説明

極細繊維集合体

【課題】 毛羽立ったり、層間剥離を生じさせることなく、取り扱うことのできる極細繊維集合体を提供すること。
【解決手段】 本発明の極細繊維集合体は、静電紡糸法により紡糸された極細繊維が集合した極細繊維集合体であり、前記極細繊維集合体は、前記極細繊維と同じ組成からなる材料(固定材料)によって、部分的に固定されている。大きさが5〜20μmの固定材料が、固定材料全体数の80%以上を占めているのが好ましく、固定材料の1mmあたりにおける個数が80〜400個であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は極細繊維集合体に関する。より具体的には、毛羽立たせたり、層間剥離させることなく取り扱うことのできる、取り扱い性に優れた極細繊維集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維集合体を構成する繊維の繊維径が小さいと、濾過性能、分離性能、液体保持性能、払拭性能、隠蔽性能、絶縁性能、或いは柔軟性など、様々な性能に優れているため、繊維集合体を構成する繊維の繊維径は小さいのが好ましい。このような繊維径の小さい極細繊維からなる繊維集合体の製造方法として、紡糸原液をノズルから押し出すとともに、押し出した紡糸原液に電界を作用させて紡糸原液を延伸し、極細繊維とした後に捕集して繊維集合体とする、いわゆる静電紡糸法が知られている。例えば、「溶媒として揮発性溶媒を用いて高分子を溶解した高分子溶液を製造する段階と、前記高分子溶液を電荷誘導紡糸工程により紡糸する段階、及びコレクタ上に累積される微細繊維状高分子ウェブを得る段階とを含む微細繊維状高分子ウェブの製造方法」が開示されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−249966号公報(請求項1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような静電紡糸法により製造した極細繊維集合体は、それ自体強度的に優れたものではないため、或いは濾過性能、分離性能などの性能を向上させるために、別の基材と積層一体化して各種用途に適合させる場合が多々ある。このように、別の基材と積層一体化するような場合に、前記極細繊維集合体が毛羽立ったり、最悪の場合には層間剥離を生じるなど、取り扱い性の悪いものであった。
【0005】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、毛羽立ったり、層間剥離を生じさせることなく、取り扱うことのできる極細繊維集合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1にかかる発明は、「静電紡糸法により紡糸された極細繊維が集合した極細繊維集合体であり、前記極細繊維集合体は、前記極細繊維と同じ組成からなる材料によって、部分的に固定されていることを特徴とする極細繊維集合体。」である。
【0007】
本発明の請求項2にかかる発明は、「大きさが5〜20μmの部分的に固定している材料が、部分的に固定している材料全体数の80%以上を占めていることを特徴とする、請求項1記載の極細繊維集合体。」である。
【0008】
本発明の請求項3にかかる発明は、「部分的に固定している材料の1mmあたりにおける個数が80〜400個であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の極細繊維集合体。」である。
【0009】
本発明の請求項4にかかる発明は、「部分的に固定している材料が、極細繊維が紡糸されると同時に滴下した紡糸原液に由来することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の極細繊維集合体。」である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1にかかる発明によれば、極細繊維集合体は極細繊維と同じ組成からなる材料によって、部分的に固定されているため、毛羽立たせたり、層間剥離を生じさせることなく、取り扱うことができるものである。特に、部分的に固定している材料(以下、「固定材料」ということがある)は極細繊維と同じ組成からなり、極細繊維との親和性が高いため、前記効果に優れている。
【0011】
本発明の請求項2にかかる発明によれば、適度な大きさの固定材料によって複数本の極細繊維が固定された状態にあるため、毛羽立たせたり、層間剥離を生じさせることがないとともに、極細繊維間の空隙が閉塞されておらず、極細繊維の性能を発揮できるものである。
【0012】
本発明の請求項3にかかる発明によれば、十分な量の固定材料によって極細繊維が固定された状態にあるため、毛羽立たせたり、層間剥離を生じさせることのない、取り扱い性に優れたものである。
【0013】
本発明の請求項4にかかる発明によれば、極細繊維と固定材料との親和性が高いため、毛羽立たせたり、層間剥離を生じさせることのない、取り扱い性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の極細繊維集合体は静電紡糸法により紡糸された極細繊維が集合したものであるため、通常、平均繊維径が1μm以下(好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、通常0.01μm以上)、かつ繊維径のCV値が0.6以下(好ましくは0.4以下、より好ましくは0.2以下)の繊維径の揃ったものである。また、静電紡糸法により紡糸する場合、通常、連続的に紡糸原液を紡糸空間へ供給するため、極細繊維は連続した繊維である。このように連続した繊維である方が、繊維の脱落が生じにくいため好適である。
【0015】
なお、極細繊維を構成する材料は静電紡糸法により紡糸可能なものであれば良く、特に限定するものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン12、ナイロン−4,6などのナイロン系、アラミド、ポリベンズイミダゾール、ポリビニルアルコール、セルロース、酢酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル、ポリ(ビス−(2−(2−メトキシ−エトキシエトキシ))ホスファゼン)(poly(bis-(2-(2-methoxy-ethoxyethoxy))phosphazene);MEEP)、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミド(PEI)、ポリこはく酸エチレン(poly(ethylenesuccinate))、ポリアニリン、ポリエチレンサルファイド、ポリオキシメチレン−オリゴ−オキシエチレン(poly(oxymethylene-oligo-oxyethylene))、SBS共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンオキサイド、コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリD,L−乳酸−グリコール酸共重合体、ポリアリレート、ポリプロピレンフマラート(poly(propylene fumalates))、ポリカプロラクトンなどの生分解性高分子、ポリペプチド、タンパク質などのバイオポリマー、コールタールピッチ、石油ピッチなどのピッチ系などを挙げることができる。或いは、これらの共重合体及び混合物であることもできる。また、石英ガラスなどの無機物であることもできる。
【0016】
なお、本発明における平均繊維径は、厚さ方向断面の電子顕微鏡写真をもとに100箇所の繊維径を測定し、その繊維径を算術平均した値をいう。繊維の横断面形状が非円形である場合には、横断面積と同じ面積をもつ円の直径を繊維径とみなす。また、繊維のCV値は極細繊維の繊維径の標準偏差値を、極細繊維の平均繊維径で除した値をいい、標準偏差値は極細繊維100箇所の繊維径の標準偏差値をいい、次の式により算出される値をいう。
標準偏差={(nΣX−(ΣX))/n(n−1)}1/2
n:測定数(100箇所)、X:それぞれの極細繊維の繊維径(μm)
【0017】
本発明においては、上述のような極細繊維が極細繊維と同じ組成からなる固定材料によって部分的に固定されており、極細繊維と固定材料との親和性が高いこともあって、毛羽立たせたり、層間剥離を生じさせることなく、取り扱うことができる。この同じ組成からなる固定材料で部分的に固定するには、例えば、極細繊維を紡糸する際に紡糸原液の吐出量を多くするなど、極細繊維の紡糸と同時に繊維化しない紡糸原液を滴下させて形成することができるし、極細繊維のみからなる集合体を形成した後に、紡糸原液をスプレーするなどして散布することによって形成することもできる。これらの中でも、極細繊維の紡糸と同時に繊維化しない紡糸原液を滴下させて形成する方法であると、別工程を必要とせず、別工程での毛羽立ち等の問題が発生しないため好適である。
【0018】
なお、固定材料による極細繊維の固定は極細繊維の特性を損なわないように部分的であるが、極細繊維集合体の表面及び/又は極細繊維集合体の厚さ方向において部分的であることができる。例えば、極細繊維集合体の一方の面から他方の面へ連続して固定材料が存在して固定している必要はなく、一方の面近傍、他方の面近傍、又は厚さ方向中央部において固定材料が存在して固定していても良い。このような状態にあっても毛羽立ちや層間剥離を効果的に防止することができる。
【0019】
本発明の極細繊維集合体においては、固定材料によって部分的に固定されているが、大きさが5〜20μmの固定材料が、固定材料全体数の80%以上を占めているのが好ましい。固定材料の大きさが5μm未満であると、毛羽立ちや層間剥離防止性に劣る傾向があるためで、他方、固定材料の大きさが20μmを超えると、極細繊維間の空隙が閉塞されてしまい、極細繊維の性能を発揮できなくなる傾向があるためで、より好ましい大きさは8〜18μmである。このような大きさの固定材料は前述のような効果に優れているように、固定材料全体数の80%以上を占めているのが好ましく、90%以上を占めているのがより好ましく、95%以上を占めているのが更に好ましく、100%前述の大きさの固定材料からなるのが最も好ましい。なお、「固定材料の大きさ」は、極細繊維集合体表面における電子顕微鏡写真(115μm×150μm)を撮影し、この電子顕微鏡写真から固定材料の面積を計測し、その面積と同じ面積をもつ円の直径を大きさとみなす。また、大きさが5〜20μmの固定材料の固定材料全体数に占める割合は、極細繊維集合体表面3箇所における電子顕微鏡写真(115μm×150μm)を撮影し、各電子顕微鏡写真における固定材料の大きさを計測し、5〜20μmの範囲内にある固定材料の数の、固定材料の全数に対する百分率をいう。
【0020】
また、固定材料の1mmあたりにおける個数は80〜400個であるのが好ましい。固定材料の1mmあたりにおける個数が80個以上であれば、十分に極細繊維を固定して毛羽立ちや層間剥離を確実に防止できるためで、100個以上であるのがより好ましく、150個以上であるのが更に好ましい。他方、固定材料の1mmあたりにおける個数が400個を超えると、極細繊維間の閉塞された空隙が多くなり、極細繊維の性能を発揮できなくなる傾向があるためで、380個以下であるのがより好ましい。なお、この固定材料の1mmあたりにおける個数は、極細繊維集合体表面3箇所における電子顕微鏡写真(115μm×150μm)を撮影し、各電子顕微鏡写真における固定材料の数を計測し、電子顕微鏡写真1枚あたりの固定材料の算術平均数を算出した後、固定材料1mmあたりに換算した数をいう。
【0021】
本発明の極細繊維集合体の目付及び厚さは特に限定するものではないが、目付は0.1〜100g/mであることができ、厚さは100μm以下であることができる。
【0022】
このように、本発明の極細繊維集合体は極細繊維集合体のみからなる場合であっても、毛羽立ったり、層間剥離を生じにくく、取り扱い性の優れるものであるため、別の基材と積層一体化して各種用途に適合させやすいものである。例えば、織物、編物、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、流体流絡合不織布、湿式不織布などの基材と本発明の極細繊維集合体を積層一体化し、そのまま平板状のまま、襞折り加工、多孔筒に巻回加工、或いは袋状に加工して、濾過材(例えば、HEPAフィルタ用濾過材)として使用することができる。また、エレクトレット加工など様々な後加工を施して使用することもできる。なお、本発明の極細繊維集合体においては、静電紡糸法により紡糸された極細繊維以外の有機繊維又は無機繊維を含んでいることができる。
【0023】
本発明の極細繊維集合体は、例えば、常法の静電紡糸法により極細繊維を紡糸し、集積させた後に、紡糸原液をスプレーするなどして散布することによって形成することができるし、静電紡糸法により極細繊維を紡糸する際に、紡糸原液を滴下して形成することもできる。以下、後者の方法について、より具体的に説明する。
【0024】
まず、紡糸原液を用意する。この紡糸原液は前述のような極細繊維構成材料を溶解させた溶液である。なお、紡糸原液を構成する溶媒は極細繊維構成材料によって異なり、特に限定するものではないが、例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、ピリジン、トリクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、蟻酸、ジメチルスルフォキシドなどを挙げることができる。これらの例示以外の溶媒も使用可能であり、例示以外の溶媒も含めて、2種以上の溶媒を用いた混合溶液も使用することができる。
【0025】
このような紡糸原液をノズルへ過剰に供給し、ノズルから吐出させ、吐出した紡糸原液の一部を電界の作用により繊維化させるとともに、一部を捕集体へ滴下する。この紡糸原液の吐出方向は特に限定するものではないが、紡糸原液が滴下しやすいように、重力の作用方向に吐出するのが好ましい。なお、紡糸原液の吐出量は紡糸原液が滴下しやすいように、1本のノズルあたり2cc/時間以上とするのが好ましく、2.5cc/時間以上とするのがより好ましく、3cc/時間以上とするのが更に好ましい。
【0026】
この紡糸原液を吐出するノズルの直径は、極細繊維の平均繊維径によって変化し、また、紡糸原液の粘度によって変化するが、平均繊維径が1μm以下の極細繊維を紡糸するとともに紡糸原液を滴下しやすいように、ノズルの直径(内径)は0.2〜0.4mmであるのが好ましい。
【0027】
また、ノズルは金属製であっても、非金属製であっても良い。ノズルが金属製であればノズルを一方の電極として使用することができ、ノズルが非金属製である場合には、ノズルの内部又は紡糸原液供給管内に電極を設置することにより、紡糸原液に電界を作用させることができる。
【0028】
このようなノズルから紡糸原液を吐出した後、吐出した紡糸原液に電界を作用させることにより一部を延伸して繊維化する。この電界は、極細繊維の平均繊維径、ノズルと極細繊維を集積する捕集体との距離、紡糸原液の溶媒、紡糸原液の粘度などによって変化するため、特に限定するものではないが、繊維の平均繊維径を1μm以下としやすいように、1〜5kV/cmであるのが好ましい。電界強度が5kV/cmを超えると、空気の絶縁破壊が生じやすくなり、また、1kV/cm未満になると、極端に繊維化しにくくなるためである。
【0029】
前述のように吐出した紡糸原液に電界を作用させることにより、紡糸原液に静電荷が蓄積され、捕集体側の電極(後述)によって電気的に引張られ、引き伸ばされて一部が繊維化するが、一部はそのまま液滴状態のまま捕集体に滴下する。なお、ノズルと捕集体との間を飛翔する繊維に対して、有機繊維及び/又は無機繊維を供給すれば、極細繊維と有機繊維及び/又は無機繊維とが混在する極細繊維集合体を製造することができる。
【0030】
このような電界は、例えば、ノズル(金属製ノズルの場合にはノズル自体、ガラスや樹脂などの非金属製ノズルの場合にはノズルの内部又は紡糸原液供給管内の電極)と捕集体との間に電位差を設けることによって、作用させることができる。例えば、ノズルに電圧を印加するとともに捕集体をアースすることによって電位差を設けることができるし、逆に、捕集体に電圧を印加するとともにノズルをアースすることによって電位差を設けることもできる。なお、電圧を印加する装置は特に限定されるものではないが、直流高電圧発生装置を使用できるほか、ヴァン・デ・グラフ起電機を用いることもできる。
【0031】
次いで、前記繊維化した繊維と繊維化していない紡糸原液(液滴)を捕集体上に集積させる。この捕集体は繊維及び紡糸原液を捕集できるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、金属製や炭素などの導電性材料、又は有機高分子などの非導電性材料からなる、不織布、織物、編物、ネット、平板、ドラム、或いはベルトを使用できる。
【0032】
前述のように捕集体を他方の電極として使用する場合には、捕集体は体積抵抗が10Ω以下の導電性材料(例えば、金属製)からなるのが好ましい。一方、ノズル側から見て、捕集体よりも後方に対向電極として導電性材料を配置する場合には、捕集体は必ずしも導電性材料である必要はない。後者のように、捕集体よりも後方に対向電極を配置する場合、捕集体と対向電極とは接触していても良いし、離間していても良い。
【0033】
そして、必要により、捕集し、集合させた極細繊維を乾燥し、繊維に残留する紡糸原液の溶媒、及び滴下した紡糸原液の溶媒を除去し、紡糸原液に由来する固定材料によって、極細繊維を部分的に固定した、本発明の極細繊維集合体を製造することができる。なお、乾燥は極細繊維構成材料が溶融又は分解しない温度で行えば良く、例えば、オーブン、赤外線ヒーター等により実施することができる。また、紡糸原液の溶媒が残留していても問題がない場合には、集合させた極細繊維を乾燥することなく、本発明の極細繊維集合体とすることができる。
【0034】
なお、大きさが5〜20μmの部分的に固定している材料が、部分的に固定している材料全体数の80%以上を占めている極細繊維集合体、又は固定材料の1mmあたりにおける個数が80〜400個の極細繊維集合体は、吐出量、印加電圧、ノズルと捕集体との距離、紡糸空間の相対湿度等を適宜調節することによって製造することができる。例えば、ポリアクリロニトリル系樹脂をジメチルホルムアミドに溶解させた、濃度10〜12mass%の紡糸原液を、1本あたりの吐出量2〜3.5cc/時間で、相対湿度が23〜27%の紡糸空間へ吐出し、ノズル又は対向電極に17〜20kVの電圧を印加して、紡糸原液の一部を繊維化し、ノズルから80〜100mm離れた捕集体で捕集して製造することができる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
ポリアクリロニトリル(アルドリッチ製、品番:181315)を、ジメチルホルムアミドに溶解させ、濃度12mass%の紡糸原液(粘度:1300cpoise)を調製した。
【0037】
また、シリンジにポリテトラフルオロエチレン製チューブを接続し、更に前記チューブの先端に、内径が0.4mmのステンレス製ノズルを一列に10本取り付けて、紡糸装置とした。次いで、前記ノズルに高電圧電源を接続した。更に、前記ノズルと対向し、10cm離れた位置に、表面にシリコーン加工を施したステンレスコンベア(捕集体、接地)を設置した。なお、ノズル列はコンベアの進行方向と平行となるように配置した。
【0038】
次いで、前記紡糸原液を前記シリンジに入れ、マイクロフィーダーを用いて、各ノズルから重量の作用方向へ吐出する(ノズル1本あたりの吐出量:3cc/時間)とともに、前記コンベアを一定速度(表面速度:0.1m/分)で移動させながら、前記高電圧電源から各ノズルに+20KVの電圧を印加して、吐出した紡糸原液に電界を作用させて一部を極細繊維化するとともに、一部をコンベア上に滴下し、前記コンベア上に極細連続繊維と紡糸原液を集積し、極細繊維集合体(目付:10g/m、厚さ:48μm、平均繊維径:0.44μm、CV値:0.21)を製造した。なお、この操作は紡糸空間の相対湿度を25%とした環境下で行った。また、前記ノズル列はコンベアの移動方向と直角方向に一定速度(移動速度:10cm/秒、移動幅:450mm)で往復移動させて、極細繊維の分散性を高めた。この極細繊維集合体表面の電子顕微鏡写真(115μm×150μm)を3枚撮影(図1参照)し、これら電子顕微鏡写真から固定材料について観察したところ、大きさが8〜18μmの固定材料(アクリロニトリル)のみが、1mmあたり370個存在していた。この極細繊維集合体は、両面を手で軽く擦っても、毛羽立ったり、層間剥離を生じないものであった。
【0039】
(比較例1)
ノズル1本あたりの吐出量を1cc/時間としたこと以外は実施例1と全く同様にして、極細繊維集合体(目付:4g/m、厚さ:25μm、平均繊維径:0.42μm、CV値:0.18)を製造した。この極細繊維集合体表面の電子顕微鏡写真を撮影(図2参照)し、この電子顕微鏡写真を観察したところ、紡糸原液に由来する固定材料(ポリアクリロニトリル)が全く存在しないものであった。この極細繊維集合体は、両面を手で軽く擦ると、毛羽立ったり、層間剥離を生じ、取り扱い性に悪いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1の極細繊維集合体表面の電子顕微鏡写真
【図2】比較例1の極細繊維集合体表面の電子顕微鏡写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電紡糸法により紡糸された極細繊維が集合した極細繊維集合体であり、前記極細繊維集合体は、前記極細繊維と同じ組成からなる材料によって、部分的に固定されていることを特徴とする極細繊維集合体。
【請求項2】
大きさが5〜20μmの部分的に固定している材料が、部分的に固定している材料全体数の80%以上を占めていることを特徴とする、請求項1記載の極細繊維集合体。
【請求項3】
部分的に固定している材料の1mmあたりにおける個数が80〜400個であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の極細繊維集合体。
【請求項4】
部分的に固定している材料が、極細繊維が紡糸されると同時に滴下した紡糸原液に由来することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の極細繊維集合体。

【図1】
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【図2】
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