データが規定する検針順路を、作業停電の状況に応じて変更するデータである。営業所501では、検針作業一営業日前に受信した検針順路データを、検針用端末51にダウンロードし、検針員による検針作業に供する。
【0019】
(3)営業所システム
図2は、営業所501における営業所システムの概略構造を示すブロック図である。営業所501は、通信ネットワークCNに接続されて外部のコンピュータ、例えば本社設置のホストコンピュータ101とデータ通信を行なう通信サーバー511を備えている。このような営業所501におけるシステムを統括しているのは、営業所サーバー512である。営業所サーバー512は、構内ネットワークLNを介して通信サーバー511、複数台のクライアントコンピューター513、及び複数台のクレードル514と接続し、データ通信を実行する。クレードル514というのは、検針用端末51をセットして充電することを本旨としながら、セットされた検針用端末51に対して、本社設置のホストコンピュータ101から送信されてきた検針順路データ(あるいは検針順路変更データ)を検針用端末51にダウンロードする機能をも果たす機器である。検針用端末51としては、PDA(Personal Digital Assistance)などの携帯情報端末やハンディターミナルが用いられる(PDAは登録商標)。このような検針用端末51には、ダウンロードした検針順路データ(あるいは検針順路変更データ)に従った検針順路で需要家毎の入力画面をディスプレイ51aに表示し、個々の需要家の電気メーターを検針して得た電力使用の数値をキーボード51bによって入力可能とするためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムは、検針用端末51に予めインストールされていてもよく、あるいは、検針順路データ(あるいは検針順路変更データ)に伴われてこのデータのダウンロードに伴いインストールされてもよい。検針用端末51は、更に、図示しないプリンタを内蔵し、検針票Pを印字発行する機能も有している。
【0020】
(4)顧客データベース
図3は、顧客データベース112の管理項目の一例を示す模式図である。顧客データベース112は、図4に示す検針作業データベース113と共に、検針用端末51にダウンロードさせてこの検針用端末51に電気メーターの検針順路をディスプレイ51aへの表示によって報知させる検針順路データを管理している。管理項目として、顧客データベース112は、需要家たる顧客と電力事業者との間の「契約番号」に対応付けて、その顧客に関する各種の情報を記憶保存している。本実施の形態との関係では、「引込柱番号」、「お客様名義」、「電気メーター番号」、「電気メーターコード」、及び「契約種別」が管理項目となっている。
【0021】
「引込柱番号」は、顧客である需要家宅に引込線を引き込んでいる電柱を特定する一意の識別番号である。個々の重要家宅に対する作業停電の影響の有無を判定するために利用される(図7のステップS102〜S103参照)。
【0022】
「お客様名義」は、顧客の氏名を表現するテキストデータである。検針用端末51によって印字発行する検針票Pに記名する顧客の氏名となる。
【0023】
「電気メーター番号」は、電力事業者がその顧客に貸し出している電気メーターの個体を特定するための一意の識別番号である。検針対象となる電気メーターを特定するために利用される。
【0024】
これに対して、「電気メーターコード」というのは、電気メーターの個体を識別するためのものではなく、その電気メーターの種類を特定し識別するための識別コードである。例えば、同じ種類の電気メーターがあった場合、「電気メーター番号」は一台ずつ異なる識別番号となるのに対して、「電機メーターコード」は同一の識別コードとなる。この「電気メーターコード」は、電気メーターの種類、つまり、給電なしに動作する非給電タイプなのか、それとも給電によって動作する給電タイプなのかを判定するために利用される(図7のステップS104参照)。
【0025】
「契約種別」は、個々の顧客と電力事業者との間に締結された契約の種別を特定するための識別データである。電気料金を計算するために利用される。
【0026】
(5)検針作業データベース
図4は、検針作業データベース113の管理項目の一例を示す模式図である。検針作業データベース113は、図3に示す顧客データベース112と共に、検針用端末51にダウンロードさせてこの検針用端末51に電気メーターの検針順路を報知させる検針順路データを管理している。管理項目として、検針作業データベース113は、1ヶ月毎に定められる検針作業の「日程」の単位で、「区画」、「引込柱番号」、「お客様」、「検針員コード」、及び「検針員氏名」を記憶保存している。
【0027】
「日程」は、個々の営業所501毎の、一日における検針作業の日程を示している。営業所501の単位で、図4に示す検針作業データベース113が作成されているわけである。したがって、個々の営業所501が担当する1か月分の検針作業は、01日程から最終日程(例えば20日程)までに振り分けられている。
【0028】
「区画」は、検針作業の一単位を規定している。一つの「日程」中に、複数個の「区画」が設定されている。一例として、一人の検針員が一日に3〜5区画程度の検針作業を行なうよう設定されている。この「区画」は、必ずしも行政区画と一致するわけではなく、作業停電の範囲と一致するわけでもなく、あくまでも検針作業のために画された単位である。
【0029】
「引込柱番号」は、顧客である需要家宅に引込線を引き込んでいる電柱を特定する一意の識別番号である。図3に示す顧客データベース112が管理する「引込柱番号」と符合する。一つの「区画」の中に、「引込柱番号」が複数個、例えば数十個程度規定されている。
【0030】
「お客様」は、顧客を特定するためのデータであり、一つの「引込柱番号」に対して一又は二以上の「お客様」が設定されている。一例として、図3に示す顧客データベース112が管理する「契約番号」と符合するデータを、「お客様」として管理することができる。あるいは、「契約番号」に加えて、「お客様名義」、「電気メーター番号」、「電気メーターコード」、「契約種別」の全部又は一部を顧客データベース112から引用して管理してもよい。要は、この「お客さま」の管理項目は、ホストコンピュータ101が検針用端末51にダウンロードさせる検針順路データを作成するに際して引用する個々のデータの引用元を、顧客データベース112とするのか、それとも検針作業データベース113とするのかを決するわけである。もっとも、ホストコンピュータ101は、検針作業データベース113において「引込柱番号」が設定された場合、これに対応する「お客様」を、顧客データベース112から自動引用して検針作業データベース113に設定する処理を実行することが望ましい。
【0031】
「検針員コード」は、担当する検針員を特定する識別コードである。「区画」毎に一人の検針員の「検針員コード」が設定される。
【0032】
「検針員氏名」は、「検針員コード」によって特定される検針員の氏名を表現するテキストデータである。検針用端末51によって印字発行する検針票Pに記名する検針員の氏名となる。
【0033】
検針作業データベース113において重要なことは、このデータベースが、各「区画」における検針作業の順路を規定しているということである。検針作業順序の定義は、一例として、「お客様」のデータのシリアル配列順によって行なってもよいし、「お客様」のデータに別途順番を示すデータを付加することで行なってもよい。
【0034】
(6)作業停電データベース
図5は、作業停電データベース114の管理項目の一例を示す模式図である。作業停電データベース114は、作業停電の日時及び場所を特定する作業停電データを管理している。管理項目として、作業停電データベース114は、個々の作業停電を特定して識別するための「作業コード」に対応付けて、「作業日時」、「引込柱番号」、及び「お客様」を記憶保存している。
【0035】
「作業日時」は、「作業コード」が特定する作業停電が行なわれる予定の日時を特定するデータである。例えば、「×年×月×日××時××分〜××時××分」というように、日時のデータとして設定されている。
【0036】
「引込柱番号」は、顧客である需要家宅に引込線を引き込んでいる電柱を特定する一意の識別番号であり、「作業コード」によって特定される作業停電が行なわれる予定の電柱を特定し識別する。この「引込柱番号」は、図3に示す顧客データベース112が管理する「引込柱番号」と符合する。作業停電データベース114においては、「作業コード」によって特定される一つの作業停電に対して、その影響を受ける一又は二以上の「引込柱番号」が設定されることになる。
【0037】
「お客様」は、顧客を特定するためのデータであり、一つの「引込柱番号」に対して一又は二以上の「お客様」が設定されている。一例として、図3に示す顧客データベース112が管理する「契約番号」と符合するデータを、「お客様」として管理することができる。あるいは、「契約番号」に加えて、「お客様名義」、「電気メーター番号」、「電気メーターコード」、「契約種別」の全部又は一部を顧客データベース112から引用して管理してもよい。要は、この「お客さま」の管理項目は、作業停電があることを顧客に知らせる目的で管理されるデータであり、この際、ホストコンピュータ101が引用する個々のデータの引用元を、顧客データベース112とするのか、それとも作業停電データベース114とするのかを決するデータとなるわけである。もっとも、ホストコンピュータ101は、作業停電データベース114において「引込柱番号」が設定された場合、これに対応する「お客様」を、顧客データベース112から自動引用して作業停電データベース114に設定する処理を実行することが望ましい。
【0038】
(7)計器データベース
図6は、計器データベース115の管理項目の一例を示す模式図である。計器データベース115は、検針対象となる電気メーターが給電なしに動作する非給電タイプなのか給電によって動作する給電タイプなのかの別を個々に記憶するメーターデータを管理している。管理項目として、計器データベース115は、「電気メーターコード」毎に、「メーカー」、「型式」、及び「給電要否」などを管理している。
【0039】
「電気メーターコード」は、電気メーターの種類を特定し識別するための識別コードである。図3に示す顧客データベース112の「電気メーターコード」に符合する。
【0040】
「メーカー」は、その電気メーターの製造者を特定するデータであり、「型式」は、その製造者が製造する電気メーターの型式を特定するデータである。
【0041】
「給電要否」は、その電気メーターの種類、つまり、給電なしに動作する非給電タイプなのか、それとも給電によって動作する給電タイプなのかを特定するデータである。
【0042】
2.データ処理
(1)序
以上説明したハードウェア構成の下、本社設置のホストコンピュータ101は、自らがインストールしているコンピュータプログラムに従い、検針順路変更処理(図7のフローチャート参照)と、これに続く検針順路データ(あるいは検針順路変更データ)のダウンロード処理(図8のフローチャート参照)とを実行する。以下、それぞれの処理について説明する。
【0043】
(2)検針順路変更処理
まず、検針順路変更処理を、図7のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、ホストコンピュータ101が、作業停電データベース114にアクセスして作業停電に関する情報を取得し、必要に応じて検針順路変更データを作成するための処理である。どのような場合に「必要に応じて検針順路変更データを作成」するのかというと、個々の検針員が担当する検針作業の地域が作業停電の予定地域に含まれており、かつ、その検針作業の地域に、給電を受けて初めて動作する給電タイプの電気メーターが設置されている場合である。
【0044】
ホストコンピュータ101のCPUは、検針作業データベース113の管理項目に従い、個々の営業所501の一つの日程を単位として、検針順路変更処理を実行する。概略、検針作業データベース113において、該当する「日程」に設定されている「区画」のうち、一人の検針員が担当する一又は二以上の区画毎に(ステップS101、S107、S108、S110参照)、検針順路データの変更の要否を判定し(ステップS102〜S104参照)、変更が必要と判断したならば(ステップS104のYES)、検針順路変更データを作成する(ステップS105、S106、S109参照)。
【0045】
つまり、ホストコンピュータ101のCPUは、最初に区画数Nを1と置き(ステップS101)、検針作業データベース113から、その「区画」の「引込柱番号」を抽出する(ステップS102)。このとき、ホストコンピュータ101のCPUは、個々の「区画」における検針作業の時刻を認識可能である。検針作業の時刻は、一例として、個々の「区画」に含まれている「お客様」の数から類推して算出することができ、他の一例として、予め検針作業データベース113の管理項目として記憶保存しておくこともできる。
【0046】
続いて、ホストコンピュータ101のCPUは、作業停電データベース114を参照し、現在処理中のN「区画」の検針中に、作業停電の予定があるか(第1の状況)どうかを判定する(ステップS103)。この処理、いわば第1の判定処理は、作業停電データベース114に設定された「作業時間」及び「引込柱番号」と、予め分かっているN「区画」の検針時間及びステップS102の処理で抽出した「引込柱番号」とを照合して行なわれる。
【0047】
ホストコンピュータ101のCPUは、現在処理中のN「区画」の検針中に、作業停電の予定があると判定した場合(ステップS103のYES)、その検針範囲に給電型の電気メーターがあるか(第2の状況)どうかを判定する(ステップS104)。この処理、いわば第2の判定処理は、ステップS102の処理で抽出した「引込柱番号」に対応する検針作業データベース113の「お客様」を抽出し、顧客データベース112を起源とする対応の「電気メーターコード」を導きだし、計器データベース115を参照してその「電気メーターコード」に対応する「給電要否」を調べることによって実行される。
【0048】
ホストコンピュータ101のCPUは、上記した第1の状況及び第2の状況が共に発生していると判定した場合(ステップS104のYES)、該当のN「区画」に、作業停電ステータスを設定し(ステップS105)、更に作業停電データベース114の「作業日時」から取得した当該作業停電の終了予定時刻を設定する(ステップS106)。その後、区画数Nを1つインクリメント、つまりN=N+1とする(ステップS107)。
【0049】
これに対して、ホストコンピュータ101のCPUは、第1の状況の発生を判定せず(ステップS103のNO)、第1の状況の発生を判定したが第2の状況の発生は判定しない場合(ステップS103のYESでステップS104のNO)、ステップS105及びS106の処理をすることなく、区画数Nを1つインクリメント、つまりN=N+1とする(ステップS107)。
【0050】
その後、ホストコンピュータ101のCPUは、N「区画」の検針員とN+1「区画」の検針員とが同一の検針員なのかどうかを判定する(ステップS108)。この処理は、検針作業データベース113のN「区画」に設定されている「検針員コード」とN+1の「区画」に設定されている「検針員コード」との一致不一致を見ることで実行される。
【0051】
ホストコンピュータ101のCPUは、N「区画」の検針員とN+1「区画」の検針員とが同一の検針員であると判定した場合(ステップS108のYES)、ステップS102の処理にリターンし、ステップS102〜S108の処理を繰り返す。
【0052】
これに対して、ホストコンピュータ101のCPUは、N「区画」の検針員とN+1「区画」の検針員とが同一の検針員ではないと判定した場合(ステップS108のNO)、N「区画」の検針員のために、検針順路変更データを作成する(ステップS109)。検針順路変更データは、ステップS105の処理で作業停電ステータスが設定された「区画」を、一例として、その検針員が担当する一日の区画のうちの最終区画に入れ替えたデータである。この際、ホストコンピュータ101は、ステップS106で設定した終了予定時刻を参照し、最終区画に入れ替えた「区画」の検針時間が、作業停電の時間を過ぎていることを確認する。
【0053】
云うまでもなく、ホストコンピュータ101のCPUは、ステップS105で作業停電ステータスが設定された「区画」がない場合、ステップS109での検針順路変更データをスキップする。図7は、煩雑さを回避するために、この処理を省略して示している。
【0054】
ホストコンピュータ101のCPUは、N「区画」の検針員とN+1「区画」の検針員とが同一の検針員ではないと判定した後(ステップS108のNO)検針作業データベース113の「区画」に設定された全ての区画についてステップS101〜S109の処理を繰り返す(ステップS110)。そして、最終区画の終了を判定したならば(ステップS110のYES)、処理を終了する。
【0055】
こうして、個々の検針員が担当する検針作業の地域が作業停電の予定地域に含まれており、かつ、その検針作業の地域に、給電によって動作する給電タイプの電気メーターが設置されている場合、その検針員のために、検針順路変更データが作成される。
【0056】
(3)ダウンロード処理
次に、検針順路データ(あるいは検針順路変更データ)のダウンロード処理を、図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0057】
前述したとおり、本社設置のホストコンピュータ101は、検針作業データベース113が記憶管理している検針順路データを検針作業の二営業日前に確定し、これを一営業日前に営業所501に送信出力する。つまり、図7のフローチャートに示す検針順路変更処理は、検針作業の二営業日前に実行される。そして、検針作業データベース113が記憶管理している検針順路データ、あるいは図7のステップS109で作成された検針順路変更データを営業所501に送信出力する図8のフローチャートに示す処理は、検針作業の一営業日前に実行されるわけである。営業所501では、ホストコンピュータ101から送信されてきた検針順路データ(あるいは検針順路変更データ)をクレードル514にセットされた検針用端末51にダウンロードする。この意味では、ホストコンピュータ101から営業所501に向けての検針順路データ(あるいは検針順路変更データ)の送信出力は、当該データのダウンロードと等価であると云える。
【0058】
図8に示すように、ホストコンピュータ101のCPUは、検針作業の一営業日前にスケジューリングされたダウンロード指令の有無に待機している(ステップS201)。このダウンロード指令は、個々の検針員が所持し使用する検針用端末51の単位で発せられる。
【0059】
ホストコンピュータ101のCPUは、各営業所501における個々の検針用端末51に対する検針順路データ(あるいは検針順路変更データ)のダウンロード指令があると(ステップS201のYES)、その検針用端末51の翌日分のデータとして検針順路変更データがあるかどうかを判定する(ステップS202)。なければ(ステップS202のNO)、検針作業データベース113に基づいて作成した検針順路データをダウンロードし(ステップS203)、処理を終了する。あれば(ステップS202のYES)、既に作成されている検針順路変更データをダウンロードし(ステップS204)、その検針順路変更データをデータクリアし(ステップS205)、処理を終了する。
【0060】
以上説明した処理の中で、ホストコンピュータ101のCPUは、一例として、検針用端末51の翌日分のデータに検針順路変更データがあると判定した場合(ステップS202のYES)、ステップS204でダウンロードする検針順路変更データに、検針順路に変更があったことを示すデータ、いわば変更報知データを伴わせる。検針用端末51がインストールしているコンピュータプログラムは、検針順路変更データのダウンロードに際して、ダウンロードデータ中に変更報知データが含まれていることを認識すると、これを検針用端末51に報知させる。報知は、一例として、内蔵する図示しないプリンタによる印字発行、別の一例として、ディスプレイ51aへの表示によってなされる。報知内容は、変更報知データの内容に依存する。例えば、変更報知データが、検針順路に変更があったことを示すステータスである場合の報知は、検針順路に変更があったことを示す可視情報の印字発行やディスプレイ表示ということになる。可視情報は、代表的には文字による情報であるが、予め決められた文字以外の記号であってもよい。別の一例として、変更データが、検針順路の変更内容までをも含む場合の報知は、検針順路に変更があったことに加えて、どのように変更があったのかというその変更内容の印字発行やディスプレイ表示とすることができる。例えば、「10月1日 10:00〜12:00の作業停電により、区画順4の00004の区画番号は、最終区画の10に変更されています」というように報知するわけである。以上説明した検針用端末51で行なわれる報知(印字発行、ディスプレイ表示)は、例えばキーボード51bでの操作に応じて、後から何度でも出力できるようにすることが望ましい。
【0061】
こうして、ホストコンピュータ101のCPUは、全ての営業所501における全ての検針用端末51に対して、図8に示すダウンロード処理を実行する。
【0062】
3.作用効果
以上説明したように、本実施の形態によれば、検針作業データベース113が管理する検針順路データによって特定される検針順路中の予め決められた範囲、本実施の形態では一つの「区画」に設置される電気メーターが作業停電によって給電停止される場合、当該「区画」の検針順序を入れ替えた検針順路変更データを作成し、これを検針用端末51にダウンロードさせるようにしている。これにより、作業停電によって給電タイプの電気メーターが動作しないが故に、せっかく検針に赴いた労力が無に帰するような事態の発生を未然に防止することができ、ひいては検針作業の効率化を図ることができる。
【0063】
この場合、上記「予め決められた範囲」を、一人の検針員が一日に担当する一つの「区画」としているので、「区画」毎の検針順路の入れ替えが可能となり、検針順路の複雑化を回避することができる。
【0064】
しかも、作業停電とバッティングする区画の検針順路を、同一の検針員が一日に担当する最終区画に入れ替えるようにしているので、簡単な処理によって効果的な検針順路の変更が可能となる。
【0065】
4.変形例
本実施の形態の実施に際しては、各種の改変や変更が可能である。
【0066】
例えば、本実施の形態の場合、上記「予め決められた範囲」を、一人の検針員が一日に担当する一つの「区画」としたが、必ずしもこれに限定する必要はない。例えば、検針順路中の「予め決められた範囲」は、一つの電気メーターの範囲としてもよい。つまりは、計画停電によって給電が途絶えることにより動作しなくなる電気メーター個々の単位で検針順路変更データを作成し、これを通常の検針順路データと入れ替えるようにしてもよい。
【0067】
また、本実施の形態の場合、作業停電とバッティングする区画の検針順路を、同一の検針員が一日に担当する最終区画に入れ替えるようにしたが、必ずしもこれに限定する必要はない。要は、作業停電とバッティングする区画を、作業停電とバッティングしない時間帯に回せばよいわけである。
【0068】
その他、本実施の形態は、記憶装置111が記憶する顧客データベース112、検針作業データベース113、作業停電データベース114、及び計器データベース115の管理データとして、その一例として示したに過ぎない。各管理データは、別の切り口からなる異なるデータベースや、ホストコンピュータ101がアクセス可能な別の記憶装置や記憶媒体などに記憶保存されていてもよいことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
101 ホストコンピュータ(コンピュータ)
111 記憶装置
112 顧客データベース(検針順路データ)
113 検針作業データベース(検針順路データ)
114 作業停電データベース(作業停電データ)
115 計器データベース(メーターデータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理を実行する情報処理部と、
前記情報処理部が、記憶装置に記憶された、メーターの検針作業に利用する検針用端末にダウンロードさせてこの検針用端末に前記メーターの検針順路を報知させる検針順路データと、作業停電の日時及び場所を特定する作業停電データと、検針対象となる前記メーターが給電なしに動作する非給電タイプなのか給電によって動作する給電タイプなのかの別を個々に記憶するメーターデータと、にアクセスするアクセス手段と、
前記情報処理部が、前記検針順路データによって特定される検針順路中の予め決められた範囲に前記作業停電データによって特定される作業停電の日時及び場所が重なる第1の状況の発生の有無を判定する第1の判定手段と、
前記情報処理部が、前記第1の状況が発生すると判定した場合、当該第1の状況を発生させる前記予め決められた範囲内の前記メーターに前記メーターデータによって特定される前記給電タイプのものが含まれている第2の状況の発生の有無を判定する第2の判定手段と、
前記情報処理部が、前記第2状況の発生を判定した場合、前記第1の状況を発生させる前記予め決められた範囲の検針順序を当該第1の状況を発生させない検針順序に入れ替えた検針順路変更データを作成する作成手段と、
前記情報処理部が、前記検針順路データに替えて前記検針順路変更データを前記検針用端末にダウンロードさせる変更手段と、
を備えることを特徴とする検針作業支援装置。
【請求項2】
前記予め決められた範囲は、一人の検針員が一日に担当する一又は二以上の区画である、ことを特徴とする請求項1に記載の検針作業支援装置。
【請求項3】
前記検針順路変更データは、前記第1の状況を発生させる前記予め決められた範囲の検針順序を、同一の検針員が一日に担当する最終区画に入れ替える、ことを特徴とする請求項2に記載の検針作業支援装置。
【請求項4】
コンピュータにインストールされ、当該コンピュータに、
記憶装置に記憶された、メーターの検針作業に利用する検針用端末にダウンロードさせてこの検針用端末に前記メーターの検針順路を報知させる検針順路データと、作業停電の日時及び場所を特定する作業停電データと、検針対象となる前記メーターが給電なしに動作する非給電タイプなのか給電によって動作する給電タイプなのかの別を個々に記憶するメーターデータと、にアクセスするアクセス機能と、
前記検針順路データによって特定される検針順路中の予め決められた範囲に前記作業停電データによって特定される作業停電の日時及び場所が重なる第1の状況の発生の有無を判定する第1の判定機能と、
前記第1の状況が発生すると判定した場合、当該第1の状況を発生させる前記予め決められた範囲内の前記メーターに前記メーターデータによって特定される前記給電タイプのものが含まれている第2の状況の発生の有無を判定する第2の判定機能と、
前記第2状況の発生を判定した場合、前記第1の状況を発生させる前記予め決められた範囲の検針順序を当該第1の状況を発生させない検針順序に入れ替えた検針順路変更データを作成する作成機能と、
前記検針順路データに替えて前記検針順路変更データを前記検針用端末にダウンロードさせる変更機能と、
を実行させる、機械読み取り可能なコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記予め決められた範囲は、一人の検針員が一日に担当する一又は二以上の区画である、ことを特徴とする請求項4に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記検針順路変更データは、前記第1の状況を発生させる前記予め決められた範囲の検針順序を、同一の検針員が一日に担当する最終区画に入れ替える、ことを特徴とする請求項5に記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84158(P2013−84158A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224415(P2011−224415)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)