説明

極圧添加剤を含んだ改良型潤滑剤調合物

【課題】潤滑剤組成物中の硫化極圧添加剤の可溶性を向上させる方法、および改良型潤滑剤組成物を得てその用途に供する。
【解決手段】当方法には、有機酸とアミン成分のプレミックスを作るために、有機酸と潤滑剤組成物用の潤滑剤パッケージのアミン成分とを予め混合することが含まれる。当該のプレミックスは、100℃での粘度が約5.5センチストローク未満である硫化極圧添加剤と混合され、潤滑剤パッケージを提供する。前述のプロセスを用いることにより、添加剤パッケージを含んだ潤滑剤組成物の濁度特性は、プレミックスなしで有機酸およびアミン成分と硫化極圧添加剤とを混合することによって作られた潤滑剤組成物の濁度特性よりも低くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑剤調合物、特に、安定性の増強された潤滑剤調合物および特性の改良された潤滑剤を作る方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤は、特定の用途で使用される極圧添加剤を含むように調合される。極圧添加剤には多種多様なものがある。特に有用な極圧添加剤として、硫黄を含んだものがある。しかしながら、硫化極圧添加剤はしばしば取り扱いが困難であり、かなり臭気もあり、高価で、また潤滑剤調合物中で使用される際、相溶化成分の存在を要する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、極圧成分を含んだ改良型の潤滑剤調合物の必要性が引き続き存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述に関し、潤滑剤組成物中の硫化極圧添加剤の溶解度を向上させる方法、および改良型の潤滑剤組成物とそれらの用途を開示する。当方法には、有機酸とアミン成分のプレミックスを作るために、有機酸と潤滑剤組成物用の潤滑剤添加物パッケージのアミン成分とを予め混合することが含まれる。当該のプレミックスは、100℃での粘度が約5.5センチストローク未満である硫化極圧添加剤と混合され、潤滑剤添加物パッケージを提供する。前述のプロセスを用いることにより、添加物パッケージを含んだ潤滑剤組成物の濁度特性は、プレミックスなしで有機酸およびアミン成分と硫化極圧添加剤とを混合することによって作られた潤滑剤組成物の濁度特性よりも低くなる。
【0005】
別の例示的実施例では、硫化極圧添加剤と実質的に無極性の基油成分とを含む、濁りのない潤滑剤組成物の作り方が提供される。硫化極圧添加剤は、100℃での粘度が約5.5センチストロークより大きくない硫化イソブチレンを得るのに適した条件下で、水溶性水硫化ナトリウムと反応させられた、一塩化硫黄/イソブチレン付加化合物から得られる。有機酸および潤滑剤組成物のアミン成分を予め混合することで、添加剤パッケージのプレミックスが得られる。添加物パッケージのプレミックスは次に、添加物組成物を得るため、約50から約95重量パーセントの硫化イソブチレンと混合される。基油は、濁りのない潤滑剤組成物を得るため、添加物組成物によって処理される。
【0006】
本開示の別の例示的実施例は、濁度が低く実質的に無極性の、潤滑剤を含んだ基油の生成に役立つ特性を有する、硫化極圧添加剤の作り方を提供している。この方法では、硫黄/オレフィン付加化合物を得るのに適した条件下で、一塩化硫黄とオレフィンとが反応させられる。有機相内で、100℃での粘度が約5.5センチストロークより大きくない硫化極圧添加剤を生成するのに十分なだけの時間にわたって、硫黄/オレフィン付加化合物と硫黄源の水溶液とを混合、および反応させる。この反応が終了した後、水相と硫化極圧添加剤を含む有機相とを分離する。
【0007】
本明細書に記載の例示的実施例の利点は、可溶化の難しい添加剤成分が、完成した潤滑剤組成物中で、可溶化剤またはより高価な極圧添加剤を必要とすることなく、より可溶性に作られるということである。従って、可溶化剤を除去でき、および/またはより高価な成分をより価格の低い成分で置き換えることができる。特に驚いたことに、有機酸とアミン成分を混合した後に、比較的粘度の低い硫化極圧添加剤とギア潤滑剤用の濃縮添加物の別の成分とを混合することにより、完成した潤滑剤組成物中の成分の溶解度が大幅に上昇
することが分かっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書中の「ヒドロカルビル置換基」あるいは「ヒドロカルビル基」という用語は、当技術分野に精通した者には周知の、通常の意味で使用されている。特にこれらは、炭素原子が分子の残りの部分に直接結合しており、また主に炭化水素の特性を有する基のことを指す。ヒドロカルビル基の例には、以下のものがある:
(1)炭化水素置換基、すなわち脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基;また芳香族、脂肪族、および脂環で置換された芳香族置換基;そして環が分子の別の部分によって完成されている(例えば二つの置換基が一緒になって脂環ラジカルを形成している)ような環状置換基;
(2)置換炭化水素置換基、すなわち主たる炭化水素置換基を変化させないような非炭化水素基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)を含んだ置換基;
(3)ヘテロ置換基、すなわち、主に炭化水素の特性を有しながら、そうでなければ炭素原子でできているはずの環や鎖中に炭素以外の原子を含んでいるような置換基。ヘテロ原子には、硫黄、酸素、窒素があり、またピリジル、フリル、チエニル、およびイミダゾリルのような置換基も含まれる。ヒドロカルビル基中の炭素原子十個につき、通常二つ以下、一般的には一つ以下の非炭化水素置換基が存在する。典型的には、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0009】
当明細書中で、「重量パーセント」という用語は、別の旨が明記されていない限り、組成物全体の重量に対して該当成分が占めるパーセンテージを意味する。
【0010】
本明細書に記載の例示的実施例に基づいて作られた完成したギアオイルは、「SAE J306自動車用ギアおよび潤滑剤の粘度分類(SAE J306 Automotive Gear and Lubricant Viscosity Classification)」によって定義されるASTM D 2983に基づいた、粘度150,000cPに対する最高温度によって示される、様々な初期の粘度グレードを有する。従って、本明細書に記載のギアオイル調合物には、一般に多量の基油、例えば約75から約98重量パーセントの基油と、少量の機能的添加剤または濃縮添加物、例えば約2から約25重量パーセントの濃縮添加物が含まれる。
【0011】
基油
本明細書に記載の組成のギアオイルは、潤滑剤にギアオイル用の使用に適した粘度があるとすれば、天然油、合成油、あるいはそれらの混合物を基盤としている可能性がある。従って、基油の粘度は通常SAE 50からSAE 250、より一般的にはSAE 70WからSAE 140の範囲内にある。適切な自動車用ギアオイルにはまた、75W−140、80W−90、85W−140、85W−90、その他のようなマルチグレードのオイルがある。
【0012】
基油を作るのに適したベースストックは、蒸留、溶媒精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化、および再精製などを含みこれらに限定されることのない、各種の異なったプロセスを使用して作られる。1996年12月、API 1509、「エンジンオイルのライセンス供与および認証システム(Engine Oil Licensing and Certification System、Fourteenth Edition)」第4版には、すべてのベースストックが以下の五つの一般カテゴリーに分類されることが提示されている:
−グループI:90重量%未満の飽和物および/または0.03重量%以上の硫黄を含み、粘度指数は80またはそれ以上、120未満である;
−グループII:90重量%またはそれ以上の飽和物および0.03重量%またはそれ以下の硫黄を含み、粘度指数は80またはそれ以上、120未満である;
−グループIII:90重量%またはそれ以上の飽和物および0.03重量%またはそれ以下の硫黄を含み、粘度指数は120またはそれ以上である;
−グループIV:ポリアルファオレフィン(PAO);および
−グループV:グループI、II、III、またはIVに含まれないその他すべてのベースストックを含む。
【0013】
上記のグループ定義のテスト方法は、飽和物についてはASTM D2007;粘度指数についてはASTM D2270;また硫黄についてはSTM D2622、4294、4927、および3120のうちの一つである。
【0014】
グループIVのベースストック、すなわちポリアルファオレフィン(PAO)にはアルファ−オレフィンの水素化オリゴマーが含まれ、最も重要なオリゴマー化の方法は、フリーラジカルプロセス、ジーグラー(Ziegler)触媒作用、および陽イオンフリーデル・クラフツ(Friedel−Crafts)触媒作用である。
【0015】
ポリアルファオレフィンの100℃での粘度は一般に、2cStから100cSt、望ましくは4cStから8cStである。これらは、例えば2つから16の炭素原子を有する分岐あるいは直鎖アルファ−オレフィンのオリゴマーであり、具体例としては、ポリプロペン、ポリイソブテン、ポリ−1−ブテン、ポリ−l−ヘキセン、ポリ−l−オクテン、およびポリ−1−デセンなどがある。ホモポリマー、インターポリマーおよびそれらの混合物もまた含まれる。
【0016】
基油には、単一のベースストックあるいはベースストックの混合物が含まれる。本明細書に記載の例示的実施例において、基油には、実質的に無極特性を有する少なくとも一つのベースストックが含まれる。例えば基油は、少量のグループIベースストックと多量のグループII、グループIII、あるいはグループIVベースストックとの混合物であり得る。
【0017】
添加剤成分のいくつかは、希釈油または鉱油などのような不活性な希釈剤または溶媒中の活性成分の溶液の形態で供給される。別の旨が明記されていない限り、各添加剤成分の量および濃度は、活性添加剤として、すなわちこのような得られた成分に付随する溶媒または希釈剤の量を除いて表される。
【0018】
上述のように、ギア潤滑剤には一般に一つまたはそれ以上の添加剤が含まれる。添加剤は、分散剤、腐食防止剤、極圧添加剤、耐摩耗添加剤、防錆剤、酸化防止剤、防臭剤、消泡剤、乳化破壊剤、染料剤、摩擦低減剤、シール膨張剤、および蛍光着色剤などから成るグループの中から選択される。添加剤パッケージは、必ずしもそうでなくてはならないというわけではないが、API GL−5および/またはAPI MT−lおよび/またはMIL−PRF−2105Eおよび/またはAGMA 9005−D94などの条件を満たすパッケージのような、完全に調合されたギア添加剤パッケージである。添加剤パッケージ中に存在する成分の種類および量は、生成物の最終的な使用目的によって決まる。
【0019】
分散剤
使用される分散剤は、塩基性窒素および/または少なくとも一つのヒドロキシル基を分子中に有する少なくとも一つの油溶性無灰分散剤を含んでいる。適切な分散剤として、アルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル、アルケニルコハク酸エステルアミド、マンニッヒ塩基、ヒドロカルビルポリアミン、またはポリマー性ポリアミンなどが挙げられる。
【0020】
そのコハク酸基が少なくとも30の炭素原子を有するヒドロカルビル置換基を含んでいるようなアルケニルコハク酸イミドについて、例えば米国特許第3,172,892号、3,202,678号、3,216,936号、3,219,666号、3,254,025号、3,272,746号、および4,234,435号に記載されている。アルケニルコハク酸イミドは、アルケニル無水コハク酸、酸、酸−エステル、酸ハロゲン化合物、または低級アルキルエステルと、少なくとも一つの一級アミノ基を含むポリアミンとを加熱するような、従来の方法によって生成される。アルケニル無水コハク酸は、オレフィンと無水マレイン酸との混合物を、例えば約180−220°Cまで加熱することによって容易に作られる。オレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、その他、およびそれらの混合物などのような、低級モノオレフィンのポリマーまたはコポリマーである。アルケニル基源は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって得られた数平均分子量が10,000以下またはそれ以上、通常約500から約2,500の範囲内、一般的には約800から約1,500の範囲内であるポリイソブテンから得られる。
【0021】
本明細書中で使用される「コハク酸イミド」という用語は、一つまたはそれ以上のポリアミン反応物質と炭化水素置換コハク酸または無水コハク酸(または同様のコハク酸アシル化剤)の間の反応から得られる完全な反応生成物を含むことを意図し、また生成物が一級アミノ基と無水物部分との反応から得られるイミド結合に加え、アミド、アミジン、および/または塩結合を有するような化合物を含むことを意図する。
【0022】
上述の様々な種類の無灰分散剤を、米国特許第3,184,411号、3,342,735号、3,403,102号、3,502,607号、3,511,780号、3,513,093号、4,615,826号、4,648,980号、4,857,214号、および5,198,133号に記載の工程によりリン酸化することができる。
【0023】
また、ホウ素化された(boronated)分散剤の中から分散剤を選択することもできる。上述の様々な種類の無灰分散剤をホウ素化する[(boronating(borating)]方法は、米国特許第3,087,936号、3,254,025号、3,281,428号、3,282,955号、2,284,409号、2,284,410号、3,338,832号、3,344,069号、3,533,945号、3,658,836号、3,703,536号、3,718,663号、4,455,243号、および4,652,387号に記載されている。
【0024】
上記に引用されているような無灰分散剤をリン酸化またホウ素化する方法は、米国特許第4,857,214号および5,198,133号に説明されている。
【0025】
無灰分散剤が存在する場合、その量「活性成分ベース」の量(すなわち、一般にそれらに付随する不純物、希釈剤、および溶媒の重量を除いたもの)は、完成したオイルに対し、通常約0.5から約7.5重量パーセントの範囲内、一般に約0.5から5.0重量%の範囲内、望ましくは約0.5から約3.0重量%の範囲内、そしてより望ましくは約2.0から約3.0重量%の範囲内である。
【0026】
腐食防止剤
使用され得る銅腐食防止剤には、チアゾール、トリアゾール、およびチアジアゾールがある。例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−ヒドロカルビルチオ−l,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−ヒドロカルビルジチオ−1,3
,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ヒドロカルビルチオ)−1,3,4−チアジアゾール、および2,5−ビス−(ヒドロカルビルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールなどが挙げられる。適切な化合物には1,3,4−チアジアゾール、特に2−ヒドロカルビルジチオ−5−メルカプト−1,3,4−ジチアジアゾールおよび2,5−ビス(ヒドロカルビルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、そしてそれらの混合物があり、これらの多くは市販されている。
【0027】
その他の適切な銅腐食防止剤には、エーテルアミン;エトキシル化アミン、エトキシル化フェノール、およびエトキシル化アルコールのようなポリエトキシル化された化合物;イミダゾリン;その他がある。例えば米国特許第3,663,561号および4,097,387号を参照。濃縮物中の濃度は一般的には3重量%以下である。適切な銅腐食防止剤として、無灰ジアルキルチアジアゾールが挙げられる。このような無灰ジアルキルチアジアゾールは、バージニア州リッチモンドのアフトンケミカル社(Afton Chemical Corporation)から入手することができる。
【0028】
使用されるジアルキルチアジアゾールは次のような一般式で表される:
【0029】
【化1】

【0030】
式中Rは6から18の炭素原子を有するヒドロカルビル置換基;Rは6から18の炭素原子を有するヒドロカルビル置換基であり、Rと同一または異なったものであり得る。通常RとRは約9−12の炭素原子を有し、一般にはRとRはそれぞれ9つの炭素原子を有するものである。
【0031】
また、例示的実施例の範囲内で、式(I)のジアルキルチアジアゾールとモノアルキルチアジアゾールとの混合物を使用することもできる。このようなモノアルキルチアジアゾールは、RまたはRのいずれかの置換基がH(水素)である場合に生じる。
【0032】
極圧添加剤
本開示のギアオイル調合物には、少なくとも一つの硫黄含有極圧(EP)添加剤が含まれる。硫黄含有極圧添加剤には少なくとも25重量パーセントの硫黄が含まれる。ギアオイルに添加される当該のEP添加剤の量は一般に、完成したギアオイル調合物中に少なくとも10,000ppm、望ましくは約10,000ppmから約30,000ppm、またさらに望ましくは約12,000ppmから約25,000ppmの硫黄をもたらすのに十分なだけの量である。
【0033】
本明細書に記載の例示的実施例において使用するために入手できる、多様な種類の硫黄含有極圧添加剤または耐摩耗剤がある。この用途に適した組成物には、硫化された動物性または植物性の油脂あるいはオイル、硫化された動物性または植物性の脂肪酸エステル、完全にあるいは部分的にエステル化された三価または五価のリン酸のエステル、硫化オレフィン(例えば米国特許第2,995,569号、3,673,090号、3,703,504号、3,703,505号、3,796,661号、3,873,454号、4,119,549号、4,119,550号、4,147,640号、4,191,659号、4,240,958号、4,344,854号、4,472,306号、および4,711,736号を参照)、ジヒドロカルビルポリ硫化物(例えば米国特許第2,237
,625号、2,237,627号、2,527,948号、2,695,316号、3,022,351号、3,308,166号、3,392,201号、4,564,709号、および英国特許第1,162,334号参照)、機能的に置換された(functionally−substituted)ジヒドロカルビルポリ硫化物(例えば米国特許第4,218,332号参照)、およびポリ硫化物オレフィン生成物(例えば米国特許第4,795,576号参照)、などが含まれる。
【0034】
このような添加剤別の種類に、式:R−Sx−Rで表される一つまたはそれ以上の化合物から成るポリスルフィドの添加剤がある。このときRおよびRは、それぞれが3つから18の炭素原子を含んだヒドロカルビル基であり、またxは2から8の間、一般には2から5の間、特には3である。当ヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、またはアラルキルなどのように多様な種類のものであり得る。ジ−t−ブチルトリスルフィド、およびジ−t−ブチルトリスルフィドから成る混合物(例えば、主にあるいは完全にトリ−、テトラ、およびペンタスルフィドから成る混合物)などのような三級アルキルポリスルフィドを使用することができる。その他の有用なジヒドロカルビルポリスルフィドの例としては、ジアミルポリスルフィド、ジノニルポリスルフィド、ジドデシルポリスルフィド、およびジベンジルポリスルフィドなどが挙げられる。
【0035】
特に適切な種類の一つの極圧添加剤は、イソブテンなどのオレフィンと硫黄とを反応させることによって作られる。生成物、例えば硫化イソブテン(SIB)や著しく硫化されたポリイソブチレンなどは、一般に約10重量%から約55重量%、望ましくは約30重量%から約50重量%の硫黄を含んでいる。硫化オレフィン極圧添加剤を生成するため、例えばイソブテン二量体または三量体など、その他の多様なオレフィンまたは不飽和炭化水素を使用することもある。硫化オレフィンの生成のための様々な方法が従来の技術分野で開示されている。例えばマイヤーズ(Myers)による米国特許第3,471,404号、パパイおよびその他(Papay et a1.)による米国特許第4,204,969号、ザウェスキおよびその他(Zaweski et a1.)による米国特許第4,954,274号、デゴニアおよびその他(DeGonia et al.)による米国特許第4,966,720号、およびホロジスキおよびその他(Horodysky,et a1.)による米国特許第3,703,504号などを参照のこと。
【0036】
上記の特許に開示された方法を含む、硫化オレフィンの調製方法は、通常複数の段階を伴う。第一段階には通常、オレフィンと例えば一塩化硫黄などのハロゲン化硫黄とを反応させるような、一般に「付加化合物」と呼ばれる物質の形成が含まれる。当付加化合物は次に硫黄源と反応させられ、硫化オレフィンが生成される。硫化オレフィンの質は通常、例えば粘度、硫黄含有量、ハロゲン含有量、および銅腐食テスト(CCT)の重量損失などを含む、様々な物理的特性によって測定される。
【0037】
米国特許第4,966,720号は、潤滑油中の極圧(EP)添加剤として有用な硫化オレフィンと、それらを調製するための二段階の反応に関連する。第一段階において、オレフィンと一塩化硫黄との間の反応温度は、低分子量の付加化合物をつくるために、0℃から22℃に維持される。反応の第二段階では、一塩化硫黄/脂肪族モノオレフィン付加化合物が、硫化ナトリウムを含んだ塩基性、アルコール水溶液中、温度約50℃から還流するまで反応させられ、硫化オレフィンが形成される。硫化オレフィンの従来の処理法では、グループIの基油に易溶性の生成物が作られる。しかしながら、相溶化剤がない場合、硫化オレフィンは、グループIIおよびグループIIIの基油には溶解しにくい。
【0038】
従って、硫化ナトリウム水溶液中への付加化合物の添加速度を増加させ、反応時間を最小化し、反応中の固体硫黄の添加を除去することにより、グループIIおよびグループI
IIの基油により易溶性の硫化オレフィンが形成される。結果得られる硫化オレフィン生成物の粘度は100℃で約5.5センチストロークより高くなく、硫黄含有量は約40重量%から約50重量%の範囲内となり、またグループIIあるいはグループIIIの基油に易溶性となる。特に、硫化ナトリウム水溶液への一塩化硫黄/脂肪族モノオレフィン付加化合物の粘度依存添加速度を、以下の表に示す:
【0039】
【表1】

【0040】
上記の表によると、付加化合物の添加速度が約60分未満である場合に、望ましい粘度の硫化極圧添加剤が得られる。グループIIおよびグループIIIの基油に易溶性の硫化極圧添加剤を作るための例示的なプロセスを、以下の非限定的な例によって証明する。
【0041】
例1
付加化合物の調製
液体の一塩化硫黄(700グラム)を、かくはん棒、温度計、5℃に維持されたコンデンサー、および水面下のガス噴霧器などを備えた、適切な反応用フラスコに注ぎいれる。その後、かくはんして温度を約20℃まで上げながら、気体イソブチレンを反応フラスコ中の一塩化硫黄液の表面下に泡にして入れ、反応混合物を反応の間中その温度に維持する。合計530グラムのイソブチレンを一塩化硫黄液中に加える。イソブチレンと一塩化硫黄との反応によって発生したHClは、オフガスをアルカリ洗浄することによってオフガスから除去される。このようにして生成された付加化合物は、反応の第二段階で硫化イソブチレンを生成するために使用される、透明なコハク油となる。当付加化合物の比重は15.6℃で約1.183±0.05である。
【0042】
グループIIおよびIIIに可溶な硫化イソブチレンの調製
水175グラム、消泡剤Bを1/2滴、n−プロパノール325グラム、50重量%の水酸化ナトリウム水溶液135グラム、および36重量%の水硫化ナトリウム水溶液410グラムを、反応用のフラスコに入れる。この混合物を700rpmでかくはんし、窒素環境下で約60℃まで加熱し、このとき、付加化合物の添加が終わるまでに反応物質の温度が約90℃に達するまで、反応温度を次第に高めながら、上述の付加化合物500グラムを30分間にわたって混合物の表面下に加える。付加化合物を添加が終わった時点で、反応混合物を大気圧下で100℃まで加熱することにより、アルコールが反応混合物から取り除かれる。アルコールを取り除くステップに続いて、フラスコを70℃まで冷ましながら、反応フラスコの圧力を水銀23インチまで下げ、反応生成物からアルコールおよび大部分の水を完全に除去する。結果として得られる生成物に水(300グラム)を加え、この生成物と水を10分間かくはんし、次に15分間静かに置く。下部の水性ブライン層をフラスコから静かに流し出すことによって分離し、次に有機層を圧力水銀28インチ、100℃で45分間真空ストリップ(vacuum stripped)する。ストリップした有機層を珪藻土床を通してろ過した後、透明な黄色のオイルが得られる。上述の方法で作られた生成物は一般に、100℃での粘度が4.0cStから5.5cStの範囲、硫黄含有量は約44−47重量パーセント、塩素含有量は1重量%未満、また銅腐食テスト重量損失(CCT)はサンプル100 mLにつき約30−80ミリグラムであると分析される。
【0043】
耐摩耗剤
この開示の目的のため、その化学構造中にリンと硫黄の両方を含んでいる成分は、硫黄含有耐摩耗剤および/または極圧添加剤としてよりも、リン含有耐摩耗剤および/または極圧添加剤であると見なされる。使用に適したリン含有耐摩耗剤に、米国特許第5,354,484号および5,763,372号に教示されているようなリン酸エステルの油溶性アミン塩や、ジシクロペンタジエンとチオリン酸との反応生成物がある。
【0044】
リン酸エステルのアミン塩は、リン酸エステルと、アンモニアまたはアミンのような塩基性窒素化合物とを反応させることによって調整される。塩は別に形成され、そのリン酸エステルの塩が潤滑組成物に加えられる。
【0045】
アミン塩の調製に有用なリン酸エステルは以下の構造式を有する:
【0046】
【化2】

【0047】
式中Rは水素またはヒドロカルビル基、Rはヒドロカルビル基であり、X基は両方ともOあるいはSのいずれかである。
【0048】
リン酸エステルの調製に使用されるヒドロキシ化合物は、化学式がROHであることを特徴とし、このときRはヒドロカルビル基である。リン化合物と反応したヒドロキシ化合物は、化学式ROHのヒドロキシ化合物の混合物から成り、このときヒドロカルビル基Rには約1つから30の炭素原子が含まれる。最終的に調製された置換リン酸エステルのアミン塩が、本明細書に記載の潤滑組成物に可溶性であることが非常に望ましい。通常、R基には少なくとも2つの炭素原子、一般には3から30の炭素原子が含まれる。
【0049】
R基は、アルキル、アリール、アルカリール、アラルキルおよび脂環式炭化水素基などのような、脂肪族または芳香族である。化学式がROHである有用なヒドロキシ化合物の例として、例えばエチルアルコール、イソプロピル、n−ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、2−エチル−ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、アミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、メチルシクロヘキサノール、アルキル化ナフトールなどが挙げられる。
【0050】
適切なアルコールROHは、脂肪族アルコール、特に少なくとも4つの炭素原子を含んだ一級脂肪族アルコールである。従って、有用な一価アルコールROHの例に、アミルアルコール、1−オクタノール、l−デカノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、l−ヘキサデカノール、l−オクタデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、フィトール(phytol)、ミリシルアルコール、
ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびベヘニルアルコールなどが挙げられる。市販のアルコール(混合物も含む)も本明細書中で考慮されている。
【0051】
現在のアミン塩は、上述のリン酸エステルと、一級または二級アミノ化合物であるような少なくとも一つのアミノ化合物とを反応させることによって調製される。リン酸エステルと反応してアミン塩を作るアミンは、次の一般式を有する一級ヒドロカルビルアミンである:
R’NH
式中R’は約150までの炭素原子を含んだヒドロカルビル基であり、しばしば約4つから約30の炭素原子を含んだ脂肪族ヒドロカルビル基である。
【0052】
一つの例示的実施例において、アミン塩の調製に有用なヒドロカルビルアミンは、ヒドロカルビル基中に約4つから約30の炭素原子を含んだ、また一般にはヒドロカルビル基中に約8から約20の炭素原子を含んだ一級ヒドロカルビルアミンである。当ヒドロカルビル基は飽和であることも不飽和であることもある。一級飽和アミンの代表例に、一級脂肪族アミンとして知られるものがある。一般的な脂肪族アミンとして、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン(ステアリルアミン)などのようなアルキルアミンが挙げられる。不飽和一級アミンには、ドデセニルアミン、ミリストレイルアミン、パルミトレイルアミン、オレイルアミン、およびリノレイルアミンなどがある。
【0053】
別の例示的実施例において、アミン塩はアルキル基中に少なくとも4つの炭素原子を有する三級脂肪族の一級アミンから得られたものである。大部分は、アルキル基中に合計約30個未満の炭素原子を有するアルキルアミンから得られる。
【0054】
通常三級脂肪族の一級アミンは、次の構造式で表されるモノアミンである:
【0055】
【化3】

【0056】
式中Rは1つから約30の炭素原子を含んだヒドロカルビル基である。このようなアミンは、三級ブチルアミン、三級ヘキシル一級アミン、1−メチル−l−アミノ−シクロヘキサン、三級オクチル一級アミン、三級デシル一級アミン、三級ドデシル一級アミン、三級テトラデシル一級アミン、三級ヘキサデシル一級アミン、三級オクタデシル一級アミン、三級テトラコサニル一級アミン、三級オクタコサニル一級アミンなどによって例証される。アミンの混合物もまた使用することができる。
【0057】
油溶性のアミン塩は、上述のリン酸エステルと上述のアミンとを室温あるいはそれ以上の温度で混合することにより調整される。通常、室温で、約1時間程度まで混合すれば十分である。リン酸エステルと反応させられて塩を形成するアミンの量は、リン酸1当量に対し少なくとも1当量のアミン(窒素を基にして)であり、当量比は通常約1である。
【0058】
このようなアミン塩の調製方法は既知のものであり、また文献にも報告されている。例
えば米国特許第2,063,629号、2,224,695号、2,447,288号、2,616,905号、3,984,448号、4,431,552号、5,354,484号、およびPCT国際特許公報WO87/07638号を参照のこと。
【0059】
一方アミン塩は、ギアオイルまたは調合されたギアオイルそのものを生成する際に、酸性のリン酸エステルと上述のアミンを混合したときにインシトゥ(in situ)で生成されることもある。例えば、防錆剤として機能する一級ヒドロカルビルアミンが、リン酸エステルのアミン塩の形成の原因となる酸性リン酸エステルを含んだギア濃縮添加物に添加されることがある。以下に詳細に記すように、アミンと濃縮添加物または潤滑剤調合物の酸成分とを混合した後に、硫化極圧添加剤を濃縮添加物または潤滑剤調合物を混合すると、硫化極圧添加剤の可溶性の向上が見られる。
【0060】
防錆剤
一般に、本明細書に記載の潤滑剤調合物中には、防錆剤が含まれている。防錆剤は、単一な化合物であることも、鉄金属表面の腐食を防止する特性を有した化合物の混合物であることもある。このような物質には、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、セロチン酸(cerotic acid)などのような油溶性のモノカルボン酸;また、トールオイル脂肪酸、オレイン酸、リノール酸その他から生成されたようなダイマー酸やトリマー酸を含む、油溶性のポリカルボン酸などが含まれる。
【0061】
その他の適切な腐食防止剤には、そのアルケニル基が10またはそれ以上の炭素原子を含んでいる、例えばテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、その他のようなアルケニルコハク酸;分子量が600から3000の範囲内の長鎖α、Ω−ジカルボン酸;およびその他の類似物質が含まれる。
【0062】
上述の防錆剤は、例えばコネチカット州ミドルベリのクロムトン社(Cromton Corporation)製のダイマー酸やトリマー酸のように、様々な商業的供給源により市販されている。
【0063】
また別の有用な種類の酸性腐食防止剤に、アルケニル基に8つから24の炭素原子を有するアルケニルコハク酸とポリグリコールのようなアルコールとの半エステルがある。特に有用な防錆剤は一級および二級アミン化合物を含み、当該のアミンと上述のその他の防錆剤との混合物同様、リン酸エステルの塩のアミン部分として本明細書に教示されている。リン酸エステルのアミン塩がリン含有耐摩耗剤として使用される場合、ギアオイル調合物に追加のアミン含有防錆剤を加える必要はなくなる。一級および二級アミンは、たとえ防錆剤、耐摩耗システムの一部、あるいはそれら両方の組み合わせのいずれに分類されていようとも、調合されたギアオイルに40ppmから125ppmの窒素(重量/重量ベースで)をもたらす。
【0064】
酸化防止剤
ギアオイル調合物中に使用される酸化防止剤には、フェノール化合物とアミンが含まれる。濃縮物中に5重量%以下の量があれば通常十分である。ギアオイル潤滑剤には、一つまたはそれ以上の酸化防止剤、例えば一つまたはそれ以上のフェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、追加的な硫化オレフィン、芳香族アミン酸化防止剤、二級芳香族アミン酸化防止剤、硫化フェノール系酸化防止剤、油溶性の銅化合物、およびそれらの混合物などが含まれる。
【0065】
適切な例示的化合物には、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、三級ブチル化フェノールの液体混合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレン
ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、混合メチレン架橋ポリアルキルフェノール、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4−イソプロピルアミノジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、およびフェニル−α−ナフチルアミンなどが含まれる。
【0066】
アミン酸化防止剤の分類中、油溶性芳香族二級アミン;芳香族二級モノアミン;およびその他が適切である。芳香族二級モノアミンには、ジフェニルアミン;それぞれが約16以下の炭素原子を有する1つから2つのアルキル置換基を含んだアルキルジフェニルアミン;フェニル−α−ナフチルアミン;約16以下の炭素原子を有する一つまたは二つのアルキル基またはアラルキル基を含むアルキル置換またはアラルキル置換のフェニル−α−ナフチルアミンを含む。
【0067】
フェノール系酸化防止剤の分類中、適切な化合物には、オルト−アルキル化フェノール化合物、例えば2−t−ブチルフェノール、2,6ジ−t−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、および各種の類似体および同族体、またそれらの混合物;一つあるいはそれ以上の、米国特許第6,096,695号に記載の部分的に硫化されたフェノール化合物、および米国特許第3,211,652号に記載のメチレン架橋アルキルフェノールなどが含まれる。
【0068】
完全に調合された最終的な潤滑組成物に、約0.00重量パーセントから約5.00重量パーセント、一般に約0.01重量%から約1.00重量%の酸化防止剤が任意的に含まれることもある。
【0069】
消泡剤
使用される消泡剤には、適切な粘度のシリコーンオイル、モノステアリン酸グリコール、パルミチン酸ポリグリコール、モノチオリン酸トリアルキル、硫酸化リシノール酸のエステル、ベンゾイルアセトン、サリチル酸メチル、モノオレイン酸グリセロール、ジオレイン酸グリセロール、およびポリアクリレートなどが含まれる。消泡剤は通常、濃縮添加物中約1重量%以下の濃度で使用される。
【0070】
乳化破壊剤
ギアオイル中で乳化破壊剤として使用される一般的な添加剤には、スルホン酸アルキルベンゼン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、油溶性の酸のエステル、その他がある。このような添加剤は通常、濃縮添加物中約3重量%以下の濃度で使用される。
【0071】
摩擦低減剤
また、一つまたはそれ以上の摩擦低減剤が含まれ、例えば滑り性能が限定され、またポジトラクション性能(positraction performance)が増強される。摩擦低減剤には一般に、脂肪族アミンまたはエトキシル化脂肪族アミン、脂肪族脂肪酸アミド、エトキシル化脂肪族エーテルアミン、脂肪族カルボン酸、グリセロールエステル、脂肪族カルボン酸エステル−アミド、および脂肪族イミダゾリン、脂肪族三級アミンなどの化合物が含まれ、このとき化合物に適切な油溶性をもたらすため、脂肪族基には通常約八つより多い炭素原子が含まれる。一つまたはそれ以上の脂肪族コハク酸またはその無水物と、アンモニアまたはその他の一級アミンとを反応させることによって生成された脂肪族置換のコハク酸イミドもまた適切である。
【0072】
シール膨張剤
潤滑油組成物にはさらに、0重量パーセントから20重量パーセントのシール膨張剤が
含まれることがある。適切なシール膨張剤には、ヒンダードポリオールエステルおよび油溶性のジエステルが含まれる。ジエステルには、C−C13のアルカノールのアジピン酸塩、アゼライン酸塩、およびセバシン酸塩(またはそれらの混合物)や、C−C13のアルカノールのフタル酸塩(またはそれらの混合物)が含まれる。二つあるいはそれ以上の異なった種類のエステルの混合物(例えばアジピン酸ジアルキルやアゼライン酸ジアルキルなど)を使用することもできる。これらの物質の例として、アジピン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸のn−オクチル、2−エチルヘキシル、イソデシル、およびトリデシルジエステルや、フタル酸のn−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、およびトリデシルジエステルがある。具体例としては、ジ−2−エチルヘキシルアジピン酸塩、アジピン酸ジイソオクチル、(2−エチルヘキシル)(イソデシル)アジピン酸塩、ジ−2−エチルヘキシルセバシン酸塩、およびアジピン酸ジイソデシルなどが挙げられる。
【0073】
添加剤成分は時として機能に関して説明されるが、その機能は同成分によってもたらされる他の機能のうちの一つであり、必須の限定的機能として解釈されるべきではない。
【0074】
希釈油
本明細書に記載の濃縮添加物には適切な希釈剤、一般的には適切な粘度を有する油性の希釈剤が含まれる。このような希釈剤は、天然源あるいは合成源から得られる。ミネラル(炭化水素系)オイルの中には、パラフィンベース、ナフテンベース、アスファルトベースおよび混合基油がある。一般的な合成基油には、中でもポリオレフィンオイル(特に水素化α−オレフィンオリゴマー)、アルキル化芳香族、ポリアルキレンオキシド、芳香族エーテル、およびカルボン酸エステル(特にジエステルオイル)などがある。天然油と合成油の混合物を使用することもできる。希釈剤は、天然および合成の基油の両方から選択された軽炭化水素基油であり得る。通常、希釈油の40℃での粘度は13センチストロークから35センチストロークの範囲内である。
【0075】
特定の態様について、ギアオイル調合物に流動点降下剤が添加されることがある。ギアオイル組成物には、[流動点降下剤が]存在する場合には、一般に5重量%以下の流動点降下剤が含まれる。
【0076】
本開示の組成物は、多機能の性能(すなわち自動車用および産業用の両方)を得るため、トップ処理される。
【0077】
上述のマルチグレードのギアオイルは、ファイナルドライブ、出力分割器または軽またはヘビーデューティー車両の軸、またはトラックまたは重機のマニュアルトランスミッション、また産業用のギアなどのような、自動車のギア用の用途に適している。
【0078】
以下の例示的な例において、従来のプロセスおよび本開示に記載のプロセスによって、ギアオイル添加剤パッケージを作った。このギアオイル添加剤パッケージには、以下の成分が示された量だけ含まれていた。
【0079】
【表2】

【0080】
例2
この例では、上述の成分の混合の順番と各成分の量を表2に示す。この例は、潤滑剤調合物中で使用される濃縮添加物を作る従来の方法を表している。
【0081】
【表3】

【0082】
例3
以下の例では、上述の成分の混合の順番と各成分の量を表3に示す。この例は、本開示の例示的実施例を表すが、本開示に限定することを意図するものではない。
【0083】
【表4】

【0084】
表2では、硫化イソブチレンは、添加剤パッケージの調製の一番目と六番目の段階で添加された。表3では、硫化イソブチレン(SIB)は、添加剤パッケージの混合プロセスの最終段階で添加された。表2および表3で調製された各々の添加剤パッケージを、ポリアルファオレフィンベースのギアオイルおよびグループIIの基油と組み合わせ、約4重量パーセントの添加剤パッケージを含んだ潤滑油組成物が得られた。ポリアルファオレフィンベースのギアオイルのベースNTUは0.3、またグループIIの基油のベースNTUは2であった。添加剤パッケージから作られた各潤滑油組成物の濁度を以下の表に示す。
【0085】
【表5】

【0086】
上記の表に示されるように、表3(サンプル番号1と比較したサンプル番号3およびサンプル番号4)の手順で調合された添加剤パッケージを含んで作られた潤滑剤調合物の濁度およびくもりには、思いがけない劇的な減少が見られる。このとき硫化イソブチレンは、添加剤パッケージの生成プロセスの最終段階で添加されている。潤滑剤が少なくとも一つの実質的に無極性の基油で調合されている際に、潤滑剤または添加剤パッケージの酸性および塩基性あるいはアミン成分を、硫化極圧添加剤をパッケージまたは潤滑剤に添加する以前の任意のステップで組み合わせることによっても、同様の結果が得られる。従って、硫化極圧添加剤を添加剤または潤滑剤を作る最終段階で添加することに、重大な意味はない。
【0087】
さらに、サンプル番号1と比較したサンプル番号2およびサンプル番号3、またサンプル番号5と比較したサンプル番号6およびサンプル番号8によって示されるように、粘度の低い(可溶性の)SIBを使用することによって、PAOあるいはグループIIの基油の濁度が著しく減少される。この結果により、サンプル番号7およびサンプル番号8によって示されるように、表3の手順を使用した場合、PAOのようなより無極性の基油中よりもグループIIの基油中において、調合に使用される特定のSIB重要性が低いことが示されている。従って、粘度の低いSIBを組み合わせること、および/または前もって組み合わされた酸性および塩基性あるいはアミン成分中にSIBを添加することは、グループII、グループIII、およびグループIVの基油のような、しかしこれらに限定はされない、実質的に無極性の基油を含んだ調合物の濁度の減少に特に有用である。
【0088】
本明細書の全体にわたる数々の箇所で多くの米国特許が参照されている。このような引用文献はすべて、当明細書で完全に説明されたものとして、この開示中に完全に明確に含まれている。
【0089】
上述の実施例は、その実行において、かなり変更される可能性がある。従って当実施例は、上記に説明された特定の例証に限定されることを意図したものではない。むしろ上述の実施例は、法律上利用可能な対応範囲も含んで、添付の請求項の精神および範囲内にある。
【0090】
当特許権所有者は、開示されたいかなる実施例をも公共に献ずる意図はなく、また開示された修正または変更はある程度文字通りには請求項の範囲内に含まれないかもしれないが、それらも均等論により当明細書の一部であると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に無極性の基油成分から成る潤滑剤組成物中の硫化極圧添加剤の可溶性を向上させる方法であって、有機酸とアミン成分のプレミックスを作るために、有機酸と潤滑剤組成物用の潤滑剤添加物パッケージのアミン成分とを予め混合することと、プレミックスと100℃での粘度が約5.5センチストローク未満である硫化極圧添加剤とを混合して潤滑剤添加物パッケージを生成することを含み、ここで、当該添加物パッケージを含んだ潤滑剤組成物の濁度特性は、プレミックスなしで有機酸およびアミン成分と硫化極圧添加剤とを混合することによって作られた潤滑剤組成物の濁度特性よりも低いことを特徴とする方法。
【請求項2】
硫化極圧添加剤が硫化オレフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硫化オレフィンが硫化イソブチレンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらに潤滑剤添加物パッケージと実質的に無極性の基油成分とを混合することを含んだ、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
実質的に無極性の基油成分がポリオレフィン基油を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
実質的に無極性の基油成分がポリオレフィン基油を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
実質的に無極性の基油成分に、グループIIの基油、グループIIIの基油、およびグループIVの基油から成るグループの中から選択された基油が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法によって作られたギア潤滑剤。
【請求項9】
可動部を潤滑するために、請求項8に記載のギア潤滑剤を含んだ可動部を有する自動車。
【請求項10】
極圧添加剤を含んだ潤滑剤を作る方法における、少なくとも有機酸と潤滑物用の添加物パッケージのアミン成分とを混合して混合物を作り、そして、続いて当該混合物と硫化極圧添加剤および基油とを混合して潤滑剤を作ることを含む改良方法であって、ここで当該硫化極圧添加剤は、潤滑剤中の極圧添加剤の可溶性を高めるような範囲内の極圧添加剤の粘度を与えるような方法によって作られることを特徴とする方法。
【請求項11】
硫化極圧添加剤が硫化オレフィンを含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
硫化オレフィンが硫化イソブチレンを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
硫化イソブチレンの100℃での粘度が、約5.5センチストローク未満である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
基油が実質的に無極性の基油成分を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項15】
実質的に無極性の基油成分がポリオレフィン基油を含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項10に記載のプロセスによって作られたギア潤滑剤。
【請求項17】
可動部を潤滑するための、請求項16に記載のギア潤滑剤を含んだ可動部を有する自動車。
【請求項18】
硫化極圧添加剤と実質的に無極性の基油成分を含んだ濁りのない潤滑剤組成物を生成する方法であって、
一塩化硫黄/イソブチレン付加化合物と水硫化ナトリウム水溶液とを、100℃での粘度が約5.5センチストローク未満である硫化イソブチレンを生成するのに適した条件下で反応させる段階;
有機酸と潤滑剤組成物のアミン成分とを予め混合して、添加物パッケージのプレミックスを作る段階;
続いて、添加物パッケージのプレミックスと、約50から約95重量パーセントの硫化イソブチレンを混合して添加物組成物を生成する段階;および
基油を添加物組成物で処理して、濁りのない潤滑剤組成物を生成する段階
を含む方法。
【請求項19】
実質的に無極性の基油成分がポリオレフィン基油を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
鉱油成分と請求項18に記載の方法によって作られた添加剤組成物を含むギア潤滑剤。
【請求項21】
可動部を潤滑するための、請求項20に記載のギア潤滑剤を含んだ可動部を有する自動車。
【請求項22】
濁度が低く実質的に無極性の、潤滑剤を含んだ基油の生成に役立つ特性を有する、硫化極圧添加剤を作る方法であって、
一塩化硫黄とオレフィンとを、硫黄/オレフィン付加化合物を生成するのに適した条件下で反応させる段階;
有機相内で、100℃で粘度が約5.5センチストローク未満である硫化極圧添加剤を生成するのに十分なだけの時間にわたって、硫黄/オレフィン付加化合物と硫黄源の水溶液とを混合、および反応させる段階;および
水相と硫化極圧添加剤を含む有機相とを分離する段階。
を含む方法。
【請求項23】
硫化極圧添加剤が硫化イソブチレンを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
硫化イソブチレンの100℃での粘度が約4.0センチストロークから約5.5センチストロークの範囲である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
硫化イソブチレンの硫黄含有量が、約40重量パーセントから約50パーセントの範囲である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
硫黄/オレフィン付加化合物と硫黄源の水溶液とを混合および反応させる段階が、約10分から約60分未満の範囲の時間にわたって行われる、請求項22に記載の方法。

【公開番号】特開2007−100095(P2007−100095A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−272123(P2006−272123)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】