説明

極性分子を製油所ストリームから除去するための方法およびシステム

本発明は、製油所および化学プラントにおける炭化水素流体、化学物質、全原油、ブレンドおよび留分を処理するに際して、極性分子汚染物質を製油所ストリームから除去するための方法およびシステムに関する。この方法およびシステムには、高表面エネルギーおよび/または高表面積のナノ粒子化合物を製油所ストリームへ添加して、極性分子汚染物質が除去される工程が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製油所および化学プラントにおける化学物質および炭化水素流体を処理するに際して、極性分子汚染物質を製油所ストリームから除去するための方法およびシステムに関する。この方法およびシステムには、高表面エネルギーおよび/または高表面積のナノ粒子化合物を製油所ストリームへ添加して、極性分子汚染物質が、そこで除去される工程が含まれる。
【背景技術】
【0002】
石油は、極めて複雑な混合物であり、主として炭化水素、並びに窒素、酸素、および硫黄を含有する化合物からなる。殆どの石油はまた、少量のニッケルおよびバナジウムを含む。石油の化学的および物理的性状は、石油組成が変動することから、顕著に異なる。
【0003】
ガソリンは、炭化水素の複雑な混合物である。商業ガソリンは、直留、分解、改質、および天然のガソリンのブレンドである。直留ガソリンは、原油石油から、蒸留によって回収され、パラフィン系列の大部分の正炭化水素を含む。分解ガソリンは、原油石油の蒸留留分または残渣を圧力下に加熱するか、若しくは触媒の存在下に加圧して、または加圧なしに加熱することによって製造される。より重質の炭化水素は、より小さな分子に分解され、そのいくつかは、ガソリン範囲で留出する。改質ガソリンは、ガソリン留分を、触媒に、低オクタン価炭化水素が分子的に高オクタン価成分へ再配列されるように通すことによって製造される。多くの触媒は、白金および他の金属を、シリカおよび/またはアルミナ担体に析出させて用いる。天然ガソリンは、天然ガスから、ガソリン範囲で沸騰するこれらの成分を圧縮および冷却するか、または油に吸収するかの何れかによって、液化して得られる。ガソリンの製造においては、原油石油生成物の処理は、汚染物質(極性分子汚染物質を含む)によって汚染される場合がある。
【0004】
多くの極性有機化合物(S−含有分子、ナフテン酸、アスファルテン、ポルフィリン、およびN−含有分子など)は、負の価値を、油およびその生成物へ与える。負の価値は、腐食、ファウリング、触媒被毒、およびエミッションを演ずるそれらの役割から、これらの極性分子の高価な精製および処理を伴う。従って、極性分子を、炭化水素および化学ストリームから安全かつ安価に除去することは、実質的に、省エネルギーおよびプロセスの収益性を増大する。
【0005】
極性分子を流体から除去する一つの方法は、液体を、極性分子を吸着する粒子の固定床を通して流すことである。しかし、固定床プロセスは、一般に、非常に小さな吸着剤粒子(サイズが、0.5または1.0mm未満)の使用を排除する。何故なら、これらの粒子が用いられる場合には、過大な圧力損失が、商業プロセスにもたらされるであろうからである。この高い圧力損失は、固定床がファウリングし閉塞する場合に、更により大きな問題になる。
【0006】
加えて、固定床プロセスは、使用後の固定床の定期的な再生を必要とする。これは、達成困難であり、かつ費用を要する。例えば、高温度が、固定床が粒子汚染物質を再度吸着可能であるように、床を再生するのに必要とされる。商業固定床の不十分な熱伝導率および大きなサイズ(例えば、直径数フィート)から、再生は、通常、床を再生するのに十分な高い温度を達成するのに、床を数時間加熱することを必要とする。固定床の再生に必要な時間は、従って、実用的でも経済的でもない工業運転をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,730,860号明細書
【特許文献2】米国特許第7,148,389号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的および利点は、次の説明に述べられ、かつそれから明らかであろうし、並びに本発明を実施することによって習得されるであろう。本発明の更なる利点は、記載される説明および本明細書の請求に、並びに添付される図面から、特定に指摘される方法およびシステムによって、十分に理解されかつ達成されるであろう。
【0009】
これらおよび他の利点を達成するために、および本発明の一態様に従って、本発明は、極性分子汚染物質を製油所ストリームから除去するための方法を提供する。方法には、極性分子汚染物質を含む製油所ストリームを提供する工程、磁性ナノ粒子化合物を製油所ストリームに導入し、極性汚染物質は、ナノ粒子化合物に吸着されて、ナノ粒子化合物−極性分子複合物が形成される工程、およびナノ粒子化合物−極性分子複合物を製油所ストリームから分離する工程が含まれる。極性分子汚染物質は、例えば、硫黄含有化合物、窒素含有化合物、ポルフィリン、アスファルテン、ナフテン酸、水銀、二酸化炭素、および/または微粒子であることができる。磁性ナノ粒子は、磁界に誘引されうるいかなる物質をも含むことができる。例えば、限定されることなく、鉄、ニッケル、コバルト、および/またはマグネタイトである。一実施形態においては、製油所ストリームは、炭化水素精製プロセスにおける液体または流体炭化水素ストリームである。ナノ粒子化合物−極性分子複合物を分離する工程は、例えば、磁界をナノ粒子化合物−極性分子複合物へ付して、複合物が、炭化水素液体流体から分離されることによって、達成することができる。
【0010】
一実施形態に従って、本発明の方法は、更に、ナノ粒子化合物に吸着された極性分子汚染物質を除去する工程の後で、ナノ粒子化合物を再生する工程を含む。一実施形態においては、ナノ粒子化合物を再生する工程は、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を、少なくとも約250℃の温度で加熱する工程によって、またはナノ粒子化合物−極性分子複合物を水に浸漬する工程によって、達成されることができる。
【0011】
他の実施形態に従って、本発明の方法には、更に、ナノ粒子化合物のサイズを、ナノ粒子化合物を製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)に導入する前に低減して、極性分子汚染物質を製油所ストリームから除去するためのナノ粒子化合物の能力を増大させる工程が含まれる。
【0012】
他の実施形態に従って、本発明の方法には、更に、ナノ粒子化合物を、ナノ粒子化合物を製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)に導入する前に加熱して、極性分子汚染物質を製油所ストリームから除去するためのナノ粒子化合物の能力を増大させる工程が含まれる。
【0013】
本発明の他の態様には、極性汚染物質を製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)から除去するためのシステムが含まれる。システムには、極性分子汚染物質を含む製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体プロセスストリーム)、製油所ストリームへ導入されるべき磁性ナノ粒子化合物の供給が含まれる。極性分子汚染物質は、ナノ粒子化合物に吸着されて、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を形成することができる。システムにはまた、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を製油所ストリームから分離するための、製油所ストリームと流体連通している分離装置が含まれる。分離装置は、磁界を含むことができる。
【0014】
本発明のこれらおよび他の特徴は、好ましい実施形態の次の詳細な記載から明らかになるであろう。これは、添付の図面と組合せて考慮されて、実施例を用いて、本発明の原理を例証する。
【0015】
本発明は、ここで、添付の次の図面と組合せて記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】例証装置の概略図を示す。これは、極性分子汚染物質(4)を、マグネタイトナノ粒子(1)を用いて除去するのに用いられることができる。マグネタイトナノ粒子(1)は、極性分子汚染物質(4)を含む流体(3)を収容する第一のタンク(2)に導入される。ナノ粒子化合物−極性分子複合物は、(5)で示され、その際極性分子化合物は、マグネタイトナノ粒子の表面に吸着される。ナノ粒子化合物−極性分子複合物は、ナノ粒子化合物−極性分子複合物に磁力を及ぼす磁石(6)へ誘引される。極性分子汚染物質の量が低減された流体は、第二のタンク(7)に排出される。
【図2】サファイア(高表面エネルギー物質)、およびアスファルテンまたはポルフィリンの何れかを含むトルエンの間の界面の総周波数発生(SFG)スペクトルを示す。これは、実施例1に記載される。
【図3】トルエン中アスファルテン250ppmの溶液、および40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を用いて浄化された後のトルエン中アスファルテン250ppmの溶液を示す。これは、実施例2に記載される。
【図4】40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を用いて繰返し浄化された後のトルエン中アスファルテン770ppmの溶液について、アスファルテンの濃度を示すグラフである。これは、実施例3に記載される。
【図5】40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を用いて繰返し浄化された後のトルエン中ポルフィリン800ppmの溶液について、ポルフィリンの濃度を示すグラフである。これは、実施例4に記載される。
【図6】40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を用いて繰返し浄化された後のヘキサデカンで調製されたTAN2.2のナフテン酸含有溶液について、ナフテン酸の濃度を示すグラフである。これは、実施例5に記載される。
【図7】トルエン中アスファルテン1000ppmの三種の溶液を示す。二種の溶液は、(a)40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%か、または(b)3nmのマグネタイトナノ粒子1wt%の何れかを用いて浄化されている。これは、実施例8に示される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に用いられるように、用語「製油所ストリーム」は、一般に、石油精製プロセスなどの化学プロセス(例えば、原油炭化水素を精製するプロセス)の装置または手段に関する。これは、極性分子に汚染されやすいか、または汚染されやすい場合がある。製油所ストリームには、限定されることなく、伝熱構成要素と接続しているか、またはそれと流体連通している処理ストリームが含まれる。熱交換器、加熱炉、原油予熱装置、コーカー予熱装置、またはいかなる他の加熱装置、FCCスラリーボトム、脱ブタン装置交換器/塔、他の原料/流出油交換器、並びに製油所施設の加熱炉空気予熱装置、製油所施設のフレアー圧縮装置構成要素、および石油化学施設のスチーム分解装置/改質装置チューブなどの伝熱構成要素である。製油所ストリームはまた、熱伝達が生じることができる他の手段と接続しているか、またはそれと流体連通していることができる。分留または蒸留カラム、スクラバー、反応器、液体ジャケット付タンク、パイプスチル、コーカー、およびビスブレーカーなどの他の手段である。製油所ストリームはまた、チューブ、パイプ類、バッフル、および他のプロセス輸送メカニズム(上記される構成要素のいずれか一つの内部にあるか、それを少なくとも部分的に構成するか、および/またはそれと流体連通している)と接続しているか、またはそれと流体連通していることができる。用語「製油所ストリーム」には、限定されることなく、石油化学精製運転の他に、化学プロセスに関連するプロセスストリームが含まれることは理解される。
【0018】
本明細書に用いられるように、用語「炭化水素流体」または「炭化水素液体流体」とは、水素および炭素を含む化合物を、少なくとも大部分含む流体組成物をいう。これらの化合物には、例えば、飽和アルカン、および/または不飽和アルケンおよびアルキンが含まれる。炭化水素流体にはまた、シクロアルカン、シクロアルケン、およびシクロアルキンが含まれることができる。更に、炭化水素流体には、芳香族炭化水素またはアレーン、アルカン、アルケン、およびアルキンベース化合物が含まれることができる。炭化水素化合物は、置換されないか、または更なる化学基で置換される場合がある。
【0019】
本明細書に用いられるように、用語「極性分子汚染物質」とは、製油所ストリーム中に存在するいかなる極性化合物をもいう。これは、高表面エネルギー化合物に対して表面親和性を有する。そして、極性分子汚染物質は、これらの高表面エネルギー化合物の表面上に吸着する。
【0020】
本明細書に用いられるように、用語「ナノ粒子化合物」とは、高表面エネルギーおよび/または高表面積を有する化合物をいう。これは、次に、より詳細に記載される。その際、化合物の表面は、極性分子を吸着する能力を有する。
【0021】
ここで、本発明の種々の態様が、詳細に引用されるであろう。本発明の方法および対応する工程は、本明細書に示される図面および実施例と組合せて記載されるであろう。
【0022】
本発明に従って、製油所ストリーム中の極性分子汚染物質を低減するための方法が提供される。汚染物質のこの低減は、極性分子汚染物質を除去するのに効果的な量のナノ粒子化合物を、製油所ストリームへ添加する工程によって達成される。その際、極性分子汚染物質は、ナノ粒子化合物上に吸着され、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を製油所ストリームから分離する。ナノ粒子化合物は、別個のバッチで、または連続的製油所ストリームで、製油所ストリームへ添加されることができる。
【0023】
本発明の他の実施形態に従って、製油所ストリームには、炭化水素流体が含まれる。例えば、製油所ストリームは、石油化学精製運転と接続されている場合がある。本発明の他の実施形態においては、ナノ粒子化合物は、炭化水素流体中に自由分散されて導入される。
【0024】
本発明の他の態様に従って、極性汚染物質を製油所ストリームから除去することができるシステムが提供される。システムには、極性分子汚染物質を含む少なくとも一種の流体、溶液、溶剤、またはそれらの混合物;ナノ粒子化合物が製油所ストリームへ導入され、その際極性分子汚染物質が、ナノ粒子化合物上に吸着されて、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を形成することができるナノ粒子化合物の供給;およびナノ粒子化合物−極性分子複合物を製油所ストリームから分離するための、製油所ストリームと流体連通している分離装置が含まれる。
【0025】
本発明に従って、極性分子汚染物質を吸着してナノ粒子化合物−極性分子複合物が形成されるのに効果的な量のナノ粒子化合物を、製油所ストリームへ添加する工程、およびナノ粒子化合物−極性分子複合物を製油所ストリームから分離する工程は、製油所ストリームの汚染を低減するのに効果的である。これに限定されるものではないものの、本発明の方法によるナノ粒子化合物の添加は、極性分子汚染物質を低減または防止するのに、特に適切である。
【0026】
本発明の一実施形態に従って、極性分子汚染物質には、有機および無機微粒子が含まれる。有機微粒子(析出されたアスファルテンおよびコーク粒子など)には、限定されることなく、プロセス条件の変化(例えば、温度、圧力、または濃度の変化)、または製油所ストリームの組成の変化(例えば、化学反応の発生による変化)の際に、溶液から析出される不溶性物質が含まれる。無機微粒子には、限定されることなく、二酸化ケイ素、クレー、および酸化鉄が含まれる。
【0027】
本発明の他の実施形態に従って、極性分子汚染物質には、限定されることなく、硫黄含有化合物、窒素含有化合物、ポルフィリン、アスファルテン、ナフテン酸、水銀、二酸化炭素、および微粒子が含まれる。
【0028】
本発明の他の実施形態に従って、ナノ粒子化合物は、製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)へ添加される。これは、上記される有機および無機微粒子を含む極性分子汚染物を含む。製油所ストリームは、いかなる量の微粒子をも含むことができる。例えば、1〜10,000ppmなどである。
【0029】
本発明の一実施形態に従って、ナノ粒子化合物は、高表面エネルギーを有する化合物である。一般に、表面エネルギーは、表面が作り出される際に生じる分子間結合の破壊を定量化し、その際化合物の表面は、化合物の残り部分より、エネルギー的にあまり有利でない。本発明の一実施形態に従って、ナノ粒子化合物の表面エネルギーは、少なくとも約10mJ/m、少なくとも約20mJ/m、少なくとも約30mJ/m、少なくとも約40mJ/m、少なくとも約50mJ/m、少なくとも約60mJ/m、少なくとも約70mJ/m、少なくとも約80mJ/m、少なくとも約90mJ/m、または少なくとも約100mJ/mである。
【0030】
本発明の一実施形態に従って、ナノ粒子化合物は、約0.01〜約1000nm、より好ましくは約1〜約60nm、より好ましくは約1〜約10nmの直径を有する。一実施形態においては、ナノ粒子化合物は、約40〜60nmの直径を有する。他の実施形態においては、ナノ粒子化合物は、約3nmの直径を有する。
【0031】
本発明の更に他の実施形態においては、ナノ粒子化合物は、約1mm以下の直径を有する。本発明の他の実施形態においては、ナノ粒子化合物は、約0.5mm以下の直径を有する。
【0032】
いかなる理論にも束縛されることなく、極性分子汚染物質を吸着するナノ粒子化合物の単位質量当りの能力は、ナノ粒子化合物の単位質量当りの表面積が増大するにつれて、増大すると考えられる。一実施形態に従って、本発明には、極性分子汚染物質を吸着するナノ粒子化合物の能力を、ナノ粒子化合物のサイズ(例えば、ナノ粒子化合物の直径で測定される)を低減することによって増大させる方法が含まれる。例えば、ナノ粒子化合物の単位質量を構成するナノ粒子のサイズは、低減されることができ、それによりナノ粒子化合物の単位質量当りの吸着能力が増大される。一実施形態においては、本発明の方法には、ナノ粒子化合物のサイズを、ナノ粒子化合物を製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)に導入する前に低減して、極性分子汚染物質を製油所ストリームから除去するナノ粒子化合物の能力を増大させる工程が含まれる。
【0033】
ナノ粒子化合物のサイズは、当技術分野で知られる任意の手段によって、低減することができる。限定しない一例においては、ナノ粒子化合物には、Feが含まれ、ナノ粒子のサイズを低減する工程には、Feを、少なくとも約100〜400℃、少なくとも約125〜350℃、少なくとも約150〜300℃、または少なくとも175〜200℃の温度でFeへ化学還元する工程が含まれる。他の限定しない例においては、ナノ粒子化合物には、Feが含まれ、ナノ粒子のサイズを低減する工程には、Feを、約150℃の温度でFeへ化学還元する工程が含まれる。
【0034】
本発明の他の実施形態においては、ナノ粒子化合物を製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)に導入する前にナノ粒子化合物を加熱する工程は、極性分子汚染物質を製油所ストリームから除去するナノ粒子化合物の能力を増大させる。本発明の一実施形態においては、ナノ粒子化合物は、約100℃〜約1000℃、または約100℃〜約750℃、または約100℃〜約500℃、または約100℃〜約200℃の温度で加熱される。本発明の他の実施形態においては、ナノ粒子化合物は、少なくとも約250℃の温度で加熱される。本発明の更に他の実施形態においては、ナノ粒子化合物は、少なくとも約350℃の温度で加熱される。
【0035】
本発明の他の実施形態においては、ナノ粒子化合物は、ナノ粒子化合物を製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)に導入する前に、ナノ粒子、またはナノ粒子中に存在する磁性化合物の磁性相転移温度以下の温度で加熱される。
【0036】
他の実施形態においては、ナノ粒子化合物は、ナノ粒子化合物を製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)に導入する前に、約250℃超の温度、かつナノ粒子、またはナノ粒子中に存在する磁性化合物の磁性相転移温度未満で加熱される。限定しない一例においては、磁性化合物がマグネタイトである場合には、ナノ粒子は、例えば約250℃〜585℃の温度で加熱されることができる。
【0037】
本発明の一実施形態に従って、ナノ粒子化合物は、窒素BETで測定されて、少なくとも約0.5〜1000m/g、少なくとも約1〜750m/g、少なくとも約5〜500m/g、少なくとも約7〜400m/g、少なくとも約15〜200m/gの表面積を有する。
【0038】
本発明の一実施形態に従って、ナノ粒子化合物は、窒素BETで測定されて、少なくとも約10〜300m/gの表面積を有する。
【0039】
本発明の他の実施形態に従って、ナノ粒子化合物は、製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)に、酸性pH(例えば、pH7.0未満のpH)、中性pH(例えば、pH約7.0)、または塩基性pH(例えば、pH7.0超のpH)で導入されることができる。本発明の一実施形態においては、ナノ粒子化合物は、製油所ストリームに、pH1.0超で導入される。
【0040】
本発明に包含されるように、ナノ粒子は、製油所ストリームに導入され、極性分子汚染物質をその表面上に吸着し、製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)の温度を変えることなく、製油所ストリームから分離されることができる。従って、一実施形態に従って、本発明の方法には、ナノ粒子化合物の導入後の製油所ストリームの温度を、ナノ粒子化合物の導入前と類似の温度で保持する工程が含まれる。本発明の他の実施形態においては、製油所ストリームの温度は、ナノ粒子が製油所ストリームに導入される前、その後、またはそれと同時に増大または低減される。これは、先行技術の方法、例えば汚染物質を固定床装置を用いて除去する方法と対照的である。これは、汚染物質を製油所ストリームから除去する際に、温度変化を必要とする。
【0041】
一実施形態においては、ナノ粒子は、炭化水素ストリームに、ナノ粒子、またはナノ粒子中に存在する磁性化合物の磁性相転移温度以下の温度で導入される。限定しない一例においては、磁性化合物がマグネタイトである場合に、ナノ粒子は、例えば約585℃以下の温度で、炭化水素ストリームに導入されることができる。
【0042】
本発明に包含されるように、ナノ粒子化合物は、製油所ストリーム(例えば炭化水素流体)に導入され、極性分子化合物をその表面上に吸着し、製油所ストリームの圧力を変えることなく、製油所ストリームから分離されることができる。従って、一実施形態に従って、本発明の方法には、更に、ナノ粒子化合物の導入後の製油所ストリームの圧力を、ナノ粒子化合物の導入前と類似の圧力で保持する工程が含まれる。本発明の他の実施形態においては、製油所ストリームの圧力は、ナノ粒子化合物が製油所ストリームに導入される前、その後、またはそれと同時に増大または低減される。これは、先行技術の方法、例えば汚染物質を固定床装置を用いて除去する方法と対照的である。これは、汚染物質を除去するのに、製油所ストリームの圧力変化を必要とする。
【0043】
本発明によって予想されるように、ナノ粒子化合物は、製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)に、極性分子汚染物質を製油所ストリームから除去するのに効果的な量で導入される。限定しない一実形態においては、ナノ粒子化合物は、製油所ストリームに、製油所ストリームの約0.01wt%〜約99wt%、約0.01wt%〜約90wt%、約0.01wt%〜80wt%、約0.01wt%〜約70wt%、約0.01wt%〜約60wt%、約0.01wt%〜約50wt%、約0.01wt%〜約40wt%、約0.01wt%〜約30wt%、約0.01wt%〜約20wt%、約0.01wt%〜約10wt%、約0.01wt%〜約5wt%、または約0.01wt%〜約1wt%の濃度で導入される。
【0044】
限定しない一実施形態においては、ナノ粒子化合物は、製油所ストリームに、製油所ストリームの約0.1〜約15wt%の濃度で導入される。
【0045】
本発明の一実施形態においては、ナノ粒子化合物は、製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)に、製油所ストリームの10wt%の濃度で導入される。他の実施形態においては、ナノ粒子化合物は、製油所ストリームに、製油所ストリームの1wt%の濃度で導入される。
【0046】
本発明の他の実施形態に従って、ナノ粒子化合物は、製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)に、製油所ストリーム中の極性分子汚染物質の濃度を低減するのに効果的な量で導入される。一実施形態においては、製油所ストリームに導入されるナノ粒子化合物の量は、製油所ストリーム中の極性分子汚染物質の濃度を、約0%〜100%、または約0〜約90%、または約0〜約80%、または約0〜約70%、または約0〜約60%、または約0〜約50%、または約0〜約40%、または約0〜約30%、または約0〜約20%、または約0〜約10%、または約0〜約5%、または約0〜約1%低減するのに効果的な量である。
【0047】
本発明の一実施形態に従って、ナノ粒子化合物は、磁性化合物である。化合物が磁性であり、磁界によって誘引されるか、または反発されることができることから、本発明のナノ粒子化合物、および/またはナノ粒子化合物−極性分子複合物は、磁界をナノ粒子化合物および/またはナノ粒子化合物−極性分子複合物に付す工程によって、製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)から分離されることができる。
【0048】
本発明の他の実施形態に従って、ナノ粒子化合物は、磁界へ誘引されることができるいかなる物質をも含むことができる。例えば、限定されることなく、鉄、ニッケル、コバルト、マグネタイト、またはそれらの混合物である。
【0049】
本発明の他の実施形態に従って、ナノ粒子化合物は、製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)から、磁界をナノ粒子に付す工程によって分離されることができる。一実施形態においては、ナノ粒子化合物は、その表面上に吸着された極性分子汚染物質を有する(ナノ粒子化合物−極性分子複合物を形成する)。他の実施形態においては、極性分子汚染物質は、ナノ粒子化合物に吸収されて、ナノ粒子化合物−極性分子複合物が形成される。磁界は、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を、磁性源へ誘引するか、または磁性源から離れて反発することができ、そのためにナノ粒子化合物−極性分子複合物は、収集され、製油所ストリームから除去されることができる。磁界は、当技術分野で知られる任意の手段によって発生させることができる。
【0050】
一実施形態に従って、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)から分離する工程には、磁界をナノ粒子化合物−極性分子複合物に付して、複合物が、炭化水素液体流体から分離される工程が含まれる。
【0051】
一実施形態においては、ナノ粒子化合物またはナノ粒子化合物−極性分子複合物は、製油所ストリームから、フィルターの存在なしに分離されることができる。他の実施形態においては、フィルターは存在する。
【0052】
本発明の他の実施形態においては、ナノ粒子化合物−極性分子複合物は、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を含む流体を、装置(限定されることなく、例えば電流または電磁場によって磁化される充填剤またはフィルターなど)を通して送る工程によって、流体から除去されることができる。流体を、磁性装置を通して送ることによって、ナノ粒子化合物−極性分子複合物は、装置に誘引されるか、またはそれから反発されることができ、それによりナノ粒子化合物−極性分子複合物が、装置を通過される流体から除去される。ナノ粒子化合物−極性分子複合物が装置に誘引される場合には、磁界を周期的に停止して、装置に誘引されたナノ粒子化合物−極性分子複合物を追出することができる。更に他の実施形態においては、装置は磁化されず、ナノ粒子化合物−極性分子複合物は、装置との物理的相互作用によって、流体から分離され、そのために流体は、装置を通って、または装置の周囲を進み、一方ナノ粒子化合物−極性分子複合物は、装置に留め置かれる。
【0053】
更に、ナノ粒子化合物を製油所ストリームへ添加する工程は、本発明に関連して記載されるように、極性分子汚染物質を低減および/または軽減するための他の技術と組合されることができる。これらの技術には、限定されることなく、当技術分野で一般に知られる固定床吸着が含まれる(例えば、特許文献1および特許文献2を参照されたい。これらは、それぞれ、本明細書にその全体が引用して含まれる)。
【0054】
ナノ粒子化合物−極性分子複合物を製油所ストリーム(例えば、炭化水素流体)から除去した後、ナノ粒子化合物は再生されて、ナノ粒子化合物の表面上に吸着された極性分子汚染物質が除去され、更なる極性分子汚染物質を吸着するナノ粒子化合物の能力が増大されることができる。一実施形態に従って、本発明のナノ粒子化合物は、ナノ粒子化合物−極性分子複合物から、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を加熱する工程によって再生されることができる。一実施形態においては、ナノ粒子化合物を再生する工程には、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を、少なくとも約250℃の温度で加熱する工程が含まれる。
【0055】
他の限定しない実施形態においては、本発明のナノ粒子化合物は、ナノ粒子化合物−極性分子複合物から、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を、約250℃超の温度、かつナノ粒子、またはナノ粒子中に存在する磁性化合物の磁性相転移温度未満で加熱する工程によって再生されることができる。限定しない一例においては、磁性化合物がマグネタイトである場合に、ナノ粒子は、例えば、約250℃〜585℃の温度で、加熱される場合がある。
【0056】
本発明の他の実施形態においては、ナノ粒子化合物は、ナノ粒子化合物−極性分子複合物から、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を、水、若しくは他の極性液体または溶液と接触させる工程によって再生されることができる。一実施形態においては、ナノ粒子化合物を再生させる工程には、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を、水に浸漬する工程が含まれる。
【0057】
ここで、図1に関して、本発明の一実施形態に従って、極性分子汚染物質を、流体(例えば、炭化水素流体)から除去する例証的なシステムおよび方法が示される。図1に示されるように、マグネタイトナノ粒子(1)は、極性分子汚染物質(4)を含む流体(3)を収容する第一のタンク(2)に導入される。極性分子汚染物質は、マグネタイトナノ粒子の表面上に吸着されて、ナノ粒子化合物−極性分子複合物(5)が形成される。磁石(6)によって発生される磁力は、次いで、ナノ粒子化合物−極性分子複合物に及ぼされ、それによりナノ粒子化合物−極性分子複合物が磁石に向って誘引され、流体は、第一のタンクから第二のタンク(7)へ除去される。その際、除去された流体は、ナノ粒子化合物−極性分子複合物(5)を含まないか、または実質的に含まない。
【実施例】
【0058】
本発明は、更に、次に示される実施例により記載される。これらの実施例を用いることは、単に例証であり、決して、本発明の、またはいかなる例証された用語もの範囲および意味を限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書に記載されるいかなる特定の好ましい実施形態にも限定されるものではない。事実、本発明の多くの修正および変更は、この明細書を読み取る際に、当業者には明らかであろう。本発明は、従って、請求が権利付与される均等物の全範囲に加えて、添付される請求項の用語によってのみ限定されるものである。
【0059】
実施例1
極性分子汚染物質は、高エネルギー表面に対して親和性を有する
総周波数発生(SFG)を、サファイア(高エネルギー表面)に対するアスファルテンまたはポルフィリンの親和性を検討するのに用いた。アスファルテンまたはポルフィリン(二種の極性分子汚染物質)のいずれかを含む重水素化トルエンの試料を、サファイアと接触させた。サファイアと、トルエン−アスファルテンまたはトルエン−ポルフィリンとの間の界面のSFGスペクトルを発生させた。重水素化トルエンは、2800〜3200cm−1に、いかなるスペクトルの特徴をももたらさず、図2に示されるスペクトル構造は、液体/サファイア界面におけるアスファルテンまたはポルフィリンによってもたらされ、これらの二種の極性分子のサファイア上への吸着を示す。これは、界面にランダムに配向された分子は、いかなるSFG信号をももたらさないという事実に基づいて結論付けられる。アスファルテンおよびポルフィリンなどの分子が固体に吸着する場合には、それらのランダムに配向された配置は、解かれ、SFG信号をもたらすことができる。従って、スペクトルのSFG共鳴の特徴(図2に示される)は、固体表面に吸着されたアスファルテンおよびポルフィリンのサインである。これは、これらの極性分子が、高表面エネルギー物質(サファイアなど)に対して強い親和性を有することを示す。
【0060】
実施例2
トルエンからのアスファルテンの除去
アスファルテン(アラブ軽質原油から抽出される)250ppmを含むトルエン溶液を、40〜60nmのマグネタイト粒子10wt%を用いて浄化した。図3は、アスファルテン250ppmを含み、それにマグネタイトナノ粒子が全く添加されていないトルエン溶液(1)、およびアスファルテン250ppmを含み、それにナノ粒子が添加されているトルエン溶液(2)を示す。(2)において、アスファルテンを吸着したマグネタイトナノ粒子は、磁石(3)(マグネタイトナノ粒子に誘引磁力を及ぼす)に誘引されている。図3は、アスファルテン濃度の低減のみを示す。(1)および(2)の溶剤の最初の量は、同じではなかった。(2)の溶液のより低いレベルは、ナノ粒子による液体吸収によるものではない。
【0061】
実施例3
トルエンからのアスファルテンの除去
アスファルテン(アラブ軽質原油から抽出される)770ppmを、トルエンで調製した(図4、溶液0)。40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を、次いで、溶液へ添加し、凡そ5分間、溶液と接触させたままにした。ナノ粒子を、磁石を用いて除去した(図4、溶液1)。40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を、溶液1へ添加した。凡そ5分後に、ナノ粒子を、磁石を用いて除去した(図4、溶液2)。40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を、次いで、溶液2へ添加した。凡そ5分後に、ナノ粒子を、磁石を用いて除去した(図4、溶液3)。各溶液の紫外−可視透過スペクトルを収集し、吸収を計算した。「溶液0」の濃度の既知の値、および各溶液の全紫外−可視吸光度の測定値を用いて、各溶液のアスファルテン濃度を決定した。図4は、各溶液のアスファルテン濃度を示すグラフを示す。これは、マグネタイトナノ粒子を用いるアスファルテンの除去を証明する。アスファルテンの最初の濃度770ppmは、磁性ナノ粒子を用いる最初に処理の後に、87.5%低減され、マグネタイトナノ粒子を用いる第二の処理の後に、約100%低減された。
【0062】
実施例4
トルエンからのポルフィリンの除去
ポルフィリン800ppmの溶液を、トルエンで調製した(図5、溶液0)。40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を、溶液へ添加し、凡そ5分間、溶液と接触させたままにした。ナノ粒子を、磁石を用いて除去した(図5、溶液1)。40〜60nmのマグネタイト粒子10wt%を、次いで、溶液1へ添加した。凡そ5分後に、ナノ粒子を、磁石を用いて除去した(図5、溶液2)。40〜60nmのマグネタイト粒子10wt%を、次いで、溶液2へ添加した。凡そ5分後に、ナノ粒子を、磁石を用いて除去した(図5、溶液3)。40〜60nmのマグネタイト粒子10wt%を、次いで、溶液1へ添加した。凡そ5分後に、ナノ粒子を、磁石を用いて除去した(図5、溶液4)。各溶液の紫外−可視透過スペクトルを収集した。「溶液0」の濃度の既知の値、および各溶液の全紫外−可視吸光度の測定値を用いて、各溶液のポルフィリン濃度を決定した。図5は、各溶液のポルフィリン濃度を示すグラフを示す。これは、マグネタイトナノ粒子を用いるポルフィリンの除去を証明する。ポルフィリンの最初の濃度800ppmは、マグネタイトナノ粒子を用いる第一の処理の後に、37.5%低減され、マグネタイトナノ粒子を用いる第二の処理の後に、約50%低減された。溶液3および4のポルフィリンの濃度は、処理に後に、溶液0の約50%のままである。
【0063】
実施例5
ナフテン酸の除去
TAN2.2を有するナフテン酸含有溶液を、ヘキサデカンで調製した(図6、溶液0)。40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を、次いで溶液へ添加し、凡そ5分間、溶液と接触させたままにした。ナノ粒子を、磁石を用いて除去した(図6、溶液1)。次に、40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を、溶液1へ添加した。凡そ5分後に、ナノ粒子を、磁石を用いて除去した(図6、溶液2)。40〜60nmのマグネタイト粒子10wt%を、次いで、溶液2へ添加した。凡そ5分後に、ナノ粒子を、磁石を用いて除去した(図6、溶液3)。各溶液のFTIRスペクトルを収集した。「溶液0」の濃度の既知の値、および各溶液の酸性基に対するIRの全吸光度の測定値を用いて、各溶液のナフテン酸濃度を決定し、TANを計算した。図6は、各溶液のTANを示すグラフを示す。これは、マグネタイトナノ粒子を用いるナフテン酸の除去を証明する。ナフテン酸の最初の濃度は、マグネタイトナノ粒子を用いる第一の処理の後に、22.7%低減され、マグネタイトナノ粒子を用いる第二の処理の後に、約27.2%、およびマグネタイトナノ粒子を用いる第三の処理の後に、約36.3%低減された。
【0064】
実施例6
熱を用いるナノ粒子の再生
トルエン中アスファルテン(重質アラブ原油から抽出される)823ppmを含む溶液を調製した。40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を溶液へ添加した。ナノ粒子を、次いで、磁石を用いて溶液から分離した。元の溶液および一回浄化された溶液の紫外−可視スペクトルを用いて、アスファルテン631ppmがナノ粒子によって除去されたことが決定された。
【0065】
溶液から除去の後、ナノ粒子を、周囲環境中で終夜乾燥するままにし、次いで空気浴中に、350℃で1時間入れた。熱処理されたナノ粒子を、次いで、トルエン中アスファルテン823ppmの新規に調製された溶液へ添加した。1分後に、ナノ粒子を、磁石を用いて溶液から除去し、処理された溶液の紫外−可視を記録した。紫外−可視スペクトルは、772ppmが溶液から除去されたことを示す。従って、マグネタイトナノ粒子の極性物質除去能力は、熱を用いて回復させることができる。加えて、マグネタイトナノ粒子の極性分子汚染物質除去能力は、熱処理によって増大する。
【0066】
実施例7
水を用いるナノ粒子の再生
トルエン中アスファルテン(重質アラブ原油から抽出される)823ppmを含む溶液を調製した。40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を溶液へ添加した。ナノ粒子を、凡そ5分後に、磁石を用いて溶液から分離した。元の溶液および一回浄化された溶液の紫外−可視スペクトルを用いて、アスファルテン749ppmがナノ粒子によって除去されたことが決定された。除去されたナノ粒子を、凡そ5分間、水に浸漬した。ナノ粒子を、次いで、磁石を用いて水から分離し、周囲環境中で12日間乾燥するままにした。水処理されたナノ粒子を、次いで、トルエン中アスファルテン823ppmの新規に調製された溶液へ添加した。凡そ5分後に、ナノ粒子を、溶液から分離し、処理された溶液の紫外−可視を記録した。紫外−可視スペクトルは、644ppmが溶液から除去されたことを示す。従って、マグネタイトナノ粒子の極性物質除去能力は、用いられたナノ粒子を水に浸漬する工程によって回復させることができる。
【0067】
実施例8
ナノ粒子サイズの低減は、極性分子汚染物質の除去能力を増大させる
トルエン中アスファルテン(重質アラブ原油から抽出される)1000ppmの二種の等量溶液を調製した。一つの溶液には、40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%を添加した。3nmのマグネタイトナノ粒子1wt%を、第二の溶液へ添加した。ナノ粒子を、凡そ5分後に、磁石を用いて溶液から除去した。浄化された溶液の紫外−可視スペクトルは、アスファルテンの濃度が、第一の溶液および第二の溶液において、それぞれ91および87ppmへ低減されたことを示した。図7は、40〜60nmのマグネタイトナノ粒子10wt%(1)、および3nmのマグネタイトナノ粒子1wt%(2)が添加された、ナノ粒子浄化された溶液を示す。二つの浄化溶液と並ぶのは、1000ppmの(未浄化)参照溶液(3)である。
【0068】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって、範囲が限定されるものではない。事実、本明細書に記載されるものに加わる本発明の種々の修正は、前述の記載、および添付の図面から、当業者には明らかになるであろう。これらの修正は、添付される請求の範囲内に入るものである。
【0069】
特許、特許出願、公報、生成物の記載、およびプロトコルは、本出願全般に亘って引用され、その開示は、全ての目的に対して、本明細書に、それらの全てが引用して組込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性分子汚染物質を製油所ストリームから除去する方法であって、
(a)極性分子汚染物質を含む前記製油所ストリームを提供する工程、
(b)前記製油所ストリームに磁性ナノ粒子化合物を導入する工程であって、前記極性分子汚染物質は、前記ナノ粒子化合物に吸着されて、ナノ粒子化合物−極性分子複合物が形成される工程、および
(c)前記ナノ粒子化合物−極性分子複合物を前記製油所ストリームから分離する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記製油所ストリームは、炭化水素流体であり、
前記ナノ粒子化合物は、前記炭化水素流体中に自由分散されて導入される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記極性分子汚染物質は、硫黄含有化合物、窒素含有化合物、ポルフィリン、アスファルテン、ナフテン酸、水銀および二酸化炭素からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノ粒子化合物は、少なくとも70mJ/mの表面エネルギーを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ粒子化合物は、窒素BET法によって測定されて、5〜500m/gの表面積を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子化合物は、窒素BET法によって測定されて、10〜300m/gの表面積を有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子化合物は、磁界に誘引される物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記物質は、鉄、ニッケル、コバルトおよびマグネタイトからなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ粒子化合物の導入後の前記製油所ストリームの温度を、前記ナノ粒子化合物の導入前と類似の温度で保持する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記温度は、前記ナノ粒子化合物の磁性相転移温度以下の温度で保持されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ粒子化合物は、マグネタイトを含み、前記磁性相転移温度は、585℃であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ粒子化合物は、前記製油所ストリームへ導入されて、0.1wt%〜15wt%の濃度のナノ粒子化合物が形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノ粒子化合物−極性分子複合物を分離する工程は、磁界を前記ナノ粒子化合物−極性分子複合物に付して、前記複合物が前記製油所ストリームから分離される工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分離工程の後に、前記ナノ粒子化合物を再生して、前記ナノ粒子化合物に吸着された前記極性分子汚染物質を除去する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子化合物を再生する前記工程は、前記ナノ粒子化合物−極性分子複合物を、少なくとも250℃の温度で加熱する工程を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノ粒子化合物を再生する前記工程は、前記ナノ粒子化合物−極性分子複合物を、250℃超、前記ナノ粒子化合物の磁性相転移温度未満の温度で加熱する工程を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ粒子化合物は、マグネタイトを含み、
前記磁性相転移温度は、585℃である
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ粒子化合物を再生する前記工程は、前記ナノ粒子化合物−極性分子複合物を水に浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ粒子化合物のサイズを、前記ナノ粒子化合物を前記製油所ストリームに導入する前に低減して、極性分子汚染物質を前記製油所ストリームから除去する前記ナノ粒子化合物の能力を増大させる工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ナノ粒子化合物は、Feを含み、
前記ナノ粒子化合物のサイズを低減する工程は、Feを、少なくとも150〜300℃の温度で、Feへ化学還元する工程を含む
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記温度は150℃であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ナノ粒子化合物を、前記ナノ粒子化合物を前記製油所ストリームに導入する前に加熱して、極性分子汚染物質を前記製油所ストリームから除去するナノ粒子化合物の能力を増大させる工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記ナノ粒子化合物は、少なくとも250℃の温度で加熱されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ナノ粒子化合物は、少なくとも350℃の温度で加熱されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記ナノ粒子化合物は、250℃超、かつ前記ナノ粒子化合物の磁性相転移温度未満の温度で加熱されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記ナノ粒子化合物はマグネタイトを含み、前記磁性相転移温度は、585℃であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記製油所ストリームは、炭化水素精製プロセスにおける液体炭化水素ストリームであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項28】
製油所ストリームから極性汚染物質を除去するシステムであって、
(a)極性分子汚染物質を含む製油所ストリーム、
(b)前記製油所ストリームに導入される磁性ナノ粒子化合物の供給であって、前記極性分子汚染物質は、前記ナノ粒子化合物に吸着されて、ナノ粒子化合物−極性分子複合物を形成することができる磁性ナノ粒子化合物の供給、および
(c)前記ナノ粒子化合物−極性分子複合物を前記製油所ストリームから分離するための、前記製油所ストリームと流体連通している分離装置
を含むシステム。
【請求項29】
前記製油所ストリームは炭化水素流体であり、前記ナノ粒子化合物は、前記炭化水素流体中に自由分散されて導入されることを特徴とする請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記極性分子汚染物質は、硫黄含有化合物、窒素含有化合物、ポルフィリン、アスファルテン、ナフテン酸、水銀および二酸化炭素からなる群から選択されることを特徴とする請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記ナノ粒子化合物は、少なくとも70mJ/mの表面エネルギーを含む化合物であることを特徴とする請求項28に記載のシステム。
【請求項32】
前記ナノ粒子化合物は、窒素BET法によって測定されて、5〜500m/gの表面積を有することを特徴とする請求項28に記載のシステム。
【請求項33】
前記ナノ粒子化合物は、窒素BET法によって測定されて、10〜300m/gの表面積を有することを特徴とする請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記ナノ粒子化合物は、磁界に誘引される物質を含むことを特徴とする請求項28に記載のシステム。
【請求項35】
前記物質は、鉄、ニッケル、コバルトおよびマグネタイトからなる群から選択されることを特徴とする請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記ナノ粒子化合物は、前記製油所ストリームへ導入されて、0.1wt%〜15wt%の濃度が達成されることを特徴とする請求項28に記載のシステム。
【請求項37】
前記分離装置は、磁界を含むことを特徴とする請求項28に記載のシステム。
【請求項38】
前記製油所ストリームは、炭化水素精製プロセスにおける液体炭化水素ストリームであることを特徴とする請求項28に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−513714(P2013−513714A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544587(P2012−544587)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/058829
【国際公開番号】WO2011/075325
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】