説明

検針機

【課題】検針機ユーザにおいて、検針センサーの感度を自動的に調整可能とし、これにより縫製品の生産性の向上が可能な検針機を提供すること。
【解決手段】被検出物を搬送ベルト4により搬送する駆動モータ2と、被検出物中の金属類の通過を誘起電圧の変化として検出する検針センサー8と、検針センサー8の誘起電圧の検出感度を調整し、出力する制御部33とを含む検針機において、制御部33を、駆動モータ2の回転速度制御をするスピードコントロール基板36と、標準金属の複数の搬送速度と搬送速度に対応する感度との相関関係曲線(A)と、サンプル金属の同様の相関関係曲線(B又はC)とを記憶すると共に、両曲線間に所定の閾値(K又はK1)を設定可能なデジタルメイン基板23とで構成する。被検出物が搬送された際には、両曲線から得た感度に基づいて、被検出物の設定搬送速度に対応する最適感度を自動的に演算して設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば縫製品、インテリア製品、食料品、玩具等の製造工程中において混入した縫い針等の金属類を効果的に検出する検針機に関し、詳しくはその感度調整等の操作性を大幅に向上させた検針機に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、検針機は、コンベア幅方向に複数組配置した、例えば永久磁石と直流磁界とから成る検針センサーに対し、その下方において、例えば縫製工程中に混入した折損縫い針、忘れ針や、ホチキス等が混入した縫製品を搬送方向に移動させ、混入金属物が検針センサーの磁界を横切った際に生じる誘起電圧を検出することにより、これら異物を出荷前に検出する。
【0003】
この場合、検針センサーの機能を最大現に発現させた状態で作動させるために、始業前の検針センサーの感度調整が必須の作業である。
【0004】
しかしながら、従来の検針機は、その検針センサー感度がその検知特性上、搬送速度の変更は勿論、検知すべき金属の種類や形状が異なっても変化するので、その感度調整は非常に熟練を要する作業であった。
【0005】
加えて、従来の検針機は、搬送速度調整と、感度調整とが独立していたため、感度調整をより困難なものにしていた。そのために縫製品の必要上、搬送速度が異なるたびに感度調整作業に徒に時間を浪費し、縫製品の生産性を低下させる原因ともなっていた。
【0006】
このような被検出物の操作性に関する先行技術の検針機としては、特許文献1に記載のものが見られるが、この従来技術は、検針検査ミスが出荷前になかった事実をパソコン処理により後日証明せんとするもので、上記搬送速度の変更に伴う感度調整の困難性の問題を何ら解決し得るものではなかった。
【特許文献1】特開平9−78446号公報(請求項1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、検針機ユーザにおいて、仮に被検出物の搬送速度が変更されても、検針センサーの感度を自動的に最適の状態に調整可能とし、これにより縫製品の生産性の向上が可能な検針機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の検針機は、金属針等の金属類が混入した被検出物を搬送ベルトにより搬送する駆動モータと、該搬送ベルトの近傍に設けられ、被検出物中の金属類の通過を誘起電圧の変化として検出する検針センサーと、該検針センサーの誘起電圧の検出感度を調整し、出力する制御部とを含む検針機であって、前記制御部が、前記駆動モータの回転速度制御をするスピードコントロール基板と、予め、前記搬送ベルトに感度の基準となる標準金属と検出対象となるサンプル金属とを搬送させることにより、前記標準金属の複数の搬送速度と該搬送速度に対応する感度との相関関係曲線(A)と、前記サンプル金属の複数の搬送速度と該搬送速度に対応する感度との相関関係曲線(B又はC)とを記憶すると共に、両曲線(Aと、BまたはC)間に所定の閾値(KまたはK1)を設定可能なデジタルメイン基板と、から成り、前記被検出物が搬送された際には、前記デジタルメイン基板が両曲線(Aと、BまたはC)から得られる感度に基づいて、被検出物の設定搬送速度に対応する最適感度を自動的に演算して設定すると共に、前記検針センサーが検出した感度を前記閾値と比較し、該比較値との大小関係により、前記スピードコントロール基板に前記駆動モータの停止又は回転信号を送信することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の検針機は、請求項1記載の検針機において、前記サンプル金属は、検針センサーによる検知をさせて被検出物の搬送を中断させたい鉄系金属から成るサンプルであり、前記被検出物の設定搬送速度に対応する感度の閾値(K1)を、前記標準金属の相関関係曲線(A)上の感度と、前記サンプル金属の相関関係曲線(C)上の感度のいずれの感度に対しても低く設定すると共に、前記デジタルメイン基板が前記スピードコントロール基板に与える制御信号は、前記被検出物の検出感度が前記閾値を超えた場合は前記駆動モータの運転を停止させる信号であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る検針機は、請求項1又は請求項2に記載の検針機において、前記被検出物の検出モード、搬送速度、感度及び閾値等の条件設定パネルとして、これらの操作ボタンと共に液晶表示面を有する液晶表示ユニットを前記搬送ベルト近傍に配設し、該液晶表示面に少なくとも前記搬送速度、感度及び閾値をリアルタイムに表示するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る検針機は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の検針機において、前記搬送ベルトの側方であって、かつ、検針センサーの前方には、搬送ベルト上の被検出物を検知した後、前記検針センサーを通過するまでの間に、被検出物中に含まれている未知の金属の誘起電圧を検出して検針処理をさせるトリガーとなるフォトセンサーが配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の検針機によれば、前述したように、標準金属の複数の搬送速度とこの搬送速度に対応する感度との相関関係曲線(A)と、サンプル金属の同様の相関関係曲線(B又はC)とに基づいて、被検出物の設定搬送速度に対応する最適の感度が自動的に演算して設定される。
【0013】
また、検針センサーが検出した感度を、検針機内にメモリーされている閾値(KまたはK1)と比較し、該比較値との大小関係により、搬送モータの運転または停止が自動的になされる。
【0014】
従って、オペレータは煩雑な感度調整作業から解放されるので、被検出物の生産性が格段に向上する。
【0015】
請求項2記載の検針機によれば、請求項1記載の検針機の効果に加え、前記サンプル金属は、検針センサーによる検知をさせて被検出物の搬送を中断させたい鉄系金属から成るサンプルとし、被検出物の設定搬送速度に対応する感度の閾値(K1)を、標準金属の相関関係曲線(A)上の感度と、サンプル金属の相関関係曲線(C)上の感度のいずれの感度に対しても低く設定し、この閾値に基づいて、搬送モータの運転または停止が自動的になされるので、被検出物中にアクセサリー等を残存させると問題のある被検出物については検針機の通過を中断させることができ、残存金属物の混入の少ない品質の高い被検出物が得られる。
【0016】
請求項3記載の検針機によれば、請求項1または請求項2記載の検針機の効果に加え、被検出物の検出モード、搬送速度、感度及び閾値等の条件設定ボタンと、液晶表示面とを有する液晶表示ユニットを搬送ベルト近傍に配設したので、検針機の操作性が格段に向上する。また、液晶表示面に搬送速度、感度及び閾値をリアルタイムに表示したので、オペレータは、運転状態を瞬時に把握することができ、より一層、検針機の操作性と被検出物の生産性が向上する。
【0017】
請求項4の検針機によれば、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の検針機の効果に加え、搬送ベルト上の被検出物を検知した後、前記検針センサーを通過するまでの間に、被検出物中に含まれている未知の金属の誘起電圧を検出して検針処理をさせるトリガーとなるフォトセンサー
を配設したので、オペレータは、搬送ベルトに被検出部を載置した後は被検出物に触れる必要が無く、より一層、検針機の操作性と被検出物の生産性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る検針機の最良の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明に係る検針機1の全体斜視図、図2は、図1の検針機1をA−A線に沿って見た縦断面図である。
【0020】
図1及び図2において、本発明の検針機1は、駆動モータ2が内蔵されたフレーム3の上に、被検出物である図示しない縫製品の搬送ベルト4が、駆動ローラ5と、ガイドローラ6とによって水平方向に張設されており、駆動モータ2の回転によってこれらローラ5、6がVベルト7で駆動されることにより、縫製品を図1の矢印方向に搬送するようになっている。
【0021】
また、図2に示すように、搬送ベルト4の搬送方向のほぼ中間部には、縫製品中に混入した縫い針等の金属類を発見するために、搬送ベルト4上の検針ゾーン25を介して一組の検針センサー8が配置されている。
【0022】
この一組の検針センサー8は、上部検針センサー9と、下部検針センサー10とから成り、搬送ベルト幅方向においては、本実施例では等間隔に複数組のものが列状に搬送ベルト4を跨ぐように配列されている。これら複数組の検針センサー8は、図1に示すように、ベルト幅方向において門形の検針ヘッド11を構成しており、縫製品がベルト幅方向のどの位置を通過しても、漏れなく混入針を検知できるようになっている。なお、検針センサー8は、例えば直流磁界が縫製品中の金属針等の通過に伴い、乱されたり遮断されたりして変化したときに誘起される誘起電圧を検知することにより、金属針の混入を検出するものであるが、センサー自体の原理及び構成は公知のものであるのでここでの詳細な説明は省略する。
【0023】
そして、駆動モータ2には、ベルト速度検知用のタコジェネレータ12が併設されている。また、側方フレーム13上には、搬送ベルト4上の縫製品の存在を検知した後、検針ヘッド11を通過するまでの間に、縫製品に含まれている未知の金属の誘起電圧を検出して、図3〜図8で後述する検針システムにより検針処理をさせるトリガーとなるフォトセンサー35が配設されている。
【0024】
また、フレーム3内には、図3で詳述するが専ら上記モータ2及びセンサー8類を統括して集中制御するコントロール基板20が内蔵された駆動系制御盤21と、専ら上記検針ヘッド11及び液晶表示ユニット22からの信号を受けて検知すべき縫製品ごとの最適の検針センサー感度を自動的に演算し、この演算結果に基づく最適の搬送速度を上記コントロール基板20に与えるデジタルメイン基板23が内蔵された制御系システム制御盤24とが設けられている。
【0025】
図3は、検針機1全体のコントロールシステム30を説明するブロック線図である。
【0026】
図において、本発明の検針機1のコントロールシステム30は、大別して、搬送ベルト4の搬送速度制御を司る駆動系制御システム31と、上記最適の検知センサー感度を自動演算し、その演算信号に基づいて上記駆動系制御システム31に駆動モータ2の回転数指令をする制御系システム32の2つのコントロールシステムから成り、駆動系制御盤21と、制御系制御盤24で本発明の検針機1の制御部33を構成している。
【0027】
駆動系制御システム31は、前述した駆動モータ2、搬送速度センサー34及びフォトセンサー35と、駆動モータ2の回転速度を制御するスピードコントロール基板36と、このスピードコントロール基板36を後述するデジタルメイン基板23からの制御信号に基づいて制御するコントロール基板20とから成り、両基板は互いにバス接続されている。なお、駆動系制御盤21は、図1のフレーム3内に内蔵され、制御系システム制御盤24は図1の側方フレーム13内に内蔵されている。
【0028】
ここで、駆動モータ2としては、特に限定されず、誘導モータ、直流モータ等の各種モータを使用でき、また、搬送速度センサー34及びフォトセンサー35としても近接式、光電式等他の公知のものを適宜使用することができる。本実施例では、駆動モータ2は単相誘導モータを使用しており、スピードコンロール基板内には、搬送速度の無段階制御システムが設けられており、これにより駆動モータ2の無段変速が可能である。
【0029】
コントロール基板20は、電源スイッチ37及び上記フォトセンサー35と信号線で接続されていると共に、内部に後述するCPU38、ROM39及びRAM40を内蔵している。
【0030】
一方、制御系システム32は、図2で前述した検針センサー8と、デジタルアンプ基板26と、デジタルメイン基板23と、液晶表示ユニット22とから成り、デジタルメイン基板23は、デジタルアンプ基板26及び前述した駆動系システムのコントロール基板20と互いにバス接続されると共に電源スイッチ37に接続されている。なお、上記各種センサー及び各基板の相互間は、図示は省略したが上記以外にも必要な機器間が信号線等で接続されている。
【0031】
デジタルアンプ基板26は、検針センサー8から得た検出信号をA/D変換し、その増幅を行うもので、得られたデジタル信号をデジタルメイン基板23に送信するものである。
【0032】
デジタルメイン基板23は、液晶表示ユニット22からの検針機1の起動、停止指令や、モード選択指令等を受け入れ、これに基づく駆動制御信号を制御系システム32のコントロール基板20に送信して必要な動作をさせると共に、コントロール基板20から受け入れた搬送速度センサー34の搬送速度信号と、デジタルアンプ基板26から受け入れたデジタル増幅感度信号等に基づき、最適の検知感度を自動演算して設定し、その設定信号をコントロール基板20と、デジタルアンプ基板26と、次の図4で説明する液晶表示ユニット22のコントローラとに送信してこれら機器類を統括制御する。
【0033】
図4は、上記液晶表示ユニット22の平面図である。
【0034】
液晶表示ユニット22は、スタートボタン41による検針機1への起動、停止指令の他、キースイッチ42によりモード、搬送速度、感度等の条件設定を与えると共に、それらの条件設定を液晶表示画面43に表示する操作パネルであり、図1の左側の側方フレーム13上に設けられている。
【0035】
また、液晶表示画面43は、メニューボタン44を押動することにより、検出信号の閾値、運転モード、搬送速度、運転履歴等を画面上に順次呼び出し、キースイッチ42のカーソル操作とエンターキー45とにより適宜の設定と変更を加えることができ、これらデータが液晶画面上に表示できるようになっている。なお、符号52は、キャンセルボタンである。
【0036】
本実施例では、例えば「運転モード」としては、本発明の自動感度調整を行わない従来機と同様のセンシングを行う「通常検査モード」と、始業に際しての各部機能確認等を行う「始業点検モード」と、後述の図5及び図6で説明する本発明の検針機1の運転モードである「マテリアルエフェクトモード」と、後述の図7及び図8で説明する本発明の検針機1の運転モードである「補正モード」のいずれかを選択できるようになっている。
【0037】
また、検針センサー8の「感度」については、液晶表示画面43の左側において、棒グラフ46としてリアルタイムに表示され、閾値を越えた棒グラフ46は鉄系金属又は非鉄系金属の発見を意味しており、その幅方向位置が金属通過位置表示ランプ47の点滅により判明できるようになっている。
【0038】
また、液晶表示ユニット22には、上記の各所制御を行うためのコントローラが内臓されている。
【0039】
ところで、デジタルメイン基板23内部にも、CPU49、ROM50及びRAM51が内蔵されており、このうちROM50には、図5及び図7のグラフ並びに図6及び図8のシーケンス手順がメモリーされている。
【0040】
すなわち、図5は、横軸に縫製品の搬送速度(m/min)を取り、その縫製品中に混入されている金属類を検針センサー8が検出した場合のセンサー出力値(誘起電圧であり、以下、「感度」という。)を縦軸に取った場合の両者の相関関係を示すグラフである。
【0041】
図中、曲線Aは、本発明の検針機1の搬送ベルト4上に直径を1mmの鉄球を実際に載置して搬送速度を現在使用されている実用機のほぼ最高速度である40m/minから最低速度の20m/minまで、2m/min毎に順次低下させた時の搬送速度と、検針センサー出力値とをプロットしたものである。ここで、上記「直径が1mmの鉄球」とは、検針機ユーザからの要求特性として、本出願人にユーザ製品中に混入している金属類の代表サンプルとして与えられたもので、混入金属針の誘起電圧が等価の鉄球として「直径が1mmの鉄球」に代表させたものである。
【0042】
ところで、前述したアルミニューム、真鍮等の非鉄金属類からなるボタンやアクセサリー等は、必ず縫製品中に含まれているものであるが、このようなアクセサリーも金属類には違いがないから、当然検針センサー8はその構造上、その存在を検知することとなるが、かかるアクセサリー類は本発明の検針機としては検出されずに通過させたい異物である。そこで、検針機ユーザのアクセサリーサンプルを、検出を回避すべき異物として同様に搬送ベルト4上に載置して、搬送速度とセンサー出力値との関係をプロットしたのが図5に示した曲線Bである。
【0043】
検針センサー8の出力値は、その原理上、検針センサー8の磁界を横切る金属類の速度、換言すれば金属類を含む縫製品の搬送速度が低くなるほどその値は低くなるから、図に示すように、両曲線A、Bは右下がりの曲線となる。また、搬送速度が低速になればなるほど曲線A−B間の縦軸方向の出力値の開きが大きくなるから、低速領域ほど感度調整がしやすくなる。
【0044】
したがって、本発明の検針機ユーザの縫製品が、仮に、前述した折損針や忘れ針等の真に検出すべき金属類と、アクセサリー等の非鉄金属類とを含むものである場合には、例えば図中の搬送速度が「30m/min」の場合には、曲線A−B間に閾値Kで示す感度「48」の閾値を設定し、検針センサー8がこの閾値48を越える感度を検知した場合には縫製品中に金属類の混入があったものとして検針機1を停止させ、一方、閾値が48以下の感度を検知した場合には検針機1を停止させる必要がない非鉄金属類の混入があったものとして、その縫製品を通過させればよいことになる。
【0045】
この感度の閾値Kは、曲線Aの各搬送速度における検針センサー8の出力値に対して、その5〜15%下方に設定するのが実用的に好ましい。この場合において、閾値を高く設定することは、検出したい金属類を拾う機会が少なくなることを意味し、逆に閾値を低く設定することは検針機1がアクセサリー類を拾う機会が多くなることを意味する。
【0046】
本実施例では、検針機ユーザが自社の縫製品に見合った搬送速度を後述する液晶表示ユニット22に設定した場合、そのコントローラがデジタルメイン基板23に当該速度信号を送信し、デジタルメイン基板23のCPU49がROM50にメモリーされている曲線A、Bのデータを読み出して、これらデータから最適の感度を自動計算して、デジタルアンプ基板26に伝え、その感度でセンシングすることになる。すなわち、本発明の検針機1においては、縫製品の搬送速度がユーザーの条件設定値であり、これに対応する最適感度が自動演算されて(この場合のデジタルアンプ基板26の増幅率は一定)、その感度によるセンシングが継続され、搬送速度の設定変更が行われた場合には、ROM50に内蔵されている図5のデータによりデジタルメイン基板23が瞬時に最適の感度を自動演算し、デジタルアンプ基板26を制御する。
【0047】
ところで、前述の図5のグラフは、標準鉄球に対し、アクセサリーAが検針対象から外したい非金属類(検針機1を通過させたいアクセサリー)であったが、例えば検針機ユーザが要望する、金属針以外の「特定の金属製異物」についても本発明の検針機1で検針したい場合があるが、この場合は上記図5のグラフでは対応できない。
【0048】
この技術的課題を解決したのが次の図7のグラフ及び図8のフローチャートである。
【0049】
この図7は、前述の曲線Aの他、曲線Cとして、本発明の検針機1にユーザの「特定の金属製異物」を借り受け、同一の搬送速度で複数回センシングしてみてその搬送速度に対応する感度の最小値と最大値とをデジタルメイン基板23のRAM51にメモリーし、同様操作を搬送速度を変えて搬送速度とその搬送速度に対応する感度とをプロットして併記したものである。すなわち、曲線Cは、さらに検知したい「特定の金属製異物」の仮想グラフとして、予め、デジタルメイン基板23に自動的に演算してRAM51に格納したものである。
【0050】
この場合の閾値K1は、図に示すように、曲線Cの下方に設定したうえで、この閾値K1の上方のセンサー出力値(感度)を示すものを検知すれば、曲線Aの標準鉄球の他、所望の「特定の金属製異物」であるアクセサリーCについても検知できることになる。
【0051】
次に、本発明の作用を図6及び図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0052】
まず、図6に基づいて、本発明の検針機1の運転モードである「マテリアルエフェクトモード」の主要ステップを中心に説明する。
【0053】
まず、検針機1の電源スイッチ37を入れる(ステップS1)。
【0054】
次に、メニューボタン44を押動し、キースイッチ42のカーソルを操作して液晶表示面の「マテリアルエフェクトモード」を選択し、エンターキー45を押動する(ステップS2)。
【0055】
同様に、メニューボタン44とキースイッチ42を操作して、縫製品にとって必要な「搬送速度」として、例えば30m/minを入力し、エンターキー45を押動する(ステップS3)。このとき、液晶表示ユニット22のコントローラからデジタルメイン基板23に搬送速度の設定信号が入力され、デジタルメイン基板23がコンロール基板にモータの駆動開始指令を与え、コンロール基板は駆動モータ2が当該速度になるようスピードコントローラ基板を制御する。
【0056】
次に、液晶表示ユニット22のスタートボタン41(図4)を押動する(ステップS4)。
【0057】
駆動モータ2が回転し、搬送ベルト4を上記30m/minの搬送速度で駆動させる(ステップS5)。この時、フォトセンサー35が搬送されてきた縫製品をキャッチし、以後の縫製品の搬送枚数をカウントし、そのデータをコントロール基板20経由、デジタルメイン基板23に送る。
【0058】
次いで、検針センサー8が縫製品をキャッチし、鉄系金属の存在を検知すると、そのセンサー出力値をデジタルアンプ基板26がA/D変換し、そのデジタル増幅信号をデジタルメイン基板23に送る(ステップS6)。
【0059】
デジタルメイン基板23では、そのCPU49が、送られてきたセンサー出力値と、ROM50にメモリーされている図5の搬送速度が30m/minにおける閾値(K)48とを比較する(ステップS7)。
【0060】
センサー出力値が閾値48よりも大きい場合は、その信号がコントロール基板20に送られ、スピードコントローラが駆動モータ2を停止させ、搬送ベルト4を停止させる(ステップS8)。
【0061】
この時、液晶表示画面43では、その時の諸データが表示されると共に、その縫製品のベルト幅方向位置における棒グラフ46がリアルタイムで閾値を越え、金属通過位置表示ランプの対応位置ランプが点滅する(ステップS9)。
【0062】
一方、センサー出力値がROM50にメモリーされている閾値(K)48よりも低い場合は、混入されているのは非鉄金属類であるからその縫製品の検針ヘッド11の通過を許容する(ステップS10)。
【0063】
フォトセンサー35は、シリアルナンバーを「1」繰上げ、以後、検針作業が終了するまで、同様操作を繰り返す(ステップS5へ戻る)。
【0064】
このように、被検出物中にアクセサリー等を残存させても問題のない被検出物については検針機1を通過させることができるので、被検出物の生産性がより一層向上する。また、閾値Kの設定値を操作することにより、検針機1を通過させる頻度を自動調整することができる。
【0065】
次に、本発明の「補正モード」の作用を図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0066】
このモードでは、まず準備段階として、デジタルメイン基板23のRAM51に図7のグラフ中の曲線Cを図8(a)のフローチャートにより、「仮想グラフ」として書かせることが必要である。図中のアクセサリーCは、検針機ユーザーから、ユーザーの要求条件として与えられるものだからである。
【0067】
まず、金属アクセサリーCのサンプルを作成する。具体的にはユーザから与えられる検針すべきサンプルである(ステップS1)。
【0068】
次に、本発明の検針機1の搬送ベルト4上に載置し、搬送速度を変更して得られる複数の対応感度を検出する(ステップS2)。
【0069】
制御部33のデジタルメイン基板23が搬送速度とその対応感度との関係をRAM51内に取り込み、曲線Cの仮想グラフをRAM51内に作成する(ステップS3)。
【0070】
次に、ROM50が各搬送速度ごとの閾値K1を自動計算し、その値をRAM51に記憶する(ステップS4)。以上で準備が完了した。
【0071】
次に、図8(b)のフローチャートに基づいて、オペレータが適当な搬送速度を設定し、これに基づく最適の感度を自動的に計算し、設定するのであるが、その具体的ステップは図6で前述した「マテリアルエフェクトモード」の場合とほぼ同様であるので、説明は省略する。
【0072】
但し、異なる点は、図7で前述したように、閾値K1を両曲線A、Cの下方に位置させたので,鉄球A相当の金属類のみならず、ユーザーから提供されたアクセサリーCの感度相当の感度を有する金属類まで検知するので、残存金属物の混入の少ない品質の高い縫製品が得られる。
【0073】
なお、以上に説明した実施例では、制御部33のデジタルアンプ基板26は、増幅率を一定にして制御したが、必要なアクセサリーについては増幅率を変化させて制御しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の検針機による検出対象物としては、鉄系金属と非鉄系金属に限られず、誘起電圧が生じるものであればいかなるものでもよい。
【0075】
また、その用途についても本発明では主としてアパレル分野の縫製品を例にとって説明したが、何もこれに限られず、例えばインテリア製品、食料品、玩具等の分野のものに対しても効果的に適用することができ、これら金属物質や用途等における検針機についても本発明の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る検針機の全体斜視図である。
【図2】図1の検針機をA−A線に沿って見た縦断面図である。
【図3】図1の検針機に図示されている操作パネルの平面図である。
【図4】図1の検針機の制御部のブロック線図である。
【図5】図3のデジタル基板のROMに記憶されている通過速度とセンサー出力値との相関図である。
【図6】図3のデジタル基板のROMに記憶されているフローチャート図である。
【図7】図3のデジタル基板のRAMに記憶されている、図5とは異なる通過速度とセンサー出力値との相関図である。
【図8】図3のデジタル基板のRAMに記憶されているフローチャート図である。
【符号の説明】
【0077】
1 検針機(本発明)
2 駆動モータ
3 フレーム
4 搬送ベルト
8 検針センサー
11 検針ヘッド
20 コントロール基板
22 液晶表示ユニット
23 デジタルメイン基板
26 デジタルアンプ基板
30 コントロールシステム
33 制御部
35 フォトセンサー
36 スピードコントロール基板
49 CPU
50 ROM
51 RAM
K、K1 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属針等の金属類が混入した被検出物を搬送ベルトにより搬送する駆動モータと、該搬送ベルトの近傍に設けられ、被検出物中の金属類の通過を誘起電圧の変化として検出する検針センサーと、該検針センサーの誘起電圧の検出感度を調整し、出力する制御部とを含む検針機であって、
前記制御部が、
前記駆動モータの回転速度制御をするスピードコントロール基板と、
予め、前記搬送ベルトに感度の基準となる標準金属と検出対象となるサンプル金属とを搬送させることにより、前記標準金属の複数の搬送速度と該搬送速度に対応する感度との相関関係曲線(A)と、前記サンプル金属の複数の搬送速度と該搬送速度に対応する感度との相関関係曲線(B又はC)とを記憶すると共に、両曲線(Aと、BまたはC)間に所定の閾値(KまたはK1)を設定可能なデジタルメイン基板と、から成り、
被検出物が搬送された際に、前記デジタルメイン基板が両曲線(Aと、BまたはC)から得られる感度に基づいて、被検出物の設定搬送速度に対応する最適感度を自動的に演算して設定すると共に、前記検針センサーが検出した感度を前記閾値と比較し、該比較値との大小関係により、前記スピードコントロール基板に前記駆動モータの停止又は回転信号を送信することを特徴とする検針機。
【請求項2】
前記サンプル金属は、検針センサーによる検知をさせて被検出物の搬送を中断させたい鉄系金属から成るサンプルであり、前記被検出物の設定搬送速度に対応する感度の閾値(K1)を、前記標準金属の相関関係曲線(A)上の感度と、前記サンプル金属の相関関係曲線(C)上の感度のいずれの感度に対しても低く設定すると共に、前記デジタルメイン基板が前記スピードコントロール基板に与える制御信号は、前記被検出物の検出感度が前記閾値を超えた場合は前記駆動モータの運転を停止させる信号であることを特徴とする請求項1記載の検針機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の検針機において、
前記被検出物の検出モード、搬送速度、感度及び閾値の条件設定パネルとして、これらの操作ボタンと共に液晶表示面を有する液晶表示ユニットを前記搬送ベルト近傍に配設し、該液晶表示面に前記搬送速度、感度及び閾値をリアルタイムに表示するようにしたことを特徴とする検針機。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の検針機において、
前記搬送ベルトの側方であって、かつ、検針センサーの前方には、搬送ベルト上の被検出物を検知した後、前記検針センサーを通過するまでの間に、被検出物中に含まれている未知の金属の誘起電圧を検出して検針処理をさせるトリガーとなるフォトセンサーが配設されていることを特徴とする検針機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−275295(P2009−275295A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124553(P2008−124553)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000140096)株式会社ハシマ (10)
【Fターム(参考)】