説明

極低温冷凍機

【課題】圧縮機の高圧側と低圧側の圧力差を低減した極低温冷凍機を提供する。
【解決手段】冷媒ガスを膨張させることにより寒冷を発生させる冷凍機本体と、この冷凍機本体に高圧の冷媒ガスを供給する高圧側配管15Aと、冷凍機本体から低圧の冷媒ガスを回収する低圧側配管15Bとが接続された圧縮機12と、冷媒ガスを収納するバッファタンク80と、このバッファタンク80と冷凍機本体とを接続する第1配管81に設けられたバッファ用バルブVBと、高圧側配管15Aとバッファタンク80とを接続する第2配管82に設けられた高圧側バルブVHと、低圧側配管15Bとバッファタンク80とを接続する第3配管84に設けられた低圧側バルブVLとを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は極低温冷凍機に係り、特に冷媒ガスを供給する圧縮機を有した極低温冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ギフォード・マクマホン冷凍機(以下、GM冷凍機という)やパルス管冷凍機等の極低温冷凍機は、シリンダ或いは蓄冷器(以下、シリンダ等という)から回収した低圧の冷媒ガスを圧縮処理して高圧化し、この高圧の冷媒ガスを再びシリンダ等に供給する圧縮機が設けられている。
【0003】
また、圧縮機の小型化及び低出力化を図るため、中間バッファタンクを設けた極低温冷凍機も提案されている(特許文献1)。この極低温冷凍機は、圧縮機から高圧の冷媒ガスをシリンダ等に供給するに先立ち、中間バッファタンクに収納された冷媒ガスをシリンダ等に供給する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−527308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように極低温冷凍機に設けられた圧縮機は、低圧側から回収した冷媒ガスを高圧化して高圧側に供給する。しかしながら、圧縮機からシリンダ等に冷媒ガスを供給しない期間において、圧縮機が高圧の冷媒ガスを高圧側に供給し続けると、高圧側の圧力が大きく上昇してしまう。
【0006】
逆に、シリンダ等から圧縮機に冷媒ガスを回収しない期間において、圧縮機が高圧の冷媒ガスを高圧側に供給し続けると、圧縮機の低圧側の圧力が大きく低下してしまう。
【0007】
このように、圧縮機の高圧側と低圧側の圧力差が大きいと圧縮機に負荷が掛かり、圧縮効率が低下し、また消費電力が増大するという問題点があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、圧縮機の高圧側と低圧側の圧力差を低減した極低温冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、第1の観点からは、
冷媒ガスを膨張させることにより寒冷を発生させる冷凍機本体と、
前記冷凍機本体に高圧の冷媒ガスを供給する高圧側配管と、前記冷凍機本体から低圧の冷媒ガスを吸収する低圧側配管とが接続された圧縮機と、
前記冷媒ガスを収納するバッファタンクと、
前記バッファタンクと前記冷凍機本体とを接続する第1配管に設けられたバッファ用バルブと、
前記高圧側配管と前記バッファタンクとを接続する第2配管に設けられた高圧側バルブと、
前記低圧側配管と前記バッファタンクとを接続する第3配管に設けられた低圧側バルブとを有することを特徴とする極低温冷凍機により解決することができる。
【発明の効果】
【0010】
開示の極低温冷凍機によれば、圧縮機からシリンダ等に冷媒ガスを供給しない期間においては、高圧側バルブを開くことにより高圧側配管から高圧の冷媒ガスをバッファタンクに送ることが可能となる。また、シリンダ等から圧縮機に冷媒ガスを回収しない期間においては、低圧側バルブを開くことによりバッファタンク内の冷媒ガスを低圧側配管に供給することが可能となる。これにより、圧縮機の高圧側と低圧側の圧力差を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態である極低温冷凍機の構成図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態である極低温冷凍機のバルブ切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態である極低温冷凍機の動作を説明するための図である(その1)。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態である極低温冷凍機の動作を説明するための図である(その2)。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態である極低温冷凍機の構成図である。
【図6】図6は、本発明の第3実施形態である極低温冷凍機の構成図である。
【図7】図7は、本発明の第4実施形態である極低温冷凍機の構成図である。
【図8】図8は、本発明の第5実施形態である極低温冷凍機の構成図である。
【図9】図9は、本発明の第5実施形態である極低温冷凍機のバルブ切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図10】図10は、本発明の第5実施形態である極低温冷凍機の動作を説明するための図である(その1)。
【図11】図11は、本発明の第5実施形態である極低温冷凍機の動作を説明するための図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態である極低温冷凍機を示している。同図に示す極低温冷凍機10Aは、パルス管冷凍機に本願発明を適用したものである。
【0014】
本実施形態に係る極低温冷凍機10Aは、圧縮機12、高圧側冷媒ガス供給系13A、低圧側冷媒ガス回収系13B、冷凍機本体30A、蓄冷管40、パルス管50、第1バッファタンク70、及び第2バッファタンク80等を有している。
【0015】
高圧側冷媒ガス供給系13Aは圧縮機12の高圧(供給)側に接続されており、冷凍機本体30Aに対して高圧の冷媒ガス(例えば、ヘリウムガス)を供給する。また、低圧側冷媒ガス回収系13Bは圧縮機12の低圧(回収)側に接続されており、冷凍機本体30Aから低圧の冷媒ガスを回収する。
【0016】
高圧側冷媒ガス供給系13Aは、第1高圧側配管15Aと第1開閉バルブV1を有している。第1高圧側配管15Aは、一端が圧縮機12の高圧(供給)側に接続に接続されると共に、他端が第1共通配管20に接続されている。この第1共通配管20は、蓄冷器40の高温端42に接続されている。
【0017】
また、第1開閉バルブV1は、第1高圧側配管15Aに設けられている。この第1開閉バルブV1を開閉することにより、第1高圧側配管15A流れる冷媒ガスの蓄冷器40への供給及び供給停止が行われる。
【0018】
低圧側冷媒ガス回収系13Bは、第1低圧側配管15Bと第2開閉バルブV2を有している。第1低圧側配管15Bは、一端が圧縮機12の低圧(回収)側に接続に接続されると共に、他端が第1共通配管20に接続されている。
【0019】
また、第2開閉バルブV2は、第1低圧側配管15Bに設けられている。この第2開閉バルブV2を開閉することにより、蓄冷器40から第1低圧側配管15Bを通り圧縮機12に冷媒ガスの回収及び回収停止が行われる。
【0020】
冷凍機本体30Aは、パルス管タイプの冷凍機を構成する。この冷凍機本体30Aは、蓄冷器40、パルス管50、及び第1バッファタンク70等を有している。
【0021】
蓄冷器40は、内部に蓄冷材が充填されている。蓄冷器40の高温端42には、前記のように第1共通配管20が配設されている。また、蓄冷器40の低温端44は、接続配管56を介してパルス管50の低温端54に接続されている。
【0022】
パルス管50の高温端52は、オリフィス60を有する配管61を介して、第1バッファタンク70と接続されている。このオリフィス60及び第1バッファタンク70により、パルス管50内を流れる冷媒ガスの圧力変化の位相を調整することが可能となり、冷凍効率の向上を図ることができる。
【0023】
また、パルス管50内の高温端側及び低温端側には、熱交換器52A,54Aが配設されている。この熱交換器52A,54Aは、冷媒ガスが通過する際に冷媒ガスとの間で熱交換が行われ冷却される。
【0024】
第2バッファタンク80は、内部に冷媒ガスを溜めることが可能な構成とされている。この第2バッファタンク80は、第2共通配管81を介して第1共通配管20に接続されている。また、第2共通配管81には、バッファ用バルブVBが設けられている。このバッファ用バルブVBが開くことにより、蓄冷器40と第2バッファタンク80との間で冷媒ガスの授受が可能となる。
【0025】
第1高圧側配管15Aと第2バッファタンク80との間には、高圧側バイパス配管82が配設されている。また、この高圧側バイパス配管82には、高圧側バルブVHが設けられている。この高圧側バルブVHが開くことにより、第1高圧側配管15Aと第2バッファタンク80は連通する構成とされている。
【0026】
また、第1低圧側配管15Bと第2バッファタンク80との間には、低圧側バイパス配管84が配設されている。また、この低圧側バイパス配管84には、低圧側バルブVLが設けられている。この低圧側バルブVLが開くことにより、第1低圧側配管15Bと第2バッファタンク80は連通する構成とされている。
【0027】
次に、上記構成とされた極低温冷凍機10Aの動作について、図2〜図4を用いて説明する。図2は、極低温冷凍機10Aに設けられた各バルブV1,V2,VB,VH,VLの開閉タイミングを示すタイミングチャートであり、図3は図2における時間t4〜t5における状態を示し、図4は図2における時間t10〜t11における状態を示す図である。
【0028】
なお、図2において太い実線で示す間がバルブが開いたことを示している。また、図3及び図4において、開いているバルブは(ON)と示し、閉じているバルブは(OFF)と示している。
[第1行程:時間t0〜t3]
図2に示すように、時間t0〜t3の冷媒ガスの供給予備行程では、バッファ用バルブVBが時間t1〜t2の間開かれる。また、他のバルブV1,V2,VH,VLは閉じた状態とされる。
【0029】
第2バッファタンク80には、後述するように高圧の冷媒ガスが溜められている。よって、バッファ用バルブVBが開かれることにより、第2バッファタンク80内の高圧の冷媒ガスは、第2共通配管81及び第1共通配管20を通り蓄冷器40に供給される。第2バッファタンク80から蓄冷器40に供給された高圧の冷媒ガスは、蓄冷器40、接続配管56を介してパルス管50に供給される。
[第2行程:時間t3〜t6]
時間t3〜t6の冷媒ガスの供給行程では、第1開閉バルブV1が時間t3〜t5の間開かれる。また、第2開閉バルブV2,バッファ用バルブVB,高圧側バルブVHは閉じた状態とされる。これにより、圧縮機12で圧縮処理された高圧の冷媒ガスが第1高圧側配管15A及び第1共通配管20を通り蓄冷器40に供給される。
【0030】
この際、前記のように本実施形態に係る極低温冷凍機10Aは、圧縮機12から高圧の冷媒ガスを蓄冷器40に供給する前に、第2バッファタンク80から蓄冷器40に対して高圧の冷媒ガスが供給される構成としている。よって、蓄冷器40及びパルス管50に対して圧縮機12のみで高圧の冷媒ガスを供給する構成に比べ、圧縮機12からのガス供給量を低減でき、圧縮機12の低出力化及び省電力化を図ることができる。
【0031】
ここで、低圧側冷媒ガス回収系13Bに注目すると、第2開閉バルブV2は閉じられており、また圧縮機12は第1低圧側配管15Bから低圧の冷媒ガスを回収して高圧側冷媒ガス供給系13Aに供給するため、第1低圧側配管15B内の圧力は低下してしまう。よって、この状態を放置すると従来のように圧縮機12の高圧側と低圧側の圧力差が大きくなってしまう。
【0032】
しかしながら、本実施形態に係る極低温冷凍機10Aは、第2バッファタンク80と第1低圧側配管15Bが低圧側バイパス配管84で接続された構成とされている。また、低圧側バイパス配管84に設けられた低圧側バルブVLは、図2に示すように、第1開閉バルブV1が開いた後、所定時間経過した時間t4において開かれる構成とされている。
【0033】
よって、低圧側バルブVLが時間t4〜t5の間開かれることにより、図3に示すように、第2バッファタンク80内の高圧の冷媒ガスは低圧側バイパス配管84を通り第1低圧側配管15Bに流入する(図中、冷媒ガスの流れを破線の矢印で示す)。従って、圧縮機12が第1低圧側配管15Bから冷媒ガスを回収しても、第1低圧側配管15Bには第2バッファタンク80から高圧の冷媒ガスが供給されることにより、第1低圧側配管15Bの圧力が低下することを防止することができる。
[第3行程:時間t6〜t9]
時間t6〜t9の冷媒ガスの回収予備行程においては、バッファ用バルブVBが時間t7〜t8の間開かれる。また、他のバルブV1,V2,VH,VLは閉じた状態とされる。
【0034】
これにより、蓄冷器40及びパルス管50内の冷媒ガスは接続配管56、第1共通配管20、及び第2共通配管81を通り第2バッファタンク80に回収される。これにより第2バッファタンク80内の冷媒ガスの圧力は上昇する。
[第4行程:時間t9〜t13]
時間t9〜t13の冷媒ガスの回収行程では、第2開閉バルブV2が時間t9〜t12の間開かれる。また、第1開閉バルブV1,バッファ用バルブVB,低圧側バルブVLは閉じた状態とされる。
【0035】
これにより、パルス管50内の冷媒ガスは接続配管56、蓄冷器40、第1共通配管20、及び第1低圧側配管15Bを通り圧縮機12に回収される。また、回収された冷媒ガスは、圧縮機12で圧縮処理が行われ、高圧化された冷媒ガスは第1高圧側配管15Aに供給される。
【0036】
この際、前記のように本実施形態に係る極低温冷凍機10Aは、圧縮機12がパルス管50及び蓄冷器40から冷媒ガスを回収を開始する前に、第2バッファタンク80に対して冷媒ガスが回収される構成とされている。よって、圧縮機12のみで冷媒ガスを回収する構成に比べ、圧縮機12によるガス回収量を低減でき、圧縮機12の低出力化及び省電力化を図ることができる。
【0037】
ここで、高圧側冷媒ガス供給系13Aに注目すると、第1開閉バルブV1は閉じられており、また圧縮機12は第1低圧側配管15Bから低圧の冷媒ガスを回収して高圧側冷媒ガス供給系13Aに供給するため、第1高圧側配管15A内の圧力は上昇してしまう。よって、この状態を放置すると圧縮機12の高圧側と低圧側の圧力差が大きくなってしまうことは前述した通りである。
【0038】
しかしながら、本実施形態に係る極低温冷凍機10Aは、第2バッファタンク80と第1高圧側配管15Aが高圧側バイパス配管82で接続された構成とされている。また、高圧側バイパス配管82に設けられた高圧側バルブVHは、図2に示すように、第2開閉バルブV2が開いた後、所定時間経過した時間t10において開かれる構成とされている。
【0039】
よって、高圧側バルブVHが時間t10〜t11の間開かれることにより、図4に示すように、圧縮機12で生成された高圧の冷媒ガスは、高圧側バイパス配管82を通り第2バッファタンク80に流入する(図中、冷媒ガスの流れを破線の矢印で示す)。従って、第1開閉バルブV1が閉じられた状態で圧縮機12が第1高圧側配管15Aに対して高圧の冷媒ガスを供給しても、この高圧の冷媒ガスは第2バッファタンク80に供給されるため、第1高圧側配管15A内の圧力が上昇することを防止することができる。
【0040】
上記した第1〜第4行程を1サイクルとして繰り返すことにより、パルス管50内で冷媒ガスの圧縮/膨脹が繰り返し生じ、パルス管50の低温端54で寒冷を発生させることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る極低温冷凍機10Aは、上記のように第1開閉バルブV1が閉じられることにより圧縮機12から冷凍機本体30Aに冷媒ガスの供給を行わない期間に、高圧側バルブVHを開いて圧縮機12に接続された第1高圧側配管15Aを第2バッファタンク80に接続し、圧縮機12から第2バッファタンク80に高圧の冷媒ガスが供給されるよう構成している。
【0042】
また、第2開閉バルブV2が閉じられることにより圧縮機12が冷凍機本体30Aから冷媒ガスを回収しない期間に、低圧側バルブVLを開くことにより圧縮機12に接続された第1低圧側配管15Bを第2バッファタンク80と接続し、第2バッファタンク80から高圧の冷媒ガスを第1低圧側配管15Bに供給する構成としている。
【0043】
この構成とすることにより、圧縮機12から冷凍機本体30Aに冷媒ガスの供給を行わない期間においては、圧縮機12の高圧側冷媒ガス供給系13Aの圧力が上昇してしまうことを防止することができる。また、圧縮機12が冷凍機本体30Aから冷媒ガスを回収しない期間においては、圧縮機12の圧力が低下するのを防止することができる。これにより、圧縮機12の高圧側と低圧側の圧力差を低減することが可能になる。
【0044】
また、圧縮機12の高圧側と低圧側の圧力差が低減されることにより、圧縮機12の負荷を低減でき、圧縮機12の消費電力の低減を図ることができる。また、冷凍機本体30Aに供給され、また冷凍機本体30Aから回収される冷媒ガスの安定化が図れるため、冷凍機本体30Aの冷凍効率の向上を図ることができる。
【0045】
次に、本発明の他の実施形態について、図5乃至図11を用いて説明する。
【0046】
なお、図5乃至図11において、図1乃至図4を用いて説明した第1実施形態に係る極低温冷凍機10Aの構成と対向する構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図5は、本発明の第2実施形態である極低温冷凍機10Bを示している。
【0048】
本実施形態に係る極低温冷凍機10Bは、基本構成は第1実施形態に係る極低温冷凍機10Aと同一であるが、高圧側バイパス配管82に高圧側オリフィス86を設けると共に、低圧側バイパス配管84に低圧側オリフィス88を設けたことを特徴としている。この高圧側オリフィス86は高圧側バイパス配管82を流れる冷媒ガスの流量制御を行うものであり、また低圧側オリフィス88は低圧側バイパス配管84を流れる冷媒ガスの流量制御を行うものである。
【0049】
圧縮機12から冷凍機本体30Aに冷媒ガスの供給を行わない期間では、前記のように高圧側バルブVHが開かれて圧縮機12から第2バッファタンク80に高圧の冷媒ガスが供給される。高圧側オリフィス86は、高圧側バイパス配管82を流れる冷媒ガスの流量制御を行い、第1高圧側配管15Aから第2バッファタンク80に向けての冷媒ガスの通過を制御する構成とされている。
【0050】
一方、圧縮機12が冷凍機本体30Aから冷媒ガスを回収しない期間においては、前記のように低圧側バルブVLが開かれて第2バッファタンク80から冷媒ガスが第1低圧側配管15Bに供給される。低圧側オリフィス88は、低圧側バイパス配管84を流れる冷媒ガスの流量制御を行い、第2バッファタンク80から第1低圧側配管15Bに向けての冷媒ガスの通過を制御する構成とされている。
【0051】
よって、本実施形態に係る極低温冷凍機10Bによれば、第1高圧側配管15Aから第2バッファタンク80に向け冷媒ガスと、第2バッファタンク80から第1低圧側配管15Bに向けて冷媒ガスの流量制御を行う。これにより、第1高圧側配管15A及び第1低圧側配管15Bの内部圧力の安定化を図ることができ、これによっても圧縮機12の消費電力の低減、及び冷凍機本体30Aの冷凍効率の向上を図ることができる。
【0052】
図6は、本発明の第3実施形態である極低温冷凍機10Cを示している。
【0053】
本実施形態に係る極低温冷凍機10Cは、冷凍機本体30Bとしてダブルインレットタイプのパルス冷凍機を適用したことを特徴としている。よって冷凍機本体30Bは、第1実施形態に設けられた冷凍機本体30Aに加え、ダブルインレット弁63及びダブルインレット配管65を設けた構成とされている。
【0054】
ダブルインレット配管65は、パルス管50と第1バッファタンク70とを接続する配管61と、第1共通配管20との間に配設されている。またダブルインレット弁63は、ダブルインレット配管65に配設されている。
【0055】
上記構成とされた極低温冷凍機10Cでは、オリフィス60及び第1バッファタンク70と共にダブルインレット弁63によってもパルス管50内の冷媒ガスの圧縮・膨張の位相差を制御することができ、冷却効率を向上させることができる。
【0056】
また、ダブルインレット弁63及びダブルインレット配管65を設けたダブルインレットタイプの冷凍機本体30Bを有した極低温冷凍機10Cに対しても、高圧側バルブVH,低圧側バルブVL,第2バッファタンク80,高圧側バイパス配管82,低圧側バイパス配管84を設けることができ、圧縮機12の消費電力の低減、及び冷凍機本体30Bの冷凍効率の向上を図ることができる。
【0057】
図7は、本発明の第4実施形態である極低温冷凍機10Dを示している。
【0058】
本実施形態に係る極低温冷凍機10Dは、冷凍機本体30Cとしてギフォード・マクマホン冷凍機(以下、GM冷凍機という)を適用したことを特徴としている。
【0059】
冷凍機本体30Cは、シリンダ90、ディスプレーサ92、駆動機構100等を有した構成とされている。シリンダ90は、その下端部に接続配管56が接続されると共に、上端部には配管94が接続されている。配管94は、シリンダ90の上端部と第1共通配管20とを接続している。
【0060】
ディスプレーサ92は、シリンダ90内を上下動するよう構成されている。また、シリンダ90内でディスプレーサ92の下部位置には膨張室90aが形成されている。また、シリンダ90とディスプレーサ92との間には、図示しないシール材が配設されている。よって、高圧の冷媒ガスがシリンダ90とディスプレーサ92との間からリークしないよう構成されている。
【0061】
またディスプレーサ92は、駆動機構100に接続されている。駆動機構100は、例えばスコッチヨーク機構であり、モータの回転をディスプレーサ92の上下直線運動に変換する機能を奏する。ディスプレーサ92は、駆動機構100により駆動され、シリンダ90の内部で往復上下移動を行う。
【0062】
上記構成とされた冷凍機本体30Cは、次のような動作を行う。先ず、第1開閉バルブV1が開いてシリンダ90に高圧の冷媒ガスが供給される。また、駆動機構100を駆動してディスプレーサ92を上死点に向け移動させる。
【0063】
そして、膨張室90aが最大容量となった際、第1開閉バルブV1を閉じると共に第2開閉バルブV2を開弁する。これにより、膨張室90a内の冷媒ガスは断熱膨張し、寒冷が発生する。
【0064】
その後、駆動機構100によりディスプレーサ92が下死点に向け移動することにより、シリンダ90内の冷媒ガスは接続配管56、蓄冷器40、及び第1低圧側配管15Bを介して圧縮機12に回収される。
【0065】
上記構成とされたGMタイプの冷凍機本体30Bを有した極低温冷凍機10Cに対しても、高圧側バルブVH,低圧側バルブVL,第2バッファタンク80,高圧側バイパス配管82,低圧側バイパス配管84を設けることができ、圧縮機12の消費電力の低減、及び冷凍機本体30Cの冷凍効率の向上を図ることができる。
【0066】
図8は、本発明の第5実施形態である極低温冷凍機10Eを示している。
【0067】
本実施形態に係る極低温冷凍機10Eは、本発明を4バルブ型パルスチューブ冷凍機に適用したものである。このため本実施形態に係る極低温冷凍機10Eは、第1実施形態に係る極低温冷凍機10Aに対し、高圧側冷媒ガス供給系13Aにおいては第2高圧側配管18A及び第3開閉バルブV3を追加し、低圧側冷媒ガス回収系13Bにおいては第2低圧側配管18B及び第4開閉バルブV4を追加した構成とされている。
【0068】
第2高圧側配管18Aは、第1高圧側配管15Aと配管61との間に配設されている。また、第3開閉バルブV3は、この第2高圧側配管18Aに設けられている。第2低圧側配管18Bは、第1低圧側配管15Bと配管61との間に配設されている。また、第4開閉バルブV4は、この第2低圧側配管18Bに設けられている。
【0069】
次に、上記構成とされた極低温冷凍機10Eの動作について、図9〜図11を用いて説明する。図9は、極低温冷凍機10Eに設けられた各バルブV1〜V4,VB,VH,VLの開閉タイミングを示すタイミングチャートであり、図10は図9における時間t4〜t5における状態を示し、図11は図9における時間t10〜t11における状態を示す図である。
【0070】
なお、図9において太い実線で示す間がバルブが開弁していることを示している。また、図10及び図11において、開いているバルブは(ON)と示し、閉じているバルブは(OFF)と示している。
[第1行程:時間t0〜t3]
図9に示すように、時間t0〜t3においては、先ず第3開閉バルブV3のみが開かれる。これにより、高圧の冷媒ガスは圧縮機12から第1高圧側配管15A、第2高圧側配管18A、及び配管61を通りパルス管50に供給される。この第3開閉バルブV3は、時間t4まで開いた状態を維持する。
【0071】
バッファ用バルブVBは、第3開閉バルブV3の開きタイミングよりも若干遅れ、時間t1〜t2の間開弁される。バッファ用バルブVBが開弁することにより、第2バッファタンク80内の冷媒ガスは、第2共通配管81及び第1共通配管20を通り蓄冷器40に供給される。
[第2行程:時間t3〜t6]
時間t3〜t4の間は、第3開閉バルブV3は開いた状態を維持する。これにより、第1行程と同様の流路で、圧縮機12からパルス管50への高圧の冷媒ガスの供給が維持される。
【0072】
また第2行程では、第1開閉バルブV1が時間t3〜t5の間開弁される。第1開閉バルブV1が開弁することにより、圧縮機12で生成された高圧の冷媒ガスが第1高圧側配管15A及び第1共通配管20を通り蓄冷器40に供給される。
【0073】
この際、本実施形態に係る極低温冷凍機10Eは、圧縮機12から高圧の冷媒ガスを蓄冷器40に供給する前のt1〜t2の間に、第2バッファタンク80から蓄冷器40に対して高圧の冷媒ガスが供給される構成としている。よって、圧縮機12から蓄冷器40へのガス供給量を低減でき、圧縮機12の低出力化及び省電力化を図ることができる。
【0074】
一方、低圧側バルブVLは、第1開閉バルブV1が開いたタイミングよりも所定時間遅れた時間t4〜t5の間開かれた状態となる。
【0075】
ここで、低圧側冷媒ガス回収系13Bに注目すると、第2及び第4開閉バルブV2,V4は閉じられており、また圧縮機12は第1及び第2低圧側配管15B,18Bから低圧の冷媒ガスを回収して高圧側冷媒ガス供給系13Aに供給するため、第1及び第2低圧側配管15B,18B内の圧力は低下してしまう。よって、この状態を放置すると従来のように圧縮機12の高圧側と低圧側の圧力差が大きくなってしまう。
【0076】
しかしながら、本実施形態に係る極低温冷凍機10Eは、第2バッファタンク80と第1低圧側配管15Bが低圧側バイパス配管84で接続された構成とされている。また、低圧側バイパス配管84に設けられた低圧側バルブVLは、図9に示すように、第1開閉バルブV1が開いた後、所定時間経過した時間t4において開かれる構成とされている。
【0077】
よって、低圧側バルブVLが時間t4〜t5の間開かれることにより、図10に示すように、第2バッファタンク80内の高圧の冷媒ガスは低圧側バイパス配管84を通り第1低圧側配管15Bに流入する(図中、冷媒ガスの流れを破線の矢印で示す)。
【0078】
従って、圧縮機12が第1及び第2低圧側配管15B,18Bから冷媒ガスを回収しても、第1低圧側配管15Bには第2バッファタンク80から高圧の冷媒ガスが供給されることにより、第1及び第2低圧側配管15B,18Bの圧力が低下することを防止することができる。
[第3行程:時間t6〜t9]
時間t6〜t9の間、第4開閉バルブV4は開いた状態を維持する。これにより、パルス管50内の冷媒ガスは第2低圧側配管18Bを通り圧縮機12に回収される。
【0079】
また、時間t7〜t8の間は、バッファ用バルブVBも開かれた状態となる。これにより、蓄冷器40内の冷媒ガスは、第1共通配管20及び第2共通配管81を通り、第2バッファタンク80に回収される。これにより第2バッファタンク80内の冷媒ガスの圧力は上昇する。
[第4行程:時間t9〜t13]
第4開閉バルブV4は、時間t10において閉じられる。また、第2開閉バルブV2は、時間t9〜t12の間開かれる。第2開閉バルブV2が開かれることにより、蓄冷器40及びパルス管50内の冷媒ガスは、接続配管56、蓄冷器40、第1共通配管20、及び第1低圧側配管15Bを通り圧縮機12に回収される。よって、時間t9〜t10の間は、冷媒ガスは第1低圧側配管15B及び第2低圧側配管18Bの双方の配管を用いて圧縮機12に回収される。
【0080】
この際、前記のように本実施形態に係る極低温冷凍機10Eは、圧縮機12がパルス管50及び蓄冷器40から冷媒ガスを回収を開始する前に、第2バッファタンク80に対して冷媒ガスの回収がされる構成とされている。よって、圧縮機12のみで冷媒ガスを回収する構成に比べ、圧縮機12によるガス回収量を低減でき、圧縮機12の低出力化及び省電力化を図ることができる。
【0081】
この第1及び第2低圧側配管15B,18Bを介して回収された冷媒ガスは、圧縮機12で圧縮処理が行われ、高圧化された冷媒ガスは第1高圧側配管15Aに供給される。
【0082】
ここで、高圧側冷媒ガス供給系13Aに注目すると、第1及び第3開閉バルブV1,V3は閉じられており、また圧縮機12は第1及び第2低圧側配管15B,18Bから低圧の冷媒ガスを回収して高圧側冷媒ガス供給系13Aに供給するため、第1及び第2高圧側配管15A,18A内の圧力は上昇してしまう。よって、この状態を放置すると圧縮機12の高圧側と低圧側の圧力差が大きくなってしまうことは前述した通りである。
【0083】
しかしながら、本実施形態に係る極低温冷凍機10Eは、第2バッファタンク80と第1高圧側配管15Aが高圧側バイパス配管82で接続された構成とされている。また、高圧側バイパス配管82に設けられた高圧側バルブVHは、図9に示すように、第2開閉バルブV2が開弁した後、所定時間経過した時間t10において開かれる構成とされている。
【0084】
よって、高圧側バルブVHが時間t10〜t11の間開かれることにより、図11に示すように、圧縮機12で生成された高圧の冷媒ガスは、高圧側バイパス配管82を通り第2バッファタンク80に流入する(図中、冷媒ガスの流れを破線の矢印で示す)。従って、第1及び第3開閉バルブV1,V3が閉じられた状態で圧縮機12が第1高圧側配管15Aに対して高圧の冷媒ガスを供給しても、この高圧の冷媒ガスは第2バッファタンク80に供給されるため、第1及び第2高圧側配管15A,18A内の圧力が上昇することを防止することができる。
【0085】
本実施形態に係る極低温冷凍機10Eも、上記した第1〜第4行程を1サイクルとして繰り返すことにより、パルス管50内で冷媒ガスの圧縮/膨脹が繰り返し生じ、パルス管50の低温端54で寒冷を発生させることができる。
【0086】
また、本実施形態に係る極低温冷凍機10Eも、前記した第1実施形態に係る極低温冷凍機10Aと同様に、圧縮機12から冷凍機本体30Aに冷媒ガスの供給を行わない期間においては、圧縮機12の高圧側冷媒ガス供給系13Aの圧力が上昇してしまうことを防止することができる。また、圧縮機12が冷凍機本体30Aから冷媒ガスを回収しない期間においては、圧縮機12の圧力が低下するのを防止することができる。これにより、圧縮機12の高圧側と低圧側の圧力差を低減することが可能になり、圧縮機12の消費電力の低減を図ることができると共に、冷凍機本体30Aの冷凍効率の向上を図ることができる。
【0087】
なお、図2及び図9に示した各バルブの開閉のタイミングはその一例を示すものであり、本発明に係る極低温冷凍機のバルブの開閉タイミングはこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能なものである。
【0088】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0089】
10A,10B,10C,10D,10E 極低温冷凍機
12 圧縮機
13A 高圧側冷媒ガス供給系
13B 低圧側冷媒ガス回収系
15A 第1高圧側配管
15B 第1低圧側配管
18A 第2高圧側配管
18B 第2低圧側配管
20 第1共通配管
30A,30B,30C 冷凍機本体
40 蓄冷器
50 パルス管
56 接続配管
60 オリフィス
70 第1バッファタンク
80 第2バッファタンク
81 第2共通配管
82 高圧側バイパス配管
84 低圧側バイパス配管
86 高圧側オリフィス
88 低圧側オリフィス
90 シリンダ
92 ディスプレーサ
100 駆動機構
V1 第1開閉バルブ
V2 第2開閉バルブ
V3 第3開閉バルブ
V4 第4開閉バルブ
VH 高圧側バルブ
VL 低圧側バルブ
VB バッファ用バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ガスを膨張させることにより寒冷を発生させる冷凍機本体と、
前記冷凍機本体に高圧の冷媒ガスを供給する高圧側配管と、前記冷凍機本体から低圧の冷媒ガスを回収する低圧側配管とが接続された圧縮機と、
前記冷媒ガスを収納するバッファタンクと、
前記バッファタンクと前記冷凍機本体とを接続する第1配管に設けられたバッファ用バルブと、
前記高圧側配管と前記バッファタンクとを接続する第2配管に設けられた高圧側バルブと、
前記低圧側配管と前記バッファタンクとを接続する第3配管に設けられた低圧側バルブと、
を有することを特徴とする極低温冷凍機。
【請求項2】
前記高圧側配管に設けられた第1開閉バルブが開いているときに前記低圧側バルブを開き、
前記低圧側配管に設けられた第2開閉バルブが開いているときに前記高圧側バルブを開くことを特徴とする請求項1記載の極低温冷凍機。
【請求項3】
前記第2配管及び前記第3配管の少なくとも一方にオリフィスを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の極低温冷凍機。
【請求項4】
前記冷凍機本体がGM冷凍機である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の極低温冷凍機。
【請求項5】
前記冷凍機本体がパルス管凍機である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の極低温冷凍機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−76546(P2013−76546A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218392(P2011−218392)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)