説明

極低温容器加温装置及び極低温容器加温方法

【課題】効率的に短時間で極低温容器を加温することができる極低温容器加温装置及び極低温容器加温方法を提供する。
【解決手段】極低温容器加温装置1は、ガスGが収容された極低温容器11と、極低温容器11から吐出したガスGを断熱圧縮させて温度を上昇させる圧縮機21と、極低温容器11と圧縮機21との間でガスGを循環させる循環回路31とを備え、圧縮機21及び循環回路31は一体として走行可能な圧縮ユニットとして構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温容器加温装置及び極低温容器加温方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液化ガス等を運搬する容器として極低温容器が知られている(下記特許文献1参照)。該容器は、内部を真空断熱構造とするとともに、外気からの熱の侵入を防止するために外側の槽の内部に内側の槽が設けられた二重構造となっている。
【0003】
また、高圧ガスによる災害防止の観点から、極低音容器には様々な基準が課せられている。例えば、「容器保安規則に基づき表示等の細目、容器再検査の方法等を定める告示」によれば、「極低温容器の気密試験は、容器を常温付近まで加熱後、空気又はガスで気密試験圧力以上の圧力を加えて三十分間以上放置し、圧力計の指度を点検することにより行うものとする」と規定されている。
【0004】
ここで、上記の気密試験に際し、極低温容器の温度を上げるためには、以下の方法が考えられる。
(1)ヒータ等の熱源により、該容器を直接加熱する方法、(2)加熱した空気又は他のガスを該容器内に入れて加温する方法、(3)容器を常温になるまで放置する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−4221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記(1)に記載の極低温容器を直接加熱する方法を行ったとしても、該容器自体が真空断熱構造となっているため、該容器の内側の槽を加熱することができないという問題点があった。
また、上記(2)に記載の加熱した空気等を該容器内に入れて加温する方法では、空気を入れた場合には加熱後に内側の槽に水分が残るため、該水分を取り除く作業と手間が必要であるという問題点があった。
また、上記(3)に記載の放置する方法では、常温になるまで2乃至3週間要するため、即時実施できず、時間がかかるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、効率的に短時間で極低温容器を加温することができる極低温容器加温装置及び極低温容器加温方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る極低温容器加温装置は、ガスが収容された極低温容器と、前記極低温容器から吐出した前記ガスを断熱圧縮させて温度を上昇させる圧縮機と、前記極低温容器と前記圧縮機との間で前記ガスを循環させる循環回路とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような極低温容器加温装置では、極低温容器に収容されたガスを利用して、該ガスを圧縮機で断熱圧縮することにより、該ガスの温度を上昇させることができる。ここで、極低温容器と圧縮機とは、循環回路で接続されているため、昇温したガスを極低温容器に戻すことにより、極低温容器を加温することができる。よって、効率的に短時間で極低温容器を加温することができる。
【0010】
また、本発明に係る極低温容器加温装置は、前記圧縮機及び前記循環回路は、一体として走行可能な圧縮ユニットとして構成されていることを特徴とする。
【0011】
このような極低温容器加温装置では、圧縮機及び循環回路は走行可能な圧縮ユニットとして構成されるため、該圧縮ユニットである極低温容器加温装置を走行させることにより、極低温容器を加温することができるため、利便性が高い。
【0012】
また、本発明に係る極低温容器加温方法は、ガスが収容された極低温容器からガスを取り出すガス取出工程と、前記取り出したガスを断熱圧縮して昇温させる圧縮工程と、前記昇温したガスを前記極低音容器に戻すガス戻し工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
このような極低温容器加温方法によれば、ガス取出工程により極低温容器に収容されたガスを取り出し、該ガスを圧縮工程で断熱圧縮して昇温させ、ガス戻し工程で該ガスを極低温容器に戻すことができる。よって、昇温したガスを極低温容器に戻すことにより、低温容器を加温することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る極低温容器加温装置及び極低温容器加温方法によれば、短時間で実施することができるとともに手間が少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る極低温容器加温装置のフロー図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る極低温容器加温装置の一部を示す正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る極低温容器加温方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る極低温容器加温装置1について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る極低温容器加温装置1は、ガスGが収容された極低温容器11と、ガスGを圧縮する圧縮機21と、極低温容器11と圧縮機21との間でガスGを循環させる循環回路31とを備える。
また、図2に示すように、極低温容器加温装置1のうち圧縮機21及び循環回路31は一体として走行可能な圧縮ユニット71として構成されている。
【0017】
極低温容器11は、一般に、液体状態のガスGが収容された状態で使用される。ここで、本実施形態では、該液体状態のガスGの大半が消費された後、該極低温容器11にわずかに残った気体状態のガスGを使用する。
また、ガスGとしては、CO2、又はAr等である。
また、極低温容器11としては、例えば、真空構造であるとともに、外側の槽の内部に内側の槽が設けられた二重構造の容器である(不図示)。
【0018】
図2に示すように、圧縮機21は、極低温容器11から吐出するとともに、該圧縮機21に流入したガスGを断熱圧縮させて温度を上昇させる。本実施形態では、モーター121を動力源として、コンプレッサー122により構成されている。
【0019】
循環回路31は、極低温容器11と圧縮機21との間でガスGを循環させる。
ここで、循環回路31は、極低温容器11と圧縮機21とを接続するフレキシブルホース132、133、弁141乃至147と、フィルター151、152と、計測器161乃至164とを備える。以下、極低温容器11から吐出するガスGの流路(図1に示す矢印の方向)に沿って、構成部材について詳細に説明する。
【0020】
第一ボール弁141は、極低温容器11に接続され、極低温容器11に収容されたガスGのうち所望のガスGを圧縮機21側に吐出させる。
第一フィルター151は、第一ボール弁141の吐出側に設けられ、第一ボール弁141から吐出し圧縮機21に流入するガスGに含まれる塵等の不純物を取り除く。
入口温度計161は、第一フィルター151の吐出側に設けられ、第一フィルター151を通過したガスGの温度を計測する。予め閾値温度を設定することにより、圧縮機21を自動的に停止することができる。
入口ブロー弁142は、入口温度計161の吐出側に設けられるとともに第一フレキシブルホース132で極低温容器11と接続されている。また、極低温容器11内に収容されたガスGの圧力を調整するとともに、予め閾値圧力を設定することにより、該閾値を越える場合にはガスGを外気中に放出する。
入口圧力計162は、入口ブロー弁142の吐出側であって圧縮機21の流入側に設けられ、圧縮機21側のガスGの圧力を計測し、表示する。
逆止弁143は、圧縮機21の吐出側に設けられ、極低温容器11に収容されたガスGが圧縮機21の吐出側から圧縮機21の内部に流入するのを防止する。
安全弁144は、逆止弁143の吐出側に設けられ、圧縮機21から吐出したガスGが、予め設定した閾値を超える場合には、安全弁144を作動させて圧縮機21のガスGを一定に保つ。
出口圧力計163は、安全弁144の吐出側に設けられ、圧縮機21の吐出側のガスGの圧力を計測し、表示する。
出口ブロー弁145、出口圧力計163の吐出側に設けられるとともに第二フレキシブルホース133で極低温容器11と接続されている。また、圧縮機21により高温にされたガスGを大気に放出する。
出口温度計164は、出口ブロー弁145の吐出側に設けられ、圧縮機21の吐出側のガスGの温度を計測し、表示する。
出口流量調整弁146は、出口温度計164の吐出側に設けられ、循環回路31を循環するガスG量を調整する。本実施形態では、出口圧力計163で計測した圧力が0.9MPaを超えない範囲に調整している。
第二フィルター152は、出口流量調整弁146の吐出側に設けられ、出口流量調整弁146から吐出し極低温容器11に流入するガスGに含まれる塵等の不純物を取り除く。
第二ボール弁147は、第二フィルター152の吐出側に設けられ、所望のガスGを極低温容器11に流入させる。
なお、上記に示す構成部材の設置位置は上記の順には限られず、適宜変更可能である。例えば、入口温度計161、入口ブロー弁142及び入口圧力計162の設置位置を、ガスGの流路順に、入口ブロー弁142、入口圧力計162、入口温度計161としても構わない。また、出口圧力計163、出口ブロー弁145、出口温度計164の設置位置を、ガスGの流路順に、出口温度計164、出口ブロー弁145、出口圧力計163としても構わない。
【0021】
図2に示すように、圧縮機21及び循環回路31は土台部172に設けられるとともに、下部に複数のキャスター171を有して一体として圧縮ユニット71として構成されている。
【0022】
次に、本実施形態の極低温容器加温装置1の加温方法について説明する。
該極低温容器加温方法は、図3に示すように、ガス取出工程S01と、圧縮工程S02と、ガス戻し工程S03とを備える。
【0023】
まず、ガス取出工程S01を実施する。
すなわち、第一フレキシブルホース132を入口ブロー弁142と第一ボール弁141とを接続するように連結し、第二フレキシブルホース133を出口ブロー弁145と第二ボール弁147とを接続するように連結する。
そして、図示しないバルブを開栓することにより、極低温容器11に収容されたガスGが圧縮機21側に吐出する。ここで、極低温容器11より取り出されたガスGは、第一ボール弁141、第一フィルター151、入口温度計161、入口ブロー弁142、入口圧力計162の順に流入し、圧縮機21に流入する。
【0024】
次に、圧縮工程S02を実施する。
すなわち、圧縮機21に流入したガスGを断熱圧縮して昇温させる。
【0025】
次に、ガス戻し工程S03を実施する。
すなわち、圧縮機21で昇温したガスGは、逆止弁143、安全弁144、出口圧力計163、出口ブロー弁145、出口温度計164、出口流量調整弁146、第二フィルター152、第二ボール弁147の順に流入し、極低温容器11に戻る。
また、ガスGが極低温容器11に戻ると、ガス取出工程S01により極低温容器からガスGを取り出し、上記の工程を順次繰り返して行う。
【0026】
本実施形態の極低温容器加温方法によれば、ガス取出工程S01により、第一フレキシブルホース132を入口ブロー弁142と第一ボール弁141とに、第二フレキシブルホース133を出口ブロー弁145と第二ボール弁147とに、それぞれ接続するように連結する。そして、バルブを開栓すれば極低温容器11に収容されたガスGを圧縮機21に流入させることができる。また、圧縮工程S02により該ガスGを昇温させ、ガス戻し工程S03により昇温したガスGを圧縮機21に戻すことができる。よって、本工程を繰り返してガスGを循環させることにより、効率的に短時間で極低温容器11を加温することができる。
【0027】
また、圧縮機21及び循環回路31は走行可能なキャスター171を有する圧縮ユニット71として構成されているため、該圧縮ユニット71を任意の場所に移動させ、極低温容器11と接続することにより該極低温容器11を加温することができるため、利便性が高い。
【0028】
また、極低温容器11に残存しているガスGを使用することにより、該極低温容器11を加温することができるため、新たなガスGを必要としないためコストをおさえることができ、経済的である。
【0029】
また、極低温容器11を加温するのに使用するガスGは、元々極低温容器11に収容されていたガスGであり、他のガスGや水等を使用するのではないため、該低温容器が他の物質により汚染されることはない。
【0030】
なお、175Lの極低温容器11で常温になるまでの時間を計測すると、従来の放置する方法では約2週間要していたのに対し、本実施形態に係る極低温容器加温方法では約30分で可能となった。よって、飛躍的に時間を短縮することができるのが分かる。
【0031】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…極低温容器加温装置
11…極低温容器
21…圧縮機
31…循環回路
71…圧縮ユニット
S01…ガス取出工程
S02…圧縮工程
S03…ガス戻し工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが収容された極低温容器と、
前記極低温容器から吐出した前記ガスを断熱圧縮させて温度を上昇させる圧縮機と、
前記極低温容器と前記圧縮機との間で前記ガスを循環させる循環回路とを備えることを特徴とする極低温容器加温装置。
【請求項2】
請求項1に記載の極低温容器加温装置において、
前記圧縮機及び前記循環回路は、一体として走行可能な圧縮ユニットとして構成されていることを特徴とする極低温容器加温装置。
【請求項3】
ガスが収容された極低温容器からガスを取り出すガス取出工程と、
前記取り出したガスを断熱圧縮して昇温させる圧縮工程と、
前記昇温したガスを前記極低音容器に戻すガス戻し工程とを備えることを特徴とする極低温容器加温方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−16575(P2013−16575A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147197(P2011−147197)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000150981)日酸TANAKA株式会社 (33)
【Fターム(参考)】