説明

極端紫外光源装置

【課題】EUV光発生チャンバのウインドウの劣化等を容易にチェックすることが可能なEUV光源装置を提供する。
【解決手段】このEUV光源装置は、ドライバーレーザ1と、EUV光発生チャンバ2と、ウインドウ6と、EUV光集光ミラー8と、レーザ光を発散する凹レンズ41と、発散されたレーザ光をコリメートする凸レンズ42と、コリメートされたレーザ光を反射して集光する放物凹面鏡43と、放物凹面鏡43の位置及び角度を調整する放物凹面鏡調整機構44と、EUV光発生時において閉じられ、EUV光非発生時において開かれるゲートバルブ16と、EUV光非発生時にゲートバルブ16を通過したレーザ光の強度を検出するレーザ光検出器61と、レーザ光の強度に基づいて、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43の劣化を検出するレーザ光光学系劣化チェック処理部80とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等を露光するために用いられる極端紫外光を発生するLPP(laser produced plasma)型EUV(extreme ultra violet:極端紫外)光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴い、光リソグラフィの微細化も急速に進展しており、次世代においては、100nm〜70nmの微細加工、さらには50nm以下の微細加工が要求されるようになっている。そのため、例えば、50nm以下の微細加工に応じるべく、波長13nm程度の極端紫外光を発生するEUV光源と縮小投影反射光学系(catadioptric system)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光源としては、レーザビームをターゲットに照射することによって生成するプラズマを用いたLPP(laser produced plasma)光源と、放電によって生成するプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)光源と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)光源との3種類がある。これらの内でも、LPP光源は、プラズマ密度をかなり大きくできるので黒体輻射に近い極めて高い輝度が得られ、ターゲット材料を選択することにより必要な波長帯のみの発光が可能であり、ほぼ等方的な角度分布を持つ点光源であるので光源の周囲に電極等の構造物がなく、2πsteradという極めて大きな捕集立体角の確保が可能であること等の利点から、数十ワット以上のパワーが要求されるEUVリソグラフィ用の光源として有力であると考えられている。
【0004】
図22は、従来のLPP型のEUV光源装置の概要を示す図である。図22に示すように、このEUV光源装置は、ドライバーレーザ101と、EUV光発生チャンバ102と、ターゲット物質供給部103と、レーザ光集光光学系104とを含んでいる。
【0005】
ドライバーレーザ101は、ターゲット物質を励起させるために用いられる駆動用のレーザ光を発生する発振増幅型レーザ装置である。
EUV光発生チャンバ102は、EUV光の生成が行われるチャンバであり、ターゲット物質のプラズマ化を容易にするとともにEUV光の吸収を防止するため、真空ポンプ105によって真空引きされている。また、EUV光発生チャンバ102には、ドライバーレーザ101から発生したレーザ光120をEUV光発生チャンバ102内に通過させるためのウインドウ106が取り付けられている。さらに、EUV光発生チャンバ102の内部には、ターゲット噴射ノズル103aと、ターゲット回収筒107と、EUV光集光ミラー108とが配置されている。
【0006】
ターゲット物質供給部103は、EUV光を発生するために用いられるターゲット物質を、ターゲット物質供給部103の一部であるターゲット噴射ノズル103aを介して、EUV光発生チャンバ102内に供給する。供給されたターゲット物質の内、レーザ光が照射されずに不要となったものは、ターゲット回収筒107によって回収される。
【0007】
レーザ光集光光学系104は、ドライバーレーザ101から出射したレーザ光120をEUV光発生チャンバ102の方向に反射するミラー104aと、ミラー104の位置及び角度(アオリ角)を調整するミラー調整機構104bと、ミラー104aによって反射されたレーザ光120を集光する集光素子104cと、集光素子104cをレーザ光の光軸に沿って移動させる集光素子調整機構104dとを含んでいる。レーザ光集光光学系104によって集光されたレーザ光120は、ウインドウ106、及びEUV光集光ミラー108の中央部に形成された孔を通過して、ターゲット物質の軌道上に達する。このように、レーザ光集光光学系104は、レーザ光120をターゲット物質の軌道上に焦点を形成するように集光する。それにより、ターゲット物質109が励起してプラズマ化し、EUV光121が発生する。
【0008】
EUV光集光ミラー108は、例えば、13.5nmの光を高反射率で反射するMo/Si膜がその表面に形成された凹面鏡であり、発生したEUV光121を反射することによりIF(中間集光点)に集光する。EUV光集光ミラー108によって反射されたEUV光121は、EUV光発生チャンバ102に設けられたゲートバルブ110、及びプラズマから発生した光の内の不要な光(EUV光より波長が短い電磁波(光)、EUV光より波長が長い光(例えば、紫外線、可視光線、赤外線等)を除去して所望のEUV光(例えば、波長13.5nmの光)のみを透過させるフィルタ111を通過する。IF(中間集光点)に集光されたEUV光121は、その後、伝送光学系を介して露光器等へ導かれる。
【0009】
EUV光発生チャンバ102内において発生したプラズマからは大きなエネルギーが輻射されるため、この輻射により、EUV光発生チャンバ102内の部品の温度が上昇してしまう。このような部品の温度上昇を防止する技術が知られている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0010】
特許文献1には、標的材料をプラズマ化し、該プラズマからX線を輻射させるX線源と、該X線源を収容する真空容器とを具備するX線発生装置であって、上記真空容器の内側に、赤外からX線領域の電磁波に対して吸収率が高い材料で形成された内壁が設けられていることを特徴とするX線発生装置が記載されている。このX線発生装置によれば、真空容器の内壁によって反射・散乱される輻射エネルギーのために真空容器内の部品が不必要に加熱されることを防止することができる。
【特許文献1】特開2003−229298号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、図22に示すEUV光発生チャンバ102内において発生したプラズマは、時間の経過とともに拡散し、その一部が原子やイオンとなって飛散する。この原子やイオンは、EUV光発生チャンバ102の内壁や構造物に照射される。
【0012】
上記のようなプラズマから飛散した原子の照射により、次のような現象が発生し得る。
(a)プラズマから飛散した原子が、ウインドウ106のEUV光発生チャンバ102の内部側の面に付着する。このようにしてウインドウ106のEUV光発生チャンバ102の内部側の面に付着した原子がレーザ光120を吸収してしまう。
【0013】
また、上記のようなプラズマから飛散したイオンの照射により、次のような現象が発生し得る。
(b)プラズマから飛散したイオンがウインドウ106のEUV光発生チャンバ102の内部側の面に照射され、ウインドウ106のEUV光発生チャンバ102の内部側の面が劣化する(面が荒れて、滑らかでなくなる)。これにより、ウインドウ106がドライバーレーザ101から出射されるレーザ光120を吸収するようになってしまう。
【0014】
(c)プラズマから飛散したイオンがEUV光発生チャンバ102の内壁や構造物に照射される。このスパッタリングによりEUV光発生チャンバ102の内壁や構造物から飛散した原子が、ウインドウ106のEUV光発生チャンバ102の内部側の面に付着する。このようにしてウインドウ106のEUV光発生チャンバ102の内部側の面に付着した原子が、レーザ光120を吸収してしまう。
【0015】
(d)ウインドウ106が、プラズマから発生する短い波長の電磁波(光)を吸収することにより、その材質が劣化する。これにより、ウインドウ106がレーザ光120を吸収するようになってしまう。
【0016】
(e)EUV光源装置の稼動期間が或る程度にまで長くなると、その間のレーザ光120の照射により、ウインドウ106の材質が劣化又は損傷する。これにより、ウインドウ106がレーザ光120を吸収するようになってしまう。
【0017】
上記(a)〜(e)の現象が発生すると、ターゲット物質をプラズマ化するためのエネルギーが低下し、EUV光121の発生効率が低下する。
【0018】
また、ウインドウ106やウインドウ106に付着した原子がレーザ光120を吸収すると、ウインドウ106の温度が上昇して、ウインドウ106の基板(基材)に歪が発生し、集光性が低下する。このような集光性の低下は、EUV光121の発生効率の更なる低下を招く。さらに、ウインドウ106の基板の歪が大きくなると、ひいてはウインドウ106の破損を招く。
【0019】
なお、レーザ光集光光学系104の一部(例えば、レンズ、ミラー等)が、EUV光発生チャンバ102の内部に配置される場合もある。そのような場合には、EUV光発生チャンバ102の内部に配置されたレーザ光集光光学系104の一部においても、上記(a)〜(e)の現象が発生し得る。特に、EUV光発生チャンバ102の内部にレーザ光を反射するミラーが配置されている場合に、そのミラーに上記(a)〜(e)の現象が発生すると、ミラーの反射面の増反射コーティングのレーザ光反射率が低下する。これにより、ターゲット物質をプラズマ化するためのエネルギーが低下し、EUV光121の発生効率が低下する。
【0020】
上記(a)〜(e)のような現象が発生し、ウインドウ106やレーザ光集光光学系104が劣化した場合には、劣化した光学素子を新たな光学素子に交換する必要がある。
しかしながら、レーザ光120はEUV光発生チャンバ102内のプラズマ発生位置(ターゲット物質の軌道上)に集光されるため、ウインドウ106やレーザ光集光光学系104が劣化したか否かを容易に知ることが出来ず、迅速に対応措置を執る(光学素子の交換を行う)ことが出来ないという問題があった。
【0021】
一方、ウインドウ106やレーザ光集光光学系104の劣化の他に、プラズマ発生の不安定化を招き、ひいてはEUV光121の発生効率を変動又は低下させる要因として、レーザ光121の集光(焦点)位置のずれが挙げられる。レーザ光121の集光位置のずれは、レーザ光集光光学系104のアライメントのずれや、ドライバーレーザ101のポインティングのずれ等により発生ずる。レーザ光集光光学系104のアライメントのずれは、主に、EUV光源装置の稼動に伴い、レーザ光集光光学系104に含まれる光学素子やそのような光学素子をホールドする光学素子ホルダーに熱負荷がかかり、光学素子や光学素子ホルダーが変形することにより生ずる。また、ドライバーレーザ101のポインティングのずれは、主に、EUV光源装置の稼動に伴い、ドライバーレーザ101内の素子や構成部品に熱負荷がかかり、素子や構成部品が変形することにより生ずる。
【0022】
上記のようなレーザ光121の集光位置のずれが発生した場合には、プラズマ発生位置(ターゲット物質の軌道上)における集光スポットサイズや強度分布が適正ではなくなってしまったり、レーザ光121がターゲット物質から逸れてしまうため、プラズマ発生の不安定化を招き、ひいてはEUV光121の発生効率が変動又は低下してしまう。
【0023】
なお、レーザ光121の集光位置のずれは、光学素子の交換を行うことなく、レーザ光集光光学系104のアライメントを再調整することにより修正可能である。それにより、レーザ光121の集光位置を本来あるべき位置(プラズマ発生位置)に戻すことができ、プラズマ発生を安定化させ、ひいてはEUV光121の発生効率を本来の値に戻すことができる。
【0024】
しかしながら、レーザ光120はEUV光発生チャンバ102内(プラズマ発生位置)に集光されるため、レーザ光121の集光位置のずれが生じたか否かを容易に知ることが出来ず、迅速に対応措置を執る(レーザ光集光光学系104のアライメントを再調整する)ことが出来ないという問題があった。
【0025】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、EUV光発生チャンバのウインドウ及び/又はレーザ光集光光学系の劣化等によるEUV光の発生効率の低下や変動に迅速に対処することが可能な極端紫外光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る極端紫外光源装置は、ターゲット物質にレーザ光を照射することによりターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、極端紫外光の発生が行われる極端紫外光発生チャンバと、極端紫外光の発生が行われるときに、ターゲット物質を極端紫外光発生チャンバ内に噴射するターゲット物質供給部と、レーザ光を出射するドライバーレーザと、極端紫外光発生チャンバに設けられ、レーザ光を極端紫外光発生チャンバ内に透過させるウインドウと、少なくとも1つの光学素子を含むレーザ光集光光学系であって、ドライバーレーザから出射されたレーザ光を極端紫外光発生チャンバ内に噴射されるターゲット物質の軌道上に集光させることによりプラズマを発生させるレーザ光集光光学系と、プラズマから放出される極端紫外光を集光して出射する極端紫外光集光光学系と、極端紫外光発生チャンバの外部に設けられ、極端紫外光の発生が行われないときに、レーザ光集光光学系によって集光された後にターゲット物質に照射されることなく発散して極端紫外光発生チャンバから出射したレーザ光の強度を検出するレーザ光強度検出器と、極端紫外光の発生が行われないときに、レーザ光強度検出器によって検出されたレーザ光の強度に基づいて、ウインドウ及び/又は少なくとも1つの光学素子の劣化を判定する処理部とを具備する。
【0027】
また、上記課題を解決するため、本発明の第2の観点に係る極端紫外光源装置は、ターゲット物質にレーザ光を照射することによりターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、極端紫外光の発生が行われる極端紫外光発生チャンバと、極端紫外光の発生が行われるときに、ターゲット物質を極端紫外光発生チャンバ内に噴射するターゲット物質供給部と、レーザ光を出射するドライバーレーザと、極端紫外光発生チャンバに設けられ、レーザ光を極端紫外光発生チャンバ内に透過させるウインドウと、少なくとも1つの光学素子を含むレーザ光集光光学系であって、ドライバーレーザから出射されたレーザ光を極端紫外光発生チャンバ内に噴射されるターゲット物質の軌道上に集光させることによりプラズマを発生させるレーザ光集光光学系と、プラズマから放出される極端紫外光を集光して出射する極端紫外光集光光学系と、極端紫外光発生チャンバの外部に設けられ、極端紫外光の発生が行われないときに、レーザ光集光光学系によって集光された後にターゲット物質に照射されることなく発散して極端紫外光発生チャンバから出射したレーザ光を再び集光するレーザ光再集光光学系と、レーザ光再集光光学系によって集光されたレーザ光の画像を検出するエリアセンサと、極端紫外光の発生が行われないときに、エリアセンサによって検出されたレーザ光の画像に基づいて、ウインドウ及び/又は少なくとも1つの光学素子の劣化及び/又は歪み、及び/又は、レーザ光集光光学系によって集光されたレーザ光の焦点がプラズマを発生させる位置からずれていることを判定する処理部とを具備する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、EUV光発生チャンバのウインドウ及び/又はレーザ光集光光学系の劣化等を容易に検出することができる。これにより、EUV光の発生効率の低下や変動に迅速に対処することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明に係る極端紫外光源装置(以下において、単に「EUV光源装置」とも言う)の概要を示す模式図である。図1に示すように、このEUV光源装置は、ドライバーレーザ1と、EUV光発生チャンバ2と、ターゲット物質供給部3と、レーザ光集光光学系4とを含んでいる。
【0030】
ドライバーレーザ1は、ターゲット物質を励起させるために用いられる駆動用のレーザ光を発生する発振増幅型レーザ装置である。ドライバーレーザ1としては、公知の様々なレーザ(例えば、KrF、XeF等の紫外線レーザや、Ar、CO、YAG等の赤外レーザ等)を用いることができる。
【0031】
EUV光発生チャンバ2は、EUV光の生成が行われる真空チャンバである。EUV光発生チャンバ2には、ドライバーレーザ1から発生したレーザ光20をEUV光発生チャンバ2内に通過させるためのウインドウ6が取り付けられている。また、EUV光発生チャンバ2の内部には、ターゲット噴射ノズル3aと、ターゲット回収筒7と、EUV光集光ミラー8とが配置されている。
【0032】
ターゲット物質供給部3は、EUV光を発生するために用いられるターゲット物質を、ターゲット物質供給部3の一部であるターゲット噴射ノズル3aを介して、EUV光発生チャンバ2内に供給する。供給されたターゲット物質の内、レーザ光が照射されずに不要となったものは、ターゲット回収筒7によって回収される。ターゲット物質としては、公知の様々な材料(例えば、錫(Sn)、キセノン(Xe)等)を用いることができる。また、ターゲット物質の状態は、固体、液体、気体のいずれでも良く、連続流れ(ターゲット噴流)や液滴(ドロップレット)等の公知のいずれの態様でEUV光発生チャンバ2内の空間に供給しても良い。例えば、ターゲット物質として液体のキセノン(Xe)ターゲットを用いる場合には、ターゲット物質供給部3は、高純度キセノンガスを供給するガスボンベ、マスフローコントローラ、キセノンガスを液化するための冷却装置、ターゲット噴射ノズル等によって構成される。また、ドロップレットを生成する場合には、それらを含む構成に、ピエゾ素子等の加振装置が追加される。
【0033】
なお、ターゲット物質供給部3は、EUV光源装置がEUV光の発生を行う場合に、ターゲット物質をEUV光発生チャンバ2内に供給し、EUV光源装置がEUV光の発生を行わない場合には、ターゲット物質をEUV光発生チャンバ2内に供給しない。
【0034】
レーザ光集光光学系4は、ドライバーレーザ1から出射したレーザ光20を、ターゲット物質の軌道上に焦点を形成するように集光する。それにより、ターゲット物質9が励起してプラズマ化し、EUV光21が発生する。なお、レーザ光集光光学系4は、1つの光学素子(たとえば、1枚の凸レンズ等)で構成することもでき、複数の光学素子で構成することもできる。レーザ光集光光学系4を複数の光学素子で構成する場合には、それらの内のいくつかをEUV光発生チャンバ2内に配置することも可能である。
【0035】
EUV光集光ミラー8は、例えば、13.5nmの光を高反射率で反射するMo/Si膜がその表面に形成された凹面鏡であり、発生したEUV光21を反射することにより集光して伝送光学系に導く。さらに、このEUV光21は、伝送光学系を介して露光器等へ導かれる。なお、図1において、EUV光集光ミラー8は、紙面の手前方向にEUV光21を集光する。
【0036】
次に、本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置について説明する。
図2及び図3は、本実施形態に係るEUV光源装置を示す模式図である。図2は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時における様子を示す模式図であり、図3は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における様子を示す模式図である。なお、図2及び図3においては、ターゲット物質供給部3及びターゲット物質回収筒7(図1参照)の図示を省略しており、ターゲット物質は、紙面に垂直に噴射されるものとする。
【0037】
まず、図2を主に参照しながら、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時における動作について説明し、その後、図3を主に参照しながら、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における動作について説明する。
【0038】
図2に示すように、ドライバーレーザ1から図中の右方向に出射されたレーザ光20は、凹レンズ41によって発散され、凸レンズ42によってコリメートされ、ウインドウ6を透過してEUV光発生チャンバ2内に入射する。なお、凹レンズ41、凸レンズ42、及び、ウインドウ6の材質としては、合成石英、CaF、MgF等のようにレーザ光20の吸収が少ないものが望ましい。ドライバーレーザ1としてCOレーザ等の赤外レーザを用いる場合には、凹レンズ41、凸レンズ42、及び、ウインドウ6の材質として、ZnSe、GaAs、Ge、Si等が適する。また、凹レンズ41、凸レンズ42、及び、ウインドウ6の表面に誘電体多層膜による減反射(AR)コートを施すことが望ましい。
【0039】
EUV光発生チャンバ2内には、放物凹面鏡43と、放物凹面鏡43の位置及び角度(アオリ角)を調整する放物凹面鏡調整機構44とが配置されている。放物凹面鏡43の基板材質としては、合成石英、CaF、Si、Zerodur(ゼロデュア(登録商標))、Al、Cu、Mo等を用いることができ、そのような基板の表面に誘電体多層膜による反射コートを施すことが好ましい。
【0040】
図4(a)及び(b)は、放物凹面鏡調整機構44の例を示す図である。放物凹面鏡調整機構44は、図4(a)及び(b)に示すように、レーザ光の光軸の角度を調整するために、放物凹面鏡43の図中のθx方向及びθy方向におけるアオリ角を調整することが可能であるとともに、放物凹面鏡43のアオリ角を維持したまま、放物凹面鏡43を図中のx軸方向、y軸方向、及び、z軸方向に移動することが可能であることが望ましい。
【0041】
再び図2を参照すると、ウインドウ6を透過してEUV光発生チャンバ2内に入射したレーザ光20は、放物凹面鏡43によって、図中の上方に反射され、ターゲット物質の軌道上に集光される。それにより、ターゲット物質が励起してプラズマ化し、EUV光21が発生する。
【0042】
なお、このように入射光を一旦発散させた後に集光させることで、バックフォーカスの長さを焦点距離よりも長くすることができる。このような光学系は、レトロフォーカスと呼ばれる。
【0043】
EUV光集光ミラー8は、例えば、13.5nmの光を高反射率で反射するMo/Si膜がその表面に形成された凹面鏡であり、発生したEUV光21を図中の右方向に反射することによりIF(中間集光点)に集光する。EUV光集光ミラー8によって反射されたEUV光21は、EUV光発生チャンバ2に設けられたゲートバルブ10、及びプラズマから発生した光の内の不要な光(EUV光より波長が短い電磁波(光)、EUV光より波長が長い光(例えば、紫外線、可視光線、赤外線等)を除去して所望のEUV光(例えば、波長13.5nmの光)のみを透過させるフィルタ11を通過する。IF(中間集光点)に集光されたEUV光21は、その後、伝送光学系を介して露光器等へ導かれる。
【0044】
このEUV光源装置は、さらに、パージガスをそれぞれ噴出して供給するためのパージガス供給部31、32と、パージガス供給部31から噴出されるパージガスをウインドウ6のEUV光発生チャンバ2の内部側の面に導くためのパージガス導入路33と、パージガス供給部32から噴出されるパージガスを放物凹面鏡43の反射面に導くためのパージガス導入路34とを含んでいる。パージガスとしては、不活性ガス(例えば、Ar、He、N、Kr等)が望ましい。
【0045】
なお、EUV光源装置がEUV光の発生を行わない場合には、パージガス供給部31、32が、パージガスをそれぞれ噴出しないこととしても良い。
【0046】
また、EUV光発生チャンバ2の内壁には、ウインドウ6、放物凹面鏡43、及び、放物凹面鏡駆動機構44を囲むパージガスチャンバ50が取り付けられている。パージガスチャンバ50の図中の上方は、先細りの筒状になっており、その先端(図中上方)には、放物凹面鏡43によって反射されたレーザ光20を通過させるための開口部50aが設けられている。
【0047】
さらに、EUV光発生チャンバ2の図中の上方の部分には、ゲートバルブ16が配置されている。ゲートバルブ16は、EUV光源装置がEUV光の発生を行う場合(図2参照)には閉じられ、EUV光源装置がEUV光の発生を行わない場合(図3参照)には開かれる。そのため、EUV光源装置がEUV光の発生を行う場合に、プラズマやEUV光発生チャンバ2の内壁等がプラズマによって削られる(スパッタされる)ことにより飛散した物質やEUV光は、ゲートバルブ16によって遮蔽され、EUV光発生チャンバ2の外に出射することはない。
【0048】
次に、図3を参照しながら、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における動作について説明する。
【0049】
EUV光源装置がEUV光の発生を行わない場合には、先に説明したように、ターゲット物質供給部3は、ターゲット物質をEUV光発生チャンバ2内に供給せず、また、ゲートバルブ16は、開かれる。そのため、放物凹面鏡43によって集光されたレーザ光は、ターゲット物質を照射することなく、発散しながら、ゲートバルブ16を通過して、EUV光発生チャンバ2から図中の上方に出射する。
【0050】
ゲートバルブ16の図中の上方には、EUV光発生チャンバ2からゲートバルブ16を通過して出射するレーザ光を検出するためのレーザ光検出器61が配置されている。レーザ光検出器61としては、レーザ光に対する耐性の観点から、焦電型(パイロ)センサが好適である。
【0051】
ゲートバルブ16を通過したレーザ光は、レーザ光検出器61に入射し、レーザ光検出器61は、入射したレーザ光の強度を検出する。レーザ光検出器61によって検出されたレーザ光の強度を表す信号又はデータは、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43が劣化しているか否かを判定するための処理を実行するレーザ光光学系劣化チェック処理部80に送られる。なお、レーザ光光学系劣化チェック処理部80をパーソナルコンピュータ(PC)とプログラムで実現することができる。レーザ光光学系劣化チェック処理部80には、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43が劣化している場合に、そのことをユーザ(オペレータ)に報知するための警告灯81が接続されている。
【0052】
図5は、レーザ光光学系劣化チェック処理部80が実行する処理を示すフローチャートである。レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、EUV光源装置がEUV光の発光を行わない場合に、図5に示す処理を実行する。
【0053】
まず、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、レーザ光の強度Wを表す信号又はデータをレーザ光検出器61から受け取る(ステップS11)。
【0054】
先に説明したように、ウインドウ6に劣化が生じている場合には、レーザ光20がウインドウ6を透過する透過率が低下し、それにより、EUV光発生チャンバ2内に入射するレーザ光の強度が低下する。また、放物凹面鏡43の反射面に劣化が生じている場合には、放物凹面鏡43がレーザ光を反射する反射率が低下し、それにより、ターゲット物質に照射されるレーザ光の強度が低下する。
【0055】
そこで、ステップS12において、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上であるか否かをチェックし、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上である場合には、ウインドウ6及び放物凹面鏡43に劣化が生じていないと判定して処理を終了し、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上ではない場合には、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に劣化が生じていると判定して、処理をステップS13に移す。なお、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上である場合に、処理をステップS11に戻して、レーザ光の強度のチェックを繰り返し実行するようにしても良い。
【0056】
そして、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上ではない場合、すなわち、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に劣化が生じていると判定した場合には、そのことをユーザ(オペレータ)に報知する(ステップS13)。なお、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に劣化が生じていることを、警告灯81を点灯させたり点滅させたり点滅パターンを変更させたりすることで報知しても良い。また、ブザー等を鳴らせることで報知しても良いし、LCD等の表示装置に文字や画像を表示させることで報知しても良い。
【0057】
このように、本実施形態によれば、EUV光非発生時において、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43が劣化していることを容易に検出してユーザ(オペレータ)に報知することができるので、ユーザ(オペレータ)は、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43を交換しなければならないか否かを適切に把握することができる。これにより、EUV光を安定して発生させることが可能となる。
【0058】
また、本実施形態においては、EUV光源装置がEUV光の発生を行う場合(図2)にゲートバルブ16が閉じられるので、レーザ光検出器61がプラズマやEUV光発生チャンバ2の内壁等がプラズマによって削られる(スパッタされる)ことにより飛散した物質やEUV光によって破壊されることを防止することができる。
【0059】
なお、放物凹面鏡43のアライメント(位置及びアオリ角)を設計値近くに調整するために、凹レンズ41、凸レンズ42、ウインドウ6、及び、放物凹面鏡43をユニットとして一体に製作し、このユニットをEUV光発生チャンバ2に組み込む前に、設計上のレーザ光集光性能が得られるように、放物凹面鏡43のアライメントを済ませておくことが望ましい。
【0060】
また、本実施形態においては、2枚のレンズ(凹レンズ41及び凸レンズ42)を用いているが、3枚以上のレンズを用いるようにしても良い。また、ゲートバルブ16とレーザ光検出器61との間の光路上にND(Neutral Density:減光)フィルタを配置して、レーザ光検出器61に入射するレーザ光の強度を調整するようにしても良い。
【0061】
次に、本発明の第2の実施形態に係るEUV光源装置について説明する。
図6及び図7は、本実施形態に係るEUV光源装置を示す模式図である。図6は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時における様子を示す模式図であり、図7は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における様子を示す模式図である。なお、図6及び図7においては、ターゲット物質供給部3及びターゲット物質回収筒7(図1参照)の図示を省略しており、ターゲット物質は、紙面に垂直に噴射されるものとする。
【0062】
図6及び図7に示すように、このEUV光源装置は、先に説明した第1の実施形態に係るEUV光源装置(図2及び図3参照)に加えて、ウインドウ6の温度を検出する温度センサ82を更に含んでいる。温度センサ82としては、EUV光発生チャンバ2内の真空状態及び清浄な状態を維持できるように、例えば、シース型熱電対等を用いることができる。温度センサ82によって検出されたウインドウ6の温度を表す信号又はデータは、レーザ光光学系劣化チェック処理部80に送られる。
【0063】
本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時(図7参照)における動作は、先に説明した第1の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時(図3参照)における動作と同様であり、その場合には、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、先に説明した図5のフローチャートに示す処理を実行する。
【0064】
次に、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時(図6参照)における動作について説明する。
図8は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時(図6参照)にレーザ光光学系劣化チェック処理部80が実行する処理を示すフローチャートである。
【0065】
まず、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、ウインドウ6の温度Tを表す信号又はデータを温度センサ82から受け取る(ステップS21)。
【0066】
先に説明したように、ウインドウ6に劣化が生じている場合には、ウインドウ6がレーザ光20を吸収し、それにより、ウインドウ6の温度が上昇する。
【0067】
そこで、ステップS22において、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、ウインドウ6の温度Tが所定の閾値Tth以下であるか否かをチェックし、ウインドウ6の温度Tが所定の閾値Tth以下である場合には、ウインドウ6に劣化が生じていないと判定して、処理をステップS21に戻し、ウインドウ6の温度Tが所定の閾値Tth以下ではない場合には、ウインドウ6に劣化が生じていると判定して、処理をステップS23に移す。
【0068】
そして、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、ウインドウ6の温度Tが所定の閾値Tth以下ではない場合、すなわち、ウインドウ6に劣化が生じていると判定した場合には、そのことをユーザ(オペレータ)に報知する(ステップS23)。なお、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に劣化が生じていることを、警告灯81を点灯させたり点滅させたり点滅パターンを変更させたりすることで報知しても良いし、ブザー等を鳴らせることで報知しても良いし、LCD等の表示装置に文字や画像を表示させることで報知しても良い。また、このとき、レーザ光光学系劣化チェック処理部80が、ドライバーレーザ1に動作停止制御信号を出力し、ドライバーレーザ1の動作を停止させるようにしても良い。
【0069】
このように、本実施形態によれば、EUV光発生時において、ウインドウ6に劣化が生じていることを容易に検出してユーザ(オペレータ)に報知することができる。これにより、ウインドウ6に劣化が生じたか否かの判定をより確実なものにすることができる。
【0070】
次に、本発明の第3の実施形態に係るEUV光源装置について説明する。
図9及び図10は、本実施形態に係るEUV光源装置を示す模式図である。図9は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時における様子を示す模式図であり、図10は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における様子を示す模式図である。なお、図9及び図10においては、ターゲット物質供給部3及びターゲット物質回収筒7(図1参照)の図示を省略しており、ターゲット物質は、紙面に垂直に噴射されるものとする。
【0071】
図9及び図10に示すように、このEUV光源装置は、先に説明した第1の実施形態に係るEUV光源装置(図2及び図3参照)に加えて、ゲートバルブ16を通過したレーザ光を集光する凸レンズ63を更に具備する。また、本実施形態に係るEUV光源装置は、先に説明した第1及び第2の実施形態に係るEUV光源装置におけるレーザ光検出器61に代えて、それよりもサイズが小さいレーザ光検出器64を具備する。
【0072】
本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時(図9参照)における動作は、先に説明した第1の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時(図2参照)における動作と同様である。
【0073】
次に、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時(図10参照)における動作について説明する。
【0074】
図10に示すように、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時において、ゲートバルブ16を通過したレーザ光は、凸レンズ63により集光され、レーザ光検出器64に入射する。
なお、このとき、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、先に説明した図5のフローチャートに示す処理を実行する。
【0075】
本実施形態によれば、ゲートバルブ16を通過したレーザ光を集光する凸レンズ63を更に具備することにより、レーザ光検出器64のサイズを、先に説明した第1の実施形態におけるレーザ光検出器61よりも小さくすることが可能である。
【0076】
なお、本実施形態に係るEUV光源装置が、温度センサ82(図6及び図7参照)を更に具備することとし、レーザ光光学系劣化チェック処理部80が、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時において、図8のフローチャートに示す処理を実行するようにしても良い。
【0077】
次に、本発明の第4の実施形態に係るEUV光源装置について説明する。
図11及び図12は、本実施形態に係るEUV光源装置を示す模式図である。図11は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時における様子を示す模式図であり、図12は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における様子を示す模式図である。なお、図11及び図12においては、ターゲット物質供給部3及びターゲット物質回収筒7(図1参照)の図示を省略しており、ターゲット物質は、紙面に垂直に噴射されるものとする。
【0078】
図11及び図12に示すように、このEUV光源装置は、先に説明した第3の実施形態に係るEUV光源装置(図9及び図10参照)におけるレーザ光検出器64に代えて、レーザ光の2次元画像を撮像することができるエリアセンサ67を具備する。エリアセンサ67としては、CCDエリアセンサ、CMOSエリアセンサ等を用いることができる。凸レンズ63は、放物凹面鏡43によって集光された後に発散したレーザ光を、エリアセンサ67の受光面上に焦点を形成するように集光する。エリアセンサ67は、入射したレーザ光の2次元画像を検出し、その2次元画像を表す画像信号をレーザ光光学系劣化チェック処理部80に送る。本実施形態においては、エリアセンサ67が、(N×M)画素の画像信号をレーザ光光学系劣化チェック処理部80に送るものとする(N,Mは、2以上の整数)。
【0079】
本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時(図11参照)における動作は、先に説明した第1の実施形態に係るEUV光源装置と同様である。
【0080】
次に、図12を参照しながら、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における動作について説明する。
【0081】
図12に示すように、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時において、ゲートバルブ16を通過したレーザ光は、凸レンズ63により集光され、エリアセンサ67の受光面に結像される。
【0082】
図13は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時(図12参照)にレーザ光光学系劣化チェック処理部80が実行する処理を示すフローチャートである。
【0083】
まず、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、レーザ光の2次元画像を表す画像信号(以下、「画像データ」又は「撮像データ」という)をエリアセンサ67から受け取る(ステップS31)。図14(a)は、レーザ光光学系劣化チェック処理部80がエリアセンサ67から受け取る撮像データの例を示す図である。
【0084】
次に、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、所定のテンプレート画像データと撮像データとに対して、正規化相互相関関数を用いたパターンマッチング処理を行い、撮像データにおけるレーザ光の集光スポットの中心座標P(x,y)を求めるとともに、そのときの相関係数Rを算出する(ステップS32)。なお、本実施形態においては、テンプレート画像データは、ウインドウ6及び放物凹面鏡43に劣化やアライメントずれが生じていない正常時のレーザ光の集光スポットの画像データであり、(n×m)画素(n<N、m<M)であるものとする。図14(b)は、テンプレート画像の例を示す図である。図14(b)に示すテンプレート画像データにおいて、座標(0,0)と集光スポットの中心座標とのi軸方向のオフセットをioffとし、j軸方向のオフセットをjoffとする。
【0085】
次に、正規化相互相関関数を用いたパターンマッチング処理について説明する。正規化相互相関関数を用いたパターンマッチング処理とは、テンプレート画像データを構成する各画素値をT(i,j)(ここで、0≦i≦n−1、0≦j≦m−1)とし、撮像データを構成する各画素値をF(u,v)(ここで、0≦u≦N−1、0≦v≦M−1)としたときに、撮像データの各座標(u,v)の正規化相互相関係数NR(u,v)を下記の(1)式により計算し、正規化相互相関係数NR(u,v)の最大値を探すことで、撮像データ内においてテンプレート画像データと最も相関の高い領域(本実施形態においては、(n×m)画素の領域)を探す処理である。
【0086】
【数1】

【0087】
この(1)式において、
【数2】

である。
【0088】
また、
【数3】

である。
【0089】
上記した(1)式の値が最大となる撮像データの座標(umax,vmax)のu軸成分umaxに先に説明したオフセットioffを加えた値をxとし、v軸成分vmaxに先に説明したオフセットjoffを加えた値をyとし、座標(x,y)を集光スポットの中心座標P(x,y)とする。
また、NR(umax,vmax)を相関係数Rとする。
【0090】
すなわち、
x=umax+ioff …(4)
y=vmax+joff …(5)
R=NR(umax,vmax) …(6)
である。
【0091】
再び図13を参照すると、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、集光スポットの中心座標P(x,y)を中心とした所定の半径r内に位置する画素の画素値を積分し、その値をレーザ光の強度Wとする(ステップS33)。
【0092】
次に、ステップS34において、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上であるか否かをチェックし、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上ではない場合には、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に劣化が生じていると判定して、処理をステップS35に移し、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上である場合には、ウインドウ6及び放物凹面鏡43に劣化が生じていないと判定して、処理をステップS38に移す。
【0093】
ステップS35において、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、更に、相関係数Rが所定の閾値Rth以上であるか否かをチェックし、相関係数Rが所定の閾値Rth以上ではない場合には、集光スポットの分布が異常であり、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に歪みが生じているものと判定して、処理をステップS36に移し、相関係数Rが所定の閾値Rth以上である場合には、集光スポットの分布が正常であり、ウインドウ6及び放物凹面鏡43に歪みが生じていないものと判定して、処理をステップS37に移す。
【0094】
レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上ではなく且つ相関係数Rが所定の閾値Rth以上ではない場合には、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に劣化が生じているとともに、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に歪みが生じていると判定して、そのことをユーザ(オペレータ)に報知する(ステップS36)。この場合には、ユーザ(オペレータ)がウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43の交換を行うことで、正常にEUV光を発生させることができる。なお、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に劣化及び歪みが生じていることを、警告灯81を点灯させたり点滅させたり点滅パターンを変更させたりすることで報知しても良い。また、ブザー等を鳴らせることで報知しても良いし、LCD等の表示装置に文字や画像を表示させることで報知しても良い。
【0095】
一方、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上ではなく且つ相関係数Rが所定の閾値Rth以上である場合には、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に劣化が生じていると判定して、そのことをユーザ(オペレータ)に報知する(ステップS37)。この場合にも、ユーザ(オペレータ)がウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43の交換を行うことで、正常にEUV光を発生させることができる。
【0096】
ステップS38において、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上である場合にも、更に、相関係数Rが所定の閾値Rth以上であるか否かをチェックし、相関係数Rが所定の閾値Rth以上ではない場合には、レーザ光のフォーカスがレーザ光の光軸方向(図4(a)(b)のz軸方向)にずれていると判定して、処理をステップS39に移し、相関係数Rが所定の閾値Rth以上である場合には、レーザ光のフォーカスが光軸方向にずれていないと判定して、処理をステップS40に移す。
【0097】
レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上であり且つ相関係数Rが所定の閾値Rth以上ではない場合には、レーザ光のフォーカスがレーザ光の光軸方向(図4(a)(b)のz軸方向)にずれていると判定して、そのことをユーザ(オペレータ)に報知する(ステップS39)。この場合には、ユーザ(オペレータ)が放物凹面鏡調整機構44を操作して放物凹面鏡43を図4(a)(b)のz軸方向に移動させることで、所望のEUV光を発生させることができる。
【0098】
一方、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上であり且つ相関係数Rが所定の閾値Rth以上である場合には、更に、集光スポットの中心座標P(x,y)が所定の範囲内にあるか否かをチェックする(ステップS40)。集光スポットの中心座標P(x,y)が所定の範囲内にあるか否かは、xが所定の閾値xlとxhとの間(図14(a)参照)にあるか否か、すなわち、xl<x<xhが成立するか否か、及び、yが所定の閾値ylとyhとの間(図14(a)参照)にあるか否か、すなわち、yl<y<yhが成立するか否かで、チェックすることが可能である。
【0099】
ステップS40において、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、集光スポットの中心座標P(x,y)が所定の範囲内にある場合には、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に劣化、歪み、及び、アライメントずれが生じていないと判定して、処理を終了し、集光スポットの中心座標P(x,y)が所定の範囲内にない場合には、レーザ光のフォーカスがレーザ光の光軸と異なる方向にずれており、放物凹面鏡43にx、yアライメントずれが生じていると判定して、処理をステップS41に移す。放物凹面鏡43にx、yアライメントずれが生じている場合としては、放物凹面鏡43が図4(a)(b)のx軸方向及び/又はy軸方向にずれている場合や、放物凹面鏡43のアオリ角が図4(a)(b)のθx方向及び/又はθy方向にずれている場合がある。なお、ウインドウ6及び放物凹面鏡43に何らの異常もない場合に、処理をステップS31に戻して、レーザ光の強度のチェックを繰り返し実行するようにしても良い。
【0100】
ステップS41において、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、放物凹面鏡43にx、yアライメントずれが生じていることをユーザ(オペレータ)に報知する。この場合には、ユーザ(オペレータ)が放物凹面鏡調整機構44を操作して放物凹面鏡43を図4(a)(b)のx軸方向及び/又はy軸方向に移動させたり、放物凹面鏡43のアオリ角を調整することで、所望のEUV光を発生させることができる。
【0101】
このように、本実施形態によれば、EUV光非発生時において、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に劣化及び/又は歪みが生じていること、及び/又は、レーザ光のフォーカスがずれていることを容易に検出してユーザ(オペレータ)に報知することができるので、ユーザ(オペレータ)は、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43の交換を行わなければならないか否か、及び/又は、アライメント調整を行わなければならないか否かを、適切に把握することができる。これにより、EUV光を安定して発生させることが可能となる。
【0102】
なお、本実施形態においては、凸レンズ63によって集光されたレーザ光をエリアセンサ67に直接入射させることとしているが、図15に示すように、凸レンズ63によって集光されたレーザ光を可視蛍光板68に入射させて可視光線に変換し、その可視光線を凸レンズ69によって集光させて、可視光領域に感度を有する一般的なエリアセンサ70に入射させるようにしても良い。そのようにすれば、レーザ光領域に感度を有する高価なエリアセンサ67に代えて、可視光領域に感度を有する安価なエリアセンサ70を用いることが可能になる。また、本実施形態に係るEUV光源装置を長期間使用し、可視蛍光板68が劣化しても、エリアセンサ70が劣化することを抑制することができる。その場合には、エリアセンサ70よりも安価な可視蛍光板68を交換するだけで済み、エリアセンサ70を交換する必要はない。
【0103】
また、本実施形態に係るEUV光源装置が、温度センサ82(図6及び図7参照)を更に具備することとし、レーザ光光学系劣化チェック処理部80が、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時において、図8のフローチャートに示す処理を実行するようにしても良い。
【0104】
次に、本発明の第5の実施形態に係るEUV光源装置について説明する。
図16及び図17は、本実施形態に係るEUV光源装置を示す模式図である。図16は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時における様子を示す模式図であり、図17は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における様子を示す模式図である。なお、図16及び図17においては、ターゲット物質供給部3及びターゲット物質回収筒7(図1参照)の図示を省略しており、ターゲット物質は、紙面に垂直に噴射されるものとする。
【0105】
図16及び図17に示すように、このEUV光源装置は、先に説明した第3の実施形態に係るEUV光源装置(図9及び図10参照)に加えて、凸レンズ63によって集光されたレーザ光を分割するビームスプリッタ71と、先に説明した第4の実施形態に係るEUV光源装置(図11及び図12参照)におけるエリアセンサ67とを更に具備する。
【0106】
本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時(図16参照)における動作は、先に説明した第1の実施形態に係るEUV光源装置と同様である。
【0107】
次に、図17を参照しながら、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における動作について説明する。
【0108】
本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時において、ゲートバルブ16を通過したレーザ光は、凸レンズ63によって集光され、ビームスプリッタ71によって第1の方向(図中上側)と第2の方向(図中右側)とに分割される。ビームスプリッタ71を第1の方向に通過したレーザ光は、レーザ光検出器64に入射し、ビームスプリッタ71を第2の方向に通過したレーザ光は、エリアセンサ67に入射する。
【0109】
レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時において、レーザ光検出器64からの信号又はデータを用いて図5のフローチャートに示す処理を実行するとともに、エリアセンサ67からの画像データを用いて図13のフローチャートに示す処理を実行する。
【0110】
このように、本実施形態によれば、レーザ光の強度をレーザ光検出器64によって検出するとともに、レーザ光の中心座標等をエリアセンサ67によって検出することができる。これにより、ウインドウ6及び/又は放物凹面鏡43に劣化等が生じたか否かの判定をより確実なものにすることができる。
【0111】
なお、本実施形態に係るEUV光源装置が、温度センサ82(図6及び図7参照)を更に具備することとし、レーザ光光学系劣化チェック処理部80が、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時において、図8のフローチャートに示す処理を実行するようにしても良い。
【0112】
次に、本発明の第6の実施形態に係るEUV光源装置について説明する。
図18及び図19は、本実施形態に係るEUV光源装置を示す模式図である。図18は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時における様子を示す模式図であり、図19は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における様子を示す模式図である。なお、図18及び図19においては、ターゲット物質供給部3及びターゲット物質回収筒7(図1参照)の図示を省略しており、ターゲット物質は、紙面に垂直に噴射されるものとする。
【0113】
まず、図18を主に参照しながら、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時における動作について説明し、その後、図19を主に参照しながら、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における動作について説明する。
【0114】
図18に示すように、ドライバーレーザ1から図中の上方に出射されたレーザ光20は、凹レンズ45によって発散され、凸レンズ46によってコリメートされ、ビームスプリッタ72及びウインドウ6を透過してEUV光発生チャンバ13内に入射する。
【0115】
EUV光発生チャンバ13内には、球凹面鏡47と、球凹面鏡47の位置及び角度(アオリ角)を調整する球凹面鏡調整機構48が配置されている。
【0116】
ウインドウ6を透過してEUV光発生チャンバ13内に入射したレーザ光20は、球凹面鏡47によって、図中の下方に反射され、ターゲット物質の軌道上に集光される。それにより、ターゲット物質が励起してプラズマ化し、EUV光21が発生する。
【0117】
EUV光集光ミラー8は、発生したEUV光21を図中の右方向に反射することによりIF(中間集光点)に集光する。EUV光集光ミラー8によって反射されたEUV光21は、EUV光発生チャンバ13に設けられたゲートバルブ10、及びフィルタ11を通過する。IF(中間集光点)に集光されたEUV光21は、その後、伝送光学系を介して露光器等へ導かれる。
【0118】
このEUV光源装置は、さらに、パージガス供給部31、32と、パージガス供給部31から噴出されるパージガスをウインドウ6のEUV光発生チャンバ13の内部側の面に導くためのパージガス導入路35と、パージガス供給部32から噴出されるパージガスを球凹面鏡47の反射面に導くためのパージガス導入路36とを含んでいる。
【0119】
さらに、EUV光発生チャンバ13の内部には、ウインドウ6を囲むパージガスチャンバ51と、球凹面鏡47及び球凹面鏡駆動機構48を囲むパージガスチャンバ52とが配置されている。パージガスチャンバ51の図中の上方は、先細りの筒状になっており、その先端(図中上方)には、ウインドウ6を透過したレーザ光20を通過させるための開口部51aが設けられている。また、パージガスチャンバ52の図中の下方は、先細りの筒状になっており、その先端(図中下方)には、ウインドウ6を透過したレーザ光20及び球凹面鏡47によって反射されたレーザ光20を通過させるための開口部52aが設けられている。
【0120】
次に、図19を参照しながら、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における動作について説明する。
【0121】
EUV光源装置がEUV光の発生を行わない場合には、先に説明したように、ターゲット物質供給部3は、ターゲット物質をEUV光発生チャンバ13内に供給しない。そのため、球凹面鏡47によって集光されたレーザ光は、ターゲット物質を照射することなく、発散しながら、ウインドウ6を通過して、EUV光発生チャンバ13から図中の下方に出射する。
【0122】
EUV光発生チャンバ2から図中の下方に出射したレーザ光は、ビームスプリッタ72によって図中の左方に反射され、凸レンズ63によって集光され、レーザ光検出器64に入射する。なお、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時に、先に説明した図5のフローチャートに示す処理を実行する。
【0123】
本実施形態によれば、球凹面鏡47が凹レンズ45と凸レンズ46の色収差を補正する作用があるので、放物凹面鏡を用いた場合よりも、レーザ光20を効率良く集光することができる。それにより、EUV光を効率良く発生させることができる。
【0124】
なお、本実施形態に係るEUV光源装置が、温度センサ82(図6及び図7参照)を更に具備することとし、レーザ光光学系劣化チェック処理部80が、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時において、図8のフローチャートに示す処理を実行するようにしても良い。
【0125】
また、レーザ光検出器64に代えて又は加えて、エリアセンサ67を具備することとしても良い。その場合には、レーザ光光学系劣化チェック処理部80が、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時において、図13のフローチャートに示す処理を実行するようにしても良い。
【0126】
次に、本発明の第7の実施形態に係るEUV光源装置について説明する。
図20及び図21は、本実施形態に係るEUV光源装置を示す模式図である。図20は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時における様子を示す模式図であり、図21は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における様子を示す模式図である。なお、図20及び図21においては、ターゲット物質供給部3及びターゲット物質回収筒7(図1参照)の図示を省略しており、ターゲット物質は、紙面に垂直に噴射されるものとする。
【0127】
まず、図20を主に参照しながら、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時における動作について説明し、その後、図21を主に参照しながら、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における動作について説明する。
【0128】
図20に示すように、ドライバーレーザ1から図中の上方に出射されたレーザ光20は、レーザ光集光光学系49に入射する。
【0129】
レーザ光集光光学系49は、鏡筒49aと、鏡筒49a内に配置された凹レンズ49b、及び凸レンズ49c、49dと、鏡筒調整機構49eとを含んでいる。レーザ光集光光学系49に入射したレーザ光20は、凹レンズ49bによって発散され、凸レンズ49cによってコリメートされ、凸レンズ49dによって集光される。凸レンズ49dによって集光されたレーザ光20は、ウインドウ6を透過してEUV光発生チャンバ14に入射する。なお、鏡筒49aの位置及び角度(アオリ角)は、鏡筒調整機構49eによって調整可能である。
【0130】
EUV光発生チャンバ14内に入射したレーザ光20は、ターゲット物質の軌道上に集光される。それにより、ターゲット物質が励起してプラズマ化し、EUV光21が発生する。
【0131】
EUV光集光ミラー8は、発生したEUV光21を図中の右方向に反射することによりIF(中間集光点)に集光する。EUV光集光ミラー8によって反射されたEUV光21は、EUV光発生チャンバ14に設けられたゲートバルブ10、及びフィルタ11を通過する。IF(中間集光点)に集光されたEUV光21は、その後、伝送光学系を介して露光器等へ導かれる。
【0132】
このEUV光源装置は、さらに、パージガス供給部31と、パージガス供給部31から噴出されるパージガスをウインドウ6のEUV光発生チャンバ14の内部側の面に導くためのパージガス導入路37とを含んでいる。
【0133】
さらに、EUV光発生チャンバ14の内壁には、ウインドウ6を囲むパージガスチャンバ53が取り付けられている。パージガスチャンバ53の図中の上方は、先細りの筒状になっており、その先端(図中上方)には、ウインドウ6を透過したレーザ光20を通過させるための開口部53aが設けられている。
【0134】
次に、図21を参照しながら、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時における動作について説明する。
【0135】
本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時において、ゲートバルブ16を通過したレーザ光は、レーザ光検出器61に入射する。
レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、本実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時において、レーザ光検出器61からの信号又はデータを用いて図5のフローチャートに示す処理を実行する。
【0136】
なお、本実施形態においては、3枚のレンズ(凹レンズ49b、及び凸レンズ49c、49d)を用いているが、4枚以上のレンズを用いて、収差をより少なくするようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、半導体ウエハ等を露光する極端紫外光を発生するLPP型EUV光源装置において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明に係るEUV光源装置の概要を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時の様子を示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時の様子を示す模式図である。
【図4】図2及び図3の放物凹面鏡調整機構の例を示す模式図である。
【図5】図2及び図3のレーザ光光学系劣化チェック処理部が実行する処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時の様子を示す模式図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時の様子を示す模式図である。
【図8】図6及び図7のレーザ光光学系劣化チェック処理部が実行する処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時の様子を示す模式図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時の様子を示す模式図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時の様子を示す模式図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時の様子を示す模式図である。
【図13】図11及び図12のレーザ光光学系劣化チェック処理部が実行する処理を示すフローチャートである。
【図14】図11及び図12のエリアセンサによって撮像された画像データの例を示す図である。
【図15】図11及び図12のエリアセンサの代替として他のエリアセンサを用いた例を示す模式図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時の様子を示す模式図である。
【図17】本発明の第5の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時の様子を示す模式図である。
【図18】本発明の第6の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時の様子を示す模式図である。
【図19】本発明の第6の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時の様子を示す模式図である。
【図20】本発明の第7の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光発生時の様子を示す模式図である。
【図21】本発明の第7の実施形態に係るEUV光源装置のEUV光非発生時の様子を示す模式図である。
【図22】従来のEUV光源装置の概要を示す模式図である。
【符号の説明】
【0139】
1、101…ドライバーレーザ、2、12〜14、102…EUV光発生チャンバ、3、103…ターゲット物質供給部、3a、103a…ターゲット噴射ノズル、4、49、104…レーザ光集光光学系、5、105…真空ポンプ、6、106…ウインドウ、7、107…ターゲット回収筒、8、108…EUV光集光ミラー、9、109…ターゲット物質、10、16、110…ゲートバルブ、11、111…フィルタ、20、120…レーザ光、21、121…EUV光、31、32…パージガス供給部、33〜37…パージガス導入路、41、45、49b…凹レンズ、42、46、49c、49d、63、69…凸レンズ、43…放物凹面鏡、44…放物凹面鏡調整機構、47…球凹面鏡、48…球凹面鏡調整機構、49a…鏡筒、49e…鏡筒調整機構、50〜53…パージガスチャンバ、50a、51a、52a、53a…開口部、61、64…レーザ光検出器、67、70…エリアセンサ、68…可視蛍光板、71、72…ビームスプリッタ、80…レーザ光光学系劣化チェック処理部、81…警告灯、82…温度センサ、104a…ミラー、104b…ミラー調整機構、104c…集光素子、104d…集光素子調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質にレーザ光を照射することにより前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、
極端紫外光の発生が行われる極端紫外光発生チャンバと、
極端紫外光の発生が行われるときに、ターゲット物質を前記極端紫外光発生チャンバ内に噴射するターゲット物質供給部と、
レーザ光を出射するドライバーレーザと、
前記極端紫外光発生チャンバに設けられ、レーザ光を前記極端紫外光発生チャンバ内に透過させるウインドウと、
少なくとも1つの光学素子を含むレーザ光集光光学系であって、前記ドライバーレーザから出射されたレーザ光を前記極端紫外光発生チャンバ内に噴射されるターゲット物質の軌道上に集光させることによりプラズマを発生させる前記レーザ光集光光学系と、
前記プラズマから放出される極端紫外光を集光して出射する極端紫外光集光光学系と、
前記極端紫外光発生チャンバの外部に設けられ、極端紫外光の発生が行われないときに、前記レーザ光集光光学系によって集光された後にターゲット物質に照射されることなく発散して前記極端紫外光発生チャンバから出射したレーザ光の強度を検出するレーザ光検出器と、
極端紫外光の発生が行われないときに、前記レーザ光検出器によって検出されたレーザ光の強度に基づいて、前記ウインドウ及び/又は前記少なくとも1つの光学素子の劣化を判定する処理部と、
を具備する極端紫外光源装置。
【請求項2】
ターゲット物質にレーザ光を照射することにより前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、
極端紫外光の発生が行われる極端紫外光発生チャンバと、
極端紫外光の発生が行われるときに、ターゲット物質を前記極端紫外光発生チャンバ内に噴射するターゲット物質供給部と、
レーザ光を出射するドライバーレーザと、
前記極端紫外光発生チャンバに設けられ、レーザ光を前記極端紫外光発生チャンバ内に透過させるウインドウと、
少なくとも1つの光学素子を含むレーザ光集光光学系であって、前記ドライバーレーザから出射されたレーザ光を前記極端紫外光発生チャンバ内に噴射されるターゲット物質の軌道上に集光させることによりプラズマを発生させる前記レーザ光集光光学系と、
前記プラズマから放出される極端紫外光を集光して出射する極端紫外光集光光学系と、
前記極端紫外光発生チャンバの外部に設けられ、極端紫外光の発生が行われないときに、前記レーザ光集光光学系によって集光された後にターゲット物質に照射されることなく発散して前記極端紫外光発生チャンバから出射したレーザ光を再び集光するレーザ光再集光光学系と、
前記レーザ光再集光光学系によって集光されたレーザ光の画像を検出するエリアセンサと、
極端紫外光の発生が行われないときに、前記エリアセンサによって検出されたレーザ光の画像に基づいて、前記ウインドウ及び/又は前記少なくとも1つの光学素子の劣化及び/又は歪み、及び/又は、前記レーザ光集光光学系によって集光されたレーザ光の焦点がプラズマを発生させる位置からずれていることを判定する処理部と、
を具備する極端紫外光源装置。
【請求項3】
前記レーザ光再集光光学系によって集光されたレーザ光を可視光に変換する可視蛍光板と、
前記可視蛍光板によって変換された可視光を前記エリアセンサの受光面に集光する可視光集光系と、
を更に具備する、請求項2記載の極端紫外光源装置。
【請求項4】
極端紫外光の発生が行われるときに、前記極端紫外光発生チャンバから出射する物質及び電磁波を遮蔽して前記レーザ光強度検出器又は前記エリアセンサを保護する遮蔽手段を更に具備する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の極端紫外光源装置。
【請求項5】
前記ウインドウの温度を検出する温度センサを更に具備し、
前記処理部が、極端紫外光の発生が行われるときに、前記温度センサによって検出された前記ウインドウの温度に基づいて、前記ウインドウの劣化を判定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の極端紫外光源装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図13】
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【図15】
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【図22】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−97883(P2008−97883A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275442(P2006−275442)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの基盤開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】