説明

極細繊維複合不織布およびその製造方法

【課題】 極細繊維とスパンボンド不織布とが積層一体化した複合不織布に関し、特には、微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロスとして好適な、あるいは微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、柔軟性に優れるとともに保形性に優れた極細繊維複合不織布、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 繊維ウエブがスパンボンド不織布と積層一体化している極細繊維複合不織布であって、前記繊維ウエブはアルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を除去して得られる極細繊維、及び熱接着性繊維を含有しており、前記繊維ウエブはニードルによって絡合しているとともに前記熱接着性繊維によって結合しており、前記繊維ウエブは前記スパンボンド不織布とニードルによって絡合しているとともに前記熱接着性繊維によって結合している極細繊維複合不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、極細繊維とスパンボンド不織布とが積層一体化した複合不織布に関し、特には、微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロスとして好適な、あるいは微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、柔軟性に優れるとともに保形性に優れた極細繊維複合不織布、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から極細繊維の特性を利用した不織布が提案されており、例えば極細繊維が微細な塵埃を捕捉したり除去するという特性を生かした用途としてワイピングクロス用の不織布やフィルタ用の不織布がある。
【0003】
ワイピングクロス用の不織布は、具体的には、自動車、コピー機などのOA機器、家具、台所などの用途に使用するワイピングクロスとして、油性、水性の汚れのいずれの払拭性にも優れ、しかも保形性に優れたものが求められており、その要求を満たす一例として、特許文献1のワイピング用不織布が提案されている。
【0004】
この特許文献1によれば、繊度0.5デニール以下の繊維を主体とする極細繊維層、親水性繊維を主体とする親水性繊維層、及びこれらの層間に位置する熱融着性繊維を含む融着繊維層の、少なくとも3層からなるワイピング用不織布が提案されている。このワイピング用不織布は繊度0.5デニール以下の繊維を主体とする極細繊維層があるため、微細な汚れでも払拭することができ、繊度0.5デニール以下の繊維が親油性の合成繊維であれば、より油性の汚れを払拭しやすいという利点を有している。ここで、極細繊維層を構成するのは0.5デニール以下の繊維であり、通常断面形状が略円形の2種類以上の樹脂からなる易分割性繊維を分割することにより得られる極細繊維の断面形状は鋭利な角をもつ扁平な形状を有するので、より油性の汚れを払拭しやすいという特性があることが記載されている。そして、この特許文献では、易分割性繊維からなる繊維ウエブと親水性繊維を含有する繊維ウエブを融着繊維からなる繊維ウエブを介して積層し、水流で絡合処理を行なうことにより、易分割性繊維を分割して極細繊維とすると共に、3層の繊維ウエブを絡合させ、その後、絡合した繊維ウエブを加熱処理することにより、熱融着性繊維を融着させ、ワイパー用不織布を得たことが記載されている。
【0005】
しかし、この特許文献では水流で絡合処理を行なうことにより、易分割性繊維を分割して極細繊維としているので、完全に分割されない易分割性繊維が残留することとなり、本来目的とする極細繊維の数自体が得られないという問題があり、その結果、微細な塵埃を補足する効果や、油性の汚れを払拭する効果が不充分になるという問題があった。また、この特許文献では熱融着性繊維を含む融着繊維層を中間に配置した3層構造とすることにより保形性を確保しているが、極細繊維を含有しない親水性繊維層が積層されているため、ごわごわした感触となり、柔軟性に劣り、使用し難いという問題があった。
【0006】
そこで、微細な塵埃を補足する効果や、油性の汚れを払拭する効果など、極細繊維の特性をより高め、且つ柔軟性に優れるとともに保形性に優れた、ワイピングクロス用途に好適な極細繊維不織布が求められていた。
【0007】
また、フィルタ用の不織布としては、例えばメルトブロー法による不織布がある。しかし、メルトブロー法によって形成される極細繊維は延伸されていないため強度が弱く、そのままでは実用に耐えないという問題があった。また、強度が弱いため風圧などの圧縮力が加わると簡単に嵩高性が失われてしまい、粉じん保持容量が低下するという問題があった。また、極細繊維の太さが均一になり難く、濾過性能が安定しないという問題があった。
【0008】
このような、メルトブロー法による不織布を改良した技術として、特許文献2のフィルター用濾材が提案されている。この特許文献2によれば、ポリオレフィンまたはポリエステルからなる繊維径5μm以下の極細繊維90〜30重量%、並びにポリオレフィンまたはポリエステルからなる繊維径12〜30μmのバインダー繊維10〜70重量%からなり、嵩密度0.05〜0.3g/cmであるフィルター用濾材が提案されている。また、このフィルター用濾材の製造方法として、海島型断面複合繊維の海成分として熱可塑性ポリビニルアルコールを用いた複合繊維と熱バインダー繊維からなり、該熱バインダー繊維を熱接着させることにより形態が保たれている乾式不織布から該熱可塑性ポリビニルアルコールを抽出除去することを特徴とする製造方法が示されている。
【0009】
また、フィルターとして腰のあるものとするため、ケミカルバインダータイプの乾式不織布やスパンボンド不織布等の不織布と組み合わせてフィルターとすることが好ましいことが示されており、具体的には、実施例9に、海島型原綿とバインダー繊維とからなるカードウエッブを、ポリプロピレン製のスパンボンド不織布とメルトブローン不織布とメルトブローン不織布とスパンボンド不織布(目付15g/m、旭化成株式会社製)からなる積層不織布に重ねあわせ、エンボス加工後に、海島型原綿のポリビニルアルコールを95℃の熱水で抽出処理し、濾過材を得たことが示されている。しかし、この複合された不織布はエンボス加工が施されているため、接着部分が圧密化しており、この部分で流体が通過しないため、フィルタとして用いると圧力損失が大きくなってしまうという問題があった。また、このような複合された不織布を、微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロスとして用いた場合には、この複合された不織布はエンボス加工が施されているため、接着部分が圧密化しており、微細な塵埃を捕捉する容量が少なくなるという問題があった。
【0010】
また、特許文献2の実施例10には、海島型原綿とバインダー繊維とを70:30の混率で混綿し、メルトブローン不織布2枚からなる積層品の上にエアレイド法で積層した後に、150℃の熱風で熱接着し、95℃で熱水抽出して、極細繊維とバインダー繊維とからなる濾過材を得たことが示されている。しかし、この複合された不織布は、メルトブローン不織布の上に単にバインダー繊維を含有するエアレイド不織布が重ねあわされているだけであるため、バインダー繊維による両不織布間の接着力は小さなものであり、二層剥離し易いという問題があった。また、このような複合された不織布を、微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロスとして用いた場合にも、使用中に二層剥離し易いという問題があった。
【0011】
そこで、極細繊維とスパンボンド不織布とが積層一体化した複合不織布に関し、特に微細な塵埃を除去するためのフィルタとして、圧力損失が少なく、粉じん保持容量が大きく、使用強度に優れた極細繊維複合不織布が求められていた。また、微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロスとして、微細な塵埃を捕捉する容量が大きく、使用中に二層剥離を生じることのない、極細繊維複合不織布が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−93350号公報
【特許文献2】特開2005−319347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題を解決して、極細繊維とスパンボンド不織布とが積層一体化した複合不織布に関し、特には、微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロスとして好適な、あるいは微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、柔軟性に優れるとともに保形性に優れた極細繊維複合不織布、およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための手段は、請求項1に係る発明では、繊維ウエブがスパンボンド不織布と積層一体化している極細繊維複合不織布であって、前記繊維ウエブはアルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を除去して得られる極細繊維、及び熱接着性繊維を含有しており、前記繊維ウエブはニードルによって絡合しているとともに前記熱接着性繊維によって結合しており、前記繊維ウエブは前記スパンボンド不織布とニードルによって絡合しているとともに前記熱接着性繊維によって結合していることを特徴とする極細繊維複合不織布である。この発明により、微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロスとして好適な、あるいは微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、柔軟性に優れるとともに保形性に優れた極細繊維複合不織布を提供することが可能となる。
【0015】
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の極細繊維複合不織布からなるワイピングクロスである。
【0016】
請求項3に係る発明では、請求項1に記載の極細繊維複合不織布からなるエアフィルタである。
【0017】
請求項4に係る発明では、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いで前記繊維ウエブとスパンボンド不織布とを積層し、次いでニードルによって前記繊維ウエブを絡合するとともに前記繊維ウエブと前記スパンボンド不織布とを絡合一体化し、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブの構成繊維同士、及び構成繊維と前記スパンボンド不織布を結合し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することを特徴とする極細繊維複合不織布の製造方法である。この発明により、微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロスとして好適な、あるいは微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、柔軟性に優れるとともに保形性に優れた極細繊維複合不織布を製造することが可能となる。
【0018】
請求項5に係る発明では、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維と、温水溶解繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いで前記繊維ウエブとスパンボンド不織布とを積層し、次いでニードルによって前記繊維ウエブを絡合するとともに前記繊維ウエブと前記スパンボンド不織布とを絡合一体化し、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブの構成繊維同士、及び構成繊維と前記スパンボンド不織布を結合し、次いで温水にて前記温水溶解繊維を溶出し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することを特徴とする極細繊維複合不織布の製造方法である。この発明により、極細繊維複合不織布の空隙率を大きくすることができるので、より風合いが柔軟で微細な塵埃を捕捉する容量の大きいワイピングクロスを得ることができるという効果がある。また、より圧力損失が少なく粉じん保持容量の大きいフィルタを得ることができるという効果がある。
【発明の効果】
【0019】
極細繊維とスパンボンド不織布とが積層一体化した複合不織布に関し、特に微細な塵埃を清拭、捕捉するためのワイピングクロスとして好適な、あるいは微細な塵埃を除去するためのフィルタとして好適な、柔軟性に優れるとともに保形性に優れた極細繊維複合不織布、およびその製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の例
【図2】(a)は本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の別の例、(b)は本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の別の例、(c)は本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の別の例、(d)は本発明に適用される極細繊維または複合繊維の断面の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る極細繊維複合不織布およびその製造方法の好ましい実施の形態について詳細に説明する。なお、極細繊維複合不織布の製造方法については、極細繊維複合不織布の説明の中で説明する。
【0022】
本発明の極細繊維複合不織布は、繊維ウエブがスパンボンド不織布と積層一体化している。前記繊維ウエブは、その構成繊維が実質的にアルカリ不溶性繊維のみからなっている。アルカリ不溶性繊維としては、例えばアルカリ不溶性の樹脂成分から形成されるナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ビニロン繊維などを挙げることができる。また、アルカリ不溶性の樹脂成分を2成分以上複合して形成される、複合型の繊維を挙げることができる。また、芯鞘型の複合繊維で、鞘部にアルカリ不溶性の樹脂成分を有する複合繊維を挙げることができる。
【0023】
ここで、「実質的に」とは、後述するように、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を除去して極細繊維を形成する際に、アルカリ可溶性樹脂成分が好ましくは5質量%未満、より好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満残留した状態を含むことを意味する。
【0024】
本発明では、前記繊維ウエブはアルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を除去して得られる極細繊維、及び熱接着性繊維を含有している。ここで、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維の形態としては、例えば、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型などを挙げることができるが、これらの中では特に極細の繊維を発生することが可能な海島型が好ましい。
【0025】
海島型の複合繊維としては、例えば図1に断面を例示するように海を形成する樹脂成分1と島を形成する樹脂成分2とからなる複合繊維があり、例えば紡糸口金部で海成分中に口金規制して島成分を押出して複合する方法などの複合紡糸法で得られる海島型複合繊維を適用可能である。また、一般的に混合紡糸法といわれる、島成分を構成する樹脂と海成分を構成する樹脂とを混合した後に紡糸する方法によって得られた海島型複合繊維も可能である。複合紡糸法による複合繊維の場合、海成分を溶解除去することによって同一の繊維径の極細繊維を得ることが可能であるという利点がある。一方、混合紡糸法による複合繊維の場合、同一の繊維径の極細繊維を得ることが困難であるが、より極細の繊維を発生することが可能であるという利点がある。以上説明した海島型の複合繊維の島成分をアルカリ不溶性樹脂成分とし、海成分をアルカリ可溶性樹脂成分とし、この海成分であるアルカリ可溶性樹脂成分を除去することで、島成分から極細繊維を形成することができる。
【0026】
また、オレンジ型、多重バイメタル型の複合繊維としては、例えば一成分を他成分間に放射状に配した断面形状をもつ菊花型繊維、異なる成分を交互に層状に積層した断面形状をもつバイメタル型繊維があり、具体的には、例えば図2の(a)、(b)、(c)、(d)に断面を例示するように樹脂成分1と樹脂成分2とからなる複合繊維を挙げることができる。なお、図2の(a)では、樹脂成分1をアルカリ不溶性樹脂成分とし樹脂成分2をアルカリ可溶性樹脂成分とすることができる。このような断面形状の分割性複合繊維の樹脂成分1または樹脂成分2を、アルカリ液を用いて溶解除去することによって、断面形状が扁平形状の極細繊維を形成することができる。このような極細繊維は、鋭利な角をもつ扁平な断面形状を有するので、ワイピング用途の場合、微細な塵埃を除去するとともに油性の汚れを払拭しやすいという利点がある。また、アルカリ可溶性樹脂成分を除去して得られる極細繊維であるので、単に水流により分割して発生した極細繊維と異なりほぼ完全に分割した極細繊維であり、極細繊維としての効果を十分に発揮できるという利点がある。
【0027】
特に、図2(a)または(c)のように、極細繊維の断面形状が略三角形の場合は、三角形の角が鋭利な角となるので、特に微細な塵埃を除去するとともに油性の汚れを払拭しやすいという利点がある。また、図2(b)のように、樹脂成分1と樹脂成分2とが層状に積層されており、分割後に繊維断面が偏平形状となるような極細繊維を含むことにより、場合により水流による絡合が高度に生じソフトな風合いと保形性に優れた不織布とすることができる。偏平形状に関しては、長軸の長さをaとし短軸の長さをbとすると、偏平度a/bの値が3以上であることが好ましい。偏平度a/bの値は例えば100個以上の走査型電子顕微鏡の映像を平均して求めることができる。
【0028】
前記極細繊維の繊維径は、0.1〜7μmであることが好ましく、0.2〜3μmがより好ましく、0.3〜1μmが更に好ましい。7μmを超えると微細な粉じんを除去する効果や、微細な塵埃を補足する効果や、油性の汚れを払拭する効果などが低下する場合がある。また、0.1μm未満では、極細繊維の強度が低下して、その結果不織布の保形成が低下する場合がある。
【0029】
なお、極細繊維の繊維径は走査型電子顕微鏡の平面、又は断面の映像で確認できる直径で表すことができる。直径にバラツキがある場合は前記映像のうち例えば任意の100個の数平均値で表すことができる。繊維の断面形状が円形でない場合は、繊維断面と同じ面積を有する円の直径で表すことができる。なお、使用される原料の繊度(デシテックス)が分かっている場合は、次式で得られる繊維径で表すことができる。
【0030】
D=(4d/π・10・ρ)0.5・10
(ここで、D:繊維径(μm),ρ:繊維を構成する高分子重合体の密度(g/cm),d:繊維の繊度(デシテックス),π:円周率)
【0031】
また、前記極細繊維の繊維ウエブ中に占める割合は50〜95質量%であることが好ましく、55〜90質量%であることがより好ましく、55〜85質量%であることが更に好ましい。50質量%未満であると、微細な粉じんを除去する効果や、極細繊維による微細な塵埃を補足する効果や、油性の汚れを払拭する効果などの有利な特性が充分に発揮されない場合があり、95質量%を超えると接着性繊維の割合が低下して、繊維ウエブを充分に結合できず保形性に劣る極細繊維複合不織布になる場合がある。
【0032】
本発明では、前記繊維ウエブはさらに熱接着性繊維を含んでいる。当該熱接着性繊維としては、繊維ウエブの構成繊維の融点の中で最も低い融点を有する単一成分からなる熱接着性繊維が適用可能であり、また構成繊維の融点の中で最も低い融点を有する低融点成分と、この低融点成分よりも高い融点(好ましくは10℃以上高い融点、より好ましくは20℃以上高い融点)を有する高融点成分とからなる、2種類以上の樹脂成分からなるサイドバイサイド型、芯鞘型などの複合型の熱接着性繊維が可能である。なお、前記熱接着性繊維の接着温度は、極細繊維を含有する構成繊維を接着により結合させる際に、極細繊維が変形や熱収縮しないように、極細繊維の融点よりも10℃以上低いことが好ましく、より好ましくは20℃以上低いことが好ましい。
【0033】
前述の単一成分からなる熱接着性繊維としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどの樹脂を主体とする繊維を例示でき、複合型の熱接着性繊維の樹脂成分として、6ナイロン/ポリエチレン、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリプロピレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体、6ナイロン/66ナイロン、高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレンなどの組み合わせが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
また、前記熱接着性繊維の構成繊維中に占める割合が5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましく、15〜45質量%であることが更に好ましい。5質量%未満であると、構成繊維を充分に結合できず保形性に劣る極細繊維複合不織布になる場合があり、50質量%を超えると極細繊維複合不織布の微細な粉じんを除去する効果や、微細な塵埃を補足する効果や、油性の汚れを払拭する効果などが低下する場合がある。
【0035】
また、本発明では、前記繊維ウエブは前記極細繊維と前記熱接着性繊維以外にも、他の機能性を付加する目的で、本発明の特性を大きく低下させない範囲で、他のアルカリ不溶性繊維を含有することも可能である。
【0036】
また、前記構成繊維の繊維長さは、不織布の各製造方法での繊維ウエブの形成に適した長さを適用可能であり、例えば乾式法やエアレイ法であればカード機に供給するステープル繊維として好適な15〜110mmであることが好ましく、スパンボンド法であれば連続した長繊維が適用可能である。これらの製法中でも、乾式法やエアレイ法であれば、スパンボンド法と比較して海島型複合繊維や分割性複合繊維と熱接着性繊維とを均一に混合可能であること、また湿式法と比較して極細繊維複合不織布の強度がより優れるという点で好ましく、この点から好ましい繊維長は15〜110mmといえる。
【0037】
本発明では、前記繊維ウエブの面密度は、好ましくは5〜90g/m、より好ましくは6〜75g/m、さらに好ましくは7〜60g/mである。5g/m未満であると、ニードルによる絡合が不充分となり保形性に劣る場合があり、90g/mを超えると柔軟性に劣ったり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。
【0038】
また、前記複合繊維からアルカリ可溶性樹脂成分を溶出する前の繊維ウエブの面密度は、好ましくは50〜300g/m、より好ましくは60〜250g/m、さらに好ましくは70〜200g/mである。50g/m未満であると、ニードルによる絡合が不充分となり耐久性に劣る場合があり、300g/mを超えると前記複合繊維からアルカリ可溶性樹脂成分を十分に溶出することができなくなる場合がある。また、極細繊維複合不織布の柔軟性に劣ったり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。
【0039】
本発明では、前記繊維ウエブがスパンボンド不織布と積層一体化しているが、前記スパンボンド不織布は、スパンボンド法によって形成された不織布である限り特に限定されないが、繊維組織が比較的粗く、低い面密度を有しているものが好ましい。また、積層構造も特に限定されず、2枚の繊維ウエブによってスパンボンド不織布が挟み込まれた構造も可能である。また、前記スパンボンド不織布はエンボス加工によって繊維同士が接着としており、接着部分が圧密化していることも可能である。すなわち、この圧密化している部分は、後述するニードル加工によって通気性のある状態となるため、柔軟性に劣るようなことはなく、また圧力損失の増加による問題は生じないからである。また、前記スパンボンド不織布を構成する繊維は実質的にアルカリ不溶性繊維のみからなっている。
【0040】
前記スパンボンド不織布の面密度も特に限定されないが、好ましくは6〜60g/m、より好ましくは8〜40g/m、さらに好ましくは10〜30g/mである。また、スパンボンド不織布の厚さも限定されないが、好ましくは0.06〜0.6mm、より好ましくは0.08〜0.4mm、さらに好ましくは0.1〜0.3mmである。尚、スパンボンド不織布の厚さは1cmあたり20gの荷重時の厚さで表すものとする。
【0041】
前記スパンボンド不織布の好ましい態様としては、例えばポリプロピレンからなるスパンボンド不織布(例えば、三井化学株式会社製:商品名「シンテックスPK−102」:面密度13g/m、商品名「シンテックスPK−103」:面密度15g/m、商品名「シンテックスPK−104」:面密度20g/m)が好適に使用される。
【0042】
本発明では、前記繊維ウエブはニードルによって絡合しているとともに前記熱接着性繊維によって結合しており、前記繊維ウエブは前記スパンボンド不織布とニードルによって絡合しているとともに前記熱接着性繊維によって結合している。ニードルによる絡合は、公知の方法で行うことが可能であり、例えばニードルパンチ用の針を用いて、針深さ1〜20mm、針密度100〜1000本/mの条件で行うことが可能である。具体的には、例えば、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いで前記繊維ウエブと前記スパンボンド不織布とを積層し、次いでニードルによって前記繊維ウエブを絡合するとともに前記繊維ウエブと前記スパンボンド不織布とを絡合一体化する方法によって行なうことができる。
【0043】
また、本発明では、前記繊維ウエブは前記熱接着性繊維によって結合しているとともに、前記繊維ウエブは前記スパンボンド不織布と前記熱接着性繊維によって結合していることが必要である。この結合は、熱接着性繊維がその低融点成分の融点以上の温度で加熱処理されることで、低融点成分が他の繊維に融着して繊維間およびスパンボンド不織布との結合が生じる。この加熱処理は、ニードルによる絡合が行われた後に、またアルカリ液によるアルカリ可溶樹脂成分の溶解処理前に行われることが好ましく、このような方法により、繊維組織の崩れを防止するとともに、アルカリ可溶樹脂成分の溶解処理後に柔軟性に優れるとともに保形性に富む極細繊維複合不織布を得ることができるという利点がある。すなわち、まず熱接着性繊維同士が繊維交点で確実に接着固定するとともに接着性繊維によってスパンボンド不織布にも接着固定して、強固で保形成に富む繊維構造の骨格を形成する。
【0044】
そして、複合繊維が海島型複合繊維の場合、その骨格の中で、複合繊維がアルカリ処理によって極細化するとともに、繊維間の接着交点は消失して、繊維の自由度が高まる。それと同時に、空隙が大きくなり、極細繊維の分散が促進される。また、その後の中和、水洗後の加熱乾燥で再度、繊維間の接着交点が生じて繊維組織が固定されて、繊維の離脱が防止される。このようにして、塵埃を捕捉する容量が大きくなったり、粉じん保持容量が増加するのである。
【0045】
また、複合繊維が分割性複合繊維の場合、その骨格の中で、複合繊維がアルカリ処理によって極細化して、分散が生じ、繊維の自由度が高まる。また、接着性繊維が複合繊維に対して融着して形成された融着樹脂からなる接着交点はアルカリ処理によって、アルカリ不溶性樹脂成分からなる極細繊維との小さな接着交点となり、すなわち融着樹脂の一部が剥離して小さな融着樹脂となることで、繊維の自由度が高まるとともに、空隙が大きくなり、塵埃を捕捉する容量が大きくなったり、粉じん保持容量が増加するのである。
【0046】
本発明の極細繊維複合不織布の面密度は、好ましくは10〜100g/m、より好ましくは15〜75g/m、さらに好ましくは20〜50g/mである。10g/m未満であると、ニードルによる絡合が不充分となり保形性に劣る場合があり、100g/mを超えると柔軟性が低下する場合や、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。
【0047】
また、本発明の極細繊維複合不織布の厚さは、0.15〜1.2mmが好ましく、0.2〜1.0mmがより好ましく、0.25〜0.8mmが更に好ましい。0.15mm未満であると、ワイピング材として使用した場合、手に持った時に厚み感に乏しく感じる場合や、拭き取り性能が劣る場合がある。また、フィルタとして使用した場合、濾過性能が低下したり、粉じん保持容量が少なくなる場合がある。1.2mmを超えると、ワイピング材として使用した場合、柔軟性が低下する場合がある。また、フィルタとして使用した場合、折り加工等の加工が難しくなる場合がある。また折り加工した後枠材を取付けてなるフィルタエレメントやフィルタユニットにおいて単位容積当りの収納濾過面積が小さくなり圧力損失が高くなる場合がある。なお、厚さは1cmあたり20gの荷重時の厚さで表すものとする。
【0048】
また、本発明の極細繊維複合不織布の見掛け密度は、0.04〜0.35g/cmが好ましく、0.05〜0.25g/cmがより好ましく、0.06〜0.2g/cmが更に好ましい。0.04g/cm未満であると、繊維組織が崩れ易くなる場合があり、0.35g/cmを超えると柔軟性が低下したり、フィルタとして使用した場合、圧力損失が高くなり過ぎる場合がある。
【0049】
また、本発明の極細繊維複合不織布の柔軟性の指標となる剛軟度の値は好ましくは70mm以下であることが好ましく、より好ましくは60mm以下であり、さらに好ましくは55mm以下である。なお剛軟度はJIS L1096に記載される、剛軟性8.19.1A法(45度カンチレバー法)に準じて測定した値を用い、タテ方向とヨコ方向の平均値を用いるものとする。
【0050】
本発明の極細繊維複合不織布の用途としては、ワイピングクロス、フィルタ、皮膚洗浄材、皮脂拭取り材、床ずれ抑制材、電池用セパレータなどがあるが、特に好適な用途としては、極細繊維の特長を十分に発揮できる点、及び保形性に優れる点でワイピングクロス、およびフィルタを挙げることができる。ワイピングクロスとしては、自動車、家具、台所などを対象として手で作業する用途や、コピー機などのOA機器、精密部品などを対象として機械によってクリーニングする、例えば半導体用クリーニングテープなどの用途に用いられるワイピングクロスを挙げることができる。また、フィルタとしては、特に計数法で評価される中高性能のエアフィルタの用途を挙げることができる。
【0051】
本発明の第1の極細繊維複合不織布の製造方法は、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いで前記繊維ウエブとスパンボンド不織布とを積層し、次いでニードルによって前記繊維ウエブを絡合するとともに前記繊維ウエブと前記スパンボンド不織布とを絡合一体化し、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブの構成繊維同士、及び構成繊維と前記スパンボンド不織布を結合し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することを特徴とする。この第1の製造方法によって、本発明の極細繊維複合不織布を製造することができる。
【0052】
「アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブ」については、前述の説明をそのまま適用することができる。また、「前記繊維ウエブとスパンボンド不織布とを積層し、次いでニードルによって前記繊維ウエブを絡合するとともに前記繊維ウエブと前記スパンボンド不織布とを絡合一体化し、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブの構成繊維同士、及び構成繊維と前記スパンボンド不織布を結合する」ことについても、前述の説明をそのまま適用することができる。
【0053】
本発明の製造方法では、前記繊維ウエブを絡合するとともに前記スパンボンド不織布と絡合一体化し、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブの構成繊維同士、及び構成繊維と前記スパンボンド不織布を結合し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出する。このアルカリ液としては、アルカリ水溶液を用いることが好ましく、アルカリ水溶液に、前記スパンボンド不織布と一体化した絡合・結合繊維ウエブを浸漬して、アルカリ可溶性樹脂成分を溶出して除去する。この処理に際しては、例えばアルカリ可溶性樹脂成分がポリエステル樹脂成分であれば、水酸化ナトリウムの6%水溶液を95℃に加温して、その水溶液中に30分間浸漬することにより、ほぼ100%の溶解除去が可能である。
【0054】
なお、アルカリ液によりアルカリ可溶性樹脂成分を溶出した後に、乾燥処理を行うが、この乾燥処理の温度条件としては、特に極細繊維複合不織布に柔軟性が要求される場合には、前記熱接着性繊維の低融点樹脂成分の融点未満の温度で乾燥処理を行うことが好ましい。また、特に極細繊維複合不織布に保形性が要求される場合には、前記熱接着性繊維の低融点樹脂成分の融点以上の温度で乾燥処理を行うことが好ましい。
【0055】
本発明の第2の極細繊維複合不織布の製造方法は、アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維と、温水溶解繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いで前記繊維ウエブとスパンボンド不織布とを積層し、次いでニードルによって前記繊維ウエブを絡合するとともに前記繊維ウエブと前記スパンボンド不織布とを絡合一体化し、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブの構成繊維同士、及び構成繊維と前記スパンボンド不織布を結合し、次いで温水にて前記温水溶解繊維を溶出し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することを特徴とする。
【0056】
ここで温水溶解繊維とは、15〜100℃のいずれかの温度の水に溶解する繊維のことを意味し、前記温水溶解繊維としては、例えば溶解温度が40〜100℃の部分けん化のポリビニルアルコールを挙げることができる。このような温水溶解繊維を用いることによって、ニードルによって前記繊維ウエブを絡合するとともに前記繊維ウエブと前記スパンボンド不織布とを絡合一体化する際に、繊維ウエブの面密度が大きくなり、絡合効果を大きくすることができる。すなわち、複合繊維と接着繊維の合計量が少ないとスパンボンドに十分絡まない場合があり、このような場合に絡合を促進するための繊維増量材としての効果がある。更に、繊維の絡合を促進した上で、アルカリ処理前に余分なものとして除去することで、結果的に繊維ウエブ中の空隙が増し、アルカリ処理しやすくなるとともに繊維の自由度が増し、アルカリ処理により発生する極細繊維の分散性向上に役立つという効果もある。また、最終的に得られる極細繊維複合不織布の空隙率をより大きくすることができるので、より塵埃を捕捉する容量が大きなワイピングクロスを得るという効果がある。また、より圧力損失が小さく粉じん保持容量の大きいフィルタを得ることができるという効果がある。
【0057】
前記温水溶解繊維の溶解前の繊維ウエブ中に占める割合は15〜70質量%であることが好ましく、20〜65質量%であることがより好ましい。15質量%未満であると、前述した絡合を促進するための繊維増量材としての効果が少なくなったり、繊維ウエブ中に空隙を設ける効果が少なくなる場合がある。また、70質量%を超えると繊維ウエブ中の空隙が大きくなり過ぎて、保形性が低下する場合がある。
【0058】
第2の製造方法では、このような温水溶解繊維を前記繊維ウエブに予め加えておき、40〜100℃に加温(又は加熱)された水に前記スパンボンド不織布と一体化した絡合・結合繊維ウエブを浸漬して、温水溶解繊維を溶出し、次いで第1の製造方法と同様にして、アルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出する。この第2の製造方法によれば、第1の製造方法と比較して、絡合を促進するための繊維増量材としての効果が働き、保形性に優れた極細繊維複合不織布を得ることができる。また、極細繊維が均一に分散し易く、均一な構造の極細繊維複合不織布を得ることができる。また、極細繊維複合不織布の空隙率をより大きくすることができるので、より風合いが柔軟で微細な塵埃を捕捉する容量の大きいワイピングクロスを得ることができるという効果がある。また、より圧力損失が少なく粉じん保持容量の大きいフィルタを得ることができるという効果がある。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例について説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例にすぎず、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【0060】
(拭取り性能の試験方法)
5人のモニターによって、予め、たばこの煙によって曇ったメガネのレンズを拭き、拭き残りの有無、キズ発生の有無、リントの付着の有無、作業性の良否の4項目についての状態を目視または判断して、全ての項目において良好であることを全員が判断した場合を○とし、3人以上が良好と判断した場合を△とし、2〜0人が良好と判断した場合を×とする。
【0061】
(極細繊維複合不織布の濾過性能評価方法)
JIS B9908形式1に規定される試験方法において、風速10cm/sec.とした時の圧力損失および粒径1〜2μmの範囲における大気塵の捕集効率を測定する。
【0062】
(繊維の非離脱性試験方法)
密閉容器に濃度6%のNaOH水溶液を3000cc入れ、その水溶液中に、円筒状の多孔体に巻回した1mの試験片を浸漬する。次いで水溶液を95℃に加温して、正逆回転させながら30分間アルカリ抽出処理を行う。次いで、NaOH水溶液を濾過して、NaOH水溶液中の離脱繊維の有無を目視により確認する。その結果、離脱繊維が認められない場合は○、認められる場合は×と評価する。
【0063】
(実施例1)
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率25質量%)35質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)5質量%と、1.7デシテックスの温水溶解繊維(繊維長51mm、100℃の水に溶解する部分けん化ポリビニルアルコール)60質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブをポリプロピレンからなるスパンボンド不織布(三井化学株式会社製:商品名「シンテックスPK−104」:面密度20g/m)の上に載置して、この積層された繊維ウエブをニードル処理(針:40番、針深さ:8mm、針密度200本/cm)によって絡合するとともに、繊維ウエブとスパンボンド不織布とを絡合一体化した。
次いで、この絡合一体化した繊維ウエブを145℃のドライヤーに入れて加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合するとともに繊維ウエブとスパンボンド不織布を結合して複合繊維シート(面密度:100g/m、厚さ1.5mm、見掛け密度0.068g/cm)を得た。
次いで、この複合繊維シートを沸騰水に30分間浸漬して温水溶解繊維を溶解除去し、脱水後、この複合繊維シートをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥(145℃)の各工程を経て、極細繊維複合不織布を得た。
得られた極細繊維複合不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から400nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維複合不織布は、面密度が31g/m(繊維ウエブの面密度は11g/m)であり、厚さが0.43mmであり、見掛け密度が0.072g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が64質量%であり、熱接着性繊維の比率が36質量%であった。また、剛軟度は48mmであり、拭取り性能は○であり、圧力損失が48Paであり、計数法による粒子捕集効率が88%であり、繊維の非離脱性試験の結果は繊維が認められず○であった。
【0064】
(実施例2)
実施例1において、1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率35質量%)35質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維10質量%と、1.7デシテックスの温水溶解繊維47質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成したこと以外は、実施例1と同様の各工程を経て、複合繊維シート(面密度:130g/m、厚さ1.9mm、見掛け密度0.070g/cm)及び極細繊維複合不織布を得た。
得られた極細繊維複合不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維複合不織布は、面密度が48g/m(繊維ウエブの面密度は28g/m)であり、厚さが0.60mmであり、見掛け密度が0.080g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が60質量%であり、熱接着性繊維の比率が40質量%であった。また、剛軟度は48mmであり、拭取り性能は○であり、圧力損失が51Paであり、計数法による粒子捕集効率が80%であり、繊維の非離脱性試験の結果は繊維が認められず○であった。
【0065】
(実施例3)
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率20質量%)96質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)4質量%を混合して、カード機に投入して、繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブをポリプロピレンからなるスパンボンド不織布(三井化学株式会社製:商品名「シンテックスPK−103」:面密度13g/m)の上に載置して、この積層された繊維ウエブをニードル処理(針:40番、針深さ:8mm、針密度300本/cm)によって絡合するとともに、繊維ウエブとスパンボンド不織布とを絡合一体化した。
次いで、この絡合一体化した繊維ウエブを140℃に加熱した回転ベルト2枚の間に挿入して挟み込み、1kg/cmの加圧下で加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合するとともに繊維ウエブとスパンボンド不織布を結合して複合繊維シート(面密度:115g/m、厚さ0.81mm、見掛け密度0.14g/cm)を得た。
次いで、この複合繊維シートをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥(145℃)の各工程を経て、極細繊維複合不織布を得た。
得られた極細繊維複合不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維複合不織布は、面密度が37g/m(繊維ウエブの面密度は24g/m)であり、厚さが0.39mmであり、見掛け密度が0.095g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が82質量%であり、熱接着性繊維の比率が18質量%であった。また、剛軟度は35mmであり、拭取り性能は○であり、圧力損失が91Paであり、計数法による粒子捕集効率が88%であり、繊維の非離脱性試験の結果は繊維が認められず○であった。
【0066】
(実施例4)
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率20質量%)96質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)4質量%を混合して、カード機に投入して、面密度:58g/mの繊維ウエブを2枚形成した。
次いで、これら2枚の繊維ウエブの間にポリプロピレンからなるスパンボンド不織布(三井化学株式会社製:商品名「シンテックスPK−103」:面密度13g/m)を挿入して、2枚の繊維ウエブによってスパンボンド不織布を挟み込み、この積層された繊維ウエブをニードル処理(針:40番、針深さ:8mm、両面合計の針密度300本/cm、片面の針密度150本/cm)によって絡合するとともに、繊維ウエブとスパンボンド不織布とを絡合一体化した。
次いで、この絡合一体化した繊維ウエブを140℃に加熱した回転ベルト2枚の間に挿入して挟み込み、1kg/cmの加圧下で加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合するとともに繊維ウエブとスパンボンド不織布を結合して複合繊維シート(面密度:129g/m、厚さ0.92mm、見掛け密度0.14g/cm)を得た。
次いで、この複合繊維シートをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥(145℃)の各工程を経て、極細繊維複合不織布を得た。
得られた極細繊維複合不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維複合不織布は、面密度が40g/m(繊維ウエブの面密度は27g/m)であり、厚さが0.41mmであり、見掛け密度が0.098g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が81質量%であり、熱接着性繊維の比率が19質量%であった。また、剛軟度は36mmであり、拭取り性能は○であり、圧力損失が98Paであり、計数法による粒子捕集効率が90%であり、繊維の非離脱性試験の結果は繊維が認められず○であった。
【0067】
(実施例5)
1.5デシテックスの複合紡糸型の海島繊維(繊維長38mm、海成分はポリエチレンテレフタレート樹脂、島成分はポリプロピレン樹脂、島比率20質量%)96質量%と、0.88デシテックスの熱接着性繊維(繊維長38mm、芯成分がポリプロピレンで鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維)4質量%を混合して、カード機に投入して、面密度:58g/mの繊維ウエブを2枚形成した。
次いで、これら2枚の繊維ウエブの間にポリプロピレンからなるスパンボンド不織布(三井化学株式会社製:商品名「シンテックスPK−103」:面密度13g/m)を挿入して、2枚の繊維ウエブによってスパンボンド不織布を挟み込み、この積層された繊維ウエブをニードル処理(針:40番、針深さ:8mm、両面合計の針密度300本/cm、片面の針密度150本/cm)によって絡合した。次いで、この積層繊維ウエブを金網コンベアー上に載置した後、金網コンベアーを移動させながら、この積層繊維ウエブの両面に対して、ノズル(ノズル孔の孔径が直径0.13mm、ノズル孔の間隔0.6mm、ノズル内圧力5MPa)から柱状水流を噴射することによって、この積層繊維ウエブの両面に水流を作用させることによって更に絡合して、繊維ウエブとスパンボンド不織布とを絡合一体化した。
次いで、この絡合一体化した繊維ウエブを140℃に加熱した回転ベルト2枚の間に挿入して挟み込み、1kg/cmの加圧下で加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合するとともに繊維ウエブとスパンボンド不織布を結合して複合繊維シート(面密度:129g/m、厚さ0.72mm、見掛け密度0.18g/cm)を得た。
次いで、この複合繊維シートをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させた。次いで、酢酸によって中和、水洗、脱水、乾燥(145℃)の各工程を経て、極細繊維複合不織布を得た。
得られた極細繊維複合不織布の断面を走査型電子顕微鏡の映像で観察すると、前記海島繊維の島成分から600nmの極細繊維が発生していることが確認された。
また、この極細繊維複合不織布は、面密度が40g/m(繊維ウエブの面密度は27g/m)であり、厚さが0.32mmであり、見掛け密度が0.13g/cmであり、繊維ウエブ中の極細繊維の比率が81質量%であり、熱接着性繊維の比率が19質量%であった。また、剛軟度は35mmであり、拭取り性能は○であり、圧力損失が65Paであり、計数法による粒子捕集効率が67%であり、繊維の非離脱性試験の結果は繊維が認められず○であった。
【0068】
(比較例1)
実施例1と同様にして繊維ウエブを形成した。
次いで、この繊維ウエブをスパンボンド不織布に載置せずにニードル処理(針:40番、針深さ:8mm、針密度200本/cm)によって絡合した。
次いで、この絡合した繊維ウエブを145℃のドライヤーに入れて加熱処理を行い、繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって繊維ウエブの構成繊維を結合して繊維シート(面密度:80g/m、厚さ1.3mm、見掛け密度0.062g/cm)を得た。
次いで、この繊維シートを沸騰水に30分間浸漬して温水溶解繊維を溶解除去し、脱水後、この繊維シートをPP製の筒状多孔体に巻回して、この巻回した状態のまま、95℃のNaOH水溶液(6質量%)中に30分間浸漬して、ポリエチレンテレフタレート樹脂成分をほぼ100%溶出させたところ、繊維シートの形態が崩れて、極細繊維からなる不織布を得ることができなかった。
【0069】
実施例1〜5の極細繊維複合不織布は、柔軟性に優れるとともに保形性に優れていた。また、実施例1は実施例2と比較して、極細繊維を含有する繊維ウエブの面密度は小さいが、極細繊維の繊維径が小さいため、ワイピングクロスとして、微細な塵埃を清拭、捕捉する効果により優れていた。また、フィルタとして、粒子捕集効率がより高くなっていた。また、実施例1および実施例2は温水溶解繊維を用いたため、実施例3と比較して見掛け密度が低くなっており、ワイピングクロスとして、微細な塵埃を捕捉する容量がより大きくなっており、フィルタとして、粉じん保持容量がより大きくなっていた。また、実施例4および実施例5はスパンボンド不織布の両面に極細繊維を含有する繊維ウエブを配したため、極細繊維による優れた効果を両面で同等に得ることができた。また、実施例4と実施例5を対比すると、実施例5はニードルによる絡合の後に、さらに水流による絡合が施されており、ソフトな手触り感により優れていた。
【符号の説明】
【0070】
1 樹脂成分
2 他の樹脂成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維ウエブがスパンボンド不織布と積層一体化している極細繊維複合不織布であって、前記繊維ウエブはアルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を除去して得られる極細繊維、及び熱接着性繊維を含有しており、前記繊維ウエブはニードルによって絡合しているとともに前記熱接着性繊維によって結合しており、前記繊維ウエブは前記スパンボンド不織布とニードルによって絡合しているとともに前記熱接着性繊維によって結合していることを特徴とする極細繊維複合不織布。
【請求項2】
請求項1に記載の極細繊維複合不織布からなるワイピングクロス。
【請求項3】
請求項1に記載の極細繊維複合不織布からなるエアフィルタ。
【請求項4】
アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いで前記繊維ウエブとスパンボンド不織布とを積層し、次いでニードルによって前記繊維ウエブを絡合するとともに前記繊維ウエブと前記スパンボンド不織布とを絡合一体化し、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブの構成繊維同士、及び構成繊維と前記スパンボンド不織布を結合し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することを特徴とする極細繊維複合不織布の製造方法。
【請求項5】
アルカリ不溶性樹脂成分とアルカリ可溶性樹脂成分とから形成された複合繊維と、熱接着性繊維と、温水溶解繊維とからなる繊維ウエブを形成し、次いで前記繊維ウエブとスパンボンド不織布とを積層し、次いでニードルによって前記繊維ウエブを絡合するとともに前記繊維ウエブと前記スパンボンド不織布とを絡合一体化し、次いで前記熱接着性繊維を加熱することによって前記繊維ウエブの構成繊維同士、及び構成繊維と前記スパンボンド不織布を結合し、次いで温水にて前記温水溶解繊維を溶出し、次いでアルカリ液にて前記複合繊維のアルカリ可溶性樹脂成分を溶出することを特徴とする極細繊維複合不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−281012(P2010−281012A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135638(P2009−135638)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】