説明

極低温流体用配管の接続継手及び極低温流体の供給設備

【課題】結露や着霜を抑制するために、継ぎ手の外管部分にブリーザ通路を形成した。
【解決手段】内外二重管で構成した極低温流体供給管を接続・分離可能する接続継手である。雄型接続継手の先端部に閉弁側に弾性付勢した自己封止型遮断弁を位置させる。雌型接続継手の外管9での接続端部に開閉機構18を配置する。雌型接続継手に装着されている開閉機構18の開放側に位置する雌型接続継手の外管9部分にブリーザ通路26を形成し、このブリーザ通路26を開閉機構18の開閉操作具27の作動に連動して作動するプラグ28で開閉可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体水素、液化天然ガス、液体窒素等の極低温流体に使用される極低温流体用配管の接続継手及びこの接続継手を使用した極低温流体供給設備に関し、特に、液体水素供給配管に使用する接続継手および供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
外管と内管との間に断熱層を形成した二重管の内管内を極低温流体の流通路とした配管同士を接続するものとして、バイヨネット継手を使用して接続するものが提案されている。しかし、従来技術の場合、継手が分離された状態では、内管内の極低温流体の流通路が外気に晒されていることから、接続が完了した後に流通路に大気が残存し、極低温流体への大気の混入が生じる。また、継手部および内管内が極低温流体によって冷やされたままの状態で継手を分離すると、継手部および内管内に結露や着霜が生じる。このため、接続作業のたびにガスパージや加温作業が必要となるという問題を有している。これらが極低温流体に混入すると、純度の低下、配管の閉塞やバルブの不完全閉鎖等の問題が生じる。この問題の発生を防止する為、例えば液体水素においては、接続作業のたびに水素ガスの封入・放出の作業を10回以上繰返し行ない接続部に残留する大気を取り除く。充填作業後においては、配管・バルブについた霜を取り除く為、加温ヒーターで温めた水素ガスを配管に流し、配管・バルブを20分程度温める必要がある。このように極低温流体の流通路である配管の接続・分離を問題なく行なうには多くの作業を必要としている。
【0003】
そこで、継手部での結露や着霜を抑制するために、内管同士の接続部を外管の接続部とは異なる位置に設定し、外管同士の接続部には外気遮断用のシャッターを具備した鞘管を配置したものが提案されている。(特許文献1)
【0004】
ところが、この特許文献1に記載のものでは、接続する供給側継手部も機器側継手部も鞘管の開口部(シャッター位置)から入り込んだ箇所に位置している。この結果、二重管で構成した配管路を接続する際には、少なくとも、一方の外管と鞘管とを相対摺動させて、一方の継手部を他方の継手部まで進出させなければならない。このため、一方の外管と鞘管との間の気密が破れ、内管同士の接続時や接続解除時に流出したガスが鞘管と外管との間から漏れ出すことがある。この漏れ出すガスが液体窒素のような不活性ガスであれば、経済的損失だけで済むが、液体水素のような可燃性ガスの場合、ガス漏洩は爆発事故等の原因になりかねないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平07−018519号公報
【0006】
そこで、本出願人は先に、接続継手が分離された状態でも、内管内の極低温流体の流体通路が外気に晒されないようにし、雄型接続継手及び雌型接続継手の先端に外気遮断用のバルブを具備した接続継手を提案した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、先に提案したものでは、接続部で漏洩ガスを大気に放出させないようにするために、漏洩ガスを内管に返送するガス戻し管を配置するとともに、誤操作を防止するために、接続操作を自動化する装置を配置していることから、接続継手としての重量が重く、寸法も大きくなるという不都合があることがわかった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑み提案されたもので、容易に接続作業を行うことができ、かつ接続継手の寸法、重量を大幅に増大させることなく、極低温流体への大気の混入、大気へのガス漏洩を低減できることに加え、誤操作の防止ができる接続継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために請求項1に記載の本発明は、内部に極低温流体を流通させる内管と、この内管の外部を覆う外管とで、極低温流体供給管を構成し、一対の極低温流体供給管で雌雄一対の分離可能な接続継手を構成し、雌型接続継手の外管での接続端部に開閉機構を配置し、この雌型接続継手の内管の接続端部を外管の接続端部から後退させた箇所に位置させ、この内管の接続端部に後述する雄型接続継手の先端に装着した自己封止型遮断弁の開弁操作部を位置させ、雄型接続継手の先端寄り部を、開放状態にある前記開閉機構を通過して雌型接続継手の内管内に挿嵌可能に構成し、この雄型接続継手の先端部に自己封止型遮断弁を閉弁側に弾性付勢した状態で位置させた極低温流体用配管の接続継手であって
雌型接続継手に装着されている開閉機構の開放側に位置する雌型接続継手の外管部分にブリーザ通路を形成し、このブリーザ通路を開閉機構の開閉操作具の作動に連動して作動するプラグで開閉可能に構成したことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1の構成に加えて、開閉機構の両側に位置している外管内周面に雄型接続継手の外管外周面に当接する雄型接続継手の検出具を配置し、この検出具と開閉機構を開閉操作する開閉操作具)の開閉位置固定具とを連動作動可能に接続し、前記検出具での雄型接続継手を検出する作動に基づき開閉機構を開閉操作可能に構成している。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2の構成に加えて、開閉機構の開閉操作具は、回動基端寄り部分がカム板に形成してあり、このカム板に透設されたにブリーザ通路を開閉するプラグを連結支持させ、開閉操作操作具の開き方向への回動に伴いプラグをブリーザ通路内に進出させてブリーザ通路を閉塞し、開閉操作操作具の閉じ方向への回動に伴いプラグをブリーザ通路内から退出させてブリーザ通路を開通させるようにしてある。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、極低温流体の供給設備であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接続継手を備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載の本発明は、極低温流体の供給方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接続継手あるいは請求項4に記載の供給設備を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、雌型接続継手に装着されている開閉機構の開放側に位置する雌型接続継手の外管部分にブリーザ通路を形成し、このブリーザ通路を開閉機構の開閉操作具の作動に連動して作動するプラグで開閉可能に構成してあることから、接続操作時に、雌型接続継手の開口部に残存している大気は、雄型接続継手の挿入動作に応じてブリーザ通路から大気に放出され、雌型接続継手の開閉機構の開閉作動に連動してプラグを出退させることによりブリーザ通路を開閉切換するので、大気混入によるコンタミを低減することができるうえ、一対の接続継手の接続に伴いブリーザ通路を閉塞することになるから外部に極低温流体を漏洩させることがなくなる。
【0015】
また、請求項2に記載した発明では、雄型接続継手の先端寄り部が開放状態にある開閉機構を通過して雌型接続継手の外管内に挿嵌できるように構成し、この開閉機構の両側に位置している外管内周面に雄型接続継手の外管外周面に当接する雄型接続継手の検出具を配置し、この検出具と開閉機構(ボール弁)を開閉操作する開閉操作具の開閉位置固定具とを連動作動可能に接続し、前記検出具での雄型接続継手検出作動に基づき開閉機構を開閉操作可能に構成してあることから、雄型接続継手と雌型接続継手とが正規の姿勢に連結されていない場合には、開閉機構の開弁操作が規制され、接続作業での誤操作を防止することができる。
【0016】
さらに、請求項3に記載した発明では、開閉操作レバーの回動基端寄り部分がカム板に形成されるとともに、このカム板に透設された円弧溝にブリーザ通路を開閉するプラグが連結支持されていることから、開閉操作レバーの開閉操作に連動して確実にブリーザ通路を開閉でき、接続作業での誤操作を防止することができる。
【0017】
また、請求項4に記載した発明では、請求項1〜3に記載した接続継手を備えていることから接続作業での誤操作を防止でき、安全・確実な極低温流体の供給を実施できる。
【0018】
さらにまた、請求項5に記載した発明では、請求項1〜3に記載した接続継手あるいは請求項に記載した供給設備を備えていることから、接続作業における誤操作を防止でき、安全・確実な極低温流体の供給方法を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】極低温流体供給設備の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す接続継手の一部切除中央縦断面図である。
【図3】本発明に係る雄型接続継手の一実施形態を示す一部切除中央縦断面図である。
【図4】図3に示す雄型接続継手の先端部の要部拡大図である。
【図5】本発明に係る雌型接続継手の一実施形態を示す一部切除中央縦断面図である。
【図6】雌型接続継手の先端部分での要部拡大断面図である。
【図7】雌型接続継手の先端部分での要部斜視図である。
【図8】開閉機構の作動説明図である。
【図9】ガイド機構を示す要部断面図である。
【図10】ガイド機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は極低温流体として液体水素を用いた極低温流体供給設備の概略構成図であり、液体水素貯蔵容器等の極低温流体貯蔵容器(1)から連出されている供給源側配管(2)と、燃料用水素タンク等の極低温流体受液容器(3)から連出されている容器側配管(4)とを接続継手(5)で連通接続するものであり、供給源側配管(2)の先端部に連通接続している雄型接続継手(6)と、容器側配管(4)の先端部に連通接続している雌型接続継手(7)とで構成されている。
【0021】
この接続継手(5)を構成している雄型接続継手(6)及び雌型接続継手(7)は、それぞれ内部に液体水素等の極低温流体を流通させる内管(8)と、この内管(8)の外部を覆う外管(9)とを具備しており、内管(8)と外管(9)の間の空間(10)を真空断熱した二重管構造の極低温流体供給管で構成してある。
【0022】
雄型接続継手(6)は、図3及び第4図に示すように、内管(8)の先端部に弁体(11)を閉弁付勢バネ(12)で閉じ方向に付勢してある自己封止型遮断弁(13)を装着するとともに、内管(8)と外管(9)からなる挿入管部分(14)の外周を気密摺動可能に構成した外套管(15)で覆ってある。この外套管(15)と外管(9)との間には挿入管部分(14)の出退移動時にその移動をガイドするガイド機構(16)が配置してあり、外套管(15)の先端部分に外管(9)に対して気密摺動可能な連結具(17)を装着してある。
【0023】
自己封止型遮断弁(13)の先端面は、後述する雌型接続継手(7)に組み込まれている開閉機構(18)を構成しているボール弁体(19)の凸曲面に対応する凹曲面に形成してある。そして、この雄型接続継手(6)は、閉弁姿勢にあるボール弁体(19)に当接した段階で、雌型接続継手(7)の受け入れ側開口端部に雄型接続継手(6)の連結具(17)を連結固定するように構成してある。
【0024】
雌型接続継手(7)は、図5及び図6に示すように、外管(9)の接続側端部にボールバルブ(開閉機構)(18)が装着してある。この開閉機構(18)は雄型接続継手(6)の挿入管部分(14)を挿通させる貫通孔(20)を穿設したボール弁体(19)と弁箱(21)とを有している。また、内管(8)の接続端部を途中から拡径し、この拡径部(22)を外管(9)の接続側端部から後退させた箇所に位置させ、この内管(8)の拡径部(22)に前記雄型接続継手(6)に装着した自己封止型遮断弁(13)を開弁操作するための開弁操作部(23)を位置させてある。
【0025】
雌型接続継手(7)の接続側端部に装着した開閉機構(18)には、弁箱(21)に形成されている雄型接続継手挿入管路(24)の内周面に雄型接続継手(6)の外管外周面に当接する雄型接続継手検出具(25)がボール弁体(19)の前後に配置してある。また、雌型接続継手(7)の開放側に位置する雄型接続継手挿入管路(24)の内周面にブリーザ通路(26)を形成し、このブリーザ通路(26)を開閉機構(18)の開閉操作レバー(27)の作動に連動して作動するプラグ(28)で開閉可能に構成してある。なお、このプラグ(28)の外部突出部に鍔部(29)が形成してあり、プラグ(28)がブリーザ通路(26)に押し込まれている状態では、この鍔部(29)が雄型接続継手(6)に形成されている連結具(17)の先端部に設けた凹嵌部(30)に嵌り込むようにしてある。
【0026】
前記雄型接続継手検出具(25)は、雄型接続継手(6)の外管外周面先端部に当接するPTFT製コンタクター(31)と、このコンタクター(31)と同行移動する接続部品(32)と、インナーケーブル(33)とアウターチューブ(34)からなるボーデンケーブル(35)と、開閉機構(18)の開閉操作レバー(27)を開弁位置と閉弁位置とに保持する保持具に係脱する係合具(37)とで形成してあり、インナーケーブル(33)の基端は前記接続部品(32)に接続され、先端は係合具(37)に接続されている。また、アウターチューブ(34)の両端は、弁箱(21)の外周面部分に固定されている。そして、コンタクター(31)は雄型接続継手挿入管路(24)内に突出する側に弾性付勢されている。
【0027】
開閉機構(18)を構成しているボールバルブの開閉操作レバー(27)には、図7に示すように、位置固定ピン(38)が出退可能に装着してあり、開閉操作レバー(27)の全閉位置と全開位置とにそれぞれ位置固定ピン(38)を受け入れる開閉操作レバー固定具(39)が形成してあり、位置固定ピン(38)が開閉操作レバー固定具(39)に装着された状態で、前記ボーデンケーブル(35)のインナーケーブル(33)の先端に接続されている係合具(37)を受け入れる受入部(40)が位置固定ピン(38)に刻設してある。
【0028】
なお、雌型接続継手(7)の開放側に位置している雄型接続継手検出具(25a)は開閉操作レバー(27)の全閉位置で位置固定ピン(38)を受け入れる開閉操作レバー固定具(39a)に接続してあり、雌型接続継手(7)の奥側に位置している雄型接続継手検出具(25b)は開閉操作レバー(27)の全開位置で位置固定ピン(38)を受け入れる開閉操作レバー固定具(39b)に接続してある。
【0029】
また、開閉操作レバー(27)には、位置固定ピン(38)を出退作動させる補助レバー(41)が装着してある。さらに、前記開閉操作レバー(27)は、回動基端寄り部分がカム板(42)に形成してあり、このカム板(42)に透設された円弧溝(43)に前述のブリーザ通路(26)を開閉するプラグ(28)が連結支持してあり、開閉操作レバー(27)の開き方向への回動に伴いプラグ(28)をブリーザ通路(26)内に進出させてブリーザ通路(26)を閉塞し、開閉操作レバー(27)の閉じ方向への回動に伴いプラグ(28)をブリーザ通路(26)内から退出させてブリーザ通路(26)を開放するようにしてある。なお、このプラグ(28)でのブリーザ通路(26)の閉塞は、雄型接続継手(6)と雌型接続継手(7)とが正規に接続されている状態でプラグ(28)が雄型接続継手(6)の連結具に形成されている凹嵌部(30)に嵌り込むことにより操作可能になっている。
【0030】
従って、図8に示すように、雌型接続継手(7)の開放側に位置している雄型接続継手検出具(25a)が雄型接続継手(6)を検知すると、雄型接続継手(6)の外管外周面に当接してコンタクター(31)を押し込み、その押し込み力が接続部品(32)、ボーデンケーブル(35)のインナーケーブル(33)を介して係合具(37)に伝達され、係合具(37)が受入部(40)から外れ(図8a)、補助レバー(41)を操作することで位置固定ピン(38)を開閉操作レバー固定具(39)から抜き出して、開閉操作レバー(27)を開閉操作することができるようにしてある(図8b)。
【0031】
なお、開閉機構(18)の奥側に位置している雄型接続継手検出具(25b)は、雄型接続継手検出具(25b)が雄型接続継手(6)を検知すると、雄型接続継手(6)の外管外周面に当接してコンタクター(31)を押し込み、その押し込み力が接続部品(32)、ボーデンケーブル(35)のインナーケーブル(33)を介して係合具(37)に伝達され、係合具(37)が受入部(40)に係合するようにしてある。
【0032】
また、外套管(15)と外管(9)との間に配置したガイド機構(16)は、図9に示すように、挿入管部分(14)に固定したガイドピン(44)と、外套管(15)の内周面に形成したガイド溝(45)とで形成してあり、ガイド溝(45)は図10に概略的に示すように、挿入管部分(14)の軸芯と平行に形成された直線部分(46)と、最退入位置と、最進出位置に対応する位置に形成した係着部分(47)(48)、及び内管(8)の先端面が開閉機構(18)を構成しているボールバルブの外周面に当接する位置に対応する個所に形成した迂回部分(49)とで形成してある。
なお、このガイド機構(16)は、雄型接続継手(6)の周方向に等間隔で複数個配置してある。
【0033】
上述の構成からなる接続継手(5)は、雄型接続継手(6)と雌型接続継手(7)とが分離している状態では、雌型接続継手(7)の開閉機構(ボール弁)(18)が閉姿勢に、雄型接続継手(6)は、自己封止型遮断弁(13)が閉姿勢で挿入管部分(14)が外套管(15)内に退入した姿勢にある。
【0034】
そして、雌型接続継手(7)の開口端部を形成する弁箱(21)の先端面に雄型接続継手(6)の連結具(17)を当接し連結する。なお、この弁箱(21)の先端面と雄型接続継手(6)の連結具(17)との連結固定は、弁箱(21)の先端外周面に形成した雄ネジ部と、雄型接続継手(6)の連結具(17)の先端部に回転可能に装着したユニオンナットとの螺合で行われるようになっており、弁箱(21)の先端面と連結具(17)の当接面とは気密に当接するようになっている。
【0035】
雄型接続継手(6)の連結具(17)と雌型接続継手(7)の弁箱(21)との連結が終わると、雄型接続継手(6)の挿入管部分(14)を、固定されている外套管(15)に対して迂回部分(49)まで進出させる。この挿入管部分(14)の進出作動で、開放側に位置している雄型接続継手検出具(25a)が雄型接続継手(6)を検知して、開閉操作レバー固定具(39)から位置固定ピン(38)を抜き出し可能にする。また、この雄型接続継手(6)の進出作動時には、雄型接続継手挿入管路(24)の内周面に形成したブリーザ通路(26)に装着されているプラグ(28)は退出した位置にあり、ブリーザ通路(26)は大気に連通し、雄型接続継手(6)の装着時に雄型接続継手挿入管路(24)内に封入された大気が雄型接続継手(6)の迂回部分(49)までの押し込み操作によりブリーザ通路(26)から外部に放出される。
【0036】
次いで、開閉操作レバー(27)に装着されている補助レバー(41)を操作して、位置固定ピン(38)を開閉操作レバー固定具(39)から抜き出し作動させたのち、開閉機構(ボール弁)(18)の開閉操作レバー(27)を開弁作動する。この開閉機構(ボール弁)(18)の開閉操作に連動して、ブリーザ通路(26)に装着されているプラグ(28)がブリーザ通路(26)に挿入されてブリーザ通路(26)を閉塞する。この弁箱(21)の先端面と雄型接続継手(6)の連結具(17)との連結固定が正しく行われていない場合には、プラグ(28)の鍔部(28)が雄型接続継手(6)に形成されている連結具(17)の先端部に設けた凹嵌部(30)に嵌り込まないで連結具(17)の周縁壁面に乗りあがった状態となっていることから、このプラグ(28)でのブリーザ通路(26)は、大気に連通した状態となり、開閉操作レバー(27)を開弁作動が重くなることから、非正規状態での接続であることを作業者は認識することができる。
【0037】
そして、開閉機構(ボール弁)(18)が全開位置になると、ボール弁体(19)の貫通孔(20)を雄型接続継手(6)の挿入管部分(14)が貫通するように雄型接続継手(6)を最進出位置まで押し込み、雄型接続継手(6)の先端部に装着されている自己封止型遮断弁(13)を雌型接続継手(7)に装着した開弁操作部(23)で受け止め、開弁させる。
【0038】
この雄型接続継手(6)の挿入管部分(14)が貫通孔(20)を貫通することにより、開閉機構(18)の奥側に位置している雄型接続継手検出具(25b)が作動して、開閉操作レバー(27)が全開位置にある状態で位置固定ピン(38)を開閉操作レバー固定具(39)に係合させて、開閉操作レバー(27)を全開位置に保持する。
【0039】
次に、上記した接続継手(5)を図1に示す極低温流体(液体水素)供給設備で使用して、タンクローリー(供給側)の液体水素貯蔵容器(1)から使用設備(受液容器)の液体水素タンク(3)に液体水素を供給した際での、接続継手切り離し手順を説明する。
供給側容器となる極低温流体貯蔵容器(1)から受液側となる極低温流体受液容器(3)への極低温流体移送が終わると、雌型接続継手(7)よりも極低温流体受液容器(3)側に位置する容器側配管(4)から分岐導出したガス放出ライン(51)に装着したブロー弁(52)を開弁し、供給源側配管(2)、接続継手(5)及び容器側配管(4)の内部の極低温流体を放出すると、、ガス放出ライン(51)に装着したブロー弁(52)を閉弁する。
【0040】
供給源側配管(2)と低温流体貯蔵容器(1)の気相とを連通接続している洗浄ライン(62)との接続部よりもフレキシブルホース部分(64)側の供給源側配管(2)に連通接続されているパージガス供給ライン(68)に配置された第2洗浄弁(67)及びパージ弁(66)を開弁し、次いでブロー弁(52)を所定時間開弁した後、所定の圧力を有する水素ガスを流通させる。
【0041】
パージ弁(66)を閉弁し、ガス放出ライン(51)の内圧を表示する放出ライン圧力計(65)が所定の圧力(例えば0.3MPa)に下がったことを確認した後、ブロー弁(52)を閉弁する。次いで第2洗浄弁(67)を閉弁して、接続継手(5)の雄型接続継手(6)と雌型接続継手(7)の切り離し操作に入る。
【0042】
雄型接続継手(6)の挿入管部分(14)を固定されている外套管(15)に対して迂回部分(49)まで退入させる。この退入移動時に雄型接続継手(6)の先端部に装着した自己封止型遮断弁(13)が雄型接続継手(6)に装着した開弁操作部(23)から離れることにより、雄型接続継手(6)は自己封止型遮断弁(13)の閉弁作用で封止されることになる。そして、自己封止型遮断弁(13)の閉弁動作の過渡期において、雄型接続継手(6)内の低温液化ガス(液体水素)は雄型接続継手(6)の内管(8)内に洩れるが、その洩れガスはブリーザ通路(26)がプラグ(28)によって閉塞されていることから、外部に放出されることはない。
【0043】
雄型接続継手(6)の挿入管部分(14)を外套管(15)に対して迂回部分(49)まで退入する過程で、雄型接続継手(6)の先端部が開閉機構(18)の奥側に位置している雄型接続継手検出具(25b)の装着位置から退入して雄型接続継手検出具(25b)のコンタクター(31)が雄型接続継手(6)と当接状態にないことを検知した段階で、コンタクター(31)の作動に基づき作動する係合具(37)が位置固定ピン(38)の受入部(40)から離脱して、位置固定ピン(38)が開閉操作レバー(27)を全開位置に固定している固定具(39)から抜き出されて、開閉操作レバー(27)を開閉操作可能な状態にする。
【0044】
さらに雄型接続継手(6)の挿入管部分(14)を外套管(15)に対して迂回部分(49)まで退入させると、凹曲面に形成されている雄型接続継手(6)の先端部が、開閉機構(18)を構成しているボール弁体(19)の凸曲面に対応する状態となり、開閉機構(18)を構成しているボール弁体(19)が開閉回転可能となり、開閉操作レバー(27)を全閉位置まで閉弁操作する。したがって、この状態で接続継手自体は接続されているが、雄型接続継手(6)は自己封止型遮断弁(13)で、また、雌型接続継手(7)は開閉機構(ボール弁)(18)でそれぞれ封止されることになる。
【0045】
また、開閉操作レバー(27)を全開位置から全閉位置まで回動させる閉弁操作に連動して、ブリーザ通路(26)に装着されているプラグ(28)が弾発力でブリーザ通路(26)内から退出してブリーザ通路(26)を開放するようにしてある。このブリーザ通路(26)を開放するプラグ(28)の退出作動で、プラグ(28)の鍔部(29)が雄型接続継手(6)に形成されている連結具(17)の先端部に設けた凹嵌部(30)から外れだすことになるから、雌型接続継手(7)の開口端部を形成する弁箱(21)の先端面と雄型接続継手(6)の連結具(17)とを連結するユニオンナットの回転操作が可能になる。
【0046】
この状態から、雄型接続継手(6)の挿入管部分(14)を外套管(15)に対して退入させる作動、すなわち、挿入管部分(14)に固定したガイドピン(44)を最退入位置に対応する位置に形成した係着部分(47)まで退入させる作動に基づき、雄型接続継手(6)の先端部が雌型接続継手(7)の開放側に位置している雄型接続継手検出具(25a)の装着位置から退入して雄型接続継手検出具(25a)のコンタクター(31)が雄型接続継手(6)と当接状態にないことを検知した段階で、コンタクター(31)の作動に基づき作動する係合具(37)が位置固定ピン(38)の受入部(40)に係合する。これにより、開閉操作レバー(27)は開閉回転作動が不能な状態となり、開閉操作レバー(27)を全閉位置に固定されることになる。
【0047】
そして、雄型接続継手(6)の挿入管部分(14)を外套管(15)に対して退入させる作動、すなわち、挿入管部分(14)に固定したガイドピン(44)を最退入位置に対応する位置まで退入させることで、雄型接続継手(6)を構成している内管(8)の先端部に装着した自己封止型遮断弁(13)が雄型接続継手(6)の外管(9)の内部に収容されることになり、雄型接続継手(6)の内管先端部を雄型接続継手(6)の外管(9)で保護することができる。雄型接続継手(6)の内管先端部が雄型接続継手(6)の外管(9)内に収容された状態で雌型接続継手(7)の開口端部を形成する弁箱(21)の先端面と雄型接続継手(6)の連結具(17)とを連結するユニオンナットを回転操作して接続継手(5)を分離させる。
【0048】
上述の構成からなる接続継手(5)では、一対の極低温流体供給管の非接続時には、開閉機構(18)を閉止状態に操作することにより、雌型接続継手(7)の内管内部および接続端部への外気接触を抑制することができ、内管(8)の接続端部での着霜や結露を防止することができることになり、次回の接続操作時にガスパージや加温作業を行うことなく容易に接続作業を行うことができる。
【0049】
また、雌型接続継手(7)を形成している外管(9)の接続端部に配置した開閉機構(18)をボール弁で構成し、雄型接続継手(6)の先端寄り部が開放状態にある開閉機構(ボール弁)(18)を通過して雌型接続継手(7)の外管(9)内に挿嵌できるように構成し、この開閉機構(ボール弁)(18)の受液容器側及び接続開放端側に位置している外管内周面に雄型接続継手の外管外周面に当接する雄型接続継手(6)の検出具(25)を配置し、この検出具(25)とボール弁(18)を開閉操作する開閉操作具(27)の開閉位置固定具(38)とを連動作動可能に接続し、前記検出具(25)での雄型接続継手検出作動に基づきボール弁(18)を開閉操作可能に構成してあることから、雄型接続継手(6)と雌型接続継手(7)とが正規の姿勢に連結されていない場合には、開閉機構(ボール弁)(18)の開弁操作が規制され、接続作業での誤操作を防止することができる。
【0050】
さらに、雄型接続継手(6)の挿嵌操作に連動して、接続操作時に接続継手の内管と外管との空間に残留していた大気がブリーザ通路(26)から排出されることになるから、大気混入によるコンタミを低減することができる。
【0051】
上述の実施形態では、雄型接続継手(6)を供給源側配管(2)の先端部に連通接続し、雌型接続継手(7)を容器側配管(4)の先端部に連通接続させたものについて説明したが、雌型接続継手(7)を供給源側配管(2)の先端部に連通接続し、雄型接続継手(6)を容器側配管(4)の先端部に連通接続させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、水素自動車や燃料電池式自動車または工業用途などの液体水素供給設備に用いられる極低温流体移送経路での接続継手として利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
6…雄型接続継手、7…雌型接続継手、8…内管、9…外管、13…自己封止型遮断弁、18…開閉機構、23…開弁操作部、25…検出具、26…ブリーザ通路、27…開閉操作具、28…プラグ、38…開閉位置固定具、42…カム板、43…円弧溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に極低温流体を流通させる内管(8)と、この内管(8)の外部を覆う外管(9)とで、極低温流体供給管を構成し、一対の極低温流体供給管で雌雄一対の分離可能な接続継手を構成し、雌型接続継手(7)の外管(9)での接続端部に開閉機構(18)を配置し、この雌型接続継手(7)の内管(8)の接続端部を外管(9)の接続端部から後退させた箇所に位置させ、この内管(8)の接続端部に後述する雄型接続継手(6)の先端に装着した自己封止型遮断弁(13)の開弁操作部(23)を位置させ、雄型接続継手(6)の先端寄り部を、開放状態にある前記開閉機構(18)を通過して雌型接続継手(7)の内管(8)内に挿嵌可能に構成し、この雄型接続継手(6)の先端部に自己封止型遮断弁(13)を閉弁側に弾性付勢した状態で位置させた極低温流体用配管の接続継手であって、
雌型接続継手(7)に装着されている開閉機構(18)の開放側に位置する雌型接続継手(7)の外管(9)部分にブリーザ通路(26)を形成し、このブリーザ通路(26)を開閉機構(18)の開閉操作具(27)の作動に連動して作動するプラグ(28)で開閉可能に構成したことを特徴とする極低温流体用配管の接続継手。
【請求項2】
開閉機構(18)の両側に位置している外管内周面に雄型接続継手(6)の外管外周面に当接する雄型接続継手(6)の検出具(25)を配置し、この検出具(25)と開閉機構(18)を開閉操作する開閉操作具(27)の開閉位置固定具(38)とを連動作動可能に接続し、前記検出具(25)での雄型接続継手(6)を検出する作動に基づき開閉機構(18)を開閉操作可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の極低温流体用配管の接続継手。
【請求項3】
開閉機構(18)の開閉操作具(27)は、回動基端寄り部分がカム板(42)に形成してあり、このカム板(42)に透設された円弧溝(43)にブリーザ通路(26)を開閉するプラグ(28)を連結支持させ、開閉操作操作具(27)の開き方向への回動に伴いプラグ(28)をブリーザ通路(26)内に進出させてブリーザ通路(26)を閉塞し、開閉操作具(27)の閉じ方向への回動に伴いプラグ(28)をブリーザ通路(26)内から退出させてブリーザ通路(26)を開放するようにしてある請求項1又は2に記載の極低温流体用配管の接続継手。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の接続継手を備える極低温流体の供給設備。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の接続継手もしくは請求項4に記載の供給設備を用いた、極低温流体の供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−255520(P2012−255520A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130084(P2011−130084)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【Fターム(参考)】