説明

極細繊維不織布の製造方法及び極細繊維不織布

【課題】3次元的な厚みを有し、ウイルスや細菌等を除去可能な微細孔を有する極細繊維不織布を容易に製造できる極細繊維不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】電位差を利用してポリマー溶液をノズルからコレクタに向かって射出することにより極細繊維を紡糸する電界紡糸装置を用いた極細繊維不織布の製造方法であって、前記電界紡糸の際に、前記コレクタ上にフッ素系樹脂からなるメッシュシートを配置し、前記フッ素系樹脂からなるメッシュシートは、3D空隙率が90〜99%であるフッ素系樹脂繊維からなる織物、又は、3D空隙率が70〜91%であるフッ素系樹脂繊維からなる編物である極細繊維不織布の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元的な厚みを有し、ウイルスや細菌等を除去可能な微細孔を有する極細繊維不織布を容易に製造できる極細繊維不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維断面の直径がナノメートルサイズの極細繊維からなる不織布は、例えばウイルスや細菌、空気中の微生物由来の有害物質、微細粒子を除去するためのフィルター等の用途への応用が期待されている。
【0003】
極細繊維不織布を製造する方法としては、電界紡糸法が知られている(例えば、特許文献1)。電界紡糸法は、少なくともポリマー溶液を射出するためのノズルと、該ノズルから射出したポリマー溶液のターゲットとなるコレクタ(電極)とからなる電界紡糸装置を用いる。電界紡糸装置の一例を示す模式図を図1に示した。
電界紡糸法では、容器2に貯留されたポリマー溶液3を、ノズル4とコレクタ5との間に高電圧をかけた状態で、ノズル4から射出させる。ポリマー溶液は、ノズル4からコレクタ5に射出される間に、電気力線に沿って極細繊維状となり、コレクタ5上に付着する。コレクタ5に付着した極細繊維を集めれば、極細繊維不織布を得ることができる。
【0004】
しかしながら、電界紡糸法により製造した極細繊維は、3次元的な厚みがほとんどない状態でコレクタ上に張り付いてしまい回収自体が難しいという問題があった。また、無理にコレクタから掻き取っても、掻き取る際の衝撃で極細繊維が破断してしまったり、極細繊維同士が絡み合ってしまったりする。そのため、電界紡糸法により製糸した極細繊維を用いても、狙い通りの微細孔を有する不織を製造することは難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6656394号文献
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、3次元的な厚みを有し、ウイルスや細菌等を除去可能な微細孔を有する極細繊維不織布を容易に製造できる極細繊維不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電位差を利用してポリマー溶液をノズルからコレクタに向かって射出することにより極細繊維を紡糸する電界紡糸装置を用いた極細繊維不織布の製造方法であって、前記電界紡糸の際に、前記コレクタ上にフッ素系樹脂からなるメッシュシートを配置し、前記フッ素系樹脂からなるメッシュシートは、3D空隙率が90〜99%であるフッ素系樹脂繊維からなる織物、又は、3D空隙率が70〜91%であるフッ素系樹脂繊維からなる編物である極細繊維不織布の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、一般的な電界紡糸装置を用いた電界紡糸法において、コレクタ上にフッ素系樹脂からなるメッシュシートを配置した状態で紡糸を行うだけで、3次元的な厚みを有する極細繊維不織布が得られることを見出し、本発明を完成した。本発明の極細繊維不織布の製造方法で製造した極細繊維不織布は、掻き取ったりする必要なく、容易にコレクタ上から回収できる。そして、本発明の極細繊維不織布の製造方法で製造した極細繊維不織布は、3次元的な厚みを有し、ウイルスや細菌等を除去可能な微細孔を有する。
【0009】
本発明の極細繊維不織布の製造方法は、電位差を利用してポリマー溶液をノズルからコレクタに向かって射出することにより極細繊維を紡糸する電界紡糸装置を用いる。上記電界紡糸装置は特に限定されず、図1に記載された一般的に用いられる電界紡糸装置をそのまま用いることができる。
【0010】
本発明の極細繊維不織布の製造方法では、上記電界紡糸装置を用いて電界紡糸を行う際に、コレクタ上にフッ素系樹脂からなるメッシュシートを配置する。コレクタ上にフッ素系樹脂からなるメッシュシートを配置した状態で紡糸を行うだけで、3次元的な厚みを有する極細繊維不織布が得られる。
絶縁物であるフッ素系樹脂シートをコレクター上に配置して高電圧を与えると、分極が起こり、表面のマイナス電荷による電界紡糸が成立する。しかし、その電荷が微弱なためにコレクター付近で嵩高く繊維が積層し、その結果積層量は著しく少ない物となる。そこでコレクターの厚み方向に適度な連続貫通孔を存在させることにより、積層量と嵩高性を両立させることができるものと考えられる。また、フッ素系樹脂からなるシートを用いることにより、得られた極細繊維不織布の剥離性が向上する。
【0011】
上記フッ素系樹脂からなるメッシュシートを構成するフッ素系樹脂は特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、PTFE、PFAが好適である。
また、本明細書においてメッシュシートとは、3次元的に連続孔空間を有するシート状の構造体を意味する。
【0012】
上記フッ素系樹脂からなるメッシュシートとしては、例えば、(1)フッ素系樹脂繊維からなる織物、(2)フッ素系樹脂繊維からなる編物、(3)不織布、及び、(4)フッ素系樹脂からなるシートに細孔を施した細孔シート等が挙げられる。
以下、それぞれのメッシュシートについて詳しく説明する。
【0013】
(1)フッ素系樹脂繊維からなる織物
上記フッ素系樹脂繊維からなる織物(以下、単に「織物」ともいう。)は、フッ素系樹脂繊維を経緯に組み合わせて作った布地を意味する。
上記織物を構成するフッ素系樹脂繊維は、モノフィラメント糸であってもマルチフィラメント糸であってもよい。なかでも、モノフィラメント糸が好適である。
【0014】
上記フッ素系樹脂繊維がモノフィラメント糸である場合、該モノフィラメント糸の繊維径の好ましい下限は40μm、好ましい上限は130μmである。上記モノフィラメント糸の繊維径が40μm未満であると、織物としてのコシが損なわれ、シワが生じ易くなり、コレクター上に均一に配置することが困難になることがあり、130μmを超えると、シート表面の凹凸が大きくなり、得られる極細繊維不織布の表面が不均一になることがある。
【0015】
上記織物の開口率の好ましい下限は24%、好ましい上限は54%である。上記織物の開口率が24%未満であると、吐出量が極端に減少し、効率的な不織布の生成が行えないことがあり、54%を超えると、得られる極細繊維不織布の表面が不均一になることがある。
なお、本明細書において開口率とは、織物を平面的にとらえた際の、単位面積に占める繊維以外の面積比率を意味し、例えば、織物をデジタルマイクロスコープで観察し、デジタル処理によって算出した繊維以外の面積から測定することができる。
【0016】
上記織物の目付量の好ましい下限は29g/m、好ましい上限は180g/mである。上記織物の目付量が29g/m未満であると、織物としてのコシが損なわれ、コレクター上に均一に配置することが困難になったり、開口率が大きくなって得られる極細繊維不織布の表面が不均一になることがあり、180g/mを超えると、シート表面の凹凸が大きくなり、得られる極細繊維不織布の表面が不均一になったり、吐出量が極端に減少し、効率的な不織布の製造が行えないことがある。
【0017】
上記織物の3D空隙率の好ましい下限は90%、好ましい上限は99%である。上記織物の3D空隙率が90%未満であると、吐出量が極端に減少し、効率的な不織布の製造が行えないことがあり、99%を超えると、織物としてのコシが損なわれ、コレクター上に均一に配置することが困難になったり、開口率が大きくなって得られる極細繊維不織布の表面が不均一になることがある。
なお、本明細書において3D空隙率とは、織物を3次元構造体としてとらえた際の、厚みと目付量から計算された単位体積に占める繊維以外の体積比率を意味し、例えば尾崎製作所製ダイヤルシックネスゲージH−0.4Nによって測定した織物の厚みと、20cm角に切り取った織物の重量を測定することにより算出した目付から測定することができる。
【0018】
上記織物の厚さの好ましい下限は0.10mm、好ましい上限は0.25mmである。上記織物の厚さが0.10mm未満であると、織物としてのコシが損なわれ、シワが生じ易くなり、コレクター上に均一に配置することが困難になることがあり、0.25mmを超えると、シート表面の凹凸が大きくなり、得られる極細繊維不織布の表面が不均一となったり、吐出量が極端に減少し効率的な不織布の製造が行えないことがある。
【0019】
(2)フッ素系樹脂繊維からなる編物
上記フッ素系樹脂繊維からなる編物(以下、単に「編物」ともいう。)は、フッ素系樹脂繊維を使って編みあげた布地を意味する。
上記編物を構成するフッ素系樹脂繊維は、モノフィラメント糸であってもマルチフィラメント糸であってもよく、上記織物で用いるものと同様のものを用いることができる。
【0020】
上記編物の目付量の好ましい下限は380g/m、好ましい上限は604g/mである。上記織物の目付量が380g/m未満であると、開口率が大きくなり、得られる極細繊維不織布の表面が不均一になることがあり、604g/mを超えると、シート表面の凹凸が大きくなり、得られる極細繊維不織布の表面が不均一になったり、吐出量が極端に減少し効率的な不織布の製造が行えないことがある。
【0021】
上記編物の3D空隙率の好ましい下限は70%、好ましい上限は91%である。上記編物の3D空隙率が70%未満であると、吐出量が極端に減少し効率的な不織布の製造が行えないことがあり、91%を超えると、開口率が大きくなり、得られる極細繊維不織布の表面が不均一になることがある。
【0022】
上記編物の厚さの好ましい下限は0.4mm、好ましい上限は0.7mmである。上記編物の厚さが0.4mm未満であると、開口率が大きくなり、得られる極細繊維不織布の表面が不均一になることがあり、0.7mmを超えると、シート表面の凹凸が大きくなり、得られる極細繊維不織布の表面が不均一になったり、吐出量が極端に減少し効率的な不織布の製造が行えないことがある。
【0023】
(3)不織布
本明細書において不織布とは、フッ素系樹脂繊維同士を織らないで積層して重ね合せ、種々の方法により結合させて得たシートを意味する。上記不織布を製造する方法は、例えば、湿式法、スパンレース法、メルトブロー法等が挙げられる。
【0024】
(4)フッ素系樹脂からなるシートに細孔を施した細孔シート
上記フッ素系樹脂からなるシートに細孔を施した細孔シート(以下、単に「細孔シート」ともいう。)は、上記フッ素系樹脂からなるシートにパンチ等を用いて穴を穿つことにより製造することができる。
【0025】
上記細孔シートの細孔は特に限定されず、円状のほか、多角形等の種々の形状であってよい。配列も格子状、千鳥状等の種々の配列であってよい。
上記細孔の直径の好ましい下限は0.75mm、好ましい上限は1.00mmである。上記細孔の直径が0.75mm未満であると、吐出量が極端に減少し効率的な不織布の製造が行えないことがあり、1.00mmを超えると、得られる極細繊維不織布の表面が不均一になることがある。
【0026】
上記細孔シートの開口率の好ましい下限は20%、好ましい上限は51%である。上記細孔シートの開口率が20%未満であると、吐出量が極端に減少し効率的な不織布の製造が行えないことがあり、51%を超えると、得られる極細繊維不織布の表面が不均一になることがある。
なお、上記細孔シートの場合、3D空隙率は開口率に一致する。
【0027】
上記フッ素系樹脂からなるメッシュシートを上記コレクタ上に配置する方法は特に限定されず、単に静置してもよい。しかしながら、上記フッ素系樹脂からなるメッシュシートの厚さが薄い場合には、表面の平面性を保てなくなり、得られる極細繊維不織布の形状が変形することがある。このような場合には、接着剤や治具等を用いて、上記フッ素系樹脂からなるメッシュシートを上記コレクタ上に固定してもよい。
【0028】
本発明の極細繊維不織布の製造方法は、上述のように電界紡糸装置を用いて電界紡糸を行う際に、コレクタ上に上記フッ素系樹脂からなるメッシュシートを配置する以外は、従来公知の方法で行うことができる。
例えば、電界紡糸装置1の容器2に貯留されたポリマー溶液3を、ノズル4とコレクタ5との間に高電圧をかけた状態で、ノズル4から射出させる。
【0029】
本発明の極細繊維不織布の製造方法に供するポリマー溶液は特に限定されず、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等のポリマーを適当な溶媒に溶解したポリマー溶液が挙げられる。
【0030】
本発明の極細繊維不織布の製造方法によれば、3次元的な厚みを有し、ウイルスや細菌等を除去可能な微細孔を有する極細繊維不織布を容易に製造することができる。
フッ素系樹脂からなるメッシュシートが配置されたコレクタの前記フッ素系樹脂からなるメッシュシート上に、電位差を利用してポリマー溶液をノズルから射出することにより製造されたものであり、前記フッ素系樹脂からなるメッシュシートは、3D空隙率が90〜99%であるフッ素系樹脂繊維からなる織物、又は、3D空隙率が70〜91%であるフッ素系樹脂繊維からなる編物である極細繊維不織布もまた、本発明の1つである。
【0031】
本発明の極細繊維不織布は、3次元的な厚みを有するものである。
ここで3次元的な厚みを有するとは、少なくとも厚さが100μm以上、好ましくは200μm以上であることを意味する。厚さが100μm未満であると、上記コレクタから取り外すためには掻き取ったりする以外になく、実質的に上記コレクタから回収することが不可能である。
なお、極細繊維不織布の厚さは、例えば、尾崎製作所製ダイヤルシックネスゲージH−0.4N等を用いて測定することができる。
【0032】
本発明の極細繊維不織布を構成する単繊維の繊維径の好ましい上限は5μmである。上記単繊維の繊維径が5μmを超えると、ウイルスや細菌等を除去可能な微細孔を有する極細繊維不織布とすることができないことがある。上記単繊維の繊維径のより好ましい上限は1μmである。上記単繊維の繊維径の下限は特に限定されないが、現在の技術では10nm程度が限界である。
なお、本明細書において極細繊維不織布の単繊維の繊維径は、SEM観察において、異なる繊維10本程度が同じ画面に存在する倍率に設定し、その10本の繊維の繊維軸直行方向値の平均値を意味する。
【0033】
本発明の極細繊維不織布は、ウイルスや細菌、空気中の微生物由来の有害物質、微細粒子を除去するためのフィルターに好適に用いることができる。また、電池セパレータ、電磁波シールド材、触媒の支持体、センサー、断熱材等にも用いることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、3次元的な厚みを有し、ウイルスや細菌等を除去可能な微細孔を有する極細繊維不織布を容易に製造できる極細繊維不織布の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】電界紡糸装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
メッシュシートとして、フッ素系樹脂繊維からなる織物を準備した。該フッ素系樹脂繊維からなる織物は、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)のモノフィラメント糸(繊維径130μm)を用いたものであり、開口率24.1%、目付量176.3g/m、3D空隙率91.8%、厚み0.25mmである。
【0038】
電界紡糸装置としてフューエンス社製、ES−2300を用い、該電界防止装置のコレクタ上に、準備したメッシュシートを配置した。
ポリマー溶液として、重量平均分子量130000のポリメタクリル酸メチルを氷酢酸に16重量%の濃度で溶解した溶液を準備した。
【0039】
電界紡糸装置のシリンジポンプにポリメタクリル酸メチル溶液を注入し、24Gの針を装着した。針先に電極を繋いだ後、射出距離22cm、電圧−40kv、射出速度8mL/hrの条件でコレクタ上に極細繊維を電界紡糸して、極細繊維不織布を得た。
【0040】
(実施例2)
メッシュシートとして、PFAのモノフィラメント糸(繊維径40μm)を用いた、開口率53.8%、目付量29.5g/m、3D空隙率98.6%、厚み0.10mmである織物を用いた以外は実施例1と同様にして極細繊維不織布を得た。
【0041】
(実施例3)
メッシュシートとして、フッ素系樹脂繊維からなる編物を準備した。該フッ素系樹脂繊維からなる織物は、PFAのマルチフィラメント糸(12フィラメント、240デニール)を用いたものであり、目付量213.7g/m、3D空隙率90.1%、厚み0.44mmである。該フッ素系樹脂繊維からなる編物を用いた以外は実施例1と同様にして極細繊維不織布を得た。
【0042】
(実施例4)
メッシュシートとして、PFAのマルチフィラメント糸(12フィラメント、240デニール)を用いた、目付量387.7g/m、3D空隙率82.0%、厚み0.70mmである編物を用いた以外は実施例1と同様にして極細繊維不織布を得た。
【0043】
(実施例5)
メッシュシートとして、PFAのマルチフィラメント糸(12フィラメント、240デニール)を用いた、目付量426.7g/m、3D空隙率80.2%、厚み0.66mmである編物を用いた以外は実施例1と同様にして極細繊維不織布を得た。
【0044】
(実施例6)
メッシュシートとして、PFAのマルチフィラメント糸(12フィラメント、240デニール)を用いた、目付量477.1g/m、3D空隙率77.8%、厚み0.70mmである編物を用いた以外は実施例1と同様にして極細繊維不織布を得た。
【0045】
(実施例7)
メッシュシートとして、PFAのマルチフィラメント糸(12フィラメント、240デニール)を用いた、目付量603.9g/m、3D空隙率71.9%、厚み0.66mmである編物を用いた以外は実施例1と同様にして極細繊維不織布を得た。
【0046】
(参考例1)
メッシュシートとして、フッ素系樹脂からなるシートに細孔を施した細孔シートを準備した。該細孔シートは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる厚さ0.50mmのシートに、直径0.75mmの千鳥状のパンチ穴を1.0mmの間隔で開けたものであり、開口率51.0%、3D空隙率51.0%である。該細孔シートを用いた以外は実施例1と同様にして極細繊維不織布を得た。
【0047】
(参考例2)
メッシュシートとして、PTFEからなる厚さ0.50mmのシートに、直径1.00mmの千鳥状のパンチ穴を1.5mmの間隔で開けた、開口率40.3%、3D空隙率40.3%である細孔シートを用いた以外は実施例1と同様にして極細繊維不織布を得た。
【0048】
(参考例3)
メッシュシートとして、PTFEからなる厚さ0.50mmのシートに、直径1.50mmの円状のパンチ穴を3.0mmの間隔で開けた、開口率19.6%、3D空隙率19.6%である細孔シートを用いた以外は実施例1と同様にして極細繊維不織布を得た。
【0049】
(比較例1)
メッシュシートに代えて、PTFEからなる厚さ0.50mmのシートを用いた以外は実施例1と同様にして極細繊維不織布を得た。
【0050】
(比較例2)
メッシュシートに代えて、アルミニウムからなる厚さ0.02mmのシートを用いた以外は実施例1と同様にして極細繊維不織布を得た。
【0051】
(評価)
実施例、参考例及び比較例で得られた極細繊維不織布について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0052】
(1)剥離性
得られた極細繊維不織布をピンセットを用いてメッシュシート(又はシート、コレクタ)から剥離した。剥離する際に、抵抗なく剥離でき、コレクタシートに極細繊維不織布が残存しなかった場合を「○」、剥離できるものの、コレクタシートに極細繊維の残存を目視できた場合を「△」、引きちぎれる又は破れる等の不具合があり、剥離できなかった場合を「×」と評価した。
【0053】
(2)外観
剥離した極細繊維不織布の外観について、3次元的な厚み、極細繊維の破断や絡み合いの有無を中心として、目視により観察した。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、3次元的な厚みを有し、ウイルスや細菌等を除去可能な微細孔を有する極細繊維不織布を容易に製造できる極細繊維不織布の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 電界紡糸装置
2 容器
3 ポリマー溶液
4 ノズル
5 コレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電位差を利用してポリマー溶液をノズルからコレクタに向かって射出することにより極細繊維を紡糸する電界紡糸装置を用いた極細繊維不織布の製造方法であって、
前記電界紡糸の際に、前記コレクタ上にフッ素系樹脂からなるメッシュシートを配置し、
前記フッ素系樹脂からなるメッシュシートは、3D空隙率が90〜99%であるフッ素系樹脂繊維からなる織物、又は、3D空隙率が70〜91%であるフッ素系樹脂繊維からなる編物である
ことを特徴とする極細繊維不織布の製造方法。
【請求項2】
フッ素系樹脂繊維からなる織物の開口率は、24〜54%であることを特徴とする請求項1記載の極細繊維不織布の製造方法。
【請求項3】
フッ素系樹脂繊維は、モノフィラメント糸であることを特徴とする請求項1又は2記載の極細繊維不織布の製造方法。
【請求項4】
フッ素系樹脂繊維は、マルチフィラメント糸であることを特徴とする請求項1又は2記載の極細繊維不織布の製造方法。
【請求項5】
フッ素系樹脂からなるメッシュシートが配置されたコレクタの前記フッ素系樹脂からなるメッシュシート上に、電位差を利用してポリマー溶液をノズルから射出することにより製造されたものであり、
前記フッ素系樹脂からなるメッシュシートは、3D空隙率が90〜99%であるフッ素系樹脂繊維からなる織物、又は、3D空隙率が70〜91%であるフッ素系樹脂繊維からなる編物である
ことを特徴とする極細繊維不織布。


【図1】
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【公開番号】特開2013−91886(P2013−91886A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−1295(P2013−1295)
【出願日】平成25年1月8日(2013.1.8)
【分割の表示】特願2009−181737(P2009−181737)の分割
【原出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】