説明

極性低密度エチレンコポリマーとポリ(ヒドロキシカルボン酸)との混合物

【課題】少なくとも一部が再生可能な資源から得られる樹脂であって、機械特性が優れ、追加の相溶化剤を用いないで得ることができ、LDPEよりガスバリア性、界面張力特性に優れた樹脂の提供。
【解決手段】少なくとも0.1重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、少なくとも50重量%の極性低密度ポリエチレン(pLDPE)とから成り、このpLDPEが0.5〜25重量%の一種または複数の極性ビニル含有コモノマーを含むことを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性低密度エチレンコポリマー(以下、LDPE)とポリ(ヒドロキシカルボン酸)との混合物に関するものである。
本発明は特にポリ(乳酸)を含む混合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間の廃棄物が環境に与えるインパクトに対する関心が高まっており、再生可能な資源から新しい生分解性(好ましくはさらにコンポスト化可能(堆肥化可能、compostable)なプラスチックを開発することが重要になってきている。
【0003】
この課題に対して特に重要な候補者の一つはポリ(ヒドロキシカルボン酸)、特にポリ(乳酸)(PLA)であり、これは比較的大量に市場で購入できる。この乳酸は植物、例えば、トウモロコシ、砂糖キビ、その他の糖またはデンプン生成植物から得られる。PLAは再生可能な資源から得られるだけでなく、産業的にコンポスト化が可能(compostable、堆肥化可能)である。これらの理由から従来は石油べースの熱可塑性プラスチックを用いていた用途でのPLAの使用が重要になってきている。
【0004】
しかし、PLA自体は従来のプラスチックと同様な有利な性質を有していない。特に、PLAは耐熱性が低く、脆く、可撓性が低く、加工性が悪いという問題がある。一方、ポリオレフィン、例えばポリエチレンはそれよりも優れた機械特性および流動特性を有している。従って、PLAと低密度ポリエチレン(LDPE)とを混合することによって、両者の性質を併せ持った少なくとも部分的に再生可能資源から得られた原料から樹脂を作る試みが行われてきたが、許容可能な機械的性質を有する樹脂にはなっていない。また、従来は相溶化剤を使用しているが、そのために追加の工業的ステップを必要とし、押出成形時に特定の条件が必要になる。さらに、相溶化剤の添加はコストを上げ、最終製品の所望特性が変化する。すなわち、相溶化剤と副生成物との両方によって最終製品、例えばフィルム、繊維または成形品の所望特性が変化する。
【0005】
ポリオレフィンとPLAとを混合するためにこれまでにも種々の方法が試みられてきた。特許文献1(欧州特許第1777263A号公報)には相溶化剤を使用してPLAとポリオレフィンとを混合する方法が記載されている。この相溶化剤はカルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基およびオキサゾリン基の中からから選択される少なくとも一つの官能基を含む水素化されたジエンベースのポリマーである。ポリオレフィンはエチレンおよび/または少なくとも一種のα−オレフィンを高圧法または低圧法を使用して重合させて得られるポリマーである。α−オレフィンの例としては3〜12の炭素原子を有するαオレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセンが挙げられる。
【0006】
特許文献2(米国特許公開第2005/0192405A号明細書)にはPLAとポリオレフィンとのポリマーアロイが記載されている。これら2つの成分はアルキルアクリルエステルおよび/またはポリビニールエステルブロック共重合体、さらにはポリアルキルアクリレート、ポリオレフィンおよび/またはポリビニールエステルおよびポリオレフィンブロック共重合体を混合することで相溶性化されている。この特許に記載のポリオレフィンはラジカル重合で得たポリエチレンまたはチーグラー‐ナッタ触媒を用いたカチオン付加重合で得たポリエチレンまたはポリプロピレンである。
【0007】
これらの従来法は、PLAとポリオレフィンとの均一混合物を得るためには相溶化剤の使用が必須条件であることを示している。
【0008】
特許文献3(日本特許公開第2007−063435A号公報)には酢酸ビニール(EVA)コモノマーを含むポリエチレンとPLAとのブレンディングが開示されている。しかし、酢酸ビニールモノマーの含有量は少なくとも30重量%必要である。
【0009】
特許文献4(米国特許第US5,726,220号明細書)にはPLAとEVAとの混合物が開示されており、EVAは酢酸ビニールコモノマーを少なくとも30重量%含む。
【0010】
従来の上記混合物の問題点はポリエチレンの酢酸ビニールコモノマーの含有量が高い点にある。すなわち、ポリエチレンの有利な性質が失なわれる。事実、酢酸ビニールの含有量が増加すると、EVAはより弾性になり、結晶性が小さくなる。また、透明性は増加するが、ガス、湿気およびオイルに対する透過性が増加する。EVAを25重量%以下、特に20重量%以下含むPLAと酢酸ビニールコモノマーとの均一混合物が得られるとすれば、それは非常に強靱(タフ)で、弾力のある樹脂組成物となるはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1,777,263A号公報
【特許文献2】米国特許公開第2005/0192405A号明細書
【特許文献3】日本特許公開第2007−063435A号公報
【特許文献4】米国特許第5,726,220号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、公知のポリエチレンと再生可能な資源から得られる樹脂との混合物よりも機械特性が優れている、少なくとも一部が再生可能な資源から得られる樹脂を提供することにある。
本発明の他の目的は、pLDPE(例えばEVA)樹脂よりも高いスチフネスを有する、少なくとも一部が再生可能な資源から得られる樹脂を提供することにある。
本発明の他の目的は、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)樹脂よりも機械特性に優れた、少なくとも一部が再生可能な資源から得られる樹脂を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、追加の相溶化剤を用いないで得ることができる、LDPEとポリ(ヒドロキシカルボン酸)、例えばPLAとの均一な混合物を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、LDPEよりガスバリヤ性に優れた樹脂を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、LDPEより界面張力特性に優れた樹脂を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ブロー成形、押出成形、注型および/または共押出成形を用いてフィルムを製造することができる、少なくとも一部が再生可能な資源から得られる樹脂を提供することにある。
上記目的の少なくとも一つは特許請求の範囲に記載の本発明によって実現される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、少なくとも0.1重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、少なくとも50重量%の極性低密度ポリエチレン(pLDPE)とから成り、このpLDPEが0.5〜25重量%の一種または複数の極性ビニル含有コモノマーを含むことを特徴とする樹脂組成物によって上記の課題を解決する。
【0016】
上記コモノマーはビニルエステル、アルキルおよびシクロアルキルアクリレート、アルキルおよびシクロアルキルメタクリレート、アルキルおよびシクロアルキルエチルアクリレートおよび不飽和ジカルボン酸および不飽和ジカルボン酸の誘導体の少なくとも一つから選択される。
【0017】
本発明はさらに、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)をpLDPEと混合する段階を含むことを特徴とする上記組成物の製造方法にある。
【0018】
本発明はさらに、pLDPEベースのブレンドでのポリ(ヒドロキシカルボン酸)の使用、特に、フィルム、熱成形、発泡用途、熱シール用途、ブロー成形、射出および/または回転延伸成形、押出ブロー成形、回転成形、他の樹脂とのブレンド(混合物)での使用にある。
【0019】
上記ブレンドは、印刷適性を改良するための界面張力改良剤として、pLDPEのガスバリヤ性を改良するため、また、pLDPEフィルムの水透過性(water breathability)を改良するためにも、特に、pLDPEがエチレン−酢酸ビニール(EVA)コポリマーである場合、使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】pLDPEとPLAとから成る本発明フィルム表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真。
【図2】LDPEとPLAとから成るフィルム表面のSEM写真。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)と極性低密度エチレンコポリマーpLDPEとの樹脂ブレンドから成る組成物に関するものである。
驚くことに、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)と極性コモノマーを含む低密度ポリエチレンとの混合物は十分に均質で、予測を超えた許容可能な特性を示す。この混合物は極性コモノマーの含有量が25重量%以下であるLDPEを使用することによって得ることが可能である。
【0022】
上記のポリ(ヒドロキシカルボン酸)は、モノマーが再生可能な資源から誘導され且つ少なくとも一つのヒドロキシル基と少なくとも一つのカルボキシル基とを有する任意のポリマーにすることができる。上記ヒドロキシカルボン酸モノマーは再生可能な資源、例えばトウモロコシ、砂糖大根、砂糖キビ、その他の糖−または澱粉−生産植物から得るのが好ましい。本発明で使用するポリ(ヒドロキシカルボン酸)は再生可能な資源から得るのが好ましい。「ポリ(ヒドロキシカルボン酸)」という用語はホモ−およびコポリマーと、一種以上のポリマー混合物を意味する。
【0023】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は下記の式(I)で表すことができる:
【化1】

【0024】
(ここで、
9は水素または1〜12個の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖のアルキル基であり、
10は任意成分で、1〜12個の炭素原子を有する分岐鎖または環式または直鎖のアルキレン基であり、
「r」は反復単位Rの数を表し、30〜15000の任意の整数である)
【0025】
上記モノマーの反復単位は、脂肪族でかつヒドロキシル残基とカルボキシル・残基とを有する限り、特に制限されない。使用可能なモノマーの例としては乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシブチル酸、4−ヒドロキシブチル酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸が挙げられ、それぞれ例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチル酸)、ポリ(4−ヒドロキシブチル酸)、ポリ(4−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(5−ヒドロキシ吉草酸)およびポリ(6−ヒドロキシカプロン酸)が作られる。
【0026】
また、上記モノマーの反復単位は脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環式モノマーまたは環式ダイマーから得ることもできる。これらの例としてはラクチド、グリコリド、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0027】
ヒドロキシカルボン酸単位中の不斉炭素原子では、D体、L体および両方の混合物が使用できる。また、ラセミ混合物を使うこともできる。
【0028】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は必要に応じて一種または複数のコモノマーをさらに含むことができる。このコモノマーは上記の式(I)で定義されるヒドロキシカルボン酸から成る第2の異なるヒドロキシカルボン酸にすることができる。各ヒドロキシカルボン酸の重量百分率は特に制限されない。
【0029】
上記コモノマーは二塩基カルボキシル酸および二価アルコールから成ることもできる。これらは反応して、ヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸およびそのポリマーと反応可能な、式(II)に示す遊離ヒドロキシル末端基および遊離カルボキシル酸末端基を有する脂肪族エステル、オリゴエステルまたはポリエステルを形成する:
【0030】
【化2】

【0031】
(ここで、
11およびR12は1〜12個の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖のアルキレン基で、互いに同一でも、異なっていてもよく、
「t」は反復単位Tの数を表し、少なくとも1である任意の整数である)
【0032】
このコポリマーも本発明の範囲に含まれる。反復単位「r」(式I)および「t」(公式II)の数の合計は30〜15000の任意の整数である。各モノマーすなわちヒドロキシカルボン酸モノマーおよび式(II)の脂肪族エステル、オリゴエステルまたはポリエステルコモノマーの重量百分率は特に制限されない。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は少なくとも50重量%のカルボキン酸モノマーと、最大で50重量%の脂肪族エステル、オリゴエステルまたはポリエステルコモノマーとを含むのが好ましい。
【0033】
式(II)に示す脂肪族ポリエステル単位で使用可能な二価アルコールおよび二塩基酸は特に制限されない。使用可能な二価アルコールの例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、イソソルビド、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
脂肪族二塩基酸には琥珀酸、蓚酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3−ジメチルペンタン二酸、環式ジカルボン酸、例えばシクロヘキサンジカルボン酸およびこれらの混合物が含まれる。また、ヒドロキシカルボン酸コポリマー中の二塩基酸残基は対応するジアシルクロライドまたは脂肪族二塩基酸のジエステルから誘導することもできる。
【0035】
二価アルコールまたは二塩基酸中の不斉炭素原子はD体、L体、両者の混合物が使用できる。これらのラセミ混合物を使用することもできる。
【0036】
コポリマーは交互コポリマー、周期コポリマー、ランダムコポリマー、統計コポリマーまたはブロックコポリマーにすることができる。
【0037】
重合はヒドロキシカルボン酸を重合する任意の公知方法に従って実行できる。ヒドロキシカルボン酸およびその環式二量体の重合は重縮合または開環重合によって実行できる。
【0038】
ヒドロキシカルボン酸の共重合は公知の任意の方法に従って実行することができる。コモノマーと重合する前に、ヒドロキシカルボン酸を別途重合するか、両者を同時に重合することができる。
【0039】
一般に、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)はホモポリマーまたはコポリマー(上記のように第2の異なるヒドロキシカルボン酸との共重合または脂肪族エステルまたはポリエステルとの共重合)にすることができ、また、分枝剤を含んでいてもよい。このポリ(ヒドロキシカルボン酸)は分岐構造、星型構造または三次元網状構造を有することもできる。少なくとも3つのヒドロキシル基および/または少なくとも3つのカルボキシル基を有する限り、分枝剤は特に制限されない。分枝剤は重合中に加えることができる。その例にはポリマーが含まれ、例えば多糖、特にセルロース、澱粉、アミロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサンおよびこれらの誘導体が挙げられる。他の例は脂肪族多価アルコールで、例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、キシリット、イノシトール等手ある。分岐剤のさらに他の例には脂肪族多塩基酸である。この酸にはシクロヘキサンヘキサカルボキシル酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、1,3,5−ペンタン−トリカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボキシル酸等が含まれる。
【0040】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の全分子量は最終樹脂組成物の所望機械特性および熱特性に依存するが、5,000〜1,000,000グラム/モル、好ましくは10,000〜500,000グラム/モル、より好ましくは35,000〜200,000グラム/モルであるのが好ましい。ポリマーの最も好ましい全分子量は50,000〜150,000グラム/モルである。
【0041】
分子量分布は一般にモノモダル(monomodal、単峰)である。しかし、重量平均分子量および/またはタイプが異なる2種以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)の混合物の場合、分子量分布はポリモダル(polymodal、多峰)、例えばビモダル(双峰)またはトリモダル(三峰)でもよい。
【0042】
入手の容易性、透明性、一次資源の再生可能性およびコンポスト化可能性(compostability)の見地から、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)はポリ(乳酸)(PLA)が好ましい。このポリ(乳酸)は乳酸またはラクチドから直接得られるホモポリマーであるのが好ましい。
【0043】
すなわち、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は再生可能な資源から得られ、さらにコンポスト化可能であるものを選択する。例えば、PLAは再生可能資源から得られ、工業的条件下でコンポスト化可能である。
【0044】
ポリエチレン
「低密度ポリエチレン」(LDPE)という用語は高圧下すなわち400〜4500バールの圧力かつ120〜330℃の温度でエチレンを重合して得られる密度が0.915g/cm3〜0.935g/cm3のポリエチレンと定義される。この重合は一般に開始剤、例えば過酸化水素を使用して実行される。長鎖および短鎖の分岐が多量に存在するためLDPEの密度は低い。これは独特な流れ特性を有し、その結果、加工が容易にできる。しかし、LDPEの結晶構造は蜜でなく、分子間および分子内の力は弱い。そのため低圧触媒重合した直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)よりもLDPEの引張強度、環境応力亀裂耐久性(ESCR)および引裂強度のような特性は低い。しかし、これらの特性はポリ(ヒドロキシカルボン酸)より高い
【0045】
本発明で使用する低密度ポリエチレンすなわちpLDPEを得るために、エチレンを下記の中から選択される一種または複数のコモノマーと一緒に高圧重合する:
(1)アクリレート、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、n−アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸tert-ブチル、
(2)メタアクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、
(3)アクリル酸エチル、アクリル酸メチルエチル、アクリル酸ジエチル、アクリル酸n−ブチルエチル、アクリル酸tert-ブチルエチル、
(4)ビニルエステル、特に酢酸ビニール、
(5)不飽和ジカルボン酸、特にマイレン酸、
(6)不飽和ジカルボン酸誘導体、特に無水マレイン酸、マイレン酸アルキルイミド、例えばN−メチルマレイミド。
【0046】
本発明ではpLDPEは0.5〜25重量%の重合可能な炭素−炭素二重結合を有する極性コモノマーを含む。
【0047】
これらのコモノマーはLDPEにわずかに極性を与える。従って、本発明のpLDPEはLDPEより極性のあるポリマーである。驚くことに、極性コモノマーの重量百分率を25重量%以下に低くしても、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とpLDPEの2つの成分は容易に混合し、均一な混合物になる。すなわち、相溶化剤は必要ない。最も好ましくはpLDPEがエチレン−酢酸ビニール(EVA)ポリマーで、コモノマーは酢酸ビニールである。
【0048】
pLDPEのコモノマー含有量はエチレンコポリマーの25重量%を超えないのが好ましく、より好ましくは20重量%を超えない。コモノマーの含有量はエチレンコポリマーの少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%である。コモノマー含有量は極性エチレン・コポリマーの少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%である。
【0049】
本発明の混合物の一つまたは複数の成分に添加剤を入れることができる。
この添加剤はブレンド中に添加でき、および/または、混合物から所望の成形物、例えばフィルムを成形する間に入れることができる。添加剤は当業者に公知であり、例えば抗酸化剤(例えばチバ(Ciba)社のイルガノックス(IRGANOX、登録商標)1010またはイルガノックス(IRGANOX、登録商標)1076のようなヒンダードフェノール樹脂、亜リン酸エステル(例えばチバ(Ciba)社のイルガホス(IRGAFOS)168)、抗クリング剤、粘着付与剤、例えばポリブテン誘導体、テルペン樹脂、脂肪族および芳香族炭化水素樹脂、アルカリ金属およびグリセリン・ステアラートおよび水素化ロジン、紫外線安定剤、熱安定剤、抗ブロッキング剤、離型剤、帯電防止剤、ピグメント、着色剤、カーボンブラック、染料、ワックス、シリカ、充填剤、タルク、抗酸化剤、過酸化水素、グラフト剤、滑剤、清澄剤、核剤等を含むことができる。
【0050】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とポリエチレンとのブレンディング
本発明のポリ(ヒドロキシカルボン酸)とpLDPEとのブレンディングは任意の物理的ブレンディング方法およびその組合せによって実行できる。例えば、乾式混合、湿式混合および/または溶融混合で行うことができる。ブレンディング条件はブレンディング方法と使用するpLDPEとに依存する。pLDPEおよびポリ(ヒドロキシカルボン酸)は使用する方法に従って任意の適当な形、例えばフラッフ、粉末、粒状、ペレット、溶液、スラリーおよび/またはエマルションにすることができる。
【0051】
ポリマーを乾式混合する場合、乾式混合条件は室温からポリマーの溶融温度までの温度にすることができる。各成分を溶融混合前に混合することができる。溶融加工方法は熱可塑性工業で使用されている通常の機器を用いて迅速、簡単に実施できる。各成分を例えばバンバリー(Banbury)またはブラベンダー(Brabender)ミキサーでバッチ混合するか、二軸スクリュー押出機のような押出装置で連続的に混合できる。ブレンダでポリマーを融混合する間の温度は一般に使用するポリマーの最も高い融点とその融点より約150℃上の温度との間の範囲、好ましくは融点とその融点より100℃高い温度との間の温度にする。溶融混合に必要な時間は使用するブレンディング方法に依存し、大きく変化できる。必要な時間は各成分を混合するのに十分な時間である。一般に、各ポリマーを約10秒から約10分混合し、好ましくは約5分以下、さらに好ましくは約2分以下混合する。
【0052】
各成分を湿式混合することもできる。その場合には、成分の少なくとも一つを溶液またはスラリーの形にする。溶液混合方法を使用する場合、ブレンディング温度は一般に使用する溶液の曇り点より25℃〜50℃上である。混合後、抽剤または希釈剤を蒸発させて、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とpLDPEとの均一混合物を残す。
【0053】
本発明の実施例では、本発明の樹脂組成物は少なくとも0.1重量%かつ50重量%以下のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、少なくとも50重量%、好ましくは50重量%を超える量のpLDPEとから成る。本発明の樹脂組成物は0.1〜49.9重量%、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む。本発明の樹脂組成物は50〜99.9重量%、好ましくは70〜99.9重量%、より好ましくは80〜99.9重量%、より好ましくは85〜99.9重量%、さらに好ましくは90〜99.9重量%のpLDPEを含む。
【0054】
本発明の樹脂組成物は本質的にpLDPEとポリ(ヒドロキシカルボン酸)とから成る、すなわち、少なくとも0.1重量%でかつ50重量%以下のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、50〜99.9重量%のpLDPEとから成る。
【0055】
本発明の好ましい実施例の組成物は、pLDPEとポリ(ヒドロキシカルボン酸とを相溶化させるための相溶化剤を必要としない。すなわち、相溶化剤なしにすることができる。
【0056】
また、本発明の樹脂組成物は以下で説明する用途は同じ用途で他の樹脂組成物と混合して使用することができる。
【0057】
コンポスト化はEN規格13432:2000で定義される。包装材料が生体分解性であるためには下記のライフ・サイクル(寿命)を有しなければならない:
(1)原料が生産ラインを離れた瞬間である時間t0から開始する、貯槽および/または使用の時間、
(2)例えばエステル結合が加水分解されて化学的に崩壊し始める時間から開始する、ポリマーの壊変時間、
(3)部分的に加水分解されたポリマーがバクテリアおよび微生物の作用で生物分解されて、生物劣化する時間、
【0058】
「分解可能」、「生体分解性」および「コンポスト化可能」という用語はしばしば同じ意味で使用されるが、これらを区別することが重要である。さらに、「コンポスト化可能なプラスチック」には「利用可能なプログラムの一部として堆肥化合物現場で、既存のコンポスト化可能な材料、例えばセルロースに匹敵する速度で生物分解できる、プラスチックが視覚的に区別できなくなり、二酸化炭素、水、無機化合物およびバイオマスまで分解され、有毒残留物を残さない」(ASTMの定義)ことが必要である。一方、「分解可能なプラスチック」は単に化学的に変化するだけのもので、微生物によって生物分解することは条件でない。従って、分解可能なプラスチックが必ずしも生体分解性であるわけではなく、生物分解性プラスチックが必ずしもコンポスト化可能であるというわけでもない(すなわち、分解が遅く、および/または、有毒残留物を残す)。
【0059】
特に、コンポスト化可能性に関するEN規格13432:2000では下記の主たる特徴が定義されている:
(1)原料を篩分けして生物分解された寸法を求めて、分解度を決定する。コンポスト化可能とみなされるためには2mm以上の大きさのものが原料の10重量%以下でなければならない。
(2)プラスチックを一定時間、生物分解して生じる二酸化炭素の量を測定することによって生物分解性を決定する。コンポスト化可能とみなされるためには90日以内に90%が生物分解されなければならない。
(3)重金属濃度が基準の限界値以下か否かと、コンポストを異なる濃度で土と混合し、比較コンポストと比較する植物成長テストを行って生態毒性を決定する。
【0060】
樹脂組成物の用途
本発明の樹脂組成物は、低密度エチレンコポリマーが存在し、原料の一部が再生可能であり、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)によって樹脂組成物がコンポスト化可能手あることによって機械特性が改良される。その結果、本発明樹脂組成物は下記で説明するようにフィルムおよび成形品を含めた多種多様な用途に適している。
【0061】
本発明の樹脂組成物はフィルム、例えば注型、ブロー成形、一軸配向および2軸配向フィルムの成形に特に適している。驚くことに、本発明のポリマーブレンドから成形されたフィルムはLDPEフィルムよりも引張強度が増加するということが分かっている。本発明の樹脂組成物から得られるフィルムは、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、例えばPLAの存在によって界面張力が高くなり、低密度エチレンコポリマーのみから成るフィルムと比較して印刷適性が改良される。さらに、本発明フィルムはLDPEフィルムと比較して加熱/高振動溶着性が向上する。また、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の存在によって、フィルムのスチフネスが増加し、LDPEフィルムと比較して水浸透性(water breathability)が向上する。本発明フィルムは単なるPLAのみから成るフィルムと比較して大気、特に酸素、二酸化炭素および窒素に対するバリヤ特性が改良する。本発明のポリマーブレンドは単層(単層フィルム)または多層(多層フィルム)のキュストまたはブローフィルムに成形できる。多層フィルムで使用する場合、本発明のポリマーブレンドは要求に応じてフィルムの任意の層で、または、フィルムの複数の層で使うことができる。本発明のポリマーブレンドを使用してフィルムの複数の層を形成する場合、各層を個別にフォーミュレート(配合)することができる。すなわち、各層の化学組成、密度、メルトインデックス、厚さ、その他をフィルムの所望性質に応じて同一または個別に変えることができる。他の層は100%ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、例えばPLA、100%ポリエチレン、高圧重合低密度ポリエチレン(LDPE)、LLDPE、MDPEまたはHDPEで作られた樹脂で作ることができる。さらに、多層フィルムの各層の粘度が適当にマッチしていなければならないということは当業者には理解できよう。
【0062】
フィルムの各層の厚さおよびフィルム全体の厚さは特に制限されず、フィルムの所望性質に従って決定できる。典型的なフィルム層の厚さは約1〜1000マイクロメートル、より一般的には5〜100マイクロメートルであり、フィルム全体の厚さは5〜200マイクロメートル、より一般的には5〜100マイクロメートルである。
【0063】
本発明は、本発明のポリマーブレンドで作られる単層(単一層)のフィルムを提供する。本発明の他の実施例では、このフィルムの厚さは10〜150マイクロメートルである。
【0064】
本発明フィルムは周知の押出し成形方法または共押出成形方法によって成形できる。一般に用いられているチルロールまたは冷却ローラーが適している。例えば、本発明組成物を溶融状態でフラットダイから押出し、冷却してフィルムにする。あるいは、本発明組成物を環形ダイから溶融状態で管状ダイから押出し、ブローアップし、冷却してフィルムにし、軸方向にスリットし、平らなフィルムにすることができる。
【0065】
特殊な例としては、以下のような商用のパイロットスケールのキャストフィルム製造機を使用してキャストフィルムを製造することもできる。すなわち、本発明のポリマー混合物のペレットを約220℃〜約250℃の温度に溶融する。この温度は各樹脂の溶融粘度がマッチするように選択する。得られた溶融流を所望幅を有する単一マニホルドフィルム押出ダイから押出す。ダイのギャップは一般に250〜750マイクロメートル、好ましくは約600マイクロメートルである。その後、原料を最終ゲージ厚さにする。ダイの開口を出た溶融物を35℃以下、好ましくは約32℃に維持された第1チルローラーにピンチするために真空ボックスまたはエアーナイフを使用することができる。
【0066】
他の例としてのブローフィルムを下記のように製造できる。すなわち、CoIMnブローフィルム成形ラインを使用して、ダイギャップが1.0〜2.0mm、好ましくは1.2mmで、ダイ直径が1〜100mm、好ましくは50mmで、長さ/直径比が25であるダイを使用してフィルムをすることができる。ブロー比(BUR)は1.0〜10.0、好ましくは1.0〜5.0、最も好ましくは1.3〜3.5にすることができる。次いで、ダイを介してフィルムを押出し、冷却する。例えばフィルム表面上に空気を吹分けて冷却する。工業的プロセスではダイからのフィルムを円柱形フィルムにブローし、冷却し、つぶし、必要におうじて補助処理プロセスを行う。例えば、所望方向への延伸、スリッティング、シーリングまたは印刷。最終フィルムはロールに巻き取って、最終加工へ送ることができる。
【0067】
多層フィルムも公知の方法で作ることができる。すなわち、各層を形成する原料を共押出しフィードブロックおよびダイア組立体を用いて共押出しして、互いに溶着した少なくとも2層を有するフィルムを作る。この共押出しはキャストフィルムまたはブローフィルムプロセスに適している。また、重合ポリマーがダイを出た時に、基材の原料を溶融ポリマーと接触させる押出しコーティングで多層フィルムを作ることもできる。
【0068】
本発明のポリマーブレンドから作られたフィルムには多くの用途がある。このフィルムは周知の方法、例えば切断法、スリッティング法および/または巻戻し法を用いて他の形、例えばテープにすることができる。ストレッチフィルム、シーリングフィルムまたは延伸フィルムとして有用である。
【0069】
混合物で作られたフィルムの界面張力はポリエチレン・フィルムに比べて改良されるが、本発明の樹脂組成物で作られたフィルムの界面張力は公知手段、例えばコロナ放電、各種化学処理、火炎処理塔を行うことでさらに改善することができる。
【0070】
本発明フィルムは、クリング(cling)フィルム、ストレッチフィルム、収縮フィルム、買い物サック、バッグ、ラミネーションフィルム、ライナー、おしめフィルム、キャンディ包装材または当業者に明らかなその他の用途で使用できるということは明らかである。本発明フィルムは包装材料、例えば各種製品をバウンドルする用途、可撓性食品の包装、冷凍食品の包装、バッグ、例えばゴミ袋、ビンライナー、工業的ライナー、買い物サック、バッグ、表面保護コーティングの用途(延伸有り無し)、例えば製造中または運送中の表面の一時的保護で使用できる。
【0071】
本発明組成物はさらに、一般的な射出成形、押出成形、押出ブロー成形、延伸ブロー成形、射出延伸ブロー成形の用途に適しているが、さらに、熱成形、発泡成形および回転成形の用途にも適している。本発明のプロセスに従って作られた物品は単層または多層にすることができ、その少なくとも一層は本発明の樹脂組成から成る。
以下、本発明の実施例を示すが,本発明が下記実施例に限定さるものではない。
【実施例】
【0072】
20重量%のPLAテラマック(Terramac、登録商標)6201と、80重量%の互いに異なるポリエチレンとから成る2つの混合物を2成分を乾式混合した後、180℃の温度で約30分間押出した。混合物「A」は80重量%のエチレン−酢酸ビニール・コポリマー(EVA)を用い作り、混合物「B」はコモノマーを含まない80重量%の高圧重合LDPEで作った。各混合物の各成分の性質は[表1]に示した。
【0073】
【表1】

【0074】
ポリエチレンおよびPLAの密度はASTM規格D1505で測定した。ポリエチレンの溶融指数MI2はASTM規格D1238(すなわち2.16kgの荷重下、190℃)で測定した。PLAは、233ppm水の存在下および1000ppm水の存在下で実行した以外は、同じ基準で測定した。
PLAおよびポリエチレンのMWおよびMWDはGPCを使用して求めた。PLAはクロロホルムに溶かし、25℃で測定した。
ポリエチレンのCH3およびC49の短鎖分岐指数はNMRを使用して求めた。
メタロセン−触媒を用いたポリエチレンのヘキセンの含有モノマー重量百分率はNMRを使用して決定した。
【0075】
各混合物からコリン(Collin)のブローフィルム押出機を用いて、12kg/hの流量、比率25%−50%−25%、長さ/直径比=25、ダイ直径=50mm、ダイギャップ=1.2mm、ブローレシオ(BUR)=1.3〜3.5で、本発明のフィルム「A」を作った。
同じ手順で、EVA、LDPEおよびPLAだけから成るフィルム「B」、「C」、「D」および「E」をそれぞれ比較例として作った。
全てのフィルムの厚さは100マイクロメートルにした。フィルム「A」、「B」、「C」、「D」および「E」の測定特性は[表2]に示した。
【0076】
摩擦係数μsおよびμkはASTM規格D1494−02で測定した。
エルメンドルフ(Elmendorf)引裂強度は縦方向(MD)および横方向(TD)で測定した。これらの測定はASTM規格D1922で測定した。
ダート衝撃強度はASTM規格D1709で測定した。
縦方向(MD)および横方向(TD)の降伏引張強度はASTM規格D882−02で測定した。
グロスはASTM規格D2457で45度の角度で測定した。ヘーズ(Haze)はISO規格14782に従って測定した。
【0077】
【表2】

【0078】
PLAとポリエチレンとの混合物は相溶性があり、コポリマーEVAはホモポリマーLDPEよりPLAと相溶性があるきいうことが分かる。[図1]および[図2]は混合物の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示し、[図1]および[図2]はフィルム「A」および「B」のそれぞれの表面のSEM像である。これらの図はEVAとPLAとの混合物からできたフィルムはLDPE含有対応物より均一であることを示している。
【0079】
[表2]から、EVAはPLAと混合した場合、ダート衝撃強度改良剤として使うことができるということを示してきる。すなわち、フィルム「A」はLDPEを含むフィルム「B」より高い衝撃強度を示す。
【0080】
引張強度は100%EVAフィルム「C」と比較してフィルム「A」では増加している。
EVAを含む混合物「A」は機械的強度、特に、LDPEを含む混合物「B」と比較して、エルメンドルフ(Elmendorf)縦方向引裂強度が改良される。
混合物「A」は混合物「B」と比較してヘーズ%値が低い。これは、PLAを含むLDPEの相容性よりEVAとPLAとの相容性が高いことを示している。
フィルム「A」はASTM規格D1434で測定した酸素および二酸化炭素に対するガスバリヤ性がフィルム「B」より良い。
フィルム「A」は界面張力が大きいので、フィルム「A」への印刷はフィルム「B」への印刷より容易であることが分かる。
【0081】
PLAを含むポリエチレンフィルムの樹脂組成物で使用する利点は多数ある。先ず第1に、樹脂組成物の一部が迅速に再生可能な資源、PLAに置換されていることである。すなわち、フィルムを作るのに必要な石油資源から誘導されるエチレンの量は次第に減少する。また、樹脂組成物中にPLAが存在することで最終樹脂組成物が部分的に生分解性となり、さらに重要なことはコンポスト化可能になる。
【0082】
樹脂ブレンド中のPLAがより速くコンポスト化されるので、残ったEVAの露出表面積が大きくなる。その結果、このEVAは単にEVAのみからできた製品より速く崩壊する。さらに、EVAとPLAとをブレンディングすることでPLA単独から成るフィルムより機械特性に優れたフィルムにすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.1重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、少なくとも50重量%の極性低密度ポリエチレン(pLDPE)とから成り、このpLDPEが0.5〜25重量%の一種または複数の極性ビニル含有コモノマーを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
pLDPEとポリ(ヒドロキシカルボン酸)とを相溶化するための相溶化剤を含まない請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
pLDPEが上記コモノマーを20重量%以下しか含まない請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
pLDPEコモノマーが下記(1)〜(6)の少なくとも一つから選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物:
(1)アクリル酸エステル、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、n−アクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルアクリレート、tert−アクリル酸ブチル、
(2)メタクリル酸エステル、例えばメタアクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、n−メタクリル酸ブチル、tert-メタクリル酸ブチル、
(3)アクリル酸エチル、例えばエチルアクリル酸、メチルエチルアクリル酸、ジエチルアクリル酸、n−ブチルエチルアクリル酸、tert-ブチルエチルアクリル酸、
(4)ビニルエステル、特に好ましくは酢酸ビニール、
(5)不飽和ジカルボン酸誘導体、例えばマイレン酸、
(6)不飽和ジカルボン酸誘導体、例えば無水マレイン酸、アルキルイミドマイレン酸、例えばN−メチルマレイミド。
【請求項5】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)がポリ(乳酸)である請求項1化合物のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ポリ(乳酸)がコポリマーで、そのコモノマーが下記の少なくとも一つから選択される請求項5に記載の組成物:
(1)乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、例えばグリコール酸、3−ヒドロキシブチル酸、4−ヒドロキシブチル酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、
(2)二価アルコールと二塩基カルボキシル酸との脂肪族ポリエステル。
【請求項7】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)をpLDPEと混合する段階を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物のフィルム、熱成形、発泡用途、熱シール用途、ブロー成形、射出および/または回転延伸成形、押出ブロー成形、回転成形、他の樹脂とのブレンドでの使用。
【請求項9】
印刷適性を改良するための界面張力改良剤としての、pLDPEフィルムでのポリ(ヒドロキシカルボン酸)の使用。
【請求項10】
pLDPEのガスバリヤ性を改良するためのポリ(ヒドロキシカルボン酸)の使用。
【請求項11】
pLDPEの水透過性を改良するためのポリ(ヒドロキシカルボン酸)の使用。
【請求項12】
pLDPEがエチレン−酢酸ビニール(EVA)コポリマーである請求項9〜11のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−67812(P2013−67812A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−268087(P2012−268087)
【出願日】平成24年12月7日(2012.12.7)
【分割の表示】特願2011−504471(P2011−504471)の分割
【原出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(504469606)トタル リサーチ アンド テクノロジー フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】