説明

極性基、加水分解可能なシラン基を有するポリオレフィンを含み、シラノール縮合を含む低電圧送電ケーブル

本発明は、極性基を有する化合物を0.02〜4モル%含み、加水分解可能なシラン基を有する化合物をさらに含むポリオレフィンを含み、0.0001〜3重量%のシラノール縮合触媒を含む、1100kg/m未満の密度を有する絶縁層を含む低電圧送電ケーブルに関する。さらに、本発明は、該低電圧送電ケーブルの製造方法、及び低電圧送電ケーブルの絶縁層の製造において、極性基を有する化合物を0.02〜4モル%含むポリオレフィンを使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性基、加水分解可能なシラン基を含むポリオレフィンを含み、低電圧送電ケーブルのための絶縁層の製造へのシラノール触媒を含む絶縁層を含む低電圧送電ケーブル(power cable)に関し、かつ低電圧送電ケーブルのための絶縁層の製造において該ポリオレフィンを使用する方法に関する。
【0002】
低電圧、即ち6kV未満の電圧、のための送電ケーブルは、通常、絶縁層で被覆された導体を含む。そのようなケーブルは、以下においてシングルワイヤケーブルと呼ばれる。場合により、2本以上のそのようなシングルワイヤケーブルが共通の最も外側のシース層、即ちジャケットにより取り囲まれている。
【0003】
低電圧送電ケーブルの絶縁層は、ポリマーベース樹脂、例えばポリオレフィンを含むポリマー組成物から通常作られる。ベース樹脂として通常使用される物質はポリエチレンである。
【0004】
さらに、最終的なケーブルにおいて、ポリマーベース樹脂は一般的に架橋される。
【0005】
ポリマーベース樹脂に加えて、低電圧送電ケーブルの絶縁層のためのポリマー組成物は、電気ケーブルの絶縁層の物理的性質を改善するために、及び種々の環境条件の影響に対する耐性を増すために、さらなる添加剤を通常含む。添加剤の合計量は、一般的に合計のポリマー組成物の約0.3〜5重量%、好ましくは約1〜4重量%である。添加剤は安定化剤、例えば酸化、照射などによる分解を防止するための抗酸化剤;潤滑剤、例えばステアリン酸;架橋剤、例えば、絶縁組成物のエチレンポリマーの架橋を補助するための過酸化物を含む。
【0006】
低電圧(<6kV)の送電ケーブルと対照的に、中電圧(6〜68kV)及び高電圧(>68kV)の送電ケーブルは導体の周りに押出成形された複数のポリマー層から構成される。導体は、最初に内部半導電層で、次に絶縁層で、次に外側の半導電層で被覆され、すべて架橋されたポリエチレンに基づく。このケーブルの外側に、遮水層、金属スクリーン、下地(bedding)(ケーブルを丸くするポリマー層)からなるコア層、及び外側の上に、ポリオレフィンをベースとするシース層が通常、施与されている。これらケーブルの絶縁層の厚さは5〜25mmの範囲である。
【0007】
低電圧送電ケーブルにおけるように、絶縁層は通常ずっと薄く、例えば0.4〜3mmであり、導体の上に直接被覆されており、絶縁層は、各シングル導電性コアを取り巻く唯一の層であり、絶縁層が良好な機械的性質、例えば破断時伸び、及び破断時引張強さを有していなければならないことが非常に重要である。しかし、この薄いポリオレフィン層が、常温の導体に対して押し出されたとき、その機械的性質は非常に損なわれる。この理由のために、ポリオレフィンを含む絶縁層を導体上に押し出すとき、通常予熱された導体が使用されるが、これは物質、例えばPVCに比較して欠点である。薄いポリオレフィン層の機械的性質は、低電圧ケーブルにおいてはいまだに一般的にPVCに基づいているところの、周囲の下地及びケーブルコアの外側に施与されたシース層から該薄いポリオレフィン層中へ移動する可塑剤により、さらに不利な影響を受ける。
【0008】
さらに、低電圧送電ケーブルの間のケーブルジョイントは、好ましくは、結合されるべき両方のケーブルの端において絶縁層の一部を剥ぎ取り、導体を接続した後、結合された導体を覆う新しい絶縁層が、しばしばポリウレタンポリマーから形成されるような方法で形成される。従って、元の絶縁層のポリマー組成物は、絶縁層を回復するために使用されるポリウレタンポリマーに対して良好な接着性を示し、その結果、該層はケーブルの結合部において機械的応力下でさえ、破壊されないことが重要である。
【0009】
さらに、低電圧送電ケーブルの絶縁層は、通常、導体の上への直接押出により形成されるので、絶縁層に使用されるポリマー組成物は、良好な押出挙動を示し、押出後においてはその良好な機械的性質を保持することが重要である。
【背景技術】
【0010】
国際特許出願国際公開第95/17463号は、3〜30重量%のLD、PE、又はEBAを含むマスターバッチに添加される縮合触媒としてのスルホン酸の使用について記載する。
【0011】
国際特許出願国際公開第00/36612号は、良好な電気的性質、特に長時間の性質、を有する中/高圧(MV/HV)送電ケーブルについて記載する。これらのMV/HVケーブルは、内部半導電層及びその層の外側に絶縁層を常に有する。これらの層の間の接着性は、常に良好である、なぜならそれらは基本的に同じ物質、即ちポリエチレン化合物からできているからである。対象的に、本発明は低電圧送電ケーブルに直接向けられ、特に、導体への絶縁層の接着の問題、及び導体上に直接押し出すことと関連する問題を解決する。
【0012】
国際特許出願国際公開第02/88239号は、酸性縮合触媒に対してどのように添加剤が選択されるかを教示する。
【0013】
米国特許第5225469号は、架橋されて、ワイヤ及びケーブル製品のための絶縁コーティングを提供することのできる、エチレン−ビニルエステル及びエチレンアルキルアクリレートコポリマーに基づくポリマー組成物について記載する。
【0014】
欧州特許出願公開第1235232号は、組成物の物質に基づくケーブルのコーティング層は極性基及び無機物質を含むことを教示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、良好な機械的性質を示し、同時にポリウレタンポリマーに良好な接着性を示し、押出後に、その良好な機械的性質を保持する絶縁層を有する低電圧送電ケーブルを提供することが本発明の目的である。PVCから該層への可塑剤の移動による機械的性質の低下に対して改善された耐性を有する絶縁層を有する低電圧送電ケーブルを提供することがさらに本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、もし絶縁層が、極性基を有する化合物を0.02〜4モル%有し、さらに加水分解可能なシラン基を有する化合物を含むポリマーを含み、かつ0.0001〜3重量%のシラノール縮合触媒を含むならば、そのような低電圧送電ケーブルが提供され得るという知見に基づく。
【0017】
従って本発明は、1100kg/m未満の密度を有する絶縁層を含む低電圧送電ケーブルであって、該絶縁層が、極性基を有する化合物を0.02〜4モル%を含み、加水分解可能なシラン基を有する化合物をさらに含むポリオレフィンを含み、かつ0.0001〜3重量%のシラノール縮合触媒を含む、低電圧送電ケーブルを提供する。
【0018】
驚いたことに、極性基を有する化合物を0.02〜4モル%含み、加水分解可能なシラン基を有する化合物をさらに含むポリオレフィンを含み、かつ0.0001〜3重量%のシラノール縮合触媒を含む絶縁層は、ポリウレタンポリマーへの接着性を決定的に改善し、その結果本発明に従う低電圧送電ケーブル間の耐久性のあるジョイントは、ポリウレタンポリマーフィラーから作られ得ることが見出された。
【0019】
同時に、該ケーブルの絶縁層は低電圧送電ケーブルの機械的性質に対する要求条件を満足する。特に、破断時伸びが改善される。LVケーブルは、しばしば建物に設置される。シングルワイヤケーブルが通常、導管の中に設置され、設置の間、シングルワイヤケーブルは長い導管を通して引っ張られる。鋭い角、及び特に他の設置はケーブルの絶縁層に損傷を与える可能性がある。本発明に従う低電圧送電ケーブルは、その改善された破断時伸びのために、設置の間のそのような切断を効果的に防止する。
【0020】
さらに、該絶縁層は、最終的な絶縁層の良好な機械的性質を得るための押出プロセスの間に、導体の予熱が必要ではない、又は小さい程度の予熱が必要である限り、改善された押出挙動を示す。
最後に、該絶縁層はPVCでエージングされたとき、良好な機械的性質を保持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に従う低電圧送電ケーブルは、すべての要求されるパラメーターに関して注意深く最適化された。機械的強度とPVC可塑剤の低い吸収との組み合わせがキーパラメーターである。本発明の別の重要な側面は、極性基の低い量である。これは、低電圧送電ケーブルに特に重要である、なぜなら低電圧送電ケーブルは非常に費用効果的でなければならないからである。それらは通常、唯一つの組み合わされた絶縁層、及び一般的に非常に薄いジャケット層でできている。この層が高い電気抵抗及び良好な機械的強度を有することがどれほど重要であるか十分に強調され得ることはない。これは少ない量の極性基で達成される。本発明の別の側面は、良好な剥離性を有する化合物を作ることである。もし組成物が高い量のコポリマーを含むならば、組成物はより柔らかくなる。これは、剥離が低くなることを意味する。剥離は例えば高い程度の振動を有する工業用途において重要である。これは、極性基の量が低くなければならないことのもう一つの理由である。
【0022】
表現「極性基を有する化合物」は、極性基を有する唯一つの化学化合物が使用される場合及び2以上のそのような化合物の混合物が使用される場合の両者をカバーすることが意図される。
【0023】
好ましくは、極性基は、シロキサン、アミド、酸無水物、カルボキシル、カルボニル、ヒドロキシル、及びエポキシ基から選択される。
【0024】
該ポリオレフィンは、例えば、極性基を含む化合物でポリオレフィンをグラフト化することにより、即ち一般にはラジカル反応において、極性基含有化合物の添加によるポリオレフィンの化学変性により製造され得る。グラフト化は、例えば米国特許第3,646,155号、及び米国特許第4,117,195号に記載されている。
【0025】
しかし該ポリオレフィンは、極性基を有するコモノマーとオレフィンモノマーを共重合化させることにより製造されることが好ましい。そのような場合、完全なコモノマーは、表現「極性基を有する化合物」により示される。従って、共重合化により得られたポリオレフィン中の極性基を有する化合物の重量画分は、モノマーと、ポリマーへと重合化された重合化された及び極性基を有するコモノマーとの重量比を用いることにより簡単に計算され得る。例えば、該ポリオレフィンが、オレフィンモノマーを、極性基を含むビニル化合物と共重合化させることにより製造される場合、重合化のあとポリマーの骨格部分を形成するビニル部分も、「極性基を有する化合物」の重量画分に貢献する。
【0026】
極性基を有するコモノマーの例として、以下が挙げられ得る:(a)ビニルカルボキシレートエステル、例えばビニルアセテート及びビニルピバレート、(b)(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(c)オレフィン性不飽和カルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及びフマール酸、(d)(メタ)アクリル酸誘導体、例えば(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミド、及び(e)ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル及びビニルフェニルエーテル。
【0027】
これらのコモノマーの中で、1〜4の炭素原子を有するモノカルボン酸のビニルエステル、例えばビニルアセテート、及び1〜4の炭素原子を有するアルコールの(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレートが好ましい。特に好ましいコモノマーは、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、及びメチルアクリレートである。2以上のそのようなオレフィン性不飽和化合物は、組み合わせて使用され得る。用語「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を含むと理解される。
【0028】
好ましくは、該ポリオレフィンは、少なくとも0.05モル%の、より好ましくは0.1モル%の、一層さらに好ましくは0.2モル%の極性基を有する極性化合物を含む。さらに、ポリオレフィン化合物は2.5モル%未満、より好ましくは2.0モル%未満、一層より好ましくは1.5モル%未満の極性基を有する極性化合物を含む。
【0029】
好ましい実施態様において、該ポリオレフィンは、エチレン性ホモポリマー又はコポリマー、好ましくはホモポリマーである。
【0030】
絶縁層の製造のために使用されるポリオレフィンは好ましくは、押出により低電圧送電ケーブルが製造された後、架橋される。そのような架橋を行うための一般的な方法は、押出後に加熱により分解されて、今度は架橋を実行する過酸化物をポリマー中に含むことである。普通、架橋されるべきポリオレフィンの量に基づいて1〜3重量%、好ましくは約2重量%の過酸化物が絶縁層の製造のために使用される組成物に添加される。
【0031】
しかし、絶縁層の製造に使用される、極性基を有する化合物を含むポリオレフィンへの、架橋できる基の取り込みにより、架橋を実行することが好ましい。
【0032】
加水分解可能なシラン基は、米国特許第3646155号及び米国特許第4117195号に記載されるようにグラフト化により、又は好ましくは、シラン基を含むコモノマーの共重合化によりポリマー中に導入され得る。
【0033】
シラン基を有するコモノマーは、表現「シラン基を有する化合物」により表される。
【0034】
好ましくは、シラン基を含むポリオレフィンは、共重合化により得られた。ポリオレフィン、好ましくはポリエチレンの場合、共重合化は下記式により表される不飽和シラン化合物を用いて好ましく実行される。

SiR3−q (I)


ここで
は、エチレン性不飽和の炭化水素、ハイドロカルビルオキシ、又は(メタ)アクリルオキシ炭化水素基であり、
は脂肪族飽和炭化水素基であり、
Yは、同じであるか又は異なり、加水分解可能な、又は有機基であり、
qは0、1、又は2である。
【0035】
不飽和シラン化合物の具体的な例は、Rがビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキサニル、又はガンマ−(メタ)アクリルオキシプロピルであり;Yは、メトキシ、エトキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロピオニルオキシ、又はアルキル又はアリールアミノ基であり;Rは、もし存在するならば、メチル、エチル、プロピル、デシル、又はフェニル基である。
【0036】
好ましい不飽和シラン化合物は下記式により表される
【0037】
【化1】

ここで、Aは1〜8、好ましくは1〜4の炭素原子を有する炭化水素基である。
【0038】
最も好ましい化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルビスメトキシエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ガンマ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、及びビニルトリアセトキシシランである。
【0039】
オレフィン、例えばエチレン、と不飽和シラン化合物との共重合化は、2つのモノマーの共重合化をもたらす任意の適切な条件下で実行され得る。
【0040】
本発明に従うシラン含有ポリマーは、0.001〜15重量%の、好ましくは0.01〜5重量%の、最も好ましくは0.1〜2重量%のシラン基含有化合物を適切に含む。
【0041】
酸性のシラノール縮合触媒の例は、ルイス酸、無機酸、例えば硫酸及び塩酸、有機酸、例えばクエン酸、ステアリン酸、酢酸、スルホン酸、及びアルカン酸、例えばドデカン酸を含む。
【0042】
シラノール縮合触媒の好ましい例は、スルホン酸、及び有機スズ化合物である。
【0043】
シラノール縮合触媒は、式(III)に従う、スルホン酸化合物、又はその前駆体であることが好ましく、
ArSOH (III)
ここでArは、炭化水素基で置換されたアリール基であり、化合物全体は14〜28の炭素原子を含む。
【0044】
好ましくは、Ar基は、炭化水素置換されたベンゼン又はナフタレン環であり、該炭化水素基は、ベンゼン環の場合8〜20の炭素原子を、ナフタレン環の場合4〜18の炭素原子を含む。
【0045】
該炭化水素基は10〜18の炭素原子を有するアルキル置換基であることがさらに好ましく、アルキル置換基が12の炭素原子を有し、ドデシル及びテトラプロピルから選択されることが一層より好ましい。市販入手の可能性のために、アリール基が12の炭素原子を含むアルキル置換基で置換されたベンゼンであることが最も好ましい。
【0046】
現在、最も好ましい式(III)の化合物は、ドデシルベンゼンスルホン酸、及びテトラプロピルベンゼンスルホン酸である。
【0047】
シラノール縮合触媒は、式(III)の化合物の前駆体、即ち加水分解により式(III)の化合物へ転化される化合物でもまたあり得る。そのような前駆体は、例えば式(III)のスルホン酸化合物の酸無水物である。別の例は加水分解可能な保護基、例えばアセチル基、を与えられた、式(III)のスルホンであり、該基は、加水分解により除去されて、式(III)のスルホン酸を与える。シラノール縮合触媒は、0.0001〜3重量%の量で使用される。
【0048】
シラノール縮合触媒の好ましい量は、絶縁層のために使用されるポリマー組成物中のシラノール基含有ポリオレフィンの量に基づいて、0.001〜2重量%、より好ましくは0.005〜1重量%である。
【0049】
触媒の有効量は、使用される触媒の分子量に依存する。即ち、より少量の低い分子量を有する触媒が、高い分子量を有する触媒より必要とされる。
【0050】
触媒がマスターバッチ中に含まれるならば、マスターバッチは、触媒を0.02〜5重量%、より好ましくは約0.05〜2重量%の量で含むことが好ましい。
【0051】
低電圧送電ケーブルの絶縁層は、用途に依存して好ましくは0.4mm〜3.0mmの、好ましくは2mm以下の厚さを有する。
【0052】
好ましくは、絶縁層は電気導体上に直接、被覆される。
【0053】
さらに、極性基を有する化合物を含むポリオレフィン、及び加水分解可能なシラン基を有する化合物を含み、本発明に従う低電圧ケーブルの製造のために使用されるシラノール縮合触媒を含むポリマー組成物は、最終的な絶縁層の機械的性質の低下を起こさずに、予熱されていない、又はわずかに予熱されただけの導体の上への絶縁層の直接押出を可能にする。
【0054】
従って本発明は、導体及び絶縁層を含む低電圧送電ケーブルを製造する方法であって、絶縁層は1100kg/m未満の密度を有し、該層は極性基を有する化合物0.02〜4モル%を含むポリオレフィンを含み、65℃以下の温度まで予熱された、好ましくは40℃以下の温度まで予熱された、一層より好ましくは予熱されていない導体の上に絶縁層を押出すことを含む方法をもまた提供する。
【0055】
場合により、導体及び絶縁層の間に、プライマーが施与されることができる。
【0056】
いっそうさらに、本発明は、低電圧送電ケーブルのための、1100kg/m未満の密度を有する絶縁層の製造において、極性基を有する化合物0.02〜4モル%を含むポリオレフィンを使用する方法に関する。
【0057】
本発明は、実施例及び以下の図面によりさらに説明される。
【実施例】
【0058】
1.絶縁層の製造に使用された組成物
a)ポリマーA(比較例)は、エチレンモノマー及びビニルトリメトキシシラン(VTMS)コモノマーの遊離ラジカル共重合化により得られた、0.23モル%(1.25重量%)のビニルトリメトキシシラン(VTMS)を含むエチレンコポリマーである。ポリマーAは、922kg/mの密度及び1.00g/10分のMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0059】
b)ポリマーB(比較例)は、ポリマーAと同じ方法で得られた、0.25モル%(1.3重量%)のビニルトリメトキシシラン(VTMS)を含むエチレンコポリマーである。ポリマーBは、925kg/mの密度及び1.1g/10分のMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0060】
c)ポリマーCは、重合化の間にブチルアクリレートコポリマーが添加されたことを除いてポリマーAと同じ方法で得られた、0.25モル%(1.3重量%)のビニルトリメトキシシラン(VTMS)及び0.33モル%(1.5重量%)のブチルアクリレート(BA)を含むエチレンコポリマーである。ポリマーCは、925kg/mの密度及び0.9g/10分のMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0061】
d)ポリマーDは、重合化の間にブチルアクリレートコモノマーが添加されたことを除いてポリマーAと同じ方法で得られた、0.26モル%(1.3重量%)のビニルトリメトキシシラン(VTMS)及び0.91モル%(4.0重量%)のブチルアクリレート(BA)を含むエチレンコポリマーである。ポリマーDは、925kg/mの密度及び0.8g/10分のMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0062】
e)ポリマーEは、重合化の間にブチルアクリレートコモノマーが添加されたことを除いてポリマーAと同じ方法で得られた、0.30モル%(1.5重量%)のビニルトリメトキシシラン(VTMS)及び1.6モル%(7重量%)のブチルアクリレート(BA)を含むエチレンコポリマーである。ポリマーEは、1.69g/10分のMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0063】
f)ポリマーFは、重合化の間にブチルアクリレートコモノマーが添加されたことを除いてポリマーAと同じ方法で得られた、0.34モル%(1.7重量%)のビニルトリメトキシシラン(VTMS)及び2.9モル%(12重量%)のブチルアクリレート(BA)を含むエチレンコポリマーである。ポリマーFは、925kg/mの密度及び1.50g/10分のMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0064】
g)ポリマーGは、重合化の間にブチルアクリレートコモノマーが添加されたことを除いてポリマーAと同じ方法で得られた、1.8モル%(8重量%)のブチルアクリレート(BA)を含むエチレンコポリマーである。ポリマーGは、923kg/mの密度及び0.50g/10分のMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0065】
h)ポリマーHは、重合化の間にブチルアクリレートコモノマーが添加されたことを除いてポリマーAと同じ方法で得られた、4.3モル%(17重量%)のブチルアクリレート(BA)を含むエチレンコポリマーである。ポリマーHは、925kg/mの密度及び1.20g/10分のMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0066】
i)ポリマーHは、重合化の間にブチルアクリレートコモノマーが添加されたことを除いてポリマーAと同じ方法で得られた、0.43モル%(1.9重量%)のビニルトリメトキシシラン(VTMS)及び、4.4モル%(17重量%)のブチルアクリレート(BA)を含むエチレンコポリマーである。ポリマーIは、4.5g/10分のMFR(190℃、2.16kg)及び928kg/mの密度を有する。
【0067】
j)触媒マスターバッチCM−Aは、17重量%のブチルアクリレート(BA)含有量及びMFR=8g/10分を有するエチレンブチルアクリレート(BA)コポリマーに混合された、1.7重量%のドデシルベンゼンスルホン酸架橋触媒、乾燥剤、及び抗酸化剤からなる。
【0068】
k)ポリウレタンをベースとするキャスト樹脂PU300は、1キロボルトのケーブルジョイント(VDE0291 テール2タイプ RLS−Wに従うケーブルジョイント)のために使用されることを意図された、自然な色に着色された充填剤なしの2成分系である。それは1225kg/mの密度及び55の硬度(ショアD)を有する。キャスト樹脂は、Hohne GmbHにより製造されている。
【0069】
l)ポリウレタンをベースとするキャスト樹脂PU304は、1キロボルトのケーブルジョイントに使用されることを意図された、青色の充填剤入り2成分系である。それは1340kg/mの密度及び60の硬度(ショアD)を有する。キャスト樹脂は、Hohne GmbHにより製造されている。
【0070】
ポリマー中のブチルアクリレートの量は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)により測定された。ブチルアクリレートの重量%/モル%は、3450cm−1におけるブチルアクリレートのピークから決定され、該ピークは2020cm−1におけるポリエチレンのピークと比較された。
【0071】
ポリマー中のビニルトリメトキシシランの量は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)により測定された。ビニルトリメトキシシランの重量%は、945cm−1におけるシランのピークから決定され、該ピークは2665cm−1におけるポリエチレンのピークと比較された。
【0072】
2.低電圧送電ケーブルの製造
8mmの固体アルミニウム導体及び0.8mm(表1の資料の場合)及び0.7mm(図1及び図2の試料の場合)の厚さの絶縁層からなるケーブルが、Nokia−Maillefer60mm押出機で、75m/分のライン速度において以下の条件を適用することにより製造された。
【0073】
ダイ:圧力(表1の試料の場合、3.65の直径を有するワイヤガイド及び5.4mmの直径を有するプレッシャーダイ、及び図1及び図2の試料の場合、3.0の直径を有するワイヤガイド及び4.4mmの直径を有するプレッシャーガイド)。
導体:他に明記がない場合は、予熱なし。
冷却バス温度:23℃
ねじ:エリーゼ(Elise)
温度プロファイル:表1、図1及び図2の試料の場合、150、160、170、170、170、170、170、170℃。
【0074】
架橋された資料の場合、触媒マスターバッチは押出の前にポリマー中へドライブレンドされた。
【0075】
3.試験方法
a)機械的性質及び接着性
ケーブルの機械的評価は、ISO527に従って行われ、ポリウレタンへの接着の試験は、VFE0472−633に基づいて行われた。
【0076】
b)PVCによるエージング
絶縁物質のプラークが100℃において168時間オーブン中に置かれる。PVCプラークは、絶縁物質プラークの両面に置かれる。試験の後、ダンベルがプラークから打ち抜かれ、23℃、50%の湿度において24時間コンディショニングされる。次にISO527に従って引張試験が行われる。PVCと共にエージングされた試料もまたエージングの前及び後に秤量される。PVCへの接触なしに100℃において168時間エージングされた試料及びエージングされなかった他の試料もまたISO527に従って試験された。
【0077】
4.結果
表1に与えられた結果は、それぞれ架橋された、及び架橋されていない(熱可塑性)ポリマーE、F、及びG、Hの両方の場合、極性基を含有するブチルアクリレートコモノマーをポリマー中に取り込むと、機械的性質が改善されることを示す。
【0078】
さらに、表2において、ポリマーC及びDのポリウレタンへの接着性は、低量の取り込まれたブチルアクリレートの場合でさえ改善され、その結果、VDE0472−633に従うポリウレタンへの良好な接着性が得られることが示される。
【0079】
図1及び図2は、絶縁層が、比較物質同じ導体予熱温度において押出されるとき、本発明に従う低電圧送電ケーブルの機械的性質が改善されることを示す。特に、破断時伸びの場合、全く予熱されない場合にもまた当てはまる。
【0080】
表3は、驚いたことに、極性基を含む絶縁物質が、参照に比較してより多くの可塑剤を吸収するときでさえ、PVC中の可塑剤により起こされる機械的性質の低下に対する耐性を改善したことを示す。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】ポリマーA(比較例)及びポリマーDについて、導体の予熱温度の関数としての破断時引張強さを示す図である。
【図2】ポリマーA(比較例)及びポリマーDについて、導体の予熱温度の関数としての破断時伸びを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1100kg/m未満の密度を有する絶縁層を含む低電圧送電ケーブルであって、該絶縁層が、極性基を有する化合物を0.02〜4モル%を含み、加水分解可能なシラン基を有する化合物をさらに含むポリオレフィンを含み、かつ0.0001〜3重量%のシラノール縮合触媒を含む、低電圧送電ケーブル。
【請求項2】
極性基がシロキサン、アミド、無水物、カルボキシル、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、及びエポキシ基から選択されるところの、請求項1に記載の低電圧送電ケーブル。
【請求項3】
極性基を有する化合物がブチルアクリレートであるところの、請求項2に記載の低電圧送電ケーブル。
【請求項4】
ポリオレフィンが、極性基を有する化合物を0.1〜2.0モル%含むところの、請求項1〜3のいずれか1項に記載の低電圧送電ケーブル。
【請求項5】
ポリオレフィンがシラン基を有する化合物を0.001〜15重量%含むところの、請求項1に記載の低電圧送電ケーブル。
【請求項6】
ポリマー組成物が、シラノール縮合触媒としてスルホン酸又は有機スズ化合物をさらに含むところの、請求項1又は5のいずれか1項に記載の低電圧送電ケーブル。
【請求項7】
絶縁層の厚さが0.4〜3mmであるところの、請求項1〜6のいずれか1項に記載の低電圧送電ケーブル。
【請求項8】
導体及び絶縁層を含む低電圧送電ケーブルであって、絶縁層が極性基を有する化合物を0.02〜4モル%含むポリオレフィンを含むところのケーブルを製造する方法において、65℃以下の温度まで予熱された導体上に絶縁層を押出すことを含む方法。
【請求項9】
絶縁層の押出が予熱されていない導体上で行われるところの、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
低電圧送電ケーブルのための絶縁層の製造において、極性基を有する化合物を0.02〜4モル%含むポリオレフィンを使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−509473(P2007−509473A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536061(P2006−536061)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011979
【国際公開番号】WO2005/041215
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(500224380)ボレアリス テクノロジー オイ (39)
【Fターム(参考)】